平沢進「東京のヒラサワです」翠星石「まきますか?まきませんか?」平沢進「違います」

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226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 20:33:13.03 ID:Z+difkuvo
>>224
ヒラサワと愉快な仲間たち、もといP-MODEL歴代メンバーの中だと誰が一番好き?
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/27(火) 13:11:10.59 ID:Wcm6RkxFo
銀様と普通に会話出来てるのは流石
文化人だけあってレベルが高い
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/28(水) 09:41:19.89 ID:Iv89bLwB0
>>225
やっぱり翠星石ですね。次が蒼星石です。でも漫画読み返してたら皆健気で個性があっていいなぁと思いました(小並)
クールな僕っ娘大好きなのですが何故か翠星石が一番好きでした 不思議ですね…
>>226
馬の骨歴が浅いのでP-MODELのメンバーに詳しい訳じゃないんですが、個人的にはことぶきさんですかね。過去のライブとか観てると実際どうかは知りませんが怪しすぎて平沢さんの相棒感がパないです まじカッコイイ
あと一応Twitterで福間さんをフォローしてます()

多分今夜には更新できると思います いつも遅くてすみません
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:27:25.07 ID:MKCHY0w30
昨日更新すると言いましたがすまんありゃウソだった
代わりに今からします
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:27:57.98 ID:MKCHY0w30
翠星石「……と見せかけて!ぽーいっ!」

平沢進「あ」

水銀燈「……はあ?」

平沢進「…あのねぇ」

翠星石「ふっふーん…騙すなら味方から、ですぅ!ヒラサワ、いま翠星石のスコーンを食べたですよね!欠片をパクって!間違いねーです!別腹の虫に聞いてみやがれですぅ!」

平沢進「なんという非道を敷く人形なのか。開いた口を洋菓子で塞ぐとは。開いた口が塞がらない」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:28:29.62 ID:MKCHY0w30
翠星石「問答無用ですぅ!さあヒラサワ、約束を今こそ果たすですよ!さっきは一人でも闘えるって言いましたけど…一人より二人の方が心強いに決まってるですぅ!」

水銀燈「…一体なんの話ぃ?つまらなそうだから聞くつもりは無いけど、この私を前にして人形劇を始めるなんていい度胸ねぇ」

翠星石「劇じゃねぇです!うぃんうぃんカンケーの最後の橋渡しですぅ!」

水銀燈「もっと意味が分からないわ。バカみたぁい」ゴオッ

翠星石「どわぁああ!?ひ、ヒラサワ急ぐですぅ!」
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:29:05.73 ID:MKCHY0w30
平沢進「はあ。で、契約書は。まだ我が家の電話機は何も受信していないが。やはり国際FAXの為タイム・ラグが…」

翠星石「だーかーら!契約書をFAXで送るシステムじゃねーんですって!ほら、これが指輪で…うわっと!?」バッ

水銀燈「あら、惜しい」

翠星石「あぶな……っと、これに口づけすればいいだけですぅ!」

平沢進「えー……」

翠星石「えーじゃねぇです!何今までで一番のイヤな顔してるですか!今そっちに指輪持ってきますから待ってやがれですぅ!」

平沢進「だって口づけって。あのねぇ。少女漫画のテンプレートじゃないんだから…」
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:29:45.59 ID:MKCHY0w30
水銀燈「約束って、何かと思えば契約の事?面倒だしぃ、その前に終わらせて貰うわよぉ」

翠星石「げっ!スィドリーム!もっとめいっぱい世界樹の葉を出すですぅ!健やかに〜伸びやかにー!」

水銀燈「邪魔くさいわねぇ。こんな草でどうにかなるとホンキで思ってるのぉ?」ズバッ

翠星石「うっ、うわぁっ!あんなあっけなく…!もっとです、スィ……」

翠星石「あ……あれ?」カクン

水銀燈「…あら♪」

平沢進「?…」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:31:09.35 ID:MKCHY0w30
翠星石「しまった…です……ネジが…もう…きれるですぅ…!…契約してないまま…一気に力を使ったから……」

水銀燈「アハハ、貴女にはお似合いの結末よぉ。蒼星石に死に顔がどうだったかぐらいは教えてあげるから、安心して逝きなさぁい」バサッ

翠星石「く………に…逃げなきゃ……で……」フラッ

水銀燈「させないわぁ♪最後くらいは静かにしなさいな。ローザミスティカ、有難く戴くわよ」

翠星石「う…うわぁっ…!!…ひゃっ?」ヒョイ

ドスッ!!
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:32:03.55 ID:MKCHY0w30
水銀燈「…あら」

平沢進「……」

水銀燈「ふぅん…。その子を庇うのお?もう少し思慮分別のある人に見えたけどぉ」

平沢進「いや、何せ翠の人形はあろるの館前に配置されていたものをヒラサワが一時拾得しただけなので。持主の現れる前に破壊されたとあって私に賠償責任を発生させる訳にはゆかず」

翠星石「ひ、ヒラサワ……ナイス…カバー……ですぅ……でも…この持ち方は……あんまり…ですぅ…子猫じゃ……ねーんですから…」

平沢進「あ、つい」

翠星石「ま……いいですぅ……じゃあこれ…指輪…です…」

平沢進「はあ」パシ
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:33:20.60 ID:MKCHY0w30
水銀燈「!させないわよ」ドッ

翠星石「!!ヒラサワ…急いで…!」

翠星石「まきますか……?まきませんか………応えて、ですぅ…」

平沢進「…………」

平沢進「…では、何方かと言えばまく方向で」

翠星石「よし来た…合点承知之助……ですぅ!」

パァアアアッ!!
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:34:05.43 ID:MKCHY0w30
「…ふぅ〜っ!」

翠星石「改めて…!!薔薇乙女第三ドール、翠星石!!いざ参る、ですぅ!共に行くですよ、ヒラサワ!」

平沢進「…光と共に蛇か蜘蛛かのごとき不完全変体が始まったりしておらず安堵」
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:35:04.82 ID:MKCHY0w30
翠星石「すかさず!…スィドリーム!最後の力で世界樹の枝を呼ぶですぅ!」パアァ…

水銀燈「きゃ……ちっ!」バッ

翠星石「今です!…ヒラ…サワ!超特急で…ネジをまくですぅ」

平沢進「はいはい」キリキリ…

翠星石「…はふ〜っ!翠星石、かんぜんふっかつ!ですぅ!今までと同じだと思うなですよ、水銀燈!」

水銀燈「…あーあ、契約しちゃったの。残念ねぇ、えっと…」

平沢進「コール、ヒラサワ」

水銀燈「そう、平沢さぁん。悪いけど、頭抱えて伏せてたとしても命の保証は出来なくなったわぁ」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:35:42.86 ID:MKCHY0w30
翠星石「って翠星石の話を聞けですぅ!…心配するなです、ヒラサワ!代わりに翠星石が命の保証をするですよ!ケガの保証までは…ビミョーですけど!」

平沢進「人形保険会社のCMか何か?生憎と間に合っておりますので」

翠星石「ちげーです!セールス文句とかじゃねーです!…んじゃ、ホンキでいくですよ…スィドリームっ!!」

ドバァアアアッ!!

翠星石「おお〜っ!そうです、これです!これぞ翠星石の実力ですぅ!」

平沢進「うわっ。我が家が紛うことなき密林の巨木の仮住まいに。実に嘆かわしい」
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:36:20.47 ID:MKCHY0w30
翠星石「嘆いてる場合じゃねーですよ!後でちゃんと消しますから気にすんなですぅ。さあ、これで水銀燈をぐるぐる巻きに縛り上げてけちょんけちょんにしてやるです!」

水銀燈(…ふぅん。契約して、蔦の量も力もかなり増したわね)

水銀燈「けど…面倒になるとは言ったけどぉ、厄介だとは言ってないのよぉ?」ゴオッ

翠星石「ふん!強がりですね!ヒラサワと翠星石が契約したいま、誰も翠星石を止めることなんて…!」

ズバッ!! ズバッズバッ!!

