【安価】京太郎「派遣執事見習い高校生?」いちご「その45じゃ」【咲-Saki-】

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182 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:12:24.49 ID:X/AxWEVq0
まだ生きてるかテスト
183 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:15:26.00 ID:X/AxWEVq0
やっぱり依頼ださないと残ったままかー

とりあえず春エンド編が8割ほどできたので、ゆっくり投下していこうかと思います
新スレ立てようかと思ったけど、まぁ再利用できるなら使っていこうか

とりあえずテンプレ(仮)でも





京太郎「派遣執事見習い高校生?」春「春エンド」京太郎「春エンド!?」


※このスレは咲の二次創作スレです

※もはや何個あるんだよ……な、京太郎視点です

※少し前に投げだした安価スレのエンディングだけを作った、恥知らずな代物です

※安価スレについては↓参照

パート1
【安価】京太郎「派遣執事見習い高校生?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1389148459/

最終スレ(このスレ)
パート45
【安価】京太郎「派遣執事見習い高校生?」いちご「その45じゃ」【咲-Saki-】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1518952845/

※少し地の文が入ったりしますが、基本的にいつもの台本形式

※春以外のエンドについては……んにゃぴ

※最後まで頑張ります
184 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:16:29.26 ID:X/AxWEVq0

〜二年目9月一週0日


 二年夏の大会を、優勝という最高の結果で。
 それも春夏連覇という快挙のおまけつきで達成した京太郎だが、派遣執事生活はまだ終わらなかった。

 それは周囲から望まれたことが理由でもあり、久の叶えた願いの期限が切れていないことも理由ではあったが――。
 最大の理由はやはり、京太郎がそれを望んだことになるだろう。

京太郎「――で、今月はここか……久々だな」

 見上げるのは歴史を感じられる大鳥居と大社。
 霧島の歴史と神域を保護する神代大社――ここが、京太郎が本日より世話になる場所だ。
 訪れるのは二度目で(滞在でなければさらに何度か)はあるが、この地域ではまさしく王族のように扱われる一族、組織の敷地内である。
 失礼があっては許されないと、明日より永水女子へ通うことが決まっている京太郎は、挨拶のために足を運んでいた。

霞「いらっしゃい、京太郎くん。迷わなかったかしら?」

京太郎「霞さん……お久しぶりです、ご心配ありがとうございます。わかりやすい道中でしたから、すぐに着けましたよ」

 それはなによりね、と微笑んだ霞に案内され、境内に足を踏み入れる。

京太郎(さすが……神秘的というか、気圧されるというか……外の空気とは全然違うな)

 ともすれば飲み込まれてしまいそうな空気に、キンと耳鳴りがした。
 同時に湧き上がる恐怖にも似た感情を、唾液とともにゴクリと飲み下す――と。
 その音が頭に響き、耳鳴りが掻き消されたとき。
 気がつくと目の前には、大きな社務所が現れていた。

霞「さ、上がってちょうだい。皆も待ち侘びている頃よ」

京太郎「お、お邪魔します……」

 本来ならば、社の事務を取り仕切っている方に挨拶するのが筋だろう。
 大社を取りまとめる宗家の当主、小蒔の父親に目通りすることは、さすがに叶わないはずだ。
 そこには、一高校生に過ぎないという京太郎の立場もあるが――それに加え、家柄という複雑な問題も絡んでいる。

 いまは縁遠くなってしまっているが、京太郎の父方の実家は、神道や神の力というものに深く関わりのある家系だった。
 その家は北九州において権勢を誇り、南九州に根付いている霧島神境、神代家とも密接な仲だったという。
 中でも、京太郎の曽祖父と小蒔の祖父という先代の当主同士は親友とも呼べる間柄であり、それぞれが溺愛する曾孫と孫――つまり京太郎と小蒔は、許嫁のような扱われ方をしていた。

 だが、ある事件をきっかけにそのすべては崩壊し、両家の関係は悪化とまではいかないが、同業他社という程度の関係に落ち着いてしまっている。
 京太郎と小蒔に至っては、その記憶まで封印されており――最近になって思いだすまで、二人は互いのことすら忘れていた。
 もっとも、思いだしたからといって、その頃の関係に戻れたわけではない。
 いまの二人の仲は、友達以上恋人未満やや友達寄り――という程度のもので、他の女子が割り込む隙は十二分以上に存在していた。

 閑話休題。

 ともあれ、そうした家の当主に挨拶することなど叶うはずもない京太郎は、別の方々に挨拶をすることになる。
 それは事務方の責任者でもなければ、観光責任者というわけでもないが、一個人と呼んでいい相手でもない。
 神域において絶大な力を持つとされる、六つの家――その跡取りである六女仙という、この地域ではやんごとない立場と言って差し支えない方々だ。
 もっとも、いまは家を離れている方もいるため、全員にお会いできるというわけではない。

 それでも、久々の再会というのはやはり、心躍るものになる。

京太郎「……まぁ、夏の大会で全員に会ってますけどね」

霞「ふふ、そう言わないで。みんなも気にしているのよ――優勝直後の巴ちゃんとの抱擁とか、ねぇ?」ゴッ

京太郎「」

霞「うふふふ。さ、奥でみんな待っているわ……感動の再会、楽しみねぇ?」

京太郎(帰りたい……)
185 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:17:35.23 ID:X/AxWEVq0

〜応接広間

春「京太郎!」ガバッ

小蒔「京くん!」ガバッ

京太郎「っと……久しぶりだな、春。それに……こまちゃん」

春「本当に久しぶり……キョウタリウム、補給しないと……」スリスリスリスリ クンクンクンクン スーハースーハー

京太郎「犬か!」

小蒔「………………」クンクンスーハー スリスリスリ

京太郎「こまちゃんまで!? ちょっ、お姫様がこんなことしてるの、誰かに見られたらまずいからっ……」

小蒔「お姫様じゃないです……いまはこまちゃんです……」スリィ…

京太郎「いや、あの……でもなぁ……」

初美「まーまー、二人もずっと楽しみにしてたんですから……遠路はるばる、ごくろーですよー」

京太郎「はぁ……今年もお世話になります、初美さん」

明星「遅くなりましたけど、優勝おめでとうございます! 京太郎先輩!」

湧「今年は私たちも、部活に参加していますので……よろしくお願いします」

京太郎「ああ、よろしく。明星ちゃん、湧ちゃん」

霞「はい――それじゃ、挨拶も一通り済んだし、さっそく決めちゃいましょうか」

京太郎「決めるって、なにをですか?」

春「京太郎の居候先」

京太郎「――――――は?」

初美「忘れたんですかー? 京太郎が言ってたんですよー、次にうちに来たときは、こっち方面の修行もしたいって」

小蒔「そのための場所として、誰かの家に居候していただこうということです……うちは、さすがにダメだったんですが……」シュン

京太郎(そういえば、そんなことを言ってたような……)

京太郎「あー、でも、ほら……あれですよ。そんな本格的なのじゃなくて、危ないのが見えちゃってもうまく対処するやり方みたいなのを――」

春「そんな方法はない」

京太郎「えっ」

霞「もう見えてしまった時点で、本格的な対処をしないといけなくなってしまうのよ。以前、永水の校舎で会ったのも、本当は危なかったのよ?」

京太郎「」ゾワッ

初美「なまじ素質があるせいですかねー。京太郎は見えやすいみたいですから、一度本格的な修行をしたほうがいいんですよー」

京太郎「マジすか……」

小蒔「まじです」エヘン

京太郎「……でもそれ、居候しないとダメなんですかね?」

春「だめ」

霞「というよりは――なにかあったとき、近くにいたほうが対処しやすいからなのよ」

京太郎「…………よろしくお願いします」

明星「センパイの完全降伏、いただきましたー♪」
186 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:18:12.40 ID:X/AxWEVq0

湧「でも、どうやって決めるんですか?」

初美「決まってますよー。私たちが集まってなにか決めるとなれば、方法はもちろん――」

春「麻雀しかない」ゴッ

霞「小蒔ちゃんは残念だけど抜きにして、私とはっちゃん、それに春ちゃんと――」チラッ

明星「あ、私はお従姉様にすべて委ねますので」

小蒔「明星は霞ちゃんと同じ家ですからね……」ズルイデス  ※という設定で

明星「だから、あと一枠は――湧、任せたよ?」

湧「え……えっっ!? わ、私も、やるの……?」

霞「ふぅん……まぁいいわ。それじゃ、準備しましょうか」

湧「ちょ、ちょっと待ってください、そのっ……わ、私は、須賀さんと住むなんて……無理ですっ、無理……」

初美「初々しいですねー」

春「京太郎、どうする?」

京太郎「そこで俺に振るか!? いや、まぁ……本人が言ってるし、三麻でいいんじゃないか?」

霞「京太郎くんが入って、勝てば選べるっていうのもありだけれど?」

京太郎「……嫌がられたときのダメージが大きいので、勘弁してください(よし、ナイス言い訳!)」

霞「……嫌がる?」

初美「京太郎を?」

春「ありえない」キリッ

明星「……いや、つまりですよ。嫌がるかもしれない相手を選ぶってことですよね? ということは、一人拒否った――」

湧「!?」

霞「へぇ……そうなの、京太郎くん?」

京太郎「誤解です、とんでもない誤解です!!」

湧(……そうまで否定されるのも、なんだか少し……って、私はなにを考えてるのっ……)ブンブン

初美「ま、それなら三人で打ちますかねー」

小蒔「あ、あの、私も入っていいですか? 普通に、練習としてですけど……」

春「もちろん」

霞「そうね、コクマのことも考えるなら、そうしておいたほうがいいわ」

小蒔「は、はい! 頑張ります――ので、えっと……京くん、後ろで見ててもらえますか?」

京太郎「え」

春「は?」

霞「あらあらあらあら、練習といえど真剣勝負で助言もらうのはいけないと思うわ」

初美「……まぁ練習ですし、いいんじゃないですかねー」

明星「おっと、2対2ですねー」

湧「ここは須賀さんに決めてもらっていいんじゃないでしょうか」

京太郎「えっ」

春「京太郎、すっぱり断って?」

小蒔「京くん、お願いします……」

霞「……京太郎くん、わかってるわよね?」

京太郎(不幸だ……)

 その後――断るのも申し訳ないという理由で、京太郎は小蒔を見守ることにしたのだが、対局を制したのは春だった。
 霞、初美の能力対策ができていたことも大きいが、それ以上に大きかったのが地力の差だ。
 一年間、ほぼ麻雀詰めで雀力を磨き、ついには全国五位にまで上達した実力――。
 なにより、京太郎への想いが普段以上の力を発揮させたといえる。
187 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:18:42.91 ID:X/AxWEVq0

〜滝見家

京太郎「……でかいな」

春「京太郎好きでしょ? 大きくなってよかった」ポヨン タプン

京太郎「そっちじゃなくて家!」

春「役割とかの関係で、偉い人をお招きすることもあるから。あまり小さいと、失礼にあたってしまう」

京太郎「ああ、なるほど……権力とか影響力とか、そういうのも大変なんだな」

春「お父さんたちは、あまり気にしていないと思うけど」

京太郎「そっか……ところで、俺が来るかもしれないってことは、ご両親には?」

春「もちろん」

京太郎「なら安心だな」

春「言ってない」

京太郎「」

春「大丈夫。京太郎のことは家でもよく話してる。きっと気に入ってもらえる」

京太郎「……なんて説明すればいいんだよ、この状況」

春「これから一ヶ月、うちで寝泊まりする?」

京太郎「俺、春のお父さんに殴り殺されるかもしれん……」

春「大丈夫……さ、入って」カラカラカラ

京太郎「くそうっ、お邪魔します!」
188 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:20:32.14 ID:X/AxWEVq0

〜玄関にて

滝見父「なんだ貴様は! なんの用があって我が家に参った!」ムキムキー

京太郎「(おおう、ものすごいマッソーなおじさんが……)は、はじめまして。自分は須賀京太郎と申します」

滝見父「名前など聞いておらん! なんの目的かは知らんが、早々に立ち去れ!」

京太郎「っ……」

春「お父さん、落ち着いて……」

滝見父「春は黙っていなさい。私はこの男に話しているんだ」

春「でも……京太郎は、私のお客様だから」

春「それと……とっても大事な人」ポッ

滝見父「なん……だと……おい貴様! うちの春になにをしたぁ!」ガシッ

京太郎「ぐっっ……」

春「お父さん、やめてっ……」クイッ

滝見父「黙っていなさいと言っているだろう!」ドンッ

春「あっ……」フラッ

京太郎「っっ……春っ!」バッ ガシッッ

滝見父「ぬぅっ!? 私の組み手を抜けただとっ……」

京太郎「春、大丈夫かっ?」

春「うん、平気……京太郎が支えてくれたから」ニコッ

京太郎「そうか…………滝見さん、失礼を承知で言わせていただきます」

滝見父「ほう、なにかな?」

京太郎「ご自分の娘をあんな形で突き飛ばすのは、さすがに可哀想です……春に謝ってください」

春「京太郎……私は平気」

京太郎「けど……いくら親とはいえ、あれはない。春があんな目に遭わされるなんてことを、俺が許せない」

滝見父「ほほう。許せないか……なら、どうするかね? 私が謝らなければ、無理やりにでも頭を下げさせるか?」

京太郎「荒事は嫌いです。それに、無理やり頭を下げさせても意味はない……形だけでも下げさせたいだけなら、そうしても構いませんが」

滝見父「ふん、自分の腕を相当に過信しているようだ」

京太郎「ご自由に受け取ってください。ただ、荒事は望まないと申し上げました。ですから、もし謝ってくださらないのであれば――」

滝見父「謝らないなら、どうする?」

京太郎「春を連れて、この家を出ます」

滝見父「は!?」

春「えっ!?」

京太郎「端的に言えば誘拐ですね。あるいは駆け落ち……とは違うか?」

春「駆け落ちでいい!」キリッ

京太郎「……まぁとにかく、そんな形です。娘に暴力を振るって平気でいられるような父親の元に、春を置いておけませんから」

滝見父「き、貴様……それは犯罪だぞ! わかっているのか!」

京太郎「必要とあらば、春のためです」

春「京太郎……」ポー

滝見父「そ、そんなことをしても、いずれは捕まる……滝見の、霧島の力を甘く見ているようだな」

京太郎「そんなつもりはありませんが……春一人を守る力はあるつもりです。権力が必要なら、心苦しいですが伝手を使って庇護を求めてもいい」

京太郎「そのくらいの覚悟はできています」

春「きょう……たろぉ……」トローン
189 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:21:07.27 ID:X/AxWEVq0

滝見父「ぬ、ぬぬぬ……そこまで春のことを……大事な女だと思っているのか!」

京太郎「当然です。俺にとって春は、かけがえのない――」

春「か、かけがえのない……?」ドキドキ

京太郎「かけがえのない――大切な友人です」ドヤ

春「………………」シュン

滝見父「………………くっ、くくっ……ははははははっ! 残念だったなぁ、春よ! ははははは!」

京太郎「――え?」

滝見父「ははははっ……っと、いかんいかん。春、大丈夫だったか? 芝居とはいえ、ついやりすぎてしまった」

春「それは平気。でもいまは、心のほうが若干痛い」

京太郎「えっ、えっ? いや、あの……え?」

滝見父「ははははは、それは心が健康な証よ! まぁあまり落ち込むな、なかなか見どころのある、誠実で真摯な若者のようだからな!」

春「それは当然。京太郎以上の男の子は、たぶん日本にいない」

滝見父「ほほう、春がそこまで入れ込んでいるとは……いやいや、これから一ヶ月が実に楽しみだな」

京太郎「………………あの! どういことですか、これは! 春もだぞ!?」

春「……ごめんなさい。お父さんが京太郎の人となりを知るために、本音を見せられる場を整えると言って」

滝見父「そういうことだ、はははは! いや、笑うのは失礼だな、うむ……この通り、申し訳なかった!」ドゲザッ

京太郎「うおおっ!? いえ、そんな、そこまでされなくとも……きょ、恐縮ですっ……」ドゲザガエシッ

春「私も、ごめんなさい……」ミツユビー

京太郎(なんだこの状況……なぜ俺たちは、玄関で土下座合戦を?)

