【安価】男「異世界転生しちゃった」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 11:27:48.15 ID:f+nH/MKh0


〜マンション 屋上


俺の名は男。彼女に浮気され、保証人になってあげた友人に逃げられ、会社をクビにされた俺は生きる事を諦め、マンションの屋上から自殺を図る。

だが落下の最中、目の前に俗に言う異空間の穴が開き、俺はその中へと吸い込まれてしまった。
穴の中は暗闇で、ふわふわと浮いている感覚だ。空を飛ぶってのはこういう物なのかと、呑気な事を考えていた。

暫くすると段々目が開けられないくらいに周りが明るくなり、何かの上に落とされ背中と頭に衝撃が走る。ここは、草むらの上だ。


「いてて……なんだここ」


辺りを見回してみると、昔よくやったゲームの様な世界が広がっている。明らかに現実とは違う場所というのはすぐに理解した。
俺は知っている、この現象を。俺に起きた事を。


「これ、異世界転生じゃね!?マジか!」


ゲームをしなくなった俺はライトノベルをよく読むようになった。
その中でも異世界転生物が好きで、羨ましくて、憧れていた。
だからこそ、今の置かれた状況に困惑する事はなく、むしろ高揚していた。


「定番のアレやってみるか!えーっと……ステータスステータス……あれ?どうやって出すんだ?」


頭の中でステータス表示、ウィンドウオープン、自己解析、メニュー等色々と考えて口に出してみても、何も出ない。


「おかしいな……何も出ない。でも俺って……」


異世界転生の定番とも言える事だが、もしかしたら俺は異世界最強の能力、身体能力、最強魔法等が使えるかもと浮き足立つが、詳細がわからないんじゃどうしようもない。


「う〜ん……どうしたもんかな」




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1564972067
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 11:39:31.46 ID:f+nH/MKh0


「ちょっと試してみるか」


俺はその場から立ち上がり、軽く準備運動を始める。
最近訛ってたから念入りにな。


「よし!」





行動内容。行動によって起きた事柄。行動によって判明した能力。
安価下2
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 11:41:00.56 ID:SFZNm4Bi0
適当に進むと街道を発見
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 11:54:10.36 ID:+rxBvqI9O
ゴブリンらしきモンスターを発見。
まだ気付かれてはいないようだ。
しかし見た感じ話が通じそうではないので静かに立ち去る。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 12:27:14.61 ID:f+nH/MKh0


何かを始めようとした時、視界の端にゴブリンらしきモンスターを発見する。


「う、うわ…やばっ……!」


俺は出来るだけ声を殺し、音を立てずに背の高い草にうつ伏せになる。どうやらまだ気付かれてはいないようだ。
漫画やゲームではモンスターが喋るのはそう珍しくない。知能が高いモンスターは喋れるという設定もよく見る。

しかし、あいつは見た感じ全く話が通じそうにない。まだ自分の事もよく分かってないのに、あんな得体の知れないやつと戦えるか。
ここは、静かに逃げよう。


「……そーっとな……そーっと……」


動く度に草が揺れ、その度俺の鼓動が早くなる。
頼むから気付かないでくれよ。とりあえず近くの木の後ろまで行ければ。


「ギギ……ッ!!」


「やぁっ!」


女の声がした。俺は少し顔を上げてゴブリンの姿を確認する。ゴブリンは女の前で倒れている。
死んでる?あの女がやったのか?
すると女は腰から短刀を抜き、ゴブリンの前に蹲って何かをしている。素材でも取っているのか。

この世界の事はまだわからないし、迂闊に人も信用出来ない。
話を聞きたいが、どうするか。


安価下
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 12:28:33.95 ID:/lU4AnRW0
愛想よく話しかけてみよう
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 12:54:19.49 ID:f+nH/MKh0

(怪しまれないように、自然と、愛想よく話しかけよう)


俺は勢いよく立ち上がったせいか、大きな音を立ててしまう。
流石に女も気付き、こちらを振り向く。


「や、やあ。こんな所で何をしてるの?」


「見ての通りだけど」


「あ、そ、そうだよね!」


やべーミスったか。とりあえず何か言わないと。


「それ、君がやったの?凄いね」


「……」


やべぇ、すげぇ怪しまれてる。


「…ふん。これくらい楽勝よ。何?あんた、冒険者?」


(冒険者!その職業があるって事はギルドがあるかな?)