翠星石「……へ?」

水銀燈「…いくら大きくても、草はただの草なんだからぁ」

翠星石「え…!そんな…」
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:38:05.35 ID:MKCHY0w30
翠星石「し…信じられねーです…!契約もしてないドールが、世界樹の枝をこんなふうに切り倒せるはずが……!」

水銀燈「うふふ…だから、格が違うと言ったでしょう?」

翠星石「くっ…!でも、今ならスタミナに気を遣う事もねーです!ほら、スィドリーム!葉っぱで目くらましですぅ!」

水銀燈「目くらまし?まったく、地味な手ねぇ」

翠星石「何とでも言えです!(この隙に大きな枝で狙いをつけて…!)」

水銀燈「させないわよぉ」ブオッ

翠星石「どわぁっ!?風圧で葉っぱが全部っ…!?」
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:39:07.03 ID:MKCHY0w30
水銀燈「はい、じゃあねぇ」ドスッ

翠星石「うわっとぉっあぶなぁっ!あっ!翠星石のヴェールが…!てめぇよくもっ!」

水銀燈「…ちょこまかと鬱陶しいわねぇ。羽根で部屋ごとぜーんぶ吹き飛ばしてあげようかしら」バサバサ…

平沢進「えー」

翠星石「!!させるか、ですぅ!世界樹の枝を根本から伸ばせば、そのくらいっ…!」ズゥッ

水銀燈「あら、なかなかやるじゃない。拡散した羽だと威力がちょっと足りなかったかしら?でもちょっと力を込めればぁ…」

翠星石「うそっ!?これでも受け切れないなんて…っ…あっ、危な…!ヒラサワの楽器が…!」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:39:36.82 ID:MKCHY0w30
水銀燈「…それを護ってるの?」ニヤ

翠星石「え?…あっ!」

平沢進「……」

水銀燈「アハハ…自分で弱味をバラしちゃうなんて。だからアナタはダメなのよぉ!」ゴオッ

翠星石「ス、スィドリームっ!!如雨露をお水で満たしておくれ…甘ぁいお水で満たしておくれ…超特急で!ですぅ!」パァアアア

水銀燈「喰らいなさぁい」翠星石「ガードするですっ!」

ドバァアアアッ!! ドス!!ドスドスッ!!
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:40:11.70 ID:MKCHY0w30
翠星石「ふひー、なんとか護りきれ…っ!?」

水銀燈「隙だらけよ、おバカさぁん」ドカッ

翠星石「どへっ!痛っ…!」

水銀燈「吹き飛びなさぁい」ブオッ

翠星石「どわぁああっ!?」

平沢進「あ」

翠星石「べふっ!…ひ、ヒラサワ…もう少し優しく受け止めるですぅ」

平沢進「ヒラサワの動体視力に過度な期待は禁物。ついでに腕力も十人並以上の筋持久力を予想すべきでない」
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:41:50.96 ID:MKCHY0w30
翠星石「わかったです、ブルーカラー的な期待はしないようにするですよ!…けほっ…とりあえずありがとです、ヒラサワ」スタッ

水銀燈「うふふ…こんなカンタンな罠にハマるなんてね。やっぱり、ドールズにとって契約者なんてただの重石だわ」

平沢進「小煩い人形を鎮めるには五、六十キロの重石ぐらいでは足りないので。もう少しストーン的なものが欲しいほど」

水銀燈「あ、そ。…何だか調子狂うわねぇ。…じゃあ、私がその子に乗っかれば丁度いいかしらぁ?」

翠星石「ちょ、ちょっとヒラサワ!翠星石が頑張ってる時に茶化すんじゃねーですぅ!」

平沢進「茶化したつもりはそこまで無かった」

翠星石「多少あるんじゃねーですか!まったく……」
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:43:27.38 ID:MKCHY0w30
翠星石「しっかし…契約した全力の翠星石が、こんなに歯が立たないなんておかし…」

翠星石「…「おかし」?あっ、そうだ!やっぱりヒラサワが食べなさすぎなのがダメなんですぅ!!ほら、このスコーン全部食ってしゃっきり目ん玉開けやがれですぅ!玄米じゃアリスゲームには勝てねぇですよ!」

水銀燈「はあ?あのねぇ、菓子でアリスゲームが左右されたら苦労しないのよ」

平沢進「私もあのねぇ…と言いたいところだが癪なことに腹の虫が重い腰を上げ渋々ながら頷いている。ヒラサワは仕方なしに目の前の三角菓子に手を伸ばす」

翠星石「おおっ?力がさっきよりずっと高まったですぅ!さすが翠星石特製のスコーンですぅ!これなら……!!」

水銀燈「……下手な冗談に付き合うほど私は暇じゃないのよぉ?遊びにも飽きてきたし…いい加減に終わらせてあげるっ!」

ドバァアアアッ!! …チャララン♪
ズバァアアッ!!
ガキィイン!!

水銀燈「…!」

翠星石「え!?…や、やった!!水銀燈の攻撃を、初めて真正面から止めた…ですぅ!!」
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:44:28.21 ID:MKCHY0w30
平沢進「何やら同時にそこの窓が絹を裂くような悲鳴と共に崩れ落ちたが。私の心中を代弁してくれたかのよう。…ついでに金色の光明が見えたような気も」

翠星石「す、翠星石の攻撃が余りにも強かったせいですかね!…っていうか、ウソつくなですぅ。テンペンチーが起きてもその仏頂面が変わるとは思えんです」

平沢進「そう。だから今のはヒラサワお得意の比喩」

翠星石「むーっ!それ気にいったですか!?全部それで返されたら翠星石のツッコミする隙間が無くなるですぅ!」

平沢進「それは大助かり」

翠星石「むき〜っ!!」

水銀燈(今の音色は……あの子、一体なんのつもり?)
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:45:51.05 ID:MKCHY0w30
翠星石「それより…水銀燈!見たか見たかーですぅ!!やっぱり翠星石はスゴいんですぅ!この調子で一気に畳み掛けてや…」

水銀燈「煩いわよぉ」ブンッ

翠星石「うわっひゃあ!?あべっ!…ヒラサワ、ちゃんと受け止めるですよ!翠星石の襟首は掴むとこじゃねーです!」

平沢進「余りに短周期なデジャビューの出現にストーンも私も驚嘆の念を隠せず。ノストラダムスだかヨシュアだかの預言書か何かに記されていた確定事項の一種だったのかもしれない」

水銀燈「…………はぁ」

水銀燈「まったく、せっかくノッてきたところだったのに。横槍が入るなんてね。…興が醒めちゃったわ」フワー
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:47:34.34 ID:MKCHY0w30
翠星石「え?…に、逃げるですか!?勝負はまだついてねーですよ!さっきのこと謝れですぅ!このヒキョー者!!」

水銀燈「はいはい。摘まれるのを待つだけの蕾が喚いたところで、気にする剪定者は居ないものよ。特にそれが、取るに足らない小さなものならねぇ」

翠星石「うるせ……!」

翠星石「ん…!えーとえーと、もっと優雅に…」

翠星石「…どんなに小さくても、蕾の声を聴くのも庭師の大事な能力ですぅ!葉や枝の声も聴けねぇ真っ黒くろすけには解らねーかもしれねーですけど!」

水銀燈「…へえ。少しは言葉を憶えてくれたみたいで、姉として嬉しいわよぉ。礼儀はまだ全然足りてないみたいだけど。じゃあねぇ」

平沢進「またこんど」

水銀燈「…また会いたいの?本当におかしなヒトねぇ」

翠星石「ふん!もう二度と会いたくねーですこんちくしょー!」

水銀燈「貴女には聞いてないわよ。…ふん」ビュオオッ
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:49:59.25 ID:MKCHY0w30
翠星石「…ホントに行っちまったですぅ」

