まゆり「トゥットゥルー!」岡部「・・・え?」

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143 : :2018/06/05(火) 16:24:45.22 ID:pSJ8SQZq0
岡部「フゥーハッハッハッ鳳凰院凶真、復・活!」

紅莉栖「うるさい!ご近所に迷惑だろ!」

岡部「む……助手の分際で、」

紅莉栖「…………」

岡部「あ、すいません」



紅莉栖「それで?私を呼んだ理由は?」

岡部「……話せば長くなる。とりあえずラボに入ろう」


紅莉栖「そうね」


岡部「…………紅莉栖」


紅莉栖「ん?」






岡部「俺の話を、信じてくれるか」


紅莉栖「…………」





紅莉栖「科学的根拠の、ある話なんだろーなっ」





岡部「フ……。それでこそ助手だ」
144 : :2018/06/05(火) 16:25:36.82 ID:pSJ8SQZq0
ラボ――――


紅莉栖「ハロー。橋田」

ダル「おぉー牧瀬氏ー!久しぶりー……でもない件」

紅莉栖「こないだ会ったばっかりよ。まったく……研究所にも迷惑かけてきたんだから、下らない用事だったらホント、ぶっとば……」


ダル「そうそう!今回呼んだのはさ、この新しい未来ガジェット開発のためなんだけど」


そう言ってダルはおもむろに割り箸を取り出した。

紅莉栖「へ?」


ダル「うん、今回のは上手くいけば商品化も夢じゃないお!聞きたい?しょうがないなー、驚異の未来ガジェット!その名も『一刀両断!チョップスティックver……」



紅莉栖「は、橋田ああぁあぁぁ!!!!」
145 : :2018/06/05(火) 16:28:14.83 ID:pSJ8SQZq0
岡部「くくっダル、その辺にしておけ」


紅莉栖「えっ?」カシャッ


ダル「うほー!牧瀬氏のキョトン顔いただきましたぁン!これで勝つる!」


紅莉栖「は、橋田……」


ダル「反省はしている、後悔はしていない。でも、肩の力は抜けたっしょ」


紅莉栖「アンタねぇ……!ふざけるのもいい加減にっ…?」


そこで紅莉栖は気付く。

ダルの眼が、真剣なそれに切り替わっていることに。


ダル「牧瀬氏、今から大事な話をするけど」

ダル「リラックスして聞いてほしい件。僕たちの話を、熱くならずに聞いてほしい」


ダル「牧瀬氏の力を借りたいんだお」


紅莉栖「え……?」
146 : :2018/06/05(火) 16:30:26.44 ID:pSJ8SQZq0
俺とダルは長い長い話を始めた。


内容が内容なだけに、なるべく分かりやすく、誤解が生まれないようにゆっくりと説明する。


紅莉栖は相づちを入れたり、たまに息を飲んだりをしながらも、黙って俺たちの話を聴いてくれた。

だがこの世界線の未来を話した時だけは、すかさず声を上げた。



紅莉栖「そんなはずない!」


ダル「……気持ちは分かるぜ牧瀬氏。そうなんだけど」


紅莉栖「いや、岡部はそんなことしないわ!確かに厨二病だけどヘタレだし、度胸も無いし!」

ダル「そうなんだけど。SOUNANDAKEDO!!」

岡部「おい」



紅莉栖「良く分からない……良く分からないけど絶対無いわよ!そんな人間じゃない!」
147 : :2018/06/05(火) 16:36:07.20 ID:pSJ8SQZq0
紅莉栖「えーっと、その……ほら、岡部ってビビりだし」

ダル「うんうん」


紅莉栖「でっかい事口にするくせに、いざとなったら逃げるし」


ダル「オカリンの逃げ足の速さは異常」



紅莉栖「カリスマだって……そりゃちょっとはあるけど、大人数の中じゃきっと埋没するわ!」


ダル「wwwwwwwwwwww」



紅莉栖「ほ、ほら!統率力も無いし、成績もそこまで良くないし、友達も少ないから!」

ダル「すっげぇ……こうして聞くとマジでダメ人間だお」



岡部「……もうほんと勘弁してくれ。心がおれる」

148 : :2018/06/05(火) 16:37:42.58 ID:pSJ8SQZq0
時計の針が、日にちが変わったことを示した。


岡部「こんなところか……」


ダル「そだね。だいたい話尽くした」


紅莉栖「……」


岡部「さて話も終わったところで、天才科学者牧瀬紅莉栖の御考察をお聞かせ願いたいところだが……少々時間が過ぎているな」


ダル「もう十二時回っちゃってる件」


紅莉栖「……橋田。その白い紙は何?」

ダル「あ、これ?牧瀬氏に渡すつもりで書いたやつ。ほい」

紅莉栖「ん……これ持って帰ってもいい?」


ダル「勿論。そのつもりで作ったんだお」


岡部「では、帰るとするか。鈴羽が来るかもしれんな、ラボは開けておこう」


ダル「えっ」


岡部「取られても大したものは無いしな」


ダル「エロゲが……」


岡部「無いしな」


ダル「エロ……」
149 : :2018/06/05(火) 16:42:38.89 ID:pSJ8SQZq0
岡部「とられるのが嫌なら持って帰ればいいではないくぅぁ」


ダル「ビジュアル的にOUTでしょ」


岡部「真夜中に エロゲを抱え 歩く[ピザ] その様まさに 犯罪者かな」


ダル「一句詠むなお。つーかそもそも多すぎて持ちきれない件」


岡部「こんなボロい建物に入る泥棒などおらん!」


紅莉栖「…………」


岡部「紅莉栖、出るぞ」


紅莉栖「あ、うん。……」


ダル「やっぱ持って……いやでも」


岡部「捕まるのがオチだぞ?」


ダル「なんかカバン的なもの無い?」


岡部「無い」



ダル「オカリンも持ってよ」


岡部「ぬぁぁんで俺がエロゲを持つのだ!!?」
150 : :2018/06/05(火) 16:44:31.15 ID:pSJ8SQZq0
岡部「やーめーろって。持たそうとするな!」


ダル「ちょっとだけ!ね、先っちょだけでいいから」


岡部「キモい!くどい!暑い!くさい!」


ダル「頼むよオカえも〜ん」


岡部「ダメだよジャイアン」


ダル「そこはのび太だろ常考……」



紅莉栖「…………」


岡部「……紅莉栖?」

紅莉栖「え?あ、ああ、出るわ」


岡部「…………?」
151 : :2018/06/05(火) 16:45:16.65 ID:pSJ8SQZq0
ダル「うー!寒くなってきたおー」


岡部「半袖だからだろ……。少しは世の中と同調しろ」


ダル「んじゃ、明日同じ時間くらいに来るお」


岡部「ああ」


ダル「じゃあオカリン牧瀬氏、また明日」


岡部「ああ。じゃあな」


紅莉栖「バイ、橋田」



ダルは足早にこの通りから去っていった。




岡部「送る、か」


紅莉栖「えっ……う、うん」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/05(火) 19:13:29.98 ID:10/oC7ufO
鈴羽って別の世界線の記憶を全部思い出したら結構な情報量ありそう
成功した橋田鈴と失敗した橋田鈴とβの鈴羽とか色々あるし
具体的な思い出す範囲がよくわからんけど
153 : :2018/06/05(火) 21:40:16.38 ID:pSJ8SQZq0
岡部「……」

紅莉栖「……」




岡部「……悪かったな。無理を言って呼んでしまって」


紅莉栖「!……珍しく素直だな」



岡部「その……研究所の方々には何か言われなかったのか」


紅莉栖「意外とすんなりOKくれたわ。事前にその……」


岡部「?」


紅莉栖「か、彼氏が出来たって話……、してたの。だから」


岡部「そー、そうなのかっ」


紅莉栖「わ……私、いっつもムスッとしてるじゃない? 研究所だと、もっとひどいの。仲のいい人も何人もいないし…。でもその話をしてる時だけは、表情が明るいなって言われた」


岡部「……」




紅莉栖の小さな手が、俺の手に触れた。

かと思うと、少し強引に、きゅっと結ばれる。



岡部「お、お前っ」

紅莉栖「嫌なのかっ」

岡部「嫌…ではないが、こんな町中、で、だな」

紅莉栖「アンタの手…汗びっしょり」

岡部「嫌なら離すがいいっ」


紅莉栖「ふふっ」
154 : :2018/06/05(火) 21:45:31.57 ID:pSJ8SQZq0
紅莉栖のマンションへと歩く間、俺たちは他愛も無いことを話し続けた。


