勇者「ニートになりたい」

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142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/14(日) 01:38:38.84 ID:2/+ZkVAo0
クソ面白いな

続き期待
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 01:54:11.76 ID:BdLSUZbA0

王道SSはやはりいいものだ
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 08:25:23.67 ID:nzy4Aab+O
一昔前のなろう小説のような気持ち悪さ
145 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/01/14(日) 12:36:44.93 ID:o71JjVk4O
勇者SSとしては結構王道路線なんですけどねw
勇者TUEEE演出するにあたりワンパターンでひっぱりすぎたのが悪かったかなと少し思います
いきなり路線変更しても話がぶっこわれてしまうんでこのままもう少し続きます
146 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 13:01:39.37 ID:o71JjVk4O
【医務室】

武闘家「うっ……」ムク

勇者「目が覚めたか」

武闘家「……そうか、蹴り一発で気を失ってしまったのか……」ポフン

勇者「ちゃんと鍛えてたお陰だろ。気絶で済んだのは」

武闘家「勝者が敗者に……!」ググッ

勇者「悪かった。それじゃ、俺は行くよ」

老人「待つアル」スッ

勇者「じーちゃん」

老人「たかだか一回の敗戦で、なにをイキってるネ」

武闘家「し、師匠」

老人「悔しいカ?」

武闘家「まだ、実感が……」

老人「そうダロよ。何度か寝て起きたらじんわりと負けという事実がのしかかってくるアル」

武闘家「……」

老人「あの時こうしておけばよかた、もっとできたはず……そして、その先にアルものは、自信の喪失ヨ」

武闘家「アタイは……」

老人「オマエが積み重ねてきた拳は、なんのタメにあるのヨ」

武闘家「なんの、ため」

老人「楽しくないとつらい修行はやってられないヨ。オマエ、ドMか?」

武闘家「そ、そんなわけっ、ないじゃないですか……」

老人「成長、変化が楽しく。たまにうまくいった時が気持ちイイからダロヨ」

武闘家「は、はい……」

老人「見世物小屋に長居しすぎたヨ。ワシも悪かったアル」

武闘家「いえ、そんな、アタイが未熟なせいで」

老人「謙虚さがあるならまだ取り戻せる。学ぶ姿勢はイツだって、傲慢とはかけ離れてイル」

武闘家「はい」シュン

老人「勇者よ。マスクかぶってちとついてくるアル」

勇者「お、おう。だけど、ついておかなくていいのか」

老人「ヒナはヒナなりに考える時間が必要ネ。ほっとくよろし」クルッ スタスタ
147 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 13:24:51.85 ID:o71JjVk4O
【通路】

マク「なぁ、じーちゃん、本当にほっといてよかったのか」

老人「オマエ、過保護すぎよ。優しさを履き違えるの、よくないアル」

マク「いや、そうだけど」

老人「負け癖がつくのがよくないだけで、負けは変わるきっかけに他ならないノヨ。弟子をありがとうアル」ペコ

マク「やめてくれよ。俺は、自分のしたかったことをしただけで」

老人「本当にソウか?」

マク「ただの自己満だよ」

老人「ならば、なぜこんなところにイル。女戦士にどう思われようといいダロ? 惚れてるカ?」

マク「そういうんじゃ、ねえけど」

老人「マゴマゴしてないでやりたいように生きればいいアル。オマエは“勇者”に縛られてるんダロ」

マク「……」

老人「人々の勇者に対する期待、羨望のまなざし。いつだってそれに晒されて生きてきた。ガラスの家に住んでいた気分だったロヨ」

マク「そんなたいしたもんでは」

老人「いつしか、心は壊れてしまうネ。勇者という肩書きと、本来の己との乖離のハザマで」

僧侶「あっ、おじいさ〜ん!」フリフリ

マク「いっ⁉︎」ギョ

魔法使い「マクってやつもいる!」

老人「ここに集まるアル」

マク「ちょ」サッ

僧侶「初めましてぇ〜。マク選手すっごくかっこよかったですよぉ〜」

魔法使い「ねえねえ、私たちのパーティに入らない? マクさんがいれば百人力って感じだし! ね! 戦士もそう思うわよね?」

戦士「あ、ああ」

僧侶「無口なんですねぇ〜?」

老人「やれやれ。こいつはまだ修行中の身。喋ることを禁じられてるアル」

戦士「そうなのか? そういえば、聞いたことがある、モンクというんだったか?」

老人「この男の肉体的強さは、先ほど見たとおり折り紙つきヨ。しかしアル。心と精神はまだまだネ」

魔法使い「別にいーんじゃない? あんだけ強ければ」

老人「諸刃の剣ヨ。アンバランスな均衡は、時に自分を追い詰めてしまうモノ」

僧侶「……」

老人「マクの代わりに提案があるアル」

戦士「提案? なんだ?」

老人「我が弟子を連れてくヨロシ」

魔法使い「えっ、弟子って、チャンピオン⁉︎」

老人「そんな肩書きはもう失ったヨ。こいつに負けてナ。しがないひとりの武闘家ネ」

僧侶「勇者さまに聞いてみないとぉ〜」

老人「……その必要はないよ。マク、どう思うネ?」

マク「……っ!」

老人「ワシも策士ダロ? クビを縦にふるか横にふるかで答えるヨ。そうしなかった場合は――」

マク「〜〜ッ!」コクコクコク

老人「決まりアル。勇者とやらにはワシの家の修理が終わったら、伝えておいてヤル」

魔法使い「なんで……マクに聞いたら……」

戦士「おっけーなんだ?」
148 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 13:41:17.74 ID:o71JjVk4O
【夜 宿屋 食堂】

魔法使い「それでさぁ、マクが地面殴ったとおもったらメキメキメキィッて亀裂がはしったのよ! 信じられる⁉︎ 大地を割ったの!」

勇者「はいはい」

魔法使い「やがて亀裂が壁にまで到達してさ! 地震かと思っちゃった!」

僧侶「くすくす。魔法使いさん、すっかりマク選手のファンですねぇ」

戦士「いや、しかし、たいしたものだ。どうすればあそこまで極められるのか」

魔法使い「戦いたいとか言い出す?」

戦士「……やめとくよ。差がありすぎてな。なにもできずに終わってしまう」

魔法使い「あっちが勇者だったら信憑性あるのになぁ〜。もうほんと凄かったんだから!」

勇者「……そうですか。今日の給料。100ゴールド」ジャラ

魔法使い「あ、そうそう。お爺さんに会ったわよ。全然女嫌いじゃなかった」

勇者「あ、そ、そう?」

魔法使い「勇者って見る目ないわね」

僧侶「それはどちらがでしょうねぇ」ニコニコ

魔法使い「サインもらっておけばよかったかなぁ〜」

戦士「握手、してもらえばよかったかな」ボソ

魔法使い「意外ね。戦士もそういうこと思うんだ」

戦士「ひ、独り言だ」

僧侶「灯台下暗し、ですよぉ〜」

勇者「……」ハラハラ

僧侶「本当にお二人は、ヌケサクさんですねぇ」ニコニコ

149 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 13:57:55.24 ID:o71JjVk4O
【その頃 武闘家の家】

老人「勇者についてって、見聞を広げるアル」

武闘家「ですが……! アタイはまだ師匠の元で」

老人「子供に旅をさせるのは良いことヨ。ワシも老いたネ。一緒にいくには」

武闘家「……っ!」ギュウ

老人「世界を見てまわり、己の目と耳で見聞を広げヨ。殻の世界に閉じこもるのはここまでにするアル」

武闘家「し、師匠」

老人「いつまでヒナのつもりでイルネ。オマエも自分で判断できる歳ダロヨ」

武闘家「……うっ、ぐすっ、アタイを、見捨てられるのですか……っ」ポロポロ

老人「オマエは優秀な弟子ヨ。この世でただひとり、ワシが才能に惚れこんだのは」

武闘家「……」シュン

老人「ワシが教えられることにも限界がアルヨ。成長する姿を見せることに自信がないノカ?」

武闘家「……」

老人「子の成長はいつだって嬉しいもの。血の繋がりはナイが、それまでは長生きしておいやるアル」

武闘家「師匠……!」ゴシゴシ

老人「行ってくるアル。……結婚したら生まれてくる子供は、ぜひ、ワシの弟子に」

武闘家「別れの場面でふざけないでください!」

老人「いや、本気」

武闘家「なおさら問題です!! 怒りますよ!」

老人「しかし、オマエ、この世界はわりと婚姻ハヤいから、行き遅れなんてあっというま……」

武闘家「あちょお〜〜〜っ」スッ

老人「ま、待つアル! わかたわかた! ドウドウ」アタフタ

武闘家「……はぁ、男には、興味ありません」

老人「人の縁(えにし)とは、わからないモノよ」
150 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 14:23:09.25 ID:o71JjVk4O
【翌日 マッスルタウン 出口】

魔法使い「あ〜、今日もマクさん試合するのかなぁ」

戦士「ディフェンディングチャンピオンだからな。当然だろう」

勇者「……」

僧侶「くすくす」

魔法使い「見に行きたいなぁ」チラ

勇者「だめだ。昨日は予定外に道草くっちまったんだから」

魔法使い「ケチ。男の嫉妬ってみっともないわよ」

戦士「勇者も鍛錬すればまだまだ伸びると思うぞ」

魔法使い「そういうんじゃなくて! 圧倒的なのに惹かれるんじゃな〜い! 完成形の魅力ってやつ?」

僧侶「育てるのも女の嗜みだと思いますけどぉ」

魔法使い「可愛げがあればいいけどねぇ、こいつじゃ」チラ

勇者「なんだよ」

魔法使い「……」ジトォー

勇者「そんなに目を細くして。ゴミでもはいったのか? 近眼?」

魔法使い「……はぁ」ガックシ

老人「おい、お主たち」

馬「ブルルッ」パッカパッカ

戦士「ご老体、その馬車は」

老人「これまで賞金を溜め込んでたカラナ。旅の選別ヨ。仲間が増えれば馬車はつきものダロ? まだ増えるかもわからんシ」

魔法使い「くれるの⁉︎」

老人「それと、ほれ」ポイッ

魔法使い「わっ⁉︎」ワタワタ

老人「アイヤー。そんなものも受け取れない反射神経カヨ」

魔法使い「魔法職なんだからいいでしょ! ……あれ、これって」

老人「イーリスの杖ヨ。昨日、マクから渡しておいてもらうように頼まれたネ」

魔法使い「えっ⁉︎」

戦士「ほう、なかなかに粋な計らいを」

魔法使い「で、でもっ、私、ちょっと会っただけなのに」

老人「受け取るヨロシ。それがあいつも望んでおるコトネ」チラ

勇者「ご、ごほんっ!」
151 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 14:25:29.65 ID:o71JjVk4O
魔法使い「そ、そんな……私、お礼を言ってこなくちゃ」ギュウ

老人「マクならもういなくナタヨ」

魔法使い「えっ、そ、そうなの?」

戦士「チャンピオンなのにか?」

老人「すぐに返上したらしいヨ。運営は嘆いていたが、今日にも新しいチャンピオンは決まるアルネ」

戦士「いったい、どこに……」

老人「弟子よ!! いつまで荷台に引きこもってるアルか! 出てきて挨拶するアル!!」クワッ

勇者「……おい、じいちゃん」

老人「黙るアル。最後の指導に口を挟むの良くない」

武闘家「……」スッ タンッ

魔法使い「あ、元チャンピオン」

武闘家「お初にお目にかかります。よろしく」プイ

戦士「な、なんとも……」

僧侶「愛想がないですねぇ〜」

老人「なにはともあれ、気楽にやるヨロシ」
152 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 14:43:00.49 ID:o71JjVk4O

〜〜第1章『マッスルタウンのチャンピオン』〜〜


153 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 14:59:29.07 ID:o71JjVk4O
くぅー疲。
というわけでここまでを昨日に書ききってしまいたかってんですが睡魔には勝てず。。
これにて一章と位置づけした武闘家が仲間にくわわるまでが終了となります。

わりとオーソドックスな勇者SSを書こうとはじめ、新鮮味はなかったでしょうが、どこかで読んだような安定感はあったはずと自負します。
昔ながらのSS好きな人の琴線に触れることはできたんではないでしょうか?

どんなもんだったでしょ?
批判も含み感想をお待ちしております。
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 15:09:44.41 ID:9bWVdO6Oo
いいね
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 15:10:37.04 ID:LJkX3We40
乙!
もう……好き。(語彙力)
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 15:11:54.54 ID:suw+/xnxo
おつー
王道が好きな俺にはどストライクだったよ
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/14(日) 15:16:55.90 ID:wCS29IgP0
批判なんて気にしなくていいよ。
そもそも金とって読ませてるもんでないし
不満ならそれ以上のもの書いて読ませてくれってなもんで。
面白いから続けておくれ。
待ってる。
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 15:40:14.05 ID:fqsB5PN3O
乙!
一気に読んでしまった
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 15:52:40.03 ID:yn36M8pF0
なろう系というよりは自分はワンパンマンみたいなチートの中に爽快感を感じた
サイタマと似てる気がする
全員に個性持たせてるのが本当にいい
160 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 18:15:44.12 ID:wnnh1YX3O
あらかた感想はいただいた感じでしょうかね
書いていただいたみなさんありがとうございます

批判はなければないでいいのですが、別の見方もできますから
やりすぎてる感があるときはたしかにと自分でも思ったりします

では第二章をスタートします
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 18:36:02.93 ID:LJkX3We40
Foooooooooooo!!!!!
162 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 18:37:05.29 ID:wnnh1YX3O
【馬車 荷台】

魔法使い「ふんふーん♪ うふふ♪」ニッコニッコ

僧侶「よかったですねぇ、魔法使いさん」

魔法使い「はぁ、マク様……。ありがとう」スリスリ

戦士「チョロイやつだ。物で釣られるとは」

魔法使い「つ、釣られてなんかっ! ……あんまり、プレゼントもらったことなぃんだもん……」

僧侶「それが欲しいものなら尚更嬉しいですよねぇ〜、偶然を加味するとロマンチックですぅ」

戦士「ふん、男なら腕っ節だろ」

僧侶「それもわかりますぅ。強い男性に惹かれるのは、種の生存本能に訴えかけてきますしぃ〜」

魔法使い「わからないのは顔だけよね。どんな顔してるのかしら? イケメンだったらどうしよう」

戦士「顔なぞ……」

僧侶「良いにこしたことはないと思いますよぉ? 男性だって、容姿端麗な女性に惹かれるじゃないですかぁ〜」

戦士「男の目線はみんな下心だ。女は違うだろ」

魔法使い「戦士はどう思うの?」

戦士「あたしは……さっきも言ったが男は腕っ節だと思う。ほかのは付加価値だな」

僧侶「占める割合が大きいんですねぇ。やっぱりぃ、自分より強い人が好きとか?」

戦士「それもある。嫌だろ、あたしよりなよっちぃ男なんて」

魔法使い「た、大抵の男は戦士より弱いんじゃないの?」

戦士「だから、男は――」

僧侶「マクさんはどうですかぁ?」

魔法使い「……それもそうね、戦士が敵わないっていう条件ならクリアしてるし」

戦士「顔もわからないやつを好きになれるかよ……」

僧侶「んー、顔は重要じゃないってぇ〜」

戦士「ちっがぁーうっ! 内面を知らないやつを好きになれるかっての!」

魔法使い「そもそも、オンナ捨ててたわよね」

戦士「うっ、いや、それは」
163 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 18:51:13.59 ID:wnnh1YX3O
僧侶「……武闘家さんはどう思いますかぁ?」

