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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」

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411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/26(火) 04:38:24.52 ID:vUetPIt70
ほしゅ
412 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/03(日) 18:41:22.59 ID:E2VKzWIyo
書いて消し、書いて消して結局全部消して書き直し。
ようやく話の筋ができたので、続きです。

なお、登場人物の名前は漢字の以呂波にしました。
(呂はろーちゃんがいて紛らわしいので、飛ばす予定です)
413 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/03(日) 18:42:34.44 ID:E2VKzWIyo

 * 太平洋上 某所 *

 (輸送船の甲板上で、N提督が佇んでいる)

妙高「N大尉」

N大尉(中佐から降格)「……」

妙高「……N提督。中にお入りにならないのですか?」

N大尉「ん、ああ……そうだな、今の俺は大尉だった。すまん、妙高」

妙高「お寒くありませんか?」

N大尉「寒いには寒いが、もう少し、この景色を眺めていたいんだ。見ろ、大湊がもう見えなくなった」

妙高「……」

N大尉「俺は、何を見ていたんだろうな」

N大尉「お前たちのことをろくに見ていなかったのに、こんな大きな海を見張っていた気になっていたと思うと、情けなくて仕方ない」

妙高「……」

N大尉「あいつらには、詫びを入れることすら許されなかった。一目会って、頭を下げたかった」

N大尉「いや、そもそも許してもらおうと思うほうが間違っているか。俺の顔も見たくないだろうしな」

妙高「……」ハァ
414 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/03(日) 18:43:35.56 ID:E2VKzWIyo

N大尉「妙高。お前も俺みたいな男についてくる必要はなかっ」

 ゴンッ

N大尉「あだっ!?」

妙高「N大尉。私、言いましたよね? 今後そういう後ろ向きなことを言ったらげんこつですよ、って」

N大尉「本気だったのか……」ジンジン

妙高「良い大人なんですから、何度も言わせないようにお願いしますね」

N大尉「わかった。気を付ける」

妙高「はい」コクリ

N大尉「ただな、妙高……俺の処遇は本当にこれだけで良かったんだろうか?」

妙高「言った傍から、まだ仰いますか」

N大尉「腑に落ちないんだよ。これから向かう単冠湾は、大湊の目と鼻の先だ」

N大尉「俺に対する罰も、艦娘の指揮権の剥奪と二階級の降格だけ」

妙高「十分ではありませんか」

N大尉「……十分だと思うか?」

妙高「N大尉は変なところが厳しいんですね」ハァ

N大尉「俺はな、この処罰の軽さは、中佐が一枚噛んでるんじゃないかと疑っているんだよ」
415 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/03(日) 18:44:35.26 ID:E2VKzWIyo

妙高「中佐……中将のご子息の、ですか」

N大尉「大鳳はあいつの部下だ。親のコネを使って、俺を管理しやすいところへ連れて行く魂胆じゃないかと思ってるんだ」

N大尉「あの中佐なら、艦娘管理ツールのことを狙ってくるに違いない」

妙高「……それで、刑を軽くして、こちらに貸しを作ったと?」

N大尉「ああ。そのうちあいつから何らかの接触があって、俺を陥れようとしてるんじゃないかと思ってる」

妙高「それは考え過ぎではないでしょうか。そもそも中佐は、墓場島で大怪我を負い入院してると聞いてますし」

N大尉「は? ……なにかあったのか、あの島で」

妙高「はい。中佐が大和さんに振られたついでに酷い目に遭ったそうです、盛大に」

N大尉「やっぱりあいつも大和を狙ってたのか……だが、それで怪我したとなると、大和や提督准尉にお咎めが行ったんじゃないのか?」

妙高「そういうお話は聞いていませんね」

N大尉「……どういうことだ? その話の出所は?」

妙高「中佐の元部下です」

N大尉「もと?」

妙高「はい。中佐が墓場島から大和さんを連れ出すときに、一緒に連れて行った部下たちだと聞いています」

妙高「なんでも、大和さんを墓場島から連れ出せなかった責任を押し付けられて、中佐の鎮守府から追い出されたそうですよ」

N大尉「……」
416 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/03(日) 18:45:44.17 ID:E2VKzWIyo

妙高「彼らが言うには、中佐は最初から大和さんに拒絶されていて、誰が説得しても連れ帰るのは無理だった、言うことらしく……」

妙高「逃げ帰る理由になった中佐の大怪我も、もとは中佐が大和さんの逆鱗に触れたからだ、と、言って回っているそうです」

妙高「追い出された腹いせに言いふらしているらしいですから、どのくらい誇張されているかはわかりませんが」

N大尉「……なんともはや、だな」

妙高「N大尉も、一歩間違えばそんな目に遭っていたかもしれませんね」ジトメ

N大尉「……耳が痛いな」メソラシ

妙高「それからもうひとつ、妙な噂がありまして」

N大尉「なんだ?」

妙高「あの島は『わけあり』なんだそうです」

N大尉「わけあり、か……その話も今更だな」

妙高「あの島の記録は海軍にもほとんど残っていません。なのに、かなり古くから鎮守府が置いてあったようなんです」

妙高「本当は流刑地だっただの、あの島で数千人が餓死しただの、こちらもどこまで本当なのかわからないような噂があります」

N大尉「まあ確かになあ……ただ、仮にそうだとしても、提督准尉は順応していて、最低限とはいえ戦果も挙げているんだ」

N大尉「それに加えて、轟沈経験艦も引き連れているのに大きな事故も起きてない」

妙高「はい……」
417 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/03(日) 18:46:54.64 ID:E2VKzWIyo

N大尉「とはいえ、俺も金縛りなんて生まれて初めてかかった。お前と鳳翔も幽霊を見たんだったよな?」

N大尉「俺たちが体験したことは事実だが、今の噂も含めて、誰かに話したところでまともに取り合ってもらえるとは思えないな……」

妙高「……このお話はそのくらいにして、そろそろ船内に入りましょう。どうせ船内にいたがらないのも、周囲の目が気になるからなんでしょう?」

N大尉「……お前にはすべてお見通しか」

妙高「ええ。ですから、諦めて暖を取ってください。お茶もお入れしますよ」ニコ

N大尉「……ああ、わかった。甘えさせてもらうよ」

妙高「ところで、これから向かう単冠湾の以中佐がどんな方か、N大尉は御存知ですか?」

N大尉「以中佐は、単冠湾の中でも指折りの戦果を挙げていると聞いている。だが、どんな人物かは詳しく聞けなかった」

N大尉「だが、その鎮守府の艦娘はみな意気軒昂で士気が高く、出撃となればこぞって先陣に立つ勇猛果敢な猛者ばかりだと聞いている」

妙高「ここまで聞くと、相当な人格者のように思われますね」

N大尉「ただ……見た目が世紀末的な人だ、とだけ聞いた」

妙高「世紀末? ……蝋人形の館……」ボソ

N大尉「? 何か言ったか?」

妙高「いえ」ニコニコー

N大尉「? ……とにかく、しばらくは以中佐の補佐官として職務に励めというお達しだ。あの中佐とは仲が良くないことを祈るばかりだ」ハァ

 * * *

 * *

 *
418 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/03(日) 18:47:55.52 ID:E2VKzWIyo

 * それから数日後 *

 * 墓場島鎮守府 執務室 *

提督「どーすっかねえ……」ハァ

 コンコン

大淀「失礼します」チャッ

朧「失礼します。あれ? 提督、おひとりですか?」

提督「んー」

朧「……また考え事してるみたいですけど、どうかしたんですか」

提督「まあ、な……」ジーッ

提督「朧なら聞いても良さそうだ。ちょっと聞いてくれ」

朧「なんでしょう?」

提督「吹雪が前にいた鎮守府の、司令官が退官したそうだ」

朧「!」

大淀「!」
419 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/03(日) 18:48:51.51 ID:E2VKzWIyo

提督「吹雪にこのことを伝えるべきか否か。どう思う」

朧「……難しい、ですね」

提督「ま、即答はできねえよなあ」

大淀「吹雪さんは前の鎮守府に戻りたがっていたんですよね?」

朧「はい。前の司令官に元気な自分の姿を見せたいって言ってたんです」

提督「成長した姿を見せる相手がいなくなったんじゃあな……」

大淀「ゴール地点を失ったってことですか」

提督「……この話は保留だな。吹雪の保護者だったS提督がなんで海軍を辞めたのか、理由がわからねえと吹雪への説明もできやしねえ」

朧「朧もそう思います。吹雪を犠牲にしてまで勝ちたかったはずの人が、簡単に海軍をやめるなんて……!」

提督「朧だって憤慨するのに、吹雪がこの話を聞いたらどうなるか……ったく、面倒臭え事態を作ってくれたもんだ」ハァ

提督「とりあえず、朧も大淀も、この話は余所に漏らすなよ。いいな?」

朧「はいっ」

大淀「承知しました」

提督「で、朧はどうかしたのか」

朧「ハチさんから、提督の人間ドックの日程はどうなったか聞いてきて、と頼まれたんです」
420 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/03(日) 18:49:47.93 ID:E2VKzWIyo

提督「……まだ返事は来てねえよな?」

大淀「はい。ですが、本営では医療船を各泊地へ数隻ずつ配備することがほぼ決定していまして」

大淀「泊地へ医療船を送るついでにこの島に立ち寄ってくれる、ということらしいです」

提督「……マジか」

朧「提督、そんなにお医者さんが嫌なんですか」

提督「嫌に決まってんだろ」

朧「……妖精さんの話を信じてもらえなかったからですか?」

提督「……」

大淀「もしかして、図星ですか」

提督「そんなとこだよ。あいつら、俺を気狂いか可哀想なものを見る目で見やがって……人間の医者なんてろくなもんじゃねえよ、くそが」

大淀「朧さん、よくわかりましたね……」ヒソヒソ

朧「提督のあの性格は、周りにちゃんと話をしてくれる人がいなかったからだと思うんです。多分」ヒソヒソ

大淀「提督、今回来るお医者様は妖精さんの存在を理解してくださってますから、そこまで心配なさらなくても大丈夫ですよ」

提督「だといいけどなあ」ムスッ

大淀「明石みたいに面倒見の良いお医者さんもいるはずですから」

提督「……まあ、明石はな。明石は悪くねえ」

朧(大淀さんもだいぶ提督の操り方がわかってきたみたい)
421 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/03(日) 18:50:41.61 ID:E2VKzWIyo

大淀「提督のお体に異常がないかどうかを調べるだけです。どうかご自愛ください」

提督「……わかったよ」アタマガリガリ

提督「それで、大淀のほうはどうした。その封書は」

大淀「はい、それが……」

 コンコン

榛名「提督! お客様です!」ガチャ

提督「ああ?」

妙高「失礼致します。お久しぶりです、提督准尉」スッ

提督「……お前、妙高か? N中佐んとこの」

妙高「はい! ……って、その様子だと、何も聞いてらっしゃらないのですか? 事前にご連絡していた筈なのですが……」

大淀「それなんですが……つい先程その書類が届いたんですよ」スチャ

妙高「……」

提督「……」

朧「なにやってんでしょうね、本営は……」

榛名「???」クビカシゲ

422 : ◆EyREdFoqVQ :2019/03/03(日) 18:52:59.90 ID:E2VKzWIyo
今回はここまで。

お待たせして申し訳ありません。
以中佐鎮守府でのN大尉の活躍の場は収拾がつかないので全カット!
マジごめんよう……。
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 22:04:09.43 ID:6IKybmZMo
乙です。長くなると整合性とか大変そうだ…
気長に待つんで無理せず納得がいく続きを書いてください
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 04:36:54.01 ID:17nAXR0/O
生きとったんかワレェ!?
425 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:30:58.38 ID:3ZSsUeMvo
方向性が決まれば筆が進むんですがね……。

