相棒×聲の形「灯台下暗し」

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484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:21:26.46 ID:od/pvmOg0
竹内「そ、そんな時間なかったんだよ!」

冠城「それなら、水田校長が支援を行わなかった事を教育委員会に訴えるべきだったのでは?」

竹内「したところで無理だ!理事長はアイツの昔からの親友なんだ!」

「訴えたところで、庇い立てされるに決まってる!」

右京「なるほど……彼と理事長は、そのような関係でしたか」
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:22:42.99 ID:od/pvmOg0
冠城「けど、他にも手段はあったはずですよ」

「硝子ちゃんに配慮して、授業時間を調整するとか……」

「それでも支障が出るのだったら、八重子さんに相談するという手もあったはずですよ」

「それで彼女が聞く耳を持たなかったのなら、児童相談所に何かしらの対処を取ってもらう手もあった」

「本当に校長と八重子さんが全ての元凶だとするなら……」

「こうなる前に、自分達の状況を周囲にはっきり伝えるべきだったんじゃありませんか?」
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:23:08.91 ID:od/pvmOg0

竹内「………」


冠城の問いに、竹内は何も答えられなかった。
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:23:56.10 ID:od/pvmOg0
右京「その様子だと、今までそのような発想はなかったようですねぇ……」

「恐らくあなたは、『八重子さんや水田校長から面倒なお子様を預かった』」

「この事実にばかり気取られていた」

「それが故に、自分に何が出来るのか……どうすれば、事態を改善出来るのか……」

「それを考えるのを、すっかり忘れていた……」
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:25:37.57 ID:od/pvmOg0


「教師として……」


「いえ、人として恥ずべきことではありませんか?」

489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:27:45.54 ID:od/pvmOg0

竹内「……………」


黙ったままの竹内。一方、右京はまた生徒達の方に向き直る。
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:28:32.64 ID:od/pvmOg0
右京「君達も同様です」

「君達も、硝子ちゃんを押し付けられた……彼女の障害に振り回された」

「その事に気を取られ、見るべきものを見落としてしまった」

植野「ど、どういう事よ?」


植野の疑問に、右京は少し間を置いてこう答えた。
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:29:00.75 ID:od/pvmOg0
右京「『佐原みよこ』」

「このクラスにはもう1人、そのような名前の女の子が通っていたそうですね?」

植野「!?」


不意に出された何者かの名前に、植野は驚きの表情を見せた。
しかし、その名前に反応したのは、彼女だけではなかった。
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:31:25.98 ID:od/pvmOg0
喜多「佐原みよこちゃん?」

右京「ご存知なで?」

喜多「えぇ……私が西宮さんの為に手話を習わせようとした時、ただ1人だけ賛成してくれた娘です」

「けど、急に来なくなってしまって……」

右京「なるほど……やはり、そういう事でしたか」

植野「ど、どういう事なんだよ?大体、何でアイツの事知ってんだよ?」


植野の問いに対し、右京は次のような事を語る。
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:32:26.30 ID:od/pvmOg0
右京「実は、先程の証拠映像……初めてあれを確認した際、気になる点を見付けました」

「そこの席だけ、空いていたのです」


そう言って彼は、その席を手で指し示した。

右京の言う通りその席だけ誰も座っておらず、空席である。
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:35:47.01 ID:od/pvmOg0
右京「それを見て僕は……」

「『硝子ちゃんに味方をした為に、不登校にされてしまった子がいるのではないか?』と考え本来、その席に座っているはずの生徒を探しました」

「結果、佐原みよこちゃんの存在に行き着いたのです」

冠城「いじめは、ターゲット本人ばかりが狙われるわけではない……」

「ターゲットを庇った人間も同様の被害に遭い、不登校になるケースも少なくないからね」

植野「そ、それで……アイツはアンタらに何って言ったの?」


何処か動揺した色を見せ始める植野の問いに対し、右京らはこう答えた。
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:37:37.92 ID:od/pvmOg0

右京「根気強く聞いてみましたが、余程塞ぎ込んでいたらしく、本人から直接話しを聞く事は出来ませんでした」

冠城「その代わり、お母様から話を伺うことは出来ました」
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:38:08.64 ID:od/pvmOg0
〜回想〜


佐原母「娘が不登校になった理由…ですか?」

右京「えぇ……何か、それらしい事を仰っていませんでしたか?」

冠城「どんな細かい事でも構わないんで……」

佐原母「いいえ……何を言っても教えてくれませんでした」

右京「学校に相談は?」

佐原母「しましたが、原因については知らないの一点張りで……」

右京「なるほど……」

冠城「ところで……彼女が不登校になったのは、いつ頃なんですか?」

佐原母「確か……5月頃だったと思います」

右京「5月ですか……」


〜回想終了〜
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:41:13.01 ID:od/pvmOg0
喜多「5月?それって確か、私がみんなに手話を習わせようとした頃じゃ……」

