男「だから俺は、彼女の為にギターを始める」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:14:30.00 ID:FkZbUO0z0
(春だ。)

(春といえば出会いと別れの季節だ。……と言っても、卒業する人達の中に特別にお世話になった先輩は居ないし、中学生時代の仲の良い後輩が入学してくるわけでもない。)

(そんなに人付き合いが得意でも無いので上下にいる学校の知り合いなんて、多分片手の指で数えられるぐらいだ。ということで、俺には出会いと別れは無い。)

(……自分の境遇に呆れて図書室の窓から外を見てみれば、桜吹雪と言わんばかりに桜の花びらが風に乗って散っている。)

(校庭では運動部が春の日差しを眩しそうにしながら、汗を流している。)

(俺もちょっとばかし運動神経が良ければあの風景に混ざる事ができただろうか。いや、できないか。)

(多分、運動部にいる人達って運動神経があるとかそういう事じゃなくて、そのスポーツが好きだからやっている訳であって。)

(昔、友達に誘われて行ったサッカーのクラブチームの体験会に行った時。あまり上手にできなかった俺はもうそこでそれを諦めた訳であって。)

(きっとそういう事だ。好きだから上手くなれるとかそういう事なんだろう。俺は、好きになれなかっただけ。)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1518293669
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:15:06.42 ID:FkZbUO0z0
(周りを見渡してみても、読書に勤しむ人々がほとんどだ。きっと本を読むことが好きだから、ここで本を読んでいる。)

(かくいう俺は一応受験生になったという事もあって、一応勉強しているつもりだ。自習室ってのもあるけど、一応勉強しているという俺のスタンスからしてその一応では無く、ガチの勉強をしている自習室の雰囲気には萎えそうだ。)

(……まあ、勉強に行き詰まってちょっと色々と考え事をしてしまったけども、自分の事を考えていると虚しい気持ちになってくる。)

(特徴が無いんだよなあ。成り行きで入った部活でも目立っている訳でもないので後輩とかにもあまり存在を知られてないだろうし、クラスでも目立つ奴が近くにいるせいで俺の存在は霞んで見えてるだろうし。)

(欲がないわけじゃない。誰かみたいに周りにチヤホヤされたい願望はあるけれど、なんとなくめんどくさくなって色々と諦めてしまう。または、中途半端で終わらせる。)

(何の取り柄もない、普通の男子高校生、宇佐美信吾。3年生。)

(春。)

(大きな変化の無い高校生活も後1年を切った。)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:15:52.18 ID:FkZbUO0z0
「宇佐美せんぱい……?」

男「……?」

後輩「私の事忘れてますー? 軽音の後輩の三浦ですよー」

男「あー……。あっ、ボーカルとギターやってる?」

後輩「そうですっ……でも、その言い方だとようやく思い出した感じですよね?」

男「俺、自分の練習で精一杯であんまり人の演奏とか聞く余裕ないから」

後輩「あー臣先輩のバンドですもんねー」

男「そうそう……。で、何か用?」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:16:19.59 ID:FkZbUO0z0
後輩「いや、見知った人を見かけたので話しかけてみただけです」

男「あっそう。……じゃあ、俺は勉強に戻るから」

後輩「はいっ。勉強、がんばってくださいね?」

男(ふぅ……。)

男(さて、ちょうどいい息抜きも出来たことだし勉強に戻るとするか。)

男(……ところでさっき、あまり話した事の無い部活の後輩らしき人物に話しかけられたわけであるが。)

男(それも中々……というか、かなりキラキラしてる奴に。)

男(まーアレだ。きっとまた龍臣に近づこうとしている女子の1人だろう。これまでに何度もそういう似たことがあったし。)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:16:58.23 ID:FkZbUO0z0

男「……っ」


男(その時、ポケットに入っているスマホが何かを知らせるために震える。変な事に集中していたせいで、ビックリして体を硬直させてしまう。)

男「……龍臣からか」

男(スマホのディスプレイを見てみれば、友人の井上龍臣からのメッセージが表示されている。)

友『練習、来いよ』

男「……はぁ」

男『勉強するから、今日はパス』

男(練習に行かない旨を龍臣に伝えて、スマホにロックをかける。)



男(春一番とはもう呼べない春の強い風が桜の木々に張り付いていた花びら達を散らせていた。)
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:17:32.63 ID:FkZbUO0z0

