勇者「ニートになりたい」

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486 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/04(日) 21:02:28.56 ID:S3D9Cw+YO
姫「ええ……」

メイド「これには、特殊な意味があるのです。姫さまに渡したものも、私に渡したものも。ただ、無闇に配っているわけではないのですよ」

姫「……わかってるんですの。ただ、あんまりにも渡しすぎるから。一時は袋に目一杯つめて歩いてましたもの」

メイド「あの時の勇者さまったら、ズルズル袋を引きずりながら」

姫「ふふっ……って! それでっ⁉︎ 見取り図はっ⁉︎」

メイド「申し訳ありません」ペコ

姫「勇者が持ってるんですのっ⁉︎」

メイド「なにぶん、気を失っておりまして」

姫「お父様に報告するにも、見取り図がなくては。貴女が……」

メイド「私のことはどうか、お気になさらないでくださいまし」

姫「き、気にするなですって……?」

メイド「罰を受ける。その覚悟で持ち出したのです。私は、最初から王と姫さまに打ち明け、弟をお頼みするべきだった」

姫「あ、貴女ねぇっ!」ブンッ

メイド「……」

姫「いい加減にしなさいよっ!!」バチィンッ

メイド「……っ、お怒りはごもっともでっ」

姫「痛いでしょう⁉︎ 頬を叩かれて痛くないわけないんですの⁉︎」

メイド「……」

姫「でもっ! 叩いた私の手だって痛いっ!! なぜ叩くと思う⁉︎ 楽しいからじゃあませんのよっ⁉︎」

メイド「も、もうしわけっ、ぐすっ、うっ」ポロポロ

姫「貴女が私の友だからでしょう!」ビシッ

メイド「ひぐっ、ぐすっ」

姫「……お父様には、まだ伏せておきます」

メイド「ひ、姫さまぁ、それでは、見つかった時に、姫さままで罪にぃっ」

姫「黙りなさい!! 勇者……勇者はどこほっつき歩いてんるんですの……!」
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/04(日) 21:38:18.69 ID:LMpz7L8A0
全部が主人公に集約するように書いてるのか
これはうまいな
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/04(日) 21:52:39.38 ID:mVRfNrTHO
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/04(日) 22:23:34.51 ID:LUoP8PDu0
490 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/04(日) 23:26:05.63 ID:PSV4AvuAO
【再び 宿屋前 表通り】

戦士「予備の剣まで折られるなんて……」カランカラン

ガンダタ「ヴぉおおおおぉっ!!」ブンッ

武闘家「諦めるなっ! 心が折れなければっ……ぐぁっ」ドゴォーーン

魔法使い「武闘家ぁっ! め、メラ……魔力が……力が、抜けてく」ガクッ

僧侶「私も精神力がぁ〜」ガクッ

戦士「こいつの、やせ我慢が勝ったか」

武闘家「まっ、まだまだぁっ!」ガラガラ

戦士「もう、いいよ」

武闘家「……戦士、アンタ、なに言って……」ズル ズル

戦士「世の中は広い。武闘家に負けて、こんないきなり出会ったやつにまで。つくづくあたしは、弱い」

魔法使い「戦士……」

戦士「なにが、自分の力を試したい、だっ。あたしが勝てないやつばかりがゴロゴロいるじゃないか」ポロ

ガンダタ「ウゥ」ノシノシ

武闘家「泣き言はいい、まだ戦えるだろ。折れた剣をとれ」ヒョコ ヒョコ

戦士「お前も! もう足がまともに動かないんだろ⁉︎ 勝てない! 勝てないんだよ! だったら、もう……いいじゃないか……」

武闘家「ふぬけがぁ……っ!!」

戦士「強くなりたかった。強くなりたいってことは、自分が弱いと思ってるってことだ。そうだ、あたしは、弱いんだ」

武闘家「それで納得するのかっ⁉︎ “とことん”までやってないだろ⁉︎」

戦士「立て続けに負けたことのないあんたにはわからないのよ! 自分の強さが、信じていたものを立て直せなくなる!」

武闘家「武は、いつだって己との戦いだ! 背を向けているものに微笑みかけはしない! それでも! 諦めないものに、勝利をもって微笑んでくれる!」

ガンダタ「うおおぉっ」ズシン ズシン

魔法使い「熱く語りあってるとこ悪いんだけど、待ってくれないみたいよ……」

武闘家「お前はそこで見てろ!! 戦いとはなにか!」

戦士「……」

僧侶「す、スクルトぉ〜!」ポワァ

武闘家「戦いとは――意地のぶつけ合いだッ!!」シュタッ

ガンダタ「ウガァッ!!」ブンッ

武闘家「くっ」ササッ スッ

ガンダタ「……ウゥッ」ヨロッ

武闘家「(やつも相当なダメージが蓄積されてる。もう少し、もう少しなんだ……!)ハイィィィィヤァッ!!」ドゴォ

ガンダタ「……っ」ヨロヨロ

魔法使い「き、効いてる? ねぇっ! あれって、効いてるんじゃない⁉︎」

戦士「……」ジー

僧侶「私たちも殴りにいきますかぁ〜?」

魔法使い「え……? あ、あの中に?」タラ〜

武闘家「あちょぉ〜! ちょぁっ!!」バキィ

ガンダタ「うがぁっ!!」ブンッ
491 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/04(日) 23:27:13.33 ID:PSV4AvuAO
戦士「無駄だよ。じきに、武闘家は捕まる」

魔法使い「戦士っ! どうしちゃったのよ!」

戦士「勝てないんだ、あれじゃ」

僧侶「押しているように見えますが〜」

戦士「武闘家の攻撃は、疾く、拳の質もいい。的確に急所を狙ってくる。でも――」

ガンダタ「ヌガァァッ!」ブンッ ドゴォ

武闘家「がっ! かはっ」ドサッ

戦士「足をやられ、翼をもがれた武闘家は、こわくない」

僧侶「やっぱりぃ〜、武闘家さんも痛みを我慢してたんですねぇ」

ガンダタ「ウゥゥゥ」ガシッ

武闘家「……ぐっ⁉︎」

戦士「ほら見ろ。言ったそばから捕まった。ああなったら、おしまいだ」

魔法使い「た、助けないとっ! め、メラ……あれ……鼻血が……」ツゥー

僧侶「魔力を使いすぎたんですよぉ」

魔法使い「え……? 魔力って使いすぎたら、鼻血でるの……」

僧侶「知らずに魔法使いをやってるんですかぁ? そのまま使えば血管切れて死んじゃいますよぉ」

魔法使い「ひっ……し、死ぬ……?」

僧侶「もっともぉ〜死ぬのは武闘家さんが先かもしれませんがぁ」

ガンダタ「わカぞうは……ドコだ……」ギリギリッ

武闘家「ぐぁぁぁっ」ミシミシッ

戦士「勇者か。なぜ探してるかは知らないが、勇者がきたところで――」
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/04(日) 23:41:01.14 ID:L2+6iqCLO
実は僧侶も最強格の一人なんじゃないかと思ってたけど
べつにそんなことはなかったか
493 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/04(日) 23:42:10.44 ID:PSV4AvuAO
【このちょっと前 宿屋 角】

衛兵「やけにうるせぇと思ったらストリートファイトしてる。それもすっげーハイレベルの」コソッ

ジャン「な、なにやっとんだ。あいつらは」

衛兵「ガンダタってあんなに強かったのか。お、おっかねぇ〜」ブルブルッ

ジャン「衛兵。使いパシリいってこい。ダッシュな」

衛兵「へ? どこに行くんですかい? ガンダタの首をとらねぇと」

ジャン「宿屋にヘンテコなマスクが置いてある。いや、俺の今つけてるやつじゃないよ。覆面レスラーみたいなやつな」

衛兵「は、はぁ」

ジャン「それ探してこい。とにかく急げ。俺はちょっくら時間稼いどくから」

衛兵「部屋番号は何番ですかい?」

ジャン「わからん」

衛兵「わ、わからんって……」

ジャン「僧侶か武闘家か戦士か、はたまた魔法使いかで部屋とってるはずだ。その部屋に荷物があるから。他のやつの荷物には触るなよ。俺のにはゼッケン貼り付けてある。母さんお手製の」

衛兵「へ、へい」

ジャン「くれぐれも。かわいい子だからって下着ドロなんかすんなよ」

衛兵「し、しませんて! 俺は生身にしか興味ないんで!」

ジャン「余計な情報はいらん。わかったら行け」スポッ

衛兵「わかりました」タタタッ

勇者「……ふぅ、しかたねぇなぁっ! ったくもぉっ!」タタタッ
494 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 00:05:58.71 ID:3/mAan4kO
勇者「――ちょぉっとまったぁっ!!」ズザザッ

僧侶「あ、あれは……」

ガンダタ「……」ピクッ

武闘家「あ……う……っ」ドサッ

戦士「勇者……」

魔法使い「バカ勇者! 今までどこいってたのよ!」

勇者「酒場でパフパフしてもらってた」キッパリ

魔法使い「こ……っ、このっ、ボンクラ……っ!」

勇者「久しぶりじゃないか。おっちゃん。山で会って以来だな? 元気してた?」

ガンダタ「てメぇ……」

勇者「おやぁ? 前はもっとハキハキ喋ってたと思うけど、どうしたの? ダメージくらいすぎた?」

武闘家「ゆぅ、しゃぁっ! こいつは、バーサーカーだ!」

勇者「それってなぁに?」

僧侶「やせ我慢男みたいですぅ〜」

勇者「なるほど。わからん」

魔法使い「とにかく! あともうちょっとみたいなんだから! ピンピンしてるあんたがやりなさいよ!」

戦士「無理だ。勇者、逃げろ」

魔法使い「戦士っ⁉︎」

戦士「勇者の剣さばきじゃ、すぐに終わる」

勇者「(戦士ったらすっかり自信なくしてやがんの。うけるw ……まぁ、サキュバスの時は精神攻撃だったから仕方ないとはいえ、こうも立て続けに負けてちゃなぁ)」

武闘家「戦士……っ、安心しろ、この勝負、アタイたちの、勝ちだ」ムクッ

戦士「勇者じゃ勝てない」

武闘家「勝てる」

戦士「なぜ……? そうか、武闘家は、知らないんだったな」

武闘家「知らないのは、気がついてないのはあんたさ」ズリズリ

勇者「薬草をすりつぶした塗り薬だ。僧侶」ポイッ

僧侶「はい〜」パシッ

勇者「仙豆とまではいかないが、そいつを傷口に塗ってやれ」

ガンダタ「こ、コゾぉっぉおおおおっ!! おまえのせイでぇぇ」

勇者「カカロットォってか。いやはや、中途半端なことして悪かったな。おっちゃん」

ガンダタ「こ、コロしてやるッ!!」ズシン ズシン

勇者「……」チラッ

武闘家&戦士&魔法使い「……」ジー

勇者「(ばっちり見られてるねぇ。やっぱり、テキトーに時間稼ぐとするか)……スクルト、ピオリム」ポワァ

ガンダタ「ウガァァァッ!」ズンズンズン

武闘家「補助魔法……? 勇者、まさか……」

戦士「知らないのだろう。あれが、勇者の戦闘スタイルだ」

魔法使い「自身を強化する魔法剣士。一人でも戦える。だけど、なにかが突出してるわけじゃない器用貧乏」

武闘家「勇者ぁっ!! 本気でやれっ!!」

ガンダタ「ウガァッ!」ブンッ

勇者「むっ」チャキ

戦士「ば、バカっ!! 受けようとするな!!」
495 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 00:36:30.16 ID:3/mAan4kO
ガンダタ「うぅぅぅっオオォォおおっ!!」

