とある魔術の聖杯戦争

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22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/23(土) 22:13:41.15 ID:2tPkdhRv0
ーーー切嗣の部屋
コンコン

切嗣「…誰だ」

上条「よう」ガチャ

切嗣「…何の用だ」

アイリ「上条君、気持ちは落ち着いたかしら?どうやらイリヤと一緒に居たようだけど」

上条「ああ。イリヤのおかげで、拳を握る理由が出来た」

アイリ「…どういうこと?」

上条「つまりこういうことだ」

上条「俺も、聖杯戦争とやらに参加してやるよ」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/23(土) 22:28:48.32 ID:2tPkdhRv0
切嗣「…随分な心変わりだな。さっきのお前と同一人物とは思えない」

アイリ「上条君、急にどうしたの?聖杯にかける願いを思い出した、とか?」

上条「別に思い出した訳じゃないんだ、アイリさん。確かについさっきまで聖杯戦争に参加する気なんてなかった」

上条「正直、聖杯にかける願いなんか思いつかないし、あんたらを信用して良いのかも分からない。だからこんな戦いは辞退しようと思ってた。あんたらがどうなろうと、俺には関係ないからな」

切嗣「……」

上条「でも、今は違う」

上条「あんたらのことはまだ分からない。でも、あんたらの事を何よりも大切に思ってる奴を俺は知っちまった」

上条「あんたらが居ないと、悲しむ奴がいる。あんたらが帰らないと、泣く奴がいるってな」

上条「会って間もない奴の為に命を賭けるなんて馬鹿げたことなのかもしれない。でもな、目の前で辛さに耐えてる女の子を無視して逃げるような腰抜けになる気もねぇさ」

上条「だから、俺はそいつの為にあんたらを守る」

上条「敵の魔術師とやらを殺す気なんてないさ。けど、あんたら二人を見殺しにして、逃げるつもりもさらさらねぇ」

上条「もしかしたら裏があるんじゃないか、何か企んでるんじゃないか、って思うかもしれない。なら、聖杯をもし手に入れたとして、俺が叶える願いを教えてやるよ」



上条「『イリヤが悲しむ顔を見たくない』」




上条「そんな馬鹿が一人くらい居たっていいはずだろ?」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/23(土) 22:32:46.73 ID:2tPkdhRv0
今日はここまでにしておきます。
ストックはありますが、ペース考えないと無くなっちゃいそうなので笑。
見てくれた方ありがとうございます。
すぐに続きも出すと思うのでよろしくお願いします。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 22:38:02.61 ID:7oZkaLIfo
乙。期待
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/06/23(土) 22:56:28.82 ID:MCeHBbRS0
元が元だし、超大作に期待だぜ
今のところいい感じィ!
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:31:16.97 ID:ADERFejFO
こんにちは。再開します。



切嗣(なんだこいつは…?)

切嗣は困惑していた。
目の前の男は明らかに英霊とは違う存在であることは、一目見た時から思っていたことだ。

切嗣(しかし、こいつの行動原理はなんだ?)

切嗣(イリヤの為に戦う?会って数時間しか経っていない者の為に、命をかけるだと?)

切嗣は上条のことを道具と思っている、それは今も変わらない。令呪で無理やり戦場に連れ出そうとまで思っていたが、その必要が無くなっただけのこと。
上条がなぜ心変わりしたのか、などといった無駄な推察は普段の切嗣ならまずしない行為である。

しかし、上条の述べた『戦う理由』は切嗣が普段と違う行動を取ってしまうほどに、不可解で、意味不明で、短絡的で、馬鹿げていて。


なぜか、懐かしさを感じるものだった。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:32:31.71 ID:ADERFejFO
切嗣「……っ」

アイリ「どうしたの?切嗣?上条君と今後の方針を話すんじゃないの?」

切嗣「…あ、ああ。そうだね、アイリ」

切嗣(何を考えている、僕は。私情が頭に入るなんて、いつ以来だ)

上条「ほら、さっさと方針とやらを教えてくれよ。まぁ、俺はあんたらを信用してる訳じゃないけど、あんたらが戦うことを邪魔するつもりはねぇ。俺が勝手について行って、勝手に守るって決めただけだけどな」


切嗣「ああ、お前と僕は別行動だ。正直、お前は使えないと踏んでたからな、元々戦力にはほとんど数えていない」

上条「そうかよ」

切嗣「お前の役目は単純だ」




切嗣「アイリと共に、この戦いに参加しろ」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:34:18.10 ID:ADERFejFO
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30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:35:00.06 ID:ADERFejFO
undefined
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:35:49.57 ID:ADERFejFO
ーーー日本

上条「んで、なんで俺はこんなとこにいるんだ……?」

アイリ「ほら!上条君早く!次のお店にいきましょう!」

上条「まだいくの!?っていうかもう持てない!これ以上の紙袋は上条さんには持てませんって!!」

そう、アイリと上条はショッピングをしていた。
切嗣に「アイリと行動しろ」と言われ、切嗣とは別ルートで日本に到着した上条達だったが、日本に着いたアイリの第一声が「買い物がしてみたい」とのことだった。
上条的には一応命懸けの戦いに来ている訳だし、少し躊躇ったのだが、なんやかんやで二人でショッピングに勤しんでいた。
しかし、しばらくして上条は自分の判断を呪うことになる。

上条「ちくしょう!気づくべきだった!この人イリヤの母親だった!ロクな扱いを受けられると思ってた俺が馬鹿だったんだ????」

見ての通りの雑用っぷり。
サーヴァントの日本訳に「召使い」があるが、サーヴァントかどうか分からない曖昧な存在である上条らしからぬ「サーヴァント」もとい、「召使い」ぶりであった。
切嗣はもしやアイリさんに振り回されるの分かってて俺に押し付けたんじゃねぇだろうな…?などと上条が考えて始めた矢先。

アイリ「あー、ごめんなさい。上条君。ついはしゃいでしまったわね、少し休みましょうか」

と、アイリが上条に気を使い広場のベンチで休むことになった。中々の広さのある広場で、公園が隣接している。
二人は並んでベンチに座っていた。
傍らには先ほど買ったペットポトルがある。

上条「うぉぉおう…、あー、いいなこの感じ。足がくすぐったいというか、回復してるぞー、って感じが気持ちいい」

アイリ「ふふ、ごめんなさいね。上条君、長旅の後で疲れさせてしまって」

上条「まぁ、少し休ませてくれるなら全然付き合うけどさ」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:36:46.60 ID:ADERFejFO
そう言いながら上条は周りを見渡す。

上条(…それにしても)

上条「日本……なんだよな」

ここは日本だ。それは間違いない。
ここは冬木という土地らしいが、歩いている人々も日本人だし、文字も言葉も分かる。
しかし、上条が知っている日本と違う点が一つあった。
そう、学園都市がないのだ。
実際に足を運んだ訳じゃない、しかし、インターネットなどで調べたところ、学園都市はこの世界には存在しない、というのが結論だった。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:39:03.30 ID:ADERFejFO
上条(やっぱ、違う世界…みたいだな)

イリヤの為に二人を守る。その為にこの戦いに飛び込むことを決めた上条だが、やはり違う世界に来た、という不安はあった。
思った以上に長く滞在することになったが、帰る方法などはあるのだろうか?などと考え始めるとキリがない程に上条にとって問題は山積みなのである。

上条「まぁ、終わったら考えればいいだろ…って、ん?」
そんな上条の足元にコロコロとボールが転がって来た。

少年「すいませーん、投げて下さーい!」

どうやら、公園で野球をしていたらしい。
それに気づいて上条はボールを拾い、ひょい、と少年達に投げ返す。
少年「ありがとうございまーす!」

元気だなー、などと上条が呑気に考えていると、隣で真面目な顔をしたアイリが居た。どうやら何かを見ているらしい。
なにを見ているのかは分からない、しかし、あまりにも真剣な様子なので、もしかしたら敵のマスターが隠れているのかと思い、声を潜めながらアイリに話しかける。
上条「アイリさん、どうかしたのか?」

アイリ「いえ、なんでも……いや」

上条「なんだ?まさか、他のマスターなのか…?クソっ、まさかこんな人混みでもおかまいなしに戦おうってつもりじゃ…」

アイリ「…あれは、何をしているのかしら……?」

アイリの視線の先には、先ほどの少年たちがいた。
マスターもサーヴァントなんてものも見当たらない。
彼らは野球に勤しんでいた。
つまり、そういうことだった。

上条「………は?」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:41:29.41 ID:ADERFejFO
アイリの視線の先を見ると、先程の少年達が居た。
上条が投げたボールを使い、試合を行なっている。
上条「なにって……野球、だろ」

アイリ「…………野球…?」
首を傾げながら上条の言った単語をアイリは呟いた。

上条「えーっと、そのリアクションからすると、初めて見たのか?」

アイリ「………な、何よ。別にあんなもの知ってようがあなたには関係な」

上条「正直に言うと?」

アイリ「初めて見ました…」
そう答えるアイリに上条は驚きを隠せなかった。

上条「え…?もしかしてアイリさんって箱入り娘だったの…?確かに城に住んでる辺りセレブな感じはするけど…?」

アイリ「べ、別に良いじゃない。それに、箱入りではないわ。車だって運転出来るもの」

箱入りと言われたのが恥ずかしかったのか、そんなことを言ってアイリは上条に反論した。

上条「いや、別に馬鹿にしてるとかじゃねぇよ。城の中でしか過ごしてない割には元気だなー、って思っただけだし」

アイリ「そう、ね。でも、私は最初から感情を露わにするタイプでは無かったわ。切嗣が居てくれたから、今の私がいるのよ」
そう言ってアイリは続ける。

アイリ「実は、こんな風に外に出るのは初めてなの」

上条「え!?本当かよ?」

アイリ「ええ」
驚く上条を気にせずにアイリは話し始めた。

アイリ「だから、上条君に無理言って買い物をしたのも、こんな風に街を歩いているのも、実は私の我儘なのよ。聖杯戦争とは何の関係もないけれど、私にとって初めての街、初めての景色を自分の足と目で見てみたかった。上条君にとっては何でもないことなのかもしれないけれど、私にとっては新鮮で、体験してみたかったものなの」

そんな風に語るアイリは嬉しそうでもあり、上条にはどこか悲しそうにも見えた。

アイリ「この戦いは壮絶なものよ、上条君。自分の身がどうなるかなんて誰にも分からない。だから戦いが始まる前に、最期になるかもしれないこの風景を、目に刻んでおきたかったのよ。切嗣には怒られてしまうかもしれないけどね」

