狩人「スライムの巣に落ちた時の話」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 22:22:47.78 ID:3YX/z8oz0
〜85日目〜


痛い、痛い、痛い

右足が痛い

今すぐ蹲ってしまいたくなるほど、痛い

きっと傷口は大きく、骨にまで達しているのだろう


ああ、けど止まる訳にはいかない

止まったら追いつかれてしまう


どうして

どうしてこんな事になったのだろう


様々な感情が頭をよぎるが、それでも


それでも、私は足を動かし続ける

森の中を走り続ける

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1507641767
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/10(火) 22:45:29.71 ID:3YX/z8oz0
〜1日目〜


この日、私は朝から狩りに出ていた。

弓で射抜いた獲物は、兎が3匹、狐が1匹。

糸と針で釣り上げた魚が、5匹。

1人で暮らすには十分な量だ。

何時もならそろそろ村に戻る時間帯だけれど。


私は、ちょっと欲を出した。


幼馴染の誕生日が近いのだ。

何か大きな獲物を獲って帰ってあげたい。

そう、例えば鹿とか。


丁度、地面に鹿の足跡を見つけた。

まだ新しい。

私は、慎重に周囲を確認すると、追跡を開始する。

鹿の足跡は、森を出て山まで続いているようだ。


私は、森をテリトリーにする狩人だ。

山には疎い。

疎いけれども……。


幼馴染が喜ぶ姿を想像して、私は山に立ち入ってしまった。


鹿の足跡から進行経路を予想し、岩場を通り先回りしようとした所で。

足場にしていた岩場が、地面ごと崩れた。

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/10(火) 23:21:02.93 ID:3YX/z8oz0
〜2日目〜


気がつくと、私は深い洞窟の底で倒れていた。

周囲は瓦礫だらけだ。

天井の一部は崩れて、そこから光が差し込んでいる。


「……そっか、私、落盤に巻き込まれて」


身体が少し痛いが、何とか起き上がれるようだ。


手を眺め、指を動かしてみる。

両目の視力がある事を確認し、周囲の匂いを嗅いでみる。


四肢や五感に異常はないようだ。

出血もない。

あの高さから落ちたにしては、運がいい。


幸い、荷物も近くに落ちていた。

私は中身を確認して見る。


「弓と矢が見当たらないな、瓦礫の下敷きになっちゃったか」

「油を入れた革袋は破れてない、火打石その他の携帯品も無事みたい」

「よし、取りあえず、ここから出て村に戻る算段を……」


状況を整理している最中、妙に音が聞こえた。


ぐちゃり、ぐちゃり。


その音は、光が差し込まない洞窟の奥から聞こえてくる。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/10(火) 23:32:00.63 ID:3YX/z8oz0
最初に連想したのは、動物が出す咀嚼音。

大型の肉食獣が他の動物を食べている?

例えば熊とか。


いや、それにしては音の粘度が高い。

骨をかみ砕く音が聞こえない。



なら……。



私は、瓦礫の隙間に落ちていた木の枝を手に取った。

革袋の油を垂らし、火打石で着火させる。

簡易の松明。

大抵の動物は、コレを使えば追い払えるはず。


私は、足音を立てなよう、そっと前に進み。

暗闇を照らしてみた。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/10(火) 23:47:24.36 ID:3YX/z8oz0
そこには予想していなかった物があった。

卵だ。

半透明の卵が数個、蠢いていた。

ぐじゅる、ぐじゅると音を出し、内部のコアを震わせている。


「……これ、スライムの卵?」

「けど、こんな大きいの、見た事無いんだけど……」


通常、スライムの卵は鶏の卵と同程度の大きさだ。

けど、この卵は私が抱えようとしても抱えられないくらいの大きさがある。

突然変異だろうか。



私は良く幼馴染から「アンタって狩人の癖にボーっとしてて危機感ないわよね」と言われている。

まあ、幼馴染が言うのだからきっとそうなのだろう。

けど、この状況には流石に危機感を覚える。

何とか、何とかこのスライム達が孵化する前に、この洞窟から抜け出さなければならない。


「よし、頑張ろう……」


そう呟いた直後、スライムの卵がパカリと割れた。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/11(水) 00:03:25.32 ID:dlPzWnRn0
卵の中から、ぐにゃりとした青いスライムが転がり出てくる。

