艦娘サンダーボルト DECEMBER SEA

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106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/17(月) 22:17:05.08 ID:72iYX1Gi0
吹雪 「敵、来ますかね」

天龍 「そんなの分かんねえよ。俺達は網を張って待ち伏せするだけだ」

天龍 「あの深海棲艦、夜戦なら空母相手にせずに済むと思って夜だけしゃしゃり出やがって。この天龍様が探照灯で見つけ出して成敗してやるぜ」

雷 (暁を沈めた深海棲艦、戦艦水鬼)

雷 (空母からの攻撃と雷達の超長距離砲を警戒して、夜だけ出没してるのは見え見えなんだから)

響 (甲種熟練見張妖精を持ってしても、幾ら戦艦水鬼の艤装が巨大でも、夜間に遠くの敵を視認するのは容易ではない)

響 (比較的近くでの砲雷撃戦になる)

響 (今は主砲が重くて回避が難しい。キツいな)

響 (それでも……やるしかない!)
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/17(月) 22:22:41.68 ID:72iYX1Gi0
電 (こっちは合計六隻)

電 (軽巡が天龍さんだけで他は皆駆逐艦……不安なのです)

清霜 (今回、清霜が被害担当艦なのは分かってるけど、撃たせるだけじゃなくてこっちだって撃ってやるんだから)

ドオオオオオン!

清霜 (砲撃!?)

パアアアアアッ

天龍 (照明弾か!)

電 (照明弾の飛んだ先って、響の居る方向じゃない!)

響 「クッ!」

響 (見つかる!)

戦艦水鬼 「そこか!」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/17(月) 22:32:53.23 ID:72iYX1Gi0
戦艦水鬼 「頂きィ!」

ドオオオオオン!

響 「グウッ!」ドゴオオオオオォ

響 (一発で大破……)

電 「響ちゃん!」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/17(月) 22:38:01.49 ID:72iYX1Gi0
天龍 「奴め、どこに行きやがった!?」

天龍 (探照灯を点けたら狙われるがそんなこと言ってる場合じゃねえ!)

ビカアアアッ

清霜 (天龍さんが探照灯を点けた)

電 「響ちゃん、応答して!」

雷 「動ける? 響!」

吹雪 「私が響ちゃんを助けに行きます。二人は敵を撃って」

雷 「でも――」

吹雪 「第六駆逐隊の50口径がこの艦隊の最大火力です! 二人が戦わないと全滅します!」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/17(月) 22:43:49.41 ID:72iYX1Gi0
天龍 「吹雪の言う通りだ」

電 「天龍さん!」

天龍 「奴を沈めれば響を助けられる」

天龍 「奴以外の艦影が見当たらねえ。電探の反応もねえ」

天龍 「奴は単艦だ! 一気に叩くぞ!」

雷 「電、響を守る為に戦うよ」

電 「うん……分かった」

雷 (響、ごめん。直ぐに終わらせて救援に行くから)
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/17(月) 22:45:02.12 ID:72iYX1Gi0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/18(火) 23:11:21.60 ID:+zUv22Gf0
雷 「逃げるなら今のうちだよ?」ドオオオオオン!

電 「命中させちゃいます!」ドオオオオオン!

清霜 「私も、頑張る!」バシュッ

清霜 (魚雷当たって!)

天龍 「当たれぇ!」バシュッ

天龍 (魚雷でも食らいやがれ!)

戦艦水鬼 「小心者の海蛇共め。お前達は暗礁の向こう側に隠れないと戦えないのか!」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/18(火) 23:18:03.40 ID:+zUv22Gf0
天龍 「軽い……命中しても大して効いてねえ」

天龍 (そろそろ奴が撃って来るか……)

ドオオオオオン!

天龍 (来た!)

バアアアアアン!

天龍 (三式弾!? 軽巡だからって馬鹿にしてんじゃねえぞ!)

天龍 (今度はこっちの番だ! ……あれ、探照灯が遠くまで照らせねえ?)

天龍 (探照灯のレンズが割れてやがる!? これが狙いか!)

天龍 (どこに消えやがった)
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/18(火) 23:27:08.41 ID:+zUv22Gf0
雷 「天龍さん、大丈夫?」

天龍 「俺は何てことないが、探照灯がオシャカになった」

電 (敵の艤装が黒っぽいから夜目には見つけにくいのです)

ドオオオオオン!

天龍 (何ッ!?)

天龍 「グアアアアッ!」ドゴオオオオオォ

天龍 (足をやられたッ!)

戦艦水鬼 (闇に紛れて側面に回り込んだのに気付かなかったのがお前の運の尽き)

戦艦水鬼 「トドメだ……」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/18(火) 23:34:12.25 ID:+zUv22Gf0
電 「見えたのです!」

雷 (発砲すれば居場所は分かるわ)

雷 「十字砲火、ってー!」ドオオオオオン!

雷 「なのです!」ドオオオオオン!

戦艦水鬼 (!?)

戦艦水鬼 「ウアアアアッ!」ドゴオオオオオォ
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/18(火) 23:42:13.81 ID:+zUv22Gf0
戦艦水鬼 「別格に遠いな。この距離から砲撃してくるとは……」

戦艦水鬼 「間違いないお前達だろ! 駆逐隊!」

電 「はわわ、電達の十字砲火が直撃したのに……」

雷 「何て硬さなのよ」

天龍 「逃げろおおおッ、雷! 電!」

天龍 「長距離砲撃に特化したお前等が敵に位置を晒したらお仕舞だあッ」

天龍 「戦艦水鬼に勝てっこねえ!」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/18(火) 23:46:09.59 ID:+zUv22Gf0
響 「クッ……目に血が入る……何も見えない」

吹雪 「拭いてあげる」

響 「ありがとう……他の皆は?」

ドオオオオオン!

吹雪 「!?」ドゴオオオオオォ

響 (そんな……)

吹雪 「……」

響 (特型駆逐艦の一番艦が、響達の一番の姉さんが……一撃で気絶なんて……)

戦艦水鬼 「この前はよくもやってくれたな」

響 「あ、ああ……」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/18(火) 23:46:55.92 ID:+zUv22Gf0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 22:56:21.17 ID:tzOydXlV0
雷 「あれって……まさか……!?」

電 「響ちゃんが捕まってる!」

雷 「響……生きてる?」

電 (響ちゃんを捕えたまま接近して来る!?)

戦艦水鬼 「私の動きが予測出来るなら撃ってみろ。仲間を殺す覚悟があるならな!」

響 「撃てえ! 撃ってくれえええ!」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 23:00:22.59 ID:tzOydXlV0
雷 「電、響を助けるわよ!」

電 「了解! なのです!」

雷 (敵は電の方に向かっている)

雷 (電、あなたが倒しなさい!)ドオオオオン!

ドッパアアアン!

