相棒×聲の形「灯台下暗し」

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531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:20:06.70 ID:od/pvmOg0
坂木「では、改めましてこの場にいる皆さん……指紋の照合にご協力願います」

「無論、生徒さん達は保護者同伴で……」

伍堂警部「西宮さんのお母さん」

「被疑者の指紋と区別を付けたいので、残る2人の家族さんにも協力して欲しいのですが……」

「構いませんか?」
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:20:33.01 ID:od/pvmOg0


八重子「…………」

「好きにして頂戴……」

533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:21:08.62 ID:od/pvmOg0
伍堂警部「ご協力、感謝します」

坂木「では、行きましょうか」

竹内「…………」

生徒達「…………」
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:21:39.98 ID:od/pvmOg0
―西宮家―


結絃「…………」

いと「これが、お母さんの全てだよ……」

「あなた達のお母さんは……」

「八重子はね、あなた達を守る為にずっと弱い自分を隠して生きてきたんだよ」
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:22:09.22 ID:od/pvmOg0
結絃「…………」

「な、何だよそれ……?」

「そんな理由あったんなら、最初から一言くらい言ってくれても良かったじゃんかよ……!」

「1人で全部背負い込みやがってよ……!」

「これじゃあ……今までバカ親呼ばわりしてたのが………」

「姉ちゃん守る為に髪まで切って……男らしく振る舞ってたのが馬鹿みたいじゃんか……!」
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:26:09.47 ID:od/pvmOg0
いと「………………」

「ごめんなさいね……」

「本当は、最初から全部話すべきだったのかもしれない……」

「けど……怖かったのよ。本当の事をあなた達に言ってしまえば、八重子の覚悟が無駄になる……」

「それこそ、この家族が壊れてしまうんじゃないかってね……」

結絃「…………」
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:26:54.71 ID:od/pvmOg0
いと「けど……それは逃げてるだけだったのかもしれないね………」

「あの娘の好きにさせておけば、あなた達が私の側に来てくれる……」

「孫に頼られるのが嬉しくて……甘えていただけだったのかもしれない」

「今のことは、もっと後になって話すつもりだったけど……」

「早め話してもいい時も、あるのかもしれないね……」

結絃「………………」
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:27:29.48 ID:od/pvmOg0

ピリリリ!

悟るかのようにいとが語った、その時であった。

突然、電話が鳴り出した。
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:29:32.36 ID:od/pvmOg0
結絃「電話?」

いと「私が出るよ」


とりあえず話を中断して、いとは受話器を手に取った。
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:31:23.56 ID:od/pvmOg0
いと「もしもし……西宮ですが?」

坂木『岐阜県警捜査一課の坂木です』

『突然で失礼ですが、西宮いとさんですね?』

いと「はい、そうですが」

坂木『もう1人の娘さんもいらっしゃいますね?』

いと「いますけど……」

坂木『では、至急署まで来て下さい。西宮硝子ちゃんのことで、調べたいことがあるんです』

いと「…………」

「分かりました……もう1人の娘と一緒に、今すぐ向かいます………」


そう言うと、いとは電話を切った。
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:32:14.94 ID:od/pvmOg0
結絃「婆ちゃん、誰から?」

いと「警察の人よ。硝子のことで来て欲しいって……」

結絃「姉ちゃんのことで?何かあったのか!?」

いと「分からないけど……とにかく、行きましょう」

結絃「うん!」
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:33:05.77 ID:od/pvmOg0
―水門小学校 校庭―


冠城「後は、岐阜県警が上手くやってくれるでしょうね」

右京「えぇ……」

「しかし、我々がすべき事はまだ残っています」

冠城「教育委員会理事長の所に行くんですね?」

右京「先程の事を確かめなければなりませんからねえ」
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:34:09.82 ID:od/pvmOg0
冠城「けど、その前にひとつ聞かせて下さい」

「硝子ちゃんの右耳に傷が残ってるなんて、どうやって知ったんですか?」

右京「補聴器は、その人に合った形のものが使用されています」

「石田君が、それを無理に外したのだとしたら、耳の一部に裂傷が生じる可能性が高い」

「無理に補聴器を取られ、消えない傷が残ったという事例はない事はありませんからねぇ……」

「もっとも、実際に気付いたのは、昨日硝子ちゃんに会った時でしたが」
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:34:50.01 ID:od/pvmOg0
冠城「何と言うか……もうさすがとしか言いようがありません」

右京「疑問も解消したところで、行きますよ」

冠城「えぇ、行きましょう!」
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:36:58.65 ID:od/pvmOg0
あれから数時間後……

いとと結絃を交えた上で、6年2組の人間全員の指紋の採取が行われ、補聴器の指紋と照合が行われた。
その結果、案の定西宮家と石田以外の6年2組の生徒数名の指紋と一致。

動かぬ証拠を突き付けられ尚且つ右京に心をへし折られた事もあり、
生徒達は硝子いじめに関与した事や黙認したこと……

石田にその事を押し付け、いじめていた事を素直に認めた。


動機は、概ねこれまでの話通りであった。

石田の硝子いじめに便乗したり黙認したりしたのは、竹内の押し付けや合唱コンクールで最下位を取った事で、
硝子に対するストレスと恨みが積もった事や、彼女と関わり合いになりたくなかったからであった。

石田に責任を押し付けたのも、彼の硝子いじめで硝子が耳を負傷し、
女子生徒が保健室に運び込む事態が起こったのを見て、自分達がその事を咎められるのを恐れたのと、
島田のような黙認組が無理矢理付き合わされそうになった事に怒ったのが動機であった。

