江ノ島「明日に絶望しろ!未来に絶望しろ!」戦刃「…終わりだよ、ドクターK!」カルテ.8

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203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/21(月) 00:29:41.38 ID:4e6q8gyb0
乙ー
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/02(土) 18:43:37.04 ID:jpi+75tsO
205 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/01/06(月) 03:34:03.12 ID:T13XxN850

苗木「……どうする?」

「…………」

モノクマ「早くしてよー!」

苗木「僕は……賭けてみてもいいんじゃないかなと思うけど」

舞園「そう、ですよね。怖いですけど、逃げ続けても状況は良くなりませんし」

十神「フン。虎穴に入らずんば虎子を得ず、か……」

霧切「……気乗りはしないけど、きっと断らせてはくれないでしょうしね」

石丸「逃げるより立ち向かうべきだ!」

大和田「そうだな。要は勝ちゃいいんだ!」

セレス「ギャンブルと同じですわ」

葉隠「やってやるべ!」

山田「頑張りましょう!」

腐川「で、何をすればいいのよ?」

モノクマ「フフフ、いいねいいね! ルールは簡単、5階の植物庭園にある大事な物を
      隠したんだ。それを制限時間以内に見つけられたら君達の勝ち」

モノクマ「見つけられなかったら負け。シンプルだろう?」

苗木「もし、見つけられなかったら……?」

モノクマ「別に何もしないよ。すごすごとここに戻ってくれば?」

朝日奈「モノクマにしては親切だね。なんだか不気味……」

206 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/01/06(月) 03:37:16.97 ID:T13XxN850

十神「チーム分けをするぞ。いくら手出しをしないと言われていても単独行動は危険だ」

桑田「俺は今回は流石に休ませてもらうぜ。なにかあったら足引っ張っちまいそーだし……」

山田「僕も行けません。素早く動けそうにないですから」

朝日奈「私も残るよ。さくらちゃんが心配だし」

大神「いや、我に構わず行け。一人でも多い方が良いだろう」

朝日奈「でも……」

大神「モノクマも言っていただろう。ここに攻め込むつもりならとっくにしているはず」

苗木「朝日奈さん、時間がないよ」

朝日奈「……わかった。私も行く」

十神「戦闘能力で考えて、俺と石丸と大和田の三班で行くぞ」

腐川「あたしは白夜様の班よ!」

不二咲「僕は大和田君の班がいいかな」

石丸「霧切君は目を離すと単独行動をしそうだから僕の班に入りたまえ!」

霧切「……構わないけど、足を引っ張らないで頂戴ね」

石丸「ど、努力しよう……」

葉隠「あとはどうする?」

山田「時間もないですし、グーチョキパーで決めたらどうですか?」

苗木「そうだね。せーの!」


苗木、舞園がグー、朝日奈がチョキ、葉隠、セレスがパーとなった。

207 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/01/06(月) 03:38:58.34 ID:T13XxN850

霧切「苗木君達はうちに入りなさい」

苗木「うん……(そんな気がしてたよ)」

舞園「邪魔をしないようにしますね……」

十神「葉隠、セレス。来い」

大和田「じゃあ、朝日奈が俺の班だな!」

朝日奈「行ってくる。すぐに見つけて戻るからね!」


大神、桑田、山田の三人を残し、11人は保健室を飛び出し植物庭園に向かった。


モノクマ「見つけられるといいねぇ」


ほくそ笑むモノクマを残して。



  ― コロシアイ学園生活六十九日目 植物庭園 PM4:12 ―


大和田「見つかったかー?」

朝日奈「ないよ!」

不二咲「こっちも!」

朝日奈「種の袋も探した方が良いかな?」

大和田「全部見た方がいいだろうな」

208 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/01/06(月) 03:41:28.70 ID:T13XxN850

不二咲「あ、ひっくり返すなら別の袋に入れながらだと汚れなくていいかも」

大和田「流石不二咲だぜ!」

不二咲「う、うん。頑張るよ!」


植物庭園の小屋の中を三人は探している。以前大和田のチーム名が刻まれたツルハシは
ここにあった。他に何かめぼしいものがあれば良いのだが……

一方、十神達のチームは鶏小屋の付近を捜索している。
小屋の中に入りたがるのが葉隠くらいだったので、中を任せたのだ。


葉隠「おーい、お前さんら。宝物を知らねえかー?」

鶏「コッコッコッコッ?」

セレス「ご自慢の占いで鶏の言葉がわかったりしませんの?」

葉隠「人の占いを何だと思ってんだ! オカルトじゃねえんだぞ?!」

腐川「葉隠、喋ってないで手を動かしなさいよ!」

十神「おい腐川。お前も小屋の中を探せ。どうせ臭いんだからニオイも気にならないだろ」

腐川「はい、ただいまー!!」


ガチャッ、バタバタ。


十神「中は二人に任せる。周辺を探すぞ」

セレス「人を使うのが上手ですわねぇ。わたくしも人のことは言えませんが」

209 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/01/06(月) 03:42:52.89 ID:T13XxN850

花壇の辺りを中心に探しているのが石丸のチームである。


霧切「地面に気を付けて。掘り返した場所は色が違うはずよ」

苗木「そうか、成程!」

舞園「流石霧切さんですね!」

石丸「了解した!」

霧切「ちなみに石丸君は花壇に入らないで頂戴。気付かないでうっかり踏み固めてしまいそうだから」

石丸「ぬなぁ?!」

舞園「私が見張ってます! 一緒にこっちを探しましょう、ね?」

石丸「う、うう……了解……」

苗木(流石にちょっと気の毒だ……一応、昔よりは注意力も上がってるんだけどな……)


一緒に医療訓練をしてきた苗木は石丸の成長を如実に見てきた。……が、未だに凡ミスを
することもあるのでこの大事な局面で足を引っ張らせる訳に行かないのは確かだ。


苗木(……ごめんね。君の分も僕が頑張るから!)

霧切「苗木君、何をしているの? 時間がないのよ?」

苗木「あ、うん。今行くよ!」

210 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/01/06(月) 03:45:38.18 ID:T13XxN850

ちょっとだけだけど。多分今週中にもう一回来ます。

新年明けましておめでとうございます。
今年も細々とですが頑張ります。

211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/06(月) 09:17:29.15 ID:xJxQhSnh0
あけおめえええええええええ!!!
さて、どんな展開になるか楽しみだ
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/08(水) 20:06:55.86 ID:d53gD+iSO
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/02(月) 11:26:58.04 ID:09XtriY50
最近うんこしてて詰まらせた上イキみで便座ぶっ壊した・・・弐代と同じ気持ちになれたかも知れない
214 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 01:35:44.60 ID:VQvOGne50


               ◇     ◇     ◇


一方KAZUYAは――


K「フム……監視カメラはなし、か。元々立ち入りを禁止していた区域だからな」

K(ここが寄宿舎の二階か……ボロボロだな。五階のあの教室のように修復されていない)キョロキョロ


その時、頭痛と共に記憶が蘇ってきた。


K(うっ……そうだ。あそこが学園長の私室でここが俺の部屋。手前はロッカールーム……)


まず手前のロッカールームに入った。生徒達が記憶を失う前に使っていたもので私物が入っているはずだ。


K(当たり前だが開かないな。いや……)


KAZUYAは電子キーの場所に己の教師手帳を当ててみた。教師の権限は強い。もしかしたら……

ピー、ガチャン。


K「やはり……」


すんなり開いたロッカーの中を見てみる。ノートを見るに、ここは葉隠のロッカーだったようだ。
他のロッカーも順番に開いて覗いていく。


K(まだ見せる訳にはいかないな。しかし、いずれ真実を明かした時のための証拠はいる……)

215 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 01:38:04.85 ID:VQvOGne50

持ち出すのに一番手頃だった霧切の手帳を取り出すと、次に自分の部屋に行く。
殺風景な部屋だ。そもそも、騙し討ちのような形でこの学園に閉じ込められたため、
本当に必要なものしか置かれていない。


K(これは……)


机の上には、シンプルな写真立てに入ったいくつかの写真が置いてあった。
勝手に閉じ込めることに一応罪悪感があったのか、仁が気を利かせて写真を用意していたのだ。

写真に写っているのは柳川、大垣、高品、七瀬と言ったお馴染みのメンバー達。
その横の写真には、どうやって手に入れたのか父・一堡(カズオキ)の写真もあった。
探偵は辞めたとはいえ、伊達に仁も霧切家の人間ではないということだろう。

懐かしくなって、KAZUYAは写真を指で撫でた。そして、部屋の中を精査する。


K(……いかんな。だいぶ時間を取られてしまった)


ロッカールームの調査に加え、KAZUYAの部屋には使える医療器具や薬品類が多かったため、
それらを調達していたらすっかり時間がかかってしまった。

急ぎ足で最後の部屋に向かう。


K(フム、ここに来るのも久しぶりか……)


大人が少ないため、KAZUYAは仕方なく仁の話し相手を務めたものだった。
絶望的なまでに考え方は合わなかったが、ただの雑談であれば知識の豊富な
仁は話し相手としてけして悪くはなかったものだ。

隅から隅まで部屋の中を物色するが、特に目ぼしいものはない。


K(パソコンの中にも手がかりはなし、か。……ム? パスワードだと?)

216 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 01:41:37.67 ID:VQvOGne50

パソコンの中に一つだけ開かないファイルがあったのだ。
気になったKAZUYAは手当たり次第に単語を打ってみるが、なかなか開かない。


K(待てよ? あんな男ではあったが、娘に対する期待と愛情は確かだった。となると……)


試しにKYOKOと入れてみるとロックは解除され、隠し扉が顕わになったのである。


K(こんな物があるとは……つくづく隠し部屋の好きな男だ)


二階の男子トイレ、保健室に続き3つ目の隠し部屋である。いい加減驚かなくなっていた。


K(中にあるのは……箱?)


部屋の中には棚と机しかない。棚の中身は持ち去られたのか空であった。
机の上には装飾されたプレゼントボックスがポツンと置いてある。


K(霧切に何かあげようとしていたのだろうか。学園長には悪いが中を改めさせてもらおう)


しかし、KAZUYAは開けたことを後悔することになる。パンドラの箱とは言ったものだ。

中には絶望しか入っていなかったのだから……


K「これは……! 人骨か」

K(大きさ、形状からして成人男性の物に間違いない。一体、誰の……)


思い当たる人物は一人しかいない。これを置いたのは恐らく黒幕だ。
となると、この部屋を使っていた人物だと考えるのが妥当だろう。

217 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 01:47:32.40 ID:VQvOGne50

K(霧切学園長……いけ好かない男ではあったが、まさかこんなことになってしまうとはな……)


静かに手を合わせると、KAZUYAは蓋を戻した。


K(本当にこれだけか? 何か収穫は……)


きょろきょろと周囲を見渡し、棚の上の写真立てに気付く。幼い霧切が写っている写真だ。
特に考えがあった訳ではないが、なんとはなしに手に取って裏を見てみる。


K(これは……!)


