バットマン「グランド……オーダー?」 マシュ「その2です」

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643 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:43:49.18 ID:XAEQl6mw0



バットマン「……ダビデ! 何処だ!」スタスタ


バットマン(目視した限りでは致命傷は避けていたハズだ。……何処に行った……)


「こっ……だ、こっち……」


バットマン「……!! ダビデ、そこか!」タッタッ



644 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:44:29.85 ID:XAEQl6mw0



バットマン「……」タッタッ

バットマン「……」タッタッ……ピタッ


バットマン(おかしい)

バットマン(私はロンドンに居たハズだ)

バットマン(なのに何故、私は……)

バットマン(何故、雨が降る裏路地に立っている?)



ザアザア……ザアザア……



645 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:45:01.86 ID:XAEQl6mw0



父親の死体「ブルース……」ズリ、ズリ

母親の死体「ブルース……お願い……私達を、これ以上苦しめないで……」ズリズリ

バットマン「……」ヨロ

父親の死体「永遠の命……それさえあれば、私達は……」ガシッ

母親の死体「お願い、繰り返させないで……私達を、助けて……」ガッ

バットマン「…………」ジリ、


646 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:45:59.65 ID:XAEQl6mw0



マシュの死体「マスター……私は、もっと生きていたかった……」

バットマン「……マシュ……」

マシュの死体「あなたが、悲劇を選んだから、私は……私達は……」

ドクターの死体「ブルースくん……」

所長の死体「ブルース……」


バットマン「……」


バットマン(恐怖ガス緩和剤の効果が切れた……そのせいで皆が死んだ? 違う、現実を正しく認識しろ……マシュは死んでいない……はずだ)


(だが、死ぬのも時間の問題だ)


647 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:46:48.12 ID:XAEQl6mw0



(マスター……きて……起きて下さい、モードレッドさんが……!)

(ブルース、頼む……なんだアイツ、強過ぎるぞ……!)


バットマン(……ダビデの声……マシュの声……永遠を拒否すれば、彼らは死ぬのか……)

バットマン(……違う。使命がある。忘れるな、起き上がれ……!)


母親の死体「ブルース……」

父親の死体「ブルース」


バットマン「……」スーッ、ハーッ……


バットマン(……精神を安定させろ。すべき事は何だ。ブルース・ウェインはまだ心を殺す術を忘れていない。バットマンになれ)


バットマン「……」ムクリ


648 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:47:26.67 ID:XAEQl6mw0


………………


バットマン「……っ、起きたぞ、状況を……!」ガバッ


モードレッド「っぐあ!?」ドッシャァシャシャシャシャ‼

バットマン「なに……」

マシュ「マスター、起きてくれましたか! 先程から謎のサーヴァントが出現、苦戦を強いられています!」

ダビデ「石が当たっても通じないぞ……!?」

モードレッド「チックショウ、あの大男……! ヴィクターをやったのもアイツか……!」ギリィ


ゴキリ、ゴキリ

ドシ、ドシ


「ハハハハハハハハハハ! 随分かゆい攻撃を繰り出すものだな!」ドシ、ドシ



649 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:48:11.19 ID:XAEQl6mw0


バットマン「……あの声は……!」


バットマン(間違いない。ヤツだ。今戦っても勝ち目が薄すぎる)


バットマン「っ、ダビデ、マシュ! 一旦退却するぞ!」ダッ

マシュ「ま、マスター!?」

バットマン「このままでは勝てない! 退いて対策を立て直す……」ピタッ


ガシャリ、ガシャリ。プシュー……


???「……逃亡は、無駄である」ガシャリ、ガシャリ

バットマン「……」


バットマン(退路を、断たれた……)


650 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:49:04.18 ID:XAEQl6mw0



「フハハハハハハハハハハハ! 怖いかバットマン……聞こえるぞ、悲鳴を飲み込む音が!」


バットマン「スケアクロウまで来たのか……」

???「貴様らに恨みはない。ただ、悪と悲劇ばかり産むこの世界に恨みがあるのだ」ガシャリ、ガシャリ

バットマン「……」ジリッ

???「我が名はチャールズ・バベッジ。蒸気王。我が夢の世界はすぐそこに。蒸気があまねく地上を覆い、悪が土を踏む事はない。貴様らの命は、その礎。尊い犠牲だ」

バットマン「……」


バットマン(チャールズ・バベッジ。共同計算機、コンピューターの始祖。彼の発明が寿命に間に合ってさえいれば、世界を変えたとも言われる人物だ……真の天才であり、数学者)


バベッジ「……」プシュー……


バットマン(……全身に機械の鎧を纏っている理由は不明だが、あれは容易には破れそうにない……)



651 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:49:33.28 ID:XAEQl6mw0



スケアクロウ「フハハハハハ! さあ、お前の破滅が歩み寄っているぞ……!」ズォォォォォォ……


マシュ「くっ……」ジリッ

バットマン「固まれ、ダビデ、マシュ、モードレッド」

モードレッド「ちっ……」チャキッ

ダビデ「ヤバそうだな、これは……」



ドシリ、ドシリ。ドシリ、ドシリ。



「手は出すな。俺一人で相手をする」ドシ、ドシ



652 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:50:31.14 ID:XAEQl6mw0



バットマン「……」

「フフフ、バットマン。俺を忘れたか? 俺はお前を忘れたことなど無い。召喚された時から、この瞬間を待ち望んでいた」ドシ、ドシ

バットマン「……」

「お前を殺せば、きっと世界は終わるのだろう。悲しむべき事だ。だが、それがどうした」

マシュ「……」ゴクリ

「俺にとっては、さして大事でもない。世界の破滅も良いだろう、見てやろう。所詮守るべくもない。何故なら……」

モードレッド「……」ジリッ


ズォォォォォォ……


ベイン「……俺は、ベインだ」



バットマン(ライダージャケットで覆われた異様な巨躯。マスクで隠した素顔。かつて私を打ち破り、ゴッサムシティを悪の淵へ叩き込んだ男、ベイン……)


653 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:51:16.77 ID:XAEQl6mw0



モードレッド「……御大層な名乗りは終わったかよ、デカブツ」

ベイン「待ってもらえて光栄だ。尤も、お前の実力では不意討ちでも俺には勝てんが」

モードレッド「ほざけ……!」ググググッ

バットマン「落ち着け! 奴の口車に乗るな、危険だ……!」

モードレッド「クソ……」

バットマン「マシュ……ヤツを相手に、決して盾は手放すな。得意な武器が無くなれば即、敗北だと思え」

マシュ「……はい」ガシャリ


マシュ(こんなに緊張しているマスターを見るのは、初めてです……)


バットマン「モードレッド、お前は少し様子見をするんだ」

モードレッド「……チッ……」

バットマン「……ダビデ、耳を貸せ」

ダビデ「オッケー、悪だくみは大好きだ」


654 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:51:53.69 ID:XAEQl6mw0



ベイン「秘密の小話は終わったか、バットマン」

バットマン「……」

ベイン「そのようだな。では……仕掛けさせてもらうとしよう」

マシュ「行かせません……!」バッ

ベイン「ほう、まずはお前か」


バットマン(マシュの盾と身体能力で時間を稼ぎつつ、モードレッドにヤツの格闘パターンを読ませる。……頼みの綱はダビデだが、働くか……)


