ロールシャッハ「嵐を呼ぶ、救いのヒーローたち」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 20:57:15.81 ID:Jw6MsEa80


長らく未完のままでしたが、急に完結したので投下いたします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1518695835
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 20:58:15.15 ID:Jw6MsEa80
http://elephant.2chblog.jp/archives/52038587.html
http://elephant.2chblog.jp/archives/52049807.html

これらの続きになります。

ロールシャッハが南極で分解され再構成されたのち
ハンターになり念を修得しカスカベに向かうというすちゃらかな内容です。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:12:36.66 ID:Jw6MsEa80

以下は注意事項となります。

前二作はハンター×ハンターとウォッチメン(ロールシャッハ)のクロスでしたが、
今回はクレしん(主に劇場版)とウォッチメンとのクロスとなります。

H×Hは大きな背景となっていますが、本編はほとんど関係のない話です。

今回はH×Hを知らない方でもなんとなくわかる作りになっていますが、
劇場版のクレしんを知らない方にはまるでわからないものとなっています。

また、独自解釈などが含まれています。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:21:36.23 ID:Jw6MsEa80

前回から4年(!)以上も経ちました。
覚えていてくださる方がいらっしゃればありがたいです。

ちなみにこの間に何をしていたかというと、
こういったものをこしらえておりました。

https://imgur.com/1fZGGQ8
https://imgur.com/mrnsOAo
https://imgur.com/lDZv8ey
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:25:39.53 ID:Jw6MsEa80





日誌 ロールシャッハ記

2000年 6月18日

俺が祖国と離別してから、一年半ほどが経つ。

ヨークシンの治安は、俺が来たころと比べると良好になったと言える。
組織犯罪は壊滅しつつあり、警察どもとマフィアの癒着も
断ち切れたと言って差し支えない。

もう俺があそこにとどまる必要はない。
俺のせねばならないことは、まだ無数にある。

東ゴルトー共和国を拠点として、キメラアントという危険生物が増殖している。

俺も二度ほど、その末端と交戦した。
雑兵ですら充分に人間を凌駕している。

人間以外の手による、こうした脅威を目にするのは初めてだ。

奴らを悪と見なすべきかどうか、俺にはわからない。
蟻どもは蟻どもで、腹を満たしているだけなのかも知れない。

ただし、これだけははっきりと言える。

どのような状況においても、喰われる者は最大限の抵抗と逆襲をする。
たとえその結果、ともに息絶えることになろうと。

協会を通じて、この事態の収束に小型の核が使われかねないとの情報が入った。

この情報はあくまで推測の域を出ない。

ただし懸念事項としては、その爆発の規模によっては、
東ゴルトー側の報復装置が作動するとのことだ。

これは推測ではない。事実だ。


――ひとつ、俺の推測として確かなことがある。

核は間違いなく落とされるということだ。

Dr.マンハッタン。
奴は以前、この世界の予知に妨げが起きていると俺に語った。
干渉波だ。それはおそらく、核爆発による電磁パルスであり……
そしてそれを止めることは、奴には不可能だと。

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:28:11.11 ID:Jw6MsEa80
虫どもにわかるはずもない。
この争いの果てにあるのは、放射能に汚染された大地でしかないのだ。

だが希望はある。少なくとも、屍だけの未来を回避できる希望が。

報復装置は停止させられる。外部からの操作によって。

それに不可欠となる、コンピュータ・ウィルスというものがあるという。
ジャポンという島国にだ。

精密機械が風邪を引く――まるでジョークのようだ。
それがどんなものか、俺には想像もつかない。


不確かな情報だ。
鉄の義足で糸の橋を渡るかのような希望だ。
だが、誰かがやらねばならない。
そして、それをすべきは誰かなどではない。


今置かれたこの状況は、あのときの米ソと変わらない。

Dr.マンハッタンはここを無限の地球のひとつだと言ったが、
どの世界においても最終的に直面する問題というのはどこも大差ないらしい。

人々の死と、それによってもたらされる終末。

終わりなど何物にもない。
Dr.マンハッタンは、きっとそう言うだろう。


そうとも。
終わることなどない。
俺たちが抗う限り、よりよき世界は必ず来る。

たとえ俺たちの時代では無理だとしても、次の世代にはきっと。


.┓┏.
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:34:14.12 ID:Jw6MsEa80



ロールシャッハ「Dr.オオブクロ……」

       「記録にある最後の在住地は……カスカベシティ」

ロールシャッハ「KAS……カスカベ。ここか」

ロールシャッハ(やはりサムライの国とよく似ている……もっとも、詳しくはない)

       (あの国はまぎれもなく被爆国であったが)

       (ここは実に平和そうだ。指を折ってもよさそうな奴が見当たらん)

       (地道に聞くより他なさそうだな)

       (携帯電話に翻訳機能があると聞いたが……)


ロールシャッハ(……これだ、間違いない。ケーブルを繋いで口元に……
        マイクロフォンのように使えばいいのか……)

ロールシャッハ「道をたずねたいのだが」

通行人に声をかけるロールシャッハ。

「え、なにこの人、コスプレ?」
「キャーッ、不審者!」

ロールシャッハ「……」

ロールシャッハ(ダメだ。どいつもこいつも話にならん)

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:35:38.86 ID:Jw6MsEa80

警官「あのー、ちょっと職務質問、いいですかあ?」

ロールシャッハ「警察か……」

ロールシャッハ「HUNH.」

警官「とりあえずそのマスク取ってもらっていいですか」

ロールシャッハ「断る」

警官「いや、あのね。こっちは取ってもらいたいんですよ!」

ロールシャッハ「だから断ると言っている」

警官「困ったなあ……」

警官「なにか、身分証は?」

ロールシャッハ「これで充分か」スッ

警官「ん……ハンターライセンス!?」

警官(すげえ! ホンモノ! 初めて見た!)

