穂乃果「ほのかトリップ」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/12(水) 00:16:40.99 ID:eld0J8JS0
ガタンゴトン ガタンゴトン

穂乃果「ねえ?どこに行くの?」

向かいの席に座っている絵里ちゃんに私は問いかけた。

絵里「ん〜?」

聞こえてるくせに。

穂乃果「ねえってば。行き先くらい教えてくれたっていいじゃん」

絵里「どこだっていいじゃない。美人とデート出来て嬉しいでしょ?」

穂乃果「うへ〜自分で言う?絵里ちゃんも厚かましくなったね」

ガタンゴトン ガタンゴトン

絵里「10代の女の子はちょっと厚かましいくらいがちょうどいいんだって」

穂乃果「誰が言ってたの?」

絵里「雑誌に書いてあったの」

穂乃果「へ〜。雑誌にねぇ」

絵里ちゃんもそう言う雑誌を読むんだ。




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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/12(水) 00:34:16.54 ID:eld0J8JS0
穂乃果「ねえ?ヒント頂戴!」

絵里「ヒント?」

穂乃果「ヒントくらいいいでしょ?目的も分からず長い時間電車に乗ってるのも苦痛だから」

絵里「穂乃果は電車苦手なの?」

電車が苦手なんじゃなくて目的も分からずジッとしてるのが嫌なんだけどな。

絵里「あまり電車で遠出しないの?海未やことりなんかと何処かに行ったり」

穂乃果「あんまりないな〜。それにね、海未ちゃんと電車に乗ってもすぐに本を読み始めるから退屈なんだよ」

絵里「ふふっ。海未らしいわね」

穂乃果「でしょ?よくあんな文字ばっかり読めるよね。漫画だったら私も読めるんだけどなぁ」

絵里「結構面白いんだけどね。穂乃果には合わないか。全く読んだ事ないの?」

穂乃果「全くじゃないよ。宮沢賢治とかそれくらいなら読んだ事あるよ」

絵里「へ〜そうなの」

宮沢賢治・・・。忘れもしない小学生の頃の夏休みの読書感想文。後回しにして痛い目にあった憎き小説家の名前。100パーセント自分が悪いのは承知しているけどおかげであの日はお母さんには怒られ、プールには行けず・・・散々だった。

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/12(水) 00:39:44.76 ID:eld0J8JS0
あれから毎年読書感想文は宮沢賢治の使い回しだけど意外とバレないもんなんだよね。

穂乃果「まあ、あれも生きていくうえの知恵だよね」

絵里「何が?」

穂乃果「いや、なんでも。・・・ってさあ話が脱線してるんだけど。ヒントは?」

絵里「あ〜ヒントね。ごめん、ごめん」

ごめんって。絶対話をそらすつもりだったよね。

絵里「じゃあ、ヒント。咲くものを観に行きます」

穂乃果「咲くもの?花?」

絵里「・・・そうね」

穂乃果「シーズンもの?」

絵里「ん〜・・・そうかも」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/12(水) 00:43:04.08 ID:eld0J8JS0
穂乃果「え〜・・・梅でも観にいくの?」

絵里「ブー。ハズレ」

穂乃果「桜はまだ早いよね」

絵里「そうね。桜はもうちょっと先ね」

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/12(水) 21:06:14.50 ID:eld0J8JS0
穂乃果「花見・・・行きたいね。みんなで」

絵里「そうね・・・。行けると良いわね」

穂乃果「良いわねじゃなくてその気にならないと」

いつでも一緒って訳じゃなくなるんだから。

絵里「うん。そうね」

ガタンゴトン ガタンゴトン

穂乃果「そう言えば、聞いた?」

絵里「なあに?」

穂乃果「花陽ちゃんに引き継ぐって」

絵里「部長の話?」

穂乃果「うん。適任だよね。本人には当日まで黙っておくんだって。まっ、にこちゃんが卒業出来ればの話だけどね」

絵里「じゃあ・・・怪しいかも」

穂乃果「あはは。そうだね。私も人の事笑えないけど」

絵里「それじゃあ困っちゃうんだけどね」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/14(金) 23:14:27.01 ID:7wubXg010
穂乃果「まあ、確かに。凛ちゃんの後輩は嫌だなぁ」

