【ラブライブ】穂乃果「さぁ、お前の罪を数えろ!」【仮面ライダーW】

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34 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 20:40:37.45 ID:A1MflIiE0
ーーーーーー



にこ「…………」



照井さんに後のことを任せる。
その判断をした後のこと。

にこは、なぜか病院のベッドの上にいた。
…………まぁ、なぜって、あの後すぐに倒れたのが原因だけど。
話を聞いたら、丸1日眠り続けたらしい。

ちなみに、話を聞いた相手っていうのは、



にこ「…………ねぇ」

真姫「なによ?」

にこ「いつまであんたん家の病院にいればいいわけ?」

真姫「戦いが終わるまでよ」



このお嬢様である。
今日はずっとにこのベッドの脇で、イスに座って文庫本に目を落としている。



にこ「……にしても、暇ね」

真姫「本でも読めば?」

にこ「………………遠慮しとくわ」

真姫「そ」



……1日眠ってたんだから、もっとなにかあってもいいんじゃない?
まぁ、口には出さないけどさ。
本人なりに心配してくれたんでしょうし。
35 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 20:47:00.71 ID:A1MflIiE0



にこ「………………」

真姫「………………」

にこ「…………」

真姫「…………」



長めの沈黙に気まずくなってきて。
散歩でもしてくるフリをして抜け出そうかと考え始めた頃、




真姫「ねぇ、にこちゃん」




真姫ちゃんが口を開いた。
パタン、と本を閉じて、こちらを見つめてくる。
そして、問う。




真姫「なんで、そんなに無理するのよ……」




そこで、気づいた。
真姫ちゃんの目が少しだけ潤んでることに。



にこ「…………」

真姫「…………にこちゃんだって、辛いはずでしょ?
なのに、なんでそんな……」

にこ「…………」

真姫「ぼろぼろになってまで戦うのよ……」

にこ「………………」


36 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 20:58:47.08 ID:A1MflIiE0
なんで、ね。

真姫ちゃんの言うことは、間違ってない。
実際、戦うのは辛くて。
怪我をすれば痛くて。
正直、にこだってぼろぼろになってまですることじゃないと思うわ。
まして、にこはアイドルで、今回のことで事務所にも迷惑かけてるし。



真姫「だったらっ!」



そうね。
だったら、戦う必要なんてない。
誰かに任せてしまえばいい。
ドライバーは壊れてしまったけど、それこそ今までだってあれを理事長に返せばよかったはず。

でも、そうしなかったのはーー


37 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 20:59:56.01 ID:A1MflIiE0





にこ「『笑顔』にしたかったから、かしらね」




38 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 21:04:10.73 ID:A1MflIiE0
うん、そう。
にこの想いは変わらない。
最初からずっとそれだけを思って戦ってきた。



真姫「…………」



まぁ、でも。
こうやって後輩泣かせちゃってるんだから、世話ないわね。



ーー ナデナデ ーー



真姫「っ、な、なによっ!」

にこ「……別にぃ?」



にこはここで退場するべきね。

照井さんに戦いは任せたし。
それに、





ーー コンコン ーー




39 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 21:15:17.88 ID:A1MflIiE0

真姫「っ、だ、だれ!?」

にこ「入りなさい」



「……うん」



真姫「なんで……?」

にこ「来たわね」



病室のドアを開けて入ってきたそいつ。
彼女が来るのは、朝来たメールで知ってはいたけど。

…………うん。
あの時とは違う。
いい目してるわ。



にこ「照井さんのこと手伝うことに決めたのね?」

「うん」

にこ「そ。でも、本当に大丈夫なわけ? また心折れたりしない?」

「だいじょぶだよ。もう、大丈夫」

にこ「…………そ。それじゃーー」



にこは『それ』をバックから取り出し、机の上に置く。
そして、彼女は『それ』を受け取った。



にこ「……にこはもう戦えない。だから、頼んだわよ」



「……うん。分かってる」

「海未ちゃんも、ことりちゃんも絶対に助ける」

「全部、全部!」





凛「凛が守るよっ!!」





ーーーーーー
40 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 21:15:57.80 ID:A1MflIiE0
ーーーーーー
41 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/03(木) 21:16:46.34 ID:A1MflIiE0
短いですが本日はここまで。
GW中にまた書きます。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/06(日) 17:15:43.38 ID:3GnfHEEvO
おつ
まってる
43 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:04:12.00 ID:McJFotcD0
GW中に書けませんでしたので、少しだけ更新します。
44 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:13:26.01 ID:McJFotcD0
ーーーーーー



にこちゃんが病院に運ばれた日の夜。
凛はかよちんの家に泊まることにした。
かよちんが不安そうだったから。


お風呂に入って、かよちんの部屋へ。
いつものお泊まり会と同じように、かよちんのベッドの隣に布団を敷いてから、すぐに電気を消す。



凛「………………」

花陽「………………」



普段はそこから色んなことを話すんだけど、今日はずっと静かで。

たぶんだけど。
今を逃したら、聞けなくなってしまうんだろうなって、そう思ったから。
凛は、



凛「ね、かよちん」



小さな声で、名前を呼んだ。
45 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:16:40.51 ID:McJFotcD0

花陽「なに?」



穏やかな声で、答えるかよちん。
トロンとした少し眠そうな声だ。



凛「ひとつ、聞いてもいいかな?」

花陽「うん」

凛「かよちんは……さ……」



だから、申し訳なく思う。
だって、これを聞いたらーー




凛「なんで、あのサイトを作ったの?」




ーーたぶん、この穏やかな雰囲気を壊しちゃうから。
46 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:20:46.05 ID:McJFotcD0



花陽「…………」



あのサイトっていうのが、どれのことかはかよちんもきっと分かってるはず。
だけど、凛の質問への答えはなかなか返ってこなかった。



花陽「…………」

凛「かよちん?」



ねぇ、なんで?

凛の問いかけ。
それに、かよちんは時間をかけてこう答えた。



花陽「なんとなく、だよ」


47 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:24:47.16 ID:McJFotcD0
なんとなく?