ベイン「……」


ベイン(……)ニヤリ


655 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:52:31.80 ID:XAEQl6mw0


ベイン「……」ジリッ

マシュ「!」スッ


マシュ(打ち込んで来る……! 受け切ってみせる!)ガシャリ


バットマン「……!!」


ベイン「……」スーッ……


ダ  ン  ‼


マシュ「っ」

ベイン「フンッ!」ギュゴォッ‼



656 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:52:58.99 ID:XAEQl6mw0


盾「」ガッ、ビリビリビリビリビリッ

マシュ「あ……」ビリビリビリビリビリ


マシュ(ただの掌底、なのに……衝撃が全身を突き抜けて、動けない……!)ヨロ


ベイン「トドメだ」ス、スーッ……ドシン


モードレッド「させっかよ!」ブォンッ


ベイン「ふっ」ガシッ



657 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:53:29.92 ID:XAEQl6mw0


モードレッド「……クッソ、放せ、ちくしょうめ……!」グ、グイッ

ベイン「俺に飛び掛かりたい衝動を抑えていたのは流石だ、騎士よ。名前も知らんが……高名なのか、それとも血筋でも良かったか」

モードレッド「……! 黙れ、テメェに何が分かる……!」

ベイン「分かるとも。プライドの高さが災いして真の実力を出し切れていないところも、仲間を見捨てる事ができない騎士道精神も……まるで生前、誰かに認められていた自分を再現しようとしているようだ。涙ぐましい」

モードレッド「テメェ……! 殺す、殺してやる、ぶっ殺す!!」ジタバタ

ベイン「ハハハ……!」グイッ、ブォン

モードレッド「っぐが……!」ドッシャァァァァァァァ……


658 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:54:10.29 ID:XAEQl6mw0



ベイン「さて、次は……」

バットマン「フッ」シュポッガシッ

ベイン「待ちわびたぞ、バットマン」ガシッ、グイッ

バットマン「っく……」グォンッ

ベイン「……フン!!」ドッゴォ‼

バットマン「が……!?」ビュォッ、ゴッシャァァァァァァァ‼


バットマン(駄目だ、強化済みスーツ越しでも内臓が形を……あばらが外向きに……)グラリ、ドシャッ


バットマン「……く……ぐっ……」ピッピッ、ギュォォォォォッ


バットマン(スーツのアイソメトリック力を最大に……肉体の変形を防ぐ……)


ベイン「……今度は信念だ、バットマン。お前は肉体をいくら潰しても這い上がってくる。ならば、精神を先に潰す」ドシ、ドシ


バットマン「……」ヒューッ、カヒュッ……


バットマン(ダビデ、時間は稼いだぞ……今しかない!)

659 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:54:47.26 ID:XAEQl6mw0



マシュ「行かせません……!」バッ

ベイン「お前は俺に負けた。これ以上は無駄だ」

マシュ「行かせません!」

ベイン「……聞く耳がないようだな。ならば、お前の背骨から……」



石「」ヒュォォォォォォッ


ガッシャァァァァァァァァァァ‼


ベイン「!! 何!?」バッ


660 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:55:27.31 ID:XAEQl6mw0



ダビデ「よっし! どうだブルース、やってやったぞ! 僕にかかればこんなものだ!」

ベイン「き、貴様……俺の背中のタンクを……!?」ヨロ

バットマン「……よくやったぞ、ダビデ……!」


バットマン(ベインの超人的身体能力は、筋力増強剤『ヴェノム』に依存している。今、背部にあるそのタンクを破壊した……!)


バットマン「マシュ、モードレッド、チャンスだ! 仕掛けろ!」

マシュ「はい!」

モードレッド「……のヤロウ!!」ムクッ


661 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:55:54.61 ID:XAEQl6mw0



モードレッド「オラァ!」ヒュォンッ

マシュ「たああっ!!」ブンッ


ドガッシャァァァァァァァァァァァァァ‼


煙「」モクモク……


バットマン「……やったか」


662 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:56:39.23 ID:XAEQl6mw0


ドゴッ


マシュ「あぐっ……」ドドッ、ゴロゴロゴロ……

バットマン「何……!?」


663 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:57:28.39 ID:XAEQl6mw0



ギリ、ギリギリギリギリ、ギチギチギチ……


「成程、確かに弱点だ。俺の背中のタンクは常にヴェノムを供給し、俺を強くする。これが無くなれば、俺は弱くなる」グググググ……


モードレッド「……何だと……!?」ギリギリギリギリ


ベイン「だが、バットマン。言っていなかった事がある」バサッ

ライダージャケット「」バサァ……

ベイン「俺のタンクは特注品でな。一度稼働させて循環を始めさせない限りは、全く意味のないシロモノなんだ」


バットマン「……馬鹿な……」


空のタンク「」パリ……


ベイン「今回、俺はサーヴァントになってから、このヴェノムタンクを一度も使っていない。この意味が分かるか?」


バットマン「モードレッド! 逃げろ!」

ベイン「徒労だ。何もかもな」


664 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:58:20.95 ID:XAEQl6mw0


モードレッド「この野郎!!」ググッ

ベイン「フフフ……!」グイッ、ドッゴォ‼

モードレッド「ぐが……!」ドゴシャァァァァァァァ‼

バットマン「……ドクター、ドクター! 今回の特異点は攻略不可能だ、マシュだけでもそちらへ帰せ! ドクター! 聞こえないのか!!」

ベイン「馬鹿め。俺が通信妨害を怠らないと思ったのか、バットマン。リドラーが特定した周波数に対策を施してある。俺の周囲で通信機は使えん……」ピピー‼ピピー‼


影『……』ヴゥゥゥゥン……


ベイン「……今度は俺への通信か。せわしないな」



665 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:59:07.19 ID:XAEQl6mw0



影『お前に任せていたバビロニアの戦線が押されつつある。これはどういう事だ』

ベイン「……用を済ませればすぐに戻る」

影『さっさとしろ。貴様が大丈夫だと保証したんだぞ』

ベイン「焦るな。俺が戻れば元通りだ……」ピッ

影『……』シュゥゥゥゥン……


ベイン「……無粋な者も居たものだ。だが、これで水入らずか?」ドシ、ドシ


バットマン「……くっ……」


バットマン(マシュ、モードレッドは気絶……私はスーツで辛うじて意識を保っている状態……これでは……!)


