巌窟王「これは、嘘で世界を変える物語だ」 アンジー「あなたの名前は――」

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542 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/21(水) 22:30:11.89 ID:T1CU8+9E0
モノクマ「……負けちゃったなー。完璧に。外の世界はどうなっちゃうんだろうなー。キーボくん取られちゃったし」

ネコアルク「気にすんなって。明日は明日の風が吹くさ」キランッ

モノクマ「それもそうだね! あっはっはっはっは」

ネコアルク「にゃっはっはっはっはっはっは!」





「「あーーーっはっはっはっはっはっはっは!」」





茶柱「うるっっっさいんですけど二匹揃ってェ! なんで転子の部屋にいるんですか! そして仲良くなってるんですか!」ウガァ!

モノクマ「マザーモノクマのいるあの部屋、セミラミスさんの改築工事が途中で終わったせいでズタボロなんだよね……」

ネコアルク「ロムルスさんの結界の内側にいたせいで赤松嬢に置いてかれてしまったので行き場もなくー人肌も恋しくー」

モノクマ「ついでに寄宿舎の中でかなりダメージが少ない部屋が今となっては茶柱さんの部屋オンリーと言っていい状況だし」

ネコアルク「病院のベッドの方も埃や砂塵に塗れてないヤツは春川さんが使ってるからにゃー。あの子に関わると命がいくつあっても足りなさそう」

茶柱「……仲良くなっている理由は?」

モノクマ&ネコアルク「仲良しごっこと馴れ合いは十八番!」ビシイッ

茶柱「それを素面で言い合えるのならもう友達と言っていいのでは!?」

モノクマ「……」

モノクマ「で。なんで最原くんを自分の部屋に連れ込んでるの?」キョトン

最原「……」スヤァ

茶柱「……巌窟王さんとキーボさんとの戦いのせいで病院のベッドすらすぐに使えそうなのはないんですよ。さっき言ってたでしょう」

モノクマ「ふっうーん?」

ネコアルク「ほっへぇー?」

茶柱「もう校則も何もないので力尽くで排除してもよいのですが?」ゴキンッ

モノクマ&ネコアルク「……」ガタガタ
543 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/23(金) 21:15:24.85 ID:fnuzjqNf0
茶柱「……最原さんが」

ネコアルク「?」

茶柱「最原さんが起きたときに転子がいないと、危なっかしいでしょう」

茶柱「脊髄反射で無茶をしますし」

モノクマ「巌窟王さんの影響で自分から飛び込んで行ってたよね。火に」

ネコアルク「人間がサーヴァント相手に張り合うとかエアーズロック相手にメンチ切る以上の無意味なんだけどにゃー」

茶柱「確かにこの学園で一番の無意味バカでしたが……転子以外の人間に彼の悪口言われると物凄くムカつきますね」

モノクマ「茶柱さんの沸点はヘリウム並みなの?」


ガチャリンコ


星「茶柱。最原は起きたか?」

茶柱「まだですね。夕方までぐっすり寝てても不思議じゃない眠りっぷりです」

星「そうか。コイツは少し頑張り過ぎていたからな。休めるのなら休んでいた方がいいだろう」

星「これは東条の作った朝飯と、スポドリと包帯だ」

茶柱「あ。ありがとうございます」

茶柱「……えーっと、最原さんの包帯の取り換えは星さんがやってくださいね。転子そのために星さんに声をかけたんですから。身を切る思いで」

星「やれやれ。じゃあ先に手を洗わせてもらうぞ。そういうことをするのならな」

モノクマ「……」

モノクマ「あれ? 水道、まだ生きてるの?」

茶柱「え」

星「……ム……? 確かに妙だ。何故施設としての能力がまだ生きているんだ? 全部終わったはずだろう」

ネコアルク「……あー……施設の長がまだ生きてるからじゃないですかにゃー……」

茶柱「……仮にそうだったとしても転子たちには関係ありませんね。あの傷じゃあ長く生きられないはずですし」

星「赤松に全部任せるべきだろうな。むしろアイツを手伝おうとするのは野暮だぜ」

茶柱「……」
544 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/24(土) 12:21:20.61 ID:w7izNxCi0
茶柱「……出会いの象徴みたいな人たちでしたね。巌窟王さんたち、サーヴァントって」

茶柱「悪影響を与えたり、最原さんや赤松さんを魅了したり」

星「あそこまで理不尽なヤツらは外の世界でもそうそういないと思うがな」

茶柱「でも、呪いを撒き散らすことを選ばなかった転子たちにはきっと彼ら以上の出会いがあるかもですよね」

星「……否定はできねーな」

星「ふっ。俺も絆されたか。少し前は生きる希望なんて何もないと思っていたが……」

星「今はちょっとだけ……一番星みたいな小さな明かりが見える気がするぜ」

モノクマ「うんうん。成長してくれて先生嬉しい! 感動のせいで涙が止まらない!」ネチョオオオオオオ

茶柱「汚ッ! 粘度が高くて気持ち悪ッ!」ガビーンッ

ネコアルク「あちしもサーヴァント由来のアレにゃんですけどにゃー。どう? 出会ってよかった? よかった?」チラッチラッ

茶柱「ノーコメントでお願いします」

星「口を開けば悪口しか出ない、という意味ではなく本当にコメントが不可能だからな」

ネコアルク「そんにゃー」

茶柱「……ところで、ネコアルク同士って通信できたりしないんですか? 赤松さんの安否がわかったりしません?」

ネコアルク「できなくはにゃいんですけど、地下と地上とでノイズが入りまくりで、あまり鮮明な情報は入ってきませんにゃー」

茶柱「それで構わないですから。無事ですか?」

ネコアルク「……あー……」

ネコアルク「宝具レベル上げしているところだからもうちょっと待ってって言ってますにゃ」

茶柱「え? 何ですそれ。意味がわからないから別件じゃないですか?」

ネコアルク「だからノイズが入ってるって言ったのに」

星「もうちょっと待って、の部分だけ抜き出していいのなら、俺たちは赤松が帰ってくるまで学園で待つべきだろうな」

茶柱「幸いライフラインも生きてますしね。好きにさせてあげましょうか」
545 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/26(月) 23:58:24.38 ID:yanit82o0
裏庭 地下

アンジー「……」ガリガリガリ

アンジー「よーしかんせーい!」キラーンッ




『エドモン・ダンテス

生徒を導いた偉大な復讐鬼、ここに眠ってない』




アンジー「完璧なレリーフだよー! これでこの学園に思い残すことはないねー」

アンジー「……」

アンジー「やっぱりどっかで学園のスケッチでも描こうかなー」

アンジー「アンジーにとって満足度百二十パーセントの道行じゃないと、会ったときに彼も残念がるだろうしねー」

アンジー(……考えたこともなかった。アンジーが嬉しいのなら、エドモンも喜んでくれる)

アンジー(エドモンが嬉しいのならアンジーも嬉しい)

アンジー(……似たようなことが他の誰かにも言える。終一、楓、解斗、魔姫、美兎、ゴン太、他の生徒も全員)

アンジー(誰かと感情を交換できるようになるのが絆)

アンジー(そういうささやかな思い出を忘れないように必死に生きていく)

アンジー(仮にまた思い出しライトで忘れられても、それまで必死に生きてきた記録は絶対になくなりはしない)

アンジー(……特に)






アンジー「美術品みたいな形に残るものは、いいよねー」
546 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/27(火) 22:30:53.79 ID:jNFXrRUD0
うおおおおおやったーーー! 水着獅子王宝具2だーーー!
育てるので今日はなし
547 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/28(水) 20:44:30.62 ID:f1d7GApm0
アンジー「後の懸念材料は終一だけだけど……」

アンジー「……大丈夫だよね。ちゃんと起きられるよね。終一」

アンジー「一応ネコアルクに確認しておこうかな。モノクマとデュエルしてた個体が一体だけ残ってたと思うんだよねー」

アンジー「……今どこにいるんだろー? 食堂かなー?」スタスタ






食堂

デデドドドンッドドンッドドンッ エェェェェェェェェェェェェ(死体発見時BGM)

夢野「」チーン

天海「」チーン

白銀「」チーン

アンジー「!?」ガビーンッ

東条「……」

東条「私が来たときには既にこうなっていたわ」シレッ




面倒ごとがイヤだったので東条は嘘を吐いた
548 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/29(木) 20:42:57.61 ID:EitKLrOG0
某所

最原「……」

物凄く大きい黒い竜「……」

最原(なんだこの竜)

物凄く大きい黒い竜(誰だこの人)

最原「……いやいや。僕は確か巌窟王さんが開けた天井の大穴を見て……見た後、物凄く眠くなって……寝たのかな。じゃあ夢かな」

物凄く大きい黒い竜「俺にとっては現実だが」

最原「うわあ!? 喋った! 発声器官どうなってるのドラゴンって!」

物凄く大きい黒い竜「え。あれ。そういえばどうなってるんだろう。考えたこともなかったな……まあいいか」

物凄く大きい黒い竜「何かの縁を辿って夢で繋がったのか……要は魂の迷子だな。良ければ俺の力で元の場所に送り返すが」

最原「……」

最原「帰ったところで、僕にやれることなんてあるのかな」

物凄く大きい黒い竜「無いことは無いのではないか。俺もやることもなくずっとこうしているだけだが……」

物凄く大きい黒い竜「だから待つことはできる」

最原「待つ?」

物凄く大きい黒い竜「ルーラーを……大事な人を待っているんだ」

物凄く大きい黒い竜「世界は絶えず動いている。その場から動くことがないのなら、それはそれで何かに引っかかることもあるだろう」

物凄く大きい黒い竜「川の底の石のようにな」

最原「……僕は……ヒーローになりたかったんだ」

最原「結構ガムシャラに頑張ったつもりだったんだけど、無理だった。目標の人の背中にまったく手が届かなくってさ」

最原「多分一生、手が届かない」

物凄く大きい黒い竜「ヒーローになれなければキミの存在に意味はないのか?」

最原「……」

最原「いや。そんなことはなかった、かな。こんな僕のことを好きだって言ってくれる人もいた」

物凄く大きい黒い竜「ならばやっぱり、やれることはあるのだろう。人間とはそういうものだ」

最原「竜なのに随分と人間臭いことを言うなぁ……」

最原(……あれ?)





最原「何かの縁……? こんな非現実的な場所に僕を呼び寄せるような? まさか……!」
549 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/30(金) 21:51:45.73 ID:Y9rPt+rY0
バサッ

最原「!」

最原(……もう二度と会えないと思っていた。死んだ人間と過ごした日々の方がおかしかったんだから当然だ)

最原(でも僕は……! もう一度会えるのなら、それは奇跡で……!)

最原(あのマントは……見間違えようもない! 二度と手が届かないと思っていた彼の!)

