北上「私は黒猫だ」

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102 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/06/19(水) 03:11:17.71 ID:EliH773c0
提督「そいつが行きたい所に行けばいい。ただ出来るだけそばにいる努力はするけどな」

北上「何処へも行かないように閉じ込めておきたいとか思わないの?」

提督「ヤンデレかよ。まあそういう気持ちに理解がないわけじゃないけどさ」

北上「そうなの?」

提督「自分の思い通りになる世界ってのは、誰しも考えた事あるだろ」

北上「そりゃあ確かに理想かもね」

提督「これで満足か?」

北上「それなりに」

提督「そりゃよかった」
103 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/06/19(水) 03:11:53.03 ID:EliH773c0
提督の頭から手を離し、離れようとした。

したけど、

提督「北上」ガシッ
北上「うわ」

今度は提督に捕まえられた。

北上「な、なに?」

提督「お前はどうなんだ?今の質問」

北上「私?」

提督「一方的に質問ってのはナシだぜ」

北上「私、私は…」

提督「き、北上?」

少しづつ顔を提督に近づける。

そしてそのまま




北上「私なら誰にも渡したくないって思う」




提督の耳元でそっと呟いて、ソファを離れた。
104 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/06/19(水) 03:12:59.69 ID:EliH773c0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「はぁ」

結局あの後すぐ部屋を出てしまった。

本当ならこの疲れた体をすぐにでも休ませた方がいいのだろうけれど、どうにも自分で処理できないモヤモヤした感情がそれを許してくれない。

以前からあったこの自分ではない自分のようなモヤモヤはここ最近ドンドン増えているように感じる。

先程のドキドキはきっと私じゃなくて北上のものだ。

でも提督に言った、言ってしまったあの一言はきっと、私のものだ。

どうすればいいだろう。私はどっちを取るべきだろう。

北上「恋心とはまた違う感じだよねえ。ストレスかな。そういや猫もストレスで禿げるんだっけ」

誰もいない建物の外のベンチで自分に軽口を叩く。冬の寒さがいい感じに体を冷やしてくれる。

時刻は9時を過ぎた辺りかな。チラホラと部屋の明かりが消え始めていた。

今は、なんとなく誰にも顔を見せたくない。

大井「ストレスには甘いものですよ北上さん」

北上「まあたそうやって甘いものを食べる言い訳を」

大井「食べ過ぎ!食べ過ぎがダメなだけです!適量摂取はむしろ必要です!」

北上「そりゃそうだけどさ。そうじゃなくてもっと根本的なぁ…あー…大井っち?」

大井「はい?大井っちですけれど」

北上「いつから、そこに?」

大井「今しがたここに」

北上「なんで」

大井「私の北上さんセンサーがここに」

北上「さいで…」
105 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/06/19(水) 03:13:32.51 ID:EliH773c0
大井「何処へ行ってたんですか?訓練の疲れが取れませんよそんなんじゃ」

北上「それはそうなんだけどね」

大井「最近よくフラフラと色々な所へ行ってるじゃないですか。一体何をしてるんですか?」

北上「話をね、聞いてたんだ」

大井「話?」

北上「どうして皆復讐をするのか、みたいな話」

大井「あぁ、なるほど」

北上「…大井っちは、大井っちはどうして?」

大井「そりゃあ勿論北上さんが」

北上「…」ジー

大井「ぁー、すみませんウソじゃないです。でも全部でもないです」

北上「知ってた」

大井「でも、私にとっても復讐なんですよ」

北上「リベンジ、じゃなくて?」
106 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/06/19(水) 03:14:00.30 ID:EliH773c0
大井「北上さんこそ、どうしてこんな危険な事に関わるんですか?」

北上「それは…」

大井「やっぱり言えませんか?」

北上「うん…」

大井「でも引く気は無いと」

北上「うん」

大井「命の危険があるとしても?」

北上「うん」

大井「アイツを討つと」

北上「うん」

大井「復讐する、と?」

北上「…うん」
107 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/06/19(水) 03:14:27.08 ID:EliH773c0
大井「ねえ北上さん、私」

そこで言葉切った。

いや詰まったと言うべきだ。

迷ってる。躊躇している。惑っている。

その酷く辛そうな表情を、大井っちのそんな表情を私は初めて見た。

そして意を決したのか私の方に向き直り改めて口を開いた。

大井「私、人を殺した事があるんです」


北上「はい?」



108 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/06/19(水) 03:14:56.57 ID:EliH773c0
大井「誰にも言ったことはありません。あの日、レ級を追って煙の中に突っ込んだ時です」

北上「飛龍さんから聞いたよ」

大井「あの時皆闇雲に突撃しました。私も。絶対に逃がすまいと無我夢中で」

北上「それだけの事してたからね」

大井「結果、こちらは損害を受け船は沈み生存者はいなかった」

北上「こうして改めて聞くととんでもない話だね」

大井「でも違うんですよ。私、出会ってるんです。あの煙の中で、アイツに」

北上「アイツって、まさか?」

大井「まさかですよ。ええ。あのレ級に」
109 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/06/19(水) 03:15:33.84 ID:EliH773c0
大井「本当に偶然でした。沈みつつある船のすぐ近くで、驚く程近距離で遭遇してしまったんです」

北上「どれくらいの近さで?」

大井「10メートルくらいでしょうか。お互いに驚きで一瞬固まったのを覚えてます。その後すぐお互いに砲を構えました」

北上「手負いとはいえレ級とタイマンか」

大井「本来私の練度じゃどうしようもない相手です。窮鼠猫を噛むと言いますけど、この場合どちらも追い詰められていたわけです」

北上「どちらも必死になるわけだ」

大井「だからまあより私に勝ち目なんてなかったわけなんですけれど、そしたら、そしたら人が降ってきたんです」

北上「ん、え?人?」
110 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/06/19(水) 03:16:01.96 ID:EliH773c0
大井「傾き燃え盛る船の甲板から一人の男が降ってきたんです。レ級目掛けて」

北上「そりゃまた、どうして?」

大井「男はレ級に飛びつきました。極限まで追い詰められていたレ級にとってその奇襲はあまりにも効果的だったようで、何がなんだかわからないというふうにのたうち回っていました」

北上「助けに来たってわけか。しかし深海棲艦相手に生身の人間とは随分勇敢な」

大井「勇敢なんてものじゃないですよ。レ級の視界を塞ぎながら私にこう言ったんですから。私ごと殺れ、と」

北上「!?」

まさか、人を殺したってのはつまり。
111 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/06/19(水) 03:16:40.19 ID:EliH773c0
大井「魚雷を打ち込みました。でも私ではトドメを刺すには至らず、結果的にあの人を殺してレ級には逃げられました」

北上「そっか。そんな事があったんだ」

一時期落ち込んでいたと聞いていたがなるほど。むしろ落ち込む程度で済んでよかったというレベルだ。

大井っちにとっての復讐はその一人の男の命をかけたものなんだろう。

結局皆誰かの命を
大井「その人がかつてのここの提督だったと知ったのは極最近です」

命を、

え?

北上「今なんて?」

大井「当時は誰にも話せませんでした。私自身忘れようとさえしてました。でも少し前に気づいたんです。あの人は、ここ前任の提督だったと」

北上「」

その人は提督を辞め海外に行っていた。

たまたま帰ってくるその船がレ級に襲われ、沈んだ。

死んだ。

でも、そうじゃなかった。それだけじゃなかった。
112 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/06/19(水) 03:19:04.63 ID:EliH773c0
北上「その、話は、提督達にはしない、の?」

上手く言葉が出ない。喉がヒリついている。

大井「少なくともこの件が終わるまではそのつもりです」

北上「なんで、なんで私には話したの」

意識しなければ今にも震えだしてしまいそうだ。

大井「そうする必要があると思ったからです」

北上「どうして」

今すぐ叫び出したいほど何かが体の中で暴れている。

大井「北上さん。まだ迷っているでしょ?だから皆の話を聞いて回った」

北上「それは…」

大井「私もその助けになればと思ったんです」

北上「…」

大井「さあ、もう戻りましょう。冷えてしまいますよ?」


そう言って席を立つその後ろ姿を見て、私の中にあったモヤモヤが黒くて熱い何かに変わっていくのをハッキリと自覚した。
113 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/06/19(水) 03:24:35.20 ID:EliH773c0
わーい修羅場だ修羅場だ

最近当然のようにイベントに顔を出すようになったレ級。あの特別感が良かったんですけどねぇ。ええけして厄介だからとかではなくて…
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/21(金) 01:06:22.36 ID:0yrnYQ5Qo
おっつ
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/21(金) 01:23:05.60 ID:Fw2yPx420
おおいっちは先代の北上をこんな感じで沈めてるんじゃないかと予想してたんだがまさかの先代提督でもっと重い展開だった
北上化け猫モードなりそうw
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/25(火) 21:04:11.16 ID:cigcUDuIO
猫が主人の仇討ちってなんかコンビニたそがれ堂にあったような気がする……
北上さんもあんな感じになんのかなー
117 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:25:32.45 ID:YX4H6MyE0
93匹目:球磨型



大井「なんですか、これは」

球磨「おせークマ。先に始めてるクマ」

多摩「飲み物はそこに置いてあるから好きなのとってにゃ」

木曾「あ、ついでに取り皿いくつか頼む」

北上「…宴会?」

部屋に戻るとコタツを囲んで何やら宴が始まっていた。
118 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:26:07.35 ID:YX4H6MyE0
球磨「最近色々と頑張ってるから労ってやろうという粋な計らいクマ」

北上「自分で粋とか言ってる時点で粋じゃない…」

多摩「これおツマミ足りるかにゃ?」

木曾「多摩姉が食べ過ぎなんだよ」

球磨「まあまあいいから座るクマ」

大井「…」
北上「…」

お互いに顔を見合わせ、ため息をつく。

やれやれ随分と呑気なものだ。気が抜ける。というか毒気が抜かれた。

でもそんな所にいつも救われている。
119 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:26:40.12 ID:YX4H6MyE0
球磨「それじゃあ改めてカンパーイクマ」グイッ

多摩「にゃ」グビッ

北上「うわ多摩姉もうそんなに食べてるの」

多摩「柿の種ってなんでこんなに美味いのかにゃ」ボリボリ

大井「あ〜暖まるぅ」

木曾「外にいたのか?」

大井「ちょっとね」

球磨「ほら飲めクマ。飲めば温まるクマ」

北上「えー私ビールはいいや」

多摩「チューハイならあるにゃ」

大井「随分ありますね」

木曾「そこにあるのは全部多摩姉が飲み終わったやつだぞ」

大北「「え」」
120 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:27:13.48 ID:YX4H6MyE0
球磨「あーこれ柿ピーだクマ!」バンッ

北上「柿ピーだけど、なんで?」

球磨「球磨は柿の種が食べたいんだクマァ」

木曾「同じじゃないか」

球磨「違ぇクマ!柿ピーにはこの薄汚え豆野郎が入ってんだクマァ!」

北上「酷い言い方」

多摩「あぁ?今ピーナッツを馬鹿にしたにゃ?したにゃ?」

球磨「馬鹿にはしてないクマ。不純物だと言っただけクマ」

多摩「上等だにゃ」

球磨「やんのかクマ?」

北上「えぇ何これ…」

木曾「ほっとけいつものだ」

北上「いつもなの?」

大井「いつもなんですよ…」
121 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:27:52.33 ID:YX4H6MyE0
球磨「オラァ!」ポイッ

多摩「にゃ」パクッ

球磨「クマァ!」ポイッ

多摩「にゃ」パクッ

北上「宴会芸か何かで」

大井「いつもの事です」

木曾「球磨姉が残したピーナッツを多摩姉が食べる、というだけなんだがな」

北上「鼻血出るよ」

木曾「艦娘だから」

北上「便利だね」

大井「太りませんしね」

木曾「艦娘だからな」

北上「便利だねぇ」

球磨「胸も大きくならないクマ」

木曾「それ外で絶対言わないでくれよ…」
122 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:28:21.61 ID:YX4H6MyE0
木曾「誰かそこのツマミ取ってくれないか?」


球磨「お眠クマァ?」

多摩「にゃぁ…」コクリ

球磨「コタツは汚ねえからあっちで寝るクマ」

多摩「ぅにゃぁ…」

北上「これホントにアルコールなの?」

大井「1%もないんじゃないですか?」

北上「ジュースだこれ」


木曾「…しゃあねぇなぁ」ヨッコラセ

球磨「缶追加頼むクマ」
北上「お菓子持ってきて」
大井「取り皿お願い」
多摩「芋焼酎」

木曾「人が立つの待ってんじゃねえよ!というか多摩姉起きてるじゃないか!」
123 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:29:24.98 ID:YX4H6MyE0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

木曾「」

北上「木曾が潰れた」

球磨「ペース考えないからクマ」グビッ

北上「艦娘も酔うんだよねぇ」

球磨「船酔いみたいなもんなのかもクマ」

大井「ね〜、程々にしとけばいいのにぃ。カーワイッ」ツンツン

北上「大井っち水飲む?」

大井「チューハイ!チューハイ飲む!ます!」

北上「あ、うん」

多摩「にゅぅ…」スピー

球磨「とりあえず木曾運ぶにゃ」

北上「コタツあるから布団二つしかひけないけど」

球磨「二つに押し込めてきゃいいクマ」

北上「多摩姉ちゃんは?」

球磨「コイツはほっとけば起きてまた飲み出すクマ」

北上「あーね」

大井「私も寝るー」

北上「あ、うん」

大井「やっぱり北上さんと一緒でぇ」ユサユサ

北上「うーん酔っ払い」ユラユラ
124 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:30:13.23 ID:YX4H6MyE0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

多摩「大井はホント胸がでかいにゃ」ソロリソロリ

球磨「おー乗った乗った。これも胸に挟む?」

多摩「もちろんにゃ」

北上「なんで大井っちの胸ひん剥いてんの」

球磨「酔って暑そうだっから」

多摩「厚いのは胸の脂肪にゃ」

球磨「だはは」

北上「じゃなんでそこにみかん乗せてるの」

球磨「ミカンー」

多摩「おー乗ったにゃぁ」

北上「聞いちゃいない…」

球磨「大井っちミカンと名付けて提督に売りさばいてやる」

多摩「闇取引にゃ。間宮を要求するにゃ」

北上「売れそうだから困るよね」
125 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:30:57.32 ID:YX4H6MyE0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「…死屍累々」