絵里「何回留年するつもりなの?」

穂乃果「高校生活に飽きるまで?」

絵里「そのうち雪穂ちゃんの方が先輩になっちゃうじゃない」

穂乃果「それは問題だ。姉としての威厳が・・・」

絵里「その前に生徒会長が留年するのもやめて欲しいな。前任者として」

穂乃果「だよね〜」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/14(金) 23:21:54.61 ID:7wubXg010
なんて冗談を交わしているけど三年生は卒業する訳で本当は寂しいのにそんな素振りを見せない様にして更に湿っぽい雰囲気を醸し出してしまう。

いっそ素直に寂しいと言った方が幾分かマシな気もする。

穂乃果「ねえ。今日、こうして私を誘ってくれたのってさ・・・」

絵里「ん〜?」

穂乃果「いや・・・なんで私なのかなぁって」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/15(土) 23:25:57.66 ID:c65SVTvUO
良さげな雰囲気
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/16(日) 23:28:30.52 ID:OtTY2VdSO
絵里「何が言いたいの?」

穂乃果「だから・・・今日、こうして絵里ちゃんとここにこうして電車に乗っている相手が私じゃなきゃいけない理由が何かあるのかって。例えば・・・元気がない様に見えたから・・・とか」

絵里「ん〜そうねぇ」

勿体ぶるなぁ。

絵里「別に誰でも良かったのよ。穂乃果じゃなくても誰でも」

穂乃果「えっ!?」


10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/17(月) 00:41:21.04 ID:UE/cSbKjO
絵里ちゃんがそう言った時少し胸がズキンとした。私は絵里ちゃん達が卒業してしまう事を寂しく思っている事。私は絵里ちゃんが私の気持ちを察して今日誘ってくれたんだと思っていた。

そもそも、本来なら送り出す側の私が絵里ちゃんを気遣わなきゃいけないくらいなんだ。

穂乃果「そっか。そうだよね。えへへ」

絵里「ウソよ」

穂乃果「へ?」

絵里「穂乃果が良かったの。今日こうして私の前に居るのは穂乃果が良かったの」

穂乃果「あっ・・・ほ、本当?」

絵里「うん。でもね、別にセンチメンタルになってる穂乃果を励まそうなんて理由で誘った訳じゃないの」

穂乃果「そ、そうなの?じゃあ、どうして?」

絵里「自分の為よ。二人の思い出が欲しいって私の気持ち」

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/26(水) 00:14:39.78 ID:/2lB1Ov50
穂乃果「ふ〜ん。そっか」

絵里「なあに?それだけじゃ不満?」

穂乃果「いや、嬉しいよ」

素っ気なく返してしまったのは何となく想像していた理由と違ったから。

絵里「卒業だからねぇ、私も。慕ってくれる可愛い後輩と小旅行ってポイント高いと思うのよね」

穂乃果「明日も休みなんだしどうせなら泊まりでも良かったのに」

絵里「ん〜穂乃果寝相悪いからなぁ」

なんて話をしながら段々と目の前が真っ暗になっていった。

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/26(水) 00:22:05.12 ID:/2lB1Ov50
ほのか!ほのか〜!

ん?

絵里「そろそろ到着するわよ」

穂乃果「あれ・・・私、寝てた?」

絵里「イビキかいてたわよ」

え?嘘?

絵里「嘘よ。顔真っ赤にしちゃって。かーわい」

穂乃果「なっ!?なんだ、嘘なのね」

絵里「随分と幸せそうな顔して寝てたけど何か良い夢でも見た?」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/26(水) 23:27:50.98 ID:nykVAoC2O
穂乃果「どうだったかな」

絵里「割と忘れちゃうものよね、夢なんて。さあ、次の駅で降りるから荷物降ろして」

穂乃果「うん」

私達は電車を降りた。
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