では続きです。
426 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:32:10.51 ID:3ZSsUeMvo

 * 応接室へ向かう廊下 *

提督「うちに艦娘を引き取れってか」

妙高「申し訳ありません。ただ、事情が事情でして……この鎮守府でないと引き取ってもらえないだろうと、N大尉が」

提督「ふーん、N中佐は大尉に降格したのか。裁判は終わったのか?」

妙高「はい。条件付きで降格と配置換えという寛大な処分を受けまして……」

提督「条件?」

妙高「はい。ある鎮守府への潜入捜査です」

提督「……つまり、そこの鎮守府の問題児を引き取れと?」

妙高「問題児と呼ぶには語弊がありますが」

 コンコン

 (応接室前に到着し、ドアをノックする妙高)

妙高「提督准尉が入ります」

 カチャ

妙高「提督、お入りください」

提督「おう」スッ
427 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:33:00.42 ID:3ZSsUeMvo

立ち上がってむくれている龍驤「……」

立ち上がって俯いている陸奥「……」

提督「……引き取れってのは、この二人か?」

妙高「はい」

提督「ふーん……じゃあ、とりあえず聞いとくか」

提督「お前ら、生きたいか死にたいか、どっちだ」

妙高&龍驤「「はああ!?」」

陸奥「!?」アゼン

妙高「いきなり何を言うんですか!?」

龍驤「妙高! こいつアホなんか!?」

提督「何言ってやがる、こっちは大真面目だ」

提督「もう死んでもいい、みたいに考えてる奴を面倒見たくないっつってんだよ。面倒臭えからな」

妙高「提督准尉!?」

龍驤「……しょっぱなから何言っとんのや、こいつ」ドンビキ

陸奥「……」ナミダメ

提督「そういう場所なんだよ、ここは。まあいいや、とりあえず突っ立ってねえで座れ」
428 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:33:51.04 ID:3ZSsUeMvo

提督「俺は提督准尉、この鎮守府の責任者だ。お前らは?」

龍驤「……うちは軽空母の龍驤や。こっちは戦艦の陸奥」

陸奥「……」ペコリ

提督「空母? 空母ってお前、航空母艦なのか」

龍驤「なんや、うちが空母やったらなんか文句あるんか!」

提督「いや、空母って言ったら……」

龍驤「胸か! 胸がないちゅうんか! 悪かったなあこんな体で!」グワッ

提督「あぁ? 何言ってんだお前」

妙高「り、龍驤さん落ち着いて! 提督准尉はそういう方ではありませんとさっきも……!」

龍驤「だったらなんやっちゅうねん!」

提督「胸なんか知らねえよ。お前、飛び道具はどうした」

龍驤「……なんのことや?」

提督「空母だったら飛び道具持ってんじゃねえのか? 例えば赤城とか、鳳翔とか……あと大鳳もだったよな?」

妙高「は、はい、そうですけど」
429 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:34:50.90 ID:3ZSsUeMvo

提督「赤城や鳳翔は弓を持ってたし、大鳳のはクロスボウか? 矢なり弾なり飛ばすための道具持ってたろ」

提督「お前はそういうもん持ってこなかったのか、って聞いてんだ」

龍驤「……」

提督「俺、なにか変なこと言ったか?」

妙高「いえ、でも勘違いも無理もないことでして……」

龍驤「……あー、ごめんな。うちの早とちりやった」ジャラ

提督「ん? なんだその手錠は」

龍驤「これ? ていうか、うちらがここに連れてこられた理由、あんた知らんの?」

提督「資料が来るのが遅くてな。妙高が来るのと同じくらいに届いたくらいだ」

龍驤「んなアホな……どこまで連絡不行き届きなん」

提督「まあいいや、とにかく話を聞く。資料に嘘が書いてあるようならすぐ言えよ」

 * *

提督「鎮守府をまるっと燃やしたって?」ペラリ

龍驤「うん。全部、跡形もなく燃やして、瓦礫の山にしたったん」

提督「それで手錠か。お前にはそこまでする理由があったわけだな?」

龍驤「うん。いろいろ許せんかったんよ。以中佐は、本当に人でなしやった」
430 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:35:44.09 ID:3ZSsUeMvo

提督「以中佐ね……」ペラリ

妙高「あ、それです。その写真が以中佐です」

提督「……なんだこのデブ。CGじゃねえよな?」

妙高「実在の人物です。身長が2メートル20あります」

提督「はぁ!? マジかよ……腹回りも同じくらいあるんじゃねえの」

妙高「N大尉は『ハート様みたいだ』と言ってましたが……何の事だかわかりますか?」

提督「はーと? 悪い、ちょっと意味わかんねえ」クビカシゲ

妙高「そうですか……あとでN大尉に教えて貰います」

提督「で、こいつがやらかしたことってなんだ?」

妙高「平たく言えば、鎮守府の私物化でしょうか。私設警察団を作って、艦娘を……自分のものにしようとしたんです」

提督「自分のものに……?」ペラリ

提督「……」

提督「おい、なんだこれ。妙高、書き間違いじゃねーのか」

提督「朝飯に肉が1キロとか、なんの冗談だ?」

妙高「冗談ではありません。以中佐は、その食事量を艦娘に強要させていたんです」
431 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:37:01.93 ID:3ZSsUeMvo

提督「馬鹿じゃねーのか? 昼も夜も食わせすぎだ、これじゃ艦娘もまともに動けねえだろうが」

妙高「はい。ですが、食べなければ罰せられる規則になっていました」

提督「なんでそんなことさせんだよ……」

妙高「以中佐は、自分と同じことを艦娘にさせようとしていたんだと思います」

提督「だからって食事もか。デブの基準で食事量考えんじゃねーよ……なんでこんなやつが海軍にいやがんだ」ハァ

妙高「実は、以中佐もちょっと特殊な経歴を持っていまして、もともとは格闘家だったそうなんです」

提督「格闘家?」

妙高「はい。それも、生身の人間でありながら、深海棲艦を撃退したという」

提督「はぁ!?」

妙高「陸に上がった駆逐艦を、体当たりで気絶させたそうで……それでそこの住人が助けられたという証言もあったそうです」

妙高「海軍は彼に感謝状を送り、『提督』として働けないかスカウトしたらしいんです」

妙高「彼のような格闘家なら、艦娘にも近接戦闘の心得などを伝授できるんじゃないかという思惑もあったみたいで……」

妙高「彼自身も艦娘に格闘技を教えられるのならと、同じ量の食事を用意しようと考えたんでしょうか」

提督「本当に手当たり次第だな、海軍の連中は……ちったあ考えろよ」

妙高「いえ、最初のうちは戦果もあげていたんです。しかし、以中佐の交友関係や人柄の評判は決して良いものではなく……」

妙高「評価が上がると海軍の特別警察隊を本営に帰し、親しかった犯罪者まがいの人間を集めて私設警察隊を作ったのを皮切りに」

妙高「徐々に艦娘を縛る規則を作り上げ、鎮守府を支配していった、というのが顛末です」
432 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:37:51.02 ID:3ZSsUeMvo

提督「何やってたんだよ本営の連中は……」

龍驤「その辺は仕方ないと思うで。曲がりなりにも、単冠湾にある鎮守府の中じゃあ、一番戦果をあげとったしなあ」

提督「!」

龍驤「残念なことにあいつは口も上手いんよ」

龍驤「特警には、単冠湾も離島やから地元民じゃなきゃ家族と離れて暮らすのはつらいやろ、って、殊勝なこと言って帰らせたんや」

龍驤「それから、私設警察のメンバーに服役中の犯罪者を入れて、以中佐が更生させるっちゅうプランも挙げとった」

龍驤「一石三鳥か四鳥くらいの大風呂敷を広げて、本営をうまいこと丸め込んだんちゃうかな」

妙高「以中佐が普通に強いというのも一因ですね。私設警察に登用した人材の殆どが軽犯罪者で、以中佐に勝てそうな人がいませんでしたし」

龍驤「経費を節約してその分食事に回す言うてたから。じゃなきゃあ、あんな大量の食糧、供給してもらえるわけがないんよ」

提督「……こすいな」

龍驤「それから、たくさん食わせる狙いはほかのところにもあるで」

提督「? そりゃどういう意味だ」

龍驤「あいつはな、艦娘を太らせたかったんよ」

提督「あぁ?」

龍驤「肉をつけさせて、胸の大っきい娘を侍らせたかったんよ。それで、目ぇ付けられたんが、陸奥や」

陸奥「……」ウツムキ
433 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:38:52.04 ID:3ZSsUeMvo

龍驤「陸奥ももともとはこんな内向的な性格やないねん。どっちか言うたら、よってくる男を軽くいなすお姉ちゃんな感じやったんよ」

龍驤「けど、あいつは力尽くで、嫌がる陸奥を無理矢理、遠慮なーくべたべた触りよってな……」

龍驤「その触り方というか纏わりつき方というか、とにかくキモい以外の感想が出てこんかったわ」

提督「それでトラウマになったってか」

陸奥「……」コク

龍驤「ま、そんなとこやな。以中佐が格闘技やっとった言うのも本当みたいで、反抗した艦娘が返り討ちにあったことも何回かあるんや」

龍驤「遣り込められて、見せしめにセクハラまでされて……うちらがだんだんと以中佐に刃向わなくなったのも、その辺が理由やね」

提督「腕も立つのか。そりゃ面倒臭えな」

龍驤「それから、食事の話で言うなら間宮もひどい目に遭っとんねん。毎日、あの量の料理を準備させられてみ?」

提督「まさかあれを一人で作らされたのか……!?」

妙高「そうです。提督准尉、この写真を見てください。以中佐鎮守府の間宮さんです」スッ

提督「……これが間宮だと? 痩せすぎだろ!?」ゾッ

妙高「彼女は今、私がいた鎮守府でリハビリに入ったそうです。治療はなかなか進んでいませんが……」

提督「最悪だな……それで龍驤は鎮守府に火をつけたってか」

龍驤「まあ、そうやけど……本音は、もっと違うとこや」
434 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:39:45.89 ID:3ZSsUeMvo

龍驤「さっき、以中佐が陸奥を狙ったって言うたな? ほんじゃあ逆に、以中佐はうちのことをどう思ってたと思う?」

提督「どう? ……見た目のことを言って悪いが、子供っぽいって言われそうだな」

龍驤「せやね。うちは見ての通り、ちんちくりんのお子様体型や」

龍驤「それを以中佐は……あいつは、うちのことを『まな板』やら『洗濯板』やら言うとったんや」

龍驤「『軽空母』なら言われたことはある! せやけどうちは、あいつにただの一遍も『龍驤』って呼ばれたことがないんや!」

提督「……」

龍驤「そう呼ぶのがあいつだけならええねん。あいつはそれを、ほかの艦娘に強要しとったんよ」

龍驤「それを嫌がると、お仕置き部屋に連れてかれて、以中佐と私設警察とかいうチンピラどもに、酷いことされるんよ……」

龍驤「そんなん繰り返されたら、みんなおかしくなるやんな? うちと距離おくのも、しゃあない……しゃあないねん」

龍讓「そんで、あの日……うちは我慢できひんかった。なんの魅力もないって言われてたようなもんや。だから、全部燃やしたんよ……」

龍讓「毎日毎日、顔を見るたびにねちねちぶちぶち嫌み言われて……何もかも嫌になっとったなあ」

龍讓「まあ、毎日触られてた陸奥に比べれば……」

陸奥「そんなことないわ……龍讓、あなたは他の艦娘たちを庇っていたんでしょ……!?」

龍讓「……」

提督「妙高。その辺はどうなんだ?」

妙高「は、はい、それは事実です。龍讓さんは、他の艦娘が以中佐に迂闊に近寄らないように、鎮守府の中を見回っていたのは本当です」
435 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:40:45.70 ID:3ZSsUeMvo