花陽「……うん」

花陽「不思議なことに興味があったから……」



こんなことになっちゃったのは申し訳ないなって思ってるけど。
かよちんはそう言う。



凛「……………………」

花陽「…………」



凛「ウソ、だよね」

花陽「!?」



うん。
かよちんの癖を知ってなくても、それを見なくても分かるようなウソだ。
だって、かよちん、




凛「声、震えてるよ」

花陽「っ」



48 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:32:37.69 ID:McJFotcD0
慌てて黙るかよちん。
その行動がもう、ウソだってしょーめいしてる。

……うん。
なんとなく、凛は気づいてたよ。
確かにかよちん、探偵ものとかは好きだけど、それで凛や真姫ちゃんを巻き込むのは変だなって思ってた。
かよちんらしくないなって。


じゃあ、かよちんが凛たちを巻き込む理由はなんだろう?


気のせいかも?
そう思ったりもしたけど、今のかよちんの様子を見てハッキリした。



凛「ねぇ、かよちん」

凛「おしえてよ」




凛「かよちんは、なんで『ガイアメモリ』に関わろうとしたの?」




花陽「…………」
49 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:36:26.20 ID:McJFotcD0

凛「…………」

花陽「…………」



待つ。

凛が聞きたいことは言った。
あとは凛は待つだけ。

かよちんが話してくれるのを。
かよちんの中の言葉がちゃんと整理されるのを。



花陽「………………」

凛「………………」

花陽「…………」

凛「…………」

50 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:46:46.38 ID:McJFotcD0
部屋に入ってくる月明かり。
それだけで回りの様子が見えるようになってきた頃。
待っていた言葉が、




花陽「たすけ、たかったの……」




降ってきた。
ポツリと、消えそうな声だったけど、凛の耳にはたしかに聞こえた。

助けたかった、って。



凛「助けたかった……?」



それは、誰を?



花陽「海未ちゃんとことりちゃん」



51 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 00:56:25.32 ID:McJFotcD0



凛「え……?」



返ってきたのは意外な名前。

海未ちゃんとことりちゃん?
二人を助けたかった、って……?
……あ、あれ?



凛「ちょ、ちょっと待ってよ!」

凛「かよちんがあのサイトを作って、『ガイアメモリ』の事件に関わろうとしたのって、穂乃果ちゃんから話を聞く前のはずでしょ!?」



うん。
そのはずにゃ。
穂乃果ちゃんから、ことりちゃんがドーパントにされて、海未ちゃんがドーパントになった話を聞いたのは……そう。
凛が仮面ライダーになった後だったはず。

でも、かよちんがサイトを作ったのは、ちょうど部室が破壊されて、かよちんが襲われたあの事件のすぐ後だった。

…………え?
え?
へん、だよね?
かよちんの話がほんとならーー




花陽「うん」

花陽「……花陽は知ってたの」



知ってた?
知ってたって、海未ちゃんたちのことを?
な、なんで!?




花陽「それはっ、花陽が、海未ちゃんを呼び出したからっ!」

花陽「『あの人』の指示でっ!」

凛「え? そ、それって!?」




花陽「花陽が、海未ちゃんをドーパントにしちゃったのッ!!」



52 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:03:41.68 ID:McJFotcD0
気づけば、かよちんは起き上がっていた。
月明かりが陰を作って、その表情は見えない。

だけど、泣いてる。
それだけは分かる。



花陽「あの日、花陽は『あの人』に……会ったんだよっ」

花陽「顔は見てないけど、声をかけられてっ」

花陽「そこで、見せられたのっ! 悪い夢、だった……っ」



かよちんはそう言って俯く。

悪い夢。
悪夢。
その中身を思い出してるのかもしれない。

どんなものかは……聞けない。
聞いたら、それを口にしたら、かよちんが壊れてしまいそうで……。

だから、続きを待つ。
凛にできるのはそれだけ。
53 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:11:00.82 ID:McJFotcD0




凛「…………かよちん……」

花陽「っ、ごめんね……」

凛「ううん……でも、辛いならーー」



花陽「……ううん。話す。話さなきゃ……だもん」

凛「……うん」



うん。
分かったよ。
凛、聞くから。



花陽「…………それで、『あの人』は花陽に迫ってきた」

花陽「今すぐ海未ちゃんに電話をかけなさいって。ことりちゃんがいる場所を海未ちゃんに伝えなさいって」

花陽「そうすれば……」



花陽「この悪夢が『未来』になることはないから」



なにを見せられたのかは分からない。
けど、たぶんそれは最悪の光景なんだろうってことは簡単に想像できる。
だから、かよちんは、



花陽「電話しちゃったんだ……」

花陽「海未ちゃんが危険になるかもって分かってたのに……っ」



凛「…………かよちん」


54 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:18:10.75 ID:McJFotcD0

結果として。
海未ちゃんはドーパントになって、ことりちゃんも救われてない。


…………そっか。
だから、かよちんはあのサイトを作ったんだ。

少しでも怪事件の情報を集めて、『あの人』……『亜坂真白』を探し出すために。
そして、海未ちゃんやことりちゃんを助けるために。




凛「…………戦おうとしてたんだね」



ポツリと。
出てきた言葉。
ふっと出てきた言葉だったけど、しっくりきた。

かよちんも戦ってたんだ。


55 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:23:22.49 ID:McJFotcD0

花陽「でも、ダメだったっ!」

花陽「花陽には、なにもっ、出来なくてっ」

花陽「海未ちゃんを助けることも、ことりちゃんを助けることもできないんだよっ」



凛「…………」



かよちんの想いが伝わってくる。

海未ちゃんを売ってしまったっていう後ろめたさも。
何もできなかったっていう悔しさも。
戦えない歯痒さも。

全部、全部伝わったよ。



凛「…………」

花陽「はなよ……はっ…………わたしは……っ」

凛「…………」



大丈夫。
伝わったから。
だから、
56 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:24:07.18 ID:McJFotcD0






ーー ギュッ ーー





凛「泣かないで、かよちん」




57 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:30:51.21 ID:McJFotcD0

抱きしめる。

大丈夫だよって。
自分を責めないでいいんだよって。
言葉にしなくても伝わるくらいに。



花陽「りん、ちゃん…………?」

凛「…………だいじょぶだよ」

花陽「でもっ、わたしはっ……わたしのせいで……っ!」



うん。
もうだいじょぶだから。

かよちんの想いは、凛が受け取ったよ。
凛が受け継ぐよ。



凛「……凛がやる」

花陽「………………え?」

凛「かよちんの代わりに、凛が戦うから」

花陽「っ、それは……でもっ!」




凛「大丈夫」




今度は戦える。
全部、凛が守るんだ。

亜里沙ちゃんも。
海未ちゃんも。
ことりちゃんも。
かよちんの想いも全部っ!