同時に植野は、硝子だけでなく、彼女に味方していた佐原みよこをいじめていた事実も告白した。

竹内も、証拠映像を再度見せられた上で、自分の行いを全て認めたのだった。

それを聞かされた生徒の保護者達は当然ながら、彼らの行いを怒った。
中には、彼らを止めなかったことを含めて、竹内を責める親も少なくはなかった。
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:37:25.55 ID:od/pvmOg0
あれから数時間後……

いとと結絃を交えた上で、6年2組の人間全員の指紋の採取が行われ、補聴器の指紋と照合が行われた。
その結果、案の定西宮家と石田以外の6年2組の生徒数名の指紋と一致。

動かぬ証拠を突き付けられ尚且つ右京に心をへし折られた事もあり、
生徒達は硝子いじめに関与した事や黙認したこと……

石田にその事を押し付け、いじめていた事を素直に認めた。


動機は、概ねこれまでの話通りであった。

石田の硝子いじめに便乗したり黙認したりしたのは、竹内の押し付けや合唱コンクールで最下位を取った事で、
硝子に対するストレスと恨みが積もった事や、彼女と関わり合いになりたくなかったからであった。

石田に責任を押し付けたのも、彼の硝子いじめで硝子が耳を負傷し、
女子生徒が保健室に運び込む事態が起こったのを見て、自分達がその事を咎められるのを恐れたのと、
島田のような黙認組が無理矢理付き合わされそうになった事に怒ったのが動機であった。

同時に植野は、硝子だけでなく、彼女に味方していた佐原みよこをいじめていた事実も告白した。

竹内も、証拠映像を再度見せられた上で、自分の行いを全て認めたのだった。

それを聞かされた生徒の保護者達は当然ながら、彼らの行いを怒った。
中には、彼らを止めなかったことを含めて、竹内を責める親も少なくはなかった。
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:42:02.01 ID:od/pvmOg0
ミスして、二連続で書き込んでしまいました……

>>546はないものとしてお願いします……
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:42:32.62 ID:od/pvmOg0



そして……


549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:43:41.64 ID:od/pvmOg0
―取調室―


右京「水田校長……非常に残念なお知らせがあります」

「今回の件ですが、我々の見立て通り、石田君に共犯者がいたこと……」

「その原因が、竹内の硝子ちゃんへの対応不足にあった事が判明しました」

冠城「現在、彼らの身柄は少年課が預かっています」

右京「竹内は、自身の監督責任の遺棄を問われることになるでしょう」

「それだけではありません。西宮さん達の事を罵倒してしまいました……」

「彼らに対する人権侵害と名誉棄損の罪にも、問われる事になります」
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:44:38.94 ID:od/pvmOg0
冠城「懲戒免職は、免れないでしょうね」

右京「6年2組の子供達も、刑事罰を受けない代わりに家庭裁判所から厳重指導を受け」

「その後保護者の方が彼らに代わって、西宮さん達に事の責任を取ることになるでしょう」

「中には、少年院に送致される子もいるかもしれません」

水田校長「そうですか……」


特命係の2人の報告を受け、校長は残念な表情を浮かべた。
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:45:20.00 ID:od/pvmOg0
右京「しかし、これで終わりではありません」

水田校長「え…?」

冠城「立ち入り調査の際、西宮八重子さんと竹内が気になる事を言っていたんです」

「彼女らの言によると、あなたが障がい者を受け入れる学校だと嘘を吐いたこと……」

「そして、あなたが竹内の反対を押し切って彼に硝子ちゃんを押し付け、その上一切の支援を行わなかったことを………」

水田校長「…!」


冠城の言葉に、水田校長の顔が青ざめた。

それに構わず、右京はこう続ける。
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:47:22.62 ID:od/pvmOg0
右京「竹内は、あなたと理事長が親友と言っていたものでしてね……彼にも話しを聞いてみる事にしたんです」

「結果、驚くべきことが判明しました」

冠城「彼は、あなたからは硝子ちゃんいじめのこと以外、何も聞かされていなかったんです」

右京「しかし竹内は、硝子ちゃんが自分のクラスの生徒になる事を反対していました」

「そして彼女の対応に困り、あなたにその事を相談すらしている……」

「彼らがあなたに事実の一片しか伝えなかったように、あなたもまた理事長に事実の一片しか伝えていなかったんです」

冠城「彼……心底驚いていましたよ」

水田校長「…………」
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:50:07.33 ID:od/pvmOg0
右京「僕は、今回の件を調べていく内に、最初にあなたが偽証を図ったのが引っ掛かりました」

「硝子ちゃんいじめの問題は、石田家が西宮家に賠償金を支払う事で解決したことになっていたはずだったからです」

「示談が成立した案件である以上、あの場ではこれ以上の詮索は不要とするのが適切のはず……」

「なのにあなたは、必要のない嘘を我々に吐いた……」

「一体それは何故なのか?その手掛かりを求め、理事長に更に話しを伺ってみました」

冠城「その結果、有力な情報を教えて下さいました」

「あの学校……2・3年前から入学率が低下し、業績が少しずつ落ち始めていたそうですね?」

「酒の席であなたは、その事で悩んでいるのを理事長に打ち明けていた……」

水田校長「……………」
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:50:35.85 ID:od/pvmOg0

右京「この事から、ある事実が導き出されます」

「あなたが、八重子さんに嘘を吐いてまで硝子ちゃんを受け入れねばならなかった理由、それは……」
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:51:21.43 ID:od/pvmOg0



「落ち始めた学校の業績を伸ばす為ですね?」


556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:53:34.57 ID:od/pvmOg0
水田校長「…………」

