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白菊ほたる「恨みます、プロデューサーさん」
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102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/12(日) 01:28:29.98 ID:w6V3e5/y0
転んだら、立ち上がればいい。
何度でも何度でも、立ち上がって見せればいい。
そういう言葉は、良く耳にする。
でも、そう簡単な話じゃない。
立ち上がるのは大変だし、何度も何度も、転ぶたびに傷ついていく。
そしてボロボロになってしまって、それでも立ち上がればいいとは、私は言えなかった。
私も、多分ギリギリだったから。
本当にギリギリで、みんなのお蔭でここまで来ることが出来たにすぎないと思う。
プロデューサーさんだけではない。
きっとお客さんたちの中にも、そういう人はいるはずだ。笑顔を浮かべながら、傷ついて傷ついて。
辛い思いをしている人もいるはずだ。
彼らを救うことは、きっと私にはできない。
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/12(日) 01:30:05.28 ID:w6V3e5/y0
暖かいぬくもりが、私の手を包む。
裕美ちゃんだ。
裕美ちゃんは、反対の手で千鶴ちゃんの手も握っていた。
暖かい、優しい手。
救うことはできないと思う。
でも、寄り添うことはできると思う。出来ると信じたかった。
寝て起きたらすぐ消えてしまうような、小さな幸せの灯。
一瞬だけでも、それでお客さんの心を灯してあげたくて。
「いこう、二人とも」
裕美ちゃんの言葉に、私たちは頷いた。そして歩き出す。
眩い輝きの待つ、あの舞台へ。
その光が、僅かでも誰かの希望への手助けになれることを、願って。
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/12(日) 01:31:56.71 ID:w6V3e5/y0
―――――
――
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/12(日) 01:36:26.69 ID:w6V3e5/y0
窓から見えるのは、見渡す限りの空と山だった。美しい木々が太陽の光を浴びて、痛くなるほどの緑だった。
「ちょっとプロデューサー、速度出し過ぎじゃないですか?」
助手席に座った千鶴ちゃんが不満を述べたが、関ちゃんプロデューサーはどこ吹く風だった。
「安心してよ、アタシこれでも、峠の関ちゃんって呼ばれてた走り屋なんだから」
「そういう問題じゃないです」
「そもそもそれ、絶対嘘だよね」呆れるように裕美ちゃんが息をついた。
「マジマジ。豆腐屋の姉ちゃんと、一騎打ち、見せてやりたかったなー」
「もう、プロデューサーったら」
そんなやり取りに、私は頬が緩んだ。
私たちのユニットは、今度単独ライブが決定していた。
フェスの後も、私達はますます忙しくなっていって。
さらにもう一つ、大きな変化もあった。
「でも、事故は気を付けないといけませんよ、プロデューサー」
苦笑しながら言ったのは私の隣に座っていた岡崎泰葉ちゃんだった。
私達GIRLS BEは、泰葉ちゃんを加えた四人で、『GIRLS BE NEXT STEP』としてユニットを新たにしていた。
今度のライブは、私達のデビューライブだった。
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/12(日) 01:37:07.63 ID:w6V3e5/y0
でも、私達がむかっているのは、会場ではなかった。
会場に向かう前に、一つ寄り道をしようとしていた。
舗装された道を離れ坂を上がっていくと、その建物は見えてきた。森の中に佇む、大きな建物。
「ここであってるよね?」
車を降りながら、訝しげに言った関ちゃんプロデューサー。
他のみんなも車から降りてきたとき、ペンションの扉が開かれ、中から人影が現れた。
私はパッと明るくなる。
プロデューサーさんだった。
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/12(日) 01:38:02.96 ID:w6V3e5/y0
ここはプロデューサーさんの叔父がやっているペンションだった。
彼はなにか作業の途中だったようだ。軍手を外しながら、歩いてくる。
最後に事務所であった時より肌も黒くなって、髪が短くなっていた。
「うっす、元気してたか?」
軽い調子で関ちゃんプロデューサーが言うと、彼は小さく頷いた。
「まあまあだ」
ペンションの奥から、白髪の男性が姿を現した。
顔には皺が刻まれていたが、体ががっちりしており、背筋もまっすぐ。どうやら彼が、オーナーのおじさんのようだ。
「遠いところからどうも。さあどうぞ中へ」
「先になかに入ってるから」
関ちゃんプロデューサーが声を掛けてから、残りのみんなを連れてペンションへ向かう。
気を使ってくれたのだろう。私たちは顔を見合わせた。
「久しぶりだな、ほたる」
「お久しぶりです。プロデューサーさん」
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/12(日) 01:39:16.29 ID:w6V3e5/y0
「もう俺はプロデューサーじゃないぞ」