アイリ「それに私は……いえ、これは言わなくても良いわね」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:43:44.88 ID:ADERFejFO
そう言ってアイリは言葉を切った。
二人の間に少しの静寂が訪れる。
が、すぐに。

上条「ああ、くそ!ふざけんな!!」
と、上条が大きな声で言った。
そんな様子の上条を見てアイリは言う。

アイリ「ええ…ごめんなさい。こんな無関係なことに費やす時間も労力も無いってことは、私も分かってた。今日はここまで、もう帰りましょう」

そう言って立ち上がるアイリの前に上条は立ちはだかる。

上条「違う!そんな事情があるなら、先に言えって言ってんだよ!」

アイリ「え…?」

上条「ったく、行くぞ!ほら!」
そう言って上条はアイリの手を握り、歩き出した。

アイリ「ど、どうしたの上条君!?」

上条「どうしたも何もあるかよ!」
そう言いながら上条はアイリに向き直り、叫ぶ。

上条「何も恥ずかしがることなんかねぇ、何も躊躇う必要なんかねぇだろ!」

アイリ「え…」

上条「無関係なことだ?無駄な時間だ?そんな訳ねぇだろ!あんたがやりたいって思ったんだろ?あんたがずっと願ってたことなんだろ?だったら聖杯戦争なんて小せぇ事情なんか無視して一番にやるべきに決まってんだろうが!」

アイリ「いえ…でも…」

上条「でも、じゃねぇ!」

上条「確かにアイリさんはこの戦いに勝たなきゃならないのかもしれない、聖杯を手に入れて望みを叶えたいのかもしれない」

上条「でもそれはアインツベルンの魔術師としての願いだろう!?あんたは人間だ!魔術師である前に人間なんだろうが!だったら、自分がやりたいと思ったことは我慢なんかしないでやるべきなんだよ!」

アイリ「………人間、だから…」

その言葉は、アイリが初めて聞く類のものであった。
別に切嗣がいつもアイリに向かって冷たい事を言っている訳ではない。むしろ切嗣はアイリを気遣い、大切に思っていることが分かるであろう言葉を贈ってくる。
けれど、その言葉は切嗣のものとは違って、


何故か暖かく、自然と信じたくなるような強さがあるように感じた。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:46:23.55 ID:ADERFejFO
上条「ほら、行くぜ!世界は違うけど、一応俺の生まれた国だからな、案内は任せろよ!」

そう言いながらアイリの手を取る上条は、先程までとは違い、自身も楽しんでいるように見えた。

アイリ「…でも」

アイリは断ろうとした、けれど。

上条「うーん、どこにしようかな。アイリさん野球知らないんだろ?なら、バッティングセンターとかも悪くないな!あー、でもスポーツ全然知らないなら、それこそ色んなスポーツが出来るアミューズメントパークとか良いんじゃないか?あそこならゲームも出来るしな!どうだ?アイリさん?」

目の前の少年がまるで子供の様な顔で計画を練っているのを見て、そんな自分が馬鹿らしく思えてきて、

アイリ「ええ!とても楽しそう!」

そう言って二人は再び街に繰り出した。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:47:15.57 ID:ADERFejFO
それからは色んなところに行った。
野球を知らないと言ったアイリの為にバッティングセンターに行ったり、アイリが見たことのない動物が沢山いる動物園にも行った。
アイリはどこに行っても楽しそうで、一緒にいた上条も嬉しかった。
しばらくして日が暮れ、最後にアイリが行きたいと言った場所は。

海、だった。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:48:24.52 ID:ADERFejFO
ーーー海岸

上条「うお、流石にすごい景色だな」

アイリ「ええ、素敵ね」

上条「本当だな。…俺も記憶なくなってからはそこまで海に来たことないから、少し感動モンかもなー。……前来た時は『天使堕とし』やらなんやらでそれどころじゃなかったしな……」

アイリ「ん?上条君どうかした?」

上条「いやー、なんでもねーよ」

基本属性が不幸である自分が今更過去を振り返っても仕方ない、と考え直し素直に海の景色を楽しむことにした上条。
だが代わりに、数ヶ月前の切嗣との会話が蘇ってきた。

−−−
切嗣「まず、お前の宝具を教えろ」

上条「は?宝具?」
唐突な切嗣の質問に面食らう上条。だが、そんなことを気にせずに切嗣は続ける。

切嗣「ああ、宝具だ。英霊には最低一つ、自らの神話や伝承に即した武器や道具がある。聖杯戦争で召喚されるサーヴァントは皆それを持って現れるのが普通だ」

上条「って言われても、俺は英霊なんかじゃねーんだけどな…」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:49:32.13 ID:ADERFejFO
切嗣「なんだ?本当に宝具もなにも持って無いって言うのか?戦力外にも程があるぞ」

失望を隠そうともしない切嗣。そんな様子に上条は少しムッとしながら自らの右手を差し出しながら言う。

上条「まぁ、宝具なんて大層なもんはねーけど……一応、俺の右手に能力はあるぞ」

切嗣「なんだ……右手だと?」

訝しむ切嗣に上条は続ける。

上条「ああ。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』。それが俺の右手に宿ってる能力だ」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:50:43.34 ID:ADERFejFO
切嗣「幻想…殺し?随分と大層な名前だな。見掛け倒しか?ただの右手にしか見えない、何か魔力を感じるわけでもないぞ」

上条「ああ、普段はただの右手と変わんねぇよ。なんせ俺の右手は『異能の力を打ち消す』って能力を持ってるからな」

切嗣「なんだ…?異能の力を打ち消す…だと?」

上条「なんなら、試してみるか?なんでもいいぜ、魔術的な力が加わっている物品とかでも俺の右手の能力は発動するんだからな」

そう言いながら、右手を差し出す上条。

切嗣(魔術的な力が加わっていれば…か)

そうして切嗣は懐からある銃弾を取り出した。

上条「あん?なんだこれ?銃弾…か?これに魔術的な力が加わってんのか?」

切嗣「ああ、一見するとわかりにくいが、確かに魔力を通してある」

切嗣(こいつの右手とやらはどこまで信用できるか分からない。なら、僕の最大霊装で試す。奴の能力がもしこの『起源弾』を打ち消すほどならば、戦力としての見込みが生まれるかもしれない)

切嗣(数が多い弾ではないが、元々この聖杯戦争で使う機会は最後になるはず…いや、最後にするんだ。なら、弾の一つくらいは消費してもかまわない)
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:51:58.36 ID:ADERFejFO
上条「んじゃ、渡してくれ」
そう言いながら上条は起源弾を受け取る。
その瞬間、



バギン??????、と。



ガラスを思い切り割ったかのような強烈な音が部屋に響いた。

切嗣「………っ????」

思わず飛びのく切嗣。
しかし、体に害はない。
念のため五体の調子を確かめた後、上条の右手に目を向ける。
そこには。


砂のように細かい、起源弾の残骸が残っていた。
ーーー
上条(あれからろくに話もしてないけど、切嗣も日本に着いてんのかな)
上条は切嗣の行動を聞いていない。
いつでも助けに入れるように隠れているのか、そうでないのか。

上条(アイリさんには特殊な霊装があって、それがある以上危険は無いって聞いてるけど…)
正直言って気は進まない。例えそんな霊装があったとしてもアイリを危険に晒していることに変わりはないし、上条の様なイレギュラーが現に存在する以上、油断も出来ない。

上条(なんにせよ、俺のやることは変わんねぇ、か)

アイリ「上条君?どうしたの?随分真剣な顔ね」

上条がしばらく黙っていたせいか、アイリが顔を覗き込みながら声をかけてきた。

上条「いや、ちょっと考え事してただけだ」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 15:58:26.41 ID:ADERFejFO
なんか、!が?に変換されてるところありますね、すいません。
一旦切りますね、あとは夜に投稿したいと思います。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/24(日) 16:19:41.08 ID:CqDnMbxTo

初ssで長編は大変だと思うがとにかく完結目指して頑張ってほしい
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/06/24(日) 21:01:48.54 ID:/UWH9+Ez0
なんかバグ多くないか?環境大丈夫?
地の文にもスペースいれたらどうや
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 21:23:25.72 ID:lbsYZqdn0
>>43 ありがとうございます。自分のペースで頑張ってみます。
>>44 どうやら行数が多すぎると出るバグみたいです。原因分かったので調整していきたいと思います。


再開します。
読んでくれてる人ありがとうございます。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 21:24:39.58 ID:lbsYZqdn0
そう言いながら携帯を開くと海に来てからかなり時間が経っていた。

上条「うお、もうこんな時間か。そろそろ帰るか、アイリさん。アイリさんも疲れただろ。うおー、なんていうか、濃い一日だったなぁ」
軽く伸びをしながら歩き始める上条。しかし、しばらくしてもアイリの足音が聞こえないので、上条は後ろに振り返った。

上条「どうした、アイリさん。帰らないのか?」

上条がそう声かけると、アイリは頷きながら、

アイリ「上条君、今日は本当にありがとう」

笑顔でそんなことを言った。

上条「何言ってんだ。今日はとことん付き合うって最初に言っただろ?別に気にすることなんかないって。俺も楽しかったしな」

アイリ「いえ、そういうことじゃないのよ」

アイリはそう言うと、笑顔のまま続ける。
とても、嬉しそうに。

アイリ「上条君には言ってないけれど、実は私…」

アイリ「ホムンクルスなの」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 21:27:26.87 ID:lbsYZqdn0
あと、!が?に変わるバグは、携帯からやってるんで、その辺の変換齟齬みたいです。
本編の方は、見てくれてる人が多そうだったら結構話進めるつもりです。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 21:28:54.31 ID:lbsYZqdn0
色々とごめんなさい、続きです。


上条「ホムン…クルス…?」

アイリ「ええ、私は真っ当な人間ではない、アインツベルンによって作られた存在なの」

驚く上条をよそにアイリは続ける。

上条「なんで…そんなこと初めて聞いたぞ!?」

アイリ「ずっと黙っていてごめんなさい。今言った通り、私はアインツベルが作り上げた、とある目的を遂行するための存在なの」

言いながらアイリは強く上条を見据える。その目に宿る意志の強さは、昼間とは別人のようだった。

上条「目的…?なんの目的だよ?」

上条は思わずそんなことを聞いていた。
どうやって作られたのか、切嗣はそのことを知っているのか、数多くの疑問を差し置いてそれが出た。
何故最初にそのような質問をしたのかは上条自身にも分からない。
だが、頭の中でそれを聞き逃してはいけない、そんな風に警鐘が鳴っているような気がした。
何故だろうか。

