【モバマス】龍崎薫「せんせぇはやさしいのに……」

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 01:05:44.89 ID:oa2CQTedO

ちひろ「(と言うか、私がやっていけるのか不安だわ。少しくらい、話してくれればいいのに)」ジー


P「千川さん、どうしました?」


ちひろ「い、いえっ。何でもありません」


P「そうですか」


ちひろ「(そうですかって……もうちょっと何かあるでしょう。具合悪いんですか、とか!)」


P「………」カタカタ


ちひろ「(プロデューサーさんにそんなつもりはないのでしょうけど、この沈黙が非常に辛いんです……)」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 01:10:45.55 ID:oa2CQTedO

P「お先に失礼します」


ちひろ「は、はい(仕事に関しては言うことなし、とっても真面目で誠実だ)」


ちひろ「(あまり会話がないとは言え、それを知っているからアイドルの子も私も信頼している)」


ちひろ「(けれど、どんな人なのか掴めない。分かっているのは、既婚者であることくらいだ……)」


P「………」コツコツ


ちひろ「あのっ!」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 01:11:45.87 ID:oa2CQTedO

P「何か?」


ちひろ「えっと……」タジ


P「ああ、先程の資料ですか?あれでしたらーー」


ちひろ「いえ、そうではなくてですね。そのぉ」


P「?」


ちひろ「……お話、しませんか?」


P「それは業務に関係のあることですか?」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 01:15:07.85 ID:oa2CQTedO

ちひろ「あります(主に私の胃が保たない)」


P「そうですか、分かりました。それで、お話とは?」


ちひろ「その、一部アイドルがプロデューサーさんを……怖がっているみたいで」


P「具体的にどのように怖がられているのですか?」


ちひろ「近付き難い、とかですかね」


P「それはそうでしょう。家族や友人ではないのですから」


ちひろ「中にはプロデューサーさんと仲良くなりたい子もいるんですよ?」


ちひろ「それに、顔を合わすたびに緊張していては、お仕事にも支障が出る恐れがあります」

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 01:23:10.47 ID:oa2CQTedO

P「……なるほど」


ちひろ「はい。ですから、もう少し打ち解けた方がいいのではないか、と思いまして」


P「打ち解ける、ですか……」


P「そうは言っても、多感な年頃の女性が多いですから、難しいですね……」


ちひろ「(確かに)では、大人の皆さんとはどうです?」


P「色々ありまして、最近は上手く行ってません」


ちひろ「えっ!? 何があったんですか?」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 01:25:10.27 ID:oa2CQTedO

P「千川さんの体重は?」


ちひろ「えっ、何ですか急に!」


P「と言うような、業務とは全く関係のないことを聞かれたので以前より距離を取りました」


ちひろ「な、なるほど。私生活のことを聞かれた、とかですか?」


P「ええ、まあ。そのような感じです。千川さんだって嫌でしょう?」


ちひろ「それはそうですよ。いきなり体重を聞かれたら誰だって嫌です」


P「でしょう? それで注意したのですが酔っている方から、しつこく聞かれまして」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 01:26:40.27 ID:oa2CQTedO

ちひろ「(あまり聞きたくないけど)どうなったんですか?」


P「詮索するな」


ちひろ「」ビクッ


P「と、少しばかり怒鳴ってしまいました」


ちひろ「(怒鳴ると言うより冷淡な声。でも、プロデューサーさんが怒るなんて相当よね)」


ちひろ「(前に薫ちゃんがパソコン弄っても怒らなかったし、疲れて眠った仁奈ちゃんを仮眠室まで抱っこしてあげたり)」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 01:27:41.87 ID:oa2CQTedO

P「あの、千川さん?」


ちひろ「あっ、すいません。差し支えなければ、どんなことを?」


P「妻のことで、ちょっと」


ちひろ「それはその、あまり深くは……」


P「ええ、聞かないでくれると助かります」


ちひろ「(プロデューサーさんの奥さんか、確かに気になる……)」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 01:32:28.93 ID:i1d8N3Wuo
他になかなかない雰囲気
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 01:34:02.61 ID:TCqGoqdBo
ついに登場したか既婚P
期待
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/12(日) 01:46:42.17 ID:KLdKqAcu0
果たしてその奥さんはご存命かな?
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 01:47:55.68 ID:pSNDhMMGo
その「妻」とは、あなたの想像上の存在に過ぎないのではないでしょうか
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 01:57:47.75 ID:oa2CQTedO

ちひろ「(既婚者と言ってもまだ若い、大人組は興味津々のはず)」


ちひろ「(かなり酔っていたらしいし、夜のことを聞かれたとか? それなら怒ってもーーー)」


ガチャ


東郷あい「……おや? 珍しい光景だね」


ちひろ「あいさん、どうしたんです?」


あい「彼に用があってね」チラッ


P「………何か」


あい「……先日は、申し訳なかった」ペコリ


P「貴方が僕に対して謝罪するようなことをした覚えはありません。謝罪とは謝罪すべきことをした者がするべきでは?」


あい「それが出来ないようだから私が代わりに謝罪しているんだ……あの場には私もいたからね」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 02:03:00.50 ID:oa2CQTedO

