【偽三次創作】どこかの誰かの話 その2【のんびり、まったり】

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43 :俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU [sage saga]:2018/09/02(日) 16:34:56.79 ID:wAD+bRkD0
遅くなりました。>>36より続きです


「七乃、妾が見ても良いのかや?」
なぜか側に控える張勲殿に伺いをたてる袁術様。
……おい、母親が娘に宛てたものだぞ。確かに内容は俺も見ていないし、袁逢様とは具体的にやり取りはしたが袁逢様御自身の想いはその中に記されているからまず目を通すのは袁術様御自身であろう。
ちなみに、袁紹様の分は袁逢様崩御後私自身で御渡ししている。
もし、張勲殿が先に目を通すのならそれは回避したい。
「はい。それはお母様がみ、袁術様に宛てたものです。ならば、最初に見るのはみ、袁術様ですよ」
……ふむ。道理は弁えているか、張勲殿。

頭を垂れたまま、そんなやり取りを聞いていると、シュルと巻物の紐をほどいたような音がしてそれから巻物が開かれる紙のこすれる音がかすかに続く。
ひたすら巻物が開かれる音だけがする無音の時間が過ぎていたが、
「横殿、頭を上げてください」
張勲殿の声で顔を上げる。そして、ぎょっとした。

……顔中涙でぐしゃぐしゃの袁術様がしゃくり上げながらこちらを見ていたからだ。更に、
「の、のう、お、横とやら、こ、これは、ほ、本当に、か、母様が、か、書かれたもの、なのか、や?」
しゃくり上げながら御質問される。
「はい、真、袁逢様御自身が記された物にございます」
「母様は、妾の事を、なんと、申しておった?」


「かけがえのない我が子、愛しき娘と」


……実際は行く末を一番案じられておられた。まだ幼児で先々組織としての袁が無くなった時に一番過酷な状況にさらされかねないからだ。
その心情は同じ子を持つ親としては十二分に痛いほどわかる。ゆえに袁逢様との談合の時も袁紹様より袁術様の身の振り方に時間を長く割いた。
袁紹様はまぁ……な。紀家の当主が娶るだろうし袁逢様もそう思われている御様子だったので、次善策として話をしていたのが本当のところだ。
袁逢様との話の後、南皮から逃げ出す羽目になるまでの間に跡を譲った長男にだけこの件は話して次代の意思は確認しているし、本家や他州の分家にも足を運べるだけ運んで内々に話は通してある。
兄貴を説得するのに一番手こずったが。

ともかく、私の返事を聞いた袁術様はまだ涙ぐんでおられたが大分落ち着かれた御様子で、
「横とやら、本当に袁は滅ぶのか?」
率直に訊ねてきた。
「可能性の問題ですな。人が興した勢力が千代八千代に栄える事は難しい事です。時と人に嫌われればその時は滅びます」
「では横も滅ぶかも知れん。だのにそこを頼れと?」
「ですな。横も滅ぶ可能性はあります、ですが我が一族の面白いところはどこかに必ず分家があるという点ですな」
「それが妾を助ける事とどうつながるのじゃ?」
「袁術様、袁紹様だけならどこかの分家が必ず受け入れる。という事です」
……これに同意させて新たに盟約を結ばせるのに一番手こずった。それはそうだろう分家としては、

『本家と袁が昔結んだ盟約であって、直接繋がりも利害もない我らが何故滅亡勢力の直系を受け入れなければならんのだ』

こう言いたくもなる。無論本家、南皮横家と袁家が結んだ盟約のように永遠に近い盟約ではない。『七代の間にそのような事態あらば、袁直系の個人を受け入れる。個人と家は互いに対等でありもし袁直系が愚者ならば放逐誅滅も可とする』
これは袁紹様、袁術様以降の袁直系がどのような人物を輩出するか判らないが故の妥協点でもあり、同時に横内部の盟約故に横家を守る意味もこめている。
ま、私としては袁紹様、袁術様以降については酷な話だが、『己の才覚で生きてくれ』としか言いようがない。

「ではもし袁が明日無くなったとしても、横家が妾を助けてくれる。ということかの?」
「そうですな」
「なら横とやら頼みがある」
「叶えられることでしたら」

「その時に、二郎と七乃も一緒に助けて欲しいのじゃ。あと流流もじゃ」
「それくらいでしたら」

「妾にとっては大切な者達なのじゃ。妾一人生きておっても、二郎と七乃と流流が生きておらぬと意味がないのじゃ」

……袁逢様、袁術様は立派に健やかに成長されておられますよ。
内心でそう九泉の袁逢様に報告していると、
「それで、じゃ。横は母様に仕えておったのじゃの?」
「はい」
「では母様の事を話してほしいのじゃ。どんなことでもいいのじゃ」


「では、謹んで」


……さて、どこから話しますかね。強くて、儚くて、子煩悩で、激動の時代に輝いた貴女の母上様の事。
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