大きい。

多分、捕まったら私の身体の半分を覆われるくらいには大きい。

私は即座に壁際まで後ずさる。


さて、どうしよう。

今考えられる選択肢は3つ。


(1)松明で攻撃する

(2)様子を見る

(3)逃げる


松明で攻撃しても、あの大きさのスライムを倒せるか微妙だ。

もし暴れ出したら、その衝撃で他の卵も孵化するかもしれない。

かといって逃げるというのも、難しい。

というのも、松明の光で見た限り、この洞窟は袋小路なのだ。

きっと、この袋小路への入口は、落盤の瓦礫で塞がれてしまったのだろう。

つまり。


「……もう少し、様子を見ようか」


選択肢は、一つしか残されていなかった。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/11(水) 00:20:58.54 ID:dlPzWnRn0
幸い、生まれたばかりのスライムはその場を動かなかった。

恐らく、卵から出たばかりで寝ぼけているのだろう。

しかし、そのうちお腹がすいて捕食活動に移るはずだ。


その前に、準備を整えなければならない。


私は瓦礫の中を調べ始めた。

恐らく、多分、この辺に落ちているはずなのだ。

幾つかの瓦礫をどかすが、見つからない。

頭の中で幼馴染の「アンタってホント狩りの時以外はトロいわよね」という声が聞こえる。

うん、頑張ってはいるんだけどねー。



そうこうしているうちに、後ろの方で「パカリ」と音がする。

振り向くと、更に他の卵も割れていて、スライムが増えていた。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 02:27:31.47 ID:LPQdVc2Lo
ふむ
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 05:53:13.23 ID:HeIVgEco0
おつきたい
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/11(水) 23:49:15.87 ID:dlPzWnRn0
見なかった事にして、瓦礫をどかす手を早める。

ガラガラガラ、ゴロゴロゴロ。

音がスライム達を刺激するかもしれないが、ここまで来ると気にはしていられない。

そうこうしているうちに、大きな瓦礫の影で、やっと目的の物を見つける事が出来た。


幾つかは潰れているが、まあ、無いよりはいいだろう。


振り向いて、スライム達を観察して見る。

最初に生まれた青いスライムの他に、3体のスライムがプルプルと震えている。


私は、そのスライム達にさっき見つけたモノ。

狩りで手に入れた兎と魚を放り投げた。


「ほうら、ご飯だよ、あげるから私は食べないでね」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 00:07:09.82 ID:4OdDIqEm0
ありゃ刺激しちゃったのか嫌な予感
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/12(木) 00:08:31.09 ID:goNpldYG0
スライム達の震えが、止まった。

自分達の前に落ちた兎と魚の様子を、伺っているようだ。


良く見るとスライム達はそれぞれ色が違っている。

青いスライム。

赤いスライム。

緑のスライム。

黒いスライム。


その中の、青いスライムがピクリと動き、兎の死体に近づく。

じゅるり、じゅるりと死体を取り込み始める。

それに倣った赤と緑のスライム達も、残った兎と魚を食べ始めた。


13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/12(木) 00:26:44.97 ID:goNpldYG0
動物や魔物が人を襲うのには、大体3つの理由がある。


お腹が空いている場合。

自分のテリトリーや同族を守る場合。

手負いの場合。


生まれたばかりのスライム達は、恐らくテリトリーを守るという概念が薄いだろう。

同じ理由で、手負いで凶暴になっている可能性も無いと判断できる。

という事は、お腹さえ満たしてあげれば、私が襲われる可能性はある程度減らす事が出来る……はず。

多分。


「……まあ、たったあれだけの肉で満足するかは微妙だけど」

「もし駄目だったら……戦うしかないかなあ」


手元にある武器は、解体用のナイフだけ。

木の枝は既に燃え尽きて、革袋に残った油も、それほど多くはない。

もし戦闘になれば、恐らく負けるだろう。

ちゃんと死ねればいいが、もしかしたら生きたまま捕食される事になるかもしれない。


「……誕生日までに村に戻らないと、幼馴染は怒るかなあ」

「怒るだろうなあ……」


洞窟の天井を見上げる。

落盤で開いた穴から見える外の様子は、薄暗い。

多分、日が暮れてきたのだろう。


外に逃げ出す為の方法は、今の所無い。

無いのだ。




14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/12(木) 01:00:37.94 ID:goNpldYG0
〜3日目〜


「一部の鳥はね、孵化した直後に見た動物を親だと思うの」

「その辺を利用すれば、家畜を殖やすことが可能よ」

「勿論、ちゃんとご飯をあげて、一緒に寝て、声をかけてあげる必要があるけどね」

「そうしないと、直ぐに野生に戻っちゃうの」

「という訳だから、アンタ、ちょっと水鳥を何匹か用意してくれない?」

「出来れば雄と雌両方いてくれると助かるわ」

「おねがいね」


うん、判った。

そういうのは得意だから、任せて。

まかせて。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/12(木) 01:18:57.35 ID:goNpldYG0
「まか……せ……」