警官「は、はい、確認できましたのでお返しします。でも、ちょっと、そのマスクは……」

ロールシャッハ「活動に欠かせないものだ」

警官「ええと、あの、どういったお仕事で?」

ロールシャッハ「お前が知る必要はない」

ロールシャッハ「仕事の邪魔だ、俺はもう行く」

警官「あ、その、失礼しました!」

ロールシャッハ(警察は好きじゃない)

       (奴らは法の味方だ。弱者の味方ではない)

ロールシャッハ(だがいないよりはマシか。事実、この街は平和そうだ……)


9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:36:49.09 ID:Jw6MsEa80
ロールシャッハ「HUNH.」

ロールシャッハ(さて……)

        (とりあえず記録上の、最後の所在地に向かおう)

        (なにか手がかりがあるかも知れん)


ロールシャッハ(HUR……?……見知った顔がある……あいつは……)

ハンゾー「おいおいおいおいおい! ロールシャッハじゃねえか!
     なんでこんなとこにいんだよ! クッソ奇遇じゃねえか!」

ロールシャッハ(……)

ロールシャッハ(ニンジャだ……)

ハンゾー「いやほんとなにしてんの? バカンス? なんだってこんなとこに、観光名所なら他にいくらでも」

ロールシャッハ「観光ではない。Dr.オオブクロという男を探している」

ハンゾー「大袋ォ? 知らねえなあ」

ハンゾー「そーそー、前にお前に話したサムライっつうのがどうもここいらにいたらしくてなー」

ロールシャッハ(この饒舌ぶりも変わっていない)

ロールシャッハ「お前はなにをしてるんだ、そんなジャージ姿で。あのニンジャ装束はどうした?」

ハンゾー「ああ、これか? 忍者ってえのは忍ぶ者だからな。
     この街であれじゃ、目立ってしょーがねーのよ。
     今地元警察と協力してモルヒーネ・ファミリーって連中の残党を追っかけてんだが」

ロールシャッハ(モルヒーネ・ファミリー……ふざけた名前だ)

ロールシャッハ(俺が関わる必要はない。このニンジャなら苦労はしないだろう)

ロールシャッハ(だが、捜査情報をこうもベラベラしゃべるあたり、
        こいつにそうした仕事は向かないのではないか……?)

ハンゾー「――ってなわけでよ。大変なんだこれが」

ハンゾー「あとお前な、この国は相当治安のいい方だから、
     下手に怪我させたり死なせたりしたらまずやばいぜ。
     大事な仕事だってんなら、なおさらやめとけ」

ロールシャッハ「HURM.」

ハンゾー「俺もここにいんのはあと数日だけどよ、大袋だっけ?
     なんかわかったら連絡するわ!」

10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:38:56.77 ID:Jw6MsEa80


ロールシャッハ(ああはいうものの、あんな奴の情報を待ってはいられない)

       (以前のようにネット上で賞金をかけるという手もあるが……
        いやダメだ、あのとき俺は任せっきりで、そのやり方を知らない)

       (通行人はどいつもこいつも俺を避ける)

       (……子供か。情報の入手は望み薄だが、話は聞いてもらえるだろう)


ロールシャッハ(ちょうどそこに、坊主頭の子供がいる……)


ロールシャッハ「そこの坊や」

マサオ「え、僕?」

ロールシャッハ「そうだ」

マサオ(なんだろこの人……なんかこわい……)

ロールシャッハ「このあたりにいた、オオブクロという男を探している。
        科学者か発明家かその辺のなにかだ。なんでもいい。なにか知っていれば……」

マサオ「大袋……大袋博士?……」

マサオ「あ!」

ロールシャッハ「どうした」

マサオ「う、ううん、知らない知らない、なんにも知らない!」

ロールシャッハ「……嘘をつくな」

マサオ「知りません知りません、わああっ」ダッ


ロールシャッハ(……行ってしまった)


ロールシャッハ(だがあの子供はなにか知っている……とんでもない幸運だ)



       (あとをつけよう)

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:40:01.20 ID:Jw6MsEa80

カスカベ市内 公園

風間「それじゃ、今日のかすかべ防衛隊の活動は……」

ネネ「リアルおままごと!」

風間「ネネちゃん、それじゃ防衛にならないよ……」

ネネ「あら? 家庭の平和を守るのも立派な務めじゃなくって?」

しんのすけ「じゃあオラ、がんばっておうちの防衛するゾ!」

ボー「……自宅警備員」

風間「だからそんなんじゃなくってさ!」
  「……あれ、マサオくんどうしたの? 震えてるけど」

しんのすけ「ウンチなら我慢しない方がいいよ」

風間「黙ってろよ!」

マサオ「……さっき、変な人見たんだ」

   「帽子とコートと、白黒のマスクつけてて」

しんのすけ「ふーむ、それはなかなか危ういですなあ」

風間「怪しい、だろ」

ネネ「その人とお話したの?」

マサオ「うん、大袋博士について知らないか、って」

しんのすけ「玉袋博士? なんだかヒワイなお名前だゾ」

風間「おおぶくろ!」

ネネ「大袋博士って……」

ボー「香港に行ったときの、あのおじいさん」

マサオ「なんだかわかんないけど……あの人、きっと悪い人だよ!」

ネネ「じゃあ、今日はその人を探して正体を突き止める、ってのはどう?」

風間「危ないよネネちゃん! そういうことは大人の人に」


しんのすけ「風間くん!」

風間「っ! な、なんだよ」

しんのすけ「オシッコ行ってくる」

風間「……黙って行けよ」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:42:32.50 ID:Jw6MsEa80

公園 トイレ

しんのすけ「なんだか今日はいつもと違うにおいがいたしますなあ」

しんのすけ「芳香剤変えた?」

しんのすけ「ふーんふふーん」ジョロロ

しんのすけ「お?」

ロールシャッハ「…………」

ロールシャッハ「あの坊主頭の子供と知り合いらしいな」

しんのすけ「マサオくんのこと? まあそんなに深い仲じゃないけど」

しんのすけ「オラ野原しんのすけ。あんただれ」

ロールシャッハ「名乗る義務はない」

しんのすけ「挨拶できない人はろくな大人じゃないってかーちゃん言ってたゾ」

ロールシャッハ「HURM.」

ロールシャッハ「……ロールシャッハ。充分か」

しんのすけ「ろーる……?」

13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:44:36.98 ID:Jw6MsEa80

公園

風間「じゃあその人を見つけ次第、交番へ行ってお巡りさんに通報しよう!」

マサオ「僕もそれがいいと思う……」

ネネ「でもそんな人、ほんとにいたらもう捕まってるんじゃないの?」

ボー「うん。覆面してると、普通、怪しまれる」

しんのすけ「おまたせおまたせー」

風間「おしっこにどんだけ時間かけてんだよ……ん? その後ろの人は?」

ロールシャッハ「……」

マサオ「あ……あ!」

風間「え、もしかしてこの人!?」

しんのすけ「この人、マサオくんに用があるんだってー」

しんのすけ「ほらマサオくん、ちゃんとご挨拶しないと」グイ

マサオ「ちょっとしんちゃんやめてよ!」

ロールシャッハ「Dr.オオブクロについて知っているな。話を聞かせてもらおう」

ネネ「ちょっとあんた! いきなり出てきて子供相手になにしようって言うの!?」

ロールシャッハ「……」ジロ

ネネ「ひっ……!」

ロールシャッハ「……用があるのはこいつだけだ。お前らにはない」

ロールシャッハ「危害は加えない。安心しろ」

しんのすけ「このおじさんもそうおっしゃってますし、オラたちは大人しく帰りましょうか。
      二人の時間を邪魔しちゃ悪いしィー」

マサオ「待ってよ一人にしないでよ!」

風間「待ってください、確かに大袋博士とは以前会いましたけど、
   でもそれっきりだし、住所もなにも知らないんです!」

ロールシャッハ「……本当か」

しんのすけ「本当!?」

風間「なんでお前が聞くんだよ!」

ロールシャッハ(…………)