紅莉栖のアメリカでの話。

俺の日本での話。


なぜだろうか、タイムマシンとかディストピアなどと言う単語は道中一度も出てこなかった。






お互い口下手の人見知りのくせに、なぜ二人だとこうも饒舌に話せるのだろう。

意識しなくとも話題が浮かび上がってくるのだろう。



束の間の静寂の中でそんなことを考えているうちに、あっというまに紅莉栖のマンションに到着してしまった。
155 : :2018/06/05(火) 22:02:53.11 ID:pSJ8SQZq0
岡部「案外早かったな」


紅莉栖「……うん」


岡部「では明日は来る前に連絡をくれ。俺たちは多分朝からラボにいると思うが、一応な」


紅莉栖「分かった」


岡部「それと明日は、お前の考えを聞かせてもらいたい。……がそんなに気構える必要は無い。思いついたこと、気が付いたことを遠慮なく言ってくれ」


紅莉栖「うん……」


岡部「ではまた明日な。風邪などひかぬように! さらばだ……っ」


颯爽と去ろうとしたのだが、白衣の袖口を引っ張られてなんだか間抜けな姿になった。


岡部「おい……せっかく」


紅莉栖「アンタの家、こっから遠いんでしょ」


岡部「ん?まぁ……」


紅莉栖「ちょっと寒いし、コーヒーでも出すわよ。送ってくれたんだし」


岡部「こぉひぃ…?」


紅莉栖「もう!ニブい奴だな」




紅莉栖「あがってけばって言ってるの!」


岡部「んなっ! し、しかし、結婚前の男女が二人でホテルになどっOHフケツぅー!と言われてもしょうが」

紅莉栖「茶化すなら帰れっ!」クル


岡部「そこまで言うのなら仕方あるまい、行ってやろうではないかっルォンリヌェス…な助手のたーめーにーなーッ」


紅莉栖「……」スタスタ


岡部「っちょ、待っ…ウェイッ!ウェーーイッッ!!」



156 : :2018/06/05(火) 22:14:43.76 ID:pSJ8SQZq0
ホテル六階――――

エレベーターの、ドアが閉まる。



岡部「…………」


紅莉栖「何ぼーっと突っ立ってんのよ。さくさく歩く」


岡部「う、うむ」




くそっ。

少したじろいだ俺がバカみたいではないか。

助手め。



岡部「じゃ……邪魔するぞ」


紅莉栖「ん。……あああ待って!!ちょっと片付けるからまだ入るな!」


岡部「ぬおう!」


襟を掴まれて引き戻される。


何だというのだ!
157 : :2018/06/05(火) 22:18:42.28 ID:pSJ8SQZq0
紅莉栖「はい、コーヒー。ブラックだけど」

岡部「ドクペはないのか」

紅莉栖「ドクペはどこにでも置いてあるわけじゃないのよ、鳳凰院さん」


俺は一口、コーヒーをすする。 苦い。



岡部「いい眺めだな、此処は」


紅莉栖「そう?」


岡部「ああ。秋葉原が一望できる」


紅莉栖もコーヒーを片手に、テーブルに着いた。



紅莉栖「私はたまに夢に見るくらいしか出来ないけど、岡部は体験してきたのよね」


紅莉栖「この秋葉原で――――何度も何度も。」


岡部「…………」




紅莉栖「……辛かった?」


岡部「…………」



岡部「…………そうだな」
158 : :2018/06/05(火) 22:22:17.37 ID:pSJ8SQZq0
岡部「何の変哲もない日々だったな……最初は。ダルはネット、まゆりはコミマの衣装づくり……そしてお前と出会って」


岡部「最初のお前というのが、生意気なのだこれが!」

紅莉栖「は、はぁっ?そんなこと言われたって分かんないわよ!」


岡部「タイムマシン議論で一戦交えて俺をことごとく論破し最後に『ね、鳳凰院さん?』ってああああ思い返すと腹が立ってきたぁぁぁぁ!!!!」


紅莉栖「それただの負け惜しみじゃない!!」


岡部「そんなこんなでお前はラボメンになったのだ。仮、だがな!」


紅莉栖「仮?」


岡部「我がラボに所属するメンバーには人間的に成熟した精神が必要なのであってだな……」


紅莉栖「日本に短期滞在だったから、とかでしょ理由は」


岡部「む……そうともいう」
159 : :2018/06/05(火) 22:24:21.12 ID:pSJ8SQZq0
岡部「それでだな……」

紅莉栖「うん」


岡部「Dメールから電話レンジがタイムマシンであることがわかって……」


紅莉栖「うん」


岡部「ラボメンは、どんどん増えていった……」


紅莉栖「うん」


岡部「そして、実験…………してだな…………」


紅莉栖「うん」


岡部「…………」



岡部「………………………………………………………………」


紅莉栖「…………」


岡部「…………まゆりが……………………死んで…………だな……………………」


紅莉栖「……うん」
160 : :2018/06/05(火) 22:25:45.35 ID:pSJ8SQZq0
岡部「…………何度も、助けようとして…………ッ…………」


紅莉栖「うん」


岡部「…………でも、無理で…………お前に助けてもらって…………だな…………」


紅莉栖「うん」


岡部「…………みん、なの想い…………踏みにじって、だな…………」


紅莉栖「うん」


岡部「…………………………………………」


岡部「…………っ」




岡部「お前を……っ…………っっっ……………………ぐッぅ」



紅莉栖「…………ほら」













紅莉栖「やっぱり、辛かったんじゃない」
161 : :2018/06/05(火) 22:30:14.07 ID:pSJ8SQZq0
紅莉栖「がんばったんだよね。たった独りで世界線を越えて、ここまで来たんだよね」


岡部「……違う……助けてもらったんだ…………」


紅莉栖「そうね。でも心の底では思っていたはずよ。胸の中にある全ての悲しみも苦しみも、共有出来ない。皆には記憶が無いから。起こったことを、誰も知らないから」


岡部「……………………」


紅莉栖「私には記憶が断片的にしかないけど、今の岡部を見ればどれだけ苦しい想いをしてきたかが分かるわ」


岡部「……………………」
162 : :2018/06/05(火) 22:36:25.95 ID:pSJ8SQZq0
それでも岡部は泣かなかった。


私には、彼を心の底から労ってあげることが……できなかった。

彼と分かち合うに足るだけの記憶が、私にはないから。



紅莉栖「岡部、眠ったの……?」


岡部「……………………すー…………」


紅莉栖「……ふふふ」ギュ



岡部がたくさん辛いことを経験したのは分かる。


だからこそ、それを癒してあげられないことが悲しい。


悔しいけれど、私には出来ない。



そして、





――――まゆり。
163 : :2018/06/05(火) 22:40:44.58 ID:pSJ8SQZq0
橋田がくれたこの紙。


私にはわかる。


あなたが一番苦しんでいるのは、死んだことでも、殺されたことでも、その記憶でもない。




私と岡部が結ばれたこと。


それがあなたを何よりも苦しめている――――今も!



気付かなかった私をどうか許して。


気付いていたとしても岡部を欲してしまう私を――――どうか許して。





皆苦しんでいる。





この世界線では、





誰も 幸せ に なれない 。
164 : :2018/06/05(火) 22:45:25.74 ID:pSJ8SQZq0
岡部「……んぅ………………」


紅莉栖「!…………」


岡部「…………すぅ…………」




ごめんね。


岡部。


ここがゴールじゃなくて。


やっと幸せになれると思ったのにね。


ダメみたい。


この世界線の牧瀬紅莉栖じゃ、あなたを幸せにできない。


他の世界線の私のことはわからないけれど。


初めてこんなに、――――




岡部「…………すー…………すー」


紅莉栖「あったかい……」




この温もりを感じるのは、今日が最後。



やっと、やっと――――


いや、ダメ。




私は、




まゆりを不幸にして、




幸せになることなんてできない。
165 : :2018/06/05(火) 22:51:24.22 ID:pSJ8SQZq0
岡部「…………すぅ…………」




紅莉栖「ごめ…………っ岡部…………」

紅莉栖「…………ッ肩……濡らすね…………っ……うっ……ッ……」ギュゥゥ





ねぇ、アインシュタインさん。


ソースとか証明とか……生意気なこと言わないから。



今だけは。



相対性理論なんて……消えて、無くして。



お願い、時間、




今だけは止まって……!!






