勇者「ニートになりたい」

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560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 13:50:23.21 ID:BVvF6H3N0
直近の例を挙げると>>557>>559の単発見て自演がいないと思うなら頭お花畑
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 13:55:01.39 ID:uonLOop5O
質問の答えになってないよ?
というか端から見たらあんたも荒らしだからな?
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 14:02:06.06 ID:BVvF6H3N0
あんたもって荒らしてるって自覚あんならやめろよ
指摘とか批判とかどうでもよくてお前の目的は暇つぶしの遊び場感覚なんだろ
批判部分に否定はしてないし捏造までしてって言ってるだけ
ここまで言って引かないならもうだめだろこいつ
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 14:11:02.88 ID:u9HQTRWr0
泥仕合乙
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 14:36:26.03 ID:OWJffGdMO
最初から触れなければ良いのに……
そこまでして噛み付く意味が分からない
565 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/02/08(木) 14:48:11.88 ID:qhEh2zmnO
続けます。
566 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 14:58:01.47 ID:qhEh2zmnO
【クィーンズベル城 客室】

魔法使い「脳筋の戦士が試合を断るなんてめずらしいわね」

戦士「いやぁ〜、うん、ははっ」ショボン

武闘家「大方また負けるのが怖かったんだろうさ」

戦士「むっ」

魔法使い「あ〜、悪いこと言っちゃった?」

戦士「いや……。正直、なにも言い返せない」

武闘家「剣でもふってくるといいよ。身体を動かしてりゃ余計な考えは浮かばない」

戦士「う、うん。そうだな。そうする……」テクテク

武闘家「戦士」

戦士「なんだ?」

武闘家「自分に、負けるなよ」

戦士「……あぁ」バタン

魔法使い「ちょっと、もう少し優しい言葉かけてやりなさいよ」

武闘家「課題は見えてるんだ。立ち直るかどうかはあいつ次第だね」

魔法使い「……はぁ。つまんないなぁ〜」

武闘家「マクでも探してきたらいいんじゃないさ?」

魔法使い「いい考え! ……待って、まだ街にいるの?」

武闘家「いると思うよ」

魔法使い「それならそうと早く言ってよね〜! っと。それと、僧侶」

僧侶「はい〜?」

魔法使い「あんたのその間延びした口調! 作ってたのがよぉ〜くわかったわ! 今度からは普通に喋りなさいよ!」

僧侶「なぜですかぁ?」

魔法使い「たまぁ〜にイライラするから。なんていうの? レスポンスが遅くて」

僧侶「はぁ〜」

魔法使い「だからっ! そういうところ!」

僧侶「でもぉ、普段はこうですしぃ」

魔法使い「ハキハキ喋るのはよそ行き用ってわけ?」

僧侶「そうですねぇ〜」

魔法使い「親しき仲にも礼儀ありなんだからね? たまには普通に喋ってくれると助かるけど?」

僧侶「善処いたしますぅ〜」

魔法使い「……」ヒクヒク

僧侶「マクさんをお探しにどうぞぉ〜」ニコニコ

魔法使い「もうっ! 本当につまんないんだから!」タタタッ バタンッ
567 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 15:15:21.45 ID:qhEh2zmnO
武闘家「僧侶。聞きたいことがある」

僧侶「くすくすっ。わざわざ人払いしてまで〜。勇者様のことでしょう〜」

武闘家「そうだ。さっき、“勇者として見られたくない”そう言ったね」

僧侶「はい〜」

武闘家「どういう意味だ? アタイも、勇者は勇者として思ってるし、見てる。それでいいと思ってる」

僧侶「根は深いのですよぉ〜」

武闘家「だから、それが意味がわからないと」

僧侶「この世界は、長い間、宗教の観念が色濃いのですぅ〜」

武闘家「……?」

僧侶「それもこれも、ルビス様を至上とする宗教主義が行政と思想に強い影響力を与えているからなのですがぁ〜。武闘家さんは、ルビス様に対する信仰はいかがですかぁ?」

武闘家「アタイは、人並みぐらいだと思うけど」

僧侶「そうでしょうねぇ〜、そう答えるでしょうねぇ〜」

武闘家「……」

僧侶「このクィーズベルの皇女様も、そして、私も、武闘家さんも。生きる人々すべてがみぃ〜んな勇者さまの影にルビス様の栄光を見ているのですよぉ」

武闘家「ルビスを、見てる……?」

僧侶「そもそも、勇者が凄いってなぜなんでしょうね〜?」

武闘家「それは、“ルビスの加護を受けてて、魔王を倒すという伝説の存在だから”」

僧侶「そうですよぉ〜。その言葉が自然と出てくるほど、私たちの生活の中にルビス様信仰はあるのですぅ〜。人並みと答えた武闘家さんであっても〜」

武闘家「……」

僧侶「誰が悪いではないのですぅ。でも、勇者さまはきっと、“そうなってみないとわからない”。そんな状況に苛まれているような気がしてぇ〜」

武闘家「よく、わからない」

僧侶「申し上げてるじゃないですかぁ。私たちはおもんばかることはできても、勇者さまが抱える悩みやお立場には、なってみないとわからないのですよぉ」
568 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 15:31:19.09 ID:qhEh2zmnO
武闘家「……」

僧侶「おそらく、さみしさ。私だったらと考えると、そう思います〜」

武闘家「さみしい……って、あの勇者が?」

僧侶「単独で動かれるのを好まれる傾向にありますしぃ〜。姫さまがおっしゃっていた、私たちが信頼されていないというお言葉。あれにはドキッとしちゃいましたぁ」

武闘家「勇者は強すぎるから、自分でやった方が効率いいからじゃないの?」

僧侶「それも可能性としてありますねぇ〜。その方が手っ取り早い。そう考えているかもしれません〜」

武闘家「……」

僧侶「人の心情を掴むのは、靄の中にいるようで難しいですねぇ〜。決まったものではないのでぇ〜」

武闘家「アタイ達は、勇者にどう接するべきだと思う?」

僧侶「……わかりません」

武闘家「……」

僧侶「望むように、ある程度の距離感を保ちながらがいいのか。それとも、こちらから踏みこむのがいいのか」

武闘家「さすが童貞だな。繊細な上にめんどくさい」

僧侶「まだ時間が必要だとも思いますしぃ〜、このままだとなにも変わらないとも思いますしぃ〜」

武闘家「アンタ、ちゃんと考えてるんだね」

僧侶「もちろんですよぉ〜。将来の夫になっていただく方ですから〜」

武闘家「訂正する。ヨコシマな考えだ」

僧侶「私の師ならなんて言葉をなげかけるのでしょう〜……」
569 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 15:59:40.85 ID:qhEh2zmnO
【クィーンズベル城 南西方向 廃墟付近】

手下「ジャンさーん! スコップ持ってきましたよー!」

ジャン「オラララララァッ!!」サクサクッ

手下「す、すげぇぇ。スコップの二刀流だ」

ジャン「野郎ども! 手を休めないで掘れ!」

手下達「へいっ!」

ジャン「ギガ・ドォリルゥゥゥゥッ!!」サクサクサクサクッ

手下「な、なぁ……なんで、あの人が仕切ってんだ?」

ジャン「私語するなって言ってるだろうが! 日が暮れちまうぞ!」

手下「……へい」

ジャン「あーはっはっはっ!! 豆腐のような土じゃないかァッ!! いいゾォ〜これ!」サクサクッ

手下「ジャンさん」

ジャン「……」ギロッ

手下「ひっ」

ジャン「俺は今なんつった? 波紋を……いや、スタープラチナ召喚してほしいのか……?」

手下「スタープラチナ……? い、いや、業務報告です。埋める物なんですが」

ジャン「そして時は止まる」ズギュゥゥン

手下「は、はい?」

ジャン「なんだよー。ノリ悪いなぁ。そこはURYYYも知らないの? 漫画ぐらい敬意をこめて読め」

手下「(へ、変人だ……)掘り起こした玉なんですけどね」

ジャン「新しいやつはこっちね」ジャラ

手下「了解です」

ジャン「(中身はただのビー玉にすり替え済みだけどな)」

手下「あと、剣なんですけど」

ジャン「あぁ、そういやあったな」

手下「これ、いかにも禍々しいオーラを放ってて。みんな怖がって持ちたがらねぇんすよ」

ジャン「呪いのアイテムらしいよ」

手下「ジャン殿にお願いしていいですか? なんだか妙に古めかしい作りしてますし、とんでもない呪いだったらと思うと恐ろしいんで」

ジャン「なんだなんだぁ? 盗賊団ってのは腰抜けばかりかぁ?」

手下「俺たちゃ、いわくつきとか得体の知れないものは嫌いなんでさぁ」

ジャン「まったくぅ。いいか? 見てろ? 呪いなんてものは大抵迷信なんだから」カチャン

手下「ちょっ、ちょちょっ⁉︎ な、なにをする気でっ⁉︎」

ジャン「なにって、鞘から抜くんだよ。刀身を」スラァ

手下「あーーーーっ!! あんたなんばしょっとぉっ⁉︎」
570 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/02/08(木) 16:19:45.07 ID:qhEh2zmnO
ジャン「む……こ、これは……」

手下「ひ、ひぃぃぃっ⁉︎ わざわいがぁっ」ササッ

ジャン「……なんもねぇわ」ポコン

手下「あいてっ! え? そ、そうなんですか?」

ジャン「見てみりゃわかる。ただの普通の剣」チャキ

手下「切っ先こっちむけないでくださいよっ⁉︎」

ジャン「(本当に普通の剣だな。なんでこんなもん埋めさせようとしたんだ?)」ジロジロ

手下「え、ジャン殿。なんか、気のせいですかね」ゴシゴシ

ジャン「……なに?」

手下「しり、尻が光ってますよ」

ジャン「んなバカな……」クルッ

手下「やっ、やっぱり呪いがっ!!」

ジャン「ほ、本当だ……えっ、なにこれ、痔になる呪い? そ、そんな呪いあり?」ペカー

手下「知りませんよ! きっと死ぬまでいぼ痔だが切れ痔に悩まされるんですよぉっ!」

ジャン「おおお、おちっ、おちけつっ、そ、そんな呪いがあるはずが……ケツ? ケツだって?」

手下「ほらぁっ! 剣まで光ってきてますしぃっ!!」

ジャン「な、なんだこれ……」ゴゴゴゴォォッ

手下「とんでもない呪いだったんですよぉっ! 抜くからぁっ! 本当バカバカバカバカンス!」

ジャン「……手下。俺、思い出した」ゴゴゴゴォォッ

手下「な、なにをです?」

ジャン「セリフな。そして時は止まるじゃなくて、動きだすの間違いだったわ」ゴォォオオオオオオッッ

手下「どうでもいいだろバカやろーーっ!!」
571 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 16:36:27.19 ID:qhEh2zmnO
【竜王城 玉座】

シンリュウ「おはよ」

ベビードラゴン「もうお昼だすよー。お寝坊さんですねー」パタパタ

シンリュウ「まだ眠い」クァ

ベビードラゴン「昨日、オラが帰ってくるころには寝てたじゃないですかぁ」

シンリュウ「んだなすぅ。眠くて眠くてぇ」

ベビードラゴン「ほっといたら数年寝てそう……」

シンリュウ「ニンゲンにはあってきたんだっぺ?」

ベビードラゴン「もたろんだすっ! ちゃぁ〜んと言いつけを守ってきたっすよ!」

シンリュウ「勇者はクィーンズベルの近くにいるはずだなす。ちょっかいを出してどう動くか観察するべよ」

ベビードラゴン「国も潰せれば一石二鳥ですしねっ、ニシシッ、さすが竜王さまぁ〜っ! あったまいい!」

シンリュウ「……あんれ?」

ベビードラゴン「どないしただす?」

シンリュウ「玉座の横に置いてあった、“ロトの剣”があったっぺよ? あれ、どこさ持っていっただ?」

ベビードラゴン「それなら、言いつけ通り、盗賊団に渡しただよ」

シンリュウ「誰の言いつけだっぺ?」

ベビードラゴン「やだんもぉ〜。シンリュウ様に決まってるじゃないすかぁ」

シンリュウ「わだすが、いつ、どこで、何時何分何十秒にそげなこといったのよ」

ベビードラゴン「呪いの剣を埋めておいてって言われたではないずかぁ」

シンリュウ「それは言った。でも、この城の別の部屋にある“血塗られた剣”な?」

ベビードラゴン「え……」

シンリュウ「んでもって、ここに置いてあったのは“ロトの剣”な?」

ベビードラゴン「あ……」

シンリュウ「んで、最初に戻るけど、わだすがいつ言ったのよ?」

ベビードラゴン「あぁ〜用事思い出したっ! いっげね、こうしてる場合じゃ」パタパタ

シンリュウ「待てコラ」ガシッ

ベビードラゴン「ひっ」

シンリュウ「おめぇ……まさか、まさか、まさか、勇者が近くにいるのかもしれねってのに、わざわざ、ロトの剣を置きにいったのけ?」

ベビードラゴン「の、呪われてただすっ! それは間違いねぇすよ!」

シンリュウ「あの剣はなぁ、多くの魔物の血を吸ってる。呪われてるのは当たり前なのよ。でも、勇者が抜くと浄化される」

ベビードラゴン「へ、へぇ〜」

シンリュウ「勇者、いま、どこにいるんだっけ? マーキングしてるんだべな?」

ベビードラゴン「……んだなすぅ。サキュバスが服につけてるから。クィーンズベルの宿場のはずだす」

  ゴゴッ  ゴゴォッ  ゴゴゴゴォォッ

シンリュウ「んだ……地震か? 火山でも噴火したかな?」

ベビードラゴン「(誤魔化すチャンス!)み、見に行くっぺ! 竜王様!」
572 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 16:58:40.89 ID:qhEh2zmnO
【アデル城】

