P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL3

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207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:34:34.72 ID:AAdq5sgSO


『誰の意見を気にする必要なんてない。お前はお前の信じた道を行け』

『春香が選んだ道の先は、絶対に光が満ち溢れている。……少なくとも俺はそう信じてるんだ』



春香「プロデューサーさん……」



『さあ、みんなが待ってるぞ』


『「正義よりも正しいことよりも大切なもの」は、今お前と共にある!』




春香「………」



春香「…………はいっ!」

208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:35:49.12 ID:AAdq5sgSO

キラーン!


クルーヤ「!」

クルーヤ(……ハルカのクリスタルが光って……)

クルーヤ(……そうか、これは恐らく彼の仕業だな)

クルーヤ(彼は……)




春香「ううっ……!」ヨロッ

春香「…………はぁ、はぁ……!」ザッ



クルーヤ(……まるで、ハルカたちの守護神のようだ……)

クルーヤ(彼がいる限り、ハルカたちは何度でも立ち上がる……)

クルーヤ(やれやれ……まったく、さすがは未来のハルカの旦那様だね)




クルーヤ「……流石にしぶといね。まだ諦めないのか」



春香「………」

春香「私、ようやくわかったんです」



クルーヤ「ボクの言っていることをようやく理解してくれたのかい?」

クルーヤ「ならば、コトリさんを倒してくれるね?」



春香「はい、倒します。そのためにみんなで頑張ってここまで来ましたから」



春香「……けど、私たちは小鳥さんを救います。……絶対にっ!」

…ザッ



クルーヤ「コトリさんを倒し、救う……」

クルーヤ「そんなことは不可能だ」



春香「不可能なんかじゃありません。きっとできます! 私たちなら!」



クルーヤ「………」



春香「………」



クルーヤ「……君が折れるのは、どうやらもう期待できないみたいだね」



春香「…………はい」

209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:38:48.66 ID:AAdq5sgSO

春香「ひとつ、お父さんに伝えたいことがあるんです」



クルーヤ「……なんだい?」 
 


春香「今まで、ありがとうございました。私、お父さんと出会えて本当に良かったです!」ニコッ



クルーヤ「!」



クルーヤ「……そんな手には乗らない。ボクは心を揺さぶられたくらいで戦意を失ったりはしないさ」チャキッ



春香「そ、そんなつもりはありませんよぅ!」



春香「……ただ、最後にどうしてもそれだけは伝えたかっただけですから」チャキッ

春香「……!」ゴゴゴゴ



クルーヤ「来るか……!」



春香(私の聖光爆裂破はさっきお父さんに負けちゃった)

春香(でも、それならそれ以上に威力を引き上げればいい)

春香(お父さん。お父さんはずっと私の味方でいてくれたんですね)

210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:40:52.18 ID:AAdq5sgSO

春香(聖光爆裂破の威力を引き上げるには……)

春香(奥義として完璧なものにするには……)

春香(そのために必要なものは……)




『それは、明確な意思。決して折れることのない心』





春香「…………誰にも負けないくらい……」




春香「……強い、想いッ……!」

ゴオオオオオオオオオッ…!!





クルーヤ「……!」

クルーヤ(かつてない剣気っ……! これがハルカの……)

クルーヤ「……!」ゴゴゴゴ




春香「私の想いを……全部この剣に注ぎ込みますっ……!」



クルーヤ「来い、ハルカ……!」




春香「……天の願いを胸に刻んで……」



クルーヤ「……心頭滅却……」



春香「聖光……!」



クルーヤ「……爆裂破ッ!!」



キラキラキラキラ…!


ズドドドオオオオオオオオンッ…!!!


211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:46:19.02 ID:AAdq5sgSO


春香「………」グッタリ





クルーヤ「く……」ガクッ

クルーヤ「はぁ、はぁ……」



クルーヤ「…………よく頑張ったね、ハルカ」



クルーヤ「それでいいんだよ」



春香「………」




クルーヤ「周りの何にも影響されずに自分を貫くことは、時にわがままと言われる。けれど、大切なものはいつでも自分の中にあるものなんだ」

クルーヤ「そしてそれは、一般的に正義と言われるものよりも、正しいとされている考え方よりも、はっきりとした道標になる」

クルーヤ「だからハルカ。君は自分の道を行き、自分を貫き通しなさい」

クルーヤ(ボクが出来なかったことを、君が……)


