遊勝「紹介しよう、デニス。超高校級のマジシャンの夢野秘密子さんだ」

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81 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:21:45.48 ID:DVv3+eZ6O



デニス「……まあ、答えられないよね。普通は」

夢野「……」

デニス「そうだよ、こんなこと、すぐに答えの出せる問題じゃあ無い」

デニス「問題と真面目に向かい合っているのならば、当然だ」

デニス「ただ、もし、少しでも甘さを抱き続けたいのならばーーー」







デニス「ーーーこれからもデュエルに励むと良い」


82 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:27:21.48 ID:DVv3+eZ6O



夢野「……?」

デニス「元々は先生が言っていたことだけどーーーデュエルとは、デュエリスト同士のコミュニケーションなんだ」

デニス「相手のデュエルのデータを取るなりして、相手の気持ちを理解しようとするからこそ、強くなれるし相手に勝つことも出来る」

デニス「故に、デュエルに強くなればなるほど、デュエルにおける相手の気持ちが理解出来るようになる」

夢野「……」

デニス「そして、これは、デュエル以外でも応用が利く」

夢野「!?」

デニス「デュエルに励むことは、それ自体が相手を理解する力を養うことに繋がるんだ」

デニス「理解する力を養った上で、相手を理解しようとすれば、その通りに相手を理解することが出来る」

デニス「その相手のために、どんな理想を想い描き、どんな風に優しくすべきかもわかる」

デニス「慰め方だってわかるようになる」

デニス「そうすれば、相手の心に余計な負荷をかけずに済むため、キミの抱く甘さを切り捨てる必要は無くなる」

夢野「……!」

デニス「その甘さのままに、お互い楽しくデュエルをして、ショーをして、相手やそのファンを笑顔に出来るはずだ」

デニス「ボクは、そういう風にも、思っているよ」

夢野「デニス……」


83 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:29:09.43 ID:DVv3+eZ6O



デニス「……だから夢野さん、これからもデュエルに励もう」

デニス「励めば、より人の心を理解出来るようになるかもしれない」

デニス「理解した上で、その人にとって必要なことを考え実行することで、お互いに楽しい気持ちになれるかもしれない」

デニス「そうすれば、相手がどんな状況に立たされていたとしても、笑顔に出来るかもしれないんだ。夢野さん」

夢野「……」


84 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:31:57.78 ID:DVv3+eZ6O



デニス(……そうだよ、夢野さんーーー)


夢野「……」


デニス(ーーーキミのような人ならば……キミのような人になれさえすれば、もしかしたら実現出来るかもしれない)


デニス(そう、超高校級の肩書きを持てるほどにまで、己の魔法(エンタメ)を磨き上げることの出来る、強い心を持つキミならーーー)


デニス(ーーーそれほどの人間ならば……それほどの人間になれさえすればーーー)


デニス(ーーーたとえ、相手がどんな人間でも、その心を理解出来るかもしれないんだ)


デニス(そうして、その人に何が必要なのか、考え抜いて実行し、お互いに楽しい気持ちにだってなれる)


デニス(その時、ようやく産まれるんだ)


デニス(魔法のように甘い、本当のーーーー)


85 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:33:14.54 ID:DVv3+eZ6O












デニス(ーーー笑顔をーーーー)











86 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:34:40.80 ID:DVv3+eZ6O



夢野「……そうじゃな、デニス。お主の言う通りじゃ」

夢野「まずはデュエルに励んでみるわい」

デニス「夢野さん……」

夢野「……甘さを抱き続けるかべきか、そうでないかーーー」

夢野「ーーー答えを出すのは、それからじゃ」

デニス「………」

夢野「……明日からは、榊遊勝とも、本格的にデュエルしてみるかのう」

デニス「!」

夢野「あやつは強い。あやつとデュエルすれば良い経験になるじゃろう。理解力も上がるはずじゃ」

夢野「それに明日は、土曜日。あやつとデュエル出来る日じゃからな」


87 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:38:56.16 ID:DVv3+eZ6O



デニス「……良いのかい? 先生はキミにとって苦手な人だったはずだよ」

夢野「確かに、苦手のままじゃ……」

デニス「……」

夢野「……じゃが、それは、今の話じゃ」

デニス「!」

夢野「お主が言ったんじゃぞ、デニス」

夢野「デュエルに励めば、相手の気持ちを理解出来るようになると」

夢野「それは、榊遊勝も例外では無いはずじゃ」

デニス「……!」

夢野「ーーーそうやってデュエルをし続けて、デュエルに強くなって理解力を養えば、あやつがなんであんなデュエルをしているか、理解出来るようになるかもしれん」

夢野「……理解さえ出来れば、あやつとの接し方も見えてくるじゃろう」

夢野「榊遊勝が苦手で無くなるかもしれん」

デニス「夢野さん……」


88 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:41:52.36 ID:DVv3+eZ6O



夢野「……まさか、中学生のお主に、人生の先輩であるウチが、デュエルだけでなく人との関わり方まで教えられるとはのう」

夢野「ウチもまだまだじゃわい」

デニス「……ああ、そういえば、超高校級って、高校生だけの肩書きだったね」

夢野「……デニス、お主まさかウチが高校生であることを忘れておったのではあるまいな?」

デニス「いやいや、忘れてなんかないよー、アハハー」ジーッ

夢野「んあ……!? よさんか! 背が高いからって、上から見下ろすでない! 」

デニス「……フフッ、じゃあ、夢野さんがボクに収縮魔法をかけてくれるかい?」

夢野「んあ!? い、いまはマナが切れておっての……」

デニス「じゃあ、それが溜まるまで、こうしているとするよ!」

夢野「んあ……!? ち、調子に乗るでないぞ、デニス! ウチはまだまだこれからなんじゃ! これから、大人のレディーになるんじゃー!!」ウガーッ






〜〜〜〜〜〜〜〜

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89 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:43:41.36 ID:DVv3+eZ6O



〜2年前・エクシーズ次元の家屋〜



王馬「ーーーにしし! 悪いねー! 悪の総統であるオレのために、わざわざ時間作って貰っちゃってさー! 嘘だけど!」

遊勝「……いや、構わないよ」

遊勝「それよりも、王馬くん、キミは先ほど、私に確認したいことがあると言った」

遊勝「そして、その内容は、私のデュエルショーに関することだとか」

王馬「……」

遊勝「さあ、王馬くん、何か私に確認したいことがあるのであれば、何でも聞いてみると良い」

遊勝「私はそれに答えてみせよう」


90 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:45:11.30 ID:DVv3+eZ6O



王馬「ーーーじゃあ、確認させて貰うけどさ……」



遊勝「……」



王馬「おじさんの、あのデュエルーーー」







王馬「ーーーあれ、わざとだよね?」


91 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:46:41.58 ID:DVv3+eZ6O



遊勝「? どういう意味かね?」

王馬「いや、おじさんのデュエル幾らか見たけどさ。あれはすごいよ」

王馬「相手の思考を読むだけじゃなくて、読んだ思考を推理として相手や観客に披露する」

王馬「そうやって、デュエル相手を、晒し者に、見世物しているんだ」

遊勝「……」

王馬「あんなデュエルをされたら、やられた側は恥ずかしくて仕方が無いし、そのファンも決して良い気持ちはしないだろうね」

王馬「……あーあ、せめて、おじさんがヒール役だったらなー」

王馬「それなら、やられた側やそのファンだって、デュエルや応援を通じて、自分たちの抱える不満をおじさんにぶつけて発散出来るのに」

王馬「その行為を、他の大勢の観客から応援されて、たくさんの観客を味方につけたデュエルが出来るのに」

王馬「そんな歓声の中で、打倒おじさんを掲げることが出来るのに」


92 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:48:59.72 ID:DVv3+eZ6O



王馬「だけど、おじさんは、自分が絶対の善人であるという姿勢を崩さない」

王馬「それじゃあ、不満を抱えても、おじさんにぶつけて発散出来ない」

王馬「絶対の善人であるおじさんに、不満をぶつけてしまったら、自分が悪人であるかのように映ってしまうんだからさー」

王馬「それじゃあ、おじさんとデュエルする人やそのファンは、他の観客を味方につけることが出来ないし、打倒おじさんを掲げることも出来ない」

王馬「それで負けた後は、おじさんの言葉通りに、笑顔にさせられる」

遊勝「……」

王馬「つまらなくて、笑えない」

王馬「それが、オレから見た、おじさんのデュエルだよ」


93 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:52:37.35 ID:DVv3+eZ6O



遊勝「ーーーキミは、私のデュエルで笑顔にならなかったようだね」

遊勝「笑顔にならない者がいる以上、私もまだまだ未熟だったようだ。これからも精進しなくてはーーー」

王馬「嘘つくなよ」

遊勝「……」

王馬「オレ……他人の嘘が嫌いなんだよね」

遊勝「……私の言っていることが、嘘だと?」

王馬「オレって嘘つきだからさ……わかっちゃうんだよね、他人のつく嘘が」

遊勝「ほう……?」

王馬「……おじさんがあんなデュエルをしているのは、未熟だからなんかじゃない」

王馬「さっきオレが言ったように、わざとあんなデュエルをしているんだ」


94 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:54:04.19 ID:DVv3+eZ6O



王馬「そう、榊遊勝、あんたはーーー」






遊勝「……」






王馬「ーーーこうやって今みたいに、自分に反感を向けさせたいがために、わざとあんなデュエルをしているんだ」


95 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/02(木) 23:54:39.97 ID:DVv3+eZ6O
今日はここまで。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/03(金) 00:12:24.11 ID:qvGcPwTMo
!?
97 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:27:45.21 ID:jIICUgapO
投下します。
98 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:29:39.66 ID:jIICUgapO



