コゼットの修造

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1 :saga :2017/09/27(水) 14:26:22.10 ID:63xcKSEbO
 これはかつて 私の永遠だったものだ
シュッ パン パコン
静かであったはずの骨董店にボールの音が木霊する。
修造がラケットでテニスボールを壁に叩き続けているのだ。
現役を退いたとはいえ、超一流のテニスプレイヤーである修造の打球は、一打撃つごとに壁の色を変える威力がある。ボール痕はどんどんと増え、次第にそれは一人の少女の絵となっていった。
友人「あ、修造。また店内でテニスなんかしてからに!壁壊したら店長に怒られるわよ?」
修造「100回叩くと壊れる壁があったとする。でもみんな何回叩けば壊れるかわからないから、90回まで来ていても途中であきらめてしまう。…次の一回で壁は打ち破れるかも知れないんだ!」
友人「だから壊すなって…。あら、この壁の女の子美人じゃない。もしかして、惚れた?」
人もテニスもラブから始まる。
やはり、修造は倉庫にあった例の絵が気になっているようだった。
例の絵。
友人が帰ったあと、修造は倉庫で一枚の絵を眺めていた。
あのボール痕で描いた少女の元が、そこにはあった。額縁を見ればcossetteと書かれているのに気づく。この娘の名前だろうか?
修造「コゼット…?」


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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 14:28:18.08 ID:63xcKSEbO
改行ミスりました。次からやり直します
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 14:29:05.53 ID:63xcKSEbO


 これはかつて 私の永遠だったものだ




シュッ パン パコン
静かであったはずの骨董店にボールの音が木霊する。
修造がラケットでテニスボールを壁に叩き続けているのだ。
現役を退いたとはいえ、超一流のテニスプレイヤーである修造の打球は、一打撃つごとに壁の色を変える威力がある。ボール痕はどんどんと増え、次第にそれは一人の少女の絵となっていった。

友人「あ、修造。また店内でテニスなんかしてからに!壁壊したら店長に怒られるわよ?」

修造「100回叩くと壊れる壁があったとする。でもみんな何回叩けば壊れるかわからないから、90回まで来ていても途中であきらめてしまう。…次の一回で壁は打ち破れるかも知れないんだ!」

友人「だから壊すなって…。あら、この壁の女の子美人じゃない。もしかして、惚れた?」

人もテニスもラブから始まる。
やはり、修造は倉庫にあった例の絵が気になっているようだった。

例の絵。
友人が帰ったあと、修造は倉庫で一枚の絵を眺めていた。
あのボール痕で描いた少女の元が、そこにはあった。額縁を見ればcossetteと書かれているのに気づく。この娘の名前だろうか?

修造「コゼット…?」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 14:30:12.55 ID:63xcKSEbO
呟いた瞬間に、背筋がゾクリと凍る。背後に、人ならざるモノの気配がする。
「修造…」
気配は、話しかけてきた。「私を助けて」…と。

振り返った修造が目にしたのは、ゴシックに身を包み立つ美しい少女の姿。まさに絵に描かれていたあの少女、コゼットであった。

凡人ならば震え上がるような怪奇現象だ。苦しいか?修造!笑え!
崖っぷち最高だ!

修造「君を助けるよ!!」

それでこそ修造!いま ここ 修造!

自分を自覚出来ない不可解な感覚。
不可解な怖気、不可解な高揚、不可解な、もの。
美に抗えず、恐怖にも歓喜にも意味を見出そうとする。
テニスにも似た──

コゼット「ず、随分と簡単に言うのね?出来ないかも知れないのに…」

修造「言い訳してるんじゃないですか?できないこと、無理だって、諦めてるんじゃないですか?
駄目だ駄目だ!諦めちゃだめだ!できる!できる!
絶対にできるんだから!」

コゼット「─!?」

修造「ネバーギブアップ!!」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 14:31:36.58 ID:63xcKSEbO


 彼らは今でも私を探している
 私のために怒り 私のために嘆き
 私のために狂(ふ)れ……
 彼らは私の名残
 私に還る日を夢見る誠実な暴徒


コゼットの生前の持ち物であった『器物』が、呪いを発してコゼットを現世に縛りつけている。
コゼットを解放するためには、器物をすべて集めなければならないのだ。

器物は厄いを招く。
早速コゼットに連れられて来た駅のホーム。なんと最近人身事故が多発している場所である。

コゼット「気をつけて。……ここは、光が淀んでいる」

瞬間、景色が入れ替わり、目前に広がるは駅のホームではなく華美な宮殿の風景になる。

修造「綺麗だよね…。輝っいてるよね。
この宮殿のように、君の心もピュアだったじゃねーかよ!なんだよ…欲ばかり…。嫉妬、悪口、自分のことばっか考えてんじゃねぇか?
そんなのすべて洗い流しちゃえ!
変われるよ…。そうすればこの宮殿のように、コゼットは君の思いを…飲み込んでくれるさ。自然が一番!」

