「それでは、勇者の面接を始めます」

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1 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:13:37.76 ID:hRbC8D020
行政官「それでは、面接を始めたいと思います。えーっと、その前に一点だけ」

行政官「どうして3人でいらっしゃったんですか?」

若い男「ほら言われた」

戦士「いや、しかしだなあ」

魔法使い「心配だし・・・」

行政官「お答えいただけますか?」

若い男「すみません。彼らは、志同じく共に魔王を打倒すと約束した俺の仲間達です」

大司教「仲間たち?」

若い男「ええ。体の大きい男が戦士。ちっこいのが魔法使いです」

剣聖「この面接を受けるのは、貴様で間違いないのだな?」

若い男「はい」

剣聖「・・・何故、一人で来なかった」

若い男「すみません。俺のことが心配だって言って付いてきちゃったんです」

行政官「ついてきちゃったって」

戦士「こいつが勇者に選ばれるかどうか、この目で結末を確かめにきた」

魔法使い「ごめんなさい、彼は、その・・・なんというか、ちょっと頼りないので・・・心配で」

行政官「ま、まあ、いいでしょう」

行政官「それでは、始めましょうか」


行政官「貴方が新たな勇者たるかどうかを見極める面接を」

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2 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:14:09.28 ID:hRbC8D020

――――――

一組目 若い男と仲間たち

――――――
3 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:14:42.93 ID:hRbC8D020
大司教「あれは、ダメだな。勇者には不適格だ」

行政官「いきなりですね」

大司教「先代勇者はたった一人で、魔王と戦い打倒したのだぞ」

大司教「先ほどの若い男は何だ、仲間だなどと甘っちょろいことを言いおって」

大司教「ピクニック気分で、魔王を討伐できると思っているのではないのか」

行政官「それは、女神正教の大司教としての意見ですか?」

大司教「馬鹿なことを言うな!これは、単なる個人的な意見じゃ」

行政官「なるほど、では記録には残しませんので」

大司教「そうしてくれ。・・・まったく近頃の若い者たちは。勇者を舐めているのか」

剣聖「・・・」

剣聖「・・・いや、大司教。アンタこそ魔王を舐めているんじゃないのか」

大司教「なんだと!?」

行政官「どうどう」

剣聖「・・・アンタも知っているだろう」

剣聖「魔王は復活した」

剣聖「あの勇者との戦いで、確実に致命傷を浴びたはずの男がだ」

大司教「もちろん、知っておるわ。それがどうした」

剣聖「人は失敗を糧に成長する、ならば魔物はどうだ?」

大司教「魔物など・・・人と獣とを同等に比較してどうなるというのだ」

剣聖「獣とて学ぶ、昨日罠にかかった鹿は明日罠を避ける」

剣聖「高位の魔物は、人より優れた知能をもつ。現に魔王はそうであった」
4 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:15:13.79 ID:hRbC8D020
大司教「・・・」

剣聖「死を経験した魔王。ただでさえ厄介な男が、さらに経験を積んだとしたら?」

行政官「魔王は、前回より強くなっていると?」

大司教「なんの根拠もない。ただの推論ではないか」

剣聖「冒険者は常に最悪を想定する。そうしなければ生き残れないからだ」

剣聖「・・・魔王も強くなっている。そう考えて、我々は事に当たるべきだ」

剣聖「なれば、新たな勇者にも更なる力が必要だ」

剣聖「そうだな・・・例えば、常に背中を任せられる仲間とかな」

行政官「一理ありますね」

大司教「・・・ふむ、確かに軽率な発言であったかもしれぬ。すまぬ」

大司教「先代勇者の用いた手段に、新たな勇者が準じる必要はない・・・儂は、先代勇者の成し得た奇跡に目がくらんでいたようじゃな」

剣聖「伝統や慣例に縛られるのは、教会の悪いところだ」

大司教「先ほどのは、儂個人の意見じゃ。教会は関係ないわい・・・」

行政官「剣聖殿は、あの若者を見てどう感じられました?」

行政官「私や大司教様は、戦いに関しては素人ですからね。是非、プロの御意見を承りたいのですが」

剣聖「・・・剣の冴えはなかなかのものだったな」

行政官「ほお」

剣聖「ただし、絶対的な強さを持っているわけではない・・・若いから今後の成長に期待は持てるのだが」

行政官「現時点で言えばどうです?先代勇者と比べて」

剣聖「遥かに劣るな」

行政官「なるほど」
5 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:15:45.61 ID:hRbC8D020
剣聖「一つ二つ死地を繰りぬけることができたなら、あるいは・・・」