遊勝「……言っていることの意味がわからないな」

王馬「……」

遊勝「なぜ、そんなことをする必要がある?」

遊勝「そんなことをしたところで、こうやって今みたいにキミのような人物に嫌われるだけだ」

遊勝「そんなことをするメリットがあるとも思えないがーーー」

王馬「あるよ、メリット」



遊勝「……」



王馬「……そう、『人類を革新させる』というーーー」



王馬「ーーーとびきりのメリットがね」


99 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:30:53.32 ID:jIICUgapO












遊勝「……はっ、?」











100 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:31:54.74 ID:jIICUgapO



遊勝「ーーー何だって?」

王馬「……」

遊勝「人類の、革新?」

王馬「……」

遊勝「王馬くん、キミは突然何を言い出すんだ?」


101 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:35:01.28 ID:jIICUgapO



王馬「……おじさんだって、本当はムカついてるんじゃないの?」

遊勝「……」

王馬「おじさんの、あんなデュエルを見て、笑顔になっている奴らがムカつく」

王馬「あんな風に、人を晒し者にして見世物にして恥をかかせるデュエルを見て、笑顔になっている観客がムカつく」

王馬「そうやって、恥をかかされた側……負けた側やそのファンの気持ちを無視して、勝ったあんたを讃える観客がムカつく」

王馬「おじさんの『笑顔になって欲しい』という言葉に屈して、負けた側やそのファンが自分の気持ちに嘘をついて、笑顔になることがムカつく」

王馬「デュエルする相手も、そのファンも、その他の観客やファンも、みんなムカつく」

王馬「そんな人類を革新させないといけないと思っている」

王馬「そうだよね? 榊遊勝」


102 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:37:28.37 ID:jIICUgapO



遊勝「……仮に、キミの言う通り、私が怒っていたとしよう」

遊勝「しかし、怒っているというだけで、人類を革新しようなどと大それたことを考えるものかね?」

王馬「……まー、確かに、怒っているだけじゃ、人類を革新しようだなんて考えないだろうね!」

王馬「どんなロマンチストでも、人類を革新するだなんてこと、未来を憂いでもしないと考えたりはしないよー!」

遊勝「……私が未来を憂いているとでも言うのかね?」

王馬「実際、そうでしょ?」

遊勝「……」


103 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:40:02.35 ID:jIICUgapO



王馬「少なくとも、オレは、このデュエル社会の未来がとってもこわいよー」

王馬「このデュエル社会では、おじさんのあんなデュエルで負けた側とそのファンを笑顔に出来る」

王馬「そんな社会がこわくてたまらないね!」

遊勝「……」

王馬「……あんな洗脳染みた現象が成立するのは、おじさんが強いデュエリストだからだ」

王馬「強いデュエリストは相応の発言力を持つ」

王馬「その発言力を持った状態で、おじさんは『笑顔になって欲しい』とか、人間的感情から見て正しいことを言っている」

王馬「故に、おじさんはそれを体現する絶対の善人となり、その言葉に逆らえない空気が生まれ、不満を抑え込んで……自分の気持ちに嘘をついて、笑顔にならざるを得ない」

王馬「デュエル社会……デュエルの強さが人の魅力とされる社会だからこそ、無理やり人を笑顔に出来てしまうんだよ」

遊勝「……」


104 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:42:27.50 ID:jIICUgapO



王馬「そんな中、もし、おじさんよりも遥かに強いデュエリストが現れたらどうなるだろうね?」

遊勝「!」

王馬「おじさんよりも遥かに強いデュエリストということは、それこそ神さまレベルの発言力を持つということになる」

王馬「それで、そいつが『楽しいデュエルをしよう』とか人間的感情から見て正しいことを言えば、そいつはそれを体現する正義の使徒になる」

王馬「そうなれば、そいつの言うことやることを誰も否定出来なくなる。そいつが、おじさんが今やってるようなデュエルをしたとしても、おじさんよりもずっと上手く不満を抑えつけられるかもしれない」

王馬「オレみたいに、反感を向けてくる奴すら現れなくなるかもしれない」

王馬「むしろ、憧れて同じようなデュエルをする奴が大量に出てくるかもしれない」

王馬「そんな感じで、誰にも否定されず肯定しかされないことで、自分が絶対正義だと錯覚し、観客ウケのためならどんな過激なパフォーマンスだって許されると考え、実行するかもしれない」

王馬「……極論、衝撃増幅装置とかで大怪我を負わせるようなデュエルをするようになるかもしれない」

王馬「そして、そのデュエルを、社会は受け入れる」

王馬「正義の使徒のやることだから問題は無いと、社会全体が受け入れてしまうんだ」


105 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:45:28.09 ID:jIICUgapO



遊勝「……そんなこと、あるわけがーーー」

王馬「ありえなくない話だと思うよ? 人は珍しい物が大好きだからね!」

王馬「事実として、おじさんのエンタメデュエル……珍しいタイプのデュエルは人々に受け入れられている」

王馬「それと同じように、衝撃増幅装置とかで大怪我を負わせるデュエルも、珍しいタイプのデュエルとして受け入れられるんじゃないかな?」

遊勝「……」

王馬「もちろん、いくら珍しくても、そんな非人道的なデュエルをすれば、嫌悪感の方が強いし、何より衝撃増幅装置は違法アイテムだ」

王馬「それらを考えれば、普通は受け入れられないだろうけどーーー」

王馬「ーーーそういうデュエルをしている奴の発言力が高く、正義の使徒として認知され、やることが全肯定される状況にあるのなら話は別だ」

王馬「そんな状況にあれば、人々の嫌悪感は麻痺して、違法アイテムを使っていることも気にならなくなるかもしれない」

王馬「ただ、珍しいタイプのデュエルをやっているという事実だけが残る」

王馬「その珍しさに人々は歓喜し、当たり前のこととして社会全体が受け入れてしまう」

王馬「ありえなくない話だと思うよ?」

遊勝「……」


106 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:47:59.99 ID:jIICUgapO



王馬「デュエルの力は本当にすごい」

王馬「デュエルが強ければ強いほど、発言力が増す」

王馬「『楽しいデュエルをしよう』とか、人間的感情から見て正しいことを言えば、それを体現する正義の使徒となり、その人物の言葉と行動に逆らえない空気が発生する」

王馬「そこで、その空気を発生させた人物がデュエルで誰かを可哀想な目にあわせても、当たり前のように受け入れられることになる」

王馬「デュエルが強く発言力が高ければ、どんな過激なパフォーマンスでも受け入れられるんだ」

王馬「例えそれが、衝撃増幅装置とかで、大怪我を負わせるデュエルであろうとも」

王馬「珍しいタイプのデュエルとして、当たり前のように受け入れられるようになる」

王馬「そうなれば、憧れて同じようなデュエルをする奴だって出てくるだろうし、それも受け入れられるかもしれない」


107 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:50:10.77 ID:jIICUgapO



王馬「……だけど、過激なパフォーマンスを誰もがやってしまえば、いずれそれが完全に当たり前の社会へと変わる」

王馬「そんな社会で生きていれば、人々はその狂気に呑まれて心の在り様だって変わる」

王馬「心の在り様が変わってしまえば、先人の築き上げた倫理や道徳とかも歪んだ形に変貌していくことになる」

王馬「変貌の仕方次第では、デュエルに負けたら処刑される殺人ショーが法律で認められるようになってしまうかもしれない」

遊勝「……」

王馬「おじさんは、そんな未来が来ることを憂いている」

王馬「だからこそ、人類の革新が必要になるんだよ」


108 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:51:57.38 ID:jIICUgapO



遊勝「……私が人類を革新させるメリット……動機についてはなんとなくわかったがーーーそれで?」

王馬「……」

遊勝「それでどうして、私のあのデュエルが、人類の革新と結びつくんだ?」

王馬「……おじさんがあんなデュエルをし続ける限り、必ずオレみたいな奴に反感を向けられることになるからだ」

王馬「反感を向けてくるそいつによって、おじさんが倒され、おじさんのデュエルは社会全体で否定されることになるからだ」

遊勝「……」

王馬「そう、おじさんがあんなデュエルをし続ける限り、おじさんのデュエルを否定しにかかる奴が絶対に現れる」

王馬「おじさんの人に恥をかかせるようなデュエルをやめさせるために、自分を鍛え上げておじさんをデュエルで打ち倒して、自分がおじさんよりも強いことを社会全体に見せつけようとするだろう」

王馬「デュエルの強い人間には発言力があるんだから」

遊勝「……」


109 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:54:37.54 ID:jIICUgapO



王馬「おじさんをデュエルで倒せば、自分の発言力は跳ね上がる」

王馬「負けたおじさんよりも、高い発言力が手に入る」

王馬「その発言力をもって、おじさんのデュエルを言葉で否定しようとするだろう」

王馬「そうなれば、人々は、より高い発言力を持った者の言葉に倣い、相手に恥をかかせるデュエル……つまりは相手を無駄に可哀想な目にあわせるデュエルが間違っていると認識するようになる」