勇者「(おおっ、なかなかに重い……! こりゃ苦戦してるわけだ)」パキィッン

魔法使い「勇者の剣がっ!」

戦士「……終わった」

ガンダタ「ゥゥッ」ピタッ

勇者「……なぁ、おっちゃん。アデルに行かなかったのは自由だけど、なにも俺に会いにこなくたって」シュタッ

ガンダタ「オマエのせイで、オレはこうナッた」

勇者「自業自得な面もあると思うよぉ。いつまでも続けられるわけじゃないとわかってると思ってたけど」

ガンダタ「……」シュゥゥゥ

武闘家「……バーサーカー状態が、解けた……?」

ガンダタ「うっ、むぅ……」ガクッ

勇者「終わりか?」

ガンダタ「慌てるな。若いってのはせっかちでいけねぇな」ゴソゴソ

勇者「……?」

ガンダタ「お前が置いてったもの。こいつを返したくてよ」キラン

魔法使い「あれって……さっき、メイドが持ってたやつと同じ……?」

勇者「それは俺がおっちゃんにあげたもんだ。捨てるも自由、なにするも自由だ。俺が受けとらないのもね」

ガンダタ「勘違いすんな。これは、オマエの墓標に添えるもんだ」

少年「お、おじちゃん。終わったの?」ヒョコ

勇者「キミは……もしかして、メイドの弟くん?」

少年「えっ、な、なんでお兄ちゃんが、お姉ちゃんを?」

勇者「そうか……。なぁ、おっちゃん。悪いことは言わないからこのまま城に行け。そして、弟を助け出したと言うんだ」

ガンダタ「くっ、くっくっ」

勇者「金もらってどことなり消えりゃいいだろ。な?」

ガンダタ「そこだよォっ!! 俺が気にくわねぇのはぁーっ! なに上から目線で見てやがる!! オマエは! 誰に向かって言ってるんだ⁉︎ あ゛ぁッ⁉︎」ギロッ

勇者「……」

ガンダタ「オレはッ!! オレ様は認めねぇ!! お前みたいな世の中をなんも見てきてねぇでわかったようなツラしてるガキをッ!!」

勇者「現代っ子なもんで」

ガンダタ「ガキィッ!! だったら、オレが教えてやるよっ!!」シュゥゥゥ

魔法使い「そ、そんなっ……! またっ⁉︎ 武闘家、解除したら痛みが襲うんじゃなかったの⁉︎」

武闘家「意地があるんだ。その意地が、肉体と精神を凌駕している」

戦士「……」

武闘家「あいつも、戦ってる。胸がムカつくことに対して、認めないと」

戦士「勇者ぁっ! 剣の予備はもうない!」

勇者「そいつは、残念」タラ〜

ガンダタ「さァッ!! 覚悟ハいいカッ!!」クワッ
496 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 00:52:44.81 ID:3/mAan4kO
【宿屋 部屋】

衛兵「ちぇっ、俺をアゴでこきつかいやがって。なんだってんだよ」ギィ

――ドゴォーーンッ――

衛兵「え……」

勇者「バーサーカーって筋力までアップされてんのな」パンパン

衛兵「あ、あの……。表から、ここまで?」

勇者「吹っ飛ばされてきた。ここってもしかして、俺らの部屋?」

衛兵「す、素顔はそんなに若かったんすね。仮面したまんまだから」

勇者「え〜と、たしかこのへんにぃ〜と」ゴソゴソ

衛兵「隠れてていいっすか?」

勇者「おっ、あったあった。いいよ。ここなら安全だろうから」スポッ

衛兵「ちなみに、なんでマスクを?」

マク「いろいろとめんどーなことにならないため」

衛兵「は、はぁ」

マク「服の衣装がないけど、とりあえず、同じなままじゃバレちゃうから……たしかこっちに、寝巻きが」ゴソゴソ

衛兵「正体を隠しているので?」

マク「まーね。ヒーローはいつだってそんなもんだろ?」ヌギヌギ

ガンダタ「ワカゾォォォッ!! 降りてコイっ!!」

衛兵「およびが、かかってますが」

マク「人にはせっかちだとか言ってたくせに」タンタン

衛兵「……」

マク「なにも盗るなよ? 盗ったらボコすかんな?」

衛兵「ひゃい」

マク「んーと、となりの部屋から飛び出すか」タタタッ

衛兵「(ここまで吹っ飛ばされて、無傷って……どうなってんの……)」
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 01:54:10.42 ID:Dx56cLw6O
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 07:08:07.87 ID:kIEySeL9o
499 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 10:26:15.41 ID:fQ/B2oVuO
【再び表通り】

魔法使い「勇者、死んだんじゃ……?」

戦士「可能性としては、ありうる。もしくは戦闘不能になってるか」

武闘家「ないね」キッパリ

戦士「あれを見ろ。踏みこみで足跡がくっきりついてる。宿屋の三階まで吹っ飛ばされてるのが衝撃の強さの証拠だ」

僧侶「そろそろ出てくるんじゃないですかねぇ」

――バターンッ――

マク「……」シュタッ

魔法使い「あ、ああ、あ、あれはっ⁉︎」

戦士「マクさんっ⁉︎」

武闘家「(やっぱり……とことん隠したいみたいだね。勇者のやつ)」

僧侶「……くすっ」

ガンダタ「……?」

マク「……」クイクイ

魔法使い「見て見てえっ! 隣の部屋から出てきたわよぉ! マク様が泊まってたなんてぇ〜っ!! 颯爽と飛び出して……キャーーーッ! かっこいいっ!!」キラキラ

戦士「マクさんなら、あるいは……」

武闘家「こ、こいつらは……。アタイが全部ぶちまけてやろうかな」ボソッ

ガンダタ「ジャマするノなら容赦しねェッ!」ブシュウ

マク「(血が吹きだしてやがる。時間稼ぎのために長引かせて悪かったな。本当はとっくに限界こえてんだろ)」スッ

魔法使い「マクさまぁっ! がんばってぇ〜〜!」フリフリ

戦士「動きが、構えが洗礼されてる。勇者とは大違いだ」

武闘家「頭痛がする」

僧侶「くすくすっ、なんでもいいじゃありませんかぁ」

マク「(こっちの都合で本当にごめんな。一発でケリをつけるよ)」ビュッ

ガンダタ「ウォおおおっ!!」ブンッ

マク「(普通のパンチ!)」ズパァァァァンッ

魔法使い「戦士。み、見えた?」

戦士「見えない。いつのまに近づいて攻撃したんだ」

武闘家「(やはり、勇者は次元が違う。あそこまでの高みにはいったいどうすれば)」

ガンダタ「う……オォ……っ! な、なんだァ? テメぇ……」ヨロヨロ

マク「(俺の拳を耐えるとはたいしたもんだよ。人間の枠の中じゃおっちゃんは強い。でもな、俺は魔王に勝てる勇者。人間じゃ、勝てないんだ)」スッ

魔法使い「え……」

ガンダタ「ば、バカなぁっ! たった、一発でぇ」

戦士「限界間近だったのか……?」

武闘家「とっくに限界を迎えて、認めたくないという意地で保ってた。健気に歯をくいしばって耐えてた根性を上回る一撃だったのさ」

戦士「ど、どんだけ強いんだ……」ゴクリ

ガンダタ「」ズゥゥン

マク「(いかん、おっちゃんが死ぬかもしれん。ベホマ)」ポワァ
500 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 10:53:01.39 ID:fQ/B2oVuO
魔法使い「あれって回復魔法っ? 武闘家! モンクって魔法使えるの?」

武闘家「ん? ん〜、えーと、き、聞いたことがあったよーな。体内で練りこんだチャクラを分け与えると」

僧侶「ブフッ……だめっ、こらなきゃっ」プルプル

魔法使い「しゅごい。あんだけ強くて、回復まで。完璧な人ね」

魔法使い「求婚されたら、オーケーしちゃうかも。ケーオーされちゃうかも……いやぁ〜ん」クネクネ

戦士「惚れ惚れする強さだ。あたしの師匠よりも、強い。勝てる人間がいるのかとさえ思う」

ガンダタ「う……」ピクッ

マク「(全快させても面倒だからな。これぐらいでいいか)」チラッ

魔法使い「あっ、だめっ。目が合っちゃった。妊娠しちゃいそう。むしろ子供ほしい……」ジュル

僧侶「ぶーっ、くっくっ、よだれでてますよぉっ」プルプル

マク「(ウチのメンツも満身創痍って感じだな。回復してやるか)」テクテク

戦士「あっ、あの……?」サッ

マク「(ベホマ)」ポワァ

戦士「治して、くれるのか。あ、の。あ、ありがとぅ」

マク「(ゆでダコみたいになっちゃってまぁ)」ポワァ

魔法使い「うらやましい……わ、私も怪我してれば……折れた剣、折れた剣はどこ」カサカサ

武闘家「傷つけるなら戦えよ!」

魔法使い「女の戦いよ! 武闘家にはわからないんでしょーけどね!」クワッ

戦士「(凄まじい治癒力だ。それに光が、暖かい)」ぽーっ

魔法使い「見なさいよ! あの戦士の表情! 軽くイッてんじゃないの⁉︎」

戦士「……ばっ、バカなこというなぁっ!!」ボッ

マク「(マジでうるせぇ。これぐらいでいいだろ。次)」テクテク

武闘家「アタイは、いい」プイ

マク「足、見せてみろ」ボソッ

魔法使い「あーーーっ! 武闘家だってなに黙ってやらせてんのよ!」

武闘家「うるさいなっ!」

マク「(無理したなこりゃ。ベホマ)」ポワァ

武闘家「なんで、そんなに隠すのさ」ボソ

マク「……」ポワァ

武闘家「ちゃんとしてれば、アンタだって、それなりに……」

マク「黙っててくれてるのは、感謝する」ボソ

武闘家「……別に、いいケド」

魔法使い「ね、ねぇっ⁉︎ 小声で喋ってない⁉︎ マク様喋っていいの⁉︎」

マク「(目ざとい)」

武闘家「なんでそういうとこばっかり気づいて別のことは気がつけないんだよ!」

僧侶「イメージの固定化でしょおねぇ〜。この人はこう、そう思ってるからわからないんですよぉ〜」

マク「(よし、これなら歩けるはずだ)」スッ

武闘家「マク。あとのことはアタイたちにまかせてアンタは行きな」

魔法使い「ちょっと武闘家! マク様を気やすく呼び捨てッ⁉︎」

戦士「武闘家は、マクさんと兄弟弟子なのか? あの、あたしにも紹介を……」モジモジ

武闘家「きっしょくわるいんだよ! アンタたち!」

魔法使い「独り占めしてんじゃないわよ! そうやってほかの女を遠ざけてんでしょ⁉︎」

僧侶「わ、わたし、我慢するの、限界ですぅ〜、あはっ、あははっ」
501 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 11:17:21.39 ID:fQ/B2oVuO
【宿屋 部屋】

衛兵「ば、ばばばっ、バカなぁっ⁉︎ なんだあの強さは! 人間じゃねぇっ!」ガクガク

マク「お疲れちゃん」スポッ

衛兵「ひ、ひぃっ」ズザザッ

勇者「あー、壊れた窓から見てたのか。そんな距離とらんでも。俺を化け物だと思ってるんだろ」

衛兵「す、すいませんっ! もうご無礼はいいません! どうか、これまでのことはお許しをっ!」ドゲザ

勇者「……強すぎるってのはさ、なにも良いことばっかりじゃない。女にモテる。チヤホヤされる。それは、あくまで人間の枠の中での強さの話」テクテク

衛兵「……ひっ」

勇者「最初だけなんだ。みんな。次第に尊敬が畏怖にかわり、そして、怯えていく。魔族がいるから緩和されてるけどね」

衛兵「……」ガタガタ

勇者「ちょっとでも鍛錬したことあるやつなら余計に俺がこわいだろ。忌々しいったらない」ヌギヌギ

衛兵「ひゃ、ひゃい」

勇者「衛兵はアジトに戻ってお頭に報告しろ。俺は後から行く」

衛兵「ガンダタは、まだ息があるようですが」

勇者「きっちり殺っとくよ。信じねえの?」

衛兵「信じます! ジャン殿ならいつでも殺せますよね!」

勇者「これ。ガンダタの血をたっぷり染み込んだ布持ってきたから。渡しとくように」
502 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 11:46:28.81 ID:fQ/B2oVuO
【アデル城 玉座】