最原「……巌窟王さ――!」ダッ







巌窟王コスのBB「BBちゃんでしたーーーッ!」キャピーーーンッ

最原「んんがおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!?」ズザザザザリザリザーーーッ

物凄く大きい黒い竜「十メートルくらいズッこけたな」

最原「……び、BBさん……どうしてここに……」ピクピク

BB「甘いですね! 私は死んでも死なないこと、二周目と三週目の狭間に出てくることに関しては定評があるんですよ!」

BB「壊れても世界の裏側に向かう程度は造作もないことです! ていうか裏側って言葉自体に親和性があるので!」キラーーーンッ

最原「じゃあ僕をここに呼んだ縁って!?」

BB「巌窟王さんだと思いましたか? 残念、BBちゃんでしたー!」キャルーンッ

最原「男としては最低最悪だけどもッ! 今すんごくBBさんを殴りたいッ! 何の用!?」ダンッ

BB「脱出おめでとうメールをあげたくて……」スッ

最原「ああ、ありがとう……」カサッ

BB「ジメチルスルホキシドって知ってます?」

最原「確か皮膚に触れると中に混ぜた毒物ごと体内に浸透させる薬品……」ヌショッ

最原「うわあああああああああああ油断したーーーッ!」ポイッ

BB「まあそれただの食塩水ですけどね」プスススーッ

最原「」

物凄く大きい黒い竜(仲がいいのはいいことだ)
550 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/31(土) 15:55:42.34 ID:zrrW8+vf0
BB「安心してその手紙を読んでください。お願いっ」マイメロォォォォ

最原「……うん。僕たちを祝ってくれているのなら……」ペラッ



『TYPE-MOON studio BB設立おめでとうございます!
あと才囚学園生徒一同脱出おめおめー

by BB』



最原「何のことだかわからないけど別件が混じってる! むしろ僕たちの脱出の祝福のがオマケじゃない!?」ガビーンッ

BB「……ユーモアはこのあたりにしておいて、本題は手短に済ませましょうか」

BB「まずは脱出おめでとうございます。お陰で私もこっちに来ることができました」

最原「……え?」

BB「ああ、勘違いさせたのなら申し訳ありませんが、私がこちらに来れたのは巌窟王さんが学園の壁を破壊した直後ですよ」

BB「それまでは本当、バラバラの状態のまま完璧に壊れてどうしようもありませんでした」

BB「理屈上は巌窟王さんと一緒にこっちに来たって感じですね」

最原「いるの!? やっぱり、巌窟王さんも!」

BB「もうはぐれちゃいましたけどね。ここ本当に広いので探しても見つからないと思いますよ。ありえない時間を彷徨わない限り」

最原「……紋章を刻印したときに何かしたの?」

BB「このタイミングで理解した!? とんでもない頭の速さですね! 人間にしてはですけど」

BB「有体に言っちゃうとあの紋章こそが私だったんですよね。圧縮した私のデータ」

BB「アルターエゴと記憶復元のプログラムの記録ではなく、それを完全に覚えている誰かが適確な対応をその場で作り上げれば無敵でしょう?」

BB「全部が終わった後、巌窟王さんが学園から去るときに行き場所を世界の裏側に誘導すれば……」

BB「少なくとも『行方不明』ってほどじゃなくなるので」

最原「……物凄く広いんじゃなかったの?」

BB「他にも『終わったヤツが行く場所』の候補は色々あるんですよ。そのどれもが『ありえないくらい広い』んです」

BB「多少なりとも場所を限定してあげたんだから額を地面にこすりつけて感謝してください」

最原「……」エー

BB「……凄くイヤそうですね」
551 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/02(月) 19:28:10.55 ID:Jta5mEbj0
最原「……すぐに会えるっていうのなら考えたけど、労力がかかるっていうのなら僕はいいよ。アンジーさんやみんなには伝えておくけどさ」

最原「ありがとう。BBさん」

BB「いえいえー。このくらい当然ですよー。えへへ」テレテレ

BB「……ところで」

最原「なに?」

BB「ぶぶづけいかがですか?」サッ

最原「呼んでおいてその対応はないでしょ!?」ガビーンッ

物凄く大きい黒い竜「美味しそうだが、食べていかないのか?」

BB「彼は皮肉をまったく理解できていませんが、あなたは理解できていますよね?」

最原「……帰り道はどこ?」

物凄く大きい黒い竜「なんだ。もう帰るのか。それならば道を用意しよう」ズズッ

最原「あ。地面に穴ができた……」

BB「持病ーーーッ!」ドンッ

最原「えっ? あっ、あああああああああああ……」ヒューッ

物凄く大きい黒い竜「……何故突き飛ばした?」

BB「癖です」
552 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/03(火) 21:27:05.04 ID:vUunmabX0
最原「待って! まだ僕は……!」ヒュウウウウッ

最原(うおおおおおっ! 加速が付いてきた……確か人間の体格だと落ちている途中でスピンがかかって遠心力で意識を保てなくなるはずだ!)

最原(相当長い時間落ちないとそうはならないけど、この穴の場合は深すぎる!)

最原「BBさん! 僕は……僕はまだッ……!」

最原「キミにも感謝したかったのに――!」

最原(どうしてサーヴァントは全員、自分の都合しか考えないんだ……!)

最原「……!」

最原(意識が……!)








物凄く大きい黒い竜「あなたも行くのか」

BB「もう用時が完全になくなっちゃったので。次はどこに行きますかねー。自我が崩壊するまで歩いてみましょうか」




「……ありがとう……!」




BB「!」

物凄く大きい黒い竜「……穴から声が聞こえたか?」

BB「気のせいじゃないですか? 私はそうは思いませんけどね」

BB「……」

BB「今更ですがあなた誰です?」

物凄く大きい黒い竜「それを俺も聞きたかったところだ」
553 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/04(水) 20:39:20.06 ID:+WWtz8230
最原「……はあっ!?」ガバアッ

最原「はあっ……はあっ……ゆ、夢……?」ガサッ

最原「じゃないな……手紙が残ってる……」

茶柱「最原さん?」

最原「え?」

最原「……茶柱さん? なんでここに……いやその前に、ここは……?」キョロキョロ

茶柱「あ、後で説明してあげますから、それは。とりあえず……おはようございます」

茶柱「夜はもうとっくに明けてますよ。もう昼です」

最原「……」

最原(忘却補正が……消えたのか……)

最原「あれだけは残せるんじゃないかって根拠なしに期待してたんだけどな……」

茶柱「……ところで、その紙は一体なんですか?」

最原「貰いものなんだ。みんなのことを祝うメッセージが書かれて……」ペラッ

最原(……紙から柑橘類の臭いがする。これまたベタな……!)

最原「寝起き一番でこんな質問をするのは変かもだけど」




星「」チーン




最原「なんで星くんが死んでるの?」

茶柱「激辛麻婆に殺されて」

最原「なんだって?」
554 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/05(木) 20:19:13.61 ID:9hSmhRh/0
茶柱「……昼ご飯、何にします? パン類とご飯類の両方ありますよ。危険物は星さんがその身をかけて処理してくれましたので安心です!」

最原「危険物があったの!?」ガビーンッ

最原「……ま、まあいいや。パン類がいいな。それで、ご飯の後はみんなと集まって話したいんだけど……」

茶柱「転子もそれを考えてました。多分他の生徒も全員。おそらく百田さんあたりが起きたら走り回って、みんなを集めるでしょうから……」



ドタドタドタッ


ガチャリンコッ



百田「茶柱! 終一! 星! 後で食堂に集合な!」


バタンッ ドタドタドタッ……



茶柱「それまではゆっくりしていようって、なんとなく思っていたのですが……」ハァ

最原(まるで僕が起きたのを見計らったみたいなタイミング……)

最原(ゴン太くん並みの野性の勘だなぁ)

最原「時間について話してなかった。すぐに来いって意味だよね」

茶柱「あ、お昼ご飯……」

最原「行きながら食べるよ」

茶柱「ひぃーーーっ! 行儀悪ッ!」
555 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/07(土) 18:54:37.39 ID:76gGQ/xu0
十分後 食堂

百田「……おーっし! 全員集まったな!」

春川「王馬と赤松以外はね」

百田「何事もなく一夜明けたみてぇだな! 全員不安事も解消されたみたいですっきりした顔してるぜ!」

春川「王馬と赤松はいないけどね」

春川「……それに」

天海「」ボヘー

夢野「」ボヘー

白銀「」ボヘー

星「」ボヘー

春川「……何人か魂が抜けてない? 何かあったの?」

最原「これでも話しかければ喋る程度には回復してるらしいから、追及は後にしよう」

最原「それで百田くん。みんなを集めた趣旨は?」

百田「……あ? 必要か、それ?」

最原「必要だよッ! せっかく集まったんだからさ!」

真宮寺「ならこの集まりの冒頭は、僕が仕切らせてもらおうかな。いくつか処理したいことがあるからネ」

アンジー「処理したいことー?」

真宮寺「まだ学園にはいくつか謎が残っている……その種明かしなしには夜もまともに眠れなさそうなんだヨ。気になってさ」

入間「パッと思いつく謎だと……やっぱアレだよな。急に復活したイシュタル」

入間「アイツの復活のお陰で脱出の算段は想定したよりも早くついたけどよ……真っ先に目につくのはアイツの不自然さだ」

獄原「ゴン太たちの目の前でネコアルクに貪られてたはずだからね……」
556 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/08(日) 20:27:25.11 ID:Ur6aooe/0
最原「……食べられたはずのものが出てきたのなら、シンプルに考えて吐き戻したとしか考えられないよね」

入間「クソとして出た! とも考えられるぜ!」

茶柱「……久しぶりな気がしますね。入間さんの下ネタ」

最原「前にアンジーさんの令呪の力で、骨から巌窟王さんが復活してきたこともあったし……」

最原「はっきり言って魔術世界はなんでもありだ。真相を知りたいのなら彼女に訊くしかない」

ネコアルク「……まごまごまご……」ムシャムシャ

アンジー「そこでサバ缶食ってるナマモノのことだよねー」

東条「……今となっては貴重な食糧だから、食べる必要がない者には食べてほしくないのだけれども」

ネコアルク「酷くね? マジ酷くね?」

ネコアルク「……で、えーと。イシュタルを吐いたかどうかが争点なんですにゃ? ええ、吐きましたよ。ゲロッと」

真宮寺「何故?」

ネコアルク「漠然とした質問ですにゃー。『何故吐いたのか』という答えに関しては『用済みだったから』で」

ネコアルク「何故吐いたイシュタルが生きていたのかに関しては『計算外』と言う他ありませんにゃー」

最原「……計算外?」

百田「そっちは後回しだ。先の証言から片付けようぜ。魔術的痕跡は全部消すとか言ってなかったか?」

ネコアルク「神性は骨組み。燃料じゃないから全部終わったら解体して処分するシークエンスでしたにゃー」

ネコアルク「退去するサーヴァントたちに混じって元の世界に帰れるはずなので」

春川「……実際に帰ったんだろうね。姿形が見えないし」
557 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/09(月) 22:50:37.96 ID:hqcrY6ZX0
最原「計算外っていうのは?」

ネコアルク「まさかゲロったイシュタルがあんな見事に再生するとは思わなかったんですにゃー」

ネコアルク「あの人がチート級のポテンシャルの持ち主だってこと物の見事に忘れてたっていうか」

最原「……他に『吐いてみたらそのまま出てきた』って人、いないよね? いたら少しビックリするんだけど」

ネコアルク「ハハハ! 流石に……いやゲロったときちょっと苦しすぎて涙目だったから周囲の確認はまともにやってないけど」

ネコアルク「流石ににゃいにゃい!」

ガタガタンッ

春川「……ん……窓から何か物音が……?」チラッ

ジャガーマン「あっ!」

ジャガーマン「やべっ」サッ

春川「」

百田「ん? どうかしたかハルマキ。そんなサバンナで猛獣にでも遭遇したような顔してよ」

春川「今窓に……」

春川「……」

春川「気のせいだよ。うん」

百田「?」

最原「魔術的痕跡はキーボくんの中にあるものを除いて、ほぼこの学園から消え去る」

最原「……ちょっとだけ不具合があったんだね。イシュタルさんが出てくるなんてさ」

東条「でも今はいなくなっている。それがすべてよ」

入間「どっこい、そうでもねえんだな。これが。魔術的痕跡がすべて消え去るのが本当なら、あのスクーターのミラーすら消えてるはずだ」

キーボ「……あ! そうか! 不具合が無ければ、あのスクーターはまず作れませんね!」

百田「ないならないでキーボに空まで吹っ飛んでもらって、そこから段取りをする予定ではあったけどな。俺の中では!」

最原(意外とよく考えてたんだな……)

百田「意外って思ってんな終一……」
558 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/10(火) 20:53:01.40 ID:NG74Ahwv0
真宮寺「今となってはイシュタルさんも消えていることだし……この問題は解決したと考えてよさそうだネ」

真宮寺「じゃあ次。王馬くんは除外して、この場にいない人について話そう。誰か連絡が付いた人はいる?」

獄原「赤松さんのことだよね。ちゃんと帰ってこれるかな……ゴン太、迎えに行ってこようか?」

キーボ「赤松さんが侵入したという地下への穴は謎の巨人の頭皮によって塞がれてしまっています」

キーボ「学園崩壊の影響がエレベーターに出ている可能性もある以上、アレも使えたものではありませんし……」

茶柱「大丈夫だと思います。ネコアルク経由で赤松さんらしき人と連絡は取れました」

茶柱「……もうちょっと待って、だそうです」

キーボ「……帰っているようですね。よかった、安心しました。どうにか彼女のピアノをまた聞きたいと思っていたところだったんです」

百田「それは同感だけどよ……学園がここまで崩壊しててピアノが無事ってことは……」

キーボ「それなんですが……不自然なことに、巌窟王さんはアンジーさんの次にピアノのことも庇って戦闘していたんですよ」

最原「え? ピアノを?」

キーボ「間違いありません。まあ、あれだけの衝撃だったので直で破壊されずとも調律は乱れまくってるでしょうけど」

最原「……」

最原「……モノクマでもネコアルクでもいいんだけどさ」

ネコアルク「はいは――」

モノクマ「はいはいなんでございましょ!」バァーーーンッ

ネコアルク「むぎゃあっ!?」

モノクマ「バカめ! 残酷マスコット路線で出番を貰えないのであれば、貴様のウザかわ系味方マスコット路線を奪い取るまでよ!」ギンッ

モノクマ「で? なんか用ですか最原サマ? 靴でも舐めましょうかゲヘゲヘゲヘヘ」

最原「路線変更に口出しはしないからせめてキャラは守ってよ……」

モノクマ「自分のキャラには秒で飽きちゃうんだよね。なんなら容姿も変えようかな」ゴソゴソ

ジバックマ「ジバックマだクマー!」

アンジー「ウザいよー」ブチブチブチ

モノクマ「ぎゃああああああああああ毛皮があああああああああああ!」

春川「夜長! 素手で毟ったりしたら変な菌付くよ! やめて!」

東条「後で念入りに手は洗わせるわね」

最原(う、うわぁーーー……そういう問題じゃないと思うんだけどツッコミが追い付かないなぁー……)

