【艦これ】機械油に沈む宝物

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1 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 01:53:04.33 ID:daGeGlnD0
※地の文あり

不慣れですが宜しくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1529599984
2 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 01:54:39.68 ID:daGeGlnD0

明石「...張...夕張ちゃん!聞こえてる?」

夕張「おおう!びっくりしたぁ〜」

声に気づき、手元の艤装から目を離し顔を上げると明石さんが目の前にいた。
彼女は工具を手元で回しながら、私同様の機械油まみれの作業着をもう片方の手でつまみ上げている。

明石「さっきからずーっと声掛けてるのに反応しないんだもん。人の事言えないけど熱中しすぎ」

夕張「ごめん。ほんっと気づかなかった。で、用件は?」

明石「そろそろドック空きそうだし、一緒におフロ行かない?汗もかいて気持ち悪いんだよね」
3 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 01:55:34.29 ID:daGeGlnD0
明石に言われて気づいたが、私も長丁場の作業で全身汗まみれだった。
それに機械油の臭いがこびり付いちゃってるかも。
ドックが空いているうちにシャワーを浴びさせてもらわなくては。

夕張「わかったー。でもこの艤装の調整だけ...」

明石「はいはいそれは明日に回しましょうねー。というか今日の依頼分、終わらせたでしょ」

夕張「あああぁぁぁ...」

明石に首根っこを引っつかまれて、体を無理やり立たされる。
名残惜しくも、私は工廠を後にした。
4 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 01:56:17.69 ID:daGeGlnD0
明石「それにしても、普通の共用のおフロで洗えたら楽なのになー」

夕張「さすがに皆が嫌がるでしょ。工廠で落としきれなかった油もあるし」

明石「そうだけどさ」

整備時に使用する機械油はお世辞にも良い臭いとはいえないし、手の皺に入り込んでしまったりする。

実際、今の私の手は煤けたみたいに真っ黒だ。あまり他人に触りたいとは思わない。

なので私と明石さんは整備が終わって体を洗う時はドックで洗う事にしている。

ドックへつながる廊下を歩いていると、向かい側から提督が来るのが見えた。

提督もこちらに気づいた様で、手を振りながらこちらに歩いてくる
5 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 01:57:25.08 ID:daGeGlnD0
明石「やっば!提督だ...」

夕張「どうしたの?明石さん」

明石「どうしたのって、今私たち油まみれだよ!?」

そうだった!

このままでは提督にひどい臭いをお見舞いする事になってしまう!

私だって一応艦娘である前に女なのだ。異性に対しては一応気配りをする。

ましてや相手が提督ならばなお更である。

この危機的な状況を打開する為には...
6 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 01:58:01.24 ID:daGeGlnD0
明石さんの背後に隠れる事にした。

明石「ちょ、夕張ちゃん!?」

こうして一人の乙女を犠牲に、私の女としての尊厳は守られるのであった...。

夕張「明石さん...あなたの事、私忘れないから...!!」

明石「いや、勝手に殺さないで。いい話風にしてもだめだから」

そんな茶番を明石さんと繰り広げていると、提督が目の前までやってきてしまった。

提督「どうした、明石と...夕張、何してるんだ?俺に用事があるならここで聞くが」

明石「ちょっと汗をかいたのでドックでシャワーを浴びようかと」

夕張「かと」
7 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 01:58:33.89 ID:daGeGlnD0

提督「そうか。いつも二人には艤装周りでお世話になっているからな、ゆっくりしてきてくれ...と言いたい所なんだが」

提督「今ドックの空きが一つしかないんだ。悪いな」

明石「ええ!?いつもはこの時間帯空いてるじゃないですか」

提督「新人を連れた哨戒任務で少しな」

夕張「どうしよっか、いったん工廠に戻る?」

明石「仕方ないねー、戻りま...ん?」

夕張「明石さん?」

明石「夕張ちゃん、ちょっとだけ待っててくれる?」
8 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 01:59:14.17 ID:daGeGlnD0

私にそういうと明石は提督を連れて向こうの曲がり角へと消えてしまった。

なにやら話をしているみたいだけど...少し気になる。

明石「ていと...誘...チャンス...」

提督「さすがに急....」

明石「いつま...はや...指...」

やっぱりここからじゃ話が断片的にしか聞こえてこない。

何の話してるのかな。

しばらくすると二人は帰ってきた。
9 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 01:59:43.74 ID:daGeGlnD0