大臣「お、王様っ!! あれを!」

王様「うむ! あれは、あの光の柱は……っ!」

大臣「見てください! 空にくっきりと紋章がっ! あれこそがっ、まさに伝説の……“ロトの紋章ッ”!!」



【ダーマ神殿】

大司祭「おおっ! つ、ついに……! ついに勇者様が伝説の宝具のひとつ、ロトの剣を……!」

子供達「わぁ〜。見て見てぇ。線が一直線に伸びてるぅ〜」

神官「そんなっ! これほどはやいとは……! ルビス様のお導きに感謝しなければ……!」

大司祭「こうしてはおられん! 子供達よ! 賛美歌の準備を!」

子供達「はーいっ!」タタタッ

神官「祝福を! 勇者の旅路にさらなる栄光が降り注ぐよう!」

  喜び、それは、美しき神々の閃光。
  楽園からの乙女。

  われらは熱情に酔いしれて
  汝の聖殿に踏み入ろう。

  汝の魔力は世の習わしにより
  冷たく引き離されたものを再び結び付。

  勇者の優しき翼のもと
  全ての生物は兄弟となる。


【クィーンズベル城 姫の自室】

メイド「ひっ、姫さまぁっ!」バターン

姫「ええ、ええ……っ! 窓から見てる……っ、ああ、なんという……神々しい光なんですの……」

メイド「お城中、いえ、国中大騒ぎです! あの規模の光なら、アデル、クィーンズベル、ハーケマル……全ての大地から確認できるでしょう!」

姫「勇者……」



【クィーンズベル城 鍛錬場】

戦士「これは、どうしたことだ……」



【クィーンズベル城 客間】

武闘家「す、すごい……なんだ、あれは……」

僧侶「……」ジー



【クィーンズベル城下町 宿場】

魔法使い「なに……あれ……」ポカーン
573 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/08(木) 17:21:40.97 ID:qhEh2zmnO
【数十分後 魔王城 玉座】

シンリュウ「失礼いたします」ギィ

魔王「きたな。ひざまずけ。そして舌を噛んで死ね」

シンリュウ「……せめて、経緯を」

魔王「聞くまでもない。数十分前に、人間界でロトの紋章が確認された。その振動はこちらの“裏の世界”まで轟くものであった」

シンリュウ「……」

魔王「……シンリュウよ。勇者に、お前が保管するロトの剣を渡したな……?」ゴゴゴッ

シンリュウ「……」

魔王「余を、この私に対して、背信行為を働いたのだな?」

シンリュウ「誓って、そのようなつもりはなく」

魔王「結果はどうであれご覧の通りだ。人間達が活気づく。貴様はそれに加担した」

シンリュウ「……はい」

魔王「これまでの功労を讃え、一日の猶予をやる。それまでに後任の竜王を決めておけ」

シンリュウ「はい。もったいなきお言葉」

魔王「竜王よ。私は、ガッカリしたぞ」

シンリュウ「……っ」ギュゥ

魔王「……行け。二度とその顔見とおない」

シンリュウ「失礼、いたします」
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 22:02:42.59 ID:zPnad9zco
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 22:03:03.23 ID:osXsYQdNO

面白くなってきた
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 22:47:52.90 ID:Ef9vFiBd0
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 23:59:35.78 ID:3ndwvN2ro
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/09(金) 00:17:10.31 ID:7ep1IDk30
失礼します
私はpixivで絵師活動をしている者です
作者様のSSがとても面白く、刺激され創作意欲がわいてきました
応援もかねてイラスト並びに手書きMADを作成させていただきたいのですがいかがでしょうか
よければお時間をいただいてからサンプルを送らせていただきたく存じます

手書きMADに使用される楽曲は「英雄」が合っていると思います
https://youtu.be/vKJpwVaYOSY
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 01:31:42.44 ID:ryhaEccA0
>>578
どうでも良いからsageろゴミクズ
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 01:37:13.56 ID:mb4a/myF0
ゴミクズって言い方は無いだろ
せっかくやってくれるというのに
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 03:07:37.45 ID:01uE/8IDO
別に必要でも無いから勝手にどうぞってモノで有難がるモノじゃねぇだろww
>>1でも無いのにageてんだから非難されるのは当然
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 04:13:13.40 ID:FKN349pv0
いつもの単発構ってちゃんなんだから反応するなよ
いい加減に学習しろよ戦士以下かよ
583 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/02/09(金) 11:39:29.32 ID:REU529SCO
>>578
わざわざ確認していただいてありがとうございます。
大変嬉しく思ってます。
キャラクターの外観は勇者の見た目がかわいらしいとか髪は何色だ、勇者パーティはみんな美人だとかフワフワっとした特徴しかなく、触れてすらいないのが大半でございます。
というのも、書いちゃうと今よりもっとテンポが崩れちゃうので。
本当はそこまでいれてもいいんですけどあえて崩して書いてる部分が多くあります。

地の文のない台本形式は基本的に描写の約8割〜9割をキャラに喋らせるか間を持たせるなどして成立させています。
残りは補助的な擬音ですね。
そこを逆手にとるじゃないですけど、開き直って各個人のイメージにまかせてますという良い風にしてます。
制限はありませんので自由に書かれて大丈夫です。
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/09(金) 12:52:33.61 ID:7ep1IDk30
了解です!下書き完成したら貼らせていただきます!
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 13:02:39.62 ID:nkiTUtbRO
メール欄にsageって入れないと迷惑がられるのは分かっとけよ。基本ageるのは作者だけだ
586 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/09(金) 22:03:06.48 ID:erdwcehdO
【魔王城 通路】

ベビードラゴン「りゅ、竜王さまぁ、あのぅ〜」シュン

シンリュウ「なにも喋るな。城に帰るぞ」

ベビードラゴン「ひぐっ、ず、ずびませぇ〜ん」

サキュバス「くっくっ、あっはっはっ!」

リリス「竜王の失態! 大っ失態っ!」

シンリュウ「……」

ベビードラゴン「淫夢族……」

サキュバス「まだ生きながらえていたとはね。魔王様の前で命乞いでもしてきたか?」

リリス「サキュバスさまぁっ、そんな傷口に塩塗ったらかわいそうですよぉ〜。どうせ極刑は免れないんですからっ」

ベビードラゴン「きさまらぁっ! こちら竜王様であらせられるぞ!」ギロッ

サキュバス「廃位される王でしょ? ……そうよね? 竜王殿?」

ベビードラゴン「え……そ、そんなっ、竜王様っ! うそ、うそですよね……?」

サキュバス「魔王様は一度下した決断を覆したりはしない。なぜなら、絶対王だから」

シンリュウ「……退け。淫魔の王よ」ギリッ

リリス「あらあらぁ? よくみたら拳握りしめてぇ。我慢してらっしゃるのぉ?」

サキュバス「それはいけないねぇ。我慢は身体に毒だ。我らでガス抜きをしてやろうか」

ベビードラゴン「……お、オラのせいで……」プルプル

サキュバス「オマエが気に病むことはないのよぉ〜? 子の失敗は親の責任。部下もまた、然り。ね?」ニタァ

シンリュウ「ふぅ……五月蝿い。そこを退けと言った。いくぞ、ベビー」コツコツ

サキュバス「――……貴様ッ!! 自分のしでかしたことがわかっているのかッ!! 竜王ッ!!」

シンリュウ「……」ピタ

サキュバス「勇者にロトの剣を差し出すようなマネをしおってっ!! あの勇者に……ッ!!」

シンリュウ「……これはこれは。そういえば淫王は勇者にこっぴどくやられた経験がおありでしたね?」

リリス「さ、サキュバス様ぁっ。薮蛇ですよぉ〜」

サキュバス「貴様は対峙したことがないからわからんだけなのだ! 魔王様に対する脅威! その脅威に更に力を与えたことを責めておる!」

シンリュウ「責任は、とれない」

サキュバス「ぬけぬけと……ッ!」

シンリュウ「……次の竜王に望みを託す。私は、これまでのようだから」

ベビードラゴン「りゅっ、竜王様ぁっ!」ウルウル

シンリュウ「城に帰る。お前まで何度も言わせるな」
587 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/09(金) 22:23:37.19 ID:erdwcehdO
【魔王城 玉座】

魔王「おのれ……っ!」ブンッ カランカラン

大臣「魔王様。おいたわしや」

魔王「なぜだっ! なぜこうも勇者に関わることになると裏目にでるっ!」

大臣「竜王は、あやつの落ち度で……」

魔王「今回だけではない! 成人の儀まで見つけられなかったこと! ……これではまるでなにか強力な“引力”が働いてるようではないか⁉︎」

大臣「お気を強くもたれなさいませ」

魔王「弱気ではないッ!出来過ぎていると申しておるのだッ!」ゴォッ

大臣「ひっ」

魔王「余は腹心の一匹を失う! 勇者は新たな力を手に入れた! やつの失ったものはなんだ……? やつは、なにをした? なにもしていないではないか……」

大臣「我々の自爆でございますに」

魔王「竜王はバカではない!」

大臣「左様でございます。しかし、部下の管理がなっていなかったのは……」

魔王「……」

大臣「ご心中お察しいたします。今代の竜王の代わりとなるものは、間違いなくまた弱くなるでしょうから」

魔王「……」ギリッ

大臣「明日、処刑を執り行います。竜王が逃げないか監視をつけますか?」

魔王「心配は無用だ。アレはそういうタマではない。甘んじて死を受け入れるだろう」

大臣「御意に」
588 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/09(金) 22:46:07.55 ID:erdwcehdO
【クィーンズベル城 南西方向 廃墟付近】

ジャン「お〜いてて」ムクッ

手下達「」

ジャン「全員気絶してら。すっごい衝撃波だったもんなぁ」チャキ

テレレ レッテッテッテッテー
▼勇者はロトの剣を手に入れた!

ジャン「なんだろう。なにも努力してないのに手にいれた有り難みのなさ……」

  ドドドドドッ

ジャン「ん? 馬の蹄の音……?」

兵士「こっちだぁーっ! こっちの方角から光の柱があがったぞーっ!」

ジャン「おや? あれはクィーンズベルの兵士達でない? さてはさっきので……手下達を起こさにゃ」

手下達「」

ジャン「いや……でも待てよ? 弟は取り返した、井戸が枯れた原因は突き止めた、盗賊のアジトもわかった、どの魔族かもわかった……あれ? 俺なんで穴掘りなんかやってたんだっけ……」

手下「う、う〜ん」

ジャン「あれれ? これってもう俺ってば、お役御免でいいんじゃない?」

手下「うぅ……さっきの、光はいったい……」ムクッ

ジャン「ていっ」トスッ

手下「あふん」ドサッ

ジャン「アジトで気絶してるお頭も捕まるだろうし、あとは兵士達にお任せして俺はトンズラすっか」

手下達「」

ジャン「俺を恨むなよ……。恨むなら自分達の不運を呪うがいいっ!! さらばだっ!!」シュタッ
589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 23:37:07.17 ID:NzgF/zDpO
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 01:53:51.02 ID:Q6DRywsj0
591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 07:45:55.02 ID:DoDAKfKCO
592 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/10(土) 11:18:41.28 ID:D1nh3B2VO
【竜王城 玉座】

シンリュウ「ふぅ……次期竜王の選別を行う。カイザードラゴンを呼んでまいれ」ドサッ

ベビードラゴン「オラのせい、オラのせいで」ブツブツ

シンリュウ「ベビー……」

ベビードラゴン「……うっ、そんなっ、うぅっ……」ポロポロ

シンリュウ「ベビー!」バンッ

ベビードラゴン「……っ!」ビクゥ

シンリュウ「済んでしまったことだ。気にするのはおやめ」

ベビードラゴン「でっ、でもっ」

シンリュウ「これからのことを考えねばならない。一族を守る。それだけを考えるのだ。魔王様の取り計らいで、わたしだけで済んだ。それで良しとしよう」

ベビードラゴン「りゅぅ、おうさまぁっ」

シンリュウ「よくお聞き。我ら魔族は魔王様の圧倒的カリスマで統率を保っておるが、各種族の横繋がりは薄い。いがみあっておると言ってもいい」

ベビードラゴン「……」

シンリュウ「我が背信行為をしたという事実。その責を問い、末席に追いやろうと計略するものがいる。誰か、わかる?」

ベビードラゴン「サキュバス、ですか?」

シンリュウ「そう。あれはしたたかだ。他の獣王や巨人王は知能が足りない。サキュバスは、これを機に魔王様のご寵愛を一身に受けようとするはず」

ベビードラゴン「(竜王さまをオラの前でバカにした……! 報いは必ず万倍にして返す……!)」

シンリュウ「後任の竜王には、辛酸を舐めさせような辛い思いをさせることだろう。残念だが」

ベビードラゴン「そっそんなっ! 竜王様はなにも悪くないとオラが言います!」

シンリュウ「やめよ」

ベビードラゴン「なっ、なんでだすかぁっっ⁉︎」

シンリュウ「既に裏世界でも噂になっておろう。私の部下が、ロトの剣を渡したと。ベビー、お前の話題だ」

ベビードラゴン「だっ、だからっ! 私が責任をもってっ!」

シンリュウ「生きよ。生きて立派に魔王様、次期竜王に忠をもって尽くせ」

ベビードラゴン「……っ」

シンリュウ「奪還しようにも時間がなく、勇者はもはやどうしようもないが、やらかした責任は私が墓まで持っていく」

ベビードラゴン「い、いやだぁっ!」ポロポロ

シンリュウ「これがお前の罰なのだっ!!」バンッ

ベビードラゴン「堪忍してぇっ。竜王様だけを逝かせるなんて」

シンリュウ「くるしかろう。死ぬよりももっと辛い想いを抱いてこれから生きていかなければない。何度も思い出して、後悔して……それでも、腐らず前を向いて生きていかなければならない」

ベビードラゴン「うっ、うっ、うわぁぁぁあんっ!」ポロポロ

シンリュウ「生きる。それがお前に化す、わたすからの罰」

ベビードラゴン「……うっ、うっ……」ポロポロ

シンリュウ「わたすが死ぬことで同族からも忌み嫌われるだろう。耐えて、必ずやわたすの志を紡いでおくれ」

ベビードラゴン「あぁあぁぁっ! びぃやあああっ」ポロポロ

シンリュウ「……よいな。なにもするな。さぁ、カイザードラゴンを呼んでまいれ」
593 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/10(土) 11:37:46.87 ID:D1nh3B2VO
【竜王城 通路】

カイザードラゴン「どのツラさげて……ッ!」ビターンッ

ベビードラゴン「竜王様が、およびでずっ、ぐすっ」

カイザードラゴン「貴様……なぜ泣いているのだ。まさか、竜王様の前で泣いていたというつもりか……?」

ベビードラゴン「……ぐすっ、うっ……」

カイザードラゴン「バカも休み休みにしろ! 泣きたいのは我らだ!竜王様だ! お前以外の一族全員だっ!! このッッ大戦犯めッッ!!」ゴォッ

ベビードラゴン「ず、ずびませぇ〜ん」

カイザードラゴン「竜王戦の元にいく。少しでも申し訳ないと思うなら、明日の朝日の前に……自決しろ」

ベビードラゴン「竜王様はぁ、オラに生きろって……」

カイザードラゴン「な、なにぃっ⁉︎」

ベビードラゴン「……」シュン

カイザードラゴン「もし、もしも、私が次期竜王になったら、即座に八つ裂きにしてやる……!」

ベビードラゴン「うぅ……それじゃ、竜王様との約束が……」

カイザードラゴン「約束もへったくれもあるかッ! お前は生きていることが罪なのだ! その罪を! 私が断罪してやるっ!!」

ベビードラゴン「……」

カイザードラゴン「かばいだてするものは誰もいないぞ。勇者の元に行って、剣を奪還してくるぐらいの気概を見せたらどうだ」

ベビードラゴン「勇者の、元に……」

カイザードラゴン「竜王さまは生きておられる。お前にできることをしろ。一族のために。面汚しめ!」

ベビードラゴン「(そうだ。勇者を探して剣を取り返せば……! 竜王さまも……っ!)」
594 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/10(土) 12:12:59.31 ID:D1nh3B2VO
【竜王城 玉座】