もう、折れない。




ーーーーーー
58 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:31:36.07 ID:McJFotcD0
ーーーーーー
59 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/09(水) 01:32:19.29 ID:McJFotcD0
本日はここまで。
更新遅れてすみません。
レス感謝です。
60 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 19:37:24.18 ID:mnK6QAWp0
本日更新予定です。
61 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 19:57:35.83 ID:mnK6QAWp0
ーーーーーー




にこちゃんのお見舞いからの帰り道。
ふとバイクを停め、立ち寄ったのは音ノ木坂学院。
日曜日ということもあり、残念ながら校門は閉まってる。



穂乃果「はぁ……」



思わずため息が出る。
それは色んなことを考えてのもので。

例えば、にこちゃんの怪我とか。
例えば、凛ちゃんの決意とか。

穂乃果のせいで、二人には色んなものを背負わせちゃった。
……ううん。
今もまだ背負わせちゃってる。

それに比べてーー




穂乃果「わたしは……なにもできない……」



62 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 20:05:42.39 ID:mnK6QAWp0

「この二人、幼馴染みなのでしょう? それが怪物になるのを、貴女は二度も見ることになって」

「二度とも何もできなかった」

「フフッ、ねぇ……それを絶望と言わずしてなんと言うのかしらねぇッ!」



穂乃果「っ」



あの人の言葉を思い出して、胸が痛くなる。
ズキズキと。
穂乃果の胸になにかが突き刺さるみたいな痛みだ。

きっと、それはその言葉が的を得ているから、だと思う。

海未ちゃんが目の前でドーパントになったのに。
ことりちゃんがドーパントにされたのに。
穂乃果は何もできなかったから。

穂乃果がしたことといえば、にこちゃんと凛ちゃんにドライバーとメモリを渡しただけ。
二人に助けてもらおうとしただけ。



穂乃果「…………情けないや」



うつむき、呟く。
63 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 20:22:41.13 ID:mnK6QAWp0



穂乃果「…………」ギュッ



ふと、それを握る。
ポケットの上から、それの存在を確かめるみたいに強く握る。
穂乃果の協力者から渡されたもの。


ことりちゃんを救うためのガイアメモリ。
その能力はメモリの効果を完全に無効化する力。

これを使えば、ことりちゃんをメモリから解放して助けることができる。
ただし、



穂乃果「使えるのは1回だけ」



それ以降は起動できないようになっている。
彼からはそう言われた。
原理はよくわかんなかったけど、そのくらい強力なものだって話だった。
64 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 20:28:27.68 ID:mnK6QAWp0
問題は、



穂乃果「これ、穂乃果には使えない……よね」



ことりちゃんを助けるには、これを確実に当てなきゃダメ。
でも、あの人も、メモリに呑まれた海未ちゃんも倒して、ことりちゃんの元へ行く力は、穂乃果にはない。
あるわけない。



穂乃果「…………」

穂乃果「……照井さんに渡さなきゃ、かな」


……うん。
その方が絶対にーー




ーー prprprprprpr ーー



穂乃果「っ、と!」



メモリがない方のポケットから鳴り響く音。
連絡と護衛用に渡されたスタッグフォンの音だ。



穂乃果「は、はい!」



慌てて出る。
電話口から聞こえてきたのは、



『やぁ、高坂穂乃果』



穂乃果の協力者の声だった。
65 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 20:37:41.67 ID:mnK6QAWp0


穂乃果「こ、こんにちは。どうかしたんですか?」



世間話をするような仲じゃないから、たぶんなにかあったんだと思って、そう聞く。
って……あれ?


穂乃果「なんだか、息切れしてませんか?」

『っ、あぁ、少しトラブルが発生してね』

穂乃果「トラブル……?」



ざわつく。
何故か嫌な感じがする。
理事長室でも感じたあの感覚だ。



『あぁ、照井竜にはもう連絡はしてあるが……っ』

『君たちにも連絡すべきだと思ってね』

穂乃果「……あ、あの……それって……?」



あぁ、本当に。
残念なことに、穂乃果の嫌な予感は、




『絢瀬亜里沙が連れ去られた』

『園田海未の手によって』




的中してしまった。



ーーーーーー
66 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 21:01:40.20 ID:mnK6QAWp0
ーーーーーー



照井「一体何をしていたんだ!」

『……すまねぇ。入口は完全に見張ってたはずなんだ』

照井「…………それでも侵入された、そういうことか」

『あぁ。前に俺達が戦った『アームズ』にはそんな能力はなかったはずなんだが……』

照井「『強化アダプタ』でメモリの能力が強化された可能性はないか?」

『それはないはずだ。相棒がそれについては検索済みだからな』

照井「…………ならば、考えられるのは……」

『『もう一人』の能力だろ。そっちは情報が少なすぎて検索できてねぇんだ』

照井「…………とにかく追跡を続けろ。俺もすぐに追いつく」

『言われるまでもねぇ! あの子をこのままむざむざ拐われたんじゃ、探偵失格だ!!』ブツッ



照井「…………まったく美原の件といい、警察病院の警備も考え直す必要があるな」

照井「…………」スッ



照井「…………照井だ」

照井「君の後輩が拐われた。こちらの落ち度だ。すまない」

照井「……あぁ。巻き込むようなことはしたくないが、念のためだ」

照井「……………………場所が分かり次第連絡をする」



ーーーーーー
67 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 21:10:31.01 ID:mnK6QAWp0
ーーーーーー



凛「穂乃果ちゃん!」



協力者の彼からの連絡の後、すぐに凛ちゃんから電話があって。
凛ちゃんには照井さんから電話がきて、亜里沙ちゃんのことを知ったみたい。

すぐに合流しよう。
そう言われて、穂乃果も頷いた。
幸い、凛ちゃんも音ノ木坂の近くにいたようで、すぐに会うことができた。



凛「穂乃果ちゃんの方には?」

穂乃果「ううん、まだ」

凛「そっか」



あの後、連絡はない。
亜里沙ちゃんを連れ去った先が分かったら、連絡をくれるはずなんだけど……。



穂乃果「…………大丈夫、かな」



口を突いて出るのは、そんな言葉。

もし、逃げた先が分からなかったら?
もし、亜里沙ちゃんに例のメモリが使われちゃったら?
そう考えると、



穂乃果「っ」



血の気が引く。
それは、最悪の想像だった。

いやいやいや。
そんなことあり得ない!
こんな想像しちゃダメだよっ!