戦艦水鬼 (海面に着弾……)

戦艦水鬼 「至近弾で攪乱か?」

雷 「進路を作ってやるわ」

電 「近づいて来るのです。お前だけを射抜くのです!」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 23:04:47.71 ID:tzOydXlV0
清霜 「天龍さん!」

天龍 「バカヤロー! 俺よりもチビ共の援護だ!」

清霜 「分かってる、だから……」

清霜 「それ貸して!」

天龍 「ああ、使え」

清霜 「ありがとう、天龍さん」

天龍 「今から追い付けるのか?」

清霜 「追い付けるよ」

清霜 「今の清霜は戦艦だけど戦艦じゃないから」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/12/20(木) 23:08:25.76 ID:tzOydXlV0
電 (敵の艤装の右腕はさっきの電達の十字砲火で吹き飛んだのです)

電 (だから敵の艤装は、左手一本で掴んだ響ちゃんを盾にしながら接近しているのです)

電 (艤装の左肩を撃ち抜けば、敵は響ちゃんを離す筈です)

電 (外さない為に、ギリギリまで敵を引き付けるのです)

戦艦水鬼 (こちらがいつ撃って来るかと思うと怖いだろうに)

戦艦水鬼 (それでも仲間を助ける為に一撃必殺にかけるか……)

戦艦水鬼 (面白い)

戦艦水鬼 「いい盛り上がりだ……」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 23:12:16.98 ID:tzOydXlV0
電 (敵は撃つ時に、盾にしている響ちゃんを下げるか横にずらす筈です)

電 (その時に撃つのです!)

電 (……)

電 (下がった! 撃て)ドオオオオン!
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 23:16:59.06 ID:tzOydXlV0
戦艦水鬼 「左腕が……よくも……」

電 (電は撃ったのです)

電 (敵が響ちゃんを掴んでる左手を下げたから撃ったのです)

電 (電の狙い通り、砲弾は敵の左肩に命中して、敵は響ちゃんを離したのです)

電 (ただ、敵が離した響ちゃんには首から上が無かったのです)

電 (電の発砲と同時に、敵は再び響ちゃんを掲げて)

電 (電の撃った51cm連装砲の砲弾は、響ちゃんの頭を吹き飛ばしてから敵の艤装に命中したのです)

電 (電が……響ちゃんを殺した……)
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 23:21:53.34 ID:tzOydXlV0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/21(金) 23:36:05.96 ID:5cmgmg/W0
戦艦水鬼 「何を呆けている」

電 「……!」

戦艦水鬼 「僚艦を沈めたのがそんなに堪えたか」

戦艦水鬼 「気にするな、直に会える」

電 (電も死ぬんだ……)

雷 「やめろおおおっ!」ドオオオオン!

ドッパアアアン!

戦艦水鬼 「今のは撹乱ではなかったか」

雷 (外れた……)

雷 (次弾装填まで40秒近くかかる)

雷 (もう電を助けられない……)
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/21(金) 23:41:50.25 ID:5cmgmg/W0
清霜 (今度は守るって、言ったでしょ?) ドォン!

戦艦水鬼 (まだ来るか)ガキンッ!

清霜 (清霜の12.7cm連装砲じゃ跳ね返されるか)

清霜 (それでも間に合った!)

天龍 「清霜の奴、あんなデカい艤装で金剛型より速いんじゃねぇか」

清霜 (近代化改修した清霜の新しい艤装は、51cm連装砲を4基8門搭載出来る)

清霜 (でも今の清霜の装備は駆逐艦のまま)

清霜 (だから今、清霜の艤装は艦の出力に対してとても軽い!)

清霜 (高速戦艦を超えた高速戦艦!)
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/21(金) 23:51:41.56 ID:5cmgmg/W0
清霜 (いつも武蔵さん相手に演習してきた。こんな奴!)

清霜 (……)

清霜 (やっぱり恐い……)

清霜 (あの人相手に演習を繰り返してきたから分かる)

清霜 (砲雷撃戦において戦艦の火力と装甲がどれだけ厄介か)

清霜 (しかもこれは演習じゃない)

清霜 (負ければ沈む)

清霜 (100回演習するより1回実戦を経験した方が肝が座るとはよく言ったものだね)

清霜 (これまで実戦は沢山経験したけど、これまでの敵とは違う)

清霜 (こんな感覚、姫騎士級以来だよ)

清霜 (でも今の清霜は船体だけでも戦艦なんだ。戦艦が戦艦を恐れちゃいけないんだ)

清霜 (やるしかない!)
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/21(金) 23:55:48.05 ID:5cmgmg/W0
清霜 (双頭の怪獣のような戦艦水鬼の艤装)

清霜 (ただ、艤装の両肩にあった主砲は既に損傷してるし、丸太より太そうな両腕もダラリと垂れ下がってる)

清霜 (懐に入って本体に肉薄すればチャンスはある!)

戦艦水鬼 (ジグザグに進路を変えながら接近して来る)

戦艦水鬼 (両肩の主砲を破壊したからっていい気になるな)

戦艦水鬼 (私は改になった)

戦艦水鬼 (主砲は20インチ連装砲から16インチ三連装砲になったが……)

戦艦水鬼 (その分3基に増えた!)

清霜 (まだ主砲が残ってたの!)

戦艦水鬼 「泣き叫んで沈んでいけ!」ドオオオオン!

清霜 「きゃああっ!」ドゴオオオオッ
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/22(土) 00:00:04.35 ID:8egyeW2I0
清霜 「流石、超大和型の装甲だね」

戦艦水鬼 「私の主砲を耐えただと!?」

清霜 「まだその主砲使いこなせてないね」

戦艦水鬼 「何だと?」

清霜 「同じ口径でも武蔵さんの主砲はもっと強烈だったよ!」

清霜 「今度はこっちの番なんだから!」

戦艦水鬼 「このガラクタめ。貴様こそ、私に対して攻撃手段があるまい!」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/22(土) 00:04:01.61 ID:8egyeW2I0
清霜 (懐に入った)

戦艦水鬼 (恐れるに足らず。見たところこの敵には大口径の主砲も艦載機も無い。私にダメージを与える術は……)

清霜 (今だ!)

戦艦水鬼 (刀だと!?)

清霜 (ここまで接近して分かった)

清霜 (戦艦水鬼も戦艦棲姫と同じで、本体と艤装がケーブル一本で繋がってる)

清霜 (天龍さんから借りたこの刀でケーブルを切断すれば!)
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/22(土) 00:08:50.64 ID:8egyeW2I0
今回はここまで。
戦艦水鬼の本体と艤装がケーブルで繋がっているというのは、あくまでこのSSでの独自設定です。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/25(火) 21:14:30.63 ID:xZXOowFN0
ビィィィン!

清霜 (刀をケーブルで受け止めた!?)

戦艦水鬼 「……」

清霜 (このッ、このッ!)

ビィィィン! ビィィィン!

清霜 (全部しのいだ!)

戦艦水鬼 「……お前が達人だったら斬れたかもな」

清霜 (天龍さんだったら切断出来たの……)

戦艦水鬼 「……」

戦艦水鬼 「だが楽しめた、お前を沈めるのはまた今度にしてやる」ドオオオオン!
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/25(火) 21:22:07.09 ID:xZXOowFN0
電 「キャアッ!」 ドゴオオオッ!