メモリーカードが貼り付けられていた。早速それをパソコンで開いて見てみる。


K(映っているのは生徒達か……)


中に入っていたのは動画であった。この学園に一生住むことになっても良いかと
学園長が問いかけ、生徒達が覚悟を決めて答えている映像である。


K(これがあれば記憶喪失の決定的証拠になるな。……ムッ!)


鋭敏な感覚を持つKAZUYAは背後から侵入者が近づいたことを察知し、すぐに動画を消した。
案の定、扉からモノクマが入ってくる。


モノクマ「ヤッホー!」

K「……何の用だ?」

218 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 01:49:01.41 ID:VQvOGne50

モノクマ「何の用? 学園長の僕が学園の中を歩いていたらいけない?」

K「フン、本物の学園長はこの部屋の主だろう」

モノクマ「全く、泥棒した鍵でここまで来ておいて偉そうなこと言うよねぇ。よっこいしょ、と」


ソファに座るモノクマを怪訝に見ながらKAZUYAは警戒する。


K「戦刃むくろはどうした? 俺を殺しに来たんじゃないのか?」

モノクマ「そういう野蛮なやり方は好きじゃないんだよね。聞きたいんじゃない?
      先代の学園長がどうやって死んだかをさ」

K「確かに気にはなるが……」


KAZUYAは違和感を覚えていた。何故このタイミングでモノクマはここを訪れ、
自分と意味のない話をしようとするのか。それに、相方である双子の姉はどうした?


K(成程、時間稼ぎをするつもりか。そうはさせんぞ!)


自分をここに釘付けにし、その間に戦刃を使って生徒達を強襲させる腹づもりに違いない。


K「悪いがその手には乗らん。お前の小狡い謀略に乗るのはここまでだ」

モノクマ「あーあ、君のような勘の良い大人は嫌いだよ」

K「…………」


相手にせず部屋を出ようとするKAZUYA。
その背中に、足を組み頭の後ろに手をやったモノクマのせせら笑いが突き刺さる。

219 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 01:58:08.61 ID:VQvOGne50

モノクマ「――でもさ、残念だけどもうシナリオは決まってるんだよね」


KAZUYAが急いで扉を開けると、そこにはモノクマ軍団が待ち構えていた。


モノクマ軍団『クマー!!』

K「クソッ! 用意周到な……!」

モノクマ「無駄だよ。もう間に合わない。あの選択をした時点で未来は決まってしまったんだから」

K「うおおおおおおおおおおおッ!!」


KAZUYAはモノクマ軍団を蹴散らしながら前に進む。


K(急がなくては! もしあいつらの身に何かあったら……!!)


何体のモノクマを倒しただろうか。

KAZUYAが廊下を突破し、寄宿舎の階段を降りて校舎へ向かう途中だった。



『ピンポンパンポーン! 死体が発見されました。一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』



―― 今、絶望の最終シナリオが始まる。

220 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/03/03(火) 02:15:40.53 ID:VQvOGne50

ここまで。

投下遅れてすみません。素直に忘れていました。
リアルの方の創作活動が忙しくて、3月いっぱいはバタバタしそうです。

久しぶりにKAZUYA描いたので、Twitterの方にうp
https://twitter.com/doctor_ronpa_K
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/03(火) 02:29:31.43 ID:IMCYvvTH0

まずはバッドからか
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/03(火) 11:02:44.44 ID:LcqkckFQO

誰か死んでしまったか……
223 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:29:54.52 ID:o/fTASlA0