最原「……ピアノの調律、やっておいてくれる?」

モノクマ「も、もちろん……暇だからね……その程度やっておくよ……」ピクピク

百田「地肌見えてんぞ……毟り過ぎだアンジー」

アンジー「てへ?」
559 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/12(木) 20:07:47.63 ID:a6CPxeEb0
真宮寺「僕からはこんなところ、かな」

最原「じゃあ次は僕から、でいいかな?」

春川「……なにか気になることでもあった?」

最原「BBさんに会って手紙を渡されたんだけど……」カサッ

東条「……それ、いつの話かしら?」

最原「信じられないかもしれないけど、ついさっきだよ」

獄原「え?」

最原「かなり前に天海くんに頭をぶん殴られて、巌窟王さんの精神と夢で繋がったことがあったんだけど、それと同じ原理だと思う」

最原「死んでも縁や絆は簡単に切れないみたいだね。流石にこんなことが二度三度続くとは思えないけど」

百田「……その手紙、中身はなんて書いてあんだ?」

最原「これ」ペラッ

真宮寺「……簡潔だし明らかに別件も混じってるネ……」

最原「今から考えるとこれが不自然なんだ。紙の大きさに対して内容が少なすぎる」

最原「加えて、紙から微かに臭う柑橘類の臭い……BBさんは食塩水って言ってたけど、多分実際に食塩水なのは淵に付着してた部分だけだ」

東条「……炙り出し?」

アンジー「うわー。すごくしゃらくさいよー」

最原「誰かライターかアルコールランプとか持ってない? すぐに確認したいから焙ってる間固定できるものがいいんだけど」


シュボッ


夢野「あ……あ……」ガタガタ

キーボ「夢野さんがジッポライター所持していたようですね。マジック……いや魔法用でしょうか」

春川「まともな受け答えすら覚束ないじゃん、アレ」

最原「え、えっと。借りるよ?」
560 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/13(金) 19:37:01.87 ID:hifsYsiF0
ジジジ……

最原「……やっぱり! 文字が浮かんできた! えーと……」




『三日程度待っていてください。すぐに用意しますので』




最原「……??????」

入間「あんだこりゃ? 三日程度待て……? 何をだ?」

春川「炙り出しは果汁を使って文字を書くのが主流だからどうしても字が滲んで大きく書かないとダメなんだよね」

春川「……紙の大きさが足りなかったのかな。最原。なにかわかる?」

最原「脱出おめでとうって書かれている手紙に『三日待て』って書かれてるんだから、穴が開いた学園から脱出するのはしばらく待てって意味……」

最原「……だと思うんだけど、あまり賛成できないな」

百田「ん? どうしてだ?」

最原「かなりぐっすり眠っちゃった僕が言うのは凄く間抜けなんだけど、外の世界の人間が僕たちに何もしてこない可能性を信じられないんだ」

最原「今ごろ、どんな算段を付けているか……」

百田「忘れたのかよ終一! そのためにキーボの魔術的処理を残したんだろうが! 全部テメェの発案だぜ!」

キーボ「生半可な報復行動ならボクがどうにかしますけど……生半可以上となると少し不安です」

白銀「……ご、ごほっごほっ! げはっ! あ、あの、一ついい?」

アンジー「あ。復活した」

白銀「多分、外の世界からの攻撃は無視して考えていいと思うよ」

白銀「考えても見てよ。私たちの抹殺に失敗した魔術師が、次に誰を標的にすると思う?」

百田「?」

最原「……あ。もしかして!」

白銀「この学園を作って運営して放映していたチームダンガンロンパが次のターゲットになってると思う」

白銀「余計なことを知っているかもしれないしね。もちろん、チームダンガンロンパの方も生半な組織じゃないけどさ」

白銀「だからこそ事態は膠着して泥沼化してると思うよ」

白銀「……何事もなくニューダンガンロンパV3をフィクションとして放映し終えてから纏めて抹殺したかったんだろうけど」
561 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/15(日) 00:02:35.11 ID:nzeFBvbC0
入間「あ! じゃあよ! ずっとこの学園で生きていくってのはどうだ! まさに発想の逆転、天才の俺様大勝利だな!」ヒャッハー!

東条「そんなわけにはいかないでしょう。無視ができると言っても長くて数ヶ月程度の話でしかないわ」

真宮寺「早くて数週間……小競り合いが終わったときどちらの勢力が生きているかは問題じゃない」

真宮寺「どちらにしても僕たちに相当の恨みがあるだろうからネ」

百田「それに仮に残ったらだ。これまで何のために命懸けで戦ったのかわからなくなっちまうだろ」

入間「う……」

最原「……三日程度なら待っても問題はない、かな。うん、少しは勝算のあるギャンブルかもしれない」

アンジー「にゃははー! こりゃ残留で決まりだねー! それじゃあ、病院のベッドを今の内にもっと使えるように修繕しておかないと――」

最原「アンジーさん」

アンジー「……?」

最原「次に心配なのはキミに関してだよ」

アンジー「へ?」

最原「……みんなあまり深くは突っ込んでなかったけどさ、巌窟王さんがいなくなったんだよ?」

最原「その……大丈夫かなってさ……」

アンジー「……」








アンジー「……う……!」ジワッ

最原「!?」ガビーンッ

茶柱「おバカっ! もうちょっと段階とか聞き方ってものがあるでしょう!」バシーンッ

最原「ごめぶっ!?」イタイ!

アンジー「だ、大丈夫……泣かない、泣かないよー」ゴシゴシ

アンジー「悲しいよ! 寂しいよ! でも……だからってアンジーに何ができるの?」

アンジー「前に進むしかないよね……泣いたって、慰められたって、現実は何も変わらないんだよー?」

アンジー「何も……!」
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/15(日) 11:17:32.35 ID:aY6hci8+0
まあ外の世界の魔術協会や時計塔に所属している魔術師達からしてみれば、
「英霊召喚、しかもアヴェンジャークラスのサーヴァントの召喚を全世界に公式配信して、お前ら何してくれちゃってんの?」
と、文句の一つや二つ言いたいだろうしね。
563 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/16(月) 21:13:01.29 ID:h6urHTFb0
「……にしッ」

最原「ん?」

「にししししし……にししし……」

「あーーーっはっはっはっはっは! 違うなぁ! 全然違うよアンジーちゃん!」

「俺たちはさんざっぱら目にしてきたはずだ……現実は変わる」

「嘘で! 『現実』は! 変えられるんだよ!」

百田「この声……まさか!」

百田「……って形式上言ってみるが一人しか該当者いねーよな」

王馬「ええっ!? 心当たりがあるの百田ちゃん! 一体誰!?」

百田「あばっふあ!?」ガビーンッ

最原(いつの間にか食堂の中に侵入してる!)ガビーンッ

アンジー「小吉?」

王馬「外に出てみようよアンジーちゃん。面白いものがあるかもよ?」ニヤァ

アンジー「……?」

王馬「まあまあいいからいいから!」グイグイ

アンジー「あ? あー……」ペタペタペタ

最原(……王馬くんに引っ張られて外に連れ出されてしまった)

春川「……アイツ、何する気?」

最原「彼なりにアンジーさんを励まそうとしてるのかな」

入間「……なんかイヤーな予感がしねぇか……?」ダラダラダラ

真宮寺「様子、見てみないわけにはいかないよネ」
564 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/18(水) 18:06:47.41 ID:ce31ictl0


王馬「葬式っていうのは徹頭徹尾生きている人間のための儀式だ」

王馬「悲しんだフリ。立ち直ったフリ。誰かを思いやってるフリ。その場に則しているのならどんな嘘でも吐き放題」

王馬「俺が埋もれちゃうから冠婚葬祭どの行事も基本嫌いだけど、今日だけはアンジーちゃん他余り物くんたちのために一肌脱いであげたよ!」

百田「誰が余りモンだ」

春川「……なんだ。外に出てみたはいいけど、何もないじゃん。安心した」

王馬「……」ポチッ



ヒューーーーッ ボンッッ



最原「!」

夢野「……あ、あ、あれはっ……!?」

王馬「ま、略式だけどさ。行事に花火は付き物でしょ」

最原(あれは……!)

入間「お、おい。あの色はまさか……!」

王馬「入間ちゃーん、いつの間にこんなもの作ってたのさー。巌窟王ちゃんと同じ色の炎を出す燃焼促進剤なんて」

最原(空に打ちあがっていたのは、黒い花火だった。いつか入間さんが作った燃焼促進剤の作る)

最原(彼と同じ色の偽りの炎)

アンジー「……」

最原(……でも。偽物だったとしても)

最原(あの炎の色が僕たちの心を痛めるくらい懐かしい)

王馬「あと少しボンボン弾けさせるよー!」ポチリッ

入間「俺様の発明品ーーーッ!」ガビーンッ
565 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/20(金) 16:27:20.96 ID:fC/xwglJ0
ヒューーーーッ……ボボボボンッ

百田「おおーーー……やべぇな! なんかテンション上がってくんな、アレ!」ワクワク

入間「勝手に上げんな! 弾けさせすぎだクソドチビ! 一体どのくらいアレに突っ込んだ!?」

王馬「全部っ部」サラリ

入間「全部っ部!?」ガビビーンッ

真宮寺「また後で作ればいいと思うヨ」ポンッ

入間「い、いや……いやいやいや! あの炎は仕上げに巌窟王が出していた炎を穴が開くほど見つめながら色を細かく微調整しなきゃ作れない……」

入間「つまるところモデルがいない今! もう二度と完全に同じ色にはならなくって!」



ヒューーーッ ボボボーボッ ボーボボンッ



入間「話を聞けぇーーーッ! せめて一滴残してサンプリングさせてくれーーー!」ガビーンッ

王馬「人生って花火みたいなものだと思わない? 儚さとか」

春川「聞く耳持ってないねコイツ。最悪」

入間「……」

入間「はなびきれー」ボアーッ

夢野「あ、諦めおった……!」

天海「……ご愁傷様っす」

星「後で肩でも揉んでやろうか?」

最原(さっきからちょくちょく復活してきてるな……)
566 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/21(土) 20:27:49.47 ID:0jR4Tcmx0
キーボ「……待ってください。つまり王馬クンは入間さんの研究教室に忍び込んだわけですね?」

王馬「……ん。耳にノイズが入っちゃったな」

キーボ「ボクの声をノイズ扱いしないでください! 入間さん! 沈んでないで周囲を見てください! この程度で終わるはずがありません! だって」




ギュンッ




全員「!!!!!!!!!!!」

最原「がっ……!」

アンジー「……え」

最原(正直な話、それが見えたのは一瞬のことだったと思う)

最原(でも、僕たちはそれをそうだと認識した。例え一瞬だったのだとしても、その衝撃は忘れないだろう)

アンジー「エドモン……!」

最原(その影は僕たちには一切振り向くことなく、天井に開いた穴に真っ直ぐ向かって飛んでいき)

最原(……そのまま見えなくなった)

春川「……嘘……だって、アイツは……!」

最原(その背中を、僕たちは呆然と見つめていた)

キーボ「……ああ、もう……こんなことのために……」

入間「……こんなこと……?」

入間「あっ」

最原「え?」

入間「あ、あ、あああああああああ……!」

入間「やりやがったなこのドチビィィィィィィィ!」
567 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/23(月) 12:06:13.27 ID:mNqW0ssy0
最原「どういうこと?」

獄原「……巌窟王さんじゃなかった」

最原「え」

獄原「ごめん。ゴン太、目だけはいいんだ。凝視すれば流石にわかるよ」

獄原「マントの下に隠れていたのは、木の骨格を付けたスクーターだった……気がする」

アンジー「……木の骨格……?」

王馬「なーんだ、一番騙されやすそうなゴン太が引っかからないのなら、この嘘は出来損ないだなぁ。食えたモンじゃないや」

百田「お、お前……!」

入間「そうだよ! あの空飛ぶ巌窟王の正体は……!」

入間「俺様たちが脱出の段取りに使うはずだった飛行スクーターだ! 一台しか作れなかった超〜〜〜〜〜貴重品の!」

白銀「な」

天海「な」

夢野「なんじゃとォ〜〜〜ッ!?」ガビーンッ

王馬「時間になったらアクセルを踏んで無人で飛ぶようにセットしておいたんだよね」

王馬「まあ大丈夫でしょ。キー坊を飛ばせば段取りそのものは問題ないし」

入間「いやっ、おまっ……ふざけんなよ? ふざけんなよ!? 俺様が魔術に触れられる最後の機会をテメェはよォ〜〜〜!」

春川「……ねえ。今はそれどころじゃなくない?」

入間「あァ? 何がだ!?」ゼェゼェ

春川「あれだよあれ」

入間「あれ……?」







アンジー「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

入間「あふ」ガクーンッ

天海「腰抜かした!」ガビーンッ

星「……地雷だったか……?」
568 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/25(水) 21:38:44.77 ID:wkIbyNwb0
「……ぷっ……」




アンジー「あっはっはっはっは! 一瞬……ほんの一瞬だったけど騙されちゃったよー!」ケラケラ

最原(よ、よかった。存外機嫌良さそうだぞ!)

