【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】

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320 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 20:43:50.36 ID:+zvgsWogO

モノクマ「うぷぷぷ……ダダダダ、大、正、解!」

モノクマ「今回、天地りぼんさんを殺害したのは、吊井座小牧クンなのでしたーっ!」

……終わった。長い長い学級裁判がここに終結した

重く、ずっしりと沈んだ空気に不釣り合いな軽やかな笑い声が、脳内を嫌に刺激する

ケタケタと不快な音が裁判場を支配していく。先程までの喧騒が嘘の様に、不気味な位の哄笑が満ちていった

吊井座「…………………………」

その中で、今回の学級裁判の渦中にいた……真犯人の吊井座君は、まるで世界を憎悪したかの様な、血走った目で私達を見据えていた

御影「う、うわぁ……」

月神「本当に吊井座君が……」

古河「何でや……?何で、天地を殺したんや!?」

至極全うな古河さんの詰問。その目に浮かんでいるのは純然たる怒りの感情だ

そして、問いをぶつけられた当の吊井座君は……

吊井座「……何で?な、な、何でだって?」

吊井座「そんなの……!こ、殺さなきゃ、俺がし、死ぬからに決まってんだろうがよ……っ!」

虚ろな。だけども奥に光る憎悪を煌々と湛えながら睨み返してそう吐き捨てる

蒼白を通り越して真っ白な顔の吊井座君。その瞳の煌めきは、より色濃く私達の眼に映る

まるでジャックオーランタン……カボチャの亡霊の様だ。なんてあまりにも場違いな感想が、頭の片隅で主張していた

321 : ◆upV/60xbhSrj [sage]:2019/02/24(日) 20:45:22.39 ID:+zvgsWogO

吊井座「全部そいつが言っただろうがよ……!お、俺は本当は殺される側だったんだ!」

吊井座「死にたくねえ……俺はまだ死にたくねえんだ!だから必死になって抵抗したんだよ!」

飛田「なんと独り善がりな……!貴様の軽率かつ、浅はかな行動で一人の乙女が死んだんだぞッ!」

吊井座「う、うるせえ!あんな頭のおかしいヤツ、死んで当然だろうがよぉ!」

吊井座「あ、アイツは……お、俺が殺さなくても、どのみち裏切るつもりだったんだ!」

吊井座「だから……!だ、だから……!」

月神「……少し、いいかしら」

必死の叫び声を打ち切らせ、月神さんが吊井座君の前に立つ

優しい、透き通る様な美しい声……吊井座君とは真逆の声が、ゆっくりと語りかけていく

月神「私、本当はまだ信じられないの……彼女が、貴方を殺そうとしたという事実が」

月神「勿論、それは事実でしょうけど……何故、あんなに爛漫な彼女がこんな事件を……」

吊井座「し、知らねえ!アイツは意味のわかんねえ事ばっかり言って、話にもならなかったし……」

朝日「うぅん、どういう事ぉ?天地さんはぁ、すっごく錯乱していたって事なのかなぁ……」

モノクマ「あ、見たい?事件の時何があったのか」

見たい?と軽々しく言ってくるモノクマ。その手にはテレビのリモコンの様な物体が握られている

モノクマ「それじゃ、ちょっと時間を巻き戻してみましょう!あ、吊井座君の音声は叫んでるだけだから編集でカットさせていただきました!」

モノクマ「それ以外はノンフィクション!完全完璧に、当時の映像と音声を持ってきています!」

やけに用意がいい……そう突っ込むのは、流石に野暮ってものだよね

そんな心配を余所に、モニターには当時の状況が映し出されていった……

322 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 20:46:35.18 ID:+zvgsWogO




『―――! ――――――!』



『チッ……動かないでよ……殺せないでしょ……!』



天地『何で……?何でって、そんなの、ここから出たいからに決まってるでしょ!?』



天地『まだ捨てられたくない……先生は皆とは、皆とは違うから……』



天地『皆を殺してでも……もう一度、もう一度あの子達の元に戻るんだよぉぉぉっ!!』






323 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 20:47:23.22 ID:+zvgsWogO



スグル「……え?」

竹田「おいおいおい……何じゃこりゃ?」

……今見たのは、本当になんだったんだろう?