二つの布団には木曾が大胆に寝転がり、四角いコタツの東側には球磨姉が丸まって寝ており南にはどうにか服を着せた大井っちが寝ている。

多摩「球磨は相変わらず酔いが顔出ないにゃ」

北上「うわっ、起きてたの?」

多摩「今起きたにゃ」

北上「三度目のおはようだね」

いつだか吹雪が言ってたな。多摩姉はどんだけ飲んでも寝て覚めてを繰り返すだけだって。

球磨姉は顔に出ない。大井っちは普通で木曾はキャパ以上に飲みすぎると。

その通りだ。

多摩「北上は退屈じゃなかったかにゃ?」

北上「いや、見てて面白いよ」

多摩「そりゃ良かったにゃ。酒が飲めないってのは混ざりにくそうに思えてにゃ」

北上「ありがと。でも例え飲めてもこうはなりたくないしなあ」

多摩「飲んでも飲まれるにゃってことにゃ」

北上「言い得て妙だね」
126 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:31:47.19 ID:YX4H6MyE0
多摩「ツマミはもうないのかにゃ?」

北上「結構あったのにね。もう多摩姉の胃袋にしかないよ」

多摩「こういうのは無限に食えるから怖いにゃ」

北上「傍から見たら怖いのはツマミじゃなくて多摩姉なんだけど…なんかありがとね、今日は」

多摩「別にただ飲みたかったってのもあるからにゃ。球磨も同じにゃ」

北上「にしたって急だね」

多摩「最近また追い詰められたような表情してたからにゃ」

北上「私?」

多摩「にゃ。でも前と違って少し前向きな感じだにゃ。必死に進もうとしてる感じにゃ」

北上「猫の勘?」

多摩「猫じゃ、ないにゃ」
127 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:32:29.53 ID:YX4H6MyE0
猫か。

結局多摩姉は白猫なのかどうか分からなかったな。

でもそれでいいのかもしれない。

白猫だとしてもそうでないとしても、この件に関わるべきじゃない。

仇とかそんなの関係なく生きていて欲しい。私はそう思う。

こんなのは私だけで十分だ。

こんな事は。

北上「仇って、どうなんだろうね」

多摩「かたき?また本の話かにゃ」

北上「ん…よくわかったね」

多摩「例え姉じゃなくてもわかるにゃ。そんな突拍子もないこと、本で読んだに決まってるにゃ」

北上「だよね」

まさに突拍子もない話だもの。

事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ。
128 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:32:57.95 ID:YX4H6MyE0
多摩「どんな話なんだにゃ」

北上「主人公がずっと前に離れ離れになった親を探してるんだ。色々あってその親は死んでいることが分かったんだけど、その親を偶然とはいえ殺してしまったのがそれまでに出会った仲間の内の一人だったんだ」

多摩「…難解な話だにゃ。その後どうなったにゃ?」

北上「わかんない。まだ読んでないからさ。ただ自分ならどうするだろって考えて」

多摩「哲学的だにゃ」

北上「多摩姉ならどうする?」

多摩「急にふられても困るにゃ」

北上「まず私達には親がいないよね」

多摩「そうだにゃぁ。強いていえば妖精さん、かかつての船の頃の多摩かにゃ」

北上「提督は、育ての親って感じかな」

多摩「そんな感じ、だにゃ」
129 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:33:50.82 ID:YX4H6MyE0
北上「ねえ、多摩姉ならどうする?」

多摩「…」

何かを考えている。

きっとそれは前任者の、前の提督の事だろう。

多摩姉も知っているはずだ。

仇がいることを。

討つべき仇を。

なのにそれをしないのは、何故なんだ。

多摩「多摩は仇討ちとかはしないにゃ」

北上「どうしてさ」

多摩「親の仇なんて、多摩にはイマイチ想像がつかないにゃ。でもそれよりも、仇を討つよりも、子供としているよりも、多摩はみんなのお姉ちゃんでいたいにゃ。

球磨型の二番艦として、ここにいたいにゃ」

北上「…」

多摩「きっと憎むにゃ。恨むにゃ。目の前にその仇が現れたら我を忘れて飛びかかってしまうだろうにゃ。

だからそいつが現れないように祈ってるんだにゃ。ここで多摩姉としていられるように、祈ってるんだにゃ」
いつも通りの気だるげな感じで淡々と喋る。
130 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:34:19.42 ID:YX4H6MyE0
北上「そっかぁ。流石我らがお姉ちゃん」

多摩「そんな事言ってるとまた球磨が張り合ってくるにゃ」

北上「球磨姉はお姉ちゃんってのとは少し違うかなあ。でもリーダーっていうかさ、だからネームシップって表現が一番合う気がする」

多摩「んにゃ。その意見には賛成にゃ」

北上「ぁあ…っと。そろそろ寝よっか」

多摩「もう丑三つ時にゃ」

北上「しかしこれ何処で寝ようか」

多摩「よし木曾と球磨を布団から退かすにゃ」

北上「え」

多摩「ほらさっさと動くにゃ」

北上「マジか」
131 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:35:30.03 ID:YX4H6MyE0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

昔々ある所にとある鎮守府がありまして、そこには提督と沢山の艦娘が住んでいましたとさ。

まあ鎮守府自体は今もあるんだけど。

ただ提督はいなくなり、それ故に艦娘もいなくなり、だけど五人だけが残った。残された。

提督の息子と、仇も残された。

吹雪曰く、どちらでもいい。ただそれは約束の為であり復讐自体はその約束と同じ位彼女にとっては悲願だった。

日向さん曰く、頼まれたから仇討ちをする。彼女が船であり、提督が提督である以上そういうものだと。

飛龍さん曰く、望むところだ。全ては仇討ちの為。ずっとそれを抱いてここまで来た。

谷風曰く、寂しかった。私と同類である彼女はそもそも艦娘の楔である提督ではなく止まり木としての鎮守府に居着いた者だと。思う所が無いわけではなさそうだが、それでも彼女にとってそれはまた別問題だろう。

多摩姉ちゃん曰く、出会いたくない。球磨型の二番艦こそが自分であり復讐とはそれを失うものだと。恨んでいるからこそ、会いたくないと。
132 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:39:06.27 ID:YX4H6MyE0
そして私。

本来ありえないはずのイレギュラー。

提督の前任者。かつての提督。その提督の提督ではない側面と、その彼が提督を辞めた後に私は出会っていた。

私は、どうするだろう。


そして大井っち。


私はどうするだろう。

どうすべきだろう。

いや、そうじゃないな。

どうしたいのだろう?

吹雪の気持ちが今ならわかる。

多摩姉の選んだ今晩のような姉妹達との幸せな時間か、飛龍さんが選んだあの燃えるような眼差しの先か。

選べと言われたら私は
133 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:39:49.25 ID:YX4H6MyE0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

騒ぎすぎた宴のせいで怒られてから幾日か経った。

いよいよ本格的になってきた冬の凍りつくような朝に、私は工廠を訪ねた。

夕張「はい、バッチし仕上げといたわよ」

北上「おぉー、と言うほどパッと見でなんか変わってる感じはしないけど」

夕張「そりゃあ今回は実用一点張りだからね!それともサイコガンとかにした方が良かった?」

北上「心で撃つとか言われても困るからいいかな」

夕張から受け取った拳銃をポケットにしまう。本当にちっさいな。

夕張「じゃ名前はサイコガンで」

北上「今違うって話したじゃん」

夕張「その大きさで威力は可能な限り高くしてるけど、その代わり装弾数は一発限りだからね」

北上「かまわないよ。護身用というか、保険だから」

元ネタのベレッタポケットという名に恥じない大きさだ。
134 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:40:41.93 ID:YX4H6MyE0
北上「明石は?」

夕張「ん」クイッ

腕を組んだまま顎で工廠の奥を指す。

見てみると散乱した機材の影からボサボサのピンクが僅かに見える。

北上「あー、お疲れさん。ってこれのためにそんなに労力使ったの?」

夕張「流石にそこまではしないわよ。提督からの仕事が終わったからね。これはついで」

北上「ついでにこんなの作るのも凄いけどね」

夕張「まあ今回は装備改修が主だったから私は比較的楽でさ。そぉだ、明石がチラっと言ってたけど北上、記憶の方はその後どぉ?」

北上「記憶?」

そう言えば何度か自分以外の記憶について相談してたっけ。思えば夕張と明石には色々と世話になってばかりだ。

私の記憶の事や大井っちの改装の件も。

もし猫の記憶があるなんて言ったらどう反応するだろう。
135 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:41:10.27 ID:YX4H6MyE0
北上「特に問題はないかな。ボヤけて薄れて、夢でも見てたような感じ」

夕張「へぇ。記憶、かぁ。実は大破するたびに記憶が零れ落ちていたり?」

北上「宝石かよ」

夕張「思い、出した!」

北上「救世主かよ」

夕張「実際あやふやなものよね。私達は特に」

北上「だね」

夕張「辛い記憶抱えてる娘も多いしさ」

北上「沈んだ記憶なんかがあるってのは大変そうだよね」

夕張「コンナンイラヘン…」

北上「トンデケー、って違う。そうじゃない」
136 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:42:13.38 ID:YX4H6MyE0
いつも通りたわいもない話をする。

というより、努めて日常を装っている。

夕張「ねえ」

北上「ん?」

それじゃあと工廠を出ようとした所を引き留められた。

夕張「戦うのではなくて、私達がどうしてこの仕事やってると思う?」

北上「何さ、急に」

夕張「私と明石がやってる整備や修理や開発や回収や改装とかはさ、みんなのためなの。

みんなが少しでも強くなれるように。でもそれは敵を倒すためじゃない。みんなが僅かでも生き残れるように、その為のものなの。

決して自分を顧みず死地へ突っ込もうとしてるバカの背中を押すためじゃない」

工廠の入口で睨み合う。

別に睨みつけているわけではないのだけど、でも睨み合うという表現がきっとぴったりだったと思う。
137 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:42:57.52 ID:YX4H6MyE0
北上「顧みた結果だよ。何も自暴自棄って訳じゃないからさ。帰る所に帰るよ」

夕張「はぁ」ヤレヤレ

北上「何その反応」

夕張「ま、別に止めようとか言う訳じゃないしね。はいこれ」

北上「…なにこれ」

夕張「お守りよ。キーホルダーにしといたから」

北上「よりにもよってメロンか」

夕張「不安になったら私の事を思い出して」

北上「より安心できない…」

夕張「胸元とかにしまっとけば銃弾弾くわよ!」

北上「夕張作だと割と有り得そうなのがまた」

夕張「そして帰ったら、三人で一緒にゲームしようぜ」b

北上「露骨にフラグを並べ立てるな」

夕張「逆フラグよ逆フラグ。死にそう過ぎて逆に死なない的な」
138 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:43:33.67 ID:YX4H6MyE0
北上「とりあえず貰っとくよ。ありがと」

夕張「うんうん。後で感想聞かせてね」

北上「どんな感想を抱けと言うんだ…」

夕張「それじゃ私はこれから久々の休眠に入るから」

北上「あぁ、そっか。依頼は全部終わったんだもんね」

夕張「ええ。後は知ーらないっ」

北上「それじゃ」

夕張「止まるんじゃねえぞ」

北上「だからやめろって」
139 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:44:41.50 ID:YX4H6MyE0
工廠を背に鎮守府を見上げる。

この時間の鎮守府は面白い。

夜の間に凍りついた空気を溶かすようにあちこちで艦娘達が動き始める。

鎮守府の目覚めと言ったところか。

騒がしい、ではなく活気が戻ってくる。

朝の白くぼやけた鎮守府に色がつく。

しばらくはずっと早起きで訓練やらをしてたせいかこの時間でもまるで眠くなくなっていた。

北上「っ…ん〜〜っ…」

大きく伸びをする。

さてさて。

いよいよ今日だ。

作戦の決行日だ。
140 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/08(月) 04:50:49.22 ID:YX4H6MyE0
はあバケツがねえ、資源もねえ、何よりやってる時間がねえ

イベントが終わったかと思えば梅雨っちに学生赤城さんにと供給過多な日々でした。
梅雨っちはまた別の形で書いてみたいですね。

北上さんの話はあと二話でおしまいです。もうちっとだけお付き合い下さい。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/08(月) 11:41:16.64 ID:LxggJBlb0
報恩と報復までシンプルに割り切れないまま仇討ち当日かー
仇はどっちなのかも決めかねたままで大丈夫かいな
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/10(水) 14:26:46.85 ID:7gKXy/LZO
更新の度に読んでる
毎回楽しく読ませていただいてます
そういやぁここのいちさんみたいにプレイ状況に触れる人少ないわね
143 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:17:58.21 ID:peHjoJ4K0
96匹目:黒猫(96猫)















出撃にはまだ時間があった。

部屋に戻った私は夕張からのお守りとやらをどこに付けるかで悩んでいた。

スマホケースに付けられるとは言ってたけど出撃にスマホ持ってくのはちょっとねえ。

北上「まあいっか。別に惜しむ事もない」

手帳型のケースにキーホルダーを付けポケットに入れる。

うん問題なさそう。
144 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:18:33.91 ID:peHjoJ4K0
部屋では私の他に多摩姉が何やら雑誌を読んでいた。

今日の作戦と事は関係者以外知らない。

皆には普通の出撃だと伝えられているはずだ。

だから何食わぬ顔で部屋を出る

はずだった。

多摩「待つにゃ」

私は止まらない。

多摩「待てにゃ」

私は止まらない。

多摩「…」

私は

多摩「行ってきますくらい言えにゃ」

止まった。
145 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:19:01.74 ID:peHjoJ4K0
行ってきます、とは、行って帰ってくるという意味らしい。

今の私には何とも似合わない挨拶だ。

北上「行ってきます」

多摩「行ってらっしゃいにゃ」

再び歩みだし私を、多摩姉は止めなかった。

私が何を考えているか多摩姉には分からないように、私も多摩姉が何を考えているか分からない。

でもきっと多摩姉には多摩姉也の考えがあって私を止めないのだろう。

多摩姉はそういう人だ。

北上「…」

行ってきます。
146 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:19:40.06 ID:peHjoJ4K0
球磨姉は遠征だ。

きっと球磨姉は私のことに気づいていない。

悩んでる時や落ち込んでる時、そういった事には敏感だ。

でも核心的なところには鈍い。

でもそれは悪い意味じゃない。

球磨姉は純粋だ。

ただただいい人なんだ。

私達のおねーちゃん。球磨型一番艦はそういう人だ。

そういう人であり続けてほしい。

なんてのは、少し無責任だろうか。
147 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:20:17.56 ID:peHjoJ4K0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