大臣「また夜分遅くにこんなところで。歳も歳なんですからご自愛くださいといつも申しておりますにた

王様「ふぉっふぉっ。また、あの時の夢を見てしもうての。ワインを飲み気を紛らわせておったところじゃ」

大臣「もうお忘れなさい。あれは、あの“事件”は仕方ないことだったのです」

王様「悔やんでも悔やみきれなんだ。あれから……勇者は、両親に、ワシに……いや、人間に対する目つきが変わってしまった」

大臣「普段おちゃらけてますのは、その反動でしょうな」

王様「理解者は少ないがおる。アイーダの酒場の店主、城内の兵士達の一部。だが、ワシも含めて、目の奥に宿った恐怖は、ぬぐいされるものではない」

大臣「……」

王様「恥ずべきことよ。王が、たった一人の民に恐怖し持て余すとは。勇者とはなにか? そう聞かれた時になんと答える?」

大臣「人類の代表であり、女神の代弁者です」

王様「違う、違うのだ。勇者とは“孤高”であり“孤独”である。てっぺんのいただきに立つ瀬に見る景色は、そこに立たなければわからぬ」

大臣「陛下のような……?」

王様「王とはいうなれば、民達の親である。ワシもワシで孤独を感じることに否定はしない。勇者の抱えるものは、それよりもっと、異質なのだ」

大臣「人は、誰しもが心に孤独を感じて生きております。繊細であればあるほど過敏になりましょうが」

王様「だからじゃよ。あの子に対して普通の子と同じように接するべきじゃった。勇者として利用するのではなく」

大臣「……」

王様「(ワシは信じる。おぬしの帰るべき場所を用意して待っておるぞ。勇者よ)」
503 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 12:18:54.25 ID:fQ/B2oVuO
【宿屋 表通り】

勇者「ぬぁぁっ、い、いてぇ」ノロノロ

魔法使い「チッ、使えない勇者が今頃ノコノコと」

勇者「あれ? 終わってたの?」

戦士「マクさんがやってくれた。感謝しなければな」

魔法使い「こっち見ないでよ! ぱふぱふなんかしてくるよーな男!」

勇者「生理現象だろーが! ずっと欲情すんなってのか⁉︎ 自慰マスターに俺はなる!」

魔法使い「……部屋の中でやったら、殺すわよ……」

僧侶「勇者さまぁ、この子はどうされますぅ?」

少年「……あ、う、お、おうち、帰りたいです」

勇者「その子は……戻すは戻すけど、なぁ、弟くん。そこのおっちゃんどう思う?」

少年「こわい……」

勇者「そうだろうな。こわいだけかい?」

少年「……こわいよ……うっ、ぐすっ」ギュゥ

勇者「……そっか。なら、お前らの中の誰でもいい。城に連れていってメイドを訪ねてやれ」

武闘家「メイド……? さっき訪ねてきて勇者を探してたさ」

勇者「な、なにぃ……?」ヒクヒク

僧侶「お知りあいさんですかぁ?」

勇者「(メイドにもバレてると考えるのが妥当か)……小さい時に少しね。それと、見取り図は俺が預かってると伝えといてくれ」

僧侶「かしこまりましたぁ」

勇者「明日の朝一番で頼む」

僧侶「今夜はぁ、お姉ちゃん達と一緒に寝ましょうねぇ〜」

少年「ほんと? 明日になれば、帰れる?」

僧侶「帰れますよぉ〜」ニコ
504 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 12:21:01.81 ID:fQ/B2oVuO
勇者「俺はしばらく別行動する。戦士」

戦士「なんだ?」

勇者「お前は弱くねぇ」

戦士「……っ、な、なんだ、突然」

勇者「要領が悪いんだ。頭がバカなのは仕方ないから、長所をもっと伸ばせ」

戦士「あんたに言われずとも!」

武闘家「戦士、黙って聞いておいたほうがいい」

戦士「武闘家……なぜ……?」

勇者「お前は防御が下手くそだ。自覚あんのか?」

戦士「うっ、それは武闘家にも言われた」

武闘家「アタイは防御もできるようになれと言ったさ」

勇者「不得意の分野を伸ばしても人並みにしかなりゃしねぇよ。お前にはタフさがあんだろ? だったらもっと鍛えて、鍛えまくって“仁王立ち”できるまで極めてみろ」

戦士「……」

勇者「武闘家、お前もだ」

武闘家「……」スッ

勇者「お前自身にゃ力はない。踏み込みの鋭さとしなやかさで慣性の法則を生み出してる。その点についちゃ俺もいい線いってると思う」

武闘家「だけど……それも、最近壁が」

勇者「はやければいいってもんじゃない。壁が見えだしてんなら、考え方を変えろ。お前の脚力はほかに使いようないのか?」

武闘家「脚力……足……」

勇者「あと、魔法使い」

魔法使い「んー? なに?」

勇者「もっと頑張りましょう」ポン

魔法使い「なにっ⁉︎ なんか私だけものすごい適当じゃないっ⁉︎」

勇者「僧侶は――」

僧侶「……はい〜?」

勇者「真面目にやれよ。俺が言うのもなんだけどさ」ポリポリ

僧侶「やるときはちゃんとやりますよぉ〜。私の第一は勇者さまなのでぇ〜」

勇者「さいですか。……よいせっと」ヒョイ

ガンダタ「」ドサッ

武闘家「そいつ、どうするのさ?」

勇者「俺が蒔いた種だ。後始末は俺がつけるよ」

魔法使い「ケッ。なぁ〜にかっこつけてんだか」

戦士「……う、む。だが、気をつけろよ」
505 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 13:16:30.55 ID:fQ/B2oVuO
【クィーンズベル 郊外】

ガンダタ「むう……」ムクッ

勇者「おはよう」

ガンダタ「んだぁ、おりゃあ、寝てたのか」

勇者「ヘンテコな覆面野郎に負けたっしょ。あれ、俺なんだけどね」

ガンダタ「……」

勇者「驚かないの?」

ガンダタ「どーでもいいんだよ。んなこた」

勇者「これから、どうする?」

ガンダタ「おめぇを殺りそこなったのはたしかだ。また殺りあうか」

勇者「それしかできないのならいいよ。けど……さぁ。強さってそこまで重要かなぁ?」

ガンダタ「あぁ?」

勇者「人生の先輩として教えてくれよ。わからねーんだよ、俺。魔物がいる世界で、人間が強さを追い求める理由があるのはわかる。強ければえらい、かっこいい、だからって、そうならなくても」

ガンダタ「……ふん」

勇者「強さなんてそいつの人間性になんの関係があるんだよ?」

ガンダタ「力だからだろ」

勇者「……」

ガンダタ「金、腕力、権力、地位、名誉。どれかひとつが突出してりゃ、それはチカラだ。いつの世も、チカラあるものが正義なんだよ」

勇者「善じゃなくてもか? チカラさえあれば――」

ガンダタ「力なき善に正義はない。良い志を抱えたとしても、実現できなけりゃ、無力だ。……わかるか? 無力って言葉の意味が」

勇者「……」

ガンダタ「無知、無力、能無し。“無”に共通することといやぁ、ただのゼロよ」

勇者「そうか、そうだな」

ガンダタ「おめぇはおめぇでこじらせてるみてぇだな、くっくっ」

勇者「……認めたく、ないんだ」

ガンダタ「なにをだ」

勇者「みんながっ、俺を勇者として、見る視線にっ! 化け物として扱う視線……擦り寄ろうとする視線……誰も、俺を見ちゃいない」

ガンダタ「だったらなんだってんだ? あァ?」

勇者「……」

ガンダタ「そんな雑魚どもはどうやったって寄ってくる。無視しときゃいいだけの話だろ」

勇者「……そうだな」

ガンダタ「ふん、知ったことか」

勇者「よかったら、俺と一緒に旅しないか? 中途半端にした責任もあるし」

ガンダタ「アホぬかせ。俺はおめぇを殺す。それを目的としてしばらくは生きていく」

勇者「……そ、そうか」シュン

ガンダタ「さては心許せる相手がいなくてさみしいんだなぁ?」

勇者「へ、へへっ、そんなんじゃあーりません!」

ガンダタ「ひとつ、忠告しておいてやる」
506 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 13:23:39.21 ID:fQ/B2oVuO
勇者「なんだね?」

ガンダタ「おめぇの強さは常軌を逸してる。どこまでいっても孤独だぜ。勇者さんよ」

勇者「途中から意識があったな……狸寝入りしてやがったのか」

ガンダタ「メスどもがあんまりにもうるせぇからな。なぁ? わかってるか? 孤独を」

勇者「……」ギュゥッ

ガンダタ「ぎゃはっはっはっ! 芋虫を噛みしめたような顔しやがって! 充分理解して生きてきたかぁ? あ゛ぁ?」

勇者「黙れ……もう、行け」

ガンダタ「魔族でもねぇ! 人間でもねぇっ!! 勇者なんだぁ!! だぁっはっはっはっ! 笑えるぜぇっ! 知ったようなツラしてる若造が、誰より孤独な存在だとよぉっ!!」

勇者「やめろ、殺すぞ……!」ギロッ

ガンダタ「やってみろぉ? できんのかぁ? 勇者さまよぉ? ……偽善者なのもじゅ〜〜ぶんに理解ができた。おめぇはどっちつかずの、コウモリ野郎だ」ニタァ

勇者「……」バチィ バチバチィ

ガンダタ「殺れよっ!! やってみろ!! お前の本性を見せてみろやっ!!」

勇者「……行け」フッ

ガンダタ「ほぉら、コウモリ野郎だ! 口先ばっかりでなにもできやしねぇ! おめぇは自分の為に、勇者をやってるって気づいちゃいねぇ大馬鹿野郎よ!」

勇者「……」ギリッ

ガンダタ「せいぜい孤独と隣あわせで生きろや。いつか俺様が引導を与えてやるからよ、こいつぁ、傑作だ、だぁっはっはっはっ!」ノシノシ

勇者「(気づいてない? 俺は嫌というほどわかってるよ。だから、ニートになりたいんだ)」クルッ
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 14:31:55.43 ID:00FdDXOa0
508 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 14:42:34.95 ID:fQ/B2oVuO
【クィーンズベル 南西方向 廃墟】

お頭「ほんとかぁ? なんでもいいけどよぉ、相手は10人をぶっ殺しちまいやがったガンダタだろぉ?」

現場にいた衛兵は様子をこう語る……

衛兵「ガンダタを一発ですよ。一発で倒しちまいやがったんでさぁ。強さへの憧れを通り越して恐怖って言うんですかね……ぶっちゃけ逃げ出したいくらいでしたよ」

手下「エフッ、エフッ」

衛兵「やべぇよ。アレは。俺命からがらでさ」

お頭「で、ガンダタはちゃんと殺ってきたんだろうな」

衛兵「へい。これを渡すように頼まれました」スッ

手下達「うぉぉぉ〜〜まじかよぉ〜」

お頭「そうかィ。ちゃんと見てきてんだろうな? 殺したところを」ギロッ

衛兵「(まぁ、大丈夫だろ)……へい」

お頭「契約をきっちりやったってわけだ。なら、しょうがあるめェ」

手下「なぁなぁ? どこにパンチいれたんだ?」

衛兵「よく見えなかったけど。腹にじゃねぇか?」

手下「腹かよぉ。夜飯くったばっかだから、やべえな[

衛兵「胃が破裂するな」

手下「オイオイオイ、死ぬわw俺w」

お頭「ジャンはいつ頃戻ってくる?」

衛兵「さぁ。しばらくしたらとしか」

お頭「わかった……野郎ども! 月が傾いて二食形になりつつある! 就寝だ!」

衛兵「俺は城に戻りやす」ペコ

お頭「ああ。しっかりやれよ」
509 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 15:01:28.47 ID:fQ/B2oVuO
【宿屋】

魔法使い「……」ササッ

戦士「魔法使い。廊下でなにしてるんだ?」

魔法使い「戦士っ⁉︎ しーっ! しーっ!」

戦士「なんだ?」

魔法使い「……声を潜めて。ちょっと耳貸して」チョイチョイ

戦士「……?」

魔法使い「忘れたの? マク様が隣の部屋に止まってるの」

戦士「……いや、覚えてるが……」

魔法使い「話しかけるチャンスじゃない!」

戦士「どこかに行った様子だったが。部屋に帰ってきてるのかな?」

魔法使い「帰ってきてなかったらそれでいいの! はぁ〜ドキドキするぅ」

戦士「くだらん。あたしは行く」

魔法使い「とかなんとか言っちゃってぇ〜? 戦士もまんざらでもないくせにぃ」

戦士「あ、あたしはっ、前も言ったろ。きちんと話してからでないと」

魔法使い「そのわりにはぁ〜。治療してもらってる間、顔真っ赤にしてたみたいのはどこのどちらさまかしら〜」

戦士「……っ!」ボッ

魔法使い「ぷっ、わかりやすいのね。戦士って。ウブなんだ? 慣れてないんでしょ? 自分より強い男に会うのが」

戦士「し、師匠はあたしより強い!」

魔法使い「歳がひとまわりもふたまわりも離れてる相手……まぁ、そういのが好きってのもいるけど、戦士はそうじゃないでしょ? 親みたいな感覚なんじゃない?」

戦士「うっ」

魔法使い「マク様って、ぜぇぇぇったい、若いわよ。あたし達と同年齢ぐらいだと思う」

戦士「なんでわかるんだ?」

魔法使い「匂いよ、匂い。おっさん臭しないし」

戦士「に、匂い」(ドン引き)