雷 「アッ……よくも電を!」

清霜 (清霜と会話しながら背後の相手を砲撃するなんて……)

戦艦水鬼 「沈めてはいないだろう。後ろから撃たれたら敵わんから大破させただけだ」

戦艦水鬼 「遠くから私を狙っているもう1人にも告げる」

戦艦水鬼 「これ以上抵抗するなら全滅させる」

雷 「はい、分かりました……とでも言うと思った!?」

戦艦水鬼 「そっちは大破が3隻。つまり私が簡単にトドメをさせるのが3隻いる」

戦艦水鬼 「それでもまだ戦う気か?」

雷 「……」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/25(火) 21:24:58.62 ID:xZXOowFN0
戦艦水鬼 (危なかった……)

戦艦水鬼 (斬撃を受けた際、ケーブルに切れ込みが入った。あのまま戦闘を継続すればケーブルが接続不良を起こしていた可能性が高い)

戦艦水鬼 (そうすれば艤装を操作出来なくなり、負けていた)

戦艦水鬼 (この私が、敵に停戦を提案するなど……チィッ!)
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/25(火) 21:30:44.69 ID:xZXOowFN0
長門 (昨晩の夜戦における報告を受けた。結果は散々だった)

長門 (単艦の敵に6隻で挑み、天龍、吹雪、電が大破、清霜が小破、無傷で帰投したのは雷のみ……)

長門 (そして響が沈んだ)

長門 (敵からの提案による一時停戦がなければもっと大きな損害を出しただろう)

長門 (そして何より……)

長門 (暁に続いて響を失った第六駆逐隊、雷と電がどんな辛い思いをしていることか……)
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/25(火) 21:37:06.61 ID:xZXOowFN0
長門 (宿舎の第六駆逐隊の部屋の前に来た)

長門 (どんな言葉をかければいい……)

長門 (ドアをノックすべきか、そっとしておいた方がいいのか)

雷 「……長門さん?」

長門 (雷が廊下にいる。外から戻って来たのか)

雷 「長門さん、どうしました?」

雷 (私と電の部屋の前にいたということは何か用件があるんだよね)

長門 「雷、お前達のことが気になって。何と言えばいいか……」

雷 「気遣ってくれてありがとうございます。……響も覚悟は出来ていたと思います」

雷 「敵に捕まった時、響は雷達に『撃て』と言いましたから」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/25(火) 21:43:11.64 ID:xZXOowFN0
長門 「……そうだ、電は一緒じゃなかったんだな」

雷 「はい、おそらく部屋にいると思います。上がって下さい」

長門 「いや、いいんだ」

雷 「そんなこと言わずに電に会ってやって下さい。入廠が終わってから、最近電が部屋に篭りがちで。長門さんからも言って欲しいんです」

長門 (入廠で身体の傷は癒えても心の傷までは簡単には癒えない、当たり前だ)

雷 「電、長門さんが来たわよ」

長門 (雷だって気丈に振る舞ってるが本当は辛いだろうに)

ガチャ、キィィ

雷 「電が部屋に引きこもってばかりだから長門さんが心配し……」

雷 「キャアアアアッ!」

長門 「どうした雷!?」

雷 「電が、電が……」

長門 (これは!?)

長門 (電が首を吊っている!)
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/25(火) 21:44:21.96 ID:xZXOowFN0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/26(水) 22:59:19.87 ID:0tso6QQ40
電 「ゲホッ、ゲボッ……ハァ、ハァ」

長門 「気がついたか……」

雷 「馬鹿ッ!」

電 (雷ちゃん……)

雷 「自殺未遂なんてしてんじゃないわよ!」

電 「ウウウ……グスッ……」

電 「この手が……この手が……」

電 「この両手が機械じゃなかったら、もっと早くロープを結べて、きっと今頃楽になってたのです」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/26(水) 23:06:35.94 ID:0tso6QQ40
雷 「この後に及んでまだそんなこと言う?」

雷 「長門さんが電を床に降ろして人工呼吸してくれなかったら今頃どうなってたかと思うと……」

雷 「まだ身体の震えが止まらないわ……」

電 「余計なことをしたのです。電に生きる資格なんて無いのです」

雷 「あんた!」

長門 「待てっ、雷!」

雷 「離して! 離して下さい長門さん!」

雷 「響を誤射したのが辛かったのは分かる。私だって同じ立場ならどれだけ自分を責めたか……でもね」

雷 「そんなに辛いなら相談くらいしてよ! もっと私を頼ってよ!」

電 「たとえ相談しても、響ちゃんも暁ちゃんも生き返らないのです」

雷 「何でそんなこと言うのよ……」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/26(水) 23:12:23.92 ID:0tso6QQ40
ギュッ

電 「!?」

雷 (長門さんが電を抱きしめてる……)

長門 「妹の陸奥が沈んだ時、私は自分を責めた」

長門 「姉として妹を守れなかったどころか、妹が沈んだ原因が私にあったことが私を苦しめた」

長門 「今は自分が許せなくていい。後悔したっていい」

長門 「こういったことは時間が解決するしかない」

長門 「ただ、雷の為にも命を粗末にするな」

長門 「私はもう姉妹がいないが、電には雷がいるだろう」

長門 「電が死んだら雷はどうなる?」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/26(水) 23:16:49.55 ID:0tso6QQ40
電 「……さっきお昼寝してたら、夢に響ちゃんが出て来たのです」

電 「恨めしそうにこっちを見て、電がいくら謝っても何も言わないのです。そして暁ちゃんも出て来て」

電 「二人で黙って電を見ているのです」

電 「そしたらあちこちから『お前が死ね』『お前が死ね』って声が聞こえて来て……」

電 「目が覚めた時、思ったのです」

電 「電は悪い子だって。響ちゃんを殺して、暁ちゃんを助けられなくて」

電 「なのに何で電は生きてるんだろうって」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/26(水) 23:20:00.36 ID:0tso6QQ40
雷 「いい? 電」

雷 「暁も、響も、電を怨むような性格じゃないでしょ?」

雷 「それに二人を助けられなかったのは雷も同じ」

電 「でも響ちゃんを撃ったのは電なのです! 電が響ちゃんを殺したのです!」

雷 「撃ったのは電でも、響に当たるように仕向けたのは戦艦水鬼よ!」

電 「電の練度がもっと高かったら響ちゃんは死なずに済んだのです」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/26(水) 23:24:03.80 ID:0tso6QQ40
長門 「そう思うのなら響の、暁の無念を晴らせ」

電 「長門さん……」

長門 「雷と力を合わせて戦艦水鬼を沈めてみせろ。勿論私も戦う」

長門 「それを成し遂げてなお死にたいと言うのなら、その時は私の手でお前を沈めよう」

雷 「長門さん、それはあまりに――」

電 「やります」

雷 「電?」

電 「電はもう生命なんて惜しくないのです。戦艦水鬼と刺し違えるならそれも悪くないのです」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/26(水) 23:25:58.96 ID:0tso6QQ40
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/28(金) 20:00:08.06 ID:9bq+h7BI0
電 (考えてみたら、危うく電は無駄死にするところだったのです)

電 (電がさっき死んでたら戦艦水鬼に復讐出来なかったのです)