一般的にギルドとは俺の知っている限り2種類あって、ライセンス登録をし、討伐、採取、護衛…etc。様々な依頼を受けたりしてランクを上げる冒険者ギルド。
もう1つは同じ志を持った仲間が集い、組織を立ちあげるギルド。
冒険者という職業があるなら、前者の可能性が高いな。


「そう、そうなんだよ。ちょっと道に迷っちゃって……」


「ふーん……それにしては変な格好ね。装備も無さそうだし……ホントに冒険者?」


や、やっべぇぇぇ!そういや忘れてたけど上下スウェットだ俺!
そりゃそうだわ、こんな冒険者いるわけねぇわ。やべぇじゃん、俺超怪しいじゃん。


「これには少々事情があってね……」


「……あっそ。で、何か用なの」



安価下
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 12:55:14.99 ID:68siRF640
とりあえず近くの町まで案内してくれないかな?
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 13:09:50.53 ID:f+nH/MKh0


「さっき言った様に、道に迷っちゃって……良かったら近くの町まで案内してくれないかな?」


「いやよ」


ほぼ即答だった。こんな右も左もわからない世界で、モンスターの出るフィールドに居るのはまずい。


「そこを何とか……お願いしますっ!」


両手を合わせて懇願する。


「いやよ。私に何の得もないじゃない」


「そ、そんな……」


取り付く島もないとはこの事か。案内が駄目なら道を聞くか、流石にそれは良いよな?


「じゃあ……近くに町はあるかな?道だけでも教えてくれると助かるんだけど」


「……あっち。しばらく歩くと街道があるわ。右はリネル村、左はメリルの町よ」


「あ、ありがとう!」


「別に。こっちもやる事終わったし、消えるわ」


「あ、うん」


女は素早い動きで指した街道とは逆に走っていく。だが、収穫はあった。


「とりあえずは街道だよな……どっち行くか」



安価下
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 13:12:09.89 ID:eKZKUJLf0
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 13:30:03.47 ID:f+nH/MKh0


左のメリルの町に行こう。
村という響きは長閑で親切な人が多いと想像するが、今は情報の多そうな町にしよう。

道中モンスターに出くわすことも無く、暫く歩くと街道を見つけた。
俺は女に言われた通り、街道を左に進んでいく。



〜メリルの町



「おお……すっげぇ!」


町に入るや否や、俺は感動する。俺の居た世界程の高さはないが、見たことの無い建物、綺麗な街並み、楽しそうに話す町民、武器を背負う冒険者と思われる者達。
様々な店が立ち並び、何処からか香ばしい匂いが俺の鼻を刺激する。
同時に安心したからか、腹が鳴る。

「あ……そういや死のうとしたから何も食べてなかったんだっけ……どうしよ」



安価下
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 13:38:07.56 ID:SFZNm4Bi0
酒場らしき場所に向かい、店主に相談
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 13:56:01.79 ID:f+nH/MKh0


やはりここは酒場だろう。トラクエなら仲間を見つけ、ロマサカなら町を動かすアイテムを教えてくれる。とにかく重要な場所だ。

酒場を探しながら町を歩いていて、分かったことが二つある。
まずは俺の服装だ。周りの町民から奇異の目を向けられ、恥ずかしい想いをした事。
そしてもう一つ。文字が全くわからない。看板には何語?ってレベルの文字が描かれ、俺の世界に存在した文字ではない。
でも、言葉は通じたな。よくわからん。

町を練り歩いていると、前の建物から昼間から泥酔した男性が仲間に担がれて出てきた。ここが酒場だな。



〜酒場


「へぇ……!」


居酒屋とはまた違う、大衆居酒屋とでも言うのか。仕切りは一切無く、木の丸テーブルと、その周りに木の丸椅子が室内に敷き詰められ、正面には店主と思わしき禿頭のおっさんがグラスを拭いている。
奥には階段があり、あそこは店主の寝床だろう。

俺はとりあえず店主の元へと移動する。その際も周りから変な奴が来たなって感じの目で見られた。


「あのー」


「おう、いらっしゃい。変わった格好してんな兄ちゃん」


「そうですよね、ははは……」


「で、なんにするんだ?」


「あ、いや、実は……」


「ん?」



相談内容
安価下
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 14:02:27.73 ID:eKZKUJLf0
とりあえず可愛い店員さんにお酌を・・・
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 14:25:11.36 ID:f+nH/MKh0