「……」

「……あれ、私いつの間にか寝てたのか」

「ううん、久しぶりに子供の頃の夢を見たなあ……」

「……あの後、私は弓矢で水鳥を狩りまくって」

「ちゃんと内臓も抜いて調理できるようにしてから持って行ったら、幼馴染に怒られて……」

「当時は、何で怒られてるのか判らなかったな」

「今の私なら、判るけど」


私の視界の中、3体のスライムが思い思いに活動している。

壁によじ登ろうとして落下したり、瓦礫の隙間に身体をねじ込もうとしたり、地面に広がったり。

今の所、スライム達が私に襲い掛かってくる気配はない。

というか。


「多分、恐らく、幼馴染が言ってたような状況になってるんだろうなあ……」


16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 01:59:01.31 ID:gYubAcmro

どう85日目に繋がるのか気になるねぇ

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 02:21:12.45 ID:4OdDIqEm0
四匹目の黒いスライムが全く描写されないのが不気味
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 02:52:05.48 ID:RbQLH1hm0

黒気になるよね
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 23:46:07.69 ID:1PVr5YgUo
うむ
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/17(火) 01:11:41.40 ID:XSxgOJpN0
瓦礫に潜り込もうとしている赤いスライムに、そっと近づいてみる。

特に私を危険視している様子はない。


そのまま通り過ぎて、床に広がっている緑色のスライムの傍に歩み寄る。

スライムはじゅるりと這って、私の足を避ける。


思い切って、壁に張り付いている青いスライムに指先を近づけてみる。

ピトリとした感触。

冷たい。

しかし、痛みは感じない。

指先が溶けている……という事もない。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/18(水) 12:04:51.04 ID:742pLXZDo
ほほう
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 13:38:46.65 ID:FLbrBElf0
「取り合えず、懐いてくれてる……と考えていいのかな」


幼馴染が言っていた「刷り込み」と呼ばれる現象だろう。

まあ、それが何時まで続くかは判らないのだけれども。

きっと、このスライム達だってお腹が空けば思い出すだろう。

自分達の本能を。

誰だってそれは逆らえないのだ。


つまり、私がやるべきことは二つ。


一つ目は、洞窟からの脱出方法を探すこと、

二つ目は、スライム達に食料を与え続けること。


「村の人たちが助けに来てくれたら楽なんだけど……」

「まあ、多分当てには出来ないかな、私は嫌われているし」


足元で、緑色のスライムがピィと鳴いた。
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 13:54:27.31 ID:FLbrBElf0
〜6日目〜


ここ数日、洞窟の中を調査してみた。

やはり天井部以外に外へ通じる経路は無い。

私と共に落ちてきた瓦礫の隙間から僅かな風を感じる事が出来るので、元々あった出入口は落盤で埋まってしまったのだろう。

あまり良くない状況だ。


けれど、悪くない情報もある。

洞窟の奥に、水溜りを発見したのだ。

それほど広くは無いが、深さはかなりある。

恐らく、この下に地底湖か何かあるのだろう。

これで飲み水の心配はしなくても済む。


「……そっか、もしかしたら魚とかも住んでるかも」

「洞窟にしか生息しない魚も居るって話しだし……後で釣り糸垂らしてみようっと」


ピィピィと声がする。

気がつくと、私の周りにスライム達が集まってきていた。

どうやらお腹が空いたようだ。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 14:34:09.83 ID:FLbrBElf0
スライム達に食われない為にも、早急に狩りをしなくてはならない。

私は小さな瓦礫を幾つか拾い、洞窟の奥を見渡した。


見える範囲に何匹かいる。

夜行性なので今は眠っているようだが、連中は危機に対する反応速度がかなり速い。

弓があれば別だが、投石で狩るにはやりにくい相手だ。

それに何より美味しくない。

だからあまり気は進まないのだけど。


「まあ、背に腹は代えられないからね」


強く、短く指笛を吹く。

音は洞窟内部で反響し、連中を刺激する。

キィキィと鳴きながら飛び交う連中を、私の飛礫が捉えた。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 14:56:49.86 ID:FLbrBElf0
ジュルルルと肉を吸収する音がする。