右京「では、佐原ちゃんが不登校になったのは、喜多先生の提案に乗った後のこと……」

「何故、佐原ちゃんは喜多先生の提案に乗ったのか?恐らく、硝子ちゃんと接する為だったと思われます」

「しかし、転校から1ヶ月も経っているなら、硝子ちゃんに不満を抱いていた生徒がいてもおかしくありません」

「そうなると、考えられる事はただひとつ……」
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:42:39.24 ID:od/pvmOg0



「硝子ちゃんと仲良くしたが為に誰かにいじめられ、心を折られてしまったという事です」


499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:43:26.68 ID:od/pvmOg0
植野「!!!!」


右京の推理に、植野の表情が一気に青ざめる。

何故なら、佐原をいじめた犯人は他でもない、自分自身であったからだ。

だが、すぐに首を横に振って平静さを保つ。
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:44:04.77 ID:od/pvmOg0

植野「け、けど……自業自得じゃん!」

「西宮さんと仲良くしてたのって、ただの得点稼ぎだった訳だし……」
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:44:39.42 ID:od/pvmOg0


右京「…………」


「果たして、そうなのでしょうか?」

502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:45:29.42 ID:od/pvmOg0
植野「え…?」

右京「僕は、佐原ちゃんがどんな娘なのか、お母様に伺いました」

「すると彼女は、こう答えました……」

「『気が弱い一方で、友達想いないい子であった』と……」
503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:46:51.13 ID:od/pvmOg0
冠城「実際彼女、今年入った女の子と仲良しになった事をよく話していたそうだよ」

「おまけに、その娘の為に手話の本を買ってきて欲しとせがまれた事すらあったとか……」

右京「その仲良しになった娘と言うのは、硝子ちゃんと見て間違いないでしょう」

植野「……」
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:47:35.32 ID:od/pvmOg0
右京「これらの事実から、彼女がいかに本気で硝子ちゃんと接しようとしていたのかが見て取れます」

「このような娘が、そんな邪な感情で行動していたとは考えずらい……」

「そして、一番着目すべき点は、彼女が『友達想いな性格をしている』ことです」

「彼女が硝子ちゃんと仲良くしていたのなら、君達も例外ではなかったはず……」

「そう考えると、竹内先生の押し付けにより、このクラスの空気が悪くなっていたことを憂いていたことが想像出来ます」

「無論、状況を改善する手立ても考えたはずです」

「どうやれば、6年2組の生徒達と硝子ちゃんを仲良くさせられるのか?」

「子供である彼女に、竹内先生を動かすことは不可能です」

「ならば、自分の手で両者の関係を取り持つ他ない……」

「その末に行き着いたのが……」
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:49:39.21 ID:od/pvmOg0




「『手話を習得し、硝子ちゃんと君達の通訳者になる』」



506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:52:42.29 ID:od/pvmOg0


「……という答えだったのではないでしょうか?」

507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:53:27.49 ID:od/pvmOg0
植野「………」

「ちょっと、待って……」

「それって、つまり………」

「アイツは、あたしらを助けようとしてたってこと……?」
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:54:03.08 ID:od/pvmOg0


右京「少なくとも、僕はそう思います……」

植野「…………」

509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:55:49.25 ID:od/pvmOg0


「け、けど……そんなの分かんないじゃん……」

「刑事さんだって、アイツと直接話したわけじゃないんだろ?」

「勝手な妄想で、決めないでよ……」

510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:58:07.74 ID:od/pvmOg0
右京「確かに……」

「今話した事は、これまで得た情報から組み立てた、僕の想像……君の言うように、妄想でしかないのかもしれません」

「しかし、真実かどうか分からないからこそ、彼女の真意にもっと触れてみるべきだったのではないでしょうか?」

「得点稼ぎか否かは、それから決めても遅くはなかったと思いますよ?」

植野「…………」
511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:59:18.66 ID:od/pvmOg0
右京の言葉が、植野の心に大きくのしかかった。

確かに、あの時の自分は自分の状況ばかり考えて、佐原の考えに深入りした事はなかった。

それだけではない……

自分がいじめていた硝子の気持ちも、考えた事は一切なかった。

それを考えていたのは、黙って聞いている他の生徒達も同様である。
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 16:59:48.41 ID:od/pvmOg0
右京「誰が佐原ちゃんの心を折ったのか……それは分かりません」

「しかし、誰かが彼女の意思を汲んであげていれば、硝子ちゃんと君達の関係は変わっていた可能性があったのは事実です」

「その可能性に君達は見向きもせず、そして知らずして状況改善の糸口を絶ってしまった……」

「実に愚かだと思いませんか?」
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:00:32.02 ID:od/pvmOg0
生徒達「…………」


右京のその一言に、生徒達は言い返す言葉がなかった。

彼らの様子を確認すると、右京は冠城とアイコンタクトを取り、最後の仕上げに掛かる。
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:00:59.78 ID:od/pvmOg0
右京「硝子ちゃん……こちらに来て下さい」

