【ガルパン】ダージリン「温泉旅行」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 22:41:46.76 ID:bbiHhhnS0
書けました

※まほ「温泉旅行」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509769779/ の続きです

※大学生編妄想。各校の隊長達が揃って温泉旅行する話の後編です

※お気に召さない表現があるかも知れません

良ければまたお付き合い願います

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1511185306
2 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 22:43:19.27 ID:bbiHhhnS0
【全力疾走の西絹代】

バイクは良いぞ。

裏野巣と名付けたバイクの手入れが日課だ。
この裏野巣で走る事が好きでたまらない。
だが、学園艦の上ではその趣味を存分に楽しむ事が出来ない。
所詮は艦上をぐるぐる回るだけだ。

それに、騒音の問題もある。
大きな音を出せば、居住区の皆様のご迷惑となってしまう。

だから私は寄港日が待ち遠しい。

騒音の問題が解消される訳ではないが、艦上よりは思い切り走れる。
目的地を定めずに全力疾走するのが何よりの楽しみだ。
3 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 22:46:41.96 ID:bbiHhhnS0
一人になりたい時は、バイクの遠乗りに限る。
どこまでも続く高速道路をひたすらに走るのは、実に気分が良い。

私にだって、一人になりたい時ぐらいある。
別段、何かあったという訳ではない。
ごくごく自然に、集団生活に定期的に疲れるというだけの事。

思えば贅沢な悩みだ。
高校を卒業すれば、この集団生活はあっさりと終わる。
そうなれば今度はきっと、集団生活が恋しくなるのだ。
そしてその時、一人で遠乗りなんぞに出掛けた事を後悔するかも知れない。
戦車道の皆とは疎遠にならないと思っているが、実際どうなるかは分からない。

だからこそ現在の一日一日を大切にしなければならないのだが、まあそう言ってもな。
疲れるのだから仕方ない。

めりはりが肝要なのだと思う。
集団生活に疲れたら一人の時間を取る。
一人になると集団生活に戻りたくなる。
今は集団生活に戻るための、一人の時間だ。
存分に楽しむとしよう。
4 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 22:48:20.70 ID:bbiHhhnS0
何度でも言うが、バイクは良い。

空気が体に直に伝わってくる。
この感覚は戦車では味わえないものだ。
何物にも守られず、生身で走る二輪だからこそ体感できる空気がある。

トンネルを抜け、視界が開けた瞬間など思わず声が漏れる。
何故だかな、トンネルの先にある景色というものは例外なく美しい。

休息所での時間も好きだが、裏野巣が些か珍しい型であるために目立ってしまうのが難点だ。
落ち着いて休息を取ろうと思ったら、高速道路を降りねばならない。

まあ、降りたくなったら降りる。
こういう自由が利くのが一人旅の良い所だ。
5 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 22:50:23.90 ID:bbiHhhnS0
見渡す限りの山、山、山。
学園艦では決して見ることの出来ない光景に胸が躍る。
生身でこんな所まで来たのだという達成感も、二輪ならではのものだと思う。

しかしまあ、随分遠くまで来たものだ。
引き返すには遅いし、燃料も心許ない。
ぼちぼち降りるとしよう。

給油のついでに宿泊できる場所も探さなくては。

温泉旅館でもあると嬉しいなあ。

【絹代編終了】
6 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 22:52:05.78 ID:bbiHhhnS0
【午前二時の安斎千代美】

女が三人寄れば姦しいと言うが、じゃあ七人寄ったらどうなるかと言えば、こうなる。

西住、ダージリン、カチューシャ、ミカ、ケイ、角谷、そして私。
大学生になってから、同じ元隊長同士という事もあって自然と仲良くなった私達七人。

今回は、とある温泉旅館に宿泊している。

旅の名目としては、ダージリンが自動車の運転免許を取ったことのお祝い。
だけどまあ、実際には皆で集まって騒ぐことが目的みたいなもんだ。

ダージリンの合気道教室が始まった辺りからどんどんうるさくなり、終いには旅館の人がやんわり注意しに来る始末。
だから今は、布団に寝転がって静かにお喋りをしている。
7 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 22:54:20.43 ID:bbiHhhnS0
よくよく考えてみると、これまで私達には対等に話せる友達というものが少なかった。
皆がその事に気付いているのかは分からないが、このメンバーでの会話はとても弾む。
対等な会話の経験が薄いせいで、どうでもいいような話題がすごく刺激になるみたいだ。