いつもニコニコ朗らかに笑っていて、誰よりも皆と仲良くなろうとしていた人が……

包丁を持って、誰かに自分の為に死ねと言うなんて

月神「う……嘘よ!こんなの!」

モノクマ「ところがぎっちょん、これは嘘ではございません!その証拠に……うぷぷ」

吊井座「……っ!!」

モノクマが見やった先には、ガタガタと震えて目を見開く吊井座君がいた

まるで、忘れていた恐い夢を思い出したかの様な、そんな恐怖心に襲われた表情

少なくとも私には……彼が、嘘をついている様には見えなかった

朝日「……私、天地さんとはそれなりに話していたけれどぉ、そんな風には見えなかったよぉ」

陰陽寺「気取られない様に振る舞っていただけだ」

朝日「そうかもしれない、けどぉ」

駆村「何が……何がそこまで天地を……」

駆村「モノクマ!そのクリア特典の映像とやらを、俺にも見せろ!」

ハルカ『えーっ!ダメだよ!せっかくのクリア特典なのに、他の人に見せたら意味無くなっちゃう!』

ヨウ『ゲームをプレイしていない奴に見せる必要は無いな。行動してない時点で敗者なのさ』

モノクマ「ユーアールーザー!でもどうせだから、遠吠えだけでも聞かせてあげるよ!」

『『「アーッハッハッハ!アーッハッハッハッハッハッハ!!」』』

駆村「……ぐっ!」

私が独占したばかりに、理不尽にバカにされている駆村君。

だったら私に見せてよ。と言おうとして、止めた。何となく、見ない方がいい気がするし……

324 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 20:48:51.18 ID:+zvgsWogO


吊井座「……わ、わかっただろ?お、俺だって必死だったんだ……」


吊井座「あ、アイツが襲って来なければ……こんな事にはならなかったんだ!」


吊井座「お、お、俺だって!ここ、殺す気なんてこれっぽっちも、無かったんだよ!」



死に物狂いの絶叫が、私達の耳に突き刺さる

我が意を得たりとばかりに叫ばれる、無実の証明

心に直接投げ掛けるようなその言葉。暗い罪悪感がのし掛かる

……本当に、投票しても良かったのか?その答えはきっと誰にもわからない

けど、私達が学級裁判をやった理由は……きっと



吊井座「そ、そうだ……お、お、俺は!アイツさえ襲って来なければこんな事はしなかったんだ!」


吊井座「あ、アイツが誰かを殺そうなんて、思わなければ、アイツが、死ぬ事も無かったんだ……」


吊井座「ぜ、ぜ……全部!あ、アイツが!アイツが悪いんだよぉ!」





「…………それハ、違うのだヨ」



325 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 20:51:19.27 ID:+zvgsWogO

吊井座「…………は?」

硬直。自分の言葉を、簡潔に否定される

吊井座君は、今、静かに。だけども鋭く反論された

反論した本人は目を伏せ、重々しく首を横に振る。……まるで、深く、深く失望したかの様に

デイビット「確かニ、今の映像では吊井座氏が天地女史に襲われた様子が刻名に記されていル」

デイビット「そこに異議は一切無イ。吊井座氏には同情してもし足りない程ダ」

吊井座「だ、だ、だったら!おお、俺が、俺が何も悪くないって、は、ハッキリと……!」



デイビット「だガ、しかシ」



重苦しく向き直り、諭す様に話を切り出す。その目は何処か哀しそうで……

デイビット「彼女の死の原因は何カ?包丁で腹部を突き刺された事カ?……否、違うのダ」

デイビット「彼女の傷は治療可能の範囲内だっタ。故ニ、死因は失血死だったのだヨ」

デイビット「でハ、何が死因だったのカ?彼女の死の原因とは何だったのカ……」

息を吸い込み、吊井座君を見据える。逃げる事すら許さないその気迫に、身動ぎすら出来なかった



デイビット「……それハ、『吊井座氏が包丁を抜き取ってしまったから』なのだヨ」

吊井座「…………っ!」

326 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 20:52:35.64 ID:+zvgsWogO