アンジー「お礼に死をプレゼントしてあげる」ギンッ

王馬「」

最原(激怒してたーーー!)ガビーンッ

アンジー「……」

アンジー「この嘘でチャラにしてあげるよー」

王馬「え」

アンジー「……やり方はどうあれ、さ。アンジーを励まそうとしてくれたんだよね?」

アンジー「この場に彼がいればまず間違いなく哄笑しながら小吉を八つ裂きにしてただろうけど」

春川「目に浮かぶね」

アンジー「……現実にはそうじゃないからさ」

王馬「そうでもないよ。嘘で変えられる現実は間違いなくある」

王馬「……未来っていう現実がさ」

アンジー「……」

王馬「ま、今回は半ば失敗したけど、本当はアンジーちゃんはもっと元気になるはずだったんだ」

王馬「それに、一瞬完全に騙されたとき、どんな気分だった?」

アンジー「ちょっと嬉しかったよー。ぬか喜びだったわけだけどさー」

王馬「そっか。それならまあ、俺は別にそれでいいんだ。何よりの報酬はキミの笑顔だから……!」キランッ

百田「しゃあしゃあとコイツは……」
569 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/27(金) 21:06:00.61 ID:b4uKjyF60
王馬「さて、それじゃあ本題! 俺たちはいつ脱出すればいい?」

最原「……」

百田「三日後の朝だ。赤松も帰ってきてねぇしな……」

最原(結局百田くんが半ば適当に言った決定がそのまま生徒全員の決定となった)

最原(スクーターは王馬くんのイタズラで消失。キーボくんがいなければ外への脱出の段取りはできない)

最原(脱出がたった一人の能力頼みになっている時点で否応なしに僕たちは共同体になってしまう)

最原(今更それに異議を唱える人はいないけど)

最原「……」

最原「三日後、いや……あの言い方だと違うだろうな」

最原「三日以内に何が起こる?」

最原(その後、しばらくはおだやかな時間が続いた)

最原(……赤松さん抜きで)







待機二日目 夜

キングプロテア「……」モゾモゾ

ズポッ
570 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/28(土) 21:49:09.70 ID:ujxGk7yL0
赤松「……かっ……!」

赤松「帰って……これた……!」ズタボロッ

ネコアルク「お疲れ様でしたにゃー。いやマジでお疲れ様でした」

赤松「……あ、ありがとうキングプロテアさん。BBさんによろしく伝えておいて」

キングプロテア「ばいばいです」ヒラヒラ

赤松「本当に凄い冒険をした……ローマ皇帝の歌声聞かされたりドラゴンの女の子の歌声聞かされたりネコリンボが裏切ったり……!」

ネコアルク「イベントショップの店員したりなんだりと大忙しでしたにゃー。いやー。みんなが見てないのが惜しかった」

赤松「……でもまあ、その甲斐はあったけど」

赤松「急ごう! ネコアルク!」

ネコアルク「らじゃー!」

セミラミス「……」ボソッ

赤松「え? なんか言ったセミラミスさん! 酔うから走るのやめろって提案はなしだよ! 勝手におんぶしてる私が言うのもなんだけど!」

セミラミス「死ぬまでに一度でいいからスマブラに出演したかった」ボソッ

赤松「どうしてロクでもない願いがそうポンポンと出てくるの!?」ガビーンッ

ネコアルク「しかも願いの規模が無謀そのものですにゃ」

赤松「しばらく黙ってて! もういいから! 私は私の約束のために、最後まで全力出すだけだから!」

セミラミス「……」







病院

最原「……明日になったら脱出開始か……赤松さん、まだ帰ってこなかったな」

最原「間に合うといいんだけど……」


……ポーンッ


最原「?」


ポーンッ ポンポンポーンッ……


最原(ピアノの音? こんな夜中に……)

最原「……まさか」
571 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/30(月) 21:59:41.99 ID:BpqVKkO20
超高校級のピアニストの研究教室 外 廊下

最原「……ドビュッシーの……月の光だっけ」

最原(一度だけ赤松さんの研究教室からCDを借りて聞いたことがある。あのときと違うのは、彼女が直接的に弾いているところだろう)

最原(部屋の外には、アンジーさんが中をこっそり覗き込むように立っていた。僕に気付くと小さく手招きする)

アンジー「……帰ってきたみたいだねー。望み通りに、さ」

最原(中にはネコアルク。椅子に座ったセミラミスさん。ピアノを弾いている赤松さん)

最原(……セミラミスさんは、今にも消えてしまいそうに身体を明滅させている)

最原(でもこの部屋に満ちている空気は穏やかなものだ)

最原「……本当に怖いな、彼女。赤松さんのことだけは絶対に怒らせられないよ」

アンジー「迂闊に約束なんてできないよねー。地獄で血の池風呂浴びてても無理やり引っ張り出されそうだもん」

アンジー「でもアンジーは楓が楽しそうにしているの、見てるの好き」

アンジー「楓の若干空元気入った明るい声も嫌いじゃない」

アンジー「多分みんなそうだと思うなー」ニコニコ

最原「……うん。僕も好きだよ」

アンジー「転子にチクってやろー」ニヤァ

最原(ハメられた!)ガビーンッ

セミラミス「……」ボソッ

最原「あ」

最原(……ほぼ一瞬のことだった。セミラミスさんが演奏途中の赤松さんに何か声をかけて……)

赤松「!」

最原(ハッとなった赤松さんが顔を上げて、彼女のことを見て)

バキンッ

最原(……セミラミスさんは、跡形もなく消えてなくなった)

赤松「……」

赤松「……」グシッ

最原(……この部屋の電力はモノクマの修理の甲斐もなく、まだ復旧しきっていない。だから暗闇の中、赤松さんの影が辛うじて見える程度だ)

最原(だから顔を何度もこすっている、ということしかわからなかった)
572 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/02(水) 20:44:01.64 ID:3QKG9Lya0
赤松「……はー……」

赤松(やりたいことは全部やった。かなり周りに迷惑かけまくっちゃったけど)

赤松(みんなはもう脱出してるのかな。多分してないだろうな。ネコアルク経由で伝言はしたし)

赤松(……ちゃんと話さないと。全部)

赤松「ネコアルク。眠れる場所探して」

ネコアルク「合点承知の助ー!」

ネコカオス「数多くの気配が病院の中に集まっていた。おそらくほとんどの生徒はあそこで寝泊まりをしているはずだ」

ジャガーマン「……よく頑張ったね。えらいえらい」ナデナデ

赤松「や、やめてよネコアルク……」

ネコアルク「え? 何を?」

赤松「へ? 今私の頭を撫でたでしょ?」

ネコアルク「ん?」

赤松「え?」

ネコカオス「お取込み中のところ申し訳ないが」ガチャリンコ







最原「あ」

アンジー「あちゃー」

ネコカオス「ドアの裏に隠れていた彼らは、キミの友達ではないかね?」

赤松「!」
573 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/04(金) 20:51:23.26 ID:cfhLn+zK0
赤松「ええっと……見てた?」

アンジー「聞いてもいたよー! 流石にセミラミスの最期の言葉は聞こえなかったけどねー」

アンジー「……なんて言ってたの?」

最原(好奇心のままに口に出すな、この人は……僕も興味あるけどさ)

赤松「秘密。一生言わない。詮索もされたくない」

アンジー「だよねー」

赤松「ふふふ」

最原(……わからない空気だ。サーヴァントと順当に絆を深めた二人にしかわからないものがあるのだろう)

赤松「で。最原くん、実は伝えなきゃいけないことがあるんだけど……」

赤松「……」

赤松「明日でいいや。今日は眠い……今何時?」

最原「ええっと……待って。モノクマーズパットを見れば正確な時間が――!」

最原「……」

最原(ああ)

アンジー「……モノクマーズパット、壊れちゃったのー? 画面が……」

最原(そうか。この学園の新しい主が消えたから……)

赤松「……う……ぐ……っ!」ジワッ

最原(……少しずつ壊れていく)

最原(少しずつ終わっていく)

最原(僕たちの学園生活が)
574 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/06(日) 20:03:34.00 ID:mxnOdMuX0


百田「あァァァかァァァまァァァつゥゥゥ!」ピョイーーーンッ

赤松「凄い跳んだーーーッ!?」ガビーンッ

ダダダダダダダッ ダンッ

春川「……」ビュンッ

百田「え?」








グインパクト




バガァァァァンッ


百田「ぎゃあああああああああああああ!?」

赤松「と思ったら春川さんも跳んでライダーキックおみまいしたーーー!?」ガーーーンッ

白銀「ライダーキックはキン肉バスターと同じで、リアルでも一応再現可能なんだよね。プロレスラーが証明してる」

天海「普通のキックよりは危険らしいっすけどね」

最原「はしゃぎすぎだよ! みんなして!」

春川「私は止める側だよ。勘違いしないで」

王馬「ノリノリで最新式ライダーキックをかます女の子の台詞じゃないよ……」
575 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/07(月) 20:36:25.60 ID:IKMyStBG0
春川「……おかえり。赤松」

百田「あ! ズリィ! 俺が最初に言おうとしてたのによ!」ガバリッ

星「お前はいい加減落ち着きを持った方がいい」

赤松「うん……みんな! ただいま!」

ブヂイッ

赤松「いいっだぁぁぁ!?」

入間「……毛根付き毛髪ゲット。後でDNA鑑定かけてみねーとな。偽物かもしんねー」

赤松「本物だけど!?」ガビーンッ

キーボ「すみません赤松さん。彼女は王馬クンに酷い狼藉を働かれ、今ちょっと人間不信気味なんです」

赤松「私がいない間に何があったの!?」

東条「赤松さん。帰還おめでとう。腕によりをかけてケーキを作ったわ」バチバチバチシュボオオオオオオッ

赤松「何それ!? あ、ケーキ!? ケーキ部分より花火部分が多くて一瞬『何それ!?』って思っちゃったよ!」ガビーンッ

最原「……みんな嬉しいんだよ。赤松さんが帰ってきてさ。これで一緒に外の世界に出れる」

茶柱「ええ! これにて一件落着ですね! 今度こそ……!」

赤松「……」

赤松「あのさ。みんな」

真宮寺「何? 僕の祝福の証、モーショボー人形を作りながらで良ければ聞くけど」グッグッ

赤松「モーショボー人形!? それもプレゼントなの!?」ガーンッ

アンジー「アンジーも色々作ったんだよー! 楓の似顔絵とかさー! ほら、あそこで布被ってる塊」

最原「その布、絶対に取らないでね! せめて外に出るまでは!」

赤松「い、いや……その……」シドロモドロ

最原「……どうかしたの? 赤松さん」








赤松「私、外の世界には出たくない……んだけど」ダラダラダラ

全員「……」

全員「はああああああああああああああああっ!?!?」ガビビーンッ
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/08(火) 17:29:35.80 ID:yMTeEANoO
さてはゼロワン見てるな
577 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/09(水) 21:38:41.79 ID:v6/m5UQT0
最原「なっ、なななっ……ななななな、なんで!? どうして!? 悪い夢でも見たの!?」