私、



岡部と、



ずっとずっと一緒にいたい。




だからお願い。




今だけは……。
166 : :2018/06/05(火) 22:55:47.58 ID:pSJ8SQZq0
次の日・ラボの入口――――



岡部「……ダル」


ダル「なんぞ?」


岡部「一応聞いておこう。…………お前、何をやっているのだ」


ダル「監視カメラのとりつけ」


岡部「お前、頭がバカなのか?」


ダル「冗談キツいぜオカリン……。これは全て……オカリンのせいなのだぜ?」


紅莉栖「私、先に入ってるから」


岡部「ああ。……良く聞こえなかった。もう一度言ってくれダル」


ダル「……昨日の帰り、エロゲ」


岡部「だからそれはお前があんなに持って帰ろうとするからだろうがっ!」



ダル「甘ぇ、甘すぎるぜっ……金平糖かよてめえはっ、OKARYYYYYYYYYYYYNッッッ!!??」


岡部「なんだこいつ……」
167 : :2018/06/05(火) 22:56:44.72 ID:pSJ8SQZq0
岡部「お前がエロゲ持ち帰って恥ずかしかった、それだけだろう」


ダル「それだけならわざわざビックカメラで6900円も払ったりしないお」



岡部「意外と安いな」


ダル「ただのビデオカメラだからね」



岡部「分かった。では何があったのか話してみろ。謝るかどうかはそれから決める」


ダル「…………」



岡部「…………」



ダル「……に……れた」


岡部「んん?聞こえんぞぉ?」


ダル「ニヤニヤすんなお」


岡部「む……よし。いいぞ」


ダル「…………」


岡部「…………」


ダル「…………された」


岡部「ん?」




ダル「…………職務質問された」
168 : :2018/06/05(火) 22:58:50.64 ID:pSJ8SQZq0
岡部「…………」


ダル「…………」


岡部「…………うわあ」


ダル「ふんっ!」


岡部「痛っ!何でだよ!?」


ダル「僕がどれだけ情けない思いをしたか……」


岡部「待て、おかしいぞ!?俺はなんにも悪くないだろ!ただお前の風貌が犯罪者チックだったというだけの話……痛ッ!!ホントに痛い!やめろ!」


ダル「分かるか!?嫁を家に連れてかえっている時に警察に呼ばれる、僕の気持ちがぁっ」


岡部「ほんとに知るか!」


ダル「だから決意したよ……ラボを絶対安全な、エロゲの砦とする事をなぁぁぁぁぁぁあぁっ!!!!」


岡部「迷惑だ……すごく迷惑だ……」
169 : :2018/06/05(火) 23:01:24.50 ID:pSJ8SQZq0
岡部「そういえば、鈴羽はラボにいなかったか?」


ダル「見てないけど」


岡部「そうか……」

ダル「つかオカリン、なんか肩濡れてない?」


岡部「む?確かになにか濡れた跡が……」


ダル「…………ッ」

岡部「どうした?」

ダル「まさか、まさかこれはっ牧瀬氏の、マnぐァッッ!!」ドゴロシャボキャアアアア


紅莉栖「こ、こ…………このHENTAIッッ!!」


ダル「」



岡部「いくぞ、ダルよ。 円卓会議の始まりだぁ!フゥーハッハッハッハァ!!!!」



ダル「」
170 : :2018/06/05(火) 23:05:53.80 ID:pSJ8SQZq0
紅莉栖「じゃ、始めるわよ!」


岡部「待て」


紅莉栖「何よ」


岡部「ぬぁぜお前が仕切るのだッ」


紅莉栖「あんたたち、私の力が必要でアメリカから引っ張ってきたんじゃなかったの? じゃあ、私が仕切るのが当然じゃない」


岡部「そんなことは関係ぬぁぁぁい!!いつ何時であろうとラボを仕切るのはこの俺!鳳凰院凶真な、の、だッッ!!」


紅莉栖「なによその非論理的な言い分!?私の意見が欲しいって言ってたろうが!」

岡部「覚えておーけぇ、マッドサイエンティストは常識を超えた存在だ」



紅莉栖「……帰るわよ!?」


岡部「帰るな!」


紅莉栖「えっ……」


岡部「お前の力が必要なんだ」


紅莉栖「……そっ、そんな言葉に……」




ダル「」
171 : :2018/06/05(火) 23:07:12.39 ID:pSJ8SQZq0
岡部「議題は無論まゆり、そして未来改変についてだ」


岡部「紅莉栖、昨日ここに来る前にまゆりに会ったか?」


紅莉栖「会ってないけど……変な女の子に押し倒された」


岡部「……鈴羽か?」


ダル「だろうね」


岡部「おそらくその娘が鈴羽だ、紅莉栖」


紅莉栖「あの、昨日橋田の娘って言ってた……」


ダル「そうだお」


紅莉栖「……私が二人の話を信じきれない原因は、そこにあるのかもしれないわ」


ダル「え?」


紅莉栖「だって橋田が結婚するって……そんな未来あるはずが……」


ダル「…………岡部。何笑ってる」


岡部「っ……っ……すいません、……橋田さん。っ」
172 : :2018/06/05(火) 23:10:42.29 ID:pSJ8SQZq0
紅莉栖「なんだか、すごく苦しそうだった」


岡部「……電話をかけてみる」





岡部「…………出ない、か」


ダル「…………」


岡部「心配するなダル。あいつは俺を何度も救ってくれた……そんなにヤワな女ではない。なんといっても、戦士だからな」


ダル「……うん」


ダルはふと微笑んで軽く縦に頭を振った。



ダル「さ、会議の途中に遠慮なくエロゲをやるおー!ついでに監視カメラ、スイッチオーン!」


ダルが一転して明るい表情でパソコンの電源をつける。


俺たちは、解っている。


少しでも油断すればすぐに負の雰囲気に飲み込まれてしまうことを。


だから必要以上にふざける。


ふざけて笑う。



下を向いていても、誰も救えない。



ダル「…………」



ダル「オカリーン」


ダルがこちらを向いた。

表情は少し堅い。



岡部「なんだ、エロゲをするのではなかったのか我が右腕よ」


ダル「いやー持ってくるの忘れちゃったおー」


なんだかわざとらしい。


紅莉栖「橋田……?どうしたの?」


紅莉栖もダルの不自然さを感じとったらしい。

173 : :2018/06/05(火) 23:11:41.49 ID:pSJ8SQZq0
ダル「ちょっとこっち来てよ二人とも」

声は明るいが、相変わらず表情は堅い。

不審に思ったのか紅莉栖がパソコンに近づいた。

画面には監視カメラの映像が写し出されているようだ。



紅莉栖「なによ…………ッ…………」


紅莉栖が息をのむ。


岡部「なんだ、どうした……?」



ダル「オカリンも来てよ」


俺は立ち上がり、パソコンの前にいる二人の間から、画面を見た。









画面には












ラボのドアにはりつく




















まゆり。
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 10:55:45.61 ID:vMxiC1iso
ひえっ...
175 : :2018/06/06(水) 11:38:37.61 ID:Uj8q83PX0
再開
176 : :2018/06/06(水) 11:48:00.40 ID:Uj8q83PX0
岡部「ま・・・ゆ、り・・・」


なんだ、その眼は・・・?

人はいったい何日間眠らなかったら、こんな顔になるのだろうか。


それだけでは無い。

まゆりが今までどれほど辛かったか、苦しかったか――――、その表情が、すべてを物語っている!


そのことが瞬時に見てとれたらしい。


ダルは目を伏せたまま、紅莉栖は口を手で覆ったまま、二人とも震えていた。
177 : :2018/06/06(水) 11:48:43.84 ID:Uj8q83PX0
岡部「くっ・・・!すべて、俺のせいだ・・・!!」

紅莉栖「違う!岡部は」

ダル「二人とも黙って!!」



紅莉栖「ッ・・・」



ダル「まゆ氏が、何か言ってる」




俺たちは、画面により耳をすませた。




まゆり「・・・は・・・れ」
178 : :2018/06/06(水) 11:50:43.58 ID:Uj8q83PX0
まゆり「まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。
まゆしぃはいつもなかまはずれ。 まゆしぃは」
179 : :2018/06/06(水) 11:51:53.09 ID:Uj8q83PX0
岡部「あ……あ……!」


まゆり「オカリン、まゆしぃがもういらなくなったんだね。」


岡部「ち、違う!!!」


紅莉栖「待って岡部!!行っては駄目!」

岡部「何故だ!まゆりが今、苦しんでるではないか!? ここで行ってやらなくて、なにがラボメンだ! 俺は行く!!」

紅莉栖「だって、でも・・・!」


岡部「はなせ、紅莉栖!」
180 : :2018/06/06(水) 11:58:17.25 ID:Uj8q83PX0
紅莉栖「岡部ッ……」

岡部「……すぐに戻るっ」





ダル「牧瀬氏……どうするん?追いかけた方が…」


紅莉栖「橋田……」




紅莉栖「私、岡部と別れることを決めたの」


ダル「……はい?」


ダル「……マジで?」


紅莉栖「ええ」


ダル「ッあぁーーっ、分かる!分かるお牧瀬氏!確かに彼女ほっぽり出して別の女のところいっちゃう男なんて最低!不潔!僕が仮に仮に女でもNO THANK YOU!! でも説明したとおり、オカリンにはなみなみならない事情があって・・・」



