【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88

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687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/28(月) 15:57:52.79 ID:8NUmY+3h0
瑞鶴の敵空母に関する反応から一航戦絡みだろうとは思っていたけど
ここまでの一航戦だとは思いませんでした(月並みな感想)
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 00:52:58.54 ID:MNrFkHzD0

ある日の食堂

時雨「そういえば瑞鶴と初月ってコンビを組んでる事が多いけど

此処に来る前からの付き合いなのかい?」

瑞鶴「いきなりなにかと思えば…。」

初月「そうだな。僕が瑞鶴とコンビを組んでいるのは瑞鶴の師匠によるものが大きいな。」

雪風「あー、あの、知らずの一航戦のお二人が関わっていたんですか。」アキレ

瑞鶴「あれはそうね…、私が着任一周年を迎えた日の事だったかしら……。」

689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 00:55:34.05 ID:MNrFkHzD0
それは丁度着任一年目の事だった


回想

加賀「赤城さん、懐かしいですね。」ナツカシイ

赤城「えぇ、ボストンバッグを肩にした瑞鶴さんが

青褪めた顔をしていたのを思い出します。」シミジミ


ゴトゴト バタバタ

瑞鶴が着任した日は丁度大規模作戦の真っ最中で。



瑞鶴「野戦病院さながらでしたねー。」

瑞鶴「周囲に転がる死者累々。」

赤城「バケツぶっ掛けるのが追いつかずで入渠待ちがいっぱいいました。」

加賀「ドックとセットで使用しないといけないというのはもどかしいものです。」

瑞鶴「最前線の空気というのを感じました。」

加賀「それからでしたねぇ。とりあえず手が足りないから空母なら直ぐに来てと。」

赤城「ボストンバッグを奪い、艤装をつけさせて出撃させたのでしたねぇ。」

瑞鶴「いきなり矢筒渡されて、大丈夫だから背中はちゃんと守るからと言われたのを思い出しました。」

瑞鶴「沈んでも直ぐ引き上げるからとか言われたの忘れていませんよ!?」

加賀「いやぁ、懐かしい。」

赤城「懐かしいです。」

加賀「ほんとに1年ちゃんと生き抜いてくれて…。」ベソベソ

赤城「立派になりました。」ベソベソ

加賀「よく戦力に……。」



ムームー!ゴトゴト!



瑞鶴「あの、やっぱり1年持たないんですか?」

加賀「うちの損耗率は極端に低いですが、理由はあります。」

赤城「それは全員が余所の鎮守府であればその艦種のエース。

切り札足りえる程に精鋭だからなんですね。」

瑞鶴「異常に練度は高いですよね。」

加賀「ここが出来た当初は酷かったんですよ?そりゃもう。」

赤城「2人に2人が死ぬ状況でしたねぇ。」

瑞鶴「あれ?それだと致死率100%…。」

加賀「あれ?」

赤城「あら?」

瑞鶴「あれ?」

加賀「………。」

加賀「そんな訳で生き残れば誰でも精鋭になれる状況だったわけです。」
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 00:59:26.64 ID:MNrFkHzD0

瑞鶴「さらっと流したぁ!?」

赤城「私達二人は空母として苦労しましたから

後輩が出来る事があれば苦労させたくないねと

以前から話しをしていたんです。」

瑞鶴「うっそだ ―――― 。」

加賀「いえいえほんとのほんとですよ?」

赤城「最短で戦力になるように所謂パワーレベリングをやってきたわけです。」

加賀「私達ベテランが新人の貴方をお守りしながら危険地帯にハイキング。」

赤城「あれですよMMORPGとかでギルドのベテランが初心者のレベリングに装備作り。」

加賀「さらにはハイランクモンスターの狩り方の立ち回りとかを全て教えてあげるあれです。」

瑞鶴「確かに最初から命の危機に瀕した状況スタートだと

物事を覚えるのは早かったです。」

加賀「でしょ!」ドヤッ!

赤城「ですよね!」ドヤドヤッ!

瑞鶴(うわっ、なんか腹立つわ)



モガモガ!ジタバタジタバタ!



瑞鶴「その、それで先程から気になっているんですけど……。」

瑞鶴「その動いているのはなんですか?」ユビサシ

加賀「よくぞ聞いてくださいました!」

赤城「瑞鶴さんの着任1周年記念に私達からのプレゼントです!」


691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:00:18.99 ID:MNrFkHzD0




時雨「あっ、なんとなくオチが読めたよ…。」

瑞鶴「まぁ、予想通りよ。

その袋のなかに猿轡嚙まされた初月が突っ込まれたのよ。」

雪風「流石(常識)知らずの一航戦……。」




692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:01:35.64 ID:MNrFkHzD0

瑞鶴「なにしてるんですか!

なにしてるんですか、真面目に、ほんっと!」

瑞鶴「貴方達馬鹿ですか!?

うちに新人というか最新鋭駆逐艦の新人とか着任するわけないじゃないですか!!」

瑞鶴「どっから拉致してきたんですか!!」

加賀「拉致だなんて人聞きが悪い。」

赤城「きちんと配属希望申請出ていますよ。」

つ 配属希望書類

瑞鶴「あれ、本当だ……。」


693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:04:24.94 ID:MNrFkHzD0


時雨「その、それは捏造とかでは無かったんだね。」

瑞鶴「まぁ、捏造に近いかしらね……。」

初月「あぁ、養成学校卒業前の僕に

   しこたま酒を飲ませて酩酊状態にした挙句。」

初月「外泊証明書と嘘を言ってサインさせたのが捏造で無ければね。」

瑞鶴「手続き上はサインを本人が書いた物である以上は希望が通るのよ。」

雪風「あぁ、そうなんでしたか…。」

初月「そして僕がそれに気が付いて再度の訂正をしようとする前に。」

雪風「拉致されたという事なんですね。」

初月「朝起きたらどうやって生徒寮に侵入したのか

   如何にもエージェント然とした二人が立っていて、

   バチッとされて気が付いたら袋の中だったんだ。」

瑞鶴「で、私が謝罪したおして着任してもらった感じかなぁ。」

初月「その後も色々と演習や前線に引き摺られて行ったのは

   今となってはいい思い出かな。」

694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:05:56.68 ID:MNrFkHzD0

対空訓練中


加賀「初月さん!

   あなたと言う方は一体いつになったら

   撃ち落すべき艦爆の区別がつくようになるんですかねぇ!?」



ギューン!



赤城「回避すべきなのと撃墜する必要のある物の区別がつけられないなんて

   駄目ですねぇ!?」

初月「明日までにはなんとか!なんとかする!」タタタタ!テテテテテ!

加賀「明日の何時になれば一体習得できるんですか!?」

初月「明日の、明日の6時までには!」ドドドドド!

加賀「6時!?一体いつの6時ですかねぇ!?」

初月「夕方だ!」ダダダダダダ!

加賀「赤城さん!!」

赤城「えぇ!」サッ ←携帯を取り出す



ピポパポ



赤城「あっ、いつもお世話になっています。

   横須賀第108鎮守府の赤城です。」

赤城「はい。はい…。えぇ、はい。」

赤城「加賀さん!何人で予約しておきますか!」

加賀「とりあえず明日の非番は20人くらい居たので25人くらいで!」

加賀「足りない時はお隣の大笑いの二人を連れてきます。」キリッ

赤城「加賀さん!いつもの焼肉店の予約とれました!」

加賀「初月さん!明日は終われば焼肉食べ放題に飲み放題です!」

加賀「頑張りましょう!」

初月「あぁ!頑張る!」トトトトト!


695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:06:28.10 ID:MNrFkHzD0


時雨「ツンデレかな?」

初月「とはいえ出撃とかは無茶苦茶だったよ。」

初月「初陣は対空母棲姫だったかな。」

瑞鶴「あぁ、あの裸踊り事件だったわね……。」

雪風「なにをさせたんですか……。」

瑞鶴「艦隊は守ったんだけど迎撃段階で中破した初月に師匠達が切れてねぇ……。」



696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:09:04.35 ID:MNrFkHzD0

加賀「あっといっちまい!」イヨッ

赤城「あっといっちまい!」ゲラゲラゲラ

陸奥「あの、とどめ刺してもいいかしら?」ヤレヤレ

加賀「あっ、いいですよ。」

赤城「装甲を少しずつ剥いていくのも飽きましたんで。」

陸奥「身につけてるのが下一枚って器用な攻撃するわね。」

加賀「うちの新人を可愛がってくれたお礼です。」ニタリ

赤城「覚えとけ糞虫が、うちの新人を中破させたらどうなるか。」Fuck!

加賀「あの世でしっかり敗北を噛締めるといいわ。」b→q ビシッ!

赤城「日が昇る東の水平線から、日が沈む西の水平線まで。」

加賀「私達一航戦は敵を討ち地獄へ送る。」

赤城「私達の支配する領域に貴方達の居場所はありません。」

加賀 赤城「「あの世へ特等席で待っていなさい。」」

ボガーン!

697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:11:30.95 ID:MNrFkHzD0

瑞鶴「師匠の二人が本気で切れてたからなぁ…。」

初月「今だから言えるがあの時加賀達の恐ろしさに

   少しだけ漏らしてしまったんだ。」

雪風「仕方ないかと。初陣で生死の境に触れれば無理もないですよ。」

雪風「さらに言えば、瘴気纏った一航戦が近くにいれば、まぁ…。」

時雨「そうだね。

   それを笑う者が居るとしたらこっちとあっちの

   境界が分からない鈍感くらいだろうさ。」

雪風「にしても聞きしに勝る規格外だったんですね。」

瑞鶴「いまだに語り継がれる変態だからね……。」

瑞鶴「さてと、まぁ、そういう訳でコンビをずっと組んでるわけよ。」

初月「あぁ、どちらかが死なない限りは解消される事もないだろう。」


698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:12:49.18 ID:MNrFkHzD0

食堂で時雨達の近くにいた長門



長門(死が二人を別つまでか……、夫婦かな?)

長門(まぁ、大方瑞鶴は守るものがあったほうが

   強さを発揮できるタイプだからな。)

長門(そういう所を見抜いた上でのコンビを組ませたんだろうな。)

長門(守るものが無い時に強さを発揮できるもの。)

長門(或る方がより発揮できるもの。)

長門(その辺りは人それぞれだ。……、瑞鶴が少し羨ましくはあるな。)

瑞鶴「あっ!長門!」

長門「うん?なんだ?」

瑞鶴「戦艦の随伴お願いしたいんだけど!」

長門「私は高いぞ?」

瑞鶴「敵の泊地強襲のピンポンダッシュやるから報酬はいい作戦よ。」

長門「報酬と危険度は比例するぞ?」

瑞鶴「今更でしょ?成功10万の頭割りよ。」

長門「チームは私を入れて何人だ?」

瑞鶴「今居る5人にかわうち入れて6人。割ったときの細かいのはかわうち行き。」

長門「いいだろう。一口乗ろうか。」

瑞鶴「じゃ、食事終わったら出撃ドックで。」

長門「あぁ。」

モグモグモグ

長門「さてと、明日の飯代の為に仕事に行きますか……。」

長門「料理長。食器は返しておくぞ。」

「了解。」

「長門!」

長門「む?」

「いってらっしゃいぴょん!」b ビシッ

長門「あぁ、いってきます。」ニヤリ


699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 01:15:14.88 ID:MNrFkHzD0
メインのPCお亡くなり、サブのPCも挙動が怪しい、お金ない…
プロットが全部飛んだのが痛い……
香港編も死んだし、変態仮面も死んだし、はぁ……
久しぶりに少しです、お読み頂きありがとうございました
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 06:57:15.88 ID:NXN5ibhG0
更新感謝
一航戦と言うか生え抜きのエースはみんなおかしい!!
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 14:01:58.53 ID:NoK+7gIB0
そういう大事なもんはクラウドにも保管しとくんだ!
onedriveやDropboxといった無料分で充分使えるもんがある
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/21(木) 03:42:42.24 ID:x6Mn1+l00
乙乙
思ってた以上に変態だ一航戦。
バックアップ大事慢心ダメ絶対
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:29:23.20 ID:+N3qmstH0
少しばかりはお話前、後編
香港編を記憶に頼りに再度書いてますが艦娘同士の戦闘分が少ない!と感じたのでこっちで補給
なにやってんだ!さっさと更新しろ馬鹿!という声が聞こえてきそう…
お時間宜しければ読んでやってください
704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:31:00.71 ID:+N3qmstH0

それはほんの軽い冗談のような切欠だった。

それは、ある日の食堂での仲間同士での軽い会話だった。



スパ「駆逐艦の方々は妙にオーラというか雰囲気のある方が多いですけど、

   実際誰が一番強いんですか?」

提督「うん?それは俺への質問か?」



食堂でウォースパイト達の席近くでうどんを啜っていた提督が

自分への質問かと確認の声をあげる。



スパ「もちろんですよ。」



提督の答えに近くに座っていた一同が聞き耳を立てる。



提督「そうだな。普段任務に出る奴らでなら時雨か雪風だな。」



妥当。



周囲に居るもの達はみな納得という風に頷く。



スパ「任務にでる娘っていう事はその他も加えると

   更に上がいるという事ですか?」



後日、川内は語った。

こんな時だけなぜに聡いのかと。



提督「あぁ。まぁ、そうだな。全員という事でなら不知火を推す。」

提督「総合的に判断してだがな。」ズルズル

スパ「えー、前回の作戦で早々に戦闘不能になっていませんでしたっけ?」



馬鹿者というのは時として地雷原を全裸で全力疾走することが有る。

705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:33:24.92 ID:+N3qmstH0

長門(さっ、寒い!なんだこの空気の冷え込みは!?)

瑞鶴(体感気温が急に下がった!)

提督「あれは俺の不始末だ。不知火に責はねぇ。」

スパ「前回の作戦で駆逐艦で一番戦果を上げたのは時雨さんですよ。」

スパ「最強は時雨さんなのでは?」

提督「お前は不知火に散々可愛がられた記憶が抜けているのか?」

スパ「あっ、いえ、そういう訳では無いですけど……。」ガタガタ

提督「なら議論しなくても分かるだろう?」

スパ「………。でも、普段事務職されていますし……。」

提督「それは俺がそれを望んでいるからだ。」



提督がウォースパイトの議論を切ろうと手を翳すが……。

提督は何かに気付く。



提督「………、時雨。

   3日後、予定を空けられるか?」ハァ……

時雨「僕に用かな?」

提督「あー、まぁ、そのなんだ。

   あっちの入り口で静かに闘志を燃やしている奴がいてな。」

提督「もし良ければ演習の相手をしてやって欲しい。」

時雨「僕で相手が務まるかな?」

提督「あぁ、大丈夫だ。気軽に付き合ってやってくれ。」

提督「不知火。3日後だ。

   ルールはありあり、戦闘システムダウン、

   もしくは降参宣言させた方の勝ち。いいな。」



言い切った後にうどんのスープを飲み干し。



提督「時雨、迷惑掛けるな。」

提督はそういい残し出て行った。

雪風「時雨さん、御武運を。」

時雨「一度、全力ではやってみたかったんだ。

   胸を借りるつもりでいくよ。」

706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:35:37.04 ID:+N3qmstH0
そして迎えた3日後



明石「えー、おせんにキャラメルいかがですかー?」

秋津洲「キンキンに冷えたビールあるかもー!」

摩耶「あるの?ないの?」

秋津洲「あるかも!じゃなかったあるよ!」

摩耶「一つ貰おうか。」

秋津洲「毎度ありかもー!」

提督「ちょいとしたお祭り騒ぎになってるな……。」

明石「まぁ、時雨さんに不知火さんの演習対決ともなればですねぇ。」

提督「一応聞いておくが賭博なんかやってないよな?」

提督「まぁ、成立するとは思わんがな。」

明石「ところがどっこい。」



提督が明石の言葉に頭を抱える。



明石「ウォースパイトさんが逆貼りで。」

提督「………。」

明石「ちゃんと証文も作ってますよ!」

提督「あー、なになに?

   負けた者が勝った者に酒を一杯奢る。か…。」

提督「時雨が勝てばウォースパイトの総獲りでその酒代がお前の丸儲け。」

明石「負けてもウォースパイトさんが皆に奢るので私のお店は潤います。」

提督「お前、二枚舌外交の本家のお国をよくもまぁ……。」

明石「日本語は難しいですからねぇ。」ニヤニヤ

提督「まぁ、身から出たなんとかだな。」

明石「ですとも。」ニヤニヤ



そして、提督が埠頭に用意した椅子に腰掛け。

明石がその近くの大型陸上設置型電波探信儀の電源を入れた。

707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:37:33.35 ID:+N3qmstH0

提督「アメリカ製か?平面座標表示が出来るようだが?」

明石「戦後の技術を突っ込んで改良できるといっても

   ベースが二次戦ですからね。」

明石「元のスペックが良いものを観戦用に用意しました。」

提督「どうせ実験的データー獲りも兼ねているんだろ?」

明石「御明察。後は秋津洲さんの大艇で現場の映像をライブで流しますよ。」

明石「提督はどうみます?」

提督「途中までは五分だな。」

提督「だが、最後は不知火が勝つ。

   どう勝つかは分からんが結末は読める。」

提督「それだけだ。」

明石「さようで。」

提督「見届け人で長門と瑞鶴にでばってもらっちゃいるが……。」

雪風「止め時は見誤らないようお願いします!」

提督「あぁ、分かっているさ。」

明石「一応お二人の艤装にダメージ計測装置積んで演習用モードにしちゃいますがね?」

提督「あの二人なら演習用モードでも敵をぶっ殺せるからな。」

提督「長門達にもまずいと思ったら俺の判断待たずに止めに入れともいっちゃいる。」

雪風「しれぇ!万一の時は雪風も行きます!」

提督「そこまで理性のなくなるような事にならない様祈るよ……。」


なんで許可しちゃったかなぁと言いたげに提督が雪風に答える。

708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:38:54.22 ID:+N3qmstH0

そして、埠頭から離れた本日の演習用にわざわざ設定された海域では。



長門「という訳だ。万一の際は我々の判断で止めに入るからな。」

時雨「うん。宜しくお願いするよ。」

瑞鶴「といってもま、気の済むまでやるといいわ。」

不知火「お気遣い感謝します。」

不知火「時雨さん。」

時雨「なんだい?」

不知火「胸をお借りします。」ヌイッ!



艶やかに、そして神々しいまでに白い

陽炎型専用手袋を再度きっちりと嵌めなおし。

時雨へと礼儀とばかりに頭を下げる不知火。



時雨「それは僕の台詞だ。」

時雨「今の僕が君に何処まで通用するかは分からないけど……。」

時雨「全力で行かせて貰うよ。」

不知火「望むところです。」ギチギチッ



手袋の嵌り具合を確かめるようにグーパーを行う不知火。



長門(やれやれ。頼むから我を忘れるような事にはなってほしくないもんだ。)

長門「それでは。両者いいかな?」

時雨 不知火「「勿論」」

瑞鶴「では、只今より演習開始!」


709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:40:31.73 ID:+N3qmstH0

モモモモモモモモ

演習の火蓋が切って落とされると同時に

時雨の機関から大量の黒煙が上がり始める。



長門「初手煙幕か。」

瑞鶴「悪くわないわね。」



埠頭



提督「成程。やはり初手煙幕か。」



双眼鏡を最大倍率で覗きながら提督が言う。



川内「これは不知火との実戦経験の差をつめるためのものかな?」

雪風「ですね。目視下での攻撃であれば

   不知火さんの方に間違いなく軍配が上がります。」

スパ「それほど差があるんですか?」

雪風「実戦に出る機会が少ないですが不知火さんの強さは本物です。」

雪風「砲撃の精度はその類まれなる感性に寄るものです。」

川内「でも、どんなに狙撃能力に優れようと敵を目視、照準を決めて、撃つ。」

川内「この動作は避けられない。」

川内「不知火はそこに居るという気配だけで撃ってくるような化け物だけどね。」

川内「だけど、その気配だけで撃つ事を続けるのは

   通常の砲撃から比べると精神的な負担は大きい。

   いつまでもやることは出来ない。」

雪風「その通りです。ですので煙幕でその視界を奪うというのは理にかなっています。」

雪風「本来の煙幕の使用方法とは違いますが……。」


710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:42:07.48 ID:+N3qmstH0

演習海域



瑞鶴「なかなか考えたものね。」

長門「あぁ、だが……。」

瑞鶴「やっぱり?」

長門「昨日、提督と話しをしたのだがまぁ、予想していたぞ。」

瑞鶴「あのハゲ親爺はほんと食えないわねぇ。」

長門「起こりうる事象を複数考えて

   それに一つずつ対処方法を考えるのが参謀職といってたからな。」

長門「といっても負けをやる前から悟っているなら

   やらせないのが仕事とも言っていたぞ?」

瑞鶴「どの口が言うかと言いたいわね……。」

瑞鶴「まっ、公正を期すために不知火に対処法を教えたりはしていないんでしょうけど。」

長門「秘書が長いからなその思考は似通っている。

   不知火もまぁ、読んでいるだろうよ。」

瑞鶴「まったく食えない上だわね。」

長門「まったくだ。」

711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:43:20.27 ID:+N3qmstH0

煙幕内



時雨「煙幕内であれば電探性能にまさる僕の方が有利だよ。」



時雨の艤装につまれている電探は最新鋭のアメリカ製。

オシロスコープで敵の映像を捉え電探の方向を手動で変えている

旧式の日本製と異なり最新鋭で全てが自動で行われ。

その受像機である平面座標表示には敵への距離、方角が明確に表示される。



時雨「艤装の性能差が実力差を埋めてくれる。」

時雨「そして、それをカバーする為に不知火が集中するならば。」

不知火「私の消耗が早いという計算ですか……。」



ドゴン!

煙幕内での砲撃が開始された。



不知火「流石に艤装の性能差は致し方ありませんね。」

不知火「ですが、音の方向でより正確に方角が分かりました。」



そして始まる砲撃戦。


712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:44:43.12 ID:+N3qmstH0

埠頭



摩耶「煙幕内での戦い方となると魚雷の使い所が難しいだろうね。」

提督「あぁ。闇夜での戦闘と変わりないからな。」

提督「闇夜ってのは思っている以上に感覚を狂わせる。」

提督「艦娘の皆は夜戦を幾度もなく行っているからわかると思うが

   戦闘に集中してしまうと自艦の位置を見失いやすい。」

雪風「夜間の戦闘は魚雷が見えにくくなりますから味方にうっかり魚雷が怖いです。」

スパ「でも、一対一での演習ですよね?」

提督「あぁ、だからお互いに魚雷は撃ち放題。」

提督「だがな、魚雷を撃つって事はお互いの必殺アイテムを減らす事になる。」

提督「駆逐艦の砲撃ってのは大したダメージを与えねぇ、あくまで本命は魚雷だ。」

雪風「ですのでそれをそうそうに撃ち尽くすのは勝率を自分から落す事になります。」

川内「どこで撃つかを考えながら煙幕内を接近していっている感じかな?」

提督「不知火からしたらそれしかないからな。」

提督「不知火の艤装の電探性能では相手の懐に入らないとどうしようもならん。」

提督「あいつは俺の部下扱いになるから艤装の改造の自由が少ないのが裏目にでちまってる。」

スパ「あぁ、それでノーマルに近いんですね。」

提督「機関の交換とかはしているがな、あいつには悪い事をしてると思っているさ……。」

713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:51:47.96 ID:+N3qmstH0

演習海域


時雨「流石に距離を開けさせてくれないか。」



砲撃を繰り返しながら一定の距離を保ちつつお互いに煙幕中を移動していた。



不知火「時雨さんの方が正確な砲撃をしてきますね……。」

不知火「やはり砲撃タイプの違いも影響しますね。」



ドン!

冷静に分析する不知火の頬を時雨の砲撃が掠めていく。



不知火「着弾の位置を調節しつつ当てて来ますね。」

不知火「二丁拳銃の強みをしっかりと生かされています。」



時雨の砲は単装砲のように一つずつ手にもつ二丁拳銃スタイル。

対して不知火の砲はアサルトライフルの様に構えスタイル。

駆逐艦の砲は艤装に固定されない。

その為、一度に砲撃できる範囲については時雨の砲に優位である。

これはやろうと思えば前方と後方を一度に撃つ事が可能な

二丁拳銃スタイルの強みでもある。

砲撃の際にカバーできる高さの範囲についても

二点同時砲撃可能な時雨有利になるのである。

上、中、下の高さで砲撃をしようと思った際に時雨は

上、下あるいは上、中さらには中、下等といった組み合わせで砲撃が可能となる。

対して不知火の場合は上で撃った後に高さを変えて持ち替える必要がある。

それは当然ながら反応の遅れとなり敵への砲撃の遅れとなる。

結果、仰角、俯角、手に持っての調整で

より多くの範囲を時雨の場合はカバーできることになるのだ。
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:52:37.31 ID:+N3qmstH0


不知火「煙幕で此方の視界を奪い、電探で位置を測り。」



ゴン!

不知火の艤装に演習弾が掠め着弾を示すペイントが広がる。



不知火「音で微調整ですか?」



スイッ。

細かく移動し位置を掴みにくく行動する時雨。

それに対して不知火は電探の性能上、時雨を探知する為にあまり激しく動く事が出来ない。

いや、敢えて動こうとせずに単調な動きを続けている。



時雨「反攻戦に誘っているということか。」

時雨「いいね。流石、その誘い、乗ろうか。」



ここまで煙幕を張ってまで慎重に運んできたかのように振舞ってきた時雨にしては大胆な。

いや、ともすれば愚かとも言える挑発にのる。

715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:53:53.59 ID:+N3qmstH0

埠頭



川内「あら?時雨が不知火の思惑にのるのかな?」



電探の受像機に表示されている光点を見ながら川内が呟く。



摩耶「らしくねぇな。」

雪風「当然の様に策があっての物だと思いますが……。」



雪風が時雨に何を売った?と明石を見れば。



明石「おおっとそれはこれからのお楽しみですよ?」ニヒヒ

提督「まぁ、何が起こるか。楽しもうじゃないか。」

秋津洲「提督余裕の表情かも!」

提督「時雨にゃぁ悪いが俺の中での絶対的評価は変わらねぇ。」

提督「どうせ最後に勝つのは不知火だ。」

提督「過程なんざ糞喰らえだよ。」

明石「上に立つものの言葉じゃないですねぇ。」ニヤニヤ

提督「俺があいつを信用しなくて誰が信用してやんだよ。」

提督「あいつが勝つと言ったなら俺は黙って結果を待っていればいいんだ。」

提督「今の俺に出来る事は黙って待っていることだけさ。」



提督はそういうと煙幕で見えないはずの向こうに再び双眼鏡を向けるのだった。

716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 01:00:04.24 ID:+N3qmstH0
次回決着!
日本とアメリカのというか二次戦時の電探で最も技術が進んでいたのはイギリスです
日本もですね、大戦末期には追いついてきてはいたようです、ようです…
作中にも触れていますが受像機がそもそもしょっぼい、アメリカ側は全自動で敵を追尾して距離も方角も自動表示してくれるのに
日本側はオシロスコープみたいなものにぼやーん…、そして計算尺で計算!そら負けますわ
冶金術が連合国と比べて劣っていた所為も有り純度の高い銅が作れなかった為真空管の性能についてもかなり低かったそうです
というかですね?電探(探知機、探信儀)の基礎理論ね?マイクロウェーブ含めて日本の先生が提唱ですよ?
ホント、新しい物を積極的に取り入れていなかった所為でという奴ですね
といっても取り入れていたところで物量に勝る米帝に勝てていたかというとまた別のお話にすぎません
どうせ負けています、早いか、遅いかだけです、はい、春イベ、モチーフどこでしょうねー、資源備蓄してまってます!
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 06:08:57.23 ID:YcDuEXdb0
乙です
馬乗りになったりなられたりの殴り合いになる前に誰かが止めてくれれば良いのですが
金マンと銀マンの争いの末路だけは勘弁してください
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 13:25:09.77 ID:T7lRSDE60
電探の死角をかいくぐって肉薄攻撃を仕掛けてきた時雨を組み伏せ、手にしていた計算尺で尻をペンペンするぬいぬいか
胸が熱いな
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 17:13:11.50 ID:LqH2JZLE0

下手な電探より優秀そうだなぬいぬいのカン
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:26:10.57 ID:aBfZ3KXR0
デデン!
3部へ向けてプロット作っているデース!
金剛改二丙デース!デース!
とりあえず、続きになります、お時間宜しければお読み下さい
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:27:21.62 ID:aBfZ3KXR0


スパ「にしても、なんでわざわざ煙幕内で?」

提督「それはあれだな。

   魚雷を装備として使わない者だから出てくる意見だな。」

雪風「確かに煙幕内で戦うのは最善手とは言えません。

   ですが、駆逐艦の主兵装は魚雷です。」

雪風「煙幕を嫌って外に出れば電探の性能上

   一方的に魚雷を撃たれてしまう可能性が高くなってしまいます。」

提督「そうだ。少なくともお互いに魚雷を打ち合ったときに

   安全距離をとれない状態を維持していれば鍔迫り合いの状況に持っていける。」

提督「レーダーレンジ(電探の感知できる範囲)が不知火の方が狭いからな。」

提督「その外から移動しながら撃たれると不知火も被弾の危険性が高くなる。」

提督「さらに言えば魚雷は電探に写らないからな。雷跡を見て避けるしかない。」

雪風「ですが、時間を掛ければ不知火さん有利な状況ではあります。」

雪風「いずれ煙幕は晴れますから。

   時雨さんにしても何度も張り直せるほどの追加は持っていないでしょう。」

スパ「だから不知火さんが仕掛けたのに時雨さんは敢えて乗ったという事?」

提督「勝算があっての賭けだろうがな。」

722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:28:44.77 ID:aBfZ3KXR0
煙幕外


長門「と、この反応は……。」

瑞鶴「時雨がデコイを蒔いたみたいね。」



煙幕内



不知火「……、こちらの電探が低性能である事をとことん突くようですね。」

不知火「敵の弱点を分析した上で利用できるだけしますか。流石ですね。」ヌイ!