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:46:35.22 ID:Jw6MsEa80
ロールシャッハ(詳しい話を求めたところ、この子供たちは過去に
       “ブタのヒヅメ”という反社会的組織に拉致されたことがあるという)

ロールシャッハ(Dr.オオブクロもその組織に捕えられていた。
        俺の求めるコンピュータ・ウィルスをそこで製造していたと)

ロールシャッハ(ただしその組織は、今はもう壊滅している)

       (コンピュータ・ウィルスは消失し、その後のDr.オオブクロの行方もわからない)

       (子供たちは帰った。面倒になるので交番には行かぬよう言っておいた)


       (帰らなかったのはこいつだけだ。確か……)

       (……シンノスケといったか)

15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:47:43.07 ID:Jw6MsEa80

市内 河原のどこか


しんのすけとロールシャッハ、土手を歩いている。


しんのすけ「おじさん、そのお面なに?」

ロールシャッハ「お面ではない。俺の顔だ」

しんのすけ「いい歳してヒーローごっこ?」

ロールシャッハ「ごっこではない」

しんのすけ「じゃあホンモノのヒーロー? 全然そうは見えないけど」

しんのすけ「誰と闘うの? メケメケ団? 秘密結社ミッドナイト?」

ロールシャッハ「答える義務はない」

しんのすけ「ははーん。きぎょうひみつというヤツですな」

ロールシャッハ「……ませたガキだな」

しんのすけ「いやあ、それほどでも」

ロールシャッハ「誉めてなどいない」

ロールシャッハ(見渡す限り、カスカベは平和だ。
        俺がここにいる意味が微塵も感じられない)

ロールシャッハ(平和だ。こちらの気が狂いそうなほどに)


「やだ、誘拐?」ヒソヒソ
「変質者じゃねえの」ヒソヒソ
「警察呼んどく?」ヒソヒソ
「関わらないようにしよ」ヒソヒソ

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:49:00.72 ID:Jw6MsEa80

しんのすけ「なんか道行く人がウワサしてるゾ」

しんのすけ「おじさん、誘拐犯?」

ロールシャッハ「勝手についてきたのはお前だ」

しんのすけ「おお、そうだった」

ロールシャッハ「……なぜ俺についてくる?」

しんのすけ「んー、なんとなく」

ロールシャッハ「…………」

しんのすけ「おじさん、足短いね」

ロールシャッハ「それがどうした」

しんのすけ、ロールシャッハの前へ回る。
立ち止まるロールシャッハ。


コンコン
しんのすけ「ほほーう。誰にも気づかれず背が高くなる魔法のおクツですな」

ロールシャッハ「…………」

しんのすけ「……図星?」

ロールシャッハ「そうだ」

しんのすけ「んもーう、相変わらず無愛想なんだからあん」

ロールシャッハ「お前に愛想を使う義理などない」

しんのすけ「……やりにくいゾこのおじさん」

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:49:58.97 ID:Jw6MsEa80

ロールシャッハ「……なんだ、あのガキどもは。喧嘩か?」

土手を見下ろすロールシャッハ。
目にも明らかな不良たちが乱闘している。
そしてその横に隠れている、埼玉紅さそり隊。

しんのすけ「お? 師匠!」

ロールシャッハ(マスターだと?……この子供はすでに不良の道を進もうとしているのか?)

しんのすけ「おーい! ししょー!」

竜子「げ! ジャガイモ小僧!」

しんのすけ「ねえねえ、これなんのオーディション?」

竜子「オーディションじゃねえ! 引っこんでろ!」

ロールシャッハ「ではなんだ?」

竜子「そりゃ見てのとおりカスカベの覇権をかけて……」

竜子「って誰だよオメーは!?」

お銀「え、ホントに誰こいつ?」

マリー「カスカベにこんな奴いたっけ?」

しんのすけ「で、どうすんの?」

しんのすけ「はけん、っての取りに行かなくていいの?」

竜子「いや、それはだな……」

しんのすけ「あ、そうか。最後に残った人に勝てばいいんだね」

竜子「ば、バカ、あたいらがそんな戦法使うかよ!」

お銀「でもちょっとその気だったでしょ」

マリー「そうでもしないとウチらが勝てるわけないもんねえ」

ロールシャッハ「…………」

ロールシャッハ、乱闘の中に飛び込んでいく。

竜子「なんなんだあいつ?」

しんのすけ「んーとねー、ロールスロイスのおじさん」

しんのすけ「あれ? ロールキャベツ? 蠟職人だったかな?」

竜子・お銀・マリー「???」

「なんだこいつ、急に割り込んできて、ぐふっ!」
「つええ! まずい、退け、退け!」

18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:51:28.40 ID:Jw6MsEa80

数分後、ロールシャッハとしんのすけ、
紅さそり隊を残して、他のグループは逃げ去った。



ロールシャッハ(加減はしておいた)

ロールシャッハ(この程度じゃ更生も望めないが)

ロールシャッハ(だがノット・トップスのサムライどもと比べるとかわいいものだ)

お銀「リーダー、なんかあいつやばいっすよ!」

マリー「ただのコスプレ野郎かと思ったけど……」

竜子「ちっ、な、なかなかやるじゃねーか……」

ロールシャッハ「お前たち」

竜子・お銀・マリー「!」

ロールシャッハ「そこの、シンノスケと関わりがあるようだが、
        こんな子供になにをさせている?」

竜子「そ、そいつは! 勝手にあたいらに付きまとってるだけで!」



ロールシャッハ「HURM.」

ロールシャッハ「それで、お前らは?」

ロールシャッハ「徒党を組んで、一体なにをしている?」

竜子「……お、お前ら、ここはガツンと決めるぞ」

お銀・マリー「え」

竜子「ふかづめ竜子!」

お銀「う、魚の目お銀!」

マリー「ふ、ふきでものマリー!」


竜子・お銀・マリー「三人そろって!」
         「サイタマ紅さそり隊!」


ロールシャッハ「…………」

ロールシャッハ「HEH.」

しんのすけ「おお! すごいゾ師匠! おじさん笑ったゾ!」

竜子「だからあたいらはお笑いやってんじゃねーつーの!」

お銀「……あれ鼻で笑ったんだよな」
マリー「……うん、どー考えても」

ロールシャッハ「フカヅメにウオノメにフキデモノか」

竜子「そっちを取るんじゃねえ!」

しんのすけ「なるほどおじさんもなかなかだゾ」

しんのすけ「んー、でも玉さすり隊はとりあえずオーディション勝ち抜けたんだよね」

竜子「オーディションでもねえし、あたいらは紅さそり隊だ、べ・に・さ・そ・り!」

ロールシャッハ「玉さすり?」

ロールシャッハ「お前らは淫売か?」

竜子「話をちゃんと聞け!」

お銀「淫売って……」
マリー「お笑いの方がまだ救いがあるよな……」

19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:52:41.59 ID:Jw6MsEa80

ロールシャッハ「活動目的が今一つわからんが、」

ロールシャッハ「お前らが無害だということはわかった」

竜子「んだとこの!」

殴りかかる竜子。難なくかわすロールシャッハ。

しんのすけ「おお、今日はクマさんおパンツですな」

竜子「見るな!」

ロールシャッハ「クマのパンツ?」

竜子「オメーはなんでそこに反応してんだよ!」

お銀「やっぱ変質者だよあいつ!」

マリー「リーダー、もう帰りましょう!」

ロールシャッハ(……ブレア・ロッシュ……)