王馬「その認識のもと、人々はおじさんのデュエルビデオなどを見て、おじさんのデュエルを反面教師にする」

王馬「相手を無駄に可哀想な目にあわせるデュエルをしないようになる」

王馬「そんなデュエルが絶対に許されることの無い、新たな社会が誕生するんだ」

遊勝「……」

王馬「そんな社会であれば、おじさんよりも遥かに強い奴が現れても、そいつは、相手を無駄に可哀想な目にあわせるデュエルを自分からやらなくなるかもしれない」

王馬「やったとしても、同じ社会に住む人々が止めてくれるようになるかもしれない」

王馬「デュエルの力によって生じる発言力に抗い、間違ったデュエルを否定してくれるかもしれない」

王馬「おじさんは、そうした人類の革新をしようとしている」

王馬「そのために、あんなデュエルをして自分に反感を向けさせて、倒されようとしている」

王馬「そうでしょ? おじさん?」


110 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:56:26.43 ID:jIICUgapO



遊勝「……キミの言うことには、疑問が3つある」

王馬「あっ、やっぱり?」

遊勝「……疑問だらけだ」

遊勝「まず一つ目の疑問だがーーーなぜ、そんな回りくどいことをする必要がある?」

遊勝「人類の革新とやらをさせたいなら、嫌われるようなデュエルをする必要は無い」

遊勝「普通に、理想的なデュエルを行い、それを手本として世界中の人々に示せば良い」

王馬「……」

遊勝「デュエルの強い人間には、発言力があるのだろう?」

遊勝「ならば、発言力がある状態で、理想的なデュエルを行い、その通りのデュエルを皆もやるように言えば良い」

遊勝「そうすれば、世界中の人々は、その理想的なデュエルに倣うはずだ」

遊勝「自らもそのデュエルと同じようなデュエルを行い、人に恥をかかせる……無駄に可哀想な目にあわせるデュエルとやらをしなくなるはずだ」

遊勝「理想的なデュエルならば大多数に受け入れられるだろうし、不満もそんなにはあるまい」

遊勝「そうやって理想的なデュエルの手本を示すやり方でも、充分に人類を革新出来るのではないかね?」


111 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 20:58:09.28 ID:jIICUgapO



王馬「……それじゃあ、ダメなんだよ」

王馬「それじゃあ、誰もが、おじさんの猿真似をするばかりになる」

王馬「人々のデュエルに、独自性が失われていってしまう」

遊勝「……」

王馬「おじさんは、そんなことを望んではいない」

王馬「人それぞれ、自分に合ったデュエルを見つけ、その通りのデュエルをして欲しい」

王馬「そう思っているから、おじさんは、『どんなデュエルをすれば良いか』じゃなくて、『どんなデュエルをしてはいけないか』を示そうとしているんだ」

王馬「だからこそ、自分の人生を賭けて、長きに渡り間違ったデュエルを人々に見せつけ、その上で自分のデュエルを否定して貰う必要があるんだ」

王馬「そうやって、理想的なデュエルを明確に定義しなければ、人々のデュエルから、独自性が失われることは無いからね」


112 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 21:00:22.34 ID:jIICUgapO



遊勝「……一つ目の疑問については解消された。答えてくれてありがとう、王馬くん」

王馬「どういたしまして! 嘘の答えだけど!」

遊勝「……ならば、二つ目の疑問についても答えて貰いたい」

王馬「うん、いいよ! これも嘘だけど!」

遊勝「ーーー仮に私が人類の革新とやらを目的にしているというのなら、なぜ早く名声を得ようとしない?」

王馬「……」

遊勝「キミの言う人類の革新をするためには、私は世界的に有名……プロデュエリストになる必要があるはずだ」

遊勝「世界的に有名な舞台で否定されなければ、世界中の人々の記憶に残らないだろうからね。それでは、人類単位での革新が出来ない」

遊勝「そして、私がものすごく強いというのなら、プロデュエリストになれない理由は無い」

遊勝「なのに、なぜプロデュエリストになっていないのかな?」


113 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 21:01:56.15 ID:jIICUgapO



王馬「あー、それは、おじさんが後ろ暗い立場の人間だからだよー」

遊勝「……どういう意味かね?」

王馬「おじさん、まともな戸籍持って無いでしょ?」

遊勝「!」

王馬「おじさんの実力なら簡単にプロ試験に合格にしてプロになれるはずだ」

王馬「なのに、おじさんはプロになっていない」

王馬「それは、おじさんがまともな戸籍を持っていないからだよ」

遊勝「……」


114 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 21:04:26.39 ID:jIICUgapO



王馬「それがどうしてかは知らないよ」

王馬「犯罪者のデュエリストが整形手術をして別人になりすましているのか、あるいはマッドな科学者によって製造されたデュエルロボだからなのか、あるいはデュエルモンスターズのカードに宿る精霊だったりするのか、あるいはもっと変わった事情を持つ何かだからなのかは、知らない」

王馬「……まあ、どんな事情にせよ、まともな戸籍を持っていない今の段階で有名になると、いろいろ身辺調査をされて、面倒なことになるかもしれない」

王馬「だから、やらない。違う?」

遊勝「……」

王馬「もっとも、これは今の段階の話だろうけどね」

王馬「Dr.フェイカー……だよね?」

王馬「おじさんの知り合いの、あの資産家の力で、どーにかこーにか、面倒なことにならない程度の戸籍を手に入れようとしているんでしょ?」

王馬「そうしてから、プロデュエリストになって、人類の革新をするつもりなんだよね?」


115 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 21:08:35.23 ID:jIICUgapO



遊勝「……三つ目の疑問に移るが、人類の革新とやらがしたいのならば、私が名声を得てすぐにでも、公の場で衝撃増幅装置を使用し、デュエル相手に大怪我を負わせれば済む話だと思うがね?」

王馬「……」

遊勝「キミの話によれば、私に敗北したデュエリストとそのファンは、私の発言力に屈し自分の気持ちに嘘をついて不満を抑え、無理やり笑顔になっているようじゃないか?」

遊勝「そんな笑顔は仮面と同じだ。何かのはずみで不満が爆発すれば、笑顔は消え失せる」

遊勝「故に、私が違法アイテムである衝撃増幅装置を用いて相手のデュエリストに大怪我を負わせれば、そのデュエリストとそのファンの不満は爆発し、笑顔は消え失せることになる」

遊勝「無論、私がもっと強ければその発言力を盾に、より上手く不満を抑え込ませ、衝撃増幅装置の使用を正当化出来るかもしれない」

遊勝「だが、私程度の強さと発言力ではそこまでのことは出来まい。問題なく不満は爆発し、笑顔は消え失せることになるだろう」

遊勝「他の大勢の者たちも、衝撃増幅装置を用いた私のデュエルに強い嫌悪感を抱き、受け入れることはあるまい」

遊勝「そうなれば、世界中の人々は、私を否定するようになり、私やそのデュエルを……無駄に可哀想な目にあわせるデュエルとやらを反面教師にしてくれるはずだ」

遊勝「だが、キミの話によれば、デュエルで私を倒しに来る者を待つことになる」

遊勝「なぜ、そんなことをする必要がーーー」

王馬「あんたが理解者を欲しているからだよ」

遊勝「!」


116 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 21:10:39.47 ID:jIICUgapO



王馬「……デュエルは、相手を理解しようとするコミュニケーションでもある」

王馬「つまり、デュエルする相手に対し、憧れみたいな感情に呑まれて盲目的になってしまえば、それはもう『デュエル』とは呼ばない」

遊勝「……!」

王馬「だからこそ、あんたは、本当の『デュエル』を……理解されることを望んでいる」

王馬「そうした目的もあって、あんたに憧れとは程遠い気持ち……反感を持ち、『デュエル』で倒しにくる者を待っている」

王馬「いや、ひょっとしたら、それが本当の目的で、人類の革新とかは後付けの目的でしか無かったりして!」

遊勝「……」

王馬「そこのところ、どうなの? 寂しがり屋のエンタメおじさん?」


117 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 21:11:37.71 ID:jIICUgapO












遊勝「…………」











118 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 21:12:53.14 ID:jIICUgapO



王馬「……おじさんの疑問には3つとも答えてあげたけど、おじさんとしては、どう思う?」

遊勝「……」

王馬「おじさんが人類の革新を大義に、わざとあんなデュエルをして、自分に反感を向けさせようとしているという話」

王馬「そのオレにとっての嘘っぱちは、おじさんにとって真実ってことで良いのかな?」

遊勝「……」

王馬「……ねえ、答えてよ?」



王馬「お・じ・さ・ん?」


119 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 21:13:23.92 ID:jIICUgapO
今はここまで。
120 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:28:32.86 ID:jIICUgapO
投下します。
121 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:29:56.88 ID:jIICUgapO