時雨(大方、関心されているんだろうなぁ。)



埠頭



ガン「あの〜、今、どんな状況なんでしょうか?」

提督「ん?なんだお前も居たのか。」

ガン(ひどい!)



着任時のぐだぐだの所為で若干空気気味なガングートが

恐る恐るといった感じに提督に声をかける。



川内「そうだねぇ。明石のレーダーの情報を見る限りは

   これは時雨がいつぞやのデコイを蒔いたようだね。」

摩耶「だね。だけど、不知火の電探の性能を考えるにこいつは不利なんじゃね?」

提督「そうだな。明石のこれはアメリカ製だから有る程度の数が分かるが…。」コンコン

明石「日本製電探の不知火さんのだと多分、塊になってるでしょうね。」コワサナイデクダサイヨ?

川内「いいとこ大きな円表示かなぁ。」

ガン「という事は、不知火さんは時雨さんの位置が分かっていない状態という事ですね?」



そう、時雨が使ったのはいつぞやの千島列島作戦で使用されたデコイつき魚雷。

それは電探に実像を写すデコイ付き。

速度に関しても駆逐艦の範囲内に納まるように調整された代物である。

723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:30:29.10 ID:aBfZ3KXR0


煙幕外



長門「密集状態だと電波の反射が拾いにくくなるな。」

瑞鶴「そうね。艦戦、艦攻が編隊組んで飛ぶのと同じ理由になるわね。」

長門「あぁ、確かまとまる事によって

   電波反射での数の把握をしにくくする目的があったな。」

瑞鶴「そうよ。攻撃機の全体数の把握を抑える効果があるわ。」

長門「となると、不知火はこの煙幕の中だと時雨本体が探しにくくなるか……。」

瑞鶴「不知火が煙幕の中から出ずに戦う事を

   選択する事を見越した上での準備だったと見るべきでしょうね。」

長門「確かにな。時雨が作り出した時雨に有利な状況に敢えて乗ったわけだからな。」

瑞鶴「不知火の慢心、或いは。」

長門「それを力で捻じ伏せれるだけの策があるのか。」

瑞鶴「はたまたそれすらも利用するつもりだったのか?かしらね。」

長門「なぁ瑞鶴。こんな言葉を知っているか?」

瑞鶴「何?」

長門「飼い犬は飼い主に似るそうだぞ?」



それは個体差はあるものの艦娘の不知火という艦が提督の指示を忠実に、

そう、狂気的に守る事から狂犬とも忠犬とも言われる事を揶揄したものだろうか。



瑞鶴「あれが犬?狼かなにかの間違いじゃないの?」ジョウダン

長門「………、確かにな。」ジョウダンダ

瑞鶴「飼い主というとあの曲者だものねー。」

長門「提督だからな…、不知火が何手先まで読んでいるかだな。」

瑞鶴「詰め将棋みたいね。」

長門「結局は相手との心理戦だ。

   いかに騙し、相手を躍らせるか。だ。」

瑞鶴「時雨は割と純だからねぇ。」

長門「いい意味で汚れてないからな。」

瑞鶴「あら、私達がひねくれているみたいじゃない。」

長門「自覚がないのか?」

瑞鶴「あるわよ。大有り。」クスクス

長門「さて、どうなるかな。」

瑞鶴「楽しんでるわね。」

長門「まぁな。」

724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:32:13.83 ID:aBfZ3KXR0

煙幕内



不知火(成程、いい判断です。)

不知火「間違いなく最後尾に陣取っているのでしょうが、

    このデコイに使用している魚雷は弾頭有りや無しや?」

不知火「それを判断するに当って

    行動分析においての最適解の建て方をよく理解されています。」

不知火「不知火にとって敗北につながるのはこの魚雷が弾頭有りであった場合、

    そして、もう一つのパターンが無弾頭であり

    時雨さんがこのデコイに紛れて不知火に接近、

    致命傷を負わせる事を狙う場合です。」

不知火「私がそれを防ぐには当然ですが飽和的に魚雷を撃ち接近を防ぐしかありません。」

不知火「成程、考えたものです。」

不知火「不知火が安全策、つまり最悪を事前に潰す事を好むのを良く考えられていますね。」



不知火が喋りながら魚雷を次々と発射するのは

自身に爆発の衝撃が来ないようにする安全距離ギリギリの為。



時雨「そう、不知火は魚雷で対処しなければならない。」

時雨「自分が不利になる可能性を考えた際に

   それを無視することが最悪の結果を齎すと判断するのであれば。」

時雨「例えそれが無弾頭のデコイであったとしてもだよ。」



正面のデコイへ向けて放たれた魚雷の第一陣だろうか、深度設定を間違えたのか。

デコイ群をすり抜け時雨のはるか下の海中を魚雷が抜けていく。

魚雷が深度設定の問題から敵の艦底をすり抜けて行くことは稀にある事。

だから時雨はこれをあまり気に留めなかった。



不知火「……、やはり無弾頭でしたか。」

時雨「であったとしても、潰さなければならない状況なのは辛いよね。」

不知火「さすがに先手を取られてしまった状況ですので。」ヌイッ


725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:33:16.62 ID:aBfZ3KXR0

埠頭



提督「煙幕が薄れだしたな。」

雪風「煙幕内での魚雷の爆発音もかなりありましたから

   それで煙もそれなりに流れたと思います。」

川内「魚雷の残りの残段数で行くと不知火が不利だろうね。」

摩耶「といっても有視界での戦闘になってくると不知火に軍配があがるかな?」

スパ「ここからは砲撃もお互いに精度の高い争いになるという事ですか?」

提督「そうだな。

   だが煙幕内での戦闘においてダメージを蓄積させられているのは不知火の方だな。」



お互いの損傷状況を知らせるモニターをちらりと見る提督。



雪風「不知火さんの魚雷の残弾数は最大で残っていても一斉射分。」

川内「四連装2基に残る8本で終わりだろうね。」

摩耶「いざという時までは撃てない。」

提督「そうだな、使い方を誤ると負けだな。」

スパ(勝ったな。)



中破寸前の不知火に対し、カスダメ程度の時雨。

726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:34:03.03 ID:aBfZ3KXR0

演習海域近く



長門「まさしく土俵際といった所か。」

瑞鶴「古典的な言い方をするなら俵を割る寸前かしらね。」

長門「で、どっちが勝つと思う?」

長門の質問に無駄な質問をといわんばかりに鼻を鳴らし。

瑞鶴「勝敗が読めないほど仲間の力量を見誤るもんじゃないでしょ?」

長門「まぁ、そうだがな。」

瑞鶴「時雨は強いわよ。私の背中を任せていいくらいにはね。」

長門「ほう。」

瑞鶴「だけど、敵は深海棲艦ではなく不知火だった。」

長門「あぁ。」

瑞鶴「それだけよ。」

727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:35:14.28 ID:aBfZ3KXR0

演習海域



煙幕が薄れてきてお互いの姿をしっかりと捉えてからの砲撃戦が始まる。

時雨が煙幕を張ったのは電探の優位性を生かし

視界不良下でのレーダー射撃を行うのが主目的。

と思わせておいてその実は不知火の継戦能力を奪うべく

魚雷を大量に使用させることが目的だった。

そして、視界がクリアになれば不知火は一撃必殺の為の残り少ない魚雷を生かし。

尚且つそれを叩き込む為の一瞬の隙を狙うべく砲撃を行う。

となれば。



時雨「狙ってくるのは勿論」

不知火「魚雷発射装置。」



時雨と不知火はお互いに距離を保ちつつ再び砲撃戦に興じている。

ただ、砲撃の弾を当てるだけであれば面積の多い胴体を狙うが常套。

しかし、魚雷の誘爆を狙うのであれば正確な射撃が必要となる。



時雨「残りの魚雷をここで使うのかい!?」



自分の進路を遮るかのように放たれる4本の魚雷。

煙幕内であれば雷跡、発射のタイミングは見えない為避ける事は難しいだろう。



時雨「でも、もう煙幕は薄れている状態だ。」



だからこそ回避は容易。



不知火「太腿の魚雷発射装置を狙うために方向転換をしていただく必要性がありましたので。」ヌイ!



時雨の魚雷発射装置は足、対して不知火の魚雷発射装置は背中の機関のサイド。

正面から撃ちあいすれ違う反攻戦を繰り返すのであれば狙いやすさについて。


728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:36:10.06 ID:aBfZ3KXR0

時雨「不知火に分がある。」

不知火「ギリギリで耐えてきたかいもあると言うもの。」



さらに言えば魚雷を先に撃てるだけ撃ってしまっている分、

不知火の方が魚雷の誘爆の危険度は少ない。

いや、既に1基分は空の為、

背負い式の艤装の機関を守る防御盾、装甲代わりに使えなくも無い。



不知火「すれ違う際に既に空になっているサイドを盾にさせてもらいます。」



そして、すれ違い相手の背中をとる一瞬を逃さず狙いを付ける不知火。



時雨「目に頼りすぎて電探を忘れちゃ駄目だよ。」

時雨「せっかくの2丁拳銃スタイルなんだ。」

時雨「あちこち撃てなきゃ意味が無いよね!」



ドン!

しかし、電探の反応に従い後ろを振り返らずに砲撃をする時雨。

それにより一瞬のチャンスは潰された。

シャーッ!

そしてここぞとばかりの魚雷のおまけつき。



不知火「なかなかこれは面白いですね。」

729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:37:21.49 ID:aBfZ3KXR0
埠頭



スパ「勝てそう!」

雪風「時雨さんが確実にポイント貯めて来ていますね。」

提督「問題ない。」

明石(あれ?なんかやばい?)

摩耶「不知火は後、2〜3発もらうと終わりか?」

川内「不知火らしいといえばらしいかなぁ。」

雪風(劇的な逆転劇を演じて後々の

   トラウマを植えつけるおつもりでしょうか?)

雪風(心底恐ろしい)

提督「そうでもないさ。

   不知火は時雨と演習ができるのを本気で楽しみにしていた。」

提督「トラウマみたいなものを与える心算なら初めから全開でやるさ。」

提督「あいつはスロースターターだからな。」

提督「それに演習用の炸薬量が抑えられた魚雷にペイント弾だ。」

提督「ステゴロをやらかすような事にはならんよ。」



身震いをしていた雪風の頭に

その考えを見透かしたかのように手をポンと置く提督。

まもなく演習海域では雌雄を決する時が訪れようとしてた。

730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:39:28.75 ID:aBfZ3KXR0

演習海域

時雨(なかなかしぶとい!)



それは時雨が不知火の方へ向け進行方向を変えた時だった。

ドン!

轟音を立て、足元の海中が急に爆発。



時雨「えっ!?何が!?」



何が起きたかは分からない、

だが、この一瞬を相手が見逃すわけが無い。



時雨「不知火は!?」



バランスを建て直し不知火の方向を顔を向けた。

正にその瞬間だった。

一瞬の出来事に気がとられ電探ではなく

直接目で見て不知火の位置を確認しようとしたのが裏目にでる。



時雨「あぁ!!」



強烈な光、探照灯の灯りを目に当てられ完全に視界が消失する時雨。

駆逐艦用の探照灯でも約10万カンデラ、ワット数で凡そ1600W。

それだけの明りを照射されれば視力は一時的に失われる。

その一瞬を不知火が見逃すわけが無い、

瞬時に判断を下した時雨が次にとった行動は。



時雨「降参。」

時雨「不知火はここまで読んでたの?」



電探の端に魚雷の安全距離に位置取る不知火を捉え敗北宣言をする時雨。



不知火「不知火の仕事は司令の事務仕事の手伝いです。」

時雨「うん。そうだね。」

不知火「日々、皆さんの提出される戦闘映像を分析し報酬の支払い査定を行っています。」

時雨「うん。」

不知火「ですので、皆さんの戦闘行動時の思考パターン、

    行動パターンはある程度トレースが可能です。」

時雨「あー、つまり初めから全て読まれていたという事か。」

時雨「どうやら僕は孫悟空だったようだ。」
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:40:38.24 ID:aBfZ3KXR0

一瞬の照射だったおかげでようやく視力が戻ってきた時雨が

不知火の方へ近付き手を差し伸べてくる。



不知火「彼を知り己を知れば百戦殆うからず、

    戦う前に相手の情報を徹底的に洗える相手。」

不知火「つまり時雨さんだったからこそ勝ちを拾うことが出来たといえます。」



握手を交わし、時雨へと感謝を述べる不知火。



不知火「いい演習、ありがとうございました。」ペコリ

時雨「は ――――――。君の爽やかさに毒気が抜かれるよ。」

時雨「僕の完敗だ。まだまだ君には敵いそうにないや。」

不知火「いえ、いずれ、すぐに抜かれてしまうかと。」

不知火「ですが、不知火より強い方が増えるのは

    全体の戦力の底上げになりますので大変喜ばしい事と思っています。」

時雨「やれやれ、かな……。」



器の大きさも負けた。本当の意味での完敗である。

732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:42:16.63 ID:aBfZ3KXR0


埠頭



提督「勝負が付いたようだな。」

雪風「しれぇ、不知火さんはどういう手品を?」

提督「ん?雪風ほどの者でも分からないか。」

ガン「あの、解説お願いします…。」

川内「足元の爆発は魚雷?」

摩耶「機雷を用意していたようには見えなかったし、

   そもそも自分も危ないもんな。」

提督「あれは遅延信管を仕込んだ魚雷の接触信管を感度あげまくってたんだろ。」

提督「信管の感度設定をみすると魚雷が海中で波などの衝撃で

   作動した結果、敵に当る前に爆発する事があるだろ?」

雪風「感度設定は確かに難しいです。」

提督「その感度を良くした状況で魚雷を投げれば勝手に作動するわけだ。」

川内「成程、つまり本来は戦艦等の装甲を破って突き刺さった後に

   破孔をより大きくする為に使う遅延信管を使用した事で

   魚雷が時限爆弾に化けたわけか。」

提督「うまいこと爆発するタイミングを見計らったという事なんだろ。」

摩耶「よくもまぁ、上手くいったもんだな。」

提督「さらに言えば燃料も少なめにして魚雷が余り走り過ぎないように調整したんだろ。」

川内「全ては時雨のデコイを掃除する時に仕込んでいたってわけか……。」

提督「それ以外に進路を読まれないように砲撃で制限し、

   魚雷が潜んでいるところに誘導したり、

   自分の残り少ない魚雷を使ったというのが手品の種明かしだ。」

733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:44:11.58 ID:aBfZ3KXR0

ガン「でも、時雨さんがその場所へ行く保障なんてないのでは?」

提督「人間だれしもピンチに陥った時の一瞬の閃きを勘とかよく言うだろ?」

川内「あぁ、やま勘って奴だね。」

提督「そうだ、だがな。勘なんてものはあるようでないもんなのさ。」

雪風「?」

提督「勘だの閃きだのと思うのは全て、

   本当は自分の今までの経験や知識の中から最短距離で

   自分が正解と思えるものを導きだしているだけなのさ。」

摩耶「てことは時雨が勘で避けてくるのは折込済みだった?」

提督「普段の業務で得た時雨の戦闘データーで全て読んでいたということだな。」

提督「どこを狙えばどう避けるか、魚雷の回避は右と左、どちらを好むか。」

提督「全て、想定内、いや、そう思わせることすらも不知火の術中なのかもしれないな。」



胸元から煙草を取り出し、一本咥え、火をつけふいと煙を吐く。

提督の周りの艦娘はその圧倒的格上な不知火の実力に溜息を漏らす。



提督「さてと、勝負は付いたわけだ。」

摩耶「あっ、そうだった。」

川内「宴会だねぇ。」

明石「ウォースパイトさん!これ。支払い宜しくお願いしますね!」



そして渡される請求書。



スパ「えっ、何この金額。」

提督「俺は助けないからな。」

明石「いっぱい(many)飲まれる方が多いですからねぇ。」

スパ「a cup of (一杯)じゃないんですか!?」

明石「契約書は絶対。」ニヤニヤ

スパ「Nooooooooooooo !!」


絶叫を上げるウォースパイトを背に

提督は戻ってきている不知火達を迎えにいったのだった。
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:45:01.61 ID:aBfZ3KXR0

長門「なかなかいい試合だったな。」

瑞鶴「探照灯で視力を奪うとはね。」

長門「らいしといえばらしいな。

   時雨がああすれば負けを認めると読んでいたんだろうな。」

瑞鶴「そうね。あっさりと負けを認めたというのがよかったわね。」

長門「我々の出番もなかったからほっとしたよ。」ヤレヤレ

瑞鶴「そうね。殴りあいはまだしも虐殺状態になるのは勘弁だったわ。」

長門「不知火がその辺は弁えたという事かな?」

瑞鶴「そうでしょうね。いい意味で丸くなったと思うわ。」

長門「確かに、見ていてそう思う。」

瑞鶴「何が切欠なんでしょうね?」

長門「さぁな。」



そして長門達もまた宴会に参加すべく鎮守府へと戻ったのである。

尚、皆が飲んだ酒代の所為で

ウォースパイトが数ヶ月ただ働き状態だったのはまた別の話である。

735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:46:35.68 ID:aBfZ3KXR0

とある日の鎮守府会議室

提督は米軍の将校二人と会議を行っていた。



提督「と、以上で打ち合わせについては終了ですかね?」

米中将「あぁ、実に有意義な会談だったよ。」

提督「いえ、先日の救援作戦においては色々助けていただきましたし

   その際の礼もありますので。」

米大佐「こちらに我が国から派遣する駆逐艦に付いてですが

    最新鋭に交代させていただいて宜しいんですね?」

提督「えぇ、そのくらいの変更を受け入れないほど狭量でもありませんよ。」

米中将「最新鋭の方が抜けるデーターも多い?」

提督「虐めるのはお良し下さいな。」ハハ

提督「と、先日の救援のお礼という訳では無いですが

   宴席を用意させていただいるのでどうぞ食べていっていただけませんか?」

提督「うちの料理長が腕を奮っておりますので是非。」

米中将「大佐から腕のいい料理人がいると聞いている。是非に食べさせていただくよこう。」

提督「ありがとうございます。」



そして。
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:47:51.32 ID:aBfZ3KXR0


「こちら前菜でございます。」



いつもと違い、シェフ然とした格好の料理長が配膳を行う。



米大佐「実に素晴らしい彩……。」

「桜と薔薇をイメージし、当鎮守府周辺で取れた野菜を使用しております。」

米中将「実に素晴らしい味わいだ。」



一つ一つの料理に料理長が素材の産地や料理方法を説明していく。

前菜が終わり、メインのスープが終わる。

そして、魚介料理へとメニューが移ってゆく。



「こちら、あこや貝の貝柱バターポワレ、

 ほうれん草のグリーンソース添えになります」

米中将「あこや貝かね?」

「はい、あこや貝そのものは食べれたものではありませんが、その貝柱は別物」

「本日の貝柱は三重県、伊勢湾産を使用しています」

米大佐「うーん。お酒は日本酒ですか?」

「えぇ、獺祭ですよ。

 日本酒は魚貝にあう物が多いので気に入っていただけたのでしたら幸いです。」



そして尚もコースは続いてゆく。

737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:50:11.77 ID:aBfZ3KXR0

「此方、鳩肉の唐揚げ香草添えになります。」

米大佐「鳩肉ですか。」

「えぇ、フレンチのではなく中華の香炸。

 予め下味をつけた物を揚げています。」

「蜂蜜や老酒で下味をつけています。詳細はお教えできませんが…。」

米大佐「実に食感も素晴らしいですね。」



そしてメインデイッシュも終盤へ。



米中将「目の前で切り分けるパフォーマンスかね?実に素晴らしい」

「牛フィレ肉フォアグラと抱き合わせにしロッシーニ風に仕上げ」

「どうぞ」

提督「ソースのコントラストが美しいものですな」

米大佐「あぁ、ジョエル・ロブションの期間限定メニューで見た事がありますね。」

米中将「……、再現出来る腕前とは恐れ入る。」

提督「肉が綺麗な円形に整形されている。」

「その様な形になるように型にいれ整えておきましたので。」

そして楽しい食事会は最後のデセール(デザート)へ。

「こちらミニャルディーズ、プチフール、

 季節の果物、春の香り添えになります」

米中将「あぁ、実にいい香り、味。」

米大佐「実に素晴らしい。」



人は本当に美味しいものを食べると語彙力が無くなるとか。

提督が設けた二人の米軍高官をもてなす食事会は無事終了したのだった。

そして、帰路に着いた米軍人の二人は船内で改めて提督について話をしていた。



米中将「会議で表明できない自分の立ち位置を料理で伝えてくるとはな。恐れ入る。」

米大佐「大使館勤務経験のある料理人だったのでしょうか?」

米中将「かもしれん、そこは分からんが。超一流なのは間違いない。

    それと、少なくとも、あの提督は我々と事を構えるつもりは無いようだ。」

米大佐「歴史に従うという事ですか。」

米中将「あぁ、そして脅威となる連中についてもある程度示唆してきていたな。」

米大佐「終わった後の事でも共闘できる部分はするということでしょうか?」

米中将「あの料理のメニューで判断する限りではな。」



738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:51:17.37 ID:aBfZ3KXR0

鎮守府食堂



提督「上手く伝わったかな?」

「司令官の意思に添える料理は出したと思うよ?」

「ただ、それを読み取れるかどうかは相手次第でしょ?」

「それにそれを読み取れない程度のニブチンならかえって扱いやすいんじゃないの?」

提督「まっ、そうだな。」

「司令官も大変だねぇ。」

提督「なに、手元に有効な手札があったんだ。使いたくもなるさ。」

提督「今日はありがとうな。また、頼むよ。」



戦場は何も魚雷と砲弾が飛び交う場所だけではない。

政治の駆け引きもまた戦争なのである。

739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:55:26.45 ID:aBfZ3KXR0
以上で更新おわりでございます!
首脳会談時の晩餐会や昼食会での料理のメニューは様々なメッセージがこめられている事が多いので
興味をもたれましたら調べてみるのも面白いかもしれません
個人的に記憶に残っているのは習近平がイギリスに行った時の皮肉たっぷりな晩餐会メニュー
色々、隠されたメッセージを受信出来ないと無能呼ばわりされる外交の世界
こわいですね!ここまでお読みいただきありがとうございました!
また、更新間隔がのびのびになっていることをお詫び申し上げます
乙レス、感想レスいつもありがとうございます、お気軽に残していただけるといっちが喜びます
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 06:37:39.75 ID:v2h3PD9i0
乙です。
うーちゃん うーちゃん うーちゃん∩( ・ω・)∩ ばんじゃーい
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 11:40:37.78 ID:bHIkmmrD0

うーちゃん意外と出番あるどころか切り札になってて嬉しい
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 19:22:50.63 ID:ibELC143O
ここのうーちゃん大好きだわ
743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/20(土) 19:07:35.85 ID:9mofOjPQ0
あの有名店を再現出来る腕前って一体…

でも有能なうーちゃんって好きだなぁ
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/21(日) 19:38:00.35 ID:RgAMSUgF0
半分くらいは料理のメッセージ読み取れたと思うけど第3部ヤバすぎやしませんかねこれw
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/08(水) 00:30:33.58 ID:nFQLBL4F0


「はぁ ――――――――― 。」



大きな溜息を一つ。

いや、分かっている、自分が原因である事は。

しかし、あれを見過ごす事は断じて許せないのだ。



「といっても4回目の出戻りはなぁ ――――― 。」



初期艦として選ばれて提督の秘書艦として本来は仕事していたはずなのだ。



「いや、犠牲が出ることがあるのは当たり前なのよ。」



そう、その犠牲の出し方が糞なのは実に許しがたいのだ。



「だからといって意見具申も許されないなんて。まったくやになっちゃう。」



恐らくは自分が更迭された後、自分が助ける為に動いたあの娘達は水底へ。だろう。

それを考えれば。



「はぁ ――――――――――― 。」



巨大な溜息が出るのは仕方のない事だろう。


746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/08(水) 00:32:10.31 ID:nFQLBL4F0


「あら、今度もお早いお帰りでしたね。」

「あぁ、教官。また、お世話になります。」

「いったじゃありませんか。あの方は叢雲さんとは真逆ですよって。」

「そうはいいましてもですね。向うが指名してきた以上はですね。」



にこりとこちらを威圧してくる教官は

艦娘養成校にその人有りと知られる練習巡洋艦鹿島。

鹿島といえば可愛さが売りなんて思われているけれど

今、私の目の前にいるこの女は全然違う。

いや、見た目を最大限に擬装欺瞞、

相手の油断を誘う事に費やしているのだから一番危険なタイプだろう。

中身が陸上自衛隊で格闘徽章持ちの美女にして野獣とよばれ

一体何人の男性を正しくベッドへと沈めて来たことやら。

艦娘の適正があった為海軍に編入する事になった際、

別れへの悲しみの涙……、ではなくうれし涙を流した隊員が多かったとか。

そういえば昔、私、脱いだら凄いんですなんてCMあったなぁと。

もっとも目の前のゴリラは筋肉ダルマなのだ。ふふ。そりゃ彼氏も出来ませんよねぇ。



「叢雲さん?余計な事を考えていませんか?」

「いえ!考えていないです!」ビシッ



目が笑っていない。

あっ、これ後でお説教というなの楽しい格闘訓練時間だ。泣きたい。

だが、神というものは時として降臨あそばされるものなのだ。



747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/08(水) 00:32:56.18 ID:nFQLBL4F0