剣聖「まあ、勇者として認めて差支えは無いほどの腕前ではあった」

大司教「それって、どれくらいの強さなんじゃ?」

剣聖「・・・やり方次第では前回の魔王から逃げおおせるぐらいはできるやもな」

大司教「・・・それって、すごいのか?」

行政官「さあ?」

剣聖「強さなんて、そう簡単に測れるものではないということだ」

行政官「じゃあまとめると、剣聖殿は勇者として認めて差し支えない。ということでよろしいですか?」

剣聖「そのとおりだ」

大司教「行政官、お主の意見はどうなのだ?」

行政官「私ですか・・・うーん・・・」

行政官「あの若い男には、勇者の印が見当たりませんでしたよね?それが気がかりですね」

剣聖「確かに、あの若者には勇者が持つという鳥型の印はなかったな」

大司教「神託で言われている『勇者の印』か?神託は正直、当てにしてはあかんぞ」

剣聖「・・・大司教のアンタが、それを言うのか」

行政官「神託は私たちが唯一持つ、勇者の身体的特徴を記したものですよ?だいたい、神託を役所に持ち込んだのは教会じゃありませんか」

大司教「神託と言っても、そんな便利なものでは無いからのう」

大司教「神託というものは大抵、いくつかの単語やイメージが降りてくるだけのものじゃ」

大司教「それを、教会の神官共が云々かんぬん言いながら尤もらしい文章に書き起こすからな。誤訳、意訳はあたりまえの世界じゃ」

行政官「えぇ・・・」

大司教「それに、ほら先ほどの若い男じゃが。頬に黒子が三つほど並んでおったろ?」
6 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:16:14.18 ID:hRbC8D020
行政官「確かに、ありましたね」

剣聖「あれを、勇者の印言い張るつもりか・・・」

行政官「ちょっと、無理がありませんか」

大司教「お主らは、夜に空を見上げたことがあるか?」

行政官「そりゃあ、まあ」

大司教「想像してみるがいい、お主らの目には何が映る?」

剣聖「・・・月か」

大司教「残念!」

剣聖「む」

行政官「星?」

大司教「お、惜しいぞ」

剣聖「彗星だ」

大司教「大外れじゃ」

剣聖「むぅ」

大司教「よく思い起こしてみよ、夜空にひしめき合ってる者どもが居ろう」

行政官「星ではなく・・・ひしめき合っている『者』どもですか」

剣聖「宇宙人だな」

行政官「―――星座・・・ですか」

大司教「大正解!」

剣聖「む・・・」

大司教「我らが夜には、数多の神々が。女神正教36柱がおる」
7 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:16:40.96 ID:hRbC8D020
剣聖「・・・?」

大司教「鈍いやつじゃのう、ただの星の羅列ですら神の姿になぞらえられ崇められるほどなのじゃ」

大司教「黒子の並びを、勇者の印に見立てても罰はあたるまいて」

剣聖「お、横暴な・・・」

大司教「ははは、伝統と慣例に習うのが教会じゃ。星座を考え出した、古代の人々に習って何が悪い」

剣聖「・・・ぐぬぬ」

行政官「うーん、まあ言いたいことはわかりました。教会の方から、そのような意見がでるなら是非もないです」

剣聖「では、大司教は彼の者を勇者と認めるということでいいのか?」

大司教「早まるでない」

大司教「儂は反対じゃ」

剣聖「・・・さっきまでの話はなんだったんだ」

大司教「勇者の印など、どうでもいいという話じゃ」

行政官「反対の理由をお聞かせ願えますか?」

大司教「彼らは、決して勇者足り得ぬ」

大司教「なぜならば、彼らは普通過ぎるからじゃ」

行政官「普通じゃ駄目だと?」

大司教「まあ、納得いかんじゃろうな」


大司教「そうじゃのう、儂が勇者に初めて会った時のことを話してやろうか」
8 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:17:11.69 ID:hRbC8D020
――――――

先代勇者が、魔王を討伐し世界を救った褒美として
その功績を国からたたえられ、自治領土と爵位を与えられたのは知っておろう?

しかし、勇者が得たものはそれだけに留まらなかった

それは勇者に取り入ることで、勇者の名誉にあやかろうとする
数多の組織や商会が、こぞって資金援助を申し出た結果
勇者には、小国の国家予算に匹敵するほどの資金が流れ込んだ

そして、勇者に取り入ろうとした有象無象の中には
我が女神正教会も含まれていた

当時、教会は一つの問題を抱えていた
この国の国教である女神正教会は、その根幹を揺るがしかねない事態に陥っていた

それは、勇者の神格化にあった

勇者は、魔王討伐において一つの奇跡を成し得ていた
それは決して魔王を倒したという偉業そのものではない
魔王を倒すことは、いかに難しかろうと、圧倒的な力さえあれば誰もが成し得たことであろうからな
教会が問題視した奇跡とは、魔王を倒すための一つの手段として
彼が、女神からの恩恵の授かっていたことだった

誰もが欲してやまないが、女神正教会の歴史上誰一人として手に入れることができなかったものを
彼は手にしていたのじゃ

勇者の神格化は、魔王討伐後に飛躍的に民衆の間に広まっていった
人々は、女神に祈る時間を削り
勇者を崇め奉るようになっていった

我々は、民衆の教会への信仰心が失われていくことに焦り
一つの判断を誤ってしまった

勇者を教会に取り込むべく
彼を『聖人』に認定し、多額の援助を申し出たのじゃ

教会が、勇者の後ろ盾としての立ち位置をはっきりさせることで
彼の奇跡が、彼自身に拠るものでは無く
女神に、ひいては教会によってなされたと民に再認識させることができると目論んだ
9 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:17:38.09 ID:hRbC8D020