カイザードラゴン「馳せ参じました」

シンリュウ「優秀な個体を見繕っておくれ。お前の選んだ者の中から次期竜王を決める。無論、候補者にはカイザーも――」

カイザードラゴン「その前に! たしかめるまでもないですが……竜王様の口から直接! 噂の真相をお聞かせ願いたい!」

シンリュウ「噂には尾ひれがつくもの。ベビーは私の指示にしたがったまで」

カイザードラゴン「この後に及んで虚言を申されるのですかッ⁉︎ やつがロトの剣を持ち出したのでしょう⁉︎」

シンリュウ「それも、すべて、私のせいだ」

カイザードラゴン「では! 竜王様自らが勇者にロトの剣を渡したとお認めになるのですかっ⁉︎」

シンリュウ「そうではない。認めれば一族に災いがふりかかる。任せるものを間違えた。その責は私にあると言っておる」

カイザードラゴン「ベビードラゴンの処刑を今すぐにご下命ください! 我らの憤りは万の言葉をもってしても解消できませんっ!!」

シンリュウ「カイザー。いつも通り話すっぺ」

カイザードラゴン「……」

シンリュウ「ベビーはたしかにやらかした。んだども、なんとか、生かしてやっておいでぐんね?」

カイザードラゴン「アホぬかせぇっ! そったらこと認められっかあっっっ!!」

シンリュウ「おめぇらの憤りもわかる。でも、でもな? あいつのポテンシャルは、一族の誰よりだかいのよ」

カイザードラゴン「そっ、そったらこと」

シンリュウ「魔族は全体的に、世代交代するにつれてどんどん弱体化してってる。魔王様もお気づきのことなんだろうけどな」

カイザードラゴン「それがなんだっていうんだ! 人間より弱くならなきゃいいでねかっ!」

シンリュウ「わだすも同意見。だけんど、勇者っていう強力な個体がいる今、ちょっと不安。ちょっとだけな?」

カイザードラゴン「たかがにんげんだっ!!」

シンリュウ「それもそう。実際に力比べしてくりゃよかったと今になってさ、思うんだ。サキュバスが怯えきってるのがどーにもひっかかる」

カイザードラゴン「淫夢族など! 力はあまり強くないでねぇかっ!」

シンリュウ「ふふっ、わたすも死ぬと決まるまではなにからなにまでおんなじこと思ってた。ベビーは生きさせてあげてよ」

カイザードラゴン「……りゅ、竜王様……っ!」

シンリュウ「あの子が成長するまで、見守ってあげで。それが、一族のためになるがら」

カイザードラゴン「ば、ばかなっ!」

シンリュウ「呑んでくれれば、次期竜王選出なんで形だけでカイザーを指名してあげる。……遺言、聞いてくれるよな?」

カイザードラゴン「そっ、それでいいのか……大罪人になって、同族からツバをかけられるぞ」

シンリュウ「しかたねぇっぺよ。どうせ死ぬんだ。なにも怖いものなんかねぇ。屈辱は耐えればいい」

カイザードラゴン「……バカな王だ……」
595 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/10(土) 17:55:50.40 ID:nMxbtsuVO
【数時間後 宿場】

勇者「ふぅ〜、着替え完了っと。パーティメンバーどもはまだ道草くってんのか」パンパン

店員「あれ見たかよ! なんでも勇者様がこの国にいるらしいぞ!」ザワザワ

勇者「……」ササッ ピトッ

おじさん「でも、兵達が現場についたら盗賊団の一味しかいなかったって噂だけど。行列作って表通りを連行されてたじゃないか」

勇者「(よしよし、ちゃんと捕まえたみたいだ)」

店員「勇者様がいるのに疑う余地なんかないだろ。だって、光の柱があったんだから――」ザワザワ

勇者「うーん、どうしたもんか。このままノコノコとでてってパレードなんて開かれてもな。かといってこのまま消えちゃ鏡を探し出せてないし」

コンコンッ

勇者「おっ、ようやく帰ってきたか。今あけるよ」テクテク ガチャ

占い師「……」

勇者「あれ、お前――」

占い師「勇者は、どこだ」

勇者「うぅん、ごほん。……勇者? 誰だそれ? 人違いだよ」

占い師「嘘をつくな。マーキング反応が……っ⁉︎」ギョッ

勇者「マーキング? そんな犬猫じゃあるまいし」

占い師「……お前か……オマエが、勇者か……?」シュゥゥゥ

勇者「(なんだ、息が、できない)」

占い師「剣は、どこだッッッ!!」

勇者「かっ、かはっ、剣なら、背中に」キラン

占い師「……なんだ、その色はッ⁉︎ 剣は禍々しい紫だったはず、純白に輝いて……ハッ⁉︎」

シンリュウ『あれは多くの魔物の血を吸ってる。勇者が抜ぐど浄化されんのよ』

占い師「(間違いない……! こいつが、勇者……!)」

勇者「今度は俺じゃなくて、剣が、有名人か?」ガクッ

占い師「――どっちもに決まってるだろうがクソやろおおおおおッッ!!」ゴゴゴゴゴッ

勇者「おっ、息ができるようになった」

占い師「魔王様にッ!! 竜王様にあだなす勇者めっ!!」ギロッ

勇者「俺、なんかした?」

占い師「ぬぅぅぅっ!!」ゴゴゴゴゴッ

勇者「ちょっとストップ。ここでおっぱじめるの? 一般人多いから場所移さない? 日中だし」

占い師「しるかぁぁああああっ!!」

勇者「あぁそうかよ。だったらちょっと痛いけど我慢しろよ」シュン

占い師「……ッ⁉︎ き、消えッ⁉︎」

勇者「ふっとべ」ズパァァァァァンッ

占い師「ぎゃぅッ!」バコーーン ヒュー

勇者「昨日の件といい。修理代だけで何万ゴールドとられるのやら……はぁ〜」ガックシ
596 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/10(土) 18:17:29.54 ID:nMxbtsuVO
【クィーンズベル 郊外】

占い師「ぬぅぅぅっ!!」スポン ポン ポポポンッ

ベビードラゴン「――ぷはぁっ! ん、んだぁ? いまのパンチは……」キキッ

勇者「おーーーいっ」ダダダッ

ベビードラゴン「いてて……」パタパタッ

勇者「おーーいってば〜! 俺は空までサポートしてないんだよー! 降りてこいよー! じゃないと撃ち落としちゃうぞー!」

ベビードラゴン「だれがおめぇの言う通りになんかすっか! くらえっ! 火炎の――」

勇者「ライデイン」ピュン

ベビードラゴン「わっ⁉︎」バサッ

勇者「ホッホッホッ。あなたにこのフリーザ様のデスビームを避けられますかねェ」ピュン ピュン

ベビードラゴン「ちょっ⁉︎ まっ! っとぉっ! わぁっ!」バサッバサッ

勇者「ほぉ、避けてるってことは稲妻の速度が見えてるのか。すげーじゃん。今まで出会った中でお前がはじめてだ」ピタ

ベビードラゴン「はぁっ、はぁっ、お、おわった……?」

勇者「ライデインver.2」バチ バチバチィ

ベビードラゴン「な、ななななっ⁉︎」

勇者「ここまで私をコケにしたのはあなたがはじめてですよ……ジワジワとなぶり殺しにしてくれるっ!!」クワッ

ベビードラゴン「な、なんだかわかんないけど、火炎の息ッ!!」スゥゥゥ

勇者「フバーハ」ポワァ

ベビードラゴン「ばかめっ! これは魔法なんがじゃねぇっ! 耐火魔法でふせげると思うなよっ!!」ゴォォォッ

勇者「そ、そうなん? え、じゃあ、どうしよ。しまった。フリーザも変身前にやれって誰かが言ってたの。先手必勝の教えを活かせなかった」アタフタ

ベビードラゴン「(かっ、勝った! 骨まで溶けておしまいだっ!!)」ボォォォォッ

勇者「えーと、とりあえず、格好だけでもつけとくか」スラァ

ベビードラゴン「しねぇっ!! 勇者ぁっ!!」
597 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/10(土) 18:40:27.20 ID:nMxbtsuVO
勇者「ほいっ」ブンッ

――シュパァァァァァン――

ベビードラゴン「……え?」ブシュゥ

勇者「お、おぉ……マジかよ」

ベビードラゴン「な、なんだ、今のは」ヒュー

勇者「(俺が聞きてえよ。この剣は……離れてる相手を切るとか斬撃が飛ぶとか、そんなチャチなもんじゃねぇ……炎を、まるごと“空間を切り裂いた”……?)」

ベビードラゴン「あぅっ」ドサッ

勇者「なんというチート。こんなもん使って歴代の勇者は戦ってきたの? そら勝てるわけじゃん。こりゃ封印たな」チャキン

ベビードラゴン「……うっ、く、ぐぞぉっっ!」ググッ

勇者「ちょいまち。結構パックリ切れちゃってるだろ。今回復してやっから。ベホマ」ポワァ

ベビードラゴン「か、回復なんかすんなぁっ! おめぇ、魔族の誇りに泥をぬって辱めようというんだな! さすが勇者汚い!」

勇者「褒めてるのか貶してるのかよくわからん」ポワァ

ベビードラゴン「やめっ、やめろぉぉぉっ」ジタバタ

勇者「治してるそばから傷口開いてるじゃねーか」

ベビードラゴン「オラは、剣を持って帰って、竜王様を……!」

勇者「あ? なんだ、剣がほしいのか? なら最初から言えばいいのに」カチン パチン

ベビードラゴン「……?」

勇者「ほら。持ってけ」ポイ

ベビードラゴン「え」ポカーン

勇者「それは危ねぇわ。持ってても使わないからあげる」

ベビードラゴン「えぇっ⁉︎」

勇者「なぁなぁ、さっき息できなくしたのどうやったん? 火炎の息よりもアレメインに使った方がいいと思うよお前」ポワァ

ベビードラゴン「いや、アレは。まわりの空気吸って、真空にするっていう」

勇者「あー! なるほどね! 竜族の肺活量ならではってわけか! やばいね! 俺だって酸素吸わなきゃ死んじゃうし!」

ベビードラゴン「あの……ほんどにいいのけ?」

勇者「なにが? 剣? うん、いいよ」

ベビードラゴン「だ、だども」

勇者「気にするなって! 困った時はお互いさまだろ!」

ベビードラゴン「いや、そうではなぐで。魔族がニンゲンにもらって帰ってぎだって知られたら」
598 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/10(土) 19:04:22.24 ID:nMxbtsuVO
勇者「あー、そうな。かといって死んであげるわけにゃいかないしなぁ」

ベビードラゴン「おめぇ、つ、強いんだな」

勇者「勝負じゃなくて武器の性能だろ。ガキでも勝てちまうわ」

ベビードラゴン「ほどんど遊んでただろ。それぐらいわかる」

勇者「お前もちゃんとしたとこ見せるまでやれなくてすまなかったな。実力確認する前に終わるとは思わんかった」

ベビードラゴン「サキュバスにも、勝ったんだっぺ?」

勇者「あのグラマラスなおねーさん? 記憶がほとんどなくてねぇ……治ったぞ」

ベビードラゴン「……」サスサス

勇者「仕切り直しでもういっちょやる?」

ベビードラゴン「できれば――」

勇者「よしきた、それじゃあ」パンパン

ベビードラゴン「――ニンゲンの浅知恵を貸してくんろ」

勇者「あぁん?」

ベビードラゴン「こうなりゃ恥やプライドも捨てる竜王様をとにかく、助けてぇんだ。ニンゲンはコソコソやるのが好きなんだろ? そうだっぺな?」

勇者「なにがあったんだ? 魔族が人間に縋るなんてよっぽどだろ。しかも、俺ってば勇者よ? ひどい裏切り行為なんでない?」

ベビードラゴン「うっ……!」

勇者「悪かった悪かった。詳細話してみろ」

ベビードラゴン「(ほ、本当に、話していいんだべか。竜王様、きっとすごくお怒りになる。魔王様も、オラを許してくんね。で、でもっ)」

勇者「……」

ベビードラゴン「(こ、こいつには、本気でやっても勝てそうにない気が、する。たぶん、勝てない)」

勇者「どした?」

ベビードラゴン「に、にんげんよ」

勇者「なんだね?」

ベビードラゴン「こ、この場のやりとりは、墓まで持っていくと、約束するか?」

勇者「なに? そんなに大それた話? よっぽど必死なんだな。会ってすぐのやつに縋るなんて」

ベビードラゴン「時間がないのだ! 時間があれば、お前なんかに……!」

勇者「わかった。約束する」

ベビードラゴン「よ、よし。ならば、あとで魂の契約を交わせるか?」

勇者「えぇ〜なにそれ」

ベビードラゴン「口約束なんか信用できっか!! できないなら喋らねぇど!」

勇者「いや、お前が……まぁ、いいよ。話が進まないから」

ベビードラゴン「よ、よし。本当だな? やっぱりやーめたっとか無しだかんな?」

勇者「はいはい」

ベビードラゴン「――……実は、かくかくしかじかで」

599 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/10(土) 19:18:02.02 ID:nMxbtsuVO
勇者「剣間違えて持ってきちゃったんだ? てことはだ、正規ルートでいけばラスボス手前とかの最強アイテムが序盤も序盤で手に入ったみたいな?」