K「何があった?!」


バンッ!と保健室の扉を蹴破らんばかりに飛び込む。
KAZUYAはバリケードがなくなっていることに気が付き、青ざめた。


桑田「せんせー……」

大神「西城殿」

K「……何故お前達しかいない?」


保健室には負傷している桑田、大神、山田の三人しかいなかったのだ。


山田「実はですな……」

K「……!」


説明を聞く前にKAZUYAは飛び出した。ちょうど階段を降りてきた生徒たちと鉢合わせになった。


K「お前達! さっきのアナウンスは?!」

苗木「先生! 大変です!」

石丸「し、しし……!」

朝日奈「死体! 死体が!!」

十神「こっちだ! 早くこい!」

K「!!」


生徒に連れられ、KAZUYAは二階に上がった。階段のすぐ前の廊下、そこにあったのは――

224 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:30:54.52 ID:o/fTASlA0

K「なんだと……そんな、馬鹿な……?!」


「……………………」


そこには血溜まりの中、物言わぬ姿となって倒れている女の姿があった。

黒く短い髪、細く締まった肉体。右手の入れ墨。



――戦刃むくろの死体であった。



K「狸寝入りはよせ、戦刃……その手はくわんぞ……」

不二咲「先生、それが……」

舞園「死んでいるんです。確かに……」

葉隠「は、はは……本当にありえないべ」

腐川「罠だとっ、思ったのよぉぉ!」


離れたところに立っている腐川が叫ぶ。訓練でほぼ血液恐怖症を克服した彼女だが、
顔見知りの人間の死体はやはり恐ろしいようだ。


K「ば、馬鹿な……」


医者のKAZUYAは一目見た瞬間、死んでいるとわかっていたが恐る恐る脈を取り瞳孔を確認した。


K「間違いない……確かに死んでいる……だが、これは一体どういうことだ?」

225 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:32:04.28 ID:o/fTASlA0

大和田「仲間割れ……ってことか?」

セレス「ですが、霧切さんの持ってきたデータによりますと彼女は江ノ島盾子の双子の姉。
     怪我もしていますし、この大事な状況で裏切るでしょうか?」

十神「裏切ったというよりは用済みになって一方的に捨てられた方がしっくりくるな」

霧切「いよいよ彼女の計画の最終局面に入った……ということではないかしら?
    戦刃むくろはもう必要ないから消された。むしろ、これは演出……」

K「…………」


顎に手をやる霧切の表情は非常に険しい。KAZUYAの表情もまた同じく。


モノクマ「大せいかーい! コロシアイ生活はいよいよ最終フェーズに入ったのであります!」

苗木「モノクマ……!!」


やってきたモノクマは、嬉しそうにピョコピョコと飛び跳ねている。


モノクマ「どうなっちゃうんだろうねぇ? ドキドキするねぇ? あー、早くネタバラシしたいなぁ」

霧切「学級裁判を行うのね?」

モノクマ「もう! 霧切さんたら相変わらず空気が読めないんだから!」


「えっ?! 学級裁判?!」


全員が驚いて霧切を見る。


石丸「学級裁判も何もないだろう……犯人はわかりきっているのだから……」

226 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:33:01.87 ID:o/fTASlA0

大和田「テメエでテメエの首をしめるってことか? そんなバカな」

朝日奈「一体なに考えてるの?」

モノクマ「とりあえず、保健室のメンバーと合流したら? モノクマファイルは送っておくからさ。
      それじゃ、裁判場でお会いしましょー!」

「…………」


全員黙ったままKAZUYAの顔を見た。


K「……とりあえず、お前達が無事で本当に良かった。一旦、保健室に戻ろう」


KAZUYAが促し、全員保健室へと戻る。


               ◇     ◇     ◇


桑田「ハァ?! 戦刃が死んでた? なんで?!」

山田「そんなバカな?!」

K「間違いない。あれは仮死状態などではなかった」


胸元をナイフで一突きにされての失血死である。血糊を使ってもKAZUYAの目と鼻はごまかせない。


大神「何故、そんなことを……」

K「……それより、俺からも聞きたいことがある。お前達は何故保健室の外に出ていた?」

舞園「実は、モノクマからゲームを持ちかけられたんです」

227 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:33:43.35 ID:o/fTASlA0

K「なに、ゲームだと?」


生徒達は、その場にいなかったKAZUYAにモノクマとの取引について話した。


                  ╂


植物庭園を探していた生徒たちは、なかなか目的のものが見つからずに焦りを感じていた。


葉隠「そもそもよぉ、俺達は一体なにを探してんだ?」

セレス「宝物、とは言いますが具体的なことは何も聞いていませんからね」

腐川「そんなんじゃいつまで経っても見つからないわよ!」

十神「セレス。ギャンブラーの勘とやらは働かんのか?」

セレス「わたくしは超能力者ではありませんのよ。そういうことは葉隠君の分野では?」

葉隠「お、いっちょ占ってみっか?」

腐川冬子「やめなさいよ。葉隠に占わせたら七割の確率で外れちゃうじゃない!」

葉隠「んなこと言われてもなぁ! 何もしないよりはマシだべ!」


話していると、物置周辺を探していた大和田チームが合流した。


大和田「おーい! そっちはなにか見つかったか?」

朝日奈「こっちは全然ダメ!」

不二咲「肥料の袋も全部見たんだけど、それらしいものはなかったんだ」

十神「チッ。そっちも収穫なしか」

228 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:34:41.71 ID:o/fTASlA0

苗木「みんな! ちょっとこっちに来て!」


その時、苗木がメンバーを呼びに走ってきた。


苗木「妙なものを見つけたんだ!」


苗木に連れられモノクマフラワーの前に全員集まる。舞園が花の裏側を指し示した。
遠目でハッキリしないが、小さな袋のようなものが置かれているように見える。


舞園「あそこです!」

石丸「苗木君があの花に襲われそうになったところを霧切君が助けて、その時に舞園君が見つけたのだ」

大和田「デカした、兄弟!」

腐川「見事に一人だけ役に立ってないわね……」

石丸「僕は転んだ苗木君を助け起こして運んだぞ!」

十神「そんなことはどうでもいい。……位置が悪いな」

霧切「あの花は巨大な食虫植物のようなものよ。迂闊に近づけば呑み込まれるわ」

不二咲「どうしよう。せっかく見つけたのに……」

大和田「俺に任せろ。花なんてぶっ潰してやるぜ!」

朝日奈「あ、危ないって! 万が一のことがあったらどうするの?!」

霧切「……物置に除草剤はないかしら? 植物だから、枯らしてしまえば……」

不二咲「あ、そういえばあったよ!」

大和田「持ってくるぜ!」

229 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:35:27.78 ID:o/fTASlA0

             ・

             ・

             ・


モノクマフラワー「」シナシナシナ……

苗木「貴重な植物かもしれないから、可哀想な気もするけど……」

舞園「仕方ないですね。こうしないと取れませんし」

葉隠「霧切っち、まだ危ねえって!」

霧切「…………」


モノクマフラワーが枯れるや否や、霧切は素早く袋を回収する。


十神「中身はなんだ?」

霧切「――鍵だわ」

セレス「鍵? どこの鍵ですか?」

霧切「調べるのは後でも出来る。とにかく今は戻りましょう」


                  ╂


K「それがこの鍵か……俺の持っているマスターキーとは形状が違うな」

霧切「私が見た限り、一箇所だけこの鍵が入りそうな場所がある」

K「マスターキーが使えない場所。すなわち、黒幕にとって最も重要な場所と言うわけだな」

K「恐らく……情報処理室。黒幕の本拠地!」

230 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:36:48.57 ID:o/fTASlA0

桑田「な、なんでそんな重要なもんを渡したんだよ? 殴り込みにこいってことか?」

山田「……まさか、僕達に降参するつもりとか?」

朝日奈「ええ、そんな……そんなことってあるのかな?」

セレス「では、戦刃むくろを殺したのは有終の美を飾るためということですか?
     自分で作り上げた舞台の幕を引くために、自ら犯人となったと」

十神「ヤツのことだから何か仕掛けているだろうが、面白い。この謎を説けば全て終わりと言うわけだ」

大神「文字通り最後の戦い、か」

不二咲「この裁判が終われば、なんらかの決着が着くってことなんだね……」

桑田「おっし! 燃えてきた! やってやろーじゃん!!」

大和田「おうよ! 完膚なきまでにやっつけてやるぜ! まあ、推理はおめえらに任せるけどな」

山田「そこで人任せですかー?!」

腐川「そ、捜査の最中に襲ってこないわよね? 大丈夫よね?」

舞園「大丈夫だとは思いますが、なるべくバラバラにならないようにしましょう」

苗木「よし、なら早速モノクマファイルを確認して捜査に……」

K「…………」

苗木「先生?」

K「……何か言ったか?」

苗木「ぼうっとして、どうかしたんですか?」

K「いや、なんでもない……。そうだな。捜査に行こう」


KAZUYAの口数は少ない。
231 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/05/28(木) 02:39:10.42 ID:o/fTASlA0

ここまで。


皆様、ご体調はいかがでしょうか?1は生きております。
コロナの影響で相変わらず仕事は忙しいですが、無事です。

皆様もお気をつけて。それでは。

232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/28(木) 13:26:18.39 ID:0sbo+b+dO

身体に気を付けて
233 : ◆takaJZRsBc [sage]:2020/09/06(日) 22:36:12.10 ID:p54HlrUJ0

生存報告

ミスが有ったので修正。戦刃さんの死体発見現場は一階と二階の踊り場でした。


ちょっと暑さが落ち着きましたね。皆様いかがでしょうか。
1は夏バテに弱くて熱中症に何度かなりかけてました。おかげで
更新が大幅に遅れてました。すみません。

だいぶ間が空きましたがけして遊んでるわけではなく……
賞金もないようなささやかな小さい賞ですが、この間初めて賞を頂きました。
あと、初めて新人賞の一次を通過しました。もしいつかデビューできたら、
余った時間全部このSSに回して完結させるのでどうか祈っててください……
234 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/06(日) 22:38:27.31 ID:p54HlrUJ0

K「これが最後になるなら準備をしないとな。お前達は先に行っていてくれ」

大和田「おっし! 気合い入れるぞ!」

葉隠「最終決戦だべ!」

不二咲「みんな、頑張ろうねぇ!」


ぞろぞろと保健室を出ていく生徒達。


K「……石丸。ちょっといいか?」

石丸「はい? なんでしょう?」


他の生徒達が出ていったのを見計らい、KAZUYAは引き出しから分厚い封筒を取り出した。


K「ここに俺の知り合いの医者達のリストがある。念の為、アルターエゴにもデータを入れたが
  もしなにかあったら頼るといい。外がどうなっているかわからんが、いくらなんでも
  全滅はしていないはずだ」

石丸「ありがとうございます! ちなみに、先生は……」

K「……俺はここを出たら忙しくなる。残念だがずっとお前達を構っている訳にもいかないだろう。
  だから、苗木と協力して立派な医者になるんだぞ」

石丸「はい! わかりました!」


KAZUYAは手を差し出した。


K「――医者の道は険しい。みんなと手を取り合って、頑張れ。
  何があってもくじけるんじゃないぞ!」

石丸「……はい!」


がっしりと握手を交わし、石丸も走っていった。

235 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/06(日) 22:39:21.99 ID:p54HlrUJ0

K(本当に成長したな……)


KAZUYAもゆっくり後を追った。途中、気になった桑田が戻ってきた。


桑田「せんせー! どうしたんだよ! 早く捜査しねーと」

K「なに、俺はもう大体見当がついている。だから焦る必要はない」

桑田「お! さすがせんせーだな! もう全部お見通しってワケか。
    っても、今回の犯人はモノクマこと江ノ島で決まりだろーけど」

桑田「証拠とかもうバッチリな感じ?」

K「……まあな」

桑田「頼りにしてますよーっと」


桑田がKAZUYAの背をバンバンと叩き、KAZUYAは笑った。


K「ありがとう」

桑田「へ? なんだよ、急に。なんか辛気くせーなぁ。そーゆーの死亡フラグっぽいぜ?」

K「いや、なんとなくな」

桑田「……やめろよな。ほんと、縁起悪いから。早く江ノ島をやっつけようぜ!」

K「おっと」


桑田がKAZUYAの背をグイグイと押して、現場検証が始まった。

236 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/06(日) 22:40:43.73 ID:p54HlrUJ0


               ◇     ◇     ◇


霧切「状況はすべて江ノ島盾子を犯人と示しているわ」

十神「フン、あっけない終わり方だったな」

セレス「裁判が待ち遠しいですわね」

山田「なーんか、いやにあっさりしてますねぇ……」

大神「江ノ島盾子があのモノクマを操っていたのだろう? すぐ諦めるような性格だろうか?」

舞園「裁判場で、私達ごと自爆とかしないですよね……?」

腐川「こ、怖いこと言うんじゃないわよぉ! もしそうだったらどうするの?!」

苗木「でも行くしかないんだ。僕達には他に選択権なんてないんだから」

朝日奈「これで、終わるんだよね……? 本当に……」


キーンコーンカーンコーン……


『時間となりました。みなさま、赤い扉の前に集まりください。うぷぷ……』


エレベーターに乗り、地獄へ向かうような気持ちで地下へ向かう。
三度目の裁判場は悪趣味なデザインへ生まれ変わっていた。


苗木(これで終わりなんだ。終わりのはずなんだ。なのに……)

苗木(不安な気持ちがなくならないのはなんでだろう……?)


朝日奈と腐川が震えていた。葉隠もだいぶ顔色が悪い。

237 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/06(日) 22:53:45.48 ID:p54HlrUJ0

苗木「大丈夫? なんだか、顔色が悪いけど……」

朝日奈「ありがとう。自分でもなんだかわからないけど、寒気がしちゃって……」

腐川「作家の勘てやつ? なにも起こらないといいけど……」

葉隠「全部終わる。これで全部終わる……はず……」


この学園生活で直感力が磨かれたものは、薄々これから起こる事態を感じ取っているようだった。


             ・

             ・

             ・


モノクマ「さて、オマエラ。自分の席についたね?」



             裁判席

             モノクマ

        朝日奈  K  葉隠 

    大和田            不二咲               

   霧切                 十神

 大神                      セレス

   江ノ島                桑田

     石丸            腐川

        舞園 苗木 山田


238 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/06(日) 22:57:24.68 ID:p54HlrUJ0


          !   学   級   裁   判   開   廷   !


モノクマ「じゃあ、いつものお約束から始めようか。学級裁判のルール説明ね」


「学級裁判の結果はオマエラの投票により決定されます」

「正しいクロを指摘出来れば、クロだけがオシオキ。だけど……」

「もし間違った人物をクロとした場合は……クロ以外の全員がオシオキされ、
 みんなを欺いたクロだけが晴れて卒業となりまーす!」


モノクマ「えー、説明もこの辺にして。それでは、戦刃むくろさん殺しの
      クロを当てる学級裁判を始めます! じゃんじゃん議論しましょう!」

「…………………………」


シーーーーーーーーン。


モノクマ「ありゃ?」

十神「白々しい……」

セレス「あなたが犯人でしょう?」

霧切「犯人はあなたしかありえない。今更仲間割れを狙っても無駄よ」

モノクマ「んー、そうかなぁ? オマエラが思い込みで話してるだけじゃないの?」

大和田「ああん? 思い込みだぁ?!」

桑田「おめー以外ありえねーっつーんだよ!」

石丸「ただちに投票を要求する!」

239 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/07(月) 00:21:47.39 ID:f10LM6ye0

モノクマ「まずは状況を整理しようよ。思わぬところに犯人が潜んでいるかもしれないよ?
      投票に失敗したら全員オシオキなんだからさ。もっと慎重になったら?」


モノクマは頬杖をつきながら優雅にワインを飲んでいる。


山田「ぶ、不気味ですね。なんであんなに余裕なんですか……?」

大神「落ち着け。我らを迷わせるいつもの手だ」

舞園「状況を整理して、反論できないようにしてやりましょう」

不二咲「まずは、現場の状況から?」

苗木「僕達が植物庭園から戻る途中、一階と二階の間の踊り場で死んでいる戦刃むくろを発見したんだ」

霧切「死因はナイフによる刺殺。心臓を一突きだったわ」

十神「手負いとはいえ、超高校級の軍人を正面から殺せる人間など限られている。
    例えば、身内なら油断しているだろうな」

山田「ほらみろ! やっぱり犯人はお前だけだ!」

葉隠「完璧な議論だべ!」

朝日奈「早く負けを認めちゃいなよ!」

モノクマ「……オマエラ、本当にそれでいいんだね?」

腐川「な、なによ……なんで含みがあるのよ……それが正解でしょ……?」

モノクマ「別に、ボクはどっちでもいいんだよ? ただ、議論が足りてないんじゃないかなぁって」

苗木「なにが言いたいんだ?」

240 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/07(月) 00:23:03.74 ID:f10LM6ye0





「――アリバイだろう?」




241 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/07(月) 00:39:38.87 ID:f10LM6ye0

全員が声の方向を見た。


K「アリバイを確認していない」


目を閉じ、腕を組んだままKAZUYAは静かに言った。
その時、全員が初めてその違和感に気づいた。


苗木(あれ……?)