冠城「石田君も……」

硝子「?」

石田「あ…うん……」


右京は手話で、冠城には口頭でそれぞれ名指しで呼ばれ、
硝子と石田は少し困惑しながらも、言われるがままに特命係の2人の前に来る。

そして、彼らは2人を生徒や竹内の方に振り向かせる。
515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:01:48.10 ID:od/pvmOg0
冠城「みんな……まず、石田君の顔を見てくれ」

「傷だらけだろ?」

「これは……君達のいじめで着いた傷だ」

島田と広瀬「「…………」」


冠城の言う通り島田らの暴行により、石田の顔は絆創膏とガーゼが貼られていて、とても痛々しかった。
4日前の傷はいくつかは完全に治っているものがあったものの、それでも治りきっていないものもいくつかある。
その上、頬には昨日島田に殴られた跡もあり、未だガーゼが貼られたままだ。
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:02:36.12 ID:od/pvmOg0
右京「次は硝子ちゃんの耳を見て下さい……」


そう言った後、右京は硝子に耳についたものをみんなに見せるよう手話で指示すると、
彼女はいう通りに補聴器を外し、右耳の耳たぶについた『それ』を生徒達に向けた。

それは、裂傷の跡であった。
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:03:42.27 ID:od/pvmOg0
右京「これは、石田君が彼女の補聴器を取った際に着いた傷です」

「余程、強く引っ張たのでしょう……未だ、跡が残っている」

冠城「みんな、これを見て何か思うことはないかい?」


問い掛ける冠城。だが、彼らはどう答えたらいいのか……

どうして急にこんなものを見せられているのか分からないのか、黙ったままだ。

答えに詰まる彼らに教えるかのように、特命係の2人はこう言った。
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:04:18.97 ID:od/pvmOg0
右京「彼らの傷は、この一連の出来事でできたものです」

「いずれも、命に別条のないものですが……」

「もし仮に、この傷が命に関わるものだったとしたら、あなた達はどうするつもりだったのでしょうか?」

冠城「それに、彼らの受けた傷は、他にもある……」
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:04:50.36 ID:od/pvmOg0


「それは、心の傷だ」

520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:07:12.34 ID:od/pvmOg0
右京「いじめというのは、人の体だけでなく、心にすら深い傷跡を刻み込んでしまいます」

「石田君の顔の傷はじきに消えるかもしれませんが、逆に心の傷はそう簡単には消すことは出来ません」

「一生分の傷として、彼らの中に残り続ける……」

「そして一生分の痛みとなって、この先も彼らを苦しめる……」

「もしそうなったら……まず最初に、人間不信に陥ってしまうでしょう」

「そしていずれは……今回の事を招いたことに尾を引かせ、苦しみ、必要以上に自分自身を責め……」
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:08:30.12 ID:od/pvmOg0



「やがて、自らの死を選ぶでしょう……」


522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:10:19.86 ID:od/pvmOg0

竹内と生徒達「……!」


右京の言葉に竹内と生徒達は、ハッとした表情を浮かべた。
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:10:46.96 ID:od/pvmOg0
右京「ようやく……分かったようですね?」

「そう……いじめというのは、時として人の命を奪ってしまうことすらある……」

「この日本で、いじめを苦に自ら命を絶った人間は、後を絶ちません」

「あなた達は、危うく2人の人間の命を……未来を奪うところだった………」
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:11:39.66 ID:od/pvmOg0



「それでもあなた達は、自分達は悪くない……」


525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:12:33.17 ID:od/pvmOg0




「悪いのは周りの人間だと断じる資格が……」



526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:13:22.54 ID:od/pvmOg0







「ありますか?」






527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:14:11.07 ID:od/pvmOg0
竹内「……………」

生徒達「……………」


右京の問いに、反論する者は誰もいなかった。

それを確認すると、特命係の2人は伍堂警部に向き直る。
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:14:39.42 ID:od/pvmOg0
右京「後は、お願いします……」

冠城「すみませんね……違う所轄の、それもこんな窓際部署のわがままに付き合わせてしまって」

伍堂警部「構いませんよ。弟の手帳の件で、借りを作ったままにしておく訳にもいきませんでしたし」

「それに……」
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:15:05.15 ID:od/pvmOg0



「こうやって犠牲になった子供達は、数が知れませんから」


530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:18:54.19 ID:od/pvmOg0

そう語る伍堂警部の目には、強い意志が宿っていた。

そんな彼の意思を汲んだのだろう、右京らは無言で頭を下げるとその場から立ち去った。
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:20:06.70 ID:od/pvmOg0
坂木「では、改めましてこの場にいる皆さん……指紋の照合にご協力願います」

「無論、生徒さん達は保護者同伴で……」

伍堂警部「西宮さんのお母さん」

「被疑者の指紋と区別を付けたいので、残る2人の家族さんにも協力して欲しいのですが……」

「構いませんか?」
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:20:33.01 ID:od/pvmOg0


八重子「…………」

「好きにして頂戴……」

533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:21:08.62 ID:od/pvmOg0
伍堂警部「ご協力、感謝します」

坂木「では、行きましょうか」

竹内「…………」

生徒達「…………」
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:21:39.98 ID:od/pvmOg0
―西宮家―