ロールシャッハ(生きてさえいれば、いずれこの娘たちのように……)

竜子「放せよクソ! あいつ許さねえ!」

お銀「敵うわけないよ、リーダー、ね、帰ろ!」

マリー「ね、落ち着いて!」


ロールシャッハ(…………なる自由くらいはあったのだ)

20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:53:15.62 ID:Jw6MsEa80

ロールシャッハ(陽が落ちていく)

ロールシャッハ(子供たちが走っていく)

ロールシャッハ(家へ帰るのだろう。母の待つ家に)


ロールシャッハ「……お前も、もう帰るべきではないのか」

しんのすけ「おじさんはどうするの?」

ロールシャッハ「どこか宿を探す。なければ野宿だ」

しんのすけ「おじさんホームレス?」

ロールシャッハ「似たようなものだ」

しんのすけ「カスカベにはどのくらいいるの?」

ロールシャッハ「わからん。できる限り、長居はしないつもりだ」

しんのすけ「ならオラ、いいところ知ってるゾ!」

21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 21:54:22.28 ID:Jw6MsEa80
日誌 ロールシャッハ記


2000年 6月21日


カスカベはいい街だ。
俺がここにいることに、自分でも違和感を覚えるほどに。


ただし、住人は奇怪な連中が多い。
そろいの服で俺を撮影する男女。
手旗信号でサインを送る本屋。
ゴリラのような筋肉の女。
派手な化粧をして、ローラースケートをする男。


どいつもこいつも狂っているとしか思えない。
平和に浮かれている証拠だ。

その平和の中で、一見無意味な反発をする者がいる。
あの奇妙な少女たちのように。

ニューヨークのサムライは……あの連中は、近寄る終末の象徴のひとつと思っていた。
間違いなくあの夜に死んだことだろう。

あのガキどもがそれと同類とはとても思えないが……
この街にも終末が訪れたとき、等しく血のドブに流されゆくのか。


シンノスケという子供に宿を紹介してもらった。

マタズレ荘という。名前の意味はよくわからない。
大家はかつての俺の家の者と似たような、偏屈そうな中年の女だ。
大家という人種はどこもそうなのだろうか。

俺を目にしてしばし怪しんでいたが、ライセンスを見せると部屋を貸すことに承諾した。

これは本当に便利なものだ。
俺がどこへ行こうとも、その先で必ず手助けをしてくれる……


Dr.オオブクロの所在は未だわからない。存命かどうかすらも。

22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:19:16.10 ID:Jw6MsEa80
ふたば幼稚園

風間「でさ、昨日のあの人のことなんだけど……」

マサオ「またその話!? やめようよもォ……」

しんのすけ「えー、なになに、どの話?」

ネネ「昨日の変なマスク被ったおじさんよ!」

ボー「なにか、陰謀を感じる……」

しんのすけ「インポを感じる?」

ネネ「陰謀よ、い・ん・ぼ・う!」

マサオ「やっぱりあの人、なにか悪だくみを……」

風間「待って待って! 話を聞いてよ!」

風間「あのあと、うちに帰って考えたんだ」

風間「あの人、『ザ・クエスチョン』っていうコミックの主人公とそっくりなんだよ」

ネネ「『ザ・クエスチョン』? 聞いたことないわねー」

マサオ「僕も知らない。『漫画アクション』? それとも『まんがタウン』の奴?」

風間「違うんだ、これは」

しんのすけ「おやおや風間くん。『漫画なんてお子様向けのものは趣味じゃないね』なんて
いつも言ってる風間くんが、そんなマニアしか知らないような
漫画を知ってるなんておかしいですなあ」

風間「人の話を最後まで聞けよ!」


風間「外国の漫画なんだ。パパがお土産に買ってきてくれて」

しんのすけ「それでついハマっちゃってブリスター入りのフィギュアのコレクションも始めたんだー」

風間「そうそう! バリアントがまた渋いセレクトで泣かせる……って、なに言わすんだよ!」

風間「と、とにかく、その漫画、いつも
『この漫画は、実在の人物を元にしたフィクションです』って書いてあるんだ」

ネネ「なに言ってんのよ、そんなのウソに決まってんじゃない」

風間「僕もそう思ったんだけど……その漫画、それを大きなキャッチフレーズにしてるみたいで」

ボー「つまり、その主人公のモデルが、あの人」

しんのすけ「うーむ、貧乏を感じますなあ」

風間「陰謀な」

マサオ「じゃ、じゃあ、あの人悪い人じゃないってことかな……?」

ネネ「えー! ネネは絶対認めないわよ! あの人、悪い人に決まってる!」

しんのすけ「お?」

しんのすけ「おーい、こっちこっちー!」

マサオ「おーい、って、え!?」

ロールシャッハ「HUNH」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:20:54.42 ID:Jw6MsEa80


しんのすけ「おじさーん」

フェンス越しに、ロールシャッハへ歩み寄るしんのすけ。

ロールシャッハ「シンノスケか」

しんのすけ「おじさんなにしてんの? 昼間から幼稚園の周りをうろつく不審者ごっこ?」

ロールシャッハ「Dr.オオブクロの最後の所在地を突き止め、そこへ向かった」

しんのすけ「ふんふん、それで?」

ロールシャッハ「駐車場になってた」



風間「おいしんのすけ! お前、いつのまにそんなに仲良くなったんだ?」

しんのすけ「あらー風間くん、嫉妬?」

マサオ「やっぱり、怖い人じゃないってこと?」

ボー「人は、見かけによらない」

あい(しん様が、どこの馬の骨とも知れぬ輩と……)

ネネ「あら、あんたも嫉妬?」

あい「そんなのじゃありませんわ! 黒磯!」

黒磯「はっ!」

あい「あの汚らしい男を、追い払ってきなさい!」

黒磯「は、はあ……」

ロールシャッハ「……なんだ?」

黒磯「いやー、その、不躾なことを言うようですが、
あいお嬢様が早いところあなたにここを離れていただくようにと……」

ロールシャッハ「HURM.」

ロールシャッハ(Dr.オオブクロとの唯一の接点は、この子供たちしかいない)

ロールシャッハ「シンノスケ。園が終わるのは何時だ?」

しんのすけ「えー、うーんとねー……」

あい(まあ! しん様とアフターのお約束を!?)