ベイン「万策尽きたか。ならば死ね」

「まだだ!」バッ



666 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:59:34.10 ID:XAEQl6mw0



ダビデ「……僕がまだいるぞ、大男くん!」

ベイン「……興味が無いな。お前には」

ダビデ「そうかな? 僕はダビデ王だ。キミがおおよそ想像もしないような荒事を潜り抜けてきた! キミみたいな大男だって初めてじゃないさ!」

ベイン「それは面白い。では、その経験を使って俺を打ち倒せるか?」

ダビデ「……いや、この間合いでは難しいかな!」

ベイン「そうか。では、遠慮なく死ね」ドシ、ドシ

ダビデ「……!」



バチバチバチバチバチバチィッ‼


667 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 20:00:08.94 ID:XAEQl6mw0



ベイン「っ……」バチィ‼

ダビデ「おっ……! 救援!?」

???「ゥ、ウー……!」バチバチバチバチバチバチ……

ベイン「チッ……! フランケンシュタインの怪物か。仕留め損ねていたとは、俺もまだまだ……」ジリッ

???「ゥゥゥゥゥゥゥァアアアアアアアアアアアア!!!」バチバチバチバチィァ‼

ベイン「……!」バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂィ‼



668 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 20:00:35.24 ID:XAEQl6mw0



ベイン「……やってくれるな、怪物め!」バチィ、ドゴォ‼

???「ぅ、ぁ……」ドシャッ

ダビデ「ええーい! やっぱり僕がやるしかないか、こういう役割は……!」バッ

バットマン「ダビデ……」

ダビデ「ブルース、皆を頼んだ! 僕はやっぱりこうなるらしい! 戦いの中で死ぬなんて、柄じゃないんだけどね!」

バットマン「……!」


ベイン「邪魔をするなら、へし折ってやる!」ガシッ、グイッ

ダビデ「ぐあああっ……」ブラァン……


669 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 20:02:01.86 ID:XAEQl6mw0



バットマン「……っ」


バットマン(時間を無駄にするわけには行かない! 確か、この年代のロンドンには既に下水道が発達していたハズ……)プシューッ、プシュー……


ダビデ「……ブルース、息子の事は、頼んだ」ギチギチギチ……

バットマン「……!」

ダビデ「アイツ、考えすぎて、こじれる事が、よくあるからなぁ。キミくらい、頑固な奴にしか、直して、やれない」

バットマン「……」

ダビデ「……じゃあな、ブルース」

バットマン「……さらばだ、ダビデ!」ポチッ


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ、ガラガラガラガラガラガラ……



ベイン「終わりだ!」グィンッ、ドッシャァ‼

ダビデ「ぐああああ!!!」ゴギッ……



670 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 20:02:51.77 ID:XAEQl6mw0



バットマン「ぐぅっ……」バシャッ

マシュ「……」バシャッ

モードレッド「……ぐ……」バシャアッ

???「ぅ……」バシャン


バットマン(流れが速い……これは、恐怖ガスの廃液が流れているのか……!)


バットマン「く……」シュポッガシッ

ギュルギュル……ギュギュギュ……

モードレッド「ぐ……」ザバザバ……

マシュ「……」バシャシャ……

???「……ぅぁ……」グタッ……


バットマン(このまま、流れて……逃げ切れるか……液を飲まないように気を付けても、気化したものが肺を侵す……)



671 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 20:03:41.22 ID:XAEQl6mw0


マシュ「先輩……ごめんなさい……私が……私が……」

モードレッド「……父上……なんで……」

バットマン「……今、連れて帰ってやる……マシュ、モードレッド……」

バットマン「大丈夫だ、まだ……すまない、ダビデ……」

バットマン「……ドクター、私のバイタルチェックを……」

バットマン「……」


(((ブルース)))

(((ブルース、お願い……)))


((ブルース))

(ブルースくん)

(ブルースくん!!)



通信機『ブルースくん! 返事をしてくれ! バイタルサインが滅茶苦茶だぞ、何があったんだ! ブルース!!』

バットマン「……」


ザアアアアアアアアア……ザアアアアアアアア……


672 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 20:04:25.44 ID:XAEQl6mw0



………………

ベイン「……」ブンッ

ダビデ「……」ドシャッ

ベイン「……この下はどうなっている」

スケアクロウ「恐怖ガスの失敗作が流れている。たとえサーヴァントでも、発狂は免れないだろう……フフハハハハ……」

ベイン「そうか。……これなら、アイツが言っていた意味も分かる。障害にすらならん、下らん相手だ……俺はバビロニアへ戻る」ドシ、ドシ

バベッジ「……一つだけ良いか、ミスター・ベイン」

ベイン「何だ」

バベッジ「ヴィクターはどうなった?」

ベイン「殺した。歯ごたえの無い男だった」

バベッジ「……そうか。さらばだ、ミスター・ベイン。二度と会わない事を願おう」

ベイン「フン……」ドシ、ドシ……ズォォォォォォ……


673 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 20:05:05.00 ID:XAEQl6mw0



ベイン「……」ドシ、ドシ


ベイン(バットマン。そして、あの盾の少女……マシュ。面白い)


ベイン「ここまで来い……」


ベイン(生き延びろ。生きて此処まで来い)


ドシ、ドシ。ドシ、ドシ……


霧「」ズォォォォォォ……


674 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/04/02(月) 20:06:07.92 ID:XAEQl6mw0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/02(月) 21:09:18.40 ID:QsmxHJe5O

尋常じゃないなヴェイン
強化されてる上にブルースと頭脳プレーで張り合い出したら勝ち目が見えん
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/02(月) 21:34:13.40 ID:A3TYWi4n0
乙。そしてMr.Jの声が聞こえた気がするが気のせいだな!
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 00:03:54.88 ID:WL5wJbPD0
乙乙
やっぱヴェインは洒落にならんな……

678 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/04/20(金) 22:30:08.94 ID:tE+Nq4fB0
生存報告です。申し訳ありません、忙しさにかまけて更新が遅れています。失踪はしないので気長に待っていただけると幸いです。
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/20(金) 23:51:26.35 ID:BTvl3HKPo
がんばれ
カレンダーを眺めながら>>1を待っているぞ
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 13:05:24.21 ID:9F8D/DSV0
ゆっくりでええんやよ
大事なのは最後まで行くこと
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/09(水) 22:18:57.06 ID:4j+nzZi40
まってる
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/12(土) 08:17:46.48 ID:+Pzod3BfO
おれもまってる
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/14(月) 17:14:06.63 ID:tTtXMBB/0
おれもおれもまってる
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/23(水) 23:29:29.14 ID:y7MX5fKg0
いつまでも待つぞ
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/01(金) 12:31:23.97 ID:Mdn9lDls0
6月になったけど待ってます
686 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:13:59.52 ID:iNQLdeY80