電 (せめて暁ちゃんと響ちゃんの仇を討ってそれからあの世に行けば……)

電 (暁ちゃんも響ちゃんも電を許してくれるかもしれないのです)

電 (気付かせてくれた長門さんに感謝なのです。後は……)

電 (さっき怖い夢を見た時にオネショしたことを打ち明けるタイミングを考えるのです)
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/28(金) 20:05:55.38 ID:9bq+h7BI0
雷 「長門さん」

長門 「雷、廊下まで見送らなくてもいい。部屋に戻って電の傍にいてやってくれ」

雷 「部屋には直ぐ戻ります。ただ、この場に電が居ないので言わせて下さい」

雷 「先程は電の命を助けて頂き本当にありがとうございました」

雷 「ただ、それでも……」

雷 「長門さん、私はあなたを恨みます」

長門 「今の電に必要なのは生きる目的だ」

電 「それが復讐であってもですか?」

長門 「そうだ」

雷 「私だって戦艦水鬼は憎いです」

雷 「でも復讐に囚われた電なんて見たくなかった」

長門 「電が本当の意味で立ち直ることを信じよう。あまり気を揉むと雷、お前が持たなくなる」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/28(金) 20:11:15.33 ID:9bq+h7BI0
長門 (自室に戻った……)

長門 (……)

長門 (何が『時間が解決する』だ!)

長門 (何が『今は自分が許せなくていい。』だ! 『後悔したっていい』だ!)

長門 (私は提督を笑えないぞ、正に茶番だ)

長門 (陸奥の沈没を受け入れられたのは、深海化した陸奥に会えたからだろうが!)

長門 (現に今でも酒匂のことを悔やみ続けてるだろうが!)

長門 (ああ、酒匂……忘れもしない……)

長門 (クロスオーク計画……艦娘を遺伝子操作した生き物と交配させることで新たな艦娘の増産を目指した狂気の計画)

長門 (そこで私は……)
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/28(金) 20:16:19.25 ID:9bq+h7BI0
その時、長門は自らの忌まわしき過去を振り返っていた?


長門 「酒匂!? 酒匂、しっかりしろ、酒匂!」

研究員 「同じ艦娘でも軽巡では『エイブル』のピストンに耐えられなかったようだ、クックックッ」

長門 「何てことを!?」

酒匂 「ア、ウ……」

長門 「酒匂、どうした!?」

酒匂 「もう……死なせて……」

酒匂 「……」

長門 「酒匂……?」

長門 「酒匂ーッ!」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/28(金) 20:21:46.05 ID:9bq+h7BI0
長門 「よくも酒匂を!」

研究員 「お前の産んだ『エイブル』がやったことだ」

長門 「くっ、殺してやる! お前達皆殺してやる!」

研究員 「だそうだ。『エイブル』、お母さんの相手をしてあげなさい」

エイブル 「ブへへへ、さっきのに続いてこいつも上玉だぁ」

長門 「お前なんか産みたくなかったのに!」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/28(金) 20:25:45.56 ID:9bq+h7BI0
長門 (また妊娠してしまうのだろうか……)

長門 (足腰が立たない……)

長門 (酒匂……酒匂……)

長門 (ビッグセブンと呼ばれた私が、今や化け物に辱めを受け、這って移動している)

長門 (酒匂……ああ……目を開けてくれ)

長門 (済まない……本当に済まない……)

長門 (お前を犯し殺した化け物は……私が産まされたんだ)

長門 (私だって産みたくなかった。許してくれ……ウウウ……)
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/28(金) 20:30:30.54 ID:9bq+h7BI0
長門 (その後私は、凍結されたクロスオーク計画の再開を阻止することを自らの使命とした)

長門 (それが、酒匂を死に追いやった私に科せられた十字架をどれだけ軽くしたと言うのだ?)

長門 (雷の言う通りだ。恨まれるべきは私だ。私のせいで陸奥も酒匂も暁も響も死んだ! しかも雷や電が知らないのをいいことに新型艤装の運用を提案したのは自分だと未だに明かせずにいる。ビッグセブンが聞いて呆れる。この臆病者の卑怯物め。私が死ねば良かったんだ!)

長門 (陸奥、お前ならどうする……)
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/28(金) 20:31:38.09 ID:9bq+h7BI0
今回はここまで。前作で何があったか少し触れました。それから一箇所訂正。

>>150
〔誤〕その時、長門は自らの忌まわしき過去を振り返っていた?

〔正〕その時、長門は自らの忌まわしき過去を振り返っていた

文末の「?」は無しです。

読んで下さった皆さんありがとうございました。
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/28(月) 19:05:23.92 ID:uT8TwubW0
提督 「明石、新型艤装の件だが……」

明石 「はい」

提督 「お前が新型艤装の開発技術に付けた名前……確か……」

明石 「リユース・P・デバイスです」

提督 「それだ。名前が長いからつい『新型艤装』と言ってしまう。正式名称はリユース・P・デバイスでいいが、今後、コードネームを『サイコ』とする」

明石 「分かりました」

提督 「もっと早く名前を決めとけば良かった」
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/28(月) 19:13:04.14 ID:uT8TwubW0
明石 「何故、今になって名前を?」

提督 「もう少し戦果を挙げてかつデータが取れたら大本営に報告を上げる。その為のコードネームだ。暁と響を失いはしたが、これまでの戦果を考えるとサイコ艤装の有用性は明らかだ。このまま――」

バタン!

吹雪 「司令官!」

提督 「執務室だぞ、ノックくらいしろ」

吹雪 「申し訳ありません。緊急だったので」

提督 「まあいい。……何があった吹雪? 慌てるとまたコケるぞ」

吹雪 「報告します――」




提督 「……何!?」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/28(月) 19:20:37.67 ID:uT8TwubW0
提督 「ふざけやがって!」

長門 (第六駆逐隊のことを悲しむ間も無く、深海棲艦の大部隊がこの鎮守府に侵攻して来た)

提督 「何でここに敵が集中してんだ!?」

提督 (サイコ艤装研究開発の成果で昇進するどころか、ここを落とされたら詰め腹切らされるぞ!)

長門 (新型艤装は元々深海の技術。ならば深海棲艦が、その技術が使われているこの鎮守府の占領を図るのは道理。連中は我々がこの技術をどうやって手に入れたのか知りたいのだろう)

長門 (我々に技術を流出させたのは陸奥だということは、連中に知られてないだろうか?)