男「……」


友「信吾!」

男(普通の男子高生とはかけ離れた、特上の容姿を持った友人の井上龍臣が俺の名前を呼びながらこちらへ向かってくる)

男「龍臣……。どうした?」

友「どうしたじゃねえよ! お前春休みから全然練習来ないじゃねえか!」

男「……それはもう言ったじゃん。もう受験生だし、勉強しなきゃいけないって」

友「でもお前がやめたら俺達のバンドは……」

男「俺の下手くそなギターよりも数倍上手い奴入れただろ。俺のいる時に」

友「あ、あれは……」

男「あの娘がいれば龍臣の目指すところまでいけるんじゃないんか。俺は元々ギターが居ないからって強制的に初めさせられたクチだし」

友「そうだけどよお……。楽しくなかったのかよ、俺とのバンドは!」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:18:00.71 ID:FkZbUO0z0

男「楽しかったよ。一生懸命練習してステージで演奏するの、すごい興奮したし、今まで出来ない経験が出来た事には感謝してる」

男「けど、俺はもういいよ。実力もそんなに無いし、これからは龍臣の要求についていけないと思う」

友「そんな事無いって! 今までだって信吾は乗り越えてきただろ!」

男「だから、受験に向けて勉強しなきゃいけないから、練習する時間も取れなくなる」

男「……もう周りのみんなに追いつくなんてもう無理だ」

友「なんだよっ……! 何だよソレ!!」

友「小学生の頃から部活とか、今まで一緒に何かをしたことなんて無くて、初めて……一緒に一つのことをできたと思ったのに……!」

男「……ごめん」

友「……帰る」

男「…………ごめん」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:18:32.96 ID:FkZbUO0z0

男「……」


男(……スマホでも見るか)


『新着のメッセージはありません』


男「……」

「せんぱーい」

男「……お前は」

後輩「三浦です。軽音部の三浦」

後輩「……今日も勉強ですか?」

男「……そう」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:19:11.93 ID:FkZbUO0z0

後輩「その割には全然ノートとか開いてませんけど」

男「……今から始めようとしてた所だから」

後輩「……そろそろ下校の時間ですけど?」

男「……今から新しい教科を始めようとしてた所なんだ。もうそんな時間だったのか」

後輩「……へ、へえ……」

男「……ところで、君みたいな子が俺なんかに何の用? それとも龍臣ついて何か聞きたいの?」

後輩「んー、先輩にこれといった用は無いですし、臣先輩に聞きたいこともないですよ」

男「……嘘はよせ。龍臣が好きな子でしょ。別にそういうのあまり気にしないからいいよ。慣れてるし」

後輩「あははーそんなわけないじゃないですか―」

男「だったらお前が俺に声をかける理由が無い。何が目的? 残念だけど金は全然持ってないよ」

後輩「それも違いますってー!」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:19:39.82 ID:FkZbUO0z0

男「じゃあ何だ? 罰ゲームか何か? じゃないと君みたいな可愛い子が俺に話しかける理由が無いって……」

後輩「えっ、今私のこと可愛いって言いました?」

男「っ……言ったけど……」

後輩「どこらへんが!? 具体的には!?」 

男「は、はぁ……? え、いや……全体的に?」

後輩「やっぱり先輩も私の魅力に染まってしまいましたか……」ポッ

男「いや、染まってねーし……」

後輩「またまた〜」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:20:07.78 ID:FkZbUO0z0

男「……それで、本当に何なの」

後輩「それは……」

男「それは?」

後輩「……」ニコ


後輩「……帰りながら話しませんか?」

男「……は?」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:20:34.22 ID:FkZbUO0z0

後輩「へー先輩の家もこっちの方だったんですかー」

男「龍臣の家も近くだけど」

後輩「だから……臣先輩は関係ないですって」

男「臣先輩なんて変わった呼び方してるのも、俺の知ってる中じゃ君だけだと思うけど」

後輩「それはなんというか……気分で?」

男「はぁ……。よく分からないな、お前の言ってることは」

後輩「まあ、そんなことはどうでもいいじゃないですかぁ」

男「……そろそろ聞かせてもらおうか。お前の用事について」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:21:07.13 ID:FkZbUO0z0