「あ、なんでもないです。お酒をひとつ貰えますか」


「だから何にすんだ?」


「えっと……火酒で」


「火酒か、ちょっと待ってな」


たくさんの異世界転生物を読んだ俺に死角はない。よく使われているであろう異世界の飲み物は火酒とエールだ。
まさか本当にあるとは思ってなかったが、言ってみるもんだ。


「ほらよ、代金は後払いだ」


「ありがとうございます。それと……可愛い女の子にお酌とかって……そういうサービスはあります?」


「なんだ兄ちゃん、女に酌させてぇのか」


「まぁ、はい」


「いいぜ。おーい!エルフ!ちょっとこっちきて兄ちゃんに酌してやれ!」


店主が大声で叫ぶもんだから周囲の目が俺に集まる。凄い恥ずかしい、やめてくれ店主よ。
すぐにエルフという可愛い女の子が近付いてきて、席に案内される。
お猪口を持ち、酒を注がれながらエルフという女の子を見る。
肌が黒いから、ダークエルフかな?それに…

「……耳、長いんだな」


「え?」


やばい、口に出していたか。ただでさえ変な目で見られてるんだ、目立たないようにしないと。


「いや、エルフって耳長いなーって」


「……」


沈黙が流れる。気まずい。変な事言ってしまったのか俺は。


「ぷっ…あはは!何言ってんすかお客さん!当たり前じゃないっすかー!」


「そ、そうだよね!あはは!」


「あはは!変なの!それじゃ私はこれで。ごゆっくりー!」


「あ、うん。ありがとう」


エルフが席から離れていき、俺は酒を飲む。うん、これは焼酎だな。
ただ酒を飲むのは良いが、一つ問題がある。
金が無い。



安価下
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 14:27:38.76 ID:/lU4AnRW0
この酒場に住み込みで働かせてもらう
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 14:51:21.91 ID:f+nH/MKh0


そうだ、住み込みで働いてしまえば良い。
そうすれば金も貯まるし、この服装ともおさらば出来る。
うんうん良いな、そうしよう。
俺は火酒を飲み終わると席を立ち、店主の元へと向かう。


「あの、ちょっと良いですか」


「ん?どうしたんだ?」


「実はさっきの続きなんですけど……住み込みで、ここで働かせてくれませんか?」


「はぁ?何言ってんだお前」


「実は、お金を持ってなくて……」


「何ぃ?持ってねぇくせに酒飲んでんのか!いい度胸してんな兄ちゃん!」


「は、ははは……」


上手く行きそうな流れだな。正直に話したのが良かったのか?


「でも駄目だな。金がねぇならさっさと出ていけ、火酒の1杯くらいくれてやるよ。だが、二度と来んなよ。てめぇの面は覚えたからな」


「あ……」


「さっさと行け!もし次来たら憲兵にしょっぴかせるからな!!」


「は、はい…!」


俺は逃げる様にして酒場を出る。周りからは笑い声が聞こえた、恥ずかしい。外に出ると陽は落ちて、すっかり夜になっていた。
もう酒場には行けない。


「何か……違うなぁ……」


空を見上げて俺は呟く。
異世界転生ってもっとこう、転生した俺がモンスターをばったばった倒して、自然と仲間が集まって、強大な敵に挑むもんだと思ってたけど、俺の異世界転生はそんなんじゃないのか。

そういえば、あの時は試せなかったけど、俺って何か能力はあるのかな?それとも、本当に無力な存在なのか。駄目だ、悪い方に考えるな。
さて、夜だけど今日の寝泊まりはどうしよう。火酒だけじゃ腹も満たされない。困ったな。



安価下
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 15:02:12.30 ID:pRyJXGyDO
路地裏で野宿
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 15:26:09.21 ID:f+nH/MKh0


野宿、かな。人は減ったとはいえ、表で寝るのは些か気が引ける。
路地裏に行こう、ここなら人目につかない。
近くの路地に入っていくと、建物と建物の間に良い感じのすぺーすがあった。


「はぁ……」


溜息が出る。無理もない、こんなはずじゃなかったんだから。
メリルの町は路地裏も綺麗なのか、横になっても問題なさそうだ。
ちょっと硬いけど、これくらいなら寝れるだろう。


「あんた、何してんのよ」


「え!?」


突然声を掛けられ、俺はあらぬ声を上げる。まさかこんな所に人が居るなんて思いもしなかったからだ。
声を掛けたのは昼間の女。
あの時もそうだが、上半身を濃い茶色のフード付き外套に身を包み、下は短パン、顔は良く見えない。


