北上「私は黒猫だ」

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1 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:05:49.75 ID:co/3lF0I0
北上「我輩は猫である」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1500349791/


北上「我々は猫である」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521225718/


以上の続きです。
ここから読み始める方への配慮は微塵も出来てないので最初から読んでいただければ嬉しいです。キラキラします。

もうすぐ終わる予定なのでもうしばらくお付き合い下さい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1557947149
2 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:08:50.82 ID:co/3lF0I0
87匹目:ティータイムキャット




提督「吹雪?北上が出かけてったすぐ後にどっか行ったぞ」

北上「ありゃ入れ違いか。何処に?」

提督「さあ」

北上「さあって…」

提督「別にサボってたわけじゃないぞ?そうだなあ、工廠とかかな」

北上「今夕張達忙しいみたいだもんね」

提督「色々と注文したからな。今までもコツコツやってたけど今回は一気にだ。お前らの装備全部フル改修するから楽しみにしとけ」

北上「そんなに改修して材料足りるの?」

提督「最近戦力強化のためか上からの報酬が良くてな。惜しみなく注ぎ込んでるのさ」

北上「へぇ。それはそれは」

それは、違うな。

元々少なかったのは吹雪が中抜きしてたからだ。

そして今増えたと言うならそれも恐らく吹雪だ。

今になって随分と協力的になったじゃないさ、吹雪。
3 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:09:30.34 ID:co/3lF0I0
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響「吹雪?」

北上「うん。何処にいるかなって」

電「司令官の所にはいなかったのですか?」

北上「どっか行ったってさ」

響「相変わらずだね司令官も」

電「んー少なくともお昼以降ここら辺を通ってはいないと思うのです」

北上「暁達は?」

電「遠征なのです。確か民間船の護衛って言ってたのです」

北上「護衛…あーそうか」

レ級の件以来船の護衛が強化されたんだっけ。

響「暇だし私達も探そうか?」

北上「んにゃいいよ。急ぎじゃないしね」

誰かに聞かれる訳にもいかないしね。
4 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:10:35.19 ID:co/3lF0I0
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北上「何してんの?」

浦風「見張りじゃ」

北上「工廠の?」

黒潮「ま〜たなんか遊んどったみたいでなぁ。吹雪に言われたんや」

浦風「たまたま近くを通っただけなんじゃけどねぇ。ま、暇じゃったけん丁度よかね」

北上「外で見張ってても意味あるのかね」

黒潮「まあ音がしとるうちは大丈夫やろ」

浦風「そこまで偽装してサボるほど不真面目なわけじゃあないと思うよ」

そうかな、そうかなあ?

北上「吹雪はその後どこいったか分かる?」

浦風「んー場所までは言っとらんかったなあ」

黒潮「資料がどうこうとは言うとったよ」

北上「ふーん、ありがと。で、二人は何やってるの?」

工廠の入口前に腰掛け真剣にスマホを覗き込む二人に問うてみる。

黒浦「「麻雀」」

北上「…な〜る」

駆逐艦はどうにも賭け事が好きだなあ。
5 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:11:17.73 ID:co/3lF0I0
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資料かぁ。別の建物だろうか?

しかしこうして鎮守府を歩き回るのは久々だからなんだか楽しくなって来た。

北上「おや」

鎮守府の中でもあまり人の訪れない外れの方。

あれは、金剛さんか。外でお茶会をする時もあるとは聞いていたがこんな所でやっていたのか。確かに静かでいいけれど。

白いテーブルとイス。後なんか豪華なそうな、食器?棚?

隣には比叡さんもいる。二人だけかな?

金剛「あ、北上ーー」ブンブン

私を見つけるなり席を立ち両手を大きく降って呼びかけてくる。相変わらずテンションが高い。

とりあえず私も手を振り返してみる。もちろんあんなに激しくではなく。

金剛「Hey!!カモーン北上ィーー!」ブンブン

呼ばれてしまった。物凄い勢いで手招きをされてしまった。いやもうあの動きは手招きじゃないでしょ。
6 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:12:03.31 ID:co/3lF0I0
北上「…」バッテン

手でクロスを組み拒否の意思を伝える。

金剛「!?」ガビーン

うわめっちゃショック受けてる。なんで私が罪悪感に苛まれにゃならんのだ。

金剛「…」ガッカシ
比叡「!!」ワタワタ

そのまま取れるんじゃないかと言うくらい肩を落として席に戻ろうとする

どうしていいか分からずテンパる比叡さん。

北上「…」

どうしろというのだ…私にも用事があるんだよ。

金剛「…」チラリ

うわこっち見てきた!よく見えないけど多分捨てられた子猫みたいな目で!