デイビット「吊井座氏、君には殺意は無かったかもしれなイ」

デイビット「しかシ、結果、君が死の原因を担った以上ハ……」

デイビット「ワタシハ、君を無実の被害者とは呼べばしないと考えているヨ」

吊井座「な……ん、だよ、それっ……!お、俺は、あの時は何も考えられなくて……!」

陰陽寺「その割には随分と手際がいいじゃないか」

吊井座「な…………!」

陰陽寺「鍵が捨てられていたか持っていたかは知らない。が、凶器を引き抜き死体を隠す。その後凶器を洗い隠滅する」

陰陽寺「ここまでの行動を、お前は冷静さを欠いていた人間が可能だと本当に思っているのか」

吊井座「あ、ぐ…………!」

……バッサリだ。情け容赦の無さに思わず感嘆の声が出ちゃう

一刀両断を体現したみたいな陰陽寺さんの言葉。最早、これ以上の足掻きは出来そうに見えなかった

モノクマ「うぷぷっ、あるあるだよね。あるある過ぎて逆に無い位だよ!」

モノクマ「『計画を立てた奴が悪いんだから、自分がそいつを殺しても問題ない!』ぶひゃひゃっ、まさしく責任逃れのテンプレートだよね!」

吊井座「あ、が、ぐ、ぎぃ……!」

月神「……吊井座君、本当なの?」

恐らく、この中で最後まで彼を信じていたであろう月神さんが言葉をかける

俯き気味だった顔が持ち上がる。その目に燃える憎悪は、更に勢いを増していた

327 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 20:54:09.40 ID:+zvgsWogO

吊井座「……んで、だよ」

竹田「ん?今何つった?」

吊井座「何で……どいつも、こいつも!俺の、俺の邪魔ばっかりするんだよぉ!?」

吊井座「あ、天地なんて……あんな奴……あ、あんな奴!死んで当然だろうがよぉ!」

飛田「貴様ァ!オレが黙って聞いていれば舐め腐った事をよくもぬけぬけと!」

月乃「……幾らなんでも、それは言い過ぎ」

吊井座「何だよ……何だよ何だよ何だよぉ!お、俺ばかり責めやがって!何で天地はいいんだよ!?」

臓腑屋「天地殿は被害者でござろう!?吊井座殿とは訳が違うでござる!」

吊井座「どこが違うんだよ!?こ、殺そうとした天地が良くて、お、俺がダメな理由は何だよぉ!?」

朝日「えっとぉ、どんな理由があってもぉ、人を殺すのはダメだと思うんだぁ」

駆村「この……!いい加減自分の過ちを認めろ!」

……何だろう。この感覚。胸の奥から溢れ出るこの感情には覚えがある

これはあのクソアニメを見ている時の感覚に似ている……ああ、そっか。思い出した





今、私は『見苦しい』と思っているんだ……



328 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 20:55:13.02 ID:+zvgsWogO

スグル「……一つ、いいですか」

吊井座「あぁ!?なな、何だよ!?」

スグル「吊井座さんには天地さんを刺しても、まだやり直せる道があったと思うんです」

スグル「例えば、包丁を抜かずに然るべき手当てをしていれば、きっとまだ天地さんは……!」

吊井座「……生きていた。って言いたいのかよ」

吊井座「あ、あいつを、あいつを助けたら!こ、今度は俺が殺されるだろぉ!?」

吊井座「だ、だ、だから……!だから!」

デイビット「だかラ、事件を隠滅したト?」

古河「ふざけんなや!結局オマエの為やないか!」

吊井座「な、な、なら!ももももし俺が天地に襲われたって言ったらお前らは信じたのかよ!?」

御影「勿論だよ!だって、ボク達は仲間じゃん!」

吊井座「なら!天地を助けた後に天地が俺に襲われたって言っていたらどうなんだよ!?」

吊井座「も、もしそうなってたら……お前らは、俺を信じてくれていたのかよぉ!?」

御影「それは……えっと……うーん……」

古河「そ……そんなんただの被害妄想やろ!アイツがそない言うなんて断言出来ひん!」

吊井座「何でだよ……!?何でそんな事が言えるんだよ……何で俺の事を信じてくれないんだよ……!」

吊井座「い、いつもそうだ。俺の事は信用しない癖に他の誰かは無条件に信頼しやがって……!」

吊井座「俺の事を信じない奴等に、相談なんか出来るかよ……っ!」

照星「…………っ」


329 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 20:58:26.33 ID:+zvgsWogO