「依頼から帰ってきたらあんたがいたのよ。何するのかと思ったら路地裏に入ってくし、寝ようとするし……何してんの」


「あぁ〜……」


見られてたのか、恥ずかしいな。


「お金が無くてね、仕方なく野宿をしてるんだ」


「あんた、やっぱり冒険者じゃなかったのね。何者なの?見たことも無い格好だし」


「……突拍子も無い話だけど、聞いてみる?」


「聞くわ。宿でね」


「え?」


今なんて言った?宿?
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 15:45:52.98 ID:f+nH/MKh0


「何て顔してんのよ、宿で聞くって言っただけじゃない」


変な顔してたようだが、今はそんな事気にしてられない。


「いいの?宿」


「良いわよ別に。私があんたの事、気になるだけだし」


良かった。この女のおかげで今日は野宿せずに済みそうだ。
俺は宿に歩き出した女の後に付いて行く。



〜宿屋


「……あの」


「何よ?」


「え、同じ部屋?良いの?色んな意味で、いいの?」


「別に良いわよ。か二部屋借りるの勿体ないでしょ」


違うわい!同じ部屋に男女が2人、何も起こらないはずもなく。
ドキドキしてきた!


「そっか。そうだね」


「変なの」


そう言うと女は外套を脱ぐ。やっと女の顔が見れるな。


「え」


俺はその姿を見て、また変な声が出る。


「……?何よ」


女は端正な顔立ちで、頭からは兎の耳のような物が垂れていた。
外套の下は緑のチューブトップで、それなりに胸はあるみたいだ。
珍しいな、これはなんて言う種族なんだろう。


「いや、珍しいなって思って」


「そう?ま、何でもいいけど。話聞かせてよ」


俺はベットの脇に座っていて、女は隣に座る。
え、なにこれ?マジ?良い匂いするんですけど!


「ほら、早く」


肘でつつかれる。
俺は事の顛末を女に説明した。自殺しようとした事、転生した事、無能かもしれないと言う事。全てを聞き終えた女は、少し悩む素振りをする。


「どう?信じられそう?」


「……まぁ、無理な話よね。でも……」


「でも?」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 16:06:00.27 ID:f+nH/MKh0

「あんたが嘘を言ってるようにも見えなかった。これでも嘘を見抜くのは得意なの。だから多分あんたの話は本当なのね」


まさかこんなにあっさりと信じて貰えるとは思ってなかったぞ。
転生した俺に対するご都合展開かな?


「明日からはどうするの?お金、無いんでしょ?」


「それが今の悩みの種だね、戦えればギルドの依頼とか受けたいけど……」


「採取依頼とかは?時間はかかるけど、あんたでも出来るんじゃない?」


確かに、と声が漏れた。集めるだけなら俺でも出来るだろう。
そうか、採取依頼か。良いかもしれない。


「ありがとう。参考にするよ」


「私も面白い話聞けたしね、別に」


女はベットから離れると持ってきた鞄から櫛を取り出して、桃色の髪を梳かしている。寝る前の習慣かな?
そんな事を思っていると、また腹が大きな音を立てる。


「……そういえば、あんた何も食べてなかったんだっけ?」


「うん……こんな事頼むのもアレなんだけど、食べ物ってある……?」


「ちょっと待ちなさい…………ほら、干し肉だけど」


女は鞄から、紙で包まれた干し肉をくれた。
優しさに涙が出そうになったが、我慢する。
俺は包を剥がし、干し肉食べる。滅茶苦茶美味い。


「ありがとう。ほんとに…」


「良いわよ。私はさきに寝るからね、食べたらあんたも寝なさいよ。あと変な事したら[ピーーー]から」


「怖ァ…」


女は隣のベットに潜ると、就寝する。
俺も干し肉を食べ終わり、満腹になると明日の事を考える。
ちゃんと、生きていけるかな。というか浮かれて忘れてたけど、死のうとしたのに生きようとするなんて変な話だな。

まぁ転生なんてしたら死んだも同然か。切り替え切り替え。
ベットに入り、明日に備えてしっかりと寝よう。
おほ〜ベット気持ちいいぃ〜。

22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 16:12:11.19 ID:f+nH/MKh0

翌朝、女に冒険者ギルドに案内してもらった。女は用事があるらしく、そこで別れる事に。
いつか恩返ししよう。俺はそう心に刻んだ。
とりあえず、ギルドで手続きをしてしまおう。