いまとなっては、はっきりと言える
それは、誤りであったと

教会からの強大な支援も加わり、7代遊んで暮らせるほどの資産を得た勇者は、遊蕩に贅を尽くすようになった
王国から得た領地を、雇った執事どもに託してしまい
自身は、明るいうちから酒を飲み
日が落ちれば、日ごと違う女を抱いた

まあ、執事が優秀だったのか領地はうまく収まっていたのだが
そんな自堕落な生活を送る『聖人』を教会は見過ごしておくわけには行かなかった

そういうわけで。当時、異端審問官であった儂は勇者の下に派遣されたというわけじゃ
勘違いするでないぞ、勇者を『異端者』扱いにするために送られたわけではない
『聖人』に認定した勇者を、『異端者』と認めてしまえば
それ自体が、教会の正当性を失いかねないからな

要は、私は勇者に灸を据えにいったのじゃ
異端審問官である私を送ることで、教会の援助を打ち切るばかりか
最悪『異端者』として処断してしまうぞと脅しじゃな

――――――
10 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:18:05.94 ID:hRbC8D020
――――――

「勇者殿、いったい何を考えられているのですか!?教会は、貴方に堕落の味を覚えさせるために援助を申し出たのではありませんぞ!」

勇者「そう、ぎゃあぎゃあわめかないでくださいよ」

勇者「昨晩ちょっと張り切りすぎちゃって、貴方の声は頭にぐわんぐわん響くんだ」

勇者「にしても、一晩に5人はちょっとやりすぎたなあ・・・」

「もう少し、立場を考えていただきたい!いくら子を為すためとはいえ節度というものがあるでしょう」

「貴方は仮にも聖人と認められているのですよ」

勇者「ああ、別にそういうつもりじゃないですよ。子供を作る気は俺にはありません」

「なあ!?」

勇者「単に、気持ちいいからやってるだけです」

「そ、それでは生まれてくる子があまりにも・・・」

勇者「安心してください。生まれてきませんよ」

「堕胎は、最も許されざる行いの一つですよ!」

勇者「ああ、もっと前段階の。まあ、えっと何といえばいいかな。やり方次第で、意図的に子を為さないこともできるということです」

「薬品・・・それとも、怪しげな魔法かなにか・・・」

勇者「いえいえ、滅相もない。そのような背徳の術を、教会が許すはずがないでしょう」

勇者「えーっと、そうですね。何と言ったらいいのか。そうそう体位です。体位」

勇者「うん、そうそう。子ができない体位ってもんを俺は開発したんだった」

「そのような自堕落な生活を、民に見られでもしたらどうするのですか・・・?

「もしや勇者殿は、人々を堕落せしめようという魂胆なのですか?」
11 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:18:33.44 ID:hRbC8D020

勇者「人々を堕落ねえ。まさに悪魔の所業というわけですか」

「・・・っ。貴方は聖人ですよ」

勇者「わかっているじゃあないですか、そう。俺は聖人なんですよ」

勇者「教会が認めた、聖人」

勇者「ただそれだけじゃあない。俺はただの聖人なんかじゃあないさ」

「なにを・・・?」

勇者「俺は、女神から唯一力を託された男。つまり、俺は女神に認められたということです」

勇者「教会に認めてもらうまでもないということだ」

「そ、それはあまりにも傲慢な物言いではありませんか!」

「貴方は、教会がこの国のために如何に尽くしてきたかご存じないのですか!?」

勇者「別に。教会を貶めているわけじゃあないですよ」

勇者「俺だって、女神正教徒であることには違いない」

勇者「まあ、敬虔な信者と呼べるほどじゃあないが」

「なれば、女神正教徒らしく振舞おうとは思わないのですか」

「女神正教徒は、第一に勤勉であることを求められている。堕落した生活から立ち直るのです勇者様!」

勇者「それはおかしい話だ。俺は勤勉に働いた。そして魔王を倒した」

勇者「今の生活は、その報酬。俺は俺が正当に得た報酬を、使っているだけだ」

勇者「それに、教会の訓戒は教会が作ったまやかしだ」

「!?」
12 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:19:01.20 ID:hRbC8D020
勇者「現に、俺は俺の価値観、倫理観、考え方のまま生きてきて、それを女神に認められた」

勇者「なれば、女神の考える人の在り方は教会のそれとは違っているということだ」

「・・・」

勇者「沈黙は、肯定ととりますよ」

「教会の在り方に疑問を感じるということであれば、これ以上の資金援助は難しいと考えざるを得ませんが・・・」

勇者「構いません。教会からの援助が無くとも、俺はやっていけるだけの資産を得ている」

勇者「それに、貰えるもんは貰う主義ではありますが、どうも教会のそれは施しのように思えて。あまり好きではなかったんです」

勇者「施しをするならともかく、されるっていうのはどうもむずがゆい」

「教会と対立することになりますよ・・・」

勇者「俺は、簒奪者には容赦はしない。魔王がそうであったように、俺から何かを奪うというなら覚悟をするべきですね」

勇者「教会に、その覚悟はありますか?」

「暴力による、ということですか?」

勇者「時と場合によっては」


勇者は、全く話の通じない男ではなかったが
その考え方は、当時の儂からしたら自己中心的で傲慢であるように思えた

勇者の考えは、社会への奉仕の心が欠けていた
この危険極まりない世界において、相互補助は自らが生き抜くために絶対必要な生存戦略
得た報酬を、全て自らのために使うという自己完結的な思想は
絶対強者であるが故の、いわば贅沢ではなかったのであろうか