吐き出す様に放たれた、私達への不信感

さっきまでの憎悪はどこへやら。今の彼にあるのはただの不満

今にも泣き出しそうな声で叫ぶ。それはさっきの咆哮とは別の意味を含んでいて……



吊井座「お、お、俺には、イラストしか誇れる物が無かったんだ……」

吊井座「絵を描くのが好きで……べ、勉強もして、やっとここまで来れたんだ……!」

吊井座「そ、それ、なのに……それなのに、すす、捨てられたって、どういう事だよ?」

吊井座「せ、世界から捨てられたって、意味わかんねえし……お前らが暢気に出来んのもわかんねえ」

吊井座「お、お、お前達は簡単に仲良くなれていいよな……お、お、俺にはそんな事出来ねえよ……」

吊井座「だ、だけど、ここしか居場所が無えなら、俺はそれでも良かったんだ!」

吊井座「お前達、いい奴だよな……お、俺みたいな奴にも、普通に話しかけてくれてさ……」

吊井座「け、けれど!ここでも見捨てられたら、俺は……俺は、何処に行けばいいんだよ!!」

吊井座「俺の居場所は……!何処にあるんだよおおおおおおおお!!!!」



行き場を亡くした慟哭が木霊する

誰も助けに来ない現状で、彼はいったい何を考えていたんだろう?

……きっと、吊井座君は判っていたんだ。この状況で、頼れるのは自分だけって

きっと、誰も自分を助けてはくれないんだって……

330 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 20:59:57.35 ID:+zvgsWogO

竹田「そうか……坊主、辛かったんだな」

臓腑屋「例え故意で無くとも、誰かを傷つけてたと思われれば……信頼の回復は困難でござろう」

月神「……貴方は、人一倍不安だった。それを、私は理解出来ていなかったなんて!」

後悔は先に立たず。今更どれだけ悔やんでも、過去に起きてしまった結果は嘘では欺けない

そして、この後の未来も……学級裁判の敗者。クロが行きつく先は確か……

モノクマ「ふぁああ。ボクもう飽きてきちゃった。やっぱり要らない部分はカットしないとね」

モノクマ「という訳で、無駄話はもうお仕舞い!早速本命のオシオキ、殺っちゃいましょーう!」

オシオキ。その単語で場が一瞬で凍てつく

そう、オシオキ。アニメが言うには処刑……つまり命を以て、この学級裁判を終わらせる事だ

月神「ま、待って!彼は反省出来る。彼にだって、やり直す権利はあるはずよ!」

モノクマ「ありません!目には目を、歯には歯を、そして人殺しにはしっかりと自分の命で償って貰わないとね!」

月乃「……それは誤用。本来の意味は、刑罰は同程度のものでないといけないという意味」

モノクマ「そうだっけ?まあいいじゃん。命を奪う事と同じ位の罰って、終身刑らへんだっけ?」

モノクマ「そんなに長い間待てないでしょ!こう、ド派手なオシオキこそ顧客の求めているモノなんだからさ!」

駆村「ド派手って……!お前は命を何だと……!」

モノクマ「えーそれでは話もだいたい済んだ事ですし、サクッとオシオキ始めちゃいましょう!」

吊井座「ひぃいいい……っ!」

飛び交う怒号も何のその。モノクマは何て事無さげに、高らかに死刑の宣告を宣言した


331 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:01:03.86 ID:+zvgsWogO

吊井座「な、何で、どうして、俺が、こんな……」

月神「……吊井座君。聞いてほしいの」

月神「今更こんな事を言っても何かが変わる訳じゃないのはわかってる……これは、私の身勝手なエゴだってわかってる」

月神「でもね、私は天地さんも、貴方も大切な仲間だと思っていたの。だから、彼女に誰かを傷つける選択をして欲しく無かった……」

月神「貴方に、誰かを傷つけて見捨てるなんて選択をして欲しく無かった……!」

吊井座「………………………………は」

照星「自分、先輩とは仲良いって思ってたんっす。でも、先輩はそう思って無かった……」

照星「……ごめんなさい。自分も、先輩を傷つけていたんすね……!」

竹田「坊主が何も悪くねえとは言わねえ。けどよ、何て言やあいいかね……悪かったな」

デイビット「……残念だヨ。この上無ク、ネ」

古河「オマエは……アホや!ホンマモンのアホや!命あっての物種やろが……!」

吊井座「……何だよ、何だよ、それ」

吊井座「何で、今更……そんな事言うんだよ……」

次々に、口々に送られる手向けの言葉。そこにあるのは後悔と、自分への哀れみ

なんて事はない。きっと、皆が嘘つきだったんだ。誰かを信じるって嘘を、ずっとつき続けてきたんだ

その中で、天地さんが一番正直者で……吊井座君が一番弱かった

これは……ただ、それだけの話なんだ

332 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:02:22.32 ID:+zvgsWogO


皆の言葉は、吊井座君にとってはどうなんだろう?