なんとなく誰かに見つかるのを避けて建物の裏を通っていた。

だから誰にも合わないと、そう思っていた。

木曾「よお、上姉」

北上「…なんで木曾がここにいるのかな」

木曾「行かせないためだよ」

そう言って少し構える。

黒いマントをたなびかせ、右手を腰の剣に回す。

まるで私が逃げ出そうとしようものなら直ぐにでも抜刀すると言わんばかりに。

北上「邪魔しないでよ。私の勝手でしょ」

木曾「邪魔させてもらうぜ。オレの勝手でな」

北上「おねーちゃんの言うことは聞くもんだよ」

木曾「妹のワガママには付き合うもんだぜ」

睨み合う。

抜き身の会話。

本当に、互いの心を相手に差し向けた、やりとり。

木曾のあの鋭い目付きは今、深海棲艦ではなく私に向けられている。
148 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:20:50.56 ID:peHjoJ4K0
木曾「上姉はいつもそうだ。飄々として掴みどころがなくて、大事な事はいっつも言わずに抱え込む」

木曾が拳を強く握る。

木曾「まるで猫だ」

猫か。

木曾「上姉が何考えてるか、オレにはサッパリ分からねえ。でも上姉がどんな人かは知ってるさ」

随分前に、こんな会話をした気がする。

木曾「いっつも抱え込む。自分じゃ抱えきれないようなものでも。でもそれはオレ達を信頼してないからじゃない」

私には悩みを打ち明けられるような家族はもういない。

私には苦悩を共に出来る家族はもういない。

でも私には姉妹がいる。
149 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:21:22.45 ID:peHjoJ4K0
木曾「オレ達の事を信用しているからこそ、上姉は1人で勝手に進んでく」

私の帰るべき場所。

木曾「後先考えずに、後ろを任せて、背中を預けて。上姉は、いつだってオレ達を頼ってたし信頼してくれてた」

転んだら助けてくれる。

立ち止まったら背中を押してくれる。

背を預けて戦える。

木曾「だからオレ達は何も言わなかった。何も言えなかった。球磨姉や多摩姉やおい姉が何を思ってたかは知らないさ。でもオレは、言えなかった」

そう言って少し下を向く。
150 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:22:12.55 ID:peHjoJ4K0
木曾「でもそれでも良かった。上姉はいつだって帰ってきた。いっつも戻ってきた」

私の帰るべき場所。

それは、今、何処なんだろうか。

木曾「でも、今回はダメだ。今回だけはダメだ。今度ばかりは、我慢の限界だ」

声を震わせながらさらに俯く。

そして、決心したかのようにキッと顔を上げ真っ直ぐ私を見据えて言った。

木曾「なんであんたはいつも独りなんだよ!私達は姉妹だろ!?独りでいてどうする!独りでいてなんになる!」

それはもう、ほとんど悲鳴だった。

木曾「いっつもいっつも!まるで独りである事を確認するみたいに家に帰ってきて!」

容赦なく、切り込んでんくる。
151 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:22:57.32 ID:peHjoJ4K0
木曾「信頼してくれてた、信用してくれてた。でも結局あんたは私達の事を一度だって姉妹として見てくれなかったんじゃないか?」

だって、私はニセモノだから。北上じゃないから。私は猫であることを選んだから。

姉妹の事が好きだから、そこにはいられない。

木曾「野良猫と同じだ!エサがあるから寄ってくるだけで、無くなればそれっきりみたいな、そんな!そんなんじゃ、ないだろ…」

再び目を伏せる妹。

猫何故かは死期が近づくと姿を消すという。

眉唾物の迷信みたいなものだ。

所詮は人間が作り出した勝手な想像。

でももし、それがその通りなら。

今の私にはその理由が良くわかる気がする。

艦娘もまた人の生み出した想像の産物だと言うのなら、きっとその通りなのだろう。
152 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:23:23.16 ID:peHjoJ4K0
出会わなければよかった。

今の私ならそう言える。

みんながいたからここまで来れた。

みんながいたから楽しかった。

でも失ってしまうならそんなの無かったのと同じじゃないか。

どうせ消えるニセモノなら、最初からいなければ良かった。

だから、言うべきだ。そう言うべきだ。

木曾「なんで私を頼らないんだよ!!」

北上「木曾」

だから私は
153 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:23:55.66 ID:peHjoJ4K0
北上「ありがとね」

自分でも驚いた。

こんな言葉がこの口から飛び出すとは本当に思いもよらなかった。

でも一番驚いていたのは、木曾だった。

この時の木曾の表情を、彼女の中に渦巻く様々な感情を表す言葉を、私は持ち合わせていなかった。

動揺で立ち尽くした。

だからまるで急降下爆撃のように建物の上から降ってきた第三者に反応できなかった。

谷風「せいっ!」
木曾「!?」ゴツン
北上「ウェッ!?」
154 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:24:27.22 ID:peHjoJ4K0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「…い、生きてるのそれ?」

頭と頭が見事にぶつかり合った結果、木曾は地面にぶっ倒れた。

谷風「少なくとも死んではないみたいだね」

北上「それ大丈夫とは言えないって事だよね」

谷風「だいじょぶだいじょぶ艦娘だからさ」

北上「それ皆言うけどあんまり信用出来ないんだよね私…」

谷風「"艦娘"じゃないからってか?」

北上「…」

谷風「そう怖い顔をしないでおくれよ。何も止めに来たわけじゃないからさ」

北上「なら何をしに」

谷風「こうして助けに。助け、とは言えないかな?うん、お見送りにだね」
155 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:25:05.55 ID:peHjoJ4K0
北上「ウミネコがお見送りとはね」

谷風「それくらいはするさ。雛が飛び立つまではね。何処へ行くかは君次第さ」

北上「下からなのに上から目線だ」

谷風「だからいつも高い所から見下ろしているってわけだ」

北上「高い所が好きってのはあまりいいイメージないけどね」

谷風「馬鹿や煙と一緒にはしないでおくれよ」

北上「そりゃ失礼。ところで谷風は頭大丈夫なの?」

谷風「谷風サンは石頭だからねッ」

北上「はは、確かに頑固だもんね」

谷風「こりゃ一本取られた」
156 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:25:40.41 ID:peHjoJ4K0
谷風「それじゃ、いってらっしゃい」

北上「谷風はどうすんのさ」

谷風「この娘ほっとくわけにはいかないしねえ。かと言って誰かにバレてもアレだし、ここで見張るかな」

北上「今更だけどもっと別の方法があったんじゃないかなって」

谷風「何事も殴って解決が一番だからね」

北上「石頭でなく脳筋だったか」

谷風「手っ取り早いでしょ?」ヨッコラセ

北上「ちょいちょい乗るな乗るな木曾に」

谷風「ほらほらそろそろ時間だよ?」

北上「…はぁ、分かったよ。じゃあ」

谷風「うん」
157 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:26:07.39 ID:peHjoJ4K0
谷風「あぁ最後にひとついいかな」

北上「えーここで呼び止める?」

谷風「忘れてたんだ。これくらいは答えておくれよ」

北上「何さ」

谷風「結局どっちなんだい?散々迷った結果は」

北上「仇討ちだよ。猫としてね。北上にはこんな事させられないからね。そこは決めたよ」

谷風「猫の恩返しってわけだ」

北上「そう、だね。猫の"おん"返しだ」

谷風「ふーん。飼い主の方が大事かい」

北上「皆も同じくらい好きだよ。だからここに置いていく事にした。後ろ髪はずっと引かれてるけど、振り向かないようにしなきゃね」

谷風「強いね」

北上「弱いよ。私だけじゃ」

谷風「そうかい。なら走るといいさ、メロス」

北上「別に谷風を助けるためとかじゃないんだけど」

谷風「私はセリヌンティウスじゃないよ。この場合は、誰だろうね。約束の相手は」

北上「さあ。まあ頑張ってみるよ」
158 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:26:35.15 ID:peHjoJ4K0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

提督「時間ピッタリだな」

北上「何その以外そうな顔」

飛龍「はいじゃあ間宮奢りね」

北上「待て何してたの」

日向「君がいつ来るかで賭けをね」

吹雪「真っ先に遅れるに賭けてましたね」

北上「…」ジトー

提督「違う!違うんだ!」

飛龍「提督サイテー」ケラケラ

大井「北上さんの事全っ然分かってませんね」

北上「いや飛龍さんもやってたでしょ」

飛龍「私はちゃんと来る方に賭けてたから!」フンス

北上「そういう問題じゃない…」
159 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:27:12.89 ID:peHjoJ4K0
港。

と言っても普通のの港と違って私達艦娘用の港。

倉庫のような大きな空間の中にまるでプールのように海水が張ってあって、それが海と繋がっている。

屋根いる?と思った事もあったが出撃する方はともかく見送りやお迎えに来たりする提督や他の艦娘からすると雨風を防げるのは助かるのだ。

今回の見送りは提督と吹雪。二人が並んで立っている。

出撃は私と大井っち、飛龍さん、日向さん。提督達の前に並ぶ。

他は誰もいない。

出撃組も遠征組もこの時間帯は誰も港に来ない。そうなるようにスケジュールを組んだらしい。

私達の出撃はあくまでこっそり。
160 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:27:50.94 ID:peHjoJ4K0
提督「さてと。最後のブリーフィングだ。といっても今更言うことも無いか」

吹雪「えーここは指揮官がビシッと決めるとこですよ!キマってんのは金髪だけじゃない所見せてください」

提督「馬鹿にしたな、金髪を馬鹿にしたなお前」

飛龍「今日上手くいったら金髪辞めるとか?」

提督「それは…いや辞めねえよ。これは別問題だ」

飛龍「じゃあ金髪辞めるか全身の毛を金に染めるかで」

提督「何その惨い二択。言ったらにはお前が染めろよ俺の毛」

飛龍「え、いいの?」

提督「うわ怖ぇ!一切の躊躇がねえ!」

大井「セクハラよそれ」

提督「俺か?俺が悪いか今の?」
161 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:28:23.89 ID:peHjoJ4K0
日向「そろそろ時間だな」

提督「よし」

北上「切り替え早い」

提督「作戦は変更なし。歯痒いが、俺はもうここで祈るくらいしか出来ることはねえ」

飛龍「提督に祈られてもなあ」

吹雪「運はありますよこの人。だからなんだって話ですけど」

提督「だから余計な事はせず待っとくよ。いいか、前にも言ったが今回で成功するとは限らん。あくまでここはスタートラインだ。気負うな。最後に笑った奴が勝ちだ」

北上「おーなんかそれっぽい」

日向「存外様になってるじゃないか」

大井「提督っぽさはありますね」

提督「そ、そうか?」

吹雪「そうですねぇ。蛙の子は蛙、ですね」
162 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:28:55.14 ID:peHjoJ4K0
提督「よし、それじゃぁ…あ?」

提督が固まった。

目線を港の先、海の方に向けたまま。

北上「?」

吹雪「司令官?」

吹雪が不思議そうに提督の視線の先を追う。

釣られて私達も後ろを振り返る。

北上「え!?あれ、あれって…」

港へまっすぐ向かう一つの影があった。
163 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:29:25.62 ID:peHjoJ4K0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

球磨「何してんだクマ?」

提督「いや、お前こそ何してんだ?」

吹雪「え、あの、球磨さん遠征ですよね?というか、え?一人?」

極々自然に何時もの流れでサッと港から上がってきた球磨姉。あまりに予想外な事に皆対応が出来なかった。

球磨「遠征自体は終わったクマ。ただなんか妙な感覚というか予感がして、皆に断って一人で先行してきたんだクマ」

吹雪「嫌な予感って、そんな事でこちらに連絡もせず独断専行を?」

提督「他の奴、確か神通もいたよな。何も言わなかったのか?」

球磨「言われたけど、旗艦は球磨だクマ」

吹雪「そういう話じゃなくてですね」
164 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:29:59.15 ID:peHjoJ4K0
北上「これ、どうすんのさ」

飛龍「いやぁまいったねこりゃ」

日向「誰にも言うなという事でさっさと行ってしまった方がいい気もするが」

大井「嫌な予感って私達でしょうか?」

飛龍「ま、良いか悪いかで言えば良くはないわよね、これ」

北上「球磨姉こういう時引かないからなあ」

飛龍「中止?」

日向「中止もそうだが今後にも差し支えるだろうな。まさか初回でバレるとは」

大井「ここで誤魔化しても後で私と北上さんは問い詰められますし…」

球磨「おい、北上、大井」

北上「うわこっち来た」
165 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:33:08.00 ID:peHjoJ4K0
まだアタフタしてる提督と吹雪をガン無視して球磨姉が私と大井っちの前に詰め寄る。

私達より僅かに小さい球磨姉の瞳がじっとこちらを見つめてくる。

球磨「よし。お前らそこで少し待ってろクマ」

北上「ま、待ってろって」

球磨「いいから、待ってろ」

踵を返し港を出ていく球磨姉。

北上「て行っちゃったけど」

大井「何、するつもりでしょうか」

提督「何、何なの。めっちゃ怖いんですけど」

吹雪「素直に待っておきます?」

飛龍「あー私は待つに賛成」

日向「同じく」

吹雪「なんでですか?」

飛龍「だって球磨ちゃん達姉妹の問題でしょ?これは」

北上「私達?」

日向「なるようになるさ。舵はきれても、流れは変えられない」
166 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:36:28.11 ID:peHjoJ4K0
北上「まあ」

大井「そう言うなら」

二人で顔を見合わせる。

ここは待つしかなさそうだ。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

球磨「待たせたクマ」

北上「」

絶句。

この時私は球磨姉しか見てなかったけどきっとみんなもそうだったはずだ。

球磨姉は十分ちょっとで戻ってきた。

両脇に多摩姉と木曾を抱えて。

抱えて。まるでバッグのように軽々と。妹達を。

多摩「やほー」

多摩姉はなんかもう全てを悟ったような、何もかも諦めたような無の表情だった。

木曾「…」

木曾は、そっぽを向いて黙りこくっていた。
167 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:41:15.05 ID:peHjoJ4K0
球磨「一体何処に行く気かは分からんクマ。でもその装備は多分ヤバイとこに行く気クマ」

港に戻ったあの時しっかり私達の装備を観察していたようだ。こういう所抜け目ない。

球磨「だってのに四人だけで出撃する気クマ?馬鹿かクマ。まして私の妹達まで連れて」

提督「グッ…」

あ、すっげぇダメージ受けてる。

球磨「北上」

北上「は、はい!」

球磨「どうしても行くつもりクマ?」

北上「…」

球磨姉は私に問うた。でも私は背中でしっかり感じていた。

飛龍さんと大井っちの堅い決意を。

北上「行くよ。私は。私がそう決めた」
168 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:42:51.33 ID:peHjoJ4K0
球磨「なら決まりクマ」

