【艦これSS】不器用を、あなたに。

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213 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/02/25(月) 12:25:31.10 ID:WzqKT6fXO
だが気まずい空気がすぐ消え去ってくれることはありがたかった。

それどころか、深雪の提案は電にとっても純粋に嬉しい限りなのである。

電「電も最近被らなくてそんなこと思ってたのです!どこか行きたいのです!」

深雪「へへっ!じゃあ約束だからな!」

そう言って深雪は嵐のように去っていく。


電は風呂敷を持って今度こそ食堂を出る。

その足取りは先程よりほんの少しだけ軽やかなものであった。

214 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/02/25(月) 12:28:29.22 ID:WzqKT6fXO
今回はここまでです

古鷹さんも登場させるので、書き始めの漠然とした予定では今日辺りに作中で2人を祝えたら...って思ってたんですが遅筆すぎて時間が進まなくて無理でした。
せめて古鷹出てくるシーンを今夜・・・

・・・無理ですね。
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/25(月) 12:31:33.70 ID:1yvlsddRo
おつおつ
自分のペースでいいのよ
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/25(月) 16:37:50.08 ID:6+Xjd3bhO
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/25(月) 18:36:02.98 ID:zK4r/oWhO
いつまでも待つぞ
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/26(火) 17:11:03.54 ID:oyHcMHeXO
219 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:17:48.28 ID:J91t5PLpO
最後の更新からもうこんなに日が・・・
計画が・・・

続きを投下します
220 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:19:10.96 ID:J91t5PLpO

電が鳳翔から風呂敷を受け取っているのを横目に見ながら、残された暁型の3人は密かに話し合う。

暁「電に何も言わず協力してくれるなんて、鳳翔さんも何か知ってるのかしらね」

雷「しかもすぐにお弁当渡したってことは準備してたってことよね」

暁「鳳翔さんの立場的に...電の言う2人のうちの1人が、ってこともあるんじゃないかしら」

響「それは単純に前回の事があったからだと思うよ」

響「電が食堂に来たのを見てて、どうせ電は今回もそうするだろうと予想して喧嘩の最中に用意してくれたんだろう」

雷「それもそうね」
221 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:20:32.99 ID:J91t5PLpO
電を見れば今度は深雪に絡まれている。
表情から察するに、おそらくは軽く山城擁護について小言を言われているのであろう。

深雪については電の姉妹艦である彼女達も好意的に思っている。

その理由はもちろんその持ち前の快活さで場を明るくしてくれる点も一つであるが、とりわけ重要なことは、艦時代の衝突事故の件を気にすることなく電にも活発に話かける点であった。

そのおかげで控えめな性格である電でも、萎縮せずに深雪と付き合えているようである。
それどころか電は深雪に振り回される時は決まって、困惑の表情を浮かべると同時に、また心からの嬉しさにも満ち溢れてさえいる。
222 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:21:41.76 ID:J91t5PLpO
こうした背景から電の姉妹達−特に深雪より少し先に着任した最古参勢の響は−電の表情に明るさがもたらされていく過程を見てきただけあって、その最大の貢献者ともいえる深雪を信頼している。

・・・だからこそ3人とも本音を言えば、ほとんどの艦娘と同じように山城批判派側に立つ深雪と対立してまで、山城擁護の余地を探す事には気が進まなかった。

しかし電の気持ちをなるべく尊重してやりたいと思うのは姉妹艦として自然である。
また暁が今朝未明に経験して姉妹に共有したことは、信じ難くも同時に決して無視してはならない真実に思えた。

こうして3人は示し合わさずとも、先入観を捨て山城の言動を解明しようと努めだした。
223 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:22:36.32 ID:J91t5PLpO
雷「でもまたこれで山城さんがますます酷い人って感じになっちゃったわね...」

暁「うん......でも...きっと何か理由があるのよ...!」

その言葉はつい今日の未明に垣間見た山城の隠された裏側の一部を、もういちど反芻して自身に言い聞かせるためのようだった。

響「ただやっぱり動機が気になるね。あれを見ただけじゃ悪意を持って傷つけようとしてるだけにしか見えない」

雷「電が言うにはあれにも意味があるってことらしいけど...」

暁「でもそこからは電は教えてくれないし...私達で考えるしかないわね」

雷「そうね。そもそも今回はどうして喧嘩が起こったのかしら?」
224 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:23:40.54 ID:J91t5PLpO
電はといえば深雪と別れ食堂を出るところである。

もう先程の騒動の空気感はどこかへ行ってしまったようで、周囲はごく日常的で平和な喧騒で包まれている。

その時、3人の所にとある艦娘が話しかけてきた。

青葉「どーも恐縮です!お三方、ちょっとインタビュー宜しいですか?」

暁「インタビュー?」

その艦娘とは、いつもカメラを首にぶら下げ鎮守府内の様々なことを取材しては自作の新聞記事にして話題を提供している、重巡洋艦の青葉であった。
225 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:24:44.81 ID:J91t5PLpO
雷「電と深雪はまだそういう関係じゃないわよ?」

いわゆる大衆雑誌のような内容を取材する事がほとんどな青葉。

それを踏まえて雷は、この3人のみがいる状況で尋ねてきたという事実から、おそらくは電に関するスクープ狙いと推測して先に断りを入れたのだった。

青葉「たしかに仲の良いお二人の関係性も気になるんですけどね!今回はちょっと真面目な取材でして...」

響「スクープ記事目当てじゃないなんて珍しいね」

そうですかね、と苦笑した青葉は腰を屈めて3人と目線を合わせる。
そして顔少し近づけて周りに目立たない声で話し始める。
226 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:25:34.63 ID:J91t5PLpO
青葉「その、先程もそうでしたが、電さんが何故あそこまで山城さんを助けるのか気になりまして」

響「...!」

青葉「姉妹艦の皆さんなら何か知ってるんじゃないかと思ったんです」

雷「...電は優しいから...」

雷がありきたりの言葉を呟く。
このような質問には、まずそれで反応を見ることがこの3人の中でのマニュアルになっている。
227 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:27:00.05 ID:J91t5PLpO

青葉「...私は電さんが何か事情を知ってるからだと思います」

青葉「その事情のためにいつも山城さんを助けるのでは、と。」

少し小声で発声された青葉のその言葉を聞いた瞬間、3人が閉ざしていた門は開かれたのだ。

暁「偶然ね!ちょうど私達でその話をしようとしてたわ!」

響「(でも...青葉さんは時雨と同じタイミングで着任したはず...それもあってか仲良さそうだし...)」

雷「詳しい事は分からないんだけどね、電は...」
228 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:28:40.55 ID:J91t5PLpO
響「残念ながら私達が知ってることは何も無いんだ」

暁や雷が躊躇いなく話そうとするところに、響が被せるように言った。
何となく響から警戒心を読み取った暁と雷は驚きと不安を隠せぬまま黙って響を見つめた。
一方の響は動じずクールな表情を保っている。