平和が確立された、今の世でこそ勇者の考え方は指示され得るだろう
だが当時の状況からすれば、勇者の考え方は革新的ともいえた
私が教会側の立場にありながら、勇者の生きざまにある種の尊敬の念を抱いてしまったことを誰が非難できようか
私もまた、若く新しいものに目移りしてしまったのだ

最終的に、教会には勇者と対立するほどの度胸は無かった
何より、自らが認めた聖人を貶めることなどできるはずもない
当然の成り行きであった。

出来たことと言えば、勇者への資金援助を打ち切る程度
それが教会が行える、勇者への精いっぱいで唯一の反抗だったのじゃ
13 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:19:27.79 ID:hRbC8D020
――――――

大司教「私は、勇者とはある種の化け物出なくてはならないと考えている」

大司教「世間一般とはかけ離れた思想、振舞、そういったものが世界をかき回していくのだ」

大司教「普通でないから、やれることがある。異常でなければ成し得られぬこともある」

大司教「魔王を倒すなんてのは、その最たるものではなかろうか」

剣聖「・・・」

行政官「・・・」

大司教「だが、先ほどの若者たちは敬虔すぎる。素直すぎる。いい子過ぎる」

行政官「・・・いいことではないですか」

大司教「ありふれた市民の一人としてはな。だが勇者に課せられた使命は、魔王を倒すことだ」

大司教「戦闘について儂は素人であるが、例え剣の腕に優れようと世界の命運を凡百に頼るのは心もとないのじゃ」

剣聖「・・・」

行政官「うーん、真面目で勤勉なほうが安定的に成果をあげられると思うんですが」

行政官「私個人の意見としても、勇者には真面目で勤勉であってほしいですし」

大司教「勇者に破戒僧であれとは儂も言わんがな、しかし先の若者に勇者と同じことができるとは儂には思えない」

行政官「まあ、言いたいことはわかりました」

行政官「それでは議論は尽くされた。とは到底言えませんが、我々には何にしても時間がない」

行政官「拙速ではありますが、採決にうつりましょうか」

大司教「そうだな、構わないよ」

行政官「既にご存知かと思いますが、この決議は我々3人が全会一致でのみ成立します。よろしいですね」

剣聖「・・・うむ」
14 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:19:55.13 ID:hRbC8D020
行政官「それでは、よろしくお願いします」

行政官「若い男と仲間たち、彼らは勇者足り得るか?」



行政官「可」


剣聖「・・・可」


大司教「不可」


行政官「反対1で勇者認定ならず。それでは、また次回お会いしましょう」
15 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/03/30(金) 08:20:21.51 ID:hRbC8D020

――――――

一組目 若い男と仲間たち 勇者認定ならず

――――――
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 09:12:10.35 ID:RZoDApUrO
だから異世界転生してきた変なやつがよく勇者として祭り上げられるんだよなぁ
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 09:30:59.12 ID:a1RTcjlZo
目から鱗ですわ
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 10:35:55.76 ID:jwcHuTd+o
大きなことを成す人間はどこか変わってるってのは確かになぁと思った
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 14:01:38.94 ID:CuRcweQK0
乙はよ
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 00:26:15.70 ID:H3N/LOEDO
二組目まだか
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 11:02:16.44 ID:lkMY3QLRo
明日、更新します。
22 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 10:59:31.52 ID:hNg45iQ40

行政官「それでは採決をとりましょうか」

行政官「不可」

大司教「不可」

剣聖「不可」

行政官「では、満場一致で不可ということで」

大司教「皆、なかなかの逸材ではあるのだが、伝説を継ぐ男を選ぶとなるとどうも選好みしてしまうわい」

剣聖「・・・勇者選考が困難であるのは仕方あるまい。本来、国が勇者を決めるという事態が異常なのだ」

行政官「仰りたいことはわかりますが、この差し迫った状況下で国民に安心を与えるには『勇者』の存在が必須なのです」

行政官「お二人も、それを承知の上でこの仕事を請け負ったのでは?」

大司教「だからこそ、慎重にならざるを得ないのじゃ」

剣聖「・・・」

行政官「まあ、そこは同意します。勇者に倒られでもしたら元も子もありませんから」

行政官「えっと、今日はあと一人。勇者候補がいらっしゃってるようですね」

大司教「はあ、儂らの仕事は終わりが見えないのう」

行政官「勇者候補の選定は、情報部が全力で継続中ですからね。嬉しいことに勇者候補には事欠きませんよ」

大司教「あな素晴らしや」

剣聖「憎々しい情報部のやつらめ」

行政官「では、お待たせするのも悪いので。早速、入っていただきましょうか」

行政官「次の方、どうぞー」

???「失礼する」

剣聖「・・・」
23 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 10:59:58.09 ID:hNg45iQ40