苗木(……そういえば、裁判が始まってからKAZUYA先生は一言も話してなかった)

桑田(おかしいよな。いつも率先してリードしてくれるのに……)

舞園(どうして……今まで黙って聞いていただけだったんですか、先生……?)

霧切「あ、あ……あぁ……!!」


霧切がガクガクと震え始めた。呼吸が荒い。


大神「き、霧切……大丈夫か?」

大和田「おい、顔色があ真っ青だぞ……?」

霧切「……どうして、どうしてこんな簡単なことに私は気が付かなかったの……?!」

苗木「霧切さん……?」

十神「まさか……?!」


今度は十神が青ざめ始めた。

242 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/07(月) 00:42:11.00 ID:f10LM6ye0

セレス「どうしたんです? 全員一緒に行動していたのですから、アリバイは……ああっ?!」

葉隠「お、おい……やめろって。その、なんかヤバいことに気がついたみたいな顔すんの……」

不二咲「西城先生が……先生だけがあそこにいなかった……!!」


すでに涙を浮かべた不二咲がなかば悲鳴混じりで叫ぶ。


桑田「お、おいおい……せんせーがいなかったからってなんだよ……」

石丸「まさか?! 君達は西城先生が戦刃むくろを殺したとでも! そう言うのかね?!」

大神「馬鹿な……?!」

朝日奈「う、ウソでしょ?!」

舞園「ウソです! 私は信じません!」

苗木「落ち着いて考えてみようよ! 凶器とか、死因とかさ!」

K「無駄な議論はしなくていい」

苗木「先生?!」

K「俺は確かにやっていない」

K「……だが、それを証明する証拠がないんだ」


「……………………」


静まり返った。

243 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/09/07(月) 00:58:39.16 ID:f10LM6ye0

ここまで。

次は一気に裁判後編まで行きたいところ。
それでは皆様、夏バテにご注意ください〜!

244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/09(水) 13:51:31.35 ID:F2QY0WUS0
乙!あと受賞おめでとうございます!
さて、メタ的に考えてもメタ抜きで考えてもKのクロは無いが・・・
いや、寧ろこれはKに犯行が不可能と言うことを証明して間接的に黒幕がクロという事を証明する裁判になるのかな?
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/11(水) 11:31:13.42 ID:upJU8rf00
捕手
246 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/11/30(月) 23:50:46.79 ID:nBI8lKjw0

腐川「い、いや……認められない! 信じたくない!」

山田「西城先生は今まで何度だって奇跡の逆転をしてきたはず! 今回だって……

!」

K「すまない」

大和田「なんで、謝るんだよ……おい……」

朝日奈「イヤだよ……そんなの、イヤだってば……」


朝日奈がKAZUYAのマントを掴む。桑田が駆け寄った。


桑田「わかってたのか……? わかってたから、さっきあんなこと……!!」


他のメンバーも続々と駆け寄る。


石丸「う、ウソだ! ウソだウソだウソだッ!!!」

舞園「先生ッ!!!」

セレス「ウソと言ってください!」

葉隠「こんな結末、誰も得しねえって……あんまりだ!」

K「みんな、聞いてくれ!」

K「安心しろと言っていいのかはわからんが……この中でもし誰か一人が
  死なないとならんなら、それが俺でなければならん正当な理由があるんだ」

桑田「理由ってなんだよっ!! そんなもんあるわきゃねーだろ!!」

K「――俺はな、癌なんだ」

247 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/11/30(月) 23:51:38.07 ID:nBI8lKjw0


「?!!」


大和田「おいおい、冗談だろ……?」

K「冗談ではない。ただ事実を言っている」

K「俺は医者だぞ。自分の体については俺が一番よくわかっているさ。
  だから、間違いない。今まで黙っていたが、前に血を吐いたこともあるんだ」

苗木「せ、先生……」

苗木(そんな素振り……少しも見せなかったのに……!)

K「前に癌で手術をしたと言っただろう? 完治したと思っていたが、
  この学園での過酷な生活でどうも再発したようだ。だから、この裁判で
  生き残ったところでどうせ長くは生きられないんだ」

石丸「そんなもの、手術をすれば……!」

K「前に言っただろう! 外がどうなっているかわからないんだ。
  おそらく、そんな余裕はない……」

不二咲「そ、そんなぁ……」

大神「我らを安心させるためのウソではないのか……?」

K「ありがたいことに嘘ではない。仮に嘘でも、お前たちに証明できるのか?
  超国家級の医師と呼ばれた、この俺の命がけの嘘を」

大神「…………」


KAZUYAはまず、十神の方を向いた。


K「十神」

十神「……なんだ?」

248 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/11/30(月) 23:53:12.90 ID:nBI8lKjw0

K「お前に後を任せていいか? この中では、お前が一番冷静だと思う」

十神「……イヤだと言っても、断らせる気など更々ないくせに……卑怯者め……」


珍しく十神は顔をそむけ、必死に涙をこらえるように鼻の付け根を掴んでいた。


十神「だが、仕方ない……引き受けてやるさ。この借りは大きいぞ。覚悟しろよ」

K「ありがとう。そう言ってくれると思った」


次に、霧切の方に顔をやった。霧切は背中を向ける。


K「霧切、すまん……」

霧切「最低だわ……! こうなることも最初からわかっていたんでしょう?!
    あなたって人は、本当に最低よ……」


霧切の凛とした目から、初めて涙が流れた。
裁判場のあちらこちらから嗚咽が漏れはじめていた。


K「何度もだましてすまなかった。だが、これで最後だ」

霧切「お願いだから、最後だなんて言わないで……」


その願いには答えず、KAZUYAは石丸に声をかけた。すでに涙と鼻水で顔面がひどい

ことになっている。


K「石丸」

石丸「…………」

249 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/11/30(月) 23:55:39.46 ID:nBI8lKjw0

K「しばらくは立ち直れないかもしれない。出会った頃に比べたら見違えるように
  成長したが、人間というのはそう簡単には変われないものだ」

K「だからみんなに支えてもらえ。風紀委員だからといってムリをすることはない



石丸「せ、先生……先生っ……!!」


なにか言おうとする石丸の視線をKAZUYAは振り払った。


K「桑田」

桑田「こんなの認めねー……マジでありえねーだろ……」

K「お前にも世話になったな。あんなに手がかかるヤツだったのに。
  すっかり頼りになってくれて、俺はいつも助かっていた」

桑田「な、なにすんなり諦めちまってんだよ! まだなにかあんだろ?!
    いつもみたいになんかすげー案出してなんとかしてくれよ?!
    先生のアホ! アホアホアホアホアホアホアホ!!」

K「苗木」

苗木「……はい」

K「お前は本当に頼りになるやつだった。超高校級の才能なんてなくても
  ひたむきさや誠実さがあれば少しも劣らないということをお前は証明した」

苗木「ありがとうございます……」

K「みんなを支えてやってくれ。お前ならできるはずだ」

苗木「わ、わかりました……グスッ。約束します……」


涙をぬぐっている苗木の隣に目をやると、青ざめた舞園が立っている。

250 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:01:09.65 ID:uXYgdOZG0

K「舞園」

舞園「イヤ……イヤです……先生……!」

K「君も溜め込むところがあるから心配だな。真面目なのはいいが
  適度に息を抜いたほうがいい。自分を追い詰めるな」

舞園「先生がいなくなったら、私……」


崩れ落ちそうになった舞園を、苗木が慌てて支えた。
KAZUYAは苗木にアイコンタクトを送ってうなずき、次の生徒を見る。


K「不二咲」

不二咲「本当に……これでお別れなんだ……うぅ……」

K「残念だがな。しかし、お前は本当に強くなった。もう誰かに憧れなくても、
  自分の強さで他人を助けられるはずだ。わかるな?」

不二咲「約束します……! 先生が心配しなくていいように、
     僕がみんなを助けるって約束します……!」

K「ありがとう。頼りにしてるよ」


不二咲の言葉にKAZUYAが安心すると、大和田が割って入った。


大和田「……待てよ! なにしみったれたこと言ってやがるんだ!」

K「大和田」

大和田「ぶっとばそう! 俺の命なんていらねえ!
     あんたはみんなに必要とされてるだろうが!」

K「そううまく行かないのが人生だ。お前も本当はわかってるだろう?」

大和田「うぅ……クソッ、クソッ! クソがッ……! チクショウ……」

251 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:02:20.19 ID:uXYgdOZG0

K「お前だって大勢の人間に必要とされている。自分の命の価値を見誤るな」

大和田「グゥゥゥ……!!」

腐川「こんなのって、こんなのってあんまりじゃない!」

K「腐川、約束を守れなくてすまなかったな」

腐川「本当よ! 生まれて初めて、ちゃんとしたデートできると思ったのに……!
    あたしを嫌がらない人と遊びに行けると思ったのに……!!」

K「大丈夫だ。次はみんなと行けばいい。君はもう一人じゃないだろう?」

腐川「ひどいわ……世界はどれだけあたしに厳しいの……
    みんな、みんな死んじゃうんだから……わああああん!!」

朝日奈「うわあああああああん!!」


腐川の嘆きに合わせるように、朝日奈もまた涙を流していた。


K「朝日奈……」

朝日奈「ひぐっ……ひぐっ……一緒にドーナツ屋さん行きたかった……
     プールも、海も、遊園地に、それから、それから……!」

K「…………」

朝日奈「みんなで……いろいろなことがしたかった……
     そのみんなには、KAZUYA先生も含まれてるんだよ?」

K「朝日奈、俺は君を泣かせてばかりだったな。許してくれ」

朝日奈「許さない……なんて、言えるわけないよ……」

252 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:03:30.81 ID:uXYgdOZG0


そこに容赦のない言葉を入れたのはセレスである。


セレス「私は許しませんわ」

K「安広……いや、ルーデンベルク」

セレス「最後くらい名前で呼んでほしいものですわね。多恵子、と」

K「まったく、君という女性は……」

セレス「まあ、冗談ですが。あなたという御方は、本当に最初から最後まで
     罪作りな人でしたわね。今までも外で相当な数の女性を泣かせてきた
     のではないですか?」