訳もなく一瞬、『妹達(シスターズ)』と呼ばれる少女達の顔が頭に浮かんだ。
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 21:31:42.25 ID:lbsYZqdn0
アイリ「ごめんなさい。そこまでは話せないの」

そう言った後、アイリは黙って俯いた。
その顔は厳しく、上条にはそれ以上追求できなかった。
そしてしばらくの静寂が流れる。上条は何と声を掛けていいか分からず黙っていた。
しばらくそうしていると、意を決して上条は一番最初に湧き上がってきた疑問を口に出した。

上条「そんな中途半端に言われたって俺にはなんも分かんねぇよ。……でも、なんで急にそんなことを俺に言おうと思ったんだ?アイリさん」
その言葉を聞いて、ようやくアイリは顔を上げる。

その顔には、笑顔が浮かんでいた。

アイリ「嬉しかったから」

上条「………え」
予想外の答えに上条は何も言えない。
しかし、アイリは笑顔のまま続けた。

アイリ「今言った通り、私は真っ当な存在ではないの。でも」

アイリ「あなたはこんな私を『人間』だと言ってくれた。好きなことを好きなだけやっていい、って言ってくれたから」
アイリはやさしい瞳で上条を見据えていた。その瞳は、アインツベルンの目的など忘れているようだった。

アイリ「嬉しかったの、とても。そんな風に私と接してくれる人なんて、切嗣とイリヤの他にはいない、そう考えていたから」

だから、とアイリは続ける。

アイリ「本当にありがとう。上条君。今日のことは忘れないわ。この戦いが終わった後も……きっと忘れない」

アイリは、笑顔でそう告げた。
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 21:37:38.48 ID:lbsYZqdn0
少しばかりの沈黙、それを破ったのは上条だった。

上条「……別に特別なことなんかじゃないだろ」

アイリ「え?」

目を丸くするアイリに、上条は淀むことなく言葉を続けた。

上条「戦いが終わったら、またみんなで日本に来ればいいじゃないか。今度は俺達だけじゃない、イリヤと切嗣も一緒にまた遊びに来よう。アイリさんは今日のことを特別だって思ってるのかもしれないけど、そんなことないんだ。家族で遊んで、笑って。それが当たり前のことなんだ…だから、特別なことなんかじゃないさ」

上条「また俺が案内してやるよ。どこまでも付き合ってやる。だから、アイリさん。これで最後みたいに言わないでくれよ」
そう言って上条は、手を差し出す。
正確には、その小指を。

上条「ほら、指切りだ。今は信じられないかも知んないけど、絶対、今度はみんなで日本に来て、今日のことなんか些細に思えるくらいの思い出作りを手伝うからよ」

そして上条はアイリと指切りをした。
小さいけれど大切な、約束の証として。

アイリは自分の役目を自覚している。
その役目を終えた後に、自分がどうなるかも。
この約束が実現するのは、限りなく可能性の低いものだということも。
けれど。

それでも、アイリは。

アイリ「うん……約束ね」

この少年を、信じてみることにした。
『人間なら、やりたい事をやれば良い』。
そんな風に、彼女は教わったから。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 21:47:26.77 ID:lbsYZqdn0
アイリ「じゃあ、そろそろ城に行きましょう。大分時間を使ってしまったから」

そう言ってアイリと上条は海岸を離れることにした。
車を用意してあるとのことで、海岸に来た時とは違う道のりを進んでいる。
船の積荷を集めている場所なのだろうか、そこには多くのコンテナが存在していた。
だがコンテナ同士の間隔がかなり広いので、狭いという感覚はない。
しかし夜の暗さと相まって、コンテナの影などが少し不気味な雰囲気を醸し出していた。

上条「何つーか…何か出そうなとこだな」
思わず呟く上条。
しかし、アイリには意味が伝わらなかったらしく、

アイリ「何か?何かってなにかしら?」
と、呑気なことを聞き返してくる。
自分だけが怖がっているようで気恥ずかしくなった上条は、

上条「な、なんか良くないものってこだよ!いいから早く抜けちまおうぜ」
と、アイリに言いながら足を速める。
その瞬間、



?「なるほど、良くないものとは言ってくれる」



そんな声が、正面から響いた。
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 22:09:53.28 ID:lbsYZqdn0
もういいや、話結構進めちゃいます!笑



その声と共に、空気が変わる。

上条(な、んだ…いつの、間に…)

警鐘が鳴る。
肌にピリピリと何かが伝わる。
呼吸が乱れる。
迂闊に身じろぎさえ出来ない。
それすらも隙になると、身体が訴えてくる。
眼球をゆっくりと動かし、ようやく前を見据える。
もはや何者か、と聞くまでもない。
そこに居たのは、

上条「サーヴァント…か?」

?「ご名答」

暗がりから月明かりの下へと、現れたのは一人の男だった。
長身に黒髪と、外見に異様な点は見当たらず、特に一般人と大きく異なるようには見えない。
しかし、二つ。
その男を異様たらしめるものがあった。

一つは、その存在感。
サーヴァントと直に会ったことがない上条さえ、相対しただけでそれを認識する程の圧がある。
もし街中でこの男が歩けば、無意識にでも多くの人間がその背中を振り返っていたのかもしれない。

そしてもう一つ。
それは、その男の両手にある、

上条「槍……か?」

ランサー「その通り、双槍使いは珍しいか?この程度なら真名が割れる心配もないだろう。俺はクラスまでもコソコソと隠す気はないのでな」

アイリ「ランサーのサーヴァント…!」
アイリの口調と雰囲気が厳しいものへと変わる。
それは先程までのアイリとは違う、アインツベルンの魔術師が発しているものだった。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 22:13:17.96 ID:lbsYZqdn0
上条(これが…サーヴァント…)
切嗣やアイリから話は聞いていた。
自分が何らかの間違いで召喚され、真っ当なサーヴァントではないことを上条は重々承知している。
しかし、ここまで違うものか。

上条(明らかに普通の人間じゃねぇ。下手したら聖人クラスに太刀打ち出来るんじゃねぇか…?)

甘く見ていた訳ではない。
しかし、動揺は隠せない。
武器を持った相手とまともに戦えるのか。
そもそもこの右手が役に立つのかどうか。
多くの疑問が湧き上がる。
しかし。

上条(最悪でもアイリさんだけでも逃さなきゃならねぇ)

この男相手に逃げる隙を作れるかどうかは分からない。
上手く逃げても、再戦の可能性すらある。
いつかは戦う相手。
つまり、一つしか道はないのだ。

上条(やるしかねぇ…っ!)
そう考え、硬く拳を握り直す上条。
その直後。



屈め、と。



上条に向かって、全身が吠えた。

上条「………ッッッ!!?」
どこからか鳴る警鐘に、上条は抗わなかった。
頭が何かを考えるよりも速く、とっさに本能で身体を屈める。
そこを。

轟!!!、と。

上条の頭上を神速の槍が突き抜ける。
数瞬前に上条の頭があった位置を、だ。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 22:16:18.48 ID:lbsYZqdn0
上条「う、おおおおおおおッッッ!?」

無意識のうちに吠え、咄嗟に横へと転がる。
そうやって少しでも間合いを取る上条。
息を乱しながら、目の前の男を見据える。
上条と目が合うと、ランサーと呼ばれたサーヴァントは話し始める。

ランサー「ほう、今のを避けるとはな。意識の隙を突いた、半ば不意打ちのような一撃だったのだが」

冷や汗を流す上条とは対照的に、微笑さえ浮かべながらランサーは続ける。

ランサー「武器は持たず、構えは素人。こんなものがサーヴァントかと疑ったが、いやはや良い勘だ。どうやら甘く見ていたらしい」

その言葉に緊迫感というものは感じられない。
純粋に戦いを楽しんでいる、そんな風に上条は感じた。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 22:23:01.94 ID:lbsYZqdn0
ランサーが話している間、上条はジリジリとアイリの方へとにじり寄っていた。

上条(不意打ち紛いの攻撃してきた野郎だ…いきなりアイリさんが狙われてもおかしくねぇ)

そんなことを考えながら足を少しずつ動かす上条。
その様子を見てランサーは、

ランサー「心配するな、お前のマスターをいきなり襲ったりなどはしない」

と告げた。
その言葉に上条の心臓が跳ねる。
どうやら、こちらの思惑は見透かされているようだ。

上条「心配するなだと?あんな攻撃仕掛けておいて、よく言えるな」

軽口を叩きながらも上条は足を動かす。

ランサー「そう言うな。さっきのはお前の実力を計りたかっただけだ」

手の中の槍を弄びながらランサーは続ける。

ランサー「俺の一撃を躱したんだ、お前はそれほどの実力者だということ。そしてこれは一対一の決闘だ。マスターを狙うなどと無粋なことはしない」

ランサーが嘘を言っているようには見えない。
だが、信用する理由もない。

上条「うるせぇよ。なんでこっちがあんたの戦い方に合わせなきゃならねぇんだ。何ならこっちが先にあんたのマスターを捕まえたっていいんだぞ」

そう言いながら辺りを見回す上条。
そして周りにランサーのマスターらしき人物がいないことに気づく。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 22:28:57.49 ID:lbsYZqdn0
ランサー「ああ、悪いな。我がマスターはこの近くにはいない。故にお前は俺のマスターを狙うことなどできない。むしろ合わせているのはこちらの方かもしれないな」

言い終えて、ランサーは槍を構える。

ランサー「なに、俺も召喚されてから会うサーヴァントはお前が初めてでな。少し昂ぶっている」

雰囲気がガラリと変わる。
その男の目には眼前の敵しか見えていないようだった。

そんなランサーの様子を見て、上条もまた意識を研ぎ澄ます。
この男が戦う理由は知らない。
勝ち目があるかどうかも分からない。
自分の居たのとは違う世界で、見たこともない存在と戦おうとしている。
しかし。

戦わなければ、何も守れず。
自分の背には守らなければならない人がいる。
それだけは、いつもと変わらない。
だから。

上条は、その右手を握りしめた。
そして。

ランサー「……行くぞ」

短い言葉と共に、両者は激突した。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 22:32:31.83 ID:lbsYZqdn0
ランサー「……ッ!」

短い気迫と共に横薙ぎに繰り出される槍撃。
その直前、上条のこめかみに電流のようなものが走る。

上条「うぉっ…!」

思わず首をすくめ、上手く槍を躱す。
槍の下にへと入り込み、そのまま前へと進む。
そして、次の槍が来ない間に懐へと潜り込む上条。

上条(この位置なら、俺の方が速い!)