「私にとっては、貴方はずっと、プロデューサーさんですから。肌、焼けましたね」
「ああ。活躍、ちゃんと見てるぞ。凄いじゃないか」
「ありがとうございます。プロデューサーさんは、今度のライブには来れるんですか?」
「どうだろうな……どうだろう」
「そうですか……」
「今日は泊まってくんだろ。晩御飯の後だけど――」
「あ、いえ。ライブもあるんで、夕方頃には出発する予定なんです」
「なんだ、そうなのか……」
「どうかしました?」
「いや……ほたるの生息地がすぐ傍にあってな。ちょうど見ごろなんだ。だからどうかって思ったんだから」
「……私だから、ほたるですか?」
「いや、そんなわけじゃないが……綺麗なんだ、だからどうかなって思っただけだよ」
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/12(日) 01:41:15.05 ID:w6V3e5/y0
残念だけど、それも仕方がない。
昼食をとってから辺りを散歩して、色々と話し合った。
プロデューサーさんは、この夏の終わりから、近くの街で仕事を見つけたと言う。
少し歩くと、綺麗な水の流れる川辺にたどり着いた。
「ここなのかな……」
「なにが?」
首を傾げた裕美ちゃんに、ほたるのことを教えてあげた。
「へえ……見てみたいね」
「でも仕方ないよ、御仕事だもん」
そして夕方になって、車に乗ろうとして。
「あれ?」
関ちゃんプロデューサーは顔をしかめた。いくらキーを捻っても、車は動き出さない。
「エンストか? 嘘だろ」
電話で修理業者を呼ぼうとしていたけど、そこで裕美ちゃんが関ちゃんプロデューサーに近づいていった。
なにかを話してから、私とプロデューサーさんの方を見て、肩をすくめてから電話をしまった。
それから叔父さんと少し話して、大声で言った。
「今日はここに泊まりだー」
関ちゃんプロデューサーは、いくらか余裕をもって予定を立てていたらしい。
修理だけしてもらって、出発は明日の朝となった。
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/12(日) 01:43:05.97 ID:w6V3e5/y0
夕食を食べ終えた私たちは、懐中電灯の明かりを頼りに、川岸まで歩いていく。
やがて、遠くに点々と明かりが見えてきた。近づいていくと、光が強くなっていく。
ほたるの光。
その綺麗さに目を奪われて。それから、プロデューサーさんが私を見ているのに気付いた。
「綺麗ですね。プロデューサーさん」
「ああ……そうだな」
そして彼は、にっこり笑った。
つられて私も笑って。
私達は笑いあった。
優しいほたるのひかりに、見守られながら。
―――白菊ほたる「恨みます、プロデューサーさん」―――≪終≫――
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/12(日) 01:47:43.96 ID:w6V3e5/y0
終わりです。
不幸なほたるちゃんが自分より不幸な人と出会ったら? そんなテーマから書いてみました。
ほたるちゃんは不幸ですけど、だからこそどんな人も受け止められる、優しくて強い子だと思います。
でも同時に、ほたるちゃん自身も、周りに支えられているからこそ、輝けるんだと思います。
この作品を読んで、少しでも彼女たちのことを好きになってくれたら幸いです。
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/12(日) 05:58:25.04 ID:gbgqgYARo
乙でした
ちょっと切ないけど、みんながきちんと前に一歩ずつ前に進んでるいいお話でした
義妹さんも肩の荷が下りた感じでしょうかね
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/12(日) 07:07:56.38 ID:HyUIfY/50
乙
すごい面白かった
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/12(日) 09:36:29.66 ID:7kY0XGnjO
冗長
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[Sage]:2018/08/13(月) 13:13:00.94 ID:xRernco+0
乙です。
良い点
・これだけの大作を書ききったところ
・ガルビの関係がデビューから段々と描写されて、ユニット結成までしっかりと書かれているところ
・ほたるとPのすれ違いから信頼を築いていくところ
イマイチな点
・タイトルが強く言い切り過ぎに感じたところ。作中ほたるはPの事情を理解はしているしそこまで悪く思ってはいなそうに感じました
(何か元ネタがあるタイトルだったらすみません)
・ラストでほたると再会したPが特に謝ったりしていないところ。個人的にもっとはっきりした和解が欲しかったです
全体的にとても良く書けていたと思います。それだけにラストがちょっと惜しく感じました。
本当に乙でした!
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/13(月) 17:03:34.77 ID:2wjp/fc6o
乙
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[ Aramaki★
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