提督「そうか。で、そのくそったれの以中佐はちゃんとぶっ殺してきたのか?」

龍驤「ちょっ、そんなことできるわけないやんか!」ギョッ

提督「なんだ、殺ってこなかったのか」

龍驤「いや、確かに殺ってやりたいのはやまやまやけど! あかんて!」

陸奥「……」ポカーン

提督「おい妙高、お前らが潜入捜査に行ったって言ってたけど、N大尉は何してたんだ?」

提督「折角なんだから、こいつらに代わって以中佐の息の根止めてやりゃあ良かったじゃねえか」

龍驤「言うことがいちいち物騒やなキミィ!!」

妙高「提督准尉はこういう方なんです」アハハ…

龍驤「いや、苦笑いで誤魔化したらあかんやろ……」

妙高「それで、N大尉ですが、実は以中佐の鎮守府滞在3日目で音を上げまして……」

提督「短けえな! それで捜査になったのかよ!」

妙高「残念ながら十分でしたよ。陸奥さんへの過剰なセクハラや龍驤さんへの執拗な罵倒、食糧の浪費に間宮さんへの過剰労働……」

妙高「そして、私設警察の横暴と、それによる艦娘への……とにかく、不愉快な3日間でした」

妙高「その生活を長きにわたって強いられていた龍驤さんたちの心情は、筆舌に尽くすことができないものだと思います」
436 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:41:46.85 ID:3ZSsUeMvo

龍驤「まあ、そのうちらの扱いに異を唱えてくれたんがN大尉やったんや」

龍驤「恰好良かったで。大見得切って啖呵切って、うちらをかばってくれて」

龍驤「その直後に以中佐に体当たり貰って伸されてたんは、まあ、しゃあないわな」

龍驤「でも、それがきっかけでうちは腹を決めたんや。うちらの味方になってくれる海軍の人間がおるんなら、うちらは間違ってない」

龍驤「間違ってるのは、以中佐や、て」

提督「……で、それからどうなったんだ?」

妙高「龍驤さんが艦載機を放って、執務室内を爆撃しました。それを機に、ほかの艦娘が次々と加勢して、瞬く間に本館が炎上……」

妙高「私は負傷したN大尉を背負って建物を脱出したので、それ以後は館内の避難誘導を行っていました」

妙高「所属の艦娘は全員保護。私設警察は一部を捕縛しましたが、取り逃した者たちは散り散りになって海へ逃亡しました」

龍驤「海へ逃げた連中は助からんやろうね。なんでかんで深海棲艦が多数潜んでる海域やし、今頃はあいつらの餌になっとんちゃうか」

提督「以中佐はどうしたんだ」

龍驤「うちらが逃げる直前に陸奥に抱き着いて助けを請うてたけど、陸奥がびっくりして第三砲塔が過熱してなあ」

龍驤「艤装が炸裂して、以中佐は火だるまになって吹き飛んで、そのまま海へどぼーん、や! ざまあないで、まったく!」クックック

陸奥「……」ムスッ
437 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:43:46.81 ID:3ZSsUeMvo

龍驤「陸奥は笑いごとやなかったけど、うちらは見ててすっきりしたわ」

龍驤「でもまあ、以中佐のとどめは刺されへんかったし、あいつどさくさに紛れて逃げよったから、その辺は悔いが残るけど……」

龍驤「とにかく、うちがこの騒動を引き起こした。そう本営に伝えて、解体処分してちゃんちゃんにしてもらうつもりやったんよ」

妙高「ですが、龍驤さんは今回の事件の被害者のひとりですし、彼女の反抗がなければ他の艦娘の未来もありませんでした」

妙高「龍驤さんの助命の嘆願が集まったこと、N大尉が以中佐鎮守府の実態を証言したことで、龍驤さんは異動ということになったんです」

龍驤「限りなく追放に近い形やと思うけどな?」

妙高「それから陸奥さんは、以中佐に直接危害を加えたということで、龍讓さんと同じ扱いという形になってしまいましたが……」

龍驤「ま、余所の鎮守府に行っても働けないんちゃうかな。陸奥のトラウマも相当なもんやで」

陸奥「……」ウツムキ

龍驤「んで、うちらはこれから、どんな罰を受けることになるん?」

 コンコン

提督「ん?」

朧「朧です。お飲み物をお持ちしました」

提督「ああ、入ってくれ」

朧「失礼します」チャッ
438 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:44:40.65 ID:3ZSsUeMvo

妙高「朧さん! お久しぶりです」ニコッ

朧「お久しぶりです!」ニコッ

提督「妙高、二人の手錠を外してやってくれ、手錠したまま飲み物ってわけにはいかねえだろ」

妙高「! 承知しました、そのように致しましょう」スクッ

龍驤「はぁ!? ええんか!?」

陸奥「!?」

提督「別にいいだろ。何か不服か?」

龍驤「いや、普通こんなあっさり手錠外すとか……なあ?」カチャカチャ

陸奥「……」コク

提督「いいっつってんだろが、しつけえな。俺はお前らのやったことが悪いなんて思っちゃいねえよ」

陸奥「……!」

龍驤「……ほんまかいな」アッケ

妙高「提督准尉は無罪を主張するということですね?」ニコ

提督「以中佐は張っ倒されて当然だろ。ざまあねえやってのが俺の感想だ。悪いか?」

龍驤「いやいや全然! 悪いどころか、そこまで言ってもらえてすっごい嬉しいよ? なあ?」

陸奥「ええ」コク
439 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:45:35.41 ID:3ZSsUeMvo

妙高「提督准尉、手錠を外し終わりました」チャラッ

提督「ん。まあ、飲み物でも飲んで一息入れてくれ。とりあえずここがどんなところか、説明するからよ」

朧「話が終わったら呼んでください。片付けますから」

提督「朧も気が利くな、わざわざ悪いな」

朧「いえ、古鷹さんに言われて持って来ただけですから……」ニコ

妙高「朧さん、元気そうでなによりです。鳳翔さんも気にかけておられましたよ」

朧「本当ですか!? ありがとうございます!」

龍驤「なんや、随分仲がええなあ。もしかして、妙高と古い知り合いなん?」

朧「え? ええ、まあ」

龍驤「なら、N大尉のことも知っとるんか?」

朧「……」

妙高「……」

龍驤「な、なんや、二人してビミョーそうな顔して……」

提督「そういや妙高、N大尉はどうしてる」

妙高「は、はい、今は入院しています。最低1か月は安静にしておくべきだと……」
440 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:46:30.64 ID:3ZSsUeMvo

朧「……あの人が、何かしたんですか」

提督「早い話が、迫害されてたこの二人を助けようとして大怪我したんだと」

朧「……そうですか」

龍驤「いや、そうですか〜って、ちょっと冷たいんちゃう!? N大尉は体を張ってうちらを助けようとしてくれたんよ!?」

朧「……そんなの、今更ですよ」クルッ

朧「失礼します」

 パタン

龍驤「な、なんやあれ……今更て、なんかあったんか」

提督「まあな。朧の話は後だ、お前らこそN大尉のことをどう思ってんだ?」

龍驤「え? ええっとなあ……最初は、以中佐がスケジュール管理が得意な人材を取った、とかいう触れこみでな?」

龍驤「うちらはてっきり、時間の鬼みたいなやつが来るんかーって、絶望しとったんよ」

龍驤「でも、来てみたらまあなんというか、えらい神妙にした感じの普通の男の人やったから、拍子抜けやったっけな」

提督「……それから?」

龍驤「で、鎮守府を案内したら、うちらのやることにやたらと驚くし、以中佐のやることに眉をひそめてたし」

龍驤「もしかして、以中佐の息がかかっとらん、完全に外部の人か、と思って声をかけたのが2日目の夜やな」

龍驤「そんで、N大尉にうちらがもう限界や! 助けて、なんとかしてー! って直談判して、3日目の昼にN大尉が以中佐へ具申したんや」
441 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:47:27.35 ID:3ZSsUeMvo

龍驤「最初は静かな話し合いやったんやけど、話していくうち以中佐の語気もだんだん荒ぶってきてなあ」

龍驤「それでも一歩も退かずに以中佐に物申してくれたんや。最初は頼りない印象やったけど、あれで見直したんよ!」

提督「今の話、本当か?」

妙高「はい。まさかその返事を暴力で返されるとは思ってもいませんでしたが」

龍驤「で、あいつはN大尉だけじゃなく妙高も始末しようとしたん。それでもう、うちもやる気になって、腹を括ったわけよ」

妙高「その龍驤さんの発艦に呼応して、空母の皆さんが爆撃支援を始めて、結果的に艦娘全体の反乱になったわけです」

龍驤「みんな不満がたまってたからねえ。私設警察の連中以外は、みんな協力して避難してくれたから、人的被害は少なかったんや」

妙高「龍驤さんと陸奥さんだけは、少しやけどをしてしまいましたけどね」

陸奥「……私はいいわ。慣れてるから……でも、龍驤は……」

龍驤「うちもええんや。誰かがやらんと、みんな壊れたん。たまたまうちが引き金引いただけや」

提督「よく本営の連中に信じてもらえたな、今の話」

妙高「以中佐の鎮守府の様子は、私がすべて小型カメラで映像に残しましたから」

提督「そうか、潜入捜査だったな」

妙高「はい」
442 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:48:20.53 ID:3ZSsUeMvo

陸奥「……ねえ、潜入捜査ってどういうこと……? どうしてN大尉が私たちの鎮守府に来たの……?」

妙高「海軍本営は、以中佐鎮守府の成績が異様に良いことを気にしていました」

妙高「本営からの人材なしに、ここまで戦果を挙げられる理由は何か? と……」

提督「妬み嫉み成分が多そうだな?」

妙高「……丁度そのときに、N大尉は身柄を勾留されていたんです。ある事件の容疑者として」

龍驤「容疑者て、なにをやったん……?」

妙高「……それは……」

提督「艦娘管理ツールっつうか、洗脳装置みたいなもんだな。それをN大尉が使ってた」

龍驤「洗脳装置ぃ!?」

陸奥「嘘でしょ……!?」

提督「嘘じゃねえよ。現にこの鎮守府に、そのツールが原因の過労で漂着した艦娘がいる」

龍驤「なんでN大尉がそんなもんを……」

提督「深海棲艦を効率的に邀撃するためだ。やつらのせいで故郷の漁村が過疎で廃村寸前なんだとよ。だから形振り構わずツールに手を出した」

提督「事情はどうあれ、本営はそのツールの使用を禁じた。N大尉は、それで身柄を本営に移されたんだ」
443 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:49:22.26 ID:3ZSsUeMvo