P「謝罪出来ない? それはどういう?」


あい「あまりにも軽率な言動をしてしまったものだから、合わす顔がないようなんだ」


P「だから代わりに謝れと?」


あい「それは違う。あの場にいながら止めなかった私も同罪だ」


P「…………」


あい「……許しては、くれないだろうか?」ペコリ


P「東郷さん、頭を上げてください。僕も少しばかり意固地になっていました……申し訳ありません」

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 02:07:54.95 ID:YG7brttdo
期待
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 02:08:11.13 ID:oa2CQTedO

あい「君が謝ることはない……その、出来ればだが、彼女達と話して欲しい」


あい「よほど後悔しているのか、あの日から飲酒量が増えているんだよ」


ちひろ「(うわぁ、駄目大人じゃないですか……)」


あい「酒に逃げずに謝った方が良いと言っているんだが、かなり堪えている」


あい「悪いのは彼女達なんだが、見ている側からすると気の毒でね……」


P「……分かりました。後日、話してみます。では、お先に失礼します」


ガチャ パタン


あい「………はぁ」


ちひろ「あの、何があったんですか?」


あい「……数日前、早苗さんや楓さんが彼の妻について聞いたんだよ」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 02:18:22.54 ID:oa2CQTedO

ちひろ「それは先程プロデューサーさんから聞きました。そこから何が?」


あい「これから話すことは口外しないと約束してくれるかい? 絶対に、だ」


ちひろ「わ、分かりました」


あい「……彼は、妻を亡くしている」


ちひろ「えっ!? だって指輪をして……」


あい「そうだね……」


あい「それでも指輪をしているのは、きっと何かを抱えているからだろう。誓いのようなものかもしれない」


あい「あの時は、私も好奇心に負けてしまってね。止めるどころか聞き耳を立てていたよ」
 

ちひろ「誓い、ですか……」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 02:24:53.47 ID:oa2CQTedO

あい「私の想像だけどね。ともかく、彼女達はそれを茶化してしまったんだよ」


あい「彼女達にそんなつもりはなかっただろうが、彼はそう受け取ったんだろう」


ちひろ「どういうことです?」


あい「妻のことをしつこく聞かれ、彼は苦笑しながら、妻は亡くなったと言った」


あい「その時はまだ怒ってなどいなかった。堪えていただけかもしれないが」


ちひろ「………」


あい「当然、皆は口を噤んだよ。そこで終わっておけば良かったんだが……」


ちひろ「まだ何か?」


あい「酔っていたせいか、変わらぬ愛の証だとか素敵だとか、騒ぎ出してしまってね」


ちひろ「プロデューサーさんはそれを茶化されたと?」


あい「素面なら問題なかったかもしれないが、泥酔した人間に言われれば誰しもがそう思うさ」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 02:36:41.91 ID:SqtyeWdJO
酒は怖いなww
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/12(日) 02:37:55.89 ID:KLdKqAcu0
クズすぎる…
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 02:39:30.45 ID:S06ghLt6o
あーいけませんなこれは
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 02:43:34.87 ID:YG7brttdo
沈黙に耐えられず素敵ねーとか言い出して酒故に寄ってたかってノッちゃったんだろうな
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 02:49:11.73 ID:oa2CQTedO

ちひろ「それで、怒ったんですね」


あい「怒ったと言うより、私達に幻滅したと言った様子だったよ。あの目は流石に堪えた……」


あい「そして皆が押し黙る中、冷ややかな声で「これ以上、干渉するな」とだけ言い残して店を出た」


ちひろ「……そうだったんですか」


あい「本来は親睦を深める為のものだったんだが……彼には本当に申し訳ないことをしたよ」


ちひろ「き、きっと許してくれますよ! 根は優しい人ですから!」


あい「……果たしてそうだろうか」ポツリ


ちひろ「えっ?」


あい「いや、何でもない。私もそろそろ失礼するよ」


ガチャ パタン


ちひろ「あまり長引かないといいけど……プロデューサーさんは大人ですし、きっと大丈夫よね。さて、仕事仕事」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 03:07:43.67 ID:oa2CQTedO
また明日書きます。胸糞展開はないと思います。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 03:11:51.13 ID:v9KfCPqZO
その優しさを向けるべき相手はもういない
失った相手に向けていた分の愛情は相手がいなくなったからと言って戻りはしないんだよなぁ…

余計な事ごめん
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 07:04:44.39 ID:dSLQiXcTo
おつ
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 11:22:10.56 ID:oa2CQTedO

数日後

P「もしもし。はい、はい」


ちひろ「(内容が内容だけに、例の数名とは元通りとまでは行きませんでした)」


ちひろ「(そもそも、それほど仲が良かったわけでもないので元通りも何もないですが……)」


P「ええ、ええ。分かりました。では、失礼します」ピッ


ちひろ「(プロデューサーさんはいつも通りだ)」


ちひろ「(例の方々とどんな会話をしたのかは分からないですが、事務所では何事もなかったかのように接しています)」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 11:26:42.53 ID:oa2CQTedO

ちひろ「(ですが……)」


P「片桐さん」


早苗「な、なに?」


P「そろそろダンスレッスンの時間です。ライブも近いので体には気を付けて下さいね」


早苗「う、うん。ありがとう……じゃあ、行ってくるね」


ちひろ「(大人組の皆さんは、そうも行きませんでした)」チラッ


楓・瑞樹・美優・留美「…………」ズーン


ちひろ「(今でも気にしているようで、プロデューサーさんと顔を合わすたび申し訳なさそうにしています)」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 11:48:45.29 ID:XEYTZQK50
川島さんが率先して気使いすぎて空振りした感あるわね、わかるわ
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 12:25:23.56 ID:oa2CQTedO