武闘家「……」

魔法使い「ねえ、元チャンピオン。パーティにはいったんならもうちょっと愛想良くしたらどう?」

戦士「無理にとは言わないが、まだまだ旅は続くわけだしな。コミュニケーションをしてくれると助かる」

武闘家「……アホくさ」

魔法使い「なっ⁉︎」

武闘家「男だとかなんだとか、そんなのでキャアキャア言ってるなんて」

魔法使い「ちょ、ちょっとあんた! まともに喋ったかと思えばそれ⁉︎」

僧侶「まぁまぁ。おさえておさえてぇ」

戦士「すまない、あたしたちも初対面で馴れ馴れしくしすぎたかもしれん」

僧侶「でもぉ、なんでパーティに入ろうと思ったんですかぁ?」

武闘家「関係ないでしょ」プイ

魔法使い「大方、あのおじいさんに言われたんでしょ? だから拗ねてるんだ?」

武闘家「うるさいなぁ」

魔法使い「あたし達は仲間になってんのよ? 命を預けられる? そんな態度で」

武闘家「別に。自分の命くらい自分で守れば?」

魔法使い「ぐぬっ! じゃあなんでここにいんのよ! 一人旅でもすれば⁉︎」

僧侶「おー、よしよしぃ」ナデナデ

魔法使い「犬扱いすんな!」

戦士「……決勝は残念だったが、その他の戦いは見事だった」

武闘家「あっそ」

戦士「どうだ? 今度手合わせしないか? なんだったら、勇者も一緒に。あいつは私と同じくらいの強さで」

武闘家「戦士……って言ったっけ?」

戦士「そうだぞ。よろしく」

武闘家「それ本気で言ってる?」

戦士「ダメか? 良い鍛錬に――」

武闘家「そこじゃなくて。誰と誰が同じくらい?」

戦士「む……今の話の中でか? あたしと勇者だが」

武闘家「ぷっ、くっくっくっ」

魔法使い「……?」

戦士「なんだ? なにがおかしい」

武闘家「ザコ。勝負なんて願い下げよ」
164 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 19:18:51.94 ID:wnnh1YX3O
【馬車 手綱】

勇者「のどかやなぁ〜。お前もそう思わんか?」

馬「ブルルッ」パッカパッカ

勇者「ほんにのどかやでぇ〜。このまま時間が止まれば――」

――ドゴォンッ!!――

馬「ヒヒーンッ」ビクゥ

勇者「おっ⁉︎ ちょ、ちょっ! どーどー! 静まれ!」

馬「ブフォ」タンタン

勇者「な、なんだ? 荷台が揺れた……?」

戦士「自分で吐いたその言葉! 簡単には飲むなよ……!」バキィッ

武闘家「ほんとのこといってなにが悪いってのさ」バキィッ

勇者「あんれまー。新品の馬車の荷台をぶっ壊して出てきたように見えたけど。疲れてるのかな」

魔法使い「勇者!」

勇者「やめて。現実逃避してるのにやぶれた穴から話しかけないで」

魔法使い「二人を止めないと!」

勇者「ゆ、夢じゃなかったの? ウソ、ウソだといってよバーニィ」

戦士「コミュニケーションしようと思ったのが間違いだったようだ」チャキッ

武闘家「……ふん。ザコのくせに」スッ

勇者「お、おまえらぁぁぁぁああっ!!」クワッ

戦士「口を出すな、勇者」

勇者「出すに決まっとるわい!! どうすんだよ! いきなり穴あけちまいやがって!! まだ出発して半日もたってねぇぞ!」

武闘家「それは、こいつが……」

勇者「お前もしっかり穴あけとるやないかい! 2つ! わかる? ふーたーつぅー!」

武闘家「うっ」

戦士「穴ぐらいなんだ。男のくせに細かいやつだな」

勇者「ホワッツ⁉︎ アナタ、イマナントイッタカ⁉︎」

戦士「うっ、いや、男のくせに」

勇者「アーユークレイジーッ⁉︎」

魔法使い「僧侶。勇者が言ってるあれ。どこの言葉?」

僧侶「さぁ〜。でもぉ、いいんじゃないですかぁ? 勇者様の勢いにタジりだしてますしぃ」

武闘家「あ、アタイは……」

勇者「シャラップッ!!」

戦士「お、おい、勇者、さっきから何語を……」

勇者「シッダウン! シッダウン!!」

戦士&武闘家「……?」

勇者「……はぁ、あのなぁ、知り合ったばかりだし、喧嘩するのもしゃーないけど。物は壊さないようにやれよ」

武闘家「やっぱり、アタイはこのパーティから」

勇者「じいさんと約束してんだろ? 会って日にちが長いわけじゃないけどさぁ。俺に連れてけって言ったんだ。お前はここにいろ」

武闘家「……戦士とは別にしてほしい」

勇者「お安い御用です! 個室を用意します! ……できるわけねーだろ。馬車に仕切りなんか作れるか」

武闘家「……」ブスゥ

戦士「やはり、力で決着を」

勇者「もう太陽が傾きはじめてる。やるなら止めないから、次の村についてからやれ」
165 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 19:37:35.39 ID:wnnh1YX3O
【ミンゴナージュの村】

勇者「はぁ、どうすんだよ。この穴」ジー

僧侶「アップリケでもつけますかぁ?」

勇者「トホホ。なんで半日でズボンの穴あき処置みたいなことを……」

魔法使い「あ、蝶々」

勇者「わぁー、ほんとだぁー! ってなるかい!」

魔法使い「暇なんだもん。ここアルデンテの村みたいな田舎だし。それに――」

武闘家「あちょお〜〜〜〜っ!! ハイィッ」ダダダッ

戦士「むっ、このっ……! くっ!」キンキン

魔法使い「あっちは脳筋だしさ」

勇者「……」

僧侶「勇者様ぁ、テントの生地がありますよぉ」ビリビリ

勇者「そ、僧侶さん? 普通、ありますって言う時はその後の対応を聞くものでは? なぜに破ってらっしゃる?」

僧侶「使わないんですかぁ?」ビリビリ

勇者「どーすんだよ! これから野宿するとき!」

魔法使い「いいんじゃない?」

勇者「なんでだよ!」

魔法使い「勇者は知らないんだっけ? 私達、今、ちょっとした小金持ちなの」

勇者「へ? こ、小金持ち?」

僧侶「はい〜。マク選手に賭けていたお金がありますのでぇ」

勇者「あ、そなの?」

魔法使い「細かく数えてないけど、30万ゴールドは持ってるわよ」ドサッ

勇者「さ、ささささっさんじゅう⁉︎」

僧侶「大穴の150倍だったんですよぉ〜」

勇者「そ、そうなんか……」
166 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 19:57:41.49 ID:wnnh1YX3O
【宿屋】

店主「祟りじゃ!」クワッ

勇者「え、えぇ……」

店主「祟りじゃ、祟りじゃ、この村は呪われておるぅ〜!」

勇者「落ち着けよ。ばあちゃん」

僧侶「あのぉ、部屋をとりたいんですけどぉ」

店主「部屋などと呑気なことを言うとる場合ではない。早々に立ち去るんじゃ」

魔法使い「そんな、困る」

店主「えぇい! 今は満室じゃ!」

魔法使い「なんなのよ、もう」

僧侶「ご無理を言っても申し訳ないですぅしぃ、道具屋でテントを買いますかぁ?」

勇者「しかたない、そうするか」

店主「店じまいしてるよ」

魔法使い「へ?」

店主「みぃ〜んな祟りのせいじゃ。道具屋の店主も倒れてしまったわい」

魔法使い「え? え? じゃ、じゃあ買い出しは?」

店主「マッスルタウンに戻るとええ」

勇者「なあ、ばあちゃん、日は沈みはじめてるし、今からってのは」

店主「今宵、儀式がある」ボソ

僧侶「儀式……? なんのですかぁ?」

店主「よそ者は帰れ。あたしゃこれ以上は話す舌を持たん」

勇者「祟り、ねぇ」ポリポリ
167 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 20:23:23.13 ID:wnnh1YX3O
【ミンゴナージュの村 入り口】

戦士「くっ、不覚……! 剣がっ!」カキーーン

武闘家「はぁっ、はぁっ」ピタ

戦士「さ、さすが、チャンピオンといったところか。言うだけはある」

武闘家「ふぅ……」

戦士「それほどの力を持ちながら、なぜ、先ほどはあのような態度を」

武闘家「力と性格になんの因果関係があるっての。アタイはあんたが気に入らないのはたしかだけど」

戦士「むっ、あたしのどこがだい」

武闘家「弱いくせに。アタイより弱っちいくせに誰と同列で語ってんさ」

戦士「……?」

武闘家「はぁ、まだわからないの? いい? 勇者はね――」

僧侶「戦士さぁ〜ん! 武闘家さぁ〜ん!」トテトテ

戦士「僧侶? どうしたんだ?」

僧侶「今日の宿が決まらないんですよぉ〜」

戦士「なに? ……おい、武闘家。さっきはなにを言いかけて」

武闘家「……」プィ

僧侶「喧嘩もいいですけどぉ、問題解決に向けてみんなで協力しましょ〜?」

勇者「決着ついたか?」スタスタ

魔法使い「脳筋ってほんと単純だから。どうせ仲良くなってんじゃないの?」

戦士「いや……」

魔法使い「あ、あれ? 違った?」

武闘家「勇者。道具屋でテントを買えば?」

勇者「それがそういうわけにもいかねぇんだわ。武器屋、防具屋、道具屋、全部店を閉めてる」

戦士「……なにがあったんだ?」

僧侶「なんでもぉ、祟りのせいみたいですよぉ〜?」

武闘家「タタリ? タタリって、呪いとかそういう類の?」

僧侶「そうみたいですねぇ」

魔法使い「今夜、儀式があるって言ってたけど、なんの儀式かしら」

勇者「……」ジー

僧侶「……? 勇者さまぁ、なにを見てるんですかぁ?」

勇者「気がつかなかったけど儀式ってこの石像が関係してんじゃね?」

戦士&魔法使い&僧侶&武闘家「……?」

勇者「“淫夢王、サキュバス。ここに祀る”……なんだこれ?」
168 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/14(日) 22:50:27.96 ID:rRmjoYTBO
【淫夢城 玉座】

サキュバス「ミンゴナージュ村の様子はどう?」

リリム「精を搾り尽くしている最中でございます。若い淫魔はじめ、かっこうの餌場かと……」

サキュバス「田舎村で人口が少ないのが難点だけど、目立ちにくさという利点もある。このまま枯れ果てるまで絶頂を味あわせておやり」

リリム「もちろんです、お姉様。夢の中という、無防備な空間。どうやって抵抗できましょう」

サキュバス「私達は、“相手の望む姿になれる”」

リリム「それに加えて抜群の性技も……うふふ」

サキュバス「人間にはもったいなさすぎるけどね」

リリム「所詮はエサ……行為自体に愛情のかけらもございません」

サキュバス「我らを軽々しく言った魔族はどうした?」

リリム「ご指示通り。性交を通して魂を抜き取ってやりました」

サキュバス「くふっ、くっはっはっはっ! あわれな。所詮はオトコ。オンナであっても我らの前では……」

リリム「生物はみな種を残すため、そのために性欲をもっている。その性欲を意のままに操る我らこそが魔王軍における最強の眷属でございます」

サキュバス「良い子ね……リリム」スッ

リリム「あっ……お姉様」ウットリ

サキュバス「勇者の捜索は……?」

リリム「ハッ⁉︎ す、すみません、あまりの美しさに……アデルの城が勇者発祥の地であるようです」

サキュバス「アデル……というと、サルマニア国との兄弟国ね」

リリム「伝承を参考にすると、“ロト”がやはり鍵を握っているかと」

サキュバス「どの部分?」

リリム「“東のサルマニア、北のハーケマル、南のクイーンズベル、西のアデル。光は西から登り、東へと進む”」

サキュバス「……勇者、忌々しいオトコ」

リリム「引き続き、調査します」

サキュバス「くれぐれも、ミンゴナージュも手を抜かないように」

リリム「私におまかせください。お姉様のご期待以上の結果をご覧にいれますわ」

サキュバス「魔王様も期待なさっておいででおられる。頼んだわよ」
169 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/01/14(日) 22:54:58.19 ID:rRmjoYTBO
今日はここまで。
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/15(月) 00:17:59.11 ID:gQENGYKD0

なろう流行りだしてからなろう系テンプレにアレルギーだす子供増えたけど
なろう系主人公のテンプレの元がなにかっていったらSS界隈だからねぇ
カップリング、ハーレム、俺TUEEE系はSSでもめちゃくちゃ流行ってた
171 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 11:14:56.32 ID:mVndM0qxO
【ミンゴナージュの村 入り口】

魔法使い「ねぇ、いつまで村の入り口にたむろしてるの? 戻るならはやく戻らないと」

勇者「いや、今日はここで一泊する」

僧侶「宿がないのにですかぁ?」

戦士「そうだぞ、テントを予備に複数個買えばいいじゃないか」

勇者「それは、そうなんだが……」

武闘家「……? なにか、気になることでも……」

村娘「もし、旅のお方」

魔法使い「……うわっ、露出度高い服」

村娘「うふふ。なにやらお困りのご様子。よければお話を聞かせていただけませんか」

戦士「いや、今日の宿がなくてだな」

村娘「まぁ。テントはお持ちではないのですか?」

僧侶「それがぁ、切らしておりましてぇ」

村娘「大変。日が沈みはじめるというのに。寝る場所がないと辛いことでしょう」

魔法使い「だからぁ、マッスルタウンに戻ろうよぉ〜」

村娘「よければ……私の家でよければ面倒を見ますが」

戦士「いや、しかし、いきなりは困るだろう」

村娘「ご遠慮なさらずに。先日、母に先立たれ、さみしい思いをしていたところでございます」

僧侶「それはそれはぁ、お悔やみ申し上げます〜。私でよければ祈りを捧げますがぁ」

村娘「神職様でございましたか、ありがとうございます。そのお礼ということで、いかがでしょうか?」

魔法使い「ねぇねぇ、お世話になろうよ、勇者」

勇者「うーん」

魔法使い「最悪、場所の荷台で寝るんじゃないの? このままなら。寝っ転がれないなんて私は絶対にイヤ!」

勇者「……見ての通り、えぇと、いち、に、さん……俺たちは4人いる。寝床はある?」

村娘「粗末な我が家ですが、布団ならご用意できます」

戦士「すまない、素性もわからない旅人に親切にしていただいて」ペコ

村娘「困った時はお互い様というじゃありませんか。お気になさらず。ささ、どうぞ」スタスタ

勇者「……」

魔法使い「あぁんもうっ、はっきりしないやつ! 勇者は荷台で寝れば⁉︎ 私はついてくからね!」タタタッ

僧侶「勇者さまぁ〜。行かれないのですかぁ?」

戦士「好意を無碍にするのは失礼だ」

勇者「……わかった。俺は少しぶらついてから行くよ。みんなは先に行っててくれ」

武闘家「アタイも、残ろうか?」

勇者「いや、いい。腹減ったろ? きっと料理もだしてくれると思うから、お前も行ってろ。僧侶」

僧侶「はい〜」

勇者「お返しを忘れるなよ。しっかり包んでやれ。金」

僧侶「かしこまりましたぁ〜」ペコ

武闘家「……」スッ スタスタ

戦士「(勇者の言うことを素直に聞くのは、なんでだ……?)」
172 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 11:33:44.23 ID:mVndM0qxO
【村娘 家】

村娘「どうぞ」ギィー

魔法使い「わっ、結構ひろーい!」タタタッ

僧侶「失礼ですよ、魔法使いさん」

村娘「かまいません。見ての通り、一人で住むには広すぎるので」

戦士「手荷物はどちらに置いたらよろしいか?」

村娘「あちらにお願い致します」

戦士「わかった」スッ ボサッ

村娘「お連れの男性の方は……?」

武闘家「ぶらついてから来るそうよ」

村娘「なにもない村ですのに。……今夜はあまり外出なさらない方が」

僧侶「なぜでしょう〜?」

村娘「儀式、がございますので」

魔法使い「宿屋のお婆さんも同じこと言ってたわね……なんの儀式?」

村娘「この村は今、不幸続きなのでございます」

戦士「……と、いうと?」

村娘「ある日ぱったりと村の男衆が、倒れてしまったのです。その後は、ベッドから起き上がることも叶わず」

武闘家「呪い?」

村娘「原因不明な病なのです。話を聞こうにも、幸せそうな顔をして眠るばかり。ですが、日に日に体は痩せ細り、弱ってゆく……」

戦士「不可思議な話だ。眠ったままとは」

魔法使い「病気だとしても男だけってのは変ね」

村娘「村の女衆にも異変が――」

僧侶「異変……?」

村娘「口が過ぎました。なので、くれぐれも今夜は外出なさらぬよう。沈める儀式がございます」

戦士「まて、その肝心の儀式とやらの内容がわからん」

村娘「……祈祷師に依頼したところ、おそらく淫夢の仕業だろうということを言われまして」

魔法使い「淫夢? まさか、サキュバス?」

戦士「魔法使い、知ってるのか?」

魔法使い「伝説のモンスターの一角。実際にいるのか怪しい。その祈祷師、大丈夫? 詐欺師じゃない? 困ってるからそれっぽいこと言ってお金だけふんだくろうって」

村娘「しかし……ほかには頼るところも……」

戦士「サキュバス、か……」
173 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 12:18:33.36 ID:SH/yhARoO
【ミンゴナージュの村 広場】