必死に頭を振って、その考えを頭から追い出す。
でも、やっぱり、どうしてもそれは頭から拭えなくて……。
68 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 21:17:58.47 ID:mnK6QAWp0




凛「だいじょぶにゃ!!」




穂乃果「っ、凛……ちゃん」


見れば、凛ちゃんは笑っていた。
なんで、笑えるの?
こんなに絶望的な状況なのに……?



凛「凛たちだけじゃないから」

穂乃果「え……?」



凛「皆を助けようと戦ってるのは、凛たちだけじゃないよ」



凛「照井さんも、穂乃果ちゃんの協力者の人も」

凛「穂乃果ちゃんも、凛も、かよちんも、にこちゃんも」

凛「きっと他にもたくさんの人が戦ってる」



そう言う凛ちゃん。
穂乃果を安心させるように、続ける。



凛「それに、凛たちが諦めたらダメだよ!」

凛「凛たちは信じるの!」



信じるって?
なにを?



凛「またみんなで笑いあえる未来を!」


69 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 21:26:00.46 ID:mnK6QAWp0


カッコいい。
そう、思った。



穂乃果「ふふっ」

凛「にゃ? どうかした?」

穂乃果「ううん。なんでも!」



ただ、凛ちゃん、とっても強くなったんだなって思っただけだよ。



凛「?」

穂乃果「…………うん。信じて、待とっか」

凛「うん!」




ーー prprprprprpr ーー



穂乃果「!」ピッ

穂乃果「はい!」

穂乃果「! 分かりました! すぐ向かいます!」ピッ



凛「穂乃果ちゃん!」

穂乃果「うん! 行こう!」



凛ちゃんを後ろに乗せて。
すぐにキーを回す。

待っててね!
亜里沙ちゃん!



ーーーーーー
70 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/10(木) 21:27:57.85 ID:mnK6QAWp0
今日はここまで。
ここまで付き合ってくださってる方はどのくらいいるのか不安はありますが……。
もうしばらくお付き合いください。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/10(木) 23:12:30.07 ID:0b2PzGxw0
見てるぞ
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/11(金) 13:02:14.03 ID:R+IIjl2T0
俺らはお前が頑張ってるのを見てるぞ。
(応援してます)
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/11(金) 18:54:40.58 ID:ENCTrxTgO
見てるよ
凛ちゃん戻ってきてくれて嬉しい
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/13(日) 12:47:40.03 ID:4GJzLyR8O
見てるぞ!
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/13(日) 20:56:49.99 ID:C+gpoNy6O
見てるからはよつづきかいて
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/17(木) 12:42:29.54 ID:5m6ol+pw0
マッテルノヨ
77 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 15:05:27.31 ID:I9Zxu1KGO
レス感謝です。
本当にありがたいです……。
本日更新予定。
78 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 18:56:30.90 ID:iYRe5ASE0
ーーーーーー



バイクを走らせて5分。
電話で聞いた場所に着くと、そこには照井さんがいた。



穂乃果「お待たせしましたっ!」

照井「来たか」

凛「亜里沙ちゃんは!?」

照井「この中だ」



照井さんの視線の先。
そこにあったのは、電話で聞いた通りーー



穂乃果「病院……ですよね」

照井「あぁ。開業医もいなくなり、もう使われなくなった病院だ」

穂乃果「…………」



真姫ちゃんのお家とは違って、大きな病院ではなく町のお医者さんって感じの場所。
でも、なんでだろう。
なんだか嫌な感じがするところだ。


照井「……ここで開業していた医者は、ろくでもない男だったからな」



ポツリと、照井さんは言った。



穂乃果「その人を、知ってるんですか?」

照井「俺に質問をするな」



過去のことだ。

それだけを言って、照井さんはその病院の方へ鋭い眼光を向けた。
そして、



照井「入るぞ。俺の後ろを離れるな」


79 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 19:01:06.40 ID:iYRe5ASE0

病院のなかは思ったよりきれいだった。
勿論、使われている形跡はない。
だけど、なんだろう……?



凛「人が住んでる……みたい」

穂乃果「うん」



穂乃果の前を歩く凛ちゃんの言葉に頷く。

長い間放置されてた様子じゃなくて、今でもここに人が住んでるような印象を受ける。
それは匂いとか、雰囲気とか。感覚的なことなんだけど……。



照井「狂信者か」

穂乃果「え? 今、なんてーー」




ーー ガタンッ ーー




80 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 19:04:50.78 ID:iYRe5ASE0
物音。
それは入口の方から。



凛「穂乃果ちゃん! 凛の後ろに!」

穂乃果「っ、うん!」



凛ちゃんと入れ替わって、二人の間へ。

ここまでは一本道だったはず。
でも、音がした。



照井「……ドライバーをつけろ」スッ

凛「はいっ」スッ



ーー ガチャッ ーー

ーー ガチャッ ーー


81 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 19:13:10.16 ID:iYRe5ASE0
勿論電気はついていない。
そのせいで、昼でも建物の中は薄暗かった。

だから、



「……………………」



入口、穂乃果たちの後ろから現れたその人物が、




海未「……………………」




海未ちゃんだって気づくのが遅れた。



穂乃果「海未ちゃんっ!」

凛「海未ちゃん!」



反射的に、名前を呼ぶ。
でも、海未ちゃんはそれに答えてはくれなくて。
その代わりにーー



照井「構えを解くなッ!」

凛「っ!?」

照井「来るぞ!!」



ーー バシュッ ーー



照井「くっ!?」グイッ

穂乃果「!?」



ーー ザクッ ーー



後ろに押し飛ばされた。
それを理解したのは、照井さんが咄嗟に飛ばしたビートルフォンに突き刺さっているナイフを見た後だった。
82 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 19:24:38.52 ID:iYRe5ASE0

穂乃果「っ、う、海未ちゃん……」

海未「………………」



照井「姿は変わっていない……だが、この能力は……」

凛「海未ちゃんは姿を変えずにメモリの力を使ってた!」

照井「リリーと同じ、か。やはり、亜坂という女……!」



照井さんが、海未ちゃんと私たちの間に立つ。
その手には、真っ赤なガイアメモリがあって。



照井「…………君たちは先に行け」

穂乃果「え……?」

照井「彼女は俺が助ける」

穂乃果「っ、でも!」



このまま進んでも……!
まだ!