そう考え、全力で拳を突き出す。
しかし、

ゴッ!!、という音と共に上条の身体に衝撃が走った。

上条「がっ……!?」

ランサーによって蹴り飛ばされたのだ、そう気づく前にその衝撃で上条は転がりながら吹き飛ぶ。
全身を打ちつけながらも、ようやく身体が止まったところで立ち上がる。

上条「くっ…そ!」

敵を見据える。
そこには、片足を上げたままの姿勢でいるランサーがいた。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/24(日) 22:33:43.80 ID:bpallxLa0
アニメの幻想殺しの異能打ち消し音は打ち消しをわかりやすくするためのものであって本当は音なんてしないよ
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 22:36:38.01 ID:lbsYZqdn0
ランサー「どうした?俺の武器は槍だけではないぞ」

言い終えて、ランサーは間合いを詰めてくる。
ランサーは槍だけで攻撃してくるのでは無い。
しかし上条は素手だ、どうしても武器に過敏に反応してしまう。

上条(槍だけでも手一杯だってのに…!)
繰り出される槍撃を躱す上条。
しかし、攻撃の合間を縫って繰り出される打撃がダメージを少しずつ蓄積していく。

上条(クソ、避けきれねぇ…っ!)
再び衝撃。
迫り来る攻撃を躱しきれない。
「幻想殺し」など関係なく、相手に触れることが出来ない。

上条(このままじゃジリ貧だ…!)

状況を打開するため、
ダン!!、と地面を蹴り攻撃に転じる上条。
しかし。

ゴッ!!、と上条の顔面に蹴りが突き刺さる。
単調な動きでは近づく事さえ出来ない。

上条(ち、くしょう…ッ!!!)

後ろに飛ばされながら夢中になって悪あがきのように腕を振り、ランサーの足に右手で触れた。
その瞬間。




ぐらり、と。




ランサーの視界が「歪んだ」。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 22:47:03.36 ID:lbsYZqdn0
>>58 あ、原作では確かに音は鳴りませんよね。なにぶん素人なので、上条の幻想殺しが上手く表現できるものなのか?と、不安になったのでアニメのように効果音が付いているということで書かせて頂きました。表現力が無いものですから、この後もなるべくこんな感じでいこうと思っています。ご指摘ありがとうございます。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 22:48:57.52 ID:lbsYZqdn0
ランサー「………ッ!?」
思わず飛び退くランサー。
いきなりの事に困惑するが、視界の異常はもう無い。
だが、言い表せない奇妙な感覚を感じていた。

ランサー(なんだ…今のは。現界してから一度も感じなかった感覚だぞ…?)
つまり今のを引き起こしたのは。
眼前にいる、サーヴァント。

ランサー(一体何が…?)

ケイネス『おい、ランサー。何を手こずっている』
困惑するランサーに声がかかる。
ランサーはそれに素早く答えた。

ランサー「主よ、敵のサーヴァントは一筋縄でいく相手ではないようです。油断はできません」

声の主は呆れたように続ける。

ケイネス「はぁ…私の引いたサーヴァントはどうやらこんな簡単なことにも気づかないらしい」

ケイネス「マスターを狙え。マスターを。マスターが死ねば、魔力供給は止まりやがてサーヴァントは消滅する。ならば貧弱なマスターを先に始末する方が効率が良いのは明白だろう?」
当然のようにケイネスは告げた。
しかし、ランサーはその提案を受けたりはしない。
攻撃を受けながらもなお立ち上がろうとする上条を横目に、

ランサー「なりません。これは俺とあのサーヴァントとの決闘なのです。誰にも邪魔することはできません」
と答えた。

ケイネス「………」
わずかに沈黙が流れる。
声の主に宿るのは怒りか、落胆か。
直接相対していない以上は分からない。
だが、主が激怒しようともこの決闘を汚すことはできない、そうランサーは考えていた。

ケイネス「そうか、なるほどな」
しかし、予想に反してその声は平静なものであった。
訝しむランサーを無視して声は続く。

ケイネス「なるほど、お前はそういう男だったなランサー。確かにその信念は中々だが…この戦いにおいては不要なものでしか無い。それが分からない、と言うのであれば仕方ない。主として、お前に教え込むほかないな」
その言葉が含む何かを感じ、ランサーは思わず身構える。
そして、ケイネスはこう告げた。

ケイネス「令呪をもって命ずる」

ランサー「……ッ!?」




ケイネス「アインツベルンのマスターを、殺害しろ」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 22:51:30.62 ID:lbsYZqdn0
〜〜〜

上条「…くっそ、ボコスカ蹴りやがって…」

悪態をつきながら立ち上がる上条。
そして再びランサーに目を向ける。
そこには、変わらぬ様子で佇むランサーが居た。
しかし何故か。

上条(なんだ…?)

嫌な予感を、感じていた。



その時、ランサーはちょうど槍を振り上げている途中だった。
槍を投げるつもりか、と上条の警戒心が跳ね上がる。
ランサーと目が合った。
その目は、今までとは違う感情を宿しているようだった。
そしてランサーの視線は外れ、他のものへと移っていく。
何を見ているのか、一瞬では上条には判断出来なかった。
ランサーの手から槍が放たれる。
ヒュッ、という軽い音が夜空に響く。
そして。
そして。





一本の槍が、アイリスフィールの胸の中心へと突き刺さった。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 22:54:39.00 ID:lbsYZqdn0
上条「………あ?」

思考が停止した。
状況が飲み込めなかった。
何が起きているのか分からなかった。

いつの間にかアイリの傍にランサーが立っており、アイリに向かって手を伸ばす。
ランサーはアイリの胸にある槍を引き抜き、アイリから離れていった。
直後にドサリ、という音と共にアイリが崩れ落ちた。

上条「あ、あああああああああ!?」

絶叫し、走った。
ランサーから受けた攻撃の痛みなどもはや感じなかった。
ただ、早く駆けつけなければならないと本能が訴えていた。
アイリに手を伸ばし、その上体を起こす。

上条「おい!アイリさん!大丈夫か!?返事してくれ!!」

必死になって叫ぶ。
しかし、返答は無く。

アイリの口からは、微かな呼吸音が漏れ出しているだけだった。

アイリの傷口から流れる鮮血が、アイリの白い服を赤く染め上げていく。
それを見てようやく、上条は何が起きたのか気づいた。
アイリが、攻撃されたという事実に。

何故いきなりランサーはアイリを攻撃したのか。
何かアイリを助ける手はないのか。
切嗣が言っていた礼装の効果はなぜ発揮されないのか。

数々の疑問が浮かぶ。
しかし、それら全てを置いて上条は。



上条「この、クソ野朗がぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」



ただ、真っ直ぐに。
己の敵へと、向かっていった。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 22:58:36.64 ID:lbsYZqdn0
ランサーは己に向かってくる少年を真っ直ぐに見つめていた。

ランサー(私のした事は、騎士として許されることではない)

自ら持ちかけた決闘、それを自ら汚してしまったのだ。
マスターの介入があれど、その事実は変わる事はない。

ランサー(マスターは脱落した。お前の魔力も尽き、やがて消滅するだろう)

ランサーは槍を構える。

ランサー(ならば最後にその拳と我が槍、どちらが上回るか決着をつけよう!)

そして槍を突き出す。
それに向かうように上条も拳を突き出す。
ランサーはそれを躱しはしない。
正面からその拳に挑んでいく。
槍と拳の距離が徐々に縮まる。
やがてその距離はゼロとなり、両者の一撃が正面から激突する。
そして。
そして。




バキィィィィィィィン!!!、という音と共に、





その幻想(ほうぐ)は、根本から砕け散った。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 23:03:09.96 ID:lbsYZqdn0
ランサー「な、に……ッ!?」

槍兵から、初めて困惑の声が上がる。
無理もない。
生前を含め、自らの槍がこんな姿になったのを見たのは初めてなのだから。

ランサー(拳で、俺の槍を……!?)

しかしランサーの思考はここで中断される。
なぜなら、槍を砕いた上条の拳が眼前まで迫っていたからだ。
普段の彼ならこの攻撃を躱すことなど簡単なことであっただろう。
しかし、自らの宝具を破壊された直後となれば話は別。

ランサー(しま……っ!)

動揺した今のランサーには、その拳を受ける他に道は無かった。

上条「う、おおおおおおおおおおおおおおおおォォォォォッッッ!!!」

ドゴォン!!、と。

咆哮と共に、渾身の一撃がランサーに撃ち込まれる。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 23:04:30.91 ID:lbsYZqdn0
ランサー「が……ッ!」

耐えきれず、たたらを踏むランサー。
だが、所詮素手での一撃。
それだけであればランサーは瞬時に距離を取り、再び攻撃を仕掛けることも出来ただろう。
しかし。

先程と同じ「異変」が、ランサーを襲う。

ランサー「な、んだ……!?」

その正体は「揺らぎ」だった。
視界が、平衡感覚が、存在が揺らいでいくような感覚。
それらが一斉にランサーに襲いかかり、意識を逸らす。
同時にそれは攻撃に転じようとするランサーの動きを妨害する。
その隙を、上条は見逃さなかった。


ゴッ!!!、と。
ランサーの顔面を上条の拳が捉える。


ランサー「ぐ……ッ!」
そして訪れる「揺らぎ」。
それは再びランサーの動きを妨げる。

ランサー(何だ一体…!?奴の拳を受けるたびに……ッ!?)


ドッ!!!、と。
今度は腹部へと拳がめり込んでいく。



ランサー(くそッ……!またか!?)
「揺らぎ」は収まらない。
それどころか、さらに激しくなっている気さえする。

ランサー(このままでは……!)

攻撃を喰らい続けるハメになる、そうランサーは考えた。
ランサーの視線の先には再び拳を振り上げる上条がいる。
攻撃を喰らい続ける限り「揺らぎ」は収まらない、ランサーは直感でそう感じ取っていた。
だから。


ランサー「ぐ、おおおおおおおッッッ!!」


「揺らぎ」に体を傾かせながら。
最大限の力で、残った片方の槍をコンクリートに叩きつけた。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 23:07:26.14 ID:lbsYZqdn0
ランサーの叩きつけた槍はコンクリートを捲り、破片を飛び散らせる。
それは眼前に迫っていた上条へと、容赦なく降り注いだ。

上条「ぐぁ………っ!?」

咄嗟に腕を交差させて顔を守る。
しかし全ての破片は防げず、腹、足といった箇所に破片がめり込む。
ようやく出来た隙に、ランサーは距離を取ることに成功する。
だが、安堵などは出来なかった。
混乱は、まだ解けた訳ではない。
ランサーはもう何も持っていない片方の手を見つめる。

ランサー(霊体に変えられた訳じゃない。本当に、俺の槍が『消えた』………だと!?)
問題はそれだけではない。

ランサー(あの男の攻撃。いや、あの『右手』か?あれは只の攻撃などではない)

先程とは違い、少しずつ冷静になった頭ならある程度予測が出来る。

ランサー(あの体が『揺らぐ』ような感覚。あれは身体が揺らいでいるのではない)
そして結論を導き出す。

ランサー(間違いない。あの右手は、俺の『霊核』に干渉している……!!)
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 23:10:36.19 ID:lbsYZqdn0
信じ難いが、そう考える他ない。
あの右手は、触れるだけで相手の霊核を不安定な状態にしている。冗談のようだ、そんなもの聞いたことがない。
しかし宝具を消し飛ばされている以上、何が起きてもおかしくない状況なのだとランサーは考え直す。

ランサー(…待てよ、まさか)

自分の体、正確には顔のあたりに意識を向ける。するとランサーの呪いである、その泣き黒子。
それが、解呪されていることに気づいた。

ランサー(忌々しい、俺の黒子の呪いまで、打ち消している……だと!?)