響「だけど“お人好し”なのだって、私達の妹の大事な長所だからね」

響「だから私達は、たとえ電が必要無いまでの優しさを振り撒いていても、それを見守るだけなのさ」

響は終始落ち着いていた。
それに今言ったこと自体は彼女の本心でもあった。
青葉のインタビューを回避しようとする意図以外は、まさに嘘偽りのない返答なのだ。

それゆえに響の落ち着きは暁や雷の動揺を打ち消すほどの自然さをもたらしたのである。

しかし・・・
229 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:29:54.50 ID:J91t5PLpO
青葉「...やはり警戒しますか」

青葉も伊達に“取材”を続けてきたわけではないのだろう、その経験を活かしてか普段そこまで接点が多いわけでもない艦娘の心理を見事に読んでみせたのだ。

青葉「ですがこれは決して記事にするとかではなく、私個人のために内密に調べてることなんです」

青葉「どうか、些細なことでも、電さんについて知ってることを教えてくれないでしょうか」

青葉「きっと姉妹艦にだけなら、ってふと零した重要な言葉があるんじゃないかって思うんです」

どうやら青葉が本気で電の山城擁護について調べている事は間違いないようである。
230 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:30:51.45 ID:J91t5PLpO
響「...青葉さんが本気なのは分かったよ」

ひとまず青葉の意図を信頼し、警戒姿勢を緩める響。

響「ただ警戒したメインの理由はそこじゃないんだ」

青葉「他に何かあるんですか...?」

響「電が山城さんの味方をする理由を見つけるには、きっと、今ある山城さんの人物像を一度忘れる必要がある」

暁「先入観?を捨てるってやつね」

響「その通り。それはこの場合、鎮守府のほとんどの艦娘の考え方を否定することを意味する」

この言葉に、自らの試みの大変さを改めて確認して青葉達は沈黙してしまう。
231 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:31:58.28 ID:J91t5PLpO
雷「まぁ...この鎮守府で進んでやることじゃないわよね...」

響「特に青葉さんは時雨と同時着任で仲も良いじゃないか」

響「それでも本当にそんな調査をしたいと思えるのかい?」

響が危惧していたのはまさにその点であった。

ほぼ全員から良く思われていない者について、1度先入観を捨て去って再評価しようとするにはかなりの勇気が必要である。

そんなことをすれば鎮守府で浮いてしまうわけであるし、そもそもあれほど暴言を吐いてきた人に擁護の余地を見出そうとする事自体が、直感的にナンセンスなのだ。
232 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:33:29.74 ID:J91t5PLpO
もちろん鎮守府の雰囲気に流されずに中立や擁護すら見せる艦娘達も数人はいる。そして彼女らがその立場を理由に飛び火して嫌われるという事態は一切起きていない。

しかし彼女達はほとんどが古参の面々で、戦力的にも精神的にも鎮守府に大きく貢献している者達であることも同時に忘れてはならない。

つまりそれだけの存在だからこそ周囲の行き過ぎた山城嫌いを抑制できるのであって、これを他の者が安易に真似る事は得策ではない。

・・・それでも電の言動の意図を解き明かしたいのであれば、この道は避けられないかもしれないが。
233 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:35:25.65 ID:J91t5PLpO
青葉「...覚悟は決めてあります」

響の言葉で空気が重く沈んだが、やがて青葉が口を開いた。

青葉「もちろん私は時雨さんとは仲が良いです」

青葉「そして今までずっと山城さんのことを憎むべき人だと信じて疑いませんでした」

振り返れば青葉も山城への嫌悪は隠さないタイプであったように思う。

青葉「ですが冷静に考え直そうとしてみたら、それは思い込みなんじゃないかとすら思えてきたんです」

雷「それは随分と大きな心変わりね」

そこでちょうど今日未明の出来事が想起される。
234 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:36:41.42 ID:J91t5PLpO
暁「そう思うきっかけがあったのかしら?」

暁がそう尋ねると、青葉は意を決したように言葉を続けた。

青葉「ええ、数日前に古鷹さんがふと零した言葉が忘れられなくて...」

古鷹さん、という言葉に反応して暁型の3人はある気づきを得た。
しかし、誰から目配せをしたわけでもないが、ひとまずは青葉の話を中断せずに聞くことにした。

青葉「私がいつも通り山城さんを批判した時、古鷹さんは悲しそうな顔をしてこう呟いたんです」

青葉「山城さんは私よりよっぽど強くて優しいのに、って」

古鷹が言ったというその言葉の意味を3人も考える。
235 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:38:25.74 ID:J91t5PLpO
青葉「それは、喧嘩を仲裁する時みたいな普段の山城さん擁護とはちょっと違いました」

青葉「わざわざ古鷹さん自身を比較対象に出すくらい、本心から絞り出た古鷹さんの思いだった気がするんです」

青葉は困ったような顔をしている。

青葉「だから、もう私は分からなくて...古鷹さんは誰にでも優しすぎるから、って勝手に納得してただけなのかもしれないって」

青葉「古鷹さんの言葉を前提にしてみたら、きっと山城さんは今と全く別の人物になるんじゃないかって」

青葉「だからあの言葉の意味が知りたくて...でも古鷹さんは...」
236 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:40:25.59 ID:J91t5PLpO
青葉が次の言葉を口にしようとする時、またもや響が食い気味で被せてきた。

響「詳しいことを教えてくれなかったんだね?」

しかし今度の意図は話を回避するためではなく、むしろその真逆である。
まさに言おうとしたことを言い当てられて青葉は少し驚きを隠せずにいた。

雷「これって、古鷹さんが残り2人のうちの1人ってことよね」

暁「そうとしか思えないわね」

青葉「もしかして...やはり何か知ってたり...?」
237 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:43:33.13 ID:J91t5PLpO
響「うん。実をいえば私達もちょうど青葉さんと同じだからね」

雷「古鷹さんみたいな妹がいるもの」

青葉「やはり...!」

青葉「私も、古鷹さんが何か山城さんに肩入れする事情があるのだとしたら、古鷹さんと同じような立場を取る電さんもきっと同じはずだと思ってたんです」

青葉は自身の推測が正しかった事に興奮を覚えながら、それでも周りに聞かれぬようにある程度抑えた声量で話を続ける。

青葉「ですが仮にそんな事情があるとして、みなさんに仲良くして欲しい古鷹さんがそれを黙ってる理由は無いはずじゃないですか」

青葉「だから私の推測が合ってたとしても、電さん本人からも同じようにそれ以上の事は聞けないと思ったんです」
238 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:44:50.42 ID:J91t5PLpO
響「なるほど、それで私達が3人になった時にインタビューしに来たんだね」

青葉「そういうことです」

暁型の3人も、青葉と同じ発想を古鷹に対して適用しなかったわけではなかった。

何せ青葉は自覚があるかは分からないが古鷹にべったりであり、古鷹も青葉を特に大事にしている様子である。
青葉の妹である衣笠曰く、ヘタレな青葉が行動しないだけで実際は“事実上の恋人同士”らしい。