ベビードラゴン「うぅ」シュン

勇者「お前人間の姿のままでいたら? 元に戻ると本当マヌケじゃん。喋り方もなんだか訛ってるしさぁ」

ベビードラゴン「そったらことどうでもいいだろ! 剣持ち帰っただけじゃ! きっと魔王様は持ち出した失態を取り消しはしねぇっ! 竜王様が死んじゃう!」

勇者「俺に勝って持ってきたっていうのもなぁ」

ベビードラゴン「騙せるのは何匹かいるかもしんね。魔王様は心の奥の奥まで見通すお方だ。肝心のあのお方を納得させるプランでねぇと」

勇者「そんなに大事か? 竜王ってのは」

ベビードラゴン「命よりも、誇りよりも、なによりも大切なお方だっっ!!」

勇者「そうか。じゃあ、取り引きしないか。魔王への伝言を頼みたい」

ベビードラゴン「伝言?」

勇者「俺は、勇者やめたがってる。そう伝えてほしいんだ」

ベビードラゴン「そんなウソついて。なに企んでるかしんねぇけど信じるもんか」

勇者「いや、信じさせる妙案を思いついた」

ベビードラゴン「……」ジト〜

勇者「どうする? 乗るか乗らないかは決めていいよ」
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 21:46:45.83 ID:9k6G9V9DO
実は魔王も魔王やめたがってたりしてな
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 22:08:06.90 ID:7ks2HcNWO
602 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/10(土) 22:17:11.39 ID:nMxbtsuVO
【数時間後 竜王城 玉座】

シンリュウ「――ほんで? おめぇが勇者に勝ってこの剣を取り戻しでぎだってのけ?」

ベビードラゴン「……」パタパタ

カイザードラゴン「どうしたッ!! はやく答えろッ!」ビターンッ

ベビードラゴン「そうだす。勇者は強かったんけんど、取り戻すことができただす」

シンリュウ「ふぅ〜ん?」チラ

カイザードラゴン「竜王様。ここに、勇者の腕が」ゴトッ

ベビードラゴン「……」

シンリュウ「たしかに、間違いなくニンゲンの腕だな?」

ベビードラゴン「勇者本人のものだす。噛み切ってやっだなす」

シンリュウ「……ニンゲンの腕ではあるが、勇者本人のものとは」

ベビードラゴン「血を飲めばわかるはずだす」

シンリュウ「血を……?」

ベビードラゴン「ルビスの加護。オラも噛み切った時にはじめて知っだけんど、その加護の宿った人間の血は、魔族にとって毒だなす」

カイザードラゴン「それはまことか……!」ペロッ

ベビードラゴン「……」

カイザードラゴン「うっ、まずっ! な、なんだこの臭みは。これでは野ウサギの方がまだマシだ、ぺっぺっ」

ベビードラゴン「これまで飲んだことの味というのが証明になるはずだす。魔王様に謁見の許可を。竜王様」

シンリュウ「謁見して、なにをするづもりだ?」

ベビードラゴン「ただ、ありのままを報告するだす。隻腕(片腕のこと)になったのは、魔王様にも報告せねばならぬこと」

シンリュウ「わだすではなくお前がか?」

ベビードラゴン「現竜王様は、魔王様のご機嫌を著しく害しておられるだす。会ってくれるかどうかもわからないだす」

カイザードラゴン「勇者の腕をもぎとってにたとあれば……! 竜王様っ!」

シンリュウ「まだわだすは竜王だ。ベビー……嘘はついてない?」

ベビードラゴン「誓って。嘘なんかついてねぇ」
603 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/10(土) 22:46:01.71 ID:nMxbtsuVO
【数時間前 クィーンズベル 郊外】

勇者「勇者によるワンポイントレッスン! はぁじまーるよぉー!」

ベビードラゴン「……」ポカーン

勇者「拍手! 歓声!」

ベビードラゴン「わ、わぁ〜」パチパチ

勇者「うむ! いいか、まず本作戦のキモはいかにしてウソがばれないかだ! といことは、つまり、大大大大前提としてウソをつく! これをまずわかれ!」

ベビードラゴン「いや、そったらごど言われんでも」

勇者「いいや! わかってない! ウソを舐めるな! ウソなんてものはすぐボロがでちまうもんだ! まず、第一の基本! ポーカーフェイス!」

ベビードラゴン「……」キリッ

勇者「わざとらしいわボケナスゥッ! 自然体でいいんだよ自然体で。ポーカーフェイスは決して動じないこと。これに尽きる。予期せぬ質問がきても鉄仮面をかぶれ」

ベビードラゴン「は、はいっ!」

勇者「魔王であっても竜王であっても本当に心が読めるわけじゃないんだ。忠誠を誓っているのに、後ろめたい気持ちなくウソをつけるか?」

ベビードラゴン「が、がんばるっ」

勇者「やれ。絶対にやりとげろ。じゃなきゃ竜王が死ぬ。いいな?」

ベビードラゴン「……」ゴクリ

勇者「実際目で見た情報があれば信じやすい。それは変わらん。これ視覚から訴えかける情報量が強い。獣族は嗅覚かもしれんが」

ベビードラゴン「うんうん」

勇者「まずは竜王城に帰り。勇者と戦ってきて勝ったと報告しろ。喋るときは淀みなく喋れよ? かといって饒舌になりすぎず、普段通りだ。聞かれる前に証拠を差し出せ」

ベビードラゴン「証拠ってなに? 剣? んだども、それじゃ信じてもらうには」

勇者「俺はリリスなどを逃したことがあるから、魔族に温情や同情をかけたと思われるかもしれん」

ベビードラゴン「うん」

勇者「というわけで、俺の左腕を噛みちぎれ」

ベビードラゴン「へ?」

勇者「どっちみち、剣だけで信じてもらえても取り返しただけってことで竜王は死ぬ。管理体制が甘いとか、不祥事の責任っていわれたらそれまでだから」

ベビードラゴン「そ、そりゃぁ、そうかもしんねけど」

勇者「さらなる特典が必要だ。恩賞をかけてもらえるだけの。俺も死ぬわけにゃいかんから利き腕じゃない腕が精一杯」

ベビードラゴン「ほ、ほんきかっ⁉︎ おめぇっ⁉︎」

勇者「(ニートになるための必要な犠牲と思えば)……本気だ!」

ベビードラゴン「……ま、マジ……?」

勇者「たぶん、オナニーを左手でできんのが不便だなくらいだと思う、きっと、おそらく」

ベビードラゴン「いや、もっと色々不便になると思うけんど」

勇者「そんで、竜王を突破したら次は魔王だ。魔王は竜王の命運の決定権を持っている。ここはわかるな?」

ベビードラゴン「う……いや、腕を無償で差し出されたら……魔族の名が……」

勇者「竜王のためになんでもするんじゃなかったのか! プライドは捨てろ! 誇りなんて忘れちまえっ!」

ベビードラゴン「うぅ……わがっだよ、わがった」

勇者「魔王には、こう切り出すんだ? 今から俺が言うことをよぉ〜く覚えて帰れ」
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 02:36:11.79 ID:qh7jP0to0
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 10:38:18.78 ID:rA9nObNIO
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/11(日) 21:45:21.86 ID:eTC3CND90
【旧最大財閥】三井グループ社員の一生.グループ内で余裕で暮らしていけることが判明.
http://youtubelib.com/mitui

戦前まで、日本最大の財閥であった三井グループ。現在でも、日本三大財閥の1つとして、経済界をリードする存在です。
そんな三井グループの月曜会には、金融、製造、不動産からメディアまで、日本を代表する名だたる企業が軒を揃えます。これだけ多岐にわたり、影響力を持つ三井グループなら、グループ内で生活が成り立つのではないか。
そこで今回は、『三井グループ社員の一生を物語風』にしてみました。
607 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/12(月) 14:53:53.37 ID:zhSyHYbEO
【魔王城 玉座】

魔王「――ほう。“この腕のかわりに竜王の死罪を取り消せ”と。そう申すのか」

ベビードラゴン「……」コクリ

大臣「開口一番で要求とはなんたる無礼な!」

魔王「……よい」スッ

大臣「魔王様⁉︎ 絶対王が一度下命したものを取り消すなどど!」

魔王「そう早合点するな。取り消すとの意味ではない。ベビードラゴンよ、ちと気を急いたのではないか?」

ベビードラゴン「オラの望みは魔王様であればこそ、最初から見当がついてるはずだなす。先にご提案したまで」

魔王「慕う王と、一族の地位、そのどちらも守れる。たしかにな」

ベビードラゴン「バカなのは恥ずべきことかもしんね。けど、オラは頭良くねぇのわかってるから」

魔王「“札(カード)”を最初から切ったわけか」

ベビードラゴン「本来なら魔王様から褒美を与えると言われるまで待たなきゃ失礼にあたるのは、オラでもわかります」

魔王「ふぅん……勇者の強さ。それに打ち勝つのは並大抵のことではなかったはず。……お前は無傷のまま綺麗な体をしているな? なぜだ?」

ベビードラゴン「おそらく、勇者はまだ本気ではなかったと思うのだす」

魔王「ならば、あえて剣を差し出しされたと、そういうことか?」

ベビードラゴン「いんや。そうじゃねぇだなす。あれが対峙した時の本気だったとも思うだなす」

大臣「魔王様にむかって適当なことを申すでない!」

ベビードラゴン「オラは忠義をもって包み隠さず報告しているだけだなす」

魔王「虚偽の発言ではないとすれば、どういう意味だ?」

ベビードラゴン「“覇気がなかった”そう思うだす。やる気がないといった方が正しいかもしんね」

魔王「なに……? 勇者のやる気が……? わざと負けようとしたのではないか?」

ベビードラゴン「わざとにしても、腕を噛みちぎられる人間なんているはずがないだなす」

大臣「うむぅ」

ベビードラゴン「恐れながら申し上げさせていただきますと――」

魔王「なんだ? かまわんから続けろ」

ベビードラゴン「勇者は、勇者であることを嫌がっていただなす」

大臣「なにを言うかと思えば……バカバカしい」
608 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/12(月) 15:32:35.12 ID:zhSyHYbEO
【数時間前 クィーンズベル 郊外】

ベビードラゴン「い、いきなり要求なんかしちゃ機嫌悪くなっちまうんじゃないだべか?」

勇者「ばかたれ。どうせ最初から機嫌は悪いんだから気にしなくていいんだよ。いっそのこと開きなおれ」

ベビードラゴン「そ、そうはいっでも」

勇者「ご機嫌とりなんかしなくていいんだ。求めるものは怒られる度合いを減らすことじゃなく要求を通すことだろ?」

ベビードラゴン「でも、機嫌が良い方が。お願い通りやすくなっぺよ」

勇者「だから腕を持って帰る。これは色々な用途の効くエサだ」

ベビードラゴン「ほんとに信じて大丈夫だべか」

勇者「頭が良くて慎重なやつほど、用心深く観察してくる。そういうやつは騙しにくいと、そう思うか?」

ベビードラゴン「……よぐ、わがんねぇげと」

勇者「実際は真逆だ。そういうやつほど胡散臭いことにハマりやすいし騙されやすい。なぜなら、頭がいいからな」

ベビードラゴン「?」

勇者「インテリってのはなぁ、極端だが、なぁーんにも意味がないことを意味があるんじゃないかと考える」

ベビードラゴン「魔王様も、そうなんか?」

勇者「わからん」キッパリ

ベビードラゴン「……」

勇者「そうであってほしいという博打はぶっちゃけてある。今回は、そこに俺の腕と、お前の命と、竜王の命までワンセットで賭ける」

ベビードラゴン「えぇ……」

勇者「無理難題を通すにはある程度の無茶も必要だってことだ。なにしろ、時間がない。最低限の準備が済んだだけ。“騙せる下地”を作っているにすぎん」

ベビードラゴン「う、うぅん」

勇者「お前が独力で剣を奪い、腕をかみちがってきたと騙せるかどうかは、でたとこ勝負ってとこだな」

ベビードラゴン「無理なような気がしてきた」

勇者「やれないとはないはずだ。ご機嫌とりとかあれもこれも欲張るな。ただ、俺を倒した。この一点を信じさせることだけできればいい」

ベビードラゴン「う、うん」

勇者「実力で劣るはずのお前がなぜ俺を倒せたか、理由は俺のやる気のなさだと答えろ」

ベビードラゴン「やる気?」

勇者「そうだ。俺は勇者をやめたがってると言ってたと魔王に伝えるんだ」

ベビードラゴン「わがっだ。そんで?」

勇者「そうすると用心深いやつは罠か? とまず考える。しかぁ〜し、ここでも腕の存在が頭をよぎる。罠で腕を差し出すまでするか? と」

ベビードラゴン「うん、それはたしかに。オラもそう思う」

勇者「お前はマヌケだから、そこまでするはずがないで終わりだろ。ミスリードの原理だ」

ベビードラゴン「……?」

勇者「“真実の中に嘘を混ぜる”。誤った道しるべに魔王をハメる……くっくっくっ、なぁーはっはっはっ!」

ベビードラゴン「(なんがごいづ、悪役みてぇだな)」

勇者「お前を俺の舌の上でぺろぺろ転がしてやんよぉ〜! チュッパチャプスみたいによぉ〜!」

ベビードラゴン「表現が汚ねぇ」

勇者「ひゃっはっはっ! 間接的に勇者vs魔王のはじまりだぁッ!!」
609 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/12(月) 15:57:23.98 ID:zhSyHYbEO
【再び魔王城 玉座】

魔王「……興味深い話だ。なぜ、勇者はやめたがっていると思った?」

ベビードラゴン「実際に耳にしたからだなす」

大臣「な、なんとっ⁉︎ 勇者自身がそう言ってたのかっ⁉︎」

ベビードラゴン「魔王様。オラはわかんなくなっただす。たしかに、勇者は強かった……いや、強いはずだす。サキュバス様を瀕死の状態に追いやったのですから」

魔王「……それで?」

ベビードラゴン「にもかかわらず、力の片鱗を見せたのは最初だけで、やる気がなかった。だからオラは無傷でいられた」

魔王「……」

ベビードラゴン「勇者は本当に恐るるに足る人物なんだべか?」

魔王「だから、勇者を殺さなかったのか?」ギロッ

大臣「そ、そうじゃ。その状態の勇者であればいともたやすく息の根をとめられたはず」

魔王「だから、罠かと疑いもせずに、帰ってきたのか?」

ベビードラゴン「ま、魔王様。勇者の罠かと疑っているんだすか?」

魔王「可能性としてなくはあるまい? 腕をさしだすとまでなると不可思議だが」

ベビードラゴン「(ゆ、勇者が言った通りだ……魔王様が、あの魔王様が、腕を気にかけておられる……)」

魔王「さらに踏み込めば、おそらく勇者はこれを持ち帰らせることにより、なにかを企んでいるやもしれぬ。大臣よ」

大臣「はっ!」

魔王「確認の為、この腕を調べてまいれ」

大臣「ははっ!」

ベビードラゴン「(えぇと、えぇと、次は――)」
610 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/12(月) 16:18:08.54 ID:zhSyHYbEO
【数時間前 クィーンズベル 郊外】