紅莉栖「違う、違うの」




181 : :2018/06/06(水) 12:01:37.87 ID:Uj8q83PX0
紅莉栖「でも私、岡部が好きなの」


紅莉栖「そう……好きなのよ!」


ダル「……」



ダル(何がなんだかわからない……)


ダル「好きなら一緒にいれば、」


紅莉栖「駄目なの。私、まゆりを傷つけたまま幸せになんかなれない」
182 : :2018/06/06(水) 12:09:45.77 ID:Uj8q83PX0
紅莉栖「それに……」

ダル「…?」


紅莉栖「この世界線の未来……支配者になった岡部の隣に、私がいると思う?」


紅莉栖「多くの人を苦しめている岡部と私が、のうのうと愛し合っていると思う?」


ダル「……!」



紅莉栖「そんなわけない。私は戦ってるはず! 岡部を救いたくて、運命に抗ってるはず!!私はそういう人間よ!」


紅莉栖「たとえ、それが岡部と敵対することになったとしても……!」
183 : :2018/06/06(水) 12:10:49.82 ID:Uj8q83PX0
ラウン館工房前――――


岡部「まゆりッ!!」


まゆり「……」


岡部「ハァ、ハァ・・・ぐっ」


俺は体力がない。それはラボメンならば誰もが知る周知の事実だ。


しかしさすがの俺でも、ラボから道路に出る階段を下ったくらいで息切れを起こすほどひ弱ではない。


なのに今の俺は、フルマラソンを終えた直後のように、息を荒げている・・・!

184 : :2018/06/06(水) 12:11:59.81 ID:Uj8q83PX0
まゆり「なぁに? オカリン」


岡部「フ…ハハ、どこへいくのだ。まゆり。安心しろ、まだ円卓会議は始まってはいないぞ」


まゆり「……」


岡部「さぁ、いくぞ」


まゆり「まゆしぃはいかない。いきたくない」


岡部「なぜだ、まゆ」

まゆり「オカリン」












まゆり「紅莉栖ちゃんを呼んでくれる?」
185 : :2018/06/06(水) 12:16:53.97 ID:Uj8q83PX0
岡部「……!」

-------------------------------------------------------------------------------------------

鈴羽『椎名まゆりを牧瀬紅莉栖に、絶対接触させないで』

----------------------------------------------―-----------------------------------------―





岡部「……まゆり。それはできん」


まゆり「どうして……ッ!」


岡部「まゆり、すまない。すべて俺が悪いんだ、だが俺は必ずお前を」



まゆり「そっか」



まゆり「紅莉栖ちゃんの方が大切だもんね……オカリンは。」


まゆり「まゆしぃはずっとオカリンを見てきたし、これからもいっしょにいれると思ってたけど」


まゆり「そんなの、まゆしぃの夢だったんだ……」


まゆり「誰もわるくないよ、オカリン」












まゆり「ただ、まゆしぃが苦しめばいいだけ。」




そしたらみんな、幸せになれるんでしょう――――?
186 : :2018/06/06(水) 12:17:37.17 ID:Uj8q83PX0













岡部「う゛あああ゛アアああああああああーーーーーーーーーッッ!!!!!」
187 : :2018/06/06(水) 12:19:25.76 ID:Uj8q83PX0
秋葉原某所――――

鈴羽(反応が、増えた)


鈴羽(それと同時にまたラウンダーたちが動き始めた)



鈴羽「まさか……」


鈴羽(おじさんの方は、準備整ったのかな)





鈴羽「電話でないや……まずいよ、おじさん」
188 : :2018/06/06(水) 12:22:16.23 ID:Uj8q83PX0
ブラウン館工房前――――


紅莉栖「岡部!」


ダル「オカリン!」


ダル「オカリンしっかりしろ!オカリン!」


岡部「」



紅莉栖(まゆりは、いなくなってる…)


岡部「う、」


ダル「オカリン! 良かった、心配かけんなよな!」



岡部「うっ、うう、あああぁぁああ」


岡部「ああ、あっ、あっあああああ! うっぐっ、う、ああああああ」




ダル「ちょ、どうしたオカリン!?」
189 : :2018/06/06(水) 12:26:21.34 ID:Uj8q83PX0
岡部「うっうっうっ」


ダル「もしかして泣いてんの?」

紅莉栖「ええ。マジ泣きね」


ダル「誰か説明プリーズ……」


紅莉栖「……多分」




紅莉栖「もう、未来は決まってしまった」


ダル「・・・what?」



紅莉栖「・・・その顔やめてくれる?蹴りたくなるんだけど」


ダル「正直スマンかった。マジメに聞くお」


紅莉栖「あんたたち、最初にまゆりのリーディングシュタイナーは他の人より強いって言ってたでしょ?」


ダル(そう言いながらさりげなくオカリンの横にポジチェンだと・・・?この女、やはりスイー)


紅莉栖「ふんっ!!」


ダル「あいったい!!」



紅莉栖「…その顔、やめろって言ったわよね」



ダル「あ……ありがとうございます」
190 : :2018/06/06(水) 16:29:45.72 ID:Uj8q83PX0


紅莉栖「普通の人は世界線移動の記憶を保持することはできないのよね」


ダル「そう……だお。オカリン以外は」



紅莉栖「整理しましょう」



紅莉栖「リーディングシュタイナーは誰しもが持っている能力。」

紅莉栖「けれど普通は弱すぎて、日常生活に支障をきたさない範囲、つまりデジャヴや夢というカタチでしか他の世界線を感じ取ることはできない」



紅莉栖「リーディングシュタイナーは共鳴するという特性も持ち合わせているけれど、一般人の能力は微弱なため共鳴しても他の世界線を知覚するには及ばない……」



紅莉栖「これが前提条件。でも、ここに例外が存在する」



ダル「オカリンと、まゆ氏……」



紅莉栖「そう」
191 : :2018/06/06(水) 16:35:07.09 ID:Uj8q83PX0
紅莉栖「岡部のリーディングシュタイナーは常人よりも強力に発現されている、と見て間違いないわ」


紅莉栖「世界線移動の際に記憶をキープできるのはおそらく岡部だけだから。そして、彼と接している私たちは普通の人よりも少し強い実感を持って他の世界線の記憶を知覚する……これも共鳴の特性を裏付ける根拠になる」


ダル「いきなり学者モード本気すぎだろ常考」



紅莉栖「ちゃんとついてきて橋田。大事なことなんだから」


ダル「把握」



紅莉栖「続けるわ。岡部は過去のどこかで何らかの理由でリーディングシュタイナーを強く発現。それでも今まで何事もなくやってこられたところを見ると、特に日常生活に異常は無し……と」



ダル「友達は少なかったお」



紅莉栖「それはリーディングシュタイナーのせいじゃないわ」
192 : :2018/06/06(水) 16:37:34.94 ID:Uj8q83PX0
紅莉栖「橋田は高校から岡部と友達なんでしょ?」


ダル「そだね」


紅莉栖「夢見はどうだった? やっぱり変わったの?」


ダル「う〜〜…ん、言われてみればあの頃からちょっとリアルな夢を見るようになった気も……」


紅莉栖「ま、その程度ね。岡部自身もおそらく時折そんな風に自分の夢見を感じていたはずよ」


ダル「ハッ…じゃあ、僕がロリ顔きょぬーのおにゃのこたちに囲まれてアッハンウッフンやってたのもどこかの世界線に存在するってことなん!?!?」



紅莉栖「それはアンタの妄想よ」



ダル「やってやる・・・やってやるぅぅぅぁぁぁあああぁあああ゛ああああ゛あ!!!!タイムマシン、もしくはDメールで世界線変更!!!たった今それが、生きる希望になったおお゛!!!」



紅莉栖「(汚物を見るような目)」
193 : :2018/06/06(水) 16:46:05.30 ID:Uj8q83PX0
紅莉栖「とりあえず、岡部に異常は無いわ。きっとラボを立ち上げなければ、リーディングシュタイナーに気付くことも無かったでしょうね」