「どうして、そう思うんですか?」


問いに対して校長は聞き返すと、右京はこう答えた。
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:54:12.54 ID:od/pvmOg0
右京「障害を持つお子様を受け入れれば、それだけで話題になるからです」

「世間では、障害を持つお子様を受け入れる姿勢は、プラスにとられる傾向にあります」

「それが元で、学校にお子様を入れる家庭が増える……あなたはそう考えたのでしょう」

冠城「俺達に嘘を吐いたのは、俺達の話しを聞いてまた、別のいじめが起こったのではないかと考えたから……」

「示談が成立した案件とは言え、過去にいじめが起きていた事を少しでも口にすれば、俺達にあの学校での出来事を探られることになる」

「そこから芋づる式に、障がい者の受け入れ態勢が整っていない事がバレるとあなたは考えた」
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:55:00.00 ID:od/pvmOg0
右京「だからあなたは、嘘を言ってでも警察を学校に入れたくなかった……」

「違いますか?」

水田校長「…………」


特命係の問い掛けに対し、水田校長はしばし黙ったのち、こう答えた。
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:56:26.30 ID:od/pvmOg0
水田校長「仕方がなかったんです……」

「理事長が私に託したものを守るには、こうするしかなかったんです」

冠城「理事長があなたに託した?」
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:57:06.48 ID:od/pvmOg0
水田校長「水門小学校の事ですよ……」

「刑事さんは知らないでしょうから教えてあげますが、あの学校を建てたのは、今の理事長の祖父なんです」

「祖父の代からあの学校を守り続けてきた彼は、ある時親友の私にあの学校を託しました」

「その時、彼は私にこう言いました」

「『祖父の代から続いたこの学校を守ってくれ』と……」

「しかし、3年前からどういう訳か入学率が落ち始めました……」

「このまま放っておけば、いずれ水門小学校は他の学校の後れを取り、経営難に陥る……」

「そんな危機感に駆られました」

右京「その矢先に現れたのが、西宮硝子ちゃんだった……」
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:57:34.86 ID:od/pvmOg0
水田校長「硝子ちゃんが障がい者だと聞かされ、始めは受け入れを拒否しようと思いました」

「しかし、普通じゃない子供がウチに入れば、周囲から注目が集まるのではないか?」

「それが元で、またこの学校に子供達を入れる人が増えるのではないか?」

「そう考えました……」

「しかし、当校は障がい者を受け入れた事が一度もなく、受け入れ態勢やサービスが不十分で準備する時間もありませんでした」

「ですが、喜多君が前の学校できこえの教室の教師をやっていたと聞いて……それで大丈夫だろうと思ったんです」

右京「……………」
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:58:07.10 ID:od/pvmOg0
水田校長「とにかく私は、どんな手を使ってでも、守らなければならなかったんです」

「あの人が祖父の代から守り続けてきたあの学校を……!」


悲痛な胸の内を水田校長は明かす。

しかし、それを聞いた右京らはいい顔をしなかった。
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 17:59:41.83 ID:od/pvmOg0
右京「水田校長。あなたが、友人の思いに報いろうとする気持ちがあった事は分かりました」

「しかし……本来学校は、子供達が正しき未来へ歩むのに必要なものを与える為にある場所だったはずです」

「今回、あなたがした事により、未来ある子供達が道を踏み外してしまいました」

「彼らだけではありません……竹内もです」

「彼も、本来生徒を導くべき立場の人間だったはずが、あなたが何の準備もなく硝子ちゃんを入れた事により」

「自身の使命を放棄し、硝子ちゃんと石田君の身を危険に曝してしまった……」

「それどころかあなたは、八重子さんを始めとした、親御さんたちの期待と信用すら裏切った」

「果たして、これで理事長は喜ぶのでしょうか?」

水田校長「……………」
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:03:43.99 ID:od/pvmOg0
右京「今回の件であなたは、我々に対する偽証といじめ問題の調査不足や理事長に対する虚偽の報告……」

「そして、八重子さんに対する詐欺などの罪で裁かれる事になるでしょう」

「校長の免許も、剥奪されることになると思います」

冠城「しかし……それで苦しむのは、あなただけではありません」

「あの学校と理事長もです」

「今回の事で、あの学校で起こった出来事は世間に広まる事になるでしょう」

「そうなれば批判の矢面に立たされ、水門小学校の評判は地に落ちる……」

「そのことで苦しむ毎日があの学校を待っている事でしょう」

「理事長もあなたの不祥事を見抜けなかった事で、何かしらの責任をとる事になると思いますよ」

水田校長「そ、そんな……どうして?」
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:04:56.00 ID:od/pvmOg0
冠城「それは、あなたが硝子ちゃんを学校の売名に利用しようとしたからです」

「彼女は、1人の人間だ。理事長から預かった学校を守るための道具なんかじゃない」

右京「そもそも、受け入れ態勢の整っていない状況で、彼女を入れればどうなるか……結果は最初から分かっていたはずです」

「あなたは、友人から預かった学校を守りたいという焦りから、そんな大事なことすら忘れてしまった……」

「親友の約束の為と思ってした事が、あなたの親友がお爺様の代から守って来たものを壊してしまったのです」

「それだけではありません。あなたは……」
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:05:35.64 ID:od/pvmOg0







「あの学校を守ってくれると期待を抱いた親友すら、裏切ってしまった」






567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:06:11.50 ID:od/pvmOg0
水田校長「…………!」


右京の言葉に、水田校長はようやく自分が取り返しの付かない事をしてしまった事に気付いた。

それを知り彼は、俯いて涙を流した。
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:09:05.81 ID:od/pvmOg0


今更泣いたところで、もう遅い……


それでも、今の彼にはこうする事しか出来なかった……

569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:12:22.52 ID:od/pvmOg0
数週間後……