???「久しぶりだな!剣士!」

剣聖「魔王軍大幹部 炎魔将軍・・・」

行政官「!?」

大司教「なぜ、魔王軍幹部がここに!?」

剣聖「あの時、確かにトドメを刺したはず・・・」



炎魔将軍「蘇ったのよ!剣士、貴様を殺す為になああああああああ!!!」



剣聖「ちっ・・・地獄に送り返してやる。さっさっとかかってこい」




優男「おや、お取込み中のようですね」

剣聖「!?」

炎魔将軍「なんだ、若造。いつの間に、入ってきた!?」

行政官「つ、次から次へと何なんですか・・・」

優男「スキャン完了っと、へえ貴方は魔王軍の幹部なんですか」

炎魔将軍「ほう、この時代に俺の事を知っている奴が居るとはな。どれ、褒美に燃やし尽くしてやろう」

優男「それはご免ですよっと、さて折角の縁ですが。これでさよならです」


優男「炎魔将軍 デリート!」
24 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:00:25.59 ID:hNg45iQ40

炎魔将軍「ん?・・・あ、なんだこれは!体が、俺の体が消えていく・・・!!!」

炎魔将軍「何だ貴様は!?いったい、俺に何をしたあああああああああ!!」

炎魔将軍「ぐああああああああああああ・・・・・」

大司教「き、消えてしまった・・・倒したのか?」

剣聖「・・・」

優男「あ、なんかまずかったですか?」

行政官「あ、貴方は一体・・・?」

優男「俺?ああ、俺は勇者の面接を受けに来たタダの男ですよ」

優男「そういうことですし、さっさと面接はじめましょ?」
25 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:00:52.64 ID:hNg45iQ40

――――――

二人目 異世界転移最強の男

――――――
26 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:01:22.62 ID:hNg45iQ40

行政官「それでは、面接を始めましょうか」

優男「どうぞ、よろしく」

行政官「まず、一つ確認です。貴方は一体、何者ですか?」

行政官「いま、私たちの手にある羊皮紙には貴方の情報が書かれています」

剣聖「・・・ほとんど空白ではないか」

行政官「そう、我が国の情報部の力をもってしても、貴方の経歴や出自はほとんど不明」

行政官「わかっていることは、約1か月前から王都に滞在しているという一点のみ」

行政官「だというのに、この推薦状の数。王弟殿下、聖騎士団長、果ては猊下のものまで」

大司教「何をどうすれば、そうなるのだ・・・?」

行政官「ですから伺いたいのです。貴方は一体何者ですか?」

優男「ええっとですね。信じてもらえるかはわかりませんけど、俺はこの世界の住人じゃありません」

大司教「ほう、異世界人というわけか」

剣聖「盲点であった。それならば情報が少ないのも頷ける・・・」

行政官「出自については理解しました。ではもう一点、あの名だたる方々からの推薦状」

行政官「この短期間で、貴方は一体何をされたのですか?」

優男「実は、別に、勇者になりたいってわけじゃないんすよね。なのに、おっちゃんたちがやたら勧めてくるから」

大司教「お、おっちゃんたち・・・」

優男「まあ、ちょっとだけ『勇者』っていうステータスには憧れなくもないけど」

優男「まあ、おっちゃんたちの顔潰すのも悪いし」

剣聖「・・・質問に答えろ、小僧」
27 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:01:49.74 ID:hNg45iQ40

優男「ああ、ごめんごめん。えっと、質問でしたね・・・なんだったっけ?」

剣聖「・・・」スッ

行政官「ち、ちょっと剣聖殿!落ち着いて下さい!剣から手を放してください!」

剣聖「これも面接のうちだ、奴の実力を少し確かめたい」

優男「魔王軍の幹部を瞬殺したのをご覧になったでしょう?」

剣聖「・・・」

優男「歴戦の戦士なら、力量の差ぐらい察せるもんだと思ってたんだけどなあ・・・まあ漫画とは違うか」

剣聖「・・・ぬんっ!」スパン

優男「ほいっと!」パシ

剣聖「!?」

大司教「これは驚いた・・・剣聖殿の剣を、片手で止めるとは」

行政官「剣聖殿、もうよろしいですか。剣を収めてください」

剣聖「・・・うむ」

優男「えっと、なんの話でしたっけ?」

大司教「緊張感のない男じゃ、いやそれだけ余裕があるということか」

行政官「―――この短期間に、貴方が何をされたのかという質問です」

優男「ああ、そうでしたそうでした。えっと、まず酒場で飲んでたおっちゃんと政治談議をしたのかな?」

優男「そうしたら、おっちゃん感動して泣きだしちゃって。それで王宮に招待されて」

優男「聞いたら王様の弟だっていうし、もっと俺の故郷の政治体制について教えろって言われたから」

優男「教えたんすよ」
28 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:02:29.23 ID:hNg45iQ40