ちひろ「(その様子を見た年長組の皆さんは、少々困惑しているようでした)」


凛「何日か前からあんな感じだけど、何かあったの?」ヒソヒソ


加蓮「飲み過ぎて怒られたとかじゃない?」


奈緒「いやいやいや、それだけで『ああ』はならないだろ」


凛「だよね。あれは絶対に何かあるよ」


加蓮「でもさ、ちひろさんも何も知らないって言ってたじゃん」


奈緒「……あんまり詮索しない方がいいのかもな。プロデューサーはいつも通りだし」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 12:27:50.77 ID:oa2CQTedO

凛「でも、気になるよね」


加蓮「と言うわけで奈緒、プロデューサーに聞いて来てよ」


奈緒「どういうわけだ!」


ちひろ「(と、このように、私から事情を説明するわけにもいかず、最近はこの調子です)」


ちひろ「(プロデューサーさんに悪い噂が立つようなことはありませんでしたが、空気が重いのです)」


ちひろ「(普段は元気いっぱいな年少組も、いつもと違う事務所の空気を察したのか、ここ最近は大人しい)」


ちひろ「(正直、胃が痛いです。誰か、この重苦しい雰囲気を変えて下さい)」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 13:04:54.42 ID:oa2CQTedO

P「……」ウーン


ちひろ「(この嫌な流れを変えて下さい。誰でも構いません。神でも、悪魔でも……)」


トテトテ

薫「ねえ、せんせぇ」


P「ん? 薫か、どうしたの?」


薫「……けんか、してるの?」


ちひろ「(か、薫ちゃん!その質問はーー)」


P「う〜ん……喧嘩した後、かな。僕もお姉さん達も反省してるんだ」


ちひろ「(あ、優しい声だ……)」


ちひろ「(それはそうか、相手は子供ですもんね。薫ちゃん、その調子で何とかしちゃって下さい。お願いします)」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 13:09:59.36 ID:oa2CQTedO

薫「じゃあ、仲直りしたの?」


P「勿論だよ。お姉さん達とはきちんとお話しして、お互いにごめんなさいしたからね」

薫「……でも、かなしそうだよ?」チラッ


楓・瑞樹・美優・留美「…………」ズーン


P「すぐには無理なんだ。大人の仲直りはちょっと難しいんだよ。時間が経てばーー」


薫「あくしゅ!」


P「えっ?」


薫「あくしゅすると、仲直り出来るよ?」ニコッ


ちひろ「(す、凄い! これは子供だからこそ為せる業。よしっ、これで何かが変わるはず!)」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 13:39:43.95 ID:oa2CQTedO

P「握手か……」


薫「そう、あくしゅ。学校だとあくしゅして仲直りするんだよ?」


P「……握手したら、お姉さん達と仲直り出来るかな? お姉さん達は、『これまで通り』にしてくれるかな?」


ちひろ「(それは一見して微笑ましいやり取り)」


ちひろ「(でも私には、プロとしてしっかりしろと釘を刺しているように聞こえました)」


ちひろ「(事情を知っているからか、いつまでも引き摺るなと言っているようにも……)」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 13:52:58.04 ID:bv2I45Gmo
薫を利用して釘刺しするP、やりますねえ!
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 14:13:46.35 ID:oa2CQTedO

ちひろ「(『これまで通り』に含まれた意味は、干渉するなと言うことでしょう)」


ちひろ「(プロデューサーさんは、この場で線引きをはっきりとさせたのです)」


薫「せんせぇ? どうしたの?


P「薫は物知りだなぁと思って感心してたんだ。仲直りの方法を教えてくれてありがとう」


ナデナデ


薫「えへへ」


P「じゃあ、仲直りしてくるよ」


ちひろ「(そう言って優しく微笑んだプロデューサーさんは、落ち込む彼女達と握手を交わしました)」


ちひろ「(私からみれば、それは仲直りなどではなく、プロデューサーさんからの無言の通告)」


ちひろ「(あくまで仕事上の間柄、踏み込んでくるなと、詮索するなと、念を押しているようにしか見えませんでした)」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 14:31:40.98 ID:KMDn8BtFo
こわい
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 14:37:45.89 ID:oa2CQTedO

夜 事務所


P「(よりによってブライダルモデルの依頼か)」


P「(出来ることなら彼女達に頼みたいところが、今の彼女達に頼むのは気が引けるな)」


ちひろ「どうしました? 珍しく悩んでいるようですが……」


P「実は人選に悩んでいまして」


ちひろ「人選? 新しいユニットですか?」


P「いえいえ、違いますよ。今日の昼間に電話があったでしょう?」


ちひろ「あ、仕事の依頼ですか?」


P「ええ、ブライダルモデルの頼みたい。人選はそちらで決めてくれ、とのことでした」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 14:41:09.99 ID:oa2CQTedO
>>39訂正
P「ええ、ブライダルモデルを頼みたい。人選はそちらに任せる、とのことでした」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 15:05:33.11 ID:oa2CQTedO

