幼女幽霊「呪いが勝つのか、幽霊が勝つのか実験だよ実験!!」DQN幽霊「!?」

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275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 08:37:18.49 ID:X1uAxpU1o
速報復活!!更新待ってます!!
276 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:33:05.11 ID:9K6xzDxeo
QN幽霊「マ、マジかよ……」

幼女幽霊「……ずいぶん詳細な位置まで特定してるんだな。一体どうやってそこまで絞り込んだんだよ」



霊能少女「難しいことはしていない。特定の場所に留まっているということはそこに何かあるということ」

霊能少女「考えられる候補として一番有力なのは……神彁混を呼び出した天国の扉と関連するもの。それを辿ってみたら大当たり」

霊能少女「この町の南西の山奥にはある無人の古びた神社がある。今は宮司もおらず、荒廃していて人々に忘れられているけど」

霊能少女「……でも、最近その境内で、怪しげな集団がたむろしているという噂があった。調べてみたら、その集団は天国の扉に所属していたメンバーであることが判明した」

霊能少女「あの事件が起きてから、奴等も公には活動出来なくなったみたい。名前も場所も変えて、細々と活動している」


霊能少女「……そして、私の予想ではその神社に神彁混はいる。必ず、絶対に」



幼女幽霊「……」
277 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:34:36.68 ID:9K6xzDxeo
DQN幽霊「す、すごい偶然だな……今、このタイミングでそいつがこの町にいるなんて」



霊能少女「……偶然か。ワタシはそうは思えない」

霊能少女「全ての運命は……仕組まれているとさえ感じる。ワタシがアナタと闘い、そして両者が生き残り、今この場で手を組むことも……全ては決められていたような、そんな感じがする」



幼女幽霊「……どういう意味だよそれ」



霊能少女「気にしないでいい。深い意味はない」

霊能少女「これが、アナタに協力を要請に来た理由。納得してくれた?」



幼女幽霊「……まあ一応はな」



霊能少女「こちらも、ただで仕事をしてほしいとは言わない。それ相応の報酬を用意している」



DQN幽霊「な、なんだよ。報酬って」
278 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:35:57.25 ID:9K6xzDxeo
霊能少女「これ」スッ



幼女幽霊「これは……」

DQN幽霊「こ、小切手?」



霊能少女「そう、三千万円分の小切手。ワタシがこの仕事でこれまでに稼いできたお金」

霊能少女「もし、協力してくれるならこれを差し上げる」



幼女幽霊「さっ……!?」

DQN幽霊「三千万っっ!?」



霊能少女「幽霊であるアナタに金銭で交渉するのも変な話だけど、悪い話ではないはず」

霊能少女「これまで、窃盗を繰り返してきたアナタ達には……それなりに後ろめたい罪悪感があったはず。仕方ないとは分かっていても、盗むたびに罪の意識が芽生えている」
279 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:37:10.73 ID:9K6xzDxeo
幼女幽霊(……まあ、ないと言えば嘘になるけど)

DQN幽霊(普通に犯罪だしな……)



霊能少女「この金があれば、その意識から解放される。何にも縛られず、自由に好きなだけ買い物をすることが出来る」

霊能少女「どう?」



幼女幽霊「さ、さんぜんまん……」ゴクリ

幼女幽霊(た、確かに…...こいつに協力するだけで、これだけの金が手に入るのは悪くない)

幼女幽霊(病院のカメラも、ドッキリの仕掛けも……全部店から持ってきた盗品だし。正直なところだいぶ悪いことをしているという自覚がある)

幼女幽霊(で、でも……)


幼女幽霊「……お前に見せたい物がある」ガサゴソ

幼女幽霊「これが何か知ってる?」スッ
280 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:38:28.59 ID:9K6xzDxeo
『』



DQN幽霊「せ、先輩、それって一昨日来たやつが置いて行った……」



霊能少女「!?」

霊能少女「……どこで、それを?」



幼女幽霊「その反応……やっぱり、さっきの話に出てきた呪術の道具なんだな」

幼女幽霊「私のところにも来たんだよ……そのカルトに所属している人間が」

幼女幽霊「そして、この箱を置いてった」



霊能少女「……」



幼女幽霊「その箱からはお前が言ってた通りに、影の姿をした呪いが溢れ出てきた。これは一体どういうことだ?」



霊能少女「……恐らく、奴等はこの病院を新たな拠点にしようと企んでいたんだと思う」
281 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:40:47.66 ID:9K6xzDxeo
霊能少女「人影がなく古い建物というものは多かれ少なかれ、大抵は人為らざる者が住み着いている。玉響が多いけど、中にはアナタ達のような幽霊も」

霊能少女「きっと、それが邪魔だったんだろう。だから呪いの影で全てを喰わせようとしたんだと思う」



幼女幽霊「……そうか。あの影は天国の扉と繋がっていたのか」

幼女幽霊「……よし、決めた!」


DQN幽霊「せ、先輩?」


幼女幽霊「おいメスガキ。私は――」













幼女幽霊「ぜっっっっっっったいに行かんからな!!!!!!!失せろボケ!!!!!!!!!」



霊能少女「…………は?」
282 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:47:11.46 ID:9K6xzDxeo
霊能少女「……なぜ、この流れでなぜそうなる?」

霊能少女「奴等はアナタ達にも危害を加えようとした。仕返しをしなくていいの?」


幼女幽霊「確かに、その件に関しては正直イラつく。今すぐお礼参りに行ってやりたいが……」

幼女幽霊「……相手が悪過ぎる。あの影は間違いなく、私達幽霊でも取り込まれたらただでは済まない代物。リスクが高過ぎるんだよ。いくら金を積まれてもな」

幼女幽霊「そもそも、この件はお前達人間がどうにかすべき問題だろ。私みたいな一般人の幽霊を巻き込むのは道理に反している。違うか」


霊能少女「……」


幼女幽霊「悪いけど、そういうことで帰れ。私は一切関与しない」プイッ


DQN幽霊(……正直意外だな。先輩のことだから野次馬根性で喜んで参加すると思った。ずっと気になってたあの集団自殺の事件に関わることだし)

DQN幽霊(裏を返せば、先輩ほどの力を持っていても身の危機を感じるのか。好奇心より警戒心が勝るほどの)

DQN幽霊(……確かに、一昨日のあの呪いはヤバかった。毒ガエルを見て一瞬で有害であることを悟るように、視覚的に、直感的に、力がない俺でも一瞬でその脅威を理解するほどに)

DQN幽霊(いくら金積まれてもあれは無理だわ……命あっての物種って言うしな。まあもうその命すらないんだが)
283 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:48:56.77 ID:9K6xzDxeo
霊能少女「……よく考えてほしい」

霊能少女「確かに、リスクはある。いくら幽霊でも、アナタが無事にいられるかは保障できない」

霊能少女「でも、大勢の命に、世界の安定に関わる問題ということを認知してほしい。この力にワタシ一人だけでは抗えない」



幼女幽霊「……お前みたいにみんながみんな、人の為に命を賭けられるわけじゃないんだよ。私は自分の命が一番大事なんだ。他を当たれ」



霊能少女「それは絶対嘘。アナタは優しい人間、自分より他者の命を優先するほどの」



幼女幽霊「は、はぁっ!?お前に私の何が分かるんだよ!!!!!」



霊能少女「ではなぜあの時、ワタシの攻撃に自分の身を呈してまで、そこにいるもう一人の霊を助けた?」



幼女幽霊「……っ!!」

DQN幽霊(…………あれか)
284 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:50:45.61 ID:9K6xzDxeo
霊能少女「常人ならば、あの一瞬の判断を迫られる場面で、アナタがしたような行動は起こせない」

霊能少女「選択肢として脳裏を過るのは事実。でも体が動かない。なぜなら待ち受けるのは確実な“死”だから」

霊能少女「それでも、アナタは動いた。思考より先に“心”が動いたはず」

霊能少女「……そんなアナタだからこそ、私はパートナーに選んだのだから」



幼女幽霊「…………」



幼女幽霊(気に入らない)

幼女幽霊(こいつの熱意は本物だ。その時になれば喜んで自分の命より他者の命を救うほどの……信念を持っている。ほんと、漫画の主人公かよ。あーもう)

幼女幽霊(……それでも、気に入らない。ここまでの信念を持っているやつが――何かを隠しているということが)
285 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:51:41.13 ID:9K6xzDxeo
幼女幽霊「何度言われても、私は参加する気ないからな」

幼女幽霊「お前が全てを喋らない限りは……私はお前を信用しない」



霊能少女「……そうか。そこまで見透かされていたのか。とても敵わないな」

霊能少女「ならば……こちらもまた、強硬手段を取らせてもらう」スッ

霊能少女「これ、何か分かる?」



幼女幽霊「な、なんだよそれ」




霊能少女「爆弾、さっき使った物とは違う。爆薬の代わりにあの水が大量に詰め込まれている」




幼女幽霊「はぁっ!?」ビクッ

DQN幽霊「ば、爆弾っ!?」
286 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:53:14.32 ID:9K6xzDxeo
霊能少女「これの恐ろしさはアナタ達が一番分かっているはず。この距離で当たれば、無事では済まない……確実に消滅する」

霊能少女「協力してもらえないのなら、今すぐ起爆する。3秒以内に選んで」スッ



カチッ……



幼女幽霊(さ、3秒!?)