平沢進「そのようで」

翠星石「……」ポカーン

平沢進「しかし、水銀の化身の割に硬派ならぬ硬羽という中々ソリッドな表現方法を用いる人形で。おかげであろるの館が鴉のそれと見紛うようなくらぁーい館に様変わり」

翠星石「……」

平沢進「…え。何顔のパーツをシリアスverに取り替えたかのごとく神妙な表情になってるの」

翠星石「うるせーです!翠星石だってたまには真面目な顔もするですぅ!ふぅー……」

翠星石「………ぃいやったああああああーーですぅ!!!」ピョーン

平沢進「うわっ。やかましい。あ、今のは挨拶ではない」

翠星石「翠星石が!この翠星石が!!あの水銀燈を追い返したですぅ!信じられねーですぅ!!」
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:51:37.35 ID:MKCHY0w30
平沢進「やはり自分も自身を疑わしく思っていたと」

翠星石「ぎくっ。…まあ、ちょびっとだけですぅ、ちょびっとだけ!翠星石の能力は攻撃向きじゃありませんし、水銀燈は真紅ともタメを張るようなヤツですし…」

翠星石「あの時は集中してて分かりませんでしたが、思い返すとアイツ全然本気を出してなかったみたいですし…気まぐれか何か知らねーですが撤退してくれて助かったですぅ」

平沢進「逃げるなと煽り文句を飛ばした癖してよくもまあ」

翠星石「あ、あれは怒ってたので仕方ねーんです!」
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:52:50.84 ID:MKCHY0w30
翠星石「…なにはともあれ!無事で済んだんですから結果オーライですぅ」

翠星石「それに、あんな風に世界樹の枝まで次々繰り出せられたなんて驚き桃の木ですぅ。やっぱり、ヒラサワと契約したのはラッキーでしたね!」

平沢進「こちらは荒めの人形劇を観ているだけで腹の虫が暴れだしたためかなりアンラッキーな状態に。空きっ腹という加護を与える指輪など、今時どの界隈でも流行らない」

翠星石「あー、それは翠星石が力をたくさん使ったからですね。でも、普通だったらもっとよろよろしててもおかしくないんですよ?お腹がすいたぐらいで済んで、やっぱそっちもラッキーですぅ!契約者の身体を慮る翠星石に感謝するですよ」

平沢進「腹の虫を衰弱させる能力を発揮されて感謝するほどに私は被虐的思想に染まってはおらず。ついでに私はまだ慮られるほどに足腰が衰弱しているわけではない」
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:54:17.34 ID:MKCHY0w30
翠星石「もーまたひねくれて…そんなら、明日の朝はベーグル焼いてやるです。翠星石特製の美味しくて栄養たっぷりの甘々ベーグルですよ!それを食べれば、きっとヒラサワも元気ハツラツ間違いなしですぅ!」

平沢進「えー」

翠星石「えーじゃねぇです!さっきのスコーン美味しかったですよね?ふふん、聞かなくてもわかるですよ!なにせこの翠星石が作ったんですから!ベーグルもおんなじぐらい美味しいのを作ってやるから期待しとけですぅ!」

平沢進「腹の虫がさっそく早朝の胃もたれの気配に怯えている。今のうちから社会的な信用の薄い神仏に一応の祈りを捧げておくべきか」

翠星石「ベーグルで胃もたれとか古今東西に至るまで聞いたことねーですぅ!無用な心配のほうが胃にダメージを負うですよ」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:56:16.21 ID:MKCHY0w30
翠星石「まったく…ふぁあ〜あ」

翠星石「……頑張ったのでなんだか眠くなってきたですね。ココアでも飲んで、もう今日は寝るですぅ」

平沢進「あ、そう。では、これ」スッ

翠星石「え?あ、ありがとですぅ…これホントにココアですか?甘い匂いのするコーヒーとかじゃねーでしょうね」

平沢進「そんな食品添加物を溶解度以上に溶かし込んだような飲料は我が家にはない。香水を角砂糖の代わりに使うような習慣もこの地域には伝わっていない」

翠星石「………信じますよ?じゃ…」ゴク…

翠星石「…え!?ホントに普通に美味しいココアですぅ!」

平沢進「驚愕するポイントが明らかに異常。人形の劇中描写的誇大表現だとしても不自然」

翠星石「いや、だってヒラサワが素直にココアをくれるなんて…」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:57:30.35 ID:MKCHY0w30
翠星石(……もしかして、ヒラサワの楽器を守ったお礼なんでしょうか…やっぱヘンだけど良いところあるじゃねーですか)

平沢進「黙り込む人形に不気味さを感じるようになるとは。完全に薔薇蔓人形たちの毒棘に規定観念を毒された模様」

翠星石「う、うるせーです。翠星石だって時には黙って考えるんですぅ。考えたこと何でも口にだす訳じゃねーんですぅ」

平沢進「へえ。人形の口と電子頭脳は脊椎反射の如く打てば取り敢えず響く仕組みで繋がっているのかと」

翠星石「失敬ですね!ちゃんと考えて喋ってるですよ。翠星石のこの小さく見える頭脳には外からは分からなくても無限の可能性が詰まってるんですぅ!」

平沢進「……」

翠星石「そんな顔するなですぅ!はいはい無限は言い過ぎでした!」

平沢進「分かればよろしい」

翠星石「む〜…」
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 21:59:38.14 ID:MKCHY0w30
翠星石「はあ。じゃあもう寝るです。おやす…」

平沢進「あ、そういえば」

翠星石「ん?まだ何かあるですか?」

平沢進「翠の人形の手許にゲームの参加チケットはあるようだが、今のところ受け手ばかり。この度ヒラサワという糧食を得た訳だが、攻め手に回ろうという気分はおありか?」

翠星石「…つまり、アリスゲームに参加する気があるのか、って事です?」

平沢進「人形語に訳すると、そう」

翠星石「…翠星石は他のドールを倒すつもりはねーです。アリスに成りたくないわけじゃないですが…姉妹を倒してまで成りたいなんて思わねーんです」

平沢進「へえ」
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 22:05:15.22 ID:MKCHY0w30
翠星石「アリスゲームは、お父様が考え出した闘いですぅ。だから従うのが当然…と思っている姉妹もいるかもです。でも、翠星石にはよく分からないんです。あんなに優しかったお父様が、ただ闘うように命じるなんて…」

平沢進「……」

翠星石「分からないままで、姉妹を倒してしまうなんて取り返しのつかないことをしたくねーんですぅ。…それにアリスゲームを完遂しようとしたら、蒼星石も倒すことになるです」

翠星石「出来る出来ないかは置いといて、翠星石はそれだけは絶対ぜったい何があろうとしないです。…それに、翠星石はケンカがもともときらいですし!」

平沢進「なるほど」

翠星石「ええっと……あとは…」

翠星石「…ヒラサワはどうしたいですか?」
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 22:05:55.06 ID:MKCHY0w30
翠星石「…アリスを目指すために闘うって契約者が言うなら、翠星石は……」

平沢進「御免こうむる。アリスとかいう者を待つのは奇妙奇天烈なお茶会の出席者だけでよろしい。私はそうした茶会に出席する気はさらさらない」

翠星石「…ぷっ」

平沢進「はい?」

翠星石「いや…どうせんなこと言うだろうなーと思ってただけですぅ!あははは!!」

平沢進「…あ、そう」
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 22:06:54.95 ID:MKCHY0w30
翠星石「あはははっ……こほん。てなワケで、ヒラサワ。志も大いに語ったことですし改めてよろしくですぅ!ほら、握手しましょう、あくしゅ!」

平沢進「はい。よろしく」

翠星石「よろ……って!何でストーンの脚を代わりに差し出してるですか!!ストーンをマスターにした憶えはねーですぅ!」

平沢進「いや、ストーンがミクロな活動電位で、日頃の奉仕に対する感謝の念を伝えたいと言ってきたので」

翠星石「んなこと後でいーですぅ!はいはい、ストーンどーもですっ…と!さあ、ヒラサワ!握手するです!」
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 22:07:28.13 ID:MKCHY0w30
平沢進「残念ながら左手にはストーン、右手にはソリッド・エアーが握られている為人形が手を出す隙間は存在しない」