事件を起こした者達に、家庭裁判所から罰が下された。

竹内は右京達の見立て通り、監督責任の放棄や
石田・西宮両家に対する人権侵害と名誉棄損等の罪で彼らに罰金を支払った上で、懲戒免職が下された。

生徒達は、島田と広瀬のような直接的に手を出した生徒達は、少年院へと送致され、それ以外は厳重指導を受ける事となった。
その後、彼らに代わって保護者達が、西宮・石田両家に多額の謝礼金を支払わされることになったという。

植野は石田に対する行いを強く反省している意思が認められた為、
石田家への処分は謝罪だけで済まされたが、その代わり西宮家に対しては他の生徒達と同等の罰金を支払う事になった。
佐原みよこに対しても、相応の対応を取らされたのは言うまでもない。

水田校長は、硝子の受け入れ態勢を整えていなかったにもかかわらず、
八重子にその事を伝えなかった事や、右京ら警察に対する偽証の罪に問われ、
竹内同様西宮・石田家に罰金を支払ったうえで懲戒免職になった。

理事長も、水田校長の虚偽の報告を見抜けなかったことや、
親友の暴走を止められなかったことに責任を感じ、
西宮家と石田家に謝罪と謝礼金を送った上で、辞任を表明したという。

ちなみに、ここまで彼らが西宮家と石田家に支払った金額は、
石田美也子が西宮八重子に支払った170万円の倍の額だったとの事である。


一方喜多は、違法行為に手を染めてはいなかったので、これと言った処罰やペナルティはなかったが、
今回の件を機に、周囲の人間の事を考えてことを進めようと決心したらしい。

最後に残された水門小学校は、右京の言う通り世間からバッシングを受け、生徒を退学させる家庭も発生。
それに加え、マスコミや報道関係者も、今回の事を過剰ともいえる程に報道し、
その対応に追われる毎日を送る事となった。
570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:14:33.21 ID:od/pvmOg0
ここまで見て分かる通り、これ程の大事になったにもかかわらず、
石田はこれ以上の罪に問われず、むしろ家庭裁判所からは硝子と同列に扱われた。

理由は、美也子が八重子に補聴器の賠償金を支払ったことで既に示談が成立していたこと、
それ以降、硝子に対するいじめが確認されていなかった等の理由から、これ以上の罪には問えないと判断されたのだ。

この判断に生徒の親の何人かは難色を示したものの、一方で生徒達と竹内は文句を言う事はなかった。

石田家が西宮家に賠償金を支払うよう仕向け、石田があれ以上の硝子いじめを行えない状況を作ったのは、他でもない自分達であったからだ。

そんな事をした自分達に、家庭裁判所の判断を非難する資格はない……

自分達に責任を擦り付けられたのが、硝子いじめを行った石田へのしっぺ返しなら、
これこそが、石田の罪を利用した自分達に対するしっぺ返しなのだろう……
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:15:47.41 ID:od/pvmOg0



こうして硝子と石田を巡るいじめ問題は、犯人達が因果応報の結末を迎える事で解決したのだった。


572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:16:42.14 ID:od/pvmOg0
4日目(第4話)はここまで。

水門小学校には障がい者の受け入れ態勢が整っておらず、
その上校長が八重子に嘘を吐いてしまった……というのが、今回の独自設定です。
喜多先生の設定も原作オリジナル版に+αした感じです。

とはいえ、今回の展開も含めてちょっと微妙だったかなーとも思います。

自分で書いておいて何ですが、今回色々と結構間違ってると思います……


何はともあれ、次回はいよいよ最終日もとい最終回です。

そう、まだ続くんじゃよ……
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/05(火) 18:23:28.66 ID:HQUGJL+xO
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:25:51.18 ID:od/pvmOg0
最後に補足です……


その1.伍堂清太郎

伍堂圭三刑事の兄で、岐阜県警捜査一課の警部。
兄弟だけあって弟と顔が似ているものの、こちらはしっかりした性格をしている。
おまけに義理堅く、特命係が伍堂刑事のクビの危機を救ったという事で彼らに協力しました。
警察官として真面目な人で、特に今回のようなケースは絶対に見逃しません。

とまあ、今回特命係に協力する刑事さんが必要だから出した……そんな感じのキャラクターです。


その2.坂木利久男

伍堂警部の部下……としか言いようのない人ですが、実は当初は名無しでした。
でも、周りが名前ありの刑事ばかりなのに、彼だけ名無しなのはどうかなと思い設定しました。

ちなみに、彼らの名前も特に元ネタはありません。


最後に、多分察している方もいるかもですが、
右京さんは植野が佐原をいじめたことに途中から気付いています。
しかし、佐原の真意に見向きしなかったのは他の生徒も同様ですし、
何しろ後で本人が認めるだろうと思い、あの場ではあえて明言しませんでした。
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 18:26:41.65 ID:od/pvmOg0
今日は以上ですが、次回は完結なので出来ることなら早めに投下したいところであります……
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 18:31:16.67 ID:uLr/OLva0
ちょっと疑問ですけど原作の水門小学校はたぶん公立だよ。
私立ならともかく公立小学校に理事長なんて普通いないんじゃない?
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 18:52:09.38 ID:od/pvmOg0
>>576

!?