大司教「王弟殿下が、市井の酒場にだと?そんな馬鹿な」

行政官「殿下は、そういう方なんですよ。続けてください」

優男「んで、王宮にしばらく泊ってたんですけど。廊下歩いてる時に、騎士のおっちゃんの剣に俺の剣が当たっちゃって」

剣聖「・・・鞘当てか」

優男「で、いろいろあって立ち会うことになって。まあ勝ったんですよ」

剣聖「俺の剣を片手で止めるのだ、さもありなん・・・」

優男「んで、飲み屋のおっちゃんから禿のおっちゃんを紹介されて」

大司教「・・・げげげげ猊下のことか!?」

行政官「大司教様、とりあえず落ち着いてください」

優男「んで、宗教についても講釈垂れたら。禿のおっちゃんも感動しちゃって」

優男「で、いまに至るってわけかな」

行政官「なるほど。貴方は、異世界では学者だったのですか?剣も扱えるということは、騎士か何かで?」

優男「俺は、ただの一般ピーポーでしたよ?」

行政官「で、では、異世界では皆が貴方に比肩する知識と剣技を持ち合わせているということですか?」

優男「いやあ、そうですと言いたいところだけど。実は、これのおかげなんですよね」

大司教「それは?」

優男「ノートパソコンです。異世界のネットにも繋がってます」

優男「まあ、要は、異世界の知識の全てがこれに詰まっているわけです」

行政官「魔道具というわけですか」

優男「厳密に言えば、違いますけど。まあ、俺の魔法と組み合わせてるから。ある意味、魔道具とも言えるかな」

剣聖「・・・剣技についてはどうなのだ」

優男「それも、このパソコンで。この世界の魔法と組み合わせて、自身や他人のステータスをこのPCでいじれるようにプログラミングしてあるんすよ」

優男「今の俺には、異世界中の剣の流派のデータがアップデートされてるってわけです」

優男「ちなみに、さっきの魔王軍幹部もこの力で。まあ、デリートしちゃったってわけです」

行政官「と、言うことは魔王も・・・」

優男「会って、スキャンさえ出来れば一瞬で」

大司教「それほどの力を持つとは・・・」

優男「まあ、この力は俺をこの世界に召喚した人からの貰いものなんですけどね」

剣聖「・・・貴様、いったい誰に召喚された」



優男「神に」

大司教「」

行政官「だ、大司教様!気を確かに!」
29 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:02:56.59 ID:hNg45iQ40
――――――

行政官「そ、それでは審議を始めましょうか」

大司教「・・・正直、評価が難しい男であった」

行政官「おや、意外ですね。大司教様なら、この世界とは違った価値観を持つ彼を高く評価すると思ったのですが」

大司教「まあ、革新的な考えを持ってはいるようだが。彼の場合は、ちょっと違うな」

行政官「と言いますと」

大司教「確かに、彼の持っている知識や価値観はこの世界をかき回してくれるだろう」

大司教「しかし、それは彼自身の力によるものでは無いというのがな」

剣聖「・・・同意する」

行政官「続けてください」

大司教「勇者には、どこか普通でない部分が必要というのは儂の持論だが。今日の彼、おそらく普通なのだ」

行政官「なんだかはっきりしませんね。彼が普通でないことは、明らかだと思いますが」

大司教「この世界ではな。だが、異世界ではどうだったのだろうか」

大司教「彼が、彼の育った故郷でどれほどの男であったと思う?儂は、凡百に埋もれる一人の普通であったと思うよ」

行政官「ちなみにどういった点から、そのように思われるのですか?」

剣聖「・・・奴の顔は、幼すぎる」

大司教「うむ、社会は異常者に厳しい。異物の排除が安定を生むことを知っているからな」

大司教「世の異常者達は必然的に、多くの困難に立ち向かうことになるであろう。しかし彼は、困難を超えてきた人間とは到底思えぬ人相であった」

大司教「それに加えて、あの貧相な体つき。力に驕った態度。神に授けられた、あの力が無ければ道端の石ころよ」

行政官「なるほど。しかし、あれほどの力があれば魔王討伐も容易いのでは」

大司教「確かに。あの力ならば復活した魔王と言えど対抗できはすまい」
30 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:03:23.15 ID:hNg45iQ40

剣聖「買いかぶりすぎだな」

剣聖「・・・それほど、あの優男は強くはないぞ」

行政官「剣聖殿の剣を片手で止めるほどの男ですよ?」

剣聖「力はな。だが魔王は力だけで戦える相手ではない」

剣聖「魔王は、力で及ばないとわかれば躊躇なくからめ手を使ってくるだろう」

行政官「搦め手」

剣聖「脅し、賺し・・・そうだな、例えば若い女を人質にとるとか」

大司教「あれだけ強ければ、対処できそうではあるが」

剣聖「できんな。あの男には歴戦の戦士が放つ強者の貫録がなかった。行く手を阻む大壁に立ち向かう経験を、ろくにしていないのだろう」

剣聖「童貞は、初夜に想定外のことが起きればパニックを起こす。折れてしまう」

剣聖「強き心があれば、立ち直ることもできよう。しかし、あの男にはそれができるだろうか」

行政官「これから経験していけばいいのでは?」

剣聖「あの妙な力が、それを許すまい。あの男が、初めて出会うであろう困難は、それはそれは強大なものだろう」

剣聖「なにせ、神から与えられた力ですら簡単には超えられない壁なのだから」

行政官「・・・神から与えられた力。そう、そこも問題なんですよね。まさか異教の神の力を授かるとは」

大司教「なに構わんさ、儂を含め女神正教は女神様を唯一神としているわけではない」

行政官「しかし、神託は女神正教から・・・」

大司教「女神様だって、他の神の肝入りに乗っかることもあろうさ」

行政官「大司教様、意外に融通が利きますよね」

大司教「意外には、余計じゃな」
31 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:03:54.26 ID:hNg45iQ40