北上「え?」

大井「何がですか?」

球磨「あーでもそうなると7隻になっちゃうクマ…うーむ」

提督「おまっ、着いてくる気か!?」

球磨「着いてくんじゃねークマ。一緒に行くんだクマ」

多摩「なら多摩は降りるにゃ」
木曾「俺は行かねえぞ」

球磨「んなっ!?この薄情者!!」

多摩「大体これは多摩達が首を突っむような話じゃないにゃ。気づいてないじゃないだろにゃ」

木曾「そもそもが北姉が決めた事だろ。俺は知らねえぞ」プイッ

球磨「だぁぁ!反抗期かクマ!!揃いも揃って可愛くねえ妹達クマ!!」
169 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:44:55.40 ID:peHjoJ4K0
提督「なんだろ、蚊帳の外に置かれてる」

吹雪「どぉしますこれ」

飛龍「んー…」

日向「なに、そう難しい話でもないだろう」

提督「日向?」

日向「私が残ろう。元々人数がいた方がいい作戦だ。それに私ではトドメには足りないだろう?」

吹雪「それはその通りなんですけど」

日向「後はまあ彼女達次第だな」
170 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:47:45.81 ID:peHjoJ4K0
球磨「そもそも北上も北上だクマ!勝手に一人で突っ走るんじゃねえクマ!」

北上「えぇ、この前は応援してくれてたじゃん」

球磨「背中を押す事はあっても突き放す事はしねぇクマ!」

大井「それに北上さん一人ってわけじゃ…」

球磨「大井は北上がいるからだろクマ」

大井「それはまあそうですけど」

球磨「なら球磨達も一緒クマ。お前達が行くなら行くクマ」

木曾「おい待て俺も混ぜるな」

球磨「ムキィィィ!この捻くれ者!厨二病クマァ!!」

木曾「誰が厨二病だおい!」
171 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:48:17.30 ID:peHjoJ4K0
木曾と球磨姉がギャーギャーと騒ぎ立てて、多摩姉が横槍を入れて、大井っちが宥めようとアタフタしてる。

言い争ってるけど決して争ってるわけじゃない。

多分いつもと変わらない風景だ。

北上「プッ…ッハ、アハハハハ!」

球磨「クマ?」
多摩「にゃ?」
木曾「あ?」
大井「北上さん?」

可笑しくってたまらなかった。

そんな皆を頼もしく思ってしまう"北上"が私の中にやはり居ることも。

どうにもこいつは切っても切り離せないらしい。



北上「っはー…ねぇ皆、ちょっと助けて欲しいんだけどさ」



球磨「…ホレホレ」ツンツン
多摩「お呼びだにゃ」ツンツン
木曾「だぁもお分かった分かったよ!」

両脇から姉につつかれた木曾が不満げに大きく深呼吸をして、



木曾「で、どうすりゃいいんだ?」


172 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/07/23(火) 04:52:47.65 ID:peHjoJ4K0
書こうと思ってたんだが膝に水着雪風を受けてしまってな…

今回と次のタイトルを思いついたせいで冗長感が否めないと思いつつもここまで長くなりましたが私は満足です。
プレイ状況に関してはその、周りに話せる人がいないのでつい…

次で北上さんの話はラストです。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/23(火) 06:46:19.31 ID:YzRW+2gBo
乙です


あれ、ココで日向師匠脱落して球磨型姉妹全員集合とな
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/24(水) 10:37:31.77 ID:gziOnk7nO

次のも教えてね
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/24(水) 12:40:46.13 ID:6vc5n3+R0
提督禿げるまで知恵を絞って遊撃部隊編成をひねり出せ!
日向残しても笑って見送ってくれるだろうが生涯残る悔いを背負わせるぞ
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/31(水) 14:00:58.77 ID:COHrgzFAO
乙です
木曾の一人称俺だったよーな
乙女木曾、ありだね!
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/31(水) 20:36:48.84 ID:V5PvLTJ1o
場面的に意図的でしょ
178 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:42:59.51 ID:f1uEgEbX0
99匹目:白猫


日本では99歳を白寿と呼び祝う

100−1=99

百から一を取って、白

99

九十九

つくも

付喪

付喪神

九十九神

憑く者

船に、憑いている

A cat has nine lives

9つの魂なんて比じゃない

私の中にはもっと多くの何かがある

猫(私)はその中の一つだったに過ぎないんだ

だからきっと、私は猫でも船でもなく私なんだと思う。
179 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:43:42.98 ID:f1uEgEbX0
北上「洒落にならないよねえ」

大井「何がですか?」

北上「全部が」

球磨「それは球磨達のセリフだクマ」

多摩「まったくだにゃ」

360°水平線。大海原を進む。

球磨「まず作戦が作戦だクマ。戻ったら絶対提督をぶん殴ってやるクマ」

北上「それに関しては私達皆で考えたんだけどね」

球磨「提督ってのは責任者でもあるクマ」

北上「そりゃあそうだけど」

多摩「とりあえずぶん殴っておきたいにゃ」

うわすっごいご立腹。
180 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:45:20.20 ID:f1uEgEbX0
木曾「その上で賭けだしな」

飛龍「賭けるには十分だと思うけどね。一回きりって訳じゃないし」

球磨姉と多摩姉を先頭に私と大井っち、木曾に飛龍さんが続く。

編成としては随分と変わったものになる。

吹雪『そこが大事なんですよ。提督も言ってましたけど、今回の出撃が全てってわけじゃないんですからね』

北上「あれ?吹雪?」

通信から聞こえてきた声は吹雪だった。

吹雪『あの人は今通常業務なうです。他の娘にはバレないようにしなきゃですからね。とはいえ何かあったら直ぐ連絡着くようにしてるんで安心してください』

多摩「なんか心が痛むにゃ」

吹雪『騙してる訳じゃなくてあくまで秘密にって話です。上手く行けば誰も不幸になりませんよ』

木曾「上手くいけば、な」

大井「不穏な事言わないの。それに、上手くいくいかないじゃなくてやるのよ。私達が」
181 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:47:11.49 ID:f1uEgEbX0
吹雪『そろそろ目的のポイントですかね』

球磨「クマ。予定に乱れはないクマ」

吹雪『オーキードーキー。それじゃ私も一旦席を外すんで、ここからは日向さんにお願いしますね』

北上「吹雪もなんかあるの?」

吹雪『司令官よりも私がいない事の方が不自然でしょ?』

北上「ノーコメントで」

吹雪『それに叢雲とデートしなきゃなんで』

北上「はい?」

吹雪『ほらあの娘ちょっと私に対してカンが良すぎるんで。お姉ちゃん的には嬉しいんですけどねぇ。だからまあ先手をね、ではでは』

多摩「提督より頼もしい上司だにゃ」

大井「提督も経験が浅いのは事実ですからね」

飛龍「だからこそこういう型破りな事が出来るとも言えるけどね」

球磨「そこはまだいいクマ。経験不足は予想外の事態になった時にモロにでるクマ」

北上「だからこその私達次第だよ。敵をどうやってこっちの思うように動かすか。それが要だからね」
182 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:47:46.78 ID:f1uEgEbX0
日向『そういう事だな』

飛龍「あ、お留守番組」

日向『君のように熱くなる理由は私にはないからな。それに今回ばかりは私でない方が都合がいい』

飛龍「日向も補佐の方が向いてるしね」

日向『と言ってもこの先こちらから何か補佐出来ることも殆どないがな。さて時間だ』

その一言で場の空気が変わった。

ここにいる全員が確かに軍艦だと思い出す。

この海は今や何処だろうと戦場なんだ。
183 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:48:36.04 ID:f1uEgEbX0
日向『目標の"船"は今のところ予定通りの航路を進んでいる。護衛艦隊も同じくだ。作戦に変更はない』

球磨姉と多摩姉が偵察機を構える。

日向『こっから先は隠密行動になる。海で抜き足差し足とはいかないがなるべくバレずに動かねばならない』

私と大井っちと木曾も魚雷を確認する。

日向『こちらからの通信もここで最後だ。後は餌に食いつくかどうかを待つのみ』

球磨「餌、か」

日向『ああそうだ餌だ。人類の為の尊い犠牲、と言うのもまあ間違いでもあるまい。今回で食いつくとも限らないしな』

大井「また、あの黒い煙が目印ってわけですか」
184 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:49:28.50 ID:f1uEgEbX0
球磨姉達が偵察機を飛ばす。

球磨「こんなのが正しいとは思えないクマ」

日向『だろうね。だが間違いということもあるまい』

多摩「そうかにゃ?」

日向『良い事と良い結果になる事は別だよ。逆もまた然り、だ。正しい事は正しい結果を出すだろうが、それが良い事である保証はない』

飛龍「結果もでてないのに結果論もないでしょ。今は今に集中すべきよ

日向『だな。さて、私から特に言う事はない。武運を』

こうしてあっさりと通信が切れる。
185 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:50:26.38 ID:f1uEgEbX0
飛龍「さーってこっからが長いわね」

北上「刑事ものとかである張込みだね」

木曾「アンパンと牛乳が必要だな」

球磨「粒あんを要求するクマ」

大井「えー私はこしあんがいいです」

多摩「呑気してる場合じゃないにゃ。こういう持久戦が一番キツいんだにゃ」

北上「一日目でホシが動くかもよ」

多摩「だからそれに備えて常にある程度の緊張感が必要なんだにゃ。それがキツいんだにゃ」

球磨「いやそれは大丈夫だ」

多摩「にゃ?」

球磨「全員速度をあげろ」

北上「え、じゃあ…」

球磨「戦闘が始まってる」
186 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:51:20.22 ID:f1uEgEbX0
一一一一一一一一一一一一一一一一一

提督「囮を使う」

北上「囮?」

提督「ヤツの狙いは常に船とその護衛だ。いくら強い艦隊でも守る対象がいれば話は別だ。それを突くのがこのクソッタレの手口になる」

吹雪「なのでそれを逆に利用するんです」

机の上にいくつかの資料が並べられる。

大井「これは?」

提督「向こう数ヶ月でヤツが襲いそうな船の情報だ」

北上「え!?そんなの分かるの?」

吹雪「あくまで予想ですけどね。こっちにはデータがありますから」

そうだ。例のレ級を個体として認識しているのは私達だけなんだ。

そのデータだけを見て分析できるのは私達だけなんだ。

提督「この船を餌にする」

大井「餌ってまさか…」

提督「まあそういう事だ」

一一一一一一一一一一一一一一一一一
187 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:52:16.60 ID:f1uEgEbX0
飛龍「状況は?」

球磨「まだ艦載機が飛んでる段階だ。普通の深海棲艦の可能性もある」

飛龍「個人的な感想としてはどう」

球磨「話に聞いていた通りすげぇ数の艦載機だ。正直可能性は高いと思う」

木曾「もっと詳しくは分からないのか?」

球磨「バレないように遠目でしか見れないんだ。これが限界」

多摩「様子見しつつ近づいてくしかないにゃ」

飛龍「そうね。皆いつでも戦えるようにしといて」

北上「了解」

飛龍「餌に、もっと食いつくまで」
188 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:53:02.38 ID:f1uEgEbX0
一一一一一一一一一一一一一一一一一

提督「レ級それ自体は実の所それほど脅威じゃない。倒せるかどうかで言えばここの艦隊でも十分に可能性はある」

吹雪「やっかいなのはアイツが海域のヌシとかじゃないという点に尽きるんですよ」

北上「ボスとかがいるんだよね。私は合ったことないけど」

提督「姫やら鬼に近い強さはある。でもアイツが違うのはゴールに出てこない所だ」

吹雪「倒せば終わりで全力を出せるボスと違って倒しても次があるという前提で全力を出せない。アイツはそれを分かって狙ってきてる」

大井「なるほど。確かに悪ガキ的な発想ね」

提督「どんなに強い艦隊でも守らなきゃいけない対象があって、なおかつ護衛途中であれば隙をつくには十分だ」

吹雪「その上でアイツにとっては例え全滅できなくても被害を与えられたら勝ち逃げできる」

北上「考えれば考える程嫌な奴だね」
189 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:53:45.09 ID:f1uEgEbX0
提督「あぁ、こっちの前提を上手い事突いてくるいやらしいやり方だ」

吹雪「だからこそこっちもその前提を引っくり返してやるんですよ」

北上「前提?」

提督「以前に飛龍や大井がヤツに遭遇した時がまさにそれだ」

大井「…つまり追撃艦隊が来る事、かしら」

吹雪「そう。護衛艦隊を沈めれば終わり、ゴール。それを前提に全力で襲ってきたからこそあの時のレ級は手負いかつ随伴壊滅だった」

提督「その状況をこっちで作り出してやるんだ。あの時はこっちも完全に偶然の遭遇だったから仕留め損ねた」

吹雪「今度は万全の状態で討つ」

提督「そのために」

一一一一一一一一一一一一一一一一一
190 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:54:23.98 ID:f1uEgEbX0
球磨「艦載機が大人しくなってきた」

多摩「どっちがにゃ」

球磨「うようよいやがる。レ級の艦載機だ」

飛龍「オーケー。そこは読み通りね」

木曾「ってことはそろそろ砲撃戦か」

球磨「こっからは空の監視が甘くなる。偵察機を近づける」

多摩「にゃ」

木曾「…ゆっくり見学、か」

球磨「…今ならまだ助けに行けるクマ」

北上「ここで10を犠牲にしても、これからの100が救える」

多摩「でもそれは90救った事にはならないにゃ。100を救って、10を見捨てただけにゃ」

北上「今更でしょ。それに元々誰かを救いに来てるわけじゃない」

球磨「ま、それもそうだクマ」
191 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:55:17.98 ID:f1uEgEbX0
飛龍「見張り、変わるわよ」

多摩「いや、このままでいいにゃ。それに飛龍は偵察位積んでないにゃ」

球磨「ここは球磨達に任せろ」

飛龍「沈むわよ。あの娘達」

サラっと、当然の事のように飛龍さんはそれを口に出した。

周囲を波の音だけが走る。

飛龍「私達が見捨てるから。今ここで、私達はあの娘達が沈むのを待ってるのよ」

多摩「…」

球磨「…」

飛龍「変わるわよ」

多摩「いや、このままでいいにゃ」

球磨「別に罪が肩代わり出来るわけもない。どうせ共犯だ。飛龍は温存しとく」

飛龍「…そ」
192 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:55:59.79 ID:f1uEgEbX0
音が聞こえる。

砲撃による爆発音だ。

実際の軍艦と変わらない威力を秘めた艦娘による戦闘だが実際の軍艦とは大きく違う点がひとつある。

スケールだ。

本来キロ単位での間隔で組む艦隊も私達はこうして手の届く範囲で進む。

戦闘時だってそうだ。

人一人分の高さでは見える水平線の距離も実際の艦とは比べ物にならないほど短い。

当然戦闘距離も短くなる。

まだ見えない水平線の向こうの戦闘。

だが音と煙がハッキリと認識できる。
193 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:56:37.22 ID:f1uEgEbX0
誰も話さなかった。

球磨姉も多摩姉も。

聞かなくても分かる。

段々消えてゆく音とは裏腹にいっそう煙が濃く高く登ってゆく。

私達艦娘からはあれ程煙はでない。

ならば何が起こっているか。

考えるまでもない。

長い戦闘だった。

時刻は三時を回った頃だろうか。

音が消えた。
194 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 10:58:56.72 ID:f1uEgEbX0
飛龍「状況は」

多摩「目標は中破よりの小破ってとこにゃ。残りは重巡一と軽巡一。どちらも中破にゃ」

球磨「なんで守れねえかよくわかった。こっちの弱みに漬け込んだクソみたいな戦い方だ」

飛龍「艦隊増速。仕掛けるわよ」

木曾「いよいよ、か」

大井「まずは手はず通りね」

北上「どこまで上手くいくか、どこまで上手くやれるか」

黒煙をあげる大型船に、再び向かってゆく。
195 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:00:08.96 ID:f1uEgEbX0
偵察機はあえて戻した。

目視で、ヤツを認識する。

北上「!」

ヤツもこちらを認識した。

間違いなく、

目が合った。

さあ、踊ってもらうぞクソッタレ!