魔法使い「私、こういう時の勘は外したことないの」

戦士「そ、そうなの?」

魔法使い「ねぇねぇ、戦士」

戦士「う、うん?」

魔法使い「どうする? マク様が一緒に鍛錬しないかって言ってきたら」

戦士「ええっ⁉︎ そ、それは……その、やぶさかではないよ、うん」

魔法使い「ふたりきりで?」

戦士「二人でも三人でも同じだ! 鍛錬してれば、雑念は消える!」

魔法使い「ほんとにぃ? マク様あんなに強いんだもの。動きに見惚れちゃわない?」

戦士「……見惚れる……」ポー

魔法使い「ねぇ? 今、妄想してるでしょ?」

戦士「なっ⁉︎ な、してないっ!」

魔法使い「いいじゃない。私達だってオンナなんだから。なんで隠すの?」
510 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 15:16:30.11 ID:fQ/B2oVuO
戦士「べ、別に話することじゃないだろ!」

魔法使い「共有しましょって言ってるのよ。武闘家とマク様の関係、怪しくない?」

戦士「元々、マクさんは武闘家の師匠である老人が知っていたんだ。なんら不思議はない」

魔法使い「さっきさぁ、マク様ってば、武闘家に話しかけてた。おかしくない? サイレントモンクなのに」

戦士「……」

魔法使い「なにかあるのよ。あのふたり」

戦士「……ふぅ、やっぱり、くだらん。あたしは寝る」

魔法使い「いいの? マク様が部屋にいるかもしれないのに」

戦士「魔法使いを見てると我にかえった」

魔法使い「あっそ。じゃあ、いいわよ。さっさと寝てれば? 私はマク様にぃ〜ゴホン」コンコン

戦士「ちょ、深夜だぞ⁉︎ ノックするやつがあるか!」

魔法使い「寝てたら出ないでしょ! そしたら帰る!」

      「はぁい」

魔法使い「……っ⁉︎ お、起きてるっ⁉︎ ていうか、普通に返事した⁉︎ ど、どどどどうしよっ、戦士!」

戦士「し、知らないよっ! どうするんだよ!」

魔法使い「戦士が先に挨拶して!」グィッ

戦士「なんであたしなんだよ! 魔法使いだろ! 会いたかったの!」

魔法使い「恥ずかしくなったの!」

おじさん「……どちら様?」ガチャ

魔法使い&戦士「……へ?」

おじさん「……?」

魔法使い「あ、あのぉ〜。マク、様?」

おじさん「マク? なんだそら?」

戦士「この部屋に宿泊しているはずなんだが」

おじさん「いんや。俺しかいないよ。お姉ちゃん達、マッサージにでも来てくれたの?」

魔法使い「……いえ」ブスゥ

戦士「す、すまない。どうやら、手違いがあったようで」

おじさん「はぁ?」

戦士「部屋を、間違えました……」
511 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 15:32:24.32 ID:fQ/B2oVuO
【宿屋 部屋】

僧侶「あはっ、あははっ、面白すぎですぅ〜!」バンバン

魔法使い「……」ブッスゥ

戦士「魔法使いにも困ったものだ」

魔法使い「戦士だって少しはその気があったくせに!」

戦士「ないよ!」

魔法使い「いーや! あった!」

武闘家「明日はお城に行かなきゃ行けないんだ。さっさと寝るよ。……この子が起きちまうだろ」

少年「Zzz」

魔法使い「あいかわらずね。武闘家って世話やければ誰でもいいの?」

武闘家「アンタと一緒にすんな。この万年発情色情魔」

魔法使い「むぐぐ〜〜やめてほしいんだったら! マク様を紹介してよ!」

武闘家「できない。本人が望んでない」

魔法使い「なんでわか……っ、やっぱり、あの時なんか小声で話してたのはそのこと⁉︎」

武闘家「殴るよ? アタイは女同士だからね。優男みたいに躊躇しない」

僧侶「まぁまぁ〜」

魔法使い「武闘家って前々から気に入らないと思ってたけどさぁ、なんだか最近ますますいやぁ〜な感じ」

武闘家「なにも変わっちゃいないさ。そう感じるのは、アンタが嫉妬してるからだ」

魔法使い「なんですって⁉︎」キッ

僧侶「そこまでそこまでぇ〜。女の敵は女といいますがぁ、本人がいないのに争っても意味ないですよぉ」

魔法使い「あんたはいいわよね。勇者一筋で」

僧侶「そうですねぇ〜」ニコニコ

魔法使い「ほんっとに、あんなののどこがいいわけ? 理解できない」

僧侶「はいはい〜理解できないのならそのままでいいじゃないですかぁ〜」

魔法使い「どーしようもなくテキトーで、グーダラで、どこほっつき歩いてるかわかんなくて」

僧侶「そぉですねぇ〜」

魔法使い「おまけにむっつりで、童貞で、たいして強くもなくて」

武闘家「いい加減にしなっ!!」

魔法使い「な……なにっ?」

武闘家「うるさいんだよ。アンタのオンナの部分がうっとおしい」

魔法使い「……」ブッスゥ

戦士「……もう、寝よう。今夜は、あたしらもおかしいみたいだ」

僧侶「一人の話題なんですけどねぇ〜、くすくすっ」


512 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 16:28:55.00 ID:1+uhoDvtO
【クィーンズベル城 郊外】

勇者「……」フラフラ

老人「これ、そこいく若者よ」

勇者「ん?」

老人「このような夜更けにどうした?」

勇者「じいちゃんこそ。俺は酒でも浴びたい気分なんだ」

老人「ふぇっふぇっふぇっ。お主、まだ若いじゃろ。なにを世に憂うことがある」

勇者「俺はさぁ、人間も魔族も、違いがわからねーんだよ。みんなは敵だなんだっていうけど、人間だって悪いことしないわけじゃないじゃん」

老人「人は、誰しもが宿命を背負って生まれおつるのよ」

勇者「……だぁったら教えてくれよ。ハッキリとした答えをくれよ! わかりやすくさぁ!」

老人「時がたてばわかる。お主の持つサダメが」スゥー

勇者「じぃちゃんが透けて見えるのは俺の目がいかれたんだろかねー」

老人「迷える勇者よ。砂漠の花を探すがよい」

勇者「……」

老人「太陽と雨が交わる場所に、一輪の花がある。その花を見つけた時に、また会おう」フッ

勇者「砂漠の花……太陽と雨が交わる……意味がわかんねぇっ……ての……」ドサッ
513 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/05(月) 16:32:43.89 ID:1+uhoDvtO
〜〜第3章『砂漠の花と太陽と雨と』〜〜(中編)

514 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/02/05(月) 16:39:40.74 ID:1+uhoDvtO
ここで一旦区切ります。
徐々にフラグ回収が進んでおりますのでたぶんですけど終えるのにあと100レス〜150レスぐらいだろうと判断しました。

以前にちゃんと書いたら800レスぐらいだろうと書きましたがそんなもんじゃ終わらないのがこの時点で確定
適当なところで切り上げたいと思います
515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 18:37:45.78 ID:VlXVilc70
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 21:37:38.44 ID:8ph8zZYDo
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 21:51:18.00 ID:imCjLqQ+O

好きなだけ書いてくれてええんやで
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 23:18:42.51 ID:0MVaU4BuO
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/06(火) 01:25:16.70 ID:g2wNedoKo
おつ
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/06(火) 01:55:02.55 ID:xBON21jw0
乙です
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/06(火) 04:38:28.73 ID:sFq/HIrE0

あと1000から1500レスとは嬉しい事言ってくれるわ〜
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/06(火) 07:38:31.16 ID:Qba0zEcaO
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/06(火) 11:21:10.12 ID:BL6zL6bc0
武闘家の戦いとは意地のぶつけ合いは名セリフ
読んでてゾクゾクした

524 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/06(火) 19:42:16.87 ID:gIu6BcBMO
【翌日 早朝 クィーンズベル城 城門前】

兵士「えぇいっ、だまれだまれ! 身分を証明する物がないやつを通すわけにはいかん!」

魔法使い「だからさぁ〜! メイドを呼んできてってお願いしてるだけだってばぁ!」

兵士「どこの馬の骨ともわからぬやつ! そんなやつの弁など聞く耳を持たぬ!」

魔法使い「そんな融通がきないこといいはって本当に知り合いだったらどうするつもり⁉︎ あんたよくそれで門番が勤まってるわね! 頭でっかち!」

兵士「なっ⁉︎ ななっ⁉︎」

僧侶「……じゃんけんっ、ぱー」

少年「あっち向いて、ホイ」

僧侶「あらあらぁ〜、また負けちゃいましたぁ」

少年「あの……いいよ。お姉ちゃんに会えなくても。ウチに帰れば母さんがいるし」

魔法使い「そぉ? 姉と弟の再会を邪魔する兵士のせいでぇ〜。ごめんねぇ〜」

兵士「うぬっ」タジ

武闘家「そうは言っても伝言も預かってる。メイドには会わねばならん」

戦士「昨夜、あたしたちはならず者から彼女を助けてるんだ。後日、城に来るようにも言われてる。メイドからなにか聞いてないか?」

兵士「知らん」プイ

魔法使い「ほんとにぃ? 大目玉くらうのは兵士さんなんだからね?」

兵士「知らんもんは知らん! ……メイド様は姫様専属だ。私は普段会えないんだ」

僧侶「仕方ありませんねぇ〜」

武闘家「? 少年を家に送り届けようというのか?」

僧侶「いえいえ〜。これを拝見したいだたきたいのですがぁ」パサ

兵士「はぁ……なんだ? 紙切れを出されたところで一般人の入城は――」シュルシュル

戦士&魔法使い&武闘家「……?」

兵士「……っ⁉︎ こ、これはっ⁉︎」ギョ

僧侶「どうですかぁ? これなら許可をいただけると思うのですけどもぉ」

兵士「しっ、失礼いたしました! ダーマ神殿“法王庁”の御婦人でしたか!」

戦士「ダーマ……」

魔法使い「法王庁……っ⁉︎」

僧侶「師にあたる方が最高顧問を務めておりましてぇ〜」

魔法使い「法王庁といえば特権階級にいる超エリート集団じゃない⁉︎ 僧侶って、そこから来たの⁉︎」

僧侶「はい〜」

兵士「他三名はお付きの者でしょうか?」

戦士「誰が付き人だ!」

僧侶「くすくすっ、まぁまぁ〜。穏便に済むのならいいじゃありませんかぁ」

武闘家「(こ、こいつ……いったい……)」

僧侶「行きますよぉ〜。お付きの方々〜」

魔法使い「(ダーマ神官の中でも選りすぐりの才能を持つ者だけ通れる狭き門。倍率はすごく高い。たしか……噂でつい最近、百年にひとりの天才を輩出したと……まさか……?)」

僧侶「さぁ、行きましょぉねぇ〜」

少年「う、うん」

魔法使い「(ま、まさかねぇ……)」
525 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/06(火) 20:09:26.39 ID:gIu6BcBMO
【クィーンズベル城 玉座】