幼女幽霊(ま、まずいっ……どうする。退避か、先手必勝で攻撃するか)

幼女幽霊(いや、攻撃はまずい。その姿勢を見せただけで間違いなくこいつは何の躊躇いもなく、爆発させる。こいつの性格なら絶対そうする)

幼女幽霊(……恐らく逃げようとしても結果は同じか。いや、瞬間移動を使えば……)チラッ



DQN幽霊「え、え?」オロオロ



幼女幽霊(……そうか。私一人ならこの場を離れるのは容易。でも、こいつを連れてとなると……時間が圧倒的に足りない。こいつ、こうなることが分かってて――)
287 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:54:15.45 ID:9K6xzDxeo
幼女幽霊「……っ。分かった。協力してやる」



霊能少女「良かった。アナタならそうすると思っていた」スッ



DQN幽霊「せ、先輩……」

幼女幽霊「ただし、条件がある。お前が何を隠しているか、それだけ教えろ」



霊能少女「……」

霊能少女「ごめんなさい。それだけは出来ない」

霊能少女「これは……ワタシの、ワタシ達の問題だから、アナタには教えられない。残念だけど。それに、今回の件とは関係のないこと」



幼女幽霊「……つまり、自分の都合の悪いことは教えないっつーことかよ。脅迫紛いのことしといて」



霊能少女「どうとでも思ってもらって構わない。ワタシは否定も肯定もしない」
288 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:55:51.66 ID:9K6xzDxeo
幼女幽霊「……あっそ。ならいいわもう」

幼女幽霊「ってことでDQN、ちょっと行ってくるわ。留守番頼んだぞ」


DQN幽霊「せ、先輩……」


幼女幽霊「安心しろよ。すぐ帰ってくるから」


DQN幽霊「あ、ウス……」


幼女幽霊「ほら、行くんだろ。さっさと案内しろよ」

霊能少女「……協力、感謝する」

幼女幽霊「あんな汚い手使っておいてよう言うわ」



バタン



DQN幽霊「……」

DQN幽霊「……」



『もし、次に幼女に何かあったらアンタが止めなさいよ。あの子のことは任せたわ』



DQN幽霊「……んなこと言われてもな。俺には……先輩をどうこう出来る力はねえよ。ただの下級霊以外の何者でもないんだし」
289 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:57:59.16 ID:9K6xzDxeo
DQN幽霊「これまでも……俺は先輩の足を引っ張ってばっかだ。俺がヘマした時も、あいつが襲ってきた来た時も……いつも先輩に頼ってばっかで」

DQN幽霊「自分でも情けねえな。結局俺は……先輩の何なんだろ」



幼女幽霊「おいDQN!!!!」バッ



DQN幽霊「」ビクッ

DQN幽霊「えっ、せ、先輩?どうしたんスか?」


幼女幽霊「ひとつ言い忘れてた!私が留守の間に客が来たら、今度こそお前一人で何とかしろよ!」

幼女幽霊「お前なら出来るって信じてるからな!!テンパるなよ!!!」


DQN幽霊「りょ、了解っス」


幼女幽霊「んじゃ!明日には戻るから!」



バタン



DQN幽霊「……」

DQN幽霊(あぁ……そうか。俺は何もする必要はないのかもな)

DQN幽霊(ただ、先輩の居場所であるこの病院を守ればいい。先輩の帰ってくる場所に居れば……それが俺の役目か)

DQN幽霊(先輩……無事に戻ってきてくださいっス)
290 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/16(火) 03:59:01.29 ID:9K6xzDxeo
今日はここまで
ってことで再開です
落ちてる間にもう書き終わってしまったのでノンストップで行けると思います
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/16(火) 07:18:28.35 ID:T82lHYtno

やった
292 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:41:04.22 ID:q0Hnviedo
………………………………………………………
…………………………………………


幼女幽霊「んで、いつ攻め込むんだよ」

霊能少女「今日は何もしない。私が泊まっているホテルに行って、作戦会議」

幼女幽霊「作戦会議って、ずいぶん余裕あるな」

霊能少女「余裕なんてない。むしろその逆、今この瞬間にも……神彁混が巣を飛び出して、またどこかに放浪するかもしれない」

霊能少女「でも、だからこそ、慎重になる必要がある。時間に追われて迂闊な行動をとってしまったら……それが命取りになる」

幼女幽霊「……あっそ」



ガヤガヤ ガヤガヤ



霊能少女「通りに出ても平気?あまり生気を吸い過ぎるのは良くないと思うけど」

幼女幽霊「舐めるなよ。私は足付きだぞ。その程度で成仏するほど軟じゃないっつーの」

霊能少女「それならいい」

幼女幽霊「……そんなことよりも、どうにかならんの」


霊能少女「何が?」
293 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:42:21.34 ID:q0Hnviedo
ジロジロ ジロジロ



幼女幽霊「その眼帯だよ!!何か落ち着かないんだよ!!!私が見られてるみたいで!」

幼女幽霊「今の時代にそんな目立つもん付けてたら注目されるのは当たり前だろ!!外せよ!!!!」


霊能少女「……これはワタシの力を隠す役割を持っている。ワタシの両目を視たら、例え力を持たない一般人でも、何かを感じ取る」

霊能少女「どのみち見られるなら、まだこの眼帯に注意が行ってくれた方が助かる」


幼女幽霊「むっ、なら他の物で隠せよ。眼鏡とか、それこそコンタクトレンズでもいいだろ」


霊能少女「それもそうだけど……ワタシにも、これを付ける理由がある」


幼女幽霊「どんな理由だよそれ」


霊能少女「これはある人から譲り受けたモノ。その人はとても強力な力を持っていて、ワタシ達の世界では伝説とも呼べる人物だった」

霊能少女「この眼帯は……彼女が老衰で亡くなる寸前に貰った私物。だから大切に扱っている」


幼女幽霊「……ふーん」
294 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:43:43.55 ID:q0Hnviedo
霊能少女「人間の死は終わりではない。アナタのように魂だけ残るような姿もあれば、異形の者に形を変える者もいる」

霊能少女「でも、それだけじゃない。想いを紡いでいくことも出来る。例え自分がこの世を去っても、その想いが誰か別の人に託し、残すことが出来れば……力になれると信じている」


幼女幽霊「……」











幼女幽霊「お前って普通にそういうくさいセリフ言えるけど恥ずかしくないの?」



霊能少女「……」

霊能少女「……まあ多少は」プイッ
295 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:44:52.07 ID:q0Hnviedo
ガチャ


霊能少女「ここが泊まっているホテル」


幼女幽霊「結構いい部屋とってんなおい」ゴロン

幼女幽霊「んで、作戦会議って何するの」


霊能少女「まず、これを読んでほしい」スッ


幼女幽霊「なにこれ?」


霊能少女「神彁混と『天国の扉』に関する私がまとめたレポート。病院では省略した部分も事細かに書いてある」

霊能少女「奴と戦う上で最低限の知識は身に付くと思う。だから目を通しておいて」


幼女幽霊「……分かった。見ておく」


霊能少女「それと、少し手伝って欲しいことがある」ガサゴソ

霊能少女「これに、アナタの力を与えることが出来る?一年前にワタシが使った、あのバットのような」スッ


幼女幽霊「え?出来るっちゃ出来ると思うけど……なんだよそれ」

幼女幽霊「ん?この形ってまさか……銃弾じゃないよな?」


霊能少女「そうだけど」
296 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:46:06.59 ID:q0Hnviedo
幼女幽霊「!?」

幼女幽霊「えっ!?てことはお前!今実銃持ってんの!?」


霊能少女「持っているけど」スッ



『』ギラッ



幼女幽霊「!?!?」

幼女幽霊「なっ……よく平然と外出歩けたな!!!!職質されたら一発で逮捕じゃんお前!!」

幼女幽霊「そもそもなんでお前が持ってんの!?爆弾に銃って……本物のテロリストじゃねえか!!!!」


霊能少女「人聞きの悪いことを言うのはやめてほしい。これは『天国の扉』の祭司と呼ばれていた人物が自殺に使った拳銃。現場に放置されていたから、何かの役に立つかと思って拝借しただけ」


幼女幽霊「つまり泥棒じゃん。銃刀法違反と窃盗罪のダブルパンチじゃん」


霊能少女「……そんなことはどうでもいい。早く力を込めてもらえたいんだけど」


幼女幽霊「何するつもりなんだお前。銃があの化け物には効かないなんてとっくに分かってんだろ?」
297 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:46:46.45 ID:q0Hnviedo
霊能少女「……確かに、並みの重火器では歯が立たない。でも、それはあくまで通常兵器での話」

霊能少女「詳しい話は後で話す。とにかく、やってほしい」


幼女幽霊「分かったよ。ほら」グッ



シュンッ



霊能少女「礼を言う」


幼女幽霊「ありがとうもカッコつけないと言えんのかお前は」
298 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:49:04.03 ID:q0Hnviedo
……………………………………………………
……………………………………



幼女幽霊「……」ペラッ

幼女幽霊「……読み終わった」

幼女幽霊(これが……あの事件の全貌か。ずっと知りたかった真実……)

幼女幽霊(文として見ると、まるで私自身があの日を追体験しているよう。こんな化け物と明日は戦わないといけないのか)

幼女幽霊(……うわぁ、抜け出してぇ。今からコソッと抜け出したらバレんかな)チラッ


霊能少女「」ジー


幼女幽霊(……めっちゃこっち見てる)


霊能少女「どうだった?それを読んでみて」


幼女幽霊「……まあ、大まかの事情は把握した。確かに、これは人間の手におえる代物じゃないな。もちろん、幽霊や怪物でも対処出来ないだろうけど」

幼女幽霊「でも、分からない点がひとつある。これ、現場から回収されたメモのところなんだけど」スッ


『https://i.imgur.com/DotvkKw.jpg』


幼女幽霊「これ、お前は何だと思う?」


霊能少女「……分からない」
299 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:51:25.02 ID:q0Hnviedo
幼女幽霊(……この反応。こいつ嘘ついてるな。ってことは……このメモの内容が一番重要ってことなのか)

幼女幽霊(ちょっと揺さぶってみるか)