飛龍「今までやってきた事、全部そのまま返してやる!!」

もはや隠す事をしなくなったその燃えるような殺意が次々と矢に乗って空に放たれる。

"搭載された全ての艦戦"が空を駆けてゆく。
196 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:01:16.04 ID:f1uEgEbX0
一一一一一一一一一一一一一一一一一

提督「デカくて鈍くて脆い船を護衛する、ってのはこれハッキリ言って無理ゲーだ。いやクソゲーか」

北上「無理じゃダメでしょ無理じゃ」

提督「だからまあクソゲーなんだよ」

吹雪「護衛艦隊と普通の艦隊で演習させたら護衛側が勝つのは無理ゲーです。でも深海棲艦相手ならそうとは限らない」

提督「アイツら目に付いたものから噛み付くからな。護衛対象を潰せば勝ち、なんて戦術的な行動は取らない」

北上「勝利条件が違うと」

提督「とはいえ近づかれるのはやはりまずい。故に護衛艦隊がやるのは単純明快な先手必勝見敵必殺だ」

吹雪「艦娘の戦闘において唯一戦闘スケールが変わらない空。艦載機の、それも艦攻艦爆による開幕航空攻撃です」
197 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:02:04.33 ID:f1uEgEbX0
提督「だから普通護衛艦隊ってのは艦攻艦爆マシマシだ。襲ってくるようなヤツらにはそれで対処出来る」

吹雪「だからそれを踏まえて襲ってくるような相手がいる、なんてのは考えられていないんです。というよりそこまでカバーは出来ないって話ですけど」

提督「ヤツとの戦闘の痕跡からもハッキリしてる。アイツは殆ど艦攻艦爆なんかを積まずに艦戦で制空権を取りに来てる」

大井「開幕の攻撃を防ぐため、ですか」

吹雪「というよりは空母の無力化でしょうね」

提督「艦攻艦爆を軒並み食われた空母なんて百いようが二百いようが浮いてるドラム缶と変わらんって事だ。とことんこっちを嬲る事しか考えてねえぜアイツ」

吹雪「だからこっちも同じ事をしてやるんです」

大井「同じ事、つまり」

一一一一一一一一一一一一一一一一一
198 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:02:52.78 ID:f1uEgEbX0
北上「って速っ!?」

物凄いスピードで艦戦達が飛んでいく。

飛龍「当たり前よ!バリちゃん達の努力の結晶!フル改修済みの馬鹿力揃いだもん!」

素人目でも分かる。

圧倒的な速度と練度。

制空争いは一方的な蹂躙になった。

多摩「なるほどにゃ。やっこさんやはり連戦を一切想定してないにゃ」

木曾「と言うと?」

球磨「ヤツの艦載機の数が減ってるんだ。恐らく先の戦闘で特攻なりなんなり無茶な使い方したんだ」

そう。全ては織り込み済み。

それだけに特化した一隻の空母に制空を取られる。

連戦で消耗しているところを狙われる。

自分がやっている事をやられる。

一体どんな気分だ。
199 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:05:47.40 ID:f1uEgEbX0
飛龍「よし取ったあ!!」グッ

最後の一機まで容赦なく叩き落とした飛龍さんがガッツポーズを取る。

大井「次は私達ですね」

北上「いっちょやっちゃいますか」

先制雷撃。

私達の最大の強みであり戦闘の流れを大きく左右するものだ。

でも今回の目的は少し違う。

敵の数を減らす事が目的ではない。

飛龍「来た!大井の方!」

艦載機から見たレ級の魚雷の航跡から飛龍さんが進路を読む。

北上「行くよ!大井っち」

大井「はい!北上さん」
200 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:06:16.59 ID:f1uEgEbX0
重雷装巡洋艦。

要するに魚雷バカ。

だけども今回の私達は魚雷特化の装備ではない。

レ級共と私達の丁度中間辺りで大きな水柱が上がる。

アイツは今どんな顔をしてるだろう。

どうやら命中したようだ。

"アイツの魚雷に"

分かっていた。アイツがまず狙ってくるのは先制雷撃が可能な艦娘だと。

狙いが分かれば後は練習通り。
201 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:06:49.80 ID:f1uEgEbX0
北上「へっ」ニヤリ

嗤う。

そういう気持ちがあるのも確かだが、何よりも大切なのは挑発だ。

目論見は全て暴いた。

小細工は全て潰した。

同じ手で同じ事を仕返してやった。

相手は手負いだ。それに既に船と艦隊を沈めている。

勝ち逃げはこの時点で可能だ。

だけど、

レ級「!!」

目が合った。

直感で分かる。表情が見える距離ではないがこの状況でこちらを見据えて一歩も退かないその姿勢からも。

そりゃ怒るに決まってる。

悔しいに決まってる。

冷静さを失うくらいに。

平静を装う事が出来ないくらいに。
202 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:07:19.89 ID:f1uEgEbX0
北上「ねえねえ今どんな気持ちってね」

大井「上手く決まりましたね」

木曾「さて。次は俺達か」

球磨「問題はこっからだ」

多摩「任せるにゃ」

多摩姉達が前に出る。

空は取ったし魚雷も潰した、がしかしそれでもレ級は戦艦並の砲撃を行える。

まだ油断はできない。

飛龍「やっぱ日向居ても良かったんじゃない?」

北上「そこはなんともね〜。こうして軽量編成にして相手に勝てるかもと思わせるのも大事なんだし」

多摩「足りない部分は愛でカバーにゃ」

北上「何故そこで愛」
203 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:08:02.92 ID:f1uEgEbX0
球磨「来る!」

球磨姉が恐らくほぼ直感でそう叫ぶ。

これも私達艦娘と深海棲艦の戦闘におけるチグハグな部分。

こうして身につけている砲の口径は精々バズーカがいいとこなのに私達の砲の起こす現象は元の砲を基準にしたものになる。

つまり、水平線すら超えて放たれる長距離攻撃が人型に合わせたこの短さで発射される。

音の壁を軽々打ち破るそれはその勢いを落とすこと無く、届く。

北上「!?」

先程とは比べ物にならないくらい大きな水柱が上がる。

至近弾。

人型である私達にとって至近弾による衝撃はそれほど問題ではない。

だが驚きを隠せなかった。

その威力や速度ではない。

精度にだ。
204 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:08:46.50 ID:f1uEgEbX0
本来砲撃は数打ちゃ当たる戦法だ。

こんなもん撃って当てられる方がどうかしてる。

だが私達の砲撃戦は撃てば当たる。

少なくとも実際の軍艦による砲撃とは比較にならない程に。

だから今、"外れた事"に驚いた。

だがそれは直ぐに無駄な思考だったと気づかされる。

続け様に四.五発の砲弾が私達に降り注いだ。

北上「皆!?」

水しぶきと波の揺れで定まらない視界の中必死に叫ぶ。

飛龍「報告!」

球磨「ってぇクマァ!大破だ!」

木曾「球磨姉!」

球磨「無茶苦茶やりやがるあの野郎!」

多摩「小破にゃ」

球磨「んなぁ!?」

多摩「バルジしっかり着込んできたにゃ」
205 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:10:00.40 ID:f1uEgEbX0
球磨姉と多摩姉が盾になってくれたおかげで被害は少なかった。

北上「大丈夫なの、ほんとに」

多摩「前に言ったはずにゃ。多摩は復讐とかどうこうする気はないにゃ。おめぇら守る為に来たんだにゃ」

球磨「クソァ!でもタダでやられるつもりはねぇ」

大井「球磨姉さん?」

飛龍「ひゅー、重巡撃破。流石のパワーね」

木曾「いつの間に撃ってたんだよ」

多摩「次来るにゃ!」

北上「!!」サッ
大井「!!」グッ

木曾「何とか凌ぐっきゃねぇな…」
206 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:10:37.92 ID:f1uEgEbX0
昼戦の目的は二つ。

挑発した上で逃がさずに誘い込む事。

孤立させる事。

後者は残り中破の軽巡一匹。簡単に片付く。

前者も今のところ上手くいっている。

後は、決め手となる私と大井っちがどれだけダメージを抑えられるかだ。

飛龍「来た!」

レ級のしっぽの様な部分からまたあのめちゃくちゃな砲撃が放たれる。

浮かぶ城とすら言われた堅牢な鉄の塊をぶち抜く為に作られた砲弾は今、私達に向けられている。

回避、防御に専念して、さらに向こうは冷静さを欠いているであるにも関わらず、しかしそれを補って余りある数が降り注ぐ。

いっそ清々しい。

死を感じる暇もないほどだ。

怯える私は鎮守府に置いてきた。
207 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:11:20.65 ID:f1uEgEbX0
飛龍「ていっ!!」ガイン
北上「ウワッ!?」

飛龍さんに抱きかかえられたかと思ったら鈍い金属音と、それに遅れて水面に砲弾が叩きつけられる音がした。

北上「飛龍さん?」

飛龍「ふー危ない危ない」

多摩「いや、アウトだにゃ」

飛龍「そお?そっかな」

飛龍さんが自慢の飛行甲板を使って弾を逸らしたと理解するのには少し時間を要した。

北上「って大丈夫じゃないよそれは!」

飛龍「セーフよ。元々攻撃機は積んでないし。それに…」

水平線を見る。

そこには今まさに海と交わろうとしている火の玉があった。
208 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:11:54.13 ID:f1uEgEbX0
球磨「冬は日が落ちるのが早くて助かるクマ」

多摩「さて仕上げにゃ」

木曾「っしゃいくぜ!」

レ級の砲撃のクールタイムを狙って一斉に動く。

木曾と私と大井っちと多摩姉で弾幕を張る。

飛龍さんと球磨姉で煙幕を張る。

レ級「!」サッ

突然の猛攻に警戒をしたのかレ級が軽巡を盾にして突っ込んでくる。

煙幕を張ったのだ。逃げられると思い、逃がすまいと突っ込んでくる。

そして
209 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:12:45.23 ID:f1uEgEbX0
レ級「!?」

真っ直ぐ突っ込んで来たレ級に魚雷が命中した。

深手とはいくまい。だが流石に中破にはさせたろう。

ヤツに向かって煙幕の中からこれ見よがしに私と大井っちが出ていく。

この距離なら分かる。

目を見開き私達を凝視するその表情が。

気づいたか?そうでなけりゃ困る。

"編成をわざと弱くして脅威度を誤認させる"

"味方を盾に本命である自分を守る"

どちらもお前がやってきた事だ。

それに今逃がすまいと煙幕に向かって突っ込んできたその気持ちは、かつての大井っち達と同じだ。

お前を追って船の黒煙に突入したあの時と。
210 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:13:14.37 ID:f1uEgEbX0
さぁどうする?逃げるか負け犬?

だがそうはさせない。

その為にこうしてお前の前に立ってやってんだから。

さあ来い。


北上「ギッタギッタにしてあげましょうかね!」

大井「海の藻屑となりなさいな」


今まさにお天道様がその瞳閉じる。

211 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/03(土) 11:18:34.30 ID:f1uEgEbX0
待機列からこんにちは

このタイトルの為に長くなりました…
レ級はホントずるいですよね。あの見た目と一匹狼感で許されていたけれど最近大規模作成でもチラホラと…
レ級の砲撃とかはアーケード使用です。

もちっとだけ続くんじゃ
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 12:00:41.48 ID:FQFZFapio
くーっ!この引き!
次の更新はよ
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 12:14:17.29 ID:zsiESTuRo
乙なのね


待機列? 横須賀かな?
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/04(日) 12:57:35.34 ID:/xQY7Cd30
大破してなお重巡を叩き潰す球磨、やはり野獣
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 08:36:00.63 ID:CdXe9zgwo
おつ
216 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:45:04.76 ID:D+5klDDp0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

川内「私達の攻撃で最も速いのはなんだと思う?」

北上「へ?」

ボッコボコにされた演習の帰り道。川内はそんな事を聞いてきた。

川内「あー速いってのはこの場合攻撃をするまでの動作から相手に当たるまでの時間がって事ね」

北上「んー、速いねぇ」

相手より先に出せるという意味なら艦載機による奇襲とか設置型の機雷とかが思いつくが、そういう前提となるとなんだろう。

北上「普通に考えたら砲撃だよね。それも大口径の」

川内「まあそうね。だから当然不正解」

北上「デスヨネー」

川内「でも答えは単純。一番早い、というより"それより速い物が存在してはいけない"って感じかな」

北上「…はい?」

何言ってんだこいつ。
217 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:45:58.69 ID:D+5klDDp0
川内「答えはこれ」カチッ

そう言って懐から出したそれを点ける。

北上「うわ眩しっ」

川内「正解は光。文字通り光の速さってね」

北上「そりゃ光は速いだろうけど、攻撃とは違うでしょ」

探照灯は諸刃の剣だ。夜間の攻撃を有利にはするが使えば狙われる。装備の枠も取られる。

ここぞという時にしか使えないピーキーな装備だ。しかも攻撃ではなくサポートの。

川内「でも今眩しいってなったじゃん」

北上「なったけどさ、普通は、普通は…」

川内「普通なら使えない、普通なら」

そうだ。普通の事をやる気は無い。

川内「別に探照灯使えってわけじゃないよ?持ち物一個潰れるからリスクもあるし。つまりもっと頭を柔らか〜くしてけって事」
218 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:47:06.12 ID:D+5klDDp0
北上「柔らかくかぁ。常識を変えるのって一番難しいよね」