ガシャーーーンッ

獄原「……ハッ! しまった! ショックのあまり標本を落としちゃった!」

白銀「モノクマ! モノクマーーー! カウンセリングの用意!」

モノクマ「モノクマーズが全滅しちゃったからもう無理でーーーす!」

夢野「ど、どうしたんじゃ赤松! ノーパンだったころのお主はもっと輝いておったぞ!?」

赤松「だからアレはセミラミスさんが勝手に言ってただけで私ノーパンじゃないってば!」

王馬「思い出せ! 黄金のノーパン時代を! ノーパン! ノーパン! ノーパン! ノーパン!」

入間&夢野「ノーパン! ノーパン! ノーパン! ノーパン!」

赤松「イジメだよねイジメなんだよねコレ!」ガビーンッ

赤松「違うって! コレ見てよコレ! 別に逃げるわけじゃないってば!」ペラッ

最原「紙?」

赤松「契約書。なんか炎ボーボー出す自称ジャンヌ・ダルクさんに書けって言われたんだけど……」

茶柱「はあ……?」

アンジー「……これ……は……!」

最原「ばっ……バカな! そんな!?」







赤松「私、実は巌窟王さんのホーム……カルデアに呼ばれてる、みたいな……?」

ネコアルク「既に内定してて、この学園から去った後にすぐ行くことになっておりますにゃー」
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/11(金) 12:08:56.11 ID:NsnSyKbf0
炎を出す自称ジャンヌって、水着の方のジャンヌ・オルタのことか
というより、地下の世界で何があったんだwwww
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/11(金) 17:26:24.18 ID:0hPNCzLhO
別に水着の方でなくとも炎使うし、契約書うんぬんだからむしろジャンヌオルタでしょ
……まぁどっちでも変わらんけど。契約書ネタの贋作イベも数年前だしな
580 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/11(金) 21:30:06.06 ID:eBWaw8TC0
赤松「ネコアルクとコンビで期間限定サーヴァント? みたいなのやってたらさ。なんかいつの間にか正式加入することになって……」

最原「え。え。え」

赤松「あの……ごめん。今の今まで姿消してたからアレなんだけど」ダラダラダラ

ネコアルク「就職先! 決まりましたにゃー!」

ネコアルクs「祝えー! イエエエエエエエエエエエエエイ!」ドンドンパフパフ!

入間「……ぬ……ぬ、ぬ、ぬ、ぬ……!」ガタガタガタ

王馬「抜け駆けだぁぁぁぁぁ!?」ガビビーン!

春川「赤松……ホントアンタさぁ……ホントにさぁ……そういうところが最悪にさぁ……」ハァーーーーー

獄原「おめでとう赤松さん! あれ? 祝うんだよね? おめでたいことなんだよね?」

入間「おおおおおおおおうおうおうおうおう……なんで赤松が! なんで赤松なんかが!」ダバダバダバ

最原(滂沱の涙を流してる……)

アンジー「……」

アンジー「本当に行っちゃうの?」

赤松「うん。運で結ばれた縁でしかないけど……」

赤松「私! 例え別人だったのだとしても、巌窟王さんやBBさんに会いたい!」

赤松「……セミラミスさんとも!」

アンジー「そっか。頑張ってね」サラリ

茶柱「不気味なほどあっさりですね。思うところはないんですか?」

アンジー「あるよー。あるけどさー……」

アンジー「アンジーはアンジーの道で、エドモンと再会したいから」

茶柱「……なんか背、伸びました?」

アンジー「にゃははー! ちょっとはそうかもねー! まだまだ成長したりないよー!」キラキラキラ

赤松「というわけだからさ。私は地下で待ってるカルデアの人と一緒に、魔法陣を潜って向こうに行っちゃうから」

赤松「……みんなを見送らせて欲しいな」ニコ
581 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/13(日) 17:48:05.35 ID:OcdSLI5M0
入間「……いいなぁ。いいなぁ。赤松ばっかズリィなぁぁぁぁぁ……」

獄原「みんな。入間さんがいじけちゃってるけど」

百田「ほっとけ、と言いたいところだが、最後だしな。励ましてやるか」

王馬「よっ! 天才発明家!」

百田「脳殺巨乳!」

王馬「そこそこの美女!」

百田「天下一の脳細胞!」

王馬「ゲロ豚シャブ●●●! ●●●!」

入間「大分早い段階から悪口になってんだろうが! やめろバーカバーカ!」

入間「もういいぜ! こうなったら俺様もやることは一つだ!」

百田「おっ! 立ち直ったな! よかったよかった!」

入間「スイッチオン」ポチッ

百田「ん?」



ガシャガシャガシャガシャコンッ




エグイサルs「」フシューーーーッ……

全員「」

入間「……」

入間「俺様がラスボスだーーーッ!」ヒャッハー!

最原(変な立ち直り方してるーーーッ!)ガビーンッ

赤松(エグイサル修理してるーーーッ!)ガビビーンッ
582 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/15(火) 21:17:46.36 ID:QFB1HuNv0
夢野「落ち着けェーーー! 落ち着くんじゃ入間ァ! こんなことをしても現実はなにも変わらん!」

入間「夢野ォ……手を組もうぜェ……!」フシュルルルルル

夢野「は?」

入間「アレを見ろォ!」

夢野「アレ?」チラッ

ハトムギ「くるっぽー」

赤松「……ん? あ、ハトムギ。なんで私の頭の上に乗ってるの?」

夢野「…………………………」

夢野「は????????????」

最原「……赤松さん。彼女に懐かれるようなマネした?」

赤松「いや、特に……むしろ私、セミラミスさんを地下世界から連れ戻すのに彼女に随分と助けられてさ……よしよし」ナデナデ

ハトムギ「くるっぽー」

夢野「えっ。セミラミス? えっ? えっ?」

入間「寝取りだ寝取り」

赤松「ねとり?」キョトン

ハトムギ「くるっぽー」

夢野「……ふっ……」







夢野「うおおおおおおおおおおおおおおお! 許さんぞおおおおおお!」ゴオオオオオオッ

赤松「!?」ガビーンッ

夢野「よくも……よくもウチの商売仲間を寝取ってくれたなぁぁぁぁぁぁ……」フシュルルルルル

赤松「えええええええっ!? いや、これは違っ……ていうか仮に彼女を誘惑した人がいたとしてもそれセミラミスさんで! 私関係無い……」

夢野「殺すッ!」ジャキイイイインッ

赤松「殺す!?」ガビーンッ

最原(どこからともなく丸ノコが出てきたーーーッ!)

入間「ヒャーーーハハハハ! いいぞ! やっちまおうぜ! 俺様たち二人で!」

ギュイイイイイイイイイインッ ドグシャアアアアアッ
583 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/15(火) 21:27:19.05 ID:QFB1HuNv0
入間「……ゑ?」

最原(今の一瞬、何が起こったのか僕たちは全員理解できなかっただろう)

最原(だって、今夢野さんが粉々にしたのは……入間さんが持っていたエグイサルのコントローラーだったから)

夢野「……」ギュインギュインギュインギュイイイイイイイイインッ








夢野「貴様ら全員を! 殺すッ!」ジャキジャキジャキジャキイイイイイインッ

百田「丸ノコ増えたーーーッ!」ガビーンッ

天海「ていうかドリルも追加されてるーーーッ!?」ガビビーンッ

入間「え? なに? え? 俺様、ラスボスになるはずじゃ……え? え?」オタオタ

東条「入間さん! 今すぐそこから離れて! そのままじゃ一番最初にミンチになるのはあなたよ!」

夢野「ウチの魔法の供物になれェェェェェェ!」ギュイイイイイイイインッ

入間「ぴゃーーーーーーーッ!?」ダッシュッ!

赤松「入間さん! こっち! こっちーーー!」

茶柱「いやダメです呼ばないで! じゃないと暴走した夢野さんまで」

夢野「サバトじゃああああああああああああ!」ギュイイイイイイイイインッ

茶柱「こっちに来ちゃいますからヴェエエアアアアアアアアアアア!?」



ドカァァァァァン! ドリドリドリドリ バツーーーンッ ギャーーー!



白銀「……夢野さんが……裏ボスになった……」ガーンッ

最原「……だ……誰か」

最原「誰か……助けて……」

最原「誰か僕たちを助けてくれーーーッ!」






カルデア

??「はい。それでは、最後の支援です!」ポチッ
584 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/17(木) 21:51:45.71 ID:Jkli8XaZ0
??「……これで正真正銘、完全にお終いです。私たちの我儘に乗ってくれてありがとうございました」

???「別に構いはしないさ。貴様には随分と世話になったらしいからな。俺はまったく覚えがないが」

??「……あの。人生を台無しにするレベルで人が好すぎません? ちょっと心配になってくるんですけど」







巌窟王「クハハハ! なにを言う! まったく見覚えのない人間に嘘を吐いたのだからな!」

巌窟王「その俺がお人好しなどと、まったく笑えるジョークだ」

BB「別に構いやしないんですよ、嘘で」

BB「真実と嘘に違いなんてありはしません。特に人間にはね」

BB「その違いを認識できるとしたら人間より上の知生体だけ」

BB「だから全然構わないんです。見抜かれてない嘘は真実そのものなのですから」

巌窟王「……気に入らない論理だ」クルッ

BB「おや。どちらへ?」

巌窟王「マスターに呼ばれている。またくだらないクエストだろう。だが行かないわけにはいくまい?」

巌窟王「俺は徹頭徹尾、あの男のサーヴァントだからな!」ギンッ

BB(……さてと。これでこの世界への興味を、私は完全に失いました)

BB(さようならです。才囚学園のみなさん)
585 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/20(日) 08:25:31.88 ID:FzR96pf+0
才囚学園

血塗れの入間「」チーンッ

赤松「入間さんが死んだ!」ガビーンッ

白銀「このひとでなし!」

茶柱(いやー。実際はケチャップを頭から被って死んだフリしているだけですけど。バレないものですねー)

ケチャップ入間「……」

赤松「春川さん! 助けて! 犠牲者出てる! 犠牲者出ちゃってるから!」

春川「めんどい」ンアー

赤松「なんで超初期の夢野さんみたいなこと言ってるの!?」

春川「夢野の怒りと体力が尽きるまで頑張って。そう時間はかからないから」

春川「二十四分くらい……?」

赤松「疑問調だし結構長いし!」

百田「頑張れ赤松頑張れ! お前は今まで良く頑張ってきた! これからも頑張れる!」

赤松「いやそろそろ助けがないと心が折れ――」

夢野「止めじゃアアアアア!」ギュイイイイイインッ

赤松「なああああああああ!?」ガビーンッ



キラーンッ



キーボ「あれ。なんか空から降ってきませんか?」

獄原「え? なんか……ってなに?」チラッ

姫路城「書籍超特急ドーーーーンッ!」グシャアアアアアアッ

夢野「んあああああああああああああっ!?」

最原「空から姫路城降ってきたーーー!? なんで!?」ガビーンッ

赤松「こ……これは……刑部姫さんの姫路城! の人間大ミニチュア!」

茶柱「見覚えあるんですか!?」
586 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/22(火) 22:06:41.53 ID:HjsaBEgi0
最原(なんか知らない女の人の声が聞こえたような気がしたけど……)

百田(うっ。何故か頭の中に太陽神殿の映像が……何故だ……?)ガタガタ

最原(トラウマを刺激されている……)

最原「いやそんなことより夢野さんの身体が丸っと姫路城に押しつぶされてるよね、アレ!」

獄原「た、大変だ! 早くどかさないと!」

夢野「……」ズルッ

白銀「あれ。自力で抜け出してきたよ」

東条「……無傷のようね。どうやら」

夢野「……うっ……」ポロポロ

獄原「う、うわぁ! 泣いてるの、夢野さん! 痛かった!? どこか見えない場所にたんこぶとか……」

夢野「ううううううううううう……!」

白銀「……ん。夢野さん? あのさ」











白銀「その片手に持ってる厚手の本、なに?」
587 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/25(金) 20:06:51.18 ID:e677obpl0
夢野「……卒業アルバム……」グスグス

全員「!?!?」

夢野「全員分……! あ、あ、あの姫路城、ペーパークラフトで……底の部分が……!」

最原「百田くん! 確認しよう!」

百田「お? おう。おうッ!」バッ


ガサゴソ


東条「……どう?」

最原「底の部分から分解できる。これ箱だ! 意図はまったくわからないけど姫路城型のプレゼントボックスだ!」

赤松「刑部姫さん、折り紙とかペーパークラフトの類は大得意だったなぁ……じゃなくて! まさか、それの中身って!」


ドサドサドサッ


全員「!!!!!!!!!」

卒業アルバム群「」ズラーッ

白銀「……」

アンジー「彼の遺品……彼の未練。卒業アルバム……間違いない、ね……」

獄原「中身! 中身を確認しないと! ねえ!」ワクワク

キーボ「……全員分、名前を振ってあるみたいですね。本当、巌窟王さんって人は……」
588 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/28(月) 21:50:31.10 ID:DZoGeXDu0
赤松「でもなんで。巌窟王さんはもういなくなってるのに、誰がこんなものを作ったの?」

最原「……」

最原(待てよ。それだ。僕はそれに心当たりがある気がする……)

百田「終一。何か閃きそうなんだな?」

最原「もうちょっとで……何か思いつきそうなんだ」

春川「いくら何でもそれは無理があるよ。だって卒業アルバムがいきなり降ってくるなんて誰が予想できるの?」

春川「誰かが『予告』してたのならともかくさ」

最原「!」




最原『……こんな……こんなことって! 待ってよ! 才囚学園の生徒全員はみんな死んでないんだ!』

最原『最後の最後まで誰も欠けずに行けると思ったのに! こんなの!』

BB『『BBという存在』が消えたりはしませんよ。かと言って、おそらくもう二度と会えないでしょうが』

BB『私を作った代償に、オリジナルのBBは三日間一切の行動が取れないので』




最原「あっ……」




『三日程度待っていてください。すぐに用意しますので』



最原「……あ、ああああああああああっ!」

最原(そうか……そのための三日間!)