完全に調査不足でした、申し訳ありません……orz
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 18:51:37.40 ID:2/I9ouOR0
乙です
いじめが人殺しに直結する、教育上のトラブルよりも桁外れに悪質で危険な人権蹂躙、犯罪的行為である事
それぞれに被害者の面があっても、責任が無い弱い立場である硝子を精神的に虐待した時点で何の正当性もない事、
元々右京さんはこの辺りの事をきっちり口に出す人ですが、
右京さんよりも若いGTO冠城が硝子をいじめた児童達に、竹内に押し付けられた只の腹いせだとはっきり伝えた事。
一見傍若無人な右京さんが、最終的には警察官としての公的な対処、解決を一番大事にしている事
責任と原因の分担、分析が丁寧になされているため、
何より頭脳明晰な「正義の警察官」である特命係の物語として好感が持てました。

備考)近年の少年法改正で少年院送致の下限は「概ね12歳」となりましたが、
小学生の犯罪に適用するのは直接殺しでもしない限り実務的には難しいです。
このお話なら、児童自立支援施設(旧教護院)が現実的な上限でしょう。
正直、他にもありますが、メインの筋道が通っているので
そういう事を大事にする「相棒」、右京さん達とのクロスオーバーとして楽しめました。
なんか上からの書き方になってしまって失礼しました。
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 19:58:54.54 ID:eRIJKW/H0
呪怨とぬ〜べ〜のクロスオーバーも読みたいです、次回もし書いてくれる気があるならよろしくお願いします
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 20:57:53.33 ID:9JaJgZfq0
>>578
感想とご指摘、どうもありがとうございます。
またしても、私めの調査不足が露呈してしまいましたね……
上の件も併せて、下調べって本当に大事なんだなと痛感しております……

>>579
申し訳ありません……
一応それなりに知っている作品ではありますが、書く予定はありません。
それに私の場合、自分の書きたい作品は自分で決める方針でいきますので、
リクエストにお答えする事はできないことをご了承下さい……
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 20:58:29.49 ID:9JaJgZfq0
そして時間が出来たので、昨日に引き続いて続きを投下です。

いよいよ、完結でございます……
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 20:59:41.33 ID:9JaJgZfq0
相棒×聲の形 〜最終日〜


あれから更に数日後……

特命係は再び水門市の西宮家を訪れた。


右京「お邪魔します」

結絃「あ……母さん!婆ちゃん!あの時の刑事さん達が来たよー!」


こうして、結絃の案内により特命係の2人は居間へ案内された。
居間にはいとだけではなく、八重子と硝子も待っていた。


八重子「あなた達また来たの?」

冠城「申し訳ありませんね。当事者として、解決後の被害者の様子も確認しなくちゃならないんで………」

八重子「ふん……用が済んだらさっさと帰ることね」


ぶっきらぼうに返す八重子であったが、不思議と棘のある感じはしなかった。

なので冠城は、「そうさせてもらいます」と笑顔で返した。
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:01:20.32 ID:9JaJgZfq0
いと「硝子の件は、本当の感謝しています……」

「まさか、まだいじめられていたなんて、思ってもみませんでした」

結絃「ホントだよ。いきなり指紋取らせてくれとか言われたと思ったら……」

「あの先生や石田以外の連中も犯人だとか聞かされて、ビックリしたよ」

いと「八重子もこれに懲りて、今度からは硝子を入れる学校の事をちゃんと考えてくれると言ってくました」

「そして、孫達と八重子の関係も以前より良くなりました」

「これも全部、あなた達のおかげです……」
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:02:07.10 ID:9JaJgZfq0
結絃「それ……どういうこと?」

右京「あなた方に、会わせたい方達がいます」

八重子「会わせたい人達?」

結絃「誰それ?」

冠城「もう、お連れしています」

右京「入ってきて構いませんよ!」


右京が玄関に向かって呼び掛けると、それを合図にとある母子が玄関から居間に上がって来る。
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:04:13.29 ID:9JaJgZfq0
>>584順番をミスりました……
本来の>>583の後に来る内容は、以下の内容です……
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:04:42.77 ID:9JaJgZfq0
右京「僕は、あくまで思ったことを口にしただけですよ……」

冠城「ま、何はともあれ平和そうで安心しました」

結絃「ホントだよ!刑事さん達のおかげで、いい事だらけだよ」

「ひょっとして刑事さん達……神様かなんかじゃねぇのか?」

右京「おや……神様ときましたか」

冠城「俺達、むしろ疫病神だと思うんですけどねぇ……」


と言いつつも、冠城は満更でもない様子であった。

しかしすぐに表情を改めて
「さて……我々がここに来た目的は、単純にこの家の状況を確かめる為だけじゃないんです」と言った。
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:08:42.49 ID:9JaJgZfq0
そして、このままだと話の流れが成立しないので、>>584の内容を再度書き込みます。
588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:09:21.13 ID:9JaJgZfq0
結絃「それ……どういうこと?」

右京「あなた方に、会わせたい方達がいます」

八重子「会わせたい人達?」

結絃「誰それ?」

冠城「もう、お連れしています」

右京「入ってきて構いませんよ!」


右京が玄関に向かって呼び掛けると、それを合図にとある母子が玄関から居間に上がって来る。
589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:10:36.55 ID:9JaJgZfq0
美也子「お邪魔します……」

石田「お、お邪魔します………」


それは、石田美也子と袋を持った石田将也であった。
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:11:17.85 ID:9JaJgZfq0
硝子「…!」

結絃「お、お前…!」

八重子「誰かと思えば、硝子をいじめた子供とその親じゃない!」

「一体、どの面下げてウチに上がってるのかしら?」


2人の姿を見るや否や、あからさまに嫌そうな表情を見せる結絃と八重子。

いとも何も言わなかったが、あまりいい顔はしていなかった。


硝子「…………」


しかし、硝子だけは違った。石田の事を心配そうに見ていた。
だが、家族の人間はその事に気付かず、結絃は石田に歩み寄る。
591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:12:40.82 ID:9JaJgZfq0
結絃「おいお前…!今までよくも姉ちゃんのこといじめてくれたなあ?」