………………

M「……つまり、こういう事か。ベインが潰したと断言できるのは、結局、敵サーヴァント一騎だけだと」

スケアクロウ「ただ座しているだけの者よりよほど誇るべき成果だろうさ、ククク」

M「……」ギシッ

P「落ち着きなさい。次の手を考えねば」

M「……ふん。バベッジ、聞こえるか」ピピッ

バベッジ『聞いている』ブゥン

M「植物園へ向かえ、奴らが賢いなら、そこへ来るはずだ」

バベッジ『……了解した』


687 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:14:46.90 ID:iNQLdeY80

P「……」

M「言いたい事があるなら言うが良い、パラケルスス」

P(パラケルスス)「いえ……ただ、変わったのだと、実感しただけです」

M「……人は変わってしまう。ならば、気高いままで仕事を終えたい」

パラケルスス「……」

スケアクロウ「……」


688 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:16:16.06 ID:iNQLdeY80


M「結果、自分が変わってしまったとしてもだ。……過ぎた贅沢だと、思わないでもないのだがね」

パラケルスス「……贅沢ですか」

スケアクロウ「……見てきたハズだ、マキリ。人間の本質は恐怖だ。絆、博愛、平和。そんな綺麗事を囁いていた連中が、一口でもガスを吸えばどうなった?
結局、世界は嘘で覆われているのだ。見栄えだけは良い、輝かしい嘘でな」

M(マキリ)「……そう、だったな。ああ、無論、我々の目的が揺らぐ事はない」

スケアクロウ「……私は行く。恐怖ガスを更に改良しよう」スタ、スタ……

パラケルスス「……」


689 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:16:45.44 ID:iNQLdeY80


マキリ「……」

パラケルスス「……悪は止まれない。私がそう言ったのを覚えていますか」

マキリ「……覚えている。勿論だ」

パラケルスス「ですが、毒がその分量によって薬にもなるように……必要悪というのは、存在するのです。
今、その魂が悪に染まっていても。きっと世界は良い方向へ変わっているのです。変化に犠牲は、つきものですから」

マキリ「……ふふ、魂か。なあ、パラケルスス」

パラケルスス「はい、マキリ」

マキリ「私の理想は──」


690 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:17:11.58 ID:iNQLdeY80

………………


ゴポッ、ゴポポポポポ……


(ブルース)

(ブルース)

((バットマン))

バシャアッ、ポタ、ポタ……

((坊ちゃま……))

(((ブルース)))

(((お父さん……)))

(((逃げろ)))


バットマン「……」ポタ、ポタ……

???「ぅあ……」バシャバシャ……

バシャ、バシャ……


???2「おーい! こっちだ、こっち! 運んできてくれ!」


691 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:17:37.59 ID:iNQLdeY80



(((ハハハァー!! 命を持つ痛みすら叫ばず!)))

(((果てには死が待つというのに、私の破壊行動に怒りを燃やす! それがアナタ達の弱点だ!)))



???「う……」バシャバシャ

???2「酷いな……ブルースが特に不味い。早く緩和剤を打たなきゃ」カチャカチャ

バットマン「……ぐ……」



(((貴方も本当は気付いているんじゃないですかァ? 限りある命なんて、所詮……)))


(((今度は信念だ、バットマン。お前は肉体をいくら潰しても這い上がってくる。ならば、精神を先に潰す)))

(((お前を殺せば、きっと世界は終わるのだろう)))


(((世界は狂っている……貴様は狂っていない)))

(((こちらへ来い、ブルース)))

(((ブルース)))


(((逃げろマーサ、ブルース)))

692 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:18:06.69 ID:iNQLdeY80



バットマン(……)

(((私達はお前にそうなって欲しくなかった、ブルース)))

バットマン(……)

(((ただ、お前が幸せに生きてくれれば、それだけで良かったのに)))

バットマン(……)

(((……だが、もう良いんだ。こっちへ来い、ブルース。一緒にいこう。もう、これ以上苦しむ必要はない)))スッ

ブルース(……)

(((ブルース、大丈夫よ。お母さんだってついてるわ。こっちへいらっしゃい)))


ブルース(……)


バットマン(……違う)


693 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:18:47.69 ID:iNQLdeY80


(((ブルース)))

バットマン(向き合え。真の恐怖とは何だ。私は何を恐れている)

(((ブルース、こっちへいらっしゃい)))

バットマン(一時の暖かさでそれを誤魔化すな。私は何を恐れている。仮面を剥がれる事か? それとも)

(((ブルース)))

バットマン(また、闇の中で動けなくなる事か?)



バチチィッ、ドクン‼


バットマン「ッ!!」ガバッ

???「ゥー……」バチ、バチチチ

???2「ブルース!」

694 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:19:18.21 ID:iNQLdeY80


バットマン「ここは一体……ジキル博士?」

ジキル「僕だよブルース。通信が途切れたから、電波の発信源を追って駆け付けた。助けてくれたのは、この子だけど」

???「……」

バットマン「……」チラッ


排水口「」バシャシャシャシャ……


マシュ「……」グタッ

モードレッド「……」グッタリ


バットマン「……本当に、お前が?」

???「ウ!」コクコク


695 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:19:49.91 ID:iNQLdeY80


バットマン「……ありがとう、あのままでは死んでいた。助かった」

???「ウゥ……」フリフリ

バットマン「ジキル、恐怖ガスの緩和剤はまだあるか? マシュとモードレッドも恐らくガスの影響下にある」

ジキル「駄目だ、ストックの一本分は既にキミに使った。何処かに隠れて調合しないと」

バットマン「そうか……」


通信機『』ピピー‼ ピピー‼

バットマン「もしもし、ドクターか」ピッ

ドクター『ブルースくん! 良かった、応答しました! 生存を確認!』

所長『ブルース! 生きてたのね……!! どうして連絡しなかったの!? マシュは!?』

レオナルド『ほら言ったじゃないか、絶対生きてるって』

ドクター『何度もバイタルを確認してたクセによく言えるな!?』

レオナルド『恐怖に勝るのはいつだって事実さ……早速だが、状況を確認したい。良いね、ブルース』

バットマン「ああ、報告する」


696 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:20:28.78 ID:iNQLdeY80


………………


ドクター『……成程、ベイン。それにB・P・M・Sのうちの「B」、バベッジの登場か』

レオナルド『サーヴァント三騎を相手に全く退かず、それどころか遊びじみて返り討ちにしただって? そのベインというヤツは何者なんだ、ホントにただのサーヴァントなのかな?』

バットマン「……怪しいものだが、生前から考えると妥当な強さではあった」

レオナルド『うーん……滅茶苦茶だな。ブルース、キミは平気かい?』

バットマン「一撃もらったが、スーツのアイソメトリック機能で持ちこたえている」

ドクター『……そのまま休んでいて欲しいところだが、マシュのバイタルがひと呼吸ごとに悪化している。可及的速やかに屋内へ退避してくれ』


ジキル「ここから近いのは……図書館だな。こちらとしても、広めのスペースを確保したい」

バットマン「分かった、では行くぞ。ジキル、モードレッドを頼む。私はマシュを担ぐ」

ジキル「了解。よいしょ……うっ、重いな……」ガシ、グイッ

モードレッド「……ちち、うえ……」グタッ


697 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:20:55.88 ID:iNQLdeY80


バットマン「……」ガシ、グイッ

マシュ「……先輩……」

バットマン「……」スタ、スタ

マシュ「……ごめんなさい……」

バットマン「……」


698 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:21:21.34 ID:iNQLdeY80


コツ、コツ……


ドクター『ブルース、その……肝心な時にサポートが行き届いていなかった。すまない』

バットマン「……あぁ、大丈夫だ。私も、現場で常に策を考えるハズが、犠牲を出しながらの撤退になってしまった……まるで最悪を受け入れたようだった。情けない話だが」ポタポタ、グイッ