ダル「……皮肉な話だね」



ダル「皆が出会って、ラボメンになったのもきっと運命で、すごく楽しくなって……。でもラボを立ち上げて……大切なものが増えたからこそ」


ダル「オカリンはこの力に気付いた。そして苦しむことになるなんて……」



ダル「牧瀬氏だけでなく、もうちょっとみんなを頼れよな…オカリン」



紅莉栖「……」

194 : :2018/06/06(水) 16:49:54.34 ID:Uj8q83PX0
紅莉栖「本題に入るわ。まゆりに発現したリーディングシュタイナーは、岡部のものと同じくらい強力よ」



紅莉栖「自身の他の世界線での記憶を、おそらくほぼ100%、現実に近いカタチで夢に見る」


紅莉栖「それが辛ければ辛いほど……きっとそう、まゆりの場合は特に言葉に出来ないくらいの苦しみ」


紅莉栖「『死』が何度も何度も襲ってくる。寝るたびに。限りなくリアルに」


ダル「想像しただけで、吐き気がするお……絶対に眠りたくない」


紅莉栖「まゆりの顔の理由が、今身に染みて理解できたわ・・・」



ダル「僕でさえあれだけキツかったのに、まゆ氏は、死ぬんだよな。何度も何度も」


紅莉栖「橋田はまゆりの影響を受けたのよね?」



ダル「まゆ氏の影響を受けて共鳴したオカリンの影響かもしれないけど……多分そうだお」

195 : :2018/06/06(水) 16:57:20.90 ID:Uj8q83PX0
紅莉栖「どんな感じだったのか、差し支えなかったら聞いても、いい……」



ダル「……うん」



ダル「まず…夢じゃない。」



紅莉栖「それは、さっきの仮説の」


ダル「そう。『100%』なんだよ。確かに寝てるんだけど、夢に思えないくらいリアルなんだ」


ダル「そして色んな人……知ってる人も出る。そこで僕が違う僕として人生のほんの一部分を送る……」



ダル「娘が未来から来る世界線の時が一番キツかった。みんなでサイクリングなんかして、きつかったけど、楽しくて」

ダル「でもIBN5100を手に入れて未来を変える…その希望を託して、過去に送るんだ」


ダル「タイムマシンを僕が治して、娘はそれに乗って最後まで笑顔で過去にいく……でも」







ダル「失敗したんだ」













ダル「……タイムマシンは!!直ってなかったッッ!!!!」



紅莉栖「橋田……」
196 : :2018/06/06(水) 17:02:51.81 ID:Uj8q83PX0
ダル「タイムマシンは治ってなかった。僕は不完全な修理のまま娘を過去に送り出してしまった。そして娘からの失敗を報せる手紙が来る」




ダル「とうさんのせいじゃないとッ……手紙で僕をかばっていた!!」




紅莉栖「……」




ダル「そこで夢は終わるんだ。起きたときは汗びっしょりで涙も出てた。その日は怖くて悲しくて、何もできなかった」



紅莉栖「……そ、んな、そんなに苦しいだなんて」



ダル「まゆ氏はもっと痛くて、もっと怖くて、もっと悲しいよ。きっと」


紅莉栖「岡部も、そこにいたのよね」


ダル「うん。間違いなくいた」



紅莉栖「岡部はそんな絶望を、何度も何度も味わいながら生きてきた」



紅莉栖「そして今、まゆりも……」
197 : :2018/06/06(水) 17:20:12.48 ID:Uj8q83PX0
紅莉栖「……まとめるわ」




紅莉栖「リーディングシュタイナーは本来、他の世界線の記憶を断片的、瞬時的に知覚する程度の能力」



紅莉栖「岡部のリーディングシュタイナーは進化しており、自分の移動した他の世界線の記憶を、永続的に知覚する+保持しておく能力」



紅莉栖「対してまゆりのリーディングシュタイナーは、自分の移動した覚えのない他の世界線の記憶をアトランダムに、現実に限りなく近い夢として知覚する能力」



紅莉栖「そして二人とも持っているのが、さっきの橋田のように、『相手と接触することで、その者の他の世界線の記憶を強制的に夢やデジャヴとして知覚させる能力」


紅莉栖「二つ目の力に関して言えば、まゆりのリーディングシュタイナーは岡部のものよりずっと強力よ」



ダル「既に手に負えない件」



紅莉栖「激しく同意よ。でも、さらにもうひとつ、まゆりは岡部を超えた力を持ってる」
198 : :2018/06/06(水) 17:30:31.28 ID:Uj8q83PX0
ダル「」


紅莉栖「あくまで仮説にすぎないわ……。でも岡部がそこに倒れていることが、何よりの証拠だと私は思う」


ダル「最初に牧瀬氏言ってたよね、もう未来は決まったみたいなこと」


紅莉栖「ええ。岡部が倒れた時点で決まった。もう取り返しはつかない」



紅莉栖「このまま世界が進んでも……もうまゆりは救えない。」



紅莉栖「ディストピアは、形成されるわ」






ダル「……」


ダル「な、なんで」





ダル「なんで!?」

199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 22:32:07.72 ID:DiZjhqSzO
岡部が倒れてるのほったらかしてしゃべってんの?
200 : :2018/06/07(木) 22:00:28.24 ID:YXotrATs0
再開
201 : :2018/06/07(木) 22:14:07.57 ID:YXotrATs0
紅莉栖「岡部には無くて、まゆりだけが持っている力」


紅莉栖「それはおそらく、まゆり自身の他の世界線の記憶を他人に知覚させる能力」


ダル「えっ」



ダル「……それってつまり、まゆ氏が他の世界線で何回も何回も死んだのを無理矢理体験させられるってこと?」



紅莉栖「そういうことになるわね。まゆりのリーディングシュタイナーは、今の彼女の精神に強く影響されているみたいだから、終わりを迎える瞬間が他人の脳に作用して流れ込むはず」


ダル「じゃあオカリンもそのせいで今……」



紅莉栖「岡部は、まゆりを助けるために世界線を跳び続けた」


紅莉栖「それは裏を返せば、時間を越えてしまうほどまゆりの死が辛くて悲しくて、受け入れられなかったということ」


紅莉栖「そんなトラウマになった瞬間を無理やりもう一度見せられたら、……」


202 : :2018/06/07(木) 22:31:29.45 ID:YXotrATs0
ダル「……」


紅莉栖「分かった?橋田。これがどれほど恐ろしくて、危険で、悲しい能力か」


ダル「分かるよ牧瀬氏……!まゆ氏がこの能力を持つ限り、もう人と接することができない。冗談言って笑いあったり、一緒に泣いて励まし合ったりできない! ふとした瞬間に自分の記憶で他人を傷つけるかもしれないからっ……! そういうことだろ!?」


紅莉栖「そう。まゆりにその力が備わってしまった以上、彼女はラボから去るでしょう。そして岡部は、絶対にまゆりを置いて自分たちだけ楽しく過ごすなんてできない。さらに他のメンバーのリーディングシュタイナーの発現……存続は不可能」


紅莉栖「ラボは解散する。そしてラボメンを頼ることのできない岡部は、たったひとりでタイムマシンを作ろうとする」




岡部「タイムマシンなど…俺は作らんぞ……。紅莉栖」



紅莉栖「岡部っ、大丈夫なの?」


岡部「平気……だ。こんなもの、まゆりの痛みにくらべれば……」
203 : :2018/06/07(木) 22:40:39.83 ID:YXotrATs0
岡部「俺は……俺は愚かだった。大馬鹿野郎だ。鈴羽が未来からきて……お前たちを頼り、まゆりと直接会って、やっとわかった」


岡部「心配をかけた……紅莉栖、ダル。もう大丈夫だ。少し一人にしてくれ」


ダル「ちょ、どこいくんオカリン!」


岡部「大丈夫だ。屋上で少し、頭を冷やす。お前たちはラボに戻ってろ」


紅莉栖「……」
204 : :2018/06/07(木) 23:13:19.92 ID:YXotrATs0
秋葉原某所――――


鈴羽「すぅー……すぅ……」


鈴羽「ハッ」


鈴羽(まっずー。ねむっちゃってた)


鈴羽「レーダーの確認、の前によだれよだれ」フキフキ


鈴羽「よしっ。でも一度未来に帰ってたみたいだからまだ……」



鈴羽(いや、帰ってきてる。しかも、反応が増えてる)