明石「ごめんごめん、遅くなっちゃった。妙なところで提督が渋るから...」

夕張「?」

明石「そんなことよりも夕張ちゃん、シャワー浴びれるみたいだよ!」

夕張「でもドックは一つしか空いてないんじゃ」

明石「実はもう一つ、使える所があるんだよねー。ですよね、提督?」

そう言いながら明石は提督のわき腹をひじで小突く。
なにやら提督は気まずそうな顔をしているけど...。

提督「なあ夕張、お前が良かったらなんだが...」

提督「俺の家の風呂、使っていかないか?」
10 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 02:01:04.95 ID:daGeGlnD0

夕張「いいんですか、提督。お風呂を使わせてもらっても」

提督の家へ歩くすがら、私は本当に提督の家へお邪魔してもいいのか心配になって聞いてみた。

すると提督は二つ返事で「構わない」とだけ答えると歩みを進める。

提督「去年の暮れに家に大きめの風呂を造ったんだ、自分へのご褒美も兼ねてね。
だけど職業柄あまり家に帰れなくて、週末に家へ寝に来るような物だ。せっかく風呂を作ったのに、これじゃもったいないだろ?」

夕張「尚更ですよ!私、作業の後だから油まみれですよ?」

提督「別にいいさ。それに」

夕張「それに?」

提督「誰かさんに自慢したかったんだよ。新しい風呂。だからいい機会だと思ってね」

夕張「...提督って意外と子供っぽいところありますよね」

提督「でも夕張にも分かるだろ?この気持ち」

夕張「まあ、分かりますけど」

11 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 02:01:57.24 ID:daGeGlnD0

そうこう話している内に提督の家まできてしまった。

鎮守府の離れに提督の家があることは知っていたけど、まさかこんな形でお邪魔する事になるなんて。

提督「ちょっと待ってて。用意してくる」

私にそう言い残すと、提督は家の奥へと上がっていってしまった。

玄関に一人取り残された私は改めて提督の家に上がる事を再認識すると共に、少しだけ期待している事に気づく。

胸に手を当てて、少しだけ深呼吸。
12 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 02:03:07.88 ID:daGeGlnD0

夕張「はぁー」

どうせならもっとお洒落をして来たかったなぁ...。

私、夕張は提督に好意を寄せている。

私がここの鎮守府に着任したのは、今からちょうど3年前、なんでもデイリーの最低値の建造で建造したらしい。

その頃はまだ戦力も乏しく、着任したときには提督が大騒ぎして、秘書官の叢雲さんに窘められていた事を
今でもよく覚えている。

あの時はほんとに少数の艦娘しか居なかったからもっと気軽に提督と話していたのだけれど、
今となってはすっかり大御所の鎮守府の提督が様になっちゃったな。

それから練度が最大になってからと言う物、もっぱら私の戦場は海上から工廠へと変わった。

いろんな物を弄くれるのは楽しいけれど、提督と話す時間が前より減ってしまったのは残念だった。

最近になって提督は少し工廠に顔を出すようになったけど、なかなか前のようには話すことができず、もどかしさだけが私に募っていた。

でもさっきは少しだけ、前みたいに話せたかな...?
13 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 02:04:01.42 ID:daGeGlnD0

提督「悪い、待たせた」

提督が玄関の奥から声をかける。気づくと提督はいつの間にか普段着に着替えていた。

いつもは制服を着ているから、ちょっと新鮮かも。

提督「どうしたの夕張。あがって」

夕張「あ、はい」


ぼんやりとしたまま玄関先から上がろうとすると、引き戸の凹凸に足が引っかかってしまった。

夕張「おっとと」

提督「!」

おもわず手を前に伸ばすと提督が握り返してくれる。自然とそのまま、私は提督の胸の中へもたれかかる形になった。

少しの間、静寂が私と提督に生まれる。握り締められた両手を解くのがこんなに難しく感じるなんて。
14 : ◆6x79oqdrbDOF [saga]:2018/06/22(金) 02:04:34.94 ID:daGeGlnD0

夕張「...ごめんなさい」

提督「?」

夕張「私、さっきまで偽装を弄くってたので...。提督の手、汚しちゃったかも。それにまだ汗もあんまり引いてないし」

提督の顔に視線を向けると、口を半開きにしながら固まっていた。

やっぱり嫌だったのかな。

思わず顔を背けたくなる。

目の奥からこみ上げるものを我慢しようとすると、急に体が宙に浮いた。
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