長門 (陸奥ならそんなヘマをしないとは思うが……。下手に探りを入れたらかえって陸奥の立場を危うくするかもしれない)

長門 (今は妹の無事を祈るしかない……。陸奥、何が何でも隠し通せ!)
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/28(月) 19:27:12.61 ID:uT8TwubW0
明石 「しかしそれは……」

提督 「全滅の危機にある鎮守府を救う方法はこれしかない。連中の大部隊に対抗できるのはサイコ艤装だけだ」

提督 「最高練度の艦娘一隻に超大和型サイコ艤装と50口径連装砲4基を装備させて敵主力に殴り込みをかける。この鎮守府に迫る敵を撤退させるにはそれしかない」

提督 「敵を一時的に撤退させれば、近隣の鎮守府からの援軍か間に合うかもしれん」

提督 (援軍要請は忌々しいが、背に腹は代えられん)

明石 「しかしサイコ艤装は艦娘の手足を義肢化して艤装に直接接続する必要があります。四肢全てを接続となると……」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/28(月) 19:32:15.07 ID:uT8TwubW0
提督 「清霜の両足は既にサイコ艤装仕様だったな……」

明石 「何を……言っているの?」

提督 「清霜の両手も切れ!」

明石 「!」

明石 「艦娘は! モルモットじゃないのよ!」

提督 「いい機会だ。お前達の立場を教えてやる」

提督 「そもそもサイコ艤装は非人道的だからお前達にやらせてるんだろうが」

明石 「何ですって?」

提督 「お前等はモルモットだ! そして兵器だ! 兵器の分際で私に口答えするな!」

提督 「明石! もし抗命したらお前を解体処分する!」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/28(月) 19:38:34.77 ID:uT8TwubW0
明石 「私は提督の言いなりになってあなたの両腕を切った。自分の保身の為に」

清霜 「生き残ろう」

明石 「え?」

清霜 「生き残っていつか心から笑おう。理不尽な現実こそ清霜達を苦しめる本当の敵だよ。戦争中に生きる艦娘にはちょっぴり試練が多いし、この戦争で生き残るなんて奇跡かもしれないけど」

清霜 「それでも一つ奇跡が起きた」

清霜 「これで清霜は遂に戦艦になれるんだもん」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/28(月) 19:40:13.10 ID:uT8TwubW0
今回はここまで。
久々の投稿再開ですが読んで下さった皆さんありがとうございました。
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/28(月) 23:14:20.57 ID:8+R4Lzmb0
そっちの『サイコ』なのね
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/03(日) 19:38:01.61 ID:RqvswAFp0
榛名 「流石この鎮守府の最高練度です」

金剛 「新婚さん、指輪見せて欲しいネ」

清霜 「特別だよ、ほら」

金剛 (これって……)

榛名 (義肢に指輪をはめてる……)

金剛 「Sorry……グスッ」

榛名 「……グスッ……」

清霜 「どうしたの? 二人とも紅茶飲んで泣き上戸?」

金剛 (恋愛と戦争では手段を選ばない英国生まれのミーから見ても惨い)

榛名 (練度開放と燃費低下を目的とした愛の無いケッコンカッコカリ、悲し過ぎます)

清霜 「ありがとうございます、お茶に誘ってくれて。でも、ほら、大丈夫だから。命令だし、鎮守府の皆、清霜も守りたいし、選ばれて逆に光栄っていうか」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/03(日) 19:45:40.47 ID:RqvswAFp0
提督 「作戦を説明する」

提督 「第一艦隊は出撃後、鎮守府に向かって侵攻中の敵艦隊に対し遅滞戦術を取れ。それから間隔を空けて第ニ艦隊を出撃させる」

提督 「その後清霜は第一艦隊を離脱し、第ニ艦隊を離脱した加賀と合流して第三艦隊を組め。第三艦隊は迂回と加賀の索敵により敵との交戦を可能な限り回避して敵本隊に到達し奇襲をかけろ」

提督 「第ニ艦隊は第三艦隊が作戦を遂行する為の陽動及び第一艦隊の後詰めが任務だ」

提督 「清霜、お前を第一艦隊に加えたのはサイコ艤装の主砲に慣れさせる為だ。51cm連装砲を撃つのは初めてだろう」

清霜 「はい」

提督 「主砲の扱いにある程度慣れたら加賀と合流しろ。それからが本番だ」

清霜 「はい」

清霜 (いきなり重要任務を任された)

清霜 (これが戦艦なんだ……)
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/03(日) 19:50:28.18 ID:RqvswAFp0
清霜 「三式弾、一斉射!」

清霜 「徹甲弾、撃ええぃ!」

清霜 「すっごい……。比較になんないや」

清霜 「これが戦艦、クックックッ。おお、最高だよ! 欲しかったのはこういう力なんだ!」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/03(日) 19:56:51.71 ID:RqvswAFp0
提督 「で、長門と武蔵で清霜を曳航してのこのこと帰って来たのか?」

長門 「そうだ……」

武蔵 「最初は元気だったんだ」

武蔵 「しばらくしたら清霜が肩で息をして、身体が非常にだるいと――」

提督 「明石、清霜の突然の体調不良の原因は何だ?」

明石 「はい、あくまで推論ですが、サイコ艤装は艦娘と艤装を艦種に縛られずに接続するだけで、接続後の適合性まではフォローしないと思われます」

明石 「これまでは両腕、もしくは両足のみの接続だったので負担が軽かったところを、今回四肢全てを接続したことで……」

明石 「戦艦の艤装を駆逐艦に装備した無理がたたったと思われます」

提督 「ハァ? 何だそれ?」

提督 「俺がアテにしたのはそんな中途半端な力だったのか?」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/03(日) 20:03:48.75 ID:RqvswAFp0
長門 「提督、今は状況に対処する方が先だ。サイコ艤装の話は後に――」

提督 「この役立たず共が……」

天龍 「何だと……?」

提督 「役立たずと言ったんだ」

天龍 「てめぇ!」

提督 「天龍、お前がここに来た理由を教えてやる」

提督 「前にお前が所属していた鎮守府の提督から『遠征要員しか使い道が無い艦娘を引き取ってくれ』と言われたんだよ」

天龍 「!?」

雷 (酷い……!)

電 (そんな……)

提督 「こちらは第六駆逐艦に51cm連装砲を搭載した直後だったからな。六駆が遠征に不向きになった分、こちらは遠征要員が欲しかった」

提督 「戦艦水鬼狩りの際にお前に探照灯を持たせたのも最悪沈んでも惜しくないと思ったからだ」

天龍 「ふざけんな……俺は戦える……」

天龍 「だったらサイコ艤装を俺に使え!」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/03(日) 20:12:58.98 ID:RqvswAFp0
武蔵 「待て、サイコ艤装はこの武蔵が使う」

天龍 「人様の決意に水差すなんて趣味悪いぜ」

武蔵 「駆逐艦の清霜が使うと継戦時間が短いという欠点が露呈した。軽巡の天龍が使えば少しは長く戦えるかもしれんがそれでも不安が残る」

天龍 「姉御は元から超弩級だろ。サイコ艤装に切り替えてもメリットが薄い」

武蔵 「主砲の口径が45cmから51cmになるし、装甲だって今より厚くなる」

天龍 「俺が使えば軽巡が戦艦になるんだ。そっちの方がいい」

長門 「待て」

長門 「サイコ艤装は私が使う」

長門 「私なら戦艦だから適合に問題無いし、武蔵がサイコ艤装に切り替えるよりも性能の伸びが大きい」

長門 (最初からこうしていれば……)
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/03(日) 20:15:21.51 ID:RqvswAFp0
今回はここまで。