幼女幽霊「そう、私個人としては羅列された4桁の数字、これは年表の類いだと思う」

幼女幽霊「何かのパスワードとか暗号って線もあるけど、数字がどれも近いのが気になるんだよね」


霊能少女「……」


幼女幽霊「となると、気になるのは○が付けられている『1978』のところ。これが西暦を表しているとしたら、他の×が付いている年にはない、何かが起こった年だと思うんだけど」

幼女幽霊「お前はどう思う?」


霊能少女「……私も、その可能性が一番高いと思う」


幼女幽霊「じゃあ問題は1978年に何が起こったかってことだ。今からざっと40年前、私やお前が生まれるとっくの前の出来事。いくら何でもこれだけだと情報が少な過ぎる」

幼女幽霊「……なら、類似点を探すしかない。1978年に、今回と似たような事件がないかな」ポチポチ

幼女幽霊「『1978年 宗教 自殺』っと。検索ワードはこんなところか。さて、何が出てくる」
300 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:54:08.97 ID:q0Hnviedo
幼女幽霊「……」




霊能少女「……」




幼女幽霊「……あった。この年に……900人近くの人間が死んでいる事件がある。それも、カルトの集団自殺として、世界的に有名な……あの事件か」

幼女幽霊「……ちょっと待てよ。ってなると……ここに書かれている他の年も、同じような出来事が起きているんじゃないの」ポチポチ




幼女幽霊「……ビンゴか。正直当たってほしくなかったんだけど、間違いない」

幼女幽霊「このメモに書かれている数字は全て、カルトの集団自殺が起きた年と重なっている。ここまで来ると偶然なんて言葉ではとても片付けられない」

幼女幽霊「ど、どうなってんだよこれ。いくら何でもおかしいだろ……だって、集団自殺を起こしているのはどれも宗派が違う団体だ。国も、人種、信仰も何もかもがバラバラ、共通点がない。このメモは一体……」

幼女幽霊「で、でも……もし、もしもだぞ。こいつらが裏で繋がっていたとしたら、奴等が真に所属していたのは天国の扉で、神彁混の復活が目的だとしたら……」
301 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:55:18.92 ID:q0Hnviedo
霊能少女「……......」



幼女幽霊「……いい加減に、黙ってないで何か言えよ。知ってるんだろ、お前」

幼女幽霊「私がちょっと調べただけでもこれだけ出てきたんだ。この○と×の意味も、そして横に付いてる文字みたいな記号の正体も……話せよ。ここまで来て隠し事はなしだぞ」



霊能少女「…………」



霊能少女「……そう。アナタの推理は間違っていない」

霊能少女「ここに書かれている数字はカルトが集団自殺を引き起こした年。私の調べではこれらの組織はいずれも天国の扉と関わりがあったことが分かっている」

霊能少女「でも。教えられるのはここまで。これ以上はアナタが踏み込んでいい領域じゃない。深淵の奥の更なる真実には」
302 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:56:15.18 ID:q0Hnviedo
幼女幽霊「……は?人を勝手に巻き込んでおいてどの口がそんなこと言えるの?」

幼女幽霊「もう八割方、お前が隠そうとしていた事実はバレたんだぞ。この先に一体何があるんだよ」



霊能少女「……確かに、アナタはワタシのせいで、一連の事件に巻き込んでしまった」

霊能少女「でも、ただそれだけとも言える。もし、この事実をアナタが知ってしまったら、引き返せない可能性がある……ワタシのように」

霊能少女「今のアナタを突き動かしているのはただの好奇心。それだけの覚悟では足りない」



幼女幽霊「……じゃあ、お前を動かしているのは何なんだよ」
303 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:57:09.82 ID:q0Hnviedo
霊能少女「――復讐心、かな」




幼女幽霊「…………」


幼女幽霊「……あっそ」プイッ




幼女幽霊(……復讐って、こいつ……奴等との間に何があったんだ)

幼女幽霊(んなこと言われたら……こっちも黙るしかないじゃん。ズルい)




霊能少女「……」
304 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/17(水) 02:58:18.79 ID:q0Hnviedo
今日はここまで
約一年越しの伏線回収になりました
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 18:23:11.30 ID:ouT6oYum0
おほー板も復活したし気になってたのも続いてて嬉しい
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 20:12:56.68 ID:4wYwjKE40
いつまでも応援してやるかんな!
覚悟しろよ!
307 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 00:58:59.28 ID:lESPIf5mo
▢▢▢▢ 翌日 ▢▢▢▢



霊能少女「これが、私が考えた作戦。何か質問はある?」


幼女幽霊「……質問はある?とか言われても」

幼女幽霊「ほぼ邪魔する奴は全員ぶっ倒すってだけの脳筋作戦じゃねーか。作戦ですらないわ」


霊能少女「それが何か?」


幼女幽霊「何か?って言われても……だから、もっと具体的な案はないの?対神彁混の対策とか」


霊能少女「ワタシが相手をしたのはこの世界にまだ馴染んでいない状態だった。ようは産まれたての赤子のようなもの。今ではあれと全く違う状態になっていると仮定してもおかしくない」

霊能少女「それを考慮せずに、下手に対抗策を組んだら、かえって逆効果というもの。その時に合わせて臨機応変に対応するしかない」


幼女幽霊「つ、つまり……何も考えてないのか?」


霊能少女「だから、戦力を仮定するには情報が足りなさ過ぎるという話。ワタシ達が戦うのは見えない敵ではない。直接目で確認して、その時に合わせて行動しなくてはいけない。信じられるのは自分の力だけ、分かる?」
308 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:00:18.79 ID:lESPIf5mo
幼女幽霊「お、お前……よくそんなのでこれまで生きてきたな」

幼女幽霊(い、いや……それだけこいつの技術とセンスが確かってことなのか?頼れるのか、頼れんのか分からんな……)


霊能少女「……そろそろ時間、出発しよう」スッ



『21:00』



幼女幽霊「……!もうこんな時間か」

幼女幽霊(なんだかんだで……こいつともう丸一日以上は一緒にいるのか)

幼女幽霊(と言っても、こいつちょっと前までずっと半日近く寝てたけど。しかも起きた後はアホみたいに飯をコンビニで買ってきて食うし)

幼女幽霊(どんだけ食うんだよってくらい食ってたな。悟空かこいつは)


霊能少女「さて」ゴソッ


幼女幽霊「……」

幼女幽霊(……にしても、あいつが持っている鞄、やばいぞありゃ。幽霊の私のセンサーがビンビン反応してる。なんつうもん持ち歩いてんだよ)

幼女幽霊(あれだけの道具なら……何とかなるかもしれんな。とてもじゃないけど、私は相手にしたくないわ)
309 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:00:48.79 ID:lESPIf5mo
霊能少女「……そうだ。昨日から気になっていたことがあった」

霊能少女「アナタ、一年前と何か変わった?気配が少し違うような気がする」


幼女幽霊「え?どういう意味だよそれ」


霊能少女「……いや、心当たりがないならいい。勘違いかもしれないから」


幼女幽霊(なんだこいつ)
310 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:02:13.84 ID:lESPIf5mo
スタスタ スタスタ



幼女幽霊「結構歩くんだな。幽霊の私は疲れないから別にいいけど」

霊能少女「神社はだいぶ人里から離れたところにある。だから管理する人も自然と居なくなって、無人に成り果てたんだろう」

幼女幽霊「何か私が住んでる病院みたいな話だな」

霊能少女「なぜかは分からないけどこの町はそんな建築物が多い。大抵は高度経済成長期に建てられていて、今は取り壊されているか廃墟になっているけど」

霊能少女「恐らく、それが原因でこの町は怪異が多くなってしまったんだと思う。幽霊にとっては絶好の住処がいくつもある楽園に近い状態だから」

霊能少女「そのおかげで、町全体の気がおかしくなっている。力を持つ者なら違和感を抱くほどに」

幼女幽霊「……へー」


霊能少女「……!ちょっと止まって」ピタッ


幼女幽霊「え?なんだよ」


霊能少女「……あれを見てほしい」スッ


幼女幽霊「……?何かあんの?」チラッ
311 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:03:11.09 ID:lESPIf5mo
死骸『』ブラー



幼女幽霊「!?」ビクッ

幼女幽霊「えっ……な、なにあれ。動物?の死体が……吊るされてる」


霊能少女「……」スタスタ

霊能少女「……」ジー


幼女幽霊「なんだよこれ……プレデターでもいるのかよここに」


霊能少女「……恐らく、これはまじない。それも呪術に関連する」


幼女幽霊「じゅ、呪術!?」


霊能少女「私もその手の専門家じゃないから、詳しいことまでは分からないけど、恐らくあの集団自殺をした時の状況のように……この地を“死”に近くしているんだと思う」

霊能少女「……もしかしたら、また繰り返そうとしているのかもしれない。新たな神彁混を……呼び出そうとしているのかも」


幼女幽霊「マ、マジかよ……どうすんの」


霊能少女「……計画は変わらない。先に進もう」スタスタ


幼女幽霊「行きたくねぇ……」
312 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:04:16.94 ID:lESPIf5mo
スタスタ スタスタ



幼女幽霊「な、なぁ……なんで夜に攻め込むんだ?別に昼でも良かったんじゃないか」

幼女幽霊「街頭もないからだいぶ暗いし、夜道で迷いそうなんだが」

霊能少女「道は完全に私の頭に入っているから問題ない。夜に来たのはあまり信者の相手をしたくないから」

霊能少女「奴等が目撃されたのはいずれも昼の時間帯だった。なら、集会が行われていない夜に攻めるのが一番効率がいい」

幼女幽霊「でも、絶対にいないって保証はどこにもないよな?」

霊能少女「それならそれで、夜襲を仕掛けられるこっちが有利」

幼女幽霊「……ほんと適当だな。どんだけ行き当たりばったりなんだよ」
313 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:05:30.46 ID:lESPIf5mo
スタスタ スタスタ



霊能少女「……ん?あれは……」

幼女幽霊「なに?また死骸でもあった?」

霊能少女「……あれを見て。注連縄のようなものが張られている」



『』



幼女幽霊「あぁ……あれって神社とかによくあるやつなんじゃないの?」

霊能少女「……そう、役割としては結界のようなものだと思っていい。つまり、ここから先は……奴等の領域」


幼女幽霊「……」ゴクリ


霊能少女「警戒を怠らないで。この縄の向こうはもはやこことは別世界だと思っていい。何が起こるか分からない」

霊能少女「覚悟ってやつを決めた方がいい」


幼女幽霊「……いいから行くぞ。こっちは早く終わらせたいんだから」


霊能少女「……分かった。行こう」スッ
314 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:07:22.49 ID:lESPIf5mo
ザワッッッッッッッッッ!!!!!!!!!