翠星石「む〜…こういうとこはどこまでいってもカタクナなやろーですね…こうなったら…えーいっ!」バッ

平沢進「うわっ」

翠星石「ふっふーん!翠星石のオリンピック並の大ジャンプ、大・大・大成功ですぅ!」プラーン

平沢進「ヒラサワの右手はジャンプ時にその身を揺らす背面跳び棒でなければ人形劇に用いられる操り棒でもない。…因みに公園のぶら下がり棒でもない」
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 22:07:58.26 ID:MKCHY0w30
翠星石「ち、ちげーですよ!遊びじゃねーです!結果としてぶら下がっちまってるだけですぅ!これは握手ですよ!心からの握手!」プラーン

平沢進「へえ、そう」

翠星石「そうなんです!!」

平沢進「ふーん」

翠星石「むー…」

翠星石「…ちょっと締まらないですが…とにかく!これからもよろしくですよ!ヒラサワ!」プラーン

平沢進「はい」
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 22:09:13.84 ID:MKCHY0w30
…………
バサバサ…

水銀燈「……」ストッ

水銀燈「………!」キョロキョロ

水銀燈「…いたわね。金糸雀、貴女一体どういうつもり?」

金糸雀「あら、水銀燈?お久しぶりね。どういうつもり…って、一体な〜んのことかしら?」

水銀燈「惚けないでよ。さっき私のジャマをしたでしょ?」

水銀燈「アリスゲームに明白な決め事があるわけじゃないけれど…。無粋な横槍を入れたんだから、何かよっぽどの理由があるんでしょうね。言い訳は無いのかしら?」

金糸雀「カナは何のことだかさっぱりなのかしらー?アリスゲームに手を出した覚えなんてこれっぽちもないものー」
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 22:10:13.77 ID:MKCHY0w30
水銀燈「は?貴女ねぇ……」

金糸雀「知ーらない♪ 知ーらない♪ 知ーらないのかしら♪」

水銀燈「ああもう煩いったら…はぁ。まあいいわ。メインディッシュを先に頂いて、他をデザートとして取っておくのも悪くないかもね」

金糸雀「うんうん!それがいいのかしら!(ゴメンね真紅!)」

水銀燈「ちっ…。まったく、偉そうな顔しちゃって」バサッ

金糸雀「またねー!かしら!」

水銀燈「…貴女も?…今日はホントにスッキリしないわねぇ」ヒューン
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 22:11:06.14 ID:MKCHY0w30
金糸雀「………」

金糸雀「行っちゃったわね…ふぅ」

金糸雀「他人のアリスゲームに手を出すつもりはなかったけど…」

金糸雀「あの歌手さんの楽器に傷がつくと思うと…つい手が出ちゃったのかしら。やっぱりカナも音楽を嗜む者として、無用に楽器が傷つく様は見ていられないのよ…」

金糸雀「…あ!でもよく考えたらカナがあの楽器の時間のゼンマイを戻すだけで、いくらでも直せたのかしら…」

金糸雀「いやでも、直せるなら壊れてもいいってわけじゃないし…うーー!!」

金糸雀「頭がこんがらがってきたのかしら!今日のところはひとまず退散なのかしら!翠星石、またまた運を拾ったわね!カナは必ず帰ってくるわよ!!」ヒューン
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 22:11:57.60 ID:MKCHY0w30
一旦ここまでです
今回はホントに微妙な気がするので好きにご批判ご意見ご質問お願いします
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 22:20:37.95 ID:DvRL/4DY0
楽器っていうからレーザーハープかテスラコイルでも壊れるところだったのかと
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 22:23:11.22 ID:wm7/DpKko
掛け合いほんとすき
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 22:23:21.57 ID:MKCHY0w30
レーザーハープとかのつもりでしたすみません描写不足で…
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 22:34:19.50 ID:KmlSfUQMO
師匠普通にベースとか使ってなかったっけ
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:42:02.78 ID:a3eHqZPHo
タルボとかいうマニアックなチョイスのギターを重い重いと文句言いながら長年愛用してたゾ
今は何使ってたっけ
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 07:11:33.42 ID:TgMb+aeTO
アルミ製品のあとにもなんか作ったって自慢してた気がするんだが何だっけな
光子だっけ
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 10:23:33.62 ID:Ye81isPN0
光子(フォトン)というギターを今は使ってらっしゃる…のかな?すみません勉強不足で…
平沢さんは謎の多機能シンセなど普通の楽器も使ってるんですが、一目で楽器だと分からないものの印象が強くて頭の中では全部そっちのイメージで書いてました申し訳ない…
ということで短いですがちょっとだけ再開します
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 10:24:15.78 ID:Ye81isPN0
翠星石「…これで終わりです…っと!」

翠星石「ふひー。ようやっと水銀燈の羽の掃除が終わったです。まったく、帰った後にも面倒事を残すなんてとんでもないヤローですね」

翠星石「あとはこの窓…んー、真紅か金糸雀にしか直せないですが…金糸雀はアレですし、真紅に声掛けるしかねぇですか…」

平沢進「普通に修理屋を呼ぶという手もある」ヌッ

翠星石「どわぁっ!?びっくりしたです……でも、それじゃヒラサワが損ばっかりじゃねーですか。こっちは悪くないのに、損だけするなんてゴメンですぅ」
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 10:24:49.89 ID:Ye81isPN0
平沢進「世の中は損得が等価分に分かれて分配されるわけではないので。損がたまにこちらへその無邪気な顔を向けてきたところで致し方ない」

翠星石「ふーん…そんなもんですかね」

平沢進「そんなもの」

翠星石「…じゃあ、窓はとりあえず修理屋ってことにしとくですか。水銀燈のヤツ!後で覚えとけですよ」

平沢進「窓は翠の人形が割ったとか言ってたような」

翠星石「ぎくっ!それは気のせいです!気のせい!」

平沢進「あそう。では気という曖昧模糊な漂流物の所為ということで」
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 10:25:43.12 ID:Ye81isPN0
翠星石「うんうん!そうです!窓は割れるためにあるんですから仕方ねーです!」

平沢進「割れるために生まれてきたとは一体どんな業を背負ってきたというのか。一度教会にて精算すべき罪の見積もりをすべきかもしれない」

翠星石「そ、そこまでは必要ねーですぅ。窓一枚直すのにいくらかかるかの電気屋でのお見積もりで十分ですぅ」

平沢進「まあ、確かに」

翠星石「えーっと、あとは…あ、そうでした!そこの多肉植物が鉢からはみ出てかけてるですぅ。翠星石も手伝うので一緒に植え替えをするですよ。…ヒラサワ、植え替えの仕方とか分かるですよね?」
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 10:26:38.87 ID:Ye81isPN0
平沢進「失敬な。でなければ我が家に植え物がこれほどに居座るはずもなく」

翠星石「そりゃそうですね。じゃあ、さっそくスコップと土を持ってくるですぅ。あと、大きめの鉢植と…」

平沢進「はあ。しかし多肉食な植え物の糧食は既に尽きてしまっていたような」

翠星石「あ、もう土がねーんですか。多肉植物は必要な土が特殊ですから、代用するわけにも行きませんし…うーんと」

平沢進「では、また後日にということで」

翠星石「むっ!それはダメですぅ!後日だとか言ってると気づいたら一年後とかになってるのは良くあることですぅ!ヒトにとって一年はあっという間なんですから!」

平沢進「いや、植え替えという些事を一年間意識外に置くというのは良くあることではない」
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 10:27:11.66 ID:Ye81isPN0
翠星石「問答無用ですぅ!こうなったら、何としてでも今日、この子のおうちを新調してやるですぅ!えーとえーと…」