ちひろ「(な、何て間の悪い!)」


ちひろ「(でも、ここで反応しちゃいけない。何も知らないフリをしないと……)」


ちひろ「大人組に頼んでみてはどうです? 和久井さんや川島さんとか」


P「先方は、出来れば母性がある方が良いとか何とか言っていまして……」


ちひろ「それはまた……何とも漠然とした注文ですね。母性のない女性なんていないでしょうに」


P「そうですね。ですから、見た目は柔和で優しそうな方に頼もうかと思っていました」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 15:08:30.37 ID:oa2CQTedO

ちひろ「(なるほど、見た目『は』ですか)」


ちひろ「(プロデューサーさんの中で大人組に対する見方は出来上がってしまったようですね。悪い意味で……)」


P「あ、そうだ。千川さんがやってみます?」


ちひろ「えっ!? 無理無理!無理ですよ! 大体、私はアイドルじゃないですから!」


P「冗談ですよ」サラリ


ちひろ「……分かりにくい冗談は止めて下さいよ。というか、冗談言うんですね」


P「冗談くらい言いますよ。僕を何だと思っているんですか?」


ちひろ「(ちょっと突っ込んでみよう)仕事には真面目だけど、付き合いが悪くて取っ付きにくい人。ですかね」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 15:14:44.97 ID:oa2CQTedO

P「………」ピクッ


ちひろ「(あっ、これは駄目なやつだ! ど、どうしよう、怒られーーー)」


P「あははっ!」


ちひろ「(えっ?)」


P「それはよく言われます。最近は別部署の方に付き合いが悪いと言われたばかりです」

P「あまりお酒が飲めないので遠慮しているだけなのですが、そう見えるのでしょうね」


ちひろ「………」ポカーン


P「?」


ちひろ「……笑ってる顔、初めて見ました」


P「そうですか?」


ちひろ「そうですよ」


P「以前、千川さんに打ち解けるように言われてからは態度を改めたつもりだったんですが……」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 15:43:31.96 ID:oa2CQTedO

ちひろ「(そうだったんだ)何か変わりました?」


P「……そうですね。あ、そう言えばこの前、三村さんにシュークリームを頂きました」


ちひろ「へ〜、良かったじゃないですか。他の子はどうですか?」


P「渋谷さんは犬の写真を見せてくれましたね。神谷さんには最近のアニメを教えてもらったり」


P「北条さんには爪に何かを塗られそうになったので逃げました。彼女なりの冗談だったようですが……」


ちひろ「あら、見ない間に随分と仲良くなったんですね」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 15:48:53.97 ID:oa2CQTedO

P「自分でも意外に思います」


P「あまり近付くと鬱陶しいかと思い、極力干渉しないようにしていたんですが……分からないものですね」


ちひろ「(そんな風に考えていたんだ……)」


ちひろ「(人付き合いが下手。なわけではないんだ……なら、何で今まで……)」


ちひろ「(と言うか、初めてプロデューサーさんの本音を聞いた気がする。印象変わるなぁ)」


P「……皆、個性的で良いアイドルです」


P「堂々とステージに立つ姿を見ていると、とても誇らしく思います」


ちひろ「今の言葉は、是非本人達に言ってあげて下さい。きっと喜びますよ」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 18:28:38.14 ID:8HaQXbL9O

P「それはもう少し大きなステージに立ってからにします。満足されては困りますから」


ちひろ「少しくらい褒めても満足しませんよ。言いたいことは、きちんと言わないと駄目です」


P「そうかもしれませんね。ですが、言わなくて良いこともあります」


P「後先考えずに口にした言葉が、誰かを深く傷つける結果になるかもしれない」


P「言葉は、大事にしないと駄目です」


ちひろ「(……これは例の一件を言っているのかしら。それとも、プロデューサーさん自身の心構え?)」


P「さて、そろそろ仕事の話に戻しましょうか」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 18:30:39.75 ID:8HaQXbL9O
IDが変わっていますが>>1です。続きを投下します。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 18:36:02.74 ID:8HaQXbL9O

ちひろ「そ、そうですね」


P「ブライダルモデルの件ですが、本来であれば三船さんに頼んでいるところです」


P「ですが、今の状態では先方が納得するような仕事は出来ないでしょう」


ちひろ「(惚けよう)私は適任だと思いますよ。何故、美優さんでは駄目なんですか?」


ちひろ「大人組と何かあったようですが、薫ちゃんのお陰で仲直り出来たじゃないですか」


P「………」


ちひろ「(ちょっと露骨だったかな)」


ちひろ「(でも、プロデューサーさんの本心を知りたい。そうすれば、彼女達をフォロー出来るかもしれない)」


ちひろ「(自業自得とは言え、あんな顔を見るのは私も辛い……)」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 18:39:08.61 ID:8HaQXbL9O

P「詳しくはお話出来ませんが……」


ちひろ「それでも構いません。話して下さい」


P「……過ぎたことだから気にしないようにと言ったんですが、上手く伝わらなかったようです」


P「僕自身はもう気にしてはいないのですが、どうも彼女達の方が重く受け止めているようで……」


ちひろ「(本当に困ってる。じゃあ、昼間に思ったことは私の勘違い?)」


P「そう考えると、昼間の握手は強引でしたね。もう少し話してみるべきだったかもしれません」


ちひろ「(やっぱり、あれは私の勘違いだったんだ)」


ちひろ「(プロデューサーさんは、本当に仲直りするつもりで握手をしたのかしら?)」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 18:40:49.75 ID:8HaQXbL9O