霊能少女「!?」ビクッ

幼女幽霊「!?」ビクッ



霊能少女「っ……!これは……」



幼女幽霊「な、なんだ……今の。空気が……変わった?」

幼女幽霊「ま、まるで……他人の腹の中にいるような……縄の向こう側とまったく違う……」キョロキョロ


霊能少女「……こちらが違和感を覚えたように、向こうもワタシ達の存在に勘付いたはず」

霊能少女「急ごう。あまり長居をするのは危険」


幼女幽霊「あ、あぁ……そうだな。確かに、ここにいると頭がおかしくなりそうになる」




スタスタ スタスタ




幼女幽霊「神社の本殿まであとどれくらいなんだ?」

霊能少女「もうそう遠くない。ここからあと100メートルもない。そろそろ見えてくる」

幼女幽霊「と、とうとうご対面ってわけか」
315 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:08:40.32 ID:lESPIf5mo
スタスタ スタスタ





霊能少女「……灯りが見えてきた。あそこが……そう」

幼女幽霊「……!!」




ズズズズズズ……




幼女幽霊(な、なんつうところだよ……まさに悪魔の巣、絶対に近付くなって私の中の防衛本能が全力で警報鳴らしてるぞ)

幼女幽霊(もはや根本から、神を祀る場所という概念を塗り替えしている。いや、あいつらにしたらあの化け物も神なのか……)


霊能少女「……!出てくるッッ!!」


幼女幽霊「!?」ビクッ






ズズズズズズッ…………


ズズッ…………
316 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:10:25.01 ID:lESPIf5mo
ザッ






神彁混「…………」スッ






霊能少女「……っ!」ゴクリ


幼女幽霊「こ、こいつが……神彁混。死から産み出された化け物……」



幼女幽霊(体長は3メートル前後、体色は真っ黒で羊の骸骨のような頭部に翼、手足はかなりのリーチがあり、地面に引きずるほどの長さのある尻尾を持つ)

幼女幽霊(レ、レポートに書いてあった通りだな……想像していた通り、外見は悪魔そのもの。こんなのが本当に現代社会に潜んでいたなんて……ファンタジー小説にでも出てきそうな見た目だ)

幼女幽霊(い、いや……一番ヤバいのは……あいつが纏っているオーラ、気だ)

幼女幽霊(こ、こんな気配を持つやつなんて見たことがない。私が知る中で一番本能的に危ないと思ったのはメリーさんだけど、それとは正に次元が違う。あいつは……この世界の者じゃない。まったく別のところからの来訪者だ)
317 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:11:43.97 ID:lESPIf5mo
幼女幽霊(見ているだけで気圧される。全身に鋭い刃物を押し付けられているように、体中がチクチクする。これは悪意でも敵意でもない、そんなのを遥かに通り越した、ただ純粋な殺意そのもの。それもこの世界全てに向けられた――)

幼女幽霊(……あ、あれ?なんだろ、これ。デジャヴっていうか、既視感っていうか……病院で感じた時と同じような感覚がする……?)



霊能少女「大丈夫?」


幼女幽霊「だ、大丈夫なわけねえだろ……絶賛後悔中だわ。もう今すぐ帰りたい」

幼女幽霊「ど、どうすんだよ……正直なところ、お前の話を聞いても、あの影のように多少は私の力が通じると、この瞬間までは思っていたけど……あれは無理だぞ。そんなレベルじゃない」

幼女幽霊「この世界の全ての武力はあいつには無力だ。いかなる力も……通用しない。そんな感じがする」


霊能少女「……正確に言うと、ちょっと違うかな。ダメージは与えられる。ただ殺せないだけ」

霊能少女「それに、以前ワタシが成功したように、封印は出来るはず」


幼女幽霊「ふ、封印って……そ、そういえばまだ聞いてなかったけど、どうやって封印する気なんだ?」
318 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:13:09.29 ID:lESPIf5mo
幼女幽霊「前回は井戸を媒体にして封印したって言ってたけど、今この場にそんな物はないぞ……」

霊能少女「……大丈夫、ちゃんと策は考えてある」

霊能少女「ただ、これはまだ試験的なモノで、回数が限られている。費用と下準備もかかって、三回分しか用意出来なかった」

幼女幽霊「さ、三回っ!?本当に大丈夫なのか!?」

霊能少女「当たりさえすれば、一発で成功する。心配する必要はない」






神彁混「…………」ザッ






幼女幽霊「!?」ビクッ

幼女幽霊「な、なんだあいつ……さっきから、お前をずっと見てるけど……襲ってこないの?」
319 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:14:40.58 ID:lESPIf5mo
霊能少女「……恐らく、奴はワタシが本物かどうか確認している。向こうからしたら、ワタシは唯一生き残った相手だと思うから」

幼女幽霊「つ、つまり宿敵同士ってわけか。ラブラブじゃん、私はいなくてもいいよね、帰っていい?」

霊能少女「……冗談を言ってる場合じゃない。いつ攻撃を仕掛けてくるか分からない。集中して」






神彁混「……......」ザッザッ

神禍混「」シュンッ






幼女幽霊「ッッ!?」ビクッ

幼女幽霊「き、消えた!?どこにっ!?」キョロキョロ
320 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:15:40.92 ID:lESPIf5mo
霊能少女「違うッ!!!!上に飛んだ!!!!来るッ!!!!」








神彁混「…………」シュンッ








霊能少女「避けてッッ!!!!!!」サッ

幼女幽霊「う、うわあああああああああああ!?」バッ








ズシーーーーーーーーン!!!!!!!!
321 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/18(木) 01:16:42.08 ID:lESPIf5mo
今日はここまで
明日で一気に最後まで行けると思います
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 07:49:51.10 ID:QzNC+KJTo
これはいいものだ
323 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:02:23.46 ID:1HoW9zBeo
幼女幽霊(危ねえ!?私でもどうやって上に移動したか見えなかった!!まさかメリーさんと同じ道を通らない瞬間移動!?)

幼女幽霊(それにあいつの攻撃!!!!余波だけで理解った……間違いなく霊体でも喰らったら無事では済まない!!)






神彁混「…………」ザッ






霊能少女「!?」ビクッ

霊能少女(ワタシに狙いを付けているのか。それともあの幽霊が見えていない?いや、さすがにそれはないか)

霊能少女(それとも、生者を優先して狙う習性でもあるのか?まあいい、逆に好都合だ)スッ




神彁混「…………」ブンッ




霊能少女「ッッ!!」サッ

霊能少女(以前より動きのキレが増している。ワタシの身体能力だと、いくら水でブーストしても正面からだと厳しいか)
324 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:03:59.33 ID:1HoW9zBeo
神彁混「…………」ザッ



シュンッ!!!!!!



霊能少女「!!」サッ

霊能少女(死角からの尻尾での攻撃、これは警戒していれば軌道は読める)


霊能少女「ハァッ!!!!!」ピシャッ



神彁混「…………」ビチャッ



霊能少女(対神彁混用の特別製の水。どうだ、効果はあるか?)



神彁混「…………」ピクッ

神彁混「…………」ブンッ



霊能少女(っ!一瞬動きが止まったけど、それだけか。やはり気休め程度にしかならないか)

霊能少女「……ッッ!?」ビクッ
325 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:05:04.18 ID:1HoW9zBeo
ズズズズズズッ……


神彁混「…………」スッ




霊能少女(こ、これは……あの天国の扉が使っていた影のような呪詛ッ!こいつも使えるのか!?)

霊能少女(いや……順序が逆なのかも。元々、この影は神彁混の力だった?あの呪詛から感じられた意思の正体は……)

霊能少女(……マズいな。この距離だと本体と影、両方相手にするのは――)




神彁混「…………」シュンッ

影『…………』ズズズズズ




霊能少女「……っ!!」







幼女幽霊「ハァッッッ!!!!!!!!」グッ






神彁混「…………」ドンッ
326 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:06:44.34 ID:1HoW9zBeo
幼女幽霊「おい!大丈夫かよ!?お前今さっき死にかけただろ!!」

霊能少女「……出来れば、もっと早く助太刀が欲しかった。何の為にアナタを呼んだんだか」

幼女幽霊「し、仕方ないだろ!あいつ、私を無視してお前に突っ込んで行ったんだぞ!タイミングってもんがあったんだよ!」

幼女幽霊「そんなことより、何だよあれ……神彁混が呪詛の力を使えるなんて聞いてないぞ」




神彁混「…………」

影『』




霊能少女「……だから言ったでしょ。想定して戦うなって。実戦では常に不測の事態が起こり得る」

幼女幽霊「そういう問題じゃねえだろ……ここは一時退避した方がよくないか?い、いくら何でも想定外過ぎる。私達二人でも、あの神彁混と影、両方を相手するのは無理だ」
327 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:08:05.27 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「……いいや、作戦に変更はない。あの影は神彁混と違い、私とアナタなら撃退するのにそこまで苦労はしない」

霊能少女「それとも、今更怖気づいた?」

幼女幽霊「あぁ!?喧嘩売ってんのかお前!!!!」

霊能少女「フッ……それでいい。アナタはそっちの方が似合ってる。それに……」

霊能少女「向こうが大人しくこちらを逃がしてくれるなんて、期待する方が間違い」






神彁混「…………」バッ






幼女幽霊「うわっ!?また来た!!!!」

霊能少女「念力で神彁混の動きを止めることは出来る?」

幼女幽霊「え?た、多分無理だ。さっきあいつをぶっ飛ばした時も、押し潰すつもりで最大級の力だったはずなのに、全然ダメージは食らってなかったし」

霊能少女「……そう、ならアナタはサポートをお願い。影の対処と、隙があったら神彁混に攻撃して」ダッ

幼女幽霊「えっ!?お前生身で突っ込むの!?」
328 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:09:41.55 ID:1HoW9zBeo
霊能少女(接近戦だとこちらが不利。でも、奴を封印するにはこちらが近付くしかない)

霊能少女(大丈夫、道具を惜しみなく全て解放すれば……一瞬だけど、怯ませるくらいは出来る。あとはそこに全てを賭ければ……)


霊能少女「フッ!!」ブンッ




神彁混「…………」




ドッカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!