あい「黒磯! 力づくで帰らせなさい!」

黒磯「ええ!? は、はい!」

フェンスを飛び越える黒磯。

ロールシャッハ「なんのつもりだ」

黒磯「……見ず知らずのあなたには申し訳ありませんが、
   あいお嬢様のご命令ですので」

ロールシャッハ「HURM.」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:22:24.47 ID:Jw6MsEa80

拳を交わすロールシャッハと黒磯。

ロールシャッハ(この男も、なかなかの手練のようだ)

マサオ「うわ、すっごい! カンフー映画みたい!」

ボー「間近で見ると、ド迫力」

しんのすけ「ふーむ、これが黒磯さんの本気か……」

風間「そんなこと言ってる場合じゃないだろ」


ロールシャッハ(マフィアンコミュニティーの用心棒どもと同程度……
        いや、それよりもいくらか上か)

ネネ「ちょっと、なんとかしなさいよ! あんたがけしかけたんでしょ!」

あい「あの男の方がいけないんですわ」

じきにロールシャッハが優勢となり、黒磯は背後から押さえつけられる。

ロールシャッハ「……まだやるか」

黒磯(ま……参った……)

あい「……黒磯! この役立たず!」

黒磯「も、申し訳ありません、あいお嬢様……」

ロールシャッハ「お前はあそこの偉そうなガキのお守りか」

ロールシャッハ「それだけの体がありながら、ただ腐らせてしまうばかりだな」

黒磯「な、なにを言う!」

ロールシャッハ「今俺がお前の腕をへし折っても、あのガキはお前を用済みにするだけだ」

ロールシャッハ「金と地位は、人間の傲慢を助長させる」

ロールシャッハ「あのガキも、じきに醜く歪むだろう」

黒磯「…………」

しんのすけ「あの二人、なんの話してるの?」

マサオ「大人の話、じゃないかな」

ボー「男の、話」

ネネ「リアルおままごとの参考になるわ……いや、ハードボイルド・おままごとってところね」

風間「ハードボイルドとおままごとは、ちょっと結びつかないんじゃないかな……」

あい「……ふんっ!」

よしなが「ちょっと、黒磯さん大丈夫!?」

しんのすけ「おお、今ごろ出てきた」

まつざか「不審者よ! 警察呼んで!」

上尾「は、はははは、ハイィ!」

上尾(不審者……不審者……)ドキドキ

25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:23:57.90 ID:Jw6MsEa80

ロールシャッハ「おい」

上尾「!」ビクゥ

ロールシャッハ「通報などやめておけ。どうせ無駄なことだ」

園長「あのー、すみませんがうちの園児にどういった御用でしょうか……?」

ロールシャッハ「あんたは?」

園長「ああ、私はここの――」

しんのすけ「組長!」

園長「園長です!」

ロールシャッハ(組長? ドンか。確かに、ただならぬ顔つきだが……)

ロールシャッハ「HURM.ここは、見た目ほど健全な施設ではないらしいな」

よしなが「しんちゃん! 誤解を招くようなこと言わないの!」

しんのすけ「なんで?」

ロールシャッハ「なるほどな。お前のような男の元では、確かにあのようなガキが増長するわけだ」

園長「いや、私はほんとにただの園長なんですってば!」

まつざか「ちょっと、警察まだ来ないの!?」

上尾「ええっ、だって今、やめておけ、って……」

まつざか「んもう! なに言いなりになってんのよ!」

上尾「あ、スイマセン、スイマセン!」

ネネ「ちょっとしんちゃん、なんとかしてよ!」

マサオ「園長先生、ボコボコにされちゃうよ!」

ボー「ボコボコじゃ、済まないかも……」

しんのすけ「えー、もー、しょうがないなー」

上尾「え、しんちゃん、ちょっと」

しんのすけ「そんじゃ、ほい!」

ロールシャッハ(なんだ? あの女、メガネが外れた瞬間から異様な殺気を……)

上尾「おいおいおいてめェ!」

黒磯「上尾先生! 危ない!」

ロールシャッハ「なんだ」

上尾「いい歳した大人が保育士でもねーのに昼間っからガキと遊びてえってか!?
   なに考えてんだ? ロリコンかてめえは!」


ロールシャッハ「おいちょっと待て」


26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:27:56.43 ID:Jw6MsEa80
ロールシャッハ(ひと悶着……いや、それ以上のことがあったが、)

       (ライセンスを見せることで収まった)


       (実に便利だ)


       (ここの園長と名乗る男……タカクラブンタも、話を聞く限りでは善人のようだ)

ロールシャッハ(もっとも、それがこうも顔に表れないのは滑稽だが)


園長「お仕事大変でしょうが、しかしうちの園児をそのような危険に巻き込むわけには……」


ロールシャッハ「HURM.」

ロールシャッハ「そうだな。あんたの言うとおりだ」


ロールシャッハ(俺は少し、焦っているのかも知れん)

ロールシャッハ(だがこうしているあいだにも、世界は間違いなく終末へ近づいている……)



黒磯「……あ、あの、」

ロールシャッハ「……なんだ?」

黒磯「……頑張ってください」

ロールシャッハ「なんのつもりだ」

黒磯「他意はありません。ただ、実は私もかつて、ハンターを目指していたものでして……」

ロールシャッハ「そうか」

ロールシャッハ「今からでも遅くはないぞ。35回受けた知り合いがいる」

黒磯「いえ」

黒磯「今の私には、あいお嬢様と、ふたば幼稚園の皆さまがいらっしゃいますので」


ロールシャッハ「…………」

黒磯「あなたには、きっと理解しがたいこととは思いますが」


ロールシャッハ「…………そうだな。俺には永遠にわからん」

ロールシャッハ「だが、俺も別に肩書を求めたわけではない」

ロールシャッハ「なすべきことに、この板切れが必要なだけだ」

あい「黒磯! どこなの? 来なさい!」

ロールシャッハ「……さっさと行け」

黒磯「はい!」

27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:30:39.48 ID:Jw6MsEa80
日誌 ロールシャッハ記

2000年 6月26日

手掛かりは依然としてつかめない。

――ここは平和だが、奇妙な街だ。

時があまりにも早く過ぎていくようだ。
にもかかわらず、実際はまるで一秒も時が経たないような感覚が、同時にある。

十年後にここを訪れて見るのもいいかもしれない。
俺がまだ生きていれば――また、世界も息をしていればの話だが。


それでも取り残されていくものはある。

路地裏の奥に“カスカベ座”という映画館を見つけた。
ニューヨークのものと比べると、あまりにも小規模でみすぼらしい劇場だ。
それが今は廃墟であることを差し引いても。