後輩「……ギターやめちゃったんですか?」

男「……別に」

後輩「バンドも、やめたんですか」

男「……お前には関係ないだろ」

後輩「答えて」

男「っ……!」

後輩「答えて、ください」

男「……」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:21:33.88 ID:FkZbUO0z0

男「……やめた、けど」

後輩「……どうしてですか」 

男「受験勉強で忙しくなるから」

後輩「そう、ですか」

男「……わざわざ、そんなくだらない事聞きに来たの?」

後輩「……くだらない事なんかじゃ……」ボソッ

男「……ん? 今なにか――」

後輩「私、家こっちなんで」

男「え、あ、ああ……」

後輩「じゃあ先輩、また明日!」

男「またあした……」



男「……また明日?」


15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:22:09.02 ID:FkZbUO0z0


後輩「へー今日は日本史ですかー私結構苦手なんですよねー」

男「……勉強してるから、帰れ」

後輩「まーまーいいじゃないですかー」

男「よくねーよ……」

後輩「……」ニコニコ

男「……はぁー……お前、練習は」

後輩「最近は活動も落ち着いてきたんで今日はおやすみですっ」

男「そう言って余裕こいてると、すぐに他の人に追い越されるぞ」

後輩「大丈夫です。うちのバンドは2年で一番上手いんで」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:23:02.51 ID:FkZbUO0z0

男「そんなのお前らが決めることじゃ……」

後輩「臣先輩も、卒業していった先輩も、全員そう言ってますもん」

男「だからって、上手いとは……」

後輩「自信、ありますから」

男「……」

男「……あんまりはしゃぐな。ここ図書室だぞ」

後輩「えへへ……すみません」

男「……それで今日は何しに来たの。そっちの要件は昨日で終わったと思うけど」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:23:29.19 ID:FkZbUO0z0

後輩「……まだ、終わってないです」

男「いや、聞きたいことは聞いたんじゃないの」

後輩「まだ、終わってないです」

男「……俺が答えれる事はもうないけど? それともやっぱり龍臣絡みの」

後輩「先輩」

男「話……って何」

後輩「もう下校時刻だし、帰りながらそれも含めて話しませんか?」


18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:23:57.51 ID:FkZbUO0z0

後輩「先輩は私のバンドの演奏聞いたこと無いんですか?」

男「前にも言っただろ。自分の事で精一杯で他の人の演奏を聞いてる余裕ないって」

後輩「一年の時の文化祭でも凄い話題になったのにー?」

男「知らない」

後輩「巷のライブハウスでも噂になってるのにー?」

男「そもそも周りにそんな興味がない」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:24:44.50 ID:FkZbUO0z0
後輩「むー……。なら……」

後輩「すぅー……」

男「……?」

後輩「はぁー……すぅー………っ」


男(立ち止まって大きく息を吸った三浦は次の瞬間、歌を歌い始めた)


後輩「――――」


男(後輩の声は耳にすっと入ってくるような濁り味の一切ない澄んだ声で)

男「…………」


男(なのに、体の芯から興奮してくるような情熱さを持っていて……)


後輩「――――」

男「…………っ」


男(三浦は、本物の上手さを持っていた。)
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:25:36.17 ID:FkZbUO0z0
後輩「……ふぅ。どうでしたか?」

男「……すごく、上手いな」

後輩「えへへ……ありがとうございます」

男「……」

後輩「今の歌、私が歌詞作ったんです」

男「……そうなんだ」

後輩「まだ曲は作ってないんですけどね……。初めてですよ、人前で歌ったの」

男「……そう、なんだ」

後輩「……もうちょっと反応してくれてもいいじゃないですかー。私の初めて、ですよ?」

男「……その言い方は語弊を産むからやめろ」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:26:26.58 ID:FkZbUO0z0

後輩「だったら、もうちょっと喜ぶとかしたら……」

男「……上手いな」

後輩「……え?」

男「三浦ってマジで上手いよ……だから、羨ましい」

男「本当に、羨ましい」

後輩「……」

男「……龍臣もすげー歌上手いし、ほんと羨ましいよ」

後輩「……先輩」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:26:59.26 ID:FkZbUO0z0