王様「よくぞまいった! オモテをあげラクにせよ」

僧侶「王様。ご息災であられましたでしょうか」スッ

王様「健康だけが取り柄よ。この地の気候はなににつけても暑い。過酷ではあるが、丈夫な身体にもなる」

僧侶「健康だけとは、ご冗談が過ぎます。クィーンズベルは陛下のご采配で民達の笑顔が守られているのですから」

戦士&魔法使い&武闘家「……」ポカーン

王様「此度(こたび)は、水不足の件で参ったのであろう? ワシも不安でじっとしておられなんだ」

王妃「法王庁に申請を出してから、よもやこんなにはやく対応していただけるとは」

僧侶「……? いえ、今回わたくしは、法王庁とは別件で動いております」

王様「なに? では、法王庁からの使者として参ったのではないのか?」

僧侶「おそれながら。わたくしは勇者様と行動を共に致しております」

王様「勇者……勇者だと……⁉︎」ガタッ

王妃「まぁ……懐かしい。十年前に見かけたきり。大きくなったのでしょうね」

僧侶「左様でございます、陛下。その旅の途中で御国に立ち寄る運びとなり、この子を……」

少年「……」オズオズ

王様「そうか……勇者がこの国にいるか……ならば後で挨拶にこさせよ。して、その子は――」

姫「失礼いたしますっ!!」バターーンッ

王妃「……なんですか、騒々しい……姫……あなた、自室謹慎処分だと……」

姫「お説教ならば後で! さ、メイド」

少年「あっ!」

メイド「あ……あぁ……っ!」タタタッ

少年「お姉ちゃぁ〜〜んっ!」タタタッ

メイド「あぁっ、よかったっ、ほんとにっ、よかったっ」ギュッ

少年「うぐっ、ひっ、うぁぁあんっ」ギュッ

王様「こ、これは……? どういう……?」

姫「お父様。家族の再会です。それだけなんですの」グスッ
526 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/06(火) 20:29:54.25 ID:gIu6BcBMO
【クィーンズベル城 姫の部屋】

魔法使い「わぁ、ベッドがおっきぃ〜」

姫「横になってみる?」

魔法使い「そ、そんなっ、おそれおおいっ!」

姫「気にせずともよい。勇者のパーティであれば妾(わらわ)とっても友同然である。僧侶……といったな」

僧侶「ここに」スッ

姫「法王庁出身者とはまことであるか?」

僧侶「はい」

姫「その若さでか? 神官としての経験を積んではじめて選別されると聞いたことがあるが」

僧侶「良き師のお陰でございます。わたくしに力はなにもありません」

姫「謙遜するな。口利きで入れるというというのなら、格式と品格を落とす行為なるぞ」

僧侶「ごもっともでございます」

姫「役職はどこであったか?」

僧侶「……」チラ

戦士&武闘家&魔法使い「……」ジー

姫「なんだ? パーティの面々まで興味津々といった面持ちで眺めておるではないか」

少年「このお菓子おいしぃ」パリパリ

メイド「まだこっちにもあるわよ」ニコニコ

僧侶「内部事情をお話すのは戒律により厳しく禁じられているのでございます。どうか、ご容赦を」

姫「(つまんないんですの!)……そうか」

メイド「それで……勇者さまはいずこへ……」

戦士「ゆ、ゆうしゃはぁっ! どっかいっちゃったでありんすっ!」カチンコチン

魔法使い「ブフゥっ、あ、ありんすって」

姫「どこか? どこに行った?」

戦士「知らないです! 見取り図を持ってると伝えてくれと言われましたぁっ!」

姫「そう……やはり……」

メイド「姫さま。勇者さまが持っているのは幸いでございます。彼の方ならば、きっと悪いようには致しません」

姫「そうね……」

メイド「皆様、昨日は大変失礼を致しました。危ないところを助けていただいたばかりか、勇者様のパーティであることを疑ってしまい」ペコ

戦士「きっ、かかっ、きにしてなぁ〜〜いです!」

魔法使い「きゃはははっ!」バンバン

戦士「あとで覚えてろよ……」

姫「……堅苦しい挨拶はここまでにするんですの。メイド。皆さまに紅茶を」

メイド「ただいまご用意致します」ペコ
527 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/06(火) 20:50:22.32 ID:gIu6BcBMO
姫「――実は、実力者たる皆に折り入って頼みがあるんですの」

魔法使い「き、聞いたっ⁉︎ 実力者だって! 私たちののとかなっ⁉︎」

戦士「あたしたちしかいないだろ」

姫「なんです? 違うんですか? 法王庁出身とあれば疑う余地はないと思い、他三名もと思ったのですが」

僧侶「いえ。全員、“才能は”ピカイチの者たちばかりです」

姫「なにやら引っかかる物言いですの。まぁ、いいわ。頼みを聞いていただけるかしら?」

武闘家「……」

姫「貴女は先ほどからなにも喋っていませんね。どうですか?」

武闘家「アタイは、王族に興味ありませんので。内容を聞かずにはなんとも」

魔法使い「無礼よっ! お尋ね者になりたいのっ⁉︎」コソッ

姫「ふふっ、勇者は個性的な面々をパーティに選んだようなんですの。たしかに、まずはこちらからお話すべきでしょう」

僧侶「頼みとは……?」

姫「この国の財源が、脅威に晒されています」

戦士「脅威、ですか?」

姫「近く、わたくしの縁談があるのはご存知ですの?」

魔法使い「えぇと……?」

姫「省略しますと、盗賊団が宝物庫に忍びこもうとしているのです」

僧侶「まぁ……」

姫「勇者が盗賊団に接触しているので――」

魔法使い「え、えぇっ⁉︎」ガタッ

姫「……?」

魔法使い「あ、あわわっ、な、なんてこと。ついに悪事にまで手を染めるなんて」

戦士「いや、なにもまだそうと決まったわけじゃ。騙されてるのかもしれん」

武闘家「はぁ……」ガックシ

姫「……もしや? 貴女達は、勇者からなにも聞いてないんですの?」

メイド「姫さま」チラ

姫「……」コクリ

僧侶「皇女様。お話の続きをお伺いしてもよろしいでしょうか?」

姫「いえ、やはり、やめにします」
528 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/06(火) 21:16:25.71 ID:gIu6BcBMO
魔法使い「や、やっぱりぃっ、ち、違うんですっ、あいつも根は悪いやつでは」

姫「お黙り」ピシャリ

魔法使い「は、はぃぃっ」シュン

姫「見取り図の件を知っていなければ、勇者のパーティではないと疑っていたところです」

魔法使い「は、はい?」

姫「なにも聞かされていないとは……貴女達、信頼されていないんじゃ?」

戦士「え……」

姫「成人の儀を終えた勇者が魔王討伐のため、アデルを出発すると各国に早馬が飛ばされたのが二週間ほど前。いつから一緒に旅を?」

僧侶「私達三名は翌日には帯同していたと思われます」

姫「三名? もう一名は?」

武闘家「アタイは、マッスルタウンについてからだから、半分ぐらいかな?」

姫「期間が短いとは言い訳になりません。貴女方は勇者に選ばれて旅を共にしているのでしょう」

魔法使い「い、いぇ〜、最初は押しかけたっていうかぁ、私達の方から連れていってとお願いしたのでぇ」

姫「なんですの……?」

魔法使い「ですから、その、勇者と一緒に牢に入れられるのは……」

メイド「勇者様からのご指名を受けて旅をされてるのではないのですか?」

戦士「アイーダの酒場で待ってたんですが、勇者は“仲間は足手まとい”といって先に行ってしまったんです」

魔法使い「そうなんです! 私達もてっきり! 最初は凄く強い人なんだろーなーって思ってたんですけど!」

姫「……」ギュゥッ

メイド「姫さま」

魔法使い「それがぜんっぜん……てことはないけど、戦士と同じぐらいで」

姫「ほう。戦士とはそこまで強いのか?」

戦士「いや、あたしは、まだまだで」

姫「勇者は4歳で我が国の兵士長をデコピンで負かしたぞ。さぞや強いのだろう?」

戦士&魔法使い「へ……?」

武闘家「ごほんっ! あー、勇者はぁ、補助魔法を使うからなぁ!」

僧侶「勇者様の実力のほどはしかと。戦士と魔法使いは、その……」

姫「なんだ? さっきから黙って聞いておれば、妾の友をバカにしておるのか?」

メイド「ひ、姫さまっ! なりません! 勇者様が選ばれていないとしても! 共に旅することを認めておられるのです!」スッ

魔法使い「えっ? ど、どゆこと?」

姫「……そうですね」

戦士「(4歳の時に、兵士長をデコピンで? ははっ、さては冗談だな?)」

姫「失礼した。でも、貴女方に不満が残るのも事実です。勇者と連絡をつける方法はないんですの?」

僧侶「しばらく別行動をすると」

姫「なにか考えがあるようですね。しかし、その考えがわからぬことにはこちらも動きずらい」

メイド「しばらく、様子をみては?」
529 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/06(火) 21:41:57.86 ID:gIu6BcBMO
【クィーンズベル 南西方向 廃墟】

ジャン「本日からはいりましたー! 新人のジャンくんでーす! よろしくねー!」

手下「なぁ、あいつがホントにガンダタ倒したのか?」

ジャン「陰口なら見えないところでお願いしまーす!」

お頭「おめぇらァっ! こいつはあのガンダタを殺してきたそうだ!」

ジャン「ナイフでグサーっとやったりました!」

お頭「功績を認め、団の幹部にとりたてるッ!!」

手下「お、お頭ぁっ! いきなり新人をそんな扱いをするんですかいっ⁉︎」

お頭「当たりめェよ! この団はいつから年功序列になった! 実力主義だろうがッ!」

手下「うっ、それは、そうですけどぉ」

ジャン「(ざまぁwww)」

お頭「納得いかねェやつは前でろ。ジャンが相手になる」

ジャン「……ん?」

手下「いいんですかい? 仲間内での殺しは……」

お頭「このアホたれ。誰が殺し合えといったんだァ。喧嘩は日常茶飯事だろうが」

手下「なぁ〜ほどぉ。そういうことか」

ジャン「んん〜?」

手下「俺やりやす! こいつは強そうに見えねぇ! きっとマグレだったんでさぁ」

お頭「俺も強さを直に見たわけじゃねェからな。素手でやれよ」

ジャン「……めんどくせぇ」
530 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/06(火) 21:54:17.68 ID:gIu6BcBMO
【数分後】

手下「」ドサッ

ジャン「どんなもんでしょ?」パンパン

お頭「……ワンパンか……つえぇな。貴族とたまに取り引きしてるが、武術に精通してるやつなんてめずらしいぜ?」

ジャン「そのめずらしいやつの中の一人なんですよ。ほかの皆さんも信じていただけましたけねぇ〜?」

手下達「……」ゴクリ

お頭「くっ、だっはっはっ! 俺たちの団にようこそ!」

ジャン「取り引きが終わるまでの間ですけどね」

お頭「まぁ、そう生き急ぐなよ。こっちにこい。計画の詳細を説明する」

ジャン「(いよいよ核心に迫れるのかね。どうやって井戸の水を枯れさせてるのか……)」

手下「お待ちを。お頭。お客様です」ササッ

お頭「後にしろ。どうせ行商頼んでる水売りだろ」

手下「いえ、それが――」コショコショ

お頭「――なにィ? ……わかった。すぐいく」

ジャン「俺もご一緒しても?」

お頭「あ〜? ん〜、まぁ、いいか。そのかわり、なにも喋るなよ。口開いてご機嫌損ねたら舌を切るぞ」

ジャン「あいあいさー!」ビシッ
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/06(火) 23:37:02.89 ID:vsw5Z+FGO
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/07(水) 02:30:21.53 ID:zp9c0ucPo
おつ
僧侶さん、勇者との会話で只者じゃないのはわかってたけどかなりエリートだったのな
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/07(水) 02:44:37.93 ID:Hmh3XtaBO
>>490
僧侶「私も精神力が〜」ガクッ
とか言ってるし、底は知れたような気がするが……

まあ何か隠し玉は持ってそうだな
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/07(水) 07:04:23.97 ID:a9tZbFIro
535 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/07(水) 16:38:24.42 ID:NbYf4Q2GO
【廃墟付近】