霊能少女(前に使ったのと同じ、爆薬と清めの塩を混ぜた爆弾。こいつがそれなりに効くのはもう実践済み)

霊能少女(そして、次はこれっ――)




神彁混「…………」シュゥゥ




パラパラッ……
329 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:11:01.48 ID:1HoW9zBeo
神彁混「…………」

神彁混「…………」グッ




ズンズンッ!!!!!!!!!




霊能少女(縛ることだけに特化した封印の札。多分、これだけでは完全に封印するまでには足りない。でも、補助としては申し分ない)






神彁混「…………」ググッ






幼女幽霊「!!」

幼女幽霊「か、かみかまの動きが止まった!!これはチャンスか!?」

幼女幽霊「よ、よし!私も……!!」グッ






ズズーン!!!!!!!!!



神彁混「…………」ググッ






霊能少女(……空間の捻じ曲げるほどの念力、合図も出さずによくこのタイミングで出してくれた。流れはこれで完璧)

霊能少女(さて、一発目。これで成功してくれたらっ!)チャキッ
330 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:12:37.54 ID:1HoW9zBeo
バンッ!!!!!!!




幼女幽霊「!?」

幼女幽霊(あ、あれって……私が力を与えてやった銃か!?封印ってあれのことだったのか)






霊能少女(当たれッ……!!)






神彁混「…………」

影『』ヌルッ



ドンッ!!!!!!!!!!!



影『』シュゥゥゥゥ

神彁混「…………」






霊能少女「くっ……影に防がれたか」

霊能少女(でも威力は十分。受け止めたあの影が跡形もなく消滅した)

霊能少女(咄嗟にとったあの防衛行動。あれも自分に当たればただでは済まないと神彁混自身が本能的に悟り、動いたに違いない。つまり、この“死魂弾”は奴の脅威に成り得る)
331 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:13:49.54 ID:1HoW9zBeo
シュンッ



幼女幽霊「お、おい。さっきお前が撃ったのって私が力を込めた銃弾だよな?封印ってあれのことなのか」

霊能少女「……言ってなかった?そう、あれは死のマイナスの力と生のプラスのパワー、二つを組み合わせた銃弾。ワタシは死魂弾と名付けた。アナタの手を借りるまでは試験的なモノしか作れなかったけど、これで完成した」

霊能少女「死の力は奴を相殺することが出来る。そして、生のパワーは神彁混を抑制する」

霊能少女「つまり、この二つの現象を同時に起こせば……何の媒体も使用することなく、奴の力を相殺して、無に還すことが出来る」

幼女幽霊「何となく原理は分かったけど……なんだ、そのネーミングセンス」


霊能少女「……?何か?」


幼女幽霊「いや……何でもないわ」
332 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:15:19.10 ID:1HoW9zBeo
神彁混「…………」グッ




霊能少女「!!」

幼女幽霊「!!」


幼女幽霊「な、なんだ?奴さん、ずいぶんと怒っているように見えるけど」

霊能少女「……そりゃ、初めての経験だろうしね。あの銃弾が向けられた時、奴は初めて恐怖という感覚を覚えたはず」

霊能少女「自分の身を脅かす存在は即効で排除の対象になる。もっとも、あの化け物に感情ってモノがあればの話だけど」

幼女幽霊「つ、つまり……余計に怒らせた、ってことなのか?」

霊能少女「そう、だから初弾で決めたかった。余計な警戒をされたくなかったのに」

幼女幽霊「や、やばくないか……それって。事態が悪化したってことじゃん」

幼女幽霊「それに、いくらあいつに銃弾を撃っても、さっきみたいにあの影で防がれたら本体に届かないぞ……」
333 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:17:02.58 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「問題ない。あの影に防御されるより前に叩き込めば……超至近距離から撃てばいいだけの話」

幼女幽霊「はんっ……よくそんな無理ゲーを涼しい顔で言えるもんだわ」

霊能少女「……ん?」






霊能少女(……おかしい)

霊能少女(なぜ、この瞬間を、神彁混は襲ってこない?)






霊能少女(さっきも少し気になっていたけど、これは明らかにおかしい……ワタシとこの霊が喋っている今……どう見ても隙が出来ているはず。それでも、あの神彁混は襲ってこない。一度だけではない。今、この時も)

霊能少女(まるで漫画じゃあるまいし……どうなっている?)




霊能少女「…………」




幼女幽霊「お、おいどうしたんだよ」
334 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:19:11.27 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「……不自然だと思わない?なぜか、アナタと会話している間だけ、神彁混が襲ってこない」

幼女幽霊「……?」


幼女幽霊「い、言われてみればそうだけど……それがどうしたんだ?警戒でもしてるんじゃないの?」


霊能少女(……それはない。前に手合わせしたことがあるワタシだからこそ分かる。この神彁混は……前回と比べて、何かおかしい)






神彁混「…………」






霊能少女(もう一分は経った。それでも奴は襲ってこない)

霊能少女(相手が自分に危害を加える存在というのは認識しているはず。なら、なぜ攻撃してこない?)

霊能少女(……神彁混の行動を辿れば、何かヒントがあるはず。まず、最初は上空からの攻撃、先に向こうから仕掛けてきた。そして次はワタシとの攻防、これも変化はなかった)

霊能少女(一度、戦闘は中断……問題はここからだ。少しの間、奴は攻撃してこなかった)

霊能少女(そこまで気にすることはないかもしれない間……でも、殺し合いの最中にある間としては、明らかに不自然だ。わざわざ目の前で敵同士が作戦会議をするのを見過ごすやつがどこにいる)


霊能少女(……ん?敵同士……)
335 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:20:14.22 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「……ちょっと作戦がある。協力してくれる?」

幼女幽霊「作戦?何をする気なんだ?」

霊能少女「次はアナタが突っ込んで。私が援護するから」

幼女幽霊「は、はぁっ!?や、やだよ!!!!あんな化け物に特攻しろって!?」


霊能少女「……大丈夫、ワタシの思惑が正しければ……」


幼女幽霊「な、なんだよ。それって……もし外れてたらどうすんだよ」

霊能少女「その時はアナタ自身で対処して、これでも足付きの幽霊でしょ」

幼女幽霊「て、てめえ!!!!人のことを何だと思ってやがる!!!!!」

霊能少女「もうアナタは人じゃなくて幽霊、漫才をしている暇はない」

霊能少女「大丈夫、これでもアナタを信用している。アナタの実力はワタシが身を以って体験しているから」

霊能少女「お願い」


幼女幽霊「っ……」

幼女幽霊「……ほ、ほんとに大丈夫なんだろうな?」
336 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:23:06.59 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「ワタシを信用して」


幼女幽霊「……お前以上に信用出来ない相手も中々いないけど、いいよ。乗ってやる」グッ


ボンッ


長髪白装束娘「」ボドッ

スッ

長髪白装束娘「勘違いするなよ。別にお前に頼まれたからやるんじゃない」

長髪白装束娘「こっちも……ちょっと気になってることがあるしな。それを確かめたいだけだ」


長髪白装束娘(……この違和感の正体が知りたい。この神彁混に感じる……既視感の正体を)

長髪白装束娘(もしかしたら私は……こいつと……どこかで――!!)


ダッ


長髪白装束娘「ていやああああああああああああああああああああ!!!!!!」ブンッ






神彁混「…………」スッ
337 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:24:07.53 ID:1HoW9zBeo
ゴツンッ



神彁混「…………」



長髪白装束娘「!?」

長髪白装束娘(えっ!?うそっ!?当たった!?絶対に避けると思ったのに!!)

長髪白装束娘(な、舐めてるのかこいつ……じゃあこれならどうだ!!念力で最大まで強化したサイキックキック!!!!)ブンッ



ドゴォ!!!!!!



神彁混「…………」



長髪白装束娘(チッ……効いてないか)

長髪白装束娘(……ん?なんでこいつ、反撃してこないんだ?それに、防御も回避もしない)

長髪白装束娘(ど、どうなってる?まるで私が見えていないみたいな……でも攻撃をする一瞬、こっちを見た気がしたし……)



神彁混「…………」
338 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:25:30.07 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「ッッ!!!!」チャキッ




バンッ!!!!!!!




神彁混「…………」スッ

影『』ズズズッ




ドンッ!!!!!