ちひろ「……あの、何で握手をしたんですか?」


P「あの時に握手をしなかったら、薫が泣いていたかもしれないので……」


ちひろ「(優しい人で良かった。あいさんはあんなこと言ってたけど、気にしすぎですよ)」


P「千川さん?」


ちひろ「はい、聞いてますよ。彼女達には、私の方からそれとなく話してみます」


P「本当ですか? 助かります……」ペコリ


ちひろ「いえいえ」


ちひろ「それで、他にブライダルモデルの候補はいるんですか?」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 18:43:30.55 ID:8HaQXbL9O

P「安部さんはどうでしょうか?」


P「他の子と比較すると、母性と言うか安心感や安定感が桁違ーー」


ちひろ「菜々さんは17歳です。菜々さんにはまだ早いですよ」


P「……そうでしたね。千川さんは誰が良いと思いますか?」


ちひろ「そうですねぇ……母性、母性ですか……う〜ん……」


ちひろ「あっ! でも、イメージ的にこのお仕事はちょっと合わないかも……」


P「構いません。思い浮かんだのは誰ですか?」


ちひろ「えっとーーー」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 18:50:34.84 ID:i+vxjs1SO
17歳240ヶ月
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 19:06:44.64 ID:L6kAax1VO
ちゃま
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 19:16:20.96 ID:8HaQXbL9O

翌日朝 事務所

あい「……君は本気。いや、正気かい?」


P「ええ、僕は正気で本気です」


あい「自分で言うのも何だが、私が持たれているイメージを分かった上で言っているのかな?」


P「勿論です。僕は、これは東郷さんの可能性を拡げる良い機会だと考えています」


P「この雑誌はファッション誌に近い。より多くのファンを獲得出来るはずです」


P「正直に言うと意外性を狙っている部分もあります。ですが、それだけではありません」


あい「どういうことかな?」


P「これを見て下さい。千川さんにお借りしたものです」スッ
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 19:18:06.95 ID:8HaQXbL9O

あい「私と薫の写真? これがどうかしたのかい?」


P「千川さんはこの写真を見て、貴方に母性を感じたと言っていました。それで東郷さんにーーー」


あい「君は」


P「?」


あい「君はどう思う? 先方は母性ある女性と言ったのだろう?」


あい「プロデューサーである君は、私が適任だと本気で思っているのか。私はそれを聞きたい」


P「本気です」


あい「……分かった。そこまで言うなら引き受けよう」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 19:30:54.13 ID:8HaQXbL9O

P「ありがとうございます」


あい「……何かしらの形で詫びをしなければ、私の気が済まないからね」ポツリ


P「何か?」


あい「いや、何でもないよ。それより、これから顔を見せに行くのかい?」


P「ええ、出来るだけ早い内に衣装合わせなどをしたいとのことなので……急で申し訳ありません」


あい「構わないよ」


P「では、行きましょう。昼前には着くはずです。ところで、朝食は?」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 19:35:20.11 ID:8HaQXbL9O

あい「……えっ?」


P「何か変なこと言いましたか? 朝食は食べましたかと聞いただけですが……」


あい「い、いや、まだ食べていない」


P「そうですか。では、途中で何か買いましょう。血色が悪いと印象も悪いでしょうから」


あい「…………」


P「どうしました?」


あい「何でもない。勝手に勘違いしただけさ。さあ、そろそろ行こう」ツカツカ


P「そうですね。千川さん、ちょっと出ます。何かあれば連絡して下さい」


ちひろ「は、はい、分かりました。気をつけて」


ガチャ パタン


ちひろ「……あの二人、大丈夫かしら。何もないといいけど……」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 20:41:33.96 ID:8HaQXbL9O

移動中 車内

P「………」


あい「………」


P「………」


あい「……薫から聞いたよ」


P「薫から? 何をですか?」


あい「彼女達と握手して仲直りしたそうじゃないか」


P「仲直り出来たかどうか分かりませんが、握手はしましたね」


あい「……本当に許したのか、それともその場限りのことなのか。そこを聞かせてくれないか」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 20:56:42.76 ID:8HaQXbL9O

P「許すも何も、なかったことです。彼女達は何もしていない、僕も何も言っていない」


P「傷付けた人間も、傷付いた人間もいない。それで終わりです」


あい「君は感情を表に出すのが苦手なのか? それとも感情を表に出さないようにしているのか?」


P「……今日は、よく喋りますね」


あい「君という人間が分からないからだよ。信頼関係とは理解することから始まる。違うかい?」


P「他人の過去を知りたがるのも理解したいからですか? 僕には配慮の足りない好奇心とかしか思えませんでしたよ」


P「それから、僕の過去が信頼関係の構築に繋がるとは到底思えません。違いますか?」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/11/12(日) 21:06:24.34 ID:i+vxjs1SO
好奇心は猫をも殺す
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 21:08:58.57 ID:8HaQXbL9O