〜冒険者ギルド


ライセンスの発行は手こずったが、何とか取れた。
文字がわからないから、口頭で受付嬢に伝えて書いてもらったのだ。さぁこれで俺も冒険者だ。ちょっとワクワクすっぞ。

まずは依頼だ、施設内の壁に依頼書が乱雑に、大量に貼ってある。
やりたい依頼があったら依頼書を取り、受付嬢に渡すというシステムだ。
さて、どれをやろう。




安価下
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 16:18:25.59 ID:eKZKUJLf0
ゴブリンにさらわれた少女の救出
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 17:10:53.91 ID:f+nH/MKh0

採取依頼を探している時、ある依頼書に目が留まる。
それは、ゴブリンに攫われた少女の救出依頼だ。俺はふと、周りの冒険者を見る。

こんなに居るのに、人命が掛かってるというのに、何故誰も依頼を受けないんだ?
俺は元の世界に居る時の事を思い出す。俺が仕事を終え、帰り道を歩いてる時に、目の前の大通りで事故が起きた。

横たわる女性の傍に男性が2人とガードレールに激突した車。恐らく女性が轢かれたんだろうなってすぐ分かった。
だが、それだけ。可哀想だなって思うだけで、俺も、数十人の野次馬も、可哀想だなって思うだけなんだ。

その時は誰かが助けているし、大丈夫だろうとも思った。仮に誰も女性に近寄って、助けて無かったとしても、俺は見捨てるだろう。
俺はこの依頼書を見て、その時の事を何故か思い出してしまった。

俺に出来るのは採取依頼くらいだろう。だけどだ、見知らぬ少女だろうが人の命が掛かってるんだ。
今度こそ俺は、助けを求める声を、見捨てない。
俺は依頼書を剥がし、受付嬢の元へ行く。


「ありがとうございます。救出依頼ですね。少々お待ちください」


受付嬢は何かを書類に書き終えると、俺にバッチを渡してくる。


「これは?」


「救出依頼中という証です。依頼が完了したらお返し下さい」


了承すると、地図を渡される。


「これは……リンネ村の先の森かな?」


メリルの町と街道で繋がるリンネ村。その先には森があり、誘拐先と思われる所に印がある。


「あまり時間はありません。お願いします、男さん」


後ろから受付嬢の声が聞こえ、振り向くと深々と俺に頭を下げていた。そうか、受付嬢も気にしてたんだ。でも、期待に応えられるかな。安心と不安が同時に来る。

弱気になるな。戦おうと思えば戦えるんだ。気合い入れろよ、俺。
パンパンと頬を叩き、俺はメリルの町を出る。

25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 17:16:23.52 ID:f+nH/MKh0
間違えた、リネル村です
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 17:42:27.93 ID:f+nH/MKh0

〜リネル村


歩く事数時間、特に何も無くリネル村に着いた。
想像通り長閑そうな村で、左には大きな畑が沢山ある。
右には民家が建っている。あまり多くはないが。


「そこな御方……もしや冒険者様ですか?」


「え?はい、そうですけど」


ライセンスが後押ししてるのか、俺は堂々と冒険者だと言い張れる。だが、どうして俺が冒険者ってわかったんだろう?
お爺さんが、杖をついて近付いて来た。


「おおお…貴方様が……ありがとうございます。どうか……どうか少女を……お願い致します……」


「まさか……」


俺はバッチを見た。なるほどな、これのおかげで俺が冒険者ってわかったんだな。


「必ず、助け出してきます。安心して待っていて下さい」


「おおお……冒険者様も、どうかお気を付けて……」


俺は村の奥の、もう1つの入口から森へと入っていく。
まず俺は石を何個か広い、適当な大きさの木の枝に掴まり、体重で折る。


「初期の有者ですらもっと良いもん持ってるよなぁ……」


頼りないが、投石用の石数個と木の棒を手に入れた。
俺は地図を取り出し、現在地を大体把握する。
今の位置から南西、北東、東の3箇所に印がある。
どうしようか。



安価下
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 17:53:04.83 ID:YQ9FwTJA0
3箇所の印について聞いてみる
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 18:19:06.69 ID:f+nH/MKh0