行政官「そういえば勇者の印は、確認していませんでしたね」

剣聖「あの大騒ぎの後だ、忘れても致し方あるまい」

大司教「まあ、そこはどうとでもなるし」

行政官「それもそうですね・・・正直に申し上げると、私は彼を勇者に認定するべきだと考えているのですが」

大司教「力量は申し分ないのではないか。何より彼は、神から力を授かっている」

行政官「そう、先代勇者と同じ。神に与えられた力を彼は持っている」

行政官「神の助けがなくては、魔王には勝てないのでは?そうだとすれば、彼は最も勇者に近い男です」

大司教「剣聖殿の言いようも最もではあるがのう。しかし、その心配も杞憂に終わるやもしれんぞ」

剣聖「・・・俺の意見は変わらん。奴に、勇者は勤まらん」

剣聖「それに、アンタらは一つ間違えている」

行政官「?」

剣聖「先代勇者は、神の助けなど得ていない」
32 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:04:22.57 ID:hNg45iQ40

――――――

俺が勇者と出会ったのは、東の大都市に隣接するスラム街だった
経緯は省くが、そこで俺は勇者に雇われた

「魔王を滅ぼす旅に同行して欲しい。報酬ははずむ」

提示された金額は、命をかけるに十分なものだった
それに加え、魔王討伐後に得られるであろう名声や国からの褒賞を考えれば断る理由などなかった

――――――

大司教「一人旅ではなかったのか!?」

剣聖「・・・そうだ、奴の背中は俺が守った」

行政官「ではなぜ、そのような重大な事実が伏せられているのですか?」

剣聖「俺は下賤な傭兵だ。手を出した悪事も数知れぬ。そんな俺の存在を、国が認めなかったのさ」

剣聖「まあ、俺としても勇者の仲間として諸手を振って表参道を歩くつもりはなかったがな」

剣聖「それでも剣聖として崇められる程度の地位と名声は頂いたから不満はない」

大司教「ふうむ、剣聖殿がこの勇者選定に面接官として参加している理由にはそれもあったのか」
33 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:04:49.29 ID:hNg45iQ40

――――――

勇者は、後の世に知られている女神の加護などは受けてはいなかった
確かに剣と魔法の腕は、尋常ならざるものであったが
全て人間の範疇に収まるものだ
そうでなくては、この俺を雇ったりはしなかっただろう

そんな勇者が魔王を倒し得たのは、その覚悟にあった


魔王「ふふふ、たった二人で我の下までたどり着くとは驚嘆に値するぞ」

勇者「それは違う、俺たちは二人だったからこそここまでたどり着いたんだ」

剣士「大人数であれば、魔王城に入る前に捕捉されて数ですりつぶされていただろうよ・・・」

魔王「それでもさ」

魔王「我は慎重な男だ、実のところお前たち二人の情報は得ていた」

剣士「・・・」

魔王「我が魔王軍幹部を悉く暗殺していったお前たちのことを、我が知らないはずがないであろう」

勇者「ならば何故、魔王城の警備を俺たちは抜けられた?お前が慎重な男だというなら、万全な警備体制を引くこともできたはずだ」

魔王「それだけ、お前たちの行動が迅速だったのだ。幹部を殺され、組織の命令系統が混乱していたこともある」

魔王「だが、それ以上に。我は、お前たちに会いたかったのだ」

勇者「戦闘狂め・・・」

魔王「勘違いするな。戦うためではない」

勇者「では、どういうつもりだ」

剣士「勇者、奴は俺たちを取り込むつもりだ」

魔王「察しが良くて助かる。まあ、その通りなのだ」
34 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:05:17.64 ID:hNg45iQ40

魔王「そうだな。魔王軍幹部の席はもちろん、人間たちを支配するうえでの助言役」

魔王「お主たちが望むのであれば、人間達への幾何かの温情も与えようではないか。勇者よどうだ?」

勇者「・・・ないな。俺は簒奪者には容赦しない」

魔王「即答か。では、やり方を変えてみよう」

魔王「これを見ろ」

肉塊「・・・」モゾ

剣士「新手の魔物か?」

勇者「なんだこれは」

肉塊「・・・ユ・・・ウシャ」

勇者「!?」

勇者「・・・その声は!?魔王!彼女に何をした!」

魔王「ふふふ、声だけでわかるか。素晴らしい洞察力だ」

魔王「そう、お前が故郷に置いてきた恋人だよ」

勇者「きさまああああああああああ!」

肉塊「ユウ・・・シャユ・・・ウシャユ・・・ウシャ」

剣士「・・・落ち着け勇者。魔王、その女?その肉塊はまだ生きているのだな」

魔王「もちろんさ。もし、お前らが我が陣営に加わるというなら元に戻してやる」

勇者「・・・ぐ」

剣士「勇者、判断はお前に任せる。所詮、俺は雇われだからな」

魔王「考える時間をやろう、そうだな一晩で答えを聞かせてもらおうか」
35 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:05:44.62 ID:hNg45iQ40