カラカラカラ
滝見母「ただいま戻りました……あらあら、こんなところでなにをしているの? あなたも春も、京太郎さんも」

春「あ、お母さん……お帰りなさい」

京太郎「えっ!? は、春のお母様ですか? はじめまして、須賀京太郎と申します! あの、これには事情が――」

滝見父「うむ、京太郎くんの人柄を確認しようと思ってな。私もまだ修行不足、一目で判別するのはなかなかに難儀なものゆえに……」

滝見母「はぁ、まったく……そんなことをされずとも、春の普段の口振りからして、いい子に決まってるではありませんか」

滝見父「念には念をというやつだよ。これも性分と言うべきか、石橋を叩いて壊し、川を泳いで渡る性格なのでな、ははは!」

京太郎「橋使って!」

春「ふふ、お父さんったら」

京太郎「え、ここ笑うとこ!?」

滝見母「ともかく――いつまでもお客様を玄関に留めておくのは忍びないわ。京太郎さん、居間のほうに上がってくださいな」

京太郎「は、はい、お邪魔いたします!」

滝見母「ふふ、そんな他人行儀に畏まらなくて大丈夫よ?」

滝見父「その通りだ。これからひと月、同じ釜の飯を食う仲になるのだから――いわば家族のようなもの」

滝見母「私のことはお母さんと思って」

滝見父「私のことは父親と思って」

滝見夫妻『普段通りの態度で接していいの(よ・だぞ)』

京太郎「………………色々言いたいことはありますけど、とりあえず――春?」

春「はい」

京太郎「……俺がここに居候するって話、ご両親には?」

春「先月から話してる」

京太郎「まだ決まってない時期じゃねぇか!」
190 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:22:18.32 ID:X/AxWEVq0

〜居間にて

京太郎「……たとえお父さんに頼まれたんだとしても、嘘はよくないぞ」

春「うん……ごめんなさい。反省してます」

滝見父「本当に、申し訳ない」

京太郎「まぁ――いきなり男が居候してくるとなれば、心配される気持ちもわかります。でもそれなら、断ってくださっても……」

滝見母「あらあら。そんなことしたら、私たち一生、春に恨まれてしまうもの……ねぇ?」

春「末代まで祟る」

京太郎「それ自分の子孫だからな!? なんなら自分も入ってるから!」

滝見父「ははは、まぁまぁ。そんなわけで、居候自体は構わんのだ。息子ができるようなものと思えば、これがなかなか楽しみでな」

京太郎「それは言いすぎかと思いますけど……」

春「お父さんは格闘技か武道をする相手が家にいればって、いつも言ってたから。あと、言いすぎじゃないと思う」

滝見母「それでも、男親としては気になるところがあったんだと思うわ……本当にごめんなさいね」

京太郎「いえ、こちらはもう気にしていませんから。まぁ、その……組手の相手というのも、もちろんお付き合いしますので」

滝見父「おお、それはありがたい! 先ほどの動きといい、なかなかの使い手のようだからな……ふふ、腕がなるわ」ボキボキ

春「京太郎は強い。ただ、その……別の力の出し方と使い方は、修行しないといけない」

滝見母「それは私の分野かしら……でも、せっかくだし春が指導してあげたいわよねぇ?」

春「う、うん……できれば……」

京太郎「――なら、春に頼もうかな。おじさんとは武道の修練をして、俺は春に麻雀を教える」

滝見母「あら、それじゃあ私は?」

京太郎「え、えっと、その……なんでしょう」ハハハ

春「……家事全般、京太郎が教えてくれる」

京太郎「いやいや、さすがに主婦の方に教えられることなんて……」

春「大丈夫。お母さんは家のお役目があるから。専業じゃないし、色々と隙はある」

滝見母「うふふふ……春ちゃん?」ゴッ

春「……ごめんなさい」ブルブル

京太郎「ま、まぁまぁ……でもそういうことでしたら、お母様がいらっしゃらないときの家事は、俺が引き受けさせていただきますよ」

滝見母「あらあらあら、本当? でも、さすがに忙しくなりすぎないかしら?」

京太郎「いえ。家に泊めていただけるなら、そのくらいはやらせてください。こちらからお願いします」

滝見父「ふむ、そこまで気を遣わずともいいのだが……本人がやりたいと言うなら、止めるのも野暮というものだな」

京太郎「はい、ありがとうございます」

滝見母「それじゃ、申し訳ないけどお願いするわね」

京太郎「お任せください。それでは――これから一ヶ月、よろしくお願いします」

春「こちらこそ。不束者ですが……誠心誠意、京太郎にお仕えします」

京太郎「いや、むしろ俺が仕えさせてもらう感じなんだが……ま、いいか」

春「じゃあ……一回、部屋に行こう? 荷物の整理しないと。私が案内する」

京太郎「っと、そうだな……では、失礼します」ペッコリン

滝見夫妻『ごゆっくり(意味深)』

191 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:24:03.28 ID:X/AxWEVq0

〜部屋?

春「ここ」

京太郎「おう、ありがとう……って、あれ?」

京太郎(机とか本棚とか……タンス? なんで家具が揃って――)

京太郎「…………春さん、つかぬことをお伺いするがね?」

春「なんなりと」

京太郎「ここって……もしかして、春の部屋か?」

春「うん。一緒の部屋」ニコッ

京太郎「アウトォ!」



〜部屋

春「廊下の反対側にする? 襖挟んだ隣にする?」

京太郎「もっと離れた場所は……?」

春「私と近い部屋、イヤ?」ウルウル

京太郎「そ、そういうことじゃないんだけど……あー、わかった。それじゃ廊下挟んだ向かいにするか」

春「うん! あの、えっと……時々、遊びに行っていい?」

京太郎「もちろん。ただ、一応ノックはしてくれ。俺も春の部屋に用事があるときは、ノックして返事を待ってから開けるからな?」

春「わかった(着替え中でもいいよって言おう)」グッ

京太郎「それじゃ、荷物置いたら……なにがしたい、春?」

春「一緒にいたい」

京太郎「あー……俺が考えてるのは、麻雀の練習か、おじさんと組手するか、お母様と昼食作りをするか、ここでの修行をするか、なんだが」

春「修行……というか、毎日のお務めは朝にすることになってる」

京太郎「なら、明日の朝からか……どんなことするか、先に聞いておける範囲があるなら、教えて欲しいんだけど」

春「わかった。じゃあ、荷解き手伝いながら説明する」

京太郎「疲れるぞ? 結構、荷物多いしさ」

春「平気。京太郎と同じことをしてたい」

京太郎「……なら、お願いできるか?」

春「はい」ニコッ


春「本がない」

京太郎「も、持ってきてないから(震え声)」
192 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:24:55.75 ID:X/AxWEVq0

 春から隠しつつ、持ってきていた本(居候するのを知らなかったから仕方ない)を厳重に包装して封印し、他の荷物を片づける。
 その合間に春から聞かされたお務め内容は、基本的には水垢離、掃除、朝拝。
 朝拝のあとに、必要であれば霊的な力を集中するための、頭と身体のトレーニングを行うこともあるという。

京太郎「行うこともあるってことは、しないこともある?」

春「忙しいときとか」

京太郎「それでいいのか? バトルものとかスポ根だと、追い詰められた状況で力をだすために、そういうときこそ励むんだが」

春「そんな状況にはならない」

京太郎「い、いや、でもほら、いきなりすごいのに襲われたりとか……」

春「そういうときは逃げる。逃げられないなら諦める」

京太郎「いや、諦めたくないんだけど……」

春「見つけても凝視したり声をかけたりして、刺激しなければすぐには襲われない。だからそのまま逃げて報告、あとは態勢を整えて封印に動く」

京太郎「……刺激しちゃったら?」

春「諦める。むしろそうならないよう、いつでも余裕を持って自分をコントロールできるよう、頭と身体を慣れさせる」

京太郎「な、なるほど……」

春「夕方も同じことがある。でも部活後は遅くなるから、掃除は難しい。あと、お父さんが京太郎と組手と乱取りをしたがると思う」

京太郎「遅くなってもいいなら、夜に掃除させてもらうんだけど……おじさんの相手は大変そうだ」

春「たまにでいい」

京太郎「そうか、ならそれで……できれば夜も少し修行したいところだし」

春「帰ってから、掃除するかお父さんと戦うか。それが終わったら夕食。あとはお風呂に入って寝るだけ」

京太郎「……勉強と麻雀の時間を取ろう。せっかく一緒に住むんだし、春にもできる限りのご奉仕がしたい」

春「――っ!」ビビクン

京太郎「どうした?」

春「もう一回言って」

京太郎「……勉強と麻雀の時間を取ろう」

春「その次」

京太郎「……せっかく一緒に住むんだし、春にもできる限りのご奉仕がしたい」

春「〜〜〜〜っっ!!」ゾクゾクッ ビクビクンッ

京太郎「だ、大丈夫か?」

春「へ、平気……嬉しいだけ」キュン

京太郎「な、ならいいけど……ま、勉強が終わったらちょっとリラックスできるだろうし、そのときに頭のトレーニングさせてもらうか」

春「そっちは、私がお手伝いする……京太郎が力を扱えるようになれたら、私たちも嬉しい」

京太郎「ああ、頼む……それじゃ、春」

春「はい」

京太郎「一ヶ月、よろしくな。いままで通り、仲良くやっていこう」

春「……いままで以上に、仲良くなる」

京太郎「そうだな、そうしよう」

春「うん」グッ
193 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:25:45.75 ID:X/AxWEVq0

〜修行 庭にて

春「それでは……お夕食まで時間があるから、簡単な修行をします」

京太郎「はい、よろしくお願いします」

春「まず服を脱ぎます」

京太郎「え!?」

春「返事は『はい』」

京太郎「あ、はい……えぇ……」ヌギヌギ

春「●REC」

京太郎「黙って撮影すんなぁ!」

春「撮ります」●REC

京太郎「そういうことじゃなくて……その、それも修行なのか?」

春「特にそういうことじゃない」

京太郎「……なら、撮影はいったん止めようか」

春「ん」

京太郎「服は着てていいんだな?」

春「脱いだほうがいいけど……最初だし、着た状態でやる?」

京太郎「……春が教えやすいように頼む。必要なら脱ぐから」

春「じゃあ、シャツだけになって……まず、ここに正座」ポンポン

京太郎「押忍」

春「目を瞑って……背中に意識、集中してて」ギュッ

京太郎「っっ……お、おい、これは――」

春「シッ……私の鼓動を背中で聞いて。その音に、自分の鼓動と呼吸を合わせて……」スー ハー

京太郎「……はい」スー ハー

春「――そのまま呼吸をしていて。私がいまから、少しだけ力を動かしてみるから……それを感じ取って欲しい」

京太郎「…………」

 ジワリ――と背中に温かななにかが伝わり、肩や腕、下は腰回りへと染み広がる。
 その感覚が、いわゆる霊能的な力ということだろう。
 鼓動と呼吸を春と通い合わせ、彼女と一体化したような状態を保つことで、その流れが鋭く感じられる。

春「……京太郎の力は、おそらく封印されていたはずなのに、それでも普通に見えてしまうくらいに強い」

春「それを引きだして制御しようと思ったら、そのことを意識しなければならない」

春「自分の中にある、いま動いているのと同じ力を感じること……それが第一歩」

 どのくらいそうしていたのだろうか。
 十分、数十分、ともすれば一時間か、数時間か――。
 時間の感覚すらなくなるほどに、意識と感覚は春の力に集中していた。
194 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:26:18.35 ID:X/AxWEVq0

春「……ろう……太郎、京太郎……?」

京太郎「ぅ――おっ、あっ……はぁっ、ふぅっ……どうした、春……?」

春「大丈夫……?」

京太郎「え――あ、ああ、なんともないけど……あれ、終わったのか?」

春「うん。離れて、もう目を開けてもいいって言ったけど動かないから……心配した」

京太郎「すまん、全然気づかなかった……なんかずっと、春の感覚が動いてる気がして……」

春「……大丈夫。それはきっと、私のじゃなくて京太郎の……同じ力の感覚だったから、自分のものをそうと捉えていたはず」

京太郎「え、マジか? それじゃ、いまの感覚が俺の……」

春「……初めてでここまで感じられる人は、おそらく希少。元から才覚があって、素質もあったからとはいえ……もしかしたら――」

京太郎「春?」

春「もしかしたら、私では十分に教えられないかもしれない……姫様や霞さんのほうが、うまく指導できると思う」

京太郎「…………なぁ、春」

春「はい」

京太郎「確かにそうかもしれないし、春の家に居候するのが決まったのも、麻雀の結果だった」

京太郎「それでも――俺は断ることだってできたのに、この家でお世話になることにした」

春「……うん」

京太郎「たぶん……俺自身、春の家で世話になりたかったんだと思う」

京太郎「そういう力を扱う方法も、きっと春から教わりたかったんだ……だから春、この際みんなのことは気にしないでおこう」

春「京太郎……」

京太郎「いまのだって、春がわかりやすく教えてくれたからできたんだ。だから俺は、この先のことも春に頼みたい」

京太郎「春に、助けてもらいたい……それじゃ、春に教わる理由にならないか?」

春「!」

京太郎「春、どうだ?」

春「っっ……なる、十分っ……私も、そうしたい……霞さんたちじゃなくて、私が……京太郎に、教えたいっ……」

京太郎「――ならよかった。これからもよろしく頼む、春」

春「……はいっ……」ギュッ

京太郎「……暗くなったし、そろそろ戻るか」ナデナデ

春「はい……お夕食の前に、お風呂にしたほうがいい」

京太郎「ああ、そうだな。座ってて泥もついたし、さすがに汗もかいたしな……」

春「着替え持ってくるから……先に入ってて」

京太郎「おう――って、ちょっと待ちなさい」

春「なに?」

京太郎「……確認するまでもないと思うけど、一緒に入るわけじゃないよな?」

春「……………………もちろん」

京太郎「その間はなんだっ!?」
195 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:30:04.66 ID:X/AxWEVq0

〜お夕食

滝見母「………………参りました」フカブカ

京太郎「と、とんでもありませんっ……その、使いやすいキッチンですし、土地柄なのかいい食材ばかりだったおかげでして……」

春「相変わらず、京太郎のご飯は最高……」ポー

滝見父「はっはっは、これは見事! だが母さんの料理もおいしいぞ? 私はこちらのほうが好きだなぁ」ハッハッハ

京太郎「ほ、ほら、おじさんもこう仰ってますし……」

滝見母「…………本当ですか?」ジッ

滝見父「はっはっは、もちろんだとも! 今日まで私の身体を作り、健康に支えてくれた料理だからな!」b

滝見母「あなた……」ジーン

春「ごちそうさまです」

京太郎「いいご両親だな……いいご夫婦だ」

春「うん……わ、私も……こんな夫婦になりたい」ポッ

京太郎「ああ、理想だよな」

春(微妙に通じてない……)ショボンヌ

滝見母「それにしても……京太郎さんは、どこでこれほどの料理を?」

京太郎「まぁ……話すと長いんですけど、いい先生に――先生方に教わった、ってところでしょうか」

春「京太郎は奈良の老舗旅館や、東京の老舗料亭で働いたりもしてる」

滝見父「ほほう、それはそれは……若いうちから、なかなかの試練を越えているな」ニヤリ

京太郎「試練……と思ったことはないですね。誰かの役に立てるならと、できる限りのことをしてきただけです」

滝見父「はっはっは、それは末恐ろしい! そういう気持ちを保てる人間は、苦を苦とも思わんからな。だが――」

春「だが?」

滝見父「それゆえに危うくもある。自分ができることなら自分が、という気持ちが強すぎるあまり、他者を蔑ろにしてしまうこともあってな」

京太郎「他者を、蔑ろに……」

滝見父「ぞんざいに扱うだけが蔑ろではない。大事にすることは、突き詰めれば甘やかすことにもなるということだ」

春「どうすればいい?」

滝見父「周りに任せることを覚える、それだけの話だ。料亭でも、下の者ができることなら、上はそれを任せたりするだろう?」

京太郎「……はい、その通りです」

滝見父「ただそれだけのことだ。そちらを突き詰めれば、周りを信頼するということだな。簡単のようで難しい、だが大事なことだ」

京太郎「肝に銘じておきます」

滝見父「はっはっは、京太郎くんは生真面目な青年だな! 年寄りの言うことなど、頭の片隅にでも留めておけばいい」

春「忘れていい、と言わないところがずるい」

滝見父「なに、渾身の説教だったからなぁ。年に一度、できるかできないかだぞ?」

居太郎「いえ。本当に為になりました」

滝見母「まったく、この人ったら。春にはこんなに口うるさいことは言わないのに、ねぇ?」

春「うん」

滝見父「はっはっは! そんなことをして春に嫌われたら大変だろう!」
196 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:31:31.49 ID:X/AxWEVq0

京太郎「……知り合うのが女子ばっかりだからか、娘さん大好きすぎる父親ばっかりな気がする」

春「たとえば?」

京太郎「……え?」

春「誰のお父さんに会った? 誰のお父さんがそういうお父さん?」

京太郎「え、と……そんな食いつくとこか?」

滝見母「ふふふ、これも偵察の一環なのね?」

京太郎(偵察?)