お頭「お待たせしたな」

占い師「忙しいようだな。商(あきな)いは順調か」

お頭「お陰様で」

占い師「そちらの男は……?」チラ

ジャン「(まーた新しいやつが出てきた。フードを深めに被って顔はわからないが、女だな)」

お頭「ハーケマルの使者だ。なかなか使えるんで、仲間に抱き込んだ」

占い師「なに……? 間者ではないのであろうな。情報が筒抜けになるぞ」

お頭「金の魅力に取り憑かれてる男よ。なにかあった場合のケツは俺がとる」

占い師「……準備の進捗具合はいかが」

お頭「アンタに教えられた方法で、井戸の水を枯れさせてる。国相手となれば体力も尋常じゃねェ。困窮させるには期間を要する」

占い師「急いては事を仕損じるだけだ。かといって悠長に構えているつもりはない」

お頭「わァってるよ。ハーケマル王子の来訪に合わせられるように進めてる」

占い師「私の雇い主は気の長いお方ではない。計画が頓挫しようものなら、死を覚悟しろ」

お頭「その分、見返りはでかい。ハイリスクハイリターンってとこだな。俺にとっても国盗りの夢を叶える良い機会だ」

占い師「あのお方はクィーンズベルの没落を望んでおられる」

お頭「現政権を追い込んだら、俺を後釜に据えるという約束、忘れちゃいねェでしょうな」

ジャン「(そんな簡単にコトは済まんだろうに)」

占い師「覚えている。が、政権転覆となるとそうやすやすとはいかない」

ジャン「(そぉ〜らきた)」

お頭「な、なんだとォっ⁉︎ 約束を違える気かっ⁉︎」

占い師「名家出身でもない、王族でもない、盗っ人なぞに国を任せると思うか? 第一、周辺国にどう認めさせる」

お頭「国を疲弊させれば、現在の王族は窮地に立たされ、民の信用を失い――」プルプル

占い師「……」

お頭「そう持ちかけてきたじゃねェかッ!!」ビシッ

占い師「王になったとて、その先になにを見る?」

お頭「“自由”よッ!!」

占い師「愚かな……」

お頭「王になりゃぁ、国を、兵を、財をッ! 好きなように操れるッ!!」
536 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/07(水) 17:19:11.10 ID:NbYf4Q2GO
占い師「使者とやら。貴族であろう? こやつに王としての器があると思うか?」

お頭「言ってやれッ!! あるとッ!!」

ジャン「暴君としてならばあるんじゃないでしょかね? それか、独裁者か」

占い師「うふっ、はっはっはっ。暴君か。たしかに、それならば才気は望めそうだ」

お頭「暴君だァ?」

占い師「国をなんと見る? お山の大将よ」

お頭「お、オィ。誰にモノ言ってやがる」

占い師「国は、生き物だ。内政、物流、通貨、交通、さまざまな分野が折り重なり、人が生きて、国と成る」

お頭「……」

占い師「お前に国を任せたとしたら、5年もたないだろう。部下に殺されるか、民たちに殺されるか。そういう未来が見える」

お頭「な、なんだとォッ⁉︎」

占い師「盗賊として報酬を望め。その後は、このヤマから身を引け」

お頭「こ、このッ!」バンッ

占い師「……ふぅ。フードがうっとうしい」ファサ

ジャン「(若い。見た感じ俺とそんな変わらないぐらいか)」

お頭「魔族に会わせろ。オメェじゃ話にならねぇみたいだからな」

占い師「私に言っているのか?」

お頭「俺とジャンとオメェしかいねぇだろ!」

占い師「ニンゲンよ」

ジャン「(なんだ……この気配は……)」

お頭「あ……? あぐっ……⁉︎ アガガッ⁉︎」ガクッ

占い師「貴様に預けた水晶はどうだ。大切に持っているか……? ん?」

お頭「息がっ……! あぐぅぁあっ!!」ジタバタ

ジャン「(お頭には指一本触れてない。どうやってるんだ?)」

占い師「脆い生き物よ。脆弱で、浅はかで、欲深い。そなたたちが醜くければ醜いほど、憎めずにいる。そこのモノ、助けなくてよいのか……?」

ジャン「どうやって助けろというんです? 貴女の首をハネますか?」

占い師「試したらどうだ?」

お頭「ひゅー……ひゅー……っ」ドサッ

ジャン「いいんですか? お頭を殺せばこれまでの準備が全て無駄になっちゃうと思うんですけど」

占い師「……おおっ、そうであった」シュゥ

お頭「」ドサッ

ジャン「あの〜結局あなたはなにしに来たので? からかいに来ただけ?」

占い師「いや、私は、お頭に用があって。……あれ?」

お頭「」

占い師「これ。起きろ。起きんか」ペチペチ

ジャン「代わりに聞いときましょか?」
537 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/07(水) 18:34:19.87 ID:tg06EGxvO
占い師「やれやれ。ニンゲンは脆すぎていかん。そう思わんか」

ジャン「まるで自分が人間じゃないように言いますね」

占い師「あぁ……そうだな。気になるか?」ニタァ

ジャン「いいえ。ちっとも」

占い師「なんだ。肩透かしだな」

ジャン「俺媚びへつらうのは上に対してだけって決めてるんで」キリッ

占い師「なんぞ? 私はお前より下か?」

ジャン「誰かの指示で動いてるんだろう? あのお方と言っていた」

占い師「言ったが?」

ジャン「でかいヤマになればなるほど関わる人間は……あんたは人間じゃないかもしれないけど、数は増える。中間管理職に媚びたって、ねぇ?」

占い師「お前はさらに末端の下の下ではないか」

ジャン「違いない。だけど、計画を遂行するには、気絶してるお頭は必要だろ? ……話が逸れてる。なんでもいいから、用件があるならどうぞ」

占い師「小癪なやつだ。新しい水晶と古い水晶の交換にきた」

ジャン「なぜ?」

占い師「それは、水脈を止めるために決まってる」

ジャン「(いや、決まってるて知らねーし。調子合わせるか)……そうでしたね。さっきお頭から水脈を止める原理を聞いたばっかりで」

占い師「これには瘴気がつまってる」スッ

ジャン「らしいですね。それ使って逃げさせてるんでしたっけ?」

占い師「……」ギロッ

ジャン「(あら? 違った? 軽率だったかな?)」

占い師「……そうだ」

ジャン「(合ってるんかーい! ドキドキさすなこのボケッ!)いやぁ〜しかし、便利なアイテムですねぇ。それどうやって使うんです?」

占い師「水脈には、地点地点に息吹が存在する」

ジャン「ほぉ」

占い師「割り振られた場所にコレを埋める。すると、水は玉から染み出す瘴気を避けるようにして逃げていく」

ジャン「ほぉほぉ。てことは、ひとつじゃないですな? 何箇所にも埋まってると」

占い師「定期的な交換が必要でね。これを持ってきた」ジャラジャラ

ジャン「(にー、しー、ろー、はー……10個か)」

占い師「穴が結構な深さになるから、これを別働隊に渡してほしい」

ジャン「(なんだ。結局どんなカラクリがあるかと思えば、アイテムか。つまんねーの)……かしこまりました。たしかに伝えときます」
538 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/07(水) 18:54:59.53 ID:tg06EGxvO
占い師「あと、もうひとつ。これを渡しておく」

ジャン「(アイテムとかつまんねー。冷めた。なんだかすっごく冷めたわ)なんでしょ? 剣ですか?」

占い師「念のため、これを5個目の地点に一緒に埋めておけ。呪いをかけてある」

ジャン「どんな?」

占い師「お前は知らずともよい」

ジャン「あ、そう」スッ

占い師「……あの、本当に気にならないの?」

ジャン「え?」

占い師「や、普通だったら、こいつ何者だっ! とか、これにはこんな効果がっ⁉︎ とか」

ジャン「いや? 劇じゃないんだから用件が済んだなら帰れば?」

占い師「え……」

ジャン「あー、忙し忙し。お頭おぶっていかなくちゃ」ヒョイ

占い師「ちょ、ちょっとっ」

ジャン「ん?」

占い師「聞いて驚くがいい! その剣は呪われている!」

ジャン「聞いたよ」

占い師「うん、2回目……」

ジャン「じゃ、そういうことで」

占い師「聞くがいい! 私はっ!」

ジャン「……なによ?」

占い師「聞きたい?」

ジャン「いや」

占い師「……」プルプル

ジャン「わぁ〜。すごいなぁ〜。この剣にはこんな効果があったのかぁ〜」

占い師「聞いてないじゃん! 知らないじゃん! どんな効果があるとか!」

ジャン「……話したいの?」

占い師「……」プィ

ジャン「あー、魔族ってのはどの種族だぁ?」

占い師「き、聞きたいっ⁉︎」

ジャン「教えてほしいなぁー」
539 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/07(水) 19:12:37.14 ID:tg06EGxvO
占い師「ふふっ、いやしい人間め。そんなに魔族と会いたいか。欲に目がくらみ――」

ジャン「厨二病か。お大事に」テクテク

占い師「ま、まてぇいっ」ポンッポンッスポポンッ

ジャン「……?」

ベビードラゴン「オラがせっかく盛り上げた雰囲気さ、壊すでねぇっ!!」

ジャン「お、おお」

ベビードラゴン「なんで無視するだ! 人間のくせして生意気だど! 恥ずかしいと思わんのか!」パタパタ

ジャン「すまん」

ベビードラゴン「謝っで済むことか! せっかく、せっかく……クールな人間を演じて盛り上がってたんに!」

ジャン「本当にすまん」

ベビードラゴン「もっかい仕切りなおしだど。ちゃんどやれっぺな?」

ジャン「あ、ああ」

ベビードラゴン「ふふっ、いやしい人間め――」

ジャン「す、すまん。ちょっといいか?」

ベビードラゴン「なによっ⁉︎ 現場の空気乱さないでぐんねっ⁉︎」

ジャン「どうしても気になってることがあって」

ベビードラゴン「それ、解決しなきゃできそうにない?」

ジャン「うん、まぁ、そうだな」

ベビードラゴン「だぐぅ、ぺっこしかたねぇ。質問は一個だけだかんな。特別にこだえてやる」

ジャン「――……竜族だろ?」

ベビードラゴン「……っ⁉︎」

ジャン「……」ジー

ベビードラゴン「なしてそげなこと思うだ?」

ジャン「なんでだろうな?」

ベビードラゴン「オラは見ての通り、人間だど」パタパタ

ジャン「……そだな」

ベビードラゴン「変わったニンゲンだっぺね。いきなり人を竜族なんて」

ジャン「うん」

ベビードラゴン「あ〜なんかシラケちまったよ。オラ帰る」

ジャン「うん、気をつけてな」

ベビードラゴン「おめっ! マジで言葉使いなんとかしろっ⁉︎ オラに馴れ馴れしいぞっ⁉︎」

ジャン「あんまりにも可愛いらしくて、つい」

ベビードラゴン「はっは〜ん。そっちの欲か。けがわらしい」
540 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/07(水) 21:57:57.91 ID:1ts2l6j1O
【クィーンズベル城 訓練城】

兵士長「全体ッ! 休めッ!」

兵士達「はっ!!」ザッ

姫「兵士長。精が出ますね」

兵士長「皇女殿下でございませんか。最近は歳による衰えを感じておりまして……そちらの方々は?」

魔法使い「うわぁ……むっさくるしい場所……」

姫「客人です。暇なので城内を案内していたんですの。気になることもあったし」

戦士「いいなぁ、この空気。懐かしいなぁ」

姫「戦士は勇者と同じぐらいの強さだそうよ」

兵士長「っ⁉︎」ギョッ

戦士「あ、いや……」

魔法使い「らしくないわね、なに謙遜してんのよ。拮抗してたけど勝ったじゃない」

兵士長「かっ、勝った⁉︎ あの勇者にっ⁉︎」

武闘家&僧侶「……」

魔法使い「そんなに驚かなくても」

兵士長「驚かずにいられるか!!」

姫「して、そのチカラがいかほどか見てみたいと思ってね」

兵士長「……なるほど……よろしいでしょう。私も歳をくったとはいえより激しくレベルアップに励んでまいりました」

戦士「え? あたしがやるのか?」

姫「こわいんですの? 勇者に勝っておきながら、兵士長ごときが」

戦士「冗談にもほどが過ぎます。あたしはまだ修行中の身」

兵士長「これも鍛錬の一環だと思えば問題なかろう。私が相手だと役不足かもしれんが」

戦士「役不足って、そんなわけないでしょう。あたしは……」

武闘家「ちょっと待ってくれ」スッ

姫「どうしたんですの?」

武闘家「その……姫さま。ちょっと」チョイチョイ

姫「……?」テクテク

武闘家「戦士は気がついてないんですよ。実力差を。以前勝ったのも勇者に手加減されてて」コショコショ

姫「どうせそんなことだろうと見当はついてましたわ。身の程を分からせる良い機会です」

武闘家「それが、勇者はなぜか知らないけど、隠したいみたいで」

姫「隠したい?」

武闘家「アタイにも、直接口止めはしてきてないけど、なんていうか、言わないでほしいって雰囲気が伝わってきてて」

姫「……ふぅ〜ん……」

僧侶「武闘家の言葉は真実です」
541 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/07(水) 22:10:54.51 ID:1ts2l6j1O
姫「そうなの?」