勇者「魔王はまず、腕を確認する。本物であるかどうか、罠がないかどうか。動機は多岐にわたるが、ぜぇぇったいに腕を確認する。気になって気になって仕方ないはずだ」

ベビードラゴン「そうだべか」

勇者「そら心中はソワソワしっぱなしよ。目の敵である勇者の腕なんだからな。魔王にとっちゃ宝の山ほど価値あるもんだ」

ベビードラゴン「自己評価高すぎでねか? なんとも思わねえかもしれねぇど」

勇者「なんとも思ってねぇやつをわざわざ追跡させるかよ。剣渡したぐらいで竜王を死罪にするか? あぁん?」

ベビードラゴン「……そうだけんど」

勇者「お前は“たかがニンゲン”。これをゴリ推しして持論を展開しろ。普段エサだと思ってる存在なんだ、簡単だろ」

ベビードラゴン「はい」

勇者「よしよし。勇者であってもたかがニンゲンだからな? ちゃぁ〜んと言えよ? その程度の認識しかないと伝えることに意味がある。殺さない理由になる」

ベビードラゴン「虫けらだもんな」

勇者「そう! エクセレント! それでいいんだ! これに、淫夢族が逃がされたやり返しだとも言え」

ベビードラゴン「そったらごとしたら、サキュバス顔真っ赤になるぞ。面目丸つぶれだし」

勇者「淫夢族がどう思おうが別に関係ないだろ?」

ベビードラゴン「ねぇな。あいつら、竜王さまバカにしたから、良い気味だ……でへっ」

勇者「その意気だ。魔王にも魔王でプライドがある。勇者がこわいよぉ〜なんで殺してきてくれなかったのぉ〜なんて言える立場じゃない」

ベビードラゴン「魔王様に楯突く存在だべ? 殺してこなかったなんて不忠になるんでない?」

勇者「あー……うーん、まぁ、そこはゴリ推ししてお前がなんとかしろ」

ベビードラゴン「(思いつかなかったんだな……)」ジトォー

勇者「なんだその目は! なんでもかんでも頼るんじゃありません!」

ベビードラゴン「わがっだ。ゴリ推ししてみる」
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/12(月) 18:31:27.62 ID:fZAfsdg40
612 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/12(月) 21:19:07.71 ID:tIpqN2UtO
【魔王城 玉座】

ベビードラゴン「(とにがく、ゴリ推しだっぺな)……魔王様っ!!」ドゲザ

魔王「……」チラ

ベビードラゴン「勇者なんていっても所詮ヒトだど⁉︎ オラは魔王様の偉大さにひれ伏す存在だと思ってるだなす!」

魔王「……そうか」

ベビードラゴン「魔王様は勇者をどう見てるだなすか⁉︎ 竜王様の命を犠牲にするほどの脅威とお考えなんだすかっ⁉︎」

魔王「勘違いするな。竜王が死ぬのは自身の不手際の責を受けるのだ。部下の不始末、その責を――」

ベビードラゴン「でもっ!! 発端は剣を渡したことでしょ⁉︎ たかがちっぽけなニンゲンに!!」

魔王「……」

ベビードラゴン「勇者じゃなかったらどうだすか⁉︎ そこらにいる兵士に剣を竜王様が渡していたら⁉︎ 魔王様は鼻で嗤い許していたと思うだなす!」

魔王「余が、勇者に臆していると……そう言いたいのか」ゴゴゴゴッ

ベビードラゴン「違うっ!! もっと堂々としていてほしい! オラはそう言っているのだす! 死罪を撤回……腕の恩賞を与えてくんろ!」

魔王「お前の非礼はどうなる? 自身の死を覚悟の上の発言か?」

ベビードラゴン「オラは竜王様の臣下でありますっ! 救えるのなら、この命など惜しくはねぇっ!!」

魔王「……」

ベビードラゴン「(よし、ここであの言葉を言えばいいんだな)」

魔王「……なるほど。良き家臣を持ったようだ。今回の働きに免じて、望みを叶えてやろう」

ベビードラゴン「……え? へ?」

魔王「なんだ? それが望みではないのか?」

ベビードラゴン「(あ、あれ? まだ続きがあったんだけど、こうもあっさり)」

魔王「望みを言うがよい」

ベビードラゴン「竜王様に生きる機会を与えてやってください! 交代もさせないでくださいっ!」

魔王「いいだろう。釈命をだす。此度の働きと功績を称え、竜王の減刑を認める」

ベビードラゴン「ほ、ほんとですかぁっ⁉︎」

魔王「二言はない。幾度も撤回したりしていては威光を保てんたからな」

大臣「魔王様……」

魔王「ただし、もし勇者の腕ではなかったり、罠だったと判明した場合には、その命。……即座にないものと思え。私自ら殺しにいくぞ」

ベビードラゴン「もちろんだすっ!! 何百回、何万回でも殺してくんろっ!!」ニコニコ
613 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/12(月) 21:39:07.92 ID:tIpqN2UtO
【数十分後 魔王城 玉座】

大臣「魔王様。間違いありません、鑑定の結果、勇者の腕だと判明いたしました。罠と思われる術式やアイテムの形跡もなく、ベビードラゴンの唾液のみです」

魔王「そうか……」

大臣「おそれながら……もう、自身のだした命令を撤回するのはやめなされ」

魔王「ベビードラゴンのみならず、お前まで小言を言うつもり?」

大臣「ワシは魔王様の家臣でございますゆえ。必要な忠言だといつも申しておりますに」

魔王「小言はいつものことだったわね」

大臣「魔王様。決して、ブレてはなりません。貴女様の絶対的カリスマは、迷うてはならぬのです」

魔王「……」

大臣「……簡単に許したのは、竜王を死罪にしたくなかったのでしょう? らしくもない」

魔王「損得よ。次期竜王は確実に弱くなるならば、今の竜王に続けてもらった方が利益になる」

大臣「……そういうことにしておきましょう。ですが、良いですな? こういうことはこれきりにしていただきたい」

魔王「気になるのは勇者」

大臣「“やめたい”と、そう言っていたことですか?」

魔王「もし、もしも本気でそう考えているのならば、より注視をしなければ」

大臣「なぜでございましょう? 魔族にとって都合が良いのでは」

魔王「辞めるのならば、ね。でも、おそらく――私の推測がただしければ、“勇者は狂う”」

大臣「狂う? ですと?」

魔王「“勇者として輝くか、ニンゲンとして狂うか”。くふっ、うふふっ、あは、あはははっ」

大臣「ま、魔王様……?」

魔王「大臣よ。竜王に処刑を命じた後に余はこう問いたな。勇者はなにを失っておるのかと」

大臣「はい、魔王様はなにも失っていないとの発言を」

魔王「間違っておった!! 間違っていたのだ!! あっはっはっ!」

大臣「……?」

魔王「勇者は、闇に堕ちるやもしれんぞ……くふふっ、うふふっ」
614 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/12(月) 22:14:03.76 ID:tIpqN2UtO
【淫王城 玉座】

サキュバス「おかしい。なにかある。リリスよ」

リリス「はい〜お姉様ぁ〜」

サキュバス「クィーンズベルに行き勇者が隻腕となっているか確認してまいれ」

リリス「えぇ〜あそこ暑くてあんまり好きじゃ――」

サキュバス「なにか?」ギロッ

リリス「すぐに支度して行ってまいりますぅ〜」

サキュバス「(ベビードラゴンが勝った? あのデタラメな強さの勇者に? そんなのは不可能だわ)」

リリス「まったくぅ、人使いが荒いんだからぁ」ブツブツ

サキュバス「(なにか裏があるはず。勇者の企みを突き止めなくては……)」
615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/12(月) 22:59:01.04 ID:cs+FE/8zO
616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/12(月) 23:40:41.78 ID:fZAfsdg40
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/12(月) 23:58:42.71 ID:UoN47vjG0
フラグ回収が進んでるってまさか闇堕ちすんのか?
続きどうなるんだ
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 05:54:16.38 ID:rXas4A+j0
闇落ち(ニート/人間やめました)
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 06:53:40.04 ID:h+iPRUkCo
620 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 18:21:57.33 ID:bGKI1MBBO
【魔王城 玉座】

大臣「魔王様、この老いぼれにはなんのことやさっぱり」

魔王「――……アイデンティティ(自己証明)の喪失。聞いたことはあるか?」

大臣「いえ」

魔王「ふふ、“ゲシュタルト崩壊”でもよい。兎角、勇者は己を見失っておるやもしれん」

大臣「な、なんですとっ⁉︎」

魔王「ふっ、くふふ、勇者であることを誇りもせず……逃げている。おそらく、人間と勇者の狭間で見失ってしまった。本来の自分を」ニタァ

大臣「ではっ⁉︎ 今の勇者は⁉︎」

魔王「心に偽りの仮面をかぶっておるはず。……常にな。ニンゲンどもの手前でだけ、“勇者を演じておる”のやも」

大臣「魔王ぁっ! これはまたとない機会でありますぞ!」

魔王「どのような機会と申すか」

大臣「揺れ動いているのなら、いっそ、我ら魔族側に!」

魔王「……だめだ」フリフリ

大臣「なぜっ⁉︎ 天秤がニンゲンどもの方に傾いてしまえば、脅威に!」

魔王「“どちらにも傾きうる”から問題なのだ。計りに重りを乗せるにはどうする……?」

大臣「追加で――」

魔王「“手がなければ乗らぬ”であろう? この、手が」プラプラ

大臣「(傾く重りを我々で用意するということですな)――では、計略を講じますか」

魔王「いや、なにもしない」

大臣「な、なぜっ⁉︎」

魔王「別にほしくないから。あちら(勇者)が来たいと言ったら考えるがなぁ! あっはっはっ!」

大臣「……っ!」

魔王「よいな……? なにもするな」

大臣「御意に」

魔王「あぁ、待て。アデルに密偵を派遣して、勇者の生い立ちについて調べさせよ」

大臣「は?」

魔王「調べるだけでよい」

大臣「ははっ!」ドゲザ
621 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 18:38:00.84 ID:bGKI1MBBO
【数十分後 魔王城 玉座】

大臣「魔王様のぉ〜、ご壇上ぉ〜」

四天王一同「……」ドゲザ

魔王「皆の者、ラクにせよ」スッ

四天王一同「はっ」ムク

大臣「各王よ。おそれながら本日も進行役を務めさせていただきます。ようこそ、魔王城へ」

魔王「今回の議題については特別に余が発表する。それはこの“勇者の腕”についてだ」ゴト

キングヒドラ「ホンモノでお間違いないのですかっ⁉︎」

大臣「何重にも検査をした結果、間違いございません」

オーガ「ベビードラゴンに咬みちぎられたというのも?」

大臣「お間違いござませんですじゃ」

キングヒドラ「……なんだ。たいしたことない。サキュバスよ。お前の報告と随分差があるようではないか、なぁ?」ニタァ

サキュバス「獣臭い顔でいやらしく笑わないでくれる? 醜くて不快だから」

キングヒドラ「な、なんだとぉっ⁉︎ 貴様ぁっ! 誰に向かって悪態をついたっ!!」ズシーン

サキュバス「わからないのかしらぁ? 頭お花畑?」

キングヒドラ「……」ゴゴゴッ

オーガ「事実をいわれ論点をズラしているよう見えるが」

サキュバス「おだまりっ!!」ピシャン

キングヒドラ「……なんだなんだ……そうかぁ、認めたくなかっただけかぁ」ニヤニヤ

サキュバス「貴様らは知能が低いから疑うこともしないだけであろう! 勇者が負けるはずがない!!」

オーガ「だが、証拠はある」

サキュバス「……っ!」

キングヒドラ「随分と高く勇者を評しているようだな? 負けるはずがなぁい? まるで恋人を想うようじゃないか?」

サキュバス「貴様……っ! 淫夢王をバカにしているのかっ⁉︎」クワッ

キングヒドラ「貴様こそ! 獣王をバカにしているのかぁっ!!」クワッ

大臣「み、みなさま、ご静粛に、ご静粛に。魔王様の御前であられますぞ」
622 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 18:51:23.40 ID:bGKI1MBBO
サキュバス「魔王様、私からもご質問。ベビードラゴンはどうやってコレを?」

魔王「やる気がなかったおかげで、噛みちぎれたそうだ」

シンリュウ「……」

オーガ「ぬはっ、ぬっはっはっ、なんとまぁ。やる気がでなかったから腕をさしだした? 言い訳にしても見苦しい」

キングヒドラ「ブフッ、勇者とやらは、阿呆なのですか……? そんな理由で腕をさしだすわけがない。自力でベビードラゴンに敵わなかっただけでしょう」

サキュバス「(貴女達二匹は……! 笑う暇があればもっと知力高めたらいいのに)」

魔王「お前達の意見も是非聞きたい。……が、その前に、シンリュウよ」

シンリュウ「はっ」スッ

魔王「ベビードラゴンから報告を受けておろうが、今回は罷免する」

シンリュウ「……はっ」

魔王「決定に異議のあるものはおるか?」

四天王一同「……」シーン

魔王「おらんのか? 貴様ら、余の犬畜生か?」

オーガ「魔王様の決定ならば、当然のこと」

魔王「では、問おう。巨人王オーガよ。今この場で命をたてと言われれば死ねるか」

オーガ「理由は……」

魔王「ない。ただの気まぐれだ」キッパリ

オーガ「そ、それはあまりにも」

魔王「余の為ならば、死をも厭わない。その覚悟たるやよし。しかし、死に場所がふさわしいものであってほしいと願っておるのだろう?」

オーガ「……」

魔王「なぜ無言でおる。私をナメておるのか?」ゴゴゴッ

オーガ「な、なぜっ⁉︎ そんなっ! めっそうもない!」アタフタ

魔王「よく聞くがいい。命令を撤回するのはこれきりだ。貴様らが余の下命を疑問に思うが、理不尽だと感じようが、次はない」

四天王一同「……」ドゲザ

魔王「我こそが貴様らの王だ。……よいな」

四天王一同「ははっ」
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/14(水) 20:11:54.87 ID:3vlJq4oq0
魔王ぁ!
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 21:01:07.15 ID:UQMvEvEDO
なんか魔王の方がギリギリっぽいな
だから自分に都合の良い方にミスリードしてしまい、最終的に勇者に一杯食わされそう…
625 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 21:13:59.11 ID:dbQ7u9OxO
【数時間前 クィーンズベル城 郊外】