平沢進「その合金鋼かのごとき強情さだけは称賛に値する」

翠星石「うーん……って!悩む必要なんてなかったですぅ!」

平沢進「はあ。そのまま悩み続ければいつか植え物の裏にある緑色の真理に到達できたかもしれないというのに」

翠星石「真理なんて知る気はさらさらねーですぅ!そんなもん知ってもまた他のことで悩み出すに違いねーです…って、んな話じゃなかったです!」

翠星石「ふっふーん。今から普通に買いに行けばいいんですよ!あのヘンテコ自転車に乗って!」

平沢進「…それも即時即応という真理の一形態かもしれない」
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 10:29:24.85 ID:Ye81isPN0
ホームセンター
ガヤガヤ……
翠星石「むーっ!何ですか、このカゴは!外がぜんぜん見えねーじゃねーですか!」ヒソヒソ

平沢進「何って、買い物カゴ」

翠星石「むきーっ!翠星石は売り物じゃねーです!」

平沢進「衆目の中に人形を抱えたおっさんを晒す気はないので。それに、カゴの網目から目を凝らせばモノが見えないということもないだろう」

翠星石「そりゃ、ちょびっとは見えますけど…んー!やっぱ詳しくは見えねーです!これじゃ、せっかく来たのに土やら何やらのアドバイスができねーじゃねーですか!」
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 10:30:24.02 ID:Ye81isPN0
平沢進「いや、普通にこうしてカゴに入れたものの説明を読めばいいだけなのでは」ガサッ

翠星石「……あ。そうですね。確かにそれで事足りるですぅ。んーと、1.5Lの『サボテンノビノビ』…ネーミングセンスはともかくとして、これじゃちょっと足りねーんじゃねーですか?」

平沢進「そう。だから二つ買う」ドサッ

翠星石「うわっ!あ、危ねーじゃねーですか!翠星石のパーソナルスペースをもう少し尊重するですぅ」

平沢進「カゴ一つ程度の個人領域を尊重するほどに私は器用ではない。せめて部屋一つ分程度の幅をとるべき」

翠星石「今の翠星石にはここが部屋なんですから仕方ねーです!…えーと、鉢植えはあそこのクリーム色のがいいですぅ。あの色合いならヒラサワの館に合うハズですよ!」
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 10:31:30.16 ID:Ye81isPN0
平沢進「あ、そう」ガサッ

翠星石「どわっ!ま、前が見えねーです!翠星石の頭は鉢植え掛け棒じゃねーです!」

平沢進「うわっ。カゴの中に何やら見慣れぬ新人形が。これはお洒落気取りの高慢な門番として知られる…ノーム?」

翠星石「むきーっ!!自分でやっといて驚いたフリすんなですぅ!翠星石をあんなサンタもどきと同列に語るなですぅ!」

平沢進「お静かに。レジストリならぬキャッシュ・レジスターが近づいてきたので、喋るまじない人形から物言わぬ普通人形に戻りたまえ。ついでに隣の麦藁カゴに逃避したまえ」

翠星石「はいはい、分かってるですぅ!隙を見計らって……とお!」ピョン

平沢進「はい、良くできました」
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 10:32:44.72 ID:Ye81isPN0
「ありがとうございましたー」
ピンポンピンポーン…

翠星石「…ふぅ。任務達成ですね!ヒラサワ!」

平沢進「お静かに。私は衆目の中で一人で亡霊に健気に話しかける自閉症的霊能力老人の演技をする気はない。すれ違う人々に「お気はたしかか?」という目で見られることで心の安寧を得るタイプの人間でもない」

翠星石「わ、分かったですよ。…でも、あの自転車に乗ってるだけでもビミョーに衆目を集めてる気がするですぅ。というか確実に二度見されてるですぅ」

平沢進「人とは、自らの知りえないものは存在して欲しくないために、二度見ることでそれらを既知の存在へと作り変えるのだから当然。一度見た時は知らぬものでも、パッと振り向いて見直せばそれは既に知っているものとなる」

翠星石「えー、そんな屁理屈考えてるとは思えねーですけど…。とにかく、あんまり目立っていいことはねーですからね。この辺りに他のローゼンメイデンが来てないって保証はねーんですし…」
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 10:35:37.48 ID:Ye81isPN0
「ありがとうございました〜」
チャランチャラン♪…

「うにゅー!うにゅーなのっ!ヒナ、早く食べたいのーっ!」

「ひ、ヒナちゃん!ちょっと静かにしてね。ほら、みんなこっち見てるからっ!し、視線が痛いよぉー」

「あっ!のり、ご、ごめんなさいなの!ヒナ、ちゃんとお家まで我慢するの…」

「うふふ…えらいわね、ヒナちゃん。じゃあ早く帰らないとねっ」

「!…はーいなの!しゅっぱつしんこー!なのーっ!」

ワイワイキャッキャッ…


平沢進「…あ」翠星石「…え?」
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 10:36:42.56 ID:Ye81isPN0
一旦ここまでです なんて短いんだ…(呆れ)
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 12:20:29.21 ID:MDhZNZiqO
積み重ねることが大事なのである
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 12:22:54.60 ID:jwcHuTd+o
大丈夫。うちのスレよりよっぽど速い
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 12:57:01.49 ID:yTuktwA80
とても短くて恐縮ですがちょっとだけ更新します
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 12:57:34.21 ID:yTuktwA80
のり「ひ、ヒナちゃん、また声が大きくなってるわよ!ほら、しー!しーっ!」

雛苺「あっ!ご、ごめんなの!お家までお口にチャックするのー!」

……

平沢進「へえ。あれが例のキリシタンの苺と」

翠星石「ええ。あんなうるせーのチビ苺しかいねぇですぅ。一緒にいるのは…指輪はしてないので契約者本人ではないみたいですね。ということは、契約者の友達とか、家族とか…?」

平沢進「苺の苗床が何処だろうと誰であろうとそこまで大きな問題というわけではない。では帰るとし…」

翠星石「…いや!待つです、ヒラサワ!」
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 12:58:13.94 ID:yTuktwA80
平沢進「いや、待たない」

翠星石「いいから待つです!これはチャンスですぅ!雛苺がアリスゲームをやる気があるかは…正直ギモンですが、一応確かめてみるべきですよ。その気がないとはっきり分かれば、チビ苺については何にも気にしなくて済むようになりますし」

平沢進「はあ。もしも大人しく引き下がらず、積極的にその毒蔓の先を向けてきたら?」

翠星石「えーっと、その時は……適当にあしらって帰るです!流石に翠星石はチビ苺ぐらいに遅れは取らねーです。ちょちょいのちょいではっ倒してやるですよ」

翠星石「そこで、もう近寄るんじゃねーですよ、って言って放ってくれば、たぶんもう万事OKになるはず…」

平沢進「なるほど。一分以上の隙のあるごく普通の作戦」

翠星石「イヤミ言うなですぅ!とにかく、話をしてみないと分からねーことなんですから。…でも、こんな人の多いところじゃムリですね。絶対他のヤツに気づかれるですぅ」
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 12:58:50.07 ID:yTuktwA80
平沢進「私にも、観客も演者も揃った文字通りの人形劇を白昼から行う気はない。そういうものは劇場か、近世に生まれた新興邪教TVにて行うべき。若干最近は廃れ気味だけど」

翠星石「そりゃそうですぅ。うーん、じゃ、人気の少ない所に移動するのを待ちましょうか…」

平沢進「平然と準犯罪的思想を持ち出す人形に戦慄」

翠星石「う、うるせーです!翠星石はハンザイ者じゃ……ん、ハンザイ?……あっ!名案を思いついたですぅ!」

平沢進「うわっ。この底意地の悪い面は明らかに犯罪行為に赴く直前の前科者」

翠星石「ち、ちげーですって!…でも、今回はそこまで外れてないのがビミョーに癪ですぅ。だからといって、ハンザイを犯すわけじゃねーですよ。どちらかと言えばええと……そう!探偵!探偵の真似をするですよ!」
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 12:59:29.62 ID:yTuktwA80
平沢進「浮気調査か何か?」