滝見父「いやいや、私も少し興味があるぞ。世の父親と娘の関係、春への接し方の新たな扉になるやもしれん!」キリッ

京太郎「えぇ……えー、そうですね……永水だと、霞さんの――たぶんお父さんだと思うけど、ご当主って方に」

滝見父「ああ。なかなか霞殿に厳しいようだが……あれもあいつなりの愛情でな。立場もあって、人前ではそうするしかないというのも難儀なものだ」

京太郎「……そうなんですか」

滝見母「京太郎くんは、霞ちゃんのことを心配してくれていたのね。でも大丈夫よ、ありがとう」

春「霞さんは強いし、自分の役割をすごく理解してる……尊敬できる先輩」

京太郎「……まぁ、そうか。俺が心配して、どうなるってものでもないか」

滝見母「んー、そうでもないと思うけれど……心配してるってことを、伝えてみたらどうかしら? きっと喜ぶと思うわよ」

春「だめ」

京太郎「えっ……なんでだ?」

春「……なんででも」

京太郎「アッハイ」

滝見母「あらあら」クスクス

滝見父「はっはっは。まぁ石戸のことはいいとして、ほかはどうかな?」

京太郎「うーん……いまプロになってる方のお父さんには、めちゃくちゃ嫌われてましたね。娘に近づくダニめ、みたいな扱いでしたし」

春「よし!」グッ

京太郎「えっ」

春「なんでもない」

滝見父「ほっほう、それはまた強烈な御仁。一応聞いておくが、その娘さんに不埒な真似などは?」

滝見母「あなた、失礼ですよ。ねぇ、京太郎さん?」

京太郎「………………は、はは……いえ、そんな。お気遣いなく……」

京太郎(下着で同衾事件とか、やばい事実がありすぎる……シロさんのお父さんにはバレてなかったはずだけど)

春「なにかしたの? えっと……小瀬川さんに」

京太郎「なんでわかんの!?」

春「お父さんに会ったということは、いままでの滞在先。その中でプロになった人は限られている。あとは一番仲がよさそうな人を選んだ」

京太郎「プロファイラーかよ……いや、ほら、でも照さんとか洋榎さんとか――」

春「京太郎のお父さんと愛宕プロのお父さんは知人、友人と聞いてる。お母さんの愛宕監督とも良好な関係なら、お父さんに嫌われるわけがない」

春「宮永家とは姉妹揃って仲がいい。咲のほうは中学からの付き合い……それならご家族とも面識があって、付き合いが途切れない関係と予想できる」

京太郎(やべーよこの子、完全にプロファイラーだ)
197 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:32:03.40 ID:X/AxWEVq0

京太郎「……っていうかあれだな、咲のこと名前で呼んでんのか。随分、仲良くなったんだな?」

春「基本的に派遣先同士はみんな仲がいい。ただ、同じ学年は特に繋がりが深くなってるのは否定しない。憧や由暉子とは特によく話す」

滝見母「新子のお嬢さんね。春とは違うタイプみたいで、いい刺激になっているみたいよ」ニコニコ

滝見父「それはありがたいことだ。自分を深め、高めてくれる相手に巡り合うのは、よほど人と縁に恵まれなければ難しい」

春「京太郎の、おかげ……ありがとう」

京太郎「……俺はなんもしてないって。春がいい子だから、みんなと仲良くなれるんだろ」ポンポン

春「あふ……うん、それでも……ありがとう」

滝見母「あらあら」

滝見父「はっはっは! 小瀬川殿の父上のお気持ちが、少しだけわかってきたなぁ」

京太郎「えっ」

滝見父「はっはっは、冗談だとも!」

京太郎(冗談っぽくなかったよ、こええええええええええ!)
198 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:32:49.45 ID:X/AxWEVq0

〜食後、春の部屋

京太郎「明日から二学期だな」

春「うん」

京太郎「宿題は終わってるよな?」

春「もちろん」

京太郎「となると――あとは明日に備えて寝るだけか」

春「喜んで」

京太郎「ああ、おやすみ。それじゃ、また明日――」

春「違う、そうじゃない」ガシッ

京太郎「え」
199 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:33:29.40 ID:X/AxWEVq0

春「部屋に戻るなら、もう少しやることがある」

京太郎「えぇ……ま、まぁそういうなら……で、なにかあったか?」

春「夏の大会が終わったら、姫様は引退する……元々は姫様のためにできた麻雀部は、これ以上存続する理由はない」

京太郎「それは……元はそうかもしれないけど、春は――」

春「わかってる。私も麻雀が好きだし、下には明星と湧もいる。姫様にはコクマもあるし、まだ部活を終わらせる気はない」

京太郎「そっか……ああ、そうだな」

春「来年のために、もっと強くなりたい……今夜から、時間があるなら京太郎に特訓してもらいたいの」

京太郎「……わかった。春がその気なら、俺もとことん付き合う」

春「うん、付き合って」ポッ

京太郎「ま、学校に影響がない範囲でな」

春「はい」

京太郎「なら、さっそく――とりあえず今日は東風戦にしとこう。俺は北家に入る、春は残りの家だ」

春「……負担が大きい」

京太郎「はは、悪いな。けど、俺が見て方針を決めるなら、なるべく多角的に春の打ち方を見ておきたい。いまの実力も含めて」

春「ん……京太郎がそう言うなら、私はどんなことでも従う」

京太郎「よし、いい覚悟だ……それじゃ、俺に勝ったらなにか一つ、言うことを聞くってご褒美もつけようか」

春「! な、なんでもいい……の?」

京太郎「まぁ、そうだな……あ、対象は俺だけだぞ。俺に誰かをどうにかさせたりするのはなしで、物理的に可能なことで頼む」

春「問題ない」

京太郎「……あの、法外な金額を要求とかもなしな?」

春「わかってる……京太郎は、私をなんだと思ってるの?」ムー

京太郎「すいません……いや、ついな。っていうか、一応?」

春「私も常識は弁えてるから……そんなことはお願いしない。もったいないし」

京太郎「それならいいんだが……なら、さっそく始めるか。確か春の家だと、手積みになるんだっけ?」

春「うん。卓と牌はここ……では、よろしくお願いします」ペッコリン

京太郎「ああ――よろしくお願いします」

 なお、京太郎が圧勝したもよう。


春「……なんで? 三対一なのに」

京太郎「いや、まぁ……ほら、春が三人分考えてる間、俺は一つ考えるだけでいいわけだし」

春「ずるい」プクー

京太郎「そう膨れるなって、な?」ツンッ

春「ふぁい」プシュー

京太郎「よし――なら、今日はここまでにしよう。続きは明日――放課後だな、部活で」

春「ん……おやすみなさい、京太郎」

京太郎「ああ、おやすみ」

春「すぐにお布団敷くから、泊まって行って」イソイソ

京太郎「さぁて、部屋に戻るかな!」
200 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 05:36:30.11 ID:X/AxWEVq0

ひとまずここまで
書けてる分の三分の一ほど、かな?
ここからは、もうちょっと少しずつ投下になるはずです

次の投下は、もうちょっと書き進んだらということで
限りある資源は大切に

それでは
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/22(土) 05:39:12.78 ID:lTP4nJ1iO
まさか帰ってきてくれるとは…!
乙です!
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/22(土) 05:39:44.52 ID:/yxFCt370
乙ー
久しぶりの執事スレのはるるウレシイ…ウレシイ…
なんだかんだ安価スレは書き溜めも出来ないし時間食うよね
203 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/22(土) 06:25:22.80 ID:X/AxWEVq0
あ、そうそう
一日ごとの日程じゃなく、一ヶ月の中でのダイジェストって形になります
15日分全部書くのは大変だからね、仕方ないね
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/22(土) 09:11:39.20 ID:6J3a/Tvoo
>>1が帰ってきた!
>>1のはるるが帰ってきた!
続き待ってます
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/22(土) 16:20:00.01 ID:HCxS2zrSo
待ってた!
出来れば好感度ランキング10位まで付けてた人はゆっくりでもいいから皆やって欲しい
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/22(土) 16:35:54.78 ID:XbvVOKkh0
すばらすぎです
はるるかわいいよ
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/22(土) 16:41:03.56 ID:Rzk1b7vM0
うわ、うわうわうわ!?ホントに帰ってきてた!!
待ってました!今更新されたの確認してないけど、待ってました!!やったー!!
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/24(月) 18:54:41.42 ID:LOfN9DG50
マジかよ
待ってた
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/25(火) 12:27:27.78 ID:m7BHTDt30
>>195の居太郎に笑った

210 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 15:55:53.37 ID:S1bEXKr20

全然書き進んでないけど、年末に備えてちょっとだけ置いておきます
だから年始はたぶんないです
211 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 15:57:18.46 ID:S1bEXKr20

〜それから一週間後

〜二年目9月二週月曜

〜朝

春「――はい、お疲れ様でした。今朝のお務めと修練はここまでにします」

京太郎「ありがとうございました……さて、朝飯の支度をしないと」

春「私も手伝う」

京太郎「春はゆっくりしてていいんだぞ」

春「旦那様にだけ家事をさせるわけにはいかない」

京太郎「俺はどっちかというと執事だし……旦那様というか、主はむしろ春のほうじゃ……」

春「じゃあ主として執事の仕事を手伝う」キリッ

京太郎「……はいはい。まぁ毎朝のことだし、もういい加減、こうして断るのも失礼だよな」

春「そういうこと」

京太郎「では――よろしくお願いいたします、お嬢さま」

春「……それはなかなか。学校でも、一回だけそれでお願い」

京太郎「え……まぁいいけど。だったら、部活中じゃないほうがいいな」

春「いや、部活中で!」

京太郎「な、なんかよくわからんが、わかった……って、しゃべってる場合じゃない。飯と弁当の準備だ」

春「はい。あ、それからお父さんとお母さんも、お昼は京太郎のお弁当がいいって言ってた」

京太郎「あ、はい……ならせっかくだし、昨日仕込んでおいた角煮を使うか。本当は、夕飯用だったんだけどな」

春「なら、帰りは夕食の買い物に行かないと」

京太郎「だな。ちょっと早めに部活は抜けさせてもらおう……って、大丈夫かな。こまちゃん、コクマの選抜も近いのに」

春「今日は初美さんがオフで、コーチに来てくれるって言ってたから平気」

京太郎「ならいいか。よし、じゃあ忘れないようにしよう」

春「朝はどうする?」

京太郎「昨日いただいた干物をメインにしよう。それと、玉子焼きにアレンジを考えたから、それは俺が。で、味噌汁の具なんだけど――」

春「ん、わかった……それなら――」


滝見父「ははは、なかなか睦まじくやっているようだな。善哉善哉」

滝見母「ええ、あなた。あんな上機嫌な春の姿、なかなか見られないですよ」

滝見父「京太郎くんがいないときの寂しげな姿や、電話やメールを確認した瞬間に輝く様も、捨てがたいものだったがな」ハハハ

滝見母「人に感情を伝えるのが苦手なあの子だから、こんな風に恋愛できるか少し不安だったのだけど……京太郎さんのおかげね、これも」

滝見父「機微を察するのが得意だからなぁ、彼は。それに引っ張られてか、春の表情もわかりやすくなっている」

滝見母「ええ、本当に……そろそろ、他家にも根回ししておこうかしら」

滝見父「ははは、気が早いぞ。二人ともまだ若い、可能性はいくらでもあるのだ。他家の娘さん方も、それはそれは魅力的だしな」

滝見母「それはわかっています、だからこそですよ。あんないい子、狙われていないわけがないんですから」

滝見父「だとしてもだ。若人の恋愛に大人が嘴を挟んで、よい結果を迎えた例などない……彼が一番、そのことを知っている」

滝見母「……そうでしたね。だからこそ、姫様のアピールが怖いんですけど」

滝見父「そうさな……姫がご当主になるまで彼が独身なら、それはえらいことになるだろうなぁ。はははは」

滝見母「そこまでいくと、全員の共有財産になっていそうね……」
212 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 15:57:46.52 ID:S1bEXKr20

京太郎「なにか不穏な噂をされている気がする」

春「よくわらかないこと言ってないで、味見して」

京太郎「はい、すいません……ん、うまい」

春「じゃあこれで完成」

京太郎「おう、こっちもだ。さて、運ぶとするかな」

春「はい……あなた(ボソッ」///
213 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 15:58:13.24 ID:S1bEXKr20

〜学校にて

「申し訳ございません。昨日の宿題なんですが、ここをお教えいただけないでしょうか」
「あ、私も! 英語の和訳がさっぱりすぎた!」
「私も……あの、数学を……」

京太郎「ああ。じゃあ近い授業から先に済ませよう。まとめて説明するから、聞きたい人は集まってくれ。じゃ、まず数学から――」

春「…………むー」プクー

モブ子「おやおや、春ちゃ〜ん? ご機嫌ナナメですなぁ?」

春「……そうでもない。でも、京太郎と話せないのが退屈」

モブ子「宿題聞いてくればいいのにー」

春「それは夜に、京太郎から二人きりで教えてもらってるからいい」

モブ子「……あー、はい。ごちそうさまです」モグモグ

春「……なに食べてるの?」

モブ子「京太郎の弁当?」モグモグ

京太郎「お前またかあああああああああああああ!」

モブ子「私の胃袋は宇宙だああああああああああ!」ダッシュ

京太郎「クソァ!」

春「……私の、わけてあげる」

京太郎「あ、ああ、ありがとう……けど、量が少なくなるからな。俺は学食でも行くから、それは春がしっかり食べてくれ」

春「ん。それでも、学食は一緒に行く。角煮せっかく作ったんだし、一つ食べてみたほうがいい」

京太郎「そうだな。じゃあそれだけ、俺のランチとオカズ交換しよう」

春「ん♪」

「ちょっとー、せんせー!」
「あの、最後の問題は……」

京太郎「っと……それじゃ春、昼休みはその約束で」

春「はい……えへへ」ニコニコ

214 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 15:58:50.01 ID:S1bEXKr20

〜お昼

京太郎「春、行こうぜ」

春「うん」ウデクミー

京太郎「おっと……よし、急ぐか。レディースセットは女子じゃないと注文できないからな」

春「レディースセット?」

京太郎「あるんだよ……ほら、あれ」

春「どうして女子校に、レディースセットがあるの……」

京太郎「あー、それな。俺も去年、同じこと思ったよ」

春「それにこれ、女子じゃなくても頼めるみたい……」

京太郎「え、そうなのか!? うおお、清澄では女子しか頼めないから、こっちもそうだとばかり……」

春「………………誰に?」

京太郎「え?」

春「誰に頼んでもらってたの? 咲? 和? 優希? 先輩?」

京太郎(食いつきがすごい……)「えっと、咲だけど」

春「……これ、私のお弁当」スッ

京太郎「あ、ああ。でもこれは春が――」

春「これを持って、席を取っておいて。私がレディースランチ、頼んでくる」フンスッ

京太郎「いや、あの――はい。よろしくお願いします」


春「お待たせ」

京太郎「ああ、サンキュ。おお、うまそうだ……それじゃ、食うか」

春「はい。いただきます」

京太郎「いただきます……ん?」

春「まずは一口。あーんして」ズイッ

京太郎「あ、あーん……もぐ」

春「おいしい?」

京太郎「お、おう……手前味噌になるけどな」

春「じゃあ私も。あーん」

京太郎「……どれがいい?」

春「ほぇへもひぃ」(どれでもいい)

京太郎「では、このミンチカツを……あーん」

春「もぐ……おいしい。ただ、京太郎が作るほうがおいしい」

京太郎「そりゃどうも。んー、なら今夜はミンチカツにするか」

春「じゃあ、それで献立考えて、放課後の買い物?」

京太郎「だな。メニューはまた、休み時間に考えとくよ」

春「うん、お願い……もぐ……」

春「おいしい」パァッ

京太郎「そう言ってもらえると、作った甲斐がある」

春「毎日、京太郎のご飯が食べられる……とても幸せ……」ホフゥ

京太郎「……ありがとな」ポリポリ

215 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 15:59:28.24 ID:S1bEXKr20

〜部活中

小蒔「――といった目撃証言がありました」

京太郎「アッハイ」

明星「ちなみに証言したのは私です」

湧「余計なことは言わなくていいんじゃ……」

明星「ちなみに目撃したのは湧です」

湧「余計なこと言わないで!」

春「問題はないと思う」

小蒔「そ、そんなことありませんっ! 男の子が学内に一人なのに、そ、その人と腕を組んで歩いたり、た、た、食べさせ合いっこしたり!」

小蒔「えっと、その……ふーきに反します!」

春「……食べさせ合いっこは、去年もしてた」

小蒔「!?」

春「だから……今年になって言いだすのは、むしろ言いがかりレベルです」

小蒔「そ、そうなんですか、京くん!?」

京太郎「……まぁ、はい。してましたね、確かに……」

京太郎「……ってか、他校でも」ボソッ

春・小蒔『は?』

京太郎「なんでもありません!」
216 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 16:03:57.59 ID:S1bEXKr20