「あー、お嬢さん方。申し訳ないのだがこちらの校長室はどちらか教えていただけないだろうか?」



やった!この場を離れられると振り返ったそこに居たのは。

まぁ、このうだつが上がらない雰囲気のセールスマンが私の最初の印象だったかしら。

その後もこのそうと思わせない見た目に騙され続けていく事になるんだけど。

そうね。とりあえず、私が最初に感じた印象は胡乱げな、

それこそ詐欺師かなにかみたいなだったわ。

後々、あんた、お前の仲になるなんてまったく思っていなかったわ。

748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/08(水) 00:34:44.03 ID:nFQLBL4F0
提督の初期艦叢雲との出会いを少し
しょっぱなから詐欺師扱いの提督、仕方無いね!
お読み頂きありがとうございました、番外編の方も宜しくお願いいたします!
感想、おつレスいつもありがとうございます!お気軽にレスいただきますといちが喜びます
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/08(水) 04:05:17.92 ID:VKqyDi2aO
乙!
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/08(水) 08:20:08.64 ID:IERZX957O
乙!楽しみにしてる!
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/08(水) 12:47:01.14 ID:cPzWr1k90
カシマ・カシマ
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/09(木) 07:12:57.52 ID:kgM+/xCGo
お嬢の浴室的鹿島か。
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:26:55.58 ID:TYakSQdC0
ちょっぴりばかりの更新
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:28:35.14 ID:TYakSQdC0

校長室に案内して聞き耳を立てたところで。



「叢雲さーん。」ネットリ

「あぁぁぁぁ ―――――――― !」ズルズルズル



私は曳航されたのだった。



「外でなにやら断末魔が聞こえたようですが?」

「あぁ、まぁ、君が気にする事ではないよ。中……。」

「申訳ありません。階級については。」

「あぁ、そうか。にしても君が前線に回されるとはね。

 いよいよ人材の底が見えるようだ。」

「いえいえ。私が動ける、動かせる状態であればこそです。」

「軍令の全員で前線整理の道筋つけて後方のお片づけをしてです。」

「ここだけの話しですが南太平洋の悲劇。

 あれは戦線を押し下げる抜群の効果がありました。」

「君の師匠はつねづね撤退を提案していたのだったか?」

「えぇ、教授は拡大を続ける戦線の整理縮小の必要性を言われていました。」

「国力全てを注いでの維持はいずれ破綻が来る。歴史に学べという事です。」

「力を貯めてまた取り戻せばいい、国際社会を巻き込めと。」

「そして、それが敵わないが故に前線で嫌がらせを続け

 戦術的に対処療法的な止血作業をされておりました。」

「おしい方をなくした。」

「最後まで軍人であったようです。」

「奥方がいらしたと風の噂で聞いていたがどうされている事やら。」

「艦娘と結婚をしたと聞いてはおりました。

 年をいった上での初婚だったからか手紙にのろけが多かったですね。」

「あの鉄面皮がね。」

「教授はあれで表情豊かではあったと思うのですが。」

「私が軍令に居た頃とは大分違ったようだな。」

「でだ。本題に入ろう。事前に受取ったこの書類に間違いないのかね?」



机の上に出される軍令部の各部署の責任者の名前が連ねられた一枚の書類。

755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:29:35.35 ID:TYakSQdC0

「えぇ、士官学校で提督課程は学びはしましたが

 最低限ですので改めて学びなおしたいと思いました。」

「君なら不要と思うが上には私も逆らえん。」

「にしても、ここを卒業後の君は各鎮守府の建て直し作業が主になるのかね?」

「どうしても戦闘ドクトリンを徹底させるには

 現場に出向いて指導する者がいりますからね。」

「といってもやらかした所の建て直し。

 例えるならピアノの調律師の様なものです。」

「正しく、綺麗な音が出るように調整。調整後は演奏者に任せる。」

「私はあくまで裏方ですよ。

 そのうちどこかに腰をすえるかもしれませんが今はその時ではないです。」

「軍令の戦略参謀長の渋面が思い浮かぶようだよ。」

「兄弟子筋に当る方ですから可愛がっていただきました。

 だけにお前以外に頼めないとも言われましたので腰を上げたという状態です。」

「縁は時として有効であり時として己を縛る……だな。」

「私のような無能が参謀の末席を汚すのは

 偲びありませんのでまじめに仕事をする次第です。」



(狸め。)

(狐野郎。)


756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:33:00.52 ID:TYakSQdC0

笑顔で楽しい世間話という名の腹の探りあいは社会人の嗜み。

否、社会人の名刺交換という初級講座レベルの基本スキルである。

そう、オンシャノツギノプロジェクト、ジュチュウヨロシクネー!の言葉の後に

モットヤスクシテクレマスカ?ヨロシクヨー!が続いたかと思えば。

ザッケンナコラー!ミツモリタケエゾコラー!

ザッケンナコラー!ノウキギリギダゾコラー!

の楽しい宣戦布告となるあれである。

先日まで情報の坩堝にして中枢に居た相手から

何某か有益たる情報を引き出せたらと水を向けるも

相手もそれを知ったもので自分が知る以上の話しを語ろうとしない。

情報の統制がしっかりとされていることと

相手は自分が把握している情報のレベルを

しっかりと知っている事を確認できたに過ぎない。

なれば。



「君につける補佐の艦娘だが。

 大和型、翔鶴型、君の望む娘をつけようじゃないか。」

「あー、余計な気遣いは不要です。校長。」

「寧ろ通常の提督候補生と同じように初期艦課程を修了している者をお願いします。」



艦娘養成校でのそれは士官学校におけるそれとあまり代わらない。

提督候補生に艦娘一人を補佐につけ無事任官(卒業)した後は

そのまま一緒に鎮守府に着任となる形なのだ。

そんななかで即戦力として活躍可能な戦艦、空母をつけましょうと申し出てくる。

つまるところ、ようはこの校長。



(おべっかを使ってでも軍令、本営に近いところに知己を得たいという事か。)



参ったものである。



(好意をうけとれや若造!)

(ふざけんなや!はげ!後、俺はもうおっさんだっつーの!)

(黙れこの若造!

 手前もハゲだろうがハゲって言う方がハゲじゃ!!)

(薄毛ですぅ!?薄毛!!

 ないのと薄毛は天と地ほどの差があるわ!!)



お互いに目で鍔迫り合いを行う、

恐らくモノローグが見えるのであれば上の様なやり取りが見えた事だろう。

757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:35:53.38 ID:TYakSQdC0


「では、挨拶はこのくらいで。提督候補生向の寮へ向わせていただきます。」

「あぁ、そうか。であれば、教官との顔合わせも兼ねて案内させよう。」



校内での専用電話的なもので呼び出してきたのは……。



「練習巡洋艦鹿島、お呼び出しに従い参りました。」

「こちらの方を部屋まで案内してさしあげて。」

「了解です!」



廊下を歩く道すがら。



「提督候補生さんは民間候補生に偽装ですか?」

「こちら側の匂いがしますねぇ。こらからもよしなに。」



手身近に自己紹介をされる。

これはあれだろうか?

胡散臭いもの同士は惹かれあう。

昔見た漫画の一節を思い出す。

成程、前を行く艦娘の背中は何かを語るには充分すぎる。



(なんとか神拳とかの伝承者と名乗られても納得するやもしれん。)



それほどに目の前の艦娘の背中は自己主張をしていた。

漢なら背中で語れ。目の前の背中はそう語っていた。



(いや、艦娘は女性だよ………な?)



益体もない事を考えている内に割り当てられた寮の部屋へと辿り着いたのだった。

そして野戦将校の行李並に小さく荷物を纏めたトランクからノートPCを取り出す。

文明の利器というのは昔のように

大量の書類などと言うものを持ち運ばなくてもいいようにしてくれる。

しかし、逆に出来る事を増やすという事でも有る。



「軍令の参謀職から離れたにも関わらず椅子がそのままか……。」



おぉ素晴らしき官僚機構。

万一提督として卒業できなくても参謀として

再度お仕事出来るように籍はそのままにしておくよとの「ありがたい」お言葉。

裏を返せば参謀の人数足りないから

提督課程を勉強している間も出来る事はやってね!という事である。

758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:37:40.88 ID:TYakSQdC0


「人手の足りなさ、いや、足らぬ足らぬは工夫が足らぬか。」



つねに軍令部に詰める形とは代わる為仕事の量は減っているものの。



「確認して対策とらねぇといけないことが多すぎねぇかこれ?」



支給されたPCで軍令部の専用クラウドにアクセスすれば

スパムメールが如き書類の量。

軍令部の参謀総長の顔が思い出される。



いずれ仕事の量は減らすといった………。

今回、まだ、その時と場所の指定まではしていない……。

君はそのことをどうか思い出していただきたい。

つまり、参謀本部がその気になれば仕事を減らすのは10年後、20年後ということも

可能だろう……ということ!



「死者を生き返らせてでも仕事をさせそうだ。」



提督候補として軍令部を離れる間の仕事量は減るかなと

期待した方が間違いだったようである。



「実際、こちら側の人材の不足も戦線の縮小理由ではあったんだよな。」

「師匠もとんでもねぇ宿題を残してくれやがるぜ、まったく。」



そして、人事部から手に入れた艦娘養成学校の所属艦娘候補生の資料に再度目を通し。
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:40:43.78 ID:TYakSQdC0


「提督秘書以外の仕事のつぶしも効く奴を見繕わにゃならんな。」



彼、便宜上、提督とするが提督が軍令部の戦略畑の長、

軍令部総長から受けていた指令に一つ艦娘の中で

提督の資質がある奴がいれば引き抜けという指令があった。



「提督になる為にはただ単純に士官としての資質があればいいってわけでもないか…。」



艦娘を総べる提督と呼ばれる職位は

単純に提督として勉強をすればいいというものでもなかった。

単純かつ絶対的な要素「艦娘から無条件で好かれる」これがなければならない。

組織の長ともなれば調整能力は必要であるが女性を、ともすれば100から200人。

それだけの人数運用ともなれば間違いが起きればそく内部崩壊。

艦娘として生まれ変わった元人間の女性たちに早い話

「なんかいい人ね」と思わせる何かがいるのだ。

何か?とぼんやりした物なのはそれが判明していれば

今頃提督を量産出来ているという上側の恨み的な物が入っている事なのは言うまでもない。

提督候補として艦娘養成学校に送られてくるのは最低限をクリアしている事になる。

軍令、司令部付きの艦娘達が士官学校、

或いはその他選考過程で○、×をつけている事は上の方の人間の一部しかしらないのである。

現場の鎮守府で真っ黒運用をやらかしてもめったに後ろ弾案件が起きないのはそういう事。

ともすれば狂信的な好意があるおかげで

運営がなりたっている鎮守府があるのもそういう訳なのだ。

だけになれる人間が少なく民間人の積極的(但し適正者は少ない)募集も行うという

人手不足が極まっている状態なのだ。

しかし、艦娘になれる適性を持つ女性は意外に多い。

ならば艦娘に提督を兼ねさせて人数不足をとなるのは自然の流れでもあったわけである。

人材の不足というのが組織の大小関わらずなのは悲しい世の現実なのだ。

叩き上げの将の出現を待つよりは早いうちに芽を見つけて

悪い方向へ育たないように植え替えてという事。



「まぁ、現場叩き上げの方が結局は面白い奴が育つんだがねぇ。」



優先度は低く、掛けられる時間は少ない。


「頑張って提督になるべく勉強をしますか……。」

といっても士官学校を卒業し、参謀課程を修了、

尚且つ直近で軍略参謀を務めていれば児戯が如き内容な訳であり。


「ベッドってこんなに柔らかかったんだねぇ……。」スヤァ


改めて提督向の教本等を読む気にもならず日頃の疲れからか睡魔に勝てる訳もなく、

提督はのんびりと久方ぶりのベッドの感触を楽しむのだった。
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:43:30.06 ID:TYakSQdC0
以外!それはボクカワウソ!
あれが着ぐるみになるとかよそう出来た人いるわけないと思います
イベントの具体的日程はステージでご案内とかとか
まぁ、そうなるな
秋津洲4人目でねぇといいつづけて暇暇周回してきていてS勝利100超えました、出ない時は出ない
バケツがやばいですね、ここまでお読み頂きありがとございました
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/12(日) 14:27:37.96 ID:6Ah90Ll+O
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/18(土) 19:09:35.67 ID:fPhBGAbI0
乙乙ボーキくれる遠征はもちっと欲しい
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:10:20.75 ID:o6WlkERf0
今回のイベント難易度おかしくないですかね?
後、甲限定装備全般オーパーツ気味…
運営さん、ちょっと?さすがにおかC
すみません愚痴入りました、お時間宜しければ少し更新しますのでお読みいただけると幸いです
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:11:23.02 ID:o6WlkERf0

「うわっ、煙い」



そいつの部屋に入っての最初の感想はそれ。



「この部屋はバルサンでも焚いてるの?」



締め切った個室に充満する煙草の煙。

物流が死んだこの情勢で煙草をこれだけすきに吸えているって時点で

それなりに怪しい奴と気付くべきだったと今にして思う。

まぁ、あれよね、私が未熟だった。それにつきるわ。



「お嬢ちゃんが、叢雲かい。」

「提督候補生として今後とも宜しく。」



差し出してくる手は見た目の胡散臭さとは別にしっかりとした厚みがある手。



「わたしを選ぶなんて物好きね。」

「今までの経歴には目を通した実に立派な経歴だ。」



何かの皮肉かしら?私は今まで4回も秘書艦を首になってるんですけど?



「上官反抗の角で秘書艦解任。実に面白い。」



こいつ、意図的に地雷を踏み抜きに行く奴かしら?

765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:12:29.49 ID:o6WlkERf0

「意見具申として記録に残っているものに関して目を通させてもらった。」

「俺の意見を言えば叢雲。嬢ちゃんの意見が正しい。」

「広い視野、現場に出撃したものならではの戦況判断。」

「熟練の兵の指揮と言われても俺は納得するだろうな。」

「ただ、相手を説得するには言葉を選んだ方がいい。」

「美辞麗句でもって相手を褒めて煽てて

 きちんと思考誘導してやった方がいい。」

「人間、欠点を直で指摘されると腹立つもんだ。

 特にそれが正しい場合は尚更だ。」

「合理的に割り切れる人間ならいい。

 が、曲りなりに組織の長だ、顔を立ててやれ。」

「嬢ちゃんは恐ろしく頭が切れるのは俺には分かる。」

「だからな、少しは馬鹿の気持ち、そうだな下々の思考もちょいと配慮してやってくれ。」


なんだろう、この胡散臭い詐欺師みたいな奴の言葉が

この時はすっと入ってきたのよね。

例えるなら子を諭す親みたいな話し方に……、まぁ、いいわ。

どうせ深く考えた所で結論が出ない事だってあるわけだし。

それで、まっ、この詐欺師との共同生活がスタートしたってわけ。


766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:13:31.68 ID:o6WlkERf0

「えーっと。」



名前そういえば聞いてなかったわねと詐欺師の顔を見る。



「あぁ、俺の事なら好きに呼んでくれ。

 中二っぽくMr,CigaretteとかSmokingmanでも。」

「普通に候補生何某でも。呼び名に大した意味などないからな。」



顔に似合わず茶目っ気を、いや、これ私をおちょくってるじゃない!



「あんたなんか煙男(けむお)煙男で充分よ!」

「というかもうね!あんた呼びにしてやる!名前なんて勿体ないわ!」

「ひでぇや。だが、まぁ、それでいいか。」



で、まぁ、こいつとの候補生、その秘書艦生活がスタートしたって訳。

提督候補生といってもまぁやる事自体は普通に鎮守府運営でやる事と変わりないわ。

艦娘訓練課程の娘達が通うこの学校で所属艦娘を指揮して演習しての毎日。

後は座学で鎮守府運営の基礎や艦隊指揮を学ぶって訳。

そうしていくなかで当たり前のように……、

そう派閥って物も出来るのよね。

まったくめんどくさいったらありゃしない。馬鹿よね。馬鹿。


767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:14:37.91 ID:o6WlkERf0

「あー、これはこれは。」



講堂でおべっかを使うあいつ。

基本的に候補生同士の個人情報、

民間出身だとか軍大学出身だとか?

そういうのは学校側がばらすことは無い。

教官や艦娘達へも先入観の排除という事でわざわざ知らせることはない。

自分から吹聴して回らない限りは

誰がどんなご出身でございなんて分からない。

私から言えばそういうのを自分から吹聴して回るのって

いかにも小者って感じがするのよね。

あいつみたいにおべっかを使ってくれる相手が欲しいんでしょうね。

まったく。

にしてもまぁ、なんというかヨイショが堂に入ったものね……。

民間ならきっと上に気に入られるタイプなんだろうなぁ。

ああいう言葉づかいは見習わなきゃかしらね。

そしてあいつの部屋で細々とした話しをしていたときに一言。



「口が軽いやつは情報を得やすくて助かるな。」

「叢雲もそう思うだろ?豚もおだてればなんとやらだ。」



同意を求めるなっての!ほんと、厄介な奴だわ!

にしても……。

768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:16:00.80 ID:o6WlkERf0

「一体何者なの?」



直球で聞く。



「さぁて?」

「とぼけないで、私が4回も戻されている事が連絡されていたとしても。」



そう、初対面の時に感じた胡散臭さはこれ。



「どういう状況でどういう内容の意見具申をしたかなんてまでは

 候補生風情で調べられるわけがないわ。」



その断言に、にこにことした笑顔。



「やっと気付いたか。まっ、心して聞けよ?秘密だからな。」



結局ここで騙されたのよね。ほんと詐欺師なんだから。



「俺はな、海軍の特務機関、諜報畑の人間なんだよ。

 ちょいとな内部調査でな。」

「色々調べてるんだ。なに、叢雲。お前の立場に身分は保証しようじゃないか。」

「条件があるなら言ってくれ。可能な限り応じる。」

「条件ね。まぁ、それは後でもいいわ。」

「それより私にそんな事打ち明けて大丈夫なの?」

「なんだ?心配してくれるのか?

 この部屋は毎日『 掃除 』してるから安全だ。」

「相手を思いやれるたぁ、見かけよりずっといい女だな。」

「ばか!」



辻褄も合うしそれっぽいなと思ったのがすべての終わり。

769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:17:03.73 ID:o6WlkERf0

こいつがすべて終わって卒業した後で言った言葉。



『 嘘をつくときは相手が望む、信じたいと思っている嘘をつく事。 』



えぇ、騙されたって訳。

まっ、学校を卒業した後は私に対して嘘はつく事なかったから許してあげるって所かしらね。



「それで、なんで私はパシリの手伝いさせられているのかしら?」

「まぁ、まぁ。」



あいつが色々な連中におべっか使って取り入って…、

までは良かったんだけど。

いや、よくはないか。ううん、あいつだけで完結してたからいいのよ。

で、それで調子づいた連中があいつに色々本来するべき事を押し付けてきたのよね。

提督としての仕事を学ぶ為に色々な資材の手配のやり方とか、

指揮の実務経験を積む為に割り当てられた艦娘達の訓練、

演習カリキュラムを組んだりとか。

まぁ、めんどくさい事務仕事が色々あるわけよね。

それをあいつはぜ ――――――― んぶ引き受けたってわけ。

そしてあいつは私にもその片づけを手伝わせるんだから信じらんないわ!



「その候補生Aのところの戦艦だが命中率に難ありだ。」

「じゃぁ、砲撃訓練を集中強化ね。」

「あぁ、頼む。それとそれに伴う燃料、弾薬の手配もだな。」

「ついでで演習相手に候補生Bのとこを組むと相互でいい塩梅になる。」

「わかったわ。」



まっ、優秀な私に掛かればこの程度の手伝いなんて朝飯前ね。

770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:18:04.14 ID:o6WlkERf0
「きっちり、がっちり、俺たちは優秀だろぉ?」

「おべっかを使うのといらない仕事を増やす程度にはね!」



にたりと笑うあいつに怒りの返事。

私達が受け持った娘達の演習、

訓練カリキュラムもやらないといけないわけだし。

こういっちゃなんだけど同時に並行して

いくつものを鎮守府運営をやっているような気分になるわね。


「楽しくなってきただろ?」

「そんなわけあるか!」



図星の指摘をされ照れ隠し。

まっ、この作業が後々重要だったって気付くのもまた別の話し。

人生に余裕と無駄がない男って本当に退屈だわ。
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:23:04.79 ID:o6WlkERf0
今日は此処まで
お気付きかとは思いますが小説形式になれるべく少し書き方を変えて練習をしております
こうしたらいいよとか、読みにくいとか色々意見をいただけるとありがたいなぁと…
にしても、今回のイベ色々おかC E2のラスダンまではいきました、はい
正直な話しボスへ陸攻を飛ばすより21熟練MAXや基地の陸戦で対空値高いのを大艇でのばすなどして飛ばした方が
空母おばさんの艦載機を枯らせますのでそっちの方がいいと思います、陸攻はどうせダメでません…
ぜかましさんなんかをみながら色々攻略サイトを見ながら試行錯誤
普段から予備艦などを鍛えていてよかったと思うことひとしおです、ですが、一言いいたい
運営、かげんしろ馬鹿と
ここまでお読み頂きありがとうございました、乙レス、感想レス気軽に残していただけるとイチが喜びます
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 00:34:23.32 ID:f4CPZcTI0
乙で。
今からE2輸送を始める身としましては戦力yゲージ攻略が恐ろしくて仕方ない次第です
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 00:53:07.42 ID:DrYnfxxx0
陸偵+陸戦を当てて涼月のCIが綺麗に入れば割とおばさんは黙らせられると計算したけど到達までのリスク管理が偶然頼みで実質無理と判断して噴進砲ルートで楽して叩き潰した
E3-2ラスダンなう

嘘は適度に真実を入れておくと信じやすくなるからそのさじ加減こそ腕の優劣だとどこぞの軍学署に書いてあったなあ
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 04:22:08.46 ID:82eRS9qA0
乙乙
難易度もそうだけど最終回域まで御札はお辛い
最後くらい何でもありの総力戦にして欲しい
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/30(木) 17:15:52.89 ID:wAudkZcn0
久し振りにブックマークで残して有った某纏めサイトで読み返ししてたら
>>459の次が>>466と端折られていたので
「あれ?あきつ丸?雲龍じゃ無かったの?」と混乱したわ
やっぱ、途中の雑談も大事よねー
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/01(土) 00:20:02.62 ID:PUP4laW20
特定の艦娘(故人)をイメージした香水を自作してその香りでトランス状態に入って故人を降ろし闘う降霊術系のオシャレなコマさんとかふと思いついた
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:32:58.74 ID:2HdN4PtG0
>>776様 シャーマン系でしょうか面白いですね今やってる候補生時代が終わりましたら
    ちょこっと書かせていただきたいなと思います

イベントも終り焦げ付いた資源をかき集め日々の艦隊運営を行っているイチの鎮守府
今月のEOもぼちぼちやらななーです、後、ネジ任務、イベについては他で触れたのでもう不知火
サーカスとかやるらしいですけど地方の田舎民なんでほーん状態、京本政樹さんには驚きましたが
行かれる方は是非楽しまれてください(リアイベよりゲーム内イベの方が嬉しいと思っているのは内緒)
では、すこしばかり更新させていただきます
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:34:26.47 ID:2HdN4PtG0

そして、私達はパシリ扱いをされながら候補生達の一大イベント。

卒業試験を兼ねた大演習大会を迎えたってわけ。

このイベントは連合艦隊としての最小単位である12人の艦娘を運用して

トーナメント式の勝ちあがり方式で対戦していく形ね。

で、優勝者は当然ながら色々優遇を受けて赴任先へって訳。

最下位も当然ながら決められてその最下位は卒業不可判定になる。

早い話、あなたは永遠に提督になれませんよって奴かしら。

この演習の対戦相手については今までの戦績などで公平に決められる形になるわ。

そして海軍のお偉いさん達も招いて、そうね、さながら観閲式ね。



「のんびりいこうぜ?」



その一大イベントが数ヵ月後に控えているっていうのに……。



「はぁ、不幸だわ……。」

「そうか?山城。お前さんの砲撃の腕前は一級だ。」

「俺の言うとおりにやれば三面六臂の活躍ができるぞ?」

「あなたの言うとおりに動いていたら負担が酷いのだけど。」

「戦艦には期待してるよ?戦艦だものなぁ。」

「不幸だわ……。」

「山城、頑張りましょう……。」

「姉さま……。」



ニタリと笑顔を向ける相手は扶桑型戦艦の妹山城。

そしてそれを励ますのは姉の扶桑。

あの気難しいマイナスガール達を上手く手懐けたのか

上手くあしらいながら訓練させているのは口先が上手いあいつならではね。

779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:36:29.72 ID:2HdN4PtG0

「候補生さん!だいぶなれてきたなのね!」

「潜水艦は体が冷えやすいからな。温まっとけよ?」

「イク、お前さんの魚雷の精度は抜群だ。頼りにする。」

「お褒めの言葉ありがとうなの。それと、カイロありがとうなのね!」

「はぁー、あったまるぅ。」

「イムヤ、お前もっともってけ。」

「なんか見ていて寒い。」

「ありがとうございます!」



なぜか、いや、艦隊運営という事であれば

潜水艦も居ておかしくないんだけど……。



「先日いただいた本、大変いいものでした。」

「だろ?温故知新。古き軍略家達の思考ってのは面白い。」

「なにか気付いた事あれば教えてもらいたい。」

「あの、はっちゃんとしてここが気になりました。」

「ん?どれどれ?」



連合艦隊の12人を選抜するうえで何故4人も最大に潜水艦娘達を入れた。

と、貴重な枠を潰す事への疑問を抱えていれば。



「おーい、ゴーヤ。」

「なんでち?」

「潜水艦隊の隊長として動いているお前の総評を聞きたい。」

「郡狼作戦への水上艦との連携はどうだ?」



こいつ最悪だわと納得。

つまりはやろうとしていることは敵を誘引撃滅という事かしらね。
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:37:50.58 ID:2HdN4PtG0

「あんた手心とか。」

「叢雲。実戦形式に手心なんてしてたら相手に失礼だろ。」

「教育ってのは痛い目をみて覚えるって事も大事だとはおもわねぇか?」

「じゃぁ、教育というかご教授いただきたい事があるんだけどいいかしら?」

「さて?」

「空母姉妹が飛鷹、隼鷹。そして駆逐艦が特V型三姉妹。」



叢雲の指摘は当然としてしたり顔で返す提督。



「制服、背格好。みなよく似てる、そして似せて貰っている。」

「目的はなにかしら?」



ある程度は分かっているけどきちんと確認したいわけで。



「答えは出ているんだろ?」

「あの、私は艦影を似せる事での混乱を狙ってのものだと思うんです。」



猫を1000匹くらい被った隼鷹が口を挟む。

全体に知られた隼鷹って艦娘と180度違う感じなのよね。

飛鷹が二人いると言われれば

納得できるくらいのお淑やかな感じ。

話しをしてみればこいつの渋い中年顔に一目惚れとか言ってたけど……。

恋は盲目と誰がいったものかしらね。



「なかなか理解が早くて助かる。その通りだ。」

「目視下での艦種、艦名判断だと似ている艦娘が多いと攪乱できるからな。」

「つまり艦隊を分けて動かした際に

 どちらがどっちか分かりにくくするという事ですね。」

「そして、そのまま罠、潜水艦の娘達がある所へ連れて行くという訳ですね。」

「隼鷹は賢いな。」

「いえ〜。そんな〜。」



デレデレ顔がなんというか腹立つ。

781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:38:52.94 ID:2HdN4PtG0

「でも、叢雲がいるとまずくないのかしら?」



冷静に指摘するのは飛鷹。

私が指摘したかったのに……、

ってなによこれじゃ私が隼鷹に嫉妬してるみたいじゃない?!