翠星石「んな安っぽいもんじゃねーです!尾行ですよ、尾行!雛苺たちのアジトを見つけ出してやるんですぅ。契約者の顔まで知っちまえば雛苺はもう棘を抜かれたサボテンですよ!戦場においては常に先手を取ったものが勝利者となるのです!」

平沢進「戦地よりもやはり浮気調査に近しいものを感じる。しかし、コレで追うのか。凄まじく気も足も進まないが」

翠星石「うー、確かにリカン弁当は隠密性はマイナスですけど…今は追いかけられる足がそれしか無いんですから。大丈夫、きっと上手くいくです。翠星石と天運に任せとけですぅ!」

平沢進「どちらも甚だ疑わしい。あとリカンベント」
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:00:31.54 ID:yTuktwA80
のり「ふんふんふふーん…♪」

雛苺「…のり、すごいゴキゲンなの。そんなに嬉しい?」ヒソヒソ

のり「え?…ええ!ジュンくんが友達を家に連れてきたなんて本当に久しぶりだから…。それに、トモエちゃんはずっと昔から仲良くしてくれてた子だもの。ヒナちゃんも嬉しいでしょ?」

雛苺「うん!ヒナも嬉しいの!トモエが来てくれたのも、それでのりが喜んでくれてるのも、とってもとっても嬉しいのー!」

のり「あらあら、もー!ヒナちゃんったらかわいいんだから〜」

…………

翠星石「…ヒラサワ!いい調子ですよ!あっちは急ぐとか何とか言っといてやたらのんびりしてますから着いてくだけなら余裕ですぅ!あとはバレないようにさえしてれば万事オッケーですね」

平沢進「しかし、バレないようにする努力のしようがない。現状のように一本道で追いかけるとなれば、いかに隠遁行為を行おうとしたところで振り向かれれば終幕。壁の中に隠遁する術を人形が備えているとかなら別だけど」

翠星石「そんなジュツねーです!それに、ここまで来たのに…。あんぱんも買って探偵気分上々なんですよ?今さら諦められるわけないですぅ」
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:01:07.19 ID:yTuktwA80
平沢進「餡の詰まった蒸した小麦粉は探偵の象徴にあらず。どちらかと言えば錆び付いた価値観に基づいた刑事事件のセオリーであって」

翠星石「探偵も刑事も犯人を追うってことではそんな変わらねーからいいんですよ!今の翠星石は、ホームズやらとタメを張るレベルの超有名探偵気分爆発中なんですから水さすなです!初歩的なことだよ、ワトソンくん …ですぅ!」

平沢進「やかましい。ワトスンかもしれない助手と舞台で公然と量産された決め台詞について苦悩する時間帯ではない。しかもその声量では苺の蔓センサーに引っかかる。隠密性を重視すべきとの言はどこへ行ったのか。オハイオあたり?」

翠星石「あっ!し、しまったです!ヒラサワ、そういうのはもっと早く言って…」

雛苺「………うゆ?」クルッ

翠星石「げっ!?」

平沢進「ほらみたことか」
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:03:04.98 ID:yTuktwA80
雛苺「………」( ???? )ジーッ

翠星石(み、見てます!めっちゃ見てるですぅ!)ヒソヒソ

平沢進「なにを動揺しているのか。末妹の視線にビビるとは。特異で複雑な家庭環境だったのなら仕様がないかもしれないが」

翠星石「べ、別にチビ苺にビビってるわけじゃ…!それにアイツは別に末の妹ってわけでもねーですぅ」

平沢進「へえ。あれより幼い妹がいるとしたら最早嬰児なのではなかろうか」

翠星石「たしかに…じゃねーです!確かにチビ苺はお子ちゃま並のトントンチキですけど、流石に赤ん坊並の妹とかはいねーですよ!というかローゼンメイデンは別に姉妹で見た目年齢の順番になってるわけでもねーですし!」
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:03:53.58 ID:yTuktwA80
平沢進「姉妹に対し、コンビニに行くような手軽さで暴言を吐く人形に閉口。やはり特異で歪んだ家庭環境だったのだろうか」

翠星石「ひ、ヒラサワが言い出したことじゃねーですか!ぜんぶ翠星石のせいにすんなです!」

平沢進「………」

翠星石「って!文字通り閉口してんじゃねーですぅ!む〜っ!」

雛苺「……ゆ……」

翠星石(…って!や、やべーです!んなこと言ってる場合じゃなかったですぅ。アイツ今にも叫びそうです!こうなったら無理やり口封じするしかねーですね!ほら、ヒラサワ!喋れなくなる魔術だか呪術だかを今こそ行使するですぅ!)ヒソヒソ

平沢進「だから私は祈祷師でもなければ陰陽師でもないと。大体、苺がマンドラゴラのごとく叫んだところで怯む理由がない。素知らぬ素振りで通りすがるだけ」
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:05:00.80 ID:yTuktwA80
翠星石(で、でも、もし翠星石に気づいてたら!逆にこっちを追っかけてくるかもですぅ!平凡な街で突然自転車でデッドヒートし始めるなんてゴメンですよ!)ヒソヒソ

平沢進「リカンベントは脳を破裂させる程度の衝撃を受ける代わりにそれなりの速度が出るので大丈夫。今回は脳が二人分乗っているため燃料にも不安はない」

翠星石(何フキツな冗談言ってるですか!そんな場合じゃ…)

雛苺「ゆ……ゆ……!!」

翠星石(あー!もうダメですぅ……!)

雛苺「み、見てのりっ!UMAなのぉっ!!」


翠星石「…はぁ?」平沢進「はい?」
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:05:45.48 ID:yTuktwA80
のり「え?ど、どうしたのヒナちゃん。…あ!すごい乗り物があるわねぇ。あれがどうかしたの?」

翠星石(げっ!やっぱり気づかれ…!?)

雛苺「乗り物じゃないの!あのヘンなのはぜったいゆーまなのっ!まえテレビで見たもん!夕方にこっそり近づいてきて、バクって頭から近くのひとを丸かじりにする、こっわーいオバケなのっ!ジュンもそうだって言ってたもん!」

平沢進「……」

のり「え、ど、どうかな…(もう、ジュンくんったら!)」

のり「あ、あのね!ほら、あそこに人が乗ってるでしょ?私も今まで見たことは無かったけど、ああいう乗り物は外国とかだとたまーに走ってたりするの。だから、テレビやジュンくんが言ってたUMAは、別の人?なんじゃないかな…」

雛苺「えー、だって!鉄の足が二本あって頭をぐるぐる回転させながら襲ってくるオバケだって…!」
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:07:03.43 ID:yTuktwA80
のり「えっと…そ、それなら、自転車やバイクも同じでしょ?」

雛苺「……た、たしかにそうなの…でも!あれは明らかにでぃてぃーるがおかしいのっ!フツーじゃないのっ!」

翠星石「それは確かにですぅ」ボソッ

のり「か、海外のものだと結構信じられないような見た目のものも多いのよー。ほら、虹色のアイスとか、ドーナツとか、大体海外から来たものでしょ?派手だからって別に変なものってわけじゃないんだよー」

平沢進「リカンベントは米国式過剰華美の一種ではない。甚だ心外」ボソッ

雛苺「そ、そうなの……」

雛苺「…分かったの!」クルッ

翠星石「っ!?」ビクッ

雛苺「ヘンだとか言ってごめんなさいなの、UMAさんっ!」

翠星石「……」平沢進「……」
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:07:50.10 ID:yTuktwA80
のり「だ、だからUMAじゃなくってね…って、あっ!」

のり「ひ、ヒナちゃん!また私たち声が大きくなっちゃってる!し、静かにしないと!ね、ねっ!」

雛苺「あっ!ご、ごめんなさいなの!ひ、ヒナもうお家に着くまでお口をぎゅっとおさえて開かないようにするの!」

タッタッタッ…


翠星石「………」

翠星石「……なんか気が抜けたですね」

平沢進「…生気ある人形から気が抜けてはただの人形」
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:08:38.46 ID:yTuktwA80
翠星石「ふー、チビ苺がアホで助かったですぅ。自転車のカタチばっかり騒いで、こっちには全然目が向かなかったですね。あれで気づかれなかったなんて、ちょっと信じ難いですけど…。UMA様々ですぅ」

