【ミリマス】令嬢らは媚薬で抑えられない!

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55 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2018/08/07(火) 21:50:39.09 ID:e4n5peSk0

P「……とはいえ、どうしてそんな恵美は早々に釈放されて」

P「俺の方はこんな場所に……。しかも体の自由も奪われて」ギシギシ

朋花「ふふっ。プロデューサーさんはつまらない質問をされるんですね〜」

朋花「恵美さんを解放したのは彼女を危険から遠ざけるため」

朋花「アナタが縛られているのは私に危害が及ばないように」

朋花「どちらも当然の帰結です〜。もっとも、子豚ちゃん達の中には
この状態でもまだ足りないという心配性な子もいましたが」

P「子豚ちゃん、セキュリティの中にもいたっけな」

P「朋花が倉庫に来たのはソレでだな?」

朋花「ふふっ。従者の居場所を把握するのも、聖母たる者の務めですよ〜」

朋花「子豚ちゃん達から相談を受けて私が怪しいと睨んだ通り。とは言っても、この薬の方に関しては――」
56 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2018/08/07(火) 21:52:12.73 ID:e4n5peSk0
===

そうして朋花は、何かを考え込むようにその指を自身の顎へ添えた。
視線はリタンガルヤの容器が置かれたテーブルの上に向いている。

彼女はそのままの姿勢でしばらく黙考した後で、
おもむろにプロデューサーへと向き直り、可愛らしくも艶やかな唇を動かした。

「プロデューサーさん、これをつけられてからどのくらいが?」

「……多分、二時間ぐらいは経ってるかな」

「二時間ですか〜。普通の香水なら、そろそろ匂いが無くなる頃ですかね〜」

言って、少女は確かめるように鼻を動かす。

すんすんと瞼をつむったなら、小首を傾げて目を開き、
不安げな表情を浮かべる男とゆっくり目を合わせて。

「……少し、分かり辛いですね」

プロデューサーと話がある。
数分前に、そう自ら人払いをした彼女には一つの自信とプライドがあった。

それは例え媚薬であろうとも、自分は決して誘惑に思考を惑わされたりなどしない、
というある種の自惚れにも似た考えだ。

何時如何なる時であろうとも、聖母たるものとして相応しくあらねばならないという自戒の念が今、
周囲の異性を強制的に発情させる性欲公害とでも言うべき存在となったプロデューサーと二人きりで同室に籠る理由でもあった。

すなわち、彼女はその身を進んで渦中に置くことで、
自らを試していたのである。これもまた一つの試練であると。
57 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2018/08/08(水) 05:51:19.57 ID:4VsaTvqw0

「もう少し近づいてみましょうか〜」

口調は普段と変わらないが、その顔には男だけに理解できる僅かな緊張感があった。

普段はアイドルとプロデューサーとして、さらには聖母とその従者として
信頼を育んできた間柄だからこそ察する事の出来る感情。読み取ることのできる心理。

朋花は落ち着いた足取りで椅子の傍までやって来ると、
思い切ってその顔をプロデューサーの肩の辺りまで近付けた。

そうしてそのまま一度、二度。デジャヴを感じた男が慌てた様子で身をよじる。

「よせ朋花! 恵美も迂闊な行動を取ったから……」

「毒気に当てられてしまったと? 心配しなくても、今のプロデューサーさんからは何の妙な匂いもしてません〜」

朋花は事も無げに男へ答えると、もう一度だけ鼻をひくつかせる。

「……むしろ普段通りの匂いのような」

「そ、それならそれで恥ずかしいぞ。汗臭いかもしれないじゃないか」

さらに男はこうも思った。普段の匂いと比べられる程、
目の前の少女に自分の体臭が知られているという事実。

日頃から不快な思いをさせてなければいいんだが――

プロデューサーが持ち前の妙な生真面目さで
そんな事柄にうつつを抜かしていると、朋花がぽつりと言ったのである。
58 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2018/08/08(水) 05:52:31.27 ID:4VsaTvqw0