結絃「…………」

いと「これが、お母さんの全てだよ……」

「あなた達のお母さんは……」

「八重子はね、あなた達を守る為にずっと弱い自分を隠して生きてきたんだよ」
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:22:09.22 ID:od/pvmOg0
結絃「…………」

「な、何だよそれ……?」

「そんな理由あったんなら、最初から一言くらい言ってくれても良かったじゃんかよ……!」

「1人で全部背負い込みやがってよ……!」

「これじゃあ……今までバカ親呼ばわりしてたのが………」

「姉ちゃん守る為に髪まで切って……男らしく振る舞ってたのが馬鹿みたいじゃんか……!」
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:26:09.47 ID:od/pvmOg0
いと「………………」

「ごめんなさいね……」

「本当は、最初から全部話すべきだったのかもしれない……」

「けど……怖かったのよ。本当の事をあなた達に言ってしまえば、八重子の覚悟が無駄になる……」

「それこそ、この家族が壊れてしまうんじゃないかってね……」

結絃「…………」
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:26:54.71 ID:od/pvmOg0
いと「けど……それは逃げてるだけだったのかもしれないね………」

「あの娘の好きにさせておけば、あなた達が私の側に来てくれる……」

「孫に頼られるのが嬉しくて……甘えていただけだったのかもしれない」

「今のことは、もっと後になって話すつもりだったけど……」

「早め話してもいい時も、あるのかもしれないね……」

結絃「………………」
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:27:29.48 ID:od/pvmOg0

ピリリリ!

悟るかのようにいとが語った、その時であった。

突然、電話が鳴り出した。
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:29:32.36 ID:od/pvmOg0
結絃「電話?」

いと「私が出るよ」


とりあえず話を中断して、いとは受話器を手に取った。
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:31:23.56 ID:od/pvmOg0
いと「もしもし……西宮ですが?」

坂木『岐阜県警捜査一課の坂木です』

『突然で失礼ですが、西宮いとさんですね?』

いと「はい、そうですが」

坂木『もう1人の娘さんもいらっしゃいますね?』

いと「いますけど……」

坂木『では、至急署まで来て下さい。西宮硝子ちゃんのことで、調べたいことがあるんです』

いと「…………」

「分かりました……もう1人の娘と一緒に、今すぐ向かいます………」


そう言うと、いとは電話を切った。
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:32:14.94 ID:od/pvmOg0
結絃「婆ちゃん、誰から?」

いと「警察の人よ。硝子のことで来て欲しいって……」

結絃「姉ちゃんのことで?何かあったのか!?」

いと「分からないけど……とにかく、行きましょう」

結絃「うん!」
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:33:05.77 ID:od/pvmOg0
―水門小学校 校庭―


冠城「後は、岐阜県警が上手くやってくれるでしょうね」

右京「えぇ……」

「しかし、我々がすべき事はまだ残っています」

冠城「教育委員会理事長の所に行くんですね?」

右京「先程の事を確かめなければなりませんからねえ」
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:34:09.82 ID:od/pvmOg0
冠城「けど、その前にひとつ聞かせて下さい」

「硝子ちゃんの右耳に傷が残ってるなんて、どうやって知ったんですか?」

右京「補聴器は、その人に合った形のものが使用されています」

「石田君が、それを無理に外したのだとしたら、耳の一部に裂傷が生じる可能性が高い」

「無理に補聴器を取られ、消えない傷が残ったという事例はない事はありませんからねぇ……」

「もっとも、実際に気付いたのは、昨日硝子ちゃんに会った時でしたが」
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:34:50.01 ID:od/pvmOg0
冠城「何と言うか……もうさすがとしか言いようがありません」

右京「疑問も解消したところで、行きますよ」

冠城「えぇ、行きましょう!」
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:36:58.65 ID:od/pvmOg0
あれから数時間後……

いとと結絃を交えた上で、6年2組の人間全員の指紋の採取が行われ、補聴器の指紋と照合が行われた。
その結果、案の定西宮家と石田以外の6年2組の生徒数名の指紋と一致。

動かぬ証拠を突き付けられ尚且つ右京に心をへし折られた事もあり、
生徒達は硝子いじめに関与した事や黙認したこと……

石田にその事を押し付け、いじめていた事を素直に認めた。


動機は、概ねこれまでの話通りであった。

石田の硝子いじめに便乗したり黙認したりしたのは、竹内の押し付けや合唱コンクールで最下位を取った事で、
硝子に対するストレスと恨みが積もった事や、彼女と関わり合いになりたくなかったからであった。

石田に責任を押し付けたのも、彼の硝子いじめで硝子が耳を負傷し、
女子生徒が保健室に運び込む事態が起こったのを見て、自分達がその事を咎められるのを恐れたのと、
島田のような黙認組が無理矢理付き合わされそうになった事に怒ったのが動機であった。