「いい所に気付いた。だが、それはわざとだ。」

「わざと?」



あいつの答えに疑問を返す飛鷹。



「あぁ。そうだな。すべて教えても勉強にはならねぇな。」

「次回の訓練までに考えておいてくれ。」



そういい踵を返してあいつは自室へと向っていく。



「響は分かる?」

「あぁ、暁には難しかったかい?」

「なによ!響は正解分かったの!?」

「あぁ、私の考えが正しければあの候補生さんは相当な策士。」

「あるいは稀代の詐欺師だね。相当に曲者なのは確かだよ。」



暁と響の姉妹の会話。

782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:41:25.19 ID:2HdN4PtG0

「ねぇねぇ、響、後で教えて頂戴!」

「雷も少しは考えた方がいいと思うのだけれど。」



電が初期艦として外れている為特V型姉妹が三人だけ。

そういえば響は私と同じ髪色だったわね。



「叢雲は答えが出ているんだろ?」



私の方を見ながら響が確かめるように質問。



「えぇ、まぁね。たぶん響と同じよ。」

「あいつはとことん人の心をもてあそぶやり方が好みみたいね。」

「とはいっても多用は出来ないと思う。」



響はなかなか鋭いと思う。



「えぇ、その通りよ。」

「叢雲、暁に雷に説明してもらってもいいかい?」

「いいわよ。あいつから強奪した特A甘味配給券で

 羊羹貰ってきてそれでも食べながら話しをしましょう。」



共に演習大会を戦い抜くのであれば打ち合わせも大切よね。

あいつから奪った特A甘味配給券(通称間宮券)で

貴重品の甘味を貰ってこよう。

にしてもどういう伝手で入手してるのかしらね。

まっ、他の連中を手伝ったりした礼で手に入れているんでしょうけど。

秘書として艦隊を円滑に動くように裏から支えるのは重要よね。

783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:42:19.57 ID:2HdN4PtG0

「いひひ、イク達もお世話になるのね。」

「あら、勿論私達もお誘いいただけるわよね?」



結局艦隊全員に奢ることとなり強奪した配給券がすべてなくなったのよね。

迂闊だったわ。


784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:49:02.53 ID:2HdN4PtG0
叢雲はなんというか恋女房とか古女房とか相棒とか
そんな感じの言葉がしっくりくる艦娘、他の初期艦と一味違う雰囲気が好きです
本編では故人ですが………
第三部!需要あるかどうかしらんが第三部!書いてまーす!(一応宣伝)
第一話はアブーンがでます、みんなの鎮守府で過労死寸前の阿武隈ですよ!
大体の予想されるとおりな癖が酷い、一癖も二癖もある感じのキャラ付けでございますが
他に書いてるのを早めにけり付けないとですね
更新期間がどんどん空いていってるのでレスが付かないくらいに忘れ去られた状況に
先日更新したのなんて2レスもつけていただきホント忘れられていなくてよかったと胸を撫で下ろした始末
なるべく更新期間を短めに頑張らないとだめですね、では次回もお付き合いいただけると幸いです
感想、他、お気軽にレスいただけるとイチがよろこびます、どうぞよろしくお願いいたします
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 02:41:00.37 ID:inENqlmm0
前の鎮守府で酷使されすぎ壊れて多重人格になり赤疲労になると次の人格が出てきて働き続ける阿武隈(うちはトリプル阿武隈だからかなりホワイトですよニッコリ

しかしまあお若い士官候補生様から見たら卑怯もお経もあったもんじゃない策を用意するもんだ
もうこの時期から情勢が悪くなる前提で運用実験してるのかな
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 03:19:59.89 ID:KLGGXsonO
乙!
待ってるぜ!
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 09:55:58.26 ID:reh7MeH0O
続き楽しみ
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 22:57:52.47 ID:inENqlmm0
何かしらの理由で絶対に提督にするわけにはいかない奴を確実に不適格者にするために師匠に送り込まれたのかも知れぬ
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/08(月) 04:23:59.86 ID:YX4H6MyE0
乙乙
見た目の偽装って深海棲艦にも効果あるのだろうか
阿武隈の服とか着させたら真っ先に狙われたりして
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 00:59:43.95 ID:ZkrAgJQR0
8月下旬にイベでーす!
まじかよ……(真顔)
資材カンスト無理そうデース!(やけ)
更新デース!
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:01:16.34 ID:ZkrAgJQR0

それから暫くして卒業検定代わりの演習試験が始まったわ。

一番端っこの最下位から始まったにもかかわらず

勝ちあがっていく度にメンバーの皆が盛り上がる。


「のはいいんだが俺の部屋は談話室じゃねぇぞ?」

「候補生さん。あの、候補生さんのおかげで

 旧式といわれている私達姉妹がもの凄く注目を浴びる事が出来ています。」

「ほんとうに感謝いたします。」

「扶桑、やめてくれ。拝むな。」



提督を拝みだす扶桑。



「まぁ、姉さまが凄いだけだけど?あなたも頑張ってるんじゃない?」



扶桑に続き山城がまあまあねといった具合に褒め始める。

実際、演習のトーナメント表は順調に勝ちあがっている。

勝つほどに結束も強まり、いつのまにかこいつの部屋で反省会やら

次回に向けての打ち合わせが全員で自主的に行われるようになってきたのよね。

792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:01:59.58 ID:ZkrAgJQR0

「叢雲。すまねえ。ちょっと外に出てくる。」

「ちょっと。」

「流石にちび達がいる部屋で煙草はまずいだろ?」



私には遠慮しなかったくせに…。

そういいあいつは外へと出て行った。



「叢雲。」

「響?どうしたの?」

「候補生さん、ライターを忘れていっているみたいだから届けてくるね。」

「あっ。」



私が持っていくわと言う前に出て行っちゃった…。

そして、養成学校近くの港にて提督は煙草を吸おうと

ポケットから煙草入れを取り出したところで、ライターがない事に気付いた。

793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:03:17.59 ID:ZkrAgJQR0

「まいったね。」

「候補生さん。忘れ物だよ。」

「………、響かありがとう。」

「となり、座ってもいいかい?」

「あぁ、いいぞ。」

「煙草、吸わないのかい?」

「ちびっこが近くにいるのなら遠慮するのが大人のマナーだ。」

「私はちびっこになるのかな?」

「少なくとも俺の中ではな。それで、何か用か?」

「うん。候補生さんに二三聞きたいことがあってね。」

「答えられる範囲内でならいいぞ。」



提督が座るベンチの横に腰掛ける響。



「候補生さんはこの卒業試験を

 外部から調整する任務かなにかを受けているの?」

「さて、どうしてそう思った?」

「叢雲の言がヒントになったのだけれど、彼女曰く、らしくない。」

「短期間での付き合いにも関わらず叢雲にあそこまで言わせるなんてね。」

「候補生さんはかなり叢雲に信頼されているようだね。」

「そうならありがたいね。」



続きがあるんだろ?と目で促す提督。

当たり前だが響が感じた疑念の根拠というにはまだ薄い。

794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:05:00.72 ID:ZkrAgJQR0

「候補生さんは追撃すれば圧勝できる状況でわざと見逃し相手の被害を抑えた。」

「或いは此方に被害を出せずに勝てる状況でわざとに軽微な被害を食らう。」

「それら一つづつは違和感なく行われているし最もな理由付けも可能だよ。」

「例えば追撃をせずとも此方の勝利は確定しているため被害軽減に努めた。」

「多少の被害を出すことにはなったが

 強引に進めたため勝利を確実に物にすることが出来た。とかね。」



響の説明は尚も続く。



「演習はこれまでのテスト等で成績上位者が

 演習海域もしくは勝利条件を選択して、残った方をもう一人が選択する。」

「成績最下位でスタートした候補生さんは

 相手が有利に進められるはずの条件全てにおいて勝ってきている。」

「辛勝という風に見せかけた試合運びから

 圧勝という試合運びのものまで自在に演習結果を操作しながらね。」

「その手際は熟練の司令官に並ぶとも劣らないと思う。」

「そして試合内容と対戦相手を改めて見比べれば

 私達艦娘候補生の間で評判が宜しくない相手には容赦なく

 逆の相手には手心を加えている。」

「私も叢雲が『 らしくない 』といわない限りは見比べようとは思わなかった。」



響がいい終わると提督の顔を見た。



「なかなか叢雲はよくみてるな。」



響の説明に相槌を打つ提督。

その表情は生徒が正しい答えを述べるのを満足そうに見つめる教師の様である。

795 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:07:55.01 ID:ZkrAgJQR0

「その事を踏まえて本来は私達に知らされていない採点基準があって

 候補生さんはそれを調整しているのじゃないかなと思ったんだ。」

「叢雲がらしくないと言ったのも相手に加点、或いは減点させるものだった。

 候補生さんが採点基準を知る立場にあると仮定すれば……。」

「不自然な艦隊指揮にも納得がいくと。」



それはある種の確信を持った結論。



「それに、候補生さんはあまりにも指揮が慣れすぎているのだもの。

 暁や私が司令官と呼びそうになるくらいにね。」

「それほど堂に入っていると思われているわけか。」

「そうだね。」



そして少しばかりの間が空き提督が笑う。



「まっ、いいだろ。及第点という所か。もう少し早く気付くかと思ったがな。」

「その推測の通り俺は採点基準を知っている。

 当たり前だが勝ち負けだけで艦隊運営されちゃ敵わんからな。」

「敵を殲滅したが自分の艦隊も壊滅しました、じゃ話しにならんだろ?」

「それはそうだね。」

「さらに言えば敵拠点を破壊、確保したとしても

 今度は敵が奪い返しにくるのに対して

 守る為の余力が無いと奪ってもまた直ぐに取り返されてしまう。」

「艦隊を動かすってのは1つ終ればそこで終了ではない。

 連続で次がある。それを見据えた指揮が必要なんだ。」

「時には負けて勝ちをとる必要もあるっていうことだ。」

「敵の被害を多くすることを主目的として

 積極的に勝ちに行かない事も必要という事だね。」

「そういう事。ただの試合の勝ち負けよりそういう将来を見据えた指揮が

 出来ているかどうかのほうに成績の採点は重きを置いている。」

「さらに言えば鎮守府運営を模擬的にさせることで部下へ仕事を投げる事、

 早い話采配上手か独善的に全てを自分でやりたがる残念さんかを見分けたりとかな。」

「人となりも採点されているという事なんだね。」

「工場出荷の製品が足りないからといって不良品を出荷するわけにはいかないだろ?」

「なるほど、司令官は不良品を取り除く検査員という事なんだね。」

「俺は、ただの候補生にすぎんよ。司令官呼びはやめてくれ。

 まぁ、俺の役割としてはそんな所だ。」

「ふふ、油断すると司令官呼びしてしまうね。」

「私達は既に皆、卒業後も貴方、候補生さんの部下でありたいという部分で意見は一致しているのだけど?」



続く言葉は可能かという事。
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:10:14.05 ID:ZkrAgJQR0

「すまねぇ。そいつは無理だ。

 俺の立場上、一つの鎮守府に納まり指揮する事はない。」

「そっか。」

「代わりに一線級の精鋭が集まる鎮守府に配属されるように手引きはしてやる。」

「俺の下でいる間は色々勉強になっただろ?」

「それは間違いなく。」

「それを役立てて欲しい。

 そしてその言を入れないような無能な上なら教育してやって欲しい。」

「まぁ、傲慢かもしれんがな。」

「確かに傲慢だね。」



そして隣に座る響の顔を覗きこむ提督。



「そして、本題に移るか。」



提督の言に体をこわばらせる響。



「電から情報の提供を頼まれたんだろ?」

「隠し事は出来ないね。」

「隠し事というよりバレバレだ。諜報活動は基本のきだしな。」

「卑怯だとかは言わないんだね。」

「戦争にルールはある、が、だからといって

 卑劣な手を使うなという訳じゃないだろ?」

「それを入れての採点だ。諜報にしてもされる事前提で動いているかどうかも一つの基準だよ。」

「妹の電に頼まれたんだろ?流したいだけ流すといい。」

「暁は俺に隠し事できないだろうし肝心の情報を抜くには頼りない。」

「雷だと俺に直接聞けとつれてきそうだしな。それはそれで楽しそうだが。」



くっくっくと笑いながら響の顔を見る提督。
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:10:45.92 ID:ZkrAgJQR0
「ま、そういう訳でこっそりどういう戦術をとるのか

 聞き出してくれと頼めるのがお前さんという単純な消去法だ。」

「いいのかい?」

「いいさ。ただ、俺はお前さんの妹を秘書艦に選んだ候補生を徹底的に叩き潰すつもりでいる。」

「そいつはどうあがいても変えられない必定だ。」

「知ったからこそ負けを悟るという事もあると言う奴だ。

 しかし、電が秘書艦を勤める候補生にはそれを望めるほどの才はねぇ。」



そして、煙草を咥え、火をつける仕草をしようとしてやはり止め。



「無能の七光りは刈り取らねぇといかん。

 すまねぇがお前の妹には辛い目に遭ってもらう。」

「妹から聞いちゃいると思うが最終戦の相手は『 屑 』だからな…。」

「うん。」

「電に聞かれたことはすべて教えてやれ。俺はそれを上回る。」

「傲岸不遜と笑うならそれでもいい。だが、勝つのは俺だ。」



圧倒的強者の余裕。その言葉を聞き何かに納得したのか安心したのか響は席を立ち帰って行った。
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:12:37.76 ID:ZkrAgJQR0

そして、提督が煙草に火をつけ一服。



「叢雲?いるんだろ?」



建物の物陰に一言。



「あんたは…。」



気付いてたのと言いたそうに出てくる叢雲。



「やっぱりいた。」



煙草を手に持ち替え、笑い声を上げる提督。



「ちょっと、かまかけたっていうの!?」

「その通りだ。まんまと引っかかったな。」



はーっと溜息を一つつく叢雲。



「凡そは聞いていたんだろ?」

「えぇ、まぁ。」

「響に手の内を全部教えてやれ。どうせ使わん。」

「あんたって本当に性質が悪いわね。」

「なに、相手が勝手に踊ってくれるんだ。

 こっちは踊りを鑑賞すればいいのさ。」

「それにこっちが流した情報を馬鹿正直に信じるアホなら、

 はなから提督業なんぞ務まらんよ。」

「あっきれた。」



そして、提督は脳裏に思い出す。

叢雲が今まで秘書艦を務めその能力に問題有りとした提督連中の

所属する派閥の長が今度対戦する演習相手の血縁である事を。


「叢雲。」

「なによぉ。」

「勝つぞ。」

「当たり前よ!」

「いい返事だ。」


この演習が後に卑劣上等、型破りな演習で

敵を圧倒したとして記録に残ったのはまた別の話しである。

そして、一人の提督とその秘書艦が、

悪名でその後有名になる切欠となる最初でもあった。
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 01:19:27.86 ID:ZkrAgJQR0
次回オシオキデース!
試験の採点はナルトの中忍試験をイメージいただければいいでしょうか?
勝ち負けで提督の資質を判断してるわけじゃないよという奴ですね
レスで篩にかける&落さないといけないやつをつぶすために来たとのレス
良くお読みいただいた上での考察ありがたいと思っております
お読みいただいている皆様のレスはこの先の展開を色々推察していただいていてというのが前から多く
本当に感謝です、とはいっても次回はうわ、これは卑劣だわという戦い方になります
屑を相手どる以上仕方無いね!
ここまでお読み頂きありがとうございました、乙レス、感想レスいつもありがとうございます
励みになっております、他のも頑張って更新するべく頑張っておりますので更新の際は呼んでいただけるとありがたいです
では次回の更新もよろしくお願いいたします
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 02:40:33.80 ID:BfU/kMLOo
乙しか言えなくて悪いがいつも楽しみにしてますよ
乙!
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 06:35:00.52 ID:1+v62k180
乙。
もっと早くに続きが読みたいわ
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 10:07:35.70 ID:Ju8Z49gj0
乙!
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 11:49:24.17 ID:a16hG/ur0
完全に叩き潰し将器がないとレッテル貼るとなると艦娘へ調略仕掛けておいて演習中に次々と離反させるくらいしか思い付かないがそれだと群狼戦術のフリが勿体無いなあ、展開が楽しみだ

この提督適性は軍学者に見えるがやってることは軍師の仕事なんだよな
この歪みがいつか大きな失敗招きそうで怖い
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:23:44.38 ID:1e9/xGBr0
暖かいレス、ありがとうございます
更新速度をあげれるよう頑張りたいものの相変わらずの亀更新
本当に申訳ありません、という訳で今回の更新です
お時間宜しければお付き合いくださいますと嬉しいです
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:25:36.24 ID:1e9/xGBr0

そして、決勝戦の時が来た。

その日はいつになく軍令部や艦隊司令部から、

所謂お偉いさんの方々が養成学校へと集まってきていた。



「これはこれは元帥まで……。」

「軍令部参謀総長に誘われてな。」



養成学校の校長が摩擦から火を起こせるのではないかという勢いで揉み手し迎える。



「養成学校はいくつかあるが此処の決勝戦はレベルが高いと元帥と話しをしていてね。」



元帥と気さくに会話をするのは

軍令部参謀総長にして戦略参謀長の大将。



「将来有望な艦娘候補生がいれば横須賀にいただきたいものですな。」

「君の所は充分だろう。なかなか欲張りだな。」



元帥と参謀長の会話に加わるのは

横須賀連合艦隊司令部長官にしてこれもまた同じく大将。

そして。



「決勝進出の提督候補生だが三重尾(みえお)中将の息子が出ているそうですね。」



司令長官が水を向ければ。



「ええ、息子の春蔵(はるぞう)が出ます。」

「これはなかなか優秀なんでしょうな。さすがですね。」

「卒業後は南方方面軍で中将の右腕として活躍してくれそうですな。」



中将と階級で呼ばれた相手は

今だ戦線整理を進めている南方方面を指揮する司令長官である。

806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:27:05.75 ID:1e9/xGBr0

「えぇ、いずれその様にはと考えています。

 それにしても対戦相手はなんとも……。」



お茶を濁すがその言葉にはいかにも見下した印象が伺える。

一番下から勝ち上がってきているとはいえ

一見すれば運がいいだけのような勝ちあがり方。



「息子の対戦相手には力不足ですな。」

「これはしかり。

 中将の息子殿にとってこの様な未熟者の相手は役不足でしょうなぁ。」



中将が息子を褒めればその腰巾着の大佐が言葉を重ねる。



「はは。まぁ、ここまで頑張ってきたんだ。

 それなりには実力もあるのだろう。」



参謀長がその中将の言葉に理解を示しつつも嗜め。



「運も実力のうちといいますからな。」



司令長官がそれにつづけば。



「圧倒的格上に当れば今までのメッキも剥げるだろう。

 我らはそれを見ていればいい。」



元帥が会話を纏めた。

そして、演習の開始時間が迫る中。

二人の候補生はそれぞれが選んだ出撃地点近くに移動を完了していた。

807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:28:18.10 ID:1e9/xGBr0

「随分と上層部の方々がいらしていたな。」

「勝てば上層部への覚えも目出度くなる事間違いなし。」



自分の父親以外にも上層部の重鎮達が集まっていたことを思い出し。



「おい、電。演習相手が使う戦術とかすべて間違いないんだろうな?」

「はっはい。間違いないのです。」

「もし間違えていたら『 罰 』を覚悟していろよ?」



下卑た顔とそしてねちっこい視線を電へと向ける。

彼が言う罰とは精神的、性的な苦痛。

彼はそれを自己の親、

寅の威を借るなんとやらでそれを外へ漏らさないようにしている。



「雑魚の三下が生意気なマネをしやがって。思い出すだけで腹が立つ。」



提督が俺が勝つと挑発したこともありこの三重尾候補生は

成績上位者が先に選ぶ演習海域、もしくは勝利条件で勝利条件を選択していた。

その選択した勝利条件とは敵艦隊の殲滅である。

そして提督が後から選んだ演習海域は

国際海峡であるマラッカ、シンガポール海峡を想定した多島海海域。

島がそれなりに点在する形の演習海域である。


808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:29:27.49 ID:1e9/xGBr0

「小型艦に旧式のポンコツ戦艦を抱えている連中だけあって頭が回るな。」

「だが、連中の潜水艦に気をつけていればこっちの艦隊の敵じゃない。」



自身が率いる艦娘は大和型に翔鶴型。最新鋭の艦娘達に駆逐にしても島風。

軽巡は球磨、長良と火力重視、おまけに重巡は摩耶、鳥海と

成績優秀な娘達を自分の親の立場を利用して選んでいる。

対潜、火力、制空。全てにおいて、万に一つも負ける理由がない。



「そろそろ演習開始です。」



不正が無いかの監視役として来ている教官の鹿島が開始時刻の到来を告げた。

そして。

演習は午前9時きっかりに始まった。



「全艦娘、出撃!」



出撃地点に設けられた出撃ドックから

次々と艦娘達が出撃していくのを見送り始めた次の瞬間だった。

海面に雷跡が走り、最初に出撃していった駆逐、軽巡の艦娘達に魚雷が命中。

複数本の魚雷による水柱が派手にあがる。



「馬鹿な!?相手は出撃地点をどうやって!?」



双方の出撃地点は幾つかある中から

公平性を期すために養成学校側がランダムで選ぶ。

だからそれを知る事ができる訳が無い。まさか。

809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:31:50.65 ID:1e9/xGBr0

「買収して出撃地点を事前に知っていただと!?」


狼狽し、とんでもない独り言をつい口走る候補生。


「言葉には気をつけていただけますか?

その様な工作は受け付けていませんよ。」

「それとも御自分がされている事の自己紹介ですか?」



冷ややかな笑顔で候補生の独り言を即座に否定する鹿島。



「駆逐艦 電、大破、軽巡 球磨、長良、大破、重巡 鳥海、中破。」

「駆逐艦島風 小破、重巡 摩耶 小破。被害判定は以上ですね。」



淡々と被害を確認し告げる鹿島。



「こっ、こんなの無効だ!無効試合だ!!」



演習開始と同時の潜水艦による攻撃。

相手の準備が終ってないところを攻撃する卑劣な一手。

無効な攻撃であると言いたくなるのも分からないではないが

鹿島が次に口を開け述べた言葉は呆れだった。

810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:33:05.87 ID:1e9/xGBr0

「随分とよく喋る無能さんですね?」

「なっ!?貴様!誰に口を聞いていると……。」

「思っているか?ですか?

 当然、目の前にいる状況を把握していないお馬鹿さんですよ?」



銀色のふんわりとウエーブの掛かった髪が、

その腹のそこから来る笑いを抑えているのが分かる程に揺れる。



「いいでしょう、理解出来ていないようなので特別に教えて差し上げます。」

「私達がお知らせしている演習日時、

 演習の開始時刻はあくまで開始時刻に過ぎません。」



蟲惑的笑みを浮かべ、口の前に指を一本立てて鹿島は解説を始める。



「開始時刻は開始する時刻であって出撃する事を表す時間ではありません。」



鹿島のこの言葉にいまだに要領を得ないという顔を見せる候補生。

その候補生の顔をみて、

やれやれとでもいいたげに眉根を寄せてさらに説明を続ける。
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:35:02.93 ID:1e9/xGBr0

「演習の開始時刻はあくまで作戦開始時刻に過ぎないという事です。」

「今まで皆が皆、開始時刻に出撃を律儀に守ってきた事もあってか

 開始時刻=出撃時間と勘違いが進んでいたようですがね。」

「開始時刻前に攻撃をしたりしなければ

 演習海域の何処に潜んでいても

 それはルール違反にはならないという事です。」

「じゃっ、じゃぁ、何故それを全員に言わない!?」



鹿島の言葉に反駁しようとする候補生。

しかし、それを遮り言葉を続ける鹿島。



「私達学校側になんら不都合もありませんので

 それをいちいち訂正、説明する必要性が無かったという事です。」



つまりは勝手にやれという事。

そして、目を細く、獲物を見つけこれから嬲る心算の捕食動物の顔をして鹿島は続ける。



「その程度の事を気付けない、

 見抜けない方が実戦でものになるとでも?」

「改めてお伝えします、この演習開始と同時の攻撃には

 なんらルール違反はありません。」



鹿島はこの事態を予感していた。

対戦相手の候補生に最初に会った時に戦場帰りの香りを感じていた為。

実戦の現場に立った経験があるかどうかは別として

その相手からは実戦を知っている人間が纏う独特の香りがしていた。

だからこそ。

この演習時刻が作戦開始時刻に過ぎないことを踏まえ演習をぶつけてくる事を見抜いていた。
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:36:17.16 ID:1e9/xGBr0

(とはいえ、最後の最後で見せて来るというのは

 他に真似をされて自分に使われる事を防ぐ目的もあるという事でしょうね。)



だけに。



(提督に任官されている方であれば

 ここで冷静に作戦中止の判断を下されるのでしょうか?)

(最も実戦であればそもそもの対潜哨戒網が抜かれているという時点で

 間抜けどころではないでしょう。)



ここでの演習終了は鹿島にとって面白くない。

鹿島はもっと、もっと、この面白い状況を見たいのだ。

人の不幸は蜜の味。

それも、親の権力、権威を傘に着て

好き勝手してきた相手が不幸に墜ちるさまを見るのは………。

至極。愉悦である。

813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:37:25.43 ID:1e9/xGBr0

(で、あれば。私が演じるべき役割も自然と決まるものですね。)

「それで、候補生さんは演習を続行されますか?」



この手の無駄に自己評価が高い相手を引けなくさせるためには煽る事が一番。



「ここで演習の終了を選択する事も良いと思いますよ。」

「御来賓の皆様がどう思われるかは分からないですけれど……。」



海軍上層部がこの演習を見ているという事実を思い出させてやる。

そうすればこの手の無能は頭に血が上り冷静な判断は下せなくなるだろう。



「続行に決まっているだろうが!!

 まだ、大和型戦艦の2人に空母の五航戦の2人も無傷。」

「重巡の2人にしたところで中破と小破だ!

 対潜にしても島風が残っている!

 演習を続けるのに支障なんぞない!」

「了解いたしました。では、演習続行という事ですね。」

「大破判定を出した子達については規定どおりに

 演習海域から離脱させ学校の方へ向わせます。」



所謂ゾンビ行為を防ぐ為である。

そして、鹿島は目の前の候補生が安い挑発に乗せルビコンを渡らせる。

その返答を聞いた鹿島の笑顔は実に恍惚であった。

814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:42:36.63 ID:1e9/xGBr0
鹿島がS女王
お馬鹿島もいいですしエロ女王なのもいいです
実際他の作者様での鹿島は割とそんな感じの役どころが多いですし…
ですが、こういう知恵が回り尚且つサドっ気のある鹿島もいいなぁって思うんです
物語の進みが遅くて本当に申訳ありません、香港のなんか現実がやばい事なっててあれれ?な状況
中国そこまで馬鹿じゃないと思っていたんですが現実は小説よりも奇なり……
いつも乙レス、感想レス本当にありがとうございます
前回の更新の後にいただいたいくつかの暖かいレス、固定で読んでくださっている事のありがたみを
改めて実感いたしました、なるべく更新を早めに行えるよう頑張っていきますのでこれからもお付き合いの程
どうぞ、宜しくお願いいたします
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 01:30:47.21 ID:t9cxth530
回りこみやすい島だらけの地形を選んだか
これは似たもの艦隊が生きるね
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 06:09:55.11 ID:TrT726nr0

固定観念にとらわれると現場に出てから困ることはよくある。
欺いてかわして隙きを突かねばこの先生き残れないね。
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 08:11:47.34 ID:usIqfFKPO
携帯からですが1です
相手側の人数足りていないことに今更気付きました
長門、陸奥がいる事にしてください
申し訳ありません
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 20:33:43.02 ID:4j9W/cXN0
乙乙
立ち絵だけ見た時の鹿島のイメージが完全にこれだ
サド鹿島いいよね
でもやはり本家のゆるふわ鹿島を二次創作で見ない
819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:14:41.08 ID:xNtdGOdc0
このスレを使い切る勢いで提督の過去編を頑張るぞ…
暑い毎日が辛い、少しだけ更新いたします
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:16:14.07 ID:xNtdGOdc0

私、今回の演習の監視員である練習巡洋艦香取は考える。

目の前の候補生という人物について。

今まで見てきた候補生と比べ明らかにそれは異質だった。

そして、それが異質であると気付く相手がいるかどうかを

本人は観察して楽しんでいるようでもある。

さらに言えば。



「あっ、香取先生。そろそろ移動しますので無線機もっていきますね?」


開始時刻を過ぎて僅か10分ほどで

艦娘達への指示を出すのに使用する無線機のみもち移動を開始しようとするありさま。



「どちらへ移動されるおつもりですか?」



「はぁ。演習におけるルールブックを読む限り演習開始後は

 開始地点にいなくてもよいようですので

 司令部としての機能を他所へ移動しようかと思ったしだいです。」



演習開始時、候補生は所定の開始地点にいる事。

この一文の解釈をそうとるかと腹の中で笑う。

確かに妹として一緒に教官を務める鹿島が気に入る訳だ。

この候補生はルールの穴を解釈の仕方でいかようにも取れるというやり方を心得ている。

この手の人物は相当な曲者なのだ。

821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:17:36.06 ID:xNtdGOdc0

「いずれ敵がここを直接殴りに来るでしょう。敵司令部の破壊は基本ですからね。」

「はて。そう思われる根拠は?」



あれ?という顔で此方を見てくる。

しまったかしら?どうやら相手はこちらを高く評価してくれていたらしい。

これは下手をうったかしら?