妙高「その後、本営では不正行為を行ったN大尉の処分をどうするかと言う話になりました」

妙高「そんな折に、以中佐鎮守府から人員補充の依頼が来たんです。それも、N大尉を名指しで」

提督「そんなことできんのかよ」

妙高「これはよくあるお話ですよ。降格した『提督』の能力を求めて、あちこちからスカウトされるんです」

妙高「話が前後しますが、その艦娘管理ツールを使って一番戦果を挙げていたのは実はN大尉なんです」

妙高「あのツールは、使用者がきちんとスケジューリングしないと、使ってもあまり効果が得られません」

妙高「もともと綿密なスケジュールを作って執務をこなしていたN大尉だからこそ、ツールを使った戦果が顕著だったとも言えます」

提督「……以中佐は、N大尉の能力を見抜いてたってことか?」

妙高「見抜いたかはわかりませんが、以中佐が艦娘のスケジュール管理を行おうとしていたのは事実です」

妙高「以中佐の鎮守府には、私設警察という犯罪者の更生が建前の組織もありますし……」

妙高「N大尉をそこに編入させて、スケジュール管理を担当させるつもりだったのではないかと」

提督「……もっとストレートに、以中佐の狙いがツールそのものだとしても、おかしくはねえな」

提督「ツールを使って洗脳しちまえば、龍驤でも陸奥でもおとなしく言うことを聞くようになる」

提督「たとえ直接手に入れられなくても、実物を知ってるN大尉から、どこから手に入れたか情報を得られれば無駄じゃあない」

提督「本営相手にN大尉は捕まったんだ。以中佐はN大尉を『同族』と見たのかもな?」

妙高「かもしれません」ウツムキ
444 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:50:36.08 ID:3ZSsUeMvo

龍驤「ちゅうことは、朧はそのツールの被害者なんか?」

提督「いいや、その件の被害者はまた別だ。朧はN大尉に捨て艦にされたんだ」

龍驤「はあ!?」

陸奥「沈んだの……!?」

妙高「……」ウツムキ

提督「ああ、N大尉がツールを使うよりずっと前にな。理由は同じだ」

提督「朧がいい顔しなかったのはそういうことさ。言ってたろ? 今更だって」

陸奥「……」

龍驤「……なら、あんたは」

提督「ん?」

龍驤「あんたはどうなんや。あんたは何をしてここに来たんや」

提督「俺か? 上司に嫌われたんだよ。妖精と話ができると都合が悪いらしい」

龍驤「そんだけなん……!?」

提督「別にいいさ、人間なんか俺含めてどいつもこいつも碌なもんじゃねえし、俺も人間の役に立とうなんて気はねえ」

提督「うちの連中には好きなことをさせてやれるなら、それでいい」
445 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:52:28.07 ID:3ZSsUeMvo

龍驤「……さよか。誰が善人で誰が悪人かなんて、案外わからんもんやな」

提督「N大尉は悪人じゃあねえが、方法を間違って咎められた人間だ」

提督「以中佐みたいに私利私欲にまみれた根っからの悪党じゃねえよ。なあ、妙高?」

妙高「……はい」コクッ

提督「で、そういう愚直なやつほど、他人に利用されやすいもんさ」

提督「あのツールを使うことになったのも、誰かに便利だから試してみろとか唆されたからじゃねえのかね。何のリスクも説明されずに」

提督「ま、N大尉のやったことを好意的に捉えれば、の話だがな」

龍驤「……」

提督「ところで……陸奥。お前、そんなに俺が怖いのか?」

陸奥「!」ビクッ

龍驤「当たり前やんか。向こうでどんな目に遭わされたか……」

提督「その話はいいや、どうせ俺が聞いてもしょうがねえ」

龍驤「おい!?」

提督「そうだろうが。俺がその辺の話を聞いて、薄っぺらい同情の台詞吐いたら何もかも解決するわけじゃあねえだろ」

龍驤「言い方っちゅうもんがあるやろが! 言い方っちゅうもんが!!」

陸奥「……」ビクビク

妙高「……」ハァ
446 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/05(火) 23:53:10.04 ID:3ZSsUeMvo
今回はここまで。

というわけで、今回は龍讓と陸奥のお話になります。
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/06(水) 18:22:51.28 ID:mSiV7YLbO
へい
448 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:02:17.69 ID:7M0DvzEGo
続きです。
449 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:04:06.13 ID:7M0DvzEGo

 * 非常口→中庭 *

龍驤「轟沈した艦娘が集まる島、ねえ」

提督「6割……いや、7割がそんなところか。あとは余所から逃げてきたやつや、追い出されたやつばかりだ」

提督「知らないか? 轟沈した艦娘をそのままにしてると深海棲艦になるから危険だって話」

龍驤「うちらは知らんかったわ……そんで憲兵も特警もおらんのかいな」

提督「ああ。人間も男も俺しかいねえ。俺さえ陸奥に関わらなきゃ、陸奥のリハビリにはちょうどいいんじゃねーの?」

陸奥「そ、そうね……」キョロキョロ

妙高「大丈夫ですよ陸奥さん、本当にこの島には提督准尉以外の人間がいませんから」

陸奥「わ、わかってるけど……」

提督「こりゃトラウマも相当なもんだな」

龍驤「まあねぇ……で、ほんまにここに長門がおるんか?」

提督「ああ、最近は戦艦ばっかり増えててな。長門はその中でも一番最初に来た戦艦だ」

龍驤「普通逆やろ……!?」

提督「本当だって。戦艦で言うと、長門が来て、次が比叡で……次が大和か」

龍驤「嘘や!!」

提督「だからうちは普通じゃねえんだよ……」

龍驤「せやかて信じられへんしなあ……大和、うちにもおらんかったし」
450 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:05:01.49 ID:7M0DvzEGo

妙高「ところで提督准尉、どうしてこんなところを通って行くんですか?」

提督「こっちに厨房の勝手口がある。今日は長門が飯を作ってるからな」

龍驤「は? なんで長門が!?」

妙高「間宮さんもいないんです、この鎮守府は」

提督「厨房もこの鎮守府の艦娘で回り番だ」

龍驤「……」

提督「ここだ。長門、ちょっといいか」ゴンゴン

提督「……」

 扉<ガチャ

長門(エプロン着用)「なんだ、まだ仕込みの最中……ん?」

提督「よう。ちょっと付き合ってくれるか」

長門「陸奥……!」

陸奥「長門……っ!」ウルッ

陸奥「長門おっ!!」ダキツキ

長門「うお!? む、陸奥! どうしたんだ!? 提督、これはいったい……!」

提督「まあ、察してくれ。陸奥も龍驤も、さっき余所の鎮守府から来たばかりでな」

長門「……!」
451 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:06:24.47 ID:7M0DvzEGo

 * 中庭(厨房裏) *

長門「そうか、あのN中佐が……」

妙高「結果的にですが、このお二人が以中佐鎮守府焼失の罪をかぶる形で、ここへ異動することになったんです」

長門「大変だったんだな。だが安心すると良い、この鎮守府ならセクハラなんて絶対起き得ないからな」ニッ

龍驤「そこまで言えるんか……」

長門「ああ、この提督が筋金入りのカタブツだからな。誰がベッドに潜り込んでも絶対に手を出さないほどだ」

龍驤「ただのヘタレやん!」

提督「……」

龍驤「それともアレか、ホモなんか!」

提督「……」

龍驤「……ツッコミはどないしたん。反論しいや」

提督「いちいち反応すんの面倒臭え」

龍驤「コミュ障かい!」

妙高「いえ、本当に面倒臭いんです、提督准尉は……」

龍驤「どんだけ人間関係捨ててんねん……」
452 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:07:18.11 ID:7M0DvzEGo

長門「いや、提督は口こそアレだが面倒見はいいと思うぞ? 冗談や軽口には滅多に乗ってくれないだけだ」

龍驤「マジか……」

長門「そもそも彼がいなければ、この鎮守府も鎮守府として存在していなかっただろう」

龍驤「なんやそれ……」

提督「まあ、それはそれとしてだ。長門は陸奥に抱き着かれっぱなしで大丈夫なのか?」

陸奥「……」ギュゥ

長門「この陸奥がここまでとなると、ちょっと厳しいな。しばらくは私の部屋で休ませてやったほうが良さそうだ」

提督「出撃はどうする、控えたほうが良さそうか」

長門「そうだな……だが、ここ最近で戦艦も増えた。戦力としてはそこまで悲観することはないだろう?」

提督「人数はな。練度で言うならお前が抜ける穴はでかいぞ?」

長門「ならば、龍驤に代わりをお願いしたいがどうだろうか」

龍驤「うちが?」

長門「この鎮守府初の航空母艦だ。空母が入った編成は、この鎮守府では初めてだろう?」

提督「そういう話なら頼みたいところだが、今、陸奥をフォローできるのは長門と龍驤だけだからな」
453 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:07:58.50 ID:7M0DvzEGo

提督「できればもう一人くらいサポートできる奴がいてほしいところだが……」

 <ナガトサーーン!

長門「潮!」

長門から離れる陸奥「!」ビクッ

 タッタッタッ

潮(エプロン装備)「あ、あの、今日の分、下拵えまで終わりましたから、もう、厨房は大丈夫、です……!」

長門「終わったのか? 全部任せてしまってすまないな」

潮「ふ、古鷹さんにも、手伝ってもらいましたから……!」

龍驤「……」ジトォ

潮「……ひっ!?」ビクゥ

提督「おい、何してんだ龍驤」

龍驤「ん……!? あ、ごめん……今、うち変な顔しとったん?」

潮「あ、あの、提督さん……!?」プルプル

提督「……どいつもこいつも、いろいろ抱え過ぎだ」ハァ

長門「貴様が言うか」

妙高「……」
454 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:09:31.91 ID:7M0DvzEGo

 * 執務室 *

提督「どうすっかな……」

大淀「今度はなんですか?」

提督「陸奥もそうだが、龍驤もそれなりに傷がでけえな」

大淀「と仰いますと?」

提督「龍驤に胸の話は禁句だってところだよ。妙高もさっき見てたろ?」

妙高「はい」

提督「さっき陸奥を長門に会わせたときに、厨房で仕込みを手伝ってた潮が走って来たんだが、龍驤がすげえ目をして潮を睨んでたんだよ」

提督「多分だが、背が高くなくて胸がある艦娘を龍驤の傍に置いとくと、あいつも気に病みそうだ」

大淀「……離してあげたほうが良いと?」

提督「ああ。ただ、陸奥は俺が関わりに行かなきゃいいだけだが、龍驤の場合はそうもいかねえ」

提督「こんな時に限って、駆逐艦の半数が長期遠征ときたもんだ。確か、小柄なやつが選ばれてなかったか?」

大淀「はい、ええと……朝潮さん、霞さん、朝雲さん、暁さん、電さん、五月雨さんですね」

提督「タイミングが良くねえんだよな。周りがでかい奴ばかりじゃ、龍驤も気が休まる場所がなくねえか?」

大淀「そうは仰いますが、そこまで神経質にならなくても……」
455 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:10:51.37 ID:7M0DvzEGo

提督「ちょっと神経質くらいのほうがいいぜ? 俺、正直に言うと大和が苦手なんだよ」

妙高「それは……どうしてですか?」

提督「俺よりでけえ、っつうのがな……劣等感を煽られるっつうか、コンプレックスを刺激されるというか」

提督「本人に悪気はなくても、当人は勝手に気にしちまうもんなんだ。多分、龍驤もそうだ」

提督「俺が空母かって訊き返したときも過剰反応してたし、他人より小さい分だけ余計に気になっちまうんじゃないか?」

提督「ガタイのいい長門なら諦めもつくだろうが、潮みたいな例外を見るとやっぱり、なあ?」

大淀「……あるかもしれませんね」

提督「俺は男だから、女の龍讓の気持ちはそこまでわからないが、むしろあいつの方が過敏になってるよな」

提督「そういう意味じゃあ、はっちゃんあたりも会わせたらまずいよなあ……」

 ドタドタドタ

提督「……おい、もしかしてもうそうなったか?」アタマカカエ

大淀「そんなまさか……」

妙高「そうですよ、いくらなんでも、こんなに早く……」
456 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:12:08.01 ID:7M0DvzEGo

 ガチャバーン!