K「否定はしない」

セレス「せっかく、わたくし新たな夢を見つけましたのに……
     二つも生きがいだった夢を失ってこれからどう生きればいいのです?」

K「弱音なんて君らしくないな。君は強い女だったじゃないか」

セレス「……そう、ですわね。最後くらい笑ってお別れをいたしましょうか。
     また来世でお会いしましょう。その時はわたくしを……」


喉元まで言いかけた言葉をセレスは飲み込んだ。


セレス「いえ……なんでもありませんわ」

K「…………」


KAZUYAが大神の方を向くと、車椅子に座った大神は神妙に頭を下げた。


大神「西城殿……今まで長らく世話になった」

253 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:05:00.88 ID:uXYgdOZG0

K「君にもずいぶん世話になったよ。君もれっきとした女性なのに、
  強さに甘えてあまり面倒をみられなかった。本当にすまない」

大神「こちらこそ、内通者の件では不用意に騒がせ申し訳なかった。
    西城殿を信頼して、もっと早く打ち明けるべきであった」

大神「あなたに会えて本当に良かったと思っている。
    皆のことは任せてほしい。西城殿の毅然とした態度を見て
    思い出したのだ。我は絶望している場合ではないとな」

K「もう大丈夫なようだな。俺も安心して逝けるよ」


そろそろ自分の番だろうと察した山田はKAZUYAを見た。


山田「西城KAZUYA先生……今までお世話になりました。
    僕がいまこうやって生きているのも、先生のおかげです」

K「ちゃんとリハビリするんだぞ。ダイエットもな。
  お前はやればできるヤツなんだ。もっと自分に自信を持て」

山田「見てもらってた原稿……完成させられませんでしたね。
    完成したら真っ先に見せるつもりだったんだけどな……」

K「あの世でちゃんと見てるさ。みんなと力を合わせてこれから頑張れ」

山田「はい。……ウッ、涙が止まらない。うぅぅ……」

K「……さて、最後だな」


葉隠は珍しくピシリと背筋を伸ばしてKAZUYAの言葉を待った。


K「葉隠、お前とは色々あったな」

葉隠「……なんか、今でも実感ないべ。先生みたいなゴッツイのが、
    癌だとかオシオキだとか……本当に、本当に死んじまうんか……?」

254 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:09:16.33 ID:uXYgdOZG0

K「お前も最年長の割にはなかなか手がかかったな。掴みどころがないように
  思えて金に汚かったりトラブルを持ってきたり……例を挙げればキリがない」

葉隠「そ、そりゃないべ。最後だってのに……」

K「だが、なんだかんだみんなが困っていたら率先して面倒をみてくれたな。
  授業にも真面目に参加していた。俺はちゃんと見ていたぞ」

葉隠「…………」

K「占いもいいが、時には自分の直感を頼ってもいいんじゃないか?
  自分のいいところと悪いところ、俺に言われなくともわかっているだろう?」

葉隠「そういういい方、反則だって……うぅ……」

K「信じてるぞ。これからも縁の下の力持ちとして頑張ってくれ」

葉隠「わかった。わかったべ! 俺はいざって時にはちゃんとやる男だ!
    俺たちのこと、天国から見ててくれよな。オカルトは嫌いだったけど
    K先生なら幽霊になって現れてもいいぞ!」


最後に全員の顔を見回し、KAZUYAは振り向いた。


K「お前にしては珍しく待ったな」

モノクマ「ボクは飽きっぽい性格だけど欲しい物のためなら綿密に計画して
      準備するタイプだよ? オマエラのこの顔が見たかったんだ」

モノクマ「今この瞬間のためだけに頑張って来たといってもいい」

モノクマ「うぷぷ。うぷぷ。うぷぷぷぷ!」

K「……お前をこの手で葬れなかったことだけが俺の唯一の心残りだ」

255 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:13:13.03 ID:uXYgdOZG0


モノクマ「西城先生もそんな物騒なことを言うんだねぇ

モノクマ「さてさて、では犯人も決まったようですし
      お楽しみの投票タイムに行きましょうか」


「うう……」
「ああああ!」
「イヤ! イヤァ!」


苗木「KAZUYA先生……」

K「ちゃんと俺に入れろ。大丈夫だ。俺を信じろ」

モノクマ「……はいっ! では三度目の投票、心してどうぞ!」

モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰か?!
      その答えは、正解なのか不正解なのか――?!」



裁判場の壁にかかっている大型パネルと席のパネル、両方に
もはやおなじみとなったスロットマシーンの映像が映し出された。
スロットの絵柄はKAZUYAや生徒達の顔写真であり、徐々に絵柄が揃う。




                   VOTE

         【西城カズヤ】【西城カズヤ】【西城カズヤ】

                   GUILTY





        !   学   級   裁   判   閉   廷   !



256 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:15:10.05 ID:uXYgdOZG0


モノクマ「大正解ッ! 今回、戦刃むくろさんを殺したクロは
      ――ドクターKこと西城カズヤ先生でした!」


「……………………」


モノクマ「最愛の生徒たちを守るため、医者の矜持を捨ててまでオシオキ覚悟で
      超高校級の軍人を始末したんですねぇ。いやぁ、泣けるなー」

霧切「……待ちなさい」

モノクマ「もう待たないよ? さっき十分お別れをしてたでしょ?」

霧切「これは黒幕側の明白なルール違反だわ……!」

モノクマ「はにゃ? ルール違反?」

霧切「あなたは学園長として学園の秩序を守るために生徒を罰することができる。
    逆を言えば、それ以外は生徒に手出しできないはずよ。
    なのに、あなたは自ら手をくだし戦刃むくろを殺害した」

霧切「これをルール違反と言わずなんていうの?」

十神「その通り。俺たちの学園生活は外部の人間にエンターテイメント
    として供給しているはず。そのお前がルール違反を犯せば、もはや
    ゲームとして成立せず外の奴らにとって興ざめなんじゃないのか?」

十神「違うか?」

大和田「そうだ! この卑怯者!」

桑田「せんせーがやったっていうなら証拠を見せろよ!」

257 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:16:03.38 ID:uXYgdOZG0

石丸「学園長ならルールを守りたまえ!」

朝日奈「こんな裁判卑怯だよ!!」


生徒達が騒ぎ出すが、モノクマは不気味に笑っているだけである。
KAZUYAもまたなにも言わない。


苗木(なんでモノクマは平気な顔をしているんだ……開き直ったのか?)

セレス「早く証拠を出せっつってんだよ! ビチグソ野郎!!」

モノクマ「証拠? 証拠なんてあるわけないよ」

大神「な、なんだとぉっ?!」

腐川「こいつ……証拠がないってあっさり認めたわ……!」

葉隠「やっぱり不正裁判じゃねえかぁ!」

モノクマ「だからぁ、証明するなんて不可能なんだよ。だって――」

舞園「だって……なに?」

モノクマ「先生が証拠を隠滅するために一階の監視カメラを
      全部破壊しちゃったんだから。できるわけないんだよ」

「?!!!」


水を打ったように、全員が黙り込む。


不二咲「見て……なかった? 外の人も……?」

山田「なにそれ? 潔白を証明できないってこと……?」

258 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:20:33.81 ID:uXYgdOZG0

モノクマ「アリバイがない、自分の犯行を隠すためにカメラを破壊した。
      状況証拠としては十分すぎるくらいだよね?」

モノクマ「ついでに言うとルール違反を犯してるのはそっち!
      学園長室の扉を破壊して勝手に中に入ったでしょ!」

霧切・石丸・大和田「!」

モノクマ「本来なら処刑すべきだけど、校則に一度に殺せるのは
      二人までって書いちゃったし、大事な先生がオシオキされる
      ことに免じて今回は特別に見逃してあげてるんじゃない?」

モノクマ「寛大なボクに感謝しなよ?」

石丸「あ……! あぁ……!!」

大和田(先公のやつ! こうなることがわかってて俺たちをかばったのか!)

K「……気にするな。俺は医者だ。誰のためであれ、命がかかっていれば
  俺は守るために体を張った。だからお前たちのせいじゃない」

K「今回たまたまお前たちだっただけだ。自分を責めるな」

石丸「だからってぇ……!!」

霧切「…………」


爪が手袋を突き破りそうなくらい、霧切は悔しげに拳を握った。
誰もが同じ顔でうつむいていた。


K「最後に全員と握手させてくれ。それくらいいいだろう?」

モノクマ「時間が押してるんで、巻きでお願いしますよ」


KAZUYAは一人ひとりに声をかけて握手をしていった。

259 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:21:29.22 ID:uXYgdOZG0

K「元気でな」ギュッ

苗木「!」

苗木(これは……)

霧切「……絶対に黒幕を倒して、仇を取ってみせるわ」


霧切は手袋を外して、KAZUYAと握手をかわした。


K「お前たちならできる。頼むから、俺を悲しませないでくれよ」

K「さあ、オシオキの時間だ。来るなら来い」

モノクマ「クロもオシオキを待っていることですし、ではでは!
      皆さんお待ちかねのオシオキタイムと参りましょーか!!」

モノクマ「学級裁判の結果、オマエラは見事クロを突き止めましたので
      クロである西城カズヤ先生のオシオキを行いまーす!!」

モノクマ「うぷぷ! うぷぷぷぷ! アーハッハッハッハッ!!!」

モノクマ「ハーッハッハッハッハッハッ!!!」

桑田「心底うれしそうに笑ってやがる……」

石丸「こんなに誰かを憎いと思ったのは生まれてはじめてだ……!」

苗木「許さない。絶対に……!」

K「せいぜい楽しんでおけ。お前の楽しみはこれで終わりだ」

260 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:23:27.00 ID:uXYgdOZG0



「今回は――!」


「超国家級の医師である西城カズヤ先生のために!」


「スペシャルな!」


「オシオキを!」


「用意させて頂きました!!」




「張り切っていきましょうッ!! オシオキターイムッ!!!」


261 : ◆takaJZRsBc [saga]:2020/12/01(火) 00:31:42.84 ID:uXYgdOZG0

ここまで。次回オシオキから。

遅れてしまいましたが、ダンガンロンパ10周年おめでとうございます。
年内にエンド1つ目の予定でしたが……終わるかな?