おそらく立地条件や土地の権利などの都合上、未だ取り壊されずに残っているのだろう。


中のガラスケースに、色褪せたブロマイドがまだ残っていた。

どれも知らない映画ばかりだ。
ここはアメリカではないことが、俺のいたアメリカのある世界ではないことを改めて知らされる。
ここに俺の知る映画など、存在するはずがないのだ。


……だがカードの中に、一枚だけ西部劇らしきものを見つけた。
この映画が存在したということは、かつての祖国の先人と似たような文化や歴史をたどった時代が
この星のどこかにあったということだ――もしくは単なる創作か。

タイトルは書かれていない。この一枚からだけでは、この映画がなんなのかはまるでわからない。

カードには典型的な白人のガンマンと、どういうわけか東洋人の少女の姿が写っている。
インディアンではない。

しばらくそれを眺めたあとで、ケースを割ってその一枚を拾った。

このカードには、これから日誌の栞として働いてもらおう。

28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:31:40.03 ID:Jw6MsEa80
都内 スナック スウィングボール

ジャーク「…………」

ジャーク「なァ―――んか、」

ジャーク「いやな予感がするわ」

ローズ「便秘?」

ラベンダー「肌荒れ?」

レモン「加齢臭?」

サタケ「うちの経営の未来に影が?」

ジャーク「そんなんじゃないわよっ!」

ジャーク「魔人としての勘」

ラベンダー「元、でしょ」

ジャーク「今はただのオカマでも、わかることがあるのよ」

ジャーク「なーんかすっごいやばいこと起きそー」

ジャーク「てゆーかいろいろメチャクチャにひっかきまわす奴が来た、みたいな」

レモン「そうは言ってもねェ……」

ラベンダー「オカマの言うことだしねェ」

ローズ「信じらんないわねー」


サタケ「お前らもオカマだろうが……」

サタケ「大体ジャーク、それでお前はなにができるんだ?」

ジャーク「なんにもないわよ、ただのオカマだもーん」

ジャーク「ただあんたたちも腹くくっといた方がいいかも、って話」

レモン「くくる腹ねェ」

ローズ「オカマになると決めたときから、人生腹くくってるようなもんだしねェ」

ラベンダー「お兄たまはまだもう少し、引き締めた方がいいかもね」

ローズ「え」

サタケ「いらっしゃいませー、ご新規様二名、ご案内いたしまーす!」

サタケ「ほら仕事だ仕事。そう何度も何度も世界がどうにかなるわけねえだろ」

29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:32:29.75 ID:Jw6MsEa80


チバ県警 ナリタ東西署

よね「ちっくしょー、表彰されたってのにまたここに戻されるとは……」

  「はあ……」

  「やっぱり私、刑事向いてないのかな……」

  「…………」

よね「…………やめちゃおうかな……」

プルルルル
ガチャ

よね「はい、凶悪犯罪特別分室(資料室)……」

  「はいっ……えっ……はい、はいっ、わかりました!」

  「よし……これはきっと、もう一度世界を揺るがす大事件の予兆……」

よね「……もういっちょやるか!」

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:34:36.42 ID:Jw6MsEa80

どこかの刑務所――


サイレンの中、看守を殴り倒していく男女。


マホ「おらおら! 邪魔だよ、どきな!」

ヘクソン「……マホ。無駄な体力を使うな」

ヘクソン「今は逃げおおせればいい」


パラダイスキング「よォう、あんたら、派手にやってるなあ」

マホ「? 誰だお前」

パラダイスキング「いかすネエちゃんだな。俺はパラダイスキング」

マホ「ケッ、本名かよそれ」


パラダイスキング「んなことはどうだっていい。あんた、そう、あんただ」

ヘクソン「なんだ」

パラダイスキング「あんた、特別収容棟にいた奴だろ?」

ヘクソン「そうだが……どうした」

パラダイスキング「このタイミングで同時に脱獄したのも、なんかの縁だと思ってね……」

ヘクソン「……お前の元にも、あのオカマどもが来たようだな」

パラダイスキング「当たりだ。最初は夢かと思ったんだが、
         あんたもそうだってェなら、ありゃマジだったらしいな」

マホ「ってことは、あたしらと同族ってわけかい」

パラダイスキング「そうなるかもなあ。よろしく頼むぜェ、ネエちゃん」

パラダイスキング「それより聞いたぜ、あんた、超能力が使えるんだって?」

ヘクソン「…………」

パラダイスキング「……マジらしいな」

パラダイスキング「ずゥっと思ってたのよ……ジャングルで鍛えた俺の闘技と、
         お前の超能力……どっちが上かってな」

ヘクソン「アクション仮面こと、郷剛太郎……それと野原しんのすけ……」

パラダイスキング「ほう!」

ヘクソン「お前の心は、その二人に対する憎悪でいっぱいだな」

ヘクソン「それに比べれば、俺など些細な興味の対象でしかない」

パラダイスキング「心が読めんのか。そりゃすげえや」

パラダイスキング「だが、そんなもんで俺に勝てるなんてふざけたことは思っちゃいねえよな」

ヘクソン「今の俺はそんなことに興味はない」

ヘクソン「この世が俺たちの手に落ちてからでも、その勝負は遅くないだろう」

パラダイスキング「……フッ……」

パラダイスキング「……ク――ルだぜェ」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:35:19.93 ID:Jw6MsEa80

マカオ「脱獄には成功したみたいね」

ジョマ「でもあんな強引なやり方だなんて、ゾクゾクしちゃう」

マカオ「クレイGやチョキリーヌたちより役に立ちそうね」

ジョマ「でも手駒は多い方がいい」

マカオ「そうね……」

マカオとジョマのあいだに、ブタを模した茶色の壺が浮かび上がる。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:42:09.60 ID:Jw6MsEa80

野原家

むさえ「ちょっと、姉ちゃん、ねえちゃあーん!」

みさえ「どうしたのよむさえ! こんな時間に」

むさえ「隣に越して来た人がなんか怖いんだって!」

みさえ「はあ?」


ひろし「で、その隣の人が夜中じゅうずっと起きたまま、ガリガリ物音立てたり……」

みさえ「ドアの隙間からからコバエがぶんぶん……」

みさえ「でもそれってあんたと一緒で、ものぐさなだけなんじゃないの?」

むさえ「違う違う、レベルが違うのよ! 一回ちらっと見たんだけど、
    包帯? なんか顔に巻いてるし、どーも見るからに怪しいっていうか、
    なんか……人殺してそうな顔なの」