北上「あーもう…」マル

金剛「!!」パァァ

手でマルを作りお茶会の席へ向かう。

やれやれ。まあそこまで急いでいる訳では無いんだけどさ、アリスの気持ちが少しわかった気がした。

幸い席にいるのはマッドハッターではない。退屈はしないだろう。
7 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:13:00.76 ID:co/3lF0I0
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北上「えっと、じゃあよろしくお願いします?」

うーむ慣れない。いつもの座布団や木製の椅子とは違うイギリス的な?椅子に違和感を覚える。

金剛「ノンノン!同じ艦隊の仲間なんデスから、敬語はノー!デスよ」

流石は吹雪に艦隊の潤滑油と称されるだけあって凄いコミュ力だ。

グイグイ来るのにそれを嫌だと思わせないのは一種の才能だろう。しかし…

比叡「年功序列なんて堅苦しいのはここにはないですからねー。気楽に行きましょう気楽に」

金剛「そもそもシップであった私達に歳とか言われても困りマース」

比叡「そうですよ。それを言ったら金剛お姉さまなんて今一体幾つになるやら」

金剛『それくらいにしておけよ小娘』

比叡「え、あのお姉さま。日本語でお願いします」

北上「…」

比叡さん:完全に敬語
金剛さん:謎の訛りではあるけど敬語

この二人に敬語やめてフランクにとか言われても説得力ないよね。
8 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:13:47.69 ID:co/3lF0I0
金剛「それにしても珍しいネ。多摩と同じで北上はインドアなキャットだと思っていましたヨ」

そう言ってティーカップを啜る。話し方とは裏腹に紅茶を飲む姿はなるほど淑女のそれだと言っていいだろう。

北上「ちょっと用事があってさ。吹雪を探してたんだけど」

比叡「吹雪を?なんでですか?」

北上「あー、理由はちょっと…」

金剛「シークレットデスカ?いいですネー、女は秘密を着飾る程美しくなるといいマース」

北上「それどっかで聞いたような」

比叡「はいどうぞ。なにかいれますか?」

北上「んーミルクをお願い」

比叡「はいはーい」
9 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:14:28.06 ID:co/3lF0I0
北上「…おいしい」

紅茶なんて飲んだの初めてだ。完全にミルクティーになったけど。

金剛「ふふ、でも嬉しいネ。普段来ないゲストが来てくれるのは」

北上「いつもは誰が来てるの?」

金剛「んーそーデスネー。皆?」

北上「皆て…」

比叡「でも概ね合ってますよ?お姉さま、艦種問わず見かけたら引きずり込んでますから」

金剛「人聞きが悪い事言わないでくだサーイ!任意同行デース!」

北上「それ全然いいイメージないよ…」

あの誘い方も手慣れているわけか。

恐ろしい娘!
10 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:15:03.76 ID:co/3lF0I0
金剛「では、滅多にないチャンスデスから北上の話が聞きたいネー」

北上「私の話って言われても、何か話すようなものもないんだけど」

話せるような話でも、ない。

金剛「そーデスカー。うーん…ではこうしまショウ。吹雪が居る場所を教えマス。何かそれに見合う話をしてみてくだサイ」

ニッコリと笑う金剛さんの表情は完全に獲物を前にした捕食者のそれだ。

北上「!?」
比叡「お、お姉さま!?そんな取引みたいな事しなくても!」

金剛「大なり小なり皆気にして、気づいてますヨ。提督達がなにかしようとしている、と。私もそれが気になってるんデス」

なるほど。ここは正しくお茶会というわけか。

比叡「そりゃ私も気にはなりますけど、そんな交換条件みたいな…」

金剛「話す理由には丁度いいと思いマスけどネー」
11 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:15:45.85 ID:co/3lF0I0
北上「皆は、そんなに気にしてるの?」