私が狩った蝙蝠達は、スライム達にとってご馳走のようだ。

ここ数日、毎日与えてるけど、骨も残さず溶かしてくれる。

その様子を見ていると、何だか不思議な気分になってくる。



基本的に、私は自分が生きるのに必要な分しか狩りをしない。

時々、幼馴染に獲物を分けてあげる程度だ。

その場合だって、幼馴染は何らかの対価を私に渡してくれる。

まあ、それらは私にあまり必要ない髪飾りとか洋服だったりするんだけど。

それでも対価を受け取っているのには変わりないのだ。



今のように、何の対価もなく獲物を分けてあげることは、無かったと思う。

何だか奇妙な感じだ。



「狩りをした後の充実感とも違うし……」

「んんんー……なんだこの感覚」

「……戻ったら、幼馴染に聞いてみよっと」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/28(土) 15:24:44.51 ID:Ko4E+xCxo
それは母性愛ッ!
スライムかわいいな、今んとこは
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 16:03:09.53 ID:FLbrBElf0
〜10日目〜


晴れて晴れて曇って雨が降って雨が降って晴れて晴れて晴れて雨が降った。

脱出経路は見つからない。

一応、瓦礫を少しずつどかしてみたけど、流石にこれ以上は無理かな。

腕力が足りない。

長期的計画を立てて筋肉をつけるという手もあるけど、栄養源が少ないからそれも難しいと思う。



この数日、蝙蝠の肉を餌にして水溜りに釣り糸を垂らしてみた。

釣果は1匹。

半透明な目の無い魚だったが、捌いて炙って食べてみた。


「……うん、まあ、蝙蝠よりは美味しいかな」


青いスライムが物欲しそうな感じでピピィと鳴いた。

蝙蝠ばかりで飽きてきたのかもしれない。

次に魚がつれたら、このスライムに分けてあげよう。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 16:14:31.65 ID:FLbrBElf0
〜12日目〜


起きてから、何だか寒気が止まない。

体調には気をつけているつもりだったけど、如何せんココには身体を温める物が少ない。

私が身につけていた毛皮くらいだ。

栄養が足りないのも原因の一つなのだろうけど。



「火を起こせれば暖を取れるけど、もう油も少ないからなあ……」



取り合えず今日の分のスライム達のご飯の食事を私で食べられて。

狩りを蝙蝠で魚が消化されて。



「……あれ」



違和感。

今、私は何を考えてたんだっけ。



視界が急激に狭まる。

これは、いけない。

駄目だ。

意識を。



「おかしい……な……森でなら、何日野営しようと……こんな事は……なかったのに……」



そう考えたのを最後に、私の記憶は途切れた。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 16:30:16.18 ID:FLbrBElf0
そう、私は森では無敵。

いや、流石に無敵は言いすぎか。

少なくとも、森でならどんな劣悪な環境でも適応できた。

けど、森以外では全然駄目だった。



例えば、ごく短い期間だったけど、村で暮らしたことがある。

その時も、今回みたいに体調を悪くさせた。

そして幼馴染に看病された。



「ぷぷぷぷ、アンタ、どうして寝込んでるの?」

「バカは風邪を引かないって言葉知らないの?」

「もしかして風邪を引くことで自分がバカじゃないって事を主張したかったの?」

「そうだとしたら傑作だわ!ぷーくすすすす!」



ううん、アレは本当に看病だったのだろうか。

単に笑いに来ていただけのような気もする。

けど、いやな気分ではなかった。

ちゃんと食べやすくて暖かい料理を置いていってくれたし。



テーブルの上に置きっぱなしで帰っちゃったから這って食べに行かないといけなかったけど。



食べた時は、もう冷めかけていたっけ。

けど、その暖かさが、とても心地よかった。

そんな記憶がある。



そんな記憶が……。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 16:44:56.28 ID:FLbrBElf0
ふと目を開けると、目の前に赤いスライムがいた。

ぐじゅる、ぐじゅると蠢いている。



「……ああ」



私の身体は、赤いスライムに半分以上覆われていた。

きっと、お腹が空いてしまったのだろう。

私がどれくらい意識を失っていたのかは判らないが、少なくとも1日以上は食事をしていなかっただろうから。

だから、赤いスライムが我慢できなくなっても、仕方ないように思えた。



出来れば抵抗したいけど、私の意識はまだ朦朧としている。

痛みは、感じない。

ただ、むず痒さと熱さだけがある。



死ぬ事に対して、怖さは感じない。

けど。



「……ごめんね」

「誕生日、間に合いそうにないや……」



彼女に対する申し訳なさだけがあった。



赤いスライムが、私の顔に迫ってくる。

私はそれを、目を瞑って受け入れた。
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