最原(そのためのモラトリアムだったんだ!)
589 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/01(金) 16:56:13.95 ID:sPd2AzC/0
最原「BBさんだよ! 彼女が卒業アルバムの作成を引き継いだんだ!」

入間「んなっ……BBだと!?」

東条「ありえるわね。私たちの前で砕け散ったBBさんは分身。本体はまだピンピンしているはずだもの」

獄原「でも引き継いだって……巌窟王さんの卒業アルバムのデータを一体どうやって引き継いだの?」

アンジー「元からBBと彼は組んでたからねー。卒業アルバムのデータくらいどうとでもなるよー」

白銀「そういえば……あのパソコン、中身を定期的にどこかへ送ってる形跡あったね」

白銀「そっか。BBさんに送ってたんだね」

春川「……アイツの不器用さが、完成に一役勝ったってことか」

百田「ん? なんだよハルマキ。懐かしそうな顔してんぞ?」

春川「!!!!!!!!」ハッ

春川「え、そ、そう……かな……? 気のせいだよ。こっち見ないで殺されたいの?」ガタガタ

百田「なんで動揺してんだよ」

王馬「どうしたの春川ちゃん! 具合でも悪いの!? 頭!? 頭でも痛いの!?」ニヤニヤ

王馬「俺のこと覚えてる? なにか忘れたことない? 試しに思い出せることを片っ端から言ってみてほしいなぁ」ニヤニヤニヤ

春川「……」ガシイッ

王馬「おげぁっ」

茶柱「ね、ネックハンギングツリー……」

真宮寺「……」ペラペラ

真宮寺「……はあ。仕方ないネ」

最原「え? 仕方ない?」

真宮寺「しばらく姉さんの友達作りは中止かなって話」

最原「!」

百田「……どういうこったよ、そりゃあ」

真宮寺「この卒業アルバムを見ればイヤでもわかるヨ。巌窟王さんたちがどれだけ僕たちのことを信じていたか」

真宮寺「希望……いや、期待、と言い換えた方がいいかな……」
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/02(土) 01:30:37.68 ID:VWBvd9BfO
むしろ中止してなかったのかよ
591 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/04(月) 21:20:00.55 ID:HlDb7I860
真宮寺「僕は間違ったことをしていたとは思わない。思わないけど、これ見て考えをちょっと変えたんだ」

真宮寺「……まだ僕には足りないことがある。それを見つけるまでは、友達作りをしても虚しいヨ」

王馬「……!」ペラペラ

王馬「ふーん……そっか。だから名前をそれぞれに振ってたんだ」

最原「!」

春川「まさか、遺言でも書いてあったっての?」

アンジー「そういうのとは無縁な人だよー」

王馬「ささやかなものだよ。本当にちょっとしたものだ」

王馬「……見てみれば? 中。白銀ちゃんの分含めて全員分あるんだしさ」

最原「……」

最原(ちょっと怖い、と思うのは何故だろう)

最原(……巌窟王さんといよいよ本当に別れてしまう気がしているのか?)

最原(だとしたら僕は、やっぱり僕は弱いままなのかもな)

最原(でも)

最原「……」ペラペラ

最原(それ以上に中身が気になる)

最原(……割と普通の卒業アルバム、だな。巌窟王さんが撮った写真がいっぱいだ)

最原(巌窟王さん自身が入っている写真もあるけど、これは……キーボくんの視点っぽいな)

最原(一体どうやってこんな操作したのか……)

最原(……懐かしい。なにもかも遠いむかしのことのようだ)

最原(……あとは)

最原「!」

最原(あ……!)
592 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/08(金) 19:44:17.91 ID:utJs4QEu0
『卒業証書
最原終一
上はエドモン・ダンテス所定の全過程を終了したことを証する。

才囚学園 エドモン・ダンテス』



最原「……は、ははははははっ……!」

百田「そ、卒業証書……くくっ! アイツ、マジかよ。本当にささやかだな」

百田「どこの世界に空から卒業証書落とすヤツがあんだよ……!」

アンジー「……エドモンの字だ。これ、エドモンの字だよー」

春川「嘘……でもどうやってこれを書いたの? どの時点で?」

赤松「……」

赤松(カルデアには『巌窟王さん』がいる。こっちの世界のエドモン・ダンテスが消えたことで、完全にカルデアの巌窟王が復活したはず)

赤松(彼に書かせれば、それは間違いなくこっちのエドモン・ダンテスと同じ筆跡になる……か)

赤松(……トリックは想像付くけど、わざわざ言うこともないよね)

アンジー「……ッ!」

赤松(……嘘は暴かれない限り真実だから)

王馬「……にししっ」ニヤニヤ

赤松(なんでか知らないけど王馬くんは見当付いてるみたいだけど、黙っててよね本当)ハラハラ
593 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/13(水) 17:11:32.27 ID:q8j2Smps0
アンジー「……」

アンジー「楓も進路決めたみたいだし、アンジーもここで言っておこうかなー」

アンジー「アンジーもアンジーで、エドモンを探してみる」

百田「あ? おい、アイツはもう……」

アンジー「そもそもの話さ、英霊召喚のシステムってかなり広い意味での死者蘇生だよねー」

アンジー「……不可能ではないと思うな」

百田「……」

百田「どんな不可能もやり遂げちまえば可能に変わる!」

アンジー「!」

王馬「えー? いいの? 止めなくて」

百田「いい! 自由にしろ! アンジーの人生はアンジーのモンだ!」

百田「当然だが、つまりいつ止めてもいいってこった! 後悔さえ残らなきゃなにしたっていいんだよ!」

アンジー「その結果、アンジーが誰かを生贄にするような道を取っても?」

百田「やりたいと思うのは自由だぜ? まあそんときは俺か、終一か、ハルマキが止めるけどな! 自由なんだからよ!」

最原「え!? 僕も!?」

百田「止めねーのか?」

最原「いやまあ視界に入ったら多分止めるけどさ……」

最原「……」

最原「あれ? 春川さんは抗議しないの?」

春川「いいよ。私だって止めてあげるよ」

春川「……文句はそのとき百田と夜長に言えばいいし」

百田「おし! じゃあ俺も進路言うぞー! 宇宙行く! 以上!」

最原「早い! しかも変わってない!」ガーンッ
594 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/19(火) 22:34:02.07 ID:UouBwDkN0
入間「俺様は! 俺様は諦めねぇぞ! 魔術と科学の両面の道を完全に極めてやる!」

入間「こっから出たらアトラス院に就職してやるぜ! あったらだけどな!」

最原「アトラス……え? なに?」

獄原「ゴン太は外に出てから考えるよ! 虫さんたちといっぱい相談してみる! 山とかで!」

星「さて。俺はせっかくのシャバだ。当てはないがひとまず外の空気を楽しむさ」

星「……ふん。俺が楽しむ、か……やれやれ」

真宮寺「僕は旅にでも出ることにするヨ。もちろん魔術師とかに暗殺されないように気を付けながらネ」

真宮寺「……というか永続的にみんなを魔術師から守る方法をどうにか探さないとネ」

茶柱「どの人ももうそうそう暗殺されそうにない猛者ばかりですけどね」

茶柱「転子は……うーん、ゴン太さんのマネじゃあありませんが、山籠もりでもしましょうか」

最原「え?」

茶柱「修行です修行! 一から身も心も叩き直すんです!」

茶柱「……どこの山かは非公開で!」

最原「非公開なの!?」ガビーンッ

茶柱「誰かが迎えに来るまでは十年でも二十年でも引き籠る予定ですので! そのつもりで!」

最原「僕への責任が重すぎる!」

百田(もう素直に茶柱のことを自分の責任として処理してんなー)

春川(あっつい。顔があっつい)

赤松「ふふっ……」

最原(そこかしこから生暖かい視線を感じる……!)
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/22(金) 17:03:52.63 ID:jCCEeg/v0
まだ続いてたんだこのss
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/24(日) 23:03:01.55 ID:wrD2gkLC0
見てます
597 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/25(月) 19:22:35.89 ID:ePqpcCVp0
夢野「……ぐすっ……ウチは……ウチの進路は……っ!」

夢野「ん?」

最原「どうかした?」

夢野「……王馬はどこじゃ?」

最原「どこもなにも、ここに……?」




全員(……あれ?)




百田「アイツいなくねぇ?」

春川「これからキーボ飛ばして外に出る段取り付けようって段だよ? 今更どこに行かれても……」

獄原「あれ。そこの岩になんか書かれてるよ?」

春川「……なんか?」




『このせかいはおうまこきちのもの』




最原「……」

最原(まったくもって荒唐無稽な書置きだったが、なんとなく意図するところは見えた気がした)

百田「なんか……この学園出るまでもうアイツと再会することはない気がすんな……」

最原「不思議だけど僕もそんな気がする……」

春川「アイツなら別口で脱出ルートを見出しててもおかしくなさそうだね」

獄原「最後の最後まで王馬くんは王馬くんだったね!」ニコニコ
598 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/02(月) 21:50:46.96 ID:00wmXuo00
夢野「ウチの進路は……そうじゃのう。ひとまず表の世界で有名になることかのう」

夢野「魔法使いとして!」

東条「……大丈夫? かなり危険だと思うのだけれども」

夢野「それでも誰かがやらないといけないじゃろう。いざ生徒たちが集まりたいとなったときに目印が何もないとなったら困るじゃろ?」

夢野「その役目はウチがやる。ウチが一番の適任じゃ!」

夢野「……腕が鳴るわい!」ギュイイイイイイイイ

最原「さっきから聞きたかったんだけど、その丸鋸とドリル何!?」

夢野「人体切断マジカルショーのアレと、箱を使った瞬間移動のときに箱へブッ刺すアレじゃな!」

茶柱「あ! やっぱり一応意味はあったんですね!?」ガーンッ

キーボ「ボクは……今決まりましたね。夢野さんの護衛をやりながら、このふざけた機能を解除する方法を探します!」ガチューンッ

赤松「気のせいじゃなかった。やっぱりキーボくんの周りの音、おかしいよね……? なんで?」

キーボ「セミラミスさんのせいですけど!?」ウガァッ

赤松「私に向かって噛み付かないでよ! 知らないよ!」ガビーンッ



ギャー ギャー


白銀「……みんな凄いなぁ。もう外に出た後のこと考えてるよ」

白銀「私なんて、これから生きてていいのかすら曖昧なのにさ」

天海「いや生きるべきっすよ。ていうか俺と一緒に来てもらうっすよ」

白銀「は?」

天海「ほら、俺が命懸けで前回の学級裁判から解放した二人……動機ビデオに映ってたあの二人に会いに行かないと。ね?」

白銀「いや、私はどの面下げてって感じだし」

ザッ

東条「やはりそうなるわね。いつ出発するの? 私も同行するわ」

白銀「花京院」

東条「東条よ」

白銀「……」

白銀「……え!? なんで!?」ガビーンッ
599 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/09(月) 22:02:48.85 ID:VhI1ZdEw0
東条「私がこの学園に来てから一番うれしかったことはなんだか、わかる?」