今では青葉に色恋沙汰を取材されたら「古鷹とはどうなのか?」と言い返せば青葉を退けられるとまで言われるほどである。
239 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:47:33.68 ID:J91t5PLpO
それほどまでに深い情で結ばれているのならば、自分達と同じように何か古鷹から打ち明けられたり相談されていそうなものだ、というのがこの3人の思考であった。

しかし電が自分達に一部を打ち明けてくれた一方で、依然として山城を嫌い続けていた青葉の様子を考えれば、古鷹は電と同様ではないと思えてしまったのだ。

それこそが、暁型が逆に青葉に尋ねることをしなかった理由であったのだ。
240 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:48:49.43 ID:J91t5PLpO
響「実はさっき暁と雷が話していたことが私達が持ってる唯一のヒントみたいなんだ」

青葉「2人のうちの1人...でしたか?」

雷「そうなの。以前電が教えてくれたのよ、事情を知ってるのは電を除いて3人らしいの」

雷「私達はその時に1人については教えてもらってて、その人は古鷹さんじゃなかったわ」

青葉「つまりそれは古鷹さん以外に事情を知ってる人が2人いるって事ですか?」

響「そうなるね」
241 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:49:46.83 ID:J91t5PLpO
青葉「それなら1人は昨日私も知ったんですよ」

その言葉にちょっとした緊張が走る。
青葉が知ったという人次第では、この鎮守府で山城についての何かしらの事情を知っている人を全員把握したことになるからだ。

青葉「私が知った人と言うのは川内さんの事なんですが...」

だがその希望は残念ながら通らなかった。

暁「私達と同じね...」

青葉「そうでしたか...」

新しい情報が得られず青葉も少し落胆をした。
しかしここで諦めず、少しでもヒントを得ようとインタビューを続行する。
242 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:51:42.49 ID:J91t5PLpO
青葉「ちなみにみなさんは電さんからどのように聞いたんですか?」

響「あれは暁が着任してすぐの時だね」

青葉「とすると8月半ばくらいですか」

雷「そのくらいだったわ」

青葉はいつの間にかメモ帳とペンを手元に用意していた。
流石は自ら記者を名乗るだけある。

響「山城さんが異常なまでに嫌われてることに気づいて、その理由を私達に聞いてきたんだ」

暁「山城さんに対してだけはみんな嫌な対応してたから、事情を知らない私はただただ怖かったもの」
243 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:52:57.30 ID:J91t5PLpO
響「そういうわけで暁には着任のほんの数日前に起こった出来事を説明したんだけど」

響「その時も電はやっぱり山城さんを擁護しようとしてたんだ」

雷「何か事情があったと思うし聞いたままの話だけを信じないで欲しい、って一生懸命フォローしてたのよ」

雷「でも私と響はそれにちょっと反対するような事言って、電は困った顔して黙っちゃってね...」

響「そこで暁が思い切って電にストレートに聞いてくれたんだよ」

響「「どうして電はそんな酷いことした山城さんの味方をしたいの?」ってね」
244 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:54:53.76 ID:J91t5PLpO
青葉「その時に事情を知ってるってことを?」

響「いや、実はこの時点ではまだ打ち明けてもらえなかったんだ」

響「だけどこの時私が、電は優しすぎるんだって言ったら、電が何か匂わせるような返答をしてね」

青葉「何て言ったんですか?」

暁「例えば川内さんとかも近いうちに山城さんの味方をするようになると思う。ほとんどの艦娘の敵対感情に配慮して堂々と仲良くは出来ないだろうけど、って」

青葉の質問には暁が答えた。

青葉「...その時点で川内さんの名前を持ち出してきたわけですか」

青葉は少し考えを巡らせているようだ。
245 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:56:47.74 ID:J91t5PLpO
暁「そうなの。それで電の言いたい事が分からなくてとりあえず「何でそう思うの?」って聞いたのよ」

暁「そしたら、山城さんと川内さんは仲良くなったから、って答えたわ」

青葉「仲良く...ですか...」

雷「それで、電もそれと同じようなもので、だから山城さんの味方をするのは別に電が優しくしたいからではない、ってことを強調してきたのよ」

一応電の言うことは筋は通っていた。
周りからは“優しすぎる”から味方をしていると言われる事に対し、“仲良くなった”から味方をするだけだ、と反駁したということである。

もっとも、それは苦し紛れの説明であることは今の3人には判明してしまっているが。
246 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:58:13.96 ID:J91t5PLpO
響「この事はまだ他の人には言わないで欲しいとも頼まれたよ」

響「そして青葉さんならその頃から既に居たし知ってると思うけど、実際に電の言った通りになったんだ」

雷「まさか夜戦練習に付き合ってもらうほどの関係になってたなんてね」

暁「今じゃ那珂ちゃんさんも巻き込んで完全な味方よね」

青葉「では電さんは川内さんも事情を知っていることを、その時点で把握していたってことですね」

青葉はメモにまた何かを書き込む。

雷「そういうことになるわ」

雷「今思えばわざわざ川内さんの話を持ち出したこと自体が電なりのヒントだったのかも...」
247 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 01:59:24.17 ID:J91t5PLpO
響「私はその時はまだ、電が水雷戦隊に大きな影響を持つ川内さんを説得して、なんとかあの事件を収束させようとしたんだと思ってたよ」

暁「私なんか以前の様子を知らなかったから、てっきり山城さんと川内さんはもともと仲良しで、電が間に入って2人の関係を元に戻したって事なのかと思ってたわ」

間違った解釈を誘発したあたりに、電が意図的に話をぼかした事が窺えるであろう。

響「それから1ヶ月くらいして、ようやく電が事情があって擁護しているということを打ち明けてくれたんだ」
248 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:01:31.24 ID:J91t5PLpO
青葉「そうなるとそれは9月の半ば頃ということですか」

青葉はメモを見ながら時系列を確認する。

暁「多分合ってるわ」

暁が確認に応える。

響「それで、もちろん詳しい事情を知りたかったから聞いたんだけど、ついに「事情がある」って事しか教えてくれなかったんだ」

響「だからさっき警戒して青葉さんに言ったことも間違ってないかもしれないね」

響は結局は大事な点を「何も知らない」ことを自嘲気味に語った。
249 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:03:25.47 ID:J91t5PLpO
雷「その時何とか聞き出せた唯一の事が、今さっき話した事情を知ってる人の数とそのうちの一人が川内さんって事なの」

雷「それを聞いて初めて、電が最初にぼかしを入れて話してたことの意味が理解できたの」

青葉「つまり電さんは“事情を知る”を“仲良くなる”に強引に置き換えて話していたわけですか」

暁「あとはこの事は基本的に他の人に言っちゃダメって、言われたわ」

暁「だけど、山城さんの事をちゃんと知ろうとする意志が見られたなら喋っていいとも言われたの」

青葉「それでこうやって話してくれたんですね」

暁が頷く。
250 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:05:58.31 ID:J91t5PLpO
青葉「ところで電さんがそれ以上話せない事やみなさんへの口止めは山城さんの指示ですか?」