同時に植野は、硝子だけでなく、彼女に味方していた佐原みよこをいじめていた事実も告白した。

竹内も、証拠映像を再度見せられた上で、自分の行いを全て認めたのだった。

それを聞かされた生徒の保護者達は当然ながら、彼らの行いを怒った。
中には、彼らを止めなかったことを含めて、竹内を責める親も少なくはなかった。
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:37:25.55 ID:od/pvmOg0
あれから数時間後……

いとと結絃を交えた上で、6年2組の人間全員の指紋の採取が行われ、補聴器の指紋と照合が行われた。
その結果、案の定西宮家と石田以外の6年2組の生徒数名の指紋と一致。

動かぬ証拠を突き付けられ尚且つ右京に心をへし折られた事もあり、
生徒達は硝子いじめに関与した事や黙認したこと……

石田にその事を押し付け、いじめていた事を素直に認めた。


動機は、概ねこれまでの話通りであった。

石田の硝子いじめに便乗したり黙認したりしたのは、竹内の押し付けや合唱コンクールで最下位を取った事で、
硝子に対するストレスと恨みが積もった事や、彼女と関わり合いになりたくなかったからであった。

石田に責任を押し付けたのも、彼の硝子いじめで硝子が耳を負傷し、
女子生徒が保健室に運び込む事態が起こったのを見て、自分達がその事を咎められるのを恐れたのと、
島田のような黙認組が無理矢理付き合わされそうになった事に怒ったのが動機であった。

同時に植野は、硝子だけでなく、彼女に味方していた佐原みよこをいじめていた事実も告白した。

竹内も、証拠映像を再度見せられた上で、自分の行いを全て認めたのだった。

それを聞かされた生徒の保護者達は当然ながら、彼らの行いを怒った。
中には、彼らを止めなかったことを含めて、竹内を責める親も少なくはなかった。
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:42:02.01 ID:od/pvmOg0
ミスして、二連続で書き込んでしまいました……

>>546はないものとしてお願いします……
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:42:32.62 ID:od/pvmOg0



そして……


549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:43:41.64 ID:od/pvmOg0
―取調室―


右京「水田校長……非常に残念なお知らせがあります」

「今回の件ですが、我々の見立て通り、石田君に共犯者がいたこと……」

「その原因が、竹内の硝子ちゃんへの対応不足にあった事が判明しました」

冠城「現在、彼らの身柄は少年課が預かっています」

右京「竹内は、自身の監督責任の遺棄を問われることになるでしょう」

「それだけではありません。西宮さん達の事を罵倒してしまいました……」

「彼らに対する人権侵害と名誉棄損の罪にも、問われる事になります」
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:44:38.94 ID:od/pvmOg0
冠城「懲戒免職は、免れないでしょうね」

右京「6年2組の子供達も、刑事罰を受けない代わりに家庭裁判所から厳重指導を受け」

「その後保護者の方が彼らに代わって、西宮さん達に事の責任を取ることになるでしょう」

「中には、少年院に送致される子もいるかもしれません」

水田校長「そうですか……」


特命係の2人の報告を受け、校長は残念な表情を浮かべた。
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:45:20.00 ID:od/pvmOg0
右京「しかし、これで終わりではありません」

水田校長「え…?」

冠城「立ち入り調査の際、西宮八重子さんと竹内が気になる事を言っていたんです」

「彼女らの言によると、あなたが障がい者を受け入れる学校だと嘘を吐いたこと……」

「そして、あなたが竹内の反対を押し切って彼に硝子ちゃんを押し付け、その上一切の支援を行わなかったことを………」

水田校長「…!」


冠城の言葉に、水田校長の顔が青ざめた。

それに構わず、右京はこう続ける。
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:47:22.62 ID:od/pvmOg0
右京「竹内は、あなたと理事長が親友と言っていたものでしてね……彼にも話しを聞いてみる事にしたんです」

「結果、驚くべきことが判明しました」

冠城「彼は、あなたからは硝子ちゃんいじめのこと以外、何も聞かされていなかったんです」

右京「しかし竹内は、硝子ちゃんが自分のクラスの生徒になる事を反対していました」

「そして彼女の対応に困り、あなたにその事を相談すらしている……」

「彼らがあなたに事実の一片しか伝えなかったように、あなたもまた理事長に事実の一片しか伝えていなかったんです」

冠城「彼……心底驚いていましたよ」

水田校長「…………」
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:50:07.33 ID:od/pvmOg0
右京「僕は、今回の件を調べていく内に、最初にあなたが偽証を図ったのが引っ掛かりました」

「硝子ちゃんいじめの問題は、石田家が西宮家に賠償金を支払う事で解決したことになっていたはずだったからです」

「示談が成立した案件である以上、あの場ではこれ以上の詮索は不要とするのが適切のはず……」

「なのにあなたは、必要のない嘘を我々に吐いた……」

「一体それは何故なのか?その手掛かりを求め、理事長に更に話しを伺ってみました」

冠城「その結果、有力な情報を教えて下さいました」

「あの学校……2・3年前から入学率が低下し、業績が少しずつ落ち始めていたそうですね?」

「酒の席であなたは、その事で悩んでいるのを理事長に打ち明けていた……」

水田校長「……………」
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:50:35.85 ID:od/pvmOg0

