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ブレイクタイムでもなく本編に関わりは多分ないと思う幕間
◆e6bTV9S.2E
[saga]:2018/07/29(日) 20:05:39.59 ID:jH5E94240
『はっちゃけファントムシリーズ。多分、本編でなることはないです』
何かが飛んでいた。鳥ではなく、ましてや飛行機でもない、それはまさしく、人だった。人が単体で空を飛んでいる、非常識な状況。誰しもが目を疑う光景だろう。だが、それに対峙する軍隊は一切の油断もなかった。
「8時方向より、ファントム確認!」
「今日こそ撃墜するんだ!」
各々が戦闘準備を開始する。対空戦車の砲が動き出すと同時に、ファントムと呼ばれたそれは急上昇して、太陽を背にした。火砲が唸りを上げ、その火砲の陣の後ろ側から、戦闘ヘリも数機が次の攻撃の為に待機し始めた。
――だが、太陽の光に紛れたファントムを、わずかとはいえ全員どこにいるかの認識をロスとした。
前線にある戦闘車両の一台の砲が、崩れるように落ち、その間に発射された自身の弾でその部分は粉々になった。まだ、その以上に誰も反射できていない。次にその一台は左側面の車輪が全て2つに分かれて、ようやっと少しずつ周囲に異常が伝わり始めた。
落下までの猶予があったはずにも拘らず、ファントム(てき)がそこにいるという事実は、構えていたはずにも関わらず微弱な混乱として、伝播していく。
ファントムの主要な武器は、特殊な剣と斧。後は両腕に仕込まれている杭、攻撃は基本的に近接専用だが、拳銃なども所持している為、油断は出来ない。いや、油断はそれ以前の問題かもしれない。
剣が振るわれるたびに、戦闘車両群の部品が切り払われ、随行の兵士達もそれは同様だった。身に固める防具はあまりにも意味がない、ここまで見て負えない速度の相手に対して起きる、フレンドリーファイアを最小限にするのが、やっとだ。
あらためてみるファントムの装備は、フルフェイスのヘルメット、背中には長方形のパックパックの下に噴出孔をつけたような、それこそ白い小型エンジンを背負っているように見える。両腕には前腕までを覆う白い盾が装着され、その先端に射出出来る杭が少し飛び出している。上半身自体はただの革ジャンとTシャツを着ている様子。両足もブーツ上の機械的なものが太ももまで装着されていた。
対峙している軍隊は、これらの装備品を回収するに至れず、分析出来ているのはこれらの装備で人は単体で空を飛べ、気取られずに攻撃が出来る光学迷彩の一種。そう考えていた。だが、残念ながら、このファントムは光学迷彩などではなく、自力で空を飛び使用者の身体機能の補助を行うものに過ぎない。後者の分析は、着用者自身のスキルに他ならなかった。
瞬く間に地上の先陣部隊はなぎ倒されていくと、それに合わせたように戦闘ヘリが一斉に掃射を開始される。無残に切り払われた死体や戦闘車両ごと、銃弾と爆撃の嵐が清掃をするように地上へなだれ込む。そして、その清掃した地上へ、一機目の戦闘ヘリがメインのプロペラを失って降り立っていった。
『全員散開しろ! 奴はもうくうちゅ、があっ!!』
ヘリ部隊の隊長が何とか指示を出して、無残に落ちていく姿を近くにいたパイロットは見ていた。当たり前のように、ファントムが投げ放った斧が、強化ガラスを破りその隊長の身体に刺さる。ファントムはそれを確認することなくメインプロペラへ移動してその部分を切り離した。
散開を命じられたヘリ部隊だったが、ファントムの機動性は戦闘ヘリを大きく上回り、そうするまもなく飛ぶために必要な部分は本体から切り離されて落下していった。最後のヘリが爆音を上げた後、滞空しているファントムは左手をこめかみ部分に触れた。
「…残り部隊は撤退した。俺も帰還する」
180度振り返り、ファントムはどこかへと飛び去っていく。後に残ったのは、ただの正常の名残に群がるゾンビ達の群れだった。
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