石田「…………」

結絃「お前のせいで、姉ちゃんどんだけ傷付いたと思ってんだ?え?」

石田「そ、それは……」

結絃「それは?何だよ!」

「『姉ちゃんの耳聞こえないのが馬鹿みたいだからいじめました〜』だろ?」

石田「………」

結絃「しっかしいい気味だよな……他の奴らに裏切られちゃって………」

「姉ちゃんをいじめたから罰が当たったんだよ!」

石田「……………」

結絃「例えお前が裏切られていじめらたところで、オレ達はお前のこと絶対許さないからな!」


結絃に辛辣な言葉の数々をぶつけられる石田であったが、彼は何も言い返すことが出来ない。
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:14:10.09 ID:9JaJgZfq0
結絃「何だよ?さっきから黙りこくりやがって!逆にムカつくな…!」

冠城「まあまあ……そこまでにしときなって」

結絃「けど、刑事さん……!」

八重子「というか、何でこんな奴らを連れて来たんです?事件は解決したんじゃないんですか?!」

右京「確かに、事件そのものは解決しました」

「しかし、この事件にはまだ謎が残されています」

「それを明らかにしなければ、完全に終わったとは言えないんですよ……」

八重子「謎…?」

結絃「何だよそれ?」


八重子らが疑問符を浮かべると、右京は話を切り出す。
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:15:26.96 ID:9JaJgZfq0
右京「残された謎は、2つ……」

「1つ目は、筆談用ノートの行方です」

冠城「実は、同期の奴には証拠映像以外に、石田君が池に捨てたという筆談用ノートも回収させようとしました」

右京「筆談用ノートも、酷くいたずらされたようでしたからねぇ……」

「犯人の筆跡や指紋を取れると思い、回収を命じたのです」
594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:17:13.52 ID:9JaJgZfq0
冠城「ところが、池からノートは見付からなかった」

「同期の奴は、学校側が回収して処分したんじゃないかと言っていましたが……」

「後で水田門木を始めとした学校職員に確認してみたところ、誰もそのようなノートは拾っていなかった」

「つまり、学校側はノートに全く手を付けていなかったんです。捨てられていた事実すら知らなかった」

右京「そこで、硝子ちゃんいじめに関与した生徒が回収した線で調べを進めてみました」

「その結果、島田一旗と広瀬啓祐が心当たりがある一件があったと証言してくれました」
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:18:54.47 ID:9JaJgZfq0
冠城「彼らは一度、石田君をあの池に突き落とした事があったそうです」

「しかも、時期は石田君のお母様が賠償金を持ってきた日……」

「つまり、石田君が筆談用ノートを捨てた後の出来事だった」

結絃「ちょ、ちょっと待てよ!それじゃあ………」


何か感付いた結絃。彼女の反応を確認すると、
冠城は「ほら……出しな」と言って、石田に紙袋の中身を出す事を促す。

促されるまま、石田は持っている袋から『ある物』を取り出した。
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:21:00.20 ID:9JaJgZfq0
結絃「あ……!」


出されたものを見て、結絃は驚いた。

彼女だけではない……西宮家の人間全員もだ。

何故なら、袋の中から出てきたのは、
落書きだらけで尚且つ水を吸って若干の歪みが生じた、硝子の筆談用ノートだったからである。
597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:22:13.19 ID:9JaJgZfq0
石田「…………」

結絃「お……お前、何でそれを!?」

右京「突き落とされた際、偶然目に留まったので自宅に持って帰っていたそうです」

冠城「本人曰く、何か思うところがあったそうで……」


ちなみに、あの時冠城に石田がこの事を話さなかったのは、
その事を知れば、自分の手で硝子に返せと言われると思ったからであった。
自分に対するいじめの事でこれ以上、彼女と顔を合わせたくなかったのである。

右京らに筆談用ノートを持っている事を看破された際も、
頑なに拒んでいたが、彼らの根気強い説得もあって今こうしてこの場にいるのである。
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:23:30.77 ID:9JaJgZfq0
結絃「でも、そいつにそれ持って来させて、どうする気なのさ?」

「まさか……姉ちゃんに返させて、『そいつのした事これで全部水に流して下さい〜』なんて言うんじゃねぇよな?」

石田「……………」

八重子「残念だけど、そんな事であっさり許すほど、私達は都合良く出来ていないわ」

「大体、そこまでされたノート、今更いらないわよ!」
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:24:33.36 ID:9JaJgZfq0
冠城「待って下さい奥さん……僕達別に、彼への許しを乞いに来たんじゃないんですよ」

右京「確かに硝子ちゃんに返すべきだと提案はしましたが、ただそれだけです」

「そもそも、そうしたところで許してもらえるとは、我々も思っていませんよ……」

冠城「というか、これはあくまで前座……本題はここからなんです」

八重子「どういう事なの?」


彼らの言うことに、八重子を始めとした硝子以外の西宮家の人間は小首を傾げた。

それを確認しつつ、右京はまた話しを始める。
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:26:25.03 ID:9JaJgZfq0

右京「ここで、2つ目の謎について話さなくてはなりません」

「2つ目の謎は6年2組へ立ち入った際、川井みきが発した一言……」
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:27:39.02 ID:9JaJgZfq0


『私はあなたと広瀬君と違って、石田君の机に落書きしたり教科書盗ったりしてないもん!』

602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:28:36.86 ID:9JaJgZfq0
右京「これを聞いた時の石田君の反応です」