右京「この事から、ある事実が導き出されます」

「あなたが、八重子さんに嘘を吐いてまで硝子ちゃんを受け入れねばならなかった理由、それは……」
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:51:21.43 ID:od/pvmOg0



「落ち始めた学校の業績を伸ばす為ですね?」


556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:53:34.57 ID:od/pvmOg0
水田校長「…………」

「どうして、そう思うんですか?」


問いに対して校長は聞き返すと、右京はこう答えた。
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:54:12.54 ID:od/pvmOg0
右京「障害を持つお子様を受け入れれば、それだけで話題になるからです」

「世間では、障害を持つお子様を受け入れる姿勢は、プラスにとられる傾向にあります」

「それが元で、学校にお子様を入れる家庭が増える……あなたはそう考えたのでしょう」

冠城「俺達に嘘を吐いたのは、俺達の話しを聞いてまた、別のいじめが起こったのではないかと考えたから……」

「示談が成立した案件とは言え、過去にいじめが起きていた事を少しでも口にすれば、俺達にあの学校での出来事を探られることになる」

「そこから芋づる式に、障がい者の受け入れ態勢が整っていない事がバレるとあなたは考えた」
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:55:00.00 ID:od/pvmOg0
右京「だからあなたは、嘘を言ってでも警察を学校に入れたくなかった……」

「違いますか?」

水田校長「…………」


特命係の問い掛けに対し、水田校長はしばし黙ったのち、こう答えた。
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:56:26.30 ID:od/pvmOg0
水田校長「仕方がなかったんです……」

「理事長が私に託したものを守るには、こうするしかなかったんです」

冠城「理事長があなたに託した?」
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:57:06.48 ID:od/pvmOg0
水田校長「水門小学校の事ですよ……」

「刑事さんは知らないでしょうから教えてあげますが、あの学校を建てたのは、今の理事長の祖父なんです」

「祖父の代からあの学校を守り続けてきた彼は、ある時親友の私にあの学校を託しました」

「その時、彼は私にこう言いました」

「『祖父の代から続いたこの学校を守ってくれ』と……」

「しかし、3年前からどういう訳か入学率が落ち始めました……」

「このまま放っておけば、いずれ水門小学校は他の学校の後れを取り、経営難に陥る……」

「そんな危機感に駆られました」

右京「その矢先に現れたのが、西宮硝子ちゃんだった……」
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:57:34.86 ID:od/pvmOg0
水田校長「硝子ちゃんが障がい者だと聞かされ、始めは受け入れを拒否しようと思いました」

「しかし、普通じゃない子供がウチに入れば、周囲から注目が集まるのではないか?」

「それが元で、またこの学校に子供達を入れる人が増えるのではないか?」

「そう考えました……」

「しかし、当校は障がい者を受け入れた事が一度もなく、受け入れ態勢やサービスが不十分で準備する時間もありませんでした」

「ですが、喜多君が前の学校できこえの教室の教師をやっていたと聞いて……それで大丈夫だろうと思ったんです」

右京「……………」
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:58:07.10 ID:od/pvmOg0
水田校長「とにかく私は、どんな手を使ってでも、守らなければならなかったんです」

「あの人が祖父の代から守り続けてきたあの学校を……!」


悲痛な胸の内を水田校長は明かす。

しかし、それを聞いた右京らはいい顔をしなかった。
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:59:41.83 ID:od/pvmOg0
右京「水田校長。あなたが、友人の思いに報いろうとする気持ちがあった事は分かりました」

「しかし……本来学校は、子供達が正しき未来へ歩むのに必要なものを与える為にある場所だったはずです」

「今回、あなたがした事により、未来ある子供達が道を踏み外してしまいました」

「彼らだけではありません……竹内もです」

「彼も、本来生徒を導くべき立場の人間だったはずが、あなたが何の準備もなく硝子ちゃんを入れた事により」

「自身の使命を放棄し、硝子ちゃんと石田君の身を危険に曝してしまった……」

「それどころかあなたは、八重子さんを始めとした、親御さんたちの期待と信用すら裏切った」

「果たして、これで理事長は喜ぶのでしょうか?」

水田校長「……………」
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:03:43.99 ID:od/pvmOg0
右京「今回の件であなたは、我々に対する偽証といじめ問題の調査不足や理事長に対する虚偽の報告……」

「そして、八重子さんに対する詐欺などの罪で裁かれる事になるでしょう」

「校長の免許も、剥奪されることになると思います」

冠城「しかし……それで苦しむのは、あなただけではありません」

「あの学校と理事長もです」

「今回の事で、あの学校で起こった出来事は世間に広まる事になるでしょう」

「そうなれば批判の矢面に立たされ、水門小学校の評判は地に落ちる……」

「そのことで苦しむ毎日があの学校を待っている事でしょう」

「理事長もあなたの不祥事を見抜けなかった事で、何かしらの責任をとる事になると思いますよ」

水田校長「そ、そんな……どうして?」
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:04:56.00 ID:od/pvmOg0
冠城「それは、あなたが硝子ちゃんを学校の売名に利用しようとしたからです」