ドクター『……』

バットマン「……それに、フランケンシュタイン博士を助けられもしなかった。すまない」

ジキル「……良いんだ。キミ達が帰って来た、それで十分だよ」

???「……ゥ……」フリフリ

バットマン「……良ければ、キミの名を教えてもらえないか」

???「ふらん……」

バットマン「フランか……」


699 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:22:00.00 ID:iNQLdeY80


バットマン「ダビデを……ダビデを助けようとしてくれた事に、感謝する。ありがとう」

フラン「……ゥ」

ドクター『……ダビデも、消滅したんだね。アイツ、最期に何か言ってたかい?』

バットマン「あぁ。息子を頼むと、そう言われた」

ドクター『えっ……息子って、そ、ソロモンを?』

バットマン「ああ、そうだろう」


700 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:22:25.50 ID:iNQLdeY80


ドクター『……そうか、そんな事を……』

バットマン「ドクター、やはり……ダビデは、お前が思っているほどは、悪い奴ではないと思う」

ドクター『……そう、か。
……そうだね。僕も少し、言い過ぎたかもしれないなぁ』

バットマン「……」

ドクター『……ありがとう、ブルース。ごめんね』

バットマン「謝る事ではない。ダビデにも息子を思う気持ちがあった、それだけの事だ」

ドクター『そうだね……』


701 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:23:04.04 ID:iNQLdeY80


バットマン(しかし、今回の黒幕がソロモンだと直接ダビデに明かした事があっただろうか)

バットマン(……覚えはないが、第三特異点であれほど強く問い詰めたのだ。何かしら察するところはあったのだろう)


ジキル「あれが図書館だ、ブルース。もう少し踏ん張ってくれ」

バットマン「ああ、大丈夫だ……」

フラン「ウ!」スタスタ


702 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:23:32.60 ID:iNQLdeY80


バットマン「……」


霧「」ズォォォォォォ……


街路「」……、…………


バットマン(私達以外の足音などしていない。その筈だ、だが……この胸騒ぎは何だ?)

バットマン(また恐怖ガスの幻覚か? いや、それにしては……)


ジキル「どうした?」

バットマン「……」

フラン「?」

バットマン「……いいや、何でもない。行くぞ、止まらず」スタスタ



703 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:24:02.31 ID:iNQLdeY80


………………


ナーサリー「……」

アンデルセン「……ほら、紅茶だ。飲め」カチャ

ナーサリー「いらないわ。紅茶なんて……」パシッ

アンデルセン「いつまでヘソを曲げているつもりだ、お前……」

ナーサリー「いつまで、ですって?」

アンデルセン「……」

ナーサリー「……マッドハッターさんが帰ってくるまでにきまってるわ」


704 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:24:31.54 ID:iNQLdeY80


アンデルセン「……死人は戻らん」

ナーサリー「じゃあ……じゃあ、どうして助けに行かせてくれなかったの!? 私、わたしは……私は、ようやく『物語』になれたのに……っ」ギュッ

アンデルセン「……」

ナーサリー「これじゃまた、誰も読んでくれない。誰も私を見てくれない。誰も……」ブルブル

アンデルセン「いつまでも同じ事を言うんじゃない。あそこで無駄死にするのがお前の役割だったなら、とっくに放り出してる」

ナーサリー「……だからあなたは嫌いよ、アンデルセン」キッ

アンデルセン「フン……」


705 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:24:59.76 ID:iNQLdeY80


アンデルセン「……?」ピクッ

ナーサリー「? アンデルセ……」

アンデルセン「静かに。……チッ、侵入者か。動くなよ、俺が向かう」

ナーサリー「わたしも向かうわ。一人は駄目よ、ぜったい駄目」

アンデルセン「座っていろ。マッドハッターの最期の言葉まで無碍に扱うつもりか」

ナーサリー「……大人ってズルいわ、だから嫌いなの!」

アンデルセン「奇遇だな、俺も理想論ばかりの子供は大嫌いだ!」ガチャッ、バタンッ‼

ナーサリー「っ……」


706 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:25:26.00 ID:iNQLdeY80


………………

ドクター『……すまない、感知が遅れた。図書館内の魔力反応に揺らぎが出た。キミ達は何やら結界じみたものを踏み越えてしまったようだ』

バットマン「ジキル、確か図書館に居るサーヴァントは……」

ジキル「ああ、帽子をかぶった男だったハズだ」

バットマン「……」


バットマン(マッドハッターの仕業か? いや、だが奴はわざわざこんな回りくどい事をする性格ではなかったハズ……)


バットマン「ドクター、図書館内のサーヴァント反応をサーチできるか」

ドクター『待ってくれ、今やってみてる……うぅ、相変わらずノイズまみれだな。恐らく二人居るぞ、それで……この体格、どっちも子供みたいだな』

バットマン「子供?」


バットマン(……マッドハッター……ではない?)


707 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:26:13.48 ID:iNQLdeY80


ドクター『あぁっ、駄目だ! ノイズが激し過ぎて捕捉しきれないぞ……二階に居るらしい事は分かったんだが』

バットマン「十分だ。……二人とも注意しろ、この建物も安全という訳では無さそうだ」

ジキル「困ったな……」

フラン「まも、る」

バットマン「……行くぞ」スッ


裏口「」ガチャ、ギィィィィィィィ……



708 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:26:39.44 ID:iNQLdeY80



コツ、コツ……コツ……

蜘蛛の巣「」ハラリ

ろうそく「」ユラァ……


バットマン「……」


バットマン(やはり、つい先ほどまで人が居た痕跡がある)


ジキル「うわっ……酷い状態だな、ここは……」

バットマン「迂闊に動くな。……それと、扉をきちんと閉めてくれ」

フラン「ウ!」ガチャン


裏口「」ガチャリ


709 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:27:39.91 ID:iNQLdeY80



バットマン「……そこの机の上を片付けるぞ。マシュとモードレッドを寝かせる」

ジキル「ああ、緩和剤製作のスペースも作らなくちゃな」

フラン「きたない……」ガサゴソ

バットマン「……いや、待ってくれ。少しだけ」スタスタ


バットマン(机の上にあるのは……赤ずきん、蟻とキリギリス、赤い靴、ある母親の物語……『あ』から始まる本ばかりか)ペラ

バットマン(読まれた形跡はどれも古いものだ。各ページの湿り気、クセの付き方から判断して……恐らく、他の本を探す際に本棚から放り出されていたのだろう)ペラ、ペラ

バットマン(では目的の本とは? ……考えるまでもない。『アリスズ・アドベンチャー・イン・ワンダーランド』『不思議の国のアリス』。マッドハッターの愛読書)