金剛「気にしている、というよりは心配してるネ。前の提督、前の鎮守府。少なからず皆知ってマス。

特に、日向飛龍谷風に吹雪。前の鎮守府のメンバーとの壁を、皆感じてると相談してきマス」

北上「悩み相談所ってわけか」

比叡「それに関しては私も感じてる事です。私達は深海棲艦を倒すためにいつも頑張ってます。艦娘とはそういうものです。

でもあのメンバーは、なんというか他の何かを目指しているようなんです。私達とは違う何かを見ている」

金剛「大切な仲間ネ。大切な友人ネ。でも例えどんな理由があるにせよ、黙っていられたら壁を感じてしまうものデス」

北上「壁ねぇ」

かつて吹雪に抱いていた感覚だ。

私は目的があったからそれをよじ登った。掻い潜ってぶち壊した。

でも皆は、それだけの理由がないのだろう。壁を感じながらも、仲間だからこそそれを超えられなかったのだろう。

金剛「それでも別にいいと思っていたんデス。でも最近のは目に余りマス。とても見過ごせないネ」
12 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:16:26.00 ID:co/3lF0I0
北上「…」

見合うだけの話、と言われてもなぁ。

でも確かに問題だ。このまま黙って計画を進めるのは厳しいのかもしれない。もしもの時、提督は皆になんというつもりなのだろうか。

金剛「それに、もっと重大な理由がありマース」

北上「じ、重大な?」

金剛「ええ」

目を閉じ、一呼吸おく金剛さん。

北上「それは?」
比叡「…」ゴクリ

それ以上にとは一体なんだ?私も思わず唾を飲む。

金剛「それは!」カッ!

比叡「それは!?」

金剛「テートクとの秘密の共有なんて羨ましすぎるからデース!!」ババーン

北上「…はい?」

金剛「ずるいネ!私もテートクと二人っきりでコソコソとランデブーしてみたいデース!!」
13 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:16:56.17 ID:co/3lF0I0
北上「…」ポカン

え、嘘、そこ?いやそこか、この人的には。さもありなん。

北上「…」チラリ

比叡「…」タハハ

やれやれという感じで肩をすくめる比叡さん。

いつもの調子に戻った金剛さんに安堵しているようにも見える。

北上「結局そこなのね」

金剛「あたり前田のクラッカーネ!恋するガールデスからネー」フフン

まったく、真面目なんだかふざけてるんだか。いや、この人はいつも真面目なんだ。

こうしている今も。
14 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:17:28.62 ID:co/3lF0I0
北上「…」

金剛「?北上?」

北上「なら、一つ聞いてもいいかな」

金剛「Off course.一つと言わず、いくらでも」

北上「提督が、例えば違う提督だったとしても好きになってた?」

比叡「!?」ブフー

金剛「…oh.なかなかクリティカルな所を突いてきますネー」

比叡「ビックリしたぁ…日向みたいな事を聞きますね」

北上「日向さんも言ってたの?」

比叡「同じような事を、ね。言い方は真逆でしたけど」

何を言ったんだろ。
15 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:18:09.48 ID:co/3lF0I0
金剛「艦娘は提督を大なり小なり好きになるものデス。それはここにいる男性が一人だけだから、という訳じゃないネ」

大きな鎮守府には当然提督以外にも人員はいる。現に元帥のおじいちゃんの所にはいっぱい居た。

金剛「ラヴは錯覚によるものだ、と言った人がいるらしいデスけど、それで言うなら私達はそう錯覚するようになっているのかもしれないネ」

比叡「雛鳥が最初に見たものを親と思う。なんてのに近いのかもしれません。日向は女王蜂とか言ってましたね」

北上「私もその話は聞いたよ。流石にその言い方はどうかと思ったけど」

金剛「だから悩む娘もいたりするデス。自分のこの気持ちは本物なのかって」

北上「金剛さんも?」

金剛「そう見えますカ?」

北上「んー、いや全然」

金剛「ふふん、大正解デース!」ガタッ

うお、急に立ち上がった。

比叡「エヘヘェ」

比叡さんは、あーなんかうっとりしてる。見惚れてる。
16 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:19:09.47 ID:co/3lF0I0
金剛「だからそういう娘に言うこともいつも決まって一つデース。確かに私は提督が大好きネ。もし提督が今と違う誰かだったとしてもきっと同じ事をいうと思いマス。