「石田君……君はこれを聞いて驚いている様子でしたが、あれは何故ですか?」


石田「……」

「島田の奴らがそんな事までしてなんて、知らなかったから…………」


右京「なるほど……やはりそうでしたか」

結絃「それの何がおかしいんだよ?単に今まで気付いてなかっただけだろ?」
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:29:41.68 ID:9JaJgZfq0
冠城「それが、おかしいんだよ」

「万が一自分の机に落書きされていたり、教科書がなくなっていたりしていたら」

「自分の席に戻ったり、授業に入った時に気付いていなくちゃならないんだ」

右京「ところが、川井みきのあの言葉を聞くまで、石田君はこの事を知らなかった……」

「妙だと思いませんか?」

冠城「ちなみに、彼女の証言が事実であることを島田達は認めています」

結絃「確かに、変かもしれないけど……」

八重子「それが何だって言うのよ?」
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:30:10.96 ID:9JaJgZfq0


右京「つまり、石田君を密かに助けていた人物がいたのです」

「恐らく、その人物が机の落書きを消し、隠された教科書を見付け、彼の机に戻していた……」

605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:30:56.34 ID:9JaJgZfq0
結絃「こんな奴を助けてた奴がいるなんて……そんな馬鹿な事があるのか!?」

右京「世の中には、様々な方がいます」

「石田君の所業を知りながらも、助けようとする方が存在しないとは限りませんよ」

冠城「しかし問題は、その人が一体誰なのかです」

「まず最初に考えられるのは、石田君いじめに後ろめたさを感じていた、植野直花ですが……」

「石田君いじめを指をくわえて見ていることしか出来なかったそうだから、彼女の線は薄い」

右京「そこで次に考えられるのは、友達想いな性格の佐原みよこちゃんですが……」

「石田君いじめが起こるよりもずっと前から不登校になっていた彼女にも、石田君を助ける事は不可能です」

「となると、この2人は石田君を助けていた人物から、除外されることになります」
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:32:15.66 ID:9JaJgZfq0
結絃「何だよそれ?結局、コイツに味方した奴なんていないじゃんかよ」

「ま……まさかとは思うけど、幽霊がやったとか言うんじゃないよね?」

右京「幽霊の仕業ですか……」

「確かに、石田君の守護霊が現われたという可能性も無くはないですが………」

「それにしては、範囲が限定されています。残念ながら、その線も薄いでしょう」

結絃「は…はぁ……?」

八重子「あの……ふざけないでくれませんか?」
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:32:44.18 ID:9JaJgZfq0
右京「?」

「僕は、普通に考えたことを述べただけだったんですが……」

「何かおかしなところでもありましたか?」

八重子「え…?」

冠城「……………」


こんな場面でもオカルト好きを全開にする右京に結絃は困惑し、
八重子も珍しくあからさまに困惑の表情を見せた。

そんな上司に、冠城は冷ややかな視線を送っている……
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:36:08.13 ID:9JaJgZfq0
だが、当の本人はそんな事などお構いなしに、話しを続ける。


右京「しかし……まだ1人だけ、思い当たる人物がいます」

いと「それは、一体誰なんですか?」

右京「その前に結絃ちゃんといとさん……」

「最初に僕達がこの家に来た目的を、思い出して頂きたい」

いと「あなた達がここに来た目的?」

結絃「う、うーんと……」


そうして、特命係の2人がやって来た目的を思い出そうと、自身の記憶を探るいとと結絃。

そして……
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:39:53.05 ID:9JaJgZfq0
結絃「…あ!思い出した!」

「石田がいじめられてるの見て、その事を姉ちゃんに聞きに来たんだったよね?」

右京「そうです。しかし……」

「肝心なのは理由の方です。そちらも、思い出せましたか?」

結絃「あ……うん!」

「確か……姉ちゃんが、石田がいじめられてるところを見てたから………だよね?」

右京「その通り。それで?」

結絃「それで……?」

いと「何でしょうか?」

右京「何か、引っ掛かりませんか?」

いと「引っ掛かる?」

結絃「うーん……」
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:43:15.09 ID:9JaJgZfq0



「…………」


611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:43:44.18 ID:9JaJgZfq0




「あれ?」



612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:50:31.75 ID:9JaJgZfq0
右京に問われ、しばし考え込んだ結果、結絃が何かに気が付いた。


右京「どうやら、気が付いたようですねぇ……」

「そう……我々は、硝子ちゃんが石田君がいじめられている現場を覗いているのを目撃しました」

「しかも、一度だけではありませんでした。竹内に追い払われている現場などにもいたのです」

「だから僕達は、彼女の後を追ってこの家に辿り着いた……」

「僕達が今回の事件を知り、解決出来たのはある意味、硝子ちゃんの存在があったからとも言えるかもしれません」

「しかし……ここでひとつ疑問があります」

「何故彼女は、石田君の事を見ていたのでしょうか?」

「何故彼女は、石田君の現状をあなた方に話そうとしなかったのでしょうか?」
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:51:57.17 ID:9JaJgZfq0



「まるで、彼の事を心配していたかのようです……」


614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:54:13.47 ID:9JaJgZfq0
結絃「…………」

「お、おいおい…ま、まさか……!」

右京「…………」

「えぇ、そのまさか……」


と言いながら右京は、硝子の前に歩み寄る。

そして、今までの会話の内容を、
手話で一通り伝えたのち、また手話を交えてこう続けた。


右京「石田君を助けていたのは、君ですね?」
615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:54:54.80 ID:9JaJgZfq0





「西宮硝子ちゃん……」




616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:55:44.96 ID:9JaJgZfq0
硝子「…………」