ランサー(何て奴だ……!)

どうやら敵は、魔力が関係しているものに干渉できるらしい。
迂闊に槍での攻撃はもう出来ない。
腕力で槍が破壊されたのならばまだ理解できる。それならば力を受け流し、槍への負担を減らすことで対処も出来ただろう。
しかし、そうではなかった。
槍は拳と接触した『瞬間』に破壊されたのだ。
もし次にあの右手に触れられたら最後、ランサーの武装は無くなる。
そう考えると、ランサーに残った槍を無闇に使うことなど出来なかった。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 23:13:15.33 ID:lbsYZqdn0
上条(……いける)

動揺を隠せないランサーとは違い、上条は手応えを感じていた。

上条(あの槍、妙にリアルだから魔術もなんも関係ねぇ武器かと思って避けてたけど、俺の右手で打ち消せた。ってことは、あれが切嗣から聞いた『宝具』ってやつだったのか)

そして、拳を握り直す。

上条(なら、槍を気にする必要はねぇ!!もう一つの槍も壊せれば、形勢は変わるはずだ!!)

そしてランサーへと歩を進めようとした、その時。





アイリ「上、条……君…」


そんな声が、後ろから聞こえてきた。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 23:24:45.76 ID:lbsYZqdn0
はい、今日はここまでにします。
大分ストック使っちゃいましたね笑
色々とツッコミたい部分があるかもしれませんが、最後までお付き合いしてくれたらな、と思います。
個人的にはバトルシーンまでようやく漕ぎ着けたので、ちょっとした満足感あります笑
見てくれた方ありがとうございました。

ストックを貯めたいので、一週間くらい空くかもしれませんが、よければまた見に来てください笑
ありがとうございました、おやすみなさい。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/25(月) 00:42:54.85 ID:OJUjJ8Mdo
おつかーレ
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/06/26(火) 00:21:13.33 ID:Ex42D7yv0
ええぞええぞ
両作品の長所を生かしてる
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/06/29(金) 16:50:15.66 ID:/aTm9KfK0
こぉい
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/29(金) 23:23:27.83 ID:h8IBJi+Q0
再開しますね、よろしくお願いします。



上条「え………」

驚きながら振り向く上条。
そこには、

上体を起こしながらこちらを見ているアイリが居た。

ランサー「な、んだと?」

驚いたのは何も上条だけではない。アイリを攻撃したランサー自身も驚愕していた。
そんなランサーを気にも留めず、上条はアイリの元へと駆け寄る。

上条「アイリさん!?どうして……傷は!?大丈夫なのか!?」

先程槍が刺さってた箇所に目を向ける。その周囲の服は赤く染まっていたが、しかし、

上条「傷が……なくなってる……?」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/29(金) 23:25:28.70 ID:h8IBJi+Q0
アイリ「ええ、どうやら予め持っていた礼装がようやく効果を発揮したみたいなの」

上条「マジかよ……どんだけ凄い礼装なんだそれ…ってか何で発動が遅れたんだ?」

上条は知る由もないが、アイリの持つ「全て遠き理想郷(アヴァロン)」は確かに強力な礼装である。しかし、その効力はとある宝具によって阻害されていたのだ。


その名は「必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)」。
英雄ディルムッドが持つ、武具の一つである。
曰くその槍がつけた傷は、槍が破壊されるか、持ち主が死ぬまで生涯残り続けるという。
その呪いが、アイリを蝕んでいたのだ。
もし、呪いが解除されていなかったら、アイリはそのまま死亡していただろう。
しかし幸か不幸か、上条の幻想殺しがその槍を破壊した。
そのため呪いは解け、今になって「全て遠き理想郷」の効果が発揮されたのだ。
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/29(金) 23:28:37.95 ID:h8IBJi+Q0
元々アーサー王召喚の触媒であったこの鞘だが、上条の出現と同時に何故かそれは魔力を宿していた。その為切嗣はアイリの自衛のために、と鞘を渡したのである。

上条「なんにせよ良かった。とにかく下がっててくれ、アイリさん。また怪我されたら洒落にならねぇ、それに」

そう言って上条はランサーに向き直る。

上条「まだ、終わってねぇ」

そんな風に言う上条に、ランサーは正面から答える。

ランサー「その通りだ」

そして、ランサーは続ける。

ランサー「弁明の余地は無いが、お前のマスターを攻撃したことを詫びたい。俺の意思ではないとはいえ、許されない事をした」

上条「……令呪ってやつか」

ランサー「…ああ」

小さく答えるランサーに上条は言葉を続けた。

上条「退く気は、ねぇんだろ?」

ランサー「……ああ」

その言葉を合図に、再び激突が起ころうとしていた。
幻想殺しがある限り、ランサーは迂闊に槍を使えない。しかし、それはランサーが退く理由にはならない。
両者の緊張が高まり、弾けようとした、しかしそれは。



?「ふははははははは!!!良い!実に良いぞ!!心踊るわ!!!!」


ある男の言葉によって、中断することとなる。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/29(金) 23:30:13.69 ID:h8IBJi+Q0
それは、雷だった。
比喩ではない。
急に現れたソレは、その名の通り「雷」と共に上条たちの前に現れた。

ランサー「な……!」

上条「……んだ!?」

両者ともに驚愕の声が上がる。
そして。

?「ふははは!!我が誰と申すか?よろしい!これほどの決闘を見せた勇者に隠す理由などありはせん!!!」

声の主は、男。
二頭の牛に引かせた戦車に乗っている。
圧倒的な巨躯、それはその自尊心を体現しているかのようだった。
そして呆然とする二人をよそに、その男は高らかに告げる。

ライダー「我が名は征服王、イスカンダル!!!此度の聖杯戦争においてライダーのクラスにおいて顕現した!!!さて要は相談だ、お主達」

巨躯に似合わなぬ朗らかな笑顔で、二人の男に声をかけるライダー。
発せられた言葉は、どちらにとっても予想外のものだった。

ライダー「我が軍門に降り、我が軍勢として余に聖杯を譲る気はないか!!!?」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/29(金) 23:33:52.51 ID:h8IBJi+Q0
上条「……………は?」

純粋な第一声である。
聖杯戦争は何が起こるか分からない、と聞かされてはいたがこんなことまで起こるとは流石に予想外だ。

上条「あんた…何言ってんだ?」

ライダーならばこの男は、上条と戦う相手の一人ということになる。
正直、他のサーヴァント達は問答無用で切り掛かって来るような相手ばかりだと考えていた。
しかしこんな男もいるのか、と上条は考え直す。

ライダー「言葉通りの意味だが?それより小僧、先ほどの戦い中々に見事だったぞ。ランサー相手に素手で挑み、一矢報いるとはな。マスターへの忠義も深いように見える、中々に面白い奴よ。その心意気、主を変えて発揮しようとは思わんか?」

そうライダーが言った直後。

ウェイバー「おい!ライダー!!お前って奴は、一体何してくれやがってるんですかぁ!!?」

ライダーの傍から声が聞こえて来た。
姿を現したその男は小柄な男だった。傍に居るライダーの巨躯と相まって、さらに小さく見えるようだった。
ライダーに声を荒げているあたり、ライダーのマスターなのだろうかと上条は考える。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/29(金) 23:35:30.17 ID:h8IBJi+Q0
ウェイバー「ギャッ…!!!」

バチン!!という音ともにウェイバーが変な声を出した。
どうやらライダーが額にデコピンをして黙らせたらしい。

ライダー「さて、話の続きだ。返答はどうかな?勇者達よ!!?」

ランサー「断る」

即答するランサー。

ランサー「此度の聖杯戦争において俺の主は、ただ一人。そしてその方に聖杯を捧げることが我が使命だ。故にあの方以外の者に忠義を捧げることなど無い!」

ライダー「あー、それは残念だ………お主はどうだ?名は何という?」

分かりやすく落ち込むライダー。
しかし、タダでは転ばぬつもりらしい。
ライダーの目が上条に向けられた。

上条「お、俺は上条当麻だ。あと、やっぱりあんたの言ってる事は良く分からねぇ。軍門に降れ、ってめちゃくちゃなこと言ってんぞ」

でも、と上条は続ける。

上条「正直、俺は聖杯なんかに興味はない。アイリさん……俺のマスターを守る為にここに来たんだ。だから、戦いたくて戦ってるって訳でもねぇ」

上条「あんたは、悪い奴じゃない……気がする。だから、あんたとは戦いたくないって意味じゃあんたと同意見かもしれないけど」

そう、上条は付け足した。

ライダー「なるほど。上条といったか、正直、聞いたことのない名だが…。お前の方はまだ脈ありといった所だな。よしよし!余はいつでも歓迎するぞ!!!」

あれ?俺の言った事ちゃんと通じてんのか?、と心配になる上条を無視してライダーは、



ライダー「さて、そろそろ覗き見して居る連中にも出て来てもらおうか」



そんなことを、言い出した。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/29(金) 23:36:24.63 ID:h8IBJi+Q0
上条「覗き見…?」

ライダー「おうとも」

そう言ってライダーは辺りを見回す。

ライダー「あれほどの戦いを演じていた勇者に釣られて出てきた者が、まさか余だけとはあり得まい」

そこまで言うと、ライダーは顔を天に向け高らかに叫ぶ。

ライダー「さぁ!お主らも英霊と言うのならば、この場に馳せ参じるが良い!!!もしこの誘いを断ると言うならば、この征服王の侮蔑を受けると知れぃ!!!」


一瞬の静寂。
正直、覗き見しているような奴がこんな挑発に乗るのか?と上条は思っていた。
しかし。

コツン、という軽い音と共に。

1人の英霊が、現れる。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/29(金) 23:37:59.72 ID:h8IBJi+Q0
音の発信源は上条の後方から。
どこからか現れた1人の男が電灯に乗る足音であった。
思わず振り返る上条。
そこには。


ギルガメッシュ「まさか我以外に王を名乗る不敬者が現れるとはな。全くもって度し難い」


黄金に輝く鎧を纏う英霊が、こちらを見下ろしていた。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/29(金) 23:41:06.99 ID:h8IBJi+Q0
上条「なんだ…あいつ……?」

上条は思わずそう漏らしていた。
サーヴァントには色んなタイプの性格をした人間がいる、それはイスカンダルと会って上条が感じたことだ。
しかし。

ギルガメッシュ「王とはこの我を呼称する名だ。誰に許しを得て王を名乗っている、雑種」

このサーヴァントは、特に異質だ。
上条は、そんな風に感じていた。

イスカンダル「誰も何も、余は世界に名を轟かす征服王に違いないのだがなぁ」

困ったようにイスカンダルは呟く。
そこに悪意はなく、純粋に事実だけを述べている様子が伺えた。
しかし、ギルガメッシュはその返答が気に食わなかったらしい。
厳しい顔のままこちらを見下ろしながら、

ギルガメッシュ「喚くな」

そう言うと、ギルガメッシュの背から数本の剣が現れた。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/29(金) 23:43:29.13 ID:h8IBJi+Q0
上条(なんだ…?あれが全部あいつの宝具ってやつなのか…!?)

