小日向美穂「空と風と恋と山と街と狸と人と」

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1 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2017/12/16(土) 00:00:21.69 ID:Qezuh/qr0

美穂「――の、ワルツ」

美穂「…………狂想曲(カプリチオ)かなぁ?」


 モバマスより小日向美穂メインのSSです。
 ファンタジー要素、アイドルの人外設定、キャラ解釈やユニットなどオリ要素多々ありますためご注意ください。
 また設定絡み「有頂天家族」「平成狸合戦ぽんぽこ」から多く拝借しております。
 

 ↓のSSの正統続編です。よろしければどうぞ。

小日向美穂「こひなたぬき」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1508431385/

塩見周子「小早川のお狐さん」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510159749/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1513350021
2 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2017/12/16(土) 00:00:54.54 ID:Qezuh/qr0



  前編

  狸、生まれ故郷に帰る


3 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2017/12/16(土) 00:01:21.27 ID:Qezuh/qr0

   ―― 事務所、晩秋のある日

蘭子(儀式の刻は終焉を告げ、我は今、ほとばしるほど暇である)
  (訳:今日のお仕事終わっちゃった。暇だなー)

蘭子「……闇の魔導書(グリモワール)に魔法陣を刻まん」
  (訳:お絵描きしよっと)

   カリカリ シャッシャッ

蘭子「人と獣の両方の姿を持つ、魔獣人ミホタン……満月の夜に全ての力を解放する……」

蘭子「……フッ、かっこいい……」

   ガチャ

美穂「おはようございまーす。あ、蘭子ちゃん!」

蘭子「ぴゃっっ」サッ

美穂「お絵描きしてたの? 『漆黒魔界ヲ馳セル十字軍 〜断章〜』の続き?」

蘭子「き、き、禁忌の扉を開くこと、まかりならぬっ!」ワタワタ

美穂「み、見ちゃ駄目なの? 新作かなぁ……?」

蘭子(うぅ……極めて遠く、限りなく近き幻影(ユメ)の調べ……)
  (訳:み、美穂ちゃんがモデルなんて、言えないよぅ……)
4 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2017/12/16(土) 00:02:01.55 ID:Qezuh/qr0

 秋も深まって、朝夕にはいよいよ冷え込むようになってきました。

 私達のいる事務所はいつも通りです。

 私は寒いのがあんまり得意じゃないので、この季節にはついもこもこ着込んでしまいます。
 た、狸でも寒いものは寒いんですっ。
 人間は大好きだけど、進化の過程で毛皮をリストラしちゃったのは失敗だったんじゃないかなぁ。

 けど、今朝は心がほっこり温まるようなことがありました!


「あ、そうだ蘭子ちゃん。今朝ね、実家から手紙が来たんだ」
「ほぅ……深山に頂く霊獣より、確かなる言霊が?」
(訳:狸のご両親! お元気なんですかっ?)
「うん。蘭子ちゃんのことも書いてあったよ、いつも見てますって!」
「わぁ……!」

 熊本から送られてくるお手紙には、いつも小さな肉球のスタンプが押されています。
 筆を執るのはお母さん。
 内容はテレビで私達のことを見てくれていること、元気そうで安心していること、たまには顔を見せて欲しいこと……。

 それから、私の誕生日についても書かれていました。

 12月16日――秋が暮れて、冬が訪れる時節。そんなある冬晴れの朝に、小日向美穂はぽんぽこぽんと生まれました。
 できれば直接お祝いしたいけれど、今年もまた無事この日を迎えられそうで嬉しい、ってお母さんは書いてくれています。
 なんだかちょっと恥ずかしいけれど、私も嬉しいです。


「熊本にも、いつか帰りたいね。お仕事が落ち着いたら……ううん、お仕事ででも行きたい!」
「うむ。『瞳』の耀きあらば、運命(サダメ)の円環はやがて繋がろうぞ……!」
5 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2017/12/16(土) 00:02:44.76 ID:Qezuh/qr0

   ガチャッ

モバP(以下P)「お、いたいた」

美穂「プロデューサーさん! おはようございますっ」

蘭子「煩わしい太陽ね!」

P「ああ、おはよう。二人とも揃ってるんならちょうどよかった」イソイソ

美穂・蘭子「?」

P「うん、あのな。実は二人に新しい企画があって……」

蘭子「っ! 新たなる儀式の幕開けか!?」ワクワク

美穂「わぁ、ほんとですか!?」

P「うむうむ。ちょっと待ってろよ資料出すから……」

美穂(プロデューサーさん、すごく楽しそう。大きなお仕事なのかな?)
6 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2017/12/16(土) 00:03:38.35 ID:Qezuh/qr0

  バァンッ

P「二人の熊本凱旋LIVE! 日程は12月16日、美穂の誕生日だ!!」

美穂「え」

蘭子「ふぇ」

美穂・蘭子「――――えええええっ!?」
7 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2017/12/16(土) 00:04:15.48 ID:Qezuh/qr0

 凱旋。凱旋です!
 つまり、熊本でLIVEができるってことです!