右京の一言に、西宮家・石田家双方が驚愕した。


八重子「そ……そんな馬鹿な!」

結絃「そうだよ!何で姉ちゃんが、自分をいじめた奴なんか助けないと………」
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 21:59:55.60 ID:9JaJgZfq0

石田「……あ!」


「自分をいじめた奴なんか助けないといけなんだよ!」
結絃がそう言おうとしたのを遮るかのように、石田が何かを思い出したかのような声を上げる。
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:00:50.04 ID:9JaJgZfq0
冠城「どうしたんだい?」

石田「そ、そう言えば……西宮の奴、最近俺の机掃除したり、中に手ぇ突っ込んで何かやってたんだ……」

「あれは、ひょっとして……!」

右京「…………」

「……どうやら、僕の考えは正しかったようですねえ」
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:01:26.28 ID:9JaJgZfq0
結絃「ちょ……ちょっと待ってくれよ!これって一体どういう事なんだ!?」

八重子「そうよ!どうして硝子が彼を助けなくちゃならないの?」

「相手は、自分をいじめた子ですよ!」
620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:02:16.92 ID:9JaJgZfq0
右京「…………」

「『罪を憎んで人を憎まず』……という言葉は、ご存知ですね?」

「詳しく説明すると長くなってしまうので割愛しますが、簡潔に言うと」

「『犯した罪は憎むべきだが、罪を犯した本人そのものは憎んではならない』という意味のあることわざです」

「確かに硝子ちゃんは、石田君からいじめられた事自体は辛く感じていたと思います」

「しかし、それを理由に彼を恨む気はなかったという事です」

「それどころか、あの学校のいじめ問題の原因は、自分にあるのではないかとすら思っていたのかもしれません……」
621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:04:53.27 ID:9JaJgZfq0
八重子「自分のせいだと思っていた?」

右京「今日までの間、彼女は自身の障害が周囲の人間に影響を与えてしまった現場を、何度も目の当たりにしてきたはずです」

「そのような考えに至ってしまう可能性は、充分考えられます」

「また、自身の欠点が周囲に影響を及ぼしてしまったという点は、石田君にも当てはまる部分がある……」

「そういう意味では、彼女と石田君は似た者同士だった」

「そこに彼女は、シンパシーを感じたのかもしれません」

冠城「後は島田達の思惑にも、何となく気付いていたのかもしれませんね」
622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:05:35.14 ID:9JaJgZfq0
八重子「そ…そんな!そんな馬鹿げたことある訳ないわ!」

右京「では、本人に確かめましょう」


そう言って右京は、先程の推理の内容を一通り手話で話すと、
「僕の推理に間違いはありませんか?」と言いながら手話で尋ねた。
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:08:19.22 ID:9JaJgZfq0
硝子「…………」


聞かれた本人は、自分の家族の人間や石田母子の様子を確認すると、
急に石田の前まで行き、筆談用ノートを見ながら両手を差し出す。

さすがの石田も、それが筆談用ノートを渡してくれというアピールである事に気付き、
硝子にノートを手渡すと、硝子は足早に自室に入り、消しゴムと鉛筆を持ってすぐに戻って来る。

そして、まだ字を書けそうなページを開くと……
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:10:15.80 ID:9JaJgZfq0


「はい、そうです。ぜんぶ刑事さんの言うとおりです」

と書いて全員に見せた。

625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:11:48.33 ID:9JaJgZfq0
八重子「しょ、硝子……!」

結絃「う…嘘だろ……?」

いと「………………」


硝子の見せた一言に、八重子と結絃は愕然とした。

あれだけ自分達が憎たらしいと思っていた、石田将也……

まさか、いじめられた当人は、真逆な事を考えていたなんて……

いとも、硝子が自分の障害が周りに影響を与えている事を思い悩んでいること自体は勘付いてはいたが、
まさかそれが、石田を助ける事に繋がっていたとは思っておらず、複雑な表情を浮かべている。


だが、一番驚いているのは、石田本人であった。

626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:14:38.62 ID:9JaJgZfq0
石田「そ、そんな……西宮が、そんな事、思ってたなんて………」

「俺、一度も考えたこと、なかった……」

冠城「確かに……僕も、予想外だったよ」

「硝子ちゃんが君を見ていたのに、そんな意味があったなんて……」

「でも、良かったじゃないか」
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:15:56.09 ID:9JaJgZfq0
石田「良かった…?」

冠城「いじめられている間、君は自分に味方する人なんていない……そう思っていたんだろう?」

石田「あ…あぁ……」

冠城「けど、本当はこんなにもすぐ近くに、君の味方は存在していた」

「それだけじゃない……硝子ちゃんは、君を恨んですらいなかった」

「そして……結果的ではあるけれど、僕達をいじめ問題の存在まで導いてくれた」

「彼女の存在が、君をいじめから救ってくれたんだよ」

石田「に…西宮……」
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:16:45.58 ID:9JaJgZfq0

「そうなのか?」と口で言おうとしたが、相手が耳が不自由である事を思い出し、
石田は先程硝子がしたのと同じように、筆談用ノートと鉛筆と消しゴムを渡すよう頼む。
硝子は、それに応じてノートや鉛筆、消しゴムを手渡すと、石田は冠城が自分に言った事を書き、
その最後の部分に改めて「そうなのか?」と書いて、鉛筆と消しゴムごとノートを硝子に返す。
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:17:15.18 ID:9JaJgZfq0

硝子「…………」


すると硝子は、「はい、そうです」に加え……
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/06(水) 22:18:55.80 ID:9JaJgZfq0

「私のせいで、あなたやみんなを悪者にしてしまいました……」

「ごめんなさい……」


とも書いて見せた。
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