東条「巌窟王さんに赦されたときよ」

白銀「!」

東条「……最初はあなたのことを許せないと思ったわ。だけど、ね。事情を聞いて、その後許すか許さないかを決めるのなら、そこからは感情論よ」

東条「私は白銀さんを許したいと思う。巌窟王さんにやられて嬉しかったことを、誰かにやるの」

東条「……彼がいたことの最高の証明になると思わない?」

白銀「東条さん、巌窟王さんのこと大好きだよね。惚れてたの?」

東条「今の茶々は許さないわ」ガシイッ

白銀「アイアンクローはやめて。ごめんなさいごめんなさいマジでごめんなさあああああああ!」ギリギリギリ

東条「……」メシメシミミシミシミシ ピシリッ

東条「ここまでにしておきましょう」フッ

天海(今ピシリッて言った……! ヒビが入るような音した……!)ガタガタ

白銀「私だけ死ぬかと思った……」ゼェゼェ

東条「あとそうね、これも大事なのだけど」

白銀「まだ理由あるの?」

東条「……この学園の中で、あなただけがまだ救われてない」

東条「それってとても気持ちの悪いことよ。シンクについた水垢みたい」

東条「……私の前で、心の底から笑ってほしいのよ」

白銀「……」

白銀「まあ、いつかは」

東条「ええ。いつか、ね」フフッ

天海「決まりっすね! 俺たちは三人一緒に旅に出るっすよ! 燃えてきた!」メラメラメラ
600 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/16(月) 20:30:40.33 ID:svYqk3pB0
最原「よし! それじゃあ、やろう! キーボくん!」

キーボ「了解です!」チュドドドドドドド

入間「……本当にしまらねぇエンジン音だな」

百田「飛行にも支障出そうだが、なんで飛べてるのかわかんねぇ」

キーボ「音だけ! かっこ悪くなってるの音だけですからーーーっ……!」ズボボボボボボーッ

最原「……」

最原(穴から見える空は明るい。でも、それだけだ。なにも見えない。空だけが広がっている)

最原(この先に進んだ僕たちには一体なにが待っているのだろう)

最原(……サーヴァントのみんなと別れた後の僕たちに、なにができるんだろう)

最原(いや。不安に思うのは後でいい! 壁にぶつかったときでいいんだ!)

最原(この学園で巌窟王さんに貰ったものを、僕は生きている限り忘れない)

最原(それでほんのちょっと強くなれる……そんな気がするから!)






学園某所

ジャガーマン「よーっし! ぐるぐるパンチよーーーいっ!」グルグルグルグル

王馬「……で。キミは外に出たらどうすんの?」

ジャガーマン「絶対魔獣戦線バビロニア、アニメ絶賛放送中! 次は! 次クールのオープニングこそは出てやるぜ!」ビシイッ

王馬「うーん、ダメだ! 俺をもってしても何を言ってるのやらさっぱりわからない!」ヘラヘラ

ジャガーマン「で? キミはどうするの?」

王馬「この学園にしばらく残るよ」

王馬「ま……痕跡の後始末的な? そう何か月もいる気ないけどね!」ヘラヘラ

ジャガーマン「いいんでない? 学園っていうのは何かを貰って先に進む場でもあると同時に」

ジャガーマン「あなたたちが、なにかを『残す場』でもあるんだから。それを消すかどうかも生徒次第ってことで!」

王馬「……なんか消したくなくなってきたなー」

ジャガーマン「バーニングジャガーーーーーッ……」ゴゴゴゴゴゴ

ジャガーマン「ナッコォーーーッ!」シュンッ



ドカァァァァァンッ
601 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/23(月) 22:28:05.06 ID:sv0J2rwb0
物語はやがて終わる。

それを見た者の心になにかを残したのだとしても、やがてすべては記憶の影に薄れていく。





赤松「……みんな行っちゃったな。よしと。それじゃあ、いよいよカルデアに出発かな」

ブワッ

赤松「うわっ……凄い風。外と繋がる穴ができたって実感できるなー」

赤松「……」

ネコアルク「赤松嬢ー! 才囚学園の強制力が無くなってるから行き来は自由とは言え、いつ消えてもおかしくない出入口だからお早目ににゃー!」

赤松「わかってるってば!」

赤松「……行ってきます! 巌窟王さん! BBさん! セミラミスさん!」





――それでも僕たちが生きて歩いた道筋は、必ずどこかに残るし、今の自分たちに続いてくる。

他の誰が知らない道行でも、自分自身が忘れても、それでも絶対自分のルーツに繋がる物語。

僕たちの生きた証拠。僕たちの背中を押した、彼らが存在したという証拠が残る。
602 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/30(月) 23:03:07.67 ID:7FYy70kQ0
最原「……」



ザザーンッ ザザーンッ……



最原「……?」キョロキョロ

ミャア……ミャア……

最原「……」

最原「いつの間にか見覚えのない島にいるーーーッ! ウミネコがみゃーみゃー鳴いてるーーーッ!」ガビーンッ

最原「あれ!? どういうこと!? ここどこ!? ていうかみんなどこ!? あれ!? 学園のドームすら見当たらないぞ!?」アタフタ

魔猪「ぶもももももももーーーッ!」ドドドドドド

最原「うわあああああああああああデカいイノシシがこっちにーーー!?」

最原(避 否 死――)

武蔵「しゃああああああ今日の晩飯ゲットーーーッ!」ザァァァンッ

魔猪「ぶもげばっ!?」ブシャアアアアアッ

最原「ええーーーッ!?」ガビーーーンッ

武蔵「はー、大量大量。さてと、それじゃあさっさと血抜きとかして……」

最原「……」

武蔵「……あなた誰?」

最原「ここはどこですか?」



僕たちの冒険は終わらない。
僕たちだけの物語は……


武蔵「……あっ。また飛ばされる感じだコレ。ちぇ」キラキラキラキラ

最原「え? あれ!? 僕も!?」キラキラキラキラ

武蔵「おー、計らずも旅の道ずれゲット! しかもちょっと可愛い! LINEやってる?」キラキラキラ

最原「それどころじゃな――」キラキラキラキラ



シュイイイイインッ


これからも続く。
603 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/01/05(日) 00:05:58.70 ID:LtiM+y/l0
茶柱「!? !? !?!?」ガタガタ

百田「おーっし! それじゃあ、外に出れたことだし、それぞれの進路に向かって……一旦、サヨナラだな!」

春川「また会える……ううん。絶対に会うよね」

天海「最後の最後まで力になれたかは怪しいっすけど、それでもみんなとあの学園で同じ時間を過ごせたのは俺にとって――」

茶柱「待って! ちょっと待ってェーーー! 最原さんが! 最原さんがなんかキラキラキラキラシュイーーーンッて消えたんですけど!」

白銀「え? な、なに? なんのこと?」

茶柱「だから光の粒子に包まれたと思ったら身体が透けて消え失せたんですってば!」

百田「終一のヤツ、みんなと別れるの辛そうだと思ってたが……内心、舐めてたんだろうな。まさか真っ先に自分の道を見つけるとはよ」

茶柱「そういう感じじゃないと思うんですけど! むしろ消える瞬間『えっ?』みたいな顔してたんですけど!」

東条「今まで英霊召喚だのサーヴァントだのを散々見てきたのだから、人が消えるくらい今更と思わないでもないわね」

夢野「最原までウチのライバルになったのか? やれやれ、めんどいなんてますます言ってられなくなったのう」フウ

茶柱「そ、そういう感じ!? え!? みんな心配しないんですか!?」

獄原「最原くんなら多分大丈夫じゃないかな……」

星「まあ、なんだかんだ巌窟王に最後まで付いていったのは夜長を除けばアイツくらいだ」

真宮寺「その内、ひょっこり自力で戻ってくるヨ。第一僕たちに何ができるの?」

茶柱「それはっ、まあ……なにかしら……」アタフタ

アンジー「その通りだけどねー! まあ、今は各々やれることをやるしかないんだよー!」

キーボ「急がば回れ、ですよ! 証拠もないことですし!」

茶柱「え、ええーーーっ……!?」

入間「どうしても会えないなーってなったらそんとき考えろよ。ま、俺様に相談すりゃ手を貸してやらなくもなくもなくもないような気がするぜ!」

茶柱「どっち!?」ガビーンッ

茶柱「……ああー……!」





茶柱「もう! 思ったよりも大変そうですねぇ。約束果たすの……」
604 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/01/16(木) 17:10:19.96 ID:LRHajYlv0
百田「んじゃあな! 縁がありゃまた会おうぜ。それまで風邪とか引くなよ!」

アンジー「にゃははー! こっちの台詞だよー! もう吐血とかしないでねー!」

百田「!?」ビクウッ

百田(……いつ気付かれてた!?)

春川(吐血?)

百田「……」

百田(ハルマキの空気が変わった気がする! 逃げる一択だな!)ダダッ

春川「待って」シュバッ

百田「クソッ! ハルマキはえぇーーーッ!」シュバババババッ

春川「待って」ヒュンッ

百田「瞬間移動まで使って来やがった! ま、待てハルマ――あ゛あ゛ああああああああっ!」ガビーンッ

春川「待たない」






天海「……こ、怖……もう見えなくなっちゃったっすけど、怖かったっす……」アワワワワワ

天海「まあ、ここから先は二人の問題なんでもう手出しはできないっすけど。白銀さん! 俺たちも出発っすよ!」

白銀「ん? うん。いいけど。少し遅かったね」

天海「え? なにが?」

白銀「もうみんないなくなっちゃった」



ガラーンッ



天海「……去るの早ッ!」ガビーンッ

白銀「結局みんなワンマンプレイ大好きなんだよね……」

天海「み、みんなーーーッ! 俺っ……俺これから白銀さんと頑張るっ……頑張るって……」

天海「それっぽいこと言って別れたかったのにィーーーッ!」ガクーンッ

白銀「……」

白銀「私が聞いてれば充分でしょ」ボソッ

天海「え? なんか言ったっすか?」

白銀「早く行こう。目的地は……ひとまず前で」

天海「了解っす!」
605 :100日後に死ぬ天海:一日目  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/01/23(木) 20:42:53.95 ID:lI/2phEK0
東条「当然私も行くわ」

天海「あ! 東条さん!」

東条「白銀さんの眼も治さないといけないから」

白銀「覚えてたんだ」

東条「ちなみに解決策はもう見つかったわ」

天海「はっっっや!」ガビーンッ

東条「実はこの辺りフリーWi-Fiが飛んでいるらしいの。学園から持ってきたノーパソで繋げることができたわ」

東条「アマゾネス・ドットコムという通販サイトに『とてもよく効く目薬』があったから早速注文したの。後は指定場所まで行って待つだけよ」

天海「ん!? ちょっと待って! それ代金は!?」

東条「ないわよ。着払い設定にしたけど」

天海「え!? じゃあどうやって荷物受け取るんすか!?」

東条「強奪」

天海「」

白銀「……アウトローまっしぐらだね」

東条「世界に楯突くのはもう慣れっこでしょ」

天海(猛烈にイヤな予感がするなー……まあ、いつものことか)

天海(……巌窟王さん。あなたがいなくなっても、俺たちはなんとか生きていけそうっすよ)

天海(どっかで見守ってくれると嬉しいんすけど)

天海(……ま、伝えたいことはアンジーさん伝でいいか!)