ベビードラゴン「そったらば、失礼しで」

勇者「ちょ、ちょちょっ! たんまっ! まだ麻痺してないから!」

ベビードラゴン「おどこらしく覚悟決めろ? ほんっと情け無いやつだなぁ」

勇者「布で縛ったら痛みが軽減されるって漫画で読んだことあるのに……おかしいな」

ベビードラゴン「なんでもいいけどよぉ、はやく帰りてーんだけど……はぁ」ガックシ

勇者「お前はいーよな! 腕をなくさないんだから!」

ベビードラゴン「合意の上でねか。むしろ、お前から言い出したこどだぞ? 講釈たれて」

勇者「そうだけどさぁ、いざ噛まれるとなると」

ベビードラゴン「だいじょーぶだで。ちょっとチクってするだけだから」

勇者「そ、そそそのっ、セリフはやめろ? と、トラウマが」

ベビードラゴン「ほんにめんどくせぇなぁっ!」

勇者「……わかった。俺も男だ」

ベビードラゴン「……」ジトォ〜

勇者「いいぞ、やれ。でも、絶対失敗すんなよ! 俺の腕を無駄にすんなよっ⁉︎」

ベビードラゴン「わがったわがった……あ〜〜ん」クパァ

勇者「た、た、た、たんまっ!」

ベビードラゴン「……」ピタ

勇者「やっ、やっぱさ? 別の方法、考えない?」

ベビードラゴン「……あむっ」ガブリ

勇者「〜〜っ⁉︎ ぬ、ぬおおおおぉっ! 牙が、牙が腕に!」メリメリ

ベビードラゴン「(硬え肉だな)」ゴリゴリ

勇者「いだだだだっ! 痛いっ! ちょっとこれは耐えられない! 耐えられそうもない! ギブアップ!」

ベビードラゴン「(うるせぇ……)」ブチブチ

勇者「ひぃっ⁉︎ 待てと言うとるにっ! 腕からいやな音がっ! 血が噴水みたいになってるよ⁉︎ 動脈切れてるんじゃない⁉︎」プシュー

ベビードラゴン「(むっ、このっ)」ガブガブ
626 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 21:15:06.40 ID:dbQ7u9OxO
勇者「いだぁぁ〜〜っ! なんだてめぇっ⁉︎ やるなら一気にやれや! ぶち殺すぞっ⁉︎」

ベビードラゴン「かたっ、くふぇ、ぬぅぅ」ブチンッ

勇者「あっ」プシュー

ベビードラゴン「お、食いちぎれた」アムアム

勇者「お、おぉぉぉあ、俺の腕がぁぁぁ〜〜っ!」

ベビードラゴン「うぇっ⁉︎ ま、まずぅっ⁉︎ ペッペッッ」ゴト

勇者「な、なな、なっ、なんてことしやがる⁉︎ 人の腕をっ⁉︎」

ベビードラゴン「止血しねぇと、死ぬど。オラは死体のが都合いいんけんど」

勇者「ハッ⁉︎ そ、そうだった! うおぉぉっ! 俺の右手が真っ赤に燃えるッ! 傷を治せとどろきさけぶ! ベホマぁぁっ!」ポワァァァ

ベビードラゴン「ふつうにできねのかよ」

勇者「それぐらい全力だってことだ! あぁ〜、本当に腕を食いちぎりやがって……」ドクドク

ベビードラゴン「お前がそういったんでねか。ん、でもちょうどいいな、勇者、傷口だせ」

勇者「傷口ならだすどころか晒されとるわい」

ベビードラゴン「それもそだな。そのままじっどしてろ」

勇者「はぁ?」

ベビードラゴン「よいしょっと」ジュク

勇者「いでぇっ! ツメをつっこむな!」

ベビードラゴン「 ممكن. العمل على طلبيتك بأسرع وقت」ポワァ

勇者「な、なんだ?」

ベビードラゴン「(これで魂の契約は完了っと)」
627 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 21:31:21.40 ID:dbQ7u9OxO
勇者「あぁ、もういやだ。そもそもなんでニートになるためにここまで苦労せにゃならんのか」

ベビードラゴン「おめぇよ。ほんどーに勇者やめるつもりなんかよ」

勇者「やめる」キッパリ

ベビードラゴン「……なんでよ? オラが言うのも筋違いかもしんねぇけどよ、人間にチヤホヤされるんだべ?」

勇者「なにがいいかなんて決めるのは俺の権利だ。ノットハーレム、ノットチヤホーヤ」

ベビードラゴン「魔王様に伝えたら、なんか意味あんのか?」

勇者「何度も言うが、意味はある。打算で動くようなやつに俺が遅れをとると思うかぁ?」

ベビードラゴン「しんねぇ」

勇者「予言してやろう。整理して考えだすと、魔王は俺の過去に興味を持ち出すはずだ」

ベビードラゴン「はぁ」

勇者「過去を知れば、ますます確信を持つことになるだろう」

ベビードラゴン「よぐわがんね」

勇者「ふっふっふっ……とにかくだ。お前が勇者の腕をとってきた。これで竜王の命を救え、お前自身のお咎めもなければ、それで俺の勝ちだ」

ベビードラゴン「そうなんか?」

勇者「利口なやつほど蜘蛛の糸にがんじがらめにされにくる。自分からな」キッパリ

ベビードラゴン「……もし、魔王様や竜王様に害をもたらすなら、オラが殺すど」

勇者「心配せんでいい。俺の望みは何者にも縛られない自由になることだ。それをニートと言ってるにすぎん」

ベビードラゴン「……今はおめぇを信じてやる」

勇者「しっかりやれよ」

ベビードラゴン「うまくいっだら、借りは、いつか返してやるよ」パタパタ
628 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 22:05:34.85 ID:dbQ7u9OxO
【クィーンズベル城 玉座】

王様「お主たちは、なにをくわだてておった」

お頭「俺たちゃしがねぇ盗賊ですよ。そんな、くわだてるって」

姫「嘘ですわっ! メイド!」

メイド「私の顔に、見覚えがありませんか……?」

お頭「ありませんねェ。なんことやら」

メイド「そうですか。では、衛兵ならば私の顔に見え覚えがあるのでは?」チラ

衛兵「……っ」

メイド「陛下。こちらの衛兵は盗賊団の密偵でございます」

衛兵「虚偽の申告をいたしておりますっ! 陛下を裏切るようなマネなどできましょうか!」

メイド「まだ嘘で塗り固めるおつもりですかっ⁉︎」

衛兵「陛下! わたくしめを信じてくださいっ! この女に惑わされてはいけません!」

姫「わたくしの専属メイドに……っ!」

衛兵「公平な裁きを求めているだけでございますっ! 姫様ごひいきのメイドならばこそ!」

メイド「……っ」ギュゥ

姫「生き恥をしてまで……! そんなにも生きたいのかっ⁉︎」

衛兵「(当たり前だろうが。ここで罪を認めちゃ死罪は免れねぇ。お頭、これでいいですよね)」チラ

お頭「(いいぞ。それでいいんだ。俺たちがなにをやろうとしていたか、その証拠はまだねぇはずだ)」

衛兵「王様ぁっ! なにとぞ! なにとぞ調査を!」

王様「……ふぅむ」

姫「お、お父様っ⁉︎ なぜっ⁉︎ なぜ考えこむのですか……⁉︎」

王様「罪を明らかにせねば、適した罰を与えられん」

姫「それはっ……そうですけど……」

メイド「……王様。私は、告白せねばならぬことがございます」

姫「なに……ハッ! や、やめなさい!」

王様「告白? なんだ?」

メイド「私も、罪を償わなくてはなりません。ご寵愛に守られたままでは、この者が言う通りになってしまう。姫様を侮辱されるのは、許せません」

衛兵「(ま、まさかっ、見取り図の件を……? そ、そんなことすれば……お前もただではすまんぞっ!)」キッ

メイド「…………私は、宝物庫に忍び込み」
629 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 22:11:50.09 ID:dbQ7u9OxO






ジャン「ちょぉ〜〜〜っと待ったッ!!」バターーンッ







630 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 22:29:38.87 ID:dbQ7u9OxO
王様「お主は……ハーケマルの」

姫「ゆ、ゆうしゃ?」

メイド「なぜ……」

ジャン「王様、ここは無礼講でお願いします」

王様「かまわぬが。今は尋問の最中である。控えてくれると――」

ジャン「それはできません! なぜなら、私が証拠だからでございます!」

王様「なに? どういう意味じゃ?」

ジャン「この私が見取り図を持ち出しました」パサッ

王様「……そ、それはっ⁉︎」

お頭「(こ、こいつっ⁉︎)」

衛兵「(なに考えてやがるっ⁉︎)」

メイド「な、な、なにを……」

ジャン「それもこれも、お頭に指示されましたからです。ちなみに井戸の水が干上がっているのも盗賊団が原因です」

王様「なんだとっ⁉︎」ガタッ

ジャン「原因はこのビー玉だったんですよ。お調べください」ジャララ

王様「び、ビー玉?」

ジャン「魔族のアイテムです」

王様「ま、魔族ぅっ!?」ギョッ

ジャン「落ち着いて考えれば、全て繋がるはず」

姫「な、な、なんですの、これは、いったい盗賊の狙いは、宝のはずのでは」

ジャン「表向きはね。真の狙いは、魔族と組んで国を転覆させること。……そうですよね? お頭♪」

お頭「お、おめェっ! 気でも狂ってるんじゃねぇのか!」

ジャン「俺は打算とか計算が大好きなんですよ。でも好きなだけの趣味って感じですかね、だからそういう“生き方”をしてるやつらの考えがよくわかる」

衛兵「……っ」

ジャン「そこの衛兵も密偵です。言い逃れしてただけですよ」

王様「警備兵よ! ただちにこやつらを引っ立てて、真実を吐かせよ!」

警備兵「はっ!」ザッ

衛兵「ジャン殿っ! あ、あんた……っ!」

お頭「ロビンフッドになったつもりかっ⁉︎ お前も死刑だぞっ⁉︎」
631 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 22:56:59.85 ID:dbQ7u9OxO
ジャン「言ったでしょ? ただの趣味なんです。俺もいつかは死ぬ。そん時は天国で会おうぜ」

お頭「こ、こいつっ、殺して、殺してやるっっ!」ジタバタ

警護兵「おい、暴れるな。行くぞ」グィッ

お頭「は、はなせェっ! くそっ、ちくしょぉっ!」

衛兵「な、な、なんで、こんなことに」

ジャン「あんたらの悪手は、最後までシラを切り通さなかったことだ。俺の登場で明らかに動揺したな。どっちみち逃げられないけどね」

王様「……して、貴様はどう申し開きをするつもりだ?」ギロッ

姫「お、お父様っ! 違いますっ! この者は――」

メイド「王様っ! 私です! 私が見取り図を――」

王様「だまれぇぇぇぇいっ!!」クワッ

姫&メイド「……っ」

王様「一国の王のっ!! 発言にっ!! 口をはさむなっ!!」バンッ

ジャン「(さてさて……)」

王様「……ハーケマルの使者よ」

ジャン「はい、王様」

王様「その見取り図。無断で持ち出したことの釈明を聞こう」

ジャン「いや、今いったままです。言い訳はありません」

姫「ば、ばかなっ⁉︎」ギョッ

メイド「そんなっ⁉︎」ギョッ

ジャン「……ちなみに俺はハーケマルともなんら関係ありません。盗賊団の一味です」

王様「なぁにぃ?」

ジャン「どうぞ、犯罪者として指名手配なさってください」

王様「指名手配? 逃すと思うのかっ! 警護兵っ!」

ジャン「(舞台は整った。ここだな)」ビュッ

王様「な、き、消え……っ⁉︎」

姫「きゃあっ!」

ジャン「動かないほうがいい。姫を殺すぞ」チャキ

姫「……っ⁉︎」ギョッ

王様「お、おのれぇぇっ! 人質をとるつもりか」

ジャン「すぐに返してあげますよ」パサッ

姫「ゆうしゃ、いったいなにを考えて……ど、どうしたんですのぉっ⁉︎ その腕ぇっ⁉︎」ギョッ

メイド「腕がっ……そんなっ、左腕がっ、ない⁉︎ なくなってるっ⁉︎」

ジャン「自身の心配をなされよ。砂漠国のプリンセスよ」
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 23:41:45.33 ID:Lr0+UNYPo
wktk
633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 02:01:22.28 ID:h9Tesar9o
おつ。続きが気になって寝れねぇ…
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 06:38:29.84 ID:mswNov6t0
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 07:03:02.04 ID:Ffor0rIXo
636 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/15(木) 11:04:05.95 ID:TxY5L79TO
王様「生きて逃げおおせると思っておるのかぁっっ! 例え……っ! 例え、逃げられたとしても生きた心地のしない逃亡生活が待っておるのだぞっ⁉︎」

ジャン「これは異なことを申される。私の素顔を王はご存知でない」

王様「ぬぐ……っ⁉︎」

ジャン「ハーケマルの使者だと気がつかずとも、一言、“仮面を脱げ”といっていればよかったのに。自身の落ち度に対して卑怯とは、おっしゃられますまいな?」

王様「ぬぐぐっ」ギリッ

ジャン「逃げることには変わりがありませんが、わざわざ姫を拉致したのは別の理由がある」

王様「別の、理由じゃと……?」

ジャン「金銭の要求や、魔族を引き合いに出すのではありません。今回起こったことを、民に公開するのです」

王様「な、なに……?」

ジャン「無論、他三国はもちろんのこと、ハーケマルに詳細を知られることとなるでしょう。姫の政略結婚は、一時見送りになるやもしれませんね」チラ

姫「……っ⁉︎」

王様「こ、これを、醜態を公開せよ、と」

ジャン「王様、世間を縦だけてはありません、横もあるのです」

王様「なにが言いたい」

ジャン「縦とは階級社会、横とは、支配される者とされない者。つまり、民の世界です」

王様「……」ギロッ

ジャン「あんたら王族、貴族、豪族はあくまで縦の存在だ。横になってる民の上で成り立ってる。無知なまま、蓋をして終わらせようとするな」

王様「民は、王政に幻想を抱いておる。“王様にまかせておけばいい”、“まかせておけば安心して暮らせる”。日々の安心感を捨て、民に暴風に晒された生活をしろと」

ジャン「……」

王様「ガラス張りで透明性のある政事などしていては、統治など到底無理だ! なぜならば、ワシら王族も、貴族もっ! 全て、人だからじゃ! 聖人君子などおらん! 失敗もする!」

ジャン「……」

王様「民は口先だけの集まりなのじゃ! 口では、クリーンな政治を求めておきながら、その実、“平和”や“安心感”というボヤっとしたものがあればいい!」

姫「お、お父様……」

王様「此度の件を公開する? ふん、それで? その後はどうなる? 報告してなにを得られる? 民たちは不満を抱え、ワシは王としての権威を保てなくなる」

メイド「……」ゴクリ

王様「問おう。民達の弾弓に耐え、どうやって統治を……この国を治められようか? 方法があれば、聞こうではないか」
637 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/15(木) 11:39:17.51 ID:TxY5L79TO
ジャン「ただ、希望を与えてやってほしい」