ひろし「人殺しってまさかそんな」

むさえ「義兄さんはあいつを見たことないからそんなこと言えるのよ!」

むさえ「壁一枚隔てた向こうに殺人鬼がいると思うと……」

むさえ「ねえ、今夜だけ! 今夜だけ、泊めさせて!」

みさえ「もう、あんたって子は。でもそれだけじゃ解決にならないから、明日大家さんに相談するのよ」


TV「あの20世紀博が、パワーアップして帰ってきた! 『21世紀博』オープンに合わせて――」


むさえ「へー、なんかカンカンやってると思ったら、こんなのできるんだ」

みさえ「ちなみに明日は、この家空っぽになるから、留守番お願いね」

むさえ「え! なんで?」

むさえ「もしかしてこれに行くってんじゃ……」

ひろし「オープン初日にアクション仮面が来るんだとさ」

むさえ「あ、どーりでしんのすけよく寝てるわけだわ」

むさえ「えー、いーなーいーなーあたしも行きたーい!」

みさえ「あんたは子供じゃないんだから! 駄々こねたってダメ!」


33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:42:56.80 ID:Jw6MsEa80
・前回もした追記

20世紀博ができたのはクレしん作中では2001年中のことなのですが、
どうかこのSSでは20世紀中にできたということにしといてください。
20世紀が終わらないうちに建てるのも気が早いなとは思いますが。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:44:21.40 ID:Jw6MsEa80

翌日 野原家

しんのすけ「とーちゃん、かーちゃん、早く早くー!」

ひろし「こらこらしんのすけ、ショーまでまだ時間はあるんだから」

ひまわり「た、たやい!」

みさえ「ひまちゃんは、ママたちと一緒にゆっくり行きましょうねー」

みさえ「で、なんであんたもついてくるの」

むさえ「えへへー」

むさえ「いいじゃんいいじゃん、こーいうのはみんなで行く方が楽しいって」

みさえ「ほんっとに、もー……」

みさえ「迷子にだけはなんないでよね」

むさえ「そこまで子供じゃないって!」


ひろし「20世紀博が帰ってきたなんていうから、最初はうさんくせえと思ったけど」

ひろし「『20世紀の僕らが見た21世紀』か、やっぱりいいねえ」


しんのすけ「どうしても歳をとるとエクスタシーになるんだね」

ひろし「ノスタルジー!」

ひろし「でもな、見ろよ、海底都市に月面基地! スーパーロボットに宇宙大怪獣……
    今でも追いつけないくらい、すごい未来が描かれてるだろ?」

ひろし「ガラス越しのコマツザキシゲルの絵を見て思いを馳せ、家に帰って箱を開けたとき」

ひろし「ボール紙とセメダインのにおいが、俺を宇宙へ連れてってくれたもんさ」

しんのすけ「ほうほう。語るね父ちゃん」

ひろし「おうよ! なんつっても、父ちゃんはSF初段だからな」

マサオ「あれ、しんちゃんも来てたの?」

しんのすけ「お、マサオくん!」

ひろし「風間くん、ネネちゃん、ボーちゃんまで」

風間「こんにちは!」

ネネ「もうすぐアクション仮面ショー、はじまるわよ!」

ボー「早く行かないと、前の席、埋まっちゃう」

しんのすけ「おお、いけないいけない!」

ひろし「こらこら、走るな、転ぶぞ……いてっ!」

35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:45:50.02 ID:Jw6MsEa80

『アクション仮面ショー ―未来は僕らの手の中編―』


ミミ子「助けてー! アクション仮面!」

アクション仮面「くそう、メケメケZめ! 過去から蘇るとは、往生際の悪い奴だ!」

アクション仮面「だがそれもここまでだ! 悪の栄えた試しはないぞ!」

メケメケZ 「それはどうかなアクション仮面。今の今までお前が勝ち続けるとは、
      それもそれでなかなか不公平なものではないかね?」

アクション仮面「黙れ! この先の未来は、お前のような奴が触れていいものではない!」

「がんばれー! アクション仮面!」
「がんばれー! アクション仮面!」

ひろし「すごい人だかりだなー」
みさえ「アクション仮面は21世紀になっても、ずっと人気ってことかもね」

しんのすけ「がんばれー! アクション仮面!」



36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:47:51.76 ID:Jw6MsEa80
21世紀博 屋上のどこか


パラダイスキング「がんばれー、アクション仮面、か……」

        「ガキの声で勝てると思ったら大間違いだぜ」

        「でも残念ながら、シナリオっつうもんがある」

        「メケメケZは倒されて、今日もアクション仮面はみんなの笑顔を守りましたと、さ」

パラダイスキング「毎回これじゃ、食あたり起こしちまうと思わねーか?」

振り向くパラダイスキング。

パラダイスキング「ええ? 刑事さんよ」

よね「動くな……少しでも動いたら、撃つ」

パラダイスキング「相棒に聞いて知ってるぜェ……あんたに持たせた銃ほど、信用できねえもんはねえってな」

よね「そうだね……あんたの脳天、ぶち抜くかも知れないよ」


パラダイスキング「ま、いいか。飛び道具はハンデってことで」シュッ

よね(飛んだ!? 速いっ……)


パラダイスキング「後ろだよ」

よねの背中に、パラダイスキングの蹴りが一発。

パラダイスキング「あっけねーなァ、こんな雑魚どもの集団に捕まってたかと思うと情けなくなるぜ」

言い終わらぬうちに、その背後にもう一人が現れる。

ロールシャッハ「……俺なら文句はないか」
ボッ
拳をかわすパラダイスキング。

パラダイスキング「!」

         (いつのまに……)

        「お前も相当だな。警察じゃあなさそーだが」

パラダイスキング「だがお前を倒しても、俺の心は満たされねえ」

ロールシャッハ「なら、地獄で獄吏でも相手にするがいい」

パラダイスキング「おっかねえこと言うのな、おっさん」

パラダイスキング「でもこれならどうだ?」

ロールシャッハ「!」

失神したよねの手を握り、端からぶら下げるパラダイスキング。

ロールシャッハ「……やめろ。そいつは関係ない」

パラダイスキング「じゃ、無視できんのかよ?」パ

手を放すパラダイスキング。よねの体が落ちて行く。それを追い、飛び降りるロールシャッハ。

パラダイスキング「ヒーュッ、クールだぜ」


ロールシャッハ(女は受け止めたが……フック銃が間に合わない……)


ロールシャッハ(仕方がない……この街で使うことになるとは思わなかったが……)


ロールシャッハ(『廃墟の街(ザ・ハート・アタック・マシーン)』)


よねの体を抱え、アスファルトに着地するロールシャッハ。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:49:20.91 ID:Jw6MsEa80

「えー、なにあれー」
「ショーの一部?」
「凝った演出だなー」


しんのすけ「おお、キャベツのおじさん!」
マサオ「わ、ほんとだ!」
ネネ「女の人抱えてる……」
風間「も、もしかしてほんとに……」
ボー「スーパー・ヒーロー……」