更なる絶望への呼び水になったのか、それとも微かな希望になったのか



皆の言葉は身勝手だ。他人への憐憫をダシに、生存した優越感に酔っているだけだ



……でも、もし仮に、皆の言葉が吊井座君の彷徨う足跡の道標になったのなら



きっと、この言葉は無駄にはならないはずだから



瀬川「バイバイ。君とはもっと遊びたかったよ」



これでいい。私は皆とは違うから、ちゃんと吊井座君の事を思って口に出したから

……こんな事を考えている時点で、私は自分を騙しきれていないんだろうな

だけど、吊井座君の瞳に映るモノ。瞳から零れる一筋の涙の理由は……多分、きっと良いものだと思いたいから

吊井座「俺は、お、お、俺は…………?」

吊井座「……………ゆ、赦された。のか………………?」

モノクマ「それでは、今回は超高校級のイラストレーターである吊井座小牧クンの為にスペシャルなオシオキを用意しました!」

モノクマ「それでは張り切っていきましょう!オシオキターーーイム!!!!!」


333 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:03:42.82 ID:+zvgsWogO










GAME  CLEAR!

ツルイザ  クンが  クロに決まりました


オシオキを  開始  します









334 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:04:44.80 ID:+zvgsWogO
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335 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:05:51.01 ID:+zvgsWogO



……砂嵐が、ザーザーと画面に吹き荒れる
砂嵐と言っても、テレビに写る方じゃない。文字の通りに激しく砂埃が舞い、風に吹かれて踊っている

徐々に砂嵐が薄れていく。その奥に見えるのは、机を前に、椅子に座らせされた吊井座君だ
ピンとお手本の様に真っ直ぐ座り……と言うより、固定されていて、よく見たら腕には糸の様なモノがくっ付けられている

完全に砂嵐が薄れ、漸く状況がハッキリとわかった
吊井座君が連れられた場所には見覚えがある。確かあれは昔の闘技場……コロッセオだ

ゴロゴロ、ゴロゴロ……。異音が周囲に鳴り響き、顔には薄く影がかかる
後ろに設置されたのは、妖しく黒光りし、中心部にはデジタル式のタイマーがついた……結構ステレオタイプな時限爆弾だ

【0:60】

高台に立ち、モノクマがウォッチを起動させる。吊井座君の腕が動き出すのと、タイマーが動き出すのは完全に同時だった……

『燃えよペン! 真剣お絵描き一本勝負』
『超高校級のイラストレーター  吊井座小牧処刑執行』

【0:50】
吊井座君の動きは、正しく神がかっていた
人間離れした速さで、紙に線を引いていく……機械が後ろで、ガチャガチャと腕を動かしていたから
それでも彼の目には諦めはない。目の前の紙に真剣に向き合っている

【0:30】
真っ赤に染まった顔と腕。よく見たら摩擦の熱か、機械と紙からは煙が上がっていた
ガリガリとペンを動かすその手は、既に限界を迎え始めていた。指はあらぬ方向に曲がり、爪はとっくに割れて出血している
それでも止められない……止まらない。それは最期になろうとも作品を描きあげる執念からなのか……

……ところで吊井座君は何を描いているんだろう?