〜少年少女練習中

京太郎「――あ、やべ。そろそろ買い物行かないと」

初美「えー、まさか勝ち逃げするつもりですかー」

京太郎「そ、そんなつもりはないんですけど……ほら、夕飯の支度とか色々ありますから」

明星「主夫みたいになってますね」

春「明星、黒糖をあげる」スッ

明星「わーい!」

小蒔「あ、あと一局だけ……東風戦だけでも……」

京太郎「んー……いや、やっぱり明日だな。最初に打とう、半荘でしっかりとな」

小蒔「わかりました……」シュン

京太郎「そ、そう肩落とすなって……本番に近い形で打つほうが、実力になるんだからさ……」ナデナデ

小蒔「はい……では、あの……また明日、です」

京太郎「ああ、また明日。それじゃ、お先に失礼します」

初美「おつかれですよー」

湧「お疲れさまです」

他部員『お疲れさまです!』

京太郎「おう。それじゃ行くか、春」

春「ん。じゃあ、お先に」

小蒔「――待ちなさい」

明星「姫様のちょっと待ったが出たー!」

初美「そんな古いのよく知ってますねー」

湧(それ突っ込める初美さんもでは……)

春「……なんでしょう」

小蒔「京くんが買い物に行くのはわかりました。でも、毎度のように春が付き合う必要はないと思います」キリッ

春「そんなことはありません。それは家主権限で京太郎を使用人扱いするようなもの。誰の家にいたとしても、そんな扱いは許さない」

小蒔「そ、それは……そう、なんですけどぉ……」シュン

春「京太郎は部活に穴を開けないよう、まとめ買いで買い物回数も減らしてる。荷物が増えるから、人手がいるだけ。努力を認めてあげてください」

小蒔「きょ、京くんには文句なんてありませんっ!」

春「……逆に考えます。姫様の家に京太郎がいる場合、京太郎一人に毎日の買い物を任せますか?」

小蒔「………………任せません」

春「ついていきますか?」

小蒔「………………はい」

春「なら――私がしても、おかしくないですね?」

小蒔「………………う、うぅー、京くーん! 春がいじめます!」ダキッ

京太郎「えぇ……う、うーん、そう言われても……なぁ、春――」

春「京太郎一人に買い物させたら、私がお父さんとお母さんに怒られる」

京太郎「……そ、そういうことだから、こまちゃ――」

小蒔「じゃ、じゃあ私も行きます!」

京太郎「えっ」

春「ど、どうしてそうなるんですか……姫様にそんなことは――」

小蒔「ぶ、ぶちょー命令です!」

春「部活、関係ないのに……」
217 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 16:04:36.80 ID:S1bEXKr20

初美「おもしろくなってきましたよー」ワクワク

湧「わ、私たちはどうすれば……」

明星「ここは『見』に徹しよう」

「……どう見る?」
「姫様優勢」
「京太郎先輩が一人で逃げるに一票」
「春先輩との逃避行に一票」

京太郎「……大会前なのに、早く切り上げるのは感心しない」

小蒔「う、うぅ……でもそれなら、春だって……」

京太郎「春はその分、家で俺と練習してるから――あっ」

初美「お?」

明星「これは……」

春「京太郎?」

京太郎「よし、こまちゃんも一緒に行こう。それで――家にも来てもらう、いいな?」

春「!?」

小蒔「いいんですかっ!」

京太郎「ああ。春の家に行くなら、こまちゃんの家も文句はないだろ? 一緒に夕飯食べて、それから練習すればいい」

小蒔「賛成です!」

春「あ、う……も、門限は――」

小蒔「滝見の小父さまから連絡していただきます!」

春「しょ、職権濫用っ……」

明星「姫様だけずるいー!」

小蒔「大会があるから、特訓は当然です」キリッ

湧「……もう好きにしてください」

初美「まぁ、三人がいいならいいですよー。あと、ほかの部員も納得するなら、ですけどねー」

京太郎「っと、そうですね……と、とりあえず数日に一回だから、大目に見てくれると助かるんだが……」

「全然オッケーです!」
「その代わり、後日の詳細レポートを要求します!」
「あと、差し入れのお菓子はザッハトルテがいいです!」

京太郎「……わかった。じゃあとりあえず、今日は俺と春とこまちゃんは、ここまでで帰らせてもらうな。みんな、お疲れさま。先に悪いな」

春「……お疲れ。レポートは日誌に上げとく」

小蒔「一緒に書きましょう!」

京太郎「練習しに行くんだぞー、遊びじゃないんだぞー」


湧「……ところで、なんですけど」

初美「あー、はいはい。気づいてますよー」

明星「家に『来て』もらおう。それに、春先輩にも滝見のご当主さまたちにも断ることなく、誘ってましたよね」

初美「まったく、数日も滞在してないっていうのに、家族みたいになってるじゃないですかー」

明星「ああ、お従姉さまになんて説明すれば……」

湧「言わなきゃいいんじゃ……」

明星「なぜか起きたこと全部知ってて、帰ったら事細かに追及される気持ち、わかる?」

湧「ごめん……」

218 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 16:05:22.69 ID:S1bEXKr20

〜買い物

京太郎「今日はミンチカツ。その材料とキャベツと、味噌汁は――」

春「明日は魚。あ、海老が安い……あとは、お弁当の献立と――」

小蒔「お菓子買ってもいいですかっ」

春「ダメです」

京太郎「夕飯入らなくなるから、また今度な」

小蒔「うぅ……」

京太郎「その代わり、夕飯にこまちゃんの好物を一つ、入れてあげよう」

小蒔「わぁい!」

春「……またそうやって、姫様を甘やかす……教育によくない」

京太郎「いや、大会中の永水もこんな感じだったって」

春「私たちは、姫様として敬ってるだけだから」

京太郎「お、俺のも……」

春「全然違う」

京太郎「はい……あ、あの、こまちゃん、そういうことだから……」

小蒔「なにがいいでしょうか……揚げ物をするなら、しょうが天……ううん、やっぱり甘いもの……ああ、でも――」

京太郎「………………」

春「今回だけは許す」

京太郎「……だな」

219 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 16:05:54.06 ID:S1bEXKr20

〜滝見家

滝見母「まさか姫様に足をお運びいただいているとは、つゆ知らず……お出迎えできず、申し訳ありませんでした」

小蒔「いえ、今日は私用ですから大丈夫です」

滝見父「ごゆるりとしていかれるとよい。宗家には私から連絡しておきますので。帰りは車をださせましょう」

小蒔「お願いします――と、言いたいのですが、その……きょ、京くんに送っていただけたら、私はそれで……」

春「……姫様、それは無理。さすがに問題になる」

小蒔「……そうですね。いましばらくは、我慢しましょう」

京太郎「悪いな、こまちゃん――っと、えっと……こ、小蒔先輩」

滝見母「ふふっ……うちにいるときくらいは、構わないわよ」

滝見父「それに京太郎くんが謝ることではない。まぁ、いまは扱いに迷っているというのが現状でな……直に落ち着くだろう」

京太郎「はい……では、ご挨拶はこの辺にしておいて、とりあえず食事にしましょうか」

小蒔「はい、そうしましょう!」

春「いただきます……」ザクッ

滝見父「ふむぅ! なんと見事なミンチカツ……」

滝見母「た、ただのミンチカツじゃないわ、これは――中に卵が!」

京太郎「ふふふ、スコッチエッグ風にしてみました」

春「これは……半熟の、煮卵……?」

京太郎「ちょっと違うな。味付け冷凍たまごというか……そうすることで、カツを揚げても卵が半熟で仕上がってくれる」

京太郎「で、牛ミンチへの味付けも最小限に抑えられるから――肉の旨味が、しっかりと味わえるってわけだ」

小蒔「ご、ご飯が進みます、止まりませんっ」ザクザクザク

京太郎「こまちゃん、野菜もバランスよく、な? キャベツもそうだけど、秋茄子もいいのがあったからな」

小蒔「はい!」

春「むー……姫様にばっかり構って……」

滝見父「はっはっは、賑やかで結構!」

滝見母「しっかり食べていってちょうだいね。姫様に満足なお食事をご提供できなかったと知れたら、お叱りを受けてしまうわ」クスクス

小蒔「はい! ありがとうございます!」モキュモキュ

京太郎「……練習中に、寝ちゃわないようにな」

220 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 16:06:21.40 ID:S1bEXKr20

〜夜練

京太郎「やっぱり寝てるじゃないか(嘆息)」

春「姫様、毎日頑張ってるから……」

京太郎「……まぁ、それはわかってるけど」

春「……京太郎は、たぶんわかってない」

京太郎「え?」

春「学校でも部活でも頑張ってる。でも姫様が本当に頑張っているのは、宗家での姫様の立場」

京太郎「…………ああ、そうか」

春「気を張ってるということはないと思う。だけど、姫様としての振舞いは、やっぱり凛としてないとだから」

京太郎「こまちゃんには難しいよな……そりゃまあ、頑張ってるか」

春「……撫でてあげて」

京太郎「…………ん?」

春「撫でて、労ってあげてほしい。私にはなにもできない、だから京太郎がしてあげて」

京太郎「…………いや、でも勝手に女性の頭に――」

春「私が許す」

京太郎「えぇー……いや、いい。俺の責任で、いつも頑張ってるこまちゃんにご褒美だ」ナデナデ

小蒔「ふみゅぅ……」スヤァ

春「ちなみに……どうやって責任取るの?」

京太郎「えっ」

春「寝ている女性、ましてや姫様の御髪を撫でて、どう責任取るの?」

京太郎「や、あの、そ、それは……マジで?」

春「大丈夫、たとえ話。だから聞かせて」

京太郎「お、脅かすなよ……んー、けど……まぁ俺にできることなんて、傍に仕えることくらいだ。許してもらえるまで、雑用して尽くすかな」

春「一生、かかっても?」

京太郎「う……ま、まぁお姫様相手なら、そういうこともあるか……そうなったら、そうするしかないだろ」

春「……ここに残って、骨を埋めることになっても、いいの?」

京太郎「……真面目なこと言うぞ?」

春「はい」

京太郎「――滝見の家で世話になって、改めてこの土地で暮らして、思ったことがある」

京太郎「俺はこの土地のことが、思ってたより大好きみたいだ」

春「っ!」

京太郎「だから――もし、ずっとここで暮らすことになっても……それはそれで、困らないと思ってるよ」

春「そう、なの……?」

京太郎「まぁ、あれだ……春がいつも助けてくれてるしな。俺が一生ここで暮らすことになっても、助けてくれよ?」

春「助ける。なにがあっても、京太郎を支える……京太郎がそこまで思ってくれていたなら、私も全身全霊で応える」

京太郎「大袈裟だっての。でも――それなら、ここで暮らしていくのもいいかもな」

春「嬉しい……あと、ごめんなさい。変な話をしてしまって。姫様はたぶん怒らないし、宗家も……そのくらいじゃ、たぶん……」

京太郎「たぶんばっかりだな、おい」

春「だ、大丈夫……なにかあったら、守るから……」

京太郎「……ああ、頼んだ。心強いよ」ポンッ

春「…………えへへ」///

小蒔「………………」

221 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 16:07:10.06 ID:S1bEXKr20

〜小蒔ちゃん起きる

小蒔「ふぁ……すみません、寝てました……」

京太郎「大丈夫だよ、いつものことだし」

小蒔「そ、そんなことはっ……ない、と……思い、ますけど……」モジモジ

春「そろそろ御帰宅したほうがよろしいかと」

小蒔「そんな! 特訓してません!」

京太郎「……明日、朝練でもするか?」

小蒔「やります!」

春「急すぎるから、私たち三人だけで、ということなら」

小蒔「では、それで!」

春「では――明日はいつもより30分早く、学校に行きましょう。それで、今日お預けにしてた半荘一回……に、ギリギリ足りる?」

京太郎「妥当なとこだな。じゃあこまちゃん、寝坊しないように――あと、朝の仕事とかで難しいなら、無理しなくていいからな?」

小蒔「京くん……はい、ありがとうございます。大丈夫です、絶対に行きますから」

春「では、その予定にしておきましょう。姫様、お支度してください」

小蒔「はい。春、車まで付き合ってくれますか?」

春「もちろんです」

京太郎「じゃあ俺も――」

小蒔「京くんはだめです」

京太郎「」

春「女の子同士の話があるから」

京太郎「……ごゆっくりどうぞ」

222 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 16:07:36.43 ID:S1bEXKr20

〜ガールズトーク

小蒔「……気づいてましたか?」

春「寝言が止まってましたので」

小蒔「え!? いつもなにか言ってますか!?」

春「たまに……まぁ静かすぎたので。京太郎は気づいてないと思います」

小蒔「うぅ……ま、まぁいいです。それより、いくつか春に命令です!」

春「はい」

小蒔「……お、お買い物は、これからも自由にしていいです。二人で行くのも、仕方ないことですから」

春「ありがとうございます」

小蒔「でも……買い物の次の日は、特訓の日にしましょう」

春「はい」

小蒔「それと……私も、まだ諦めませんから」

春「……私も、確かな気持ちはもらってません。姫様も、霞さんも、巴さんや初美ちゃん、明星、湧も同じです。みんな、同じ」

小蒔「それでも………………いえ、そうですね。では、恨みっこなしで頑張りましょう」

春「はい。京太郎がこの地に残ることは、私的にも公的にも、得難い利益になります」

小蒔「そうですね……あの、いざというときでも……たまになら、シェアできませんか?」

春「……同じ条件をいただけるなら、呑みます」

小蒔「…………この件は、またゆっくりと話し合いましょう」

春「御意」

小蒔「春も貫禄がでてきましたね。いい部長さんになってくれそうです」

春「姫様も、すごくしっかりしています……去年までとは、全然違います」

小蒔「……京くんには、どれだけ感謝しても足りませんね」

春「そのために、尽くしています……いつも、これからも」

小蒔「お願いしますね、春。それでは、また明日……おやすみなさい」

春「おやすみなさい、姫様」

223 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 16:08:16.11 ID:S1bEXKr20

〜ガールズトーク帰り

春「おまたせ」

京太郎「お、おう……あの、なんか悪いことしたか、俺?」

春「うん」

京太郎「」

春「一緒にお風呂に入る準備、できてない」

京太郎「入らねーから!」

春「冗談。大丈夫、本当に女の子同士の話があっただけ。ガールズトーク」

京太郎「な、ならいいけど……髪のことで怒ったのかと思ってな」

春「っ…………寝てたから、平気」

京太郎「ん……ああ、そうだったな。なら、心配しなくてよかったか」

春「うん、そう」

京太郎「さて――それじゃ、明日の朝もちょっと早くなったし、さっさと風呂入って寝るか」

春「うん。先に行ってて、支度したら行くから」

京太郎「俺はあとで入るんで、ごゆっくり!」

224 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2018/12/29(土) 16:11:26.79 ID:S1bEXKr20

とりあえずここまで!
このあとの分が、3章(仮)分くらいしかできてないので、今度こそ書き溜めるまで無理かな
もう3章分くらい書けたら終わりの予定

おかしい、あと2割ほどのはずなのに、先が長い
では、よいお年を
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 16:14:11.30 ID:u+i4yvuR0
乙ーよいお年を
春も小蒔ちゃんも可愛いよ
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 19:24:54.57 ID:RCBhxuwXO

ミンチカツって関西でmのメンチカツの呼称なんだね初めて知った
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 21:03:36.58 ID:f5Wwyvoeo
乙!!
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/30(日) 00:24:40.21 ID:YTANCF45o
旦那様の一歩後ろを袖きゅっと掴んで歩く感じのはるるマジ良妻かわいい
乙です
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/30(日) 01:40:06.00 ID:m2w2Ee5y0
復活していたのですね
本当に良かった
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/30(日) 08:23:22.14 ID:2xAMRrkn0

はるるかわいいよおおおおお
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/01/01(火) 21:18:23.62 ID:wFlK7meW0
とりあえず、春エンドだけで終わりって感じかな?
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 09:28:28.98 ID:7J3mXDAv0
良い!!
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/03(木) 17:00:50.22 ID:Km0qiUVu0
乙!
復活してたの知らなかったぜ!
やっぱこのSSは素晴らしい!!
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/04(金) 10:40:46.56 ID:GYNb4pN10
今更かもしれませんが復活おめでとうございます!
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/19(土) 09:01:15.90 ID:FrTsQftYO
今更ながら…帰ってきてくれてたんだ…
嬉しいなぁ…
236 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/01/28(月) 14:55:44.60 ID:nQbunl160

