八幡「雪ノ下たちが幼女になってた」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 20:16:21.46 ID:BWXMxi0o0
 思えばその日は朝から妙に好調だった。
 
 小町が気まぐれで買ってきた緑茶を、これまた気まぐれで買ってきたワゴンセールの湯呑茶碗の中に注ぐと、三本くらい茶柱が立って逆に気持ち悪かった。
 
 当たり付き自販機で飲み物を買うと、珍しく当たりが出た。俺の体感としては、これはだいたい100回に1回くらいの割合でしか当たらない気がする。

 道行く女子高生のスカートが、いたずらな風に吹かれて、白の水玉のパンツがばっちり見えた。

 戸塚が可愛かった。エトセトラ、エトセトラ。

 そんなわけで、俺はいつもよりも上機嫌でボッチライフを送っていた。放課後、部活動の時間が訪れるまでは。

 幸福と不幸とは常に背中合わせである。

 禍福は糾える縄の如し。人間万事塞翁が馬。沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり。

 上機嫌で部室の扉を開け放った俺は、そんな諺を意味もなく思い浮かべていた。


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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 20:25:08.46 ID:BWXMxi0o0
「あらひきぎゃやくん、こんにちは。すこしきいてほしいはなしがあるのだけれど」

 初めに聞いたのは、そんな舌足らずの声だった。活舌や声のトーンからして、だいたい幼稚園児くらいの子どもの声ではないかと推測する。

 はて、俺は確かに奉仕部に通じる扉を開け放ったはずだったのだが。

「わり、間違えた」

 首を傾げながら部室の扉を閉める。

 いつの間にか総武高校は児童クラブ部でも創設したのだろうか。クラブ部ってなんだ、意味重複してんだろ。

 俺は奉仕部などという奇特な部活に入ってはいるものの、児童クラブのような奉仕活動に身をやつした覚えは断じてない。

 一息ついて、辺りを見回して奉仕部の部室を探していると、上を見た時に、どこかで見たシールが貼られていることに気が付いた。

 事あるごとに由比ヶ浜が張り付けていた大量のシール群である。

 こんなものを張り付けている教室が他にあるとは思えない。

 ……まさか、まさか、な。

 俺が扉の前で逡巡していると、パタパタという足音と共に、中から誰かが走り寄ってくる音が聞こえてくる。

「ひっきぃ、いきなりとびらしめるなんてひどいよぉ」

 俺をヒッキーなどというふざけた渾名で呼ぶ奴を、俺はあいつ以外に知らない。

 ゴクリ、と知らず知らずのうちにつばを飲み込んだ俺は、恐る恐るもう一度部室のドアを開いた。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 20:37:29.27 ID:BWXMxi0o0
 扉を開いた俺の前に居たのは、あのお団子頭の彼女――では、あった。

 ただ、俺の思っていたものとは大きく異なった形ではあったが。

 まず、頭身がいつもの彼女の半分くらいしかない。

 彼女のアピールポイントであるその大きな双丘に関しては、全くと言っていいほど存在していない。雪ノ下何某さんが大きく見えるくらいの絶壁である。

 しかし、それも当然と言えるだろう。

 なぜなら、俺の目の前に現れた彼女は――由比ヶ浜結衣は――紛れもない幼女と化していたからである。

「……は?」

 ギャグマンガの主人公でもあれば、ここで大きなリアクションを取って読者の笑いを誘うのだろうが、いざおいしい場面に遭遇した俺の口から出てきたのは、そんな間抜けな声だった。

 俺はどうやらギャグマンガの主人公にはなれそうにもない。くりくりとした目でこちらを見つめる幼女を茫然と見つめながら、そんなどうでもいいことを考えていた。

「ひっきぃ、たってないでなかはいってよ。まじでやばいんだって!」

 幼女ヶ浜幼女さんの小さな手が俺の手を取り、部室の中へと誘う。

「ゆいがはまさんがかわいいからといって、そのくさっためをぶしつけにむけないでくれるかしら、ろりこん谷くん」

 奥の方の座席から聞こえてくる、その舌足らずな声は、間違いなく、この奉仕部部長であるところの、幼女ノ下幼女さんの声であった。

 俺は混乱した頭が整理できないまま、由比ヶ浜の手に引かれて、ひとまず部室に足を踏み入れることと相成ったのであった。

 

 
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 20:53:21.56 ID:BWXMxi0o0
「――で、なにこれ。ドッキリ?」