「普段通りの、甘い匂い」

「は?」

「人を落ち着かせる匂い。私を裸にするような、憎らしい程不思議な香り……」

きゅっと、朋花の唇が結ばれる。

少女は悩まし気な溜息を一つつくと、まるで羨むような目つきで眼前の男を捉え。

「……今言った事は誰にも秘密ですよ〜」

「わ、分かってる。何にも聞いちゃないさ。だからそんなに睨んだりしなくても」

しかし朋花は、ジッと押し黙ったままで答えはしない。
これはもしやと男の額に汗が伝う。

二人はそのまましばらく見つめ合い、少女が意を決したように行動の兆しを見せた時だ。

「と、朋花」

今度ばかりはプロデューサーが先手を打った。
名前を呼ばれたことでピタリと動きを止める少女。

牽制された聖母は反射的に、相手を慈しむような笑顔を浮かべ。

「……何でしょうか〜?」

「リタンガルヤについてだけど、確認したい事が一つあるんだ」

確認したいこと? と朋花が訝しそうに首を傾げる。
プロデューサーはそんな彼女に疑問を持たせまいとするように「そうだ」と言葉を続けると。
59 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2018/08/08(水) 05:54:01.94 ID:4VsaTvqw0

「朋花の予測じゃ、効果はもう切れてるんだよな? 
だったら俺から良い匂いがするだなんて、随分おかしな話じゃないか。
……分かるだろう? まだソイツの効き目は切れちゃいない」

「つまり、これ以上二人きりでいるのは危険だとでも〜?」

「そうさ! 朋花も千鶴さんや恵美みたいになる前に、早めに俺を一人にして――」

だが、それこそ失言だったのである。
「千鶴さん?」たちまち朋花の眼の色が変わっていく。

少女は恵美以外にもまだいたのか! とでも責めるように椅子に座る男を上から見下ろすと。

「千鶴さんには何をされたんですか」

「えっ」

「答えてください。正直に、今すぐに、私のこの目をちゃんと見て」

「な、何されたって、いかがわしい事なんてなにも。
差し入れのコロッケを食べてる時に、口元についた衣を彼女に取られたぐらいで……」
60 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2018/08/08(水) 11:31:34.42 ID:4VsaTvqw0

必死に弁解する男の脳裏であの時のやり取りがフラッシュバックする。
そうして、彼の変化した鼻の下を見逃すような朋花ではない。

「プロデューサーさん? 嘘をつくと〜」

「嘘じゃない! ホントの事しか言ってないさ」

「なら、どうして顔が緩んでるのか――」

説明してくれますよね、と言葉を続けようとした朋花の顔色がサッと変わる。

こんな事返事を待つまでもない。
本当の事しか言ってないのならば、男が取り乱す理由など一つしかない……

つまりは、その方法が常識的ではなかったのだと少女は思い当たったのだ。

事実、衣をつけたプロデューサーに対して千鶴が取った手段とは、
常識的な範疇から遥かに逸れた場所にあった。

口づけて、衣を舐めとり。
61 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2018/08/08(水) 11:32:49.91 ID:4VsaTvqw0

――観念した男から事の顛末を問いただすと、
天空橋朋花は聖母らしからぬ表情でプロデューサーを見つめていた。

それも厄災の種といえるリタンガルヤの醤油さしを手に持って。

「朋花、いったい何するつもりだ……!?」

プロデューサーがその顔を引きつらせながら朋花に問う。

だがしかし、先ほどより虹彩から光を追い出してしまっている少女は、
その手に持つお魚醤油さしに視線を落としたまま答える素振りすら見せず。

朱色のキャップを細く滑らかな指でつまみ、くるくると封印を回し外していく。

「よせっ、よせっ! 止めるんだ朋花!! それだけは絶対やっちゃダメだ!」

哀れな家畜が鳴くように、懇願するような男の声もその耳には届かないのか、
朋花はキャップを外した醤油さしを胸の高さで構えると。

「そういえば、プロデューサーさんには先ほど、私の秘密を知られてしまったのでした〜」

「ひ、秘密って、俺の匂いがどうこういうアレか……? それがこんな時にどうしたって――」

「誰にも言わないでくれますよね〜?」
62 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2018/08/08(水) 11:33:40.33 ID:4VsaTvqw0

ふふっ。少女の口角が鋭利に上がる。
醤油さしの口先から滴った数滴の液体が男の服に染みを作る。

「あら大変」これ以上ない白々しさで朋花が頬に片手をやった。

「たった今"偶然"気がつきましたけど、プロデューサーさんの服に染みが。……いけませんね〜。
聖母と並び立つ者ならば当然服装もそれに相応しく。日頃から気を付けておかないと」

さらにはそのまま「ダメプロデューサー♪」とにっこり笑って小首を傾げ。

「朋花、頼む、後生だから……!」

「取り乱さなくても着替えならセキュリティの予備の服が。私もこの失態は秘密にしておいてあげますよ〜」

そうして怯える男の身に迫ると、少女は躊躇なく彼のベルトに指をかけた。
63 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2018/08/08(水) 11:35:06.47 ID:4VsaTvqw0
===