川内「でも楽しい」

北上「参考までにさ、今近距離で私とやり合うとしたらどうする?探照灯以外で」

川内「この距離なら撃つより蹴るね。ですぐ距離をとる。昼の単純な撃ち合いならこっちが有利だし」

北上「何処蹴る?」

川内「そりゃ脚でしょ。魚雷潰せるし足止めれば的だもん」

北上「そういうのがサラッと出るの怖いよね」

川内「いやぁ照れますなあ」

北上「艦娘やめて忍者やりなよ」

川内「何度か試したんだけどさ。魚雷は流石にクナイみたいには使えなかったんだよね」

北上「試すなんな事」

川内「あ、忍者と言えばさ、こういう金属製の糸とか色々使い道あっていいよ」

北上「だからなんでそんなもん忍ばせてるのさ…」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

219 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:47:59.64 ID:D+5klDDp0
北上「!」ガチャ
大井「!」スッ
レ級「!」グワッ

赤く染まる水面の上で全員が一斉に構える。

大井っちが単装砲を。

私が魚雷を。

そして、それを見たレ級が"私に砲塔を向ける"。

この状況で真っ先に警戒するのは魚雷だ。ならばそれを構えた方を先に狙う。

狙うために見る。

だから

北上「へっ」

腕の魚雷発射管を傾ける。

発射するためではなくその側面、"反射板を取り付けてある面"の角度を合わせるために。
220 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:48:34.30 ID:D+5klDDp0
日が沈む瞬間の、その最後の輝きがそこに反射する。

"私の方を見たレ級の眼球に向かって"。

雷撃よりも砲撃よりも速く、届く。

まさかこのパターンが使えるとは思わなかった。

でも作戦ABCは今は無理だ。DEもいいが使えるならばFでいきたい。

これは提督の指揮の元行う通常の将棋とは違う。

詰め将棋なんだ。

お天道様がとうとうその瞳を閉じた。
221 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:49:05.91 ID:D+5klDDp0
光による目潰し。

しかしこれ自体が攻撃できる隙にはならない。

何せ本当に一瞬だ。

雷撃は当然間に合わない。

砲撃はいけるだろうがそもそも私達の豆鉄砲をいくらか当てたところでさして意味はない。

あくまで夜戦のスタートをこちらが先にとる為だ。

徐々に暗闇に慣れていったこちらと違って向こうは寸前に強烈な光を浴びてる。

暗闇には暫く目が慣れないはずだ。

そこを先に動く。
222 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:49:48.80 ID:D+5klDDp0
北上「行くよっ!」スチャ
大井「はい!」

私も"単装砲を取り出す"。

アイツはこう思ってるだろう。

一人は雷撃、もう一人は砲撃、と。

私が単装砲を取り出すところは見えていないはずだ。

レ級のいた位置に向かいながら大井っちと並んで交互に撃ち込む。

まるで単装砲を持ってジグザグに移動しながら撃っているかのように。

この状況でヤツは迂闊に撃ってはこれない。

ヤツが警戒しているのは魚雷の方だ。こんな豆鉄砲ではない。

ならば砲撃で位置がバレるのを嫌がるはずだ。

この状況なら"砲撃をしながら向かってきているのは囮"、"本命の魚雷は別から来る"と考えるだろう。
223 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:50:43.15 ID:D+5klDDp0
大井っちが撃ちながら右にそれていく。

それに合わせて私は撃つのをやめ少し左に逸れながら魚雷を構える。

大井っちがそれた以上直前まで居たそのコースには誰もいないと思うはずだ。

まずはここから魚雷を撃ち込む。当たればめっけもんくらいだが、ここから徐々に追い込んでい

北上「!?」

一瞬寒気がした。それが忘れかけていた野生の勘だと気づいた時には少しばかり遅かった。

右足に強烈な衝撃が発生した。

北上「なァっ!?」

魚雷!?放っていたのか!いやでも、なんで場所がわかった!?最初に突っ込んだコースからはそれている!

しかし、混乱する私の横を答えがすり抜けて行った。

北上「くっそぉ。防御力はないんだよぉ…っ!?」

魚雷がまた一つ私の左足を掠めていったのだ。

大井『北上さん!?』

北上「クソッ!アイツ、ばらまいたのか!」

搭載機の数、砲撃の数と威力、どれも規格外。それは魚雷の搭載数すらもそうだというのか!

最初の突撃の時点でこちらに向かって放射状にばらまいてやがったんだ!夥しい数を!
224 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:51:37.59 ID:D+5klDDp0
沈黙していたレ級から砲撃音が聞こえた。

私が被弾した事に気づいたらしく、おおよその位置にあの無茶苦茶な砲弾の雨を降らせてくる。

最悪だ。

数と力によるゴリ押し。

想定していた中で最も恐れていた事態だ。

何故って小細工が通用しないからだ。

大井『北上さんっ!!』

反対側で砲撃が始まった。

大井っちが私から気を逸らそうと砲撃をしているようだがそれも気休めにしかならないだろう。

レ級の砲撃も今のところ命中はしていないが時間の問題だ。

数で押せると分かったならいずれこっちがジリ貧になる。

最早猶予は無い。

獲物を追い詰める猫では勝てない。

窮まった鼠にならなくては。

どうせ捨てる命だ。
225 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:52:09.09 ID:D+5klDDp0
周りを包む死の音の中で自分でも驚くほど冷静に状況を確認する。

右足の魚雷発射管はダメだ。

左足と左手は無事か。

やるしかない。

足の魚雷発射管を外し準備をする。

よし行ける。

北上「こっちだクソッタレ!」

単装砲を撃ちながら真っ直ぐレ級に突っ込む。

レ級の砲撃が止まる。

そりゃそうだ。一つと思っていた砲撃が急に二方向から来るんだもの。

北上『大井っち!魚雷も砲撃も全部叩き込んじゃって!』
大井『っ!はい!』

忘れちゃいけない。追い詰められているのは向こうも同じなんだ。

一歩でも引いた方が負ける!
226 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:52:46.30 ID:D+5klDDp0
砲撃が始まった。

やはり狙いは大井っちか。

そりゃそうだ。こっちが手負いなのは分かってる。なら脅威度は大井っちの方が高い。

左手の魚雷を構える。

足を身軽した分いくらか速くはなってるはずだ。こっからはスピード勝負になる。

レ級に向かって真っ直ぐ進む。

直後、"レ級の放っていた魚雷に当たった"。
227 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:53:15.57 ID:D+5klDDp0
衝撃で大きく揺れる。

大井『 !? 』

大井っちが何やら叫んでいる。

かき氷を食べた時みたいに頭がキーンとする。

大井『 !!!』

砲撃音がいっそう激しくなる。

大井っちが奮闘しているようだ。

でも無理だ。

砲撃とは違う爆発音がした。

大井っちが被弾したみたいだ。

それでも大井っちの砲撃音は止まらない。

続け様にまた爆発音がする。

それでも大井っちは止まらない。
228 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:53:46.25 ID:D+5klDDp0
でももう無理だ。

これ以上は。

レ級がニヤリと笑うのが見える。

今までもそうやって多くを沈めてきたのだろう。

だからガキだと言うんだ。

お前は知らない。

捕食者は獲物にトドメを指す時こそ最も無防備なんだ。


北上「沈んで果てろ」ガチャ
レ級「!?」


レ級の背後に思いっきり連撃をぶち込む。
229 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:54:24.88 ID:D+5klDDp0

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

提督「雷撃特化じゃなくていいのか?」

北上「師匠からのアドバイスでさ」

吹雪「師匠って、あぁ川内さんですか。不思議と説得力あるから面白いですよね」

北上「"魚雷による一発があると思わせる事が最大の武器になる"だって。だから単装砲も持ってく」

大井「訓練をしていてもやっぱり魚雷だけでは動きが少ないですから」

提督「なるほどな。ならそれで組み立てていくか」

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230 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:55:12.77 ID:D+5klDDp0
大井「北上さん…北上さんなの!?」

北上「まあね。ほら、ちゃんと足も付いてるでしょ?」

大井「でも!」

北上「いやぁやっぱ難しいよねぇこの艦」

ボロボロの大井っちが駆け寄ってくる。

今にも抱きつこうという勢いだったが私の近くに来てピタリと止まった。

なにせ"レ級はまだ沈んでいないんだから"。

中破の連撃ではやはり轟沈とまではいかなかったようだ。

特に魚雷の数が足りなかった。

"私へ向けられていた魚雷を魚雷で相殺した"のが原因だ。

一度成功したならまたレ級は魚雷をばらまいて私を処理しようとする。だからそれにあえて乗ってやった。

向かってくるであろう魚雷に真っ直ぐ突っ込んで確実に処理できる距離まで引き付けた。

この暗闇では殆ど航跡が見えないからだ。

あんまり近かったから自分でも直撃したと思ったくらいだ。でもだからこそレ級も私が被弾したと思ったはずだ。
231 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:56:44.17 ID:D+5klDDp0
レ級は沈むまいと必死に足掻いていた。

腰から上だけはなんとか浮いているが下半身から徐々に底へと沈んでいる。

北上「…」

こいつはこうやって溺れる人々を眺めながら、何を思っていたんだろうか。

単装砲を構える。

右足はやられたし左手の魚雷は撃ちきった。とはいえトドメならばこれで十分だ。

"トドメだけなら"

大井「…」

大井っちが横に並ぶ。

装備は全部ダメになっているようだ。間違いなく大破だな。

でもまあ結果としては十分だ。

望んでいた以上の結果だ。

この状況は。
232 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:57:53.21 ID:D+5klDDp0
私はしっかり意識していた。

勝利の瞬間こそが最も危険だと。

大井「!?」

だから突如水面から飛び出し右手の単装砲を払い除けたレ級の尻尾と、してやったと言う顔をするレ級を冷静に見ていた。

そして左ポケットに忍ばせていた友人からのプレゼントを素早く構えて放つ事が出来た。

ベレッタ、いやサイコガンだったか。

近距離かつ装甲の薄い部分ならいけると言っていたが、これは想像以上だ。

眼球をえぐられたレ級が情けなく反り返る。

鼠を追い詰めるのではなく、逃げ道をあえて残しておく。

逃げられる、という希望を残しておく。

ただの鼠は猫を噛めない。

単装砲を囮にするため左足の裏に鉄線で括りつけて隠していた魚雷を素早く外し


呆気に取られている大井っちと

のたうち回るレ級と

私の前に放る。
233 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:58:43.76 ID:D+5klDDp0
これで全員だ。

仇はこれで全員だ。

一体と一人と一匹がここで死ぬ。

きっとおかしな考えなんだろう。

私の知る限り人間にとってこれはおかしな考えだと理解している。

でもその上で私は納得している。これは私にとって正しい。

"飼い主の仇は今目の前に揃っている"。

これでいいんだ。
234 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:59:14.17 ID:D+5klDDp0
何もかも忘れて鎮守府に居たいと思わなかったわけじゃない。

皆や、提督の、提督の隣に居たいと思わなかったわけじゃないんだ。

でも私は提督傍にはいられない。

そこには、いや違う。そうじゃない。

そんなんじゃない。

でもそこには大井っちがいて、だけど私は、そもそも北上じゃなくて、

分からない。

またこうなる。

腹の中のグツグツした何かでいっぱいになる。

私はただあの手で撫でられたいだけなんだ。

あの腕の中に帰りたいだけなのに。

でももうそれが出来ないなら。

邪魔した奴は、邪魔する奴は

消えちゃえ。

怨は返さなくちゃ。
235 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 03:59:48.24 ID:D+5klDDp0
それでも一瞬だけ、ほんの一瞬だけ迷った。

私は私の中にいる北上を道ずれにしてしまう。きっと提督や皆の事が大好きだった彼女を。

それにとうとう会えなかった白猫の事を思い出す。

ほんの少し、体から力が抜けた。

だから私は横からの衝撃に耐える事が出来ずにモロに吹っ飛ばされた。

北上「は?」


大井「さよなら黒猫さん」


ニヤと満足気に笑う彼女。

次の瞬間私を襲った衝撃が魚雷によるものなのか、その言葉によるものなのか私には分からなかった。
236 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 04:02:21.11 ID:D+5klDDp0
走馬灯のように記憶が浮かんでは消える。

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明石「記憶が蘇る方法?」

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明石「改造による強化や艦種の変更はその船の記憶をより定着させたり、違う記憶を入れたりするものなんだけど。それもきっかけになったりはするわね」

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北上「あのさ、前に私と大井っちが改装した時の事覚えてる?」

明石「そりゃもちろん。ついこの前だしね」

北上「あの時大井っちが何か聞きに来なかった?」

明石「えーっと、あーきたきた。なんか体調が優れないみたいな事言ってた」

北上「それで!それでなんて?」

明石「まあ改装すると身長とか身体の造りが少し変化したりするし、力加減も変わるから慣れれば平気よーって言ったくらいかな。

後ほら、北上にも話したけど別の記憶が混じったりするよって話とか」

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大井「ふぅ…」

北上「…」

またか。

改造してから何故か唐突に溜息をつき悲しげな表情をする時がちらほら。

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走馬灯とは、死に瀕した時それを回避するために記憶を漁るのが原因だと言う説があるらしい。
237 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 04:02:59.73 ID:D+5klDDp0
私は最初から黒猫だった。

たまたま最初から黒猫の記憶が混じってた。

でもじゃあ向こうは"そうじゃなかったとしたら?"

いつからだ?

いつから私が黒猫だと気づかれていた?

いや、思えば多摩姉を疑ったりして私は随分それについて色々喋っていた。

当事者が聞けばすぐにわかるような事を口にしていた。

思い当たる節は色々あった。

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大井「でも実際麦畑で追いかけっこなんかしたら絶対捕まえられませんよね。お互いに全身スッポリ覆われてしまいますから」

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大井「猫は草を食べるんですよ。本能的なものなので何でと聞かれると分かりませんが」

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思い出せば、キリがない。
238 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 04:03:30.10 ID:D+5klDDp0
大井っちは思い出したんだ。

いや、それは思い出したという表現とは違うのかも知れない。

"他の記憶が混ざる"。そう言っていた。

私もそうだ。自分の中に何かがある、という感覚。

大井っちはきっとあの日から自分の中に自分以外の何かが生まれたんだ。

だから悩んだんだ。

あの時の落ち込みはそういう事だったんだ。

そして気づいた。黒猫である私に。

そして、


自分がかつて飼い主を殺していた事を。
239 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 04:03:59.21 ID:D+5klDDp0
それはどういう感覚だろう。

自分でない自分。

私も未だにそれを飲み込めていないんだ。

だから大井っちは距離を取った。

私からも、提督からも。

飼い主を、父親を殺めたと分かったから。

それがどこかで変わった。吹っ切れた。

何があったかは分からない。

でも大井っちは変わった。

私が全て知った上で復讐を選んだように、大井っちも選んだんだ。

きっと私と同じように。

"飼い主の仇を打つ"

"飼い主に会いに行く"

私達はすれ違いながら全く同じ目的で動いていたんだ。
240 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 04:04:33.45 ID:D+5klDDp0
でも、じゃあ、なんで、どうして?