むさえ「ねーちゃん、あれだよあれ! 絶対間違いないって、隣の奴!」

みさえ「あんたねー、なに寝ぼけたこと言ってんの!」


窓枠や木々を伝って降りてくるパラダイスキング。

パラダイスキング「ヒュウッ、あんたも超能力者かァ?」

ネネ「見て、あれ!」

しんのすけ「爆発頭!」

パラダイスキング「ヤッホー、また会ったなジャガイモ小僧。これはアフロだ。いい加減覚えとけ!」

アクション仮面「みなさん! これはショーじゃない!」

アクション仮面「ミミ子くん! 今すぐみんなの避難を!」

ミミ子「わかったわ!」

逃げ惑う群衆。

風間「しんのすけー!」
マサオ「しんちゃーん!」

しんのすけはひとり逆方向に走り、ステージを駆け上がる。

アクション仮面「……しんのすけくん! こっちに来ちゃ危ない!」

しんのすけ「大丈夫だよね、アクション仮面! あいつなんかすぐまたやっつけられるよね?」

アクション仮面「ああ、大丈夫だしんのすけくん。今すぐ――――ぐっ!」

パラダイスキング「おいおい、俺よりもガキへのアピールが優先か?」

ロールシャッハ「おい。俺を忘れるな」

パラダイスキング「だからお前の相手はしてらんねーって言ったろうが」スッ

ロールシャッハ(あれは……ダイナマイト!?)

パラダイスキング「ほらよ。こいつにじゃれついてな」ポイ

ロールシャッハ(投げ……、ダメだ、間に合わん!)

ダイナマイトの上に覆いかぶさるロールシャッハ。

直後、彼の腹の下で閃光と爆風が漏れる。
煙と逃げ惑う人々。ステージと客席と、双方の視界をふさいでいく。

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:50:38.96 ID:Jw6MsEa80

ロールシャッハ(UUUK……)

ロールシャッハ(臓器は無事のようだが……しかし、クソ、立ち上がれん……)

アクション仮面「君! 大丈夫なのか!?」

パラダイスキング「てめーの相手はこっちだ、おらっ」ボッ

アクション仮面「くう……くく」

パラダイスキング「安心しな、お前にはあんな小道具は使わん」

パラダイスキング「こいつはな」

警備員「おい、なにしてる!?」
警備員「なんだ、なにか投げて……ダイナマイトか!?」

パラダイスキング「あーいううるせえハエどもに使うことにしたぜ!」

アクション仮面「やめろ!」

ひろし「しんのすけー、どこだー!?」
みさえ「しんちゃーん!」
ひまわり「うええええん、うええええん」
むさえ「しんのすけー! しんのすけえ!」


アクション仮面「パラダイスキング……ここはジャングルではないぞ……」


パラダイスキング「コンクリート・ジャングル。なんつって」ニカ

パラダイスキング「お前のために作られたステージはよォ、」

パラダイスキング「俺にとっちゃちょうどいいジャングルジムだぜェ」


ステージの上を飛び交いながら、アクション仮面を殴りつけていくパラダイスキング。
アクション仮面は、もうそこから離れることもできない。

しんのすけ「が、」

しんのすけ「がんばれアクションかめえええん!」

パラダイスキング「うるせえ! すっこんでろ!」

しんのすけ「うるさい! お前なんかオラとアクション仮面にコテンパンにやられたくせに!」


ロールシャッハ(ダメだ……回復が……)

パラダイスキング「そうだなあ、あれは本当に忌々しい記憶だったぜ。この俺様が……」

パラダイスキング「おめェみてーなクソガキにコケにされるなんてな」

しんのすけ「ひッ……」

パラダイスキング「だが残念だったな。あのお話の結末は……」

パラダイスキング「このパラダイスキングの鮮やかなリターンマッチで幕を閉じるんだ」

パラダイスキング「ヘイ、相棒!」

ヘクソンの乗る小型ヘリが、ハシゴを垂らす。アクション仮面を抱え、宙へと去るパラダイスキング。

ヘクソン「さっさと乗れ。お前の遊びに付き合えるのは、ここまでだ」

パラダイスキング「じゃーな、坊主。俺はお前らがどんなに駄々こねても手に入らねえ、
         本物のアクション仮面フィギュアでじっくり遊ばせてもらうぜえ!」

しんのすけ「あ、あ、」

しんのすけ「アクション……仮面……」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:51:59.18 ID:Jw6MsEa80

野原家

みさえ「……しんちゃん、さっさとゴハン食べちゃいなさい」

しんのすけ「……オラ、いい」

みさえ「なに言ってるの! 片付かないでしょうが!」

ひろし「しんのすけ、アクション仮面のことが心配なのか?」

しんのすけ「……」

しんのすけ「心配なんかじゃないもん! アクション仮面はあんな奴に負けたりなんかしないもん!」

しんのすけ「とーちゃんもかーちゃんも見たでしょ! アクション仮面があいつをやっつけるの!」

ひまわり「う、うええ」

みさえ「大きな声出さないで、ひまわりが驚くじゃない」

ひろし「……そうだ、しんのすけ、アクション仮面が負けるわけなんかない」

ひろし「だから今は、アクション仮面が帰るのを大人しく待って、そんでゴハン食べるんだ」

しんのすけ「……」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 22:53:39.49 ID:Jw6MsEa80

日誌 ロールシャッハ記

2000年 6月28日

なにかが動いている。
それも俺のまるで知らぬところで、巨大ななにかが。


あのテーマパークで舞台を襲った二人の怪人物。
刑事を名乗る女からその二人の情報を得た。
奴らは重犯罪者で、ともに脱獄を謀ったという。
ともに……というのが奇妙だ。
あの二人も狡猾さに長けてこそいるのだろうが、きっとそれだけではない。
奴らを解き放った者がいる。


なぜこの地に?
なんの目的で?


考えうる限り最悪のパターンは、俺の探し求めるものと、
奴らのそれが重なるというものだ。
そうなれば、なんとしても先に入手せねばならない。

だがその場合は逆に好機とも言えるだろう。
俺の求めるコンピュータ・ウィルスが、この地に眠っているという証明となる。

21世紀博。
あのテーマパークは、そう銘打たれていた。

21世紀……ニューヨークでは迎えることのなかった時代。

あのショーのセリフのとおりだ。
どす黒い血に染められた手に触れさせてはならない。

その時代が、前世紀より強き世界となるために。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/15(木) 23:01:01.93 ID:Jw6MsEa80

続きは明日以降にいたします。
最初から投下してますので前回とかなり重複しています。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/16(金) 08:25:46.15 ID:YvUZ4pqao
おつおつ
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/16(金) 09:58:23.19 ID:oJqAcM/D0


ヘクソン「これは念能力… というよりは 経験による スキル……!!」
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