〜二年目9月二週水曜

〜学校、部活

京太郎「――それです、ロン」

霞「……ふぅ。さすがね、京太郎くん」

京太郎「いえ、いまのは運がよかっただけです」

霞「そう? まぁ、それだけではないと思うのだけれど――それじゃ、感想戦を済ませましょうか」

京太郎「はい」

霞「明星、湧。それぞれに感じた問題点はあるかしら」

明星「は、はい! その、色々とありすぎるというか……」

湧「お二人に振り回されっぱなしで、どうにも……」

京太郎「……俺としては、二人とも委縮しすぎかなって感じたかな。普段は、もう少し伸びやかにやってると思うんだけど」

明星「えっ」

霞「あら……そうなの?」

湧「そ、そんなことは、けして!」

霞「そんなことって、どんなこと?」

湧「」

京太郎「あ、あの、霞さん? 二人も、霞さん相手に委縮してたわけではないと――」

霞「私もそんなことは言ってないわよ?」ニッコリ

京太郎「」

明星「違うんです、お従姉さま! その、えっと、試合が近いので、少し気が張っているだけでして、はい!」

霞「……まぁ、そういうことにしておきましょうか」

京太郎「――ん? ちょ、ちょっと待った……試合って、なにかあるのか?」

明星「やだなぁ、京太郎センパイ、なに言って――あ」

霞「……ちょっと、春ちゃんと小蒔ちゃんを呼んでちょうだい」

湧「は、はい! ただいま!」
237 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/01/28(月) 14:57:12.09 ID:nQbunl160


霞「――で、京太郎くんが知らないみたいだったけど?」

小蒔「……春が言ってるものかと」

春「姫様が言ってるものかと」

京太郎「いや、俺がスケジュール把握してなかったのが悪い……で、試合ってなんなんだ?」

霞「今週末に、隔年開催のちょっとした地方大会があってね。それに今年は永水も参加するのよ」

京太郎「なるほど――道理で、去年はなかったわけです」

小蒔「ごめんなさい。お伝えするのが遅くなって……」

春「私も。家にいると一緒にいるのが楽しくて、事務的なお話はしなくなっちゃう」

霞「…………」

小蒔「…………ずるい」

京太郎「んんっ……と、とにかく、それでみんな集中してたんだな。コマちゃんも、コクマに向けてだと思ってたんだけど、そっちも出るのか」

小蒔「はい! 実戦練習にもなりますし、三年生も参加できますから」

京太郎「なるほど……となると、今日からは試合に向けた調整も考えたほうがいいか……」

霞「うーん、そこまで重く考えなくてもいいわよ? お祭りみたいなものでもあるのだし……」

京太郎「そうですか? まぁでも、あまり根を詰めるのもなんですから、練習時間も長く取りすぎないようにはしておきましょう」

小蒔「はい!」

春「……あ」

京太郎「お? どうした?」

春「……ううん、いい。あとで言う」

京太郎「そうか? なら――いや、ちょうどいいし、ちょっと休憩にしようか。霞さん、いいですか?」

霞「そうね――なら、支度をお願いできるかしら」

京太郎「かしこまりました。あ、明星ちゃん……それに湧ちゃん、手伝ってくれるか?」

明星「はい♪」

湧「かしこまりました」

京太郎「それじゃ、お茶の用意を頼む。俺はお菓子のほうを――」

霞「よろしくね。その間に私は、部長と副部長にお説教しておくから」ゴゴゴゴゴゴ

小蒔「わ、私もお茶のお手伝いを!」

春「私も」

霞「ダメ♪」

小蒔・春「」

京太郎「な、なるべく穏便にお願いしますね……じゃ、行こうか」メソラシ

明星「了解です!」タキアセ

湧「それでは失礼します」ソソクサ

小蒔・春「」
238 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/01/28(月) 14:58:16.31 ID:nQbunl160

〜部活後、帰宅

春「……ひどい目に遭った」

京太郎「う……すまん」

春「ううん。伝え忘れたのが悪い……京太郎と一緒にいすぎて、ちょっと油断が出てた」イマシメ

京太郎「まぁ、気をつけるに越したことはないけど……あんまり肩肘を張らないようにな。あ、それと――」

春「あのとき、言いかけてたこと?」

京太郎「ああ。なにか思いついた感じだったけど、試合のことか?」

春「そう。ただ、試合内容とかじゃなくて……京太郎にお願いがある。というより、賭け?」

京太郎「む……春がそういうことを言いだすのは珍しいな。どんな賭けだ?」

春「ん。永水が決勝に残って、私に回ってきたとき、そこで飛ばして勝てたら――」

京太郎「勝てたら?」

春「次の日、一緒におでかけしたい」

京太郎「…………」

春「だめ?」

京太郎「いや……まぁ、その……いいんじゃないか?」ポリポリ

春「よかった……」ホッ

京太郎「俺も、せっかく一緒に住んでるんだし、春とどっか行けたら――とは思ってたからな。ただ……」

春「京太郎に誘われるのを待ってたら、今月が終わっちゃうと思って」

京太郎「ごめんなさい! いや、その、なかなか機会が……」

春「冗談。でも、あくまでご褒美として……だから」

京太郎「……ああ、わかった。飛ばせたらってことで、約束だ」スッ

春「ん……」ユビキリー

京太郎「その……あんまり力まないようにな」

春「わかってる」

京太郎「……あと、無理な打ち方はするなよ? 飛ばせなくても、次は……改めて俺のほうから誘うから、な?」ポンッ

春「本当?」

京太郎「た、たぶん……」

春「……そんな風に言われたら、わざと負けそう」クスッ

京太郎「げっ……言わなきゃよかったか?」

春「ううん、大丈夫。ちゃんと打つし……勝てなくても京太郎が誘ってくれるって思えば、リラックスできる」

京太郎「そうか。ならよかった」

春「……ちゃんと、誘ってね?」

京太郎「……善処します」

春「はい。よろしくお願いします」ニコッ
239 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/01/28(月) 15:01:00.11 ID:nQbunl160

〜二年目9月二週連休初日

〜とある競技会場

京太郎「なるほど、こういう大会……というか、イベントみたいな感じか」

春「そう……だから、半分はお祭り」

霞「元は高校生主体の大会だったのだけれど、子供たちも集まるようになって、プロも噛んできて、規模が大きくなったのよね」

初美「おかげで参加校も増えて、ふるいにかけるのもなんだかなーってことで、全チーム参加ってわけです」

明星「トーナメント一つに16チームが参加して、初戦を一位で抜ければ二試合目に進出、そこでトップなら優勝です」

京太郎「――え、二試合しかないのか?」

湧「トーナメント自体がいくつもありますから、優勝校は多いんですけどね」

京太郎「まぁ、九州全部から集まってるわけだしな……そうか、二試合か……」

小蒔「私たちも、目指せ優勝、です!」フンッ

京太郎「ん……ああ、そうだな。個人戦はないから、俺はエントリーしてないけど、応援は任せとけ」

明星「勝ったね。お風呂入ってくる」

湧「選手でしょ、あなた……というより、すでに周囲からの視線がすごいです……」

初美「……京太郎、このお面つけててくださいー」

京太郎「なんですか、このごっついお面は……」

霞「そのほうが悪目立ちしちゃうんじゃない?」

京太郎「騒ぎになるようなら、適当に隠れますから……なんか芸能人みたいになってるな……」

小蒔「むー、まんざらでもない顔してますねっ」

京太郎「い、いや、そんなことは――お、あれが子供麻雀教室か」

小蒔「あ、話を逸らしました!」

京太郎「そ、そういうんじゃなくて……って、なんかすごい人気じゃないか?」

春「すでに大盛況……あれ?」

霞「……見なかったことにしない?」

初美「無理ですよー、気づかれてます」

明星「しかもこっち来ますけど」

湧「ニッコニコですね、ニッコニコ」

240 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/01/28(月) 15:03:18.56 ID:nQbunl160
良子「おや、これはこれは。私の可愛い弟子に従妹、それに永水女子の麻雀部ではないですか。お揃いで……今日は大会に出場を?」

春「白々しい……」

小蒔「驚きの白さです」

京太郎「ご無沙汰してます。良子さんは、麻雀教室の先生ですか?」

良子「こうしたイベントで、地元――出身地の活性化を図るのも、プロの務めですからね。あとは、子供たちに麻雀の楽しさを伝えるのも」

京太郎「とても素晴らしい考えだと思います」

良子「ふふ、そうでしょうそうでしょう。ああ、すっかり捻くれた従妹や後輩たちと違って、我が愛弟子は素直でいい子ですね、よしよし」ハグッ

京太郎「ちょおっ!?」

霞「……ご無沙汰しております、良子さま。ですが良子さまも顔の知られたお方ですし、このような軽率な振舞いは慎まれては?」ニコッ

良子「弟子との抱擁も、師匠としての務めなので」ギュー

京太郎(おほぉ、おもちが……)

春「……離れて」グイグイ

小蒔「そ、そうですっ、皆さん見てらっしゃいますし!」グイグイ

良子「おや、そうですか? では見せつけてやりましょうか」ギュー

「おー、なんだなんだ!」
「エッチか! エッチすんのか!」
「いや、シュラバだよ、シュラバ!」
「ニンジョーザタに発展すんのか、これ!」

明星「うわぁ……」

湧「擦れた子供たちですね……」

「プ、プロになれば、あんなかっこいい人と付き合えるの……?」
「誰よ、プロ雀士は婚期が遅れるとか言ってたの!」
「私も教室参加する! あのせんせーに教えてもらいたい!」
「イケメンを捕まえる方法、だね!」

明星「oh……」

湧「世も末だわ……」

利仙「まぁまぁ、そう仰らずに。日頃が平和なものですから、刺激に飢えているのですよ」

明星「そんな子供イヤですよ……」

湧「そもそも、平和な県ばかりでもないし――って!? あなたはっ……」

京太郎「あ、利仙さんじゃないですか」

霞「なんですって!?」キッ

初美「はいはい、落ち着くですよー」

利仙「お久しぶりですね、京太郎さん。戒能プロも、本日はよろしくお願いいたします」

良子「利仙、早いですね」

利仙「いえ、戒能プロほどでは……永水の皆さんも、お久しぶりです。大会のほう、どうぞ頑張ってくださいませ」

霞「言われなくとも勝つわよ、永水は!」

小蒔「か、霞ちゃん、激励してくださってるんですから……」

京太郎「ありがとうございます、利仙さん。利仙さんも、麻雀教室ですか?」

利仙「はい。あとは母校の応援にと――あの、戒能プロ? わたくしもよろしいでしょうか?」

良子「…………まぁよいでしょう」

利仙「ありがとうございます」

京太郎「え、あの――おほっ!?」

利仙「戒能プロが前から抱きつかれていますので、背中のほうを失礼いたします」ムギュ

霞「ごるぁあああああああああああああ!!!!!」

明星「ああ、お従姉さまが!」

湧「人に見せられない顔してますね……」
241 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/01/28(月) 15:03:47.50 ID:nQbunl160

初美「と、止めたほうがいいですかねー、これは――」

春「そう、止める……その辺にしておくべき、そうすべき」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

小蒔「藤原さん……じゃない、えっと……ふ、藤原プロ! 離れてください! 良子さんもですっ!」

利仙「お断り申し上げます」ニッコリ スリスリ

良子「ミートゥー」ギュー ムニュムニュ

京太郎「やややややや、やばいですって、この状況――ほ、ほら、マスコミとかも来てますしっ……」ムクムク

良子「ほう、望むところではないですか」

利仙「早めに来てくださるとありがたいのですが……」チラッ

「おい、あれ! 戒能プロと藤原プロだぞ!」
「なにやってんだ……お、男に抱きついてる!?」
「おお、シャッターチャンス――って、あれ?」
「ああ、なんだ。派遣執事か……」
「うーん、目新しいネタにはならないな……」

明星「マスコミが仕事してない!」

湧「いや、むしろいい仕事なんじゃ……」

良子「シット! 使えない連中ですね……」

利仙「京太郎さん、普段いったい、どのようなことを……」

京太郎「お、俺はなにも……いや、本当に――本当だからな!?」

春「……ふーん」

小蒔「そーですかー」

初美「さて、そろそろ受付に向かうとしましょうかー」

明星「あ、えっと……そ、それでは、失礼します」

湧「須賀さんも、ほどほどにして、いらしてください」

霞「女狐に噛まれないよう、気をつけてね」

京太郎「ほっとかないで! お、俺も行きますので、またあとで――し、失礼しますっ」

良子「おっと……ふむ、いまの身のこなし……」

利仙「スルリと抜けられてしまいましたね」

良子「滝見の小父さまが、ああした体捌きも得意だったはず……すでに相当の手合わせをしているようですね……」

利仙「難しい顔をされていますが?」

良子「……京太郎が春の家に身を寄せている、というのは本当でしたか……これはこまめに足を運んで、監視すべきかもしれませんね……」ブツブツ

利仙(あ、これなにか企んでるときですね……そっとしておきましょう)
242 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/01/28(月) 15:04:15.15 ID:nQbunl160

〜会場ロビー

京太郎「くそっ、はぐれちまった……」

煌「おや――京太郎くん、お久しぶりですね」ポンッ

京太郎「え……煌さん! ということは、新道寺も参加されるんですか?」

姫子「そん通りよ!」

朱里(友清)「まぁ、三年は引退しとーけん、私ら主体ばなっとるけどな」

京太郎「では、お二人は応援に?」

姫子「兼マネージャー、いうとこやね」

煌「とはいえメインは、お祭りの雰囲気を楽しむことですよ。姫子は特に、コクマの前に息抜きをさせておきたいので」

朱里「そっちも、お姫様はそがん立場やなかか?」

京太郎「あー……コクマに向けて練習したいってことで、参加予定だよ」

姫子「ふぅん? あの神代小蒔なら、必要なかち思うとやけど……」

煌「そういうことなら、姫子も参加しておけばよかったですね」

姫子「まぁ今回は研究に徹しとくちゅうことで……そいよか京太郎、久しぶりよ!」ダキッ

京太郎「あ、はい……お久しぶりです。朱里も、久々だな」

朱里「う……そやね、えーっと……ちゃんと言うとらんかったと思うけど……全国優勝、あと春夏連覇、おめでとう」

京太郎「おう、サンキュ」

姫子「二年も一年も会いたがっとうし、ちょっとうちらのとこに寄ってかんね?」

煌「……確かに喜ぶとは思いますけど、いまの京太郎くんは永水の子ですから。ね?」

京太郎「……そうですね。申し訳ありませんけど、試合前は遠慮しておきます」

姫子「そ、そがんかぁ……」

朱里「トーナメントは別枠に入っとるけん、当たらんしええんやなか?」

姫子「そや!」クワッ

煌「姫子……あのねぇ――」

京太郎「ま、まぁまぁ……でも、確かにそうですね。ただ、うちも準備がありますから――あ、そうだ」ゴソゴソ

朱里「え」

姫子(な、なんもない空間に手を!?)

煌(すばら!?)