影『』シュゥゥ





霊能少女「……やはり、ワタシの攻撃にだけ反応するか」


霊能少女(確信した。こいつは……なぜか、あの霊に一切の抵抗をしない)

霊能少女(決して、見えていないわけではない。その証拠に、奴は明らかにあの霊に関与している時間だけ、行動が消極的になっている)

霊能少女(ワタシがあの幽霊と話していた時、そして横から念力で飛ばされても、あの幽霊の方に奴は殺意を向けていなかった)

霊能少女(そして今の一方的な攻撃……これは……間違いない)


霊能少女(一体……何がどうなっている?なぜあの霊との時間だけ……それとも、幽霊に危害を加えるわけではないのか?)
339 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:27:11.93 ID:1HoW9zBeo
霊能少女(敵はあくまで生きている人間だけ……いや、それだけでは説明出来ない。例え幽霊であっても、神彁混の前ではこの世界の住民。つまり生者と同じく殺戮の対象のはず)

霊能少女(ワタシと同じように、あの幽霊も神彁混に対して恐怖を感じていたし、影はあの病院を浸食しようとしていた)

霊能少女(となると……あの霊が特別なのか?……ダメだ、判断材料が少な過ぎる。もう考えるのはよそう)

霊能少女(でも、理由はともあれ……これは使える)




長髪白装束娘「」スッ

幼女幽霊「……どういうことだ、これ」


霊能少女「……理由は分からない。でも、確かなことは……神彁混は、アナタには危害を加えないということ」

霊能少女「今、こうやって言葉を交わせるのもアナタと一緒だから。最初の攻撃も、ワタシを狙っていた。奴はずっと……ワタシだけを見ていた」


幼女幽霊「あいつ、幽霊が見えないんじゃないのか?それとも、私がもう死んでいるから興味を持っていないとか」
340 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:28:16.15 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「そのどれらでもないと思う。ただ一つ言えるのは……ワタシよりも、アナタの方が真実に近付いてると思う。何か心当たりはない?」




幼女幽霊「…………」

幼女幽霊「知らないよ。そんなの」




霊能少女「……そう。ならいい」

霊能少女「とにかく、これは好機。これで確かな勝機が出てきた」

霊能少女「……これをアナタに渡しておく」スッ


拳銃『』


幼女幽霊「!?」

幼女幽霊「なっ……!わ、私に撃てって言うのか!?」
341 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:29:44.72 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「それが一番成功率が高い。神彁混はもうワタシに最大の警戒を向けている。そんな針の糸を潜るような危険を冒すより、アナタが撃った方が成功率は高いはず」

幼女幽霊「で、でも!実銃なんて撃ったことないぞ私!」

霊能少女「ゲームは得意でしょ?それと同じ。真っすぐ銃身を向ければ、そこに銃弾は当たる。そう難しいことじゃない」

幼女幽霊「簡単に言ってくれんなオイ……」



霊能少女「……じゃあ一応、確認しておく」

霊能少女「アナタは撃てる覚悟がある?」



幼女幽霊「覚悟って……どういうことだよ」



霊能少女「そのままの意味。一年前のあの日、アナタは自分を消滅させようとした相手でも情けをかけた」

霊能少女「神彁混に……その甘さを捨てることが出来る?」
342 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:30:58.68 ID:1HoW9zBeo
幼女幽霊「……」

幼女幽霊「……んなことでイチイチ確認取るなら、自分で撃てよ。私はやりたくないぞ」


霊能少女「……それもそうか。分かった。死魂弾はワタシが撃つ。無理を言って申し訳なかった」

霊能少女「もう一発しか残ってない。これで決めないと」チャキッ


幼女幽霊「んで作戦はどうすんの」


霊能少女「以前、ワタシと戦った時に出した、あの分裂と増殖を繰り返す技。今でも出来る?」


幼女幽霊「それなら問題ないけど」


霊能少女「良かった。じゃあアナタはアレを使って神彁混を攪乱して」

霊能少女「それに紛れて、ワタシが至近距離で死魂弾を撃つ」


幼女幽霊「大丈夫なのか?それ。いくら数が多いって言っても、本命がお前って分かってたら意味ないだろ。その銃だけ警戒すればいいんだから」
343 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:32:10.66 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「それでいい。ワタシだけに集中すれば、その分アナタの攻撃で隙を作り易くなる」

霊能少女「アナタは全力を出して、神彁混の動きを一瞬止めてほしい」

霊能少女「そこでケリをつける」


幼女幽霊「……いいのかそれで。渾身の念力でもちょっと吹っ飛ばすので精一杯だったんだぞ。いくら向こうが攻撃してこないって言っても、力の差は歴然……」


霊能少女「なに?自信ないの?」


幼女幽霊「このっ……!!そういうことじゃないだろうが!私なんか頼りにしていいのかって言ってんだよ!信じられるのは自分の力だけってお前も言ってただろ!」


霊能少女「さっきも言ったけど、ワタシはアナタを信用している。アナタなら……きっと成し遂げると確信している」

霊能少女「これが理由だけど、納得した?」


幼女幽霊「ぐっ……」

幼女幽霊「だ、だから……お前は何でそういう恥ずかしいこと真顔で言えるんだよ……こっちまで恥ずかしいじゃん」クルッ




スッ
344 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:33:07.49 ID:1HoW9zBeo
長髪白装束娘「……私も、全力でやる。だからお前も決めろよ。任せたからな」

霊能少女「……ありがとう。こちらも任せた」

長髪白装束娘「……ふん」シュンッ








神彁混「…………」

神彁混「…………」クルッ




長髪白装束娘「そりゃあああああああああああ!!!!!!」グッ




神彁混「…………」ドンッ




長髪白装束娘(くっそ!やっぱこの肉体の攻撃は効かないか!よし次!)
345 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:34:47.27 ID:1HoW9zBeo
長髪白装束娘「」ヌルッ

長髪白装束娘「」ズルッ

長髪白装束娘「」ズサッ



長髪白装束娘(物量で押し潰す!!!!!!)






ギチギチ……ギチギチ……


神彁混「…………」グググッ


ギチギチ……ギチギチ……






霊能少女「なるほど、神彁混を丸ごと増殖体で覆ったのか。これならワタシも動きやすくて助かる」

長髪白装束娘「へっ、どうよ。いい作戦だろ」ヌルッ

霊能少女「……ところで、今出てきたアナタはオリジナル?それとも分裂した個体?」

長髪白装束娘「あ?本体なんてないよ。私達は意識を共有してるから、みんな本物。お前も知ってんだろ」

長髪白装束娘「まあ多少は性格に差異が出来るけどな。魂を分割してるから、感情が偏る個体も出てくるし」

長髪白装束娘「私は基本的に普段に近い性格だけど」
346 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:35:49.22 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「そう。で、これからどうするの?」

長髪白装束娘「ん、神彁混にどれぐらい近付けばいいんだ?」

霊能少女「影の防御は即座には出せないはず。一瞬、意識を向ける必要がある。そうなると、弾速から計算して……」

霊能少女「……半径1メートル以内。これなら影は反応出来ない」

長髪白装束娘「あっそ。ならそこまで近付けるように圧縮するか」グッ






長髪白装束娘「「「「「 」」」」」ギュー

神彁混「…………」





347 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:37:24.19 ID:1HoW9zBeo
長髪白装束娘「どうだ、150人分のおしくらまんじゅうは。いくらあいつでも簡単には動けまい」

霊能少女「……凄い光景。あと何人分は出せる?」

長髪白装束娘「まあ最大でこの倍は余裕だな。以前と比べて、私の能力もパワーアップしてるし」

霊能少女「……今のアナタを敵に回さなくて良かった」

長髪白装束娘「そりゃこっちのセリフだっての」






神彁混「…………」ギュー

神彁混「…………」ピクッ






長髪白装束娘「さ、これぐらいでいいだろ。合図をしたらあそこの一点にだけ絡みついてる私達を消す」スッ

長髪白装束娘「お前は近付いて、そこを撃て。一応念のために三体分の私を護衛に付かせといてやるから」ピッ


長髪白装束娘「」ヌルッ

長髪白装束娘「」ズサッ

長髪白装束娘「」バタッ


霊能少女「……何かこれだけの数がいると気持ち悪」


長髪白装束娘「おい、次そんなこと言ったらお前にそいつら絡まして――」
348 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:38:30.62 ID:1HoW9zBeo
グシャアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!








幼女幽霊「!?」クルッ

霊能少女「!?」バッ








神彁混「…………」グググッ

長髪白装束娘「「「「「 」」」」」ググッ








長髪白装束娘「なっ……あいつ動き始めたぞ!抵抗しないんじゃなかったのか!?」

長髪白装束娘「んっ!!!!し、しかもなんつう怪力だ……!!このままだと抑えきれんぞ……!!」ググッ
349 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:40:10.98 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「くっ、もう行くしかないか」チャキッ

霊能少女「増殖体でワタシの援護をして。一気に決める」ダッ


長髪白装束娘「分かった……!!!!」グッ




霊能少女(やはり限度があるのか?危害は加えないというだけで、敵に協力するようなら最低限の反抗はするのか)

霊能少女(それとも……あの技は魂を分割して肉体を分裂、増殖させる。つまり一体一体の身体は魂が薄くなっているということ。それが引っ掛かったのか)

霊能少女(どちらにしても絶対の信頼はおけない。やはり保険程度に考えないと)






神彁混「…………」グググッ






長髪白装束娘「!!!!!!」

長髪白装束娘「おい!!!!気を付けろ!!!!あいつ何かしてくるぞ!!!!!」
350 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:41:59.04 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「!?」








神彁混「…………」パッ








シュババババババババババババババ!!!!!!!!!!!!!








霊能少女(ッッ!?)

霊能少女(影を針のように周囲に伸ばしてきた!?)

霊能少女(避け――)






バッ

グサッ!!!!!!
351 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:44:11.10 ID:1HoW9zBeo
長髪白装束娘「「「ゴハッ!?」」」シュゥゥ


霊能少女「……!!」

霊能少女(た、盾になって庇ってくれたの……?)