祈祷師「キエエエェエエイッッ!!」バサッ バサッ

勇者「なんじゃあれ。キャンプファイヤー?」

村人達「お怒りをお沈めください。サキュバス様」ドゲザ

祈祷師「南無 三曼多伐折羅赧 悍(ノウマク サンマンダ バザラダンカン)! 悪霊ッ! 退散ッ!」バッ バッ

勇者「ははーん……あれが儀式ってやつか。もうはじめてんのね」

店主「……っ! まだこの村におったのか!」

勇者「宿屋のばあちゃんも参加すんのか?」

村娘達「オトコ、オトコよ」ヒソヒソ

店主「いかん! こっちにこんかい!」グイッ

勇者「おっ、とと。いきなりナンパ? いくつになっても乙女だね」スタスタ

店主「お主! さっき早々に立ち去れと言うたじゃろうが!」

勇者「都合もあってね。引き返すのはやめとこかなと」

店主「この村は呪われておるんだぞ!」

勇者「さっき、村の入り口で石像を見つけたよ。サキュバスって書いてあった。あれに関係してんじゃないの?」

店主「うっ、そ、それは……」

勇者「そんで、悪霊退散って叫んでるところを見るとお祓いしてるってとこ?」クィ

祈祷師「滅っ!! めえぇつっ!! めえええぇえつっ!!」バサッ バサッ

店主「左様じゃ。この村は今、サキュバスの脅威に晒されとる」

勇者「店じまいしてるのもそれが原因か」

店主「正確には男連中に、じゃ。精気を抜き取られておる」

勇者「へぇ……そりゃ、男にとっては幸せだ」

店主「適度ならば、の。精気とは生命力と深い関わりをもっておるでな。抜き取られすぎると、命にかかわる」

勇者「サキュバスってあれだろ? エロいことしてるんだよな? だったら、腹上死か」

店主「夢の中だけじゃよ。ワシも絵本でしか知らぬが、姿を消したサキュバスが枕元に立ち、意識だけ夢の中にはいってくるらしい」

勇者「擬似的なもんか」

店主「なんでも、“理想の姿に変化させる”ようじゃ」

勇者「自分を? それって、例えばペチャパイが好きだったら……」

店主「そういう意味じゃ。男なら誰しもが一度は妄想するであろう。あの子としてみたい、と。そこにサキュバスはつけこむ」

勇者「でも、まぁ、男からしてれば夢が叶うわけだ」

店主「あくまで幻じゃよ。そこに実体はないからの」

勇者「ばあちゃん、よく知ってんね」

店主「古い古い伝説の話じゃ。魔王軍の一角に、サキュバスあり……」

勇者「……」

店主「さぁ、もうわかったろう。さっさと立ち去るがよい」

勇者「もひとつ。男にしか影響ないの?」

店主「いらぬ首をつっこむでないわ!」クワッ

勇者「いや、今日泊まるからさ。ここに」

店主「な、なんじゃと……⁉︎」
174 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 12:33:38.88 ID:SH/yhARoO
勇者「心配してくれるのはありがたいけども」

店主「……いかん、いかんぞ」プルプル

勇者「どした? 俺のことなら別に」

店主「女にも……影響は、ある」

勇者「……? どんな? あ、サキュバスって男もいるの?」

店主「サキュバスは女じゃよ。女に悪影響をもたらすのは、瘴気」

勇者「瘴気……?」

店主「悪い気のようなものじゃ。淫魔の魔力にあてられ、発情しだす。村娘達を見て気がつかなんだか」

勇者「ん?」チラ

村娘「きゃっ、こっち見たぁ」モジモジ

村娘「あたしよ、あたしを見てたのよぉ」フリフリ

店主「わしは歳のお陰で影響は低い。しかし、若い活発な女たちには、これ以上ない毒となって思考を鈍らせておる」

勇者「つまり……ビッチ化してんな」

店主「勘違いするでない。本来は慎ましかで初心(ウブ)なオナゴたちよ。男と目も合わせられんような」

勇者「なるほど」

店主「異性を求めはじめておる。しかし、男はこの村にいる限り、サキュバスの餌食。女たちのぶつけようのない欲求不満はたまる一方じゃて」

勇者「なんかよくわからん被害だな」ポリポリ

店主「この恐ろしさがわからぬのか。一国でさえ狂わせられてまうぞい」

勇者「ふぅーん。まぁ、とりあえず経緯は把握したよ」
175 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 12:58:06.28 ID:SH/yhARoO
【村娘 家】

村娘「勇者……?」ピクッ

戦士「おい、魔法使い」

魔法使い「あっ、言っちゃだめなんだっけ? つい」

戦士「勇者がなぜ我々にまで最初黙っていたか聞いたろう? 立ち寄った村々に被害が及ぶのを防ぐために」

魔法使い「ぶっちゃけ、怪しいけどね」ボソ

村娘「あの、勇者とはいうのは本当に……?」

魔法使い「僧侶、パス。私、しーらない」プイ

僧侶「困った人ですねぇ〜叱られるかもしれませんよぉ」

魔法使い「うっ。べ! べつに! あんなへっぽこに叱られたって」

戦士「……はぁ。ああ、本当だ」

村娘「まぁ、なんということでしょう。あの、失礼ですが、勇者と証明できるものは――」

僧侶「戦士さんも〜。だめですよ〜」

戦士「他言はしないよう言えば大丈夫だろう。あたしたちは一泊の恩がある。勇者も納得してくれるさ」

村娘「そ、それで?」

戦士「“聖痕”があるんだ」

村娘「それは、まさか……女神ルビスが勇者にしか刻まないといわれている伝説の?」

戦士「そのまさかだよ。あいつにはそれがある」

村娘「……そう、ですか。こんなところに……」

魔法使い「驚くのも無理ないけど。秘密ね?」

村娘「ええ、ええ。もちろんですとも。あの、ちなみにですが、聖痕はどこに……?」

戦士「ん? あぁ、あたしたちが嘘をついてると?」

村娘「す、すみません。あくまで可能性の話で」

戦士「いや、当然だ。ニセモノも実際にいたしな。聖痕の場所は、ケツだよ」

村娘「お尻……ですか。なるほど……普段は見えない場所。てっきり、わかりやすくデコか手にあるものかと」

魔法使い「へんてこりんな場所よね」

村娘「そうでしたか。見える場所ばかりを探していても見つからぬハズ……」

戦士「……? 探していた?」

村娘「あっ、いえ。勇者様にあこがれてまして。うふふ」

魔法使い「すぐに幻滅することになるわよ。残念ながら」

村娘「……ここ二、イタのネ……」ニタァ

武闘家「……アタイ、ちょっと出てくる」

村娘「ハッ! な、なりません! もう儀式がはじまりだしています!」

武闘家「大丈夫。サキュバスかなんだか知らないけど、クンフーがあるから」

村娘「お、お腹すきましたでしょう⁉︎ すぐにご用意いたしますよ!」バタバタ

戦士「おい、武闘家。用もないのにほっつきあるくな」

武闘家「どきなよ。どうしようとアタイの勝手だろ」

戦士「恩人に対してそれはどうなんだ。言うことを聞け」

武闘家「……」

戦士「それとも、勇者が言わないとだめなのか?」

魔法使い「……? なんで、そこで勇者が出てくるの? あっ、もしかして、武闘家って勇者がタイプなの?」

武闘家「あんたら……」イラァ

僧侶「すとっぷですよぉ〜〜。まずは矛をおさめておさめてぇ〜〜。腹が減ってはなんとらやらと言いますしぃ〜」
176 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 13:20:45.54 ID:SH/yhARoO
【道具屋 寝室】

勇者「よっと」カタン

店主「Zzz……」スヤァ

勇者「不用心だなぁ、窓が空いてたら泥棒に入られちまうぜ。道具屋のおっちゃん」

店主「むにゃむにゃ」スヤァ

勇者「昨夜は、お楽しみでしたね」

店主「……!」ピクッ

勇者「昨夜は、お楽しみでしたね」

店主「ぐふっ、ぐふふふっ……むにゃむにゃ」

勇者「幸せそーな顔しちゃって。こりゃ淫夢を見せられてるって話がウソってわけでもなさそーだな」

店主「……っ、う、うぅ、っ、く、苦しい……もうやめてくれ、もう出ない」ビクンビクン

勇者「どーやって淫夢を見せてるんだ? 呪文か?」

店主「Zzz」

勇者「伝説だと枕元に立つんだっけ? ……なにもいない」スカッ

店主「うっうぅ……」

勇者「なにか、タネがありそうだな。精子だけに」

店主「た、たすけて、たすけて、くれぇぇ……うーん、うーん」

勇者「待ってろよ。男だって、無理やりされたら嫌だもんな」タンッ
177 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 14:08:49.85 ID:SH/yhARoO
【村娘 家】

魔法使い「おっそい! なにやってんのよ! あいつ!」

戦士「ご飯、ご飯」

魔法使い「見てみなさいよ! 戦士なんて幼児退行しちゃってんじゃない!」

僧侶「私たちだけ先に食べてしまうのも〜」

村娘「温めなおせばまだございますよ。今夜はとろぉ〜り、濃厚な……シチューでございます」

戦士「白い、ドロドロの」

魔法使い「美味しそう」

村娘「そうでございましょう? 腕によりをかけてご用意いたしましたので。あつあつなままどうぞ」

戦士「な、なぁ、僧侶。ほっておくと、逆に申し訳ないっていうか」

魔法使い「そ、そうね。べ、別に。お腹すいてるからじゃないんだからね」

僧侶「はぁ〜。ホントにおふたりはしょうがないですねぇ」

戦士「食べていいのか……?」

武闘家「……」スッ カチャ

戦士「あっ! ず、ずるいぞ! いけないんだぞ! いただきますをしないでスプーンを手にとっちゃ!」

武闘家「……これ、いつ作った?」

村娘「今しがたです。固形ルーがあまっていましたので……得意料理なのですが、お嫌いでしたか?」

武闘家「いや……そうじゃないけど」

戦士「食に対する冒涜は許さん! 好き嫌いせずに食べるんだ!」

武闘家「アタイは、いいや」

村娘「そ、そんな。やはり、お嫌いでしたか」

戦士「武闘家……っ! きさまぁっ! 恩人を悲しませた挙句! 振舞われた料理に口をつけずに……!」

武闘家「ぎゃーぎゃーうるさい」

戦士「……斬る」チャキ

武闘家「まだやる気? さっきやられたくせに」

戦士「届かぬ背中ではなかった。あと数戦もすればいい勝負をしていたと確信する」

武闘家「……調子に乗ってるでしょ」ポキパキ

戦士「そっくりそのまま返そう。何様のつもりだよ」

僧侶「あぁ〜〜んもう! やめなさぁ〜〜い! ……戦士さんも、武闘家さんも。食べましょ〜」

魔法使い「はぁ、犬猿の仲ってやつね。あむっ……ん〜……んっ! 美味しい!」

戦士「いただきますしてないのに!」

魔法使い「戦士も武闘家も食べてみなさいよ! すっごく美味しいわよ! これ!」

戦士「食べる食べる! ……いただきます!」ガツガツ

武闘家「……」ジー

僧侶「武闘家さんも。座って食べましょぅ?」

武闘家「ちっ、しかたないなぁ」

僧侶「くすくす」

武闘家「なにがおかしいのさ」

僧侶「いえ〜根は優しいと思いましてぇ〜」

武闘家「……なによ」プイッ
178 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 16:10:41.92 ID:SH/yhARoO
【数十分後 同部屋】

魔法使い「ねぇ、なんだか暑くない?」パタパタ

僧侶「そういえば少し〜。なんだか身体がぽっぽっとしてきたようなぁ〜」

戦士「すまない。窓を開けてもいいか?」

村娘「申し訳ございません。戸締りの調子が悪く」

魔法使い「えぇ〜〜? 開かないのぉ?」パタパタ

村娘「すみません……。ただいま、氷をお持ちしますので」

戦士「氷、氷といえば、魔法使いの冷気魔法で」

魔法使い「あ、あのねぇ。生活魔法じゃなく攻撃魔法なのよ? 放ったら制御できない」

戦士「そ、そうか」シュン

村娘「しばし、お待ちを。気休めかと思いますが、お香をたかせていただきます」

僧侶「お香……?」

村娘「はい。心身ともに緊張をときほぐす効果がございますので」

魔法使い「暑いだけなんだけど」

村娘「我慢というのはストレスがたまるものでございましょう。ですから、気休めなのです」

戦士「すまない、なにからなにまで」

村娘「いえ、母がいなくなってから……こんなに楽しい夕食は……」

魔法使い「ちょっと、戦士」ドンッ

戦士「あっ、うっ、あたしは、そんなつもりで。決して思い出せるような」

武闘家「食は済んだし、外の風に……っ⁉︎」ガタッ クラッ

魔法使い「どうしたの? 立ちくらみ?」

武闘家「なっ……なんだ、こ、れは……」ガクッ

戦士「体調でも悪い……⁉︎」クラッ

僧侶「まってくださいねぇ〜、今回復魔法を〜……あ、あらぁ」フラァ

魔法使い「ちょ、ちょっと、どう……した……はれ?」クラッ

村娘「こちらがお香になります」カチッ

武闘家「お、おのれ……っ! 一服、もった、な……っ!」キッ

魔法使い「そ、んな……」ズリ

戦士「くっ、なんと」

僧侶「はふぅ〜」

村娘「うふっ、うふふふふふっ。……なんともはや。間抜けな女達よ。こうもあっさりひっかかってくれるとは」

戦士「な、なぜっ……!」ググッ

村娘「なぜ? 簡単なこと。最初からこうするのが目的だったから」バサっ

武闘家「そ、そのっ、はね、はぁっ」

村娘「キレイでしょう? 淫夢族は、人間どもが思い浮かぶ悪魔と酷似している。そう、漆黒の翼を持って」スゥー

魔法使い「サキュ、バス……っ⁉︎」

リリス「――お前たちの旅はここで終着点だ。……言え。勇者はどこにいる?」
179 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 16:34:30.89 ID:SH/yhARoO
武闘家「モンスターめ……! 勇者、が狙いか……!」

リリス「聞かぬでもわからないでか。我が魔族の宿敵。ルビスの加護をその身に宿した者……お前らに価値なぞない」

戦士「ぬぅ、ぬぅうううっ!」ググッ

リリス「シチューには、痺れ薬と幻覚薬を混ぜてある。そう簡単には戻らんぞえ」

魔法使い「か、身体が……意識も……」

リリス「まさかこのような場所に勇者がいるとは。とんだ偶然……いや、僥倖だったわ。貴女達がペラペラと喋ってくれたお陰で。淫夢王様にご報告できる」

僧侶「ん、んんぅ〜、き、キアリク」ポワァ

リリス「ふんっ!」ドゴォ

僧侶「あうっ⁉︎」ズザザッ

戦士「そ、僧侶っ!! 大丈夫か⁉︎」

リリス「解毒魔法は使わせないよ。面倒だから、あんたは気絶してな」

僧侶「」

魔法使い「そ、そんなっ! 僧侶! 目を覚まして!」

リリス「ああ、我が愛しいサキュバスお姉様ぁん。……他にまだ聞けるやつはいることだし。さぁ、言え。勇者はどこだ」

武闘家「……すぅー……はぁー……」スゥ

リリス「……? なにもできや――」

武闘家「あちょお〜〜〜っ!!」バッ

リリス「な、なにっ⁉︎」バサッ バサッ

武闘家「ちっ、出遅れた。……飛べるんだ。飾りじゃなかったんだね、その羽」

リリス「な、なんだ⁉︎ なぜ、動ける⁉︎」

武闘家「……くっ」ズキン

リリス「……? ま、まさか……⁉︎ くっ、あっはっはっはっ! お前! 自分の指を折ったねっ⁉︎」

武闘家「だったら、なんだってのさ」ズキンズキン

戦士「そ、そうか、その手が! よし!」ザクッ

魔法使い「う、うわぁ、剣で足を刺した」

戦士「あたしは指を折っては剣を握れない。……くっ」ズキン

リリス「迷いもなくやるとは、なかなかに見上げた根性だ」バサッバサッ

戦士「たしかに痛い。だが、そのお陰でクラついてた頭はすっきりしてる」

武闘家「麻痺は、まだ残ってるけど、ちょうどいいハンデよ」

魔法使い「わ、私も刺さなきゃいけない流れ……?」

戦士「好きにしろ」カチャ

リリス「人間風情がッ! 淫夢族の恐ろしさ!! 舐めるでないよッ!!」バサッバサッ
180 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 17:02:04.28 ID:SH/yhARoO
【武器屋】

勇者「むっ……! こ、この気配は……!」キュピーン

ピロリロリーン
勇者は週間少年ジャ○プを手に入れた!