次回で決着、エピローグ、個別エンドが確か二つ、オマケとあるので
あと四回くらい必要になりそうな……

もうすぐ大事な賞の締切があるので、そのあと集中して書けばなんとか……
……がんばります。

262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/01(火) 12:46:17.76 ID:aqhHLEqF0
乙!とりあえずBADかなこれは
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/02(水) 22:18:29.32 ID:nwVtJ+K7o
久しぶりに開いてやっと追いついた
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/12/24(木) 04:10:59.99 ID:5i6S2+hSO
絶望姉妹ハピバ!
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/03/14(日) 03:56:05.33 ID:6mSJUqhOO
久々に捕手
266 :1@携帯 [sage]:2021/04/04(日) 22:19:54.95 ID:fdmAquuto
遅れてゴメンヌ……

創作自体スランプだったのと体調もあんまり良くなくてしばらく離れてました。
だいぶ復活してきたのでそろそろまた書きます。
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 12:31:52.55 ID:SAcw1/ED0
舞ってる
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 21:28:17.41 ID:dWlQd0uMo
期待して待ってます
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/05/14(金) 08:13:40.39 ID:PIsnP63KO
続き楽しみにしてます
270 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:11:08.50 ID:VGuDKbI20


準備万端で持っていたハンマーで、モノクマはオシオキスイッチを押した。

スイッチの下の部分についていた液晶画面と、裁判席のパネルに一昔前のゲームのような
ドット絵が映り、モノクマを模したドットキャラがKAZUYAのキャラを引きずっていく。








              GAMEOVER

      サイジョウカズヤせんせいんがクロにきまりました。
            おしおきをかいしします。




271 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:18:32.02 ID:VGuDKbI20


             ― Medical Error(医療ミス) ―


KAZUYAが連れてこられたのは馴染み深い手術室。
赤十字を模した巨大な赤い十字架に上半身裸のKAZUYAが磔にされていた。

その前には白衣を着て医者のコスプレをしたモノクマ。
胸には聴診器、頭には額帯鏡(耳鼻科が頭に付けているアレ)をつけている。

そして、手には巨大なメスを持っていた。

手術に似つかわしくない陽気な音楽が流れ始め、モノクマはメスを両手に特攻。
まずKAZUYAの胸を大きく縦に切り開く。麻酔なんてしていないのでKAZUYAは
一瞬顔を歪め呻いたが、その後は精神の力でいつもどおりの顔を保った。
しかし、冷や汗だけはごまかせず病人のように全身から絶えず汗が流れ落ちた。

医療知識なんてないモノクマ。見様見真似で適当に皮膚を切開して、
まず心臓を切り取り、次に肝臓、胃、肺、腎臓、腸をメスでえぐり取る。

白い床が真っ赤な血に染まった。
内臓をすべて失ったKAZUYAはぐったりとうなだれる。

医師免許もないのに手術なんてできるわけないね。
やっぱり患者は死んでしまいました。残念!


272 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:20:03.07 ID:VGuDKbI20


               ◇     ◇     ◇


「うわあああぁぁああああぁぁぁあああぁあああッ!!!」

「いやああぁぁあああぁあああぁぁぁああああああッ!!!」


オシオキが終わった瞬間、生徒はバリケードを破壊してオシオキ場に飛び込んだ。


「先生っ! 先生っ!!!」

「先生ぇえ!!!」


まだ体温が残る恩師の体に生徒たちはしがみついた。


「ぬ、ぬ、縫わないと……」


石丸がいつも以上に狂気的な瞳でつぶやいた。


「先生の体をバラバラにしたままになんてできない……!」

「石丸君……」


KAZUYAから預かったマントには医療道具が入っている。
苗木は周りを見渡し、全員がうなずいた。

273 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:22:12.66 ID:VGuDKbI20


――まさしく、狂気の光景だった。

たったいま死んだばかりの男の内臓を、教え子たちが泣きながらかき集め
空っぽになった腹に詰め直しているのだから。さながら黒魔術のようだった。

いつもは冷静な霧切や十神さえ他の生徒に混じって黙々と作業を行った。
血液恐怖症を克服したとはいえ、まだ苦しい腐川も吐き気をこらえて耐えた。

愛するKAZUYAの内臓を気持ち悪いなどと思うはずがなかった。
嗚咽と呻き声だけが辺りを支配した。

全員、医療知識があったのが幸いして綺麗に内臓を収めることができた。
石丸と苗木が協力して傷口を縫っていく。苗木が口を開いた。


「残りは全員でやろう。縫合術、覚えてるよね?」


最後、順番に一針ずつ縫った。舞園が自身の制服のリボンで表面の血を
拭き取ると、死んでいるとは思えないくらいに綺麗になった。

……凄惨な処刑に反し、KAZUYAの死に顔は信じられないほど穏やかだった。


「先生……先生、うっ……」


不二咲は口を手で抑えたまま涙をこぼす。とうとう耐えられなくなった
腐川は気絶した。すぐさまジェノサイダー翔に交代する。


「…………あ」


一瞬で状況を察したジェノサイダーはいつもの騒がしい自己紹介をせずに、
黙ってKAZUYAの遺体を見つめた。

274 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:26:47.89 ID:VGuDKbI20

「とうとう死んじまったのか。いい人だったなぁ……殺人鬼のアタシが
 泣くなんてさ、世界中探したってそんな人間ほとんどいやしないってのに……
 馬鹿だよ、あんた。大馬鹿だ……」


そう言って、ジェノサイダーは顔をそむけた。
KAZUYAの手を握りしめたまま泣きじゃくる朝日奈の肩に、霧切は手を置いた。


「気持ちはわかるけど、このまま常温で置いておいては腐ってしまうわ」

「そうですわね……西城先生の体を腐らせるわけにはいきませんわ」


セレスは沈痛な表情で同意する。


「……生物室に遺体保管庫があったな」


十神が提案したが、桑田と大和田が難色を示した。


「あんなところにせんせーを入れちまうのかよ……」

「俺たちが見ていない間に、モノクマのヤツが捨てたりしねえだろうな……」


他のメンバーも、モノクマならやりかねないと口々につぶやいた。


「僕、倉庫にドライアイスがあるのを知っています。
 ギリギリまで保健室に安置するのがいいんじゃないですか?」

「山田っち、ナイスだ。そうするべ」

275 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:30:07.64 ID:VGuDKbI20


舞園がKAZUYAの手を握りながらつぶやいた。


「お葬式くらい、私たちの手でしてあげたいですよね……」

「その通りだ。我らで弔おう」


話し合った末、しばらくは保健室に遺体を保管することに決めた。
ベッドに横たえ、両手を組み合わせてドライアイスを置いた。

眠っているようにしか見えないKAZUYAに、朝日奈はすがって泣いている。
アルターエゴを起動して事の端末を報告した。


『そう……そうだったんだね。僕にもっと力があれば……』

「みんな。実はみんなに見せたいものがあるんだ」


苗木はKAZUYAから託されたものを出した。握手の時、メモリーカードを
渡されていたのだ。学園長の隠し部屋で見つけたものだった。


「きっと、寄宿舎の二階で先生が見つけたものだと思うんだ。
 最後に渡したということは、きっと僕たちの切り札になるもののはず」


全員がうなずいたのを確認して、苗木はノートパソコンにメモリーカードを挿した。



             ・

             ・

             ・


「なに……これ……」

276 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:31:25.99 ID:VGuDKbI20


全員画面を見ながら青ざめていた。


舞園「こんなこと……私、覚えてない……!」

朝日奈「私もだよ!」

大和田「いったいどういうことだ?!」

桑田「またモノクマの罠かよ?!」

十神「いや、それはおかしい……もしそうなら西城が隠すはずがない」

霧切「これを託したということは、これは私達にとって切り札となるもののはず」

石丸「こんなおかしな映像がかね?」

苗木「……この映像、もしかしたら本物なんじゃないかな?」

桑田「本物って、おいおい……」

不二咲「僕達は学園長に会ったこともないのに……」

セレス「おかしいですわね。まさか揃いも揃って記憶喪失ではないでしょうし」

葉隠「そうだべ。そんなんオカルトじゃねえか」


その時、山田は一人離れてうつむいていた。


大神「どうしたのだ、山田よ」

山田「……これは、時が来たのかもしれない」

277 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/05/22(土) 17:38:24.81 ID:VGuDKbI20

ここまで。あんまり間を開けすぎるのも良くないので、
最悪にキリが悪いけど一旦投下

本当はラストまで突っ走りたかったのですが、
今すごく仕事が忙しいのと重要なシーンのデータが飛んだので
もうちょいお待ちください。KAZUYAの復活は来年になりそうですね……

278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 22:44:38.39 ID:0FsmTtZx0
おお生きとったんか!待っていた甲斐があったが
そうか、完結までは年をまたぐか…
279 : ◆takaJZRsBc [sage]:2021/05/23(日) 00:41:28.71 ID:KM9DqGOn0
>>278
お待たせして申し訳ないです(汗)

悪いことは重なるもので、仕事が忙しい上にPCの調子が悪くて
いつご臨終となるかわからないのですよね……
もうデータはとってあるから大丈夫なのですが、早くPCを新調したいものです。
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 10:24:33.83 ID:WISQEd/wo

やっぱオシオキはきっついな。だからこそのダンガンロンパだけど
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/26(水) 22:25:29.13 ID:Ra2FKk9XO
K2とどっちが先に完結するのかな…
ていうかK2もう連載400と2回突破したんだね
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/27(木) 16:14:43.82 ID:ADCCFVxM0
それよりこんなオシオキ受けてどうやってKAZUYAは復活できるんだ?
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/17(火) 15:54:01.25 ID:iltUNAEA0
待つてる待つてる
284 :1@スマホ [sage]:2021/10/10(日) 01:35:25.42 ID:Def5RfHRo
できた!明日投下しますよ〜

前回データ消えたのがショックで、あれより出来が悪いなと思ってしまい
スランプに入ってしまったのですが無事に克服できました。この調子でなんとか年内に……!
285 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 17:26:06.24 ID:Def5RfHR0


山田は中央に進み出ると、深呼吸した。


苗木「どうしたの、山田君?」

山田「みんなに話したいことが……」


おもむろに山田は話しだした。希望ヶ峰学園での思い出を。


山田「はっきり思いだしたわけじゃないんです。僕って妄想癖があるし、
    自分でも半分夢なんじゃないかって自信がなくて……」

山田「でも、やっぱり夢じゃなかった。僕達は、ずっと前から出会っていたんだ」

大和田「ウソだろ……」

桑田「じゃあ、アレか? 俺たち、ずーっと仲間内で争ってたってことか?」

不二咲「そ、そんな……」

十神「馬鹿な……こんなことが……」

ジェノ「あれあれあれ? 白夜様忘れちゃったの? あの熱い青春も
     アタシとのアバンチュールも人類史上最大最悪の絶望的事件も」

朝日奈「知ってるの?!」

霧切「ジェノサイダー翔は腐川さんと記憶の共有はしていない。
    つまり、あなたの記憶は消えてないんじゃないかしら?」

石丸「いったい何があったんだ! 全部話したまえ!!」

ジェノ「しゃあねえなぁ。つっても、アタシだってそんなに詳しくはねえぞ」

286 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 17:27:48.88 ID:Def5RfHR0