一旦戻って印の所に心当たりがないか聞いてみよう。
俺は踵を返し、リネル村へと戻る。
戻ると、近くに中年の男性が居る。この人に聞いてみよう。


「すみません、ちょっと聞きたいんですけど」


「ん?なんだい、冒険者さん」


俺は地図を男性に見せる。男性はほうほうと唸ると、すぐに地図を返してくれた。


「冒険者さん、その地図の印は違うねぇ。今奴らの住処はもっと南東にあって、廃村に居るはずだよ」


「え?」


「古かったんじゃないのかい?その辺りは他の冒険者さんが結構前に潰したはずだよ」


「あ、そうだったんですね。情報ありがとうございます」


危なかった。何も知らないでこの3箇所を回ってたら無駄骨も良い所。聞いてみてよかった、今の俺は冴えてるな。

気を取り直して、南東へと向かう。奥へと進んでいくと、なあの男性の言う通りゴブリンらしき足跡があった。
俺は緊張して、何度も深呼吸をする。すると、廃村らしき所が遠目に見えてきた。

草陰に隠れ、廃村が良く見える位置に移動する。
ゴブリン共が荒らしたせいなのか、元々なのか、荒れに荒れている。とてもじゃないが住める様な状態じゃない。ボロボロの家が沢山あるから、それなりに大きい村だったみたいだな。

俺がする事は──



安価、実行出来そうなものは全部実行します
安価下3まで
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 18:24:19.52 ID:h6e4p1RtO
ステルスミッション(可能な限り戦闘を避けて、現状を把握)
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 18:43:19.07 ID:OTTnyd4zO
もっとまともな武器がないか屋内を探してみる
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 18:48:16.54 ID:eKZKUJLf0
少女の様子を最優先する
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 18:49:26.55 ID:lsnCYWk9O
ゴブリンに見つからないように少女を捜索。ついでに目眩ましに使えそうな物や縄など、役に立ちそうな物を見つけたら確保する。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 19:27:18.23 ID:f+nH/MKh0
undefined
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 19:29:14.01 ID:f+nH/MKh0
なんだこれ、書き直しか
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 19:44:11.27 ID:OTTnyd4zO
1レスに対して文字量が多すぎるとそうなる(らしい)よ
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 19:46:09.28 ID:f+nH/MKh0

可能な限り戦闘は避けていこう。今の俺じゃゴブリンの相手は辛過ぎる。
とりあえず草陰から一番近い廃家の裏に着くと、裏口の扉があった。ドアノブを捻ると扉はカンタンに空いた。とりあえず中に潜入完了。

静かに割れた窓から村の中心部を覗き見る。見えるだけでもゴブリンは8匹、他のも考えると是非とも相手にしたくない数だ。

窓から離れ、音を立てずに今居る廃家の中を物色する。ダンボールとエロ本があれば無敵なんだがな。
冗談はさて置き、少女の安否が最優先だが、もしもの時に備えて物色する事に損は無いだろう。

使える物は何でも使わなければ、俺みたいなのは生き残れない。
先ずは冷蔵庫だ、中を開けるが当然腐っていて異臭を放っている。


「ヴォエッ……クッッサ」


あまりの異臭に吐きそうになるが、我慢しろ。我慢だ。
鼻をつまみ、使えそうな物はあるか眺めていると、中身の見えない瓶を発見した。これ、中身なんだろう?

普通に触りたくないが、今はそんな事言っている場合ではない。
瓶を触ると、ネチョッとしていてベタベタだ。
気持ち悪いぃぃ、これも我慢だ。

お次は台所。ここには期待を寄せてしまうよね、台所だし。
異世界転生補正で何かあってくれると良いが。
戸や引き出しを開けるが、何も出てこない。慈悲は無かったようだ。

入っきた裏口から外に出て、廃家に張り付く。
TPSばりの張り付きで覗き込みに挑戦するが、ゲームみたいには行かないね。普通に頭だけで覗いた。

観察していてわかった事が二つ。

37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 19:57:34.58 ID:f+nH/MKh0

まず表のゴブリンで武器を持っているのは3匹。短剣持ち2匹と小弓持ちだ。あいつらから武器を奪えれば俺の戦闘力は跳ね上がるだろうが、奪うのは難しい。というか無理、多すぎる。

そしてもう一つ。
他のゴブリンは焚き火を囲んで座り、何かの動物らしき残骸を貪ったり、寝ていたりする中。小弓のゴブリンだけはここから一番遠い廃家から離れない。

何かを守っているみたいに、な。恐らく少女はあそこの廃家に居る。ただ焦るな、他の所に居る可能性もある。
奥の廃家に行くには間違いなくゴブリン共の注意を逸らす必要がある。