雷「それもあるみたいだけど...その事情を伝える権利が電には無い、って電自身は言ってたわ」

その言葉を聞いて、青葉は「やっぱり...!」と微かな声で呟いた。
そして動かしていたペンの動きを止めた。

青葉「新情報はあまり得られませんでしたが、情報の整理は出来ました」

青葉はメモから顔を上げ、食堂の入口に目を向ける。
まだ電は帰ってきていない。

青葉「では今度は青葉が知ったことを教えますね」
251 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:09:24.43 ID:J91t5PLpO
暁型は青葉の情報に身構えた。

青葉「まず私が川内さんが事情を把握してることを知ったのは、昨日那珂さんに聞いたからなんです」

雷「あー、それでなのね」

青葉「私は何も知らない状態で調査を開始したので、とにかく山城さんに友好的な人から当たろうと思いまして」

青葉「昨日は神通さんの誕生日会もありましたから、そこで川内さんと那珂さんに詳しく聞こうと思ったんです」

青葉「何となく事件後着任の那珂さんの方が話しやすいと思ったので彼女に聞くことにしたんですが...ラッキーでした」

暁「ラッキー?」
252 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:10:57.17 ID:J91t5PLpO
響「川内さんに聞いちゃってたら警戒されて、「事情があった」以上の事実を知るのが余計難しくなるからだね」

青葉「ええ、何せ姉妹艦にすら教えない事なんですから余計な警戒は受けないようにしたいところです」

青葉「それともう一つラッキーな点は那珂さんもこっち側に引き込めたんです」

雷「引き込むって...青葉さんと一緒に調査してるってこと?」

青葉「はい、そうです」

響「それは大きい収穫だね」

青葉「そこで少し話は脱線しますが...もしよろしければお三方もご協力して頂けませんか?」

青葉「みんなで力を合わせれば、きっと私達の姉妹艦が話せない真実を知れると思うんです」
253 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:12:22.45 ID:J91t5PLpO
青葉のお願いに近い提案を受け、顔を見合わせる3人。
しかし彼女らも今の青葉と同じ気持ちを抱いてきたのである。

それゆえに結論はすぐに出た。

響「私も気になる、是非参加させてもらうよ」

暁「もちろん私もよ!」

雷「青葉さんがいれば何か分かりそうだものね!」

青葉「みなさん、ありがとうございます...!」

こうして賑わう食堂の一角で、ひっそりと探偵団が生まれたのだった。
しかし、電が戻ってくる時間を考えるとその結成を祝っている暇はない。

青葉はメモ帳を見ながら急いで話を続ける。
254 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:14:57.56 ID:J91t5PLpO
青葉「それで那珂さんから聞いた事は暁型での事例とほとんど同じでした」

青葉のまとめによれば、川内は事情を知って1ヵ月後くらいに神通と那珂に一部のみを打ち明けたそうだ。

その内容はやはり「事情があった」というものであるが、どうやら山城は川内型を気遣うような言動もしていたらしい。
那珂はその点に山城の良心の存在を見出し、結局詳しい事情を知らないままでも山城を擁護する側に立つと決めたのだという。

また山城から口止めを受けている点も暁型のケースと同様である。
255 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:17:34.38 ID:J91t5PLpO
青葉「ここで電さんと川内さんの動きを時系列で見ると、偶然にもかなり一致してるみたいです」

響「どういうことだい?」

青葉「どうやら川内さんが事情を山城さんから聞いたのが、ちょうど電さんがぼかしながら響さん達に伝えた頃になるみたいです」

雷「てことは電は川内さんが事情を知った事を把握した直後に、私達にあれを話したのね」

青葉「そして2回目の話をした9月半ば頃も、やはり那珂さんが川内さんから打ち明けられた頃に一致するようです」

青葉「那珂さんによれば川内さんからの打ち明けは口を滑らせたことから始まったらしいですから...」

青葉「おそらく電さんは川内さんの動向に添って、自身も姉妹艦に打ち明けたりしているのでしょう」

暁「そうだったんだ...」
256 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:19:46.47 ID:J91t5PLpO
青葉「それと川内さんも電さんもあれ以上を語らない理由を「権利がないから」としている点も重要そうです」

響「川内さんもそう言ったのか」

青葉「ええ。ひょっとすると川内さんに電さん、そしてもしかしたら古鷹さんもが、それを周りに言うのが躊躇われるような事情を持ってるという事なのかもしれません」

雷「そこは鍵になりそうね」

青葉「私が知ったことはこれくらいですし後は事情を知っている残り1人は誰かという話ですが...」
257 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:21:57.76 ID:J91t5PLpO
青葉「これは宿題になっちゃいますね...」

青葉は食堂の入口を見ていた。
そちらを見てみれば電がこちらに早足で向かってくるところであった。

青葉「では今度は那珂さんも呼んで集まりましょう」

青葉はそそくさと立ち去ろうとしたがそれを止めるように響が質問をする。

響「最後に一つだけ。今日の喧嘩の発端は何だったか見てたりしたかい?」
258 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:23:09.22 ID:J91t5PLpO
青葉「あー、それは今日の午後演習で山城さんが満潮さんを完膚なきまでに叩きのめしたらしくて...」

青葉「それでただでさえイラついてる満潮さんに「こんな雑魚が姉様に付きっきりなんてそりゃ不幸になるわね」って煽ったらしくて...」

響「なるほどね...」

電がちょうどやって来た。

青葉「では電さんも帰って来たことですし、青葉はこれにて!」

青葉「六駆の良い子達は宿題にちゃんと取り組むんですよ!」

そう言って青葉は去っていった。
259 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:24:47.35 ID:J91t5PLpO
電「すごい遅くなってごめんなさい、なのです...」

暁「気にしなくていいのよ、青葉さんが話し相手になってくれたし」

電「それは良かったのです...。どんなこと話してたのです?」

響「電が深雪とラブラブだって話しさ」

響がしれっと事実と違う返答をする。

電「はわわ〜!?///」

電「からかわないで欲しいのです〜〜〜!!!」

雷「電は本当可愛いわねぇ」

目の前に居るあどけない純粋な少女。
この子がほんの少数の者達と共に隠し続ける真実は一体どんなものなのだろうか。
3人にはまだ全く見当も付かないのであった。
260 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/09(土) 02:26:37.99 ID:J91t5PLpO
今回はここまでです
出来れば今日か明日にもう1回投下したいですが・・・

なるべく早く投下できるようになりたいです
261 : ◆oVd3xukI6g [sage]:2019/03/09(土) 05:35:01.18 ID:5ovO5T000
乙です
楽しみにしてます
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 11:23:51.40 ID:lA+yVjpYO
まさか推理要素が出るとは。
続き楽しみにしてます
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/12(火) 15:12:50.30 ID:08CiIAJjO
いいね
続きが楽しみだ
264 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/16(土) 09:44:29.21 ID:K4iN0JfmO
今日の夕方頃に続きを投下しようと思ってます
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/16(土) 09:51:14.17 ID:b/w0V1i8o
うい
266 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:23:33.72 ID:ipNkQLlXO
どうしてこんなに宣言を守れないんでしょうか...