天海(彼女ならきっと――!)
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/29(水) 11:35:36.83 ID:Sd1Ka9yLO
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 21:34:34.45 ID:IyZ1fBE00
ええ……まだ続いてたんかこのss。よくネタが続きますね
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 22:07:00.38 ID:3jYWjL7DO
随分前から1日1レス程度の投下で延々と続けてるだけで今でもまとめて投下してたならとっくの昔に終わってると思うんだけどな
609 :アンジーとあなたのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 09:42:13.39 ID:c/mEDpnF0




地面がある。空がある。星のような光がある。でもそれ以外は特になにもないような場所だった。

道はないし、方角もいつの間にか狂うし、目印を付けたとしてもそこまで戻ることができない。

一体、どのくらい歩いたのか。さっぱり思い出せない。ていうかそろそろ心が砕けそうだ。疲れた。

なんとか足を動かせるのは、胸の中にあるキラキラした思い出たちのお陰だろう。

無限に歩き続けていれば、理論上は確実に会えるはずとか言える場所じゃない。

無限に広い場所かもしれないんだから、無限に歩いても永遠に見つからないかも。




「……?」




なんか、凄く大きな黒い竜を見つけた。スケッチとか、これをモデルに彫刻とかしてみようかなーと一瞬思ったが、やめた。

ここを歩いていればたまにある奇妙なオブジェクトの一つだ。生きてはいるんだろうけど、どうでもいい。



「会いたいなー」



この言葉も何百回言ったか。何千回かな。何万回か。
610 :アンジーとあなたのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 09:50:53.19 ID:c/mEDpnF0



どれくらい歩いたのか、やっぱりもうわからない。

心はもうボロボロで砂のように粉々だ。

やっぱりただの人間にはキツすぎるみたい。倒れたり膝を付いたりしたらそこで終わりだ。億劫すぎて二度と立ち上がれないだろう。



「……ていうかー」



本当にここにいるのかな。実は全然見当違いの方向を探してたりしてなかったかな。

後悔の二文字が頭に浮かぶ。まあどっちにしろ、ここに来る前に全力で身体をいじくったから、二度とまともな世界に戻れないんだけど。



「……」



涙はもう枯れた。だからもう泣かないという決意も必要ない。自分がどんどんコンパクトなものに変わっていく感覚がある。

彼に会ったとき、言いたいことの半分も言えるかどうか――
611 :アンジーとあなたのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:01:28.74 ID:c/mEDpnF0


「……う」


ヤバい。


「……ううううううう……」


ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。


「もう無理ー」


いよいよ限界が近い。

いや、多分この『もう無理−』という台詞も何億回言ったのか覚えてないけど、今回ばかりは本当に無理だよ。

だってもうなにも覚えてないもん。

記憶や精神がここまで簡単に風化するなんて思わなかった。

ダメで元々だと思ってここに来たけど、まさか本当にダメだとは微塵も考えてなかった。

多分、そう、とても大事な人に会いにここまで来たということはわかるけど。その人とどんな関係だったのか覚えてない。

家族? 恋人? 先生? 弟子? 信仰を向けられる誰かしら?



「……」



わからない。わからないけど――


『何故自分から迎えに行かなければならない? 来るならむしろ向こうからでは?』


思考がちょっとありえない方向に、奇跡的に吹っ飛んだ。
612 :アンジーとあなたのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:09:35.49 ID:c/mEDpnF0
「……もう!」


なにもかも失って、それでも最後に残ったものが一つだけあった。

それは怒り。そうだ。これは元々、自分の中に無かったものだ。

誰かに教えられて獲得したもの……違う。

誰かに『お前の中に確かにあるのだ』と教えられて気付いたものだ。




凄く腹が立ってきたぞ。もうどうでもいい。疲れた。辛い。イヤになった。

もう二度と会えなくなっても知らない。

ここまでやってあげた自分と会える権利を、みすみす手放した彼が悪いのだ。

もう倒れよう。そして呪おう。超眠いし。



お前は永遠に独りぼっちだ、ばーかーめー! にゃははははははは!



そうしてやっと、自分の両足から力を抜いて――



「……?」



誰かに受け止められた。


「……!」


アンジーを受け止めた、誰かがいる。





巌窟王「……まったく。とんでもないナリだな、アンジー」

アンジー「あ……」
613 :俺とアンジーのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:23:45.85 ID:c/mEDpnF0
巌窟王「……まあいい。後のことは俺に任せろ。前からずっと、そういう役割だったろう? 俺は」ニヤァ

アンジー「……」

巌窟王「なにか言っておきたいことはあるか?」

アンジー「……」

アンジー(とても眠い。でも、とにかく彼に伝えたかったことがある)

アンジー(これだけは……最低限だ)

アンジー「あ……」

アンジー「アンジーを一緒に連れてって。エドモン」

アンジー「どこにだってついていくから」

巌窟王「……!」




エドモン「そうだったな。俺はエドモン・ダンテス」

エドモン「お前と共にある者だ」

アンジー「……」

アンジー(願いは叶った。ああ、でも凄く眠いなー)

アンジー(積もる話はあるんだけど、今はちょっと思い出せないし……)

アンジー(……寝よ)

アンジー「……」

エドモン「行くぞアンジー! 俺とお前の旅路は、まだ始まったばかりだ!」

エドモン「クハハハハハハハハハハハ!」

アンジー(うん。ずっと一緒)






アンジー(大好き。エドモン)
614 :押忍! BB道場  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:27:53.27 ID:c/mEDpnF0






BB「……さてと」

BB「安心しました? 元同級生が願いを叶えて」

??「……」

BB「ねーえー! せっかくまた再会できたんだからなんかしら言ってくださいよー! ねー! ねー!」
615 :押忍! BB道場  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:35:55.35 ID:c/mEDpnF0
最原「ちょっと黙っててよ! そういう雰囲気じゃないから今! ていうか、ここどこ!?」キョロキョロ

BB「BB道場ですけど」

最原「BB道場!?」ガビーンッ

BB「いや、建設途中なんですけど。バッドエンドを迎えたなにかをここに無理やり引っ張ってアドバイスして、ちょっと時間を巻き戻してリトライさせる」

BB「そんな素敵な憩いの場になる予定です」ドヤァ

最原「多分拷問に近い何かになる気がする……!」

最原「というかBBさん! それなら僕にアドバイスしてほしいんだけど!」

BB「なんです?」






最原「なんか、かれこれ何年かずっと漂流(ドリフト)が止まらないんだよ! 気が付いたら別の場所に転移してるってことずーっと!」

BB「……」

BB「えっ。最原さんも自力でここまで辿り着いたクチじゃなかったんですか!?」ガーンッ

最原「全然違うよ! たまに過去や未来に飛ばされてたりして、目的の場所に全然行けないんだよ!」

BB「ええ……? ちょっと待ってくださいよ。一体なにをどうすればそんな素敵体質に……なんか変なものと契約したりしませんでした?」

最原「契約? そんなものするわけが」

最原「あ、いや。したかも……最初の内は時間軸まではズレてなかったんだよな……確か過去や未来に跳ぶようになったのは……えーと」
616 :押忍! BB道場  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:43:46.06 ID:c/mEDpnF0
回想 〜武蔵との漂流中〜


真っ黒な穴『』ズズズズズズズ

最原『え。契約すれば目的地に行ける確率が上がるんですか……?』

武蔵『まー、このままずっと漂流し続けるよりは、腰を落ち着けて契約するのも一つの手なんじゃないかなー。せっかく目の前にいるんだしさー』

最原『ていうか、この真っ黒な大穴はなんですか? ブラックホールみたいな』

武蔵『な、なんか……よくしりょく? とか言ってたっけな。よく覚えてないけど』

真っ黒な穴『』ズズズズズズズズズ

武蔵『あ! なんか消えちゃいそう! 穴がどんどん小さくなってってる!』

最原『えっ!? ちょっと待って、まだ考える時間が欲し……あーーー!』

最原『契約! 契約しますから! それでみんなに会えるんなら文句ないですからちょっと待ってあああああああああ!』



回想終了




最原「ってことがあったんだよね」

BB「」

最原「そのまま穴は消えちゃったから契約はできてないと思うんだけど」

BB(『正義の味方』にされてるーーーッ!)ガビーンッ

BB「ああ、えーっと……職場紹介しましょうか? カルデアってところなんですけど」

最原「それ赤松さんが行ったところじゃ……」

BB「いいから!」ウガァ!
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 13:54:50.65 ID:MckWlqPe0
やりおるわアンジー。
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/07(金) 17:57:44.22 ID:tJkZDO8F0
ちょこちょこみてたけど、もうすぐ終わりそうだな…
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/08(土) 10:54:31.04 ID:02RDgOjC0
1年ぶりくらいに見に来たけど、まだ更新してたとは!
620 :押忍! BB道場  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/10(月) 20:36:31.53 ID:8DvDci3t0
数時間後

BB「ってことで、これで晴れてサーヴァントとしてカルデアに召喚される準備が整ったということで!」

BB「霊基は星5相当ですよー! クラスはひとまずアヴェンジャー!」

最原「……なんか釈然としないけど、これで今度こそみんなと会える確率は上がるんだよね」

BB「多少は」

BB(しかし漂流体質かぁ……元の世界でとびっきり変な偶然に巻き込まれない限りこんなことになるヤツは稀も稀のはずだけど)

BB(……巻き込まれまくってたか。考えるまでもありませんでしたね)

BB「さあ! それでは、このままカルデアに行ってらっしゃーい!」

最原「と言われても、どうすればいいやら……ん!」キラキラキラ

BB「お。早速呼ばれちゃってるみたいですね! ヒューヒュー! こーの人気者ー! 羨ましいぞー!」

最原「確かに今までとは違う感覚……! うん、ありがとう! また会えてよかったよ、BBさん!」キラキラキラキラ

最原「向こうのBBさんと会えたら、また仲良くするからねー……!」シュイイイイインッ







BB「……あっ」

BB「待てよ。『同じカルデア』に行けるかどうかは五分以下じゃないですか?」

BB「……やっちゃったZE☆」
621 :特異点F:炎上汚染都市冬木  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/10(月) 20:47:05.29 ID:8DvDci3t0
??「ええっと……ここにこの石を投げ込めばいいんだよね。わかってるわかってる。もう『二度目』だし」

???「どんな人が来るのか、楽しみですね! 先輩! ライダーがまだ二基しかいないので、そこを補える誰かだといいのですが……」



バシュウウウウウウッ



最原「……着いた! はあ、やっと腰の落ち着けるところに来れたって感じだ」

「!?!?!?」

??「……えっと、どこの英霊かな。今度は……」

???「さあ。見た目からは先輩とそう変わらない年齢の男性にしか見えませんが……」

最原「あ。えーと、カルデアのマスターさん、だよね。前に夢で一度だけ会ったけど覚えて……?????」

最原(……? あれ。カルデアのマスター……って女性だったっけ。前に会ったときは確か男性だった気がするんだけど……)

立香「?」

マシュ「?」

最原「……巌窟王って名前に聞き覚えはある?」

立香「ないけど」

最原「……は、ははは……ははははははははは……!」






最原「間違えてるよッ!」ガビーンッ

立香「何をッ!?」ガビビーンッ
622 :ロストルーム  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/10(月) 20:52:55.53 ID:8DvDci3t0
とある寂れた倉庫内

モノクマ「……うぷ……うぷぷぷぷぷ……」

モノクマ「そう、まだ終わってないんだよ……最原くんの旅も、ボクの大活躍も……」

モノクマ「ボクはモノクマ。才囚学園、および希望ヵ峰学園の学園長。そして……」







モノクマ「このカルデアの新たなる、支配者なのだッ!」ギャリィィィィンッ







ガシャガシャガシャガシャッ パリィィィィンッ




THE END
623 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/10(月) 21:09:37.30 ID:8DvDci3t0
というわけで終了!
長くない……長くないヨ……全然長くなかったヨ……!

確か初期のころはFate映画にエキサーイエキサーイしてたから二年くらい前? からやってたのかな。うん長くない全然。三部作より全然短い。

HTML化依頼出さなきゃ!
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/10(月) 22:43:31.96 ID:iKTQvfbH0
完結乙 2年半ですな(2017/10からだから)
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/11(火) 20:02:05.51 ID:V/fYtZ/so
終わったか乙
次は最原の人理修復編じゃな?
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/12(水) 00:35:07.67 ID:bAA2QSyf0
お疲れ様っす!最初っからおっかけさせて頂きました。・・・・・・なんだろう。最終的にカルデアで赤松最原再会。転子ちゃんがフェードアウトな気がしてならん。そして、モノクマのラストはなんなんだろうか。
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/12(水) 11:36:00.13 ID:XHZrN9sUO
お疲れ様です、やっとこさ追いついた....
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/14(金) 11:48:17.66 ID:zqMEKGghO
お疲れ様です!こらのおかげで巌窟王が好きになりました!
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/19(水) 19:45:12.14 ID:IJSOGX8R0
お疲れ様です!
投稿者様の作品がどれも大好きで一気してきました!
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/14(火) 17:26:20.51 ID:H+jLeksQ0
遅くなりましたがお疲れ様です!
今後外の世界はFate/requiemのような世界になるんでしょうか…。
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/07(木) 18:07:21.43 ID:Rc4Jtosu0
FGO二部五章をプレイした後に読んだけど、
もしモノクマの選択を選んでいたら、外の世界はあの地球国家元首の養分になってたというわけか
末恐ろしい話だ
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