勇者「お、おお〜! 家にいる時は読んでたんだよなぁ! どれどれ、今週のワ○ピは……と」ペラ

店主「う、うぅ〜ん」

勇者「……あれ? なんだか読んだことある。おっかしいな〜。たしか昨日が発売日のはず……ん〜……が、合併号⁉︎ あら〜、てことは来週まで続きはお預けか」

店主「うっ、わ、ワシは」ムクッ

勇者「おっ、目が覚めたのか?」

店主「ここは……ワシの家だよな。お前、誰? なんで人ん家のタンス漁ってるんだ……?」

勇者「あ、いやー、あの〜。手がかり探しといいますか、勇者の本分といいますかぁ」

店主「さ、さては泥棒……うっ」クラッ

勇者「ああ、無理すんなって。淫夢からの生還おめでとう」

店主「うっ、うぅ」ポフン

勇者「なぁなぁ、夢の中はどうだった?」

店主「夢……そうか、あれは夢だったのか」

勇者「夢を見てるって自覚はないんだ?」

店主「とても……とても、じゃないが。あれは現実だった」

勇者「リアルに感じるなら気持ちいいってこと? せ、セックスってどんな感じ?」

店主「お前、童貞か」

勇者「ど、どどどどっ童貞ちゃうわ!!」

店主「……最初はよかった。若い子を相手にしていた」

勇者「ほ、ほうほう」

店主「だが、気持ちいいのは最初の何発かまで。それ以降は、ただ、搾り取られている。そう感じた」

勇者「牛の乳みたいな?」

店主「それでも、笑うんだ。やめてくれ、もう勘弁してくれと言っても、笑い続ける……ひ、ひぃっ」ガタガタ

勇者「……」

店主「魂を……吸われてた。笑いながら、口から魂を吸ってたんだ……」

勇者「寝る前になにか兆候はなかったのか?」

店主「なにも……あの日、ワシはお香を焚いて寝ただけだよ」

勇者「お香……? 匂いなんかしないが」

店主「するだろう。イチゴのような甘い香り……たしか、枕元に……むっ、どこだ?」ゴソゴソ

勇者「なくなってると……。これはなにやら、きな臭い匂いがプンプンしてくるねぇ」
181 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 17:35:12.53 ID:SH/yhARoO
【再び 村娘 家】

魔法使い「ひ、ひぃ〜ん。戦士が短刀をおいてくれたはいいけど決心がつかないぃ〜」

武闘家「はあぁぁぁっ!! ハイィッ!!」ビュッ

リリス「……っ!」バサッバサッ

武闘家「くっ、テーブルを足場にしてもだめか……逃げ回るしか能がないの? それも狭苦しい室内で飛んじゃってさ。天井低くない?」

戦士「大層なクチをたたいていたが、薬に頼る時点でわかりきっている。戦闘能力はそうでもないな?」

リリス「くっ」バサッバサッ

武闘家「鳥族に変更したら? ただ飛び回るだけなら」

リリス「き、きさまらあぁぁあっ!! 淫夢族をバカにしたなっ⁉︎」

戦士「怒った怒った。本当のこと言われて怒ってやんの」

武闘家「悔しかったら降りて戦ってみなさいよ」スッ

リリス「……ふふっ、ふぅ、安い挑発ね。貴女達はもはや我が手中のナカ」

戦士「……?」

リリス「若い淫夢のサポートアイテム。それをご覧なさい」

武闘家「なに……?」

リリス「私がただ飛び回っていたと思うのか。羽で部屋に充満する空気をかき乱していたまでのこと」

戦士「この、お香か……?」

リリス「お前タチ。さぞかし身体を動かしていたわねぇ。運動をすれば、多くの酸素を人体は必要とする……たぁっぷり、染み込んだでしょう?」

武闘家「……っ!」クラッ

魔法使い「ぶ、武闘家!」

戦士「なんだ、これは。身体の芯が、暑い」ガクッ

魔法使い「戦士! ……あ、あれ、なんだか、私も」モゾモゾ

リリス「人が……否、生物は種の生存本能からは逆らえない! 子を残すために我らは生まれおちるッ!!」

武闘家「くっ、淫夢って、まさか、女にも」ドサッ

リリス「うふふ。淫らな術中にハマり、悶えて……快楽に身をゆだねなさい」スタッ

戦士「よ、ようやく地に足をついたな……くっ」ドサッ

リリス「もちろん。だって、貴女達は正真正銘、なにもできないから」スタスタ

魔法使い「うぅ、うぅっ」モゾモゾ

リリス「自分で弄ってもいいのよ? それとも、貴女達、みんな処女?」スッ

戦士「不埒なまねを……! 魔法使いに触れるな!」

魔法使い「うっ」ビクッ

リリス「まずはお前から。淫夢に堕ちろ」スッ

魔法使い「あ……あぁっ……」ガクガク

武闘家「せ、戦士ッ! このままじゃやばい!!」ググッ

戦士「わかってる!! わ、わかってるが、か、身体が……」ググッ

リリス「待っていろ。この者が堕ちたら、次はお前達の番だ」スッ

魔法使い「ゆ、勇者……」ガクガク
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/15(月) 17:49:23.21 ID:P5A2lMS00
ガタッ
183 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 17:50:47.13 ID:SH/yhARoO
――ガシャーーーンッ――

勇者「――……呼んだ?」

武闘家&戦士「ゆ、勇者っ!!」

勇者「内鍵閉めてるから窓から入るしかなかったじゃないの。ごめんな、窓ガラス割っちゃって」

リリス「……お前が……勇者?」

勇者「なぁ〜んで知ってるんですかねぇ」

戦士「す、すまない……私たちが……っ!」ググッ

勇者「おお、なんか随分と緊迫した雰囲気だな。寝転がってなにしてんの? 床になんかいる?」ジー

魔法使い「」ドサッ

僧侶「」

勇者「……二人気絶の、二人戦闘不能か。あ、そういや四人じゃなかったわ。俺含めて五人だ。布団の数足りる?」

リリス「なんともふてぶてしい男だ。余裕を装っているつもりでいるのか」

勇者「ありのままの現実を受け入れてます」

戦士「き、気をつけろッ! そいつは淫夢族だ! 男には特に!」

勇者「なにができんの? オラわくわくすっぞ」

戦士「手だ! 魔法使いに触れてた手がなにやら怪しい光を放っていた! そいつに触れてはだめだ!」

リリス「チッ」

勇者「やっぱり触れる必要はあるんだ? そこのテーブルにあるのがお香だろ。それはなんのために」

戦士「おそらく、導入剤のようなものだろう、それを嗅がされて、あたしたちも、その」モゾモゾ

勇者「待て、待て待て! え? お前ら、もしかして発情ナウ?」

武闘家「……っ!」キッ

勇者「冗談だって。頼むから襲わないでくれよ。俺を」

戦士「お、襲うかっ!」

勇者「それで、何匹いるんだ? この村には」

リリス「なに……?」ピクッ
184 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 18:10:59.68 ID:SH/yhARoO
勇者「村の男人口に対して、お前ひとりじゃ数が足りないだろ? それとも何人も相手にできるの?」

リリス「……バカじゃないみたいだね」

勇者「どーにもわからねぇんだよなぁ。カラクリが。たぶんどんどん近づいていってるんだろうけど」

リリス「……」バサッバサッ

勇者「飛べるんだ、それ」

武闘家「アタイも同じこと言った」

勇者「伝説によるとさぁ、枕元にたってるんだろう? んで、お香が導入剤。ここまではわかる。納得できる」

戦士「……?」

勇者「触れるのが必要なら、わざわざひとりずつ触っていってたのか? 一度触れてしまえば、後は放置プレイ? 勝手に夢の中で?」

リリス「我が一族の秘密……。きさま、それを探っているのかっ⁉︎」バサッバサッ

勇者「武器屋のおっちゃんが言うには、魂を吸われていたって。てことはだよ? 夢の中にもなんらかの実体があるはずだよなぁ? 吸えねーだろ? じゃないと」

リリス「こ、こいつ……!」

勇者「そこで、今の質問に戻るわけだ。何匹ここにいる」

リリス「答えると思うか……うふふ、女よりも男は容易い」

勇者「ん?」

リリス「男なぞ、所詮タネを飛ばすだけの生物。ヤリたい気持ちが先行するだけの愚鈍な生き物」スッ

勇者「……」ジィー

リリス「……はぁっ!!」バサァッ

勇者「翼目一杯広げて、どうし……あら?」クラッ

リリス「オンナの秘密はね、知りたいのなら命をかけなくちゃ。男ならわかるわよね?」スタッ

勇者「あ、あいにくと、付き合ったことがないもんで」フラフラ

戦士「勇者っ! おい、どうした!」

武闘家「余裕ぶってるから……!」

リリス「あら? 勇者なのに童貞なの? 股間のソードは未使用のまま?」

勇者「とっておいてあるんだ。ここぞって時のために」ガクッ

リリス「経験を積んだ方がいいわよ? 私が相手になりましょうか?」

勇者「結構です」キッパリ

リリス「……人間が。淫夢に溺れれば、そのような減らず口をたたけなくなる」
185 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 18:33:21.87 ID:SH/yhARoO
勇者「……お、おうふ。やはり、体験するって大事だ。ただいまオナ禁14日目に突入した状態だぜ」

リリス「うふふ。切ないでしょう? いてもたってもいられないでしょう?」

勇者「う、うぅ。発情させるのは触れなくてもいいんだね」

リリス「もちろんよ。男はただたぎらせるだけですもの。この翼でね」

勇者「……」

リリス「鱗粉がまけるようになっているの。男に対して、超強力な媚薬効果のある」

勇者「蛾みたいだな」ガクッ

リリス「おだまりッ! ペラペラペラペラと軽口をたたきおって!」チラ

戦士「あの、バカ! なにしに来たんだよ……!」

武闘家「ぐっ! ……身体、動け……っ!」ググッ

リリス「ふふふっ、勇者よ。あそこにメスがいるわよ」スッ

戦士「触られたらダメだ! 勇者!!」

リリス「意識は、ぼやけてくる。種を残したい。それが男の本分。勇者であっても変わらない――」ピト

勇者「あ、あぁ」

リリス「本能を解放なさいな。勇者という枠に捕らわれないで」

武闘家「戦士! 不本意だけど、アタイの腕を折れ!!」

戦士「う、腕を……! し、かし、あたしも、身体が……! それに折ったところでどうする」

武闘家「何かで上書きするしかないだろ! まだ痛みが足りないんだ! というか、それしかない! 最後の力を振り絞れ! このままじゃ、勇者が! 人間の希望が……っ!!」

戦士「くっ! ぐぅぬぬううぅっ!!」ググッ
186 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 18:49:36.18 ID:SH/yhARoO
リリス「さぁ、勇者よ。あそこにメスがいる。よくごらん」

勇者「メ、メス、オンナ」

リリス「そぉ。オンナだよ。衝動をぶちまけたいだろ? 荒ぶる男根をしずめたいだろう?」サワッ

勇者「うっ、はぁっ、はぁっ」

リリス「なかなかにかわいい反応するじゃない。そんなに苦悶の表情を浮かべて……さっきまでの余裕はどこにいったの?」

武闘家「戦士、まだか! まだなのか⁉︎」

戦士「お前は待ってるだけだろうが! こっちだっめ必死でやってるよ!!」ググッ

リリス「うふふ。いいんだよぉ? あいつらを好きにして。勇者なんて忘れちまいなよ。勇者だからしちゃいけないなんてことはないんだから」

勇者「勇者を、忘れる……」

リリス「そぉ……みんな生き物なんだ。魔族も人も動物も。みぃ〜んな、本能には逆らえない」ニタァ

勇者「だ、めだ。僕は、勇者なんだ」

リリス「……ボクぅ? ぷっ、クックックッ、ボクっ子だったの?」

勇者「勇者、勇者なんだ……」ブツブツ

リリス「かわいいね。母性本能をくすぐられる……ほら、あそこのお姉ちゃん達と遊んでおいで……?」

勇者「うっうぅ……」

戦士「そんな、まさか。勇者! 目を覚ませっ!!」

武闘家「集中しろッ!! かまうな!!」

戦士「しかし……っ!!」

リリス「くっふっふっふっ! これが伝説か! ルビスの加護とはこんなものか! なんだこのあっけなさは! 」

勇者「う、あう」フラフラ スタスタ

リリス「これなら、淫夢王様に報告するまでもない。ここでお前らは全滅だ!!」
187 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 19:29:27.31 ID:SH/yhARoO
勇者「オンナ、オンナ……」スタスタ

戦士「や、やめろよ、勇者。冗談、だよな? いつもの冗談だろ?」

武闘家「最初から全力でやってれば、勇者ならあんなやつワンパンでいけたはずなのに……!」ボソッ

勇者「はぁっ、はぁっ、たまんねぇ、戦士、武闘家」スタスタ

戦士「く、くんなよっ! こっちくんな!」

勇者「興奮させようとしてるんだろ……? そうやって嫌がって」

戦士「や、やめろ! そんな品定めするような目で見るな! いつもの勇者に戻ってくれよ!」

リリス「クスクス。無駄だよ。そこにいるのはただのオスなんだから」

勇者「お前らだって発情してんだろ? そうだよな?」

戦士「い、いやだっ! あ、あたしは、こんなの……」

武闘家「師匠、ここまでのようです。先立つ不孝をお許しくださ……うぶっ⁉︎」

勇者「おっとぉ、なに舌かもうとしてんだ。させねえよ」

武闘家「ゆ、指を、クチに、いれて、ふぉのっ(このっ)」キッ

勇者「……ここまでかな。良い子に見せられるのは」ボキィ

戦士「ゆ、勇者……?」

勇者「淫夢族のチャームとでもいうのかね。たしかに強烈だ」ダラン

武闘家「ぷはっ、ま、まさか……勇者!」

戦士「お、お前、自分の腕を――」

勇者「傀儡にするというなんとまぁありがちなパターンで。おまけに催眠効果だけど、単純だから強烈。いやはや、危ないもんだ」

リリス「……っ! またか! お前も折りやがったのか!」

勇者「ネタバラシを聞き出すつもりが、まんまと蜘蛛糸にひっかかりそうだった。肝心なところ……どうやって精気を吸い取るのか。淫夢族の秘密とやらは、まだ聞けそうにないな」バチ バチバチッ