ようやく投下開始です
267 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:28:03.80 ID:ipNkQLlXO
12月11日 朝



目を開けば薄明るい光が自身に降り注いでいる。

窓から見える空模様は快晴。
カーテンは既に開いていた。

昨夜見た天気予報によれば、ここしばらく続いた冷え込みも今日は和らぐようである。

それと連動するかのように青葉の目覚めもここ数日と違ってすこぶる良いものであった。

青葉「〜〜〜っっくぁ!」

青葉はベッドで起き上がると、まずは緩んだ変な声を出しながら伸びをした。
268 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:30:47.10 ID:ipNkQLlXO
古鷹「おはよう、青葉!」

青葉「おはようございます、古鷹さん...」

青葉がまだ完全には醒めない眠気を取り払おうとしていると、ルームメイトである古鷹が元気に声をかけてきた。

古鷹もまだ可愛らしいパジャマ姿であることから、そこまで自分より早起きしたわけではないことが窺えた。

それでも彼女は既に眠気とは無縁な状態になっており、早くも1日のスタートを切ろうとしているようだ。

青葉「今日は秘書艦なので古鷹さんより早く起きるつもりだったんですが...逆になってしまいましたね」

古鷹「でもぐっすり眠れたみたいだし、良かったじゃない!」

青葉「それもそうですね」
269 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:34:21.50 ID:ipNkQLlXO

にこやかに笑う古鷹を見て、青葉も微笑み返す。
本当に古鷹には笑顔が似合う。

だから古鷹にはいつも笑顔で居てもらいたい。
そんなことを青葉はよく考えるのであった。

青葉「それじゃあ身支度して、いつもより早いですが朝食に行く準備しちゃいましょうか」

古鷹「加古達も起こしてくる?」

青葉「どうせ加古さんは今日もギリギリまで布団で粘るんでしょうし...ガサに丸投げしちゃいましょう」

古鷹「まったく、加古ったら...」

古鷹の妹にあたる加古は寝坊助で有名である。
というより、いつでも隙を見つけては寝ようとするのだ。
そんな彼女をどうにかする役目は、第六戦隊の世話焼きな方の2人、すなわち古鷹か衣笠なのである。
270 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:37:21.34 ID:ipNkQLlXO

青葉「まぁまぁ。昨日2人には、明日先に古鷹さんと朝食を取っちゃうかもしれない、って言ってありますし」

青葉「それにガサも加古さんの世話焼くの大好きみたいですから」

古鷹「たしかになぁ。じゃあ、2人のことは信じて私達だけで行っちゃおう!」

青葉「では私は顔洗ってきますね」

こうして2人は食堂に向かう準備をするのであった。

271 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:39:40.81 ID:ipNkQLlXO



食堂には青葉と古鷹以外はまだ誰も食事を取りに来ていなかった。

始業時間を考えると朝食を取るには早すぎであり、大抵の艦娘はこの時間はギリギリまだ寝ている。

また空母勢は朝早くから鍛錬をしている様であるが、彼女達が弓道場からやって来るのもやはりもう少し後になってからである。

ただ、日替わりの秘書艦に任命された艦娘は始業に備えた準備をしておかなくてはならない。

そのため基本的にその日の秘書艦は早めの朝食を取って、ゆとりを持って執務室で始業時間を迎えるようにする事が奨励されている。

・・・もちろんマイペースな艦娘はここでも時間にルーズだったりするのだが。

そんな事情があるからこそ、今青葉に朝食を渡す鳳翔もこの時間から既に準備を整えているのである。
272 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:41:14.48 ID:ipNkQLlXO

鳳翔「今日は青葉さんが秘書艦でしたか。頑張って下さいね」

青葉「恐縮です!こんな早くから朝食の準備、いつもありがとうございます!」

鳳翔「ふふっ、いいんですよ。これが着任時からの私の仕事ですから」

古鷹とはまた違った落ち着きと安心感をもたらしてくれる笑顔で鳳翔は青葉に食事を渡した。

厨房内の奥側では、日中は甘味処を運営する間宮や伊良湖、そして他の有志で手伝いをする艦娘が忙しなく準備に追われているのが見えた。
食事受け渡しのカウンター付近には、青葉と鳳翔しか居ない。
273 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:42:53.01 ID:ipNkQLlXO

青葉「(そういえば鳳翔さんも...可能性は低いと思いますが...)」

青葉「(せっかくの絶好のチャンスですし)」

青葉は食事を受け取ると、少し小声で鳳翔に話しかけた。

青葉「あの、いきなりで申し訳ないのですが...」

青葉「鳳翔さんは何か山城さんについて知ってたりするんですか?」

その問いに鳳翔は驚いた顔をする。
その表情は隠し事がバレたから、というようなものではなく単に唐突の質問に困惑しただけのようである。

そこで少し補足をすることにした。
274 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:44:32.54 ID:ipNkQLlXO
青葉「味方をしてあげたり、あまり敵意を持ってない人はほとんどが古参の方ですから...」

この説明で鳳翔は青葉の言いたい事を理解したようだ。

そして彼女の目線が一瞬青葉のさらに後ろを捉えた気がする。
どうやら青葉がなぜそれを聞きたかったのかの意図まで汲み取られてしまった。

流石は鎮守府の母親的存在といったところか。

鳳翔「たしかにそうみたいですが...私は何も聞いてなくて...」

ごめんなさいね、と言わんばかりの残念そうな表情を見せる。
275 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:46:47.27 ID:ipNkQLlXO
青葉「いえ!むしろいきなりすみません...」

答えは予想はしていたが、やはり聞いた以上は少し残念な気持ちも拭えない。
同時に気まずい空気にしてしまった罪悪感もあり、謝罪の言葉を残し立ち去ろうとした。

しかし、繋ぎとめるようにさらに言葉が紡がれた。

鳳翔「...ですが私は信じていいと思ってます」

鳳翔「あの真面目な加賀さんが嫌ってはいないみたいですから」

彼女の表情は再び慈愛に満ちた優しいものへと戻っていた。
276 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:50:03.35 ID:ipNkQLlXO
青葉「たしかに...」

その言葉はすんなりと青葉に浸透したのだった。

青葉「ありがとうございます」

青葉はお礼言って反転し、先に食事を取って待っている古鷹の所へ向かう。

今鳳翔の言ったことは、ここ1週間程で青葉が山城への先入観を懸命に捨てながら考えていたことと同じであった。

加賀と言えば鎮守府で一番真面目な艦娘である。
そんな彼女が、あまりに理不尽で勝手で腹立たしい理由で艦隊の和を乱し孤立する山城を嫌わない事があるだろうか?