目を見開く上条。
切嗣の話だと、宝具は多くて二つか三つだと聞いている。
しかし、それより多くの武具が金色の英霊の背後に現れたのだ。

上条(反則だろ………!?)

そんな上条の心の声など聞こえるはずもなく、ギルガメッシュは続ける。

ギルガメッシュ「我の前で王を名乗ったこと、それは万死に値する。すぐに我自ら貴様にその罪を思い知らせてやろう、だが」

そう言葉を切ると、ギルガメッシュは上条の方に目を向けた。
いきなりギルガメッシュと目を合わせた上条は思わず体を強張らせた。

ギルガメッシュ「何だ?そこの薄汚い小僧は。見たところ魂の純度が高い訳でもない。ここは英霊のみが集う場所なのだろう?ならばあのような紛い物は、予め掃除しておくのが礼儀であろうが!!!」

上条(まず、い………ッ!?)

ギルガメッシュの怒声を合図として、



数本の宝剣と宝槍が、上条へと襲いかかった。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 00:03:05.33 ID:VyGOFika0
とりあえずここまでで。
続きは明日投下します。おやすみです。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 00:05:54.45 ID:QYO17YmJo
宝具一本一本が独立してるからめちゃくちゃ相性が悪そう
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 11:17:17.55 ID:HoKPuyikO
キャスター以外には基本的に相性悪そう。
でも、ここのキャスターは飛んだり武闘派なのいるからやっぱ不利か。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/06/30(土) 15:06:14.39 ID:0X7J/D8L0
ここからどうなるか楽しみ
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 21:51:51.41 ID:lOhsOoHQO
続きです。コメントありがとうございます。



ドゴォン!!!、と衝撃音が響き、土煙が舞う。
上条に攻撃を避ける時間など存在していなかった。
さらに、上条の身体能力は特筆するほど高いものでもない。なおさら回避など不可能であっただろう。
しかし、



ギルガメッシュ「おい、一体どういう了見だ…?鼠……?」



ギルガメッシュは、怒りを露わにしながらそんな言葉を発した。
そう。
上条の身体能力に特筆する点などない。
しかし上条当麻には、


神の奇跡すら打ち消す右手がある。


上条(あっ、ぶねぇ……っ!)


煙が晴れると、そこには右手を上げたままの状態の上条がいた。
なぜ上条がいきなりの攻撃に対応できたのかと問われれば、上条自身、咄嗟に体が動いた、としか答えられない。
実際のところ、上条にとって、その行動は賭けでしか無かった。
敵の得体の知らない攻撃、もしそれが異能の力もなにも関係の無い攻撃だったら右手から直撃して死亡していただろう。
しかし、上条が受け止めたのは宝具による攻撃。
よって、幻想殺しが効果を発揮したのである。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 21:52:37.45 ID:lOhsOoHQO
上条(宝具を飛ばして攻撃してくるのか…!?いきなり攻撃してきたのも含めても、コイツ、かなりヤバイ……!?)

なんとか初撃を躱した上条。
だが、ギルガメッシュの目は上条を捉えたままである。

ギルガメッシュ「……貴様、我の財に何をした………!!!」

怒りが収まっているようには見えない、むしろ怒りを増していることは誰の目からも明らかだった。
当然である。
英雄王の財。それを捌き、躱すことの出来る英霊ならば数人はいるかもしれない。
しかし、宝具そのものを「消す」ことの出来る者などこの世界に存在しうるのだろうか。
背後にさらに多くの宝具を展開しながら、ギルガメッシュは叫ぶ。

ギルガメッシュ「我の財宝はお前の命で償える程安くは無いぞ、小僧……ッ!!!」

十数本に渡って展開される宝具。
上条には幻想殺しがある。しかし同時に、上条はその弱点を十分に理解している。
右手しか効果を発揮しない幻想殺しは、異能の力が関係しない攻撃、上条自身が反応できない速度で迫る攻撃。

そして、数で押しつぶすそうとする攻撃に圧倒的に弱いのだ。
その場合、そこに異能の力の有無は関係ない。
つまり。



次に放たれる攻撃を、上条は凌ぐことが出来ない。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 21:53:38.50 ID:lOhsOoHQO
無事では済まない。
直感で上条はそう結論づける。

先ほどの戦闘、何も上条は身体能力だけでランサーの攻撃を避けていた訳ではない。


『前兆の感知』。


上条自身さえ自覚していない、上条を支える戦闘技術の一つである。
どのような攻撃にも予備動作というものがあり、能力者や魔術師といったように、扱う力が大きい程大きくなるソレを、上条は感じ取って攻撃を避けているのだ。
それがサーヴァントに対しても通用することは、先の戦いで実証されている。
そしてその『前兆の感知』が、次に放たれる攻撃を凌ぐことは難しい、と告げているのである。

上条(ちくしょう……!なら、アイリさんだけでも…っ!)

捨て身の覚悟でギルガメッシュの背後の宝具を睨む上条。
いよいよ宝具が放たれようとしたその時、


?「殺せ、バーサーカー……!」


そんな言葉が、冬木のどこかで発せられた。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 21:55:41.71 ID:lOhsOoHQO
少し経ち、攻撃が来ないことに気づく上条。
気になってギルガメッシュを見ると、ギルガメッシュはこちらを見てはおらず、別の方向を見下ろしていた。
その視線を追うと、そこには、

バーサーカー「…………」

漆黒の騎士が、屹立していた。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 21:56:41.06 ID:lOhsOoHQO
アイリ「バーサーカー……!」

アイリの声で乱入者が何者かを知る上条。
バーサーカー、理性を失うことで基礎的な能力を底上げしているクラスだと聞いていたが、話以上に不穏な空気を醸し出している、そう上条は感じていた。

ランサー「おい、ライダー。あいつは勧誘しなくていいのか?」

沈黙を破り、冗談めかしてライダーに話しかけるランサー。
それを受けてライダーは、

ライダー「誘うも何も、あいつはのっけから交渉の余地は無さそうなのでなぁ」

再びバーサーカーに目を向ける上条。
バーサーカーはこちらの話など聞こえていないのか、電灯の上に立つギルガメッシュを凝視している。

ギルガメッシュ「おい」

上条に向けられていた砲口が、バーサーカーへと狙いを変える。

ギルガメッシュ「一体誰の許しを得て我を見上げている、狗!!」

そして、宝具が放たれる。
バーサーカーは動かない。

ゴッ!、という爆音が再び夜空に響いた。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 21:58:38.40 ID:lOhsOoHQO
ーーー
時臣「…不味いな」

暗闇の中、ギルガメッシュのマスターは呟く。
聖杯戦争はまだ序盤、迂闊に手の内を晒すような行動は避けたい。
つまり、

時臣(ギルガメッシュにこのまま戦わせるのは得策ではない)

しかし、激怒する己のサーヴァントを撤退させるのは困難だ。それはこの短い期間でも分かりきっていること。
仕方ない、そう考えながら時臣は右手の令呪に目を向けた。
ーーー
ギルガメッシュが宝具を放ち、数秒後。
煙が晴れ、バーサーカーの立っていた位置が視認可能となっていく。
そしてそこには、変わらぬ様子で立つバーサーカーがいた。

ランサー「あれが、バーサーカーだと!?」

沈黙を破ったのはランサー。
その言葉に賛同しているのか、他の者が言葉を発することはない。
バーサーカーは、ギルガメッシュが放った宝具を空中で掴み、続く宝具をそれで撃ち落としたのである。
素人の上条ですら、あのバーサーカーが只者ではないことが分かる。

ギルガメッシュ「その薄汚れた手で我の宝具に触れるとはな!もはや血肉の一片も残さん!!!」

多くの砲口がバーサーカーに向けられる。しかし、その直後。

ギルガメッシュ「ほう…我相手に随分と大きく出たな、時臣!!!」

そう言ってギルガメッシュは宝具を収めた。
しかし宝具を収めただけで、瞳に宿る殺意は微塵も消えてはいなかった。

ギルガメッシュ「今の内に有象無象を間引いておけ。我と合間見えるのは、
真の英霊だけでいい」

そう言葉を残すと、ギルガメッシュは霊体化して消えていった。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 22:44:50.63 ID:lOhsOoHQO
上条「何だったんだよ……」

思わずそう漏らす上条。
辺りを見回すと、いつの間にかバーサーカーの姿も無くなっていた。

ライダー「全く、好き勝手な連中よのう」

あんたが言うのか、と突っ込みたくなるのを抑えて上条はランサーへと向き直った。

上条「どうすんだ?これ以上続ける気か?もしかしたら、バーサーカーがその辺で隠れて隙を狙ってるのかもしんねぇけど」

ランサーは、ふぅ、と息を吐いて構えを解く。

ランサー「いや、遠慮しておこう。ライダーもこの場に居るんだ、これ以上ここで消耗するのは避けたい。それに、お前への対策無しに戦うのは危険そうだからな」

ランサー「貴様の名、上条当麻といったな」

上条「…ああ」

それを聞くとランサーは槍を地面に突き刺し、高らかに宣言した。

ランサー「我が真名は、ディルムッド・オディナ!我が宿敵、上条 当麻よ。貴様との再戦、そして今は亡き我が槍の仇を討つことをここに誓おう」

言い終えて、ランサーは霊体化してその場を去って行った。

ライダー「ならば余も帰還するとしよう。今晩は良いものを見せて貰った。上条 当麻、我が軍勢に加わりたい時は、いつでも余に言うが良いぞ!!!」

豪快に笑ってライダーは空の彼方へと去って行った。

上条「あれが…サーヴァントか」

アイリと残され、呟く上条。
ランサーにライダー、そのどれもが常人には無い雰囲気を持っていた。
礼装のおかげでアイリは無事で済んだ、しかしランサーの槍があったように、これから先もアイリの安全が確保されている訳ではない。
アイリの安全だけではない。
上条自身の身を守ることすら危ういのかもしれない、
まだ出会ってすらいないサーヴァントは二騎もいる。
無事で済む確率の方が低いのは明確なのかもしれない。
でも。