リリス「……? なんだ?」

勇者「この村から出て行け。それで話をつけよう」バチ バチィッ

リリス「ふざけるな!! なぜそんなことを――」

勇者「ライデイン」ピュン

リリス「う、うっあっ?」

勇者「反応できないだろ。稲妻の速度は。壁に穴あけるぐらいに抑えたけど、次はもっと強烈なのいくぞ」

リリス「……い、いまのが、伝説の」

戦士「み、見えたか? 武闘家」

武闘家「いや、なにかが、指先から光ったとしか」

リリス「くっ! な、舐めるんじゃな、い……」

勇者「二度は言わないぞ。腕が痛いんだ」バチィ バチバチッ

リリス「うっ」ズサッ

戦士「こ、これが、勇者だけが持つ、攻撃魔法」

武闘家「……」ゴクリ

勇者「あのなぁ、これでもめちゃくちゃ加減してんだ。頼むから帰れよ」
188 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/15(月) 19:52:53.61 ID:SH/yhARoO
リリス「(ど、どうする、もう一度、翼で……!)」

勇者「変な気起こさない方がいいぞ。指先大ほどのちっちゃな穴がどでかい穴にかわる。お前が反応して避けられるってんなら別だが」

リリス「(バレてる。……しかし、勇者に我が一族の特技が通用する……! これは有益な収穫だ……!)」

勇者「お帰りは俺が割った窓か、玄関。お好きな方をどうぞ。手下がいるかわからずじまいだけど、そいつらもね」

リリス「いいのか? 私がこのまま帰れば、お前の所在もバレるぞ。全魔族に」

勇者「まぁ、しゃーないよね。こうなったら」

リリス「安心して眠れる夜はなくなるぞ」

勇者「うん、まぁでもそれももう少しの辛抱だから」

リリス「……? もう少しの、辛抱?」

勇者「(だって俺、勇者やめて遊び人になるし。勇者いなかったら追いかけるのもやめるだろ)」

リリス「なにかたくらんでるのか……?」

勇者「いやいや。そんなたいしたものでは」

リリス「……いいだろう。この場は退散してやる。帰る理由もあるし」

勇者「助かる」

戦士「い、いいのかっ⁉︎ このまま逃して! ライデインを撃てよ! そうすれば口封じできるだろ!」

勇者「いや、いいよ。不要な殺しは」

リリス「なるほど……やはり伝承は事実か」

武闘家「勇者! そんな甘さではこの先生き残れないぞ!」

リリス「くっふっ。たしかに甘い。魔族との友好など! そんな幻想! 実現するものか!!」

勇者「(友好? なぁーにいってんだこいつ)」

武闘家「ま、魔族との友好?」

戦士「勇者、そんなことを考えていたのか……」

勇者「えっ? いや、あの」

リリス「夢物語は絵本の中だけにしておくんだね!」

勇者「(なんか勘違いして盛り上がってるけど、ま、いいか。ほっとこ)」

リリス「その甘さがいつか命とりになる! あーっはっはっはっ!!」バサッバサッ

勇者「ほーい。おつかれさーん」

戦士「ゆ、勇者、お前ってやつは」

武闘家「飛び立ったばかりの今からでも遅くない、さっきの魔法を! なんなら追いかけてでも!」

勇者「いや、いいんだ。これで」
189 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/01/15(月) 20:19:57.76 ID:SH/yhARoO
今日はここまで。
2章はここで終わりません。もうちょっと続きます。
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 20:59:58.01 ID:HHHXyKPD0
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/15(月) 22:10:50.13 ID:yR6Pznv8O
乙!
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 22:46:44.08 ID:zeFDaewUO
乙!!
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 23:59:53.58 ID:LTwiNt67o
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/16(火) 00:17:42.29 ID:z/HeZFuZ0
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/16(火) 00:32:36.83 ID:5PpiS5Es0
乙!
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 01:40:19.35 ID:YM4lBZtA0
この一連のage荒らしって同一人物か?
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 03:58:27.67 ID:1puiPYf+O

面白い
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 11:43:08.93 ID:IaGBopf0O
乙。>>196sageも知らないチンパンジーが沸いてるだけだろ気にするな
199 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 12:02:39.15 ID:g1xmOKbDO
【数十分後 村娘 家】

村娘「みんなが目覚めはじめたわぁ〜! 祈りが通じたのよぉ〜っ!」タッタッタッ

村人「待てよぉ〜っ! こいつぅ〜!」タッタッタッ

村娘「きゃっ! いたっ!」ドテン

村人「だ、大丈夫かっ⁉︎」ササッ

村娘「もう、私、寂しかったんだから……ほっとかれて。ずっと寝たままで」

村人「村娘……」スッ


勇者「窓の外じゃキャッキャウフフな光景がひろがってるというのに――」チラッ

戦士「……」ギロッ

武闘家「……」ギロッ

勇者「――なぜにわたくしめは、腰に手をあて仁王立ちしているお二人に正座させられてるので?」

戦士&武闘家「自分の胸に聞いてみろっ!!」

勇者「なんだよぉ〜いいじゃないかべつにぃ〜」

僧侶「ちょっとぉ〜戦士さん動かないでくたざいよぉ〜。まだ回復魔法終わってないんですから〜」ポワァ

魔法使い「さすがに擁護できないわね」

勇者「異議ありッ!! いったいいつ魔法使いが俺を擁護したと……」

戦士&武闘家「勇者ッ!!」

勇者「はい。すんまへん」

戦士「なんということだ! なんたることだっ!!」

武闘家「どうするつもり? これから。明日にも魔王軍が大挙で押し寄せてくるかもしれないよ」

戦士「いまわかった! いや、前々から掴み所のない奴だと思ってはいたが……お前には圧倒的に自分がわかっていない!!」

勇者「……」

戦士「勇者なんだぞ! ゆ・う・しゃっ! わかってるのか⁉︎ 自分の立ち位置が!」

勇者「わかってる」

戦士「いいや! わかってない! 魔族に甘いのがわかってない証拠だ!!」

魔法使い「横から言うけど、魔族は敵なのよ? 起きていなくなってるからてっきり倒したと思ったのに。聞いてびっくりしたわ。まさか、友好を考えていたなんて」

勇者「俺はべつに」

武闘家「魔法使いが言っていたな! なんでもモンスターの墓を作っていたそうじゃないか! 隠そうとしても無駄だよ!」

勇者「それは、ほら。墓ないとかわいそうかなーって」

僧侶「これで、よしと。足の傷口はふさがりましたけど無理しないでくださいねぇ〜。次は、武闘家さん〜」

戦士「それがわかってないというんだ! 人間と魔族は敵対してるんだぞ⁉︎ お前は人間の代表的な存在だろう⁉︎」

勇者「そ、そりは、まわりが勝手に」

武闘家「喋るんならハキハキ喋りな!!」バンッ

僧侶「ほらほらぁ〜動かないでぇ〜。ベホイミ〜」ポワァ

勇者「……う、うるさいわいっ! お前らこそ! 勇者に対する扱いというものがなっちゃいないんじゃなかろうか⁉︎」

魔法使い「自分で気楽に接してくれって言ったんじゃない」

勇者「うっ」

戦士「勇者様よ。敬えというのなら敬おう。だが、もっと考えろよ……!」

勇者「す、すんません」シュン
200 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 12:16:11.37 ID:g1xmOKbDO
武闘家「……はぁ、過ぎたことをいってもしかたないのはわかってる」

勇者「そ、そうだぞ! ここは頭を切り替えてだな!」

武闘家「黙れ」ギロッ

勇者「ひゃ、ひゃい」

魔法使い「ほらほらぁ〜。申し訳ないと思うならワンと鳴いてみなさ〜い」

勇者「ワンワン!」

魔法使い「よくできたわねぇ〜。お手」

勇者「ワンッ!」ピト

戦士「こ、こいつ。プライドないのか……。怒るのがバカバカしくなってきた……」

僧侶「私たちも悪いんですよぉ〜? わざわざ勇者だって教えたのは戦士さんと魔法使いさんですよねぇ〜」ポワァ

戦士&魔法使い「うっ」

僧侶「肝心なときに戦闘不能に陥っていたのはどこの元チャンピオンさんでしたっけぇ〜」ポワァ

武闘家「そ、それは……」

僧侶「最初に会敵したのは勇者さまではなく私たちなんですからぁ〜。助けていただいて感謝すべきではぁ〜? あのままだと成すすべありませんでしたよねぇ〜?」

勇者「……」

戦士「たしかに、そうだが」

勇者「ペッ!」ビチョ

魔法使い「きゃ、きゃぁっ⁉︎ 勇者! なに人の手にツバとばしてんのよバッチい!!」ゴシゴシ

勇者「あ〜ん? なんだぁ? その態度は? 助けていただいてそんな態度でいいのかぁ〜?」

魔法使い「こ、こいつ……!」

勇者「僧侶。貴様は我が参謀に格上げいたそう。良きに計らえ」

僧侶「は、はぁ……」

戦士「今はそういう話では!」

勇者「だまらっしゃい! ウダウダいってもしょーがないの! これからどうするかなの! 重要なのは!」

武闘家「ゆ、勇者がそれを言うか」
201 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/01/16(火) 12:39:29.76 ID:g1xmOKbDO
勇者「だいたいだな。戦士と武闘家はいつのまに息ぴったりになってんだよ」

戦士「お前のせいだ」

武闘家「共通目的があるから」

勇者「やめていただけるかな⁉︎ 俺を口撃して団結すんの!」

僧侶「また話がそれだしてますよぉ〜。どうしましょうねぇ」

戦士「魔王軍の戦力。どれほどのものか。実態は誰も知らない」

武闘家「さっきの淫魔は確実に伝えるだろう。そうなれば、言われた通り、全魔王軍……親玉である魔王自らが勇者を潰しにかかるかもしれない……!」

勇者「おっかねぇ」

戦士「だったらなんで逃したんだよっ!」バンバンッ

勇者「……ふむ」ピラ

魔法使い「百歩譲って、勇者は自分が襲われるのを良しとしたとしましょう。でも、この村も危険に晒されるのかもしれないのよ? 滅ぼされたら、どう責任とるつもり?」

勇者「いや、そうはならない」

僧侶「なぜでしょう〜?」

勇者「現状が膠着状態だからだよ。俺が立ち寄ったとされる村々を潰せば、人間たちも黙っちゃいないだろ」

戦士「……」

勇者「人間vs魔族の全面戦争が勃発する。なぜだか知らないが、そうはなっていないから。むやみやたらと人間達の住む村々を攻撃しないよ」

魔法使い「その言い分には穴がある。淫魔達はこの村を実質襲っていた。このままいけば、壊滅していたわ」

勇者「まわりくどいやりかた、でな」

魔法使い「……そ、それは」

勇者「なるべく目立たないようにしてたんだと思うよ。もっと大規模にやってもかまわないんなら、人口の多い、例えばマッスルタウンを狙うだろ」

僧侶「アデルの城下町でもいいわけですしねぇ」

勇者「魔王軍は今はまだ、人間達と争う気はないらしい。明日はわからないけど」

魔法使い「じゃあ、あくまで勇者を個人的に狙ってくるってこと?」

勇者「……だといいけどねぇ。ルートを迂回する」

武闘家「どう行く?」

勇者「現在地はここ」

僧侶「西から東に、中心地のダーマに向かってまっすぐきたのでぇ〜。3分の1ちょっとを過ぎたあたりですぇ」

勇者「その通り。ここから北に向かう」

魔法使い「北? 北ってことは雪原よ?」

勇者「この村で防寒対策をしっかり行う。休業していた稼ぎをとりかえすため、営業再開はまもなくするだらうからな」

戦士「北か……なぜ、南のクイーズベルではなく北なのだ?」

勇者「行きたくねぇから」

魔法使い「そ、そんな理由」ガックシ

僧侶「暑さよりも寒さの方がお好みなんですかぁ〜?」

勇者「いや、知り合いがいるんだよ。南の国は」
202 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 12:58:23.53 ID:g1xmOKbDO
魔法使い「寒いと乾燥するから、寒さよりは暑さがいいなぁ。肌によくないし」

武闘家「強い紫外線だって同じだろ」

魔法使い「……へぇ。武闘家も美容に気をつけてるんだ?」

武闘家「ち、ちがっ! そんなんじゃ、ない」

戦士「知り合いとはどういう知り合いだ?」

勇者「こわいのがいるんだ」ゾクッ

僧侶「こわい……?」

勇者「……とっても、恐ろしいやつが……や、やめて! パンツ脱がさないでっ! チン○ンの皮はひっぱるものじゃないよぉ!」ガタガタ

魔法使い「……だいたい想像がつくわね」

戦士「甲斐性の“か”の字もこいつからは感じられん……本当に、ついていっていいのだろうか」

勇者「……そこでだ」キリッ

僧侶「くすくす。コロコロ表情が変わって面白いですねぇ」

勇者「ギャグじゃないわい。……お前らも、よく考えろ」

魔法使い「考えるってなにを?」

勇者「俺と一緒にいると危険だぞ。まだ引き返せる」

戦士「……?」

勇者「いや、あのですね。そんな何言ってんだこいつみたいなキョトンとされても」

武闘家「バカじゃないのか、お前」

勇者「ストレートに言わないで⁉︎」

魔法使い「旅に危険はつきものでしょ」

勇者「危険の度合いといいますか」

戦士「死ぬのがこわいなら最初からついてきていない」

勇者「あ、そう」

僧侶「優しいんですねぇ〜。でもぉ、余計な気をまわしすぎですよぉ〜」

魔法使い「はぁ……いきなりなに言い出すかと思えば、くだらない」

勇者「すみませんねぇ! ……おや?」ピクッ

武闘家「今度はなんだ」

勇者「ちょっと、トイレ」

戦士「申告しなくていいから、さっさと行ってこい」
203 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 13:35:50.93 ID:g1xmOKbDO
【淫夢城 玉座】

サキュバス「勇者を発見したっ!?」

リリス「はいぃ〜お姉様ぁ。見事リリスが突き止めましてでございます〜」スリスリ

サキュバス「報告! 報告なさい!」

リリス「ハッ! またもやトリップしてしまいました。お姉様がいけないんですよぉ、そんなに誘惑の波動をまきちらしてぇん」

サキュバス「……」ギロッ

リリス「ひっ⁉︎ も、申し訳ありません」

サキュバス「……して、勇者がいたというのは嘘偽りない真実か?」

リリス「はい、まことでございます。ミンゴナージュ村にて、遭遇いたしました」

サキュバス「だからか? 精気を搾り取る前に、撤収してきたのは」

リリス「は、はい。先に報告するのが急務と考えまして」

サキュバス「勇者を殺そうとはしなかったのか?」

リリス「そ、それは……」

サキュバス「目の前にいれば考えるはず。できなかったとすれば、圧倒的に力の差があったか?」

リリス「いいえっ! たしかに……攻撃魔法はたいしたものでしたが」

サキュバス「……攻撃魔法ですって?」

リリス「お姉様……失礼、サキュバス様もご存知のライデインです」

サキュバス「稲妻の……どのような威力であったか」

リリス「実際のところは……でも、通常の属性魔法と違い反応できるものではありませんでした。光速の速さといいますか、パッと光ったかと思い振り向けば、穴が」

サキュバス「それで、おめおめと逃げ帰ってきたか? なにもできず」

リリス「なにもできなかったなんてとんでもございません! お喜びください! 勇者に我が一族の特技は通用いたします!」

サキュバス「ほう……?」

リリス「誘惑が効きました! 精神攻撃が有効なのです! お姉様っ!」

サキュバス「それはそれは。たしかに良い報告ね。でも、そうならなぜその場で殺さなかったの?」

リリス「自分の腕を折り、正気を取り戻したのです。そしてライデインの威力をまざまざと見せつけられ……」

サキュバス「報告は終わりか」スッ

リリス「けっ、けっして! けっして逃げてきたわけではありません! 本当です! 罰はどうか!」

サキュバス「リリス、誘惑するなら骨までトロけさせなさいと言ったでしょう……」

リリス「は、はい」ブルブル

サキュバス「そんなに震えて。どうしたの?」

リリス「や、やはり、今からでも殺してまいります!」

サキュバス「よい。ゆっくり休め」

リリス「お、お願いです! サキュバス様! どうか、お慈悲を!」ガタガタ

サキュバス「……うふふ。かわいいかわいいリリス。怯えなくても平気。勇者には、私が会ってくる」

リリス「淫夢王様がっ⁉︎ そ、それは必要ないんじゃ。魔王様に報告して、あとは招集会議を」

サキュバス「勇者……。どれほどのものか自分で確かめたい。魔王様が、我が大魔王があれほど言う人物。たしかめねば、気が済まないのよ」
204 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 13:51:50.61 ID:g1xmOKbDO
【村娘の家 トイレ】