伊8「たいへん! 大変です!!」

提督「……どうしたよ」ハァ

伊8「龍驤さんが、初雪ちゃんと揉み合って、それから、すごい顔して出て行っちゃったんです!」

提督「そうかよ……どうしてこうなるかねえ……」ガックリ

大淀「……」

妙高「……」

提督「大淀。旗艦敷波、以下神通、那珂、利根で第3艦隊編成、電探と偵察機積んで龍驤の捜索に当たってくれ」

大淀「は、はい!」

提督「俺は初雪のところに行ってくる。はっちゃん案内しろ」

伊8「こっちです!」タッ

大淀「……あ、もしもし明石? 今そちらに利根さんはいますか?」

妙高「この鎮守府も大変なんですね……」
457 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:13:12.15 ID:7M0DvzEGo

 * ビニールハウス *

畑の真ん中で蹲っている初雪「……うう」

伊8「こっちです!」ザッ

提督「初雪!」ザッ

初雪「!」ビクッ

提督「初雪、大丈夫か!?」

初雪「来ないで……っ!!」

提督「!? 来るな……って、あの白い帯はなんだ? 包帯か? 怪我してたのか?」

伊8「さらしです。あれで胸を隠してたみたいなんです」

初雪「来ないで……見ない、で……!!」グスッ

提督「……わかった。だが、見るなってのはなんでだ?」

初雪「……」

提督「……」

初雪「だって……私、普通じゃ、ないし」

初雪「私は、普通で、いい……こんな、の、別に、欲しかったわけじゃないし」

初雪「胸が、大きいからって、みんなと違う目で、見られるの、嫌、だったし」グスッ

初雪「目立ちたくないのに、隠したら、隠したで……いろいろ、言われるし……!」ポロポロ

初雪「ひそひそ、言われるのは、いや……!!」

提督「……」
458 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:14:04.66 ID:7M0DvzEGo

 * 寮 廊下 *

提督の上着を羽織った初雪「……」

提督「……」キョロキョロ

伊8「……」サッサッ(←『来てもOK』のハンドサイン)

提督「……」タタタッ

初雪「……」コソコソッ

伊8「……あのときと逆ですね」

提督「そういやそうだな」

初雪「……誰も、いない?」

提督「ああ、いまのうちだ」タッ

 ガチャ パタン

伊8「ふう」

提督「遠征や演習で出払ってるやつが多くて助かったな」

初雪「……あ、あの……あ、りがと……ございます」ポ

提督「おう」ゴソゴソ
459 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:14:54.32 ID:7M0DvzEGo

伊8「提督、なにしてるんですか」

提督「ドアに明石の隠しマイク仕込まれてないか確認してる」

初雪「!?」

伊8「さすがにそれはないと思います……」

提督「ま、仕込む理由がないから大丈夫だと思うが一応な」

初雪「……」

提督「とりあえず、初雪が胸をさらしで隠してたのは、変な目で見られたくなかったって認識でいいんだな?」

初雪「……はい」コク

伊8「別に隠さなくてもいいと思うんだけど」

提督「本人が言いたくないって言ってんだから、そうしようぜ。目立ちたくない、放っておいて欲しい、って気持ちは俺も少しわかる」

提督「だから俺はこのことは他言しねえ。はっちゃんも内緒にできるか?」

伊8「ん……わかりました。誰にも言いません」

初雪「……!」

提督「よし、残る問題は龍驤だな。わざわざさらしを巻いて胸を隠してた初雪にまで突っかかるあたり、重症だ」

伊8「龍驤さん、あのまま沖に出て行っちゃったんです。とにかく連れ戻さないとどうにもできません」
460 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:16:10.30 ID:7M0DvzEGo

提督「ったく、どうしたもんかね……あ」

伊8「どうしました?」

提督「お前、さっき龍驤と初雪が揉めてた、って報告してたよな? 理由を聞かれたらやばくねえか?」

初雪「……!!」サーッ

伊8「うーん……それなら、はっちゃんが突き飛ばされたことにしましょう?」

提督「なに?」

伊8「というか、はっちゃんも龍驤さんに突き飛ばされたんです。揉み合いを止めようとしたせいで」

伊8「なので、はっちゃんが龍驤さんに突き飛ばされたところを、初雪ちゃんが注意したら揉み合いになった、ってことにすればいいと思います」

提督「……悪くねえな。初雪もそれでいいか?」

初雪「は、はい」

提督「ところで野暮なことを聞くが、N中佐も初雪の胸のことは見抜いてたのか?」

初雪「それは、わかんない、です……噂されるのが嫌で、ずっと部屋に引き籠ってたから、呼び出されたと思うんだけど……多分」

提督「そうか……そうだな。むしろ知ってたらさらしを解くように命令してたかもしれねえな、あのイヤホンで」

初雪「え……それって」

提督「あいつ、胸のでかい艦娘が好みらしい」

初雪「」
461 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:17:06.13 ID:7M0DvzEGo

提督「今なら、その胸とさらしのおかげでお前がここに漂着した、って推測できるな」

伊8「どうしてですか?」

提督「胸を隠すように巻いてたら、その分圧迫されて苦しいだろ。他の艦娘より疲れるのが早いはずだ」

初雪「……」

提督「偶然が重なったとはいえ、お前が倒れてここに来たのも、ちゃんと理由があったってことだな」

提督「畑仕事も重労働だ、頑張ってくれるのはありがたいが、ちゃんと休んでおけよ?」

初雪「……はい……」コク

提督「で、はっちゃんは怪我とかしてないのか?」

伊8「ああそうだ。はっちゃん、突き飛ばされたときに尻餅ついちゃったんですけど」フリムキ

伊8「おしりに痣ができていないか、見てください」ミズギグイッ

初雪「!?!?」カオマッカ

提督「……いや、特に青くも赤くもなってねえな」

伊8「んん、そうですか。Danke」ゴソゴソ

提督「触って痛みがあるなら、すぐ工廠へ行けよ?」

伊8「はい、わかりました」
462 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:17:59.47 ID:7M0DvzEGo

提督「じゃあ、俺は執務室へ戻る。初雪、上着返してもらっていいか」

初雪「! ……!」コクコク

提督「よし、じゃあ、落ち着いたら適当に持ち場に戻ってくれ」ガチャ

 パタン

伊8「……」

初雪「……ね、ねえ」カオマッカ

伊8「はい?」

初雪「し、司令官に、おしり、見せてたけど……大胆すぎる、と、思う……」

伊8「提督は、性行為にトラウマがあるみたいなの。無意識に考えないようにしてるっていうか、遮断してるっていうか」

伊8「多分、おっぱい見せても、絶対手を出してくれないよ? だから、提督にはばれても変なことにはならないから、きっと大丈夫」

初雪「……そ、そうなの?」

伊8「うん。裸で迫っても、提督の魚雷は全然反応してくれなかったし」

初雪「ぎょ……!?」ボフッ

伊8「あ、今の話は内緒ね?」

初雪「……」コクコク

伊8「あと……この島に流れてくる艦娘の遺体をたくさん見てることも、影響してるかもしれない」

初雪「……!」

伊8「提督が、ちょっとでも間違ってはっちゃんに手を出してくれれば、その拍子でトラウマも直せると思ったのに」

初雪「……わ、私の部屋で、そういうことしないで……」ミミマデマッカ

伊8「オウ……ごめんなさい」
463 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:18:50.18 ID:7M0DvzEGo

 * 一方その頃 太平洋上 某所 *

龍驤「……」

龍驤「……」

龍驤「……あかん」

龍驤「ここ……どこ?」ゴーーーン

龍驤「うそやん……うち、自分で自分の居場所見失うくらいまで思い詰めとったんか」

龍驤「ああもう、なにやっとんねん! 早く戻らんと……」

 ズズズ…

龍驤「……な、なんか、聞こえたかな」

 ズゴゴゴゴ゙…

龍驤「……え、えらい近くで、い、嫌な気配がするなあ……?」

 「アラァ、嫌ダナンテ……」

龍驤「……」フリムキ

戦艦棲姫「ゴ挨拶ネェ……!!」

龍驤「ーーーーー!!」パクパク
464 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:19:48.08 ID:7M0DvzEGo

戦艦棲姫「コンナトコロニ、独リデ来ルナンテ……道ニ迷ッタノカシラ?」

龍驤「せ、戦艦棲姫……な、なんでこんなところに……!」

戦艦棲姫「ナンデ? ウフフ、ヤッテ来タノハ貴女デショウ? 折角ダカラ、ユックリ寛イデイクトイイワァ……!」ニィッ

龍驤「は、ははは……で、できれば遠慮させてもらおかな……!」ジリッ

戦艦棲姫「遠慮ナンカシナイデ……ココデ、海ノ底ニ……」ガシャン ガシャン

龍驤「……っ!」クルッ ザァッ!

戦艦棲姫「沈ンデ、逝キナサァイ……!!」ガシャン!

 ドガガガァン!

龍驤「ひいいいいい!!」ザザザァッ!

龍驤「あかん! めっちゃあかん! こんなとこ、うち一人でなんとかなるわけないやん!!」

龍驤「まともな艦載機も積んでないのに、戦闘なんかできるわけないて!」

 ドガガガァン!

龍驤「ひいいいい! またきたあああ!」

 バシャバシャー

龍驤「危な! めっちゃあっぶなあ!! ちょっちかすったでええ!!」

龍驤「けど……もうちょいや、もうちょい距離が開けば……!」チラッ

龍驤「……うん、このくらいの間合いなら……よっし、逃げるで!!」ザァァァッ
465 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:20:41.18 ID:7M0DvzEGo

 *

龍驤「……ひぃ、へぇ、はぁ、ふぅ……」ゼーゼー

龍驤「こ、ここまでくれば大丈夫やろ……」

 ゴン

龍驤「おわっ!?」バシャーン

龍驤「な、なんや!? なんに蹴躓いたんや! 流木かなんかか!?」

骸骨?「」プカ

龍驤「ひわぁぁぁあああ!?」ビクウウウウ!

龍驤「ほっ、ほ、ほ、骨やあああ!?」

骸骨?「……」

龍驤「え、なに!? なんなん!? い、生きとるんか、この骨!?」

骸骨?「……す……」

龍驤「うん……?」

骸骨?「た……す……」

骸骨?「……け……て」
466 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:23:20.55 ID:7M0DvzEGo

龍驤「も、もしかして、生きてるん?」

骸骨?「生き……て……る……」

龍驤「もう、骨と皮みたいなもんやないか……ずっと海を漂っておったんか!?」

骸骨?「……そ、う……」

龍驤(こんな餓死寸前の子、初めてや。向こうの鎮守府じゃあ、食べたくなくても食べさせられたくらいなのに)

龍驤(やっぱり、どこかで世の中は繋がっとるんや。向こうの歪みが、こっちにしわ寄せてきとるんや……!)

龍驤「こんなん可哀想すぎるやんか……しっかりしいや!」

骸骨?「……」

龍驤「あ、あかん! 寝たらあかんて! うちが鎮守府まで連れて行くから、しっかりしい!」ヨイショ

龍驤「って、軽! 予想はしとったけど、軽すぎや!」

龍驤「うん、これならそんなにスピード落とさへんでも行けるわ! ええか、飛ばすでぇ!!」ザァァァッ!