僧侶「私は、理由が、なんとなくわかるのですが……」

武闘家「な、なんだって?」

姫「して、理由とは?」

僧侶「おそらく、勇者として見てほしくないのだと思います」

姫&武闘家「勇者として、見てほしくない?」

僧侶「確証はいまだ持てませんが。考えを巡らせると、そこにたどり着くような気がしてなりません」

姫「なぜです? 比べるのもバカげていますが、王よりも尊い存在だと言えるかもしれない唯一無二なんですの」

僧侶「……そこに、根が張っているのではないかとぉ」

姫「わかるように説明なさい」

僧侶「生まれながらにして勇者。その孤独を想像した経験はございませんか……?」

姫「ないわね」キッパリ

僧侶「大抵の人は勇者に羨望の眼差しを向け、時には嫉妬さえ抱いていると思います。なぜか? 勇者が符号として成立してしまっているからです」

姫「……」

僧侶「恩恵とでも言いましょうか。様々な高待遇を約束され、魔王討伐という伝説に彩られた華道を進める」

姫「それで? 王族だって似たようなしがらみにとらわれているんですの」

僧侶「そうなのですが……勇者という職業は……」

姫「妄想はしなくてよいのです。“なにしろ勇者なのですから”」

僧侶「王族でさえ、色眼鏡で見てしまわざるを得ない存在なのです」

姫「あっ、当たり前ですのっ!」

僧侶「……」

姫「この世界の希望なんですのよ! 私達が勇者をサポートしなければ!」

僧侶「はい……おっしゃる通りです……」

姫「妬みなぞもっての他!」プイッ

僧侶「……そう、ですね……」
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 00:13:10.97 ID:j3VWY2cpO
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 00:37:17.16 ID:kqwmJKHWO
苦労人僧侶
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 01:47:03.52 ID:Rl/ZncCDO
なんつうかつくづく面倒くさいやつだな、姫
独善的すぎて胸くそ悪い
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 03:23:58.83 ID:cpN3OOx50
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 06:37:45.00 ID:lIedO7EsO
>>540
あえてそう書いているのですよ
用心深く見えて割と簡単に言いくるめられる盗賊の頭

後付け感半端じゃなさそうな勇者の過去
殺人犯した奴に「一緒に旅をしないか」と言い出す情緒不安定な勇者

あえてそう書いているのですよ
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 06:40:58.04 ID:lIedO7EsO
>>544でした
あえてそう書いているのですよ
用心深く見えて割と簡単に言いくるめられる盗賊の頭

後付け感半端じゃなさそうな勇者の過去
殺人犯した奴に「一緒に旅をしないか」と言い出す情緒不安定な勇者

あえてそう書いているのですよ
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 07:02:43.68 ID:3ndwvN2ro
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 08:06:30.91 ID:BVvF6H3N0
まだアンチわいてるのか気持ち悪いなぁ
勇者の過去後付けって初出は初期の>>96だろうに
捏造までしてなにがしたいんだ
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 08:36:53.51 ID:PZgS0TpPO
>>549
信者も大概気持ち悪いよ?
用心深く見えて割と簡単に言いくるめられる盗賊の頭
殺人犯した奴に「一緒に旅をしないか」と言い出す情緒不安定な勇者
これに関しては反論しないのですか?
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 11:04:15.55 ID:u9HQTRWr0
全員が全員諸手を挙げて絶賛するSSなんてあるわけない
そりゃこれだけ長く続けば批判の一つや二つくるだろう
それをすぐアンチだのどうだの決めてかかる幼稚さ
正直、信者の方がいらないわ
火種になるから消えてくれ
迷惑
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 12:27:54.08 ID:BVvF6H3N0
キチガイの自演バレてるぞ
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 12:50:51.55 ID:m+RfkYASO
批判や指摘は自演認定した挙げ句にキチガイ呼ばわりするキチガイ
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 13:01:05.23 ID:BVvF6H3N0
同じ着眼点から延々と同じことしか書いてなくてバレてないと思ってるつもりなのか・・・
捏造してるのを批判とか指摘とか頭の中やばすぎる
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 13:06:44.79 ID:u9HQTRWr0
批判や指摘については作者が答えてくれるだろう
外野が騒ぐことではない
自演認定も的外れ
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 13:14:08.16 ID:BVvF6H3N0
作者の過去の発言ひっぱりだして悪意ある書き方で捏造してんだろ>>546とか
しかも批判だのなんだの言いながら読み続けてる典型的な粘着アンチだ
むしろ作者は反応しちゃいかん
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 13:25:11.79 ID:IKMFZMO8O
>>556は何でそんなに必死なの?作者なの?
>>550の質問には答えないの?
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/08(木) 13:31:33.29 ID:BVvF6H3N0
単発がワラワラと
捏造アンチを逆に指摘したら必死だの信者だの作者だの言うし話が通じなさすぎだろ
捏造をつっこんだら質問に答えろとかキチガイ度数やばすぎ
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 13:39:13.83 ID:y5rjgP6eO
で、答えないの?
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 13:50:23.21 ID:BVvF6H3N0
直近の例を挙げると>>557>>559の単発見て自演がいないと思うなら頭お花畑
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 13:55:01.39 ID:uonLOop5O
質問の答えになってないよ?
というか端から見たらあんたも荒らしだからな?
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 14:02:06.06 ID:BVvF6H3N0
あんたもって荒らしてるって自覚あんならやめろよ
指摘とか批判とかどうでもよくてお前の目的は暇つぶしの遊び場感覚なんだろ
批判部分に否定はしてないし捏造までしてって言ってるだけ
ここまで言って引かないならもうだめだろこいつ
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 14:11:02.88 ID:u9HQTRWr0
泥仕合乙
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 14:36:26.03 ID:OWJffGdMO
最初から触れなければ良いのに……
そこまでして噛み付く意味が分からない
565 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/02/08(木) 14:48:11.88 ID:qhEh2zmnO
続けます。
566 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 14:58:01.47 ID:qhEh2zmnO
【クィーンズベル城 客室】

魔法使い「脳筋の戦士が試合を断るなんてめずらしいわね」

戦士「いやぁ〜、うん、ははっ」ショボン

武闘家「大方また負けるのが怖かったんだろうさ」

戦士「むっ」

魔法使い「あ〜、悪いこと言っちゃった?」

戦士「いや……。正直、なにも言い返せない」

武闘家「剣でもふってくるといいよ。身体を動かしてりゃ余計な考えは浮かばない」

戦士「う、うん。そうだな。そうする……」テクテク

武闘家「戦士」

戦士「なんだ?」

武闘家「自分に、負けるなよ」

戦士「……あぁ」バタン

魔法使い「ちょっと、もう少し優しい言葉かけてやりなさいよ」

武闘家「課題は見えてるんだ。立ち直るかどうかはあいつ次第だね」

魔法使い「……はぁ。つまんないなぁ〜」

武闘家「マクでも探してきたらいいんじゃないさ?」

魔法使い「いい考え! ……待って、まだ街にいるの?」

武闘家「いると思うよ」

魔法使い「それならそうと早く言ってよね〜! っと。それと、僧侶」

僧侶「はい〜?」

魔法使い「あんたのその間延びした口調! 作ってたのがよぉ〜くわかったわ! 今度からは普通に喋りなさいよ!」

僧侶「なぜですかぁ?」

魔法使い「たまぁ〜にイライラするから。なんていうの? レスポンスが遅くて」

僧侶「はぁ〜」

魔法使い「だからっ! そういうところ!」

僧侶「でもぉ、普段はこうですしぃ」

魔法使い「ハキハキ喋るのはよそ行き用ってわけ?」

僧侶「そうですねぇ〜」

魔法使い「親しき仲にも礼儀ありなんだからね? たまには普通に喋ってくれると助かるけど?」

僧侶「善処いたしますぅ〜」

魔法使い「……」ヒクヒク

僧侶「マクさんをお探しにどうぞぉ〜」ニコニコ

魔法使い「もうっ! 本当につまんないんだから!」タタタッ バタンッ
567 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 15:15:21.45 ID:qhEh2zmnO
武闘家「僧侶。聞きたいことがある」

僧侶「くすくすっ。わざわざ人払いしてまで〜。勇者様のことでしょう〜」

武闘家「そうだ。さっき、“勇者として見られたくない”そう言ったね」

僧侶「はい〜」

武闘家「どういう意味だ? アタイも、勇者は勇者として思ってるし、見てる。それでいいと思ってる」

僧侶「根は深いのですよぉ〜」

武闘家「だから、それが意味がわからないと」

僧侶「この世界は、長い間、宗教の観念が色濃いのですぅ〜」

武闘家「……?」

僧侶「それもこれも、ルビス様を至上とする宗教主義が行政と思想に強い影響力を与えているからなのですがぁ〜。武闘家さんは、ルビス様に対する信仰はいかがですかぁ?」

武闘家「アタイは、人並みぐらいだと思うけど」

僧侶「そうでしょうねぇ〜、そう答えるでしょうねぇ〜」

武闘家「……」

僧侶「このクィーズベルの皇女様も、そして、私も、武闘家さんも。生きる人々すべてがみぃ〜んな勇者さまの影にルビス様の栄光を見ているのですよぉ」

武闘家「ルビスを、見てる……?」

僧侶「そもそも、勇者が凄いってなぜなんでしょうね〜?」

武闘家「それは、“ルビスの加護を受けてて、魔王を倒すという伝説の存在だから”」

僧侶「そうですよぉ〜。その言葉が自然と出てくるほど、私たちの生活の中にルビス様信仰はあるのですぅ〜。人並みと答えた武闘家さんであっても〜」

武闘家「……」

僧侶「誰が悪いではないのですぅ。でも、勇者さまはきっと、“そうなってみないとわからない”。そんな状況に苛まれているような気がしてぇ〜」

武闘家「よく、わからない」

僧侶「申し上げてるじゃないですかぁ。私たちはおもんばかることはできても、勇者さまが抱える悩みやお立場には、なってみないとわからないのですよぉ」
568 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 15:31:19.09 ID:qhEh2zmnO
武闘家「……」

僧侶「おそらく、さみしさ。私だったらと考えると、そう思います〜」

武闘家「さみしい……って、あの勇者が?」

僧侶「単独で動かれるのを好まれる傾向にありますしぃ〜。姫さまがおっしゃっていた、私たちが信頼されていないというお言葉。あれにはドキッとしちゃいましたぁ」

武闘家「勇者は強すぎるから、自分でやった方が効率いいからじゃないの?」

僧侶「それも可能性としてありますねぇ〜。その方が手っ取り早い。そう考えているかもしれません〜」

武闘家「……」

僧侶「人の心情を掴むのは、靄の中にいるようで難しいですねぇ〜。決まったものではないのでぇ〜」

武闘家「アタイ達は、勇者にどう接するべきだと思う?」

僧侶「……わかりません」

武闘家「……」

僧侶「望むように、ある程度の距離感を保ちながらがいいのか。それとも、こちらから踏みこむのがいいのか」

武闘家「さすが童貞だな。繊細な上にめんどくさい」

僧侶「まだ時間が必要だとも思いますしぃ〜、このままだとなにも変わらないとも思いますしぃ〜」

武闘家「アンタ、ちゃんと考えてるんだね」

僧侶「もちろんですよぉ〜。将来の夫になっていただく方ですから〜」

武闘家「訂正する。ヨコシマな考えだ」

僧侶「私の師ならなんて言葉をなげかけるのでしょう〜……」
569 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 15:59:40.85 ID:qhEh2zmnO
【クィーンズベル城 南西方向 廃墟付近】