注意を引いてる間に廃家の裏から裏へと回り、あそこまで行くしかない。ただ、どうやって注意を引くか……






安価下


>>35 なるほど、ありがとう
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/05(月) 20:00:16.09 ID:3WgEmMqN0
石を投げる
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 20:34:29.38 ID:f+nH/MKh0

「あ、そうだ」


俺はスウェットのポケットから石を1つ手に取る。当たると痛そうな石、こいつを使おう。
狙うは右の廃家で良いだろう。失敗しないぞ。

「……ふぅ」


石を投げる事はつまり、存在を知らせる事に近い。見つからなければ何事もないが、警戒心が強まってしまう。
俺は何度も、心の中で同じ言葉を反芻する。
俺なら出来る、俺は転生者……と。
自己暗示に近いが、小さいが少しの自信となる。

「……よっ…と」


俺は投げた、投げてやった。さぁもう退けないぞ。やるしかないぞ。
石は派手な音を立て、居眠りしていたゴブリンも起こす。
ゴブリン共は音の出処に注意を払い始め、俺の方を見るゴブリンは居ない。

すかさず俺はゴブリン共との間に廃家を置くように転々と移動していき、目的の廃家に到着する。
先程と同様にこの廃家にも裏口があり、そこから侵入する。


「ギギッ!?」


「ちょ……!」


依頼された少女は居た。ついでにゴブリン1匹。こいつは音に気が付かなかったのか!
仲間に大声で知らされる前にどうにかしなければまずい、まず過ぎる。左手には瓶、右手には木の枝、ポケットには小石が数個。



安価下
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 20:41:25.60 ID:77dH6JJpo
一匹なら瞬殺できるやろ
突貫
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 20:41:51.45 ID:oLy3v/Cao
瓶をゴブリンの顔に投げつけた後、接近して木の枝を喉に突き刺す
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 20:57:59.65 ID:f+nH/MKh0

落ち着け。たかがゴブリン1匹だ、俺ならやれる。
やるなら一撃必殺だ、下手な攻撃じゃ声を出されてしまう。
俺は木の枝を前に突き出し、ゴブリンの胸を一刺しにする。
俺はそのまま倒れ込み、ゴブリンの上に跨る。

「ギャッ……!」

危ない。油断はしない。断末魔に備えて俺の左腕をゴブリンの口に噛ませる。


「…ってぇ……!」


多少痛みは覚悟していた。初めて生き物を殺傷した。
本心は怖くて、痛くて、今にも泣きそうだ。
でも、隣で気絶している女の子はもっと怖かったはずだ、それなのに俺がここで弱音を吐く訳にはいかない。


「……!!……!!!」


ゴブリンは呻いているが、次第に静かになり絶命した。
噛ませた左手からは血が滲む。クソ痛いけど、我慢できない訳じゃない。
俺は気絶している少女をおんぶして、静かに裏口から逃げる。

ゴブリンがまた定位置に戻ろうとしていたので、また遠くへ小石を投げる。するとまたゴブリン共は音の方へと向かっていった。
こうも扱いが簡単だと逆に拍子抜けだな、腕は痛いけど。

そして俺はリネル村へと帰還した。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 21:00:57.90 ID:f+nH/MKh0
息抜きのつもりが結構楽しくなってきました
一旦休憩しますが、良かったまたお付き合いください
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 21:05:09.26 ID:XMu8v/dVo
おつおつ
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 21:37:06.26 ID:f+nH/MKh0
前々作【安価】勇者「魔王倒すわ」
https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1564307071/
前作【安価】元勇者「復讐するわ」
https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1564588816/

一応
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 22:17:17.52 ID:f+nH/MKh0