ジェノサイダーは、人類史上最大最悪の絶望的事件によって希望ヶ峰学園が
閉校したこと、旧校舎をシェルターにしたこと、ドクターKがだまされて
一緒に閉じ込められたことを話した。


ジェノ「シェルターが完成して『さあ、避難しましょ』って時にちーたんが
     絶望の奴らに撃たれて、カズちんが手当てしたのよ。そのまま
     学園長が玄関の扉を閉めちゃったわけ」

ジェノ「カズちんは元々シェルターには残らないつもりだったけど、
     まんまと一杯くわされたってところねん」

不二咲「ぼ、僕のせい……?」

ジェノ「まあ、それはたまたまであってあの学園長のことだから、
     なんらかの方法で絶対逃さなかったと思うわな。貴重な医者だし」

霧切「私もそう思うわ。父は、そういう人間だったから」

十神「父親だと?」

山田「学園長の名前は霧切仁。霧切響子殿の父上です」

セレス「まあ。もしやそのために希望ヶ峰学園へ?」

霧切「父のことはいずれ話す。とにかく、不二咲君は気にしないで」

不二咲「う、うん。わかった……ありがとう」

葉隠「それで、俺たちはこれからどうすりゃいいんだ?
    揃って記憶喪失ってことがわかっただけじゃねえか」

霧切「決まっているわ。最後の決戦に挑むのよ」

大神「それしかないのだな……」

朝日奈「やろうよ。先生にこんなことして……絶対に許さない……」

287 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 17:35:31.88 ID:Def5RfHR0

舞園「私も同じです。モノクマは、してはいけないことをしてしまいました」

苗木「みんなで一緒に戦おう!」


KAZUYAの遺体のすぐ横で生徒たちは決意を固めた。
もう、以前のように止めたり励ましてくれるKAZUYAはいない……。



               ◇     ◇     ◇


全員、揃って二階に集結しモノクマを呼び出した。


霧切「モノクマ、出てきなさい!」

モノクマ「おやおやぁ、みんなどうしたの?
      西城先生のお葬式の最中だと思ったけど」

苗木「僕たちはもう逃げない!」

霧切「私達は学級裁判のやり直しを要請するわ。先程の裁判は明らかに不正だった」

モノクマ「そう言われてもね。犯人は西城先生だよ。
      学級裁判でもひっくり返す証拠なんて出なかったじゃない?」

舞園「それはあなたがそう誘導したから……!」

十神「終わってしまったことは仕方ない。卑怯な貴様のことだ。
    どうせ冤罪の証拠は隠滅済みなんだろう?」

十神「――だがそれでいいのか?」

モノクマ「どういう意味かな?」

288 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 17:38:27.59 ID:Def5RfHR0

十神「お前の犯行は、ここの映像を見ている人間たちには筒抜けのはずだ。
    今まで散々ルールにこだわっていた貴様がズルをして終わり。そんな
    拍子抜けな終わり方でオーディエンスは納得してくれるのかと聞いている」

モノクマ「そんなこと言われてもね。オシオキだって終わっちゃったわけだし
     今更何を裁判するって言うのさ?」

霧切「だから別の裁判を行うのよ。学級裁判の内容はこの学園の
    秘密についてでどうかしら? 私たちが何故閉じ込められているのか?
    何故殺し合わなければならなかったのかを裁判で明らかにする」

霧切「逃げ回るのもこれで終わり。私たちはあなたへ最後の宣戦布告をしにきたのよ。
    賭けるのは私たち全員の命。どう? 悪くないんじゃない?」

セレス「こちらが勝てばあなたがオシオキ。もしあなたが勝てば
     わたくしたち全員がオシオキを受けますわ」

大和田「泣いても笑ってもこれが最後の勝負ってことだ!」

桑田「おめーだっていい加減この退屈な状況は終わらせたいだろ?」

舞園「あなたはゲームにこだわっていました。ですからゲームで終わらせましょう」

朝日奈「受けないなんて言わせないよ! 私たちがKAZUYA先生の仇を討つんだから!」

石丸「いざ尋常に勝負だぁ!!」

モノクマ「うぷぷ……うぷぷぷぷ! ボク一人を倒すために本当に全員の命を賭けるんだね?
     負けたら死んじゃうのに。西城先生が知ったらどんな顔をするかなぁ?」


生徒の決死の覚悟をKAZUYAは喜ばないだろう。
むしろ、生きていたら絶対に反対するに違いない。
生徒たちもそれを知ってはいたが止まらなかった。否、止められなかった。

289 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 17:40:57.61 ID:Def5RfHR0

不二咲「怖いけど覚悟はできてる。君は、僕たちの大事なものを踏みにじったんだ」

葉隠「さ、流石にここまで来たら逃げられないべ。やってやる」

大神「我らの心は一つ!」

腐川「で、受けるの? 受けないの? はっきりしなさいよ!」

山田「戦じゃあああああ!!」

モノクマ「いいよ! これで最終決戦にしようじゃないか!
      今まで開放されていなかった学園の全区域を解放するよ!」


――その瞬間、生徒たちがニヤリと笑ったのをモノクマは気づかなかった。

散々罠を仕掛けてきた側のモノクマが罠にかかったのだ。


苗木「上手くいったね」


モノクマが去った後、苗木が霧切にボソリとつぶやいた。


霧切「ええ。でも、油断は禁物よ。まだ私たちが調べていない場所がある。
    そこを徹底的に調べましょう」

石丸「先生の無実は証明できないだろうか……」

不二咲「そうだね。モノクマに勝つだけじゃなくて、先生の名誉回復もしたいよねぇ」

十神「調べるしかあるまい。もしかしたら手がかりがあるかもしれんぞ」

セレス「西城先生は正しい人でした。きっと、どこかに手がかりがあるはずですわ」

舞園「探しましょう!」

290 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 18:29:52.05 ID:Def5RfHR0


生徒たちは四班に別れた。


  ― 寄宿舎 二階 ―


メンバー:苗木、霧切、桑田、舞園、セレス

二階に上がると、廊下にはKAZUYAが破壊したモノクマの残骸が大量に転がっていた。


桑田「うわ! なんだこりゃ!」

霧切「ここで戦闘をしていたようね」

セレス「大方、時間稼ぎではないでしょうか? すぐに戻ってきたら困りますもの」

舞園「こちらにロッカールームがあります。キーがないと開けられませんが」

苗木「多分僕たちが以前使っていたロッカーだよね? 開かないかな?」

セレス「あ、もしかしたら……」


セレスが電子手帳を近づけたら、電子音と共にロッカーが開いた。


霧切「セレスさん、それはどうしたの? あなたの電子生徒手帳じゃないわよね?」


セレスは手帳を開いて不敵に笑った。そこには西城カズヤの名が液晶に浮かんでいる。


セレス「西城先生の電子教員手帳ですわ。形見に頂戴しようと思いまして」

苗木「セ、セレスさん……」

桑田「ちゃっかりしてるぜ……」

291 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 18:44:31.08 ID:Def5RfHR0

セレス「ついでに先生は霧切さんの手帳を持っていました。
     恐らく、ここから持ってきたのでしょうね」

霧切「…………」

舞園「……これ以上盗られないように私が見張ります」


唖然としながら霧切は手帳を調べた。そこには絶望についての記載があった。
KAZUYAの部屋はセレスと舞園に任せ、学園長の部屋は苗木、霧切、桑田が調べる。

パソコンのパスワードを苗木が見抜き、三人は隠し部屋に入った。


桑田「なんだこれ? プレゼントか? 開封した跡があるな」

霧切「やめておきなさい。モノクマが用意したのだからどうせ悪いものよ」

苗木「見て、霧切さん。写真立ての裏に何か貼ってあった形跡がある。
    大きさ的に、恐らくメモリーカードだ」

霧切「そう……ドクターはここに来て私たちに手がかりを残したのね。
    モノクマを倒す致命的な証拠を」

桑田「親父さんもだろ。そもそも霧切の親父がここに隠したから俺たちに渡ったんだし」


写真立てを手にとって見つめている霧切に桑田が声をかけた。


桑田「その、さ。何があったか知らねーけど、親父さんは親父さんで
    いろいろ事情とかあったんじゃねーの? パスワードとかこの写真とか、
    娘のことは想ってたみたいだしさ」

苗木「僕もそう思うな。いつか心の整理がついたら、お父さんのこと話してよ」

霧切「ええ、そうね……」

292 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 18:46:42.65 ID:Def5RfHR0


  ―  情報処理室 ―


メンバー:十神、腐川、葉隠、朝日奈、アルターエゴ

一方、情報処理室では十神が指揮を取って調べていた。


葉隠「なんでテレビに俺たちの姿が映ってるんだ?」

十神「全国中継されているというわけか……」

腐川「ひいい、あたしもう生きていけない……!」

朝日奈「ねえ、見てみて! ここでモノクマが動かせるみたいだよ!」


モノクマの顔が描かれているドアの向こうで、朝日奈がモノクマの制御装置を見つけた。


十神「コントロールルームか。ここで黒幕がモノクマを操作していたのは
    間違いないようだな。アルターエゴを持ってきて良かった。戦刃が
    死んだ辺りのログを調べるぞ。何か出てくるかもしれん」

アルターエゴ『任せて! カメラの映像は破棄されているみたいだけど、
     モノクマのログは残っているはずだよ』

葉隠「床の四角はなんだ?」

腐川「調理室の四角は地下に繋がってたわよね? じゃ、じゃあここももしかして……」

十神「あいにく爆薬が切れているのが残念だな。
    ……む、縁に血痕のようなものがついて途切れているな」

朝日奈「誰か怪我でもしてるっけ?」

葉隠「いや、誰も。誰の血だ?」

293 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 19:28:21.43 ID:Def5RfHR0


全員かがんで床に注目していると、今度は腐川が何かを見つけた。


腐川「ここに付け爪みたいなのが落ちてるわよ。江ノ島のやつ、うっかりしてるわね」

十神「フフフ、そうか。読めてきたぞ。ここに来た収穫は大きかったようだ」



  ― 生物室 ―


メンバー:石丸、大和田、不二咲

石丸たちは生物室で、死んだ戦刃の遺体を再度調べていた。


大和田「何かわかるか、兄弟?」

石丸「先生は僕たちを守るために初めから自分が犠牲になるつもりだった。
    つまり、まともに検死していないはずだ。もしくは、気づいていても
    あえて黙っていたことがあるはず。それを調べるぞ!」