翠星石「それに、とかなんとか言ってるウチに…契約者の家ってここなんじゃないです?」

平沢進「らしい。たった今桜田という何の変哲もない表札のかかった何の変哲もない館に何の変哲もない人形持ちの娘が入って行ったし」

翠星石「連呼しすぎですぅ。会ったばっかの人を貶しすぎじゃないですか?ヒラサワって苗字だってそこまで変哲があるわけじゃねーですよ」

平沢進「そう。だから何の変哲もないという言葉は陰口ではない。ただの何の変哲もない台詞にすぎない」

翠星石「頭こんがらがるからいい加減やめるですぅ!もう…さてっと。じゃ、ヒラサワ、ちょっと肩借りるですよ」ピョン

平沢進「あ、こら」
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:09:48.99 ID:yTuktwA80
翠星石「うーんっ!…こっからじゃ全然中が見えねーですね…窓にもカーテンが掛かってますし…こうなったら、どうにかして中に入るしかねーです」

翠星石「やっぱりアレですかね?庭から大声で「火事だーっ!!」って叫んでヤツらが慌てて家から飛び出してきたところをふん縛って袋叩きに…」

平沢進「純然たる犯罪的思考を自慢げに披露しだす人形に閉口。AIが社会の人間に触れ知識を吸収すると言動が犯罪者的になるというが、それと同類の現象かも」

翠星石「翠星石をロボットと一緒にするなですぅ!冗談ですよ、冗談!ただ、マンガとかの強盗の手口を真似ただけで…」

平沢進「やはり犯罪者の先触れを覗かせている。それにAIとロボットとは領域がやや重なっているだけで別物である」

翠星石「う、うるせーです!んなこといっても、ピンポン押してはいどうぞ、って入れてくれるはずもありませんし…他に名案があるですか?」
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:10:29.80 ID:yTuktwA80
平沢進「そんなものあるわけがない。ヒラサワはその善良さの余り八百万の神の9割超に忌避される存在なので、犯罪のハの字どころかノの字の気配もない。その証拠に、神の宿るという木や草や水に今まで一度も話しかけられたことがない」

翠星石「んなの当たり前じゃねーですか!また屁理屈で言い逃れようとすんなですぅ!それにヒラサワが善良ですって?ふーんだ、へそが茶を沸かすですぅ!」

平沢進「うわっ。今とうとう人形に話しかけられた。八百万のうちの一柱がついにヒラサワに興味を抱いたとでもいうのか。結構です。できれば人形に望郷の念の如く固執する幼児の前にその姿を現したまえ」

翠星石「うるせーですぅ!突然翠星石を初対面の扱いにするのはやめるですよ!めんどくせーです!…ってあだっ!」ガサッ

翠星石「な、なんですか?なにかに躓いたですぅ!もう、これだから道路を歩くのはイヤなんですぅ…」
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:11:18.87 ID:yTuktwA80
平沢進「…あ。名案がそこに落ちているのを人形に宿る神々の一柱の有り難きお節介により発見」

翠星石「え?これですか?…いちご大福の袋?中身も入ってるです。さっきのヤツが落としていったんですかね」

平沢進「多分。ではそれを貸しなさい」

翠星石「あ、はいですぅ。…どうするですか?それの匂いにつられてチビ苺が飛び出てくるのを待つですか?」

平沢進「んなわけない」ピンポーン

翠星石「ちょ、ヒラサワ…!?」
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:12:13.17 ID:yTuktwA80
タッタッタッ…

のり『は、は〜い!どちら様ですか?』

平沢進「えー、桜田さん。そこで苺と餡のつまった餅の入った袋を落としませんでしたでしょうか。善意に塗れた隣人としてお届けに参りました」

のり『え?あっ!…わ、分かりました!今開けます〜』

翠星石「……えー」

平沢進「えーじゃない。いいからとっとと人形は麦籠に隠れなさい」
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:14:03.73 ID:yTuktwA80
短くて恐縮です
今回もご意見ご批判ご質問何でもどうぞお願いします
頑張ってもっと上手く早く書けるようにしたいです…
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/05(木) 16:07:27.94 ID:3NYEA1RuO
次のライブでは楽器に改造された翠星石の姿が
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/05(木) 16:43:52.28 ID:vVGbZ5x10
めっちゃうるさいなそれ
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/05(木) 21:27:30.27 ID:Rvp7qwvWo
今回のヒラサワもキレッキレだった。乙です

リカンベントを知らなかったからググッたら平沢さんの過去の破壊まとめが出てきたが
デストロイヤーかってくらい物壊しまくってるなこの人wノートPC何回買い直してるんだよw
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/10(火) 08:10:31.91 ID:0EQZQN8v0
ちからつきたか
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/10(火) 08:19:33.40 ID:Jq5DlRAkO
まあこういう文体で長く書くのはキツいだろうしな
滅多に見ないヒラサワSSだから期待してたが…
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/10(火) 12:39:00.22 ID:PkverZU5o
今のところ終わりも見えないからなあ
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/10(火) 12:40:40.12 ID:GGYG+BZ7o
一週間も経たずに急かしてやるなよ
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:49:30.17 ID:kmLxln6h0
ヒラサワ音楽がある限り私は不滅です
ということで再開します
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:50:28.18 ID:kmLxln6h0
ガチャ…
のり「す、すみません!買ってきたばかりなのに、そこで落としちゃったみたいで…私、うっかり屋なので…」

翠星石(今です、ヒラサワ!そいつを突き飛ばして押し入るですぅ!鯖折りを決めてやれですぅ!)

平沢進(お静かに)

平沢進「…まあ、どこぞの食欲に正直な牛の骨か馬の骨に拾われず何よりで。どこぞの人形か何かに踏まれたようで一部分だけ凹んだりしているけれども」

翠星石(…ちょ!?何でわざわざ疑われるようなこと言うですか!しー!ですよ!ヒラサワ!)

平沢進(うるさい)

平沢進「では、どうぞ」
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:50:56.71 ID:kmLxln6h0
のり「あ、ありがとうございます〜!よかった、これでヒナちゃんも泣き止んで…じゃなくて!え、ええっと、とにかく本当に助かりました!」ペコペコ

平沢進「押し付けがましい隣人愛に溢れる現代人としては当然のことなので。はい」チラ

平沢進「……」

平沢進「…そういえば、えー、あなたのとこの姉弟の、えー」

のり「えっ!?……じゅ、ジュンくんですか?」

平沢進「そう。純くん。彼はえー、体調が優れないようで」

のり「え、えっと?は、はい…その…?」
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:51:42.29 ID:kmLxln6h0
平沢進「教育に携わる者として、まあ、多少気掛かりというか」

のり「あ!学校の先生ですか!すみません、わざわざいらしてくださって…」ペコッ

平沢進「はあ。まあ。それで、少し様子を観ておこうかということになりまして」

のり「え!えっと、その…大変申し訳ないんですが、今、その、お客さんが…」

平沢進「お客さん?それはまた厄介な。ただ、少し顔を見るだけなので手間は取らせませんので」

翠星石(心の声が漏れてるですよ!しー!です!ヒラサワ!)