遊勝「ーーー嘘か、真実か、それを決めるのは、キミだ。私ではないよ」

王馬「……」

遊勝「それに、キミのその豊かな想像が、私にとって嘘か真実であるかなど、キミならば私の反応だけでわかるだろう?」

王馬「えー? 普通にわかんないけど? だってオレ、エスパーじゃないしー?」

遊勝「故に、キミはもう、確認を終えた。これ以上、私に確認したいことも無いだろう」

王馬「そ、そんな……! 子供の言葉を無視するだなんて……あんまりだあああああ!!」ウワアアーンッ

遊勝「そして、今度は私から確認させて貰いたい」

遊勝「キミは私をどうするつもりなのかな?」

王馬「……」


122 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:31:54.94 ID:jIICUgapO



遊勝「おそらく、キミは、先ほど述べた豊かな想像が真実であると仮定していると思う」

遊勝「そして、キミは、ひょっとしたら私のことが、とても気に入らないんじゃないかな?」

王馬「……」

遊勝「ならば、どうするというのだね?」

遊勝「悪の総統らしく、私を始末するのかな?」

遊勝「だが、こうしてキミと接触した後に、私に何かあれば、キミが疑われることになる」

遊勝「キミも気づいているとは思うが、さっきまでの会話は通信でDr.フェイカーの方まで流しているからね」

王馬「……」

遊勝「故に、Dr.フェイカーは、私とキミが接触したことを知っている。その後に、私に何かあれば、当然のごとくキミが疑われることになる」

遊勝「そう、Dr.フェイカー、戸籍の偽造さえも可能と目されるほどの資産家に、疑われることになるんだ」

遊勝「王馬くん、それでも、私を始末するつもりーーー」

王馬「バッカじゃないの、あんた?」

遊勝「……」


123 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:37:23.79 ID:jIICUgapO



王馬「……そもそも、あんたを始末するつもりなら、こんな風に接触したりはしないからねー?」

遊勝「……ほう?」

王馬「悪・即・斬! 目で見て気に入らないものは、速攻で排除!」

王馬「悪の総統らしく、裏からサクッとやっちゃえばOKってわけだ!」

王馬「それをしない時点で、あんたを始末するつもりなんて無いに決まってるじゃん! 嘘だけど!」

王馬「なのに、そんな風に身構えるなんて、おじさんも案外抜けてるんだねー!」

遊勝「……ならば、どうする?」

遊勝「私を始末しないというのならば、何をーーー」

王馬「おい、デュエルしろよ」

遊勝「!」

王馬「……デュエリストには、デュエルで引導を渡す」

王馬「それがオレの美学なんだ! 嘘だけど!」


124 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:39:13.65 ID:jIICUgapO



遊勝「……なるほど、キミは今すぐに『デュエル』して、私が再起不能になるまで、精神的に徹底的に打ちのめすつもりなんだね?」

王馬「……まあ、確かにデュエルは挑むけどさーーー」

王馬「ーーーだけど、それはまだ先の話だよ。今の段階で、そんなことするわけないじゃん」

遊勝「? 王馬くん、もしかして、キミは、今ここに自分のデッキを持って来ていないのかな?」

王馬「……それも理由の一つではあるけどさ」

王馬「そもそも、オレ、本業デュエリストじゃないし、まだ高校生にもなっていない子供なんだよ?」

王馬「それに対して、あんたはプロデュエリスト養成学校であるクローバー校の教師。しかも、デュエルの強さによる発言力で、負けた側の不満を抑えつけて笑顔に出来るくらいには、デュエルが強いおっさんだ」

王馬「そんな相手に、今の段階で、デュエルを挑むとか本気で思っているの?」


125 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:41:05.66 ID:jIICUgapO



遊勝「……キミも案外臆病なようだ。クローバー校の生徒たちは何度負けようと、私に勝つために何度もデュエルを挑み続けているというのに」

王馬「いや、オレは、当たり前の選択をしているだけだよ?」

王馬「おじさんの生徒たちはどうなのか知らないけど、オレはデュエリストであると同時に、悪の組織の総統でもあるんだよ?」

王馬「部下の気持ちを背負っている、責任ある立場なんだよ?」

王馬「……その責任ある立場の人間が、何の準備もせず、強大な相手に立ち向かうわけないじゃん」

王馬「それで敗北……いわゆる大失敗をしたら、オレは、オレに気持ちをくれた部下を侮辱することになるんだからさー」

遊勝「……」

王馬「……あんたのような存在に負けたとなれば、尚更だ」

王馬「その事実を隠し通すにしても、全ての部下に隠し通せるわけじゃない」

王馬「オレと共にデュエルを行う方の部下……オレのデッキのカードたちには、どうやったって隠し通せっこないんだから」

王馬「その上で、おじさんに今すぐ立ち向かう?」

王馬「無責任にも程があるだろ、そんなの」


126 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:43:11.49 ID:jIICUgapO












遊勝(……理屈はわかるがーーーそれでも、キミのその考え方は、いささか潔癖過ぎると私は思うがね)











127 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:46:54.00 ID:jIICUgapO



王馬「……2年だ」

遊勝「!」

王馬「あと2年でオレは、もっともっと強くなる」

王馬「その時に、おじさんにデュエルを挑むとするよ。嘘だけど!」

遊勝「……なるほど、2年か」

遊勝「王馬くん、もしかしてキミは、私が2年かけて充分な戸籍を用意し、プロデュエリストとなる準備を終えると思っているのかな?」

遊勝「そうしてプロとして有名になれた私に『デュエル』を挑み、公共の電波で世界放映される中、私のデュエルを否定しこき下ろし、間違ったデュエルとして世界に晒すつもりなのかな?」

王馬「……あははー! 何言ってんの、おじさん! そんなつまらなくて笑えないことするわけないじゃん!」

遊勝「……」

王馬「……2年後、おじさんがプロになっているかは知らないけど、オレはおじさんとつまらなくなくて笑えるデュエルをする」

王馬「そう、誰もが笑えるデュエルをする」

王馬「観客も、オレも、あんたでさえもだ」

王馬「そんなデュエルをされたが最後、おじさんは感動のあまり、もうあんなつまらなくて笑えないデュエルは出来なくなるだろうねー! 嘘だけど!」


128 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:48:51.99 ID:jIICUgapO



遊勝「……良いのかい? それでは世界中の人たちに対し、私やそのデュエルが間違ったものであると示すことが出来ない」

遊勝「人類の革新とやらが、実現出来なくなってしまうよ?」

王馬「そもそも、そんなことやっちゃダメなんだよ」



遊勝「……」



王馬「……あんたやそのデュエルが間違ったものであると世界中の人たちに向けて証明する」

王馬「それは、世界中の人たちに対し、無理やり試練を押し付けるも同然だ」


129 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:50:27.57 ID:jIICUgapO



遊勝「試練、か」

王馬「そう、試練」

王馬「あんたのやろうとしていることは、今まで自分たちに笑顔をもたらしてきたあんたやそのデュエルを、間違ったものであると認めることが出来るかどうかを試す試練でもあるんだ」

遊勝「……」

王馬「だけど、どんな試練も、無理やり押し付けられるべきものじゃない。自分から望んで取り組むべきものなんだよ」

王馬「どんな試練も、無理やり押し付けられたら、それについていけない奴が壊れることになる」

王馬「……例えば、あんたを心の底から信じているピュアな人たちがいたとして、そいつらがあんたやそのデュエルを間違ったものと認められると思う?」

遊勝「……」

王馬「認められるわけが無い」

王馬「あんたやそのデュエルが間違ったものであると世界中の人たちに示したりすれば、あんたを心の底から信じているピュアな人たちが壊れるだけだ」

王馬「そんな、つまらなくて笑えない真似、出来るわけないでしょ?」

遊勝「……」


130 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:52:26.45 ID:jIICUgapO



王馬「それに、おじさんの望み通り、人類を革新出来るとは限らないしーーー革新出来たとしても、長くは保たない」

王馬「時間が経てば経つほど、人はおじさんやそのデュエルについて、忘れるだろうしーーー」

王馬「ーーーそれで、革新出来た世代の人間がいなくなった時、つまりは百年後には完全に元通りだ」

王馬「もし、百年後も革新を維持出来たとしても、それは実体験の伴わない盲目的なものに変貌してるだろうねー」

王馬「そんな革新、いつ崩れ去っても、おかしくない」

遊勝「……」

王馬「しかも、おじさんの革新は、あくまでデュエルスタイルが間違った方向にいかないようにするものだ」

王馬「それ以外でのデュエルの悪用を防ぐことは出来ない」

王馬「例えば、おじさんよりも遥かに強いデュエリストが、デュエルの力による発言力で支持率を集めて政治家になって、無茶苦茶な法律を押し通すだとかそういう問題には対処出来ない」

遊勝「……」

王馬「おじさんのやることは、根本的な解決にはならないんだ。いや、おじさんはそれしか出来ないから、そうするしか無いんだろうけどさ」

王馬「そんな、つまらなくて笑えないことに、協力する気は無いよ」

王馬「……そんなことをするくらいなら、つまらなくないことを考えて、笑えることをした方がよっぽど楽しい」

王馬「少なくとも、オレは、そう思うよ! 嘘だけど!」


131 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:57:02.67 ID:jIICUgapO



遊勝「……なるほどね」

遊勝「まあ、人類の革新についてはさておき……王馬くん、キミとの『デュエル』は中々に楽しめそうだ」

王馬「えっ、オレ? デュエルするのは千年マフラーに宿った闇王馬だけど?」

遊勝「……騙されたと思って2年、キミを待ってみるのも悪くは無いかもしれないね」

王馬「……うんうん! それこそ、騙されることの醍醐味って奴だよー! おじさん、わかってるー!」

遊勝「ははっ、私もそう思うよ」

遊勝「2年後にまた会おう、王馬くん」

王馬「えーっ、ムリだよ! だって、全部、嘘だから!」

遊勝「……」ニコッ






〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜

〜〜


132 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 22:59:36.54 ID:jIICUgapO