グニャ…


クルーヤ「空間が歪みはじめた……。もう魔法すら維持できなくなってるのか……」

クルーヤ「……時間みたいだね。ボクはもうここを去らなければならない」

クルーヤ「今度こそ正真正銘、さよならだ」


春香「ぅ…………」



クルーヤ「………」

212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:48:07.49 ID:AAdq5sgSO

クルーヤ「……最後に、一つだけ忠告しておこう」

クルーヤ「君はコトリさんを救いたいと言ったけれど、おそらくそれは君たちだけの力では成し遂げられないだろう」

クルーヤ「彼女の優しい心を救いたいのならば……」




春香「……うぅ……」ピクッ



クルーヤ「………」

クルーヤ「……いや、やっぱりそれは君が自分で考えて答えを見つけるんだ」

クルーヤ「お父さんからの、最後の宿題だよ」ニコッ



クルーヤ「……悠久の時を経て、ここに時空を超えよ。我にその扉を開け……!」



クルーヤ「…… デジョン!」バッ



ーーシュンッ



クルーヤ「…………さよなら、ハルカ。愛しい娘」




「……親子の別れは済んだようだな」




クルーヤ「!」



バハムート「……ククッ!」



クルーヤ「………………バハムートか」

213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:50:23.89 ID:AAdq5sgSO

クルーヤ「やれやれ、すっかり油断していたよ」

クルーヤ「ボクたちの戦いをずっと見ていたのかい?」

バハムート「冥府への道中退屈すると思ったのでな。お前の用事が終わるまで待っていたのだ」

クルーヤ「そうか……そういえば君も死んだんだったね」

クルーヤ「ボクも長いこと現世に留まり過ぎた。きっと長い輪廻が待っているんだろうなぁ……」

バハムート「如何に我でも六道輪廻に干渉することは出来ぬ。次に人間界へ生を受けるのは、百年先か、或いは千年先か……」

クルーヤ「はぁ…………。まあ、仕方ないか」



バハムート「しかし、とんだ三文芝居だったな」



クルーヤ「……何がだい?」

バハムート「世界を守るのが自分の信念、か。……クククッ!」

バハムート「惚けているつもりだろうが敢えて言わせてもらう。それはお前の信念などではない」



バハムート「聖騎士となった者が等しく背負う宿命だ」



クルーヤ「………」

214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:52:31.47 ID:AAdq5sgSO

バハムート「クルーヤよ。お前がこれまで世界を守り続けてきたのは、それが自分の意思を差し置いてでも聖騎士として成すべきことであったからだ」

バハムート「だからお前は、生前も死後も、他の全てを棄てて世界を守るため行動してきた」

バハムート「……そう、家族との時間すらも棄ててな」

クルーヤ「………」

バハムート「お前の心は揺れ動いていた。先程の戦いの最中の話ではない。それ以前……お前が生きていた頃、聖騎士として活躍し始めた時から既にだ」

バハムート「もっと正確に言えば、お前の心に迷いが生じたのはお前が家族を持ってからなのであろう。今ならば我にもそれは理解できる」

バハムート「お前は迷っていたのだ。家族への愛と、聖騎士としての宿命との狭間で」

クルーヤ「………」

バハムート「やがてお前は、自分の心を騙すことを思いついた。『世界を救うのは自分の信念だ。自分が望んだことだから、家族やその他のことを犠牲にするのは仕方がないことなのだ』とな」