>>162
そうです。サイコミュじゃないサイコです。

それから一箇所訂正
>>167
〔誤〕提督 「こちらは第六駆逐艦に

〔正〕提督 「こちらは第六駆逐隊に


読んで下さった皆さんありがとうございました。
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/09(土) 23:15:31.07 ID:nlqmXqzy0
武蔵 「超弩級の武蔵が使うのが一番信頼性が高い」

天龍 「姉御、頼む退いてくれ」

長門 「私が使うと言っている」

電 「あの……!」

長門、武蔵、天龍 「?」

電 「二人で一つのサイコ艤装を使う訳にはいかないんですか?」

電 「……雷ちゃん」

雷 「もう……そんな困った顔しないの」

雷 「もっと雷を頼っていいのよ」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/09(土) 23:25:04.38 ID:nlqmXqzy0
提督 「明石、よく間に合わせた」

明石 「いえ、急造ですがこれでサイコ艤装の性能は100パーセント発揮出来ます」

提督 「うむ」

提督 「次で失敗したら、もう作戦を練り直す猶予は無い。雷、電、お前達の戦果に全てが懸かっている」

雷 「敬礼は出来ませんが了解です」

電 「はい。これで暁ちゃんと響ちゃんの仇が討てるのです」

長門 (両手足を義肢にした雷と電が左右に並んで立ち、一つの艤装を使っている)

明石 (サイコ艤装なら、改修により複数の艦娘で一つの艤装を扱える。これまでの研究で可能だとは思ってたけど、実際に運用するのはこれが初めて)

明石 (もしこの作戦が成功したら、あの私の仮説が現実の物に……)
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/09(土) 23:38:08.20 ID:nlqmXqzy0
赤城 「加賀さんは敵艦隊と交戦中なので私がエスコートしますね」

雷 「よろしくお願いします」

電 「ありがとうございます」

赤城 (皆が前線を支えている間にこの三隻で……この場合ニ隻になるのかしら?)

赤城 (索敵を怠らず、無駄な戦闘は避け、敵の主力を叩く)

赤城 「一航戦赤城、出ます!」

雷、電 「戦艦雷電、抜錨します!」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/09(土) 23:53:11.69 ID:nlqmXqzy0
長門 「加賀、待たせた。後はこちらで引き受ける」

加賀 「お願いします。私は随伴艦と共に撤退します」

長門 (金剛、榛名、武蔵、天龍、そしてこの長門……この顔ぶれをもってしても果たして敵の大部隊相手にどれだけ持ちこたえるか……。だが弱気になるつもりは無い!)

天龍 (この中で軽巡は俺だけか。だっら魚雷使えるの俺だけじゃん。腕が鳴るぜ)

武蔵 (泣く泣く撤退を余儀なくされた清霜の無念を思うと、無様な戦いは出来ない)

榛名 (鎮守府では負傷者を入渠させて修理を終えたら出撃させてますが、もうバケツが尽きます。このままではジリ貧に……)

金剛 「榛名、そんな顔しない」

榛名 「金剛お姉様……」

金剛 「近くの鎮守府から比叡がこちらに向かってるからそれまでの辛抱。THUNDERBOLTが帰還出来るように鎮守府を守るネ」

榛名 「はい!」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/10(日) 00:03:51.25 ID:IFKQir+60
空母ヲ級flag 「グアッ!?」ドゴオオオオオォ

戦艦レ級 「ヲ級が轟沈!? ウアァッ!」ドゴオオオオオォ

赤城 (遂に見つけた、敵の主力!)

雷 (明石さんの綺麗な髪を束ねていた2本の赤いリボンが今、雷と電の右手の義肢の先にそれぞれ巻かれている)

雷 (明石さんの思いを決して無駄になんかしない)

電 「すごい、明石さん……。明石さんの造った艤装は、電の失った手足よりも自由なのです!」
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/10(日) 00:05:14.93 ID:IFKQir+60
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/15(金) 22:27:56.67 ID:Rl545InQ0
戦艦水鬼 「撤退だと……」

港湾水鬼 「そうだ。後方の艦隊との連絡が途絶した。恐らくは敵の増援」

戦艦水鬼 「クッ、ここまで来て……」

港湾水鬼 「ヲ級flagやレ級が沈んだとなると相当数の敵が背後に回り込んでいる。このままでは挟撃される」

戦艦水鬼 「そんな奴ら……私だけで蹴散らしてやる!」

港湾水鬼 「落ち着け」

戦艦水鬼 「作戦を続行しろ」

港湾水鬼 「正気か?」

戦艦水鬼 「後方の敵は私が排除する。私からの連絡が途絶したら撤退でも何でもすればいい」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/15(金) 22:38:20.68 ID:Rl545InQ0
武蔵 「敵艦隊撤退……とはいえすぐに次が来るぞ」

天龍 「次から次へと……」

長門 (このままでは戦線を維持出来ない)

長門 (少なくともさっき撤退した加賀達が入渠を終えて再出撃出来るまでは持ち堪えないと鎮守府が落ちる)

長門 「金剛、援軍到着まで後どれだけかかる?」

金剛 「あと1時間って比叡は言ってたネ」

長門 (1時間か……)

金剛 「『もっと早く来られないか?』って言いたげネ」

長門 「……比叡達も全速力でこの海域に向かってるのは分かっている」

金剛 「他所の鎮守府に無理は言えないネ」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/15(金) 22:47:15.20 ID:Rl545InQ0
榛名 「援軍を2艦隊も出して貰えたのは、比叡お姉様が所属先の鎮守府の提督に嘆願したからです。これ以上の無理は……」

武蔵 「今は我々だけで何とかするしかあるまい」

金剛 「ただ、比叡達と敵艦隊との会敵を早めることは出来ます」

天龍 「そんな方法があるのか!?」

金剛 「Yes! この金剛と榛名で出来るだけ多くの敵を引きつけて比叡達の元にエスコートします」

金剛 「ハーメルンの笛吹きみたいに敵を大勢引き連れて、まだ損耗の無い比叡達に始末して貰うネ」

榛名 「高速艦を囮にして防衛拠点を敵の目から逸らし、かつ敵を無傷の友軍の正面まで誘導する」

榛名 「原前提督の戦術ですね」

金剛 「流石榛名です」

金剛 「前のテートクは、見た目はアレでしたが優秀でした」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/15(金) 23:13:23.61 ID:Rl545InQ0
天龍 「見た目はアレって……そんなに酷いのか?」

武蔵 「お世辞にも容姿に恵まれているとは言えん。それでも今の提督より余程好感が持てた」

榛名 「私達艦娘のことを大事にしてくれました。提督が殉職された時、駆逐艦の子達は泣いてましたよ」

天龍 「殉職って、戦死したのか?」

長門 「そうだ」

長門 「そして皆には悪いが、故人を偲ぶのは鎮守府に帰還してからにしてもらおう」

長門 「金剛、榛名、早速だがその作戦、遂行したい。……どうした天龍?」

天龍 「前の提督が使った作戦だろ。敵がそう何度も同じ手に引っかかるか?」

金剛 「敵が追って来なければ、金剛達と天龍達で二手に分かれての十字砲火になります。敵にすればそちらの方がイヤな筈です」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/15(金) 23:23:01.12 ID:Rl545InQ0
赤城 「新たな艦影1を確認、……戦艦水鬼!」

雷 「赤城さん、こちらで殿をやります。撤退をお願いします」

赤城 「あなた達を残して撤退する訳にはいきません」

電 「今の電達は孤立無援なのです。撤退中に新手の敵に遭遇したら撤退も出来なくなるのです。赤城さんが航空機で索敵して敵との戦闘を避けながら撤退すれば鎮守府に帰れるのです」

雷 「赤城さんが退路を見つけてくれないと生還が難しくなります。雷達も必ず追い付きます」

雷 「今の赤城さんはかろうじて中破です。雷達はまだ小破ですから」

赤城 「分かったわ、……撤退します」

赤城 (ごめんなさい。必ず帰って来て……)

雷 (赤城さんの奮戦で雷達は小破で済みました。ありがとうございます)

電 (赤城さんごめんなさい。雷はともかく電はもう生還を考えてないのです)

戦艦水鬼 (こいつ等だけで何隻沈めたんだ!?)