あい「それはーーー」


P「僕は、東郷さんの過去の恋愛に興味はありません。東郷さんだけでなく、アイドル全員です」


P「僕と貴方達アイドルは家族でも友人でも恋人でもない。これは、仕事です」


P「もし仮に、僕の過去が皆さんの人気向上に繋がるのであれば、喜んでお話ししますよ」


あい「っ、聞いてくれ。私が言いたいのはそういうことじゃない」


P「なら、どういうことですか?」


あい「過度な詮索や接触をしろと言っているわけじゃないんだ。何と言えばいいかな……」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 21:16:09.20 ID:5Gwqr0Lto
こんな面倒くさいプロデューサーと信頼関係築きたくないだろ
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 21:20:37.17 ID:pYIusbgVo
面倒くさいPだな
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 21:56:07.42 ID:muTkEcYro
酒の席で亡くなった妻の事聞いてくる方も嫌だわ
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 22:19:20.94 ID:JNrYt8LT0
故人の扱いは慎重にせねばね、野球と宗教と政治の話くらい飲み会の場でも気をつけねばならん話題やで
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 22:21:09.14 ID:ueCKLAUQo
その件に関しては聞いた方が圧倒的に悪い
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 23:08:32.58 ID:8HaQXbL9O

P「………」


あい「……もう少し、寄り添ってあげてもいいんじゃないか?」


P「薫や仁奈ならまだしも、貴方達は子供じゃない。お酒の飲める立派な大人じゃないですか」


あい「随分と、嫌味な言い方をするんだね……」


P「嫌味ではなく事実です」


P「誤解しないで下さい。僕はただ、責任を持った行動をして欲しいと言っているんです」


P「お互いに責任を持って全力で仕事に取り組む。そして成功させる。これが僕の理想なんです」


P「その為なら、僕は最大限出来る限りのことをするつもりです。何があっても、誰に対しても……」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 23:10:42.73 ID:8HaQXbL9O

あい「……私に対しても、かい?」


P「ええ、勿論」


あい「なら、笑わせてくれないか。こんな顔で現場に行くわけにはいかないだろう?」


P「はい?」


あい「出来ないのかい?」


P「いや、急にそんなことを言われても………ああ、そうだ。僕の鞄を取って下さい」


あい「えっ?」


P「ほら、早く」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 23:12:44.95 ID:8HaQXbL9O

あい「わ、分かったよ」


P「鞄の中に青いファイルがあります。開けて見て下さい。きっと笑顔になれますよ」


あい「本当にいいのかい?」


P「ええ、構いません」


あい「そ、そうか……青いファイル、青いファイル。えっと、これかな?」


P「あ、はい。それですね」


あい「…………これは、似顔絵?」


P「ええ。どうやら、それが薫から見た僕みたいです」


あい「フフッ、一生懸命書いている姿が目に浮かぶよ。先生へ、か……」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 23:14:26.73 ID:8HaQXbL9O

P「どうですか?」


あい「毒気を抜かれたよ。君に突っ掛かっていた自分が馬鹿らしく思えてきた……」


P「顔が戻ってますよ。せっかく笑顔になれたんですから、笑っていて下さい」


あい「……これは、いつ頃?」


P「つい最近です」


あい「最近? 似顔絵の隅に小さく書いてある日付は二ヶ月前のようだが」


P「……意外と意地悪なんですね。分かってて聞いたでしょう」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/12(日) 23:18:48.94 ID:8HaQXbL9O

あい「フフッ、すまないね。でも……」


P「何ですか?」


あい「君はきっと、良い旦那様だったのだろうと、そう思ったんだよ」


P「……そうだと良いですね。もう聞くことは叶わないので何とも言えませんが」


あい「渡された似顔絵に日付を書いて大事に保管している男性を、悪い旦那だと思う女性はいないよ」


P「そうですかね」


P「案外気味悪がられたりしそうですけど……皆には言わないで下さいね。恥ずかしいので」


あい「言わないさ。誰にもね」


P「そうですか。それは助かります」


あい「……………今回の仕事、上手く行くだろうか?」


P「上手く行かせますよ。必ず」

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 23:24:46.24 ID:+Dj+EcBqO
丸く収まったのか?
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 00:00:39.56 ID:Hl7zZ10GO

夕方 事務所


ちひろ「(ちょっと遅いですね)」


ちひろ「(スケジュール調整はしてくれていたので問題はありませんでしたけど……)」


ガチャ


ちひろ「あっ、お帰りなーーー」


あい「………」


ちひろ「(あれ、何か様子がおかしい)あの、あいさ………!!?」


ちひろ「あいさん、目が真っ赤ですよ!? 大丈夫ですか?何があったんですか!?」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 00:03:24.56 ID:Hl7zZ10GO

P「千川さん」


ちひろ「あ、プロデューサーさん。一体何がーー」


P「急で申し訳ありませんが東郷さんをお願いします。落ち着くまで傍にいてあげて下さい」


ちひろ「え、えっ? ちょ、ちょっと!」


P「ブライダルモデルの件を少し考え直さなければならないので、僕はこれで失礼します」


ガチャ パタン


あい「………」


ちひろ「……あいさん、取り敢えず座りましょう?」


あい「…………」コクン
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 00:19:45.55 ID:iE+GxeLao
元の理由がアイドル達にあるとはいえ、仕事に影響が出ちゃうようだと、
プロデューサーとしての責任問題になっちゃうよね
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 00:35:34.57 ID:Hl7zZ10GO

ちひろ「(あいさんが語り始めたのは、それから暫くしてのことでした)」


ちひろ「(泣いていた原因は、向こうの担当者からの心ない言葉だったようです)」


ちひろ「(プロデューサーさんが紹介したところ、呼んだのは新郎役じゃないと言われたとか)」


ちひろ「(そこからは女性であることを否定するような言葉……数々の暴言を受けたそうです)」


ちひろ「(聞くに堪えない暴言に、周囲で聞いていた子達も唖然としていました)」


ちひろ「(ですが、それは一瞬で怒りへと変わり、その矛先はプロデューサーさんにも向きました)」


ちひろ「(何故、何も言わずに置いていったのか。こんなことを言われても、代役を用意して撮影するのか……)」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 00:49:00.33 ID:Hl7zZ10GO