平沢進(やかましい)
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:52:40.00 ID:kmLxln6h0
のり「え、えーっと……で、でしたら!今ジュンくんをここにお呼びしますので…」

平沢進「家庭訪問を玄関先で済ませるほどに病的な怠慢癖を持つ訳では無いので。別にそのお客さんが弟さんの異性交友相手だとしても目録に恨みったらしく記したりはしないので御安心を。…少し上がらせていただくということでよろしい?」

のり「……う〜っと……」

のり「…………」

平沢進「…………」

のり「…わ、分かりました…ちょ、ちょっと、ジュンくんに話してきますねっ!まだちゃんとした格好もしてないと思うのでっ!だとしたら無礼ですからっ!」タッタッタッ…

平沢進「……お客を呼んでいて着替えもしていないということがあるのだろうか。言語を絶する怠け屋とかなら別かもだけど」
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:54:00.06 ID:kmLxln6h0
翠星石「きっと、チビ苺を隠しに行ったんですね。それにしてもヒラサワ!ナイス誤魔化しだったですぅ!よく、休んでる弟がいるって分かったですね」

平沢進「そこになにゆえか男物の中等制服がかかっているとなれば十中十一ぐらいまで弟の存在は確定。しかもそれがどう見てもパリッパリにクーリング・オフされたものだとすれば彼は暫く登校していない不良ということになる」

翠星石「おお〜…すごいです!ヒラサワ、まるで名探偵みたいですよ!あとそれはクリーニングですぅ。…でも、家に入ってからはどうするですか?学校の先生だなんてウソ、すぐにバレるですよ」

平沢進「入ってしまいさえすれば問題は無い。人形さえ見つければ、持ち主達も私を通常の盗賊の如く扱う事は出来まい。闘いを挑んできた場合は、麦籠から奇襲を掛けるべし」

翠星石「おーなるほど…了解ですぅ!ヒラサワがせっかく作ったチャンス、何としてもモノにして見せるですよ!ウソも方便とはこのことですね!」
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:54:59.17 ID:kmLxln6h0
平沢進「ウソツキはヒラサワの始まり。実践的な姿を見せたことで翠の人形のウソツキ癖が強まらぬことを切に願う」

翠星石「なっ…ふーんだ!心配しなくても、翠星石はヒラサワみたいにならねーですよーだ!まったく、せっかく珍しく褒めたのに…」

平沢進「それは一安心。では呼び付けるまで大人しくしているように」スッ

翠星石「わひゃっ!?」スポン

タッタッタッ…

のり「…お、お待たせしました〜!では、どうぞお上がりになってください」

平沢進「はい」
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:56:57.94 ID:kmLxln6h0
ー桜田家応接間ー

ジュン「な、なんだよ…急に先生が来るなんて、聞いてないぞ。まさか、担任のあの人じゃ…」

トモエ「あの人なら有り得るかも。熱血だし。…取り敢えず隣の部屋にいるね」

雛苺「うにゅ〜が戻ってきたのは嬉しいけど…ひ、ヒナも隠れるのっ!トモエ、ヒナを抱っこするのー!」ピョン

トモエ「わっ。…うん。一緒に隠れよう」ギュッ

ジュン「わ、悪いな。すぐ済むと思うから…」

トモエ「うん」雛苺「わかったのー!」タッタッタッ…
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:58:05.58 ID:kmLxln6h0
ジュン「…ふー……落ち着け…」

ジュン「あの人が来たって、もう大丈夫だ。僕はもう変わったんだから…どんな風に、何を言われたって……よし!」バチン

タッタッタッ……

のり「……こ、こちらです〜。どうぞ」

「はあ、どうも」スッ

ジュン「……」ゴクッ

平沢進「こんばんは、ヒラサワです」ヌッ

ジュン「こ、こんば……」

ジュン「…………?」

ジュン「…失礼ですけど…どなたですか?僕、あなたのこと知らないんですけど」

平沢進「でしょうね」

のり「………えっ?」
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:59:00.98 ID:kmLxln6h0
ジュン「もしかして…きょ、教育委員会の人とかですか?」

平沢進「委員会審議的なものとは相応の距離を置いておりまして。過去にそういったものに傾倒していた憶えもございません」

ジュン「え?…って、ことは…僕とどういう…?」

平沢進「まあ。俗に言うと、社会主義的な表現とは違う意味での赤色な他人という関係で」

のり「あ、あれ!?が、学校の先生じゃ…」

平沢進「学業的なものに携わっていたことが無いことも無いと言えないことも無いという表現が、あなたの脳内では学校教師に変換されていたらしく」

ジュン「………」

のり「え?え?…っていうことは、あなたは……」
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:00:38.36 ID:kmLxln6h0
のり「い…居直り強盗!?す、すみません家には特にお値打ちものは置いてなくて!さ、さっき買ったいちご大福ならそこのお皿にありますけど…」

ジュン「バカ!きっとセールスマンだよ!姉ちゃんは騙されやすい顔してるから付け込まれたんだ!それに居直り強盗じゃ意味が違う!」

のり「え!?せ、セールス!?すみません、家には余計なものを買うお金もなくて!ちょっと前にジュンくんがネット通販で買ってきたヘンなものを返品し忘れちゃって…」

ジュン「ちょ!そんなこと言わなくていいだろ!僕らが騙しやすい相手だと思われちゃうだろ!」

平沢進「大丈夫。そちらの方は騙しやすく与しやすい系ジョシだということが玄関先にて既に露呈している」
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:02:21.11 ID:kmLxln6h0
ジュン「あっ、なら大…丈夫じゃない!姉ちゃん、この人に何言ったんだよ!通帳とか印鑑とか持ち出してないだろうな!」

のり「えっ!だ、大丈夫よ、そんなもの見せたりしてないよ…あっ!」

ジュン「え!ど、どうしたんだよ!まさか…」

のり「…通帳と印鑑、前どこにしまったっけ!すっかり忘れちゃった〜!どうしようジュンくん!」

ジュン「はあ!?今そんな話じゃないだろ!」

平沢進「敵宅に侵入したかと思えば、ここは新喜劇の劇場であったか。しかも、テンプレートに沿いすぎて不発ぎみ」ボソッ
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:03:39.21 ID:kmLxln6h0
<ワーワーキャーキャー
雛苺「…うゆ?」

雛苺「せんせー?が来たにしてはすごく楽しそうなのー!ジュンったら、あんなにイヤそうだったのにおかしいのー!」ヒソヒソ

トモエ「確かにおかしいね。それに、私もあの人見たことないし…本当に先生なのかな」

雛苺「え!せんせーじゃないのぉ?じゃあ……居直り強盗っ!?」

トモエ「その言い方は過激だけど…似たようなものかもね。場合によっては、私もジュンくんたちに加勢しようかな。二人とも混乱してるみたいだし」

雛苺「わ、分かったの!ヒナもこっそりここから応援するの!トモエ、ジュンとのりを助けてあげてね!えいえいおー!なのー!」

トモエ「そこまで深刻に考えなくても大丈夫だよ。…でも、頑張ってくるね」スッ
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:05:09.68 ID:kmLxln6h0
ジュン「と、ともかく!僕らは何も買ったりしないからな!ヘンな壺とかネックレスとか売ろうとしても無駄だよ!」

のり「そ、そうだよね!もうヘンなものは十分たくさんあるもんね!」

ジュン「バカ!そういう意味じゃない!あれはネットでまたどこかに流すからいいんだって!」

平沢進「はあ、変なものが足りすぎている。それは大変嘆かわしいことで。しかし案ずるなかれ。多忙で知られる『百足らず様』も、年度の変わり目という繁茂期を切り抜けて居られる。いずれこの館にも訪れ、足りすぎたものを引いて下さるかと」

ジュン「は?百足らず…様?や、やっぱりカルト宗教かなにかの押し売りか!」

平沢進「なんと無礼な。…しかし、ヘンなものの数を引くという程度では『百足らず様』の行動周期上から外れている可能性も。その場合は社会主義的でない赤の他人に押し付けるか、ゴミ収集のおじさんに押し付けるかするとよろしい」

ジュン「は、はあ…って、捨てたりしたら僕の大損じゃないか!そんなこと僕はしないぞ!何としてでもそれなりの値段で赤の他人に押し付けてやる!」


※『百足らず様』大量消費文明社会である現代において、あらゆるものが足りすぎているのにも関わらず何かが足りていないと常に錯覚する人類に警鐘を鳴らすため、あらゆる事物から何かを引いて足りていない状況を作り出す神様。詳しくはwebで
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