私を突き飛ばしたんだろうか?


ニヤと満足気に笑う彼女。


私とは違うその迷いのない笑顔がこびりついて離れない。

それでもとうとう、私の意識は深い海の底へ沈んでいった。
241 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/08/20(火) 04:08:25.08 ID:D+5klDDp0
艦娘の夜戦ってどんなんだ…?と悩みだしたらドツボにハマって…


"北上の話"は以上で終わりです。



でももちっとだけ続くんじゃ。
次は一話より前の話です。
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/20(火) 12:40:08.67 ID:cJd8koUXO
戦闘描写はなー、と思ったが
自分がここで読んでるので真面目に書いてるのもう1つ位しかないや
擬音に頼ると味気ないし大変そう
更新乙です
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 15:37:41.99 ID:QwfSduBCo
おっつー
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 19:51:34.53 ID:M89RmBJ6O
ニッコリではなくニヤなのはダブルミーニングなのかー?
245 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:42:41.24 ID:G5m/2Yis0
・ 前書き




北上「」ハッ

目が覚めた。

しかし朝起きる時の眠りからだんだん覚醒していく感覚とはちょっと違う。

やけに意識がハッキリしている。

それにしても…

北上「目が覚めたら見知らぬ天井、ってホントにあるんだなあ」

多摩「第一声がそれかにゃ」

北上「うえっ!?」

首を声のした方へ向ける。

どうやら仰向けでベットに寝ているらしい私の右側。椅子に座りこちらを見つめていたのは多摩姉ちゃんだった。

北上「えーと、おはよう?」

多摩「早くないにゃ。とても遅いにゃ、眠り姫め」

北上「私はシンデレラらしいよ」

いつだったか海猫が言っていた戯言を思い出す。

多摩「それは知らなかったにゃ。どうりで王子様のキスじゃ目覚めないはずにゃ」

北上「王子様?」

多摩「気にするにゃ」
246 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:43:21.08 ID:G5m/2Yis0
カーテンから柔らかい光が部屋に差し込む。

今は午後のようだ。

北上「…ここ、鎮守府なの?」

多摩「そうにゃ。印刷室横の空いてた部屋にベットとか機材持ち込んで無理やり医務室に仕立ててあるにゃ」

北上「あぁ、そういや鎮守府にゃ医務室ないんだったね」

多摩「普通は入渠で治るからにゃ」

北上「…」

多摩「…」

北上「今どういう状況?」

多摩「シンデレラが眠り込んでから三日経ってるにゃ」

北上「三日!?」

想像以上の事実にベットからはね起きそうになった。

のだが、"しようとしたけどできなかった"。
247 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:43:59.22 ID:G5m/2Yis0
北上「あ、あれ?」

多摩「明石曰く、中身が死んでる状態だそうにゃ」

北上「中身?」

多摩「外傷は入渠で治ったにゃ。でも何故か目を覚まさなかったにゃ。だから中身が無くなってるって、魂的な話にゃ」

北上「成仏してた?」

多摩「かもしれんにゃ。だから今は多分中身と体のリンクが切れてるんだと思うにゃ。身体があんまし動かないのはきっとそれにゃ」

北上「どうなってんだ私達の体。ロボットか何かなのかな」

多摩「ま、考えてみりゃ当たり前の話にゃ。乗り手のいない艦は動きようがないにゃ」

北上「…それもそうだ」
248 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:44:27.70 ID:G5m/2Yis0
北上「…」

多摩「…」

沈黙が走る。

意識はハッキリしてるのにどうにも頭が回らない。

ボーッとしてるわけじゃないのに、まるで中身が抜け落ちてるような気分だ。

あ、右手が動かせた。

そっと手を上げると、多摩姉がその手を掴んでくれた。

北上「ちょっと動かせてき、え、多摩姉ちゃん?」

多摩「どうしたにゃ?」

北上「いや、その」

多摩「?」

北上「泣いてる、よ?」

多摩「…あぁ、まだ残ってたのかにゃ」
249 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:45:07.44 ID:G5m/2Yis0
表情を一切変えずに静かに涙を漏らしていた。

北上「…」

多摩「北上」

北上「は、はい」

多摩「ふんっ!」ガッ
北上「グエッ!?」

一切の躊躇のない頭突きが入った。

北上「ぉ、ぉおおぉぉぉ…」

唯一動かせる右手で頭を抑える。

とんでもない威力だ。まさか石頭だったとは。

北上「…ってあれ?いないし」

扉が閉じる音がした。

部屋を出ていったのか?
250 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:45:43.45 ID:G5m/2Yis0
そこからが大変だった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

明石「…生きてるわね」

夕張「足はどう?」

北上「まだ動かせないかな」

明石「まあこの分なら時間の経過で治るでしょ」

夕張「ぶっちゃけ私達がどうこうできる範疇じゃないしね」

北上「中身の問題、なんだっけ」

明石「多分ね」

「コラァァァ!!」

北上「ん!?」

部屋の外から凄い声がした。

夕張「あ、吹雪の声だ」
251 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:46:14.43 ID:G5m/2Yis0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

吹雪「ど〜もお久しぶりです北上さん。私の事覚えてます?」

北上「提督のおねーちゃん」

吹雪「もっかい寝ときます?」

北上「遠慮しとく」

夕張「なんかあったの?声がしてたけど」

吹雪「どっから聞きつけたか部屋の外野次馬だらけですよ。皆心配してましたから」

明石「あ〜」

吹雪「一応まだ怪我人扱いなんですから騒がしくして欲しくはないんですけれどね」

夕張「なら私達も退散しますかね」

吹雪「大丈夫そうなんですか?」

明石「多分ね。正直私達の管轄外だし」
252 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:46:44.04 ID:G5m/2Yis0
夕張「というわけで北上ぃ」

北上「な、なに?」

明石「約束、覚えてるわよね?」

北上「約束?」

夕張「私言ったわよ。生きて帰るための武器だって」

北上「あー…」

明石「命知らずの馬鹿にはおしおきが必要よね」

北上「ず、頭突き以外でお願いします…」

夕張「足はまだ動かないのよね?」

北上「待て何をする気だ」

明石「じゃバリちゃん足持ってて」

夕張「あいあいさー」

北上「ちょ!?」
253 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:47:16.95 ID:G5m/2Yis0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

吹雪「生きてましたね」

北上「生きてたね」

吹雪「実は幽霊だったり?」

北上「それは私には確かめようもないかな」

吹雪「まあ足はありますし大丈夫でしょう」

北上「まだ動かないけどね」

吹雪「ですね」ピラッ

北上「スカートめくらないで」

吹雪「ノーパンってどんな気分ですか?」

北上「寝てる分には気にならないかな。それより友人二人にパンツ剥がれることの方が恥ずかしい」

吹雪「あのパンツどうする気なんでしょうか」

北上「あまり考えたくはないね…」
254 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:47:57.19 ID:G5m/2Yis0
吹雪「聞かないんですね、どうなったか」

北上「…」

吹雪「聞かれても答える気ないんですけどね」

北上「おい」

吹雪「私より相応しい人がいますからね。ここで話したら興醒めでしょう」

北上「そんな事は、ないんだけどね」

吹雪「さっき球磨型姉妹に会ってきましたよ」

北上「…」

吹雪「球磨さんと木曾さんもここに来る気満々でしたけど、多摩さんの腫れ上がったおでこを見て止めたみたいです」

北上「…」

最悪三人に頭突きを食らっていた可能性もあったわけか…多摩姉に感謝だな。

吹雪「他の娘達は一応立ち入り禁止です。それでも入口に人集りができてる辺りモテモテですねぇ北上さんは」

北上「…」
255 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:48:27.79 ID:G5m/2Yis0
吹雪「さて、ここは私もカッコつけてデコピンでもして部屋を去っていくのがいいんでしょうけれど、私、こう見えて結構悪い娘なので」

北上「それは、知ってる」

椅子から立ち上がった吹雪はとても悪い顔で、とても、とても楽しそうに笑う。

吹雪「反抗期なんです。素直じゃなくて、正直なんです。だから北上さん」

北上「なに」

吹雪「ありがとございました」ペコリ

お巫山戯でもなんでもない心からのお礼だった。深々と下げられた頭に私はかける言葉が見つからなかった。

北上「…」

吹雪「ご褒美はちゃーんとセッティングしておいたんでそこはご心配なく。それでは」

北上「…」
256 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:48:56.32 ID:G5m/2Yis0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

提督「よっ」

北上「遅い」

提督「第一声がそれかよ。お前自分の立場分かってんのか」

北上「部屋の入口でグダグダしてた人に言われたくはない」

提督「ぐっ…いやだって、後ろめたいと言いますか…つか気づいてんのかよ」

北上「気配とか音でわかるよ」

提督「相変わらず敏感だなそういうのには」

北上「まあ、ね」

カーテンからは月明かりが差し込んでいた。

昼と違い刺すような夜の冷気が窓から入ってくる。
257 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:49:36.68 ID:G5m/2Yis0
提督「よいしょっと」

ベットの脇の椅子に座る。

そこにはきっとこの三日間、色々な人が座っていたのだろう。

提督「とりあえずこれが躊躇した理由その一な」

北上「ん?」

提督「…ほれ」

気まずそうに差し出されたそれは

北上「」

友人に剥がれたパンツだった。







北上「死にたい」

全身で布団にくるまる。

提督の顔を見れなかった。

どうにも恥ずかしくって仕方がない。

提督「何故か夕張達に押し付けられてな…すまん」

北上「提督が謝る事じゃないけどさ…とりあえず返して」

布団から手だけ出してパンツを受け取る。

提督「おう。身体は動くようにはなったみたいだな」

北上「まあ半分くらいは、あー」

提督「どした?」

北上「足がまだなあ。どうやって履こうか」
258 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:50:04.69 ID:G5m/2Yis0
提督「あーね」

北上「…」チラッ

提督「…え、俺?」

北上「え?」

提督「あっ」

北上「えぇ!?ヤダヤダ!それだけは絶対にダメ!」

提督「お、おう!わりぃ、ってしねーよそんなこと!いや決してしたくない訳じゃなくてだな」

北上「え」

提督「何も言ってません」

北上「変態」

提督「うるせえ!もぉいいよパンツくらい。裸の付き合いした仲じゃねえか!」

そういやそんな事もあったな。あの頃はまだなんとも思わなかったけれど。

北上「あー、うん…」

提督「…」

なんだろう。変に気まずい。パンツ云々ではなく何か噛み合わない。

北上「あはは」
提督「わはは」
259 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:50:38.91 ID:G5m/2Yis0
北上「それでさ、あの後どうなったの」

提督「どうなったかは正直分からねえんだ」

北上「どういう事?」

提督「北上も大井も反応が消えた。でも飛龍達も手負いだ。迂闊に動く訳には行かない。まして夜だしな」

北上「それもそうか」

残された皆の事なんて考えてなかった。自分の事しか見えていなかった。

提督「だから吹雪のおかげだよ。相変わらずな。俺は何も出来ちゃいねえよ」

北上「吹雪?」
260 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:51:18.48 ID:G5m/2Yis0
提督「あいつ作戦時何処にもいねえと思ったら叢雲連れて元帥のおっさんのとこ行ってたらしくてな」

北上「ええ!?そんないつの間に、いや、あーそっか」

"叢雲とデートしなきゃなんで"とはそういう意味か。勘繰られるくらいなら自分から巻き込んでしまおうという魂胆だろう。

提督「全部話した上で救援を寄越せと言ったらしい。無茶やってくれる。でも正解だった。アイツやっぱすげぇや」

あの人にとってもレ級は討つべき仇だった。でもそれはそれとして提督の勝手な復讐も止めようとしていた。

後者が既に止めようもない所に行っているのならきっと手を貸してくれる。それに賭けた、という事か。

提督「そんで飛龍達は無事確保。だが問題はお前らだった」

北上「反応は消えてたんだよね」

提督「ぶっちゃけ轟沈判定だよ。そうでなくともこの広い海で何の目印もなしに漂う人一人見つけるなんて無理ゲーだ」

北上「ならどうやって。偶然?」
261 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:51:45.19 ID:G5m/2Yis0
提督「これ、お前は見覚えあるだろ」

提督の懐から出てきたのは

北上「え」

少し緑っぽいコンドームだった。

提督「お前、これスマホに入れてたろ」

北上「いや入れてたけど、アレだよ?金運上がるって聞いたからだからね!変な意味じゃなくて!」

提督「そうじゃなくてな。これ、夕張の作ったやつだろ」

北上「へ?うん、そう、だけど…あー!!」

提督「そういうこった」

北上「え、えぇ…」

"使えばGPSで居場所が特定できるやつ"

提督の浮気現場特定出来るとかなんとかあのメロンは言ってたな。
262 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:52:16.80 ID:G5m/2Yis0
提督「急に夕張が、ここ!ここに北上がいる!って位置情報出してきてな。何言ってんだどうして分かると聞いても何にも答えねえし、他に宛もないから藁にもすがる気持ちで行って見りゃホントにいるんだもんな」

北上「うそぉ…私コンドームに命救われたの?マジ?嘘でしょ?」

提督「良かったな。しっかり命を包んでくれたぜ」

北上「最悪だぁぁ…後その言い方もサイテー…」

提督「ははは、助かったんだしいいじゃねえか」

北上「良くないよぉ…」

再び布団にうずくまる。

恥ずかしいなんてもんじゃないぞこれ。

提督「人生何があるかわからんな」

北上「ホントにね…」
263 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:52:56.79 ID:G5m/2Yis0
提督「後は、いや、それはいいや。北上」

北上「は、はい」

急に改まって私の名前を呼ぶ。

そう、私の名前を。

提督「おかえり」

あぁ、そうか。

そうだった。

私は帰りたいと思ったんだ。

向こうではなく、ここに、この場所に。
264 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:53:35.89 ID:G5m/2Yis0
私も彼女も同じだった。

要するに二匹とも帰りたかったんだ。

でも私にとってはここがその場所になっていた。

その事に私が気づいていないと、彼女は気づいていた。

だからあんな事をしたんだろう。

見事に噛み合わず、綺麗にすれ違って、結局お互い帰るべき場所に帰れたわけだ。

愛する人の元へ。

全部彼女の思惑通りになっちゃったかな。

だと言うのに私は、そんな事露ほども知らずに、あんなこと考えていた。

自分の事しか考えていなかった。
265 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:54:08.76 ID:G5m/2Yis0
北上「ただいま…」