ー現代・2年後のエクシーズ次元の家屋ー



遊勝(……3ヶ月だ)


遊勝(あと3ヶ月で、キミと約束した、2年目に到達するよ、王馬くん)


遊勝(私は、 “ キミには ” 逃げも隠れもしない)


遊勝(キミは、私と『デュエル』するに足る、掛け替えの無い存在なのだから)


遊勝(……あれほどまでに悪意ある想像を私にぶつけてくれたのは、キミがはじめてなんだ、王馬くん)


遊勝(もはや私の記憶でしか証明する術は無いがーーー私が前に住んでいた世界に、キミほどの人間はいなかった)


遊勝(……『デュエル』とは、心理戦だ)


遊勝(相手の思考や行動を先読み……すなわち相手を理解しようとする力が必要になる)


遊勝(それに必要なものが、想像力であり、悪意でもあるのだ)


遊勝(王馬くん、私は、キミとの『デュエル』が楽しみで仕方が無い)


遊勝(準備が出来次第いつでも来ると良い)


遊勝(私はいつだって受けて立とう)


133 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 23:02:28.78 ID:jIICUgapO



遊勝(しかし、試練は自ら望んで取り組むもの、か……)


遊勝(……実に、その通りだと思うよ、王馬くん)




遊勝(ただ、私が定義する『自ら望んで取り組む』とは、自分の責任で行うことを意味するのだがね)


遊勝(故に、その結果、自分が破滅しようと、その時の自分がそれまでの人間だったというだけの話なのだよ、王馬くん)




遊勝(……自分の責任で何かを行えば、それは自分のせいになる)


遊勝(自分の責任で行ったことの結果は、自分で受け止めなくてはならないからだ)


遊勝(つまり、自分の意思(責任)で誰かを信頼すれば、その誰かが間違いを犯したとしても、その結果を自分で受け止めなくてはならない)


遊勝(それこそが、『自ら望んで取り組む』ということの意味なのだ)


遊勝(ならば、その結果、自分が破滅しようと、その時の自分がそれまでの人間だったというだけの話なのだよ)


134 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 23:05:01.52 ID:jIICUgapO



遊勝(……例えば、王馬くんが間違いを犯し、その結果、私が『デュエル』で笑顔になることが出来なくなったというのなら構わない)


遊勝(もちろん、笑顔になることが出来なければ私は悲しいし、壊れてしまいそうな気持ちにもなるだろう)


遊勝(だが、構いはしない)


遊勝(何故ならその悲劇は、間違いを犯す人間を信頼し、間違いを犯さないよう正してあげることすら出来なかったことが原因だからだ。つまりは、当時の自分の責任でもあるのだ)


遊勝(そう、相手の本質を理解しきれず正してあげること叶わず、ただ信頼してしまった、当時の自分の責任なのだ)


遊勝(いや、むしろ自分の責任であるが故に、それだけ強く、己の中に歴史として刻み込み、教訓とすることも出来る)


遊勝(人はその教訓を胸に、これからは間違えないよう、理解力を高めようとする)


遊勝(その理解力をもって、これから自分が信じるべき人間を考え抜き、その人間たちを支え、真実(まこと)の信頼関係を築いて、笑顔になる道を目指すことも出来る)


遊勝(……振り子と同じだ。大きく振れば、それだけ大きく戻る)


遊勝(つまり、自分の意思(責任)で誰かを信頼すれば、結果的に裏切られても、それを教訓に理解力を高め、新たな信頼関係と笑顔を築きあげることも出来るということだ)


遊勝(それだけの、リターンを手に出来るかもしれない)


遊勝(故に、もし、王馬くんが間違いを犯し、その結果、私が『デュエル』で笑顔になることが出来なくなったというのなら、まったく構わない)


135 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 23:08:17.51 ID:jIICUgapO



遊勝(……だからこそ、零王。キミによる一方的な侵略戦争の結果、『デュエル』で笑顔になることが出来なくなるなど、あってはならなかった)


遊勝(その戦争で、『デュエル』で笑顔になることが出来なくなるのが、私だけならば構わない)


遊勝(その悲劇は、キミが戦争を引き起こすような人間であると長いこと理解しきれず、親友としてキミを正すことも出来なかった私自身の責任だからだ。戦争を止められなかった当時の自分がそれまでの人間だったということなのだ)


遊勝(……だが、王馬くんには、エクシーズ次元で産まれた人たちには、何の責任も無い)


遊勝(王馬くんを含むエクシーズ次元で産まれた全ての人たちは、零王、キミとは何の関係も無い人間だからだ)


遊勝(なのに、零王、キミによる一方的な侵略戦争によって、王馬くんが……エクシーズ次元で産まれた全ての人たちが、『デュエル』で笑顔になる未来を奪われるかもしれないだと……!)


遊勝(……ふざけているにも程がある)


遊勝(その悲劇は、エクシーズ次元の人間の責任などでは断じて無い)


遊勝(エクシーズ次元の人間は、零王、キミをまったく知らないのだ。知らない人間を理解しようとすることなど出来るはずが無い。理解しようの無い相手を理解出来かったとして、誰がそれを責められよう)


遊勝(エクシーズ次元の人間に、責任があるはずが無いのだ)


遊勝(自分の責任でも無いことを己が歴史に刻んだとして、どうやって己が教訓とすれば良い?)


遊勝(そう、自分に責任が無いことでは、人はその分だけ教訓を……リターンを得ることが出来ない。自分では無い、誰かのせいにすることしか出来ないからだ)


遊勝(そうした理由もあって、零王。キミによる一方的な侵略戦争の結果、『デュエル』による笑顔が奪われてしまうことなど、あってはならなかった)


136 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 23:10:50.37 ID:jIICUgapO



遊勝(だから、私は、あの日、一刻も早くキミを止めようとした)


遊勝(戦争はいつ起きるかわからない。一刻も早く止めなくてはならなかった)


遊勝(それ故に、ストロング石島とのチャンピオン決定戦の日、未完成の次元転送装置を半ば強引に使用し、融合次元まで向かうことを決意した)


遊勝(失敗すれば、次元の藻屑となるかもしれないと理解しながら)


遊勝(成功しても、融合次元の敵として処刑されるかもしれないと理解しながら)


遊勝(生命が助かったとしても、二度と元いた世界に戻れず、家族・後輩・生徒・ファン……私が大切に想う全ての人たちの信頼を裏切り、繋がりを失うことになるかもしれないと理解しながら)


遊勝(そんな恐怖と絶望に直面し、壊れそうになりながら)


遊勝(それでも尚、一刻も早くキミを止めるために、未完成の装置を半ば強引に使用したのだ)


137 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 23:14:49.22 ID:jIICUgapO



遊勝(……泣きたい時は笑え。縮こまってちゃ、何も変わらない。成し遂げたいことがあるなら、勇気をもってまっすぐ前に出ろ)


遊勝(そう、どんなに可能性の小さなことであっても、恐怖を乗り越え勇気をもって実行すれば、一刻も早く戦争を止められるかもしれなかった)


遊勝(そうして、戦争を回避して、平和を守れたかもしれなかったのだ)


遊勝(故に、私は、自分の気持ち……恐怖と絶望に嘘をついた)


遊勝(……上手く行かなくても構わないと、すべては自分の責任なのだから構わないと、正論をもって自分の気持ちに嘘をついたのだ)


遊勝(そうすることで、その嘘の正論はやがて真実に変わり、心の底から構わないと思えるようになった)


遊勝(私は若い時からずっと、そうやって目の前の恐怖と絶望を乗り越えて来た。ならば、同じように乗り越えられない理由は無い)


遊勝(そうして、恐怖と絶望を乗り越えた後は、真実(まこと)の勇気と希望を手にして、まっすぐ前に出た)


遊勝(自分の気持ち……恐怖と絶望に嘘をついて、真実(まこと)の勇気と希望を手にしたこそ、あの日、一刻も早くキミを止めようとすることが出来たのだ)


138 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 23:17:28.03 ID:jIICUgapO



遊勝(……もっとも、結果的に融合次元に行くことが叶わず、家族たちの信頼を裏切り、失うことになったのだがーーー構わない)


遊勝(己が天運を過信し、焦って早まったことをしてしまった、当時の自分の責任でもあるのだから)


遊勝(ならば、これからは、それを教訓にして生きるだけのこと)


遊勝(私の天運……身の程は理解した。もはや焦っても意味は無いだろう)


遊勝(ここで得た新しい生徒たちに、デュエルと笑顔の素晴らしさを教え続けるとするよ、零王)


139 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 23:19:07.51 ID:jIICUgapO



遊勝(……零王、私はキミが踏みとどまってくれることを心から願う)


遊勝(キミも私と同じ、心を持つ人間のはずだ。ならばわかるはずだ)


遊勝(キミによる一方的な侵略戦争の結果、『デュエル』による笑顔が奪われてしまう)


遊勝(王馬くんの、エクシーズ次元の人たちの、『デュエル』による笑顔が奪われてしまう)


遊勝(自分の責任でも無いのに、奪われてしまう)


遊勝(それがどれだけ理不尽なことか、わかるはずなんだ)


遊勝(だから、頼む、零王。戦争なんてしてくれるな)


遊勝(踏みとどまるべきだ)


遊勝(……心を持つ、同じ人間として、どうかこの気持ちを裏切らないでくれ、零王……!)