ちひろ「(あいさんはか細い声で否定していましたが、その声が届くことはありませんでした)」


ちひろ「(遂には抗議の電話を掛けるべきだとか何とかで大騒ぎになってしまい……)」


ちひろ「(レッスンで事務所にいた早苗さんや美優さん楓さんの大人組と私で、どう収拾を付けるか慌てていた時……)」


ちひろ「(その子は、立ち上がったのです)」


薫「せんせぇはそんなことしない!」


薫「せんせぇはやさしいから! ぜったいぜったい、そんなことしないっ!」


薫「せんせぇが言ってたんだよ!?」


薫「天国のおよめさんに、やさしい人になる約束したって!!」


ちひろ「(目尻に涙を浮かべ、小さな体から振り絞るように声を出している姿)」


ちひろ「(何より最後の一言は、冷静さを失った皆を黙らせるには十分なものでした)」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 01:56:34.19 ID:1IV85vrO0
>>「呼んだのは新郎役じゃない」

こんな事言ったら全国7兆8千万人のあいさんファンにグチャミソにされっぞ…
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 02:00:14.47 ID:pbXhIdbJo
もうした
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 02:02:02.71 ID:hYZl/4Czo
ナムアミダブツ!
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:11:00.00 ID:Hl7zZ10GO

薫「ん〜」


あい「……薫、ありがとう」


ちひろ「さっきので一気に疲れたんでしょうね。でも、薫ちゃんのお陰で助かりましたよ」


あい「そうだね……」


ちひろ「(あの後、彼にはきちんと考えがある。君たちが思っているようなことはない)」


ちひろ「(あいさんがそう告げると、一人、また一人と事務所から出て行きました)」


ちひろ「(特に最後の一言が衝撃的だったようで、皆一様に複雑な表情をしながら……)」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:13:13.67 ID:Hl7zZ10GO

あい「しかし、まさか薫に話していたとは思わなかったよ」


ちひろ「私も驚きました。仮眠室で聞いたと言っていましたね」


あい「眠る直前に聞いたんだが、一人でいるのは寂しいからと、薫が眠るまで傍にいてあげたようだ」


あい「その時に指輪を見て、気になったから聞いたらしい。先生と二人だけの秘密、そう言っていたよ」


ちひろ「無邪気って凄いですね……」


あい「子供は疑問に真っ直ぐだからね」


ちひろ「………あいさん、プロデューサーさんは何と言っていたんですか?」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:14:53.27 ID:Hl7zZ10GO

あい「彼は最後まで担当者と揉めていたよ」


あい「そっちが任せると言った以上、代役は有り得ない。そう言って車に乗ったんだ」


あい「私はそこまでしなくても良いと言ったんだが、これは私の為の仕事だからと言って聞かなかった」


ちひろ「………プロデューサーさん、何をしているんでしょうね」


あい「分からない。ただ、このままでは代役を立てるか仕事を断るしか方法はないと思う」


ちひろ「…………」


ガチャ


P「……東郷さん、いてくれて良かった」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:16:18.95 ID:Hl7zZ10GO

あい「えっ?」


ちひろ「あっ、プロデューサーさん……」


P「千川さん、ありがとうございます。それから、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」ペコリ


ちひろ「い、いえっ、そんな……頭を上げて下さい。と言うか、何で事務所に?」


P「仕事の話がまとまりましたので、その報告に来ました」


あい「………」


ちひろ「えっ、でもまだ……」チラッ
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:17:56.11 ID:Hl7zZ10GO

あい「いいんだ。ちひろさん、申し訳ないが少し外してくれないか」


ちひろ「分かりました。じゃあ、薫ちゃんは私がーー」


薫「んっ。あっ、せんせぇ……」


P「……薫もいたのか、丁度良かった。そのままでいいから話を聞いてくれないか」


ちひろ「(何だか分からないですけど、外した方が良さそうですね)」ソソクサ


P「薫、眠いなら寝てもいいんだよ? あいお姉ちゃんとは静かにお話しするから」


薫「ううん、起きてる……せんせぇ、あのね?」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:21:59.67 ID:Hl7zZ10GO

P「ん? どうしたんだい?」


薫「かおるね、約束破っちゃったの。ごめんなさいっ……」


P「……そっか」


薫「おこらないの?」


P「まさか、怒ったりしないよ。何か理由があったんだろう?」


薫「う、うんっ!」


P「なら、それでいいんだ」


ナデナデ


薫「えへへ……でも、ほんとにいいの?」


P「薫が間違ってないと思うなら、それでいいんだよ……」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:24:16.90 ID:Hl7zZ10GO

あい「………」


P「さて、次は僕の話を聞いてくれるかな?」


薫「はーい」


P「ありがとう」


あい「……それで、仕事の話とは? 君は先ほど『まとまった』と言っていたね」


P「ええ、東郷あいは下ろさない。ただ、アイドルを一人追加させて欲しいと言って話を決めました」


あい「追加?」


P「はい、追加です」


あい「美優さんか楓さん辺りかな?」


P「向こうもそう思っているでしょうね。ですが違います。もう一人は、薫です」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 02:25:41.35 ID:Hl7zZ10GO

