とある魔術の聖杯戦争

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

206 : ◆qYcHZpJYdQ :2018/11/04(日) 07:21:30.32 ID:fw7VrKylO
>204
ごめんなさい。遅れちゃいましたね。
>205
そう言ってもらえると嬉しいです、完結まで頑張るのでよろしくお願いします。
207 : ◆qYcHZpJYdQ :2018/11/04(日) 07:23:45.16 ID:fw7VrKylO
>>204
遅れちゃいましたね。ごめんなさい。
>>205
そう言ってもらえると嬉しいです。完結まで頑張るのでよろしくお願いします。
208 : ◆qYcHZpJYdQ [saga]:2018/11/04(日) 07:25:42.53 ID:fw7VrKylO
ちょっと遅れましたが、よろしくお願いします。



ーーー冬木市、某所

凛「何……これ」

呆然と呟く。
そこは、深夜の冬木。彼女が生まれ育った地であり、つい先日までは普通に生活をしていた場所だ。
しかし、それを疑いかねない程にこの街の雰囲気は変化していた。

空気が、重い。
凛は電車からここに降り立ってすぐにそう感じた。確かに深夜に外出した経験などほとんどない。昼間とは少し違う街の顔に驚いているだけかと最初は思った。しかし、それだけでは説明出来ない程の「何か」を凛は感じていた。
正直、少し怖い。
冬木がこんな場所になっているとは予想外の事であった。母にこの行動がバレたら大目玉を喰らうだろう。
しかし、彼女には立ち止まれない理由がある。

凛「……コトネ」

無二の友人。
彼女を救う為に凛はこの土地へ戻って来たのだから。
209 : ◆qYcHZpJYdQ [saga]:2018/11/04(日) 07:31:07.87 ID:fw7VrKylO
凛(……急ごう)

グズグズしていられない。
こんな時間に子供である自分が一人で居たら、おそらく補導されてしまうだろう。
それでは意味がない。
ここまで来て、コトネを助けだせなかったら、きっと自分が嫌いになる。
そう考えながら、凛は手の中にある物を覗き込んだ。

魔力計。
父である時臣から預かった、魔力を感知する道具だ。
コトネを攫った相手はおそらく魔術に関係している。
なら、その痕跡を辿って居場所を突き止めようとした凛だったが、

凛「何、これ………」

手の中にある魔力計は、壊れたかのようにその針を色んな方向へと向けていた。
一瞬、故障したのだろうかと考えるが、即座にその考えを切り捨てる。
冬木に来る前にこの魔力計がちゃんと使えるかどうかの点検はしてきている。
つまり、これは魔力計の故障などではなく。



無数の魔力の痕跡が、この冬木にあるという事実を示していた。
210 : ◆qYcHZpJYdQ [saga]:2018/11/04(日) 07:42:07.91 ID:fw7VrKylO
凛(止まってても、仕方ない…!)

魔力計の反応に少し焦る凛だったが、まず足を動かし始めた。
今この一瞬にもコトネは苦しんでいるかもしれないのだ。
一見壊れたように見える魔力計もデタラメを教えている訳ではない。
魔力の反応がより強い方へと向かって歩いて行く。

凛(こっち……今度はあっちか)

少しの変化も見逃さぬよう、魔力計と睨めっこしながら進んで行く。

凛(………ッ)

魔力計から顔を上げると、思わず息を飲む。
正面からパトカーが走って来ていたのだ。
今見つかってはマズイ、そう考えて咄嗟に路地裏へと入り込む。
心臓の音が大きくなるのを感じながらパトカーをやり過ごす。
これでもう3台目にもなる。恐らく誘拐事件の騒動で警戒が大きくなっているのだろう。市民にとっては安心できる事なのかもしれないが、今の凛にとっては迷惑でしかない。

凛(周りにも注意しないと……)

パトカーと十分な距離が取れたのを確認してから再び動き出す凛。
しかし手元にある魔力計を見て、その動きは止まる。


今自分が入った路地裏。
その奥から強い魔力を感知していると、魔力計が訴えていた。
211 : ◆qYcHZpJYdQ [saga]:2018/11/04(日) 07:44:02.34 ID:fw7VrKylO
凛「…………」

無意識にゴクリ、と喉を鳴らす。
緊張が高まる。
今まで以上に慎重に、その足を動かしていく。
魔力計は、この先に強い魔力があると言っている。しかし、それはコトネがいるという事を証明する訳ではない。
だが、

凛(コトネ……!)