バハムート「だが、その様に気持ちを誤魔化し続けてきたお前の剣が、純粋で真っ直ぐな想いの剣に勝てるはずもない」

バハムート「お前とハルカの実力の差以前に、戦いの勝敗は火を見るよりも明らかだったというわけだ」

クルーヤ「………」

215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:55:08.57 ID:AAdq5sgSO

バハムート「あの娘も……ハルカもお前と同様に聖騎士だ。世界を背負う義務はあっても悪であるコトリを救って良い道理は無い」

バハムート「世界に破滅を持たらさんとする悪を助けるつもりならば、即ちそれは世界を脅かすということだ。確かにハルカたちは世界の敵というお前の表現は間違っていない」

バハムート「だが、お前は最初から理解していた。ハルカには勝てぬということを」

バハムート「お前は最初から敗けるつもりで、ハルカの聖光爆裂破を完成させるために……ハルカの助けとなるためだけに戦いを挑んだのだ」

バハムート「ハルカたちが世界の敵ならば、それを助けたお前もまた世界の敵、ということになろう」



クルーヤ「………」

クルーヤ「…………ふぅ」

クルーヤ「悔しいけど、概ね君の言うとおりだ。でも一つだけ違うところがある」

クルーヤ「ボクは別に負けるつもりでハルカに戦いを挑んだわけじゃない。もちろんハルカを倒すつもりだった」

バハムート「……ほう?」

クルーヤ「でも……」

クルーヤ「最後に彼女がボクに剣を向けた時、お礼を言って笑ったんだ」

クルーヤ「ボクにはその笑顔がとても哀しく見えてしまって……。『ハルカはどんな風に笑っていたんだっけ』って一瞬考えた」

クルーヤ「あの子の心からの笑顔を思い出した時には、もうボクにはハルカを倒そうとする意思も、世界のためにコトリさんを眠りにつかせようという想いも残っていなかった」

クルーヤ「やっぱりハルカには心から笑っていてほしい、ハルカの願いを叶えてあげたいって、そう思ってしまった」

クルーヤ「その瞬間にボクは聖騎士としての宿命を……今までずっと貫いてきたものを、完全に手放したんだ……」

バハムート「………」

クルーヤ「前言を撤回しなきゃいけないね。ハルカたちは世界の敵なんかじゃない」

クルーヤ「だって彼女たちは、世界の人々だけじゃなく、世界そのものにすら愛されているんだからさ」

バハムート「…………フン、随分と難儀な親子愛よな」

216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:58:15.82 ID:AAdq5sgSO

クルーヤ「ま、でも、悔しいからボクも言わせてもらうよ」

クルーヤ「バハムート、君は一人の女性への愛を貫いたために神である資格を失った。その身勝手な行動は幻獣という一種族を統べる者としてどうなのかな?」

クルーヤ「ボクと同様、君の行動もまた守られるべき摂理というものを無視した行為だ」

バハムート「……何故それを知っている」

クルーヤ「ふふん、ボクの精神波を見くびらないでもらいたいね。君とタカネちゃんのラブラブな戦いは全てお見通しさっ」

バハムート「フン……出歯亀はお互い様、ということか」

バハムート「だが、『我が儘と言われようと大切なものは己の中に在るもの』なのであろう?」

バハムート「先刻お前が独りごちた言葉だぞ」

クルーヤ「うっ……それは……」

バハムート「我は躰の底から湧き上がる衝動に身を委ねただけだ」

バハムート「後悔も罪悪感も無い。在るのは、愛という至上の喜びを知ることができた感謝のみだ」

クルーヤ「……ちぇっ、いい顔ですっかり開き直っちゃって」

217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 18:03:08.83 ID:AAdq5sgSO

クルーヤ「……ねえ、バハムート。変なこと聞くけどいいかな?」

バハムート「……なんだ」

クルーヤ「彼女たちは一体何者なんだろう?」

バハムート「………」

クルーヤ「この世界のほとんど全ての人が彼女たちを支持してるって言ってもいいくらい、今や世界は彼女たちの味方だ。おそらく、魔物でさえも」

クルーヤ「こんなにも他者を魅了する人間には、ボクは今まで出会ったことがない」

クルーヤ「自分の娘なのに変な話なんだけどさ」

バハムート「………」

クルーヤ「本当に、不思議な娘たちだった……」

218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 18:05:06.53 ID:AAdq5sgSO

バハムート「説明は出来ぬ。が、その問いの答えならば我らは既に持ち合わせているのかもしれぬぞ?」

クルーヤ「えっ、そうなのかい?」

バハムート「彼女たちが他者を惹き付ける理由。それは……」

バハムート「彼女たちが、あいどるだからだ」

クルーヤ「!」

バハムート「以前、タカネから聞いたことがある。あいどるとはどういった生態を持つ生物なのかを」

クルーヤ「それで、あいどるってどんな生き物なんだい?」

バハムート「分からぬ」

クルーヤ「…………は?」

バハムート「タカネが話してくれた内容は、我には何一つ理解が及ばなかったのだ」

バハムート「だが、短き時間をタカネと共に過ごし、我は思い至った。あいどるとはつまり、愛すべき存在なのだ、と」

クルーヤ「それって答えになってるのかな……」

バハムート「……さてな」

バハムート「只一つはっきりとしているのは、我もお前もあいどるを愛した、という事実だけだ……」

クルーヤ「うーん、結局何一つわかっていないような……」



バハムート「さて、そろそろ逝くぞ。最早我らは舞台を降りたのだ。これ以上現世に未練を残すのは無粋というものだ」

バハムート「世界の行く末も、コトリのことも……全てはあいどるたち次第であろう」

クルーヤ「……ああ、そうだね」



クルーヤ(ハルカ、リツコ……。キミたちがコトリさんを救えること、地獄の底から願っているよ……)

219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/22(水) 00:53:05.73 ID:riGmT2Lx0
続きはまだかなー
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