提督「それ、皆にも言ってやれよ?」

北上「分かってるよ。また頭突きはゴメンだからね」

提督「それと、こっちは大井との約束でな」

北上「大井っちの?」

大井っちが残した、大井っちの遺した約束。

そういや以前提督と約束がどうこう言ってたっけ。

提督「はい」パカッ

北上「え」

懐から出した小さな箱を開ける。

黒くて丸みを帯びた四角く、少し柔らかな見た目のその箱の中には首輪よりも小さい輪が入っていた。

提督「散々なんか洒落たセリフ言えとか言われたんだが、どうにも思いつかなくてな」

北上「いやそうでなくて」

提督「え?」

北上「い、え、提督、私の事気になってんの?」

提督「気にというか、しゅ…好きです」

噛むなよ。
266 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:54:46.51 ID:G5m/2Yis0
北上「だって、あれ、大井っちじゃないの?」

提督「一目惚れです」

北上「しかも一目惚れ!?」

何言ってんだこいつ。

提督「大丈夫か?さ、流石にこのタイミングは変だったか?」

北上「悪いのはタイミングじゃない…待って、提督大井っちが好きなんじゃないの?」

提督「いやそれはない。てかそんなふうに思われてたのか!?」

北上「思われてるでしょぉそりゃあ」

提督「うぉぉぉぉ…」

地獄のように深いため息。

提督「いやぁ、でもうん、そういう事かぁ。大井も吹雪もちょくちょくなんか言ってたのはそういう事かぁぁ…」

北上「思い当たる節はあるんだ…」
267 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:55:20.58 ID:G5m/2Yis0
提督「北上が来る一年前に大井が来たろ?それからずっと北上サン北上サンうるさくてな」

北上「あーね。ま大井っちはそだね」

提督「一体どんなやつなんだ北上ってのはと思いつつ一年後、ようやく本人に会えたわけだ」

北上「あの時か。なんかもう随分と昔に思えるね」

提督「一目惚れです」

北上「嘘ん」

提督「マジ」

北上「具体的にどこら辺が?」

提督「え、いやそれは…」テレッ

北上「えっ、キモっ」

提督「」

怪我人のベットの横でモジモジされても困る。
268 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:55:54.77 ID:G5m/2Yis0
提督「大井にも言ったんだよ。惚れましたって」

北上「言っちゃうんだ」

提督「流石提督ですいい趣味してますって言われた」

北上「言っちゃうんだ…」

提督「それはそれとして北上に指一本でも触れたら酸素魚雷ぶち込みますって言われた」

北上「それは言うね間違いない」

提督「そっからはガードが固くてホント…」

北上「流石大井っちだ」

提督「北上のここが良いみたいな話ではよく盛り上がるんだけどな、近づくのだけはNGなんだと」

北上「するなそんな話ぃ…」

何度目か、布団で顔を覆う。

よく2人でなんか話してたのはそれか!アホか!

アホか…
269 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:56:38.25 ID:G5m/2Yis0
提督「でもなんか急にガードするの辞めてさ、むしろ応援された」

北上「!」

提督「色々セッティングされたりとかさ。前行ったデパートも、適当な口実つけて行ってこいヘタレがってさ。ご丁寧にプランまで」

北上「…それってさ、変わったのだいたい半年くらい前だよね。私が改装した後くらい」

提督「あー確かにそんくらいだったな」

そっか。私が改装した後。

つまり大井っちが改装した後。

"大井っちが大井っちでなくなってから"

きっとどこかで気付いたんだ。

私が誰なのか。私が何を思っているのか。誰を想っているのかを。

全部彼女の手の内か。コロコロと、まるで猫のように転がしていたわけだ。
270 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:57:13.01 ID:G5m/2Yis0
提督「この約束もそうだ。アイツが急に部屋に殴り込んで来てさ、今企んでること全部話せって言われて、その後協力するから一つ約束しろって」

北上「約束って」

提督「終わったら告れと。俺にフラグ立ててどうすんだよって話だろ。今にして思えば、なんか悟るってゆーか、思うところでもあったのかもな…」

北上「そうだね…」

思うところなんてもんじゃない。思い通りもいいところだ。

提督「大井はもう約束なんて分かりゃしないだろうが、約束は約束だ。だから」

北上「だから私に?」

提督「おうよ」

北上「はぁ。てーとく、いい趣味してるよ。実にいい趣味だ」

提督「そりゃどうも」
271 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:57:56.61 ID:G5m/2Yis0
北上「でもさ、私、ちょっと変なやつだよ」

提督「お前はそーとー変なやつだよ」

北上「あー提督もそういう認識はあるのね」

提督「大井も言ってた」

北上「大井っちにまで言われてるのか私」

提督「でも安心しろ」

北上「何がさ」

提督「俺がそうだったように、お前にも俺の知らない色々があるんだろうさ。皆そうだろ」

北上「とても北上とは思えないような色々だとしても?」

提督「北上は北上だよ。それは重雷装巡洋艦の北上って事じゃあなくて、お前はお前って事だよ。それにそれがどんなものでも、俺の知ってる北上を嫌いになる理由にはならねえよ」

北上「…」

提督「んだよそのなんとも言えない顔は」

北上「なんとも言えない顔だよ。提督」

提督「ん?」

北上「へへ、やっぱ提督趣味いいね。実にいいよ」

提督「それに関しちゃ大井のお墨付きだからな」
272 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:58:36.47 ID:G5m/2Yis0
北上「だからさ提督、お願いがあるんだけどさ」

提督「お願い?」

私が口を開きかけたその時だった。

部屋の扉が勢いよく開かれたのは。


大井「北上さ「ストォォォップ!!」グェッ!?」


扉を開け何かを叫びかけた人物はまた別の誰かによる横からのタックルで吹っ飛ばされ視界から消えた。

というか

北上「お、大井っ、ち?」

提督「なぁにやってんだあいつ」

北上「え、あれ?大井っち?大井っちだよね?」

提督「大井っちだろそりゃ。まあ大井っちかと言われたら違うのかもしれないがな」

何言ってんだこいつ。
273 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 05:59:26.43 ID:G5m/2Yis0
開いた扉からは廊下のドタバタ騒ぎの音が聞こえてきた。

「邪魔しないでください!!北上さんを!北上さんを守らなきゃ!!」

「いいから今は黙ってろにゃ。後で痛っ!肘!肘はなしにゃ!」

「木曾はそっちの手を抑えろクマ!こういう時は単純な力技が一番クマ」

「すっげえ近づきたくないんだが」

「さっさとするにゃ!このままだとグホォッ!?」ドゴッ

「木曾ぉ!!早くするクマァ!」

「すっげぇ嫌なんだが」
274 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 06:00:05.04 ID:G5m/2Yis0
提督「…ま元気でよかったな」

北上「そうじゃなくて!大井っちが、大井っち、生きてたの?」

提督「ん?あれ、他のやつから聞いてないのか?」

北上「皆肝心な事は何も」

提督「それくらいは話せよな…つかお前も覚えていないのか?」

北上「何が」

提督「北上を見つけた時、大井のやつを掴んで離さなかったのはお前だぜ」

北上「私が?」

提督「腕をこうがっちり掴んでたって聞いたぜ」

北上「私が…」

ならそれは、私の知らない私なのかも知れないな。
275 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 06:00:40.98 ID:G5m/2Yis0
提督「ただな、大井のやつ、"ここ半年間の記憶が無くなってる"んだ」

北上「半年間!?」

提督「ショックで記憶がってのは人間なら起こりうる事だし、艦娘がなっても不思議じゃない、のかはわからんがとりあえずはそういう見解らしい」

北上「じゃあさっき言ってた約束を覚えてないってのはそのまんまの意味か」

提督「前みたいに北上北上と、なんだか懐かしくもあるけどな」

北上「そっか」

提督「また何かの拍子に思い出すかも分からんしな。焦ることはないだろ」

北上「そうはならないと思うよ」

提督「なんでだ?」

北上「忘れたわけじゃないからだよきっと。ただ帰っただけなんだ。色々と、元に戻ったんだよ」

提督「…ほー。お前が言うならそうなんだろうな多分」

こんなにも近くにいた幸せの青い鳥は、どうやら飛び去ってしまったあとのようだ。
276 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 06:02:16.24 ID:G5m/2Yis0
北上「ねえ提督」

提督「なんだ北上」

北上「今すぐにでも抱きつきたいけど少し我慢するね」

提督「お、おう?」

北上「話をしてもいいかな」

提督「そりゃ別に構わないけどよ。なんでまた急に」

北上「長いからだよ。千夜一夜とまではいかないけど、今夜はたっぷり付き合ってもらうよ」

提督「そんなに沢山なんの話しを」

北上「私の話」

提督「北上の?」

北上「うん。だから首輪の事はその後で」

提督「指輪と言え指輪と」

北上「同じようなものでしょ」

提督「イメージだいぶ違くねえか?」

北上「同じだよ。私にはね」

提督「それで、話ってのは」

北上「そうだねえ。長い話だし、タイトルからいこうか」

提督「随分本格的だな」

北上「えーっとねえ」

しばらくの逡巡の後、ひとつ思い浮かんだものがあった。




北上「吾輩は猫である」
277 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 06:04:17.59 ID:G5m/2Yis0
・ 後書き











老人は大きく欠伸をした。

老後に趣味で始めた古本屋。周りを全て老いた物で囲んだ安らぎの空間だ。

レジ替わりの台の脇で安楽椅子に揺れながらいつもと変わらない時間を過ごしていた。

老人「ん?」

ふいに僅かに戸が揺れる音がした。

店の中からでは所狭しと並んだ本棚のせいで入口が見えない。

風のイタズラだとは思いながらも客の来た可能性を考え春の陽気で眠りかけていた体を起こす。

手元を漁り老眼鏡を掛け店を見渡す。

やはり人影は無い。

いや、"何かが視界の下で動いた"。

吹雪「お久しぶりです吹雪です!」ヒョコ

老人「うお!?吹雪か!」

吹雪「お元気そうでなによりです」

老人「お前さんもな」

驚きとともに妙な懐かしさが込み上げてくる。

数年ぶりではあるが、それ以上に久しぶりに彼女を見た気がした。
278 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 06:05:16.37 ID:G5m/2Yis0
地面より高い位置に置かれた台からは背伸びした吹雪の顔だけが見える。

数年前と変わらない吹雪が。

老人「艦娘は成長しないんだったな」

吹雪「分かりませんよ?私改四とかしちゃうかも」

老人「なんだそりゃ」

吹雪「成長の話ですよ。成長と言うより変化かな?」

老人「それで、今日はどうしたんだ?数年ぶりに顔見せにて」

吹雪「色々と話しておきたい事がありまして」

老人「話か。ワシみたいなのが1番好むやつだな」

老人が椅子にゆっくりと、深々と座り直す
279 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 06:06:10.45 ID:G5m/2Yis0
老人「どんな話だ」

吹雪「いい話ですよ」

老人「誰の話だ」

吹雪「そうですねぇ。ウチの話です」

老人「いつの話だ」

吹雪「今までの話です。ちょっと遅くなりましたけど、ようやく落ち着いたので」

老人「良い話か?」

吹雪「はい!」

そのまま飛び上がるんじゃないかという程に勢いよく返事をする。

吹雪「とっても、とても…」

しかしその満面の笑顔が段々としわくちゃになっていく。

吹雪「凄く、良い話です…」

溢れ出る涙を押し止めようとするが次第に喉から嗚咽だけが漏れ始める。

だがそれは散り行く花のような悲しいものではない。

老人(ああ、久しぶりに見た)

思うがままに感情を振り撒く、かつて彼女の慕う提督と共にいた時に見たなんの偽りもないそのままの彼女だ。
280 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 06:08:11.20 ID:G5m/2Yis0
老人「泣きたくなったらまた来いとは言ったが、そんなに泣かれるとは思わなんだな」

吹雪「は゛い゛」グスン

老人「何がそんなに嬉しかったんだ?」

吹雪「終わったんです…やっと…全部…」

老人「そうかい」

吹雪「だから始まるんです。やっと」

老人「なら、その終わった話は話さなくていい」

吹雪「そうもいきません!もう貴方くらいしかいませんから。この話が出来るのは」

老人「いいのか?楽しいだけの話じゃないんだろう?」

吹雪「はい!」

力強く頷く。

吹雪「最後がハッピーエンドだから大丈夫です。それに」

今度は泣かなかった。

吹雪「忘れたい話じゃないですから!」
281 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/09/22(日) 06:17:24.66 ID:G5m/2Yis0
馬鹿野郎一ヶ月も空けやがった!


こんなに長くなるなんて私聞いてない。
後先考えず書くものじゃないです。
でも楽しかったからいいんです。

何思ったか急に物書き始めた素人ですが皆様のおかげでこんなにも調子に乗って長い話になりました。
最後まで付き合った方にはボスにカットイン決めてくれた娘くらい感謝です。
でも次は短い話にしようと思いましたまる
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/22(日) 08:45:22.17 ID:iZ7Fk21UO
おつおつ。長編完走お疲れ様でした
その後の北上たちの日常を読んでみたいかも
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/22(日) 11:10:31.82 ID:G+G71TgN0
乙です
また最初から見直してくるかなあ
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/22(日) 15:16:05.66 ID:okljzoHto
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/22(日) 16:27:51.78 ID:P7QKhJmDO
乙した


うむっハッピーエンドは良いよね
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/22(日) 18:02:20.10 ID:0ZtoyK1/0
尊い犠牲となった輸送船と護衛艦隊の関係者は全滅した直後にレ級が倒されるとかたまたまで納得すんのかな?
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/22(日) 21:37:59.36 ID:8QOVdHHo0
ちょっと強行着陸だったけど前作の空中分解じみた終わりを思い出すに隔世の感があるな
堪能したよご馳走様!
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 10:19:28.15 ID:xaEl0QTu0
実に面白かった、乙です!
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 14:07:46.13 ID:M5VYjXVZo
おつおつおー
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 17:47:27.26 ID:2cCRsn8TO

よかったよ
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/08(日) 11:50:40.93 ID:bovFucNY0
続き読みたいなぁ
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/04(金) 05:33:59.18 ID:rhYIhPuk0
何度も読み返してるけど本当に良い。手許に残したくなる良作だった。しばふ艦興味なかったのにこの作品のせいで俺の大井っちが北上を求めるようになる程度には北上さん好きになったよ、ありがとう!
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/02/24(金) 23:07:50.78 ID:oBQyfcXm0
艦これに再熱して、同時にこのssのことを思い出して1から読み直したよ。まさか完結してたとは。
読み終えた今すごい満足してる。
ありがとう。乙やで。
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