鈴羽「まさか……!」



鈴羽「おじさんに電話しないと!」
205 : :2018/06/07(木) 23:18:16.44 ID:YXotrATs0
ブラウン館工房ビル屋上――――



岡部「……」


岡部「……ふーー」



紅莉栖「……」ジトー


岡部「いつまでそうしている気だ」 


紅莉栖「別に」



岡部「何か言いたげだな」


紅莉栖「別にっ!」


岡部「なんだというのだ……」




岡部「少し考え事をしたいから、一人にしてくれと言っただけだろう」



紅莉栖「だから何も言ってないじゃない」


岡部「いぃーーやっ! 分かったことがあるくせに私には教えてくれないーとか思ってる顔だぞそれは」


紅莉栖「思っとらんわ! ただ……ちょっと心配なだけ」



岡部「何がだ」



紅莉栖「アンタが」



岡部「……」
206 : :2018/06/07(木) 23:20:59.04 ID:YXotrATs0
岡部「フゥーーーーハッハッハッハッハァ!!!」


岡部「この俺も堕ちたものだぁー狂気のマッドサイエンティストであり混沌の支配者である鳳凰院・凶真が気を、遣われる、体たらくゥゥ!!」



紅莉栖「アンタはマッドサイエンティストでもなければ混沌の支配者でもない」




紅莉栖「……ただの岡部倫太郎よ」



岡部「……フ」



岡部「この時間帯は組織が来る危険性が高い……ラボを頼むぞ」



紅莉栖「知るか。さっさと降りてきなさいよね」











岡部「…………」


207 : :2018/06/07(木) 23:25:54.18 ID:YXotrATs0
岡部「……いったか」


岡部「……ッッ」ブルブル


岡部「くそっ、まだ体、が」




先ほどの紅莉栖の推察は確かめようがないが、おそらく正解なのではと俺も思っている。やはりあいつは天才だ。




しかしあいつの言うまゆりの持つ力だけは、部分的に不正解だった。






俺は『まゆりの目線で何度も死ぬ』ことを体験したのではない。






『何度も死ぬまゆりを見る』ことを体験させられたのだ。




俺が世界線を行き来するきっかけになった出来事だ。


もちろん全て一度体験している。




だがそんなコトは関係無いッ!!
208 : :2018/06/07(木) 23:31:59.85 ID:YXotrATs0
まゆりが死ぬ!



それが嫌で嫌で仕方なくて、だから時空を跳んだのに!!


もう一度全てを!!俺のトラウマの全てを!!



繰り返す!!





俺はまゆりを斜め上から見下ろしている。

体は動かない。


駅のホームだ。



電車が来た。ぐんぐん近づいてくる!


まゆり!まゆり!!聞こえないのか!!俺の声が聞こえないのか!?


手が届かない!電車が来る!


後ろから綯が走ってきた!!悪意の無い目で!ただ純粋に抱きつこうと!!


やめろ!頼む動いてくれ、ダメなら声だけでもいい届いてくれ!!


隣にいる自分が、憎くて憎くてたまらない!!

お前は救えるのに!手も声も届くのに!なんでボーッとバカみたいに突っ立ってるんだよぉ!!


電車が、綯が、ああ、まゆり!!



手を伸ばせ!手を掴め!!なんでだよ後ろから足音が聞こえるだろう振り向けよ!!少し叱って制止しろよ!!


なんで、なんで止まらないんだよ!!



まゆり!!


まゆりが!!



誰か!!

誰か助けて!!


まゆりを助けてくれ!!


ああ!!

止まれ!!!



お願いだ…


とまってく

ドンッ
209 : :2018/06/07(木) 23:38:40.97 ID:YXotrATs0
涙が止まらなかった。


救えないんだ。どうしたって死んでしまう。


もうホントに辛くて、絶望ってこういうことなんだなって、俺初めて分かったよとか一人で言って笑って、



泣いてた。




紅莉栖が助けてくれなかったら、俺は確実に死んでいた。


あまりの辛さに自ら命を絶っていた。


そんな紅莉栖を好きになることは、本当に、本当に自然なことではないだろうか。


いや、そうだと思う。自分で分かっている。




しかし、リーディングシュタイナーによってまゆりの世界線に触れたおかげで、分かった。





まゆりが、いかに俺を想ってくれていたか。






俺は本当に馬鹿野郎だった。


こんなにも近くで。


こんなにも想ってくれていたのに。


命を助けることができた事ばかりに安堵して、あいつの気持ちに気付けなかった。


あげくの果てに紅莉栖と結ばれたことを大々的に公言して……


あいつが笑顔の裏で、どれだけ悲しんでいたかも知らずにッ!!
210 : :2018/06/07(木) 23:49:39.10 ID:YXotrATs0
俺は過去で行動を始めようとした時、己の行く末を予想してしまい激しく動揺した。



紅莉栖と付き合うとディストピア形成。

まゆりも紅莉栖も選ばなければディストピア形成。


したがって俺はまゆりと居続けるしか選択肢が無くなる。



その理不尽に激昂した。

神を恨んだ。


そして過去からタイムマシンで戻る途中、紅莉栖への告白を阻止するしか道はないのではないか、と鈴羽は言っていた。



だが違ったのだ。


まゆりの世界線に触れた今ならば分かる。









紅莉栖と結ばれたことが悪いのではなかった!



まゆりの想いを解放させてやれなかったことが、すべてを狂わせている要因なのだ!




だが、今なら。


鈴羽が俺を助けに来て、紅莉栖とダルを頼ることができた、今ならば。




まゆりが満たされた状態で紅莉栖と結ばれるならば、何の問題も無い。






行ける。


明るい未来へ。
211 : :2018/06/08(金) 00:03:41.57 ID:GX6BhTnR0
過去に戻って俺がやることはたった一つ。


何の迷いも無くまゆりの元へ向かい、その想いにケリをつける。


一対一で話して、あいつの気持ちを受けとめる。


そうしてまゆりの行動が変われば、世界線は――――



岡部「ハッ」


岡部(携帯・・・鈴羽か)




岡部「もしもし、俺だ。どうした」



鈴羽『オカリンおじさん?今平気?』



岡部「ああ、大丈夫だ。何かあったのか?」



鈴羽『ラウンダーが人員を補充して、未来から戻ってきたんだ。もう時間がない。世界線変動の原因は突きとめた?』


岡部「問題ない。奴らの今の動きは?」


鈴羽『……』















鈴羽『逃げて!!!!!!!おじさん逃げ』ブツッ
212 : :2018/06/08(金) 00:04:46.67 ID:GX6BhTnR0


岡部「す、鈴羽?おいすず」







「きゃああああああああああ!!!!」






岡部「!」




岡部「紅莉栖!!ダル!!」
213 : :2018/06/08(金) 21:31:11.37 ID:GX6BhTnR0
再開
214 : :2018/06/08(金) 21:41:37.28 ID:GX6BhTnR0
考えられる可能性は一つしかない。

ラウンダーだ。


岡部「急がねb…」





いや……待て。

鈴羽に、そしてラボにいるダルにも紅莉栖にも、今現在ラウンダーの魔の手が伸びている。そう考えて間違いないだろう。


だがこの世界線には電話レンジ(仮)もタイムリープマシンもない。


紅莉栖たちを助けにラボに行き、捕まってしまったら?




終わりだ。今回は、チャンスは一度きりなんだ。

それだけは避けねばならない!!









岡部「……けっこうな、高さだな」
215 : :2018/06/08(金) 21:43:56.26 ID:GX6BhTnR0
ラボ――――


紅莉栖「……ッ」

ダル「ド、ドアが」



???「あぁ……」



紅莉栖「誰っ!?」


???「あぁ、突然訪問していきなりドアを蹴り飛ばしたのは謝ろう……すまない」


紅莉栖「!!」


ダル「その声」



???「ここにもう一度立たねばならんのだと思うと、」



???「無性に怒りが抑えきれなくなってな……!!」



紅莉栖「お、岡部なの?」



岡部(未来)「フン。やはり声で分かるか。貴様らの前ではこんなお面必要無かったな」


ダル「ほんとにオカリン、なのかお……?」



岡部(未来)「そうだ。1%の間違いも無く、俺は岡部倫太郎本人だ。ただし」




岡部(未来)「未来のな」
216 : :2018/06/08(金) 21:53:25.78 ID:GX6BhTnR0
紅莉栖「未来の岡部が、ラボに何の用?」


岡部(未来)「何の、用?フ、フフ」


岡部「フゥーハッハッハッハッハッハッハッハッハァ!!」


ダル(笑い方変わってネェ…!)