 それも……私の誕生日に!!

「蘭子ちゃん!!」
「美穂ちゃん!!」
(訳:我が友、美穂よ!!)

 がしっ。

「やったやったやったやったやったやったやった!」
「やったやったやったやったやったやったやった!」
(訳:宴ぞ! 宴ぞ! 宴ぞ! 宴ぞ! 宴ぞーっ!)

 ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん。

「うんうん、喜んでもらえて俺も嬉しいよ。さて、もうちょっと詳しい話を……」

 ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん。

「よしわかった思う存分やるといい」

 ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょ……はぁ、はぁ……。


 やっと落ち着いた私達に、プロデューサーさんはもうちょっと踏み込んだ話をしてくれました。
 詳細な日程、舞台になる施設、今後のスケジュール……。

 それから――
8 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2017/12/16(土) 00:04:46.72 ID:Qezuh/qr0


美穂「ユニット、ですか?」

P「そうそう。せっかくの凱旋なわけだし、新しいユニットをでーんと引っ提げてこうと思ってな」

蘭子「ふおおお……! 共鳴せし新たなる魂……!!」

P「おーい、三人とも入ってきていいぞー」

  ガチャ

紗枝「おはようさんどす〜。改めて、よろしゅうおたの申します〜」

周子「毎日会ってるけど組むのは初めてだよねぇ。ま、脇を固めるのは任しときー」

芳乃「よき日和にお呼ばれされしことー、とても嬉しいのでしてー」

美穂「みんな!」

P「二〜三人単位でなら組んだことある同士だけど、五人まとめては新鮮だろ?」

P「あとほら、美穂の正体に一番理解があるメンツだし。もしもの時のサポート的な意味で」

美穂「ぽ、ぽこ!? そんなことまで……っ」
9 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2017/12/16(土) 00:05:16.89 ID:Qezuh/qr0

 ユニット名は、「ケセラセラ」。

 五人で相談して出た「もこもこくまさん団」や「罪ノ業火ニ灼カレシ夢人」や「カンザシーズ改」や「憑巫五(よりましふぁいぶ)」とかではなかなか決まらず、
 ぽそっと周子ちゃんが呟いたそれがなんだか耳に気持ちよくて、満場一致で決まりました。

 どこかの言葉で、「なるようになるさ」という意味だそうです。

 私と蘭子ちゃんのダブルセンターで、紗枝ちゃんと周子ちゃん、それに芳乃ちゃんが加わってくれた五人。
 凱旋LIVEに向けて、そんな私達のレッスンが始まりました。

 もう大変でした。本気でやるのはいつものことだけど、今回のはいつもと違います。
 セトリを組んで、ダンスを合わせて、歌のパートを決めて……。
 故郷に錦を飾る……っていうのは、ちょっと大それた感じがしますけど。

 でも、ただ熊本に帰るわけにはいきませんから!
 
 12月の本番に向けて、私達はユニットとしての完成度を高めていきました。
10 : ◆DAC.3Z2hLk [saga]:2017/12/16(土) 00:05:54.84 ID:Qezuh/qr0

美穂「ふぅ……」

美穂「……よしっ。これなら、絶対すごくいいステージにできるよね……っ!」グッ

  タタッ

卯月「美穂ちゃん!」

響子「聞きましたよ、凱旋LIVEの話っ」

美穂「卯月ちゃん、響子ちゃんも!」

響子「私達は別のお仕事で行けないけど……代わりにこれ、二人で作ったんです」

卯月「誕生日プレゼントも兼ねて。ちょっと急いじゃったけど……」

  ファサッ

美穂「……手編みの、マフラー……」

響子「毛糸の色を工夫して、狸さんの柄を描いてみたんですっ。ほら、ここに!」

美穂「わぁ、ほんと――――猫? ……カバさん?」

響子「狸さんです!!」

卯月「それで、こっち半分は響子ちゃん、こっち半分は私が編んで……。こっちはちょっと粗いかもだけど……えへへっ」

卯月「向こうも寒いだろうから、これを巻いて頑張ってきてねっ!」グッ

美穂「ふ、二人ともぉ゙……」ジワワ

卯月「わわわっ!? み、美穂ちゃん、泣かないで〜!」ワタワタ

響子「ちょっと寂しいけど……これを私達だと思ってください! 東京から応援してますからっ!」

美穂「ゔ、ゔん゙……」グシグシ


美穂「私、頑張るね。いってきますっ!」
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