男「……歌聞かせてもらった礼とは言わないけど、龍臣の連絡先ぐらいなら俺が言っておくから今あげても――」


後輩「ギターやめないでください」

男「だから勉強が……」

後輩「バンド、続けてください」

男「〜〜〜〜っ!」

男「……俺が抜けてバンドの雰囲気でも悪くなってるのか? それは心配しなくていいぞ、龍臣はそういうの昔から全部1人で――


後輩「先輩のギターが好きだから」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:27:30.34 ID:FkZbUO0z0

男「……は」

後輩「先輩が、臣先輩と一緒に演奏してる姿が好きなんです」

男「……ちょっ、お前今何を……」

後輩「……って、私今変な事言っちゃいましたね……。昔から歌うと少し感情的になっちゃって……MCとかもたまに変なこと言っちゃったり……」

男「……」

後輩「……先輩?」

男「……冗談はやめてくれよ」

男「俺のヘタクソなギターが好きな人、いるわけないじゃん」

男「からかうのは、やめてくれ」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:27:58.79 ID:FkZbUO0z0

後輩「ち、違――」

男「そういうので付き纏うなら、迷惑だからもうしないでくれ」

後輩「ち、違う……本当に……」

男「……俺の家こっちの道の方が近いし、それじゃあ」




後輩「……本当に好きなのに」 
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:28:39.05 ID:FkZbUO0z0

友「……」

男「……」

友「……っ!」

友「久しぶりにメッセージ来たと思ったら……」

男「……」

友「なんだよ……! これ……!」


『漫画の続き、貸して』


友「お前勉強してんじゃねえのかよ! あとこれの次に来たヤツも……!」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:29:10.84 ID:FkZbUO0z0

『あとついでに、三浦って2年の軽音の後輩について教えて』


男「……っ」

友「てっきり、バンドに戻ってきてくれるってメッセージだと思ってたのに!」

友「それに、なんだよ三浦って……! 今頃になって女子に興味出てきたのか!? 勉強するからバンド抜けた癖に女はいいってか!」

男「……ちげえよ」

友「じゃあなんでこんなメッセージ寄越した!」

男「……好きだって言われたんだよ」

友「……は?」

男「俺のギター、好きだって言われた」

友「はああああ!!??」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:29:46.67 ID:FkZbUO0z0

友「あの天才が信吾のギターを……?」

男「天才って……あいつ、そんなに凄いやつなのか」

友「お前……知らないのか?」

男「……俺、自分の練習で精一杯だったし」

友「他のバンドの曲ぐらい聞いたことあるだろう?」

男「別に……他のバンドとか興味なかったし……」

友「……ったく、お前は」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:30:17.10 ID:FkZbUO0z0

友「間違いなく部の中でダントツに上手いよ……俺と同じぐらい」

友「それに、親が有名なギタリストで小さい頃から英才教育受けてたとかで歌もギターも抜群に上手いんだよ」

友「でもってあのルックスだろ? ほんっと完璧だぜアイツ……」

男「……そんな奴が、俺のギターをね」

友「ほんっと、不思議だよなあ……。でも、三浦がお前のギターを好きだって言うんだったら……」

友「お前のギターは下手くそなんかじゃないって。だから、バンドに戻ってこいよ」

男「……ごめん、それは――」


「――井上先輩?」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:31:05.47 ID:FkZbUO0z0

友「あ、島崎……」

女「こんな所でサボってないで練習に……って」

男「……」

女「……宇佐美先輩」

男「ほら、練習いけよ龍臣」

友「いや、待てよ信吾。まだ話は終わって――」

男「終わったよ。俺はもうバンドには戻らない」

女「……っ」

友「……信吾、お前っ」

男「……」

友「クソっ……!」タッタッタッ
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:31:34.06 ID:FkZbUO0z0

女「ちょっと、井上先輩っ……!」

男「早く追いかけた方がいいよ。龍臣、あの調子だとまた練習しないでどっか行くぞ」

女「……ごめんなさい」

男「早く、行きなよ」

女「……私のせいでっ」

男「行ってくれ、頼むから」

女「……っ」タッタッタッ



男「……嫌なやつだなあ、俺」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:32:02.20 ID:FkZbUO0z0

後輩「なんで昨日は勉強してなかったんですか!」

男「……」

後輩「練習終わってからずっと図書室で待ってたのに〜!」

男「……お前、ここ図書室」

後輩「そういうの関係無い!」

男「……見られてる」

後輩「……え」

「……」「……」「……」

後輩「あ」
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