実際に間接的にそれが加賀自身に迷惑を被らせることもあったのである。
277 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:51:15.98 ID:ipNkQLlXO
青葉は以前までは加賀の立場について、山城を戦力としてだけは不可欠と考えるからこそ中立を維持しているだけだと思っていた。

それは、事実として山城が金剛と共に戦艦の中で群を抜いて練度が高いことや、加賀がその冷静な分析力を買われて作戦会議に呼ばれるような立場に居ることによって裏付けられているように思えた。

だが古鷹のふと零した言葉を聞いてから、そして決定的には那珂から事情の存在を聞いてから、そんなストーリーよりももっとシンプルな可能性が浮かび上がった。


加賀も事情を知る一人なのではないか、という事である。

278 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:52:38.63 ID:ipNkQLlXO
この仮定は実に説得力があるように思える。

話を聞いた時に那珂は、山城を嫌わないでいる人は程度に差はあれ何かしらの事情を聞いているのではないか、と言っていた。
そしてその際に、金剛と加賀はおそらく事情を知ってるから中立的なのではないか、とも推測していた。

その推測は一昨日までは青葉も正しいと感じていたが・・・

暁型の子達曰く、事情を知る人は4人らしい。
このうち2人のことは確実に分かっており、もう1人もすぐそこで自分の着席を待っている人であると強く確信している。

だとすると最後に残った1枠は誰なのか。
279 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 00:57:48.91 ID:ipNkQLlXO

青葉が今まで見てきたことを踏まえれば、その1枠もおそらくは古参勢で山城を嫌う態度を見せていない人である。

その条件からいえば鳳翔も該当はする。
だから先程は可能性は低いと思いつつも、一応彼女にも確認をしてみたのである。

青葉はこの時点で最有力候補を既に3人にまで絞っていた。

青葉「(山城さんに「あんたは納得してると思ってた」って言われるくらいだし...)」

青葉「(同室経験もあったと聞きますし、やはり金剛さんが1番可能性が高いですよねぇ)」

先日の朝に盗み聞きした会話を思い返す。
280 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:22:17.73 ID:ipNkQLlXO
まさかの寝落ち...
またこうやって予定が狂っていく...
281 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:23:05.87 ID:ipNkQLlXO
青葉「(ただ、鳳翔さんまでもが信じる根拠にしてる加賀さんも十分ありえるんですよね...)」

青葉「(それに正規空母の方々は口々に、加賀さんは明らかに後輩、もとい瑞鶴さん思いなところがあると言います)」

青葉「(そんな人が事情を何も知らないのなら、あんなことをする山城さんを到底容認するはずが無いのでは...?)」

青葉は思考を巡らす。
しかし身体は無意識的に自然と動いており、いつの間にか古鷹の前まで来て、トレーを食卓に置いていた。

青葉「(まぁでも電さんがその時言ったという情報が絶対正しいとも断言できないでしょうし...)」

青葉「(1人、2人くらいの誤差はあるのかもしれませんね)」
282 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:24:42.63 ID:ipNkQLlXO
古鷹「...何か悩み事?」

思考を続けながら席についた時、古鷹がやや不安そうに首を傾げて聞いてきた。

青葉「いえ、まぁ今週の記事は何書こうかなぁって」

咄嗟に無難な返答をする。

古鷹「なぁんだ、良かった...」

古鷹「でも記事考えるのもいいけど、ずっと考え事は危ないよ?」

古鷹は青葉に対してはやや過保護である。
それだけ青葉を特に気にしてくれるという嬉しいことでもあるが。
283 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:25:32.07 ID:ipNkQLlXO
古鷹「それと秘書艦業務中は仕事に集中しなきゃダメだからね!」

古鷹「提督に迷惑かけたりしないようにね?」

青葉「分かってますよぉ。青葉さんにお任せ!ですよ〜」

妹の口癖を真似ておどける。
青葉はひとまず考えるのを止め、せっかくの古鷹との2人の時間を楽しむことに決めた。

たわいもない事を話したり冗談を言ったりしたり・・・
その度に古鷹が笑う姿はとても愛おしい。
284 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:26:16.27 ID:ipNkQLlXO
4人で食事をするのも楽しいが、やはり古鷹を独り占めできる今この時間も、青葉にとってはこの上ない至福なものであった。

青葉「(今日は目覚めも良くて、朝から古鷹さん成分補充できて、いい日になりそうです!)」

青葉「(もしかしたら第3の候補からもいい情報聞けちゃうかもしれませんね!)」


285 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:27:30.49 ID:ipNkQLlXO
〜〜〜


12:00 執務室

提督「ふぅ...この書類は終わったか...」

提督「じゃあちょうどいい時間だしお昼にしよう」

青葉「待ってました司令官!」

提督「今のところ順調に進んでるし、青葉のおかげだ。午後もよろしく頼む」

青葉「恐縮です!」

提督「その辺軽く整頓したら食堂行くぞ」

ようやく昼休憩になった。

長時間に渡る秘書艦業務には必ず複数回の小休憩がある。
それは提督が適宜設けてくれるのであるが、文字通りの僅かな時間の休憩でもある。
286 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:29:00.64 ID:ipNkQLlXO
それゆえその時間には軽い雑談程度なら気楽に出来るのであるが、長話に発展しそうな話題はなかなか話せない。

しかしその例外が昼休憩である。
昼休憩には昼食を取るために1時間程度が当てられている。
つまり提督としっかり喋りたい事がある者にとってはこの時間は非常に大事なものなのだ。

そして本日秘書艦の青葉も、この時間の到来を待ち望んでいた。
それはもちろん、提督に聞いておきたい重要な話があるからにほかならない。
287 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:30:31.25 ID:ipNkQLlXO
その聞きたいことを思いついた時、ちょうどその数日後が秘書艦業務に就く日−すなわち今日であるが−だった事はかなりの幸運といえるかもしれない。

青葉「司令官、お昼に行く前に少し真面目なインタビュー宜しいですか?」

提督「インタビュー?まぁ、いいぞ」

提督から了承の返事を貰った青葉は一息ついて話を始める。

青葉「...では、司令官は山城さんについてどうお考えでしょうか?」

提督「山城について?...非常に高練度で優秀な航空戦艦だと思うが振る舞いは褒められたもんじゃないな...」

提督はありきたりな答えをした。
しかし、そこに少しだけ動揺があったのを青葉は見逃さなかった。
288 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:31:50.35 ID:ipNkQLlXO
もちろんそれが、青葉の質問が唐突だったという、それだけのことから来た動揺であるとも解釈できるが・・・
しかし同時にそれがあまり触れられたくない点を聞かれた事によるものの可能性も十分に存在した。


青葉「(事情を知る残り1人の候補でもあるんです、ここは絶対聞き逃せません...!)」


そうである、青葉はこの目の前の男にも山城の事情を把握している可能性を見ている。

それもよく考えれば妥当な思考で、そもそも鎮守府を管理する者は全艦娘のパフォーマンスや行動原理に関する事情を知る道理があるはずである。
そして当然全艦娘を着任から見てきている。
289 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:34:03.43 ID:ipNkQLlXO
それを踏まえれば提督も事情は知っていて、電は提督を無意識的に除外して艦娘のみで事情を知る人の数をカウントしただけだった、なんてことも有り得るのではないか。