「そうであればどれほどよかったでしょうね……」

 幼女ノ下さんの入れてくれた紅茶を啜り、ひとまず冷静さを取り戻した俺が初めに考えたのは、この状況そのものが質の悪いドッキリであるという可能性である。

 常識的に考えてみてほしい。

 今まで一緒に過ごしてきた同級生が、ある日突然幼女になってました、なんて状況が本当にあり得るだろうか。

 それなんて名探偵コ〇ン、である。

 生憎俺はリアリストなので、そんな非科学的な現象を鵜呑みにするつもりにはならない。と

 とりあえず、目の前にいる二人の幼女の顔を交互に見る。

 艶やかな黒い髪を腰まで伸ばし、悠然と雪ノ下が普段座っている席に腰かけている幼女。白磁のような肌といい、異様なほどに整った容姿といい、確かにかの雪ノ下雪乃に酷似している。

 ピンクがかった茶髪のお団子頭で、雪ノ下似の幼女の隣に腰かけ、ちらちらとこちらを伺っている幼女。由比ヶ浜はもともと幼い顔立ちではあったものの、尚更幼く見える、というか幼い。確かにその子犬のような雰囲気は、かの由比ヶ浜結衣に酷似していると言わざるを得ない。

 俺はもう一度紅茶を啜り、一つ大きなため息を吐いた。

「で、君たちは二人の親戚か何か? 二人はどの辺に隠れて『ドッキリ大成功!』の看板を掲げる機会を伺ってるんだ?」

「ぜんぜんしんじてない!?」

「そのにんげんふしんぶりはさすがといわざるをえないわね、ひきこもりくん」

 おおー、リアクションまでそっくりとは手が込んでるなぁ。

 案外あの二人には演技指導の才能があるのかもしれない。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 21:15:55.96 ID:BWXMxi0o0
「そうね、ひとまずひきぎゃやくんのおもいこみをとくところからはじめましょうか」

 幼女ノ下がやれやれ、といった風体でこめかみを抑える。なんだかこちらが悪いような気分になるからやめてほしい。

 というかひきぎゃやくんってなんだよそれかわいいな。

 頑張って言おうとしているのに言えてないところが八幡的にポイント高い。

「ひきぎゃやくん、わたしたちはまぎれもなくほんにんよ」

「いや、そう言われましても……」

「あなたがさきほどくちをつけたこうちゃ、いつもわたしがいれているものとそんしょくなかったでしょう? ようちえんじにあのあじのこうちゃがいれられるのかしら?」

 確かに、先ほどから飲んでいる紅茶は、いつも雪ノ下が入れてくれる紅茶の味に引けを取らない。というかそのものですらある。

「そうかそうか、紅茶入れるの上手いんだな。えらいえらい」

「はてしなくはらがたつのだけれど……」

「じゃあひっきぃはどうすればしんじてくれるの?」

 幼女ヶ浜さんが首を傾げながらこちらを見る。

「ふーむ……俺のマイスウィートシスターの名前は」

「こまちちゃん。あとひっきぃきもい」

「俺の好きな飲み物は」

「まっくすこーひー」

「俺の身長は」

「ひゃくななじゅうごせんち。……ってなにいわせんの! きもい! ひっきぃまじきもいから!」

「いや……俺も驚いたわ。なんで俺の身長知ってんだよ、由比ヶ浜は」

「そ、それは……たまたま! たまたましってただけだし!」

「そうかそうか、由比ヶ浜お姉ちゃんとはよくお話しするんだな」

「やっぱりしんじてないんじゃん!」

 というかこんなかわいい幼女に罵られると何か変な性癖に目覚めそうだからやめてほしい。

 俺は顔を赤くしている幼女ヶ浜から目をそらして、幼女ノ下の方を向いた。
 
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 21:34:43.73 ID:BWXMxi0o0
「しかし、こんな時間に高校になんていたら親御さんが心配するぞ。俺が送ってやるから二人ともちゃんと帰ろうか」

「めんどうくさいからといってもんだいをうちきりにしないで。わたしはともかく、ゆいがはまさんはこんなすがたのままいえにかえれるわけがないでしょう」

「いや、由比ヶ浜なら納得されるんじゃないか? 外で子ども作ってきましたーって……ごふっ」

「ひっきぃさいてー! ほんっとさいてー!」

 幼女ヶ浜の方から飛んできた文庫本が俺の脳天をクリーンヒットする。いや、それ俺がこの前置き忘れてたやつだろ。投擲武器代わりに使うなよ。

 文庫本を拾い、頭をさすりながら席に戻ると、幼女ノ下が静かに口を開いた。

「まじめなはなし、しんじようとしんじまいと、あなたにはきょうりょくしてもらわなければならないのよ。きょひけんはないわ」

「えぇ……。まあ、子どもの相手は嫌いじゃないけども、遊びに来るならこんなところよりももっと他にチョイスがあっただろ」

「あそびじゃないのよ。あなたのりかいりょくのなさにはほとほとあきれるわね。どうしてめのまえのじしょうをすなおにうけいれられないのかしら」

「しかし本当に雪ノ下にそっくりな毒舌だな。これは将来が恐ろしいわ」

 この年齢で雪ノ下ばりの毒舌を体得しているということは、十数年後には……おおう。背筋に冷たい汗が。

 相も変わらずやりとりを続ける俺と幼女ノ下さんに、幼女ヶ浜がおずおずと声を掛ける。

 