でも、ここの提督に対するLOVEは唯一無二デス!大きさとか量とかではないネ。金剛はこの世界に沢山いマス。でもここの提督はただ一人なんデス。

だからこの気持ちも、提督に対する私のこの気持ちも間違いなくオンリーワンデース!」ババーン

気品漂う素敵なイスに豪快に片足を乗せ私に向かってビシィッと指を指しポーズを決める。

ザ・無敵って感じ。

これならどんな悩みも立ち所に馬鹿らしくなるだろう。

北上「核かぁ。なるほどね。確かに私達は沢山いるけど、提督はただ一人だもんね」

金剛「YES.何も不安になる事はないんデース。北上のその気持ちだって、確かなものに違いないんデスから」

北上「うんうん、うん?え、私の気持ち?」

金剛「ん?」

北上「ん?」

比叡「え、北上も司令の事好きなんですよね?」

北上「え」

比叡「あれ?」

金剛「oh…」

あれれ?
17 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:19:46.63 ID:co/3lF0I0
北上「そうなの?」

比叡「私達にそれ聞くんですか?」

北上「逆に、え、なんでそうなった?」

比叡「なんでって言われましても」

金剛「顔に書いてありマース」

北上「顔」

金剛「北上はあんまり笑わないデス。というより感情が表に出ない感じですかネ。それが緩むのが球磨型のシスターズといる時か、テートクといる時ネ」

意識した事もなかった。本当だろうか?私自身にはなんとも言えない。

比叡「なんというか、笑みが溢れるという感じの表情ですね。私がお姉さまを見てる時と同じ感じです」

それはなんか一緒にして欲しくない。言わないけど。

金剛「ソーデスネー」

おっと金剛さん華麗にスルー。

金剛「んん?さては無自覚デスネ?テイトクと同じレベルのボクネンジンネ」

朴念仁?どっちかと言えば唐変木なんじゃ。別にいいけど。
18 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:20:22.34 ID:co/3lF0I0
金剛「ならクエスチョンデース。提督と二人っきりで居る時、どう思いますカ?」

北上「どう思うって、んーそうだなぁ。落ち着く、感じ?」

猫の時を思い出す。好きな匂いが染み付いたお気に入りの寝床を。

金剛「他に似たような気持ちになる事はありますカ?」

北上「似たような、図書室とか。いや違うな。私達の部屋も、違う」

確かに落ち着くけれど、違う。

金剛「なんでもない時でもそこへ行きたいと思ったりしませんカ?」

北上「思う、かな」

正確には思ってはいない。何の気なしにふらっと向かっている。

金剛「独り占めしたい!って思ったりしませんカ?」

北上「…思ってた、かも」

そんな事を、考えていた気がする。
19 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:20:55.78 ID:co/3lF0I0
比叡「ズバリ恋ですよ恋!恋する乙女です」

金剛「これは手強いライバルができたもんデース!負けませんからネー!」

北上「恋、恋ねえ」

思えば混ざってる、混じっているとはいえ私も艦娘に違いはない。ならば北上も提督に惹かれていたとしても不思議はない。

のだろうか?

北上「うーむ」

比叡「あれ、納得してませんね」

金剛「ふむ、テートクとはいつもどんな感じなんですカ?」

北上「提督は机でサボってて、私がソファで寝転んで本読んでる」

比叡「それだけ?」

北上「たまに本の内容を提督に話したり、とか」

金剛「それだけ?」

北上「うん」

金比「「うーむ」」

なんでそっちが悩むのさ。
20 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:21:42.55 ID:co/3lF0I0
金剛「ならいつもじゃない時はどうですカ?」

北上「いつもじゃない時?」

逆転の発想、みたいな感じか。

金剛「YES!特別な、非日常的な事は今までありませんでした?」

北上「特別な事…」

金剛さんと比叡さんは何やら楽しげにこちらを見ている。少し癪だがここはしっかりと考えて見よう。

どんな時だろうか?

屋上で提督とお酒を飲んだ時だろうか?

あの書庫に提督と閉じ込められた時だろうか?

一緒に街に出た時だろうか?

膝枕をしてもらったり、手を繋いだり、背中を流しあったり、そういう事だろうか?

そうじゃなくて、隣に座ったり、お喋りしたり、ご飯食べたり、同じ部屋に居て、そういう事だろうか?