勇者「漏れちゃう漏れちゃう」ジーッ

サキュバス「……」パッ

勇者「ふぃ〜この瞬間が心のオアシスやでぇ〜」ポロン

サキュバス「……リリスのやつ。転移魔法陣の座標誤ってる。使えない部下なんだか……ら?」キョトン

勇者「あ?」ジョロロ

サキュバス「えっ、ちょ、ちょっと」ビチャビチャ

勇者「おっ、ちょ、なんでいきなり便座に座ってんだよ! 急には止まらないんだって男は!」ジョロロ

サキュバス「め、目にはいっ、うえっ、口の中に」

勇者「顔にあたってはねてる! ばっちい!」チョロチョロ

サキュバス「お前のだしてるものだろうが! か、髪に、私の髪が……っ!」

勇者「……」チョロ

サキュバス「……に、人間よ。なにか申し開きはあるか」

勇者「いきなりは、勘弁してほいかなーなんて。あと場所も」

サキュバス「……」プルプル

勇者「ご、ごめんね? ツラかったよね? 顔にションベンぶっかけられ、髪と衣服まで……着てる服って、あぶない水着?」

サキュバス「――……死ねッ!!」バァッ
205 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 14:14:19.75 ID:g1xmOKbDO
【村娘の家 リビング】

僧侶「みなさん機嫌をなおしましょ〜」パンパン

戦士「機嫌なら……怒るのもバカらしくなった時点で。……呆れてるだけだよ。これから、魔王軍に目をつけられた旅になるかと思うと」

武闘家「死ぬのはこわくないと言ったくせに、ビビってるのか」

戦士「悪目立ちをしてしまったという意味だ!」

魔法使い「まぁ、その点については私たちも責任の一端があるのはたしかだし。問題は勇者の性格よね」

戦士「あぁ。だいたいあたしもつかめてきた」

魔法使い「てきとー、甲斐性なし」

戦士「うんうん」

魔法使い「私たちがしっかりしないとだめね」

僧侶「そんなことありませんよぉ」

魔法使い「僧侶、ほんっきで勇者に惚れてるわけ? 肩書きなかったら、しょーもないやつでしょ」

僧侶「それはぁ、おふたりの見る目がないだけでぇ」

――バンッ バンッ ドォーーン――

戦士「爆発音⁉︎」

武闘家「トイレの方からだ!」ダダダッ

魔法使い「今の炸裂音は……イオ系よ! イオ系の呪文だわ!」

僧侶「すごい音でしたねぇ」

武闘家「おい、どうした! ゆう、しゃ……」パタン

戦士「武闘家! なぜ扉の前で立ち尽くしている!」タッタッタッ

武闘家「……ない」

僧侶「ないってなにがですかぁ?」トテトテ

戦士「こ、これは……⁉︎」ギョッ

武闘家「トイレが、壁が、なにもかも。丸ごと、なくなってる」ヒュ〜

僧侶「あらあらぁ〜。外と繋がっちゃってますねぇ」

魔法使い「それで、勇者は……どこ?」
206 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 15:22:56.92 ID:wnE7S7Y5O
【ミンゴナージュの村 数キロ先】

サキュバス「この淫夢王に向かって、せ、聖水プレイだと……」バサッバサッ

勇者「高くて良い眺めである」

サキュバス「なぜしがみついてるんだお前はっ!!」

勇者「いきなりイオナズンとかぶっ放すから爆風で掴んだのが貴女でした」キリッ

サキュバス「こ、この……! 下等生物……!」

勇者「聖水プレイははじめてだったのか? 力抜けよ」

サキュバス「……」ヒクヒク

勇者「どこまで行くんだ? そろそろ地上に下ろしてほしいんだけど」

サキュバス「よかろう……ならば望みどおりっ!! 落ちるがいいっ!!」バサァ

勇者「おっ、いきなりそんな、あぶなっ、あっ」ツルッ

サキュバス「まだだ……メラゾーマ」ボォ

勇者「落下する相手に追い打ち? だめだよーそんなのは」ヒュー

サキュバス「今度こそ……! 死ねぇぇぇっ!!」ゴォッ

勇者「……っ!」バッ

サキュバス「腕を交差したところで防げるものかっ!! そのまま灼熱の業火で焼かれるがいい!!」

勇者「フバーハ」ボォ

サキュバス「……っ! 耐火魔法か!」ゴォォォッ

勇者「うぉっ! あちっ、なんだ? 防御魔法が」

サキュバス「そんじょそこらのやつが放つメラゾーマだと思うなよ! そんなちっぽけなもので……!」

勇者「にょわわわぁ〜〜〜」ヒュー

サキュバス「……な、なんだ。今のマヌケな叫び声は。落下していったが……一応、確認しておくか」
207 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 15:40:23.48 ID:wnE7S7Y5O
【ミンゴナージュの村〜 荒野】

サキュバス「このあたりに落ちたはず。岩だらけで目視しずらいわね」バサッ バサッ

勇者「あ〜、死ぬかと思った」ガラガラ

サキュバス「……っ⁉︎」ギョッ

勇者「ただのメラゾーマだと思って舐めてたわ。見てくれよ。マントが焦げちまった」ビリビリ

サキュバス「な、なんだお前は⁉︎ こ、この私のメラゾーマだぞ!」バサッ バサッ

勇者「この私ってどちら様か知らんけども。ご近所さんではないな」

サキュバス「ま、まさか、お前が……⁉︎ お前が勇者なのか! そうであろう! 生身の人間でこんな強力な個体などいない!」

勇者「んー、まぁもう隠しても仕方ないか。そうだよ」パンパン

サキュバス「そ、そうか……貴様が。どおりで、消し飛ばしたはずのイオナズンも、焼き殺したはずのメラゾーマも」

勇者「さっきのやつなぁ、俺以外に放つとあぶないと思うんだ」

サキュバス「ふ、ふふっ! 勇者よ! 私はお前に会いにきた!」

勇者「それはどうも。こんにちは」ペコ

サキュバス「その実力。伝説に違わぬかどうか私自らが見定てあげる。――見せてみなさい。魔王様に届きうるか否かッ!!」バサァッ

勇者「めんどくせぇ」ゲンナリ

サキュバス「まずは小手調べといきましょうか。この荒野とともに散りとなるなよ……」

勇者「心配してくれんの?」

サキュバス「がっかりさせるなという意味だ! さっきよりも魔力を高めてるぞ」ギュイィィィン

勇者「(こいつは……今まで会った中で一番やべぇっ!!)」グッ

サキュバス「連鎖する爆風! 小さき精霊(もの)どもよ! 連なり爆(は)ぜろ!! イオナズンッ!!」
208 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 16:02:56.87 ID:wnE7S7Y5O
【ミンゴナージュの村 村娘の家」

魔法使い「えっ? えっ? 勇者は、どこに行ったの?」

僧侶「もしかしてぇ〜。責任を感じて一人で行かれたのではぁ〜?」

戦士「そ、そんなタマかぁ? あいつが」

僧侶「絶対ないって言い切れますかぁ?」

魔法使い「可能性の話をしたらキリがないけど」

武闘家「いなくなってるのは事実さ」ドサッ

戦士「どうしたんだ? 座りこんで」

武闘家「どーすんのさ。これから。アタイ達は」

魔法使い「どうするって?」

武闘家「忘れたの? 旅の目的」

戦士「いや、忘れてないが」

武闘家「アタイは師匠との約束を守るため。あんた達は何のためか知らないし、知りたくもないけど……勇者についてく。そう思ってパーティ組んでたんだろ」

魔法使い「……」

武闘家「見切りをつけられちまったのは、アタイ達の方だったってわけだ」

戦士「いや! しかし、あたしたちだって選ぶ権利が」

武闘家「その選ぶ権利とやらはさっき行使したばっかだろ。満場一致で勇者と行動をともにする。そこに疑問なんてあったの?」

戦士「それは、なかったが」

武闘家「アタイが言ってるのは、“勇者にだって選ぶ権利がある”。そういうことだよ」

魔法使い「……で、でもっ!」

武闘家「でももへったくれもないって言ってんだろ!」バンッ

魔法使い「……っ!」ビクッ

武闘家「いなくなってるんだよ……リーダーが……どうすんだよ……これから」

僧侶「メソメソしたって仕方ないですよぉ〜」

武闘家「だ、誰がメソメソしてるって⁉︎」

僧侶「私には、武闘家さんが一番ショック受けてるように見えます〜。ほかのお二人は、ポンコツさんなので実感がないかもしれないですけどぉ」

戦士「う、うむ。言われてみれば、先ほどはきつく言いすぎたかもしれん」

魔法使い「……」

――ドォーーンッ ドォーーンッ――

武闘家「なんだ……?」パラパラ

戦士「天井からホコリが……それに、かなり離れてるが音が聞こえる」

魔法使い「マッスルタウンの花火?」

戦士「バカいえ。そんな大規模なものでは……それに断続的に続いている」

武闘家「向こうの方角だね。空が……? 雨雲?」

僧侶「さっきまで曇ってませんでしたのにぃ〜……これって、まさかぁ、あの魔法ではぁ?」

戦士「僧侶、なにか?」

僧侶「予想が正しければ勇者様はまだ数キロ先にいらっしゃいます〜。追いかけますよぉ〜」
209 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 16:23:23.98 ID:wnE7S7Y5O
【ミンゴナージュの村〜 荒野】

勇者「あっぶぇなぁっ!」ヒョイ

サキュバス「危ないで済んでるお前はなんなんだ! すこしは攻撃したらどうっ⁉︎ それか、当たりなさい!」ブンッ ズォッ

勇者「わろたww当たるバカがいるかよww」

サキュバス「……バカ?」ピクッ

勇者「むっ? いや、言葉のあやで」

サキュバス「バカにしたのか? 王の前で、一族を……?」ゴゴゴッ

勇者「(煽りすぎたか。顔真っ赤やで)」

サキュバス「この私をおおおおおっ!! 誰だと思っているかぁぁああッ!!!」バサァッ

勇者「……ぬっ⁉︎」グッ

サキュバス「――……“誘惑の波動”」キィィィッ

勇者「な、なんだ? あり?」ガクガク

サキュバス「どうした? 勇者よ、下等な人間よ。膝が笑っておるぞ」

勇者「ぬぐっ、ち、力が、抜ける」ガクッ

サキュバス「そうだ! 膝をつけ! それこそが王たる私にふさわしい姿勢! バカにするなど万死に値するッ!!」キッ

勇者「ま、まずいぞ、これ」ドサッ

サキュバス「リリスの報告はただしかったようね。ねぇ、なぜ私が淫夢の王になれたと思う?」

勇者「し、しらないけど」ググッ

サキュバス「それは、魅惑の魔眼を開花できたから。この魔眼を開花するには膨大な魔力を必要とするの。体力もね……でも、効果は絶大」

勇者「どんな、チートなんだ」

サキュバス「どんな強者であっても、見つめられると私の意のままに操れる」

勇者「そ、それはまた、ありがちな能力で」ググッ

サキュバス「それだけじゃないわ。意のままに作り変えることができる。過去も未来も」

勇者「……?」

サキュバス「現在は、過去と未来の中にあるのよ。普遍的なものではないから。あなたが成り立っている過去、家族、全てを忘れられたら……?」

勇者「意味が、わからん」

サキュバス「別の人間になってみる?」

勇者「な、に……?」

サキュバス「リリスも使ったかもしれないけど、あの子はまだ開眼できていなかったでしょうから。……勇者よ、あなたは今から勇者ではない」キィィィン
210 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 16:52:23.36 ID:wnE7S7Y5O
勇者「……」フラァ

サキュバス「そう……いい子ね。あなたはもう勇者ではないのよ」

勇者「勇者じゃ、ない」スゥ

サキュバス「ただの青年。疲れたでしょう? 人間たちの御輿に担がれるのは」スタッ

勇者「でも、僕は、みんなが期待してるから」

サキュバス「(深層心理がでてきてる……)……いいのよ。忘れて。魔族になりましょう」

勇者「だめだよ、そんなのっ! 僕が、僕がやらなくちゃ……!」

サキュバス「……言うことを聞きなさい」キィィィン

勇者「うっ、あ、あぁっ」ガクガク

サキュバス「いい? あなたは――……勇者じゃない」

勇者「わかった……」ビュッ

サキュバス「……っ⁉︎ き、消えたっ⁉︎ そ、そんな、どこに……っ⁉︎」

勇者「……こっちだ。ウスノロ」ビュッ ブンッ

サキュバス「……っ! う、うしっろぉ……っ⁉︎ ぎゃあっ」ドゴーーンッ

勇者「……」スッ

サキュバス「……う、うぅっ」パラパラ

勇者「……僕は、勇者じゃない」バチィ バチバチィッ

サキュバス「くっ、な、なんだ……っ⁉︎ 今の一撃は! 今のスピードは! パンチは! わ、私の障壁が……っ!!」ゾワッ

勇者「お前を殺すぞ……」

サキュバス「あ、雨雲が……勇者の頭上に。いつのまに。……やつが作ってるのか⁉︎」ギョッ

勇者「ギガ……」バチィッ バチバチィッ

サキュバス「ひ、ひぃっ⁉︎」アタフタ

勇者「ギガ・デイン!」バチバチィ ピシャン

サキュバス「――……ギャぁあああああっ!!」バチバチィ

勇者「まだまだ……!」バチバチィ

サキュバス「うがぁぁぁぁあッ!! こ、こんなもの、こんなぁっ、ギャあああっ!!」バチバチィ

勇者「……う、うぅっ」ピタッ

サキュバス「ああァァッ――……あっ、あっ、うっ」プス プス

勇者「だ、だめだ。こんなの……」

サキュバス「うっ、うっ、一瞬で、障壁が、すべて……こ、こんな……こ、こいつの牙は……ルビスめ……隠していたのかぁ……!」プス プス

勇者「」ドサッ

サキュバス「き、気絶した、のか。じょ、冗談ではない、ぞ。我を失っていたとは、いえ……それは、本来持ってる力をふるっただけ、のはずっ」ズリ ズリ

勇者「」

サキュバス「息の根を止めねば……! こ、こいつの力は……魔王に、匹敵する……ッ! 友好などと……なまっぬるい話ではない、我が王の不安は、正しい……ッ!」ズリ ズリ

勇者「」

サキュバス「こいつは、今っ、ここでぇ、殺しておかねばならないッ……!」ブンッ
211 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 17:18:38.42 ID:wnE7S7Y5O
サキュバス「――……なんの、なんの」ズワナワナ

ハーピー「……」バサッバサッ

サキュバス「なんのつもりだっ!! ハーピーッ!!」クワッ

ハーピー「……すミません」スタッ

サキュバス「魔族語でよいわ! 担いでる勇者を連れてさっさと降りてこい!! なんならお前が息の根をとめろ!!」

ハーピー「……」チラッ

勇者「」

ハーピー「この者の命、私が預かります」

サキュバス「ばっ⁉︎ バカなことを言うなっ⁉︎ すぐに出てこれたということは、お前も見ていたんだろうが!」

ハーピー「転移の魔法陣で送ります。サキュバス様であれば、一命はとりとめるでしょう」

サキュバス「だめだ、だめだだめだだめだぁッッ! 今すぐ殺せ! やれ!! なぜ人間を助ける! 魔族だろうが!!」

ハーピー「魔族、だから、です」

サキュバス「な、なにを世迷言を……」

ハーピー「誇りがあるからっ! この者は、必ず私が殺します」

サキュバス「中級のお前なぞに敵うものか! 一瞬で消し炭にされるぞ!! 私の姿を見よ!!」ズリ

ハーピー「そう、かもしれません」

サキュバス「獣王に報告するぞ⁉︎」

ハーピー「追い、だされ、ました」

サキュバス「〜〜〜ッ!! この馬鹿者がっ!! 誘惑の波動ッ!」キィィィ

ハーピー「ご無理をなさらない方が。今は力を回復に回すのです。……本当に、死んでしまわれます」

サキュバス「くっ、おのれぇぇえええっ!! 力が……!」ガクッ

ハーピー「私は、魔族にも、人間にも、属さぬ身。しかし、魔族である誇りは失っていません」

サキュバス「な、なぁ? そいつを殺せば、クチを聞いてやろう! 獣王との仲をとりもってやろう!」

ハーピー「それもまた、然り」

サキュバス「か、かたいことを言うな! 我らは魔族だろうが!」

ハーピー「ご達者で。獣王さまにもよろしくお伝えください」スッ

サキュバス「ハァァァピィィィッッ!! 許さんぞ!! 貴様の一族! 家族! 親兄弟全ての魂を抜き去ってやるっ!! 魔王様にも報告して、未来永劫地獄の業火で焼かれ――ッ!!」スゥーー