「教官はなかなか点数を与えるおつもりが無いようですな。

 さすがに手厳しい方と評判なだけある。」



あっ、黙っていたら何か勝手に解釈してもらえてみたい。

これはいい兆候ね。



「成程。今までの演習の記録を見る程度の注意力のある候補生であれば

 同じ演習海域の使いまわしくらいには気が付きます。」

「出撃ドックにしても帰還ドックにしても設備を一朝一夕で設ける事はできません。」

「簡易的、その時だけ使えればいいやという事で作る事も可能でしょうが

 学校として卒業試験以外の様々な訓練での使用を考えると

 固定で作ってしまう方が楽なのは自明の理。」

「どうぞ。続けてください。」



ここはもう少し喋らせた方がよさそうね。存外饒舌に語る人物の様ね。
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:18:50.44 ID:xNtdGOdc0

「演習時のドックの選び方にあえての法則性を作っているように見ました。」

「お答えしかねますね。」

「気付くものが気付けば勝手に利用してくれというやり方ですね。

 まさしく事前にどれだけの情報を仕入れ、

 それを分析し己の優位性を確保できるかどうか。」



候補生の情報収集、分析能力についても

裏での採点ポイントなのを気付いているみたいね。

この候補生さんはやるわね……。



「過去のデーターにアクセスできるようにしているのも、

 やってみろと言っている様で。なかなか楽しめました。」

「あらあら、これは、なかなか。」

「私程度の者が考え付くのであれば相手も考え付くというのはまた真理かと思います。」



そんなわけないだろと突っ込みを入れたくもある。

よっぽど丹念に複数年分の演習記録を見ないと

法則性など分からないだろうに。



「演習開始時点での開始位置。

 司令部を置いている位置が分かれば、私なら殴りに行きます。」



確かに敵司令部を殴ってはいけないというルールには書いていないけれど。

清々しい笑顔で爽やかにルールに違反していませんよねと

言外に含むのは悪党だなと思わずにはいられないわね。

823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:20:34.89 ID:xNtdGOdc0

「コロンブスの卵とは言いますが自分が一番であるかどうかはまた別ですから。」

「となれば敵にやられる前に尻に帆をかけて三十六計逃げるになんとかですよ。」

「部下にやることは伝えていますから面倒がやってくる前に雲隠れです。」



なんとまぁ、この候補生は指揮をとる気が無いらしい。呆れた。

いえ、これはあれね。戦が始まった時には既に終っている。

ここまで丹念に情報を分析しそれに対処すべく細工を終らせているという事。

開始直後の相手被害状況も考えれば後はやる事が無いという事ね。

準備段階での差が勝敗を決めるとはよく言ったものね。



「了解いたしました。候補生さんとご一緒しましょう。何が手伝えますか?」

「あっ、お手伝いいただくようなことはなにも……。」


恐縮したような態度を見せるがこれは絶対にそう思ってないやつね。

なんて油断の置けない相手であろうか。

本当に恐ろしい相手だわ。
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:22:22.25 ID:xNtdGOdc0

香取が提督と会話をして提督の人となりを改めて分析していた時。

提督もまた、候補生として考えていた。

目の前にいるこの練習巡洋艦香取という女性は恐ろしく侮れない相手だと。

なんせ、あの雰囲気だけで人を殺せそうなものを漂わせていた鹿島の姉妹艦娘だ。

そのおっとりとした雰囲気は紛れも無い欺瞞という奴だ。

見た目だけの妹と違いその雰囲気までもおっとりとかつ言葉は悪いが凡庸に見せかける。

並大抵のものじゃ出来ない。

先程の質問への答えに対してもそうだ。

移動を開始すると告げる前のやり取りに対してもそうだ。

何故かと問うて来た。

その質問の意図が分からずに間抜けな顔を見せてしまったに違いない。

これは恐ろしく減点をされているかもしれない。

825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:23:43.78 ID:xNtdGOdc0

なぜなら試験の答案用紙に

その答えに至った課程を一切書かずに答えのみを書くようなものだからだ。

論理的にその答えに至った過程も見るのがこういった演習型の試験にも関わらず

答えのみしか答えない生徒というのは非常にまずいだろう。

その答えに至った理由を説明できないというのは

理解が悪い自分の部下に対して何も説明できないという事。

早い話指揮官能力に問題ありと言える。

自分の指示を部下に納得の行く形で説明が出来ないというのは実に不味い。

命令の一言で済ませることが出来るというのが軍人ではあるが

部下へ嚙んで含んで理解、納得した上で動いてもらわないと

その成果は芳しくないのが当たり前。

さらに言えば人徳、人望など望むべく無く、

戦場の露となるべく後ろ弾を拝領するという事になりかねない。

だが、提督はまた、香取教官は以外に慈悲深い相手なのやもしれないと思った。

826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:25:01.00 ID:xNtdGOdc0

というのも質問の後に敢えて沈黙という間を作ってくれたからだ。

これがこちらをとがめる心算であれば

即時に何故その考えに至った事を説明しないなどととがめられただろう。

間を作って敢えてこちらに答えを促したという事は

こちらに多少なりとも好意的であるということ。

となればやることは一つ。

説明の不足を一気に語り、減点されることのなきようにというやつだな。

身分を校長以外知らない以上、流石に上の面子を潰すわけには行かない

饒舌に喋りすぎていないかが心配だ。

なんせ下から這い上がる演出の為にわざとに成績を落とした状態である。

これ以上減点を貰おうものなら幾ら自分の実力を上が把握しているといっても

渋顔の一つくらい覚悟しなければならないだろう。

無能に座らせる椅子は無いというのが上の立場だからだ。

説明は終ったが……、どうだ?満足してくれたかな?

………、よし、了解してくれた!

まったく。この教官は何を考えているか分からないから恐ろしい相手だ。

827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:25:40.88 ID:xNtdGOdc0

そして、提督が香取の底知れなさについて畏怖の念を覚えている時。

この候補生さんの思考の柔軟さはなんとも恐ろしいわね。

香取もまた、候補生である提督に畏怖の念を覚えていた。

結果、お互いの考えは同じであるがため、抱く感想はまた同じ。



((まったく、油断の出来ない相手だ(ね)、苦笑しかでない))



提督と香取はお互いの顔を見てひきった笑顔で笑い合うのであった。

828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:26:54.98 ID:xNtdGOdc0

提督達が笑い合っていた丁度その頃、

山城は腕時計で作戦開始時刻になったことを確認し動き出す。

彼女が立つのは海面………。

ではなく、演習海域のとある丘の茂みの中である。



「虫が多くて気持ち悪い……、はぁ−、不幸だわ……。」



と、いつもの愚痴をいい。

事前に提督から伝えられた作戦内容を思い出しつつ。



「ほんと、相手が不幸だわ……。」



彼女はにんまりとその口唇を吊り上げたのだった。
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:30:21.62 ID:xNtdGOdc0
ここまでお読み頂きありがとうございました
皆様、熱中症にはお気をつけください、経口保水液がおいしいとか感じられるような状況はアウトです
いつも感想レス、乙レス、ありがとうございます
周りこめる地形条件、ウルフパック作戦、そして色々
卑怯だろ!というやつです、まさしく勝てばよかろうなのだ!を時で行く糞野郎を提督はやります
ではでは、次回の更新もお読みいただけると幸いです、ここまでお読み頂きありがとうございました
夏イベント、ほんとどこいくんでしょうね?バケツが不安だわ…
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 07:52:51.12 ID:6nwtO7WdO
乙!
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 09:45:32.06 ID:33TPt9nPo
香取からそこはかとないポンコツ臭がして笑った
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 11:31:04.13 ID:f1uEgEbX0
乙乙
別にポンコツではないんだろうけど比較対象がずば抜けてるせいでポンコツに見える
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 12:11:39.44 ID:ONkDfwo2O
乙です。
猛暑でおかしくなりそうですが
続きをはやくはやく希望します
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 13:07:59.41 ID:PVnQXPBi0
このお互いに先の先まで読みすぎて結局普通の結論に落ち着くところが好き
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 13:09:54.60 ID:gAoWBJj30
提督賢しすぎて回りこみすぎた挙句一周回ってお互いいいところに落ち着いとるw

孫子をしっかり修めてなお将たる素養のうち五分の二が片鱗も現れないとこ見るとこの時点では響に言った通り腰落ち着けて艦隊指揮する気なかったんだろうなあ
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:27:28.30 ID:pvOQ4SiX0
毎週何曜日に更新とか出来る程に筆が早いといいんでしょうけれど…
などなど思いつつちまちました更新速度です
お時間宜しければお読みいただけると幸いです
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:29:47.98 ID:pvOQ4SiX0
扶桑、山城達が別行動をとっている際、

叢雲たちもまた行動を開始していた。



「それにしてもこう、ばらばらでいいのかねぇ」



猫かぶりの口調から普段の口調に戻り隼鷹が分隊の旗艦を務める叢雲に聞く。



「戦力の分散、逐次投入は無能と言いたいのは分かるわよ。」

「実際私も馬鹿じゃないのって具申したわよ。」



そして叢雲へ提督が返した言葉は。



「あいつったらこう言うのよ?

 まともに敵を圧倒的暴力で殴れるなら策を練ったりする必要なんかねぇ。」



提督の口調を真似しつつ。



「圧倒的な暴力の前には戦術、戦略なんか意味がねぇんだ。

 って開きなおるのよ?!」

「あー、確かにあの提督なら言いそうだわ。」



艦隊内では既に候補生という呼び方ではなく提督、

司令官呼びで通っているらしく隼鷹が叢雲の物まねに相槌を入れる。



「俺達みたいな弱小戦力の寄せ集めじゃ奇手奇策。相手を出しぬかねぇと勝てねぇ。」

「なら相手を徹底的に虚仮にしつつ怒らせるのが重要だ。怒りは最も我を忘れさせるからな。」

「怒りに我を忘れた相手を潰すのは簡単だ。」

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。だそうよ。」



提督の口調を真似しつつ隼鷹に話す叢雲。



「負けない要素をがっつりつくって相手のミスをまつか……。」

「負けた相手の精神を食い破るえげつなさ。惚れるねぇ。」

「千年殺しでもするつもりかね。」


相手にトラウマでも与える心算かという隼鷹の指摘。


「さてと、出番はそろそろかしらね。」


叢雲が片手をあげ近くにいる暁に出番が近いことを教える。


「待ちに待った出番ね!」

「えぇ、そうよレディ。幕はあがったわよ。」


そして、叢雲達が待ち構えるなかまた演習相手も動き出した。
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:30:50.18 ID:pvOQ4SiX0

「この演習は既に負け戦なのではなかろうか?」



最初の不意打ちを受けて艦隊の被害甚大にあるにも関わらず

指揮官の候補生が演習続行を選択した事に疑義を唱える長門。



「行けといわれた以上は行かねばなるまいよ。」



長門の疑義を命令であるがゆえに仕方なしと答える武蔵。



「翔鶴さんに瑞鶴さん。偵察機の索敵状況はどうですか?」



空母の二人に敵艦を見つけたかどうかを尋ねる大和。



「偵察機が敵を見つけたわ!駆逐2の軽空母1よ!」



瑞鶴が報告を上げる。



「敵の部隊として随分と細かく戦力を分けているな……。」



長門がいぶかしむのも無理ない。

初手で潜水艦娘達による奇襲を受けたのだ。

戦力的に見て劣勢である叢雲達がその戦力を更に細切れにさせて行動しているという事は

何某かの策、伏兵なりが存在していると考えるに難くない。

839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:32:39.94 ID:pvOQ4SiX0

「潜水艦を何処かに潜ませておいて伏せ撃でしょうね。」



敵の今までの演習内容をみれば

俗に言う郡狼戦術を好んで利用している事が分かる。

ましてや自分達の対潜能力のある艦娘達が

最初にそのほとんどを退場させられている事を考えればその意図は明らか。



「でしたら空母艦載機での遠距離攻撃のみで、艦砲射撃は止めますか?」

「今回のMVPも私達姉妹が貰う事になりそうですね。」



含みのある笑みと共に翔鶴が言う。

演習大会については当たり前だが提督候補生の指揮能力だけではなく、

その指揮下にある艦娘の能力も当然、考査の対象となる。

成績最優秀で卒業するには当たり前だが

優勝したチーム内で当然の様に戦績を重ねる事が重要。

候補生の調整能力が長けていればチームとなる艦隊内での役割分担や

演習後の報告書での手心などで不満が出ないようする事も出来るであろう。

そういったマネジメントが上に立つものには欠かせないのである。

それを疎かにすれば鎮守府ないで戦果を争う者達で派閥が出来たあげくの

足のひっぱりあい等が起こるというもの。

だが、この艦隊を率いる候補生はその辺が実にお粗末だったようで

空母の姉妹は戦艦の砲撃よりも長射程である艦載機の攻撃を生かし

常に戦果をほしいままにしていた。

島風や大破判定で退場した娘達はまだ対潜での活躍の場もあったが

長門や陸奥、大和や武蔵。

そして重巡の二人からすれば空母の姉妹に

活躍の場の殆どを取られている状況が大会中ずっと続いている。

その胸奥に渦巻く感情は一体どれほどのものかといえよう。

840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:34:25.88 ID:pvOQ4SiX0

一方その頃、提督と香取は既に移動した先でポーカーに興じていた。



「これは随分ブラフを効かせていたのですね。」



香取が降りた後に提督が出した手札はただのワンペア。

それに対して香取の手札はスリーカード。

何試合目かの感想戦。香取は提督が口八丁、手八丁。

そして顔の表情を目まぐるしく変えて

その表情を読むことを難しくさせていたことへ驚嘆を込め言葉を語る。


「そうですね。私は顔に出やすいですから。」

「とはいえ、これでやっと五分ですか。」


香取と提督のポーカーは勝敗がやっと同じになった。



「続けますか?」



香取の問いに対して提督は答える。



「止めときましょう。

 どうも勝ちを譲っていただいているような節もありますし。」

「五分に持ち込めて気持ちよく終れる間に終るのがマナーというものでしょう。」

「遊びは禍根を残さないようにという事ですか。」

「えぇ、今後も気持ちよく付き合いたいのであればですね。」



香取は提督の言葉の含みを捉える。


「成程、足るを知る者は富む、ですか。」


香取が中国の故事で応じれば。


「和を持って尊しを為すでもあります。」



提督は日本の故事で応じる。
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:35:59.67 ID:pvOQ4SiX0

「ですが、やろうとしていることは風林火山ですね。」



提督の行動がその実、間逆である事を香取は指摘。



「敵と味方の区別は大事ですですから。」



そして提督はその理由を述べる。



「気持ちは分かりますが……。」



しかし、と指を一本立て香取は語る。



「組織の中に敵を作りすぎるのはよくないと思いますよ?」

「この演習の結果は既に見えている通りでしょう。」

「ですが相手の候補生は提督として着任する事は間違いないと思います。」



香取が語る。


「………、それを私に語っても大丈夫なのですか?」


提督が疑問をぶつける。



「話せる範囲内で、機密漏洩に当たらない

 ぎりぎりのサービスではありますが心配はご無用です。」



香取が語る内容は提督にとっては既知の事。

そして提督はそれを阻止する為に動いているわけだが

香取がそれを知ることは無い。

重要なのは香取が語ったという事にこそある。



「意味の分かる方と見込んだ上ですので。」



こともなげに言うと思うが。



842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:36:46.39 ID:pvOQ4SiX0

「………。そこまで私を買っていただく理由はなんでしょうか?」

「そうですね。

 妹ほど私は戦闘能力が高いわけでは有りませんので

 観察能力を高めた結果といった所でしょうか?」

「教師という職務上、人を見る目がないと勤まらないのは当然ですが

 それを更にどう選別、育成するかというのは経験以外の部分も必要です。」



香取がメガネをくいと持ち上げる。



「文字通りにお眼鏡にかなったと?」

「そうですね、個人的に応援をさせていただきたくなる程度には、です。」

「………。今後も精進いたします。」



提督が香取と友誼を結ぶ。

それはあくまで個人としてだが、

後々を考えればお互いの利を見据えてでもあった。

843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:38:52.99 ID:pvOQ4SiX0


「じゃぁ、まっ、私と翔鶴姉ぇがさくっと倒すのを見てて貰いましょうか。」



悪気を感じさせはしないのだが…、

だけに性質が悪く、聞くものによっては癪に障る。

びんと音を立て放たれた矢が艦爆、

艦攻へと変化するのを長門達は見届け動き出す。



「隼鷹、そろそろお客さんが来る頃よ。」

「任せときなって。陰陽型の取り得はねぇ……。」



ばざりと巻物を一気に広げ祝詞を言祝ぐ。



「迎撃が早いってことさねぇ。」



彼女の巻物から召喚されたそれは戦闘機のみであった。

しかし、その数は。



「あたしの扱う艦載機は全て戦闘機だ。

 腹に魚雷、爆弾抱えた鈍重どもには遅れをとらないよぉ!」



まして提督がその操作の癖を見、

悪い所を相手へ付け入る隙に見せかける騙しを教え、

長所を徹底して伸ばさせた騙しの出来る艦載機妖精達。

そしてそれでいて本流は外れない。

あくまで応用は基礎の上に成り立つ。


「へへへ。さぁてぇ、性能に胡坐をかいたお嬢さん方にどれだけ通用する事かねぇ。」


ひゃっはぁ!と特大の感嘆詞をあげ全機無事発艦させたのだった。

程なくして演習相手の偵察機が自分達の方へ再度やってくるのを見届け

叢雲は自分達の艦隊内で使われている周波数で無線を飛ばした。


「こちらチェックメイト、ホワイトルーク!」

「キング!クイーン!ビショップ!ナイト!応答願うわ!」


チームとしての呼称、小隊、

といっても少ない戦力を更に細かくしているだけなのだが。

それを呼びかけ、叢雲の呼び出しに艦娘達が応ずる。


「虎は檻に入った!繰り返す!虎は檻に入った!」


提督が最初の奇襲で演習を相手がリタイアしなかった場合の、

もっとも続行するだろうがと付け加えた上で叢雲へ語った作戦を実行に移す。

その上で思い出すのは。
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:40:20.86 ID:pvOQ4SiX0

「俺の艦隊指揮での仕事は作戦立案の参謀職だ。

 現場で即応して人員を動かす上での指揮官はお前さんだな。」

「指揮官とはいってもだ、現実その場にいるわけじゃないからな。

 お前さん達には独断専行してもらった方がいい。

 責は俺が負うから好きにしろ。」

「臨機応変、場合によっちゃ勝ちをくれてやれ。

 お前達を何かで失う方がおしい。」



勝つつもりではあるがその中心にすえる価値観の天秤はつねにぶれない。

そういう提督の真摯な態度が好ましいなと改めて思い、

できない事は出来る相手に投げるというなんとも鷹揚な態度を思い出す。

相手が任せると投げてくるなら、こっちはやる事をやるだけと

今まで司令官と仰いだ連中との違いに少し頬が緩むのを感じる。



「さて、みんな!締めて掛かるわよ!」



叢雲が掛け声を掛ければそれに応と一同が答えるのだった。

猛獣とて檻に入れば逃げられない。敵は既に術中にある。

最初に異変を感じたのは当然ながら空母姉妹だった。



「あれ?攻撃隊が全部おとされちゃった。」

「軽空母の搭載機数にしちゃ数が多い気がする。」



瑞鶴が攻撃隊の第一陣があっさりと撃墜された事に感想を漏らす。



「こちらへの攻撃は考えずに全艦載機を戦闘機にしているようですね。」



冷静に自己の艦載機を動かしながら翔鶴が分析する。



「あたしらが一方的にスコアで負けてるもんなぁ。」



摩耶のこの一言は余計だった。

現状の認識として実に正しいのだが、余計な一言だった。



「確かに負けていますね。」


大和が言えば。
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:42:18.72 ID:pvOQ4SiX0

「流石に何日も演習に時間を割くことは無いだろうしな。」

「艦隊殲滅が勝利条件として設定されてはいるが

 せいぜい掛けて一昼夜といった所か。」



と大和の言葉をひきとり武蔵が言う。



「まさかとは思いますが敵はこちらを適当にあしらい

 時間が来るまで逃げる気でしょうか?」



大和が懸念を述べれば。



「夜戦となれば向うに分がある。

 ましてや潜水艦が残っている事を考えれば日が落ちれば此方は分が悪い。」



冷静に分析するのは長門。

ちっと盛大に舌打ちするのは誰であったか。



「敵は戦力を分散して逃げ回る事で

 此方を戦果で上回させることなく判定勝ちを狙う心算ですか。」

「随分と腰抜けで卑怯な作戦ねぇ。」



大和が叢雲達はそうと目論んでいる物と断定し

翔鶴がそれを軟弱者となじる。

もっとも時間切れによる判定勝ちを狙う心算なのであれば

叢雲達が戦闘に消極的であり戦力を細かく分散させて

ひたすら逃げるというのは一見、理に適っている。

(だが、果たしてそうであろうか?

 初手でこちらに潜水艦がいるという事を特に印象づけた相手が

 その様な単純な考えで動くのであろうか?)

(確かに初手のあれは卑怯ではあるが実に有効であり

 こちらの耳を奪うという意味でも重要であったし。)

(何より、戦力でみれば潰した方がいい戦艦である私達ではなく

 対潜艦を先に狙うという明確な意思が見られた。)

(しかし、それほどの相手がその様な稚拙な策をとるのであろうか?)

(こちらが既成概念に捕らわれているのを馬鹿にしたような戦術だが……)



勘という奴だろうか、長門は大和と翔鶴の考えに疑問を感じた。

艦隊の旗艦は大和である。なので、長門が出来たのはあくまで助言。

846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:43:19.50 ID:pvOQ4SiX0

「敵の意図が分かりかねる。

 一旦どうするか指揮官の候補生殿に指示を仰いではどうだろうか?」

「そうね、長門の言う事ももっともだと思うわ。

 慎重に進めるべきではないかしら?」



陸奥の援護射撃。そして。



「私も摩耶もここは慎重に行くべきだと意見は一致しています。」

「潜水艦に対する備えは今の私達には薄いです。」



鳥海が懸念を述べた。

叢雲達であればわざわざ提督に指示を仰がずとも意思決定が出来ただろう、

また、提督に判断を仰いだとして提督ならば相手の企みを看破、

或いは単純に乗らないという選択をしたのだろうが……。

提督との、その指揮官の差がここでも運命を分けた。



「小細工があったところでお前達の戦力なら蹂躪できるだろうが!」

「いいから敵をぶっつぶしてこい!

 戦力を分散しているなら各個撃破しやすいだろうが!」

「これ以上俺に恥をかかせるな!」



候補生からの怒気と苛立ち交じりの無線が返ってくる。

そしてそれを聞いた大和が長門へよこす視線は余計な事を聞いた所為で

いらぬ叱責を受けたといわんばかりのそれである。

結果、彼女達は指揮官である候補生が命じるまま叢雲達に対峙することとなったのだった。

847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:48:15.29 ID:pvOQ4SiX0
ここまでお読み頂きありがとうございました、本日の更新終了です
欧州3海域かぁ…、有用艦娘掘り放題!(尚掘れるとは)だといいのですが
前回みたいなうぇぇ…、じゃない事を祈るばかりです
作品中で少し鶴姉妹の性格が感じ悪いのは申訳ありません、
あくまで作中の演出的な部分なので嫁にされてる方には本当に申訳ありません
お分かりかと思いますが既に内部分裂の兆しがががが……
いつも乙レス、感想レスありがとうございます、お読みくださっている皆さんからの暖かいレス本当に感謝しております
次回の更新もお時間よろしければお読みいただけると幸いです
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 02:29:08.04 ID:uVpe+Wos0
社会学者が講演会でいってた「3人集まれば文殊の知恵というが馬鹿は何人集まろうが烏合の衆です」が実に刺さる未来が見える
そして聞きたかった作戦時間がかなり長いことがわかって楽しみが増えた
霧などの気象確率もリサーチ済みだろうしまだまだブッ込んできそう
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 03:34:26.60 ID:jeokajMT0
おつです
候補生のうちにいやらしい相手との戦闘を経験できている大和たちは
運が良いのかもしれませんね。
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 23:46:59.62 ID:GNzJAKyY0
乙乙
ゲームだとMVPだけだけど実際妬み僻みとかありそうだよなあ
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:47:46.46 ID:sON5tDsC0
皆様こんばんは
イベントにつっこんでおりますいっちです
サブ欧州艦が豊富だったためさっそくリシュリューのサブでE1やってます
今回は楽に全てが終るといいなぁと、終りよければ全て良しでいきたいですね
今回の分の更新となります、お時間宜しければお読みいただきますようお願いいたします
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:49:09.32 ID:sON5tDsC0

「敵、攻撃機部隊第一陣撤収を確認!」

「了解!私達ホワイトルーク小隊は

 手はずどおりに水道を抜ける形に進路を取るわよ!」



隼鷹が翔鶴達正規空母の攻撃隊に自己の全艦載機を

戦闘機に振り分けた上での迎撃に成功した旨を旗艦の叢雲に報告。

それを受けて叢雲達は島と島の間、彼女達中小型艦艇が小回りを利かせやすい水路、

一般に言う水道を通る進路を選択する。



「隼鷹!艦載機の収容は!?」

「完了!」

「レディ!目標は!?」



叢雲の呼びかけに少し先を先行する暁が応える。



「偽装ブイを発見したわ!」

「了解!さぁ、かくれんぼの時間よ!」



叢雲達はある意味で大和達を相手する心算はなかった。

先にも述べたが横綱相手に幕下がまともに戦って勝てるか?という奴である。

番狂わせなんてものはそうそう起こるものではない、

起こり得ないからこそ番狂わせなのだ。

そして、それを起こす為の下準備はきっちりとしてきていた。



「偽装ブイ確認、各員無線、電探使用は敵艦隊をやり過ごすまで禁止よ!」



枝、葉をこんもりと生やし、一見すれば島の一部のように見せかけたただのブイ。

よっ、と、そのブイの枝を掻き分け中にある空間の中に身を潜ませる一同。

853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:50:08.48 ID:sON5tDsC0

「第二次攻撃隊、目標ロスト。」



第一次攻撃隊が全滅したため改めて発艦させた

二次攻撃隊から目標とする相手の失跡報告。



(どこへ雲隠れした?)