さらにはその事情とやらの性質を考えても、他の候補よりも提督に確かめる事を優先したが得策である。
なぜならば今のところ、事情を知っている者達は皆それを姉妹艦などにすら打ち明けないからである。

そうなると金剛や加賀に取材を敢行してそれが見事図星だったとしても、おそらく内容については知れないのが容易に予想できる。
まさにそれは青葉が那珂より話を聞いて以来、直接的な取材を避けている理由でもある。
290 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:35:47.87 ID:ipNkQLlXO
しかし鎮守府内で唯一立場の異なる提督であれば、少しは結果も変わるかもしれない。
艦隊指揮権を持っており艦娘でもない彼ならば、説得次第では知ってる限りの事情を教えてくれたり、あるいは彼が知らなくても山城本人に事情を話すよう促してくれるかもしれない。

青葉はそう考え、提督から何かしら新情報を得られる期待値は大きいと見ていたのだ。


青葉「司令官なら青葉がそういう返答を求めているわけじゃ無いことは分かるでしょう」

青葉「では聞き方を変えます。司令官は山城さんのトラブルを何故解決しようとしないんですか?」

青葉は追い詰めるように更なる詳しい返答を暗に求めた。
291 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:38:12.73 ID:ipNkQLlXO
提督「...それは山城を追放しろという圧力か?」

提督は青葉が山城を嫌悪している故のその発言なのだと思っているようだ。
そこで青葉は首を横に振り補足する。

青葉「そうではなくて、純粋に疑問なんです」

青葉「あんな状態、艦隊運営の責任者である司令官にとってはたまったもんじゃないですよね?」

青葉「なのにどうしてそれを黙認しているんですか?」

その問いでようやく質問の意図を掴み、提督はゆっくりと話し出す。
292 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:41:01.80 ID:ipNkQLlXO
提督「...私が艦娘達の私的領域に介入しない方針であることは君も知っているだろう?」

提督「たしかにあの険悪な関係は冷や冷やするが、現状それが原因で艦隊運営に支障が出たことは無い」

提督「だから私は静観するだけだ。それに私がしゃしゃり出て仲裁しても、しこり無く解決出来るものではないと思っているからな」

あまり深く考えなければ、提督の主張は論理的なものであった。
事実として提督は良くも悪くも艦娘にあまり口を出さない姿勢である。

それは深海棲艦に実際に対抗する艦娘達こそが自身を1番よく知っているのであり、したがって提督の役目とは彼女らがハイパフォーマンスを実現するための戦術や環境を彼女達の希望に沿って提供するべく尽力する事だ、という彼のポリシーに由来する。
293 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:42:27.06 ID:ipNkQLlXO
そのため艦娘の私生活に関する領域についても、艦娘達が提督に進言をしてそれに許可をする事で自治性を保障するなどしていたりする。

ただ全艦娘からひっきりなしに提案が出るのも大変なので、何となくそれぞれの艦種の古参勢が意見をまとめて進言するのが常となっていた。

・・・改めて分析すれば、こうした慣習のおかげで古参勢に味方がいる山城は基本行動を制約されずに済んでいるともいえよう。

さて一見筋の通った解答を言い渡された青葉であったが、半ば確信に近い推測から逆算していた彼女はすかさず強烈な次の質問をした。
294 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:44:09.25 ID:ipNkQLlXO
青葉「ですが艦隊運営に支障が出ていないのも、山城さんを味方する数少ない人達がその都度説得したり陰で調整しているからです」

青葉「それは司令官だってよく知ってるはずです」

青葉「そんなレベルで深刻なのに、司令官が全くのノータッチってのはおかしいと思うんですよねぇ」

提督「...」

青葉「それにほとんどの艦娘達が山城さんを憎んでいて司令官に文句や不満を言うんです」

青葉「なのにそういう時だけ戦力を理由に妥協するよう皆に求めるなんて...司令官のポリシーに反しませんか?」
295 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:46:01.29 ID:ipNkQLlXO
提督「しかしそれは仕方ないだろう...皆が不満に思っていても重要な戦力を眠らせ続けるわけにはいかない」

提督「やりやすい仲間同士で出撃させてやりたい気持ちはあるが、そこは軍隊だからな」

青葉「なら尚更あの件を黙認し続ける理由がありませんよね?」

提督はいよいよ答えに詰まったようである。
その様子を確認してから、青葉はようやく本題に入るのである。

青葉「山城さんがあんな振る舞いをするのには事情があります」

青葉「そして司令官はその事情を知っているのでは?」
296 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:47:03.15 ID:ipNkQLlXO
提督「...いや、特にそのようなことは聞いていないが」

青葉「ですが司令官、私はもう古鷹さん、電さん、川内さんがその事情を知ってるがために擁護を続けてきたということまで突き止めてます」

青葉「そして私だって、何かそれほどまでの事情があったのなら、山城さんについてちゃんと知ることから始めるべきだと思います」

青葉「ですからどうか、知ってることを教えて頂けないでしょうか...?」
297 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:47:55.77 ID:ipNkQLlXO
青葉は切実に提督に訴えた。
日頃は取材と称して皆のプライベートに直撃して困らせたりなど、真面目や大人しさといった言葉とはかけ離れている青葉。

そんな彼女が真剣さながらに聞きたがる必死な様子は、やがて提督の口を開かせた。

提督「先に言っておくが、私も山城が何であのような振る舞いをするのかの理由については本当に知らないんだ」

提督「ただ原因についての心当たりはあるし、私にも責任があることだからな...」

その言葉を聞いて青葉は内心で歓喜する。

青葉「(やっぱり何か...!)」
298 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:49:01.75 ID:ipNkQLlXO
青葉「その心当たりというのは?」

だが興奮を隠せない食い気味の青葉の質問は、またも大きな壁で阻まれることになる。

提督「悪いが、それは君に言うことではない」

青葉「なぜですか!?」

提督「...それについても黙秘させてもらうよ」
299 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:51:00.63 ID:ipNkQLlXO
青葉「じゃあ、司令官に責任があるってのは?」

黙秘されたことに思うところはあるが、とりあえず青葉は食い気味に別の言葉の方にも追及する。

提督「山城がああいう振る舞いをするようになるのを招いたのは私の責任、ということだよ」

青葉「それはつまりどういう事なんですか?」

提督「そこからは事情の範疇だからな」

提督は再度それを話すつもりが無いことを暗示した。
300 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:51:52.59 ID:ipNkQLlXO
青葉「...そこまでして隠すようなことなんですか?そんな意味があることって一体何なんですか?」

提督「...」

青葉「もしそんな事情があったんなら、青葉が責任持って山城さんを嫌う人達を説得しますから...!」

提督「悪いが君に教えるつもりはない。もちろん他の人にもだが」

結論が変わることはなかった。
301 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:52:25.34 ID:ipNkQLlXO
青葉「どうしてもそれは話したくないんですか...?」