【0:10】
指はへし折れ、爪は剥がれ落ち、腕はとっくに言う事を聞かなくなっている
手をガンガンと机に叩き付ける。最早、絵を描くと言うより何かと戦っている様にしか見えない風景だ
それでも、最期の一息。一際大きく腕を振り上げると……
……ブチッ!と音がして、固定していた機械が吹き飛ばされる
その勢いで、持っていたペンが遠くへと飛んでいく

慌てて拾い上げ、顔を見上げると

【0:00】の文字が、激しく光り……

轟音。視界が真っ白に彩られていった
336 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:08:14.93 ID:+zvgsWogO





パチパチ。パチパチと音がする

まるで拍手をする様な。裁判を終えた私達を労うかの様な……そんな軽快な音だ

目の前に映っているのは、灼熱で真白に変色した大地。そして、黒く染まった……ヒトガタの染み

ずっと見ていたからわかる。編集やトリックなんてあり得ない。あの染みは、紛れもなく……

モノクマ「エックストリーーーム!!」

御影「う……うぎゃああああああああっ!?!?」

月神「吊井座…………君…………!」

竹田「野郎……マジで殺しやがったぞ……!」

飛田「ひ、人が粉微塵に溶けて大地に……あぶあぶあヴッ!?」

臓腑屋「飛田殿!?失神したのでござるか!?」

古河「か、解説すんなや……!アカンやろ、こんなん……!」

モノクマ「アハハハハ!この程度で気絶なんて最近の子は軟弱だね!」

駆村「この……人でなしめ……」

モノクマ「クマだからね!」

朝日「こんなの……こんなの、嘘だよぅ……」

月乃「……何が目的?こんな大がかりな事をして、私達に何をさせたいの」

……皆が疑問に思っていた。最初から疑問に思っていた

それを月乃さんが問いかける。モノクマはうぷぷっと笑った上で、確かにこう答えたんだ




モノクマ「……絶望。『今は』それだけだよ」


337 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:09:16.68 ID:+zvgsWogO

瀬川「……今は?」

今。その言葉に、どこか言い様のない引っ掛かりを覚えた

まるで、それそのものが目的じゃなくて、その先にある何かを期待している様な……?