ガチャッ…



夢野「……おはようじゃな、榊遊勝」


140 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 23:20:38.23 ID:jIICUgapO



遊勝「ーーーああ、夢野さんか。おはよう」ニコッ

デニス「good morning ! 先生、ボクもいることを忘れないでくださいよ?」

遊勝「もちろんだ。おはよう、デニス」

夢野「榊遊勝、デニスから連絡を受けているとは思うが、今日からウチはーーー」

遊勝「わかっているよ。キミは私と『デュエル』がしたいのだろう?」

夢野「んあ……そうじゃな」

遊勝「構わないよ。私はキミたちが『デュエル』しようとする意思ある限り、逃げも隠れもしない」


デニス(先生と夢野さんのデュエル……ワクワクが止まらない!)


遊勝「……さあ、楽しい『デュエル』をしよう! 夢野さん!」

夢野「んあ……!」


141 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 23:22:06.18 ID:jIICUgapO












「「デュエル!!」」











142 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/03(金) 23:22:34.91 ID:jIICUgapO
今日はここまで。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/04(土) 09:57:04.15 ID:YrGmVImNo
なんか気楽に読んでたけど凄いテーマのssだな
144 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 20:59:29.85 ID:dTjXkwRbO
>>143

お読み頂きありがとうございます。励みになります。

続きを投下させて頂きます。
145 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:03:04.04 ID:dTjXkwRbO



ー2ヶ月後・未来機関第一支部ー



支部長「ーーー仕方が無い。これより近日中に、全ての超高校級は、その才能と記憶を封印し、それぞれの出身国から見た国外で、一般人として生きて貰うことにする」

職員「なっーーー」

支部長「我々の薬物技術ならば、可能だ」

支部長「キーボくん……あのロボットには、また別の方法を試みることになるだろうがな……」

職員「いや、しかしーーー」

支部長「つい最近発生した、超高校級の集団失踪事件は、知っているだろう?」

職員「……ええ、まあーーー」

支部長「私は、あれを、誘拐事件であると見ている」

職員「!」

支部長「しかし、犯人グループは未だ特定出来ていない……」

職員「……」


146 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:07:07.63 ID:dTjXkwRbO



支部長「……また、あのようなことが起きては一大事だ。故に、全ての超高校級には、犯人グループを検挙するまで、薬物投与で才能と記憶を封印し、それぞれの出身国から見た国外で、一般人として生きて貰う」

支部長「そうして、犯人グループの目から超高校級を隠すのだ。もちろん、厳重に監視はするが……」

職員「……」

支部長「超高校級の才能は、時に人の生命を奪う兵器となる」

支部長「それほどの才能の持ち主が、世界各国から合計百人以上も誘拐されたのだ。これ以上、誘拐されたらどうなる?」

支部長「そうした多くの才能が、我々を含めたありとあらゆる人々の生命を奪うことに使われたらどうなる?」

支部長「私は、それがとても恐ろしい」

職員「……」

支部長「そんなことになれば、この希望に満ちた世界が、絶望によって崩れ去ってしまうかもしれない」

支部長「それだけは絶対に避けねばならないんだ。我々は何としても、この希望に満ちた世界を、絶望の魔の手から守り通さなくてはならない」

支部長「キミも、それを理解して欲しい」

職員「……承知しました」


147 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:09:04.24 ID:dTjXkwRbO



支部長「すまないな、こんなことに巻き込んでしまって……」

職員「……いえ、支部長の言っていることは、正しい」

職員「此度の事件が誘拐事件だとすれば、犯人グループは、あれほどまでの大規模な誘拐に成功したことになる」

職員「それだけ強大な相手となれば、当然の警戒でしょう」

支部長「……」

職員「……しかし、犯人グループは、どうやってそんなことを可能にしたのでしょうか?」

職員「あれだけ大規模な犯行をすれば、必ず足がつくはずですが、まったくと言って良いほど尻尾を掴ませない」

職員「……これではまるで、犯人グループは異世界からの侵略者で、超高校級はその異世界に連れ去られたかのようではありませんか」

支部長「……私にも、わからん」

支部長「だが、犯人グループが如何なる存在であるにせよ、これ以上の誘拐は防がねばならない」

支部長「才能と記憶の封印、実行するぞ」

職員「はっ……」


148 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:11:13.27 ID:dTjXkwRbO



ー希望ヶ峰学園・女子寮ー



夢野「すまんのう、デニス。 電話ごしでしか話せなくてな……」

デニス『……しょうがないよ。超高校級の集団失踪事件が発生して未だに解決していないんだからさ』

デニス『残り少ない超高校級のキミが、警備の厳重な希望ヶ峰学園の寮で待機する。それは仕方の無い当然の話だと思うよ?』

夢野「まったく、何であんなことになったんじゃ……」

デニス『……本当、何でだろうね?』


149 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:13:11.15 ID:dTjXkwRbO



夢野「……それはそうと、デニス。今日の電話は、いつもかけてくる時と比べて、かなり早くかけてきたのう」

デニス『……うん、そうだね』

夢野「何か、ウチに急いで伝えたいことでもあるのか?」

デニス『……』

夢野「……何度も言うようじゃが、《RUMーマジカル・フォース》の返却は受け付けんぞ?」

夢野「確かに、あのカードは高額じゃったが、ウチはお主にデュエルを教わり続けていたんじゃ」

夢野「あのカードは、そのお礼じゃ」

夢野「胸を張って使えば良いのじゃ」


150 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:15:17.87 ID:dTjXkwRbO



デニス『……もちろん、そのつもりだよ』

夢野「!」

デニス『何度もそう言われておきながら返却するだなんて、却ってキミに失礼だ』

デニス『それに、あのカードは、ボクのデッキと合うし、シャドーメイカーなども出しやすくなる』

デニス『本当に、嬉しいプレゼントだったよ……』



夢野「んあ!? そ、そうか……!」


151 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:16:25.29 ID:dTjXkwRbO












夢野(嬉しい、のう……!)











152 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:18:36.45 ID:dTjXkwRbO



夢野「ーーーんあ? じゃが、そうなると、今日早く電話をかけてきたのは、違う理由ということになるのう」

デニス『……そうだね』

夢野「結局なんなんじゃ? その理由は?」

デニス『……ボクが人を探している、ということは前に一度話したよね?』

夢野「んあ……? そういえば、いつだったか、お主は『自分が持っている顔写真と同じ顔の人物を探している』と言っておったな……」

夢野「? もしや、お主ーーー」

デニス『そう、実は、会ってしまったんだよ』



夢野「!?」



デニス『……ボクが持つ顔写真と同じ顔の人物にーーー』







デニス『ーーー会ってしまったんだよ』


153 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:20:37.12 ID:dTjXkwRbO



夢野「……んあ!? それは本当か!?」

デニス『……うん、その人は、顔写真の顔と間違いなく同じ顔をしていた』

デニス『毎日のように写真を見て確認していたからね……探し人はあの人で間違いないよ』

夢野「……!」

デニス『……会えてしまった以上、ボクは、その事実を認めなくていけないーーー』



デニス『ーーーそれも、一刻も早くに、だ』



デニス『……だからこそ、会えてしまった事実を、一刻も早くキミにも伝えることで、己に強く印象付けようと思ったんだ』

デニス『そのために、ボクは、今日早くキミに電話をかけたんだ』


154 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:23:22.09 ID:dTjXkwRbO



夢野「そうか……」

デニス『……』

夢野「強く印象付けるだとか……ウチには、ようわからん理屈じゃがーーー探し人に会えて、良かったではないか」

デニス『……』

夢野「……それで、その後どうなったんじゃ?」

夢野「デュエルは、したのか?」

デニス『……』

夢野「……んあ、デニスよ。何を黙っておる?」

夢野「ウチはお主が探していたという、そやつのことを全く知らんのじゃぞ? そやつが男か女かも知らん」

夢野「何も言わんのでは、そこからどうなったのか、ようわからんでは無いか」

デニス『……』

夢野「……なんじゃ? どうした?」



夢野「会えて、嬉しくないのか?」



デニス『……いや、何でもないよ』


155 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:24:49.89 ID:dTjXkwRbO



夢野(……なんじゃ、デニス?)