京太郎「これ――糖分補給のために作ったクッキーです。差し入れってことで……よろしかったら、皆さんでどうぞ」

煌「こ、これはどうも……ですが、永水の皆さんの分は?」

京太郎「そっちは別に作れますし、持ってきたのはクッキーだけじゃありませんから」

朱里「ピクニックか! なんでそんなお菓子ばっかり持ってきとうよ……」

姫子「はぁ、やっぱり一緒の学校がよかぁ……」ウルッ

煌「はいはい、過ぎたことは仕方ないでしょう。私たちもそろそろ行きますよ……京太郎くん、永水の皆さんにもご武運を」

京太郎「はい、伝えておきます。では、俺もこれで――」

朱里「また、その……試合後に、会えたら……会おな?」

京太郎「おう、そうだな」

姫子「きょ、京太郎ぉ〜〜〜〜〜〜っ! またっ、またねぇ〜〜〜〜〜〜っ!」ブンブン

京太郎「はい、また。それでは、失礼します」
243 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/01/28(月) 15:04:58.99 ID:nQbunl160

〜永水集合場所

京太郎「お、遅くなりました……すいません、はぐれてしまって」

春「京太郎!」ビュンッ

小蒔「し、心配しましたぁっ……」トテトテ

霞「ごめんなさいね、意地悪な態度を取ってしまって……あの二人が絡むと、つい――」

京太郎「いえ、こちらこそ……あと、新道寺の皆さんにお会いしまして。お互い頑張りましょうって、激励をいただいてきました」

初美「ご苦労さんですよー」

明星「こっちは受付も終わりまして、あとは試合時間待ちです」

湧「これは須賀さんの入場証です。一応、選手の控室があるエリアにも入れるようになりますので」

京太郎「おう。ありがとう、湧ちゃん」

湧「い、いえ……」

霞「それじゃ、全員揃ったことだし、行きましょうか。九州赤山高校には負けないように!」

京太郎「…………ああ、利仙さんとこの」

明星「どうしてこの二校で当たるんでしょうね。鹿児島のトップ2なのに」

湧「抽選だから、ある程度は運だよ」

小蒔「腕が鳴ります!」フンッ

春「京太郎、見ていて」キリッ

京太郎「ああ。心配はしてないけどな、春は強くなったし」ナデナデ

春「ん……」ニヘー

霞「……京太郎くん、春ちゃんばかり甘やかさないように」ゴッ

京太郎「す、すいません」ヒエッ

霞「……撫でるなら、全員撫でて鼓舞してちょうだい」

小蒔「霞ちゃんナイスアイデアです! お願いします!」

京太郎「えぇ……まぁ、はい」ナデナデ

明星「次、お願いします!」

湧「……わ、私はいいです」

初美「じゃあ代わりに私ですよー」

霞「では、最後は私が――」

京太郎(もう一人、二年がいるんだけど……お前もする?)チラッ   ※並び 小蒔→二年A→春→湧→明星

二年部員(私のことは気にしないで! というか、霞さまに目をつけられたくないの!)パチパチ

モブ子(この子もこう言うとるわけやし、ええんやない?)バッチーン

京太郎(なんで関西弁やねん、ってかなんでいるんだよ)ジロッ

霞「……目と目で会話しない」

二年部員「ひっ」

京太郎「か、霞さんも、撫でさせていただきます!」ナデナデ

霞「あらあら♪ なんだか昔に返ったみたいで、懐かしいわねぇ」

京太郎「ふぅ……さて、それじゃ行きましょうか」
244 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/01/28(月) 15:06:22.11 ID:nQbunl160

〜控室?(大部屋、複数校と一緒)

ザワザワ ガヤガヤ ワイワイ

京太郎「まぁ、この規模ならこうなるよな……どうぞ、お茶が入りました」

春「ありがとう……いい香り。レモングラス、ミント、ハイビスカス、ローズヒップ……ジンジャー、アップル、パイン……あとはわからない」

京太郎「いい線いってる。あとはダンデリオン、ジュニパーベリー、フェンネル、パパイヤビッツ、サワーチェリー、グレープ、ラズベリー、ローズマリー、ステビア、マリーゴールド、サフラワーだな」

初美「魔法かなにかですかー?」

京太郎「全部ハーブです。フェンネルはダイエット効果もあるそうで、これからの季節にピッタリかと」

霞「へぇ……」コク

京太郎「他意はないです!」

霞「ん、おいしいわ」ニコッ

京太郎「よ、よかったです……あ、これはお茶請けにどうぞ。ドライフルーツを使ったマドレーヌです」

明星「う、おいしい……これはまた、食べ過ぎて太っちゃうかも……」

湧「あ、明星……」

明星「あ」

霞「………………」

明星「違うんです、お従姉さま!」

「ほ、本当にやってる、お茶会……」
「派遣執事って、本当にあんななんだ……」
「ごくりんこ……」

京太郎「……よろしければ、皆さんもいかがですか? いまお席をご用意しますので」

「椅子!? テーブル!?」
「どこから……」

京太郎「大勢で観戦したほうが、盛り上がりますからね……さ、どうぞ遠慮なく。お嬢様方」ニコッ

『んはぁっっ!!』ビビクンッ

湧(……これは勝てそう)

明星(男性耐性のない箱入り麻雀選手じゃ、戦意は削がれる一方でしょうねぇ!)

初美「……あの、姫様がいまだかつてない迫力で試合してるんですが、こっち見えてるんですかねー?」

霞「午前と午後に分かれているとはいえ、二試合あるのだから、あまり飛ばしすぎないほうがいいのだけれど……」

京太郎「おかしいな、一回戦は素の状態で打とうって言ってたのに……寝てる?」

春「寝たものは仕方ない。二回戦は私たちでなんとかする……ということで、おかわり」

京太郎「ご用意しております、お嬢様」

春「ありがとう……あと、中堅に回るようなら、髪を――」

京太郎「ん、結い直しだな、了解。なら、先に梳いておくか。いったん解くぞ?」

春「はい」サラッ

京太郎「……やっぱ綺麗だなー、春の髪は」

初美(ハーブティーがゲロ甘になってきたですよー)

霞(ああっ、小蒔ちゃんの打ち筋が激しくっ……)

湧(これは飛びそうですね……)

明星(はい、飛んだ)
245 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/01/28(月) 15:07:59.11 ID:nQbunl160

〜日程終了後

京太郎「優勝おめでとう」

小蒔「ありがとうございます!」

春「決勝なのに、湧と明星まで回せなかった。ごめん」

湧「いえ、問題ありません。今大会は、コクマに出られるお二人がメインでしたから」

明星「京太郎センパイのお弁当も食べられたので、それだけで十分です」

初美「……はるる、こんなに強かったですかー?」

霞「……髪を結び直したのと、なにか関係あるのかしら」

春「あります」

霞「そうなの!?」

春「――愛の力」キリッ

初美「じゃ、暗くなる前に帰りますかー」

小蒔「晩御飯、食べて帰りましょう!」

湧「屋台も出てますし、買って参ります」

明星「こういうのはみんなで回るのがいいんだよー」
246 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/01/28(月) 15:08:28.76 ID:nQbunl160


春「……むぅ」プクー

京太郎「……あー、その……いや、本当によくやったと思うぞ?」

春「愛の力」キリッ

京太郎「…………なぁ、あの約束なんだけど」

春「決勝で、飛ばして、勝った」

京太郎「う……けど、あの……二試合しかないってのは、ここにきて初めて聞いたわけで……」

春「聞かれなかったから」

京太郎「うぐ……確かに、確認しなかったな。それに二試合だろうと十試合だろうと、運要素の強い麻雀で飛ばすのは難しいし……」

春「頑張った」ムフー

京太郎「……どっか、行きたいところあるのか?」

春「京太郎に考えて欲しい」

京太郎「……なら、また海でも行くか。こっちの海って行ったことないし」

春「……新道寺で行ってた」

京太郎「か、鹿児島では行ったことないから……」

春「ふふ」

京太郎「……嫌か?」

春「ううん。京太郎が誘ってくれたなら、どこでも行く、喜んで」

京太郎「……そっか」ポリポリ

春「うん、楽しみ」

京太郎「――あ、そういやいまさらだけど、家の仕事とかは大丈夫なんだよな?」

春「平気。じゃあ、改めて約束……ゆーびきーりげーんまーん」

京太郎「うーそつーいたーら……」

春「……京太郎の持ってきた本、全部すーてるー……指きった」

京太郎「やめて! いや、持ってきてないけど!」

春「なら、平気?」

京太郎「う……お、おう、そうだな……っていうか、約束は破らないしな」ナデナデ

春「うん……ありがとう」

京太郎「どういたしまして……そんじゃ、俺らも屋台行くか」

春「はい」キュッ
247 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/01/28(月) 15:10:36.54 ID:nQbunl160

よし、今月分終わり!
次はまた、もう一章書けたときに
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/28(月) 20:17:35.77 ID:Vb8WuwhJ0
乙ー
やっぱりたくさんキャラが出てるのを見るのは楽しい
…書くのは大変だろうけど
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/28(月) 21:35:28.81 ID:Lo2o5q3Eo
乙です
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/29(火) 10:13:54.82 ID:TtGteo8Zo

はるる見たさに過去スレ読み返してます
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/29(火) 15:04:35.93 ID:FMiq8T52o
乙!!
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/29(火) 16:25:55.39 ID:xi9hHuD90
乙!
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/30(水) 10:31:14.56 ID:e+FiVunZ0
はるるかわいいな
254 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/03/03(日) 19:00:47.84 ID:C92gNRTN0

〜二年目9月二週連休二日目

〜海 デート2回目

京太郎「うーん、波が高くなってきたな」

春「そろそろ帰る?」

京太郎「まぁ……そうだな、そうするか。ある程度は釣れたし、夕飯には十分だろ」

春「よかった……泳げなかったのは残念だけど」ピラッ

京太郎「スカートをめくらない!」

春「水着だから平気」

京太郎「スカートをめくるのは平気じゃないから!」

春「京太郎になら平気。下から覗いてもいい」ピラピラ

京太郎「………………」

京太郎「い、いやいや……春、恥じらいをもってくれ。心配になるから」

春「京太郎にしかしない……」

京太郎「えーっと……は、恥じらってるほうが、その……可愛いぞ?」

春「!」

京太郎「そういうことだから、こういうのはあんまり――」

春「恥ずかしい、けど……京太郎のためなら……」モジモジ ピラッ

京太郎「そういうことじゃなくて!」

春「せっかく京太郎がくれた水着なのに、一回しか見せてないから、見せたかった」

京太郎「う……ま、まぁあれだ。そのうちまた、時期がきたらな……なんだったら、温水プールにでも行けばいいし」

春「……嬉しい」

京太郎「ん?」

春「約束……あの……次は、京太郎から誘ってくれるって……」

京太郎「ああ――そうだったな。なら、来週にでも行ってみるか?」

春「行く。でも温水プールなら、お風呂でも同じ……いっそ家で、水着に混浴――」

京太郎「よし! その辺の計画のためにも、早いとこ帰るか! さ、支度するぞー」

春「はい」

京太郎(ふぅ、危ないところだった……しかし、なんというか……最近の春は、いままでにも増して無防備というか……)チラッ

春「…………(黙々と作業中)」

京太郎(……懐かれてるというか、その……意識させられるというか、なんというか……)

春「どうかした?」

京太郎「っ……いや、別に――ん?」

春「ん?」
255 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/03/03(日) 19:01:17.67 ID:C92gNRTN0

京太郎「なぁ、春……あれ――」

春「――っ! 京太郎、これ見て!」グイッ

京太郎「うおっ!?」グリンッ

春「……落ち着いて、あっちを見ないで。大きな声もださないように」

京太郎「あ、ああ……なんか、やばいやつか?」

春「京太郎が見たのは倒れた石碑? それとも――」

京太郎「…………子供だ」

春「絶対に見ちゃダメ。このまま、なにもなかったように支度して、見ないように帰る……できれば意識もしないで」

京太郎「……わかった。その、帰ったあとは……」

春「お父さんたちに伝えれば、対応する人たちが動いてくれる。私たちは無事に帰れば大丈夫」

京太郎「わかった……そんなにまずいのか?」

春「よくて死ぬ。悪くて――」

京太郎「いい、言わなくていい。荷物はまとまったし、急いで帰ろう」

春「ん」

京太郎「手、繋ごう」

春「ん」キュッ

 京太郎の目に見えたのは、倒れた石碑の上に座る、年端もいかない少年だった。
 すでに暗くなった海辺に一人でいる、そんな少年に違和感を覚えたのだが――いわゆる、見えてはいけない相手だったらしい。

京太郎「……これ、春のおかげってことだよな」

春「見えるようになっただけで、見分け方を教えなかった私のミス。反応したらだめなのは教えてたのに」

京太郎「……春がいてくれてよかったよ」

春「ごめんなさい」

京太郎「謝らなくていい。あと、なにかあったら指示してくれ……絶対に、春だけは守るから」

春「私より、京太郎は自分を大事にして。私は一人でも――」

京太郎「死ぬのがマシって相手に、なにもできないだろ……それより、スマホとか通じないのか?」

春「影響が出て、こっちの察知が知られたらおしまいだから……」

京太郎「わかった」

 黙々と歩く二人の視界に、少年は映っていない。
 けれど強い視線は横から、そして歩くうちに斜め後ろから、痛いほどに感じられる。
 知らず、握り合う手には力がこもり、じっとりとした汗が滲んでいた。

京太郎(いざとなったら、飛雷神……いや、神威で飛ぶか? けど、二人で飛んだことはないからな……)

春「――京太郎」

京太郎「お?」

春「なにか方法があるなら、一人でも逃げて。二人で逃げられないなら、一人でも帰らないと大変なことになる」

京太郎「……ああ、わかってる。けど、いきなり動いたら気づかれるだろ。しばらくは普通にしてよう」

春「ん……ありがとう」

 春の声と手の平の温もりが、心に余裕を与えてくれていることに、京太郎は気づいていた。
 だが、安堵しているわけにはいかない。
 視線は斜め後ろから真後ろへ――それも、すぐ後ろに移動し、張りついてきたからだ。

春「…………」ギュッ
256 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/03/03(日) 19:01:51.32 ID:C92gNRTN0

 春の手に力がこもったことで、京太郎は察することができた。
 ここからは彼――子供についての話はできないこと。
 会話をするなら、他愛のない話に限るということ。

京太郎「ゆ――夕食、手をかけないとな」

春「うん。お魚屋さんに寄る?」

京太郎「いや、俺が捌くよ。タコは時間がかかるだろうから、明日に回すけどな」

春「じゃあスズキとサヨリ」

京太郎「ああ。あとはキスだな」

春「キス」

京太郎「スズキは香草焼きにしよう。で、サヨリでお吸い物と刺身――炊き込みご飯もいいかな」

春「キス」

京太郎「キスは天ぷらかな、やっぱり」

?「キス」

京太郎「あとは唐揚げなんかも――え」

春「京太郎――」

?「キス、しないの?」

京太郎「しねぇよ! あ――」

?「…………」クスクスクスクス

春「京太郎、逃げて!」

 ドクンッ――と鼓動が跳ねる。
 そのとき聞こえた声は、京太郎のすぐ耳元だった。
 振り返らずにはいられない位置と距離、そこにやった視線に移り込む、少年の真っ赤に裂けた口――。

春「京――」

京太郎「春、離れるな!」

 強く手を握り締めた瞬間、京太郎のチャクラが二人を包み、その身体を移動させようとする。

 傍目には一瞬のワープと見える術式だ。
 実際に、時間も経過することはない。
 けれど術者にとっては、異空間のようなトンネルを経て、別の場所へ向かうような移動方法である。

 その空間に他者を伴うのは初めてのこと、どんな異常が起きるかはわからない。
 けれど――。

京太郎(あれの気配はついてきてない……なら、なんとか……家まで、帰れれば――)

 これなら逃げ切れる、であればやるしかない。
 その一心で京太郎はチャクラを練り、自分と春を自宅へと飛ばす。

京太郎(っ……ぅっ、おぉ……これは、きつ……いっ……)

 チャクラの消耗は二倍どころではなく、秒単位で数十倍もの量が削られていた。
 視界が眩み、霞み、意識が遠のきかけるのを必死に繋ぎ止め、京太郎は転移先を目指す。

 ここで意識を失えば術は途切れ、二人はあの場所へ取り残される。
 あのおぞましい人外のいた場所で、無責任に気絶し、春を一人にしてしまうことになる――。

 そのことへの恐怖が京太郎の意識を繋ぎ止め、暗がりを抜けさせ、見慣れた光景へと誘っていた。

京太郎「――がっっ! はぁっ、はぁっ……やった、か……?」

春「あ……えっ!? なんで、家に……きょ、京太郎……?」

 春の戸惑った声が、心に安堵を与えてくれる。
 狭まり霞んだ視界に映るのは、いつしか見慣れていた門構え、古いながらも立派な和風建築。

 なんとか無事に、彼女を連れ帰ることができたようだ。
 そのことに胸を撫で下ろしつつ、京太郎は足を進めようとし――。

京太郎「ぁ――ぅ……」

春「京太郎っっ!!」

 敷地の砂利石を踏みしめたところで、京太郎の意識はプツリと、電源を切られたように途絶えた。
257 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/03/03(日) 19:02:45.34 ID:C92gNRTN0