照井「時間がないっ!!」

穂乃果「っ!?」



絢瀬亜里沙にメモリを使われれば終わりなんだろう!!

照井さんの言葉に、はっとした。
そうだった。
亜里沙ちゃんにメモリを使われたら……っ!




照井「それに君の持っているメモリでしか、南ことりは救えない」

照井「優先順位を間違えるな」



穂乃果「っ、は、はい!」
83 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 19:28:06.54 ID:iYRe5ASE0

照井さんの言葉に頷き、背を向ける。
穂乃果たちは進まなきゃだ!

去り際に、



照井「……星空」

凛「……なに?」

照井「ーーーーーーーー」

凛「…………え?」



凛ちゃんが何かを言われてたようだけど。
今は、とにかく行こう!



穂乃果「行こう! 凛ちゃん!」

凛「う、うん!!」




ーーーーーー
84 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 19:29:07.39 ID:iYRe5ASE0
ーーーーーー
85 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2018/05/19(土) 19:33:14.55 ID:iYRe5ASE0
ーーーーーー



照井「…………」

海未「…………」

照井「……」スッ


照井「……このナイフは、本物か」カランッ

海未「…………」

照井「だがーー」



照井「ーーお前は、偽者だな」

照井「園田海未、ではない」



海未?「………………」

照井「誤魔化しても無駄だ。俺個人への殺意が滲み出ているからな」

海未?「………………」

海未?「………………フ」




ーー ザザザザザザザッ ーー




「フフフフフッ」



86 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 19:38:02.36 ID:iYRe5ASE0



「バレてしまったのねぇ」



照井「…………やはり、か」

「どこで分かったのかしらぁ?」

照井「俺にーー」



「「ーー質問するな」」



照井「!?」

「知ってるわぁ。貴方がそう言うことは。だって、ずっと貴方を調べていたから」




真白「井坂先生を殺した貴方をッ!!」



87 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 19:44:54.31 ID:iYRe5ASE0

真白「私の最愛の人をッ」

真白「私を救ってくださった方をッ」

真白「殺した貴方を調べてきた」

真白「すべては復讐のためッ!!!」

真白「いかに貴方を殺そうか」

真白「惨たらしく! 絶望のなかで! 後悔をさせながら!」

真白「息絶えていくのを……私の目に、脳に焼き付けるッ!!」

真白「そして、今ッーー」




真白「貴方は私の目の前に」ニタァァ




照井「…………復讐のため、か」

照井「あの男は……いや、狂信者には何を言っても無駄か。哀れな女だ」スッ

照井「この因縁…………俺がーー」




『アクセル』




照井「振り切るぜ!」




ーーーーーー
88 :macron0320 :2018/05/19(土) 23:37:53.71 ID:iYRe5ASE0
ーーーーーー
89 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 23:43:01.09 ID:iYRe5ASE0
ーーーーーー



ーー バタンッ ーー


凛「亜里沙ちゃん!」



診察室と書かれた扉を勢いよく開けて、中に駆け込む。
そこには、



亜里沙「…………」

穂乃果「!」

凛「亜里沙ちゃん!」



いた!
亜里沙ちゃんだ!

ケガは…………見たところない。
それに……。



穂乃果「メモリもまだ差されてないみたい」

凛「よ、よかったぁ」



とりあえず一安心。
ほっと息を吐く。
90 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/19(土) 23:52:34.60 ID:iYRe5ASE0

穂乃果「…………」

凛「どうかした? 穂乃果ちゃん?」

穂乃果「……ううん。ただ、ことりちゃんはいないのかなって」



キョロキョロと周りを見ても、ことりちゃんの姿は見えない。
それに亜坂真白の姿もない。


凛「亜里沙ちゃんを拐うための場所だったのかもしれないよ?」

穂乃果「……うん。そうだね」



きっとそうだ。
ことりちゃんを見つけられないのは残念だけど、ここで彼女と戦うよりはいいよね?
そうとなったら、



穂乃果「……早くここから逃げよう」

凛「うん! ……んしょっと!」



凛ちゃんは亜里沙ちゃんを背中に乗せる。

入口は……たぶんまだ海未ちゃんと照井さんが戦ってるはず。
なら、たぶん裏口があるはずだし、そこを探しながら逃げよーー




凛「……っ」ゾクッ



凛「穂乃果ちゃんっ!!」バッ

穂乃果「え……!?」



91 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 00:02:38.36 ID:nWHD1ymZ0
突然だった。
凛ちゃんに押し倒される形で、床に倒れ込む。



凛「っ、ぶないにゃ……っ」

穂乃果「凛ちゃん……なにを……?」

凛「…………照井さんが言ったこと、こういうことだったんだね」

穂乃果「え?」



凛ちゃんの視線は、診察室の扉の向こう。
スッパリと真っ二つに切られ、意味を成していないドアの向こうに、いた。




アームズ『…………』




体の至る所に見える武装の数々。
ナイフや銃。
ノコギリにチェーンソー。
ハンマーやマシンガンまで。
その姿はまるで武器そのもののようで。
鉄格子のようなマスクは、きっと溢れ出てくる殺意を隠すためのものなんだろう。

あぁ。
本当に、嫌だよ……。
そんな姿、見たくなかったよ……。




穂乃果「海未、ちゃん……!」



92 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 00:08:10.99 ID:nWHD1ymZ0

凛「さっき、照井さんが凛に教えてくれたんだ」

凛「入口から来た海未ちゃんは、本物じゃないって」

凛「だから、たぶん奥に本物がいるだろうって」



信じたくなかったけど。
そう言って、凛ちゃんは立ち上がった。
そして、海未ちゃんと対峙する。

あの時とは違う。
今の海未ちゃんには、きっと穂乃果の言葉は届かない。
だから、後は、



穂乃果「凛ちゃん……」

凛「うん。任せて」

穂乃果「っ、お願い……海未ちゃんを助けて!」

凛「…………」



凛ちゃんは頷いた。
振り返らずに、ただ静かに頷いた。
93 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 00:14:01.46 ID:nWHD1ymZ0

凛「ねぇ、海未ちゃん」

凛「前に、凛に言ったよね」

凛「凛には何も守れないって」


アームズ『…………』


凛「前の凛だったら確かにそうだったよ。戦う心も折れちゃって、何も守れなかった」

凛「でも、今はーー」



凛「ーー違う」



凛「にこちゃんから。かよちんから。穂乃果ちゃんから」

凛「……みんなから、凛は託されたんだ」

凛「だから、今度は絶対に折れないよ」スッ




『サイクロン』




凛「変身!!」




『サイクロン!!』




サイクロン『全部、守ってみせるっ!!』



94 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 00:14:39.31 ID:nWHD1ymZ0
今回はここまで。
95 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 22:52:19.34 ID:ksncwA5m0


サイクロン『亜里沙ちゃんを安全な場所に!』

穂乃果「う、うん」

サイクロン『隙は凛が作るから!』



その言葉と同時に、凛ちゃんは前に出た。
すぐに、海未ちゃんに組み付く。



サイクロン『長くはもたないっ』



早く、と言う凛ちゃんに頷き、そのまま二人の脇を通り抜けた。



穂乃果「っ」



すぐに助けに戻るから!