翔鶴が第一次攻撃隊が居た海域周辺を探る。

程なくして、駆逐2、軽空母1の敵編成を見つけた。



「居たわね……、雑魚は大人しくやられるといいわ。」



敵の小隊へ向け艦隊全体を移動させている最中で

翔鶴の下卑た笑顔に長門は嫌気する。

味方であるはずの仲間に対して嫌気がさすとはな、

と、やや自嘲気味に今の境遇を考えれば。



(最初に負けが確定しているのに続けるこの演習になんの意味があろうものか。)



今やっているのは負けを認められずに悪戯に時間を引き延ばすだけの行動。

実戦であれば撤退戦に移るべき局面なのだ。



(忌々しい。)



戦局を見極められない軍隊の結末は相場が決まっている。
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:51:33.64 ID:sON5tDsC0

そもそも。



(第一次攻撃隊が向って全滅の後、第二次攻撃隊が見つけた敵の位置は

 敵が移動していると考えたとしても距離が離れすぎている。)

(連中の編成をみれば軽空母は低速に分類される飛鷹型。移動速度があり得ん。)

(となれば、この小隊は先のとは別物と考えるが妥当。)



と考えを纏めるも先の意見具申の結果を思えば。



(せん無きことか。)



「長門さん、この先は島と島の間の狭くなっている水路をゆく事になります。」

「複縦陣で中央に翔鶴さん達を配置する形で進軍しようと思います。」



大和の声に意識を戻し意図を理解する。



「島風に先陣を切らせ対潜哨戒に当たらせ

 我ら長門型が先頭警戒、前衛という事か。」

「えぇ。摩耶さんと鳥海さんのお二人は中央側へ回し、

 私達姉妹は後方警戒、後衛を行います。」



妥当。狭い水路を通るのであれば最も脅威となるのは潜水艦での待ち伏せ。

こちらの対潜能力を初手で削っている状態であればそれを狙わない訳は無い。

だが、こちらとしては最も長距離攻撃に長ける空母が生きていれば良い為、逆転を期待する事は出来る。

演習相手の艦娘は自分達砲撃に長ける戦艦達とまともに組み合える戦力ではない。

敵艦隊直掩航空隊を奪う、あるいは戦艦の射程内にとらえてしまえばこちらが蹂躪できるのだ。



(だが、それをさせてくれる相手ではないだろうな。)

(そして付け加えるなら潜水艦娘達の逃げ道が無くなるような場所で伏撃は行わないだろう。)

(だろう、だろうの推論ばかりか……。まったく。)



負けと悟り自身の指揮官の無能さをしればこそ

第三者的視点で客観的に現状を分析できるだけに

敵の愚に期待するのは無能だろうと思う。
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:52:41.09 ID:sON5tDsC0

「了解した、陸奥との二人で前衛を任された。」



隊列を組みなおし改めての進撃。



「ホワイトビショップよりキング、クイーンへどうぞ!」

「敵の釣り上げに成功!といっても食べても鉄と脂でしょうけどね!」

「こちらキング。了解。配置についているわ。」

「釣り上げお疲れ様。戦域離脱を確認次第砲撃へ移行するわ。」



飛鷹の呼び出しに扶桑が答える。



「同じくクイーン。

 これからは私達がおもてなしの時間という事ね。」



飛鷹が翔鶴達空母の第二次攻撃隊からの攻撃をかわしながら

扶桑と山城へ無線を飛ばす。



「前方に敵潜水艦の脅威は今の所見当たらないよ!」



島風が聴音機、探信儀それぞれの反応で潜水艦がいない事を連絡。

艦隊が警戒しながら水道へと進んでゆく。

攻撃隊が見つけた敵目掛けてわき目も振らずに……。

そして、その時は来た。



「ようこそ、お客様。お客様をお迎えできた事は実に無上の喜び……。」

「さぁ、貴方達を歓待するために私達姉妹がお贈り致しますは、素晴らしき。」

「あなた方の為の……、極上のランチ。」



まさにこれから敵を蹂躙する事への喜びからか山城がうきうきと歌いだす。

856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:54:21.67 ID:sON5tDsC0

「Be our guest 」



熱い、鉄の、それも砲弾という名のプレゼントによるおもてなし。

時刻は丁度昼時に差し掛かる。



「Be our guest 」



扶桑、山城、両名が歌う歌が無線から聞こえてくる。



「あらら、ご機嫌ね。」



とは大和達を釣りあげた飛鷹。



「うちの砲火力の女神達がご機嫌だと相手にとってご愁傷さまね。」

「そうだね、戦場の女神といえばいつだって勝利の女神。」



飛鷹が相手を気遣う台詞をいうのを引き取り響が更に続ける。



「敵にとっては死神かもしれないね。」

「戦士をあの世へと連れて行く戦乙女(ヴァルキリー)には

 人数が足りないのじゃないかしら?」



戦乙女は9人、対して扶桑達は2人。



「飛鷹さん。だからこそ私達にとっては勝利の女神なんじゃないかしら?」



飛鷹と響が扶桑達を勝利の女神か死神かと話している所に雷が結論づける。



「確かに雷の言うとおりだね。」



大和達がもしも、島へ注意を向けていれば違和感に気付いたかもしれない。

偵察機たちが飛鷹達を追うだけではなく周囲の島の地形を

注意深く見ていれば気付けたかもしれない。

だが、彼女達の注意は潜水艦へのそれと、駆逐艦が有する長距離射程武器である魚雷、

自分達が現在負けているスコアを逆転させる為に飛鷹達を叩き潰す事へ向けられていたため

その注意が左右の島へ向けられる事はなかった。

結果、彼女達は再び一方的に殴りつけられることとなった。

857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:55:38.50 ID:sON5tDsC0

雷鳴の如き砲声が海峡に響く。



「あ゛ぁ゛!?」



それは実にタイミングをきっかりと合わせた砲撃。

右の島の山の山頂付近と左の島の丘陵地帯のやはり頂上付近からの砲撃。

初弾は翔鶴の眼前に着弾。



「初弾から本射だと!?」



目標物への観測用の砲撃もなくいきなり当ててくる本射、

効力射に驚愕する長門。

砲撃の一発目が撃たれたという事は続く運命は……。



「総員、耐砲撃態勢!各員左右の敵砲撃に応戦!」



前衛の長門が指示を出すが。



「当たり前といえば当たり前だけど……、敵の位置には当てずらいわね……。」



陸奥が扶桑達が居るであろう場所を睨みながら呻く。

海上から陸上にある目標物への砲撃は

戦艦同士での砲撃と比べ当たり前だが当てづらくなる。

沿岸要塞に設置される沿岸砲の攻略には艦船での攻撃は向いておらず

真珠湾攻撃が航空機による奇襲作戦になったのもオアフ島に揚陸できる場所が見つけられなかった結果、

要塞の無数の沿岸砲の前に艦船での攻撃は全滅と判断された経緯がある程である。

それほど陸に固定された、特に高所に設置された砲というは厄介なのである。


858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:57:00.30 ID:sON5tDsC0

「上から下を狙うのと、下から上を狙うのではまた威力が違うものよね。」



くすりと笑い砲を撃ち続ける扶桑。



「欠陥だ、時代遅れだ、色々口さがない事を言う人達も多いけれど

 戦艦の主砲の威力は本物よ?」



山城の主砲が火を噴き、砲声が雷鳴の如く響く。



「散布界が狭いだと!?」



当ててくるその砲撃に長門が驚愕する。

戦艦の主砲の命中は良くて撃った弾の2〜3%と言われる。

これをカバーする為に数を撃つのが本来の戦艦同士での砲撃戦である。

そして、目標に対して最も遠い着弾点と

最も近い着弾点の距離を表したものが散布界と呼ばれる物だが。

それが狭いという事は当然ながら目標物に対して集弾されているという事であり。



「左舷に被弾!」



瑞鶴が悲鳴をあげ、被弾の報告。



「みなさん!左右の島の砲撃地点へ向けて砲撃を行ってください!」



旗艦の大和が指示をだす。



「ちぃ!」



武蔵が苛立ち舌打ちをする。

左右の島からの砲撃は丁度、その散布界が重なるように砲撃をされており

特に砲弾が集約するように狙われている。

その狙いは明確。そう、空母の鶴姉妹である。

艦隊で目となる高空からの視野を持つ二人。

散布界が重なれば命中弾も増える。まして左右からの挟み撃ちによる砲撃。

当てないほうが難しい状況である。

859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:58:18.10 ID:sON5tDsC0

「させるかよ!」



武蔵が砲弾の雨の中、左の島の丘陵地を狙うが目立った効果を挙げることはない。

先程から続く島からの艦砲射撃は海面を揺らし照準が揺れる大和達は正確な砲撃が出来ない。

火力がいかにあろうと狙いが悪ければ効果は望めない。



「砲撃を休む事無く行い弾幕をはり敵からこちらを見えなくするんだ!」

「敵の位置を把握できない以上は手数を稼ぐ形で敵の反撃を防ぐんだ!」

「皆!この海峡を早く抜けるぞ!」



大和が指示を出しきれていない事をみてとった長門が矢継ぎ早に指示をだす。



「島風、水道の出口が一番危険になる!

 先に抜けて周囲に敵潜水艦が居ないか確認を頼む!」



長門が島風に指示をだす。島風は既に扶桑達の砲撃の範囲外にある。

潜水艦を伏せるなら一番効果が認められる位置が水道の出口。

その付近に潜水艦が居ない事を唯一残っている対潜艦の島風に

急ぎ確認させている間に砲撃は止んだ。

860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 01:00:12.15 ID:sON5tDsC0

「敵に砲撃をさせないためこのまま砲撃を行いつつ離脱だ!」



長門が陸奥達へと指示。



「大和!水路を抜けた後一旦全体の被害の確認を行う事を進言する!」

「……、わかりました。」



砲撃が途中で止んだのは長門達の砲撃が

扶桑達に当たり黙らせる事に成功した訳では無いことを長門は理解している。



「戦艦の私達を移動砲台として機動的砲撃、

 機動火力として陸上戦力として組み込むやり方。」

「提督は柔軟な思考をされる方と思わない?」



大和や長門達の砲撃が本格化して被害を出す前に悠々と離脱せしめ、

海上を移動する扶桑が近くを並走する山城に言葉をかける。



「そうですね。私達姉妹の能力を考えた上で

 これが最も適切と言ってきたのには少々腹が立ちますが。」


姉の扶桑へ返す言葉には含みがある。



「ですが、姉さまもそうだと思いますが。

 私達よりずっと性能が上とされる娘達を一方的に砲撃して蹂躪できたというのは

 実に楽しく気分が高揚しました。」

「貴方は正直ね。でも、私もそうよ。」

「それに、随分と無駄に弾薬の消費もさせる事ができたわ。」



その表情は実に晴れやかかつ誇らしく堂々としたものである。



「はい。私達が退いた後も無人の場所への砲撃で無駄に弾薬を消費してくれていましたね。」

「えぇ、そうね。山城。これは実に大きなアドバンテージになると思わない?」

「はい、姉さまの言うとおりです。」



そして、無事役割を果たした事を叢雲達仲間へと無線にて連絡したのだった。

861 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 01:01:08.93 ID:sON5tDsC0

「翔鶴は大破か……。」

「電探に敵艦影は反応なしよ…。」



長門が被害を確認している間に陸奥が周囲の状況確認。



「あたしと鳥海も大破だな。敵さんの砲撃は恐ろしく精度が高かったかんな。」

「多島海での演習ですから敵の方々がまた同じような作戦をとる可能性はあると思います。」

「まっ、あたし達は大破だからここで演習終了だ。」

「茶番劇を終れると思うと清々するね。じゃ鳥海いこうぜ。」

「そうですね……、皆様。御疲れ様です。」



そういい、摩耶と鳥海は艦隊を離れていった。



「翔鶴姉。」

「瑞鶴?貴方をとっさに庇ったおかげで貴方は発着艦が出来る程度の損害で済んでるわね。」

「大破で抜ける私達の仇、しっかりとって頂戴。」



がしっと瑞鶴の肩をつかみ気合を入れる翔鶴。

その目は自分を大破に追い込んだ敵を許すなと物語る。

そして、潜水艦への周囲警戒を行いつつ

大和達は自分達の被害確認を行い再度指揮官の候補生へ連絡を行った。

862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 01:03:02.03 ID:sON5tDsC0

「………、お前達から相手はみえなかったんだろ?」

「なら、どうせ誰が大破したかなんか見えてないだろ。」

「違反行為だ?監視の教官をどうするか?……、お前達が考える事じゃない!」

「翔鶴は中破だ。改二改装相当の艤装を持たせてるんだぞ!?」

「あっさりやられてるんじゃない!敵は周囲にまだいるだろ!?」

「待ち伏せしてこそこそやっている様な卑怯な連中だ!実弾つかってでも倒して来い!」



鹿島が席を外す…、花を詰みに行っている間に

大和達から来た無線での連絡に違反行為をしろと指示を下す候補生。



(なぜ傍受されていないと思うのでしょうか?理解に苦しみます。)

(それに艤装の被害状況も逐一モニターされているというのに馬鹿極まってますね。)

(しかし、このままの放置したほうが楽しいのでしょうが、

 放置しておくと今後の問題になりますし。)

(さて、いかにしたものでしょうか……。)



鹿島はこの状況に一人頭を悩ませるのであった。

863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 01:20:00.31 ID:sON5tDsC0
鹿島が頭を抱えるくらいのお馬鹿!という事で本日の更新はここまでです
戦略爆撃機なんか実装される事ないやろーとか冗談で2部の頭で敵に使ったら運営さんが実装してきたよ…
やめて?と本気で思いましたです、基地というか資源にどれ程の被害が出ることやらやら
今回の更新の途中で触れています艦砲射撃ですが対地で狙う時は要塞なんかの目標物がでかければまぁまぁあたりますが
多くは牽制とか戦艦などをずらーっと並べて下手な鉄砲なんとやらで数で圧倒して陸上の敵を潰すやり方になります
ノルマンディーの時はウォースパイトもその前の海戦で船底に大穴が開いていたにも関わらずコンクリートで穴を塞ぎ
艦砲射撃の為の数として無理やり参加させられていました、それ程に数が足りなかったともいえますが……
一般的には迎え撃つ陸上側は、数的劣勢の場合はさっさと海岸線を放棄して内陸へ誘引し個別に撃破
あるいはもっとも無防備になりやすい敵上陸部隊の上陸時を狙うようなやり方で対抗する事になります
ノルマンディーがブラッディービーチになったのはこういう事情、艦砲射撃他でしっかり敵の陣地をつぶせなかったり
上陸に対しての敵障害物をしっかり排除できてなかった、また、E2甲報酬の風呂桶がかなりの数、沈んだなどなど
兵士を裸で敵地に放り出すみたいな事をやらかしていたからああなったわけですね、兵士の命が紙切れ一枚より軽い
真珠湾は作中でも触れましたが上陸させる事が不可なのと砲の数でも上回ることが出来なかった為航空機での奇襲となりました
毎度、更新がまちまちかつ不定期ですがお読みくださりありあとうございます
感想レス、乙レス、お気軽に残していただけるといっちが喜びます、是非お願いいたします
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 02:55:59.09 ID:CJjHi2JM0
チャーチルが駄々こねて嫌がるアメさんにシングル作戦主導してもらった手前、イギリスはノルマンディを意地でも成功させないといかんかったしね
手柄立てないと戦後のケーキの奪い合いに参加できない
しかしまあ不甲斐ない五航戦だわw
俯瞰視点で戦場を見ることのアドバンテージを全く活かすことができないどころか理解すら出来てないな
攻撃機の道中とか全く見てないまである
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 04:28:17.83 ID:MymPi0qMo
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 06:20:07.49 ID:M4DjwyLv0
おつです
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 12:53:16.01 ID:rtkQe4OMo

まあ一応養成校の新米艦娘だし若きハゲ提督とその手解きを受けた娘達の相手をしろって方が酷だって話だよね
全てが終わった後に受け入れるかどうかよな、楽しみ
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/02(月) 20:49:34.48 ID:sfVbGD7w0
何となく思ったが扶桑姉妹は人間だった時一卵性双生児だった気がする
他の姉妹艦娘となんか雰囲気が違う、何というかお互いの精神的な距離が近いというか限りなく類似な印象
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/06(日) 19:59:24.33 ID:jv7eHjiXO
続きまだなのか
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/10(木) 15:48:14.43 ID:InPKVz0go
気付いたらもう一月以上か
わたしまつわ
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/10/25(金) 00:03:22.49 ID:Tz4B+Khy0
色々やる気の問題でまったく書き進められず書き貯めを作る事もできず…
残念っぷりが爆発しておりましたが生きていました
お時間宜しければどうぞ、読んでやってください
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:05:54.99 ID:Tz4B+Khy0

鹿島が頭を悩ませていた頃、提督達は何をしているかというと。



「香取先生、コーヒーが入りましたよ。」

「色々準備されているんですね。」



香取がちらりと見やるのは濃い緑色のコーヒーメーカー。

電動工具で有名な会社の現場作業向カラーの製品。



「ポータブルバッテリー式ですか。」



なかなか事前に準備をして物を持ち込んでいると考える香取。

演習海域に点在する島々に色々と物資を持ち込んでいるのだろう。



「いつの間にご準備を?」

「さぁて、そいつは内緒です。」



直接に聞いて答えるわけは無いか……。

演習時、艦娘は出撃後は燃料、弾薬の補給は補給艦を随伴させていない限り、

帰還して補給するのはルール上は禁止されている。

これは実戦的演習を行う為の一環であり出撃後に

補給が受けれない場合を想定の元でのルール。

しかし、物資を海上に隠す、つまり点在する島などの拠点に

あらかじめ置いておきそれを演習中にこっそりと利用する事は禁止されていない。

というよりもする人が居る事を想定していない為ルール上、

それを裁くため基準が無い。



「コーヒーはブラックがお好きですか?

 それともミルクを入れてカプチーノにされますか?」

にこにこと笑顔で聞いてくる相手のその言葉はまるで。

(黒じゃなければ白であると言っているようね。グレーは限りなく黒であっても黒ではないか……。)



つまりは。


(グレーは白。つまりルールになにも違反はしていない。彼を減点したり裁く事は出来ない。)

873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:06:51.53 ID:Tz4B+Khy0

裁く法がなければ合法という屁理屈、

しかしそれを罰するには法がなければ罰する事が出来ないのもまた事実なのだ。



(どこでこんなずるを覚えたものか…、

 この候補生は本当に何者なのだろうかしら?)



受取ったコーヒーを飲みながら相手を見れば

演習海域が映るタブレットに表示される駒をせわしなく動かしている様子。

だが、部下である艦娘達へ指示を飛ばすことは無く、

受ける連絡は位置と戦果の報告のみである。

そしてたまに、報告の確認を監督の為についている自分へとするのみである。

タブレットへ入力している時以外はカードゲームや読書、

或いは飲食で暇つぶしを優雅に行っており指揮を見せることが無い。

その所為も有り香取は提督の実力を今だ把握できずにいた。

そんな中、提督の手が大駒、おそらく空母を相手艦隊から除外入力をした所で

香取からの視線に気付いたのか手を止めた。
874 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:08:24.38 ID:Tz4B+Khy0

「部下達からの連絡で相手の空母に大破判定を与えたとありましたので

 戦果の確認をしていただけますか?」



恐らくは間違いないのだろうが本部側に連絡されているであろう

相手側の被害とのつき合わせ。

最初の潜水艦たちによる奇襲を含めてどこでどの艦娘を落すのかを

計算ずくと思われることを考えれば目の前でのけた空母の駒は既に大破判定と思われる。



(テストの答案の答え合わせをしているような感覚を覚えるわね……。)



奇妙な感覚を覚えつつ香取は提督の催促に促され監督官として戦果の問い合わせを行った。



(えっ!?)



提督が目の前で除外した空母が健在。つまりは。



(鹿島ぁぁぁ ―――――― !!!!!!)



報告を行わなかったのかと妹に怒りの無線カットインを行う。

もちろん提督の前で行う事は出来ない為、

少し離れた位置で、である。
875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:10:47.73 ID:Tz4B+Khy0

「どういうことなの!?」

「あっ、あのですねぇ?

 私にも流石にどうしようもない事ってのはある訳ですよ。」



無線の向うからは普段の様子とは180度真逆のおたおたした声が聞こえる。



「だからといって戦果、被害報告を誤魔化して良い訳ないでしょう!?」

「でっ、でもですね?あちらの親は……」



演習相手の親は中将。

確かにもっている権力で言えば黒を白に出来る相手。

更に言えば今日の演習最終戦は海軍の首脳陣が観覧しているのだ。

忖度したくなるのも判る。



「それでも審判である私達が不正を黙認して良い訳がないでしょう!?」



まったくもってその通り。ぐうの音も出ない正論である。



「まさか、あなた…。」



面白さを優先して不正を黙認したんじゃないわよねと

言い掛けた辺りで香取は背後から突き刺すような視線に気が付いた。



「香取先生、いかがなさいました?」



その声の主は、笑顔で、ゆっくり、はっきりと聞こえる声で語りかける。



「確認に時間がかかっていらっしゃるようですが?」



願いが叶う物なら振り向か無くていいでしょうか?と何かに縋りたくなるような

そんな思いで香取が振り向けば其処には満面の笑顔を浮かべた提督がいた。

大きく息を吸い酸素を脳に送る、

これは笑顔に見えるが絶対に笑っていない奴であると

香取の自己防衛本能が最大限の危機を知らせているためである。

その危険を知らせるというのは、この危険を目の前にしては

まったく意味の無いものであるが……。

そう、目の前の手を振り上げて今にも振り下ろす寸前の羆を指差して、

これ危険ですよね?と訊ねるくらいに無意味である。

876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:12:13.41 ID:Tz4B+Khy0

「香取先生……、煙草をいただいてもいいですかねぇ?」



先程までの無駄に畏まった口調がとれ、

やもすればこちらを馬鹿にするかのような

野卑た笑顔の口元から発せられた言葉は意外にも喫煙の許可だった。

どうぞと相手の落ち着き払った笑顔に引き攣った笑顔で返せば、

慣れた手つきでオイルライターの火をつける提督。

提督がポケットから取り出した煙草は

現在流通している中では高級品に分類されるもである。

それを口に咥え、火をつけ、フィルターの限界まで燃え尽きるように一気に息を吸い、

肺へとそのバニラのアロマを含んだ煙を無理やり流し込む。



「…………、やぁ、随分と不味い煙草だ………。」



一言、煙草の感想を述べ吐き出した煙が周囲に燻り、その煙を提督が纏う。

その佇まいは此の世に悪魔というものが顕現したのであれば

そうだと信じてしまえそうな程に禍々しい雰囲気と気配を纏っていた。

そしてゆっくりとした動作で眉間に出来た皺を揉み解すようにもんだ後に一言。



「馬鹿の相手も疲れるな……。」



ポツリと漏らしたその言葉は間違いなく本音から来るものであろう事は間違いない。

香取が恐怖そのものへと視線を向けている中、その恐怖は無線機のスイッチを入れた。



「あの……、その……。」

「あぁ、えぇ、それ以上は不用ですよ。何が起きたかは理解しました。」



香取が言葉を紡ぐ前にそれを手と冷ややかな笑顔で制す。

877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:15:44.03 ID:Tz4B+Khy0

「それを言えば知らなかったが『 お互いに 』成り立ちません。」



にかりと歯を見せて笑う提督、

その笑顔はとても直視できるものではない。

憤怒であろうか、いや、失望とも幻滅とも。

それら様々な感情が提督を支配しているように見えた。



「やれやれ、仕事といきますか……。」



こきこきと首を動かし、ぐるりと肩を回し無線機の送信スイッチを押す。



「ホワイトルーク他全小隊、CPの提督だ。応答してくれ。」

「ホワイトルーク、旗艦叢雲よ。」



提督からの呼びかけに各小隊の旗艦達が応じる。



「今からCPの俺が全体指揮を執る。各員死ぬ気で動け。

 マップコードは聞き漏らすな。」

「俺がお前達を最適な射線、射角が取れるように誘導する。敵は一人も逃さん。」



そう言うとタブレットに映る海図に配置された駒を一気に動かし

矢継ぎばやに移動先の指示を出し始める提督。



「両舷全速で動かしてくるわね……。」



提督から次々と出される移動指示に艤装の主機が唸りを上げている状態。



「叢雲、索敵情報は全部提督へ先に送るのかい?」

「えぇ、指示前は私に送ってもらっていたけど今からはあいつへ先に送って頂戴。」

「今の所、此方の経路指定が主だけれど先程までの双子(ジェミニ)作戦から

変更されたのは間違いないわ。となると索敵情報は今まで以上に重要になる。

だからあいつは今必死に頭を回転させて敵を潰す方法を幾通りも考えている所だと思うの。」

「まぁ、既に答えが出ているような気もしなくもないんだけれどね。」

「だからその答えを早く出す為にも敵の位置は間違いなく重要よ。」



叢雲が隼鷹に索敵機の増数も含めて指示をだす。
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:16:16.84 ID:Tz4B+Khy0
「まぁ、敵さんの位置は大まかにつかめてっからそれはいいんだけどさ。」



叢雲の言葉に隼鷹が先程まで有利に展開を進めていた作戦を

何故捨てるのか提督の意図が分かりかねると疑問を述べる。



「あぁ、あいつの意図が分からないってことかしら?