戦艦水鬼 (小癪な……。私の手でお前達を沈めてやる!)
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/15(金) 23:24:05.97 ID:Rl545InQ0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 22:19:51.61 ID:4R+buEf00
金剛 「全砲門、Fire!」ドオオオオン!

榛名 「駆逐ロ級、轟沈! 残り10隻です」

榛名 「敵艦隊、榛名達を追撃しています。金剛お姉様の作戦通りです」

金剛 「これで長門達の負担が減ったネ。先頭の艦、足の速い艦から叩くネ」

榛名 「はい!」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 22:41:45.46 ID:4R+buEf00
榛名 「お姉様! 6時方向、敵機多数!」

金剛 (艦載機での攻撃に切り替えたか。そんなに簡単にはいかないネ……)

金剛 「三式弾装填」

榛名 「はい」

金剛 (あと少しで比叡の艦隊と合流出来る。そうすれば私も榛名も助かる)

金剛 (所属先の鎮守府が離れてるから駆けつけられなかった霧島もきっと心配してる)

金剛 (ここを凌いで生き延びる!)
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 22:55:07.43 ID:4R+buEf00
比叡 (艦影1……あれは……金剛型なのは分かるけどまだ遠い)

比叡 「全艦、正面の艦影は友軍です。撃たないで下さい」

比叡 (もう一隻はどこ?……金剛お姉様と榛名で来るんじゃなかったの………)
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 23:00:39.39 ID:4R+buEf00
比叡 「榛名……」

榛名 「ウウッ……金剛お姉様が……」

比叡 「!」

比叡 (間に合わなかった……)

潮 「12時方向、艦影多数!」

榛名 「グスッ……敵機が金剛お姉様を……


比叡 「榛名」

榛名 「集中攻撃して……榛名は……」

比叡 「榛名ッ!」

榛名 「!?」

比叡 「作戦遂行中よ。お願いだから今は泣かないで」

比叡 「泣かれたら、つられるから……」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 23:17:09.96 ID:4R+buEf00
戦艦水鬼 「いい加減沈め!」

電 「電の本気を見るのです!」

雷 (こいつを倒して悪夢を終わらせるわ! そうすれば……)

雷 (電だってきっと以前の優しい電に戻ってくれる!)

戦艦水鬼 (互いに被弾している。一騎打ちでこの戦艦水鬼がここまで追い込まれるとは忌々しい……)

戦艦水鬼 (こちらも余裕が無い。ここで勝負をかける……)

戦艦水鬼 (噴進砲全弾発射!)バシュウウウウッ!

雷 (対空兵器の噴進砲を対艦で使った!?)

電 (回避です!)

ボン! ボン! ボボボン! ボン、ボボン!

雷 (数が多い!)
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 23:24:05.72 ID:4R+buEf00
戦艦水鬼 (噴進砲をバラ撒いたのはお前達の動きを制限する為)

戦艦水鬼 (回避先を限定させてから主砲で仕留める!)

電 (はわわっ、主砲を撃つ気です!?)

雷 (避けられない、せめて相打ちに!)

戦艦水鬼 (これで死ね!)ドオオオオオン!

雷 (当たれぇ!)ドオオオオオン!

電 (撃つのです!)ドオオオオオン!
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 23:25:03.76 ID:4R+buEf00
今回はここまで。
戦艦水鬼が噴進砲を装備しているというのは、あくまでこのSSでの独自設定です。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/03(日) 13:49:37.37 ID:n5/QcWe70
戦艦水鬼 (ハァ、ハァ、ハァ……)

戦艦水鬼 (さっきの相打ちで艤装が駄目になったか……。だが敵も深手)

戦艦水鬼 「艤装を外せばまだいける」

戦艦水鬼 (こうやって……主砲を一基外して、手持ち武器にしてから……)ガコンッ!

戦艦水鬼 (艤装を破棄)

パシュッ……ゴポ、ゴポゴポゴポ

戦艦水鬼 (私の艤装が沈んでゆく……ここまで良く頑張ってくれた)

戦艦水鬼 (艤装に装備して撃つのとは訳が違う。この大口径の主砲を手持ちで撃てば反動が大きい。それでも……)

戦艦水鬼 (接射すれば関係無い!)

戦艦水鬼 「ケリをつけてやる。殺す」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/03(日) 14:05:37.25 ID:n5/QcWe70
電 「雷ちゃん……」

電 「雷ちゃん……気絶してるの?」

電 「お願い、起きて……」

♪沈め 沈め 沈め 深く 深く 深く

電 (この曲は……居た!)

戦艦水鬼 (この歌が聞こえた時がお前達の最期だ……)

電 (まだ倒せてなかったなんて……こっちに来る)

電 (主砲!……撃てない!?)

電 (はわわ……全部損傷してるのです)
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/03(日) 14:13:46.91 ID:n5/QcWe70
電 「雷ちゃん、雷ちゃん、起きるのです! まだ終わってない!」

雷 「雷ちゃん! 雷ちゃんの装備が頼りなのです! いつまで寝てる気なの!?」

雷 「目を覚ましてええッ!」

バチッ!

電、雷 「痛ッ!」

電 (そうか……)

電 (今は12月。真冬だから、顔を近づけた時に静電気が発生したのです)

雷 「……唇が痛いんだけど」

電 「それは電も同じなのです。それより敵が向こうから来てくれたのです」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/03(日) 14:39:41.12 ID:n5/QcWe70
戦艦水鬼 「これがお前等の最後だ! 戦艦モドキが!」

電 「主砲は撃てないのです。今こそあれを使うのです!」

雷 (分かったわ電!)

雷 「雷撃ね!」バシュウウッ!

戦艦水鬼 「ハッ!?」

戦艦水鬼 (戦艦が雷撃だと!? もう撃つしかない!)ドオオオオオン!

雷 「グハッ!」ドゴオオオオッ!

雷 (食らった……)

電 「雷ちゃん!」

戦艦水鬼 (主砲を辛うじて撃てたが敵魚雷の回避か間に合わ――)

戦艦水鬼 「ウガアアアアッ!」ドゴオオオオッ!