神彁混「…………」






長髪白装束娘「……クソが。い、今の攻撃で神彁混の周囲にいた私達が全滅した。とんでもない技を出してきやがったな」

長髪白装束娘「幸い、あのメスガキを守ることには成功したけど……ヤバいな。またあの攻撃が来たら」

長髪白装束娘「……よし」






(おい、聞こえるか)


霊能少女(これは……念波?)
352 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:46:10.08 ID:1HoW9zBeo
(あぁ、そうだ。いいか、次にあの攻撃をされたらさすがの私でもヤバい。だからその前に速攻で終わらせる)

(作戦に変更はない。お前はただ射程距離内で撃て。私が全力でサポートする)


霊能少女(……了解)ダッ






長髪白装束娘「さて……やるか」グッ






神彁混「…………」スッ






霊能少女(くっ、こっちに気付かれたか。どうする)






神彁混「………...」グググッ


シュンッ

ガシッ


神彁混「…………」チラッ


長髪白装束娘「「「ぐおおおおおお……」」」ガチガチ
353 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:47:36.02 ID:1HoW9zBeo
長髪白装束娘「髪で四肢を拘束……!!」




神彁混「…………」ブンッ

長髪白装束娘「うわっ!?」バッ




ヒュンヒュン


ドンッ!!!!!!!!!




長髪白装束娘「う、うわぁ……やっぱダメか。ヨーヨーみたいに振り回されて地面に叩きつけられた……あぁはなりたくないな。すまん私」

長髪白装束娘「くっ、じゃあこれで!!!!」グッ




長髪白装束娘「」ガシッ

長髪白装束娘「」ガシッ


神彁混「…………」ググッ



影『』シュンッ



長髪白装束娘「」グサッ
354 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:48:44.14 ID:1HoW9zBeo
長髪白装束娘「チッ!やっぱり問題はあの影だ!あいつが纏っている影を何とかしないと囲むことさえ出来ない!!!!」

長髪白装束娘「ん?待てよ。あの影は病院で現れたモノと同じ。つまり、対処法も変わらないはずだ」

長髪白装束娘「……なら、前と同じ手を使うか。出し惜しみはなしだ。全力全開、増殖体を全て使い切る!!!!」グッ






ズズズズズズッ……






神彁混「…………」キョロッ


長髪白装束娘「「「「「 」」」」」ズサササササ


神彁混「…………」グッ






長髪白装束娘「今だぁ!!!!!!!!!!」ググッ
355 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:50:36.27 ID:1HoW9zBeo






ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!






長髪白装束娘「よ、よし……成功だ。あぁ、もうストックが0になったなこれ。私が最後の残機だ」スゥ

幼女幽霊「でも、手ごたえは感じた……間違いなく、今の攻撃は通じた」






パラッ……パラッ…






神彁混「…………」グラッ

神彁混「…………」グタッ







幼女幽霊「!!!!」

幼女幽霊「あ、あの神彁混が膝を付いてる!やった!!これなら……!」






霊能少女(捉えた)

霊能少女「これで……終わり!」チャキッ





バンッ!!!!!!!!!!!!
356 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:51:50.10 ID:1HoW9zBeo
神彁混「…………」グッ






幼女幽霊(影の防御も間に合わない!!!!やった!!勝った!!!!!)






ドンッ




神彁混「…………」バサッ






霊能少女「!?」

幼女幽霊「!?」




霊能少女(なっ……翼を使って飛んだ!?あの一瞬で――)

霊能少女(まずい、弾はもうない。どうする――)グッ
357 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:54:00.09 ID:1HoW9zBeo
幼女幽霊(最後の一発が外れた!?こ、これじゃあ……)

幼女幽霊(ど、どうする……このままだと待っているのは確実な死。あいつを無力化出来ないとなると、もう逃げるしか選択肢はない)

幼女幽霊(これまでの道を、光もまともにない暗闇の山道の中を逃げ切るなんて……無理だ。絶対に)

幼女幽霊(……いや、私だけだったら出来るかも。なぜか私はあの神彁混に襲われないし。でも、あのメスガキは……)


幼女幽霊(かっ……考えろ!!まだ何か……思考がフル回転してる今のうちに、打開策を考えないと……!!)


幼女幽霊(……!!!!)


幼女幽霊(そ、そうだ。あの弾丸は私の力を与えたもの。半分はあいつのが混じってるけど、もしかしたら操れるかもしれない)

幼女幽霊(弾はまだ宙にある。間に合え――!)グッ
358 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:56:06.94 ID:1HoW9zBeo
ギュインッ




霊能少女「!?」

霊能少女(た、弾が戻って――)






キュウウウン!!!!!!!!






神彁混「…………」






幼女幽霊「いっけええええええええええええええ!!!!!!!!!」






神彁混「…………」チラッ






幼女幽霊「ッ!?」

幼女幽霊(な、なんだ。今、一瞬こっちを――)






ズドンッ!!!!!!
359 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:58:32.27 ID:1HoW9zBeo
神彁混「…………」グラッ






霊能少女「当たっ……」

幼女幽霊「た……?」






神彁混「…………」フラッ

神彁混「…………」フラッフラッ

神彁混「…………ァ」






『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』






幼女幽霊(っ!?な、なんつう声だ!?さっきまでずっと無言だったのに!!!!)

霊能少女(ぐっ!?これは……断末魔、か。もう幾度も聞いたのと同じ……最後の足掻きか)
360 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 02:59:32.79 ID:1HoW9zBeo
神彁混「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」キュイイン

神彁混「アアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!!!!!!」グググッ

神彁混「アアッ!!!!!!!!!!!!」シュンッ






幼女幽霊「……」ゴクリ

幼女幽霊「き、消えた……終わったのか」




霊能少女「……」フラッ




幼女幽霊「お、おい!!!!大丈夫か!!!!」バッ




霊能少女「ハァッ……ハァッ……」

霊能少女(な、何とかなった。これで……あの神彁混は消滅した)

霊能少女(一歩前進……ってところか)
361 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:02:15.81 ID:1HoW9zBeo
幼女幽霊「ど、どうした!急に倒れて!?」

霊能少女「んっ……何でもない。あの雄叫びを間近で聞いたから、三半規管がちょっと麻痺しただけ。すぐ治る」

幼女幽霊「そ、そうか……終わったんだな、これで」

幼女幽霊「あの神彁混はどうなったんだ?封印って聞いてたけど、どこかに吸い込まれたように消えたけど」


霊能少女「……死に還った、ってやつかな。あいつは生と死の狭間の存在。だから死ぬこともないし、生きているわけでもない」

霊能少女「そのバランスを崩すには0に戻すしかない。だからアナタの力が必要だった」

霊能少女「封印式を刻印した銃弾に、この二つの力。ワタシでもどこに消えたのかは分からない。試験的に試作品を神彁混の肉片の一部に撃った時も、先程と同じような現象が起きて消えた」

霊能少女「正確に言うと封印ではないのかもしれない。ただ、それを観測する術はワタシ達にはない」


幼女幽霊「そ、そうか……」
362 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:03:50.49 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「……よし、行こう。ここに長居をする理由はない。撤収する」スタッ

幼女幽霊「もう動けるのかよ。お前も大概人間離れしてんな」























『…………』ジー
363 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:04:58.66 ID:1HoW9zBeo
………………………………………………………………
………………………………............



霊能少女「ここまで来たらいいか。追手はもう来ない」

霊能少女「……ありがと。今回は本当に助かった。アナタの協力なしでは成し遂げられなかった」


幼女幽霊「あぁ……まったく、こっちとしては本当にいい迷惑だった。もう二度とやりたくねぇ」

幼女幽霊「これで手に入るのが金だけとか本当に納得いかんわ……」


霊能少女「約束の小切手だけど……アナタって銀行に行けるの?これを換金しなくては現金は手に入らない」


幼女幽霊「はぁっ!?無理だぞ!私はあの貞子みたいな肉体しか出せないんだから!あんな格好でハロウィンの日以外でうろついたら職質されるわ!」


霊能少女「そう、じゃあこちらから手を回して、後日届くようにしておく。安心して、もうワタシはアナタ達には関わらないから」

霊能少女「じゃあ、ここで。アナタとはもう二度と会うことはないと思う」
364 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:07:37.58 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「アナタのことは二度と忘れない。今までワタシが祓ってきた幽霊とは違う、アナタほどの力なら、その魂が闇に染まることもないだろう」

霊能少女「こんなことに巻き込んで本当に申し訳なかった。謝罪する」



幼女幽霊「……」

幼女幽霊「……なぁ、お前ってまだこんなこと続けるの?」

幼女幽霊「今回だって何度も死にかけたじゃん。最後は私があの銃弾の軌道を修正しなかったら終わりだったし、私と戦った時さえも、一歩間違えば危なかったはず」

幼女幽霊「……別に、お前がどうなろうと私はどうでもいいけど、そんなことを続けてたら本当に死ぬぞ」



霊能少女「……どうでもいい。そんなことは」



幼女幽霊「どうでもいい?」
365 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:09:32.18 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「そう。例え、自分の命を投げ捨てるようなことになっても、その過程で一人でも多くの命を救えるのなら、ワタシは喜んでその命を捧げる」

霊能少女「この眼帯を受け継いだ時のように、ワタシが死んでもその信念は死なない。ワタシ達はそうやって怪異と戦い続けてきた。先人達の骸を乗り越えて、今、私はこうやって生きている」

霊能少女「だから……何も恐れるモノはない。例えそれが、死であろうとも」


幼女幽霊「……じゃあ、お前以外の人はどうなんだ。家族や友達とか……お前が死んで困る人がいるんじゃないの」


霊能少女「……家族、か。もう両親は既に他界している。私の唯一の血縁者は……妹だけ」

霊能少女「あの子なら……きっと、ワタシが死んでもそんなに悲しまないと思う。友と呼べる存在も……一人だけ、そう呼べるかもしれない人はいるけど、歩みを止めるつもりはない」