 そうね作戦名から察するに大まかには変更はないと思うわ。

 それから、そうね…、うーん、あいつの考えが私の考え通りなら

 そろそろ索敵機の帰還に関して欺瞞行動をやめて

 こちらの位置をばらす方向の指示がくるはずよ。」



叢雲が言い終えると同じくして提督からホワイトルーク小隊の隼鷹へその通りの指示が来る。
879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:17:24.22 ID:Tz4B+Khy0

「へぇ〜。言った通りだよ。」

「そう、それならそろそろ扶桑か山城と合流になるんじゃないかしらね。」

「えぇ、その通りよ。私が貴方達と合流よ。お世話になるわ。」



声のする方向をみやれば海上迷彩仕様の

ブルージャケットを被った扶桑がその姿を見せた。



「扶桑がこちらに来てくれたのね。となると山城は単艦移動かしら?」

「えぇ、提督からの指示を個別に受けていたからあの娘は単艦で指定位置へ移動でしょう。」

「妹を危険な目に合わせてごめんなさいね。」



戦艦を単艦で移動させる。それは囮にするという使い捨てとしか言えない行動。



「いいぇ、提督の指示を聞けば一番重要な役割のようですし。」

「ただ、単艦行動中に敵に見つからないといいなとは思っているわ。」



叢雲の言葉に首を振りつつその言を否定する。

つまり役割としては囮ではない事を理解しているという事。



「そうね、囮の役割は恐らく飛鷹達かしらね。」

「そう上手く食いついてくれるかねぇ?」



叢雲と扶桑は山城の役割を理解しており

敵を釣り上げる役割の囮は叢雲達か飛鷹達という事になる。

880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:20:02.17 ID:Tz4B+Khy0

「山城の移動が航跡等で見つからないといいのだけれど……。」



不安の声を漏らす扶桑。その心配は姉として当たり前である。



「扶桑。短期間ではあるけれどあいつの下で

 一緒に演習を勝ち上がってきたのなら分かるでしょう?」

「今回の双子作戦について海上迷彩仕様のジャケットを渡してまで

 移動が分からなくしておきたかった貴方を

 わざわざ分かるようにして此方に寄越したのよ?」

「こちらかあっち、まぁ、あっちなんだろうけれど。

 とりあえず山城に注意が行かないように細工をしているに決まっている。」

「万一、敵に見つかったとしても、それを計算に入れていないわけは無いでしょうね……。」



叢雲が提督の計算高さを知っているでしょうと扶桑に同意を促せば。



「そうね、司令官が私達の自主性に任せた作戦行動から

 自らの禁を破ってまで指揮を執るっていうんだもの。」

「何も考えていないわけはないわ!」



どやっと暁が言葉を返す。



「でも……。」

「あら?どうしたの?」



暁が少し不安そうに顔を曇らすのに扶桑が何事かと訊ねれば。



「司令官にそれだけの決断をさせたって事は

 よっぽど腹に据えかねる事態が起きたって事でしょう?」

「相手がかわいそうだなぁって思ったの。」

「そういえば貴方の妹が相手方に居たわね。提督に任せておけば多分大丈夫よ。」



妹の心配をする暁に同じく姉として妹を思う気持ちは同じと扶桑が応じる。


「妹の電は大丈夫かしら……。」


ふと思い出すのは暁の妹が相手方の秘書艦であるという事。


(寧ろ、問題があるとするなら響かしらね………。

 と私が考えるくらいの事ならあいつが思いつかないわけないし。)

(双子作戦なんて事を考えてもそうなのだろうし…、

 飛鷹には私に話がされていない指示が出て居そうね。)

「まぁ、あいつの事だから何も考えていないという事は無いでしょ。」


そう答えると、叢雲はさんと房状になったお下げを揺らし無線で出された移動目標へ向きなおすのだった。
881 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:24:27.43 ID:Tz4B+Khy0
少ないですが今回更新分終了です、秋刀魚、鰯漁の間にまた頑張って書き溜めれるように気合を入れなおします
提督お怒りモード!そして残り1000に行くまでに終れるか!?のチキンレースの模様、まぁ大丈夫でしょう
では、また次回の更新もお付き合いいただけると大変ありがたく思います、1ヶ月以上も音沙汰無しで申訳ありませんでした
ご心配のレス、ありがとうございます、お読みいただいた貴方に感謝しつつ、本日もこれにて!
ではでは!ここまでお読み頂きありがとうございました!
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/25(金) 06:05:44.08 ID:qjuzyHLk0
乙です
鹿島さんも中間管理職なんですねぇ
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/25(金) 09:37:24.98 ID:V2dXL6DLo
おつ
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/30(水) 03:55:53.03 ID:pNhlXE5C0
乙乙
提督は勿論だけど叢雲達もすげぇ優秀なのでは
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:48:41.44 ID:ADblsM4a0
秋イベやるんか…
秋、冬合同とおもってたんだけどなぁ…
ねじ稼ぎがとまんないのに…
少しばかり更新です
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:50:27.78 ID:ADblsM4a0

本部観覧用テント内



元帥が状況の説明を受けながらふむと口を開く。



「なかなか、中、小型艦艇の強みを生かした戦い方をしているな。」

「表示されている艦艇の位置関係をみれば相手に対峙しているのは

 二つに分かれた小隊のうちの一つになるように誘導しているようだな。」

「多島海という地理的優位性を実によく利用している。」



元帥が海域選択を褒めれば、軍令部戦略参謀長の大将が続く。



「それもですが初手で王手を掛けるに等しい

 潜水艦隊での奇襲というのもなかなかですな。」

「校長に聞けば演習相手の出撃地点はお互いには知らされることが無いそうですよ。」



ほうと元帥が続きを促すように口元を緩める。



「つまり何某かの諜報活動、分析なりで

 相手の出撃地点を割り出し事前に潜ませていたという事か。」

「相手の戦力を最初に最大限削る。実に実戦的なやり方だな。」



元帥が提督を褒める。



「とはいえ、あまりにも卑劣なやり方ではないでしょうか?」

「禁止をされていないからやっても罰を受けることが無いという

 確信犯的行動はいただけないかと思います。」



否定的言を述べるのは現状いいとこなしの候補生の父親である中将。

彼からすれば息子の肩をもたねばというより

息子の評価が地を這うことになれば自分の評価も下がるのは必定。

少しでも自分への被害を抑える為に相手である提督を扱き下ろさねばならないのだ。



「中将、君は深海棲艦達との戦争で負けたとして

 相手が卑怯であるという言い訳が立つと思っていたりするのかね?」



提督の評価を下げようとする意見に眉間に皺を寄せ、

睨付ける視線を中将へ向け咎める様な強い口調で訊ねる司令長官。

887 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:51:29.83 ID:ADblsM4a0

「まさかと思うが人外連中相手に君は交戦規定が必要とでも言い出すつもりかね?」

「確かに演習は艦娘同士で行うがその想定はあくまで対深海棲艦だ。」

「我ら人類の不倶戴天の敵である奴らから

 勝利を得る為に卑怯だのといっていられる現状かね?」



鬼気迫る、いや、無能な部下への呆れと叱責、

その双方ない交ぜの感情が中将へと向けられる。



「司令長官の仰る通り、やはり決勝戦まで勝ちあがってきただけありますな。」

「決勝戦だけありましてどちらの提督候補生も優秀なようです。」



上官の発言が司令長官の不興を買ったのを察知し、

司令長官の覚えが目出度い候補生を褒めつつ

それに張り合える相手もなかなかだとその双方を褒める大佐。

ようは自分の上司の息子の肩をもちつつ、

さらに上が褒める相手もよいしょというなかなか計算が効いた世辞というやつである。



「……、そうではあるか。」



ふむんと考え込むように手を顎に当てる司令長官。

そして。



「校長、それぞれの候補生が率いている艦娘候補生達の総評を聞いてもよいかね?」



司令長官が横に控えていた校長へと水を向けた。

888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:52:54.24 ID:ADblsM4a0


「はい!ええっとそうですね。

 こちらの、重量艦を多用されている中将殿の息子様が率いている艦隊に

 所属する候補生達は個人としての成績は実に優秀です。」

「特に大和型の二人の命中率は成績優秀でして……。」



長々と続く説明を冷ややかな目で眺めつつ参謀長が分かった分かったと口を開く。



「成程、今現状負けている側の艦娘達が成績優秀なのはわかった。」

「そして、勝っている側の艦娘が平均的、

 いや、一部においては評価が良くない事もわかった。」



そして、校長を黙らせる一言が出る。



「ならば何故、勝負の勝敗が逆ではないのかね?」



しんとテント内が静まり返る。

この問いに答えられる者がいるとすれば……。



「参謀長もなかなか答えにくい質問を投げかけるじゃないか。」



やれやれと笑い声を押し殺したような顔で元帥が口を開く。


889 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:54:17.27 ID:ADblsM4a0

「単純に指揮官の差が出たといった所だろう。

 そして、その指揮官がいかに艦娘本来のポテンシャルを引き出せているかと言った所だな。」



明朗快活、実にはきはきと、面白くてたまらないといった声音で元帥が語る。



「指揮官と部下の関係が良好である事、問題における意識の共有、

 つまりはパーフェクトコミニケーションがなされねば

 命令以上の事はこなそうとしないだろう。」

「軍人として命じられた事以外をしないというのは有る意味正しい。」

「命令以外の行動をとった結果の作戦失敗という事もあるからな。」



元帥の言葉はテント内にいる全員に語りかけるかのように続く。



「だがだ、命令を実行し戦果、

 そう、我らにとって重要な勝利という目標の達成には

 時として与えられた命令について出来る事を考える必要性が有るのだよ。」

「命令の範囲内で出来る事を拡大解釈というのは時として

 独断専行という言葉で悪く言われる事もあるがね、

 それを自己で考えて実行できる者程逆境に強い。」

「そして、好機においては時として猪突猛進を行い赫赫たる戦果をあげる。」

「これが成せるのは普段から考える事を訓練付けられているからだ。」

「考えるという事は常に事態打開の為に動く為に足を止めることをしない。」

「そういった底の、地の部分を勝っている側の艦娘候補生は鍛えられているのだろう。」

「扶桑型といった艦種として旧型に分類される彼女達を

 陸上砲台として利用する等の柔軟性。実に良く考えられているではないか。」



元帥が戦術、艦娘の素質について褒めれば戦略参謀長も続く。

890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:55:42.29 ID:ADblsM4a0

「負傷して砲のみ稼動可能な艦娘を砲台代わりに使った事例は

 最前線で何例か報告がある。」

「そういった戦訓も良く情報として収集し

 自己の艦隊の作戦に落としこんでいるのは工夫だな。」

「そして、ここ一番という所で、初手の潜水艦での攻撃にしても、

 この砲台としての利用にしても最大かつ最適なタイミングだ。」

「この最終戦に至るまではその手札を見せなかった事により

 相手に使われるかもしれないという警戒心を抱かせる事を防いだのは実に見事。」

「知る者は言わず、言う者は知らず。情報の重要性という事も実によく心得ていると言える。」

「結果として艦娘の成績が優秀であった側が負けている。」

「もっとも、成績に関してはここまで相手がしてやられているのを考えれば

 能ある鷹は爪隠すの可能性がないとも言い切れんがな。」



参謀長の言葉に司令長官が畳み掛けるように続く。



「付け加えるなら部下として運用している艦娘達それぞれに、

 大局、情勢を見て自由に動けるだけの権限を投げているであろう事も分かりますな。」



目を細め面白そうに司令長官に続きを促す元帥。



「通信記録を見る限り勝っている側の候補生は位置情報、

 戦果報告程度しか受取っていないようですからな。」

「作戦内容を事前に話した後は現場の裁量で内容の変更等を認めているのでしょう。」

「最終目標が達成されれば問題ないという大胆な割り切りですな。」



ちらと参謀長の方をみる司令長官。

891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:56:44.06 ID:ADblsM4a0


「耳が痛いな。

 確かに作戦を我々軍令部が立案しそれを各鎮守府に作戦大綱として伝達した後は

 各鎮守府に歯車として動く事を強要している部分はある。」

「そうせねば軍という一つの群、全体を動かすのに綻びが生じるからだ。」

「時として一つの作戦を実行するのに緻密にいくつもの作戦が絡み合う。」

「それこそ精密機械の様にだ。一つの破綻が全体の破綻につながりかねんのだよ。」



現状の再確認とばかりに参謀長が答える。



「といっても現場で状況に応じて修正が効かぬのでは時として死ねと言うのに等しいだろう。」

「もう少し作戦に柔軟性を持たせるべきだろう。

 現状では我々前線で指揮をとる提督達はただの繰り人形に過ぎん。人材が育たんぞ?」



それぞれの立場での危機感から軍が抱える問題点へと話が逸れていき始めるが……。



「まぁまぁ、二人ともそこまでにしときたまえよ。」

「君達二人のいう事はどちらも正しい、ゆえにいつまでたっても結論はでぬだろう。」

「その議論についてはまた別の機会を設けようではないか。」

「それに今はそれを論ずる為にここに来ている訳では無いという事を思い出したまえよ。」



元帥が大将の二人を諌めて場を納める。

892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:58:08.63 ID:ADblsM4a0

そして。



「存外それについての一つの答えがこの演習に詰まっているとも言えるとは思えんかね?」



元帥が大将の二人に問いかける。



「君達はこの演習の勝敗をどう考える?」

「そうですな。このまま順当に終るでしょう。」


司令長官が述べる。



「私もそう思いますな。盤面を引っくり返すとすれば関が原における小早川。」

「あるいはハンニバルに対するカルタゴ政府。

 強烈な裏切り者でも用意出来ない限りは無理でしょう。」



参謀長もまた同意する。



「成程、現場と作戦畑の長それぞれの意見は同じか。」

「まぁ、私もその様に思うが何があるか分からんのが戦場だからな。

 最後まで楽しませてくれるといいとは思っている。」

「中将。君はどう思うね?」



元帥、大将二名の意見に反論を述べる事が出来るわけも無く。



「私も御三方のおっしゃる通りの結果になるかと思います……。」



消え入るような声で賛同を示すしかない中将だった。

893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 01:02:53.85 ID:ADblsM4a0
以上更新此処まです
艦これSSでは提督と艦娘が主人公なの為そのバックボーンというか背景というか
偉い人達が現状を語るみたいなのあんまり無い印象を受けますね、
退屈ととられかねないので書かないという部分もタタあるのかもしれませんがその辺り良くわかんないですね…
難しいです…、自分の作品内ではくどくならない程度には触れていきたくもあります
そうしないと提督の立場とか世界情勢が分かりにくいので、お読みいただいている方にはご迷惑をおかけします
ではでは、お読み頂きありがとうございました、乙レス、感想レスいつも励みになっております
お気軽に残していただけるといちが喜びます、では、次回もお読みいただけると幸いです
ここまでお読み頂きありがとうございました!
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/06(水) 01:11:52.57 ID:VSMiXmnP0
乙です
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/06(水) 10:46:34.25 ID:jkjSOFCMO
乙です。
元帥以下の高級将校に艦娘を率いた経験がるか。その辺りはどうなんでしょうか。
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/06(水) 11:18:01.20 ID:HGZqT1Ovo

最後に不穏な雰囲気を感じさせてきたな
もし裏切り者が出るとしたらまあ誰かは想像つくけど……よく考えれば無能提督にそんな甲斐性があるわけもないか
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/07(木) 00:54:03.94 ID:WJ/zw5AN0
将、軍に在りては君命をも受けざる所あり
孫子の九変は確かに中々難しい所だ
馬謖然り、これを引用して大敗を喫した将は数知れず
大勝を収めたものはあまり語らない
海軍が提督に求めている待命は兵卒の美徳だし海軍は艦娘の運用体系がまだ定まってないと見た
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/07(火) 02:29:52.50 ID:7JwiKUZmo
あけおめほ
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 22:58:55.64 ID:NMWLJ5Lo0
皆様、大変遅くなりましたが新年あけましておめでとうございます
Win7のサポート終了に伴い不調のPCを更新したらいろいろデータの互換がなかったり
オープンオフィスのワードの使い勝手の悪さに閉口
そして、定番化しつつある書けない病の発症で遅くなりました
保守感謝いたします、忘れずにお待ちいただいてくれている人がいるのは励みになりますね…
よろしければ、どうぞお読みください、少しばかり人によっては胸糞な話があるかもしれません
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:04:37.71 ID:NMWLJ5Lo0
「はい、ではそのように。」


中将の子息、その候補生からの指示を翔鶴が受ける。

提督たちが微修正を行い艦隊の再度の展開を行っている頃、

相手もまた作戦変更を行っていた。


「翔鶴が旗艦となり指示を出すのか?」


索敵範囲が広い偵察機を飛ばせる空母が旗艦として艦隊の指揮を執るそれはおかしくないのだが。

それが何故今になって本来の大和から変更されるのかという疑問を長門は抱かずにいられなかった。

さらに言えば翔鶴は本来、大破判定でこの場から撤収していないといけないはずでもある。


「翔姉ぇ、敵艦隊の位置が分かったよ。」


索敵機を回収しながら手短に叢雲たちのいる位置を伝える瑞鶴。


「了解しました。今まで位置をわからないように行動をしてきたわりに

 あっさりと見つかる様な行動をとっているようですね。」

「まー、何某かの罠だよねー。」


翔鶴の言葉に瑞鶴が返す。


「翔鶴、すまないが疑問に答えて貰えないだろうか?」


あくまで丁寧な態度を崩さずに翔鶴に今になっての旗艦変更や何故、

とどまっているのかの疑問を再度ぶつける長門 。


「チッ。うるせぇなぁ。いい加減、黙ってくれない?」

「候補生から何も言われてないんだろうなって事はわかってたけどさぁ。」


いかにも長門への返答が煩わしいと言わんばかりに言葉遣いがぶっきらぼうになる翔鶴。


「あんた達はさ、成績は優秀だけどいつも中将の息子である候補生に意見をよくしてたじゃない?」


「あれさ、ほんと迷惑だったのよね、正しいのかもしれんないだけどさ。

 あんたが意見するせいでしょっちゅう不機嫌になってたのよね、あれ。」


自分達の指揮官をあれと呼び本当に嫌そうな顔をしながら話をする。

実際、長門は候補生の指示がおかしな時や理解し難い指示が来た際には

納得がいく説明を求めたり自分の立場から意見の具申をする事が多かった。

遠ざけられる事を覚悟はしての意見具申は候補生の為を思えばこそ。


「あんたさ、卒業してさ、前線というかまぁ、あれよ。鎮守府に着任(つける)と思ってる?」


長門の質問に答えずに長門へ質問を返す翔鶴。
901 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:09:42.94 ID:NMWLJ5Lo0
「一体どういう意味だ?」

「あー、やっぱりねぇ。そうよねぇ。」

「いえね、なんという事でもないのよ。

 大和型は未だにレア、稀少艦娘。適合者も少ないから猶更よね。」

「でも、私たちは違う。」


翔鶴が語気を強め言う。


「私に瑞鶴、それにあなた達長門型。今となってはその艤装の入手も容易い。」

「最前線の提督たちの誰もが渇望した初期と比べれば今は十分に揃っている。」

「さらに言えば、新米兵士が艤装性能が勝るといえどベテラン勢に割って入れるか?」

「少し考えればその可能性くらい頭のいいあんたならわかるでしょ?」


長門を睨めつけながら言葉を吐く。

艦娘の艤装が開発され新型としてロールアウトされてから

月日がたてば稀少といえどある程度の数は普及する。

その製造に莫大な資材を消費する事と適合する者が少ない大和型は

未だに稀少だがそうでないものはちょっと珍しい程度にまで収まっているのだ。


「珍しいって稀少価値、そうね、プレミアってのは何も提督連中だけに作用するわけじゃないわけよ。」

「まして、私たち艦娘の一般人への情報は制限されている。」


話の意図が読めないと長門が翔鶴へ告げる。


「前線であぶれた艦娘の行き先の噂くらいあんたも聞いたことあるんじゃないの?」


間抜けを見るといった笑顔で翔鶴は語る。


「艦娘の中でもレア、さらに言えば前線の提督達の手垢がついていない処女(新品)」

「なかなかいい商品だと思わないかしら?」


つまりは海軍の闇である。

深海棲艦との戦いに国際社会を巻き込んで同盟国と共同でといくら負担を分散した所で

戦争というのは穴の開いた樽に水を灌ぐかのように金が消える。

特別措置法で新税の設立や国債の発行を行ったり、

海運を使う企業に協力を要請という形で恫喝しての出資を募ったり。

裕福な篤志家や著名な投資家達へ海軍への寄付を呼びかけ。

考えられる様々な方法で金が集められる中で相手への見返りとして

最も手軽かつ手早い手段の一つが売春という胸糞の悪い手段である。

もちろんだが世間一般的な人身売買的なものよりはいい待遇なのは当たり前ではある。

場合によってはそのまま除隊後に妾、あるいは本妻として結婚というのも僅かばかりにはあるらしい。

さらに、メリットだけいえば海軍は不要な艦娘の面倒をみずに済み、

相手はそこいらの一般女性が束になってもかなわない美女とくれば満足のいかない男はいない。

少し、性癖に歪んだ相手がいたとしても海軍があまり酷い目に合わないように

監視はしているという事であるから問題はないのであろう。

建前上はであるが。 また、それを行っているのも海軍が主体としてやっている事ではないという形らしい。

すべてはらしい、かもしれない、の噂である。
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:15:25.20 ID:NMWLJ5Lo0
「私はそんなの嫌よ?だから我慢してあのピザに抱かれたってのに……」

「ここで負ける様な事になればそんな目になるかもしれない。」

「負けなくてもまぁ、あんた達はわかんないけどね。」


ふんと鼻をならし再度、長門達を睨みつける翔鶴。

なにせ指揮官は海軍内でそれなりに権力のある中将の息子である。


「で、まぁ、私はあんた達よりあれから信用を受けてた分こういう時の指示も受けてるって訳。」

「ここまで言えば理解できんだろ、お前ら娼婦になりたくないなら私に黙って従え。」


乱暴にしかし、あくまでも目的は勝利という事への秘策があると続ける。


「相手の中から裏切り者が出る手筈になってる。」


なっ、と驚愕の言葉を言いかける長門。

だが、自分達の指揮をとる候補生の事を考えればなりふり構わずやるだろう事は理解できた。

そして、時を同じくして翔鶴達が今後について移動をしながら話をしていた時。

叢雲たちも今後の動きについて話を行っていた。


「さてと、連中はどっちの部隊に食いついてくれることかしらねぇ。」

「あら、私たちのいるこちらで間違いないのじゃないかしら?」


叢雲の言葉に扶桑が返せば。


「何事も絶対はないって言いたくはあるけど間違いないだろうというか………。」

「そうね、あいつ、まぁ、司令官なんだけど。」

「あいつが言うには相手にはったりを利かすためには自信が無いような事でも

 自信をもって堂々とした態度でいれば相手側が確信をもって会話をしていない限りは

 引くことがおおいそうよ。」


どういう事かしらと暁が尋ねそれに叢雲が続ける。


「会話をしていて相手がつねに堂々として話をしていれば

 相手の専門外の事なんかだと簡単に騙せるって事かしらね?」

「詐欺師の手口とも言えるのだけどね?権威や客観的に見えるデータ。

 つまりは騙そうとしている相手が客観的に見ても信用できるデータとかね。

 大学教授とか公的機関認証とかそういった類よ。」

「あいつ曰く、嘘ってのは本当が9割、嘘1割くらいでつくとまずバレないそうよ?」

「あとから聞いても本当に細かい部分でしかないから、
 
 そんなことありませんと言えば相手もそうだったかな?になりやすいそう。」


脈絡もなく詐欺師、人をいかに騙すかの講座が始まったことに疑問符を浮かべる隼鷹、暁。
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:20:36.37 ID:NMWLJ5Lo0

「つまりは提督の変更した仕掛けは信じる者は掬われるという最低な罠という事かしらね?」


扶桑が理解したとばかりに言葉を続ける。


「あー、そうそう、そういう事。

 詐欺とか騙される人って自分が信じたい嘘を言われるとそれを信じちゃうみたいなのね。」

「信者と書いて儲け(もうけ)みたいなやつよね。」

「今の私たちのいる位置と飛鷹達のいる位置を考えてもらえるかしら?」


隼鷹が現状の二つの艦隊の位置について説明、全員での認識の共有を兼ねて話始める。


「そうだねぇ、飛鷹達はいま島影に停泊している状態だね。」

「側面の島にはそれなりに高さのある山もある。

 周囲についちゃ敵の侵攻方向を制限しやすいがこちらの脱出口も限られるあまりいいとはいえないね。」


と隼鷹が一般論を言えば。


「だけれど水深はそれなりにあるから

 潜水艦の娘たちも待機できる場所がそれなりにあるわけよね。」


事前の下調べで分かっている海底状況について暁が述べる。


「付け加えるなら空襲での強襲という事であれば山側から行えば

 山が壁になるから電探が働かないので練度の高い艦載機乗りが高度を低く山伝いに飛ぶことで

 ギリギリまで気付かれにくいという敵側への利点もあるわ。」


扶桑が敵側からの視点について意見を述べる。


「一方で、私たちのいる場所については四方が開け確認をしやすく、

 また足下の水深もまた潜水艦が潜むのに十分。」

「こういった状況下で取るとしたらどうでるかしら?」


叢雲がにこりとしながら暁に語り掛ける。

「そうね、順当に考えるなら飛鷹さん達の方へは襲撃をするにしても艦隊ではないのじゃないかしら?」

「あまりにもあからさまに罠っぽいもの。」

暁の言葉にうなずく叢雲。

「そうさねぇ、あたしらはしょせん軽空母だからね。」

「艦載機を艦戦に全振りして敵の数を減らしたといっても

 あっちの正規空母の娘達にはまだ攻撃機は残っているだろうしね。」

「少しでも提督の罠に懲りているならあからさまな方にはいきたかないねぇ。」

隼鷹がそういえば。

「罠を仕掛けられていても私たちの方へ攻撃を仕掛けるのであれば、

 まだ四方が開けている分だけ対処しようあるかしら?」

と扶桑が続く。

「私達のそれぞれの位置がどちらかが襲撃されても

 直ぐに駆けつけることができるような位置取り展開している事をつかんでいたとしても。」

「こちらに来ざるを得ないってわけよね。」

最後に叢雲が引き取る。
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:23:01.73 ID:NMWLJ5Lo0

「相手に選択肢を与えているように見せかけて巧妙に、

 いや今回については強制的に一つの選択肢しか与えていない。」

「最初の潜水艦娘達の襲撃に海峡部での伏撃。

 二度あることはなんとやらじゃないけど流石に見え見えの罠にのるわきゃないわな。」



隼鷹がもっともな意見を言う。



「さっきの詐欺師の話じゃないけれど言葉巧みに相手の思考誘導して騙すって事で

相手は騙されたと気づかないって話もあったわね。」

「あくまで、自分がそうと決定したと認識させる事が大切だって。」

「提督もつくづく悪だねぇ。」


叢雲達に攻撃がいくように仕掛けた提督の思考への罠に感想を述べると隼鷹がその感想を述べる。

叢雲達がちゃくちゃくと準備をしていた時、提督も動き始めていた。



「えっ、あっ、はい。了解いたしました。」



香取が提督達の艦隊の被害報告を提督から受ける。


「軽空母飛鷹、駆逐艦雷、中破、駆逐艦響、小破。ですね。」

「ほんとうに宜しいんですね。」

「えぇ、よろしくお願いいたします。」


提督が香取に自艦隊の被害を報告する。

提督の態度があまりにも余裕綽々であったため聞き返してしまったが……。

どうやら間違いはなかったようである。

一体何を考えているのやらと香取が提督の思考に思いを馳せる。

そして、その意図に気づき背中に冷や汗が噴き出るのを意識するのはほんのあと数分後の事であった。
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/20(月) 23:31:53.39 ID:NMWLJ5Lo0
以上少ないですが本日分の更新です
1レスの改行ぎりぎりまで入れての巻いていっております!残りが少ないから仕方ないですね!
皆様、イベントどうでしたか?いちは甲甲甲甲乙甲!で駆け抜け初の全艦娘コンプいたしました、めでたい
そして、初月も追加で掘り更に鎮守府の層を厚くしていっておりますです
イベ後の大型でサラトガ狙いましたが大鳳(三人目)が来ました…、うん、色違いで持てるから便利ですね!(白目)
この後の展開は多分毎回察しのいいレスを下さってる方とか気付かれるんじゃないかしら?と思っています
お読みくださっている皆さんがいろいろ考えてレス下さってるのはいい意味で毎回ドキッとしながら読んでいます
では、最後に一言いっちから、提督は狡猾、さんはい!提督は狡猾!
ここまでお読みいただきありがとうございました、乙レス、感想レス、いつも励みになっています
お気軽にレスを残していただけると本当にありがたいです、次回もよろしければお読みください
906 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/21(火) 01:19:52.03 ID:nkxRqoEX0
新年投下乙です
自分も甲甲甲甲乙甲での攻略でしちゃ
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 14:27:12.79 ID:+asJ9zFC0
へぇ中破…なるほど

艦隊側でやりたいことはなんとなく分かったけどこれ敵のおつむが程よく悪いが絶望的にバカではないという絶妙な残念さが大前提な気が
長門が土壇場(今)で一皮剥けると負けはしないが冷や汗かかされそう
908 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 01:01:33.30 ID:cQpzdrR50

「この局面で中破かね?」


飛鷹達の中破の報せはそれぞれに驚きを与えた。

ある者は失点を取り返す好機ととらえ顔を喜色に染め。

ある者はこれから何が起きるのかと好奇に染めた。

また、ある者はやれやれ悪い癖が出たと呆れ気味に顔をしかめ。

そしてある者はここでその中破という事態が

どう盤面を動かすのかと深く思考を巡らせる。

まさしく三者三様。

しかし、その根底で皆が考えるのは、もうすぐこの演習の結果が終わるという確信である。

その結果がどうなるかというのは別にして、という但し書きはつくが。



「よし!よし!よし!」



まさしく小躍りするという表現が正しい様にその候補生は喜んでいた。



(今までいいようにやられていましたからね……)



その様を呆れと憐れみを持った表情でみる鹿島。

最も教官としての彼女から見れば相手が偉いさんの息子というだけでやっている行為はすべて黒。

演習相手の提督と比べて黒に限り無く近い白色ではなく純然たる黒なのである。

ゆえに自分の職務を遂行するのであれば早々に、いかにこの試合を終わらせるか、

そして自分に火の粉が掛かってこないように立ち回るか。

それが重要なのである。
909 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 01:04:10.08 ID:cQpzdrR50

といっても香取と比べれば鹿島の頭痛と胃痛の負担は軽いものではある。



「さてと、馬鹿が喜んでいるんだろうなぁ。」



下卑た笑いを浮かべ口に煙草を咥え火をつけ呟くのは提督である。

香取はこの相手の素性をここに来てようやく把握した。

違和感の正体、そう、ここで提督の素顔が見れた時点でようやく把握したのだ。

この相手。海軍上層部が送り込んだ現役の提督、それもバリバリの前線帰り。

恐らくその目的は養成学校の調査、綱紀粛正。

冷徹かつ確実にその任務を行うことの出来る相手であることは間違いないだろう。

どおりで妹の鹿島が鼻につくくらいの血の香りがする相手と喜ぶわけだ。

或いはそれに類する戦歴を持ったピカピカの勲章持ち、

一言でいえば大好き深海殺し、である。

普通なら優位に進めている戦況で部下の中破をわざわざ受けに行くわけがない。

いや、その報告は欺瞞情報であろうことは間違いなく、そして報告させた意図が不明なのだ。

なにせ、ここまで周到に準備を行い敵の機先を制し、

相手の策をすべて児戯として捻じ伏せてきている者がである。

まともな思考を持っていればこの中破をわざわざ受けたのは何かの罠としか考えないだろう。

いや、むしろ敵を破滅させる為の一里塚、

もといすでに首に匕首が突きつけられていると気づこうものである。

更にこれを罠としてみれば恐らくは中破のダメージは受けていないであろう事が考えられるのだ。



「香取先生?いかがなさいましたか?」



にこりと向けるその笑顔、試合開始までは爽やかに見えていたが、

今となってはその笑顔はまるで魔王か混沌の破壊神か。

一つ返事を間違えればそこで終わる。

この相手、間違いなく自分も粛清対象に入れているに違いないのである。

返事を間違えればリストの一行目に見事、華丸急上昇なんてことになりかねない。

自分に見せたこの笑顔はまさしく死刑判決前の、次はお前だの予告に違いないのである。

これはいけないと香取はその頭脳をフル回転させ、薄氷を踏む思いでその喉奥から絞り出す。

そして、その返事はこれだった。



「全ては計算づくですか。なかなかのお手並み。これは特別に加点が必要なようですね。」



あくまで余裕を持った対応と思わせることに主眼を置きつつ

言葉は冷静さを保った上で自分の動揺を悟られないようゆっくりと語った。

香取はこっちに怒りの矛先を向けないでくれぇと

土下座せんばかりの心持ちなのは悟られないように全力で表情を装う。

この場にいるのは誠実に、そう職務に忠実な一人の教官なのである。

そういう体を装わないと間違いなく粛清されてしまうと

香取が笑顔を引きつらせながら返事をしたのは無理からぬ事であるのだ。
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 01:08:54.16 ID:cQpzdrR50

一方の提督はというと顔に出さないものの内心実に穏やかではなかった。

敵のやり方へ怒り心頭に発する、という訳ではなく

冷静さを失い自分の素をよりにもよって香取の前にさらしたことについてへの焦りである。

これは実にまずい、今日の演習は偉い人たちが来ているのである。

今日はこれまでやってきた事の集大成を上司の前でプレゼンして商品、

つまりは自己の売り込みをして次の仕事への権限を勝ち取る為の場なのだ。

あくまで一候補生が落ちこぼれな底辺から優勝という逆転劇を演じなければならない

という上司が描いた台本の演目に沿った演技が求められているのである。

なればこそ、最後の最後まで単なる提督候補生を演じて、

香取達にはそうと思って貰わないといけないのだ。

だが、現実はどうだろうか?