王様「……貴様は、群衆の愚かさをなにもわかっとらん……」

ジャン「今回の一件は、大事になる前に見事、収束させてみせたのです。王権の失墜など起こらないでしょう」

王様「欲を、民たちのもつ欲深さを知らんのだろう。青臭い希望では」

ジャン「民に目を向けられよ」

王様「しかと見ておる」

ジャン「いいや、見てない! あんたはそんなに普段から完璧でいるつもりなのか⁉︎ 民衆をバカにするのもいい加減にしろっ!」

姫「お父様に、なんてことを……」

ジャン「我慢できないわけじゃない! この水のなかった期間だって、最後には王様がなんとかしてくれる、そう思っていたとしても!」

王様「だから、幻想を抱いておるというとるに」

ジャン「希望を抱いていたいんだ! ……今は、いう通りかもしれない。でも、そこをなんとかするのが、王たるあんたの使命だ」

王様「……民自身が、無知でいることを望んでいるとしてもか」

ジャン「常識が形式化してしまえば誰だってそうなる。歩行具をつけたまま何世代も歩かせる気なのかよ」

王様「知識を得るのは苦痛が伴う。民は、ひどく疲れるぞ」

ジャン「だから希望が必要なんだ。希望は、苦痛や疲労に耐える力を与える。歩けるようになるまで、あんたが支えてやれ」

王様「わかったような口を」

ジャン「俺は、人間の汚い、醜い部分を多く見てきたつもりだ。結局、どういう国を夢見てるんだよ? 王様は、なんの幻想にすがってるんだ?」

王様「ワシが……?」

ジャン「そうだよ。あんただって人だろ。民達を導いている優秀な指導者か? そこを拠り所にしているのか?」

王様「……」

ジャン「“民と王で同じ夢を見られない国は滅ぶ”。これだけは、言っておく」スッ

王様「……っ」ギリッ

姫「お父様ぁっ! この者はゆう――」

ジャン「はいストップ」ムギュ

姫「もごっ⁉︎ むーっ!」

ジャン「(パーティのやつらは宿屋に置き手紙残してきたから、その内追いかけてくるだろ。来たかったらだけど)」

メイド「姫様っ!」

ジャン「……メイドとやら。軽はずみに口を開がないほうがいい。姫がキズモノとなるぞ」ピト

メイド「なぜっ、このようなことを……っ」

警護兵達「お、王様ぁっっ!」ゾロゾロ
638 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/15(木) 12:06:29.87 ID:TxY5L79TO
兵士長「王様っ! ……な、なんとっ⁉︎ 姫さまがっ⁉︎」ギョッ

姫「(この者は勇者ですっ! 勇者なんですっ!) もごもごっ! むーっふっ! ふもーっ!」

ジャン「(しかし、口おさえるとなんもできんな。両手がないとやっぱり不便。パッと手を離した瞬間に気絶させるか)」トス

姫「うっ」

警護兵達&メイド&兵士長「ひ、姫さまぁっ!!」

姫「」グッタリ

ジャン「(あとは顔真っ赤にさせて、と)マヌケな兵士たちよ! 雁首そろえて女一人守れなくてざんねんしたぁwww 悔しいねぇ? 今どんな気持ち?? ねぇ、どんな気持ち??」

警護兵達「ぶち殺してやるっ!!」

ジャン「王様、それじゃ俺はこれで失礼を」シュタッ タタタッ

王様「すぐに追いかけろっ!! 絶対に逃がしてはならんっ!!」
639 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/15(木) 12:31:41.43 ID:TxY5L79TO
【クィーンズベル城 廊下】

戦士「なんだ? えらくごったがえしてるが」

僧侶「なにやら起こったみたいですねぇ〜」

武闘家「……?」

   ドガシャーンッ

ジャン「なーはっはっ! 遅いわボケナスどもぉ〜!」タタタッ

兵士長「まて、またんかァっ!!」ダダダッ

ジャン「とっつぁ〜ん! 待てと言われて待つルパンがどこにいるんでぇ〜?」タタタッ

戦士「こちらに走ってくるのは、賊か」チャキ

武闘家「やれやれ。この国の治安はどうなってるんさ。白昼堂々と城に」スッ

ジャン「ん……? おっ、お前ら……⁉︎」ギョッ

戦士「大人しくお縄につけ。……はぁぁぁっ!」ダダダッ

ジャン「むっ」パクッ

戦士「電光石火ッ!! はやぶさ斬り」ザシュ ザシュ

ジャン「ふんもっふ!」ササッ

戦士「なに、避けたっ⁉︎」

僧侶「あらあらぁ。器用に口で剣を加えたままで……片腕しかない……?」

武闘家「なかなかやるじゃないかっ!」

ジャン「(邪魔くせぇっ! 手加減してやらねーと)」

警護兵達「まぁ〜〜〜てぇ〜ごるぁあああっ!!」ドドドッ

ジャン「(そんな暇もないか)」パリンッ ガシャーン

武闘家「あっ! チッ!!」

兵士長「窓だっ! 窓から逃げた!」

警護兵「ここ城の三階ですよ⁉︎ 一般家屋とは違い、城の三階は高さが……」

兵士長「堀に捕まっているのかもしれん!」

ジャン「(そう思うじゃん? ふつうに落ちてるんだなこれが)」ヒューー

武闘家「この高さでは、助からないな」

戦士「な、なんだったんだ?」

僧侶「……」ジー

ジャン「(あらよっと)」クルクルッ シュタッ

兵士長&警護兵達「な、なんだとっ⁉︎」ギョッ

ジャン「(決まった。我ながら10点満点の着地である)」

戦士&武闘家「……」ポカーン

僧侶「宿屋に戻りますよぉ〜。今すぐにぃ〜」
640 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/15(木) 13:03:18.32 ID:TxY5L79TO
【クィーンズベル 城下町】

魔法使い「はぁ〜〜。マク様はいったいどこに……」

戦士「おっ、魔法使い」キキッ

魔法使い「朝っぱらからジョギング?」

戦士「いや、なんだか、僧侶が焦ってるみたいで。宿屋に帰ると言われて」

魔法使い「はぁ?」

戦士「ほら、あそこ。前走ってる」

僧侶「(先ほどのすれ違いざまに感じた聖なるオーラは……まさか、まさかっ⁉︎)」シュタタタタタッ

武闘家「くっ、は、はやいっ⁉︎ どうなってるんさッ⁉︎」

戦士「いやぁ〜、人間ってのはわからないもんだ。僧侶があんなに早く走れるなんて。魔法職だよな? あいつ」

魔法使い「な、なんなの。俊敏がウリの武闘家が追いついてないじゃない……」

戦士「いやぁ〜〜〜。ほんっとーーにわからないもんだ。まさかとは思うが、僧侶があたしより強いとか、ないよな?」

魔法使い「えっ?」

戦士「いや、ないよなぁ〜〜さすがにそれはないよな? 魔法職だもんな? サシで負けるなんてこと」

魔法使い「な、ないんじゃない? だって、私たち魔法職は、防御能力ないし」

戦士「……そうだよなっ! あたしのパーティの序列がさらに下がるなんてことないよなっ!」

魔法使い「(僧侶、あいつ、一体……なんなの?)……私も宿屋に戻る!」

戦士「お、おいっ! ほんとにないよな? 僧侶が強いなんてことはないよなぁっ⁉︎ 」タタタッ
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 14:58:47.67 ID:Ox5zjxyY0
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 18:51:13.73 ID:FByTnZG1O
おつ
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 21:57:16.52 ID:T8SysTYLO
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 22:31:12.85 ID:Ffor0rIXo
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 16:16:27.78 ID:Z1eKjUE30
戦士と魔法使いだと今のところ魔法使いがワーストか
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 16:29:44.05 ID:yuXWzLkO0
魔法使いも魔法使いでマダンテ覚えたら一気に最強クラスになる
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 07:30:34.85 ID:PCKssJ8j0
メラミとメラを数回ずつ使ってヘバるMP量のマダンテじゃなあ
しかも魔翌力切れ起こすと身体に負荷かかるこの作品じゃメガンテと変わらんw
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 09:08:14.37 ID:rimZUGy90
全員才能はピカイチて書いてあるから全員最強クラスになるのが既定路線なんじゃねたぶんだけど

649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 11:15:55.80 ID:vh8tRU5DO
その魔法使いのピカイチが、魔法の才能ではなく炊き出しとか逃走とかの才能である可能性
650 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 14:37:44.93 ID:h4MucOXBO
【クィーンズベル 宿屋】

戦士「僧侶が強いなんて、そんなはずない、そんなはずないんだ」ブツブツ

魔法使い「ねぇっ、僧侶ってばぁっ!」

僧侶「……」ゴソゴソ

魔法使い「あんたいったいどうなってるのっ⁉︎ なにか私たちに話してないことあるでしょ⁉︎」

僧侶「はやく荷物まとめないとぉ〜」ギュッギュ

武闘家「……“次の村の宿屋で二日まつ”か」パサ

戦士「うぅ〜、いやだ、もう負けたくない。負けたくないんだぁ」ブツブツ

魔法使い「教えなさいってば!」グィッ

僧侶「別にいいじゃありませんかぁ、知らなくてもぉ」

魔法使い「一緒に旅する仲間でしょう⁉︎」

僧侶「ふぅ……私は勇者さまさえ無事ならそれでいい。言えるのはこれだけですねぇ」

魔法使い「どういう意味……あんた、まさか……」

僧侶「歯ブラシ、はここにっと」スポッ

魔法使い「手を抜いてやってるの……? 勇者が本当に危なくなった時の為に、力を常に温存してるんじゃ……」

僧侶「どう受け取ろうとご自由に〜」

魔法使い「今まで一緒に戦った時も、本気でやってたんじゃなかったの⁉︎ ……なんとかいいなさいよっ!」

村娘「こんにちはぁ〜」ガチャ

戦士「……?」

村娘「(あいかわらずマヌケなやつら。私がリリムだって気づきもしないで)……こちらに勇者様がお泊りしていると噂になってて」

武闘家「勇者なら、いないよ」

村娘「今は席を外されてるんですか? 男性用のマントがありますが」チラ

魔法使い「知らないわよっ!! あんなやつっ!!」プィッ

戦士「おい、魔法使い」

村娘「(なにヒスっちゃってんのこいつ)サインもらいたかったのにぃ」

僧侶「……」スクッ テクテク

村娘「貴女様はご存知でしょうか?」

僧侶「なにしにきたんですかぁ?」バァンッ

村娘「……え?」

戦士「おお、乙女の憧れという壁ドンか」

魔法使い「なんか使い方間違ってるような気がしないでもないけど」

僧侶「“また”来たんですかぁ?」ニコニコ

村娘「は、はい?」

武闘家「……?」

僧侶「今はすこぶる機嫌が悪いんですぅ。誰かに八つ当たりしたくてぇ」ゴゴゴゴッ
651 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 14:44:52.43 ID:h4MucOXBO
村娘「……え? へ?」

僧侶「魔法使いさん」チラ

魔法使い「なによ」

僧侶「ちょっぴり話するとぉ、私、ダーマで結構有名人なんですぅ」

魔法使い「あっそ。そりゃ法王庁出のエリートならそうでしょ」

僧侶「いいぇ〜。そうじゃなくて“悪名高い”のでぇ」

戦士「悪名? って、僧侶が?」

僧侶「はい〜。幼い頃からのあだ名がありましてぇ、“殴り僧侶”とか色々言われてましたぁ」ブンッ

村娘「なっ⁉︎ ……ちょっ⁉︎」ギョッ

僧侶「しゃーーーっんなろぉーーっっっっ!!!ドゴォォォォッッンッッッ

村娘「〜〜〜〜ッ⁉︎⁉︎ ぎゃぁっ⁉︎」バコン バコン バコーーーンッ

おっさん「わぁっ⁉︎ 隣の部屋から人が突き破ってきたぁ⁉︎」

魔法使い&戦士&武闘家「……」ポカーン

僧侶「……少しスッキリしましたぁ」パンパン

魔法使い「う、うそ、でしょ……」アングリ

戦士「は、は、はは。夢だ。悪い、夢だ」

武闘家「な、なんちゅー怪力だよ」ゴクリ

魔法使い「魔法職なのに、一体、どうやって……」

僧侶「さぁ? どうやってるんでしょうねぇ〜」ニコニコ

武闘家「と、というかっ! 村娘は⁉︎」ダダダッ

おっさん「ひっ、扉からはいってこいよぉ!」

リリム「」チーン

武闘家「こ、こいつはっ……!」ギョッ

僧侶「まだ息はあるはずなのでぇ〜。回復してどうなってるのか吐かせないとぉ」テクテク
652 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 15:11:12.08 ID:h4MucOXBO
【数十分後 同宿屋】

リリム「ん……んん……」

僧侶「目が覚めましたぁ?」

リリム「(くそっ、私の正体に気がついてたやつがいたなんてっ⁉︎ ……し、縛られてるっ⁉︎)ふもーっ! ふむもっ!」ジタバタ

僧侶「殺す気なら寝てる間に何百回も殺せましたよぉ。目的はそうじゃないのでそうしませんでしたけどぉ」ニタァ

リリム「……っ⁉︎」ゾクッ

僧侶「どうしてここに勇者さまがいるとわかったんですかぁ?」

リリム「ふもーっ! ふむむっ!」

僧侶「喋れませんでしたねぇ。いま、噛ませてるタオルをとってあげますぅ」スッ

リリム「ぷはっ! 貴様ぁッ! こんなことしてたタダで済むと思うなよッ⁉︎」

僧侶「戦士さん。ちょっと剣をお借りしますねぇ」スラァ

戦士「えっ? なにする――」

僧侶「えいっ」ザシュ

リリム「ぎゃっ⁉︎」プシュー

魔法使い「きっ、斬ったっ⁉︎」ギョッ

戦士「無抵抗な相手だぞっ⁉︎」

武闘家「……待て。なにも理由がないとは思えない」

僧侶「痛いですかぁ?」ジー

リリム「ぐっ……!」ギロッ

僧侶「治してあげますよぉ」ポワァ

リリム「……殺せ」

僧侶「いいえ〜。殺すなんてしません〜。死なないギリギリのラインで痛めつけ続けてあげますよぉ」

魔法使い「あ、あんた……っ⁉︎ なにいってるのっ⁉︎ 聖職者がそんなっ」

僧侶「手段は選びませんのでぇ。言ったでしょ〜? 機嫌が悪いとぉ〜」

戦士「僧侶、お前……」

僧侶「――……どこのどいつかさっさと言えっつうんだコラ。勇者さまの腕を切り落としたのはどこのクソ魔族だ?」グィッ

リリム「うっ!」

武闘家「……な、なんだって……」

魔法使い「勇者の、腕が……?」

戦士「切り落としたぁっ⁉︎」ギョッ

リリム「……くっ、くっくっ、事実だったのか、余裕しゃくしゃくでいけ好かない男。隻腕になったんだぁ?」

僧侶「言葉に気をつけないと、死ぬよ」

リリム「殺したらいいじゃなぁ〜い? そんなことしても勇者の腕は元に戻らないケド♪」

僧侶「……っ!」ギリッ

リリム「悔しそぉ〜〜。なにも知らなかったんだぁ? あんた達も。パーティの仲間なのにぃ?」

武闘家「おいっ! 勇者は、いまどこだっ!」ガンッ

リリム「知るわけないでしょ? そこに置いてあるマント。私はマーキングを頼りにここに来ただけ」

魔法使い「いつのまに……えっ、だって、昨日は、腕があって」
653 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 15:33:42.19 ID:h4MucOXBO
僧侶「腕は、いまどちらに?」チャキッ