あい「馬鹿な。そんなこと認められるわけがーーー」


P「いえ、認めさせます。この仕事は僕と東郷さんと薫で成功させるんです」


薫「かおるは? かおるは何をするの?」


P「薫には、あいお姉ちゃんの隣にいて欲しいんだ。一人は寂しいだろうからね」


薫「それだけ? あいお姉ちゃんといっしょにいればいいの? お仕事なのに?」


P「そう、一緒にいるだけでいいんだ」


P「だけど、これはとっても大事なことなんだ。薫、僕とあいお姉ちゃんを助けてくれないか」


薫「うんっ、いいよ!」ニコッ
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 02:27:33.02 ID:Hl7zZ10GO
また明日書きます。ありがとうございました。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 02:30:30.66 ID:d5UUAbsMO
Pさん大人気ない大人に見えてしまう
仕事仕事というなら自分も割り切れと
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 02:35:57.16 ID:pbXhIdbJo
割り切らなくなってく変遷の話だろうに

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 04:23:56.68 ID:GVJ80Itto
おつ
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:20:51.17 ID:MN2cPlzoO

あい「君は」


P「?」


あい「君は何故、そこまで私を? 素直に代役を立てた方が楽に済むはずなのに」


P「どんなアイドルを起用するかはそちらに任せる。そう言ったのは向こうです」


P「そう言っておきながら、あんな理不尽な理由で約束を反故するようなことがあってはならない。違いますか」


あい「……君は冷静さを欠いているんじゃないか? 意地になっているようにも見える」


あい「こんなことは言いたくないが、以前の君は冷たいくらいに冷静で、熱くなるタイプではなかった」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:21:54.23 ID:MN2cPlzoO

P「……そうかもしれせんね」


あい「なのに何故、そこまで拘るんだ?」


P「以前にもこういったことはありましたが、今回のように酷く侮辱されたのは初めてです」


P「だから認めさせたい。東郷あいというアイドルを、貴方の持つ魅力を見せてやりたい」


P「貴方は素晴らしいアイドルです。僕はそう断言出来る。だから……」


P「あんな偏った見方しか出来ない人間に、東郷あいはこんなものではないと分からせたい」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:23:15.56 ID:MN2cPlzoO

あい「………」


P「不快な想いをしたばかりで気乗りしないとは思います。ですが、その上でお願いします」


P「どうか、最後まで付き合って下さい。僕の、我が儘に……」


あい「………馬鹿だな、君は。そんなことを言われたら、断れるわけが……ないだろう……」


薫「あいお姉ちゃん? だいじょうぶ?」サスサス


あい「心配しなくても大丈夫だよ。これは、嬉しくて泣いているだけだから……」


P「……………」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:24:27.55 ID:MN2cPlzoO

薫「せんせぇ」


P「ん?」


薫「かおるにはむずかしくて分からなかったけど、せんせぇはあいお姉ちゃんが大好きなんだね」ニコッ


P「ああ、僕はあいお姉ちゃんが大好きだ。だから、負けて欲しくないんだよ。何があっても」


あい「!!」


薫「大好きだって!」


あい「あ、ああ、そうだね。とても嬉しいよ」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:25:37.14 ID:MN2cPlzoO

薫「ねーねー、あいお姉ちゃんは?」


あい「え?」


薫「あいお姉ちゃんは、せんせぇのこと好き?」


あい「………好きだよ。大好きに決まってる」


薫「せんせぇ、大好きだって!」


P「うん、ちゃんと聞いてたよ」ニコッ


薫「うれしい?」


P「勿論。あいお姉ちゃんに大好きって言われて嬉しくない人なんていない」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:27:06.23 ID:MN2cPlzoO

薫「そっかー、えへへっ」


P「……薫も、あいお姉ちゃんが大好きなんだね」


薫「うんっ、あいお姉ちゃんもせんせぇも大好きっ!」


P「そうか……」


あい「………」


P「…………ん? もう、こんな時間か。薫を送らないとな」


ちひろ「あ、薫ちゃんなら私が送りますよ?」ヒョコ
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:28:30.35 ID:MN2cPlzoO

P「……千川さん」


ちひろ「お二人にはまだ話すべきことがあると思いますので……薫ちゃん、行きましょう?」


薫「えーっ……」


P「薫、実はまだお仕事の話は終わっていないんだ。また今度、沢山お話ししよう」


薫「ほんとっ!?」


P「約束するよ。だから、今日はもう休みなさい」
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:31:28.72 ID:MN2cPlzoO

P「いいね?」


ナデナデ


薫「えへへ……うん」


ちひろ「(……何だか、本当にお父さんみたい)」


ちひろ「さ、薫ちゃん、行きましょう?」


薫「はーい!」


ちひろ「じゃあ、送ってきますね」


P「千川さん、ありがとうございます」


ちひろ「いえいえ」


薫「あいお姉ちゃん、せんせぇ、おつかれさまでー!!」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 15:34:50.91 ID:MN2cPlzoO

P「うん。お疲れさま、薫」


あい「薫、お疲れさま。ありがとう」


ガチャ パタン


あい「………」


P「………」


あい「……一つ、気になったことがあるんだ。聞いてもいいかな」


P「何を聞いても構いませんが、答えるかどうかは内容によります」


あい「ついさっき、薫と話している時の君の顔は、何だか……その、悲しそうに見えた」
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