この先にいる、と。
彼女の勘がそう告げていた。
ならば引き返す理由などない。その為に自分はここまで来たのだから。
固まっていた足を動かす。
一歩ずつ、慎重に。

暗闇の先を見通すように目を凝らす。
何かが動いてもすぐに反応出来るように。全神経を集中させていた。

しかし、それが原因だった。
凛は魔力計が指している方向に気を取られすぎたのだ。
その結果。



「……誰か、居るのか?」



後ろから迫る影に、気づく事が出来なかった。
212 : ◆qYcHZpJYdQ [saga]:2018/11/04(日) 07:55:19.25 ID:bQP7As24O

凛「…………ッ!?」

まずい、と思うのと同時に凛は声がした後方へと振り返る。
声をかけて来た人物を認識するためだったが、それは叶わなかった。
その人物はその手に懐中電灯を持っており、それに照らされるせいで顔がよく見えなかったからだ。

「子供、か?何でこんな夜中に…?」

だが、凛はその言葉を聞いてこの人物は悪人ではない、自然とそう考えた。ましてや誘拐事件の犯人だとも思わなかった。
なら、この男は何者か。
決まっている。今の冬木市でこんな夜中に不用心に徘徊するなどまともな人間ならしない。
おそらく、さっきのパトカーに乗っていた警察官だろう。おそらく路地裏に逃げ込んだ自分が見えて、様子を見に来たに違いない、そう凛は考えた。
しかし、状況は何ら良くない。
こんな時間に一人で出歩く自分を警察官が黙って見過ごす訳がない。
恐らく母の葵に連絡がされて、連れ戻されるのだろう。

「親はどこにいるんだ?迷子なのか?」

そんな凛の考えている事など分からないであろう男はそう続ける。その様子は、本当に凛のことを心配しているように思われた。
この男に悪意は無いのだろう。
でも、今の凛にとっては余計なお世話でしかなかった。
何故なら。


この男が自分を保護するということは。
自分がこの場から離れるということは。
コトネを、見捨てるということだからだ。

凛(……嫌だ)

恐らくこの男は凛を見つけてしまった以上、放っておくことなどしないだろう。
この路地裏の先に進む事を阻んでくる事だってあり得る。

凛がこの男に何かを言った所で状況は変わらないのかもしれない。
どんなに筋の通った『理由』を述べた所で子供の戯言だと聞き流され、結果は変わらないのかもしれない。

けれど。
だからこそ。

凛「………嫌、だ」

遠坂凛は。


凛「嫌だ……っ!!!」



自分の想いを、正直にぶつけた。
213 : ◆qYcHZpJYdQ [saga]:2018/11/04(日) 08:04:03.86 ID:bQP7As24O
凛「……私の友達が、誘拐された大事な友達がこの街にいるの」

そうして凛は話し始めた。
何故、自分はこの土地に戻って来たのかを。
この男に話しても無駄かもしれないと、凛は分かっている。
それでも、凛は言葉を続けた。
続けるしか、なかった。

凛「理由は詳しくは言えないけど、普通の人じゃ絶対にコトネは見つけられないわ……!でも、私なら見つけられるかもしれない!今も苦しんでいるかもしれない友達を助けられるのは、私だけなの!」

客観的に見て、そんな言葉に説得力など微塵も無い。しかし魔術のことは一般人に話せない以上、凛にこれ以上の説明をする事など出来なかった。
この言葉を目の前の人物がどう受け取ったのかは分からない。
頭に?を浮かべて、聞き流しているだけかもしれない。
それでも、凛は言葉を紡ぐ。
自分の本音を、吐き出していく。
誰にも言えず溜め込んでいた、心の声を。


凛「だからお願い!私を家に連れて帰らないで!私にコトネを見捨てさせないで!!!こんなの子供の我儘だって思うかもしれない。でも、仕方ないじゃない!大切な人が苦しんでるかもしれないの!今にも助けを求めてるかもしれないの!!!それなのに、家でじっと過ごす事なんて出来ないのよ!!!」


普段の凛を知る者であれば、こんなに感情を表に出している姿を見て驚くかもしれない。
無理もないだろう、彼女の生まれた遠坂家には『常に余裕を持って優雅たれ』という家訓がある。そして、まだ幼い凛もそのような振る舞いを努めているのだ。

「らしくない」と。
そんな風に言う人もいるかもしれない。
なら、逆に問いたい。

この少女の「らしさ」とは。



『遠坂凛らしさ』とは、一体何なのだ?
214 : ◆qYcHZpJYdQ [saga]:2018/11/04(日) 08:10:46.46 ID:bQP7As24O
誰もが「らしい」、「らしくない」を論じて他人を規定しようとする。
みんなが無意識に行うことだ。
他人を規定して、理解の範疇に押し込めようとする。
誰だって理解出来ないものは怖いから。
だから「らしさ」という言葉で安心を得ようとする。
しかしそれは、他人から見た人物像に過ぎないのではないか?
「らしさ」とは、その人物の本質を隠してしまうモノなのではないのか?