バットマン(……だが、捜索は途中で打ち切られたようだ。中途半端に残ったあ行の本棚、冷めたままで放置された紅茶とカップ……急な来客でもあったか、それとも)


ビュォォォッ……

本「」パララララララ……

バットマン「……風?」

ジキル「扉か窓でも開いてるんじゃないか?」


710 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:28:13.98 ID:iNQLdeY80



バットマン「……ここに残っていてくれ、見に行く」スクッ

ジキル「了解。緩和剤も調合を開始するよ」

バットマン「頼んだ。フラン、ここの守りは任せた」

フラン「まかせて!」フンス

バットマン「……」スタスタ



ヒュォォォォォォォォォオオオ……


裏口「」……キィ……



711 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:28:48.55 ID:iNQLdeY80


コツ、コツ……


バットマン(何かが起こったのは間違いない。ここにあるのは三人分の足跡だ。本を蹴飛ばし、垂れたインクを踏みながら『その現場』へと急いだらしい)コツ、コツ

バットマン(ここまで急ぐとなると、敵か)


ドクター『気を付けてくれ、ブルース。二階のサーヴァント反応がひとつ減った』

バットマン「……了解。慎重に行動する」コツ、コツ


ビュオォォォォォッ……


バットマン「……これは……」ピタッ


バットマン(凄まじい攻撃力でもって図書館の正面玄関が破壊されている。粉々の木片を踏みながら侵入者は入って来た……脳内で木片を元の位置に再構築。足跡を分析する……)

バットマン(……この足の形は、ベイン)ピクッ

バットマン(成程、ようやく事態が把握でき始めたぞ。図書館に居た三人は団結してベインを攻撃したんだ……しかし、我々が遭遇したベインには傷一つ付いていなかった。虚しい抵抗か)

バットマン(図書館には未だに二つのサーヴァント反応。つまり、ひとりを犠牲に残りが逃げた……さあ、犠牲になったのは誰だ?)


ビュォォォォォォオオッ……


帽子「」コロコロコロ……

バットマン「……」パシッ


バットマン(……マッドハッター)


712 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:29:29.65 ID:iNQLdeY80


???「……手を上げろ、黒猫男」

バットマン「……」


バットマン(しまった、後ろを取られた……)


???「手を上げろと言ったんだ、聞こえなかったか」

バットマン「……」スッ

???「聞き分けの良い奴だ。敵か味方か分からない状況ではこうするのが賢明でな」

バットマン「……我々は味方の可能性が高い」

???「さあ、どうだろうな……少なくとも、その帽子にすぐ目を付けた時点では怪しいものだが」

バットマン「……」


713 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:29:58.49 ID:iNQLdeY80



バットマン「マッドハッター。そうだな」

???「……なんだ、お前もあの狂人の知り合いか?」

バットマン「古い付き合いだ……嫌になるほどのな」

???「含みのある言い方だな。どうしてアイツの知り合いはマスクしか居ないんだ」


バットマン(マスク……という事は、やはり)

バットマン「……やはり、ベインも来たのか」

???「ますます怪しいな、お前は。何故そこまで知っている? 何故ここに来た? 何故黒猫のコスプレなんだ?」

バットマン「それは……」


ドゴォォォォォォォォォォォォ……


バットマン「……!!」バッ


714 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:30:29.87 ID:iNQLdeY80


???「ええい、今度は何の音だ!?」

バットマン「あれは……!」


バットマン(しまった、ジキル達が居る方角……!)ダッ


???「待て、動くな! 今の音は何だ!?」

バットマン「敵だ! 侵入を許した!」

???「敵だと!? お前達はどうなんだ!」

バットマン「敵ではない!」

???「その証拠は!」

バットマン「恐れている! 悪いが行くぞ!」ダダッ

???「待て!! ええい、待てと言っているだろう!!」ダッ


715 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:31:05.84 ID:iNQLdeY80



………………

ジキル「くっ!?」ガギィ‼

???「フッ」クルクルスタッ、ダダッ

フラン「!!!」ガッギャァァァァァァ‼

???「やああっ!」ガギャギャギャギャ、ズバァッ

フラン「ッ……」ドサァッ

???「解体するよ」スッ


バットラング「」ヒュォォォォォォォッ


???「っ!!」ガギャア‼


バットラング「」クルクル……カラン


バットマン「……間に合ったか!」ダッダッ


716 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:32:26.66 ID:iNQLdeY80



バットマン(幼い姿、両手に握ったナイフ……乾いた血が体に点々と散っている)


バットマン「何者だ」

???「……わたしたち?」

バットマン「……」ジリッ


バットマン(……私達、だと? 複数? 二人以上がこの場に襲ってきたのか?)


717 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:32:52.19 ID:iNQLdeY80


ジキル「来てくれて助かった……急にそこの少女が襲ってきたんだ、恐らくはサーヴァント」

バットマン「……一人でか?」

ジキル「ああ、恐らくは彼女が『ジャック・ザ・リッパー』だろう。まだ新聞が刊行されていた頃に、容姿を見たという者のスケッチが載っていた」

バットマン「……成程、了解した」


バットマン(……この位置は不味い。下手に動けばジャックがモードレッド、マシュを人質にとる)


ジャック「……」ジッ


718 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:33:20.18 ID:iNQLdeY80


ジャック「あなたなの?」

バットマン「……?」

ジャック「あなたが、わたしたちのお母さんになってくれるの?」

バットマン「……私は男だが。『お母さん』とは、何だ」

ジャック「ずっと探してた。どれだけお腹を開いても、どうしても見つからなかった」

バットマン「……探していた?」

ジャック「うん。だって、帰りたいもん」


719 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:33:55.15 ID:iNQLdeY80


ジャック「……あぁ、やっぱり、その目。私達のおかあさん。全部を諦めて、仕方がないって思ってる目」

バットマン「……私にも諦めていないものはある」

ジャック「じゃあ、諦めてねッ」ダンッ、ギュオッ‼

バットマン「ッ」ガギィィィィィィィッ、ゴロゴロッ


バットマン(良し、喰らい付いた)


バットマン「ジキル博士! マシュとモードレッドを安全な場所へ! フラン、ジャックを抑えるぞ!」ゴロゴロ、スクッ

ジキル「了解!」

フラン「ウァァァァァ!!」ババッ

ジャック「邪魔だよ!」ヒュンッ


720 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:34:33.65 ID:iNQLdeY80



ジキル「よい……しょっ!」グイッ

モードレッド「……クソ……俺の、価値……!」ブラァ……

ジキル「……大丈夫、助けるから」スタ、スタ


ハイド(((助けるだって? おいおい、よく言えるな)))


ジキル「……黙れ、違う……」スタ、スタ


ハイド(((何が違うんだよ、後ろじゃ戦いの音が響いてるぜ? 『あの薬』を飲めよ……そんで加勢しろ、それがベストだ。ベストを尽くさない人間が未来を語る資格はない。そうだろ?)))