鏡「──!!?」

そう、人身事故の原因は鏡の器物。
マンションに置かれた鏡が西日を反射し、その光が駅のホームへと届いて厄いを招いていたのだ。
だが、修造の言葉に胸を打たれたか、鏡はコゼットの元へ無事に還る。


コゼット「…おかえりなさい……」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 14:33:40.59 ID:63xcKSEbO

 《君はあまりに美しい。君はきっと、今が一番美しい。だから、君の時を止めてしまおう》


マルチェロという画家がいた。
彼は、コゼットの美しさを永遠とするために彼女を手に掛けた。
そのときに流れたコゼットの血が器物にかかり、主を想う器物は呪いとなってコゼットを現世に250年たった今もなお縛り付けていた。

コゼット「永遠に続く感情は、哀愁だけ…」

だが、修造持ち前の熱血はマルチェロの妄執をも跳ね除けた。目指すのではなく、狙っていけ!
次々と器物を改心させ蒐集していき、ついには全ての器物を揃えるに至ったのだ!

コゼット「さあ修造。……儀式をしましょう」

修造「わかった!」

ノータイムでの返事!ネクストタイムどころかノータイム!それでこそ修造!いま ここ 修造!

儀式によって開かれし『扉』。
ここから先に行けばもう戻れない。

コゼット「行きましょうこの先へ。永遠すら届かない幸福へ」

二人は足を踏み出した。

これは終わりではなく、新しい修造の始まり。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 14:35:14.56 ID:63xcKSEbO

何も、何もない空間。
あるのは修造とコゼットだけ。

コゼット「この先を抜けるには危険が伴うの。だから、この手は絶対に離さないでね。ここは幻想が支配する空間。一度離れ離れになれば二度と会うことは出来なくなるわ」

修造「大丈夫。 大丈夫って文字には、 全部に人って文字が入っているんだよ。だから大丈夫!」

コゼット「ふふ。貴方が熱い言葉を言うものだから、炎が立ちこめてきたわね」

幻想が支配する空間。それは想いが形となって現出してくる。修造の熱さはとどまることを知らない。熱くない修造なんて修造じゃない!
ほら、気付けば辺り一面が火の海よ!

コゼット(熱い……!)

熱い。熱い、熱い、熱い!熱い!!!!
この熱の源は、そうだ。
修造の手………

修造を見た。コゼットの目に今の修造は、太陽そのものに見えてしまった。

灼かれるッ…!!?

コゼット「わ…ぅわあああああああああ!!!?!」ばっ!!

修造「コゼッ…!?」

ああ、なんということか!コゼットは熱さは耐えきれなくなり、ついにはその手を離してしまった!
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 14:36:51.96 ID:63xcKSEbO
手を、離してしまった。
望みが絶たれた。コゼットは自ら可能性を摘んでしまった。
次にコゼットを救ってくれる魂とめぐり合うためには、あと何十、何百年待たねばならぬのか。

コゼット「永遠に続く感情は、哀愁だけ……」


修造「なんで諦めるんだよ!!!」

コゼット「ぅえ!?ナンデ修造!!?」

修造「諦めんなよ!諦めんなよ、お前!どうしてそこで辞めるんだ!
そこで!!
もう少し頑張ってみろよ!ダメダメダメ!諦めたら!周りのこと思えよ!応援してる器物たちのこと思ってみろって!
あともうちょっとのところなんだから!」

コゼット「やめて、来ないで…!修造は熱すぎるの!」

修造「君に困った顔は似合わない!笑顔じゃないコゼットなんて熱くない松岡修造みたいなものだ!決めたんだろ呪いを解くんだって!だったら…今日からコゼットは富士山だッッ!!」

コゼット「私が……富士山……!」




そして時は移り、場所は変わって静岡。
そこに聳えるは標高3776 mにして日本最高峰の独立峰が。

霊峰コゼット富士山「いとおしい自分の命を振り捨てるほどに私を愛してくれるのは……誰?」




おしまい
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 14:37:47.73 ID:63xcKSEbO
ありがとうございました。
原作アニメは観たことがなく、漫画版しか知らないのですが、それでも『コゼットの肖像』は僕の大好きな漫画です。
あとこのssのために松岡修造の名言を初めて真剣に目を通したのですが、ちょっと魂震えましたね。
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