「彼女は、1人の人間だ。理事長から預かった学校を守るための道具なんかじゃない」

右京「そもそも、受け入れ態勢の整っていない状況で、彼女を入れればどうなるか……結果は最初から分かっていたはずです」

「あなたは、友人から預かった学校を守りたいという焦りから、そんな大事なことすら忘れてしまった……」

「親友の約束の為と思ってした事が、あなたの親友がお爺様の代から守って来たものを壊してしまったのです」

「それだけではありません。あなたは……」
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:05:35.64 ID:od/pvmOg0







「あの学校を守ってくれると期待を抱いた親友すら、裏切ってしまった」






567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:06:11.50 ID:od/pvmOg0
水田校長「…………!」


右京の言葉に、水田校長はようやく自分が取り返しの付かない事をしてしまった事に気付いた。

それを知り彼は、俯いて涙を流した。
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:09:05.81 ID:od/pvmOg0


今更泣いたところで、もう遅い……


それでも、今の彼にはこうする事しか出来なかった……

569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:12:22.52 ID:od/pvmOg0
数週間後……


事件を起こした者達に、家庭裁判所から罰が下された。

竹内は右京達の見立て通り、監督責任の放棄や
石田・西宮両家に対する人権侵害と名誉棄損等の罪で彼らに罰金を支払った上で、懲戒免職が下された。

生徒達は、島田と広瀬のような直接的に手を出した生徒達は、少年院へと送致され、それ以外は厳重指導を受ける事となった。
その後、彼らに代わって保護者達が、西宮・石田両家に多額の謝礼金を支払わされることになったという。

植野は石田に対する行いを強く反省している意思が認められた為、
石田家への処分は謝罪だけで済まされたが、その代わり西宮家に対しては他の生徒達と同等の罰金を支払う事になった。
佐原みよこに対しても、相応の対応を取らされたのは言うまでもない。

水田校長は、硝子の受け入れ態勢を整えていなかったにもかかわらず、
八重子にその事を伝えなかった事や、右京ら警察に対する偽証の罪に問われ、
竹内同様西宮・石田家に罰金を支払ったうえで懲戒免職になった。

理事長も、水田校長の虚偽の報告を見抜けなかったことや、
親友の暴走を止められなかったことに責任を感じ、
西宮家と石田家に謝罪と謝礼金を送った上で、辞任を表明したという。

ちなみに、ここまで彼らが西宮家と石田家に支払った金額は、
石田美也子が西宮八重子に支払った170万円の倍の額だったとの事である。


一方喜多は、違法行為に手を染めてはいなかったので、これと言った処罰やペナルティはなかったが、
今回の件を機に、周囲の人間の事を考えてことを進めようと決心したらしい。

最後に残された水門小学校は、右京の言う通り世間からバッシングを受け、生徒を退学させる家庭も発生。
それに加え、マスコミや報道関係者も、今回の事を過剰ともいえる程に報道し、
その対応に追われる毎日を送る事となった。
570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:14:33.21 ID:od/pvmOg0
ここまで見て分かる通り、これ程の大事になったにもかかわらず、
石田はこれ以上の罪に問われず、むしろ家庭裁判所からは硝子と同列に扱われた。

理由は、美也子が八重子に補聴器の賠償金を支払ったことで既に示談が成立していたこと、
それ以降、硝子に対するいじめが確認されていなかった等の理由から、これ以上の罪には問えないと判断されたのだ。

この判断に生徒の親の何人かは難色を示したものの、一方で生徒達と竹内は文句を言う事はなかった。

石田家が西宮家に賠償金を支払うよう仕向け、石田があれ以上の硝子いじめを行えない状況を作ったのは、他でもない自分達であったからだ。

そんな事をした自分達に、家庭裁判所の判断を非難する資格はない……

自分達に責任を擦り付けられたのが、硝子いじめを行った石田へのしっぺ返しなら、
これこそが、石田の罪を利用した自分達に対するしっぺ返しなのだろう……
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:15:47.41 ID:od/pvmOg0



こうして硝子と石田を巡るいじめ問題は、犯人達が因果応報の結末を迎える事で解決したのだった。


572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:16:42.14 ID:od/pvmOg0
4日目(第4話)はここまで。

水門小学校には障がい者の受け入れ態勢が整っておらず、
その上校長が八重子に嘘を吐いてしまった……というのが、今回の独自設定です。
喜多先生の設定も原作オリジナル版に+αした感じです。

とはいえ、今回の展開も含めてちょっと微妙だったかなーとも思います。

自分で書いておいて何ですが、今回色々と結構間違ってると思います……


何はともあれ、次回はいよいよ最終日もとい最終回です。

そう、まだ続くんじゃよ……
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/05(火) 18:23:28.66 ID:HQUGJL+xO
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:25:51.18 ID:od/pvmOg0
最後に補足です……