不二咲「調査のために仕方ないんだけど、女の人の体を触るなんてなんだか申し訳ないね……」

大和田「じ、自業自得だろ……そもそもこいつはワルモンなんだ。しょうがねえよ……」


そうは言いつつ、かなり抵抗があった三人。何故女子を連れてこなかったか後悔した。
石丸は服に手をかけたまま固まってしまった。


石丸「う、うう……許してくれ許してくれ」

大和田「時間がねえ……俺がやる! 南無三!」


覚悟を決めて大和田が服をひっぺがした。
傷口が見えると、解剖モードに入ったのか三人は傷口をまじまじと見た。

294 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 19:30:39.05 ID:Def5RfHR0

不二咲「綺麗な傷だね。まっすぐ心臓を貫いてる」

大和田「こんなのおかしいだろ。戦刃は超高校級の軍人だぞ。
     不意打ちならともかく正面から刺せるかよ」

石丸「傷口は第三肋骨と第四肋骨の間を刃を横にして通っている。
    胸骨スレスレで一歩間違えば刺さらなかったはずだ」

石丸「医者である西城先生がわざわざこんな場所を狙うはずがない。
    そもそも、ナイフだと刃の幅が太すぎる。メスで突けばいい。
    先生は常に愛用のメスを持ち歩いているのだから」

不二咲「しかも、先生は戦闘用のメスに毒を塗っていたよね。
     刺さなくても、かすったら殺せるはずだよ」

大和田「他には何かねえか? 寒ぃし、あんまりホトケと向き合っていたくねえからな」

不二咲「狼の入れ墨、彼女がフェンリルの人間である証拠だね。
     ……ん? あれ、付け爪が取れてる……」



  ― 待機組 ―


メンバー:大神、山田

怪我人の大神を動き回らせるわけにはいかず、山田が付き添って保健室で待機していた。


大神「山田よ。何を見ているのだ?」

山田「ああ、漫画の原稿です。作りかけなんですけどね。
    一回ゴミ箱に入れたのを、先生が拾っていてくれたんだなぁ」


山田はKAZUYAの荷物整理をしていて、過去に自分が描いた原稿を眺めていた。
ここの生徒たちをモデルにした、他愛のない内容のファンタジー漫画だ。

それを見つめながら、山田はしみじみとため息をついた。

295 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 19:49:19.60 ID:Def5RfHR0

山田「……結局、完成できなかったな」

大神「ここから出たら完成させれば良いではないか」

山田「ムリですよ。外は世紀末なんです。漫画を描いている余裕なんてないですよ。
    それに、今更完成させても一番見せたかった人はもうこの世にいないんです」

山田「永遠に見せることはできないんだ」


ぽたりぽたりと山田の涙が原稿に落ちた。


山田「僕って何をやっても中途半端だったなぁ。オリジナルの漫画も、
    ダイエットも、結局先生が生きているうちに終わらせられなかった。
    ……悔しい。本当に悔しいです。ううう」

大神「山田……」


作りかけの原稿を抱きしめ涙を流す山田に大神はそれ以上声をかけられなかった。


大神「……生き残ろう。我らには、もはやそれしかできぬ」

大神「我も西城殿にはたくさん迷惑をかけた。生き残り、贖罪をする。
   もはやそれしか残っておらぬ。外に希望がなくても、我らは生きるしかないのだ」

山田「そうですね……僕たちみんな、先生を助けられなかったという点では同じなんだ。
   きっと、一生忘れられない……」


その時、捜査時間終了を告げるチャイムが鳴った。


             ・

             ・

             ・


296 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 20:16:00.47 ID:Def5RfHR0


結論から言うと、学級裁判は生徒たちの圧勝に終わった。
KAZUYAの冤罪も無事に証明でき、名誉挽回を果たすことができた。


苗木「お前はモノクマの自動操縦モードで先生の足止めを図った。そしてその間に
    戦刃むくろを現場におびき寄せたんだ! 戦刃は油断していたから正面から
    刺された。でも、驚いた戦刃がお前の体を掴んだ時に付け爪が剥がれたんだ」

モノクマ「ザナドゥ……!」グラッ

苗木「お前は証拠を隠滅するために急いで情報処理室の隠し部屋に向かった。
    その時、服についていた付け爪が床に落ちた。急いで降りたから、服についた
    返り血が扉の縁にわずかに付着したのも気が付かなかった」

苗木「そもそも、片腕が使えないとはいえ超高校級の軍人相手に正面から刺す
    必要なんてないんだ。先生は毒を塗ったメスをいざという時のために
    隠し持っていた。正面から刺されたのに傷跡は綺麗で避けたり暴れた形跡もない」

苗木「戦刃が油断しきっていたのは身内であるお前が犯人だからだ!
    モノクマ、いや江ノ島盾子! お前こそ戦刃むくろを殺した真犯人だ!」

モノクマ「ファザナドゥッ……!!」グラッグラッ

霧切「動揺している暇なんてないわよ。学園の秘密はすべて明らかになっているのだから」


捜査時間中、モノクマは生徒に自分以外全員が映った写真を配っていた。
自分以外の生徒とモノクマが結託しているように見せ仲間割れを図ったのだが、
生徒は既に学園の真相を知っていたため、不発。

黒幕・江ノ島盾子は姿を現し得意の言葉責めを行うがそれも失敗した。

外の危険さを訴え江ノ島を処刑して卒業するか留年してここに残るか選ばせるが、
元より死を覚悟していた生徒たちは誰一人迷わなかった。

297 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 20:27:35.31 ID:Def5RfHR0

十神「そろそろ投票の時間だが、最期に何か言うことはないか?」

江ノ島「まさか、私様がここまで完膚なき敗北を喫するなんてね……残念です」

セレス「あなたの敗因はわたくしたちを完全に怒らせたことですわ」

石丸「西城先生が僕らを導いてくださったのだ!」


生徒たちは裁判場に置かれたKAZUYAの遺影を見る。
ちなみに、江ノ島は席がないので中央に立っていた。全員の視線が江ノ島に刺さる。


江ノ島「……うぷぷ。うぷぷぷぷ。なるほどなるほど。そーいうこと」

桑田「なに笑ってるんだよ、気持ちわりいな……」

江ノ島「気づいちゃったのよ。この裁判のからくりに」

江ノ島「あんたたち『ズル』してたわけね。最初から学園の秘密や
     外の真相を全部知ってて裁判を挑んだってわけだ」

霧切「いけない? あなたが今までに散々やってきたことよ」

腐川「そ、そうよ……! そうやって西城先生を処刑したくせにぃ!!」

葉隠「ズルだなんてどの口が言うんだべ!」

山田「そうだそうだ、この卑怯者!」

江ノ島「アタシがズルして何が問題なのよ? アタシはこのコロシアイ生活の
    ゲームマスターよ? むしろ、今までルール通りにしてたのがお情けだって話」

江ノ島「悪役が非道の限りを尽くすのは物語としては当然のことだ。
     だが、君たちは死ぬつもりもないのに命を懸けるだなんて嘘をついた。
     正義側として一線を超えたということだよ?」

朝日奈「し、仕方ないよ……! そうでもしないと勝てなかったんだから」

298 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 20:41:29.71 ID:Def5RfHR0

舞園「すべては西城先生の仇を取るためです。悪いことだと思っていません」

江ノ島「キャハハハ。ボクが言いたいのはねー。君たちは希望であることを諦めたって
     ことなんだよ。そういう手段を選ばない行動はボクたち絶望と同じだよね―」

江ノ島「つまり……皆さんは既に絶望しているということです……
     今までのあなたたちなら命のやりとりなど望まなかったはずですから……」

江ノ島「目的のためなら俺を殺していいって考えた時点で
     オマエラは希望じゃなくなったんだよ!」

江ノ島「希望ヶ峰学園が残した人類最強の希望が全員絶望して終わるなんて
     最高に皮肉な終わり方クマ! 面白いクマ!」

大神「そうかもしれぬな……だが、それとこれは別だ。貴様だけは許してはおけん!」

石丸「希望とか絶望とかもうどうでもいい! 僕たちは先生の仇であるお前を討つ!」

大和田「無駄話はここまでだ。さっさと投票タイムにしろ」

江ノ島「本当に後悔しないんだね? うぷぷぷぷ……」


生徒たちはまったく躊躇せずに卒業を選んだ。
もちろん、卒業には江ノ島の処刑という意味も含まれている。

――それでも生徒は迷わない。

いつものスロット画面には、江ノ島の顔が三つ並んだ。





「うぷ、うぷぷ、あはははははははははは!!」


299 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 20:50:51.42 ID:Def5RfHR0

江ノ島「はい、アタシの負けー! アタシはオシオキされるってわけね」

桑田「いいからさっさと死ねよ」

セレス「てめえのうざったい声をもう聞かなくて済むのは清々しますわ」

十神「地獄に落ちろ。先に行った戦刃によろしく伝えておくんだな」

舞園「さようなら、江ノ島さん。お元気で」

霧切「遺言があるなら一応聞いてあげるわよ」


生徒たちは冷たい。針のような二十八の目が江ノ島を見ている。
その目には怒りや憎しみが込められていた。

江ノ島は満足そうに笑った。


不二咲「江ノ島さん……僕たち友達だったんだよね? どうして……?」

山田「僕の記憶の中の江ノ島盾子殿は作り物だったのですか?」

江ノ島「さあね。アタシがこの世に生まれた時から運命は決まってたんじゃないの」

苗木「江ノ島盾子……僕たちはお前を許すわけには行かない……
    僕たちには、いや世界中の大勢の人たちもお前を裁く権利がある」

江ノ島「わかってるわよ。命乞いなんて最高にダサい真似するわけないじゃない。
     超高校級の絶望であるこのアタシがさ」

江ノ島「最期にあんたたちのそんな顔が見られて幸せだわ。
     しかも、これから死の絶望が待ってるっていうんだから……」

江ノ島「本当に最っ高じゃない♪」

300 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 20:56:39.53 ID:Def5RfHR0


満面の笑顔を浮かべながら江ノ島はオシオキスイッチに手を伸ばし、押した。


――江ノ島は死んだ。





実に69日にも及ぶ長かったコロシアイ学園生活は幕を閉じた。


301 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 20:59:02.99 ID:Def5RfHR0








Chapter.5  疾走する青春の絶望アナフィラキシー (非)日常編  ― 完 ―







302 : ◆takaJZRsBc [saga]:2021/10/10(日) 21:00:01.05 ID:Def5RfHR0


            【08人】

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