ほんとはそう言いたかった。
だけど、穂乃果にはそんな力はない。
それが、



穂乃果「悔しいっ」



唇を噛む。

今は、逃げて。
凛ちゃんが戦えるようにする。
それだけしか……できない。



ーーーーーー
96 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 22:59:20.35 ID:ksncwA5m0
ーーーーーー



サイクロン『行った、ね』ググッ

アームズ『…………』



穂乃果ちゃんの後ろ姿が診療室から見えなくなったことを確認して。



サイクロン『ふっ!』バッ



後ろに跳ぶ。
今は、どうにか組み付いたけど……。



ーー バシュッ ーー


サイクロン『っ!』バッ



カンイッパツ。
さっきまで凛の脇腹があった辺りを、刀が通っていった。
もちろんそれは、目の前のドーパントが作り出したもの。
しかも、



サイクロン『ノーモーション……』



技とか速さじゃない。
本当にその予兆がない。
前に戦ったのとは、全然ちがうよ。



アームズ『…………』スッ

サイクロン『!?』



ーー ブンッ ーー



また、刀が通る。
それを避ける。

……ほんとに、考えてる暇ないや。
97 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 23:05:32.82 ID:ksncwA5m0

さらに、追撃……っ!



アームズ『……』ブンッ

サイクロン『っ』スッ



横薙ぎ。
続いて、


アームズ『……』ブンッ

サイクロン『タテっ!?』


それも、避ける。
けど、まだーー



アームズ『……』グンッ

サイクロン『ぐっ!?』バッ



最後は突きの三連撃。
さすがに、距離を取ーー



ーー ガチャリ ーー


サイクロン『銃っ、もあったんだった!?』



ーー パァァンッ ーー



サイクロン『っ、痛っ』



体をひねって、どうにか回避!
けど、少しだけかすったぽいにゃ……!

でも、



サイクロン『動けるッ!』



98 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 23:11:43.23 ID:ksncwA5m0
かすったのは肩。
衝撃が伝わっただけで、動くのには問題ない!



サイクロン『今度は!』ダッ

アームズ『……』

サイクロン『こっちから!』グッ



サイクロン『らァァッ!!』ブンッ



風を足にまとわせて、懐に飛び込む。
そのまま全体重を乗せてーー




ーー バキッ ーー



アームズ『っ』グラッ

サイクロン『よしっ!』



命中!
凛の拳は、鎧が薄いお腹を捉えた。
流石に、それには体勢が崩れる。

よし!
このまま!




ーー ガチャリ ーー




サイクロン『は……!?』

99 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 23:18:57.77 ID:ksncwA5m0
目の前。
よろけながらも、海未ちゃんは次の攻撃に移っていた。
それは、



アームズ『…………』ガシャ

サイクロン『マシンガーー』




ーー ガガガガガガッ ーー




サイクロン『っ』バッ



理解するより速く。
体が反応した。
すぐに伏せてーー



アームズ『…………』ススッ



ーー ガガガガガガッ ーー

ーー ガガガガガガッ ーー

ーー ガガガガガガッ ーー



サイクロン『っ、はっ! ぐっ!?』


一回。
二回、三回。
這いつくばりながら、避ける、逃げる。
でも、銃口は凛を追ってきていて。



サイクロン『キリがっ、ないッ!』



まだ、銃弾は凛を追いかけてくる。
さっきまでいたところを蜂の巣にしてく。
100 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 23:27:04.66 ID:ksncwA5m0
その上、



ーー ブンッ ーー



サイクロン『っ!?』



ーー ザクッ ーー



弾に交じって、ナイフも投げてくるんだから、ほんとーー



サイクロン『ぼーせんいっぽーっ、だよっ!』



元々強かったメモリの性能は、3倍に上がってるらしいし。
正直、勝てる想像ができない。
避けるだけで精一杯、にゃ。

……でも、もし、それでも勝てる可能性があるとしたらーー




ーー グラッ ーー



サイクロン『!?』



101 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 23:36:09.22 ID:ksncwA5m0

マシンガンの弾とナイフ。
全部を避け続けたせいで、足がもつれた。



アームズ『…………』グッ


ーー ガガガガガガッ ーー




アームズ『……』ブンッブンッブンッ



それをアームズは見逃さない。
マシンガンの銃口をそのまま凛の方へ動かして、さらに、ナイフも投げつけてくる。



サイクロン『…………』



そう、だよね。
『アームズ』は見逃さないはずだよね。
凛が倒れたこと。
絶好の的になるもんね。

だけど、




ーー グググググッ ーー




『なんで』倒れたのかは、きっと分からない。

元々凛は負けていて。
だから、メモリの力が3倍になったら、敵いっこない相手だ。

でも、勝機はあるはずだよ。
だって、
102 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 23:38:37.65 ID:ksncwA5m0






サイクロン『今の貴女は『海未ちゃん』じゃない!!』





103 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 23:46:48.56 ID:ksncwA5m0

凛が怖かったのは、『海未ちゃん』の『アームズ』だ。
今の意志のないただの『アームズ』なんかじゃない!

だからーー




ーー バンッ ーー



サイクロン『負けないッ!!』




地面を思いっきり蹴って、その反動で体が浮く。
左手をつき、力を入れーー



ーー バッ ーー



横に跳ぶ。
これで、攻撃は避けれた!