骸骨?「……」

龍讓(この子は、死なせちゃあかん……絶対に、うちが助けるんや……!!)
467 : ◆EyREdFoqVQ :2019/03/09(土) 11:24:25.70 ID:7M0DvzEGo
今回はここまで。
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 15:26:46.96 ID:b8O1RKoeO
更新乙です雲龍登場だぁ!
ここまで食ってないといきなり良いもの食わせると
ショック死するな、看病大変だろうなぁ
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 18:53:13.98 ID:RNnJ3kMno
乙乙。おっぱい!おっぱい!…提督も大変だな…(遠い目
470 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:06:11.43 ID:R/s+Uw8ko
続きです。
471 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:07:30.18 ID:R/s+Uw8ko

 * 墓場島鎮守府 執務室 *

龍驤「迷惑かけて、ほんまに、すいませんでした」ドゲザ

提督「……いいけどよ、別に。被害もねえわけだし」

敷波「司令官、本当に大丈夫なの? 戦艦棲姫と出会って逃げてきたとかさあ、あたしたちにとっちゃ未知の相手だよ?」

提督「見つかったとはいえ、一発も当てずに逃げてきただけだから、向こうも躍起になってこっちを探すようなことはないだろ」

敷波「だといいけど……」

神通「追いかけてくる可能性は極めて低いと思います」

敷波「そうなの?」

神通「戦艦棲姫のような大物は、本営が発表する大規模作戦時に姿を現します」

神通「逆に言えば、特定の時期、特定の海域にのみ出現しますから、余程のことがない限りその海域から出てくることはありません」

敷波「そっか、良かったぁ……」

提督「龍驤は、たまたまその特別な時期の海域に迷い込んで、戦艦なんとかと鉢合わせた、ってことか」

敷波「ついてなかったんだねー……」
472 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:08:18.07 ID:R/s+Uw8ko

神通「私は運が良かったと思いますよ。あの戦艦棲姫から逃げおおせたんですから」

那珂「提督さーーん!」キラキラキラ クルクルクル スターーン!

提督「報告にエフェクトとターンとポージングは要らん」

那珂「そんなぁ!? 最重要項目ですよ!?」

神通「なにがあったんですか?」

那珂「龍驤ちゃんが連れてきた艦娘、誰だかわかったの! 空母の雲龍さんだよ!」

提督「雲龍?」

那珂「うん! ただ、修復剤の効きが悪いみたいで、まだ目を覚まさないの!」

提督「まあ、あの姿じゃ無理もねえな。龍驤、いつまでも土下座してねえで、雲龍の様子でも見に行ってこい」

龍驤「え、ええのん?」

提督「雲龍を助けてきたのはお前だ。お前が看に行かないで誰が行くってんだ」
473 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:09:19.78 ID:R/s+Uw8ko

 * 工廠 入渠ドックの外 *

明石「龍驤さんとの遭遇がもう少し遅かったら、手遅れでしたね」

提督「なんでこんなことになったんだ?」

明石「雲龍さんなどの一部の艦娘は、特定海域でしか邂逅できないんです」

提督「特定海域? 神通が言ってた特別な海域のことか」

明石「はい。深海棲艦の群れが大きくなると、鬼級や姫級と呼ばれる強力な深海棲艦が発生しやすくなります」

明石「鬼級や姫級は世界にとって大きな脅威となりますので、本営はこれを掃討するために大規模作戦の開始を発令するわけです」

明石「しかし同時に、そういう大物のいる海域は、特別な艦娘が生まれやすい環境でもあるんです」

提督「雲龍はそういう特別な条件下の海域でしか出てこない艦娘だということか」

明石「はい。深海棲艦の存在によって海域の『なにか』が変わって、その海でのみ特殊な艦娘が生まれるというのが、私が信じてる説です」

明石「今回は、その深海棲艦の群れがたまたま近くの海域を移動中で……」

明石「たまたまそこに迷い込んだ龍驤さんが、その中にいた雲龍さんをたまたま発見し、救助できたんだと思います」

明石「前回の大規模作戦が半月ほど前ですから、おそらくその時期に発生した群れの生き残りなんでしょう」

提督「雲龍もそのくらいに生まれたってことか」

明石「だと思います。で、その作戦時に誰にも見つけてもらえなかったと」

提督「そうなったら、そのまま死ぬのか?」

明石「そうなるでしょうね」

提督「……理不尽なもんだ」

明石「そこは割り切るしかありませんよ。戦争ですもの」
474 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:10:15.62 ID:R/s+Uw8ko

 * ドック内 *

 (風呂のような水槽に痩せこけた骸骨?→雲龍が浮かんでいる)

龍驤「まだまだ骨みたいやなあ……」

利根「うむ。明石が言うには、もうしばらくは修復剤に浸しておかねばならんそうだ」

雲龍「……」

利根「もう少ししたら修復剤に栄養剤やら肌の保湿剤やらを混ぜてゆっくり体に浸透させて、それから食事の練習じゃな」

利根「衣服も準備してやらねばならん。痩せ細ったせいで、元の衣装ではサイズが合わなくて着られなくなっておる」

利根「とにかく何も食べずにおったから、普通の水すら飲むのに難儀するであろうよ」

利根「まずは重湯から作るべきじゃが、暁が遠征で不在じゃからなあ……比叡に頼むか習うかせねばな」

龍驤「ひ、比叡!? じょ、冗談やないで! 毒を作れっちゅうんか!?」ガクゼン

利根「……その反応も毎度恒例じゃなぁ」ハァ

475 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:11:10.30 ID:R/s+Uw8ko

 * それから3日後 執務室 *

潮「おはようございます……!」

陸奥「おはようございます……」

提督「よう。陸奥、あんまり顔色良くないみたいだが、大丈夫か?」

陸奥「は、はい、なんとか……」

提督「そうか、無理すんなよ」

大淀「今日は昨日お知らせしたとおり、潮さんと陸奥さんが秘書艦です」

大淀「長門さんからは、潮さんのおかげで陸奥さんも鎮守府に馴染めできていると聞いています」

大淀「今日はその区切りといいますか、仕上げの段階、と言う感じですね」

提督「思ったより早かったな?」

大淀「やっぱり、鎮守府内に男性がいないのが大きかったと思います」

提督「そうか。とりあえず俺はいつも通りでいいんだろ?」

大淀「はい。提督と一緒にいられるかどうかが一番重要ですから」

潮「あの、私と同じように、陸奥さんに接してもらえれば、大丈夫だと思います……!」
476 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:11:57.25 ID:R/s+Uw8ko

提督「そういうもんか? まあいいや、試すだけ試してみるか。陸奥、無理があるようならすぐに言えよ?」

陸奥「は、はい……!」

提督「それから、今朝は工廠へ行って雲龍の様子を見て回ってきた」

提督「起き上れるくらいには回復したが、まだ食い物が受け付けられないらしい」

大淀「お腹が弱っているということでしょうか」

提督「多分な。無理に食わせても戻しちまうから栄養が取れなくて、立って歩くのもつらそうだった」

提督「龍驤も付きっきりで看病してるが、さすがに疲れてきてるみたいだな」

大淀「そうですか……」

提督「ただ、俺たちが気をもんでも何にもならねえ。明石もいるし、俺たちは俺たちの仕事をする」

大淀「はい」

陸奥「……」

潮「あの、陸奥さん、なにかあったら、すぐ教えてくださいね」

陸奥「……ありがとう」
477 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:12:51.69 ID:R/s+Uw8ko

 * 昼 *

提督「潮ー」

潮「は、はい!」ガタッ

提督「今月の申請書はこれで全部だ。確認頼む」

潮「わかりました……!」

提督「人数が増えたもんで食費が馬鹿になんねえな。もう少し自給自足できりゃあいいんだが……」

提督「畑は初雪が見てくれてるけど、もう少し拡張しないと自給が追いつかねえ」

潮「……でも、初雪ちゃん一人で見るのは大変だと思います」

提督「そうだよなあ……もう一人くらい専任がいてもいいよな」ウーン

陸奥「……」

潮「……陸奥さん?」

陸奥「! な、なに?」

潮「なんだかぼーっとしてましたけど、大丈夫ですか?」

陸奥「う、ううん、なんでもないわ。大丈夫」

潮「……やっぱり、顔色が悪い気がしますけど」

陸奥「大丈夫よ……!」
478 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:14:11.07 ID:R/s+Uw8ko

潮「やっぱり、提督さんがいると落ち着かないんですか?」

陸奥「そんなことはないわ……あの鎮守府に比べたら天国と地獄みたいだもの」

潮「そ、そんなにひどかったんですか」

陸奥「ええ、いつ迫られるか、気が気じゃなかったから……」

陸奥「でも、准尉はなにかするときに必ず声をかけてくれるし……今ここで過ごすこと自体は、全然苦痛じゃないから」

潮「陸奥さん……」

 コンコン

大淀「大淀です。失礼します」チャッ

大淀「提督、そろそろ昼餉に致しましょう。比叡さんからお弁当をいただいてきました」

提督「弁当?」

大淀「はい、今日は屋外で作業している方が多いので、お弁当を作ってみたそうです」

大淀「ポットにお茶も入っています、今ご用意しますね」

提督「弁当か……比叡の飯は向こうでも大好評だったんだよな」

潮「む、向こうって……朧ちゃんや初雪ちゃんがいた鎮守府ですか?」

提督「ああ。からあげとか一口ハンバーグとかあったんだけど、あっちの卯月と望月がすっげー勢いで全部食いやがってな」
479 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:15:18.44 ID:R/s+Uw8ko

提督「そのあと、こっちに来た鳳翔が比叡に作り方を教えてもらってたから、今頃向こうでも流行ってるんじゃねーかな」

潮「おいしいですからね……!」ニコニコ

大淀「提督、どうぞ。こっちが潮ちゃんと陸奥さんのぶんです」コトッ

提督「おう、ありがとな」

潮「ありがとうございます……!」

陸奥「……」

提督「……相変わらず手が込んでるな。今日は由良と如月が手伝ってたんだっけか」カパ

大淀「はい。如月さんからは味わって食べてくださいと言伝を預かってますよ」

提督「そうか」

潮「そ、それじゃ、いただきます! ……もぐ、もぐ……んん……っ」ニコー

提督「相変わらず幸せそうに食べるな……」

大淀「ですね」ニコニコ

陸奥「……」

提督「……陸奥? どうした」

陸奥「……」

潮「陸奥さん……?」

陸奥「……ぅ、ぐ……!」グラッ

 ドタッ

提督「陸奥!」ガタッ

潮「む、陸奥さん……陸奥さんっ!?」

提督「おい! しっかりしろ! 陸奥! おい!!」ユサユサ

陸奥「ぅ……」

提督「……大淀! 明石に連絡だ!」

大淀「は、はいっ!!」
480 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:15:55.67 ID:R/s+Uw8ko

 * 工廠 入渠ドック *

提督「龍驤も倒れただと!?」

明石「はい、真っ青な顔をして倒れてしまって……!」

提督「飯は食ったのか?」

明石「食べたんですけれど……」

提督「けれど?」

明石「尋常じゃなく早食いだったんですよ。余程お腹が減っていたのか、雲龍さんのために用意した重湯まで食べたいと言い出して……」

提督「……」

明石「陸奥さんは食べる前に倒れたんですよね?」

提督「そうだ。腹を抱えていたから胃痛の類だと思うが……明石はなんともないのか?」

明石「は、はい。同じお弁当を食べたんですけど、私はなんともないですよ」

提督「じゃあ、弁当が原因じゃねえんだな……」

明石「そ、そうですね……!」

提督「……もしかして、どっちも摂食障害ってやつか?」

明石「え?」
481 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:19:12.30 ID:R/s+Uw8ko