御影「今……?今はって……どういう事だよ!?」

ハルカ『はーい!では今日はここまでー!』

ヨウ『次回を楽しみに待っていてくれ』

モノクマ「それではオマエラ、また明日〜!」

……どこまでも人を馬鹿にして、どこまでも私達を弄ぶ

不愉快な三人……いや、二体と一匹は、画面を暗転する事で私達の目の前から逃げ出した

残されたのは、裁判を終えた私達だけ……誰からともなく、口からは嗚咽を垂れ流した

御影「何で……だよ……!何で、ボク達がこんな目に会わないといけないんだよ!?」

御影「昨日まで、あんなに楽しかったのにさぁ!何でこうなっちゃったんだよ!?」

陰陽寺「黙れ。騒々しい文句しか言えないのなら口を閉じろ」

デイビット「御影氏、一度落ち着くのだヨ。今回の事は冷静に受け止めねばなるまイ」

御影「……っ!どうして、二人ともそんな風に平気な顔でいられるんだよ!」

御影「二人にとっては天地さんも吊井座クンもどうでもいいだろうけどさ!ボク達にとっては大事な仲間だったんだぞ!?」

陰陽寺「その仲間同士で殺し合いしていたら、世話無いがな」

御影「何だと!?このクズ!人間のゴミ!」



月神「もう……止めて……っ」

338 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:09:57.56 ID:+zvgsWogO

月神「もう、学級裁判は終わったの。これ以上誰も傷つく必要は無いの」

月神「だから……もう喧嘩は止めて。そして、私と約束して」

月神「もうここには来ないって……誰かを傷つけ、学級裁判をさせないって……」

月神「私も……精一杯、頑張るから」

か細い懇願。月神さんは気丈に、だけども涙を堪えながら誓う

その誓いは……きっとそう遠くない未来に破られると思う。けど

月乃「……わかった。私もやれる限りの事はする」

竹田「んじゃ、今日はさっさと休むか。飛田の坊主も連れてかねえとな」

臓腑屋「にゃあ。お供するでござる……拙者も、もうこんな事はしたくない故に」

月神「陰陽寺さんも……そうやって誰かを傷つけないで。貴女はきっと、心優しい女の子なんだから」

陰陽寺「……余計なお世話だ」

月神「御影君も……あまり感情的にならないで。貴方が二人と仲が良かった事は知っていたけど……」

御影「あ、あぁ……うん。わかったよ」

陰陽寺さんと御影君が言い合って、月神さんが制止する……なんだか、デジャヴを感じる喧嘩だった

そうだ。確か初めて出会った時も、こんなやり取りをしていた気がする……もう、ここに居ない二人は戻ってこないけど

月神「それじゃあ……戻りましょう。明日、また、皆でこれからの事を考えましょう……」

もう、あの日へは戻れない。だから、前へ進むしか出来ないんだ。一人、また一人とエレベーターに乗り込んでいく

最後に残ったのは私だけ。何処か後ろ髪を引かれる思いを断ち切って、エレベーターに上がり込んだ

339 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:11:21.54 ID:+zvgsWogO

瀬川「…………ふぁああ。もう真っ暗だ」

欠伸を噛み殺しながら、エレベーターから出る

外の世界を見上げると、空には夜の帳が落ちていた

まばらに光る小さな星。キラキラと揺れる星の光がいいアクセントになっている

……もう、他の皆は寄宿棟に戻ったみたい。今夜はきっとよく眠れるだろう

でも、私はまだそんな気分になれない。肢体にまとわりつく火照りを冷ます為、少し花畑を歩いていく

瀬川「ふんふん……ふふふーん……」

鼻唄を口ずさみながら花の動きに沿うように歩いていく。風が花を揺らすと、私の髪も揺らめいた

ふと、視界の隅に光が瞬く。空を見上げると、そこには……




瀬川「わっ……!流れ星だ!」

幾筋もの星屑が、空に線を描いては消えていく

さっきのオシオキとは全く違う、美しくて幻想的な星の軌跡

そんな美麗な景色を独り占めしてる優越感。そんな流麗な景色に、私は……


340 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:14:23.86 ID:+zvgsWogO





瀬川「…………っ!?」ゾクゾクッ

異様なまでの、不安感に襲われた

341 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:14:54.52 ID:+zvgsWogO


瀬川「…………え?」


……何で?何でこんな感情を抱いたんだろう


今の景色に嫌悪感を抱く要素なんて何処にもない。なら、他に何か理由があるのかな


他に何処かで似た様な出来事を見た事がある……ううん。そんな訳無い。流れ星だって今初めてだし


なら、別の何か……?でも、何を連想したんだろう


円形の壁に囲まれた学園に、落ちてくる星屑……


記憶を辿る。どんどん、どんどん。学級裁判の始まりすら越えた記憶に、答えはあった


……ああ、わかった。この嫌悪感の正体が。私は、きっと知っていたんだ

342 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:15:34.27 ID:+zvgsWogO





瀬川「あんな奴……本当に死ねばいいのにっ!!」



そのグチャグチャをいっきに飲み込む。残った缶を備え付けの『ゴミ箱』に放り投げた



クルクルと綺麗な放物線を描いた『ゴミ』は、すとんと『円形の箱』の中に落ちていく



ゴミ箱の中を確認する。缶は、ティッシュやお菓子の包装のゴミ等に埋もれていた







343 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:16:08.39 ID:+zvgsWogO







瀬川「……帰ろう」



頭に浮かんだ空想を切り捨て、私は寄宿棟へと足を進める



今日という日を捨てて、明日を手に取る。その明日も、明後日にはゴミになるだろうけど



そうして、今まで私達は生きてきた。きっと、あの壁はそのツケを払わせる為の檻なんだろう




そうして命を消費する。それが私達の生き方だから

そうして私は生きていく。この狂った物語の中心で



イロトリドリの、海の中で

………真っ赤に染まった、明日(ミライ)を抱いて



344 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:16:37.87 ID:+zvgsWogO








【Chapter1】
  イロドリミライ  【END】

  生徒総数:14








345 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:17:08.88 ID:+zvgsWogO




GET:スケッチブック
 一章を閲覧した証。吊井座小牧の遺品
 絵を描く時に使用する場合が多い。中身は新品の様に真っ白なので、自分の好きに絵を描こう


346 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/02/24(日) 21:19:45.14 ID:+zvgsWogO
本日ここまで。これで一章完結です。ありがとうございました
二章は近日中に始めたいと思います。何か質問や感想、して欲しい事などあれば可能な限り答えさせていただきます
347 : ◆upV/60xbhSrj [saga]:2019/03/03(日) 22:13:14.62 ID:pxpzq/4EO

建てました。よろしくお願いします
【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】ch.2
https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1551617155/
348 : ◆upV/60xbhSrj [sage]:2019/03/25(月) 22:10:03.67 ID:Ef2ohd7zO
建て直し版です。お間違えの無いようお願いします
【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】ch.2
https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1553517832/
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