その1.伍堂清太郎

伍堂圭三刑事の兄で、岐阜県警捜査一課の警部。
兄弟だけあって弟と顔が似ているものの、こちらはしっかりした性格をしている。
おまけに義理堅く、特命係が伍堂刑事のクビの危機を救ったという事で彼らに協力しました。
警察官として真面目な人で、特に今回のようなケースは絶対に見逃しません。

とまあ、今回特命係に協力する刑事さんが必要だから出した……そんな感じのキャラクターです。


その2.坂木利久男

伍堂警部の部下……としか言いようのない人ですが、実は当初は名無しでした。
でも、周りが名前ありの刑事ばかりなのに、彼だけ名無しなのはどうかなと思い設定しました。

ちなみに、彼らの名前も特に元ネタはありません。


最後に、多分察している方もいるかもですが、
右京さんは植野が佐原をいじめたことに途中から気付いています。
しかし、佐原の真意に見向きしなかったのは他の生徒も同様ですし、
何しろ後で本人が認めるだろうと思い、あの場ではあえて明言しませんでした。
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:26:41.65 ID:od/pvmOg0
今日は以上ですが、次回は完結なので出来ることなら早めに投下したいところであります……
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 18:31:16.67 ID:uLr/OLva0
ちょっと疑問ですけど原作の水門小学校はたぶん公立だよ。
私立ならともかく公立小学校に理事長なんて普通いないんじゃない?
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 18:52:09.38 ID:od/pvmOg0
>>576

!?

完全に調査不足でした、申し訳ありません……orz
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 18:51:37.40 ID:2/I9ouOR0
乙です
いじめが人殺しに直結する、教育上のトラブルよりも桁外れに悪質で危険な人権蹂躙、犯罪的行為である事
それぞれに被害者の面があっても、責任が無い弱い立場である硝子を精神的に虐待した時点で何の正当性もない事、
元々右京さんはこの辺りの事をきっちり口に出す人ですが、
右京さんよりも若いGTO冠城が硝子をいじめた児童達に、竹内に押し付けられた只の腹いせだとはっきり伝えた事。
一見傍若無人な右京さんが、最終的には警察官としての公的な対処、解決を一番大事にしている事
責任と原因の分担、分析が丁寧になされているため、
何より頭脳明晰な「正義の警察官」である特命係の物語として好感が持てました。

備考)近年の少年法改正で少年院送致の下限は「概ね12歳」となりましたが、
小学生の犯罪に適用するのは直接殺しでもしない限り実務的には難しいです。
このお話なら、児童自立支援施設(旧教護院)が現実的な上限でしょう。
正直、他にもありますが、メインの筋道が通っているので
そういう事を大事にする「相棒」、右京さん達とのクロスオーバーとして楽しめました。
なんか上からの書き方になってしまって失礼しました。
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 19:58:54.54 ID:eRIJKW/H0
呪怨とぬ〜べ〜のクロスオーバーも読みたいです、次回もし書いてくれる気があるならよろしくお願いします
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 20:57:53.33 ID:9JaJgZfq0
>>578
感想とご指摘、どうもありがとうございます。
またしても、私めの調査不足が露呈してしまいましたね……
上の件も併せて、下調べって本当に大事なんだなと痛感しております……

>>579
申し訳ありません……
一応それなりに知っている作品ではありますが、書く予定はありません。
それに私の場合、自分の書きたい作品は自分で決める方針でいきますので、
リクエストにお答えする事はできないことをご了承下さい……
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 20:58:29.49 ID:9JaJgZfq0
そして時間が出来たので、昨日に引き続いて続きを投下です。

いよいよ、完結でございます……
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 20:59:41.33 ID:9JaJgZfq0
相棒×聲の形 〜最終日〜


あれから更に数日後……

特命係は再び水門市の西宮家を訪れた。


右京「お邪魔します」

結絃「あ……母さん!婆ちゃん!あの時の刑事さん達が来たよー!」


こうして、結絃の案内により特命係の2人は居間へ案内された。
居間にはいとだけではなく、八重子と硝子も待っていた。


八重子「あなた達また来たの?」

冠城「申し訳ありませんね。当事者として、解決後の被害者の様子も確認しなくちゃならないんで………」

八重子「ふん……用が済んだらさっさと帰ることね」


ぶっきらぼうに返す八重子であったが、不思議と棘のある感じはしなかった。

なので冠城は、「そうさせてもらいます」と笑顔で返した。
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:01:20.32 ID:9JaJgZfq0
いと「硝子の件は、本当の感謝しています……」

「まさか、まだいじめられていたなんて、思ってもみませんでした」

結絃「ホントだよ。いきなり指紋取らせてくれとか言われたと思ったら……」

「あの先生や石田以外の連中も犯人だとか聞かされて、ビックリしたよ」

いと「八重子もこれに懲りて、今度からは硝子を入れる学校の事をちゃんと考えてくれると言ってくました」

「そして、孫達と八重子の関係も以前より良くなりました」

「これも全部、あなた達のおかげです……」
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