提督「俺も急に食生活が変わった時に経験したんだが……仮説として聞いてくれ」

提督「龍驤と陸奥は、前の鎮守府で大食いを強要されていた」

提督「無理矢理胃袋をでかくさせられて、ある日いきなり普通の量の飯を出されたら、それは足りなく感じるよな?」

明石「え、ええ……」

提督「龍驤の場合は空腹で倒れたんだろう。食べ過ぎても、必要な栄養分だけ吸収するように体が順応したとしたら……」

提督「食べる量が減れば、その分吸収できる栄養も減って、栄養失調になる。それで倒れた、って考えられる」

明石「……!」

提督「陸奥は背負ってドックへ連れてくるときに、頻りに気持ち悪いと訴えていたし、酸っぱい匂い……多分胃液だな、それが出過ぎてる」

提督「大量の飯を食べるのに慣れたせいで胃酸過多になって、胃を壊したように思えるな」

明石「よ、よくそこまでわかりますね!」

提督「適当だけどな。どっちにしても、俺はいきなり食事量が変わったせいで起きたことだって推測してる」
482 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:20:02.33 ID:R/s+Uw8ko

提督「そういう観点で、なにか治療法はねえのか」

明石「そんなこと言われても、私はどちらかと言えば外科医みたいなものですし……!」

提督「これは内科医の仕事か……」

明石「い、いったいどうしたら……」

提督「……」

明石「……」

提督「そうだ……おい明石。バケツは今どのくらいある」

明石「へっ?」

提督「あれの中身を……修復剤をあいつらに食わせたら、体の内側を直せないか?」

明石「え、ええええ!? あ、あれ、食べられるんですか!?」

提督「N大尉の鎮守府の厨房にあのバケツが置いてあったのを見たんだ。鳳翔に聞いたら、料理に混ぜてくれってリクエストが来るらしい」

提督「どういう理屈か知らねえが、修復剤は怪我とかを直すんだろう? 胃袋に直接流し込んでやれば、効果あるんじゃねえか!?」

明石「……私はやったことありません。でも、試してみる価値はあると思います!」

明石「その話が本当だとしたら、大発見ですよ!!」グワッ

提督「お、おう……」
483 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:20:52.39 ID:R/s+Uw8ko

 * ドック内 病室 *

潮「陸奥さん、しっかりしてください!」

長門「龍驤も倒れただと!?」ダダッ

大淀「な、長門さん落ち着いて!」

長門「し、しかし……!」

利根「気持ちはわかるが静かにするんじゃ」

 ガチャバーン!

明石「みなさん! 治療のご協力をお願いします!」

大淀「明石!?」

潮「な、なんですかその脚立!?」

提督「おい明石、このバケツはどこに置くんだ!」ガシャガシャ

長門「提督も来たのか!?」

明石「とりあえずここにお願いします! 陸奥さんから治療を始めましょう!」ガシャッ

潮「え? ど、どういうことですか!?」
484 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:21:37.60 ID:R/s+Uw8ko

明石「話はあとです! 提督、陸奥さんの上体を起こして、顔は上に向けてください!」

提督「こ、こうか!?」グッ

陸奥「……う、うう……」ムクッ

明石「はい! そのまま、口を開けさせてください!」

提督「わかった」グイ

 ガポッ

陸奥「……もが?」

潮「な、なんですか、あれ。漏斗?」

大淀「ろうと、というより、じょうごですかね……サイズ的に」

明石「よし、それじゃ行きますよ!」キャタツノウエデバケツカマエ

提督「え」

陸奥「!?」ギョッ

潮「!?」

大淀「!?」

利根「!?」
485 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:22:36.20 ID:R/s+Uw8ko

長門「明石!?」

明石「修復剤、投入!!」バケツザバーー

陸奥「もぼがばごぼっ!?」ゴボボボー

潮「む、陸奥さあああああん!?」

大淀「な、なにをしてるんですかああああ!?」

明石「修復剤を胃袋に直接流し込んでいるんです!」ドヤッ!

長門「そんな無茶苦茶な流し込み方があるかああああああ!!」

陸奥「……も……! ごぼ……っ! お……!」ジタバタ

提督「おい明石、大丈夫なのかこれ!?」

明石「提督は動かないで! もう少しです! もう少しで終わりますから!」

陸奥「……っ……っ!」プルプル

潮「あわわわ……!」

利根「……」アングリ

提督(……俺、余計なこと言わなきゃ良かったか?)タラリ
486 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:23:33.34 ID:R/s+Uw8ko

明石「よし! これでオーケーです!」バケツカラッ

陸奥「」チーン

長門「何がオーケーなものかあああああ!!」

潮「む、陸奥さん? 陸奥さぁぁん!」オロオロ

明石「今回陸奥さんが倒れた原因は消化器系の問題と思われます! だとしたら修復剤を直接お腹に入れるのが一番効果的です!」

大淀「だとしても、やり方に問題があるとしか言えませんよ!?」

明石「次は龍驤さんですね!」

大淀「話聞けよ!」ゴォッ

潮(提督さんそっくり!?)ビクッ

提督(誰だ今の!?)ビクッ

龍驤「う、うう……なんや、騒がしいなあ……」

陸奥「」シロメ

龍驤「」

明石「提督、さっきと同じように龍驤さんを抑えててください! 早く!!」ギラッ

提督「あ、ああ」ガシ

利根(あの提督が気圧されておる……)タラリ
487 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:25:26.07 ID:R/s+Uw8ko

龍驤「ちょっ、な、なにするん!?」

明石「大丈夫、龍驤さんのお腹の治療です! 治療ですよ!」ギラギラッ

龍驤「あ、明石! その血走った眼はなんやねん!?」

明石「いいから口を開けてください!」ガポッ

龍驤「がぼっ!?」

明石「はい、上を向いてぇ! 投入うう!!」バケツザバー

龍驤「ごぼがばぼべーーーー!?」ゴボボボー

潮「」シロメ

大淀「」シロメ

利根「なんなんじゃこの地獄絵図は……」

提督「これで治らなかったらどうする気だ……」タラリ

長門「陸奥! しっかりしろ、陸奥ーーーー!!」
488 : ◆EyREdFoqVQ :2019/03/17(日) 18:26:16.33 ID:R/s+Uw8ko
今回はここまでー。

どうしてこうなった……。
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/17(日) 21:19:09.13 ID:efJPCC1Ko
乙!
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/18(月) 13:50:12.06 ID:lzg+TCAP0
ワロタww
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/22(金) 14:12:10.72 ID:qvk9sm/A0

 
ちりょう(治療)+し(タヒ)= ちしりょう
492 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:06:14.44 ID:Qs9vb849o
それでは続きです。
493 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:08:05.09 ID:Qs9vb849o

 * 工廠 *

明石「あいたたた……どうして長門さんからげんこつをもらわなきゃいけないんですか」タンコブ

提督「お前ノリノリだったじゃねえか、目が怖かったぞ。つーか、お前のせいで俺までげんこつ食らったんだからな?」タンコブ

明石「発案者は提督じゃないですかー」

提督「そうだけど、あんな治療法あるかよ。もうちっとスマートにできなかったのか?」

明石「カテーテルでもあればできたでしょうけど、そう都合よく持っていませんでしたし!」

明石「とにかく、小一時間もすれば胃腸に浸透して効果も出てくるでしょうから、お茶の時間にでも見に行きますよ」

提督「……うまくいくといいがな」

明石「そうですね。雲龍さんにも少量ですが似たように処方しましたし、これでうまくいかなかった人はまた別の方法を試してみましょう」
494 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:08:59.79 ID:Qs9vb849o

提督「……無理はさせんなよ?」

明石「ええ」ニマー

提督「なんつうか不安になる笑顔だな……まあいい、俺は執務室に戻る。陸奥を連れてきて昼餉を食べ損ねたからな」

明石「はい、こちらはお任せください! それにしても、修復剤を料理にですか……どんな味がするんでしょうね」

提督「修復剤自体は無味無臭だったな。水あめみたいな感じだった」

明石「……え」

提督「? どうかしたか」

明石「い、いえいえ!」ブンブン

提督「? ……とりあえず俺は執務室に戻るぞ」

明石「はい!」

 パタン

明石「……提督が、修復剤を食べたってこと……!? そ、それこそ大丈夫なの……!?」
495 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:09:59.66 ID:Qs9vb849o

 * その日の1530 食堂 *

龍驤「……うまいなあ、このパンケーキ」モギュモギュ

陸奥「本当……」モグモグ

龍驤「比叡が作るっちゅうから、どうなるんかめっちゃ不安やったけど……」モギュモギュ

陸奥「見ただけでお腹が鳴ったものね……」モグモグ

龍驤「それに、好きな分だけ食べられるて、ええな……」ポロ

陸奥「そうね……幸せだわ」ウルッ

龍驤「食事までトラウマになったら、うちらどうしたらいいかわからんし」ポロポロ

陸奥「もう……泣きながら食べたらしょっぱくなるわよ」グスッ

龍驤「陸奥やってそうやんか」グシグシ

提督「……よう」

陸奥「!」ビクッ

龍驤「な、なんや!?」ビクッ
496 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:10:58.21 ID:Qs9vb849o

提督「あー……その、昼間は悪かったな。修復剤の件、明石に持ちかけたのは俺だが、考えてた以上に荒っぽいっつうか……」

龍驤「そーやなあ! 無理矢理やったなあ!」

提督「……」

龍驤「な、なんや、文句あるんかい」

提督「いや。すまなかった」ペコリ

龍驤「……!」

陸奥「……!」

龍驤「い、いや、いつまでも怒っとるわけやない。やり方は考えて欲しいんや! な!?」オタオタ

陸奥「そ、そうね……」オロオロ

龍驤「結果オーライやったけど、同じことを起こしたらあかんねん! な?」

提督「そうだな。次がないのが何よりだが、もしあったらもっといい方法を考えなきゃな……明石にも相談する」

龍驤「……ところで、雲龍には修復剤を少ししか飲ませんかったって聞いたけど、なんでや?」

提督「龍驤たちは食べさせられすぎて胃拡張気味だったと思うが、雲龍は逆に飲まず食わずだからな。胃縮小を心配したんだ」

龍驤「うちらにがぶ飲みさせたんは、大食いしてたからなんか……」

提督「つっても、あそこまでやる気はなかったがな……」
497 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:11:59.14 ID:Qs9vb849o

陸奥「雲龍には、普通の食事は駄目なの……?」

提督「しばらくは重湯やおかゆで食べ物に慣れてからだな。余所じゃ修復剤を混ぜて食べさせてる例もある」

提督「お前たちがこんなに早く回復したんだから、雲龍もすぐにここに来られるようになるんじゃないか?」

龍驤「……だとええなあ」

提督「しばらくは様子見だ。お前たち自身も、落ち着く時間が必要だろ」

龍驤「そうやね……」

提督「それでだ。今なら、死にたいとは言わないよな?」

陸奥「……!」

龍驤「……まあ、せやね。やっとまともな生活できそうやし、考えたほうがええかなあ」

陸奥「そうね……」

山城「有耶無耶に、そうね、じゃなくて、はっきり言っておいたほうがいいわよ」ズイ

龍驤「!?」

提督「山城……!」

山城「私よりも薄幸そうなオーラを放ってる一団だもの、この辺で決意表明でもしておいて、腹を括ったほうがいいんじゃない?」

提督「まあ確かにな。そうすりゃ出撃とかも任せるつもりだ」

陸奥「……出撃……」
498 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:13:02.68 ID:Qs9vb849o