戦艦水鬼 「何故だ? 何故奴等に勝てない!?」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/03(日) 14:49:31.03 ID:n5/QcWe70
戦艦水鬼 (潜行する……)ゴポン、ゴポゴポゴポ……

戦艦水鬼 (危なかった……。あと一撃で沈むところだった)

戦艦水鬼 (敵は戦艦。潜りさえすれば敵はこちらへの攻撃手段を持たない。艦種問わず潜行可能なのが、元々深海を住処とする我等の強み)

戦艦水鬼 (このまま撤退――)

ドポン……ドポン……ドポン……

戦艦水鬼 (この着水音……まさか!?)
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/03(日) 14:58:54.11 ID:n5/QcWe70
戦艦水鬼 「爆雷!」

ドゴォン! ドゴォン! ドゴォン!

戦艦水鬼 「ウガアアアアッ!」

戦艦水鬼 (何故……戦艦が……魚雷はおろか爆雷まで……?)

電 (明石さんがサイコ艤装を改修した際に、二人で一つの艤装を運用する分余裕が出来たからと言って……)

電 (雷ちゃんに魚雷、電には爆雷を装備してくれた。これは明石さんが起こした奇跡なのです)

戦艦水鬼 (身体が……潜るのでなく、沈んで行く……)

戦艦水鬼 (私は……こんな奴等に……負けたのか……)

ゴポゴポゴポゴポ……
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/03(日) 15:00:54.54 ID:n5/QcWe70
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/06(水) 22:21:45.17 ID:fYwxjPgO0
長門 (突破された!)

武蔵 (低速艦が我等の足止めをして、高速艦は我等に目もくれず鎮守府侵攻か)

長門 「天龍、防衛線を突破した敵の軽巡を追撃しろ!」

天龍 「ここの守りはどうすんだよ!」

長門 「私と武蔵でやる! お前の足でないと追い付けない!」

天龍 「分かった!」

天龍 (俺が戻るまで持ち堪えろよ)

長門 (この戦況、沈没も覚悟するか……)
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/06(水) 22:28:29.53 ID:fYwxjPgO0
天龍 (このままじゃ鎮守府がやられる! 追い付けぇ!)

バシュウウウ!

天龍 (後方から魚雷! 危ねえッ!)

駆逐ニ級 「……」

天龍 (敵の駆逐か。回避したが、前を行く敵との距離が開いちまった)

天龍 (俺様が防衛線から離れたせいか敵が次々に突破しやがる)

天龍 (後から突破した敵に背後を取られるのは癪だが、最初に突破した敵をサッサと片付けねえと)

天龍 (……暁、響、意外と早くお前等に会えるかもな)
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/06(水) 22:34:43.82 ID:fYwxjPgO0
バシュウウウ!

天龍 「え?」

軽巡ホ級「ギイィッ!」ドゴオオオオッ!

天龍 (前方のホ級が沈んだ!?)

清霜 「魚雷命中、ホ級轟沈を確認」

天龍 「清霜、お前その身体……」

清霜 「話は後ですよ、天龍さん」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/06(水) 22:40:34.07 ID:fYwxjPgO0
長門 (流石にキツイな……)

長門 (金剛、榛名……お前等のおかげで戦線を維持出来たが、それももう……)

長門 (……)

長門 (何を弱気になってる!)

長門 (金剛と榛名が囮になってくれたというのに! 赤城や雷や電は敵の懐に飛び込んだというのに!)

長門 (艦娘になる前、只の艦だった頃、私は大した活躍も出来ないまま終戦を迎えた)

長門 (今は違う! 護るべき場所の為に、守りたい者の為に私は戦っている!)

長門 (それに、私が沈んだらクロスオーク計画の再開を防ぐ役目は誰が負うというのだ!)

長門 (私はまだ沈む訳にはいかない。闘って、足掻いて、一分一秒でも長く海上に留まり、敵を退ける!)

武蔵 「有難い! 友軍の艦載機だ!」

長門 (艦載機!? ……加賀か!?)
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/06(水) 22:47:24.31 ID:fYwxjPgO0
長門 「助かった、礼を言う」

加賀 「いえ、二人ともよく支えてくれました」

長門 (加賀と清霜が駆けつけてくれたおかげで鎮守府に迫る敵を辛うじて撃退した)

武蔵 「二人ではない」

天龍 「俺を忘れんなよ」

加賀 「そうでしたね」

清霜 「武蔵さん、長門さん」

武蔵 「清霜、その身体……」

長門 (清霜の身体が元に戻ってる)

加賀 「提督は残り2つだった虎の子の高速修復剤を私と清霜に使ったんです」

清霜 「明石さんが清霜の義手と義足を外してから高速修復剤を使ってくれたんです。だから……」

清霜 「清霜は元の駆逐艦に戻っちゃった」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/06(水) 22:55:02.88 ID:fYwxjPgO0
清霜 「でも諦めてません」

清霜 「サイコ艤装には頼らないけど清霜はいつか戦艦になってみせるから」

武蔵 「その意気だ」

天龍 「……敵が来ないな。次が第何波かもう分かんなくなった……」

加賀 「彩雲で偵察しました……敵艦隊、撤退を始めています」

加賀 「赤城さん達の作戦が成功したようです」

長門 (赤城、雷、電……皆無事なのか?)
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/06(水) 22:57:52.50 ID:fYwxjPgO0
今回はここまで。
200レス突破しました。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/10(日) 19:49:07.57 ID:sZvlpJCw0
電 「雷ちゃん、ソナーから敵の反応が消えたのです……。電達は遂に戦艦水鬼を倒したのです……」

電 「電は戦艦水鬼を沈めたかったけど、暁ちゃんと響ちゃんの無念を晴らしたかったけど……」

電 「それを雷ちゃんの命と引き換えにしてまで手に入れるつもりは無かったのです!」

電 「だから……お願い……目を開けて……」

雷 「で……ん……」

電 「雷ちゃん!?」

雷 「てき……は……」

電 「やっつけたのです」

雷 「そう……」

雷 「電……あんたは無事……?」
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/10(日) 19:59:00.06 ID:sZvlpJCw0
電 「電は大丈夫なのです」

電 (雷ちゃん、こんな時まで自分のことより電の心配を……)

電 「任務達成したから帰投するのです。帰ったら明石さんに修理して貰って――」

雷 「電……」

電 「ん?」

雷 「笑いたい……心から……」

雷 「」

電 (雷ちゃん……)

電 (少しの間お別れなのです。電もすぐ逝くのです)

電 (向こうでは神様だって、きっと電達を元の身体に戻してくれるのです)
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/10(日) 20:08:45.07 ID:sZvlpJCw0
赤城 「雷ちゃん、電ちゃん、聞こえてるなら応答して!」

赤城 「これ以上は退路を確保出来ない!」

電 (赤城さんからの通信……)

電 「赤城さん」

赤城 「良かった、状況は?」

電 「作戦は成功したのです。戦艦水鬼も沈めたのです」

赤城 「凄いじゃない! よく頑張ったわ……貴女達が今日のMVP間違い無しよ」

赤城 「もう十分よ、こちらに合流しなさい」
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