夢野(元気が無いようじゃが……)


夢野(……この感じ、これではまるでーーー)


夢野(ーーー最後に会った時の、お師匠様のようなーーー)



デニス『……』



夢野「ーーーデニスよ」



デニス『……何かな?』



夢野「また、ウチとデュエルしてくれ」


156 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:25:55.72 ID:dTjXkwRbO



デニス『……えっ、?』

夢野「……」

デニス『どうしたの、急に?』

夢野「……なんでも無いわい」

夢野「なんとなく、じゃ」

デニス『……』

夢野「なんとなく、言わなくてはならない」

夢野「そう、思ったのじゃ」


157 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:27:27.07 ID:dTjXkwRbO



夢野(……そうじゃ、なんとなくーーー)



デニス『……』



夢野(ーーーこう言わんと、どこかに行ってしまう)



夢野(そんな気がしたんじゃーーーー)


158 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:28:14.70 ID:dTjXkwRbO












デニス『………………』











159 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:30:21.18 ID:dTjXkwRbO



デニス『ーーーわかったよ、夢野さん』

夢野「!」

デニス『約束だ! またボクとデュエルしよう!』

夢野「……ありがとな」

デニス『……キミからも約束してくれるかい? 夢野さん?』

夢野「……もちろんじゃ。ウチからも約束するわい」

夢野「……もし、破ってみい! ウチのマジカルコンボでギッタギタじゃぞ?」

デニス『えっ、? ひょっとして、またキミのマジカルコンボでライフで回復しまくってから、《お注射天使リリー》三体でボクにダイレクトアタックする気?』

デニス『あれは、心臓に悪かったなあ! ハハハ!』

夢野「たわけ! 《魔導師の力》を三枚がけしてトラピーズマジシャンをパワーアップさせてダイレクトアタックしたあと、《カタパルト・タートル》で打ち出したことのあるお主よりはマシじゃ!」

デニス『いや待ってよ! あの時はキミのマジカルコンボ……《サベージ・コロシアム》と《レインボー・ライフ》によるライフ回復で、キミのライフが三万ポイント近くあったんだよ? 仕方無くない?』

夢野「何を抜かすんじゃ!? そうなったのも、元はといえば、お主が魔法でトラピーズマジシャンの攻撃力を一万ポイントもアップさせたからじゃろうがーー!!」

デニス『いやいや! そうなったのも、元はといえばーーーー』






………


160 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:32:10.88 ID:dTjXkwRbO



ピッ……!






デニス「………………」





161 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:34:59.44 ID:dTjXkwRbO



デニス(……あーあ)


デニス(会いたく、なかったなあ……)


デニス(何で、いま、あの娘に……黒咲瑠璃に会っちゃったんだろうなあ、ボク……)


デニス(いま会わなければ、もっと大道芸をしていられたかもしれないのに……)


デニス(勝ち負けを気にしなくて良いデュエルを、やり続けられたかもしれないのに……)


デニス(夢野さんと、先生と、楽しくデュエルしていられたかもしれないのに……)


デニス(その上で、もっとデュエルに強くなれたかもしれないのに……)


デニス(もっと強くなれれば、夢野さん、先生……ユーリのことだって、もっと理解出来るようになれたかもしれないのに……)


デニス(そうすれば、みんなで笑いあえる……エンタメデュエルを、出来るようになれたかもしれないのに……)


デニス(戦争だって、ボクのエンタメデュエルで、起こる前に無くせたかもしれないのに……)


デニス(……そんな、魔法のように甘い、平和な世界が、あったかもしれないのにーーーー)


162 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:45:30.48 ID:dTjXkwRbO



デニス(ーーーでもそうなる前に、ボクは、あの娘に……黒咲瑠璃に会ってしまった)


デニス(黒咲瑠璃は、ボクの大道芸の、観客となってくれてしまった)


デニス(黒咲瑠璃は、ボクの記憶に残ってしまった。故に、ボクがアカデミアに帰還したが最後、その際に使用される記憶照合マシーンによって、黒咲瑠璃……セレナと同じ顔の人物と接触したことは、確実にアカデミアにバレてしまう)


デニス(それを機に、戦争が、始まってしまう)




デニス(……そう、それが全てなんだよ)




デニス(……定期的にアカデミアに帰らなければ、ボクはデュエルディスクに内蔵された次元転送装置を遠隔操作され、強制送還させられる……)


デニス(……だからと言って、デュエルディスクから離れようにも、ボクはボクのディスクから、あまり遠くまで離れることが出来ない)


デニス(遠くまで離れると、ディスクに内蔵された次元転送装置が自動で作動し、ボクとディスクをアカデミアに強制送還させてしまうからだ)


デニス(もちろん、デュエルディスクを破壊するわけにも行かない。そんなことをすれば、内蔵された次元転送装置まで連動して破壊され、その影響で周囲の空間に異常を発生させ、ボクが次元の藻屑になる可能性が高い)


デニス(……ボクは、生きている限り、アカデミアから逃れることは出来ないんだ)


デニス(ボクは生きている限り、必ずアカデミアに帰還することになり、その際に使用される記憶照合マシーンによって、黒咲瑠璃と接触したことがアカデミアにバレてしまう)


デニス(その情報を元に、アカデミアは必ず黒咲瑠璃を探し当てるだろう)


デニス(結局、エクシーズ次元との戦争が、始まってしまうことになるんだ)


163 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:48:39.53 ID:dTjXkwRbO



デニス(……アカデミアでの記憶照合を拒否することも出来ない。そんなことをすれば、裏切り者の烙印を押され、ユーリに処刑されることになる)


デニス(ユーリは、あのアカデミアの中で、ただ一人だけ、トラピーズマジシャンを受け入れてくれた……)


デニス(……そのユーリに処刑されてしまうんだ)


デニス(今のままのボクじゃ、ユーリに勝てる可能性は限りなくゼロに近い……)


デニス(……エンタメデュエルで笑顔にするなんて、夢のまた夢だ)


デニス(ほぼ間違いなく処刑されることになるだろう)


デニス(……仮に、処刑を免れたとしても、あの【剣闘獣】使いような幽閉生活か、ドクトルのモルモット生活が関の山)


デニス(そう、ボクが裏切り者に堕ちたところで、ボクは大切なものを全て失うだけで終わる)


デニス(人との繋がりを……全て失うだけで終わってしまうんだ……)


164 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:50:44.02 ID:dTjXkwRbO



デニス(……これ以上、何かを考えるのはよそう。ボクらの未来は、プロフェッサーに考えて貰えば良いんだから)


デニス(甘くて楽しい夢はこれで終わり。魔法のような、秘密のひと時はこれで終わり)


デニス(時計の針は動き、また別の夢がはじまる。そう、ここからはーーー)


デニス(ーーー悪夢(ハンティングゲーム)の時間だ……)






〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜

〜〜


165 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:52:25.16 ID:dTjXkwRbO






夢野「……あれからウチはーーーー」









デニス「ボクはーーーー」






〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜

〜〜


166 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:53:31.94 ID:dTjXkwRbO















「「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」」














167 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:54:54.14 ID:dTjXkwRbO
今はここまで。

次回からは、一気に時が飛びます。
168 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 21:55:21.79 ID:dTjXkwRbO
今はここまで。

次回からは、一気に時が飛びます。
169 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 23:13:19.47 ID:dTjXkwRbO
投下します。
170 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 23:15:51.41 ID:dTjXkwRbO



ー1年後・ペンデュラム次元・遊勝塾のデュエル場ー



バタンッ……



夢野「……久しぶりじゃのう、デニスよ」

デニス「夢野さん……」

夢野「すまんの、ペンデュラム次元まで呼び出して……」

デニス「……」

夢野「……ウチはお主と久しぶりに話がしたいと思っておる。そのために、ペンデュラム次元まで呼び出した」

夢野「……エクシーズ次元や融合次元でも話は出来るのじゃが、ウチが融合次元に行くにせよ、お主がエクシーズ次元に行くにせよ、そこで落ち着いて話が出来るとは限らんからのう」

夢野「次元戦争は、まだまだ、終わったばかりなのじゃからな……」

デニス「……」

夢野「故に、榊遊勝に頼んでここを貸して貰い、エクシーズと融合のどちらでもないペンデュラム次元まで呼び出させて貰った」

夢野「すまんの……」

デニス「……キミが謝る必要は無いと思うよ?」

デニス「キミは当たり前のことをしているだけだし、ボクはそれに応えなければならない義務がある」

デニス「……だから、キミが謝る必要なんて、ぜんぜん無いんだ」

夢野「……」


171 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 23:17:45.45 ID:dTjXkwRbO



夢野「……あー、この前の、お主と榊遊矢とのデュエル、観ておったぞ」

デニス「……」

夢野「最初が、ちと頂けんかったがーーーそれでも終わりは良かった」


夢野(ウチが渡したカード、《RUMーマジカル・フォース》も使ってくれたからの……)


夢野「……本当に、良いデュエルじゃったぞ、デニス」



デニス「……喜んでくれたのなら、何よりだよ」


172 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 23:18:45.92 ID:dTjXkwRbO






夢野「…………」






デニス「…………」





173 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 23:21:49.21 ID:dTjXkwRbO



夢野「……本題に移るが、デニスよーーー」

デニス「?」

夢野「ーーーウチとデュエルしてくれ」

デニス「!?」

夢野「ウチはペンデュラム次元で、プロデュエリストになる」

デニス「なっ、!?」

夢野「理由はもちろん、お金を稼ぐためじゃ」

夢野「エクシーズ次元の復興は、融合次元からの賠償金……つまりはお主たちの税金によって賄われておるが、それだけでは復興のスピードが遅くなる」

夢野「故に、デニス。お主はプロデュエリストになって高い収入を得て、そのほとんどをエクシーズ次元に渡そうと思っているそうじゃな? 榊遊勝はそう言っておったぞ」

デニス「……」

夢野「……ウチも、そうやって、お金を稼いで、エクシーズ次元の復興の役に立たねばならんと思った」

夢野「無論、それは、ウチのマジカルショーだけでも可能じゃが、プロデュエリストとして名を馳せた上でショーをすれば、より客は入り……興行収入は高くなる」

夢野「それに加えて、プロデュエリストとしての収入も加わる」

夢野「プロデュエリストにならん手は無い」

夢野「じゃからこそ、デニス。お主には、ウチがプロになる実力を身につけるための、そのデュエル相手になって欲しいのじゃ」


174 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 23:23:19.45 ID:dTjXkwRbO