ハーピー「はぁ……ばいばい。サキュバス」

勇者「」

ハーピー「……これで、貸し借りなしよ。お前は、勇者は私が必ず殺す。もっと強くなって。命は私のものだ」バサッバサッ
212 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 17:43:29.47 ID:wnE7S7Y5O
【一時間後 荒野】

魔法使い「な、なによ、これ。地形変わってるんじゃないの? 隕石でも落ちてきた?」ゴクリ

戦士「足場がかなり脆くなってる! 踏み外して足をくじかないように気をつけろよ!」

武闘家「……」タンッ タンッ

僧侶「ぶ、武闘家さん待ってくださぁ〜い。そんなに軽々と超えられませんよぉ〜」

武闘家「爆心地にいるはず。どこだ……」キョロキョロ

戦士「焦げ臭い匂いがする。枯葉が焼かれているのか」

武闘家「……」キョロキョロ

魔法使い「かすかに魔力の残り香を感じる……戦ってた? ここで?」

僧侶「ふぅ、ふぅ。よいしょっうんしょっ」カラカラ

武闘家「いたっ!」タンッ タンッ

勇者「」

武闘家「おいっ! 勇者!!」ダダダッ

戦士「ん⁉︎ 勇者? おぉーい! 武闘家! そっちに勇者がいるのか⁉︎」

武闘家「身体が、熱い……! 僧侶! こっちだ! 早く来い!!」

僧侶「そ、そういわれましてもぉ〜。急いでますよぉ〜」

武闘家「……」ピトッ

僧侶「到着〜おでこをくっつけられてますけどぉ、熱があるんですかぁ?」

武闘家「あぁ、かなり熱い。診てやってくれ」スッ

僧侶「わ、私は医者じゃありませんので診断はぁ。とりあえず、回復魔法をぉ。ベホイミ」ポワァ

勇者「」

僧侶「キアリク」ポワァ

勇者「」

僧侶「キアリー」ポワァ

戦士「よいせっと。……ん? 勇者どうしたんだ?」

魔法使い「せ、戦士、手を貸して」

僧侶「……これは、まずいわ」

戦士「まずいって、なにが?」

僧侶「武闘家さん! 勇者様を担いではやく村に戻るのよ!」

武闘家「えっ、あ、ああ」

僧侶「はやく! 貴女の足が一番はやい! 村に帰ったら氷水につけたタオルで冷やして!」

戦士&魔法使い「……」ポカーン

僧侶「なにボサっとしてるのよ! 急げっつってんだろ!! ロッドでぶん殴るぞコラァ!!」
213 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 17:56:58.93 ID:wnE7S7Y5O
【数時間後 村娘の家】

僧侶「……いま、タオルをとりかえますね」スッ チャポン

勇者「Zzz」スヤァ

戦士「な、なぁ。そ、僧侶、さん?」

魔法使い「沈痛な表情浮かべてるところ悪いんだけど、さっきの、言葉使いって?」

僧侶「なんですかぁ?」

魔法使い「ええぃ! まどろっこしい! 素は違うんじゃないの⁉︎」ビシッ

僧侶「なんのことでしょお〜?」

魔法使い「……二重人格とかじゃ、ないわよね?」

武闘家「アンタたち、今は勇者だろ。僧侶、どうなのさ」

僧侶「知恵熱、みたいなものでしょうか〜」

戦士「知恵熱? というと、詳しい原因がわからないという、赤ちゃんがよくなるあの?」

僧侶「そうですよぉ〜。びっくりしちゃったんでしょうねぇ」

魔法使い「びっくり……?」

武闘家「普段から慣らしておかないからってことか」

戦士「なんで武闘家は合点がいったみたいな顔してるんだ」

魔法使い「……?」

武闘家「……心配なさそうね」

僧侶「はい〜。一時はどうなることかと思いましたが、たいしたことなくてなによりですぅ」

武闘家「外で風に当たってくる」

魔法使い「ね、ねえっ! 私達だけ置いてけぼり⁉︎ 勇者はなににびっくりしてんの? 荒野のあの惨状は⁉︎」

僧侶「さぁ〜。なぜなんでしょうねぇ」

戦士「……んー?」
214 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 18:09:25.10 ID:wnE7S7Y5O
【ミンゴナージュの村 翌朝】

勇者「あぁ〜よく寝た。なんだかやけに気分がスッキリしてんな。ストレス発散でもしてきたような……」

僧侶「Zzz」スヤァ

勇者「俺の膝に顔を置くとは100年はやい……あり?」

魔法使い&戦士&武闘家「Zzz」スヤァ

勇者「なんでこいつら座ったまま寝てんだ? 布団なかったのか?」

僧侶「ん……あっ」ゴシゴシ

勇者「お、おはよう」

僧侶「おふぁようございますぅ〜」

勇者「な、なぜにみんな座ってんの?」

僧侶「昨日はあまり寝れなかったのでぇ〜。深夜遅かったですしぃ」

勇者「あ、あぁ。……あれ? あの後俺どうやって帰ってきたんだっけ」

僧侶「お疲れ様でしたぁ」ペコ

勇者「なにが……?」

武闘家「ん、おっ、目が覚めたのか……ふぁ〜ぁ」ノビー

勇者「ああ、おはよう」

武闘家「今日出発すんだろ? アタイは顔洗ってくるよ。あと、あんまり無理すんなよ」スッ

勇者「あ、ああ」

僧侶「勇者さまぁ、あらためてぇ、不束者ですが、これからもよろしくお願い申し上げますぅ」ペコ

勇者「……俺死ぬの? 優しくされると不安になっちゃうんだけど」ハラハラ
215 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 18:19:29.40 ID:wnE7S7Y5O
【淫夢城 回復室】

サキュバス「ぷはぁっ……ここは……?」バシャァ

リリス「さ、サキュバス様ッ!! よ、よかった! 瀕死の状態で帰ってきてから気を失っていたんですよぉ!!」ホッ

サキュバス「そうか、生命のスープにつかっていたのか」

リリス「す、すみません。生臭い匂いがお嫌いなのは存じていますが、この回復法が細胞を傷つけないので」

サキュバス「障壁の回復はまだのようね……」

リリス「な、なにがあったんですか? あんなボロボロの状態になっていたなんて。あっ、タ、タオルです」ササッ

サキュバス「特別収集会議をすぐに開く。各城に伝達を。魔王様には、私が直々に出向く」フキフキ

リリス「は、はいっ! ただいま!」バサッ

サキュバス「……おのれッ……許さぬ……っ!! 許さぬぞっ!! ハーピーッ!!」クワッ
216 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 18:35:25.14 ID:wnE7S7Y5O
【ミンゴナージュの村 入り口】

勇者「さて、必要なものは買ったし。出発すっかね、みなさん」クルッ

戦士「あ、あのだな。勇者」

魔法使い「べ、べつにっ! あんたのためになんか」

勇者「お前ら起きてからそればっかりだなぁ、なにを拾い食いしたんだよ」

魔法使い「……こ、こいつがこんなやつだから……!」

僧侶「くすくす。おふたりはですねぇ、昨日言いすぎたんじゃないかと気にしてるんですよぉ」

勇者「なにをだよ」

戦士「そ、それはその。魔族を逃した時に」

勇者「あ? ……あー! そんなことあったなそういや」

魔法使い「ちょ、ちょっとだけ! きつく言いすぎたかなって」

勇者「いや、俺こそすまん。考えが浅くて」ペコ

戦士「や、やはり、気にして……」

勇者「ばぁ〜〜〜っかじゃねぇの?」

魔法使い「……」

勇者「思わず有名なコラ画像貼りたくなったわ。あぁ〜んなもん気にするかよ。俺は煽り耐性鍛えられてんだ」

魔法使い「……そ、そう」プルプル

勇者「落ちこんでると思ったのw やばいねw」

戦士「やはり、私が間違っていたようだ」スラッ

勇者「お前らはもうちょっと煽り耐性つけたほうがいいと……」

魔法使い「メラミッ!!」ボッ

勇者「当社比50パーセント威力アップ!」ササッ

戦士「根性を叩き直してくれるッ!」チャキ

武闘家「はぁ……おぉ〜い勇者ぁ。馬車に荷物積んだよー。行くんならさっさとしろよー」

勇者「まて! 殺気が本物だろ! 待てって! 落ち着け! 冗談だってば!」ヒョイ ヒョイ

僧侶「次の街はぁ、どこなんでしょうねぇ」

魔法使い「ヒャド!」カキンッ

勇者「待てッ! そこはケツ! アーーーーッ!!」
217 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 18:48:24.09 ID:wnE7S7Y5O
【魔王城 付近 沼地】

魔王「――それで、終わりか」

サキュバス「我が王よ。私が間違っておりました!!」

魔王「で、あるか」

サキュバス「魔王様は勇者が架け橋になると不安がっていましたが、それとはまったく別ッ!! 不安は別の形で正しかったのでございます!!」

魔王「ふぅ……で、あるか」

サキュバス「特別招集会議をすでに呼びかけております! 今すぐに万を超えるモンスターをかき集め、勇者を滅ぼさなければ!」

魔王「で、あるか」パサッ

サキュバス「き、聞いておられますかっ⁉︎ 沼地のマドハンドに餌をやっている場合では……」

魔王「ピーピーピーピーと」

サキュバス「ハッ!? し、失礼。取り乱してしまい」

魔王「お前も種族の王。であれば、冷静さを失わぬことだ。足元をすくわれるやもしれんぞ」

サキュバス「お、おそれながら我が王よ。勇者は魔王様に匹敵を――」

魔王「それ以上は許さぬ。二度はないぞ」ゴォッ

サキュバス「ひっ⁉︎ ま、魔王様の波動……!」ゴクリ

魔王「そうか。遂にやつを見つけたか。万里先を見通す水晶でも見つけられなかったやつを遂に……!」

サキュバス「皆が、種族達の王が魔王様をお待ちでございます」

魔王「勇者……! 面白い、貴様の伝承が真実であれ、実力者であれ、余は勇者の全てを否定してやる!」

サキュバス「我らの王よ。絶対的な神よ。すべては、あなた様の御心のままに」
218 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/16(火) 19:09:04.67 ID:wnE7S7Y5O
〜〜第2章『ミンゴナージュ村のタタリ』〜〜


219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 19:10:10.56 ID:C/7TzVot0
乙。
勇者の闇がどんどん深くなる気が…
220 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/01/16(火) 19:13:16.58 ID:wnE7S7Y5O
これにて2章完。
ど直球に王道突き進んでます。レスくれた方々ありがとうございました。見てる人がいると思うと励みになります。
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 19:17:54.88 ID:jCMNB9hhO
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 19:24:03.03 ID:D/xi7xCs0
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 19:27:38.63 ID:JPbWvlgB0
続きはよ
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 19:47:06.29 ID:94Fx1ykvO
おつおつ
いいキャラしてるわ
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 20:44:37.32 ID:U+AUiVsoo
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 21:36:57.48 ID:JPbWvlgB0
気がついたけど勇者って実は良い人演じてるだけってことか?
勇者じゃなくなったら殺しにかかったのは・・・墓を作ったりしてるのも勇者である義務感から?
カンフーマスターが言ってたこととか全部繋がってるな
227 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/01/17(水) 00:38:45.28 ID:GWVHxYQ/O
今後の展開についてはコメントを差し控えます。

SSをエゴサ(自分のこと調べること)してみると
、有り難いことに某まとめブログさんにまとめられていたました。
少しでも多くの目に触れる機会が増えて大変嬉しく思っております。

・二章について
導入(旅立ち〜仲間加入)である一章と比べ二章は、これまでの基本路線は守りつつ
話に広がりを持たながら伏線要素を散りばめないといけませんでした。
安易にバトルをやりすぎたのはどうかなと自分では思います。
ただ、どこかしらで必要なのでここでやっちゃった感じです。

三章は少し時間あけようかどうしようか迷ってます。
読む人も書く人も、長いSSになると次第に飽きてくるのが難点でございます。
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 00:58:53.54 ID:I6VJWaQpO
作者の思う通りに書けばいいよ
外野の声は気にしないで
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 01:05:17.20 ID:ShGI05/A0
時間空けると読む奴減る可能性もあるぞ
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 08:54:11.64 ID:ZnmujDCFO
231 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/01/17(水) 10:12:16.52 ID:4wlEKTt5O
娯楽や暇つぶしでSSは存在しているので飽きさせないで読めるのが一番いいんですけどね。
書いてる側としてはプラモデル組み立ててるような感覚として書いてます。
構成や見せ方を考えながら書くのが難しく、また楽しくもありって感じです。
頭の中で場面場面が思い浮かぶようなセリフになっているはずです。

今読んでくださってる方々は「なんかあるぞ、読んでみるか」「つまらん」というかたも含め
ほかには「続きが楽しみ」と読みたくて読んでる方がもちろんいると把握してて、待っている状態だと思います。

なのでそういう人達向けに続けたいと思います。
三章は今日の午後あたりからスタートします。
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 10:33:23.61 ID:mnpI43Uz0

今はなろうとかハーメルンとかが流行って定着してるから台本形式のSSはすっかり廃れてしまった
あと運営の放置のせいってのもある
昔に比べりゃ人は激減してるけど待ってるよ
233 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/17(水) 14:50:58.34 ID:ZTs4EIV4O
【ダーマ神殿 聖堂】

大司祭「な、なぜ勇者様の目に枝が被っているものしかないのだね」

神官「それがそのぅ、投影機で撮影しようと思ってもこうなってしまいまして」

大司祭「これではまるで犯罪者ではないかっ! 指名手配でよくあるあの!」

神官「す、すみませぇ〜ん。機材が重くてぇ、勇者様を撮影するたびに移動するのが大変でぇ」

大司祭「……うぅむ。まぁよい。こちらに到着してから改めて、撮影させてもらおう」

神官「は、はいぃ〜」シュン

大司祭「それで、定期的に伝書鳩はきているのか」

神官「ちゃぁ〜んと来ていますよぉ」

大司祭「真面目に仕事をしとるようだな」

神官「かわいそうですよぉ〜。あの子は立派に改心いたしましたー」

大司祭「才能はピカイチなんだがなぁ。あのはねっかえり娘は」

神官「で、ですからぁ〜、今はそんなことありませんってばぁ」

大司祭「人はそう簡単には変わらん。幼い頃、この大聖堂にきてからは喧嘩ばかりおこしていたではないか。神官も覚えておろう?」

神官「は、はぁ。それはぁ」

大司祭「“ダーマの殴り僧侶”“ロリヤンキー”。通り名がいくつあったことか。ワシは何度も恥をかかされた」

神官「くすくす。大司祭様のパンツにワサビをぬったこともありましたかっけぇ」

大司祭「あ、あれは……今思い出してもシャレになっとらん」タラ〜

神官「芋虫からサナギへ。そして蝶になりはばたいてゆくのですぅ〜。私たちが知らない内に」

大司祭「淑女になっていればいいがなぁ。お前の口調をマネだしてからは大人しくなったが」

神官「あの子もそういうお年頃だということですわぁ〜」

子供「司祭さまっ! 賛美歌の準備ができました!」

大司祭「おお〜もう済んだのか。えらいぞ」

子供「えへへっ! みんなはあちらに!」ススっ

大司祭「うむ。それでは子供達よ――」

子供達「はーーいっ!」

大司祭「――……両の指を絡め、女神ルビス様を讃える唄を。この世に祝福の光、あれ」

喜び、それは、美しき神々の閃光。楽園からの乙女。

われらは熱情に酔いしれて、汝の聖殿に踏み入ろう。
汝の魔力は世の習わしにより冷たく引き離されたものを再び結び付。
勇者の優しき翼のもと、全ての生物は兄弟となる。

神官「(僧侶。勇者様の力に精一杯なりなさい。お務めを果たすのです。祈りましょう。私も、あなた方の旅の無事を祈って……)」
234 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/17(水) 15:11:20.79 ID:ZTs4EIV4O
【ミンゴナージュの村 〜 森林 馬車の中】