【五 遅出の莉緒は後の祭り】

その日、どうしても外せない用事があったために、
遅れて劇場へやって来た百瀬莉緒は奇妙な違和感を感じていた。

ミーティングの為にユニットメンバーが集まる楽屋へ顔を出すと、
その場にいた三人が三人とも普段とは違った様子でいたからだ。

まず、二階堂千鶴の様子が正気ではない。

彼女は差し入れ用に持って来ていたと思わしきコロッケをまじまじ見つめながら、
「はぁ」だとか「ふぅ」だとか心ここにあらずといった溜息をしきりに吐き出し続けている。

そして次に、普段ならば明るく挨拶をしてくる所恵美も上の空。

机の上に置かれている、すっかり氷の溶け切ったジュースグラスの縁を指でなぞり、
時々思い出したように「うああぁぁぁぁ」と腕枕に顔を埋めていた。

最後に天空橋朋花。ワケを知らない莉緒からしてみれば、
彼女こそ最も"ヘン"になっている人物だっただろう。

なにせ普段から浮かべている笑顔とは全く種類の違った微笑みを――口元はふにゃふにゃと緩みきり、

頬には薄い紅をさして、その油断しきった笑みを扇子で隠そうとしているものの、
かえって視線を集める結果となっている事に気づいていない――

一通り部屋の中を見回した莉緒が疑問符を浮かべて口を開ける。
64 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2018/08/08(水) 11:36:28.52 ID:4VsaTvqw0

「ねぇ皆、私が来る前に何かあった?」

だが、莉緒の質問に答える者は誰もいない。

むしろ揃いもそろって三人ともが一瞬視線を宙に向けて、
次の瞬間には再び溜息や葛藤やにへら笑いのループに戻るといった有様だった。

……全てに釈然としないまま、痺れを切らしたように莉緒は言った。

「プロデューサーくんに訊けばわかるかしら?」

とはいえ男の姿はここに無い。
待っていればそのうち来るだろうが……

莉緒はほんの一瞬だけ考え込むと、すぐさま部屋を後にし廊下へ出た。

千鶴らに心当たりを尋ねなかったのは、彼女らも男の居場所を知らない可能性があった事。
また、今の状態の三人に訊いてマトモな返事が返ってくるかが怪しいという理由もある。
65 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2018/08/08(水) 11:37:05.95 ID:4VsaTvqw0

……それに、今日の彼女は一大決心をして劇場へとやって来ていたのだ。

莉緒は廊下に自分以外の人間がいなことを確認すると、
提げていたポーチから小さな小瓶を取り出した。

小瓶に貼られたラベルには『リタンガルヤX』の文字。

「今日こそ私がイイ女だって、プロデューサーくんに認めさせてやるんだから……!」

国内では本日発売されたばかり、"つければモテる"と評判の真新しい香水を一吹きすると、
莉緒は深呼吸して事務室目指し歩き出した。

そうして廊下の向こうからも、なぜかセキュリティの制服に着替えたプロデューサーが
トボトボと肩を落としてやって来るところだった……。
66 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage saga]:2018/08/08(水) 11:37:49.22 ID:4VsaTvqw0
===
以上おしまい。素直に全編地の文で、R板で書けば良かったと少し後悔。
それに途中で大分間が空いて……。リベンジしたい。

とはいえおおまかな流れは予定通り。お読みいただきありがとうございました。
67 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2018/08/08(水) 18:34:28.39 ID:GVYiYRpZ0
夜想令嬢か、莉緒ねぇ....
http://i.imgur.com/2FdZAZf.jpg
R版期待してるよ、完走乙です

>>1
音無小鳥(2X) Ex
http://i.imgur.com/ZBxZZAR.jpg
http://i.imgur.com/ElSKgHB.jpg

>>5
二階堂千鶴(21) Vi/Fa
http://i.imgur.com/X7vuKaj.jpg
http://i.imgur.com/uyFzxTN.jpg

>>28
所恵美(16) Vi/Fa
http://i.imgur.com/NEznaoN.jpg
http://i.imgur.com/wAujv7U.jpg

>>54
天空橋朋花(15) Vo/Fa
http://i.imgur.com/LGfqiYL.jpg
http://i.imgur.com/Mg2kd02.jpg

>>63
百瀬莉緒(23) Da/Fa
http://i.imgur.com/ZZv5cN0.png
http://i.imgur.com/CwjvsCr.jpg
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