霊能少女「それに、まだやり残したことがある」


幼女幽霊「……復讐ってやつか」


霊能少女「うん、これだけは譲れない。この心臓が動いているうちは……辞めるつもりはない」
366 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:12:09.96 ID:1HoW9zBeo
幼女幽霊「……最後にひとつ、聞いておきたい。お前って誰の為に戦ってるんだ」


霊能少女「……?質問の意図がよく分からないんだけど」


幼女幽霊「だから、お前が戦い続ける理由だよ。お前の場合、その復讐ってもんは結局、後付けされた理由に過ぎないように聞こえた。その根本にある物じゃない」

幼女幽霊「なんでお前は……幽霊や怪物と戦ってるんだ?一体誰の為に?それを私は知りたい」


霊能少女「…………」

霊能少女「……答えを挙げるとするなら……全て人間の為。突然、大きな力で惨めに踏みにじられる命があるという事実を知ってしまったら……黙ってジッとしていられない。ワタシにそれを祓うことが出来る力があるとしたら猶更」

霊能少女「これが、ワタシが戦う理由」


幼女幽霊「……嘘だろ。それ」
367 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:13:58.03 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「……なぜ?ウソだと言えるの?」


幼女幽霊「さあ、私にもよく分からん。でも、それはお前の本心じゃないなって、直感で感じただけ」

幼女幽霊「もういいよ、勝手にやってろ。私は警告したからな」

幼女幽霊「……じゃあな」フワッ


霊能少女「……そう、警告は感謝する。ありがとう。そして、さようなら」




シュンッ




霊能少女「…………」

霊能少女「……何の為に、戦っている、か」
368 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:16:25.86 ID:1HoW9zBeo
霊能少女(あぁ、そうか……)



霊能少女(どうして、あの幽霊をあそこまで信用することが出来たのか、やっと分かった)



霊能少女(似ていたんだ……あの子と。生意気な口調や、性格が)



霊能少女(……もう後戻りは出来ない。そう、“本番”はここから)



369 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:17:48.08 ID:1HoW9zBeo
…………………………………………………………
…………………………………………



DQN幽霊「せんぱああああああああい!!!!!!よく戻ってきてくれたっスううううううううう!!!!!」ダキッ

幼女幽霊「あーもう!抱き着くなうざい!!離れろ!!」グイッ

DQN幽霊「それで、何があったんスか?カニカマは封印出来たんスか?」

幼女幽霊「あぁ、それがだな……」






幼女幽霊「ってことになった。まあ結果的に言えば成功だな。後日報酬が届くみたいだし」

DQN幽霊「そんなことが……でも、色々謎が残る結末っスね」

幼女幽霊「まあ……確かにな」

DQN幽霊「どうしてカニカマは先輩だけを襲わなかったんスかねぇ……やっぱり幽霊は死んでるからどうでもよかったみたいな?」

幼女幽霊「その線はないと思う。お前も、あの肉片を見た時に感じただろ。生死は関係ない。恐らく、この世界の住人ってだけで、神彁混の殺戮対象なんだと思う。でも、なぜか私だけは例外だった……」

DQN幽霊「謎っスねぇ……」



幼女幽霊「…………」
370 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:19:05.63 ID:1HoW9zBeo
幼女幽霊「……ひとつだけ、心当たりがあるんだけどな。あんまり考えたくないけど」


DQN幽霊「え?マジっスか?」


幼女幽霊「あぁ……私だけが特別な理由。ってなると……あの一年前の出来事が原因かもしれない」


DQN幽霊「一年前っつーと……もしかして、先輩がオーブと合体したあれっスか」


幼女幽霊「うん……よく考えてみたらさ、オーブちゃんって諸説はあるけど、魂的なものってのは確かじゃん」

幼女幽霊「つまり、“死”そのものなんだよね。それが……私の命を繋いだ。つまり、死と生が混じり合ってしまった……」

幼女幽霊「……あんまり考えたくないけど、もしかしたら私って……神彁混に近い存在になっちゃってるのかもしれないな」



DQN幽霊「……!?」

DQN幽霊「ち、違うっスよ!!!!先輩は……そんな化け物じゃないっス!!」
371 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:20:15.62 ID:1HoW9zBeo
DQN幽霊「ちょっと馬鹿っスけど……俺をいつも守ってくれて、頼りになる優しい先輩っスよ!!!!」

幼女幽霊「……恥ずかしいこと言ってんじゃねえよ。あと馬鹿ってなんだコラ」ブンッ


DQN幽霊「いてっ!?」ボコッ


幼女幽霊「……まあ、あくまでも可能性の話だからな。それにもう……私とは関係ない話だ」

幼女幽霊「…………」


DQN幽霊「ど、どうしたんスか先輩?深刻な顔して」




幼女幽霊「いや……もしかしたらさ、私って……神彁混に殺されたんじゃないかなって」




DQN幽霊「!?」

DQN幽霊「えっ!?ど、どういうことっスか!?いきなりっ!?」
372 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:21:58.47 ID:1HoW9zBeo
幼女幽霊「病院で初めてあの影と対峙した時……どこか見覚えがあったんだ。これと似たような気配を感じたことがあるって」

幼女幽霊「神彁混を直接視た時も、同じような既視感を感じた」

幼女幽霊「でも、私が幽霊になってからじゃない。小さい頃はずっと病院でお爺ちゃんと一緒だったし、そんなやつは一度も来なかった」

幼女幽霊「ってなると……生前になる。もう十年以上も前だから、覚えていなくても無理はない」

幼女幽霊「そして、神彁混と出会ったタイミングってなると……死の瞬間しかない。あまりに突然で、奴の姿を覚える暇もなく死んじゃったのかもしれない」


DQN幽霊「で、でも……先輩って、家族と一緒に交通事故で死んじゃったんスよね?」


幼女幽霊「……そう。でも、あの事故には……気になる点が一つあった」
373 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:24:46.22 ID:1HoW9zBeo
幼女幽霊「私達はお父さんの運転する車に乗っていて、その車が横転して崖に落ちたと記事には書いてあった」

幼女幽霊「……でも、不思議なことに、車体の上に、謎の傷があったんだよね。まるで爪でこじ開けたような……巨大な傷が」


DQN幽霊「……!!」


幼女幽霊「あの時はそんな気にすることでもなかった。原因は不明だったけど、事故の衝撃で出来た傷だって記事にも書いてあったし」

幼女幽霊「……もし、あの巨大な傷の正体が、この既視感の正体が全て繋がっていたとしたら…………」



DQN幽霊「……ん?」



幼女幽霊「……まあ、もしそうだとしても、別に嫌なことでもないけどね」

幼女幽霊「お父さんとお母さん、そして私自身の敵討ちをしたことになるんだから。まあちょっとは気が晴れるってもんだよ。あんま実感ないけど」

幼女幽霊「私が何の躊躇いもなく、あの銃弾を神彁混に当てられたのも……そのせいかもね」


DQN幽霊「……ちょっと待ってください。それっておかしくないっスか?」
374 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:27:29.20 ID:1HoW9zBeo
DQN幽霊「だ、だって……あの化け物が産まれたのは一年前の集団自殺のはずっスよね。先輩が死んだあの事故が起きたのは十年前……計算がおかしいっスよ」


幼女幽霊「そう、問題はここだ。多分これがあいつが語らなかった真実の正体」


幼女幽霊(あいつが言っていた行方不明者と不審死の数。確かに異常な数だけど、急増したというわけじゃない。そりゃそうだ。そんな突然に人が死んだら、いくら何でも騒ぎになるのは確実)

幼女幽霊(……この世界は何十年も前から、人が消えている。その数に疑問を持たないほどに)

幼女幽霊(そして、あのメモ。40年前の『1978年』に起こった集団自殺に付けられていた○、他の年には付いてなかったのに、この年にだけ……あの年にだけ、何かが起きた)

幼女幽霊(……あいつの言った通り、関わらなくて正解かもな。これは……)








幼女幽霊「つまり、神彁混は――」








おわり……?
375 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:28:09.03 ID:1HoW9zBeo








…………………………………………………………………
…………………………………………







376 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:30:04.42 ID:1HoW9zBeo
霊能少女「……」ピッ




プルルルルルルルル……

プルルルルルルルル……


ガチャッ




霊能少女「久しぶり、元気にしている?」


『…………』


霊能少女「待って、切らないでほしい。今日は重要な要件がある」


『……何の用だ』


霊能少女「父と母を殺した犯人の正体が分かった。そして、その死の真相も」


『……は?』









つづく
377 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/10/19(金) 03:36:51.39 ID:1HoW9zBeo
終わりです
これにて幼女幽霊編は完結になります
話の筋としては霊能少女がメイン、幼女幽霊がサイドストーリー、屍男が裏ルートみたいな感じになると思います
次は一年ぶりに屍男の話になるんですけど…また長期間書けない状況になると色々困るので、書き溜めを進めてスレを立てようと思ういます
ただそうなると結構時間がかかるかもしれないです…ごめんなさい
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 05:30:37.78 ID:+0dVEA9co
私まつわ
おつおつ
妹がでるかと思ったがそんなことはなかったぜ
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 18:46:32.55 ID:QI7FhviJ0

よかった
また気長に待ってるわ
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 19:58:49.84 ID:o6ddXIwJ0

影の王子とメリーさんの対決も楽しみ
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 20:01:08.68 ID:nQY+hw7vO
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/31(水) 23:15:07.30 ID:wQX7qM6H0
素晴らしい作品をありがとう!!久しぶりにワクワクした。
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/11(日) 11:35:02.13 ID:VPAedUom0
いつまでもまってるぜぇ
でも幼女幽霊が無くなっちゃうのは悲しいなぁ
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