 
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 21:42:56.49 ID:t/bBDYSIO
ガハマは幼女でもうざいな
いっぺん死んで親の腹の中からやり直した方がいいんじゃね
というか奉仕部に関わらないで欲しい
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 21:52:26.00 ID:BWXMxi0o0
「ひっきぃは、さ。しんじてくれないの? わたしたちが、こんなふうになったってこと」

「あー信じてるぞー信じてるから早めに帰ろうかー」

「ぜんぜんしんじてないじゃん! ……じゃ、じゃぁ、わたしたちとひっきぃしかしらないことをはなせばいいんだね?」

「そんなもんがあるならな」

 幼女ヶ浜さんは少し逡巡した後、こちらをちらちらと見ながら、ぼそっと呟いた。

「……『おれは、ほんものがほしい』……」

「ぶふっ!!」

 お、俺の黒歴史ががががが。

 むせて、暫く咳き込んだ後、俺は幼女ヶ浜に詰め寄る勢いで近寄った。

「ちょっと、それ由比ヶ浜お姉ちゃんに聞いたのか? というか何言ってくれてんだあいつ。人の黒歴史を喜々として広めやがって……」

「ちょっ、こわい、こわいから! だ、だいたい、わたしだれにもはなしてないし!」

「現に君に話してるんだが……。本当勘弁してくれよな。またアイデンティティクライシスに陥りそうだ」

「あら、あなたにあいでんてぃてぃなんてものがあったのね。はつみみだわ」

「さりげなく俺の消滅を望むのやめてくれない?」

 幼女ノ下さんのキレキレの罵倒に心を抉られていると、目の前からしゃくりあげるような声が聞こえてきた。

 ……おいおい、これってまさか。

「っく、ふぇっく、なんでしんじてくれないの。わたしほんとのことしかいってないもん。うっく、ひっきぃのばかぁ」

 くりくりの瞳からぼろぼろと涙を流す幼女の姿がそこにはあった。

 おいおいおいおい。これじゃまるで俺が幼女にきつく詰め寄って泣かせた性犯罪者みたいじゃないか。その通りですねはい。

 幼女ノ下さんが絶対零度の視線がこちらを刺す。

「……どうやらせいしんがにくたいにひっぱられているようね。これもゆゆしきもんだいといえるかしら。……それにしても、いたいけなじどうをなかせるなんてまさかあなたのひょうかがこれいじょうしたにおちることがあるとはおもわなかったわ。ごめんなさい、いますぐいのちをたってもらっていいかしら」

「……すみませんでした」

 怖い、幼女ノ下さん怖い。

9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 22:05:49.33 ID:rFOz2N+n0
>>7
電池キモッ
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 22:16:50.96 ID:BWXMxi0o0
「あー、悪かった、悪かったって」