ジキル「……僕には僕の役割があるんだ。黙って、従え……!」


ハイド(((ケッ……)))


721 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:35:02.32 ID:iNQLdeY80


バットマン「くっ……」ガギィ、ギャリギャリギャリ

ジャック「このまま……!」ギリギリギリ

フラン「させない!」ブォンッ

ジャック「!!」ババッ、スタッ

バットマン「……」


バットマン(やはり熟練したサーヴァント相手にはかすり傷一つ負わせるのも難しいか……ならば)スッ

バットマン(マッドハッターの帽子を使う)


722 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:35:41.84 ID:iNQLdeY80



バットマン「フラン、少しの間の時間稼ぎを頼む。ドクター、私の脳波の観測を」スチャッ

ドクター『え、え、え!? わ、分かった!!』

フラン「わかった!」ブォン、バチバチバチバチィッ

ジャック「っ、電気……」ジリッ

フラン「ここからは、通さない!!」ダン‼


バットマン(……肉体面で捉えられないなら、精神面から捕捉する……!)ギュゥゥゥゥゥォォォォォォ……


ドクター『ブルースくん、β波が危険域だ! ……え、安定した!? どういう事だ!?』

バットマン「まだ大丈夫だ、ドクター……!」ギュォォォォォォォォォォ……

ドクター『ど、どうなってるんだ!? 何だその帽子!?』


723 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:36:10.28 ID:iNQLdeY80



フラン「ハアッ!」ブォン‼

ジャック「っ」ババッ、タタッ

フラン「ウァァァァアアアアアアアア!!!」バチバチバチバチバチィ‼

ジャック「遅いよ」タタッ、ダダッ


フラン(当たらない……!?)


ジャック「そろそろ、終わらせるね」タンッ

フラン「!!」バッ

バットマン(っ、間に合わない……!)ギュォォォォォォォォォォ……


光弾「」ギュドドドドォッ‼

ジャック「!!」バッ


???「……フン、間に合ったようで何よりだ」シュゥゥゥゥゥゥ……


724 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:36:37.64 ID:iNQLdeY80


バットマン「お前は……あの時の、子供か」

???「子供ではない。アンデルセンと呼べ……全く、追いついてみればこれだ。図書館で大乱闘とは不届き千万、せめて本の無い場所でやれ!」

フラン「ウゥ……」

バットマン「……協力如何による」

アンデルセン「小生意気な男だ、お前は!」

バットマン「同意してもらえたようだな」


ジャック「……解体するひとが、増えただけだよ」カチャッ

アンデルセン「フン、少女の殺人鬼か。今度お前を題材に小説でも書いてやろう」

バットマン「構えろ。来るぞ」


725 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:37:15.31 ID:iNQLdeY80


ジャック「……」タタ、スゥッ

フラン「ウゥ……!」ダッ

バットマン「待て、追うな。奴の戦略だ」バッ


バットマン(真正面から掛かって来ず、障害物の陰に隠れ、気付かれない内に敵の命を掠め取る……生粋のアサシンだ。迂闊に誘い出されれば破滅する)


アンデルセン「どうする、見失ったぞ」

バットマン「…………アンデルセン、フラン。固まれ。あちら側の本棚を破壊し尽くせ。策がある」

アンデルセン「全く、本に対する冒涜だ!! ……商売敵の本ばかりだから喜んでやろう」ギュォォォッ、ドシュシュゥッ

フラン「ウ、ウゥ!」ブォンッ、バキャァ‼


本棚「「「」」」」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ドッシャァァァァァァァアン……‼


726 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:37:44.00 ID:iNQLdeY80


………………

ジャック(……あっちにわたしたちは居ないのに、本棚を倒してる……足音も聞こえなくなってこっちには好都合だけど)


ズグググググググググ……ドッシャァァァァァァン……


ジャック(自暴自棄、なのかな。ヤケになっちゃったんだね、かわいそう……すぐに片付けてあげなきゃ)タタ、タタタタ……



バットマン(当然そう考えるだろう。だが派手な動きに気を取られ、私を見失うようでは甘い)プシューッ、プシュー……カチャカチャ、ピンッ


727 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:38:11.17 ID:iNQLdeY80



ジャック(あの位置を取れば……)タタタッ……


ジャック「……?」ピタッ


ジャック(……これ、ワイヤー? 罠だ)ジッ


カタッ

ジャック「!!」バッ


バットマン「……」コソコソ


ジャック「……見つけた」ダンッ



728 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:39:38.73 ID:iNQLdeY80


バットマン「!!」ガギィィィィィィ、バッ


バットマン(誘導成功だ)


ジャック「ひとりだけ、逃げようとしてたの? わるいお母さんだね」クルクルッ、スタッ

バットマン「……さあ、どうだろうな」

ジャック「でも、解体して、かえるから」

バットマン「母は変えられない」

ジャック「かえれるよ。これからはずっと一緒だもん」


バットマン(……机の上に乗った。ジャックの精神捕捉にはまだ時間が掛かる。作戦通り)


729 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:40:10.94 ID:iNQLdeY80


バットマン「フッ!」シュババッ


バットラング「」ギュギュォォォォォォッ‼


ジャック「!!」ガギャッ

バットマン「フッ!」スタッ、ヒュンッ

ジャック「あたらないよ!」シュンッ、ヒュォッ

バットマン「くっ……」ギャリリリィ‼


バットマン(良し。高所レベルは同程度を確保。机の上は足場が制限される分、ジャックも迂闊に大幅な回避、攻撃はできない……ならば近距離戦闘、身体能力の差は技術と予測で誤魔化し互角の戦いに持ち込む!)



730 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:40:56.73 ID:iNQLdeY80


ジャック「っ!」ババッ

バットマン「シッ」シュババッ


バットラング「「「」」」ヒュオォォォォォォォオォォッ


ジャック「あたらないって言ってるよ!」バッ

バットマン「無論そうだろう!」ヒュンッ

ジャック「ふっ」パシッ

バットマン「……!!」グッ、グッ……

ジャック「……駄目だよ、お母さんは人間だもん。わたしたちには勝てないよ」ググググググ……

バットマン「……そうかもしれないな、ジャック・ザ・リッパー」

ジャック「……」

バットマン「だが、後ろに注意しておいた方が良いだろう。リバースバットラングは『帰って来る』」

ジャック「!?」バッ


バットラング「「「」」」グォンッ、ヒュォォォォォォォォオッ‼


731 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:41:32.20 ID:iNQLdeY80



ジャック「っくぅ!?」ガギギギギィ‼

バットマン「そこだ……!」シュポッガシッ、ギュチチィ‼

ジャック「ぐ……なにを!」

バットマン「フラン、今だ! 思い切り叩き込め!」


ダッダッダッダッダッダダンッ‼

フラン「ウゥゥゥゥゥゥァァァアアアアアアアァァァア!!」バチバチバチバチィッ、ドッゴォォォォォォォォ‼


732 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:41:59.85 ID:iNQLdeY80



モクモク……バチ、バチチ……


バットマン「……どうだ……」

フラン「……」バッ


バチ、バチバチチ……ジリッ


ジャック「……きか、ないよ……!」バチチチチチ……ググググググ……‼

フラン「……!」


733 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:42:27.39 ID:iNQLdeY80


バットマン(ならば)