僧侶「ふぅ〜」パカっ

魔法使い「……なに? それ。手鏡?」

僧侶「はい〜。これは私の大切な方からいただいたものなのですぅ」

戦士「故郷か、親からの餞別品か?」

僧侶「いえ〜。私、親はおりませんのでぇ」

戦士「そうなのか。亡くなられた、とか」

僧侶「いえいえ〜。捨て子だったのですよぉ。ほらぁ〜、よく聞くでしょぉ〜? 教会に赤ん坊の入った籠をおくとぉ」

魔法使い「あ、あんまり、聞かない」

僧侶「そうですかぁ? 教会は駆け込み寺的な場所でもありますからねぇ〜。もしおふたりが無計画に子供を産んで、どうしてもとなったらぁ」

戦士&魔法使い「するかっ!!」

僧侶「……でもぉ、残念なことにそうしてしまう親もいらっしゃるのですぅ」

武闘家「親のこと、恨んでないの?」

僧侶「顔もわからない方をどうやって恨めというのですかぁ?」

武闘家「なぜ、捨てたのか、とか……」

僧侶「さぁ〜。事情があったのかもしれませんねぇ〜、なかったかもしれませんがぁ〜」

戦士「サッパリしてるんだな」

僧侶「そういうんじゃありませんけどぉ。そういう時期は過ぎ去ったというだけですよぉ」

武闘家「まぁ、でも、大切な人ができたならいいんじゃないさ」

僧侶「そうですねぇ〜。人は出会いがあり成長していくもの。女神様に感謝せねばなりません〜」スッ

魔法使い「信仰、ねぇ」

僧侶「耳を澄ませば、今にも聖堂からの賛美歌が聞こえてくるかのようですぅ」

魔法使い「なんだか、後光が見えるわ。僧侶から」

戦士「徳を勇者にも少しは分けてやったらどうだ?」

僧侶「またおふたりはそうやってぇ〜。勇者様は私たちが拝むべきお人なんですよぉ」

魔法使い「聖人君子なら拝みもするけどね。あれじゃあね」

戦士「うんうん」

僧侶「いつか、あなた方にも勇者様の御心を察することができるといいですねぇ」

ガタン ガタン

勇者「おい、ついたぞ」ヒョイ

僧侶「はい〜かしこまりましたぁ。勇者さまぁ〜」ニコ
235 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/17(水) 15:53:56.80 ID:9i0aqCWlO
【森林】

魔法使い「ついてないじゃないのよ!」スパーン

勇者「顔はやめて!」ドサ

武闘家「おかしいと思ったんだ。ミンゴナージュを出発してからそんなにたってないし」

戦士「うぅん、獣道のせいで車輪がグラついてるな」ギィ ギィ

僧侶「大工道具は買ってきませんでしたよねぇ」

勇者「いてて、戦士。車輪持ち上げられるか?」

戦士「お前はあたしをオンナアマゾネスかなにかと思ってるのか?」

勇者「ちがうの?」

戦士「ふんっ」ドゴォ

勇者「ガゼルパンチッ⁉︎」ドサ

武闘家「新品の状態でもらったのに。ボロボロじゃないか」

勇者「う、うぅ、元はといえばお前らが暴れるのが悪いんやろが」

武闘家「そ、そうだっけ?」

勇者「あの時にグラつく兆候を作ったのかもしれん」

戦士「む、無効だ! そうならあの場で指摘すべきだ!」

魔法使い「馬車には食料もつんであるし、おいてけないわよ。ここに」

ギャアー ギャアー バサバサッ

僧侶「モンスターの鳴き声が聞こえますねぇ」

魔法使い「馬が怯えて逃げ出すかもしれない。勇者、どうする?」

勇者「うーん。馬は使えるんだからトンカチ買いにひとっ走り行ってくるか」

魔法使い「私たちはこのまま?」

勇者「そんなに時間かからんだろ。それに、ここらのモンスターなら襲われても対処できるんじゃね」

武闘家「アタイがいれば平気だろ」

勇者「なんでもいいけど。じゃあ、俺が馬にのって行ってくるから」

僧侶「お気をつけてぇ」

勇者「俺、無事に帰ってきたらあの子と結婚するんだ」

魔法使い「誰とよ!」

勇者「フラグもわからんとはなっとらんやつだ。よっ」ザッ

馬「ブルルッ」

勇者「はいよー、シルバー!」バシッ

馬「……」

勇者「あ、あり? は、はいよー!」バシッ

戦士「なにやってるんだ。こいつ」

魔法使い「馬にまで舐められてる」

勇者「そ、そんなバカな⁉︎」

武闘家「はぁ……いってこいッ!!」バシィッ!

馬「ヒヒィーーンッ!!」ガバァ

勇者「あっ! そんな、いきなり、はげしっ! らめぇええええ〜〜っ!」パッパカ パッパカ

魔法使い「……勇者ってふざけないと死ぬ病気なのかしら」
236 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/01/17(水) 17:53:45.36 ID:MJCk7GC0O
【森の中】

勇者「これなら、すぐに森を抜けられそうだな。しっかし、ロケーションが物足りない気がする」パッカパッカ

ビュッ ズバッ

馬「ヒ、ヒヒーンっ!」ズサァ ピタッ

勇者「うおっ⁉︎ ど、どーどー! な、なんだ今のは。なにかが横切ったよな?」

スラリン「ピギーッ!」ポヨン

勇者「このありがちな鳴き声と他のスライムと見分けのつかない姿はっ! お、お前っ! もしかしてスラリンか⁉︎」

スラリン「ピギーッ!」ポヨン ポヨン

勇者「お〜〜っ!! 初めてにして最後の友よ!! はははっ! 元気だったか⁉︎」

スラリン「ピィッ!」

勇者「こんなところにいたんだなぁ。立派になって。チ○コの皮も剥けたか?」

スラリン「ピッ?」

勇者「スライムってゲルだからないのか? どれどれ」ムニィ

スラリン「ピィっ⁉︎ ピギーッ!」ボフンッ

勇者「おうふっ。今のは言葉がわからなくてもなぜ怒ったかわかる気がする……」ドサ

馬「ヒヒーンッ!」パッカパッカ

勇者「あっ! しまっ! ちょ、ちょっと待てよ! どこ行くんだ勝手に! ま、待ちなさい! 待ってくだはい!」

スラリン「ピー……」

勇者「い、いってしまわれた。ま、まずいぞ。このままじゃ、あいつらに殺されてまう……!」

スラリン「ピッ?」

勇者「す、スラリン。た、助けてくれ!!」クワッ

スラリン「ピィ?」

勇者「お、俺は、実は。召使いのようにこき使われとるんだ」

スラリン「ピッ⁉︎」

勇者「来る日も来る日もまわりにふりまわされ。足蹴にされる日々……う、うぅ」

スラリン「ピィ……」ススッ

勇者「慰めてくれるのか! 心の友よ!」ダキツキ

スラリン「ピィッ⁉︎」

勇者「け、決してあいつらがこわいわけじゃないぞ。馬が逃げたのも不慮の事故だ。オレ、ワルクナイ」

スラリン「ピッピッ」ヌル ポヨンポヨン

勇者「あ、どこに行くの? 俺を今ひとりにしないでぇ! メンヘラになっちゃうよぉ!」ヨタヨタ
237 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/17(水) 18:19:14.00 ID:MJCk7GC0O
【茂みの中】

勇者「ここは? スライムの集会所か……?」ガサガサ

スライムベス「ピッ⁉︎ ピギィーッ!!」

勇者「おもっくそ警戒されとるな」

スラリン「ピィー!」ポヨン ポヨン

メタルスライム「」ササッ

勇者「慌てるでない森の住民よ。ワシが危害をくわえるつもりは」

スライムベス「ピギィー!」ドンッ

スラリン「ピッ⁉︎」ズザザァ

勇者「これこれ。やめなさい。浦島太郎の亀さんいじめる子供かお前らは」

「誰? 誰かそこにいるの?」ガサガサ

勇者「……今のは、空耳かな? 人間の声が聞こえたような気がしたんだが」

「あなた、ニンゲン? 私の言葉がわかるの?」

勇者「やっぱり聞こえる。どちら様で?」

「下よ、した」

勇者「下には、スライムしか……」

「いるじゃない。声は聞こえるだけで見えないの?r

勇者「んん〜?」ジィー

「まだ見えない?」ボヤァ

勇者「おお、なんかうっすらと……だんだん鮮やかになってきた」

妖精「驚いた。本当に見えだしてるんだ」スゥー

勇者「ああ。今はっきりと見えた。紫の髪で虫みたいな羽があるな」

妖精「虫は余計でしょ。あなた、本当にニンゲン?」

勇者「うん、そだよ」

妖精「ニンゲンには見えないはずなのに。……わかった! 変わったニンゲンね!」

勇者「なんの違いが?」

妖精「こんなところでなにしてるの? ニンゲンはここに用なんてないでしょ? 薬草でもとりにきた?」

勇者「いや、懐かしい友にあってね」

スラリン「ピッ!」ポヨン

妖精「えっ⁉︎ ニンゲンと友達なの⁉︎ うそぉっ⁉︎ 信じられない!」

勇者「むしろ俺人間に友達いないんだ」

妖精「え? そんなのありえなくない? 実は魔族?」

勇者「い、いや。そ、その。避けられてたっていうか」

妖精「いじめられてたの?」

勇者「違うよ! 俺はひとりでいたかったの!」

妖精「……隠キャ?」

勇者「フヒヒ。よ、世の中が悪いんだぁ! 俺は悪くねえ……」ドヨーン

妖精「はぁ……変なニンゲンね」
238 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/17(水) 18:56:43.44 ID:MJCk7GC0O
勇者「ここに住んでんの?」

妖精「ええ、そうよ。この森は精霊様のお膝元ですもの」

勇者「へー、そうなんだ。村からあまり離れてないのに」

妖精「ミンゴナージュの村? もともとあの村はここにいる精霊様を祀ってたの」

勇者「サキュバス祀っとったぞ」

妖精「ニンゲンは得体の知れないものに出会うとすぐに信仰を鞍替えするのよね。なにもしてくれないからっていって」

勇者「生きるのに必死なんじゃない?」

妖精「自分たちのことばっかりよ。ニンゲンなんて。集団で生活するから周りの影響に流されやすいでしょ」

勇者「うん、まぁ」

妖精「感情が不安定だしね。って、ニンゲンにいってもしかたないか」

スラリン「ピッ」ポヨン

妖精「……スライムが人間の膝の上に。そんなの聞いたことない」

勇者「こいつはな。昔怪我したところを助けてやったんだ」

妖精「へぇ」

勇者「それからだよな? 仲良くなったのは」

スラリン「ピィッ!」

妖精「それにしたって異常よ。恩を感じるなんて」

勇者「細かいことはいいんだよ。こうなってんだから。なー?」

スラリン「ピィー!」

妖精「私の姿が見えるし……ねぇっ、あなたってもしかして、勇者ってやつじゃない?」

勇者「違うよ。俺は」

妖精「なぁーんだ残念。勇者なら面白いもの見せてあげようと思ったのに」

勇者「……ちなみにどんなもの?」プニプニ

スラリン「ピッピッ」スリスリ

妖精「“ロトシリーズ”って聞いたことない?」

勇者「ん……?」ピクッ

妖精「何代かに渡る勇者の物語。その石碑があるんだよ」
239 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/17(水) 19:16:28.13 ID:MJCk7GC0O
【森林 祠】

勇者「……これが」スッ

妖精「もー! 勇者じゃないくせに!」

勇者「初代ロト……二代目、三代目……」

妖精「当時の魔王との争いが描かれているみたい。ほら、そこに描かれてるのが不死鳥ラーミアにまたがってる」

勇者「勇者って、なんなんだ?」

妖精「えっ?」

勇者「女神の加護。先代……これまでの勇者も同じように?」

妖精「よくわからないけど、血統があることはたしかね。勇者である一族は、決められた家系から排出されてきたみたい。唯一違うのは、初代ね」

勇者「古代語で読めないな」ザリ

妖精「うーんとね、曖昧なのよ」

勇者「曖昧?」

妖精「そう。ひとつひとつの繋がりがね。もしかしたら別の時間軸の話かもしれない」

勇者「は、はぁ?」

妖精「例えば、私がりんごを落とすとするわよね。それを拾ったAである私と、拾わなかったBである私。そうした感じでAとBが分岐しているの」

勇者「つまり、別の世界とか?」

妖精「なくはないってだけ。全部繋がってるのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。だって、大昔の話ですもの」

勇者「魔王、倒してるなら、平和になってるはずだもんな」

妖精「どうなんだろう。よくわからない。魔王ってね、定期的に復活するって書いてあるよ?」

勇者「なんじゃそら」

妖精「もちろん、数千年とか数万年とか長い感覚があくし、同じ魔王ってわけじゃないみたいだけど」

勇者「今の魔王も復活してきてんのかな?」

妖精「今代の魔王は先代から継承する形だったらしいよ。だから、復活はしてないんじゃない?」

勇者「ん? ……って、話は戻るが勇者って結局なんなんだよ」

妖精「さぁ? だからよくわかんないの」
240 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/17(水) 19:37:34.99 ID:MJCk7GC0O
勇者「父上も……? 父さんは勇者の家系なんて聞いたことがない。それに、“聖痕”とはいったい」ボソッ

妖精「ほら、こっちこっち! これ見て!」

勇者「これは……?」

妖精「ルビス様だよ!」

勇者「ルビス? ……これが……? そんな、これじゃまるで」

妖精「? なにに驚いてるの?」

勇者「こ、これが女神……?」

妖精「あー! そういうこと? チッチッチッ。違うんだなぁ。魔族も人間もなぁーんだか勘違いしたままだけど」

勇者「勘違い……」ザリッ


妖精「――……そうだよ! だってルビス様は精霊王なんだもん!」
241 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/01/17(水) 20:15:43.83 ID:MJCk7GC0O
【森の中 馬車】

魔法使い「あーあ、暇だなぁ。モンスターでもでてこないかなぁ」

戦士「鍛錬にもなるしな。どうだ? 武闘家。一戦交えないか?」

武闘家「同じ相手とばかりやるのはやめたほうがいいよ。慣れすぎちゃうから」

戦士「む、そ、そうか」シュン

武闘家「素振りでもしてればいいじゃないのさ」

戦士「相手がいないとどうにもなぁ。あたしは実践型なんだ」

馬「ヒヒーーンッ」パッカパッカ

魔法使い「ねぇ、見間違い? こっちに向かってくるのってどこかで見覚えのある馬じゃない?」

武闘家「ちぃっ!」シュバッ

僧侶「……勇者さまが乗っていませんけどぉ」

戦士「武闘家! 傷つけるなよ!」

武闘家「わかってる!」シュタッ

馬「⁉︎ ヒヒーンッ⁉︎ ブルルッ!!」バタンバタン

武闘家「どぅどぅ、落ち着いて……大丈夫、こわくない」ナデナデ

馬「……ブルッ」タンタン

魔法使い「またあのバカは。どこでなにやってるのよ」

僧侶「どうしましょうねぇ〜連絡手段がないので〜」

武闘家「アタイが村に戻って確認してくる! アンタ達はここで待ってな!」グイッ

戦士「お、おい。武闘家」

武闘家「はぁっ!」バンッ

馬「ヒヒーン!」パッカパッカッ

僧侶「――……武闘家さんの行動力は見習わないといけませんねぇ」
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