デニス「……良いのかい、夢野さん?」

夢野「……何がじゃ?」

デニス「……確かに、キミのデュエリストとしての素質を考えれば、ボクとデュエルして強くなって、プロデュエリストを目指すことも出来るだろう」

デニス「だけど、キミはそれで良いのかい……?」

夢野「……」

デニス「……ボクらアカデミアが、何をしていたのか、キミだって知らないわけじゃないだろう?」


175 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 23:25:21.46 ID:dTjXkwRbO



夢野「……もちろん、知っておるわい」

夢野「赤馬零王に言われるがままに、フワフワしたようわからん理想郷がために、エクシーズ次元の街を破壊し、人々をカード化していたこともーーー」



デニス「……」



夢野「ーーーウチら超高校級を誘拐して、VR空間……仮想世界でコロシアイをさせたこともーーー」







夢野「ーーー全部、知っておる」


176 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 23:28:16.58 ID:dTjXkwRbO



デニス「……仮想世界での、コロシアイが何の目的で行われたかも知っているんだろう?」

夢野「……そうじゃな、あのコロシアイの目的は、エクシーズ次元を守っている未来機関を、デュエルを介さずにカード化するためじゃ」

デニス「……」

夢野「エクシーズ次元は、未来機関のデュエリストによって守られていたからのう」

夢野「……無論、ハートランドやその付近を守っていた未来機関は運悪くほぼ壊滅したそうじゃが、未来機関の全てが、ハートランドやその付近と同じように壊滅しているわけでは無かったのじゃ」

夢野「ハートランドという一つの市に救援を寄越すまでの余裕は無かったようじゃがーーーそれでも未来機関は、このエクシーズ次元の各地でアカデミアの侵略を食い止め続けていたのじゃ」



夢野「そうした未来機関のデュエリストは強かった」



夢野「いくらアカデミア兵がデュエルを挑んでも、相手が未来機関のデュエリストでは、大概のケースで返り討ちか、引き分けまで持っていかれてしまうわい」

夢野「そして、人をカード化する場合は、対象の人物にデュエルで勝利する必要があったのじゃ」

夢野「故に、返り討ちや引き分けにされたが最後、カード化は不可能」

夢野「じゃが、アカデミアのカード化システムは、条件を満たせば、デュエルを介さずにカード化することが可能じゃった」

デニス「……」

夢野「……そう、カード化の対象となる人間の心が、ある程度絶望に呑まれた状態であるという条件下ならば、デュエルを介さずにカード化することが可能となるのじゃ」


177 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 23:32:13.46 ID:dTjXkwRbO



夢野(……無論、カード化に必要な絶望の量には個人差があり、デュエルが強い者であればあるほど、多くの絶望が必要だったようじゃがな)



デニス「……」



夢野「……そして、そうした絶望に呑まれさせる手段こそが、コロシアイだったのじゃ」

夢野「そう、かつて江ノ島盾子が、希望を打ち砕いて世界中の人間を絶望させるために、超高校級の生徒にコロシアイをさせたように」

夢野「赤馬零王もまた、未来機関の希望を打ち砕いて所属するデュエリストを絶望させるために、江ノ島盾子のコロシアイを模倣し、ウチらにコロシアイをさせたのじゃ」

夢野「次元戦争が起こる前、もしくは次元戦争が始まって間も無い時のドサクサに紛れて、超高校級を誘拐して記憶を操作し、戦争中にコロシアイを行わせーーー」

夢野「ーーー殺人事件が発生してから、学級裁判が終わって裁判場を出るまでの映像を、ソリッドビジョンを利用したスクリーンで、未来機関の各支部の上空に、映し出させてのう」

夢野「……その映像が自分たち未来機関を絶望させるためのものであることは、未来機関もわかってはいたじゃろう」

夢野「じゃが、だからといって、目を逸らすことは出来なかったんじゃ。なにせ、超高校級の希望である苗木誠の残した、新しい希望ヶ峰学園の生徒が、絶望的なコロシアイをさせられていたんじゃからのう」

夢野「見れば見る程、絶望するとわかっていても、目を逸らさずにはいられない」

夢野「そうして、未来機関に絶望を与え続け、デュエルを介さずにカード化が可能になるまで、絶望させる」

夢野「なんとも、悪辣なやり口じゃわい」

デニス「………」


178 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 23:35:38.93 ID:dTjXkwRbO



夢野「……無論、赤馬零王によるコロシアイは、仮想世界でのコロシアイじゃった。故に、コロシアイの中で死んだ皆も厳密には死んでおらん。本来の肉体は仮死状態にある」

夢野「じゃが、あのコロシアイは、江ノ島盾子によるコロシアイに負けず劣らずおぞましいものだとウチは思っておる」

夢野「なぜなら、江ノ島盾子のそれとは違い、希望が勝っても良いのじゃからな」

デニス「……」

夢野「希望が勝っても、融合次元の民衆は喜ぶ」

夢野「そう、あのコロシアイは、決してエクシーズ次元だけに放映されていたのではない」

夢野「融合次元でも放映されていたのじゃ。それもエクシーズ次元とは異なり、全ての部分を、な」

夢野「もちろん、実在の人物を使ったコロシアイなど胸糞悪いだけで受け入れられんじゃろうが、架空の人物を使えば話は別じゃ」

夢野「……エクシーズ次元から誘拐され、コロシアイをさせられた超高校級は、融合次元の民衆の認識では、架空の人物に過ぎん」

夢野「赤馬零王は、ウチらの世界では現実の出来事である超高校級同士によるコロシアイを、何年も前から融合次元中に放映させていた」

夢野「現実の出来事ではない架空の物語と、融合次元の民衆に認識させた上でな」

デニス「……」

夢野「架空の物語と同じ歴史を辿った世界があれば、それは架空の世界であるかのように扱われる」

夢野「架空の世界に住む人物もまた架空の人物」

夢野「ハンティングしてコロシアイをさせようと、融合次元の民衆にとっては何の問題も無かった」

夢野「いや、むしろ、そのコロシアイは、融合次元の民衆に受け入れられてしまうというわけじゃ」

デニス「……」


179 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 23:49:29.23 ID:dTjXkwRbO



夢野(……もっとも、数年前から赤馬零王が放映していたコロシアイは、江ノ島盾子が黒幕のコロシアイだけでは無かった)


夢野(たった一回のコロシアイでは、時間と共に、コロシアイや超高校級という概念自体が忘れられてしまい、それらが架空の存在であるという風に印象付けること難しくなる)


夢野(そのため、赤馬零王は、江ノ島盾子以外が黒幕のコロシアイも放映していたのじゃ)


夢野(……赤馬零王本人から聞いた話じゃが、あやつは、以前存在していたとされる “ 一つの世界 ” で行われたコロシアイも融合次元に放映していたという話じゃった)


夢野(赤馬零王が元々住んでいたとされる “ 一つの世界 ” では、どういうわけか江ノ島盾子によるコロシアイがフィクション作品の出来事であり、それを雛形としたフィクション作品が何十作とあったようじゃからのう……)


夢野(赤馬零王の記憶にあるそれをそのまま融合次元に放映することで、いろんなコロシアイを見せ、融合次元の人々がコロシアイや超高校級が架空の存在であるということを忘れないようにしていたというわけじゃ……)


180 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/05/04(土) 23:52:51.08 ID:dTjXkwRbO



夢野「……ともかく、架空の人物にされた超高校級が、コロシアイの最後に希望か絶望を選択する」

夢野「選択するのはどちらでも良い。希望エンドでも、絶望エンドでも、どちらも物語に合った結末じゃからのう」

夢野「故に、希望を選んだところで、融合次元の民衆が喜ぶだけで終わってしまうのじゃ」

デニス「……」

夢野「……そうした事実を、エクシーズ次元に派遣されたアカデミア兵は、未来機関に教えた」

夢野「……かつて苗木誠が選択した “ 希望 ” さえも、融合次元の民衆の喜びとなってしまっている」

夢野「流石の未来機関でも、そんな事実を聞かされ、希望ヶ峰学園の誇る超高校級が “ 希望 ” を選択し続けているともなれば、そんなコロシアイが繰り返し行われてしまえばーーー」



夢野「ーーー未来機関は、着実に絶望に呑まれていく」



夢野「コロシアイをさせられた者たちが、希望でも絶望でも無い結末に持っていかない限り、その上で仮想世界を二度と再利用出来ないくらい完全に破壊しない限りーーー」



夢野「ーーー絶望に呑まれていく」



夢野「その絶望の進行具合によっては、アカデミア兵は未来機関のデュエリストを、デュエルを介さずにカード化することも可能となる」



夢野「おぞましいにも程があるわい」


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