考え出すとアルバムのページは勝手に捲られ無数の写真のように切り取られた思い出の瞬間と、とてつもない大きさの何かが私の中を満たしていった。

「キスしてみたらわかるんじゃない?」

そんな事を私じゃない北上が言ってたっけ。
21 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:22:18.34 ID:co/3lF0I0
金剛「Oh…これはまた」

比叡「アツアツですねぇ…」

北上「え?」

熱々?言われてみればなるほど確かに体が熱い。夏の熱射を浴びた甲板を彷彿とさせる。

金剛「北上ィ」ニヤリ

北上「はい」

うわすっごい笑顔。実に楽しそう。

金剛「提督の事、Loveですカ?」

北上「…YES」

あぁそうか。これは私にはないものだ。猫じゃなくて北上になったから、いや、北上の中にいるから、北上が中にいるから出てくる感情なんだ。
22 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:24:17.30 ID:co/3lF0I0
思えばこの気持ちは随分と前からあったような気がする。

金剛「一体何を思い出してたんですカー?」ニヤニヤ

自分でも分からない衝動とでも言うべき感情が確かにあった。

北上「何って言われても…」

北上はきっと以前から提督の事が好きになっていたのだろう。

比叡「具体的に教えてくださいよっ」

北上「んー手を繋いだりお風呂入ったりとか?」
金剛「オフッ!お風呂!?どういう事デス!?」
北上「おっと」

比叡「これはとんでもないライバルが出てきましたねぇ」

金剛「お風呂…おふ、お風呂?オーマイガッ」ブツブツ

比叡「お、お姉さま!気を確かに!!」
23 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:26:07.87 ID:co/3lF0I0
北上「…」

ああでも、やはり私は北上にとって異物なのだろう。

北上はきっと私がいなければ普通に提督への思いを自覚していただろう。その後どうするかは分からないが。

大井っちもいるし諦めただろうか。それとも大井っちと提督を取り合うライバルになっただろうか。案外大井っちと一緒にとか?

でも私はそれよりも大切な事がある。ともすれば命を落とすような事をしようとしている。

勝手に混ざっておいて酷い話しじゃあないか。

だから、私にとってこの気持ちは他人事だ。偽物だ。

結局のところツクリモノじゃないか。

「人と為るための為人」なんて谷風は言っていたけれど、ならば正しくそれは「偽」じゃあないか。

そうな風に思ってしまう。

北上や、それだけでなく金剛さんや皆の思いまで否定しようとしてしまう。
24 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:27:22.32 ID:co/3lF0I0
比叡「今度はまた随分と暗い顔になりましたね」

金剛「悩めるガールネ」

北上「イマイチ、実感なくてさ」

金剛「例えばテートクがそこを通ったら声をかけたいと思いませんカ?」

北上「思う」

北上ならそうだろう。

金剛「テートクにティータイムのお誘いを受けたらどう思いますカ?」

北上「多分、嬉しい」

きっとそう思う。

金剛「私の誘いは一度断ったのにぃ、分かりやすい娘デース」

北上「いやあれは」

そうだ吹雪探してるんだった。ミルクティー一杯しっかり楽しんでしまった。

比叡「ならなら!もし提督が誰かとイチャコラしてたらどう思います?」

北上「え?」

金剛「こら比叡!そんな意地悪な言い方するもんじゃないデース」

比叡「う、ごめんな「邪魔」ふぇ?」


北上「邪魔だなって」


金剛「おっと…随分とハッキリ言うデスネー」

比叡「北上?」

北上「え」

私今なんて言った?

なんだろう。こんな気持ちを最近感じた気がする。
25 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:27:48.09 ID:co/3lF0I0
って今はそれより

北上「そろそろ行かなきゃ。吹雪探してるんだった」

金剛「あ、あぁ。そうでしたネ」

比叡「お姉さま、さっき場所を知ってるって言ってましたよね」

金剛「吹雪ならあの建物の資料室に向かったはずデス。もう随分と使われてない場所ネ」

北上「りょーかい。ありがとね」

金剛「こちらこそ、面白い話が聞けましタ」

比叡「今度は球磨型姉妹誘って来てください」

北上「気が向いたらそうする」
26 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/05/16(木) 04:31:12.67 ID:co/3lF0I0
金剛!カッコイイ!凛々しい!

そんな改二丙のため急遽増えた金剛パート。
でも改二に思い入れがありすぎて未だに丙に出来ずにいるんです…
似たような事は他の娘の改二でもあったりします。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/16(木) 08:16:26.32 ID:wJ5tPhitO

北上もいずれコンバート工作艦になる日が来るかも……
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