岡部(未来)「何をしにとは。鈴羽が来たことで何か変わったことがあるかと思ったが……。何も聞かされていないのか」


岡部(未来)「まぁ無理もないか……貴様らなど信用できるわけもない」


紅莉栖「!」


岡部(未来)「フン。鈴羽のやつめ、まさか過去の俺と接触していなかったのか。だとしたらここへ来たのは無駄足だったな……」


紅莉栖「聞いてるわよ!!!!」


岡部(未来)「あぁ?」



紅莉栖「私たちは岡部に話してもらって、全部知ってるって言ってんのよ!!!!」

ダル「ちょ…牧瀬氏!」

紅莉栖「とめんな橋田! ムカつく! この岡部ちょーームカつく!!」

ダル「分かるけど!ほら後ろで部下っぽいのが銃構えてるから!! やめて!!」
217 : :2018/06/08(金) 22:00:30.60 ID:GX6BhTnR0
ダル「それよりオカリン、ほんとに何しにきたん」


岡部(未来)「フン」


岡部(未来)「話を聞いたなら知っているんだろう?」



岡部(未来)「俺が未来の支配者であることを」



ダル(やっぱり…未来のオカリンは、本当に逃げ出したんだ。あまりの辛さに耐えきれなくて逃げ出したんだ)


紅莉栖「聞いてる。アナタがディストピアを形成したことは」


岡部(未来)「ハッ、何を馬鹿な」


岡部(未来)「他の人間にはそうかもしれんが、少なくともお前たちにとっては未来はユートピアのはずだ」


紅莉栖「……それは、私たちだけは幸せにしてくれるってこと?」


岡部(未来)「……」



ダル「……」


ダル(さっきはラボを憎んでいるようなこと言ってたのに、やってることはまるっきり逆)



ダル(未来のオカリンも、ラボメンを大事に思う気持ちは変わってない)
218 : :2018/06/08(金) 22:15:34.81 ID:GX6BhTnR0
ブラウン館工房ビル屋上――――


岡部「すーーーーーーーー」


岡部「…はーーーーーーーーーーーぅふ」


岡部「大丈夫だ落ち着け俺ーー……カームダゥーン、カームダ」


岡部「…」チラ


岡部「ぃや高いなっ!!」




岡部「しかし、グズグズしていたらラウンダーがここまで来てしまう」


岡部「俺は不死身のマッドサイエンティスト……鳳凰院凶真! 不可能はない!!」


岡部(まゆり……紅莉栖、ダル、鈴羽、るか!萌郁!!フェイリス!!)


岡部(帰るんだ!ラボが解散しない、みんなが幸せになれる、あの世界線へ!!)



岡部「ぅ…う……」


219 : :2018/06/08(金) 22:18:04.06 ID:GX6BhTnR0
ラボ――――


岡部(未来)「さて、時間も無い。さっさと本題に移るとしよう」


岡部(未来)「言った通り俺は未来の支配者だ。時間を操り権力を手駒にし密約を結ぶことで、事実上最高の地位に立った。しかしこれは完全ではなかった」


岡部(未来)「俺に仇なす反乱分子どもが沸いて出たのだ。まぁ当然のことと受け入れ、ひとつひとつ確実に潰していったわけだが、最後のひとつがどうしても潰れない」


ダル「それ僕たちだろ?」


岡部(未来)「!」



ダル「そっか、良かった。ねっ牧瀬氏☆」


紅莉栖「キモいわよ橋田。でも……ええ、未来の私たちも岡部を諦めていない」


紅莉栖「最後まで岡部の味方でいようとしてる……!」



岡部(未来)「何を言っている……? 奴らは敵だ。俺の邪魔をしてくるのだ!! 奴らと俺の道は、もう違えた!」


紅莉栖「大丈夫よ。もう全ての歯車は回り出してる」




紅莉栖「岡部は跳ぶわ。アナタを救うために」
220 : :2018/06/08(金) 22:20:20.21 ID:GX6BhTnR0










岡部「跳べよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」










221 : :2018/06/08(金) 22:24:59.80 ID:GX6BhTnR0
休憩
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2018/06/08(金) 22:39:37.11 ID:NpDW5hiZ0

メール欄にsaga入れるといいぞい
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 18:23:20.86 ID:RCgsqoYA0
マユリ様!!
224 : [saga]:2018/06/09(土) 21:52:37.17 ID:kJhQF+ec0
再開
225 : [saga]:2018/06/09(土) 21:59:30.73 ID:kJhQF+ec0
ラボ――――


岡部(未来)「黙れ!!もう遅い、もう遅いんだよお前らが何を言っても止まらない!理想郷は完成する……鈴羽を捕まえさえすれば!」


岡部(未来)「お前らをエサに鈴羽をおびき出し未来へ連れ帰る、それで全て終わるのだ!もう一度、もう一度……」


ダル「何で分かんないんだお!過去のオカリンが全て変えてくれる! 幸せな世界線を絶対掴んでくれるはず!」


岡部(未来)「簡単に言うな!!できなかったらどうする。過去の俺が失敗してさらに絶望して、もっと悲惨な世界線になってしまったらどうするんだよ!? もう…嫌なんだよ辛いのはぁ!!」


岡部(未来)「だから俺がこの手でやりとげる。これ以上全てが悪くならないように!!」
226 : [saga]:2018/06/09(土) 22:13:36.41 ID:kJhQF+ec0
紅莉栖(世界線を変えるには、岡部と鈴羽さんが一緒に過去へ跳ぶ必要があるはず)


紅莉栖(だけど、今岡部は屋上から出られない。鈴羽さんも秋葉原のどこにいるかもわからない、そもそもこの状態を知らない可能性もある)



鈴羽さんが捕らえられるということは、


タイムマシンが使用不可能になることと同義。



それだけは止める、

たとえ私たちが死んでも……!



紅莉栖(でも、何も良い手が思い付かない。くそ、こんなときに私は・・・)



岡部(未来)「鈴羽と連絡をとれ」


ダル「僕たちはできないお。オカリンじゃないと」


岡部(未来)「チッ……この時代の俺はどこにいる?」


紅莉栖「……」


岡部(未来)「牧瀬紅莉栖。お前だ。答えろ」チャキ


紅莉栖「……知らないわ」


岡部(未来)「……」


岡部(未来)「近くだな。屋上か」


紅莉栖「ッ!!」


岡部(未来)「俺に嘘をつくな」


岡部(未来)「今まで何人もの人間が俺に嘘をついた。そいつらと同じように物言えぬようにしてやろうか?」


紅莉栖「……!」
227 : [saga]:2018/06/09(土) 22:26:36.56 ID:kJhQF+ec0
紅莉栖(体が、体が動かない……!あの蛇のような眼で睨まれただけで)

紅莉栖「こ、んなの、……こんなの岡部じゃない」


岡部(未来)「?そうだぞ、何を言っている?」


岡部(未来)「俺の名は鳳凰院凶真。岡部倫太郎は死んだ。ずっと……ずっと前にな」


岡部(未来)「屋上にいる俺を確保しろ」


ラウンダー4「了解」




岡部(未来)「……」



岡部(未来)「まゆりはいるのか。このラボに」



ダル「……今はいないお」



岡部(未来)「…………」



岡部(未来)「そうか」




・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・






ラウンダー4「鳳凰院様ッ」


岡部(未来)「!」


ラウンダー4「岡部倫太郎を発見できませんでした」


岡部(未来)「なんだと……!?」
228 : [saga]:2018/06/09(土) 22:32:15.42 ID:kJhQF+ec0
岡部(未来)「屋上に逃げ場など無い。銃を貸せっ俺がいぶりだしてやる」


ラウンダー1「いけません鳳凰院様!!この時代の自分と接触すると深刻なタイムパラドックスが発生する危険性があります!!お分かりでしょう!?」


岡部(未来)「黙れ。これは命令だ。お前たちは動かずにこいつらを見張れ。絶対に逃がすな」


ラウンダー234「はッッ!!」

ラウンダー1「……っ、はっ」




屋上――――



岡部(未来)「出てこい!」


岡部(未来)「どこに隠れようが無駄だ。もうよせ。諦めろ。お前も十二分に理解しているはずだ、未来を変えるのは簡単ではない」




隠れているとしたら、向かって右の陰になっている部分。そこしかない。



しかしお互いの姿を認知したとき、とんでもないことが起こる。昔の鈴羽はそう言っていた。






だが、もう……いいんじゃないか。


どうせこれ以上良くはならないなら。

あのクソみたいな未来が変わらないと分かっているなら。



いっそのこと、もう……
229 : [saga]:2018/06/09(土) 22:35:04.36 ID:kJhQF+ec0
奴と接触して、そのとんでもないこととやらを起こして。


その後奴を撃って、俺も消える――――それでこの時間の連鎖から逃れられるのなら。


それもいいかもしれない。



未来に帰っても虚しい。独りだ。理解してくれる人間などいない。まゆりは俺を見ていない。紅莉栖は敵。ダルは敵。
フェイリスも敵。るかも敵。


この作戦が成功したらまた昔みたいに戻れるかなって、いや戻りたいなって、昔みたいに皆で――――



岡部(未来)「ぐっ……う」




でもやっぱり。


無理かなって。






岡部(未来)「……!……!」




もう疲れた。


もう、もう――――




岡部(未来)「し、んでくれ……」
230 : [saga]:2018/06/09(土) 22:37:19.70 ID:kJhQF+ec0
岡部(未来)「!」




岡部(未来)「いない……」


岡部(未来)「まさか」




岡部(未来)「!」




ブラウン館前の道路に広がる、大きな大きな血痕。


それが現すこと、それは




岡部(未来)「と、跳んだのか?……ここから!?」




な、なにが



何がお前をそうまでさせる?