手下「ジャンさーん! スコップ持ってきましたよー!」

ジャン「オラララララァッ!!」サクサクッ

手下「す、すげぇぇ。スコップの二刀流だ」

ジャン「野郎ども! 手を休めないで掘れ!」

手下達「へいっ!」

ジャン「ギガ・ドォリルゥゥゥゥッ!!」サクサクサクサクッ

手下「な、なぁ……なんで、あの人が仕切ってんだ?」

ジャン「私語するなって言ってるだろうが! 日が暮れちまうぞ!」

手下「……へい」

ジャン「あーはっはっはっ!! 豆腐のような土じゃないかァッ!! いいゾォ〜これ!」サクサクッ

手下「ジャンさん」

ジャン「……」ギロッ

手下「ひっ」

ジャン「俺は今なんつった? 波紋を……いや、スタープラチナ召喚してほしいのか……?」

手下「スタープラチナ……? い、いや、業務報告です。埋める物なんですが」

ジャン「そして時は止まる」ズギュゥゥン

手下「は、はい?」

ジャン「なんだよー。ノリ悪いなぁ。そこはURYYYも知らないの? 漫画ぐらい敬意をこめて読め」

手下「(へ、変人だ……)掘り起こした玉なんですけどね」

ジャン「新しいやつはこっちね」ジャラ

手下「了解です」

ジャン「(中身はただのビー玉にすり替え済みだけどな)」

手下「あと、剣なんですけど」

ジャン「あぁ、そういやあったな」

手下「これ、いかにも禍々しいオーラを放ってて。みんな怖がって持ちたがらねぇんすよ」

ジャン「呪いのアイテムらしいよ」

手下「ジャン殿にお願いしていいですか? なんだか妙に古めかしい作りしてますし、とんでもない呪いだったらと思うと恐ろしいんで」

ジャン「なんだなんだぁ? 盗賊団ってのは腰抜けばかりかぁ?」

手下「俺たちゃ、いわくつきとか得体の知れないものは嫌いなんでさぁ」

ジャン「まったくぅ。いいか? 見てろ? 呪いなんてものは大抵迷信なんだから」カチャン

手下「ちょっ、ちょちょっ⁉︎ な、なにをする気でっ⁉︎」

ジャン「なにって、鞘から抜くんだよ。刀身を」スラァ

手下「あーーーーっ!! あんたなんばしょっとぉっ⁉︎」
570 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/02/08(木) 16:19:45.07 ID:qhEh2zmnO
ジャン「む……こ、これは……」

手下「ひ、ひぃぃぃっ⁉︎ わざわいがぁっ」ササッ

ジャン「……なんもねぇわ」ポコン

手下「あいてっ! え? そ、そうなんですか?」

ジャン「見てみりゃわかる。ただの普通の剣」チャキ

手下「切っ先こっちむけないでくださいよっ⁉︎」

ジャン「(本当に普通の剣だな。なんでこんなもん埋めさせようとしたんだ?)」ジロジロ

手下「え、ジャン殿。なんか、気のせいですかね」ゴシゴシ

ジャン「……なに?」

手下「しり、尻が光ってますよ」

ジャン「んなバカな……」クルッ

手下「やっ、やっぱり呪いがっ!!」

ジャン「ほ、本当だ……えっ、なにこれ、痔になる呪い? そ、そんな呪いあり?」ペカー

手下「知りませんよ! きっと死ぬまでいぼ痔だが切れ痔に悩まされるんですよぉっ!」

ジャン「おおお、おちっ、おちけつっ、そ、そんな呪いがあるはずが……ケツ? ケツだって?」

手下「ほらぁっ! 剣まで光ってきてますしぃっ!!」

ジャン「な、なんだこれ……」ゴゴゴゴォォッ

手下「とんでもない呪いだったんですよぉっ! 抜くからぁっ! 本当バカバカバカバカンス!」

ジャン「……手下。俺、思い出した」ゴゴゴゴォォッ

手下「な、なにをです?」

ジャン「セリフな。そして時は止まるじゃなくて、動きだすの間違いだったわ」ゴォォオオオオオオッッ

手下「どうでもいいだろバカやろーーっ!!」
571 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 16:36:27.19 ID:qhEh2zmnO
【竜王城 玉座】

シンリュウ「おはよ」

ベビードラゴン「もうお昼だすよー。お寝坊さんですねー」パタパタ

シンリュウ「まだ眠い」クァ

ベビードラゴン「昨日、オラが帰ってくるころには寝てたじゃないですかぁ」

シンリュウ「んだなすぅ。眠くて眠くてぇ」

ベビードラゴン「ほっといたら数年寝てそう……」

シンリュウ「ニンゲンにはあってきたんだっぺ?」

ベビードラゴン「もたろんだすっ! ちゃぁ〜んと言いつけを守ってきたっすよ!」

シンリュウ「勇者はクィーンズベルの近くにいるはずだなす。ちょっかいを出してどう動くか観察するべよ」

ベビードラゴン「国も潰せれば一石二鳥ですしねっ、ニシシッ、さすが竜王さまぁ〜っ! あったまいい!」

シンリュウ「……あんれ?」

ベビードラゴン「どないしただす?」

シンリュウ「玉座の横に置いてあった、“ロトの剣”があったっぺよ? あれ、どこさ持っていっただ?」

ベビードラゴン「それなら、言いつけ通り、盗賊団に渡しただよ」

シンリュウ「誰の言いつけだっぺ?」

ベビードラゴン「やだんもぉ〜。シンリュウ様に決まってるじゃないすかぁ」

シンリュウ「わだすが、いつ、どこで、何時何分何十秒にそげなこといったのよ」

ベビードラゴン「呪いの剣を埋めておいてって言われたではないずかぁ」

シンリュウ「それは言った。でも、この城の別の部屋にある“血塗られた剣”な?」

ベビードラゴン「え……」

シンリュウ「んでもって、ここに置いてあったのは“ロトの剣”な?」

ベビードラゴン「あ……」

シンリュウ「んで、最初に戻るけど、わだすがいつ言ったのよ?」

ベビードラゴン「あぁ〜用事思い出したっ! いっげね、こうしてる場合じゃ」パタパタ

シンリュウ「待てコラ」ガシッ

ベビードラゴン「ひっ」

シンリュウ「おめぇ……まさか、まさか、まさか、勇者が近くにいるのかもしれねってのに、わざわざ、ロトの剣を置きにいったのけ?」

ベビードラゴン「の、呪われてただすっ! それは間違いねぇすよ!」

シンリュウ「あの剣はなぁ、多くの魔物の血を吸ってる。呪われてるのは当たり前なのよ。でも、勇者が抜くと浄化される」

ベビードラゴン「へ、へぇ〜」

シンリュウ「勇者、いま、どこにいるんだっけ? マーキングしてるんだべな?」

ベビードラゴン「……んだなすぅ。サキュバスが服につけてるから。クィーンズベルの宿場のはずだす」

  ゴゴッ  ゴゴォッ  ゴゴゴゴォォッ

シンリュウ「んだ……地震か? 火山でも噴火したかな?」

ベビードラゴン「(誤魔化すチャンス!)み、見に行くっぺ! 竜王様!」
572 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 16:58:40.89 ID:qhEh2zmnO
【アデル城】

大臣「お、王様っ!! あれを!」

王様「うむ! あれは、あの光の柱は……っ!」

大臣「見てください! 空にくっきりと紋章がっ! あれこそがっ、まさに伝説の……“ロトの紋章ッ”!!」



【ダーマ神殿】

大司祭「おおっ! つ、ついに……! ついに勇者様が伝説の宝具のひとつ、ロトの剣を……!」

子供達「わぁ〜。見て見てぇ。線が一直線に伸びてるぅ〜」

神官「そんなっ! これほどはやいとは……! ルビス様のお導きに感謝しなければ……!」

大司祭「こうしてはおられん! 子供達よ! 賛美歌の準備を!」

子供達「はーいっ!」タタタッ

神官「祝福を! 勇者の旅路にさらなる栄光が降り注ぐよう!」

  喜び、それは、美しき神々の閃光。
  楽園からの乙女。

  われらは熱情に酔いしれて
  汝の聖殿に踏み入ろう。

  汝の魔力は世の習わしにより
  冷たく引き離されたものを再び結び付。

  勇者の優しき翼のもと
  全ての生物は兄弟となる。


【クィーンズベル城 姫の自室】

メイド「ひっ、姫さまぁっ!」バターン

姫「ええ、ええ……っ! 窓から見てる……っ、ああ、なんという……神々しい光なんですの……」

メイド「お城中、いえ、国中大騒ぎです! あの規模の光なら、アデル、クィーンズベル、ハーケマル……全ての大地から確認できるでしょう!」

姫「勇者……」



【クィーンズベル城 鍛錬場】

戦士「これは、どうしたことだ……」



【クィーンズベル城 客間】

武闘家「す、すごい……なんだ、あれは……」

僧侶「……」ジー



【クィーンズベル城下町 宿場】

魔法使い「なに……あれ……」ポカーン
573 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 17:21:40.97 ID:qhEh2zmnO
【数十分後 魔王城 玉座】

シンリュウ「失礼いたします」ギィ

魔王「きたな。ひざまずけ。そして舌を噛んで死ね」

シンリュウ「……せめて、経緯を」

魔王「聞くまでもない。数十分前に、人間界でロトの紋章が確認された。その振動はこちらの“裏の世界”まで轟くものであった」

シンリュウ「……」

魔王「……シンリュウよ。勇者に、お前が保管するロトの剣を渡したな……?」ゴゴゴッ

シンリュウ「……」

魔王「余を、この私に対して、背信行為を働いたのだな?」

シンリュウ「誓って、そのようなつもりはなく」

魔王「結果はどうであれご覧の通りだ。人間達が活気づく。貴様はそれに加担した」

シンリュウ「……はい」

魔王「これまでの功労を讃え、一日の猶予をやる。それまでに後任の竜王を決めておけ」

シンリュウ「はい。もったいなきお言葉」

魔王「竜王よ。私は、ガッカリしたぞ」

シンリュウ「……っ」ギュゥ

魔王「……行け。二度とその顔見とおない」

シンリュウ「失礼、いたします」
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 22:02:42.59 ID:zPnad9zco
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 22:03:03.23 ID:osXsYQdNO

面白くなってきた
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 22:47:52.90 ID:Ef9vFiBd0
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 23:59:35.78 ID:3ndwvN2ro
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/09(金) 00:17:10.31 ID:7ep1IDk30
失礼します
私はpixivで絵師活動をしている者です
作者様のSSがとても面白く、刺激され創作意欲がわいてきました
応援もかねてイラスト並びに手書きMADを作成させていただきたいのですがいかがでしょうか
よければお時間をいただいてからサンプルを送らせていただきたく存じます

手書きMADに使用される楽曲は「英雄」が合っていると思います
https://youtu.be/vKJpwVaYOSY
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 01:31:42.44 ID:ryhaEccA0
>>578
どうでも良いからsageろゴミクズ
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 01:37:13.56 ID:mb4a/myF0
ゴミクズって言い方は無いだろ
せっかくやってくれるというのに
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 03:07:37.45 ID:01uE/8IDO
別に必要でも無いから勝手にどうぞってモノで有難がるモノじゃねぇだろww
>>1でも無いのにageてんだから非難されるのは当然
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 04:13:13.40 ID:FKN349pv0
いつもの単発構ってちゃんなんだから反応するなよ
いい加減に学習しろよ戦士以下かよ
583 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/02/09(金) 11:39:29.32 ID:REU529SCO
>>578
わざわざ確認していただいてありがとうございます。
大変嬉しく思ってます。
キャラクターの外観は勇者の見た目がかわいらしいとか髪は何色だ、勇者パーティはみんな美人だとかフワフワっとした特徴しかなく、触れてすらいないのが大半でございます。
というのも、書いちゃうと今よりもっとテンポが崩れちゃうので。
本当はそこまでいれてもいいんですけどあえて崩して書いてる部分が多くあります。

地の文のない台本形式は基本的に描写の約8割〜9割をキャラに喋らせるか間を持たせるなどして成立させています。
残りは補助的な擬音ですね。
そこを逆手にとるじゃないですけど、開き直って各個人のイメージにまかせてますという良い風にしてます。
制限はありませんので自由に書かれて大丈夫です。
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/09(金) 12:52:33.61 ID:7ep1IDk30
了解です!下書き完成したら貼らせていただきます!
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 13:02:39.62 ID:nkiTUtbRO
メール欄にsageって入れないと迷惑がられるのは分かっとけよ。基本ageるのは作者だけだ
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