バットマン「アンデルセン! 二階のサーヴァントを借りるぞ!」

アンデルセン「!? 待て、それは……!」

バットマン「最終手段だ! フラン、机の端を叩け! アンデルセン、私を撃て!」

フラン「!?」

アンデルセン「なにぃ!?」

バットマン「やれ! 策があると言っただろう!」

アンデルセン「つくづく狂った熱の男だ! どうなっても知らんぞ!」ギュギュギュオォォォッ‼

フラン「ウ、アアアアァァァァ!!!」ドッシャァァァァァァァァン‼



734 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:43:31.30 ID:iNQLdeY80


(ここだ)


 一瞬を捉える。ブルース・ウェインは投げ技の厳しい修行を思い出していた。血反吐を吐きながらも起き上がり、何度も投げられたあの修行だ。身体が覚えている。


 重心が全てだ。ジャックを腕に捉え、倒れ込む準備をした。フランのメイスが机の端を叩き、シーソーじみて逆の端を跳ね上げる。バットマンのマントが翻り、凄まじい勢いで重心が移動する。二者が空中へ放られる。

 光弾が肩に着弾。ブルースは衝撃を受け、まるで水の流れのようによどみなく回転した。ジャックを腕に捉えたままだ。ブルースは遠心力、重心、そして筋力の最高パフォーマンス点を計算した。

 その瞬間、バットマンは目を見開いた。そしてジャックの身体を僅かに引っ張り上げ、巴投げのように頭上へ、天井へと放った。


 三人の全力が乗算され、一瞬の回転の中から砲弾じみてジャックが弾き飛ばされた。天井を突き破り、少女は二階へと放り込まれた。数秒遅れ、コウモリの騎士も羽を広げ、急制動で二階へと突入した。


735 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:44:08.24 ID:iNQLdeY80



ジャック「ごほっ、ごほっ……」ガラガラ……

バットマン「……」バササササッ、スタッ

ジャック「……くっ」キッ

バットマン「……」


バットマン(……ジャックの精神捕捉にはまだ掛かるか。警戒が激しいと捕捉も遅れるらしい……)ジッ



736 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:44:38.57 ID:iNQLdeY80


???「……どなたかしら?」

バットマン「……お前が、第二のサーヴァントか」

???「第二の……? よく分からないけど、私にはナーサリーという名前があるのよ。それに、その帽子を何故貴方が被っているの?」

バットマン「深い理由がある、ナーサリー。だが今は力を貸して欲しい」

ナーサリー「……」チラッ


ジャック「……」ボロッ


ナーサリー「……いたいけな少女を敵に回して、そんな説得では無理よ」ジッ


バットマン(成程、アンデルセンが共闘を勧めなかった理由か)


737 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:45:35.68 ID:iNQLdeY80


バットマン「……私はマッドハッターの……友人だった」

ナーサリー「……嘘はそんな嫌そうに言ったら駄目よ、黒猫さん」

バットマン「嫌な思い出もある」

ナーサリー「……」

バットマン「……嫌な思い出だけだ。敵同士だったが、守るべきものは必ずしも相違していた訳ではない」

ナーサリー「今回は何を守っているの?」

バットマン「世界だ。手を貸してほしい」

ナーサリー「……わたし、子供だけど、大丈夫かしら?」

バットマン「世界の危機に立ち上がらせないというのは、いくら子供でも酷なものだ……」

ナーサリー「……ええ、勿論よ! 手を貸すわ、黒猫さん!」


738 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:46:05.58 ID:iNQLdeY80


ナーサリー「さあ、そういう理由よっ。名前を聞かせてちょうだい、そこのあなた」

ジャック「……ジャック・ザ・リッパー」

ナーサリー「まあ……大量殺人のあのジャックなのね」

ジャック「邪魔をするなら、解体するよ」カチャッ

ナーサリー「でも私だって負けないわ。ご存知かしら、お姫様だってスカートを上げれば走れるのよ」

ジャック「……? よく分からないけど、邪魔するんだね。なら、容赦しないよ」ジリッ


739 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:46:52.48 ID:iNQLdeY80


ナーサリー「……」ヒュオォォゥゥ……

ジャック「っ」ダンッ

ナーサリー「くるくるくるくる回るドア……」バッ、ギュォォォッ


光弾「」ギュドドドドッ


ジャック「あっ……!?」ギャリィ‼ ギャリィン‼

ナーサリー「行き着く先は、鍋の中!」パパパッ

パキィィィィィィ……

ジャック「つっ……!?」


ジャック(手が、凍った……!?)


740 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:47:30.70 ID:iNQLdeY80


バットマン(いいぞ、このまま……)


ジャック「っ、こんな程度!」バキャァァァァァ、ブンッ

ナーサリー「きゃっ……!?」ドサッ

ジャック「わたしたちは、かえらなきゃ駄目なの! 邪魔しないで!!」ダンッ

ナーサリー「……! 駄目よ、私にだって世界があるもの!」スクッ、ギュォォォッ

ジャック「じゃあわたしたちの世界は何処なの!? 消えるのが世界のためなの!? そんな世界なら、最初から……」ブォンッ


(((捉えた)))


ジャック「っ!?」ビクッ

ナーサリー「……?」


(((捉えた。捉えた)))


ジャック「……え? なに、これ」ジリッ

(((捉えた捉えた捉えた捉えた捉えた捉えた捉えた捉えた)))

ジャック「……なに。なんで」

(((捉えた捉えたお前の捉えた捉えた精神を捉えた捉えた見せてもらう捉えた捉えた捉えた)))


バットマン(捉えたぞ、ジャック・ザ・リッパー。精神に動揺をきたしたな……見逃すものか)


741 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:48:03.30 ID:iNQLdeY80



ジャック「……やだ。やだよ、何……なんで」ペタン

バットマン「このまま、精神の深層へ潜り込む……ドクター。10分経過しても私が戻って来なかった場合は、スーツの蓄電機構を解放し、電気ショックで呼び戻してくれ」ギュォォォォォォォォォォ……

ジャック「……う……」ドサッ

バットマン「……ナーサリー、見張りは頼んだぞ」ギュォォォォォォォォォォ……

ナーサリー「ど、どうなって……どうするつもりなの?」

バットマン「……」


バットマン(このまま戦意の元を取り除く。もしくは、精神を崩壊させる)ジッ


742 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:48:31.71 ID:iNQLdeY80


──────

『産めるワケがないでしょう、自分ひとりが食べていくのに精いっぱいで……』

『愛してる。愛してる。ごめんね、ごめんね……』

『大丈夫よ、愛してるのは貴方だけ』

『堕ろすわ』

『……許して、お願い……許して……』

『神様……』


バットマン(……)

マッドハッター『やあ、バットマン。お前なら必ず来ると思っていたぞ』

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