それでも、戦うと決めたのだ。


上条の決意は変わらない。
小さな少女との約束を守る為に、彼は走り続ける。


上条当麻の存在は、果たして冬木の運命にどのような影響を与えるのだろうか。
それを知る者は、まだいない。


此度の聖杯戦争、その初戦はこうして幕を閉じた。
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 23:06:19.39 ID:lOhsOoHQO
今日はここまでです。
今まで結構既視感のあるシーンがあったと思いますが、見てくれた方々ありがとうございます。
個人的にはここで一段落ついたつもりです、次回からは結構本編とは変わってくると思うので懲りずに見てくれたらな、と思います。(例の如く本編と同じシーンがあれば、詳細には描写しないつもりですが)
『前兆の感知』ですが、禁書本編より便利なものとして解釈してます。けど、これくらいじゃないと上条が太刀打ち出来ないので見逃して下さい。
まぁssだしな、くらいに受け止めて下されば幸いです。

また一週間後くらいに書き込みたいと思ってます。
また見に来てくれたら嬉しいです。
ありがとうございました。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/06/30(土) 23:39:21.49 ID:0X7J/D8L0
いいぞいいぞ
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 01:56:21.02 ID:cQxDaGK3o

次は一週間か長いな
面白いほど待つ時間が辛くなるねぇ
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/01(日) 20:51:32.05 ID:T+O52QFL0
がんばれよ!
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:46:53.73 ID:mC7ekQexo
おつおつ
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/07(土) 21:49:27.80 ID:Yp7fEz6FO
今夜ちょっと書き込みます、お願いします。

100ゲット笑
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/07(土) 22:43:59.43 ID:L/hQC0lbO
ーーー新都

ケイネス「一体何だ!あのザマは!」

広大な部屋にある男の声が響き渡る。
そこは新都内にある高級ホテルの一室であった。
声の主は、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。此度の聖杯戦争のマスターの一人である。
ケイネスが座る椅子の前には、その激怒の矛先を向けられているランサーが臥していた。

ケイネス「よりによって素手のサーヴァント相手に宝具を破壊され、撤退するだと!?私のサーヴァントがこんなにも無能だったとはな!」

話の内容は先程行われた戦闘についてのものだった。
おそらくあのサーヴァントはアインツベルンが召喚したものであろう。横に居た白髪の女がそれを証明していた。

ランサー「…お言葉ですが、我が主よ。あの男、上条当麻の右手には特殊な力があるようです。俺の槍を破壊したのも、偶然ではありません。あのような特異な右手を相手に無策で戦えば、最悪残りの槍も破壊されると判断し、撤退した次第であります」

自分の意見を淡々と語るランサー。
相手の力量を把握するのが難しい聖杯戦争において、ランサーの選択が間違っておらず、勝利の為に必要な事だとケイネスは理解している。しかし、ランサーの考える「勝利」とは、ケイネスの目指す「勝利」とは少しズレたものなのである。

ケイネス「いいか、ランサー。ただ勝利するだけなら誰にでも出来る。しかし、このケイネス・エルメロイ・アーチボルトによって召喚されたサーヴァントである以上、『完璧な勝利』が求められるのは必然だ!」

つまりケイネスの怒りの元は焦りだ。
自ら課した勝利条件がケイネスを縛り付けているのである。

ランサー「………」

そんなケイネスにランサーは何も言い返さない。
そこへ。


?「そこまでにしたら?」
と、声が一つ増える。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/07(土) 22:44:49.47 ID:L/hQC0lbO
声の主は、ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ。
ケイネスの婚約者であり、ランサーへと魔力供給を行う、魔術師の一人である。

ソラウ「みっともないわよ、ケイネス。敵のサーヴァントの力量は知らないけれど、ランサーの槍は破壊され、撤退した。これが事実でしょう?起きてしまったことに固執しては、成すべきことも成せないんじゃないのかしら?」

ケイネス「そ、それはそうだが…」

口淀むケイネスにそう言い放つソラウ。
一見冷たく見える発言だが、なにもソラウはケイネスに対して侮蔑の意を含めたわけではない。彼女自身、事実を述べただけだと考えている。
そして、

ソラウ「けれどあなたを擁護するつもりもないわ、ランサー。敵サーヴァントの能力が分からないことは初めから承知していたはずよ。にもかかわらず、素手の相手に正面から戦うなんて、油断にも程があるんじゃなくて?」

ランサーに対してもその姿勢は変わらない。彼女は正面切っての戦闘に出ることはないが、その分冷静に状況を見極めていた。

ランサー「…返す言葉もありません、ソラウ殿」

ランサーは主の許嫁であるソラウにも従順に頷く。
その傍、ランサーは自らの黒子の呪いについて考えていた。

ランサー(ソラウ殿の様子が変わっている)

上条当麻との戦闘の前後でソラウのランサーに対する態度が明らかに変化しているのだ。それはランサーだけでなく、ケイネスの目から見ても明らかであった。
そしてランサーが抱いてた疑問は、確信へと変わる。

ランサー(どうやら、あの右手で俺の呪いが解呪されたのは事実らしい)
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/07(土) 22:46:31.97 ID:L/hQC0lbO
このことはランサーにとっては喜ばしい事でしかない。生前でさえ振り回された呪いに、二度と振り回される訳にはいかないのだ。
ソラウが黒子の呪いの影響を受けている危険性を感じていたランサーだが、どうやらその心配はないらしい。

ランサー(その点においては感謝するぞ、上条当麻)

今はいない宿敵に礼を述べるランサー。

ケイネス「君の言う通りだ、ソラウよ。だが、これ以上無様な姿は見せたりはしないさ」
ソラウに対して反論するケイネス。

ケイネス「このホテルには多くの魔術的な仕掛けを施してある。私の工房に攻撃を仕掛けることなど、サーヴァントでも手こずるだろう。つまり、これ以上遅れをとることなどない」

その言葉には自信が満ちていた。
ケイネスの言った通り、自らの工房とはまさに自分の土俵。ケイネス・エルメロイが本気で仕込んだ魔術工房に侵入できるものなど僅かしかいない。

ソラウ「そう。期待してるわよ、ケイネス」

その言葉には言葉以上の意味は含まれていない。
ソラウ自身、自らの変化に驚いていた。
この冬木に来る前まで、ランサーに対して不思議な感情を抱いていたのは自覚していた。しかし、ランサーとケイネスが帰還した時には、それは消えていたのだ。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/07(土) 22:47:20.33 ID:L/hQC0lbO
ソラウ(あれは…何だったのかしら)

自身に疑問を抱くソラウ。
彼女に生じていた感情は、彼女にとって初めてのものだった。
しかし、それは既に消えている。
彼女が再びソレを抱く時があるのかどうかは、彼女自身にとっても分からないものであった。


ソラウの心情を知らないケイネスは、そんな風に答える自らの婚約者に満足そうに頷いていた。
ケイネスにとってソラウの目を惹くことは、何よりも重要なことなのである。
少し前までは、ランサーに甘い部分を見せていたソラウだが、今はそんな気配は無い。
とうとう頼りにするべき男を理解したか、と考えるケイネス。
次は完膚なき勝利を手に入れる、そう考えながらグラスを傾けた。

だが。


この会話の数十分後。
とあるホテルが爆発し、崩落したとのニュースが新都に走った。
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/07(土) 22:48:35.95 ID:L/hQC0lbO
ーーーアインツベルン城

上条「テメェ………ッ!!」
上条の鋭い声が響く。
その声は切嗣に向けて放たれたものだった。

ーーー

数時間前、上条とアイリは拠点とするアインツベルン城に帰還した。
アイリの運転する車は上条には少し恐ろしいものだったが、敵に遭遇することもなく無事に辿り着いた。
かなり大きい城に気圧された上条であったが、アイリと一緒に切嗣を待っていた。
そしてしばらくして帰ってきた切嗣の第一声が、

切嗣「マスターの一人を仕留めた」

というものだったのである。
普通のサーヴァントとマスターの関係であったら、この報告は喜ばしい事なのかもしれない。
しかし、この二人にとっては違った。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/07(土) 22:49:39.20 ID:L/hQC0lbO
確かにこの聖杯戦争はマスターとサーヴァント同士が戦う儀式だということを上条は理解している、しかし。

上条「何で俺を呼ばなかったんだ!?マスターを脱落させたいなら、サーヴァントを倒せば良いんだろう!生身のマスターを狙う必要なんかねぇじゃねぇか!!!」

切嗣はビルを爆破させ、ビルごとマスターを始末した、そう告げたのである。
この世界の魔術師というものがどれくらいの強さなのかは知らない。しかし、無事では済まない筈だ。
それだけではない。一歩間違えれば関係のない人々も巻き込まれていたかもしれない。

切嗣「これが最善だ。たとえサーヴァントが消滅しようと、マスターの権利というものは残り続ける。マスターを失ったサーヴァントとの再契約されでもしたら厄介だ。殺すのが一番確実で、手っ取り早い」

激昂する上条に対して切嗣は動揺することなく反論する。確かに理屈の上では切嗣の言っていることは正しいのかもしれない。
だが、淡々と語る切嗣に上条は気持ちを抑えられなかった。

上条「うるせぇ!!マスターを失ったサーヴァントなんてまだいねぇだろうが!!!理屈捏ねたところで俺が納得するとでも思ってんのかよ!!!」

そう言って上条は切嗣へと一歩近づく。
気づけば、その胸倉を掴んでいた。

上条「大体、お前は世界の救済ってのを目指してるんじゃないのか!?こんなやり方で聖杯を手に入れたって、そんな犠牲の上に成り立ってる世界を『幸せ』なんて呼べる訳ねぇだろうが!!!」