そして、



サイクロン『はぁっ!』ブンッ



ーー ブワッ ーー



右腕を一振り。
それで起きた風は、凛の体を前に運んでーー



アームズ『!』

サイクロン『これでもーー』ググッ




サイクロン『くらえぇぇぇッ!!!』




ーー バキィィィィィッ ーー




アームズの側頭部を蹴り抜いた。
104 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 23:53:28.83 ID:ksncwA5m0



アームズ『ガッ…………ッ!?』



ーー ドゴォッ ーー



手応えあり!
そのまま、アームズは診療室の廊下の壁に叩きつけられた。



サイクロン『はっ、はぁっ……』

アームズ『………………』



息を整えながら、そちらを見る。
壁に叩きつけられたまま、動く様子はない。

攻撃が来るとは思ってなかったところに、思いっきり蹴りを入れたんだもん。
たぶん、ダメージは想像以上だったはず。

流石に、これで…………、



ーー ガラッ ーー


アームズ『…………』ムクリ



サイクロン『…………起きる、んだ』



……そっか。
ここからがしょーねんばってやつかにゃ……。



ーーーーーー
105 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/20(日) 23:54:01.93 ID:ksncwA5m0
短いですがここまで。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/21(月) 20:27:39.22 ID:Ad5OaDmj0
おつん
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/21(月) 23:15:15.71 ID:ApP3Amo10
おつ
原作でも苦戦してたしアームズ強いよな
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/26(土) 14:08:26.60 ID:2VP5StLNO
まだ?
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/05/26(土) 20:48:41.40 ID:2netJ2qy0
保守
110 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/27(日) 20:52:15.66 ID:N7howuVn0
保守感謝です。
少しだけ。
111 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/27(日) 21:01:07.88 ID:N7howuVn0
ーーーーーー




アクセル『ハァァァッ!!』ブンッ

???『ッ』ヨロッ




横に薙いだエンジンブレードがドーパントの腹部を捉えた。
それを受けて、体勢を崩すドーパント。



???『ハァ、ハァ……』

アクセル『…………』



楽な相手だ。
動きは緩慢で、なにか特別な能力があるわけではないだろう。



アクセル『いや……』



そう思っていたのは、戦い始めてすぐの間だけだった。
なぜなら、




アクセル『いつまで人形遊びをするつもりだッ!』ブンッ



ーー ザシュッ ーー


112 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/27(日) 21:18:51.79 ID:N7howuVn0
マキシマムを使うまでもなく、その一撃で俺の目の前のドーパントは消滅する。
そして、また奴が現れる。



真白「人形遊び? 心外ねぇ」

真白「これは時間を稼ぐための策よ」



アクセル『時間を稼ぐ?』



この女はなにを言っている?
時間を稼いでなんの意味がある?
この女の身辺を探ったが、なにか組織との繋がりもない。
だから、増援が来る訳でもないはずだ。
だが、念には念をいれるべきだろう。



アクセル『残念だが、その策はーー』スッ



『トライアル』



アクセル『無駄に終わる』ガチャッ



『トライアル!!』



装甲が弾け、一気に体が軽くなる。
『トライアル』はすべてを速さで振り切るためのメモリだ。
このメモリならば、奴のメモリは未だに分からないとしても、関係ない!



アクセルT『すべて…………振り切るぜッ!!』


113 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/27(日) 21:20:41.53 ID:N7howuVn0





真白「あぁ……あぁァァァァァ……!」




114 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/27(日) 21:31:52.52 ID:N7howuVn0



ーー キィィィィィン ーー



アクセルT『!?』



トライアルへと姿を変えた瞬間、その女は叫び声を上げた。
悲鳴にも似たそれは、空気を震わせ、一瞬だが、こちらの動きを鈍らせるほど。
到底人が出せるものではなかった。

恐らく、この女、『ハイドープ』と呼ばれるドーパントだろう。

警戒し、構えを取るこちらに構わず、奴は叫び続ける。



真白「それよ、その姿……『トライアル』ッ!!」

真白「その姿で井坂先生をっ!」

真白「ァァァァァ、ハァァ……ッ!」



殺意が、高まるのを肌で感じた。
そして、



真白「………………」

真白「時間を稼いだ甲斐があったわ。その姿の貴方を殺せば、井坂先生は喜んでくださるわ」



真白「……さぁーー」



奴は遂にーー




真白「ーー絶望を知りなさい」




『ミスト』




ーーーーーー
115 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/27(日) 21:51:02.04 ID:N7howuVn0
本当に少しでしたがここまで。
13連勤半ばなのでもう寝ます。
116 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 19:49:41.21 ID:FkjkLJOg0
ほんの少しだけ。
117 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 19:57:14.23 ID:FkjkLJOg0
ーーーーーー



アームズ『…………』パァァンッ

サイクロン『っ』バッ



じょーきょーは良くない。
あの一撃を入れてから、海未ちゃんは隙ができるような攻撃をしてこなくなった。
遠くからハンドガンで射ってきたり、ナイフを投げてきたり。
隙が少なくて早い攻撃をしてくる。



サイクロン『にゃっ』フッ

アームズ『…………』ブンッ

サイクロン『っ』バッ



キリがない。
いちおう、凛はにこちゃんとかと比べたら体力はある方だけど、それでも避け続けるのは無理があるよ……。



サイクロン『……しかたない、よね』



覚悟を決めるんだ!
星空凛!

心の中で自分に言い聞かせて、凛はーー




サイクロン『やぁぁぁっ!!』ダッ




ーー前へ!
118 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 20:03:50.45 ID:FkjkLJOg0



アームズ『…………』パァァンッ ブンッ



銃弾にナイフ。
勿論凛を近づけさせたくないから、攻撃が激しくなる。
けど、投げてくるものなら動きは単純!
だから、



サイクロン『にゃっ!!』フッ

サイクロン『ふっ!』バッ

サイクロン『ほっ!!』ヒョイ



よし!
避けられる!

直線の動きをしないように、ひたすら動き続ける凛。
ジグザグに動いて、かなり体力きつい、けど!




ーー バッ ーー



サイクロン『入った!!』

アームズ『!』



攻撃が届く位置まで入った!
このまま、決めるよっ!



ーー スッ ーー


ーー ガシャンッ ーー




『サイクロンマキシマムドライブ』




119 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 20:05:39.80 ID:FkjkLJOg0
風が脚に集まってくる。
そしてーー





サイクロン『ハァァァッ!!』ブンッ





ーー蹴り抜いた。
120 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 20:11:55.23 ID:FkjkLJOg0





ーー バキィィィィィッッ ーー




サイクロン『ッ!?』



手応えは、あった。
なにか分厚い金属を蹴ったような感覚が。

目の前にあったのは、凛のマキシマムを受ける海未ちゃんの姿。
ただし、その手には大きな盾があった。
これ、にこちゃんに使ったっていう……!