〜二年目9月三週月曜

〜早朝

京太郎「――ん……お……?」

 自然な目覚めのようにパチリと目が開き、身体を起こそうとするが、妙に関節が硬かった。

京太郎「ここは――そ、そうだ、確かっ……つぅっ……」

 固まった関節をギシリと軋ませ、布団から起き上がろうとする。
 それを押し止めるのは、目の前に伸びた白い手。

霞「無理しないで。そのまま寝ていてちょうだい。必要なものがあれば、私たちが用意するから」

京太郎「霞、さん……それじゃ、ここは……」

霞「ええ、霧島――滝見家よ。どうやら、帰ってきたことも記憶に残ってないようね」

京太郎「いえ、それは、なんとか……一瞬、夢だったんじゃないかと思っただけで……」

霞「それを覚えてないって言うのよ」

 クスクスと笑う霞だが、その顔には色濃い憔悴が滲んでいた。

京太郎「寝てないんですか……?」

霞「ええ、一番年上だもの。だけど、おかげで得しちゃったわね」

京太郎「はぁ……そうなんですか?」

霞「……目が覚めた京太郎くんと、一番に会話できたじゃない」

京太郎「あ、と……お、おはようございます……で、いいんですかね? 時間……」

霞「ええ、おはよう……いまは、四時半かしら」

京太郎「ちょっと早めですね……あっっ……つぅっ!?」

霞「ちょっ……だ、だめよ、急いで起き上がろうとしちゃ! なにかいるなら、私に言ってちょうだい……」

京太郎「じゃなくて――春っ……春は、無事ですかっ……それに、あいつは――」

霞「……春ちゃんなら、ついさっきまで目に隈こさえて看病していたわよ。仮眠を取るように言いつけて、さっきようやく寝てくれたの」

京太郎「そ、そう、ですか……よかった、春っ……あいつにもしものことがあったら、俺はっ……」

霞「………………もう一つの心配事のほうだけれど」

京太郎「あ、はい! その、それは……うまくいった、ん……ですよね?」

霞「ええ。春ちゃんが相手の正体をきちんと教えてくれたから……封じの石碑も戻されて、周辺区域も立ち入り禁止になっているはずよ」

京太郎「………………ありがとうございました。それと――」

霞「もし謝ろうとしているなら、その必要はないわ。というより……お礼を言いたいのも謝るのも、むしろこちらのほうね」

京太郎「いや、俺はなにも……」

霞「春ちゃんを連れて帰ってきてくれた。おかげで情報が伝わった……迅速に術士が動けて、被害が出る前に事態を収拾させられたわ」

霞「あなたのおかげよ、全部……本当に、ありがとう――ありがとうございました、須賀様」

京太郎「……その呼び名は、あんまり好きじゃないです」

霞「色んな人に言われるだろうから、慣れておいたほうがいいわよ?」

京太郎「ほかの人はいいですけど……永水のみんなに呼ばれると、寂しくて泣きますね」

霞「そう……なら、京太郎くん……ありがとう。春ちゃんと、霧島を守ってくれて……ね」

京太郎「いえ。なんていうか……俺も、この町が好きですから……できることをやって、その結果で守れたなら……やったかいがありました」

霞「……霧島は、あなたを遠ざけた場所なのに?」

京太郎「はは……そっちは覚えてないことですから。俺にとっては、いま生活しているこの霧島が、俺の好きな霧島です」

霞「っ……ありがとう、京太郎くんっ……」ギュッ

京太郎「………………」
258 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/03/03(日) 19:03:21.50 ID:C92gNRTN0

京太郎(おもちに顔が挟まってる。これは死んだね、俺)

春「……………………………………なに、してるの、霞さん」ゴッ

霞「え」ビクッ

京太郎「え――は、春っ!?」グイッ

春「京太郎……霞さんと、抱き合ってた……なに、なにがあったの?」

京太郎「そんなことより、春! 大丈夫なのかっ、身体――なんともないか!? それに、さっき寝たとこだって……まだ寝てたほうが――」

春「え、あ、あのっ……だい、じょうぶ……です……寝たのも、仮眠で……二時間も寝たら、スッキリで……それより、京太郎のことが……」シンパイデ

京太郎「……大丈夫、なんだな?」

春「…………ん」コクン

京太郎「よ……かった……よかった、春っ……」ググッ

霞(あらあら)

春「京太郎、無理に動いちゃだめっ……」スッ

京太郎「なら、こっちに……」グッ

春「わ、わかったから……本当に、動かないで……休んでて、京太郎……」ウルッ

京太郎「ちゃんと、確かめさせてくれ……春っ……」ダキッ

春「はうっ……あ、あのっ……」ダカレッ

京太郎「あぁ――ちゃんといる、春……無事で、よかった……春ぅ……」ギューッ

春「京太郎の、おかげ……ありがとう……」ギュッ

霞(………………)スススッ スー パタン

春「…………私はここにいるから。京太郎、もう少し休んでて」

京太郎「あ、ああ……そうだな……そうするか」ギュー

春「…………あの……」ギュッ

京太郎「……すまん、もうちょっとだけ」ギュー

春「…………はい」ギュッ スリスリ


京太郎「…………釣ってきた魚、どうなったんだろ」ギュー

春「……たぶん、冷凍されてる」スリスリ

京太郎「解凍してから捌く、しかないか……」

春「捌かれたあとだと思う」

京太郎「ん……そか」

春「うん……」

京太郎「……治ったら、ってか……動けるようになったら、ちゃんと料理するからな」

春「うん……それまでは、寝てて」

京太郎「ああ、そうする……春も、ちゃんと寝てくれよ」

春「…………ここで寝ていい?」

京太郎「ああ……そうしてくれたほうが、俺も嬉しい」

春「はい……じゃあ、失礼します」ススッ

京太郎「手だけ、握っててくれな……」キュッ

春「うん」キュッ

京太郎「おやすみ、春……」スヤァ

春「おやすみなさい……」ウトウト
259 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/03/03(日) 19:03:53.31 ID:C92gNRTN0



初美「……これはもう、はるるの優勝では?」

小蒔・霞『まだです!』

湧「……まぁ、そう思われるならそうなんでしょうね」

明星(お二人の中ではね)

巴(スカイプ)『それより、すみません……大変なときに、いられなくて……』

霞「どちらにせよ、動くのは私たちではなかったから……やることといったら、京太郎くんの看病だけだったわよ」

巴『……なおさらだなぁ』

小蒔「ともかく、京くんと春が無事でよかったです!」

巴『はい、ですね』

霞「お昼頃になったら、もう一度起こしてあげましょう」

初美「それまでは、私たちもひと眠りですかねー」ファー

小蒔「そうですね。おそらく、忙しくなるのはそれからですから――しばらく、英気を……」ウトウト

明星「あ、私たちはさっき休ませていただいていたので……」

湧「姫様たちは、ごゆっくりお休みください。6時間後に起こしますので」

霞「お願いね。それじゃ、巴ちゃんも、またね」

巴「はい。こっちも一応、モーニングコールしますから」

初美「よろしくですよー」

小蒔「おにゃ……しゅみ、なひゃい……」カクンッ



※怪異解説
 昔の戦乱や飢餓による犠牲者らの怨念が形を成したもの。
 神代のご先祖が数百年前に退治し、封印した。
 意思を持って間もなく封印されていたので、子供の姿。
 無邪気さと残虐さと好奇心の同居した性質は子供そのもの。
 主食は人間の魂。好物は魂を食べたあとの肉体。

 その正体に気づいてしまったあなたはSANチェック、1or1d10
260 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/03/03(日) 19:05:50.43 ID:C92gNRTN0

先月は全然書き溜められてないので、在庫がピンチです
もう更新2回分くらいしか残ってません

よし、更新期間遅らせよう(延命措置)
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 19:28:10.74 ID:SzktCVAUo
待 っ て た
落ちさえしなければへーきへーき
チャクラ持ち前提なのはちょっと草
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 19:53:59.04 ID:roW+Uzt40
乙ー
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 20:47:07.50 ID:CBfikoydo
乙〜
てけり・り
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 22:47:50.78 ID:A05/+Lkh0
乙!
執事になると忍術が使えるのかw
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/05(火) 01:12:28.00 ID:AboGNXFz0
おつおつ
割とホラー展開に力入ってて驚いた。京ちゃんあんなに修行したけどまだ複数人の避雷針はキツイか
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/06(水) 20:10:22.90 ID:RUwnWTOCo
乙です!
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/16(火) 02:18:07.36 ID:xSvm78cto
保守
268 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/05/02(木) 16:04:51.52 ID:dop3vfBI0

〜二年目9月三週金曜

京太郎「っ……降参です」

滝見父「うむ、いい手合わせだった。体調はすっかり戻ったようで、なによりだな」

京太郎「おかげさまで……学校への手続きや事後処理など、ご尽力くださってありがとうございました」

滝見父「はっはっは、なんのなんの! それはそもそも、我々の義務というものだからな。おかげで助かったとは、こちらの言葉だとも」

滝見父「まぁ、どうしても礼をというなら……回復まで付きっきりで世話をしていた、春に伝えてやってくれい!」

京太郎「そ、それはもちろん……春には本当に、足を向けて寝られません」

滝見父「はっはっは、ならばよし! 春も果報者だ……おっと、そうだった。回復したところで悪いが、少し頼まれてもらえるかな?」

京太郎「はい、なんでしょう?」
269 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/05/02(木) 16:05:18.07 ID:dop3vfBI0

滝見父「明後日――つまり日曜日の昼、大事な客人が家に参られる。接待というわけではないが、もてなしをしたいのでな……料理を頼みたい」

京太郎「えっ……お、俺の料理ですか?」

滝見父「うむ、その通り。ただ、いわゆる家庭料理でなく、松花堂風の弁当を頼みたいのだが……可能かな?」

京太郎「……お相手の好みや、口にできない食材などをお聞かせくだされば、献立は作れると思います。ただ――」

滝見父「ただ?」

京太郎「――それほど大事なお客様なら、俺ではなく、プロの料理人をお招きするほうが確実ではないでしょうか?」

滝見父「うむ、確かに……我々が懇意にしている、料亭や旅館に頼むのが筋ではある」

京太郎「では――」

滝見父「だが、今回はあくまで内々の席でな……あまり多くの者、部外の者に知らせるわけにはいかんのだ」

京太郎「……わかりました。そういうことであれば、料理長を務めさせていただきます」

滝見父「おお、ありがたい! それでは、よろしく頼む。食材の好みなどについては、メモを用意しておこう」

京太郎「ありがとうございます。ただ――」

京太郎「用意が難しそうな食材があれば、調達をお願いするかもしれませんので……その旨だけ、ご承知くださいますか?」

滝見父「うむ、心得た。しかしまぁ、なんだ……もてなしとは言ったが、気楽に臨んでくれて構わんのだぞ? 私的な客人であるわけだからな」

京太郎「それでも、大事なお客様と仰ったからには、心よりのもてなしをして然るべきです。そう教えられてきましたし、俺もそう思いますから」

滝見父「……ふむ、なるほど……いや、ならば重ねては言うまい。その気持ちはきっと、料理から客人らにも伝わるだろう」

京太郎「そう言っていただけると励みになります。それで――客人『ら』ということは、複数名いらっしゃるんですか?」

滝見父「ああ、私を含めて7――いや、6人分だな。そうか、となると一人での準備は難しいか……」

京太郎「……いえ。料理のほうは、俺一人で用意するべきかと思いますので、そうさせていただきます。給仕のため、2名ほど人をお願いできましたら」

滝見父「……む?」

京太郎「あ、いえ……料理の提供が遅くなるとか、そういったことは決してありませんので……」

滝見父「はは、そういうことではないのだがな……うむ、やはり聞いておこう。なぜ、自分一人でやるべきと思ったのかね?」

京太郎「それは――小父さんが、俺に頼まれたからですよ。部外の者に話せないなら、俺にこそ話すべきじゃありません」

京太郎「腕が確かで口も堅く、信頼の置ける料理人を付近で探すほうが、滝見家にとっては容易なはずです」

京太郎「にも拘らず、俺にお話をくださったということは、俺に料理を作らせる必要があるってことでしょう」

京太郎「その理由はわかりませんけど……誰かの手を借りず、俺だけの手で作ることが、そのご依頼に応える誠意かと思いました」

滝見父「――――ふっ……ふははははははっ!」

京太郎「えっ」ビクッ

滝見父「いやぁ、慧眼よ! そこまで言い当てられるとは、いやはや、恐れ入った!」

京太郎「い、いえ、そんなことは……お相手のことも、理由も、何一つわかっていませんし……」

滝見父「そこまで見通されては、京太郎くんがエスパーであると疑わざるを得なくなるなぁ」

京太郎「すみません。でも、詮索するつもりなんかは、本当にありませんので……」

滝見父「うむ、そうしてもらえるとありがたい。が――そうだな、もしかするとその辺りは、その席で明らかになるかもしれんぞ」

京太郎「はぁ……えっと、それは俺が知っておくべきことでしょうか?」

滝見父「どうだろうな……知らぬほうがよいこと、かもしれん。だが、知って損はないはずだ。先方も、その機会が欲しいのかもしれん」

京太郎「…………そうですか」

滝見父「ふむ、依頼したばかりで脅かしてしまったかな……支度に影響がなければよいのだが」

京太郎「はは、大丈夫ですよ。そういうの気にして料理ができるほど、俺は器用じゃありませんので。そのときは、料理に集中するだけです」

滝見父「ははは、それは頼もしい。では、よろしく頼む」

京太郎「はい、お任せください」

270 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/05/02(木) 16:06:05.55 ID:dop3vfBI0

〜二年目9月三週土曜

京太郎(……明日が当日、メニューはできた。食材のほうも、明日の朝には届く……さて、あとは――)

春「……京太郎?」

京太郎「お、おう、どうした?」

春「休憩、そろそろ終わり」

京太郎「そうか、なら練習再開――の前に、明日の練習のことなんだけど」

春「うん」

京太郎「あー、えっと……俺はちょっと用事があるから、休ませてもらいたいんだけど、いいか?」

春「…………どんな用事?」

京太郎「え」

小蒔「私も、気になります!」

京太郎「うお! こまちゃんどこから!」

明星「京太郎先輩がぶっ飛んだこと言うから、部員みんな気にしてますよ」

京太郎「えぇ……いや、みんなもよく休んでるじゃん?」

湧「須賀さんが休むというのが異常事態なんです」

京太郎「」

初美「で、用ってなんですかー?」

京太郎「あー……最後の検査? みたいな感じです。時間がかかるんで、日曜にやってくれるってことになったらしくて……病院側から」

春「……それなら仕方ない」

小蒔「ですね! 京くんにはお世話になりましたから、後遺症がないようしっかり見ていただかないと!」フンスッ

明星「私たちは聞いてませんけど、上のほうで病院に手配してたんでしょうか?」

初美「そうじゃないですかねー」

湧「付き添いなどは、必要じゃありませんか?」

春「やる!」

小蒔「私が!」

京太郎「あー、いや……送迎も兼ねて、人をつけてくれるってことらしい。みんなは練習しててくれたほうが、俺としても助かる」

春「むぅ……わかった」

小蒔「そうですね、大会も近いわけですから……でも、なにかあったら連絡してください!」

明星「姫様は電話をお持ちでないのでは……」

初美「まぁ、私たちの誰かにかければいいですよー」

京太郎「はい、そうさせてもらいます。それじゃ、練習の続きを始めましょうか」

271 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/05/02(木) 16:07:08.09 ID:dop3vfBI0

〜二年目9月三週日曜

〜食後

滝見父「いやぁ、いつも以上にうまかったぞ! 急に頼んでしまってすまなかったな、京太郎くん」

京太郎「いえ、とんでもありません。それでは、ただいま水物をお持ちしますので、失礼します」

滝見父「う、む……あー、ゴホン……その前に、だな」

京太郎「はい?」

滝見父「その、なんだ……皆が、聞きたいことがあるそうでな」

???「お、おい待て、どうしてそういう流れになるのだ」

???「そうですよ。滝見さんのほうから話をしていただくということでは……」

滝見父「ははは、まぁいいではないか! まずは自己紹介から、というのがお約束だろう。どうかな、京太郎くん」

京太郎「は、はぁ……では――はじめまして、皆様。今月より滝見家に居候しております、須賀京太郎と申します」

京太郎「本日は、このような貴重な機会を与えていただいたこと……それと、えーっと――」

滝見父「うん?」

京太郎「……また、皆様のお嬢さま方より、日頃からご指導いただいておりますこと、深く感謝いたします」

滝見父「――京太郎くん、それをどこで?」

京太郎「すみません、確信できたのは、いましがたです……けど、いらっしゃるのが6人ということで、そうじゃないかな、と」

京太郎「あとは――先ほどの言葉に、一つだけ嘘がありました。こちらにいらっしゃるお一方だけは、はじめましてではありませんから」

???「………………」

京太郎「今年の春に、一度だけお目にかかりました。霞さんのお父様……石戸家のご当主様、ですよね?」

石戸父「……その通りだ」

滝見父「おいおい、その反応はなかろう。なにか挨拶はないのか、自己紹介でもいいのだぞ?」

石戸父「……原作で名前が出てない以上、名乗ることができん」

京太郎(メタぁい!)

薄墨父「まぁそもそも、当主が男かどうかって話もありますけどね。六女仙という以上、女系家系でもおかしくないわけですし。あ、僕は薄墨です」

京太郎「初美先輩のお父様ですか。いつもお世話になっております」フカブカー

狩宿父「私は狩宿。こちらは十曽。そして――」

京太郎「………………」

神代父「………………」

滝見父「神代――霧島の当主、小蒔様の父上でいらっしゃる」
272 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/05/02(木) 16:07:35.56 ID:dop3vfBI0

京太郎「は……はじめまし――」

神代父「いや……はじめてではない。その意味は、わかるね?」

京太郎「……はい」

神代父「すでに記憶も戻っていると聞いた……簡単に破れる術式ではなかったはず、だがな」

石戸父「須賀のご老公肝煎りと聞く。術式を破っても不思議はない」

京太郎「その、俺は本当に、なにも……」

狩宿父「ああ、その点はわかっています。申し訳ないね、彼は少し頭が固いというか……保守的というか頑固というか、融通が利かないというか……」

滝見父「真面目というか、生真面目というか、クソ真面目というか、親バカというか、過保護というか――」

薄墨父「可愛い娘に虫がつくのが気に入らないんですよー。困った父親です、本当に」

石戸父「そんなことは言っていないっっ!!!」ドンッ

京太郎(シロさんのお父さんかな?)