リリム「ま・お・う・さ・ま・のぉ〜……と・こっ♪」

僧侶「……」ポトッ

リリム「キャハハッ! ざぁ〜んねぇんでしたぁ〜っ!」

魔法使い「武闘家っ!! さっきの置き手紙なんて書いてあったって⁉︎」バサッ

リリム「クックックッ、おっかしぃ〜〜っ! あんた達なにやってたのぉ〜?」

戦士「……片腕……そんな、剣士としてはもう、終わりじゃないのか……」

リリム「終わり終わりぃ〜! キャハハハハッ!」

武闘家「知ってることをすべて話せっ!! 今すぐっ!!」バンッ

リリム「やぁだ」プィッ

武闘家「……おい」ゴゴゴゴッ

リリム「好きなだけ拷問でもなんでもすれば? でもぉ、私はぜぇぇったいに喋らないけど? あんた達の青ざめた表情見てるだけで悦にはいれちゃうしぃ〜?」

僧侶「……勇者様の服はここに置きっ放しになってます。今すぐ全て燃やしましょう」

戦士「なぜだ?」

僧侶「いちいちイライラさせないでよっ!! マーキングされてるって聞いたでしょっ⁉︎」キッ

戦士「……っ、す、すまん、そうだな」

魔法使い「メモを残してあるってことは、まだ、生きてる。とにかく、次の村に急がないと……!」

武闘家「荷物をまとめろ、はやくっ!」

リリム「あらあらぁ〜? 拷問してかなくていいのぉ〜?」

僧侶「ご同行願います〜。お話は後でゆっくりと〜」

リリム「ふふぅん?」ニヤニヤ
654 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 16:10:14.44 ID:h4MucOXBO
【クィーンズベル 郊外】

ジャン「そろそろいいか」スポッ

姫「……お父様が今ごろカンカンですわよ」ジトォ〜

勇者「10年ぶりだね、姫ちゃん」

姫「なに考えてるんですのっ⁉︎ こんなことしてっ! そ、それに、その腕はっ⁉︎」

勇者「ああ、これ? ……未来にッ! 賭けてきたッ!」ドンッ

姫「み、未来?」

勇者「ワン○ース知らない? 漫画なんだけど。それでシャンクスっていうのがいてさ」

姫「そうではなくっ! 漫画なんてどうでもいいでしょ⁉︎」

勇者「俺って友達がいなくてねぇ。漫画ばっか読んでたから、あはは」

姫「……どういうつもりなんですの? 腕はなくしてるわ、見取り図は自分が盗んだというわ」

勇者「ああでもしないとメイドちゃんが自白してたんじゃないかと思って。それに、この国のあり方についても思うところあったし」

姫「内政干渉ですわ。お父様が素直に言うことを聞くはずありません」

勇者「それはそうだ。姫ちゃんが唯我独尊なのって父親の血を受け継いでるとこあるね。わがままっぷりも半端ないけど」

姫「わ、わがっ……⁉︎」

勇者「一応、兵士たちもきっちり煽ってきたことだし、大規模な捜索部隊を編成してるだろ。国民にはバレるよ」

姫「……」

勇者「本当は、ルビスに会いに来たんだけど、また次にする」

姫「ルビス、さま?」

勇者「知らなくていい。ダーマ神殿に行かなきゃいけないんだ」

姫「……魔王討伐の旅の途中でしたものね。光の柱は、勇者のものだったのでしょう?」

勇者「そだよ」

姫「……そう」

勇者「ここで待ってればすぐに見つけてくれるはず。なにかあったらいけないから、遠目から見てるよ」

姫「も、もう行くのっ⁉︎ せめて、お父様の誤解を解いてから」

勇者「メイドちゃんはどうなんのよ」

姫「そ、それはっ、でも、きちんと正直に話すればお父様も」

勇者「ほかの手前もあるからそうはいかないかもよ。政治っていうのは内向きと外向きがあるんだ。今回のは内向きだ」

姫「……」

勇者「俺は仮面を被っていたお陰で、正体を知る者は極少数に限られてる。片手で数えれるぐらい……姫ちゃんと、メイドちゃんと、衛兵。犯罪者の衛兵の言葉なんて誰も信じないし」

姫「私と、メイドが、黙っていれば、勇者は罪に問われない……ってことですわね」

勇者「そうなるね。けど、言ってもいいよ。そこはまかせる」

姫「そ、そんなのっ、言えるわけ、ありません……」

勇者「……そっか」
655 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 16:39:17.90 ID:h4MucOXBO
姫「全部、勇者の狙い通りなんですの?」

勇者「ん?」

姫「だって、そうでしょ?」

勇者「んー」ポリポリ

姫「メイドは勇者の身を案じて真実を告白できない、わたくしは大切な友を失わずに済む。罰せられるべき者たちは罰せられ、大円団じゃありません?」

勇者「ははっ、あははっ」

姫「ふふっ、お父様まで巻き込むなんて」

勇者「……大円団なんかじゃないよ」

姫「ど、どうして? だって、結果だけ見れば」

勇者「本来なら罪に問われるべきなんだ。メイドちゃんも。俺もね」

姫「で、でもっ!」

勇者「姫との縁故を利用して、裁かれるべき人が抜け道を通った。苦し紛れの、胸糞悪い結果なんだよ」

姫「……っ」

勇者「これから俺たち三人は、罪を共有してく。それは、王にウソをついた不敬罪、隠匿罪。まぁ、そこさえ気にしなきゃいいんだろうけど」

姫「わたくしは、気にしません」

勇者「……メイドちゃんによろしく伝えておいてよ」

姫「あの子、会いたがってましたわよ。勇者が、くれた、銀細工……ススだらけになるまで持ち歩いて」

勇者「また機会があったら遊びにくる」

姫「腕は? 本当に大丈夫ですの?」

勇者「なんとかなるんでない。わかんないけど」

姫「……あいかわらず、なんですのね」

勇者「あ、ねぇ。ひとつ聞きたいんだけど」

姫「なんですの?」

勇者「ここらへんってさ、花ってある?」

姫「花? サボテンに咲く花ぐらいかしら……」

勇者「なにか、伝承があるとかない? 雨と太陽が交わる場所とか」

姫「雨と、太陽……あぁ、“結晶の薔薇”のことですわね」

勇者「ほ、ほんとにあんのっ⁉︎」

姫「自分で聞いたのではないですか」

勇者「いや、そうなんだけど。まさか、あるとは」

姫「ありますわよ。ただ、今はありませんけど」

勇者「今は? 時期的な話? ここ気候は年中同じだよね」

姫「いいえ、年に一度、雨が降るんですの」
656 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 17:05:28.80 ID:h4MucOXBO
勇者「へぇ」

姫「雨があがれば、太陽がさしこむ。一輪の薔薇が咲いてます。学者たちの研究でもよくわかっていません」

勇者「そりゃー、神秘的なお話で」

姫「お城にいけば、ありますわよ」

勇者「どこに……どうせ宝物庫だろ」

姫「観賞用ですから厳重に保管してありません。わたくしの部屋にあります。鏡の前に」

勇者「あ、そう。……鏡?」

姫「ええ、そうですけど」

勇者「そう……そうか……偶然……だよな?」

姫「……?」

勇者「……気にしないでくれ。それと、返しとく」ジャラ

姫「これは、王家に伝わるアクセリー?」

勇者「姫ちゃんに足さされた時に貸し出されたんだ。ちゃんと返しておくよ」

姫「わかりました。お父様には、拾ったと伝えておきます。……あの、勇者」

勇者「なに?」

姫「わたくしの、政略結婚まで、考えてくれて、あ、ありがとぅ」ポッ

勇者「……」ぞわぞわっ

姫「は、ハーケマル王子との婚姻は、きっと、延期されるでしょう」

勇者「う、うん。いいよ」

姫「あ、あのっ、次は、いつ来る……?」

勇者「そのうちに」

姫「お父様も、勇者に、会いたがってましたし……その、もしかしたら、け、けけけっ、結婚相手が変わるなんてことも」

勇者「さてっとぉ」テクテク

姫「どこ行くんですの。まだお話の途中ですが」ガシッ

勇者「……」

姫「勇者なら、王族とも、肩を並べてもおかしくないというか、メイドを側室として迎えて、わたくしと」

勇者「姫ちゃんッ!!」クワッ

姫「は、はいっ!」

勇者「……」ジー

姫「あ……」ドッキンコドッキンコ

勇者「ライデイン」ボソ

姫「……えっ⁉︎ えぇぇぇぇっ⁉︎」ビリビリ

勇者「出力は抑えてある」バチバチ

姫「」プスプス

勇者「結婚なんか人生の墓場だっ!!不吉なこと言ってんじゃねーぞ!!」クルッ
657 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 17:33:38.83 ID:h4MucOXBO
【クィーンズベル 廃墟】

老人「ふぉっ、ふぉっふぉっ。ワシに会わずにゆくか、勇者よ」パァァ

ルビス「――……せっかくお膳立てしてあげたのに」

妖精「ルビス様ぁ〜、もう帰りましょ〜」

ルビス「ねぇ」

妖精「はぁい?」

ルビス「魔王なんか小物の前座で私が真のラスボスって言ったら、あの子、どんな顔して喜んでくれるかな? かな?」

妖精「真実知ったら恨まれると思いますよぉ? こーんな顔して」グニ

ルビス「そっかぁ〜、うんうん、そーよね」

妖精「時の狭間に帰りましょ〜」

ルビス「見たかったなぁ。あの子の絶望してる表情」

妖精「もぉ、ルビス様ったら」

ルビス「つまみ食いはよくないもんね? 楽しみはとっておきましょっか♪」
658 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 19:00:49.25 ID:h4MucOXBO
【馬車の荷台】

魔法使い「はぁぁぁあっ! メラミっ!」ポフン

武闘家「……」

魔法使い「ありゃ、もう魔力きれちゃった」

武闘家「魔法使い、静かにしてよ」

戦士「はぁぁ〜〜〜っ」ショボン

魔法使い「戦士ったらまだグジグジしてんの? 僧侶の怪力見たからって。戦ってみたら?」

戦士「……また負けたらどうするんだよぅ」

魔法使い「三度目の正直、と言う言葉があるわよ」

戦士「二度ある事は三度ある、というじゃないかぁ」イジイジ

魔法使い「そうね、二度ある事は三度ある、三度目の正直、どっちも言うけれど、どっちが本当なのかしらね」

武闘家「くだらない。どっちも同じじゃないさ」

魔法使い「?」

武闘家「三度とも正直なら、同じ事」

魔法使い「は? なにあんた、空気で頭でも打った? 意味わかんないんだけど」

リリム「……」ボロ

魔法使い「ねぇねぇ、魔族の貴女はどう思う?」

リリム「……」

魔法使い「シカト? 人間を餌にしか思ってないんでしょ〜? こうして逆に痛めつけられるなんて思わなかった?」

リリム「いちいちうるさいなぁ。陰湿」

魔法使い「あんたに言われたかないんだけどぉ?」

リリム「魔法使いって呼ばれてるんだっけ。魔法の才能ないよ? キャハハハハッ!」

魔法使い「……なんで?」

リリム「バカの一つ覚えみたいにメラミメラミってさぁ。魔力はまったく練りこめちゃいないし、学芸会でもやってるのぉ?」

魔法使い「なんですってこの低級三下魔族が」

僧侶「あのぉ〜、そろそろ手綱かわってほしいんですけどぉ」ヒョイ

魔法使い「……私、やる。ここいてもつまんないし」

リリム「逃げた逃げたぁ」ニヤニヤ
659 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 19:23:25.03 ID:h4MucOXBO
僧侶「傷の具合はいかがですかぁ」

リリム「(こいつ。厄介なのは、こいつだ。このパーティで、無抵抗な弱者を傷つけるのを躊躇わらない)」

僧侶「勇者さまの腕をやってのはどの魔族か言う気になりましたぁ?」

リリム「言うわけない」

僧侶「そうですかぁ」ゴソゴソ

リリム「……」ジー

僧侶「これぇ、モーニングスターっていう武器なんですけどぉ。鎖の先端にイボイボの鉄球がついてるんですぅ。当たれば痛いですよぉ」ヒョイ

リリム「……だから?」

僧侶「わたしねぇ、勇者さまって、かわいそうだと思うんですよぉ。自分らしくありたいって、そう主張してる男の子にしか見えなくてぇ」

リリム「……」

戦士「僧侶、それ、使う気か? いくらなんでも、そこまで。いっそ、ひと思いに殺してやったほうが」

僧侶「お師匠さまにぃ、言われてるんですよぉ。“精一杯、勇者さまのお力になってきなさい”って。そう思ってた、そう思ってたのに。でき、なかった」

武闘家「……」

僧侶「距離を測るべきか、詰めるべきか、悩んでる内に。腕をなくしちゃってましたぁ〜。あはは、臆病ですよね、私のせいですぅ」

リリム「(なんだ、こいつ、やばい……目に、光がないっ)」ゾワッ

戦士「僧侶……」スッ

僧侶「次なんてあるかわからない」パシッ

戦士「な、なにもあたしの手をはたかなくったって」

リリム「……アンタ、本当に、聖職者……?」

僧侶「でも、だから。だから、次こそは。うん、次なんて、あるのかどうか、あっても何をすればいいのか分からないけど。でもね、次こそは私、勇気を出そうと思う……ね?」カチャ

リリム「……」ゴクリ

武闘家「僧侶、やめろ」

僧侶「邪魔するの? 武闘家さんは少しだけ聡いと思ってたのに」

武闘家「次の、村だ。村につけば、勇者がるはずじゃないさ。直接、聞けばいい」
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