もし、「らしさ」というものがその人物の本質を語るものではないとするのなら。
他人から押し付けられる勝手な人物像であるとするのなら。


そんなものに従う理由など、遠坂凛には何一つない。


だから凛は、今までの振る舞いをかなぐり捨ててでも『自分の心』に従った。

誰にも規定する事など出来ない、『自分』の為に。

凛「子供は大切な人の為に何かをしちゃいけないの?子供は大切な人を自分の手で守ろうとしちゃいけないの?そんな訳ない!他の誰よりも私はコトネを救いたいって思ってるのに、何で私がコトネを助ける事を諦めなくちゃいけないの!!!?」

この少女の言葉に、飾りなんて無かった。
躊躇いなんて無かった。
羞恥なんて無かった。
戸惑いなんて無かった。
迷いなんて無かった。
美しさなんて無かった。

それは、綺麗なモノなんかじゃなかったのかもしれない。
我儘で、自分勝手で、独りよがりなモノだったのかもしれない。

でも。
だからこそ。


その言葉には、何よりも彼女自身の『想い』が込められていた。

そして、少女は叫ぶ。


凛「もう、我儘でも良い。何だって良いから……っ!」

誰にも打ち解けることのなかった、


凛「コトネに、会いたいよ……!」


少女自身の、本当の願いを。

215 : ◆qYcHZpJYdQ [saga]:2018/11/04(日) 08:14:41.28 ID:bQP7As24O
そして、路地裏には静寂が戻る。

「………」

男は、凛の言葉を黙って聞いていた。
凛の言葉に困惑の表情を浮かべる事もなく、その声に耳を傾けていた。
その間、男が何を考えていたのかを知る者はいない。
そして。



「……ダメだ」



と、低い声でそう言った。
216 : ◆qYcHZpJYdQ [saga]:2018/11/04(日) 08:15:31.15 ID:bQP7As24O
凛「…………っ」

その言葉を聞いた瞬間、凛は唐突な虚脱感に襲われた。
もう、無理なのだと。
もう、コトネに会う事は叶わないのだと。
そんな考えが、自然と凛の頭をよぎる。

「友達を大切にしている気持ちは分かる」

懐中電灯を消しながらその男は凛に少しずつ近づいていく。
そして、言葉を続ける。

「でも、自分の身はどうするんだ?そんな危険な場所にいって、無事に帰ることが出来なかったら両親がどんなに悲しむか、想像出来る筈だ」

その言葉は、凛の心にチクリと刺さる。
男の言い分に矛盾など無い。
凛自身も、それはずっと考えていた事だ。
だからこそ、凛に反論する事など出来なかった。
217 : ◆qYcHZpJYdQ [saga]:2018/11/04(日) 08:22:47.00 ID:bQP7As24O
座り込んでいる凛に男は近づいていく。

「気持ちは痛いくらい分かる。でも、一人で行かせる訳にはいかない」

そう言いながら男は凛の頭を撫でる。
そして、言葉を紡いだ。

「だから」

その少女に、言い聞かせるように。
自分自身に、誓うように。




上条「ここから先は、俺がお前を守ってやる」




ハッキリと。


上条「行こうぜ。友達を助けるんだろ?」


座り込んだ少女に手を差し出しながら。
上条当麻は、そう言った。
218 : ◆qYcHZpJYdQ :2018/11/04(日) 08:29:24.73 ID:bQP7As24O
今回はここまでです。
ちょっと書き込むタイミングズレちゃいましたが、見ていただけたら幸いです。
コメントしてくれる方もありがとうございます。
すごい嬉しいです。
次回もなるべく早く書きたいと思ってるのでよろしくお願いします。
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/04(日) 09:57:42.94 ID:PO80f+V/o
おつーにゃ
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/25(日) 08:42:57.42 ID:ZnH3BJzj0
221 : ◆qYcHZpJYdQ :2018/12/05(水) 15:03:59.00 ID:CFYnJVwgO
しばらく書き込んでないですが、死んでません…
お待たせして申し訳ないです…
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/05(水) 16:51:54.18 ID:h5p6cSCuO
イッチ生存報告乙です!
いえいえ、無理せずじっくり書いてもらって大丈夫ですよ
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/25(木) 23:45:47.87 ID:1lgZtQN40
保守
158.55 KB Speed:0.1   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)