神代父「ともかく――」

京太郎「はい」ピシッ

神代父「過去に、私とも面識があった……すでに、その辺りの話は知っている、そうだったかな?」

京太郎「はい、一応……俺の――私の曽祖父と、小蒔先輩のおじい様が友人だったとか」

神代父「普段の言葉遣いで構わないよ。そう……それで、だ……その……君は、どうしてここに戻ってきたのかね?」

京太郎「それは――やはり、俺がここにいるのは、まずいということでしょうか」

石戸父「質問に質問で返すものではない」

京太郎「っ……すみません……」

滝見父「あー、京太郎くん、こいつの言うことは気にしなくて構わん」

石戸父「なんだとっ……」

狩宿父「いえ、実際そうでしょう。ご当主も、そうした意味で問われたわけではないですし、あなたがいると話が進みません」

薄墨父「やっぱ呼ばないほうがよかったんじゃないですかねー。毎日毎日、あんなやつが霞に霞にって、うるさくてかないませんでしたし」

石戸父「貴様ぁ!」

京太郎(えぇ……)

十曽父「お、落ち着いてくださいっ! ご当主が京太郎くんとお話しているわけですからっ……」

石戸父「くっ……」

神代父「……京太郎くん」

京太郎「は、はい!」

神代父「……私はここに、当主として来たわけではない。君からすれば、友人の父親と話しているのと同じだ、そう考えてほしい」

京太郎「はい……」
273 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/05/02(木) 16:09:35.62 ID:dop3vfBI0

神代父「先の質問は、少し言葉が足りなかったな……どう言うべきか――よい思い出のないこの地にいて、辛いとは思わないか、ということだよ」

京太郎「…………そういう意味でしたら、辛いと感じたことはありません。それ以前に、よい思い出がないとも思いません」

神代父「大人たちの身勝手な思惑に巻き込まれ、幼い記憶を奪われ、約束されていた輝かしい未来を奪われたというのにかね?」

京太郎「確かに……昔の記憶がなかったことで、こまちゃ――小蒔先輩に申し訳ないことをした、とは思っています」

京太郎「でも、それを思いだすより前に、俺はここで色々な思い出を作りました。多くの人のお世話になり、自分を成長させることができました」

京太郎「記憶が戻っても、その頃とのギャップを感じても、それ以上にいい思い出が、この地にはあるんです……だから、俺はここにいます」

京太郎「この場所が好きなんです、ここに住む人たちが……とても」

神代父「……だが、それでもだ。あの頃、私たちがもっと冷静で分別がついていれば、君はより多くのものを手にしていたはずだ。違うかね?」

京太郎「……違います。そのことで手にしたものがあったとしても、手にしていなかったものも、同じくらい――それ以上にありました」

京太郎「麻雀の腕も……今日提供した料理も、俺がこの地を離れたからこそ、得られたものです」

京太郎「確かに、一時期は……俺にはなんの力もない、才能もないと打ちのめされて、ヤケになりかけたこともありました」

京太郎「そんな俺に差し伸べられた手と、そのことで得られたいくつもの縁や経験は、俺がこの地を離れて得られたものです」

京太郎「いま、俺の周りにいる人たちが与えてくれたものです。胸を張って誇れる、俺の宝物です」

京太郎「その一つが、この場所と、この地にいる人たちなんです。俺がここにいる理由も、ここにいたいと俺が思うから――それだけです」

神代父「…………ああ……ああ、そうか……そう、なのだな――」

京太郎「あの……?」

神代父「いや、すまない……この地を、そのように思ってくれていることを、この地に根ざすものとして、心から嬉しく思う」

神代父「確かに、君の言う通り……君はここを離れ、よい経験をし、よい成長をしたようだ。私たちの過ちを正当化するわけではないが、本当に……」

神代父「…………なぁ、京太郎くん」

京太郎「はい」

神代父「先はああ言ったが……これは、神代の当主からの言葉として、聞いてほしい」

京太郎「はい」

神代父「私たち大人の間違った行いが、君と小蒔……幼い子供の心を深く傷つけたことを、心から詫びさせてもらう。本当に、申し訳なかった」フカブカ

狩宿・薄墨・滝見・十曽『………………』フカブカ

石戸「………………」シブシブ
274 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/05/02(木) 16:10:02.13 ID:dop3vfBI0

京太郎「っ――と、とんでもありません! どうか頭を上げてください、お願いします!」

神代父「うむ、すまないな……こんな大人に頭を下げられても、心苦しいばかりだろう。これは、私たちの自己満足に過ぎない」

神代父「ここからは、少し建設的な話をしよう……私たちが今日、このような場を設けたこと、少し急に思わなかったかな?」

京太郎「そう、ですね……言われてみれば。ただ、俺と小蒔先輩の記憶が戻ったことを知られたのであれば、遅かれ早かれ動かれたのではないかと」

神代父「ふむ、話が早い……そう、君らの記憶が戻ったことが、すべてに起因すると言える。が、これでも少し、時間のかかったほうでね」

神代父「あの事故の日より、神代と須賀の間には亀裂が入ったわけだが、それは宗家の本意ではなかった」

神代父「だが、そうせざるを得ない理由があった……そこで双方の宗家は、まず分家の掌握に尽力することにした」

神代父「宗家の失脚を目論む、いわゆる反乱分子を燻りだし、掌握し、場合によっては――」

石戸父「ゴホンッ」

神代父「……うむ、まぁ、それはさておいて……要するに、宗家主導にて統制を取れるよう、今一度引き締めにかかっていたわけだ」

神代父「それには多大な時間を要したわけだが……それを果たさんとした目前、君らの記憶が戻ったわけだな」

神代父「そのことは、連中も知ることとなり――思わぬ事態に浮足立ったことで、連中にも隙が生まれた。おかげで、よりスムーズに事は運んだよ」

京太郎「はぁ……それは、おめでとうございます……?」

神代父「ふふ、ピンと来ないかな? まぁ、直接には君に関わりのないことだ。だが、その件に関わり、重大な失態が発覚した……わかるかな?」

京太郎「んー……俺にわかる範囲で、重大な――あっ! この前の、石碑の!?」

神代父「ご明察だ。あれの管理を務めていたのは、反乱分子の主犯となる力を持った分家でな。対処が遅れれば、家の取り潰しだけでは済まされない」

神代父「その危機を、自分たちが貶めた少年に救われたとあっては、もはや立つ瀬はない……彼らの発言権、影響力は地に落ちたも同然だ」

京太郎「……救われたってことは、やっぱり被害はださずに済んだってことですよね? 一応、そう聞いてはいるんですけど……」

神代父「うむ。迅速な対応ができたおかげでね……今後は宗家の管理にて、厳重に監視することになるだろう」

神代父「君のおかげで被害はなく、今後、被害をだすこともないはずだ……本当にありがとう」

京太郎「そう、ですか……はぁ、よかった……」

神代父「まず気にするのは、周囲の被害か……ああ、まったく……須賀のご老公、実に慧眼であらせられたな」

京太郎「?」

神代父「いや、その心根が素晴らしいと思ってね……さて、話を戻そう」
275 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/05/02(木) 16:10:55.31 ID:dop3vfBI0

神代父「そうして君らの記憶が戻り、分家の掌握もできたことで、ようやく準備が整ったのだ。当時の非礼を詫びる、その準備がね」

京太郎「…………えっと、つまり……今日来られたのは、俺に謝るため、ということですか?」

神代父「ふふ、まぁそういうことだ。料理については、滝見からは聞かされていなかったがな……サプライズのつもりだったのだろう」

滝見父「あの日から今日まで、京太郎くんがいかな薫陶を受けてきたか……それを感じてもらう趣向にしたかったのですよ。すまんな、京太郎くん!」

京太郎「は、はぁ……その、なんというか……すみません、わざわざ足を運んでいただいて……」

薄墨父「はー、確かに……初美の言ってた通り、腰が低すぎるねー、これは」

狩宿父「……やるときはやる男、と聞いてはいますけどね」

十曽父「ちょっと待ってください、皆さんそんなに話を聞いてるんですか? うちの娘、全然話題にしてくれないんですけど!」

滝見父「ははは、いかんなぁ十曽。娘とのコミュニケーション不足ではないか?」

石戸父「なにを言うか! 嫁入り前の娘が、男の話題を口にするなど……はしたない、けしからん! 霞にも、十曽の娘を見習わせてやらねば!」

京太郎(……俺が聞いちゃダメな話じゃないか、これ?)

神代父「まぁ、石戸の娘の反抗期はともかく――」

石戸父「は、反抗期ではありませんっ」

神代父「ともかく――無論、我々もただ、謝りにだけ来たわけではない」

京太郎「……察するに、そちらが本題ということでしょうか?」

神代父「いかにも。それで、だ――単刀直入に言わせてもらう。京太郎くん、小蒔ともう一度、婚約する気はないかな?」


京太郎「は………………はいいいぃぃぃっっっっ!?」


神代父「おお! そこまで快く応じてくれるとは……感謝するぞ、京太郎くん! いや、息子よ!」

京太郎「違います! いまのは聞き返しただけでっ……って、冗談ですよねっ?」

神代父「……真面目な話、冗談ではない。君と小蒔が婚約、婚姻ということになれば、我が家も霧島も安泰。須賀との関係も改善される」

神代父「もちろん、そういった政治的な話は抜きにしてもだ。君のような青年が娘婿となってくれれば、これほど喜ばしいことはないのだが」

京太郎「そ、そんなこと仰られても……その、小蒔先輩もお困りになると思いますし!」

薄墨父「……あー、はいはい。なるほどですよー」

狩宿父「これは……思っていた以上ですね」

滝見父「ははは、これだからいいのだよ、これだから!」

京太郎(え、なにその反応)コワイ
276 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/05/02(木) 16:11:41.73 ID:dop3vfBI0

十曽父「うちは構わないのですが……お三方は、言い分があったのでは?」

薄墨父「あ、ああ、そうでしたよー。京太郎くん、姫様のお相手は荷が重いと言うなら、うちの初美なんかどうですかー? お買い得ですよー?」

京太郎「娘を差しだすのに軽い! っていうか同じですよ、初美先輩がなんて仰るか――」

狩宿父「では、うちの巴はどうですか? すでに聞いておいたのですが、京太郎くんのほうが構わないなら、私のほうは――と」メガネクイー

京太郎「えっ?」

狩宿父「ですから――おや、電話ですね。すみません、失礼します」

『ちょっとお父さん、なに勝手なこと言ってるの!?』
「覗き見とは感心しませんね……はしたないですよ?」
『六家が集まろうとしてたから、つい……って、そうじゃなくて! 勝手になんの話してるの!』
「やれやれ、わかりませんか? 彼の血を入れることが、どれだけ有益か……巴もまんざらではないはずですよ?」
『そ、それとこれとは別! 親のほうから圧力かけるとか、色々な協定に引っかかるの!』
「やれやれ……巴、こういうのはですね、やったもの勝ちですよ」メガネクイッ
『お・と・う・さ・ん!』
277 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/05/02(木) 16:12:09.86 ID:dop3vfBI0

十曽父「……揉めてるみたいですし、放っておきましょう」

京太郎「は、はぁ……」

神代父「それより、滝見はどうなのだ? なにかあるなら、言っておくほうがいいぞ?」

滝見父「そうですな――」

京太郎「っ…………」ソワソワ

滝見父「ふっ……いや、私からは特には。こうしたことはやはり、若人同士で話すべきことですからな」

石戸父「わ、私は許さんぞ! どうせ貴様も、霞のことを不純な目で見ておるのだろう、許すものか!」

京太郎「ゆ、許すもなにも(見てないとは言ってない)……霞さんほど大人びた人に、俺みたいな子供は不釣り合いというか――」

石戸父「貴様ぁ! うちの霞がお前には不釣り合いだと!? 言わせておけばっ……」

京太郎(どうしろっちゅーねん)

神代父「ふふ、人気者だな、京太郎くん」

京太郎「そんな、他人事のように……」

神代父「まぁ、しかしだ――まだ高校生という若い身空でもある、話が急すぎたのは確かだね」

京太郎「そ、そうですよ……」

神代父「我々も、ここですぐ結論をもらいたいわけではない……ただ、そうした話があるということを、意識しておいてくれたまえよ」ポンポン

京太郎「そう言われましても……というか明日から、どういう顔でみんなと会えばいいのか……」

薄墨父「ああ、そうそう。僕たちがこういう話をしたってことは、娘たちには内緒で頼みますよー?」

京太郎「思いっきりバレてる人がいるんですが、それは……ん?」

メール『私はなにも見てないし聞いてないし言わない』

京太郎「巴さん……」

狩宿父「まぁそういうことですから、ご安心を」

京太郎「アッハイ、ご安心です」

滝見父「さて、それでは今日のところは、これで解散としよう。まぁただ、一つだけ言えることは、だ――」

京太郎「はい」

滝見父「我々は、そしてこの土地は、これからも君を歓迎する――ということだ。どうか末永く、誼を通じてくれたまえ」

京太郎「……はい、こちらこそ。これからも、よろしくお願いします」

石戸父「ふんっ……」

京太郎(やっぱり……前に会ったときより、なんか当たりがキツい気がする) ※その19、レス777参照

神代父「では、いずれまた、顔を合わせる機会もあるだろう。そのときは、もっとゆっくりと話せればよいのだが」

京太郎「そうですね。ですが、さすがにお忙しいでしょうから……お気持ちだけで十分です、ありがとうございます」

薄墨父「この気遣いですよー」

狩宿父「うちの役割と、相性がよさそうなんですけどねぇ」メガネクイッ

石戸父「なにがあろうと、私は認めん……認めんぞっ……」

十曽「最後までこれですか……では、失礼しますね」ハァ

京太郎「はい。それでは皆様、どうぞお気をつけて」

278 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/05/02(木) 16:12:56.05 ID:dop3vfBI0

京太郎「……あ、水物だすの忘れてたな」

滝見父「なに、夕食のデザートにでもすればよかろう」

京太郎「それもそうですね……あ、そうでした。給仕の人手を貸していただいて、ありがとうございました」

滝見父「いやいや。こちらこそ……頼みを聞いてもらっただけでなく、汚い大人たちの悪だくみに付き合ってもらって、本当にありがとう」

京太郎「……俺がお聞きした限りでは、どなたも汚い大人には思えませんでしたよ。ご自分の子供を案じられる、いいお父さんばかりでした」

滝見父「そうか……ありがとう」

京太郎「ただ、その……本人に無断で、意思を無視して、結婚の話をするのはどうかと思いましたけどね」

滝見父「ははは、確かにな! だが、意思を無視していたかどうかは、わからんぞぉ?」ニヤッ

京太郎「? えっと、どういう意味でしょうか……」

滝見父「ははははは、気にするな! 中年の戯言と聞き流してくれい!」ポンポン

京太郎「は、はぁ……」

滝見父「まぁ、なんにせよだ……君がもし、麻雀部の誰かとそういった仲になったとしても、反対する親は一人しかおらんということだ」

滝見父「そう考えれば、彼女らと深い仲になるということにも、現実味が出てこないかな?」

京太郎「……そう……かも、しれませんね」

滝見父「だろう? まぁ、まだ君らは若い……そうした悩みこそ、青春の華よ! 大いに悩め、若人!」バンバンッ

京太郎「そうします……」

滝見父「さて、それでは中に戻ろうか。外はまだまだ暑いからなぁ」

京太郎「あの……もし……俺と、春が――」

滝見父「うん?」

京太郎「……いえ、なんでもありません」

滝見父「そうか……どうだね、片づけが終わったら、道場で一勝負といかんか?」

京太郎「は――いえ、学校に行きます。みんな練習中でしょうから、少しだけでも顔をだしたいので」

滝見父「……うむ、そうだな。そうするといい。皆も喜ぶだろうからな」ポンポン

279 : ◆t2KkLw8Fc7QA [saga]:2019/05/02(木) 16:14:38.37 ID:dop3vfBI0

令和になったので、初投稿です

まぁ書き溜めはこれでほぼなくなったので、次は同じくらい間を空けて、かなり短めのを一つ
そこから最終章です
最終章はあと90%くらい書けば終わりのはずです
夏くらいに終われたらいいなぁ
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/02(木) 16:55:21.78 ID:KIzjD0Dh0
乙!
待ってるぜ!
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/02(木) 18:50:44.17 ID:eHfew1d/0
乙ー
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