普段は寡黙な西住でさえ、この中に入ると自然に口を開く。

「ダージリンは紅茶だが、カチューシャとはどんな意味なのだろう」
「カチューシャっていうのはエカチェリーナの愛称形なのよね」
「へえ。エカチェリーナちゃん、みたいな意味なんだね」
「身長が伸びた今は、確かにエカチェリーナって感じだよねー」
「エカチェリーナって呼んであげましょっか」
「やーめーて」

今は名前の話で盛り上がっている。

でもちょっと、うとうとして来た。
みんなの話し声って、眠くなるんだよなあ。
何故だろう、安心するのかな。
8 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 22:56:52.32 ID:bbiHhhnS0
実は、早めに済ましたい用があるんだけど、なかなか言い出せずにいる。

こっくりこっくり舟を漕ぐ私を見てクスクス笑う声が聞こえる。

この声はダージリンかな、それともカチューシャかな。

遠慮なんかせずに、早めに言い出せば良かったなあ。

だけどもう本当に眠くてさ、限界なんだよ。

でも代わりに行ってくれとも頼めない。

どうしても私が探さなきゃいけない。

その付き添いが欲しいんだ。

どこにも無いんだよ。

私の大切な。

大切な。

私の。
9 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 22:58:11.52 ID:bbiHhhnS0
目を開けると、午前二時だった。
や、やっちまったなあ。

当然、みんなはとっくに寝静まっている。

これじゃ、一人で探しに行くしか無いじゃないか。
遠慮してないでさっさと言えばよかった。

私の本が見当たらない。
まあ、どこにあるかは大体見当が付いている。

私達が元々泊まる予定だった部屋。
一度はそこに落ち着いたし、西住や角谷なんかそこで一眠りしている。
だけどその後、その部屋が曰く付きであることをケイが他のお客さんから聞いてしまい、部屋を換えて貰った。

私は、角谷が眠りに来るまで西住の脇で本を読んでいた。
置き忘れたとしたら、そこだ。
10 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 22:59:18.41 ID:bbiHhhnS0
幽霊なんか信じちゃいない。
信じちゃいないが、真夜中に一人で曰く付きの部屋に行くのは流石に嫌だ。

時刻は、何度見ても午前二時。

ど、どうしよう。

【安斎編終了】
11 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 23:02:14.00 ID:bbiHhhnS0
【深夜徘徊の西住まほ】

参った、眠れん。

時刻は午前二時、皆は既に寝静まっている。
そう言えば聞こえは良いが、各々騒ぎ疲れての雑魚寝なので、寝静まっているという表現が適切かどうかは分からない。
敷かれた布団などお構いなしに、銘々に寝入っている。

私はと言えば、恥ずかしながら旅館に到着するなり、移動の疲れから暫く眠ってしまった。
そのせいで今、一人眠れずにいる。
12 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 23:04:09.70 ID:bbiHhhnS0
一人落ち、二人落ち。
私もさっさと落ちてしまいたいのだが、そんな事を考えていると余計に眠れない。
明日に響いては困るし、どうにかならないものかとごろごろしている。

「な、なあ、西住」

びっくりした。
安斎、起きたのか。

何やら、どうしても気になっている事があるらしい。
早めに済ますつもりでいたのだが、うっかり寝入ってしまい、こんな時間に起きてしまったという。
声の調子からするとあまり面白い話ではなさそうだ。