切嗣の胸倉を掴みながら叫ぶ上条。
しかし、それでも切嗣の表情は変わらない。
むしろ、その表情はさらに冷酷なものになっているかのようだった。

切嗣「………黙れ」

切嗣は低くそう呟くと、乱暴に上条の手を引き剥がした。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/07(土) 22:50:08.17 ID:0WtiF6qm0
いろいろ違ってるからランサーが死なない可能性が出てきたぞ…
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/07(土) 22:52:00.33 ID:L/hQC0lbO
切嗣「随分大層な事を抜かすもんだな。なら、早くサーヴァントを倒してきたらどうだ?ランサー相手に苦戦し、アイリを危険に晒した人間にそれが出来るとは思えないが」

上条「……!」
どうやら切嗣は、ランサーと戦っていた所を見ていたらしい。
しかし、その事実は余計に上条の怒りに油を注いだ。

上条「オマエ…ッ!見てたのかよ、俺達の事見ておいて何も手出ししなかったっていうのか!?アイリさんが攻撃されて知らん顔してたのも、戦略の為だ、って抜かすつもりかよ!!」

数秒の沈黙。
上条の視線を正面から受けて、切嗣は、



切嗣「……ああ、よく分かってるじゃないか」
ハッキリと、そう述べた。


上条「この野郎……ッ!!!」

もう我慢出来ない。
そう考えながら拳を握りしめ、切嗣へと飛び出す上条。

アイリ「やめてっ!上条君……!」

しかし、それはアイリの言葉によって止められた。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/07(土) 22:54:43.31 ID:L/hQC0lbO
上条「アイリさん!でもコイツは……っ!」

アイリ「良いの、結果的に私は怪我なんかしてないわ!」
そう言ってアイリは、

アイリ「切嗣が倒したマスターのことは、正直私も受け入れられるものとは思ってないわ……でも、相手は私達を殺す気で動いてる。やり方は確かに強引かもしれない。でも、結果的には切嗣も私達を守る為にやった事なの」

アイリ「だから、二人で争ったりしないで……」

悲しそうに、そう告げた。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/07(土) 22:55:49.05 ID:L/hQC0lbO
上条「………っ」

確かに自分が甘かったのかもしれない。
実際、アイリを危険に晒したのは力の足りない上条のせいではないか?
方法がなんであれ、味方が襲われる可能性を下げた切嗣の方が正しいのではないか?
守りたい人を守る為には、手段を問う暇なんてないのではないか?
弱気になったのか、そんな事を考え始める上条。
しかし、

上条(そんな、訳が……ッ!)

上条当麻は、そんな言葉には屈しない。


上条(そんな訳ねぇだろうが!上条当麻!!!)

そうだ。
相手が殺す気で向かってくる以上、殺したって構わない?
方法がなんであれ、守りたい人達を守れればそれで良い?

そんな訳がない。
もし、そんなやり方で大事な人を守ったとしよう?
なら、その人になんて告げるのだ?
「君の命を狙う人達がいたから、皆殺しにして君を助けた。ああ、そいつらの事は君が気にする事じゃない」と、そんな風に言えばいいのか?
見知らぬ人々の命を背負って生きる事を、大事な人に強制しているんじゃないのか?
それは正しい事なのか?
もしそれが正しい事ならば。
なぜ、



なぜアイリは、こんなに悲しい顔をしている?


111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/07(土) 22:57:00.65 ID:L/hQC0lbO
上条(諦めねぇ、諦めてたまるもんか!!!)

上条のやる事は変わらない。
サーヴァントと戦い、その者たちを英霊の座へと還す。
敵のマスターを殺したりはしない。
そして、アイリ達を守り抜く。
だが。

上条(……切嗣は、本当にこんな真似を続けるつもりなのか)

そんな不安を、上条は抱いていた。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/07(土) 23:08:16.60 ID:L/hQC0lbO
今日はこんな感じで終わりにします。
あまり進んでませんが、明日も書き込むのでその時もよろしくお願いします。
コメントありがとうございます、すごく嬉しいです。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 01:09:17.06 ID:btkZUKy2o
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 05:23:32.12 ID:K4dHDt3fo
おつかーレ
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/08(日) 13:58:50.94 ID:cFUw8Orc0
乙ゥ!
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/08(日) 23:34:44.87 ID:8zf91nqw0
再開します。



切嗣「気は済んだか?なら、今後の方針を決めさせてもらう」
そう言って話を再開する切嗣。
彼の目はもう上条など見ておらず、机の上にあるパソコンに向けられていた。

切嗣「ついさっき入った情報なんだが、今回の監督役からのお達しでね。どうやら追加のルールが出来たらしい」

アイリ「追加のルール?」
不思議そうに首を傾げるアイリ。

切嗣「ああ、どうやらキャスターのサーヴァントとそのマスターがかなりの問題を起こしているらしくてね」

そう言いながら切嗣は一枚の新聞紙を投げて来た。
なぜ新聞?と、疑問に思う上条とアイリであったが、素直に読み進めてみる、すると、

『冬木市で誘拐事件。被害者の大半は子供である模様』

上条「問題って……まさか」
自分の思い違いであってくれ、そう思いながら呟く上条。
しかし、そんな期待は、

切嗣「ああ。どうやらキャスターのサーヴァントとそのマスターは、冬木市に住む子供を誘拐しーーー」



切嗣「殺害して、回っているらしい」

切嗣の言葉によって、砕かれた。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/08(日) 23:35:36.97 ID:8zf91nqw0
上条「嘘、だろ…」

呆然と呟く上条。
傍らに居るアイリも口に手を当て、黙っていた。

上条「なんで、何でそんな事をする必要があるんだ!?こいつらも聖杯戦争に参加してんなら、狙うのは敵のサーヴァントだけで良い筈だろう!!?」

今まで考えさえもしなかった敵の行動に、動揺を隠せない上条。
そんな上条の言葉を受けても、切嗣は一切動じず、

切嗣「世界には二種類の人間しかいない、意味のある事をする奴と意味の無い事をする奴だ。もしキャスター達が前者なら、それは魔力補給の為だろう」

上条「魔力補給……?」

切嗣「そうだ。魔力というのは人間の生命力と同義だ。つまり、一般人の命を犠牲にしてサーヴァントの魔力補給を行なっていると考えられる。……何にせよ、許されるものじゃあないが」

しかし、と切嗣は一旦区切ってから話を続ける。

切嗣「子供が内包する魔力など未熟で、僅かだ。もしキャスター達が魔力補給を目的としているなら、成熟した人間を狙うのが最も効率が良い。しかし、こいつらはそれを度外視している」

上条「待てよ、それじゃあつまり……」

その通り、と上条の言葉を肯定しながら切嗣は告げる。



切嗣「コイツらは後者の人間。もはやサーヴァントでもマスターでもない、ただの快楽殺人者という訳だ」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/08(日) 23:36:28.22 ID:8zf91nqw0
上条「そんな奴ら、ほっとく訳にはいかねぇだろ!!」

思わず声を上げる上条。

切嗣「どうやら教会の方もそう考えているらしくてね。まぁ、奴らが重視しているのは神秘の秘匿なのかもしれないが」
ここからが本題だ、と切嗣は続ける。

切嗣「今言った暴挙を止める為、キャスターを仕留めたサーヴァントのマスターには令呪を一画与える、そんなルールが追加された」

上条「令呪って、アレのことか」

ランサーとの戦いを思い返す上条。
あの時ランサーは、自分の意思ではない行動を強制されたと言っていた。
どうやら令呪というのは魔力の塊であり、マスターがサーヴァントへの命令を可能にするものらしい。そして使い方によってはサーヴァントを強化することも出来ると切嗣から聞いていた。

切嗣「三画しかない令呪が報酬というのは、中々に破格の条件。キャスター討伐に動き出すマスター達も増えるだろう」

上条「当然だ。令呪なんて関係ねぇ、そんな奴ら放置しておく訳にはいかねぇだろ!」

切嗣の言葉を肯定する上条。
しかし、




切嗣「今回の件、僕達は干渉しない」

切嗣の放った言葉は、上条にとって予想外のものだった。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/08(日) 23:44:21.59 ID:8zf91nqw0
上条「おい、切嗣………ッ!」

再び上条からの視線を受けても、切嗣の態度は変わらない。

アイリ「…切嗣、何故そのような方針にするの?説明してちょうだい」

切嗣を見つめたままでいる上条の代わりに、アイリが切嗣へと話しかける。

切嗣「この聖杯戦争において最も危険なことは、『動きを読まれること』だからね。キャスターを追う、そんな行動を取ったら他のマスターから叩かれる隙を作るだけだ。それに、残っている令呪は三画。消費しているならまだしも、これ以上無茶をする必要はないさ」

だから、と切嗣は続ける。

切嗣「僕らが狙うのはキャスターじゃない、キャスターを狙う他のマスター達だ。確かにキャスターの居場所を探るのは重要だが、僕達が直接出向くことはない」

アイリ「……そう」

上条「…………」
そんな切嗣の言葉を、上条は黙って聞いていた。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/08(日) 23:45:01.36 ID:8zf91nqw0
上条「……お前の言いたい事は分かった。もう話す事はねぇ、寝させてもらう」

そう言って上条は部屋を出た。
残されたアイリと切嗣の間に沈黙が流れる。

アイリ「……切嗣、今更あなたのやり方に文句を言うつもりはないわ。でも………」

切嗣「………」

アイリ「…………いえ、何でもないわ。私もそろそろ休みます。おやすみなさい」

切嗣「……ああ」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/08(日) 23:48:05.37 ID:8zf91nqw0
ーーーそして、夜が深まった頃

用意された寝室で、上条は眠ろうとしても眠れない頭でベッドに転がっていた。
その原因は無論、先程の会話についてである。

上条(……切嗣が言ってることも、理解できない訳じゃない)

おそらく、自分が言っている事は我儘なんだろう。
この聖杯戦争に参加している人物の中で、自分の様な考え方をしている者など殆どいないのだろう。

確かに、傲慢なのかもしれない。
上条だって、全ての人を救える訳じゃない。
今この瞬間にも苦しんでる人はいるだろう。
上条が知らない所で涙を流している人もいるだろう。
そんな人達を救えないのに、誰かを助けたいと、そう思うのは思い上がりなのかも知れない。
けど。
それでも。



それは、苦しんでいる人達を見過ごす理由にはならない筈だ。



それだけじゃない。
もし、罪の無い人々を苦しめるキャスターを無視して聖杯戦争を勝ち抜けたとしよう。
その時、どんな顔をしてイリヤに会えば良いのだ?
多くの人を見捨てた人間が、イリヤに胸を張って会えるのか?


結局のところ、



上条当麻は、一体何がしたいのだ?


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