青葉「古鷹さん達も、司令官も、そんなのおかしいですよ...」

青葉「司令官はトラブルを解決したくないんですか...?」

一瞬大きな期待をしてしまったがために落胆も大きい。
そんな青葉の様子を見て思う事があるのか、提督は口を開く。
302 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:55:57.60 ID:ipNkQLlXO
提督「...青葉。君は事情を知ってる人については突き止めているのに事情は知らないわけだ」

提督「それは多分、君と特別な絆で結ばれてる古鷹さえも教えてくれなかったってことだろ?」

青葉「特別な絆って...。古鷹さんとはそういうわけじゃないですよ?」

照れ隠しで否定した面もあるが、青葉自身は本当に古鷹とは特別な関係であるとは思っていない。

青葉「(古鷹さんは青葉だけじゃなくみんなに優しくて、青葉の方が特にそれに甘えてばっかってだけなのに...)」
303 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:56:38.72 ID:ipNkQLlXO
青葉はそんな自覚を持っていた。
いつも青葉に振り回されながらも笑っていてくれて、そのくせ実は繊細な面も受け入れて寄り添ってくれる・・・

むしろその優しさに甘えてばっかりで迷惑をかけてしまって申し訳ないという気持ちすら青葉にはある程なのだ。

青葉「(...でもやっぱり古鷹さんの1番みたいに思われるのは...嬉しいな)」

そんな事を考えているとは思わず、提督は青葉の否定を打ち消す。
304 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:57:16.94 ID:ipNkQLlXO
提督「そうなのか?でも私から見ても青葉と古鷹はお互いを強く想いあっていて素敵な関係だと思うよ」

青葉「うぅ...その...恐縮です///」

青葉は耐えきれず赤面する。
その様子を優しい目で見ながらも提督は話を続けた。

提督「そんな古鷹ですら君には話さない方がいいと判断した、というわけだ」

提督「つまりそこに意味がある」

提督は青葉に力強く言った。
305 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:58:48.42 ID:ipNkQLlXO
青葉「...だからその意味を知りたいんですが」

提督「まぁそこに行き着くのは仕方ないよな...」

提督はまた少し黙ってしまった。
青葉も今度は追求するための備えが尽きてしまっていたため、それに合わせて沈黙するしかなかった。

二人とも、気まずさを紛らわすために書類を軽く整理し出す。

この作業を終えたら、もう気を取り直して昼食を取りに行こう。

青葉が落胆しつつもそう思った時だった。
思考が落ち着き始めたことにより、新しい気づきが突如思い浮かんだのである。
306 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 09:59:58.20 ID:ipNkQLlXO
青葉「(...そういえばさっき司令官は山城さんの振る舞いについての理由自体は知らないと言ってましたね)」

青葉「(だとすると、まず司令官も知ってる事情があって、その事情で山城さんが暴言を吐くようになったと思ったけど、確証持っては知らない...ってことですかね?)」

青葉「(では電さんの言ってることが本当だとしたら、司令官は事情を知ってる組にカウントされてるのでしょうか?)」

事情をどうしても聞けないというなら、せめてその点だけははっきりさせておきたい。

青葉はすぐに提督に尋ねる。
307 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 10:00:45.70 ID:ipNkQLlXO
青葉「...あの、さっき司令官は山城さんの振る舞いの理由については知らないって仰ってましたけど...」

青葉「それは本当なんですよね?」

沈黙を破った青葉に驚きつつも、提督はすぐに力強く返事をした。

提督「 あぁ、嘘偽りなく本当だ」

青葉「ではなぜ司令官の知った事情が山城さんの振る舞いの原因だと思ったのですか?」

提督「登場人物が同じだからな」

青葉「(事情というのが山城さんに関するものという事でしょうか)」
308 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 10:02:31.55 ID:ipNkQLlXO
提督「それと、彼女からトラブルが起こった前日に釘を刺されてる」

青葉「...!その時何て言われたんですか?」

提督「...まぁ、事情があることは知ってるわけだし、これに関してはいいか...」

それを伝えるか少し迷ってから、提督は山城の言ったことをそのまま呟いた。



提督「今後、私と時雨たちとの関係について何も口出しするな」



提督「こう言われてな。私の知ってる事情が山城の今の振る舞いの理由に関係してて、だから口出しするなって言ってきたんだろうと思うわけだ」
309 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 10:03:50.36 ID:ipNkQLlXO
たしかに前日に伝えてきた事も踏まえれば提督の推測は正しいように思える。

提督「もちろん単に私が介入して仲直りさせようとするのを嫌ったというのもあるんだろうが」

青葉「そう言われるとますますその事情とやらを聞きたくなりますよぉ...」

提督「そればっかはな」

やんわりと、しかし確固たる意志で提督は青葉の希望を跳ね除けるのだった。

青葉「でもせっかく山城さんへの見方を変えられるチャンスなのに、事情とやらを教えてもらえないなら私は一向に味方できないですよ」

青葉の言ったことはここ1週間の調査での素直な感想でもある。
どうやら山城は本当に擁護される理由を持ってるらしいと信じられるものの、未だ自身の実体験としてそれを見つけられない。
310 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 10:06:05.04 ID:ipNkQLlXO
そもそも先日の食堂での騒動といい、相変わらず山城の言動はヘイトを集めるものでしかない。
そこにいくら「事情がある」と言われても、それを教えてくれないのだからやはり完全に納得するのは難しい。

そんな半ば不貞腐れるように落胆していた青葉に、提督から思いもよらない言葉が発された。

提督「...それなら事情とは関係ないエピソードを一つ話してやる」

提督「こっちも山城から口止めされてるが、特別にだ」

青葉「本当ですか!?」
311 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 10:07:01.19 ID:ipNkQLlXO
提督「だからその代わり、あんまり山城の件を暴こうと執着しないでくれ」

提督「近日中に大規模作戦も始まるし、余計な事に気を取られないで欲しい」

青葉「はいはい、分かってますよ!」

青葉はすぐに機嫌が戻った。
そして手元には既にメモを用意していた。

提督「本当にジャーナリストって感じだな」

その様子に苦笑しながら提督は語り出す。

提督「ちょうど山城が私に釘を刺しに来た日、実はそれともう一つ用事があって山城はここに来たんだ」
312 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/03/17(日) 10:08:11.25 ID:ipNkQLlXO
提督「それがこの鎮守府の改装の進言でな」

青葉「あっ!そういえばその日に司令官が急に鎮守府を改装するって発表してましたね」

青葉は早速メモに書き込む。

提督「そうだ。実はあれは山城からの提案だったわけだ」

提督「もちろん部屋割り変更の要望もな」

青葉「全く知りませんでした...」

青葉が着任してから2週間程して、鎮守府はいくつかの設備の改装を行った。
設備の改装とはいえ艤装や装備と同様に妖精の力を利用するため、艦隊運営に影響は出ないものであったが。
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