「私の本が見当たらなくてさ、たぶんあの部屋に忘れたんじゃないかと思って」

ああ、そういう事か。
13 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 23:06:35.79 ID:bbiHhhnS0
確かに安斎は、あちらの部屋で本を読んでいた。
探しに行きたくとも、曰く付きの部屋に一人で行くのは嫌だというのだろう。

「行こう」
「行こう」

そういう事になった。

旅館とは深夜でも明るいものかと思っていたら、そうでもない。
ここは二十二時に消灯するので館内はとっくに暗くなっている。
ただ、消灯とは言っても完全に真っ暗になる訳ではない。
トイレに起きる客や緊急時などに配慮してか、進路が確保できる程度の明るさはある。
それがまた良い具合に薄気味悪く、肝試しには最適と言える。

「西住、なんかお前、ウキウキしてないか」

気のせいだ。
14 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 23:08:27.26 ID:bbiHhhnS0
さて、件の部屋の前まで来たが、肝心な事を失念していた。
当然の事ながら部屋は施錠されている。

それに、よくよく考えれば短時間とは言え客の出入りがあった部屋だ。
清掃の手が入るだろうし、忘れ物や落とし物があればその時に回収されるに決まっている。

拍子抜けだ。
恐らく、安斎の本は旅館側が保管しているものと思われる。

はーあ。

「何の溜め息だそれは」

気にするな。
15 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 23:10:11.50 ID:bbiHhhnS0
仕方ない、フロントに行ってみよう。
深夜とは言え、誰かしら詰めているだろう。
急に部屋を換えたり深夜徘徊したりと、迷惑な客である。

しかし、そうなると忘れ物の持ち主である我々がまだ宿泊しているのに連絡が無いのは妙だ。
まあいい、訊けば何か分かるだろう。
そう思い踵を返すと、白い服に長い黒髪の女が真後ろに立っていた。

「私の部屋に何用か」

おおお、流石にびっくりした。
心臓が止まるかと思った。

ダッシュで逃げる安斎。
意外と脚が速い。
16 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 23:12:14.14 ID:bbiHhhnS0
しかし幽霊など居る筈もなく、その上よく見れば知った顔で、向こうもその事に気が付いた。

「失敬、驚かすつもりは無かったのですが。おや、貴女は確か」

意外な場所での再会となった。
去年の大学選抜戦の時に手を貸してくれた、知波単学園の西絹代。
彼女はみほ達と同学年だから、今は三年生か。

白い長襦袢が妙に艶かしい。
トイレにでも行ってきた所だろうか。
せめて何か羽織れと言いたくなる。
17 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 23:13:36.47 ID:bbiHhhnS0
暫しの立ち話。

「私、バイクの遠乗りが趣味でありまして。目的地を定めずに疾走する癖のお陰で此度はこの旅館に辿り着いてしまいました」

成程。
予約無し、しかも遅い到着だったために空き部屋がここしか無かったそうだ。
私達の後にこの部屋に入ったという事か。
一人で大部屋に宿泊とは、なかなか面白い事をしている。
18 : ◆nvIvS/Qwrg [saga]:2017/11/20(月) 23:14:44.38 ID:bbiHhhnS0
さて。

こちらの用はただの探し物なのだが、部屋を移った経緯が説明しづらい。
彼女はこれからここで寝るのだ。
上手い説明は無いものかと考えていると、西が先回りして答えてくれた。

「ははあ、もしや探し物ではありませんか」

何故分かったと訊けば、部屋に入った時、忘れ物と思しき小説が座卓の上にあった事を思い出したのだという。

「この部屋が曰く付きであることは番頭から聞き及んでおります」

だが彼女は、幽霊など居ると思うから見えるのですと豪語して部屋に入ったそうだ。
まあ、それ以上に他の宿を探すのが面倒だったのもあるだろう。

そんな経緯があるから、私が説明の仕方で迷っていることも察しが付いた。
それによって、忘れ物の主、つまり先にこの部屋に入った客が私達であることまで導き出せたという。
聡明だ。

なのに何故戦車道では、いや、何も言うまい。
32.68 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)