何、が…




岡部(未来)「クソ、クソ……!!!」


岡部(未来)「やはり何があろうと……もう俺も……!」



岡部(未来)「引き下がれない!!!行くところまで行ってやるぞ、岡部倫太郎!!俺の名は鳳凰院……」





岡部(未来)「凶真だ!!!」
231 : [saga]:2018/06/09(土) 22:48:03.65 ID:kJhQF+ec0
ラボ――――


岡部(未来)「お前たちはタイムマシンに戻れ。残りは岡部倫太郎を追え。鈴羽は確保できたのか」

ラウンダー1「鳳凰院様……それでは」


岡部(未来)「逃げた。屋上から飛び降りてな」



紅莉栖「!!」


ダル「オカリン……無茶しやがって……」


ラウンダー2「申し訳ありません。橋田鈴羽の確保は失敗したとの報告が入っております」


岡部(未来)「フン……急いで行動にあたれ。そう遠くまでは行ってないはずだ」


ラウンダー34「了解」



岡部(未来)「確かに、運命は動き始めているようだ」



岡部(未来)「……もう会うこともあるまい」



紅莉栖「いいえ」






紅莉栖「次会う時は……笑顔でね。岡部」


ダル「またな。オカリン」



岡部(未来)「……」
232 : [saga]:2018/06/09(土) 22:49:50.78 ID:kJhQF+ec0
休憩
233 : [saga]:2018/06/11(月) 01:11:47.25 ID:I+t0YjPI0
再開
234 : [saga]:2018/06/11(月) 01:37:53.15 ID:I+t0YjPI0
秋葉原某所――――



鈴羽「おじさん!大丈夫!?」


岡部「だから大丈夫だと言ってるだろ……。骨がいくつか折れただけだ」


岡部「今この時このタイミングを逃したら、もう次はない。捕まれば全てが終わりだ」


鈴羽「ねぇ……その左腕、動くの?」


岡部「そう思うなら、安全運転で頼むぞ」


鈴羽「へへ、それは保証しかねるよ。じゃあ車に…」



まゆり「オカリン」















まゆり「どこいくの?」

235 : [saga]:2018/06/11(月) 01:39:45.74 ID:I+t0YjPI0
岡部「!」ドン


鈴羽「たっ・・・おじさん!?」


岡部「車を出せ」


鈴羽「何言って」


岡部「早く!!!」

鈴羽「…ッ」


岡部「後で必ず合流しよう」


鈴羽「……絶対だよ」

岡部「ああ。行け」

鈴羽「うん」








俺は、過去のまゆりと話さなければならない。


全てを聴いて、まゆりの想いを知らねばならない。




そして今のまゆりともし話すことができるなら、


それは願ってもないチャンス。

何かのヒントを知ることができるかもしれない。



……建前はこんな感じでいいだろう。





俺はただもう単純に



まゆりと話がしたかった。
236 : [saga]:2018/06/11(月) 01:41:56.89 ID:I+t0YjPI0
岡部「……」


まゆり「……」



右手にナイフを持つまゆりを見て、緩やかな衝動が体の中をめぐっていた。


ここは本当に、シュタインズゲートではないんだな。

でなければまゆりが俺に、ナイフを向ける訳がない。




まゆり「オカリン」

岡部「なんだ?まゆり」


まゆり「まゆしぃ、いろいろ考えたんだけど」






まゆり「やっぱり死んでくれないかな」



まゆりは自分の首元にナイフを向けた。






まゆり「いっしょに。」
237 : [saga]:2018/06/11(月) 01:46:22.25 ID:I+t0YjPI0
岡部「フゥーハッハッハッハッ!!なーかなか言うようになったではないかまゆりよ、この鳳凰院凶真に共に死んでくれと、は」


まゆり「うん……もうたえられないの。ねたくっても、ねむれないの」


岡部「ほう。何故眠れない?」


まゆり「寝たら死ぬからだよ。なんかいもなんかいも。オカリンにも見せてあげたでしょ。もう、ほんとにいやなの。くるしいの」

岡部「だから、死ぬのか。だが俺を殺す理由はなんだ?」



まゆり「ひとりで死ぬのはこわいけど、オカリンがいたらこわくないの。それどころか……すっごくしあわせ。それにやっぱり紅莉栖ちゃんにオカリンをとられるのはいやなの」


岡部「クク、だだっこめ」


まゆり「えへへ」
238 : [saga]:2018/06/11(月) 01:50:35.23 ID:I+t0YjPI0
岡部「だがまゆりよ、この鳳凰院凶真の命は決して安くないぞ。代償に何を支払う?」

まゆり「え、と、まゆしぃにできることならなんでもするよ。オカリンのやってほしいことなーーんでも」


岡部「え、何でも?」



まゆり「……オカリン、えっちなこと考えたでしょ」


岡部「考えとらんわっ!マッドサイエンティストに淫らな気持ちなど……」


まゆり「ウッソだぁー」


岡部「か、からかうのはよせっ!」



まゆり「あっはは!」


岡部「まったく。……フフ」




まゆり「……ずっと、こうやってたいな」



岡部「ん……?」
239 : [saga]:2018/06/11(月) 01:53:12.47 ID:I+t0YjPI0
まゆり「ふたりで、ずっとこうしてたいな。朝も夜もこないでほしい。オカリンが冗談言って、まゆしぃが笑って、今度はまゆしぃが冗談言って、オカリンが呆れた顔して仕方ないなって……」


まゆり「ううん、思ってたの。心のどこかでずっとふたりでこうしていられるって、思ってたの。でもダメだったね。オカリンは紅莉栖ちゃんを好きになっちゃったんだもん」


岡部「まゆり……」


まゆり「まゆしぃはあの日、もうオカリンといっしょにいれないんだって分かってすっごく悲しくなって、そしたらちがう世界のことが一気に頭にながれてきて……」



まゆり「……それがいけなかったのかな? まゆしぃはオカリンとずっといっしょにいたいって思っちゃいけなかったのかな?」



まゆり「泣いちゃ、ダメだったのかなぁ……?」
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/11(月) 20:23:56.60 ID:8wUf0C0d0
掻き毟れ
疋殺地蔵
241 : [saga]:2018/06/11(月) 23:43:23.78 ID:I+t0YjPI0
岡部「バカなやつめ……」


まゆり「……バカじゃないよー」


岡部「俺などといっしょになったところで、お前にいいことはひとつもあるまいに」


まゆり「だって、オカリンの横が一番安心するんだもん」


岡部「それはお前が無知だからだ。世界は……本当はもっと広いのだ」


岡部「事実、お前が俺と全く関係をもたない世界線も存在したぞ」


まゆり「ないよぉ、そんなの」



岡部「……あったのだ」



まゆり「うーん……?」
242 : [saga]:2018/06/11(月) 23:46:46.59 ID:I+t0YjPI0
岡部「まゆりよ。お前の痛みは、想像を絶するものだ。だから俺はもはや、お前が死ぬのを止めはしない。むろん俺を殺すこともな」


岡部「だが、ひとつだけ頼みがある。聞いてくれるか?」


まゆり「……うーん」



まゆり「いいよ。いっこだけなら」


岡部「フッ……」


唇が、わなわなと震えた。





岡部「ならば聴け!!椎名まゆりよッ!!!」


岡部「俺は必ずお前を救う!! お前が今苦しんでいる全てを、跡形も無く消し去ってやることを約束しよう!! 悪夢も何もかも、俺が絶ち切ってやる!!」


岡部「俺は今からある場所へ行く!! そして帰ってきたら、殺すなりなんなりすればいい!!あまりの己の幸せに、そんなことをする気も起こらんだろうがな!!だから!、だからっ……」



岡部「少しだけ、待っていてくれ……。必ずお前を救うから……」


最後の方は、かすれた声しか出なかった。



悪いのは全て俺だ。

だがもう謝らない。それに何の意味も無い。



皆を幸せにすることこそが、俺に許された唯一の謝罪なのだ。
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