アームズ『…………』グググッ

サイクロン『うぅぅぅ!!』グググッ



止められてはいるけど、凛のマキシマムはまだ生きてる。
それに、この盾はにこちゃんのマキシマムで壊せたはず!
なら、もう少し押せば……。



サイクロン『ハァァァッ!!』グググッ

アームズ『…………っ』ググッ

サイクロン『っ』




サイクロン『いけぇぇぇぇ!!!』




121 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 20:12:46.81 ID:FkjkLJOg0






ーーーー ザクッ ーーーー






122 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 20:19:16.91 ID:FkjkLJOg0



サイクロン『っ、〜〜〜〜ッ!?!?』




鋭い痛み。
見れば、凛の足の甲を、なにかが貫通していた。



サイクロン『っ、はっ、あっ……っ』グイッ

ーー ドサッ ーー



あわてて、それから足を引っこ抜く。
地面に落ちてから、どうにか海未ちゃんが持っているものを見ることができた。



サイクロン『……は、は……槍……盾から……』

アームズ『…………』



手にしている盾には、尖った槍が付けられていた。
さっきまでは、なかったのに……。
マキシマムを受けながら、それを作ったの……?
123 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 20:24:04.08 ID:FkjkLJOg0




アームズ『…………』


サイクロン『海未、ちゃん……』




倒れる凛を、見下ろす海未ちゃん。
不意に、あの時のことを思い出す。
124 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 20:26:20.98 ID:FkjkLJOg0


「…………守る、と。全部守ると言いましたね」

『はぁ、はっ……』

「亜里沙も、ことりも……私のことも守ると、そういう意味ですか」

『……そう、だ、よ……』




「その程度の力で、ですか」




『っ』

「…………」
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/29(火) 20:29:58.54 ID:FkjkLJOg0

「……凛、貴女では彼女は倒せない」



「貴女は何も守れない」



『そ、そんなの……っ』

「やらなくても分かりますよ」

『…………っ』

「…………」

『凛、は……』

「…………凛」






「今すぐ戦いから手を引きなさい」

「貴女では無理です」

「ことりを救うことも、私を止めることも」



126 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 20:34:52.12 ID:FkjkLJOg0
今も、そう言われてるような気がした。

凛には無理だって。
誰も救えないって。



アームズ『…………』

サイクロン『……はっ、は……』



倒れてる凛。
それを見下ろす海未ちゃん。



サイクロン『前と、同じ、だね……』



前と同じ……ううん。
メモリの性能が三倍になってるから、それよりもひどいかにゃ?




サイクロン『…………ははっ』

アームズ『…………』

サイクロン『ほんと、ひどいや』


127 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 20:38:43.69 ID:FkjkLJOg0
アームズは前よりもパワーアップしてて。
こっちは脚が使えないから、動くこともむずかしい。
ひどすぎて、笑えてくるよ。



サイクロン『…………ほんと、無理だよね』



無理だ。
海未ちゃんに言われた通り。
凛には、なにも守れない。



サイクロン『そんなの、分かってるよ』



分かってる。
分かってる……。

でもさーー





サイクロン『ーー約束、しちゃったんだ』



128 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 20:41:29.51 ID:FkjkLJOg0
〜〜〜〜〜〜




「ねぇ、凛ちゃん」

「なぁに、かよちん?」

「絶対帰ってきてね……」

「うん!」



「………………みんなで、だよ」



「…………うん。わかってるにゃ」

「約束だよ?」

「……約束げんまん、にゃ」



〜〜〜〜〜〜
129 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 20:46:06.45 ID:FkjkLJOg0
〜〜〜〜〜〜



「凛」

「? なに?」



「任せたわよ。にこの分まで」



「いわれなくてもそーするよ!」

「分かってるならいいわ!」



「凛」

「真姫ちゃん?」

「絶対無茶するんじゃないわよ!」

「………………」

「チョット!」

「…………えっと」

「もうっ! わかったわよ! じゃあ、代わりに……」



「ちゃんと帰ってきなさいよ……?」



「……うん! もちろんにゃ!」



〜〜〜〜〜〜
130 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 20:52:15.98 ID:FkjkLJOg0
〜〜〜〜〜〜



「凛ちゃん」

「なぁに、希ちゃん?」

「これ、持ってって」

「…………お守り?」

「そ。それな、ウチがお母さんから貰った大切なモノなんよ」

「えぇ!? そんなの、凛もらえないよ!」

「うん。あげない」

「え?」



「必ず返してな?」



「! 絶対、返すよ!」

「ん、なら、よし!」



「凛」

「うん。絵里ちゃん」

「…………私は戦えないから。本当は貴女にこんなことを頼みたくないのっ……私は凛に危険な目にあってほしくないっ」

「絵里ちゃん……」

「でもっ」

「…………ダイジョブにゃ!」

「っ、凛!」



「ことりと海未を」

「そして、亜里沙を………………お願いっ」



〜〜〜〜〜〜
131 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 21:01:31.65 ID:FkjkLJOg0



『うん。そうだね』

『やっぱり、前とは全然ちがう』



あのときだって、凛は必死だった。
大好きな海未ちゃんを止めたいって思ってた。
そんな凛の想い。

それは今だって変わらない。

でも、約束をした。
みんなと約束したんだ。

今は、あの時よりずっといろんなモノを背負ってて。
だから、すごく重くって。



『…………凛は』

『やっぱり弱いよ』

『暴走してる今の海未ちゃんよりずっと』



だから、怖くって。



『ほんとは今も泣きたいくらい痛いし』

『逃げたいくらい怖いんだ』

『だけどーー』




『ーー凛は戦う』




だからこそ、力があふれてくる。
勇気が湧いてくる。
132 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 21:03:51.64 ID:FkjkLJOg0


『みんなのところに帰るために!』

『みんなと笑い合うために!』

『だからーー』





サイクロン『ーーいくよ、海未ちゃん!』






ーーーーーー バチッ ーーーーーー





ーーーーーー
133 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/05/29(火) 21:05:31.74 ID:FkjkLJOg0
本日はここまで。
予想以上に長くなりそう……。
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