温情とも思える魔王の振舞に、俺は危惧を感じた
一晩あれば、大陸中に散っている魔物どもを呼び戻すこともできるであろうからだ
魔王を打倒す唯一無二のチャンスが今、その時にあることを勇者に伝えることもできた


しかし、勇者の苦悶の表情に
愛する女の命を握られた男に、いったい誰が物申せると言うのだ
俺は傭兵だ
そして勇者は雇い主
勇者と共に命を散らす覚悟、職業傭兵としての矜持は俺にもあった


勇者「か、彼女は・・・魔物に両親を殺された」

勇者「俺は簒奪者には容赦しない・・・そして彼女は、俺とともに心を同じくしている」

勇者「なれば、俺がやることは一つ・・・魔王、お前を殺す!」

魔王「平和のために自分の女を捨てるか!」

魔王「愚か者め!ならばかかってくるがよい!」
36 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:06:11.70 ID:hNg45iQ40

――――――

魔王との死闘は半日も続いた
肉塊は魔王の死と同時に動かなくなった
おそらく魔王からの魔力の供給で生きながらえていたのであろう

勇者は涙を流さなかった
ただ肉塊を優しく抱きかかえ
「王都に帰ろう」
一言だけ声を漏らした

それが俺に向けられた言葉だったのか
彼女に向けられたものだったのか、俺にはわからなかった
37 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:14:23.21 ID:hNg45iQ40
――――――

剣聖「いま思えば、勇者が子を為そうとしなかったのは。彼女に操を立てていたのかもしれんな・・・」

大司教「それはちょっと疑問じゃが・・・」

剣聖「とにかく」

剣聖「勇者に必要なものは、神の加護なんかではない。決して折れぬ意思、心。それこそが必要なのだ」

剣聖「俺には、あの優男に、勇者と同じことができるとは到底思えない」

行政官「女神の加護は教会の偽りであったのですか・・・?」

大司教「儂も知らん。だが、民の求心力を求めていた当時の教会なら、それぐらいやるかもしれん」

剣聖「勇者は貰えるものは貰う主義だったからな。教会の嘘に乗っかるのが自分の利益になると踏んだのだろう」

行政官「では、勇者様は純粋に自身の」

行政官「人間としての力だけで戦ったというわけですね・・・?」

剣聖「・・・忘れているぞ」

大司教「?」

剣聖「勇者自身の力。それと、俺の力だ・・・」

行政官「ふふふ、失礼。そうでした」

行政官「しかしそれでも尚、私は彼の力は余りあると思いますが」

剣聖「・・・これは俺の考えだ。同意を求めているわけではない」

大司教「まあ、そうであろうな。しかし、異教徒とは言え神から力を授かっている男だ」

大司教「先代勇者すら得ていない力を、あの優男は持っている」

大司教「その事実からは目を背けられぬ。儂も、一宗教家として彼を支持する以外に道はない」

剣聖「ふむ」
38 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:14:49.36 ID:hNg45iQ40

行政官「それにやはりですね。同じ状況にあっても、彼なら神の力で人質を元に戻すこともできると思うのですよ」

剣聖「魔王は、自身を慎重な男だと言っていた。奴の情報を集め、対策ぐらいはうつだろう」

大司教「しかし、剣聖殿がそうであったように彼は単独かつ迅速に動くことができよう」

大司教「対策を打たれる前に、倒してしまえばよいのだ」

剣聖「二度、同じ手が通じるとは思えんが」

行政官「堂々巡りですね」

行政官「そうですね・・・ほら、もう外は真っ暗ですよ

行政官「そろそろ採決に入りましょうか」

剣聖「・・・む」

大司教「拙速ではないか?」

行政官「時間は有限です」

大司教「・・・」
39 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:15:55.54 ID:hNg45iQ40


行政官「・・・それでは、採決に入ります」

行政官「神から力を授かった優男、彼は勇者足り得るか?」



行政官「可」


大司教「可」


剣聖「・・・不可」


行政官「反対1で勇者認定ならず。それでは、皆さん次回またお会いしましょう」
40 : ◆CItYBDS.l2 [saga]:2018/04/07(土) 11:16:29.76 ID:hNg45iQ40

――――――

二人目 異世界転移最強の男 勇者認定ならず

――――――
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 13:48:27.62 ID:hRHXWCjno


剣聖の言うことわかるわ。所詮たなボタで手に入れたチートで思い上がってるだけの凡人だもんな
もしチート対策されたら狼狽しまくって周りの仲間とか全滅させる可能性高いし
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 18:05:44.08 ID:n3QeUa5G0
たったこれだけのテンプレなろう主人公っぽさでも不快感が凄いな
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 19:36:16.17 ID:qYer89zUO
テンプレ化して量産されたら大抵はつまらなくなるからな
昔の異世界召喚系は現代の知識とファンタジー世界の組合せに作者もアイデアを尽くしていたから、ワクワクして読めたけど
最近は単に作者の[田島「チ○コ破裂するっ!」]でしか無いから読む気も起きないし、たまに読んでも不快感しか感じないな
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