「ぇっく、っく、ぐすっ」

 幼女ヶ浜さんをなんとか慰めようとするも、俺のあやしスキルではまったく効果がないようで、泣き止むそぶりを見せない。

 最悪の場合一発芸でもかましてやろうかと思いつつ、俺は恐る恐る右手を幼女ヶ浜の頭に置いた。

 幼女ヶ浜はびくっ、と体を震わせるも、涙をいっぱいに貯めた目でこちらを見上げてくる。
 
 その目やめて、罪悪感ヤバいから。

 しかしどうやら、嫌がられてはいないようなので、俺は恐る恐る右手で優しく幼女ヶ浜の頭を撫で始めた。

 すると、少しずつ幼女ヶ浜の嗚咽が収まってくる。

 暫く経つと、どうやら完全に泣き止んだようである。俺は安心して、右手を下ろした。

 しかし、その下そうとした右手の袖を、ちょこん、と小さな手が掴む。

 幼女ヶ浜さんは、まだ少し潤んだ瞳で俺を見上げて言った。

「……もっとなでて」

 これはヤバい。マイラブリーシスター小町のおねだりに匹敵する破壊力である。

 当然断れるはずもなく、俺はもう一度ナデナデ作業を再開せざるを得なかった。

「……えへへぇ」

 先ほどと打って変わってにこにこと笑顔を浮かべる幼女ヶ浜さん。その笑顔はやっぱり由比ヶ浜結衣の浮かべる笑顔によく似ていて。

 俺は右手で幼女ヶ浜の頭を撫でつつ、一つため息をついて、幼女ノ下の方に向き直った。

「……はぁ、わかった、お前らの言うこと信じるわ。で、俺は何すりゃいいんだよ」

「…………」

 幼女ノ下は俺の問いかけに答えることなく、どこか唇を尖らせて、こちらをジト目で見てきている。

 しかし、俺の訝し気な視線に気が付いたのか、一つ咳払いをして、顔を赤らめながら、こちらに改めて向き直った。

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 22:30:40.42 ID:BWXMxi0o0
とりあえず今日はここまでです。
明日また続きを投下する予定です。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 00:10:42.35 ID:+w/DK3k7O
はよ
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 00:44:04.63 ID:O5nMRnvZO
ガハマはそのまま退化していって死んでくれ
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 02:34:05.29 ID:2L47Qe/A0
>>13
ハイハイ
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 14:39:03.93 ID:2vu0pUPUo
単発末尾Oの必死さには草生えるわ
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/28(木) 21:28:12.48 ID:zvsBAU1u0
「……あなたには、わたしたちのせいかつのほじょをしてもらいたいのよ」

「補助、ってどのレベルまでだよ。学校生活をか? 日常生活全般をか?」

「こうしゃね。わたしたちはあまりひとめにつくわけにはいかないから。かぞくやがっこうにたいするふぉろーもふくめて、いまからかんがえようとしているところなのよ」

「……まぁ、お宅の娘さんがいきなり幼女になりました、とか信じてもらえるわけないしな。最悪俺が誘拐犯として捕まるまである」

「そのとおりよ。だからいまからおんびんにすませるためにさくをねろうとしているところなの」

「少しはフォローしてもらえませんかね……。そうだな、とりあえず学校の関係者に一人は協力を求めなきゃならんだろうな」

「そうなると……たいしょうはひとりしかいないわね」

「だな」

 俺は、彼女の携帯にコールを掛けた。

「あぁもしもし、先生ですか。今から奉仕部の部室に来てもらいたいんですが――」



― ☆ ―



「……ふむ。君がよほどの神童でもない限りは、先ほど説明してもらった事情を信じざるを得んな」

 部室に来てすぐに、平塚先生は流れるように110番をコールしようとした。もう少し信用ないんですかね。

 幼女ノ下の方から事情を説明しても、まだ半信半疑と言った風体だった平塚先生は、国語や社会と言った教科の種々の問題を、幼女ノ下さんに出題し始めた。

 それらに一切の淀みなくスラスラと答える幼女ノ下。さすがに学年一位の頭脳の持ち主である。

 ちなみに幼女ヶ浜はどうせ出題してもわからないだろうからと言って何も聞かれてない。

 ハブられた彼女は隅の方で頬を膨らませて拗ねている。ちょっと幼女化著しすぎやしませんかね。

 一通り問題を出題し終えた平塚先生は、まだ少し疑わし気な様子ではあるものの、ひとまず納得はしてくれたようで、ガリガリと頭を掻きながら、口を開いた。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/28(木) 21:46:28.32 ID:zvsBAU1u0
「それで、私はどういった部分のフォローをすればいいんだ?」

「ひらつかせんせいには、がっこうといえのほうにふぉろーをしてもらいたいんです」

「ふむ、どのような連絡だ?」

「学校には問題が解消するまで欠席の連絡、家には学校の用事で暫く帰らないって連絡……ってとこか」

「まあ、そんなところかしらね。わたしのいえにはれんらくはひつようないから、ゆいがはまさんのいえだけでけっこうですよ」

「……学校と家の板挟みに合わなければならんのか。頭が痛くなってきた……」

「へたにうわさをひろめられるわけにはいきませんから。さいあくのばあいわたしたちはじっけんたいとしてけんきゅうきかんにつれさられてしまいます」

「ドラマか何かかよ……」

 と、憎まれ口を叩いてみるものの、実際目の前で起きている現象は、世界中の大富豪が求めているであろう不老を実現しうる可能性を秘めているものである。

 案外幼女ノ下の言っていることも的外れではないのかもしれない。

 平塚先生はポケットのたばこに手を伸ばしかけて、校内であることを思い出したのか、苛立たし気にため息を吐いた。

 しかし一拍ののち、二人の方に向き直った。

「わかった。そのあたりの手回しは私の方で行っておく。それで、君たちは今晩はどうするつもりだ?」

「ひらつかせんせいのいえにとめていただくわけにはいきませんか?」

「私の家か。……狭いし、散らかっているし、子ども二人の世話をするには少しな……」

「結婚できない理由の一因を見た……ぐふっ」

「比企谷。良い男と言うのは思ったことをすぐ口に出さないものだ」

「いい女は口より先に手は出ないと思いますよ……」

 平塚先生に睨み付けられながら、俺は幼女ノ下の方を向いた。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 21:47:05.73 ID:LB0kjNRSO
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