提督「どうする?」

龍驤「……そうやなあ。うちは、ここで人生始め直しても、ええかもしれんなあ。陸奥はどうするん?」

陸奥「そうね……出撃、させてもらおうかしら」

陸奥「いろいろ、たまってたのかもしれないわ。外で思いっきり、鬱憤を晴らすのもいいかも、ね……!」

提督「……陸奥もやっと笑ったか。これなら一安心だ」

陸奥「!」

山城「なにそれ。ナンパでもしてるつもり?」

提督「してねえよ。やけに突っかかってくるな、お前」

山城「あなたの態度に納得いかないだけよ。私や扶桑お姉様には踏ん反り返って上から目線だったくせに」

提督「ああ? 踏ん反り返った記憶はねえぞ」

山城「は? だったらどうしてこの二人には、私たちのときよりペコペコ頭を下げてるのよ! 弱みでも握られたの!?」

提督「いや……明石が二人にやらかしたことを聞いたら納得すると思うが」

山城「はぁ? いったい何をしたのよ……」
499 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:14:03.19 ID:Qs9vb849o

龍驤「うちらの口にじょうご突っ込んで、高速修復剤を流し込んだんや。ダバーって」

提督「それもバケツ一杯分な」

山城「……はあああ?」ドンビキ

提督「な? そういう顔になるだろ?」

山城「鬼畜」ジリッ

提督「それは明石に言えよ、俺は修復剤を食わせたらどうだって言っただけだぞ」

山城「部下に責任転嫁するの? 鎮守府を預かる提督のくせに、逃げるなんて最悪ね」

提督「そうじゃねえよ。お前も口が減らねえな、明石といい勝負だ」

山城「あなただってそうでしょ、ああ言えばこう言うし……!」

提督「……負けん気が強すぎるぞ、お前」

山城「まだ言うの!?」

龍驤「仲ええなぁ」ニヤァ

陸奥「そうね」フフッ

山城「ちょっと!? そ、そういうのとは違いますから! そもそも着任して日も浅いし!」
500 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:15:03.05 ID:Qs9vb849o

扶桑「そうかしら? 山城、そう言う割に提督ととっても仲が良く見えるわよ? ふふふっ」ニコニコ

山城「」シロメ

山城「」シロメ

山城「」ヒザカラクズレオチ

山城「不幸だわ……」ガクーッ

提督「なにやってんだよこいつは……」

龍驤「一人上手やなー」ケラケラ

扶桑「ところで……二人はもう体調はよろしいんですか?」

龍驤「!」

提督「扶桑……お前、いつから異常に気付いてた?」

扶桑「何度か食事で近くに座っただけですが、その時に。龍驤さんは食べるスピードが異常に速かったですし……」

扶桑「陸奥は食べるのを怖がっていたように見えましたので。潜水艦の子から病気に関する本をお借りして、調べていました」

扶桑「過食症ですとか、拒食症ですとか……当てはまりそうな症状にあたりを付けてから、ご報告するつもりでいましたが」チラッ

扶桑「必要、なかったみたいですね」ニコ

提督「いや、そういうことなら早めに教えて欲しかったぜ。結局二人とも倒れたわけだしな」
501 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:15:58.07 ID:Qs9vb849o

提督「実際今はどうなんだ? 食べてて違和感ないか?」

龍驤「嘘みたいに調子ええよ。前は食べても味もせんかったし、こう……食べ物がちゃんと喉を通ってお腹に収まる感触がなかったしなあ」

陸奥「私もよ。何か口にすると胃液の味がして気持ち悪かったんだけど、今は全然そんなことないわ」

提督「……もしかして修復剤、効果あったのか?」

陸奥「認めたくないけど……」メソラシ

龍驤「あれはあれで別のトラウマになるで……」トオイメ

提督「もうあんな使い方はしねえよ、コップで飲むようにするか医療用の細い管でも取り寄せるかするさ」

提督「とりあえず、正式な着任の手続きは大淀が受け付けてる。そろそろこっちに来るだろうから、各々適当に申請してくれ」クルッ

扶桑「提督、どちらへ?」

提督「執務室。まだやることがあるんでな」

 スタスタ…

扶桑「……」

龍驤「なあ扶桑? あんた、うちらのことよう見てたなあ」

扶桑「ええ、なんでも、ちゃんと見て、向き合うことにしているの。今までは、この世の全てから、目を逸らしていたから……」
502 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:16:56.75 ID:Qs9vb849o

龍驤「あんたも、なにかあったんやな?」

扶桑「……ええ、いろいろと」フフッ

扶桑「山城? そろそろ立ち直って? 一緒におやつにしましょう?」

山城「……はっ!? ふ、扶桑お姉様!? 私はいったいなにを!?」

扶桑「そこまでショックを受けてたなんて……さすがに少し心配よ?」

龍驤「……」

陸奥「嬉しそうね、扶桑……ずっとにこにこしてて」

龍驤「そうやなあ……なあ、陸奥、どうなん? あの提督、信用できそうか?」

陸奥「……まだ、乱暴は受けてないから……何とも言えないけど」

陸奥「でも、あんなふうに、男の人に頭を下げられたのは初めてだわ」

龍驤「そういえばそうやなあ……」
503 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:18:06.30 ID:Qs9vb849o

 * 一方その頃 *

 * 海軍本営近くの病院 *

 (ギプスで全身を固められたN大尉がベッドに寝かされている)

N大尉「……艦娘が羨ましいな。俺にも高速修復剤が使えたら良かったのに」

妙高「安静にしててくださいね。焦ってもいいことはありませんから」

N大尉「わかってるよ。とにかく、以中佐の艦娘の体調不良はなんとかなりそうなんだな?」

妙高「はい。高速修復剤を体内に取り込むことで、お食事の異常を直せることが実証できました」

N大尉「もと部下たちがごはんに高速修復剤を混ぜてたのも、あながち無意味じゃなかったんだな」

妙高「入渠時間が惜しい子たちから、良く依頼されていたと鳳翔さんが仰っていました」

妙高「それから、N大尉の立てる計画はいつもカツカツでしたので、ストレスを感じていた子が結構いたみたいですよ」チラリ

N大尉「ぐ……」

妙高「確かに『時は金なり』と申しますが、無駄がないというのは余裕がないとも言い換えられます」

妙高「その時その時の最大効率を出したいのはわかりますが、適度に息抜きも必要でしょう」
504 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:18:57.86 ID:Qs9vb849o

妙高「せめて食事くらいは、ゆっくりとれる時間を持ったほうが良いと思いますよ」

N大尉「……ああ」ムスッ

妙高「N大尉?」

N大尉「許してくれ。この年にもなると、自分の続けてきたことに合わない説教をされると、こういう顔になるんだ」

N大尉「妙高の言うことは理解できる。ただ、長年自分が信じていたものを否定されるのはきつい」

妙高「ええ、そんなことだろうと思っていました」

N大尉「……」

妙高「新しいもの好きの割に、そういうところは頑固ですよね」

N大尉「妙高……少し性格がきつくなったんじゃないか」

妙高「長いこと構ってもらえていませんでしたので」ニコリ

N大尉「んぐ……」

妙高「仕方ありませんよね、提督准尉のような世捨て人ならまだしも、世の中の男性は胸の大きい女性に目が行くのは当然なんでしょうね」

N大尉「みょ、妙高! 俺は別にそんなつもりは……!」

妙高「でしたら、私より愛宕を重用するようになったのはどうしてなんでしょうね」ジトッ

N大尉「」
505 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:19:57.56 ID:Qs9vb849o

妙高「駆逐艦の子たちも、あからさまにぱんぱかぱーんな趣味が出ているようですし?」

N大尉「い、いや、それはその……」

妙高「この件ばかりは、以中佐のことを言える立場にないと思いますが、いかがでしょうか」

N大尉「……か、返す言葉もなく……!」

妙高「はぁ……こういう感情を、やれやれと言うのでしょうね」

N大尉「だ、だが、この場合、俺の趣味というか、好みはあまり関係ないと……」

妙高「ええ。あなたがこれまで私たちに対して、節度を持って接しておられたことは間違いありません」

妙高「ですがそれ以上に、あなたは、あまりに事を性急に進めようとしていました。ご自身の余裕を削ってまで」

N大尉「……仕方ないだろう。俺は、ただただ、父さんや母さんの生き甲斐が消えていくのを防ぎたくて……」

妙高「だからこそでしょうね。今思えば、あなたとこんな風に雑談すること自体、なかったような気がします」

N大尉「俺が戦えれば一番良かったんだ。多少無理をしても、戦果を挙げれば誰にも文句を言われない」

N大尉「だが、お前たちしか戦えないのなら、俺はそのバックアップを完璧にやらなきゃいけない」

N大尉「ゆとりなんか持ってる場合じゃないと思っていたんだ。いつの間にか、お前たちにもそれを押し付けていたわけだがな……」
506 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:20:58.85 ID:Qs9vb849o

妙高「それでツールに手を出したんでしたね。時間設定で艦娘に指示ができるからと」

N大尉「あ、ああ……それから、胸が大きい艦娘ばかり選んでたのは本当に無意識だった」

妙高「どうだか? 胸の小さな子たちを軽視していたのでは?」ツーン

N大尉「そ、それはない! 誓って本当だ! その……母さんがそうなんだ。だから軽んじたりはしていない!」

妙高「それでも胸の大きい女性が好きなんですか」

N大尉「……その、隣の家に住んでた姉さんがな、あー……憧れてたというか……な?」

妙高「そうですか……」ハァ

N大尉「……そ、それに……少し、お前に似ていて……」ポ

妙高「!?」

N大尉「お前にあのイヤホンを渡すのをためらったのも、その、深い理由はないんだが……」

N大尉「付けさせたら、どこかへ消え去ってしまいそうで……その、あのときは、なんとなく……そう思ったんだ」メソラシ

妙高「……」

N大尉「……」

妙高「そんな嘘で誤魔化せるとお思いですか」ジトッ

N大尉「嘘じゃないよ!」ガーン
507 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:22:12.47 ID:Qs9vb849o

妙高「本当ですか? 話が出来過ぎですよ」

N大尉「本当だよ! ……滅茶苦茶恥ずかしかったのに、こんなことまで茶化されるのか……ぐううう」

妙高「今までやってきたことのツケが回ってきたと思ってください」

N大尉「ぐぬ……今の俺は何を言っても三枚目ってことか」ガックリ

妙高「序二段あたりではないでしょうか」

N大尉「辛辣だな!! しかも意味が微妙に違わないか!? うまいこと言ったと思ってるだろう!?」

妙高「いいえ?」シレッ

N大尉「笑顔が白々しいぞ! ったく……お前に、そんな冗談を言われるとは思わなかった」

妙高「真面目一辺倒では疲れますから。N提督も、執務から離れて一休みしても良いでしょう?」ニコ

N大尉「……厳しいんだか、優しいんだかわからないな」ハァ



妙高「ところで……あの駆逐艦隊に初雪さんを加入させたのはどうしてです?」

N大尉「……勘でしかないんだが、あの初雪、絶対何かを隠してると思ってな……!」

N大尉「育てたらいい線行くんじゃないかと思ってたんだ」

妙高「それでは、島に行ったときに連れていた磯波さんは」

N大尉「彼女も期待ができると思う」

妙高「それは胸部装甲的な意味でですか?」

N大尉「そちらは更に期待できる」キラッ

妙高「……げんこつ一回分、ツケておきますね」ピキッ

N大尉「!?」
508 : ◆EyREdFoqVQ :2019/03/23(土) 14:22:50.78 ID:Qs9vb849o
今回はここまで。
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/25(月) 09:32:02.28 ID:XBw54/yS0
胸なんて飾りなのです、偉い人にはそれがわからないのです。
510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/03/25(月) 11:41:22.06 ID:Z386oyuAO
>>509
じゃAカップ以下の女の子の胸しか見たらあかんで
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