冷静さを失い演習相手を全滅させる事へ作戦を大幅に変更しようとしている。

実践において平均的な提督であれば作戦目標が達成できないとなれば出来る範囲内で行動するだろう。

負けているのであれば被害を抑えつつの撤退、

勝利しているのであれば戦果拡張を狙うか被害を出さないためにそこで戦闘を終結するかである。

そう、あくまで平凡手、手堅い一手しか打たないものだ。

敗北状況下で全滅か逆転かの博打を打ったり勝利状況下で休むことなく敵殲滅の為の前進、

追撃殲滅戦をやる為に作戦変更するなど余程の経験や自信がないと出来たものではない。

所謂、勝負勘、ここが引き際、ここが攻め時の機を見る感覚は

実戦経験が無いと培われるものではないからだ。

そう、つまり、ここで提督がそれを指示したことによって

香取に私はこういうものですと名刺を渡してしまったようなものなのである。

冷静になった後に香取をみてみれば引きつった笑みが能面の様に張り付いている。

やり過ぎた、そして悟られた。

提督がこう思わないはずがないわけで、提督は相手の心情を図るべく

駆逐艦が潜水艦の位置を知るために探信儀から音を出すように様子見の声掛けをした。

素性がバレてしまえばそれを理由に、そう、不正入学として今行われているこの試合を

強制的に終了されても仕方がない場面だからだ。

そうなれば上が書いた台本から外れるばかりか期待された役割を演じきれない愚か者の烙印を押されかねない。

それは実に困るなんてものではない、だからこそ、提督は香取に一声かけた。

『いったいどうされましたか』 と。

提督の心の声が聞こえたなら、頼む、気づいたことをみなかったことにしてくれという絶叫が聞こえていただろう。

そして、一瞬の沈黙、それはほんの数秒だが体感として実に長く重い間であった。

待ち望んだ香取からの返事は。

『 特別に加点が必要のようですね 』である。

そう、提督は勝ったのだ。勝訴を勝ち取った被告人の様に全身でその喜びを表現したいくらいである。

教官の香取は提督の正体に気づいていながら敢えて見なかった事にすると宣言したに等しいのである。

ふふふふふ。

うふふふふふふふ。

お互いの心の声を押し殺し二人は笑う。お互いに自分の望む結果を得られたと確信して。

提督と香取のこのお互いへの誤解は結果としては良い方向へ向かう事となったのは言うまでもない。
911 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 01:11:23.73 ID:cQpzdrR50

その頃、海上では隼鷹が自身の旗下にある艦載機達へ指示を飛ばしていた。



「中破ねぇ。盛り上がってきたわね。」



叢雲が語れば。



「これも一つの可能性として提督は語られていましたし、

 対処も事前に決められていた想定内ね。」


扶桑がこれからの動きが楽しみと返す。

敵のやり方に不満を覚えていた叢雲達が提督が敵を殲滅に目標を変えた事に喝采をあげていた。

そして敵対する翔鶴達もまた中破の報で作戦を変更していた。

そして長門と陸奥は考えるのを止めた。

二人は先の裏切り者が出る予定であると翔鶴に告げられた時点でこの試合を投げる事に決めた。

それは姉妹艦であるが故の阿吽の呼吸でアイコンタクトでの意思疎通。

今も目の前で中破の報せに良しと喜び

事実確認のための偵察機を飛ばそうともしない翔鶴達に愛想も尽きたのだ。

実戦ともなれば卑怯、卑劣も当たり前のように起こるだろう、そして行わねばならないだろう。

名誉を求める事の出来ない作戦に携わらねばならないこともあるだろう。

だが、と、長門は考える。自分の命を掛け金として積むのだ。

納得のいく命令を下す提督の下で働きたい。

正式に艦娘として戦うようになり命を落とすような事になるのでれば悔いのないように散りたい。

しかして、今自分に指示を出している奴はその対極に位置しておりその下では死んでも死にきれない。

だからこそ、端的に言えば『 やってらんねぇや 』と二人がなったのだ。

そして、艦隊の助言役としてこの最終戦以外でも

色々細かく旗艦をフォローしていた長門が投げた事でこの試合の趨勢は決まった。

試合後、何故に我らの指揮官が相手の候補生でなかったのかと

ため息交じりに長門は叢雲に語ったそうである。

912 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/19(火) 01:14:31.27 ID:cQpzdrR50
エタ……エターナルフォースブリザード!
少しだけ更新です、お待ちいただいていたかたおりますでしょうか?
いらっしゃると少しばかり僅かな期待……、愛想つかされてて仕方ないわけですしね……
仕方ないね…、お読みいただきありがとうございました
感想、乙レス、気軽に残していただけるとイッチが喜びます
誤解の美学は考えるのが結構大変、でも読んでいて楽しいですね、お互いに誤解したままだけどいい結果が出て万事よし!
大事です
913 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 01:21:35.42 ID:3AQFTJmWo
>>912
乙乙
待ってたよー
914 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 04:41:35.96 ID:ZGUAbTGSo

待ってた
915 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 08:00:54.47 ID:mjcAsGAB0
おつ
まってたよー
916 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 10:50:06.70 ID:DRSrIhJ/O
香取と提督の深読みが微笑ましい
917 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 21:16:33.98 ID:0l/yy0DGo
待ってた乙
帰ってきてくれて嬉しいわ
918 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 00:05:04.56 ID:RmhDnurG0
投げたのは「試合」だけかな
惨敗確定の現状、お偉いさんに価値を示すなら祁山の王平たるしか
島津の退き口じゃあ大した提督にはスカウトされそうにない
919 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 00:56:29.92 ID:E0/y+fbuO
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 00:59:56.00 ID:E0/y+fbuO
書き込みに問題ないようですね…
モバイルWifiなんでちょっと書き込みテストしました
一月ぶりでなんですが更新いたします
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 01:02:45.50 ID:E0/y+fbuO

「やぁ。そろそろ合流できそうだから撃たないでもらえるかな?」


長門達の無線に周波数を合わせた上で連絡を入れてきたのは。


「響?きちんと始末はしたんでしょうね?」


翔鶴がその首尾の確認の返答をすれば。


「まぁ、てこずって私も被害を受けたけどきちんと行動不能にはしておいたよ。」

「偵察機で確認はしなかったのかい?」


言外に当然しているよねの雰囲気に、してないと言えるわけもなく当然のようにしたと答える翔鶴。


「響はこれから我々と行動を共にするのか?」


不平不満、不信と疑念、それらをないまぜにした表情そのままに響へと尋ねる長門。

922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:05:10.46 ID:E0/y+fbuO

「長門が私を警戒するのは分かるよ。むしろ、しないほうがおかしい。」

にこりと笑いながら長門達の付近に現れ合流してくる響。


「更に言葉を続けるなら味方を裏切ってまでこちらに来る相手が

また、裏切らないかと警戒しないのならそれは実に目出度いね。

私なら、そんな相手は警戒してしかるべきだと考えるよ。」



長門の心の内奥を見透かすかのように話を続ける響。

曰く、姉妹艦にして長門達の候補生の秘書艦を務める電を

助けるために裏切りを引き受けた事。

そして同じく姉妹である雷、そして仲間である飛鷹を攻撃するのには

やはり躊躇いが無かった訳ではない事。

しかし、この試合で響達を指揮する提督が負けずに勝ってしまった場合に

電が受ける責め苦を考えれば裏切り者の不名誉を受けてでも提督に負けて貰わなければならない事。

後の事を考えれば響の指揮官であれば裏切った理由についても説得ができるであろう事。

そして。



「私の指揮官の候補生はなかなか情にもろいからね。

後で涙でも見せれば許してくれるよ。」

「彼は甘ちゃんだ。」

「それで、私は陣形のどこに位置取りをすればいいのかな?」



響が語った事について長門は意見を口に出さずに考えていた。

それは一見、筋は通っている。だが、と長門は考える。

響の語った話はあらかじめ用意された答えではなかろうかと。

そして訝しみ、胡乱な視線を向ければ響はやれやれといった仕草をした。

923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:07:41.45 ID:E0/y+fbuO
「長門は私に対しての警戒が実に強いようだね。

仕方ないとは思うけれど、少しは信用してもらえないかな?」



気持ちが顔に出て苦虫を嚙み砕したかのような顔をしていたのであろう。

響が苦笑する。そして長門を咎める様に眉根をひそめ、睨みつける翔鶴。

翔鶴に睨まれたこともあり、意見する具申する気もなかったが

更なる不興を買いこれではもう何を言っても聞き入れてもらえないだろうなと考える長門。



「やれやれ、信じて貰えないのは仕方ない。じゃ、信用の無い私は先頭で体を張りますか。」



そして、旗艦の翔鶴と二三会話を交わした後、

響はそう言い残し輪形陣の外周、その先端へと移動していった。

恐らく響の役割に気が付いたのは自分だけなのだろうが

これを翔鶴に具申する気力は長門にはとうに無くなっていた。

また、先の響の言葉による毒。

これが艦隊内での適切な意見のやりとりを阻害する事を達成したことを考えれば

仮に意見具申したとしてもその結果を予想することは容易い。

響の役割は恐らくこういう事なのだろうなと長門は考え始める。

響は自身の指揮官を形式上、裏切り仲間を中破へと追いやりこちらの艦隊に合流。

一見すれば裏切るという予め言われていた任務を達成し、

その報告の為に翔鶴達に合流、さらには減った部隊の戦力の増強とプラスになる部分が大きい。

しかしこれは希望的観測に過ぎないのだ。

響が自分から長門へと語ったように響が裏切っておらず、

飛鷹達の損害も偽装されたものであった場合どうであろうか。

翔鶴達の部隊はいつ牙を向くか分からない敵という、

内に危険を抱えたまま演習を継続する事となる。

一連のやりとりを考えればいつ自分達へ魚雷をむけるかもしれない相手を輪形陣の後端、

或いは内側へ抱え込むことなど出来るわけがないと考えるのが当たり前である。

924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:09:53.95 ID:E0/y+fbuO
だからこそ響が陣形の一番外、かつ先頭に行くのを止めることはしなかった。

だが、と首筋にちりちりとした物を感じながら長門は考える。

試合が開始されてから自分たちをいいように翻弄してきている相手である。

響の裏切りが仮に相手候補生の予想外だったとして

それに対処できない程の相手なのか?という事には、

はなはだ疑問であると言わずにいられない。

いや、すぐにそれを利用して何か仕掛けてくるような相手であろうなと考える。

寧ろ、響が裏切る事を予測して、そしてそれを響本人から指示が出ていることを聞き出し

裏切ったように見せかけて合流しなさいと電を救う手立てを考えた上で命じている可能性もある。

此方と比べてあちらはお互いへの信頼関係の醸造も出来ていると見受けられる事から

そういった他者へ言えない秘事も相談出来る環境は出来ていると考えられる。

長門達の候補生からの命令を守りつつ本来の指揮官への義理を通すやり方はいくらでもあるだろう。

そう、なにも響がこちらに合流した後に長門達を攻撃せずとも

相手を利するやり方など幾らでもあるのだ。

例えば現在先頭を務める島風と交代して自分が先頭に立ち、対潜警戒をするといったもの。

敵の艦隊には現在、魚雷の残弾も残っており行方が掴めていない潜水艦娘達がいる。

彼女たちが近づいてきた際に故意に報告をしなければ長門達には見つけるすべがない。

その危険性を考ると島風と位置を入れ替えさせることが出来ない。

消去法的に響を先頭へと向けたが先頭であってもその危険性は変わらず、

他の手段を取られる可能性もある。
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:12:52.17 ID:E0/y+fbuO

もし響が自分たちの位置情報を垂れ流していたとしたらどうか?

艦隊での艦の位置が予め分かっていれば空母艦載機による攻撃の順番もおのずと決まる。

場当たり的に目標をばらけさせるのではなく集中運用で一人ずつ確実に屠ればいいのである。

攻撃が始まれば響は対空射撃のふりをして攻撃機をスルーすれば長門達の被害は増えるだろう。

さらに響が先頭である理由を付け加えれば、

響たちの艦隊からの攻撃による『 誤爆 』のリスクを低くする事も考えれ、

艦隊の進行方向を誘導する意図もあると深読みできなくもない。

つまり、響は先ほどの会話で仕方なしに先頭へ行ったように見せかけて

実は先頭以外に行き場が無いように誘導し、

先頭に立つ事でいくつもの優位性を敵へ与える可能性があるのである。

この相手候補生の勝利へのあくなき執念は

自分たちの指揮官のそれと比べて実に丁寧かつ精緻、

そして何よりギリギリのルール違反にならないであろう所を見極めたやり方。

なにせ自分たちの候補生が先に指示した裏切りの指示を利用して

響に敢えて合流後は『 何もしない 』を響にさせるのである。

何もしなければ何かする事と比べ事が露見することは、まずない。

響を電を利用して裏切りをさせた事実は演習の記録に残るかもしれないが

その裏切りを利用して何もさせなかったというのは何もしなかっただけに記録に残らない。

長門は妙な強者への妙な信頼感というべきか、いや、相手の候補生が優秀だからこそ、

その思考をなぞり次の手を考えらる単純さに感嘆を覚えていた。

これが仮に自分たち指揮官だった場合は却って何をしでかすか分からない所だろう。

寧ろそれ見た事かと裏切りを審判としてついている教官に報告し

その場で試合終了をさせるかもしれない。

或いは後々の強請等のネタに利用しようとするかもしれない。

何にしろ、どうせ碌なことにならないだろう。

翻って、この演習相手候補生の動きを考えば、将棋で対局相手の性格、

癖を熟知した上でその上を行くために何手も先を読み考える楽しさがそこにはあった。

ひとつ、問題点があるなら今回の相手は常に真剣を首筋にあてた上で

禅問答をしてくるような情け容赦の無い相手という事だろうか。

答えを間違えれば即で首が跳ねられる、そして、こちらの艦隊内、

指揮官との不和を見抜いて響に自分の信頼を落とさせるダメ押しをさせている事を考えれれば

自分が艦隊の要となっている事も見抜かれていると考えるに容易い。

強者に認められるというのは名誉なことなのだがな、と、少しばかり嬉しくなるものの。

その結果が徹底的なまでの離間工作である。

926 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:17:37.30 ID:E0/y+fbuO
長門が思考を巡らせていた頃、響は輪形陣の外側へと移動し、

対潜警戒を行いつつ艦隊の早期警戒艦として先頭を務める島風に声をかけた。

「お疲れ様。島風は流石の速度だね。」

響の機関と島風の機関ではその最大船速には当たり前のように差があり、

結果、島風が響のやや前を行くような形で航行する形となる。

そして、詰将棋の様に相手の思考をなぞっていた長門は響がこちらに来た理由、

島風を救う事は難しいかもしれない事を理解したために行動へ移った。

響が翔鶴率いる艦隊に合流した結果何が起こるかが理解できれば、

その時が来れば響は必ず行動を起こす。

何もしないことを行動を起こすというのもおかしな話だと

自嘲の笑みがこぼれるのを抑える事に苦労しつつ、

長門は翔鶴に万一の際の盾としてと具申し響と他の仲間の間に位置する順番へと移動する。

…………

……………………

ぱしん。

とある地点にて静寂に包まれる中、音が響き渡る。

周囲にもうもうと煙が立ち込める中、その柏手はよく響いた。

その拍手をした者は二礼し、何かの儀式でも始めようかという雰囲気を纏う。

拍手をし、その厳かな雰囲気を身に纏うは飛鷹である。

飛鷹は胸元から何かが書きつけられた紙を取り出し、よく通る声でそれを朗々と読み上げ始めた。

「高天原に神留り坐す 皇親神漏岐 神漏美の命以ちて ………」

飛鷹が読み上げるそれは大祓詞と呼ばれる祝詞である。

内容としては大まかには穢れ、罪、過ちを祓うものである。

その為、飛鷹が読み終えた後、その場は静寂に包まれ、

言いようの無い厳かな雰囲気が場を支配していた。

そして、その中で飛鷹が発艦用為に巻物を開け甲板の巻物の上に何かの部品らしき物を置いた。

実に小さな部品であったのだが、

一瞬にしてそれを中心として周囲の空間を歪めるようにして大気が凝縮されていき

そこに戦闘機が複数顕現した。


「靖国より現世に戻りし英霊の皆さん、敵の殲滅、どうぞよろしくお願いいたします。」


普段の命令的口調ではなくあくまでお願いという形で召喚、

発艦用の巻物の上に顕現した戦闘機達に告げる飛鷹。

そして、その艦載機に乗る者たちは鷹揚に頷くとその機体のエンジンを轟と響かせ大空へと消えていった。


「お疲れ様!」


飛鷹の執り行っていた儀式を黙って見つめていた雷が声をかける。

「ありがとう。にしても、提督もどこからあんな物を手に入れたのかしら……。」

飛鷹があんなものと言うのは先ほどの召喚に使われた媒体である。

「そんなに危険なものなの?」

雷の問いかけに陰陽型軽空母にもそれぞれ得意とする発艦方式の違いはあるけれどと

前置きした形で飛鷹は説明を始める。
927 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:25:10.73 ID:E0/y+fbuO

一般的な陰陽型は神道型も道術型も共通して紙の人型を使い

それに英霊を降ろして妖精として顕現させて戦闘機妖精、攻撃機妖精として行動して貰う。

魂を卸す媒介が紙という事もあり妖精そのものの意識は薄く、

コントロールという部分は容易い。

しかし、容易い分、指示を出す側が熟達していなければ恐ろしく弱なる問題点がある。

これは弓道型も同じでありその艦載機の強さは召喚者の熟練度に依存する形となる。

極めれば呑波呑舟、大喰らいの一航戦と強者として名をはせた艦娘程となる事も可能ではある。

飛鷹が今回行った召喚方式はこの一般的な物とは少し違う。

英霊を降ろす媒介がその英霊に所縁のある物を利用している点である。

この降ろし方であれば指示者の熟練度はそれ程必要としない。

何故ならば英霊を降ろすのに所縁ある物を使用している為

現世との結びつきが人型を使った場合と違い強固になる為であり。

その結果として顕現した艦載機達は英霊になる前と同じように

自己の意識をしっかり持ちその持てる技量で敵を殲滅することが可能であるからである。

その為、降ろす英霊が名のある搭乗員の英霊であればあるほど

その強さは桁違いとなり艦載機操作の熟練度は低くともその強さを大喰らいの二人に迫る事も出来るのだ。

928 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:37:18.42 ID:E0/y+fbuO
ここまでお読みいただいた方は、

なぜその方式が一般的ではないのだろうかと思われるだろう。

そう考えるのは無理からぬ事であり実際にそう思われても仕方のない事である。

しかし、メリットがあればデメリットがあるというもので

これに関してはデメリットが大きすぎて採用がされていないのである。

そのデメリットとは術者、この場合は召喚主である艦娘の巫女としての力量が問題となってくるの為である。

この力量が不足していた場合、英霊を現世に繋ぎとめるために多くの霊力を奪われ

最悪生命力を持ってそれに変える事となり死に至る事があるのだ。

デメリットの方が大きすぎる事もあり紙製の人型での召喚方が確立されてからは

その方式で英霊を召喚する者はいない。

もとより使いこなせたのも陰陽師型軽空母では過去に一人居たのみであり。

その者は千曳岩の龍驤、黄泉路塞ぎの龍驤、冥府の官吏、死霊使いの龍驤。

いくつもの呼び名を持ち圧倒的な霊力で持って多くの英霊を使役したと言われる存在。

また、英霊として呼びだした中には『 艦娘 』も含まれていたとか。

海軍の記録上居たという在籍記録は無いがその活躍により命を繋いだものもいるという話はあり

かといって何処かの鎮守府に在籍していたのかどうかは定かではない。

先の召喚方法についてもどこからともなく一人で救援に来た龍驤が目の前で艦載機を呼びだし

『 艦娘 』を顕現させたときに行ったやり方から推測、そして研究をされての推測に過ぎない。

その研究の過程で命への危険性が指摘され

巫女としての力が足りないものには絶対にさせない事とされた禁術でもあるやり方なのだ。

提督は飛鷹にその危険性をじっくりと説いた後に

本人の希望を聞き安全幅を多めに取ったうえでその媒介物を渡している。
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:41:19.65 ID:E0/y+fbuO

「とはいえ、普通に降ろすよりどんどん霊力を持っていかれている気がするわ。」


艦載機妖精たちは疲労しない、その代わりにそれを使役する艦娘達が疲労する。

これは空母艦娘達に共通ではあるが、飛鷹は疲労以外に自身の術者としての霊力の減少を訴える。


「そんなに大変なの?」

「えぇ、でもそれに見合うだけの力は感じられるわね。」

「実際に戦闘が始まってみないと分からないけど、

 とっておきの切り札として提督が隠しておきたかったのは理解できる危険な手札よ。」

「へぇ、さすが司令官ね!」



常にどれほど先を見据え手を先じて打っているのかと考えると

自分の指揮官でありながら空恐ろしいものを感じる飛鷹ではある。

味方にさえ恐れを抱かせることすらある上官というのはあまり上に居て嬉しいものではない。

しかし、雷の様に盲信し、追従をするのであればこれ以上なく最高の指揮官なのであろう。

きっと提督として前線に立つのであればうまく立ち回らないと

煙たがられるタイプなんだろうなと考えうまくその補佐をしてあげる位置に、

卒業後も共に戦えるのであればいいのにと思わずにはいられない飛鷹であった。

930 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/28(日) 01:55:14.37 ID:E0/y+fbuO
イベント始まりましたねぇ
前段でのドロップがすごく豪華、タシュケにサラトガ、涼月、大和
未確認ではありますがイヨも落ちるとか?これは追加で掘らねばなりませんね
報酬、泥艦については特に…です、心があまり現状ではときめかないです
何事も守りに入ると衰退するというのはよくありますがあんまり攻めすぎると寿命を縮めるだけですね
時代劇のような王道、テンプレ物がなぜ人気を獲得でき長寿なのであるか?という部分の話になりますが
いつぞやの最終海域報酬艦みたいに、報酬艦として画像が出た段階で 「…………」 となったのを思い出す次第です
あの時の最終報酬艦さんはぶっちゃけ未だに慣れないこともありモスボール状態です
あれ?可愛いと言われる方のなんというか?どこが可愛いのか未だに理解できないんですよねー……
戦力が整ってくると報酬、ドロの新艦は艦娘としての性能より長く愛でていくことができるかの方が重要です
性能駄目でも別の艦に置き換えられますし、その逆もまたしかりです
(但し、ネルソンのみ除く、彼女はいるといないで取れる選択の幅がかなり変わりますので…)
戦艦としてみたとき性能としては劣るものの人気を獲得している新顔のコロラドとか、ガンさんとか
フレッチャーは改二が早かったなぁという印象、あれ、龍驤のパリピから普通に戻った?くらいの衝撃でしたね
なんというか、にんともかんともですね、新艦より既存レア艦の複数艦持ちを目指してしばらくは攻略より堀優先になりそうです
ではでは、みなさまここまでお読みいただきありがとうございました
待ってたとのありがたいお言葉をおかけいただき本当にありがとうござす、次の更新を早められるよう頑張ります!
感想、乙レス、お気軽に残してください!是非、よろしくお願いいたします!
931 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 09:36:30.18 ID:Ypn7o10hO
話が良く練られているだけに途中での感想って書きづらいのよね
続きも期待してます
932 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 12:14:11.38 ID:KcJx1UaiO
乙です。
イベントは7月に入るまで様子を見てから挑むつもりです
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/29(月) 00:45:16.74 ID:h3jkQ5aI0
最善も次善も許されない状況で意地を見せるかビッグセブン
934 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/30(火) 12:56:15.40 ID:1QOw9AC7O
久々の投稿とおもったら小説みたいな投稿で
全飛ばしで読む記もおきない
935 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/30(火) 13:27:22.00 ID:5nIEh8DjO
バカ城の嫉妬みたいな日本語やめーや
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/09(日) 04:54:53.67 ID:+Gkhv7lWo
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/17(月) 00:52:17.49 ID:IHuDNWy0O
久しぶりに投稿来てたと思ったらなんだか趣向が変わったのかな?これじゃないって書き方で…
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/16(水) 12:36:14.81 ID:g0F72HIno
まだかなー
読者様()の声気にせず今まで通りの続き待ってます
939 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/26(火) 10:36:47.18 ID:3HVfbF9+o
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/18(水) 08:05:46.88 ID:XOKMFNjpo
待機
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/02(水) 22:09:51.86 ID:pFIuXi+uo
942 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/21(月) 07:59:22.51 ID:chSqu/uAO
ほしゅ
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/05(火) 04:02:40.38 ID:TlMAbIL40
保守
944 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/07/30(土) 06:16:26.25 ID:w7ZUY/D30
はい
945 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/22(土) 22:45:45.53 ID:90u/NGitO
流石にもう厳しいか?
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/14(木) 05:26:54.82 ID:zZ2HOdTfo
保守
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/19(火) 20:11:53.27 ID:Cd2Lx5Zh0
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