少女を連れて村に到着すると、住人が気付いたのかお爺さんが駆け寄ってきた。俺はお爺さんに少女をゆっくりと渡す。


「マリア……!よく無事で……!冒険者様も……誠にありがとうございます…!」


「はは……なんとかなりましたよ」


安心したら急に力が抜けてきた。俺は地面に膝から前に倒れ込む。
やべぇ、気ぃ張ってたからかな。


「冒険者様!?……酷い傷だ…誰か!手当を!」


意識が途切れそうだ。でも、依頼は達成したんだ。
ここで寝てても怒られないだろう。お爺さんや住人が何か言ってるけど、聞こえないや。






「……ん」


あれ、ここは何処だ?たしか地面に倒れてた筈だけど。


「あっ!起きた?おじーちゃーーん!冒険者様起きたよー!」


「君は…」


「私?私はマリア!助けてくれてありがと!冒険者様!」


マリアという少女は俺に抱き着いてくる。年はいくつだろうか、俺の居た世界で例えるなら小学2.3年くらいかな?
そして俺は改めてこの子を助けたという実感を得て、ちょっと泣いてしまう。
子供の前で泣くとか、恥ずかしいな。


「冒険者様?泣いてるの?」


「いいや、ちょっと目にゴミが入っただけだよ」


「大丈夫?取ってあげよっか?」


「大丈夫だよ、ありがとう」


そうしている内に、部屋にお爺さんが入ってくる。


「身体の具合はどうですかな?冒険者様」


「大分良いですよ。傷の手当もしてくれてありがとうございます」


俺は軽く左腕を動かして、調子が良い所を見せる。
動かしてもそこまで痛くない、この世界の傷薬かな?


「それは良かった。改めて、冒険者様。本当に孫を助けて頂いてありがとうございました」


「あ、いや、もうお礼は十分ですよ」

47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 22:36:40.15 ID:f+nH/MKh0

深々と頭を下げるお爺さんに俺は困惑する。当然の事をしたまでだ、何度も感謝されるとむず痒い。


「なんと寛大な……冒険者様、ギルドに行けば報酬が貰えるでしょうが、私からも受け取って頂きたい物があります」


「え……それは…」


良いのかな、貰っちゃっても。正直貰えたら嬉しいけど、介抱までして貰ったし。何か悪い気もするけど、やはり貰えるものは貰おう。俺には足りない物が多すぎる。

お爺さんは大きな箱を部屋の脇から引きずって持ってくる。
大きいな、なにが入ってるんだろう。


「……開けても?」


「はい、是非」


「おじーちゃん、これ何が入ってるの?」


「これはな、冒険者様に必要な物が入ってるんだよ」


「……!これは…! 」


有り体に言えば新しい服、剣、瓶に入った赤い液体。
これは嬉しいな、服があれば変な目で見られなくて済む。そして剣。これでやっとまともに戦えるかもしれないな、長さ的にショートソード?なのかな?
赤い瓶は恐らく、いや、間違いなく回復役だな。色で大体相場は決まってるもんだ。


「ありがとうございます。物凄く助かります」


「いえいえ、感謝を形にしただけですよ」


『うわぁぁぁああ!!!』


外から聞こえた男性の叫び声が耳を劈く。

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 23:27:54.13 ID:f+nH/MKh0

「な、何事か!?」


俺は箱から剣だけを持ち出し、部屋を飛び出る前に2人に警告する。


「絶対にここから出ないで下さいね!良いというまで待っていて下さい!」


そう言い残し、俺は外へと飛び出した。そしてすぐに俺は村に起きた事を理解する。
これは、報復だ。
住人を襲うのはゴブリンだった。恐らくあの部屋に居たゴブリンを見つけて仕返し、と言った所か。
先にやったのはそっちだろうと思うが、考えてもしょうがないので住人を避難させる。


「皆さん!良いと言うまで出てこないで下さい!!戸締りは固く!物を置いたりして、絶対に開けないで!!」


久しぶりに声を張り上げた。だが、これで良い。
ゴブリン共が集まってきた。予想通りとはいえ、やはり緊張する。
格好付けたは良いが、結局はさっきまでの俺にちゃゆとした得物が付いただけだ。普通に足が竦む。


「来いよ。言っとくけど俺はよえーぞ」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/06(火) 01:00:49.45 ID:xoSF0oKl0

言うや否や、ゴブリンは飛びかかってくる。
最初の数匹の短刀はいなせるが、襲いかかってくるやつと二撃目に入るやつを同時に相手に出来ない。
刺されたりは無いが、切り傷が増えていく。

くっそ、このままじゃやられちまう。
ゴブリンの猛攻は止まらず、次第に焦りを感じてくる。
何か、何かをしなければ。


「ぐぁっ……!」


気を抜いた訳ではないが、ゴブリンの一撃が脇腹に刺さる。
熱い熱い熱い!焼けるように痛ぇ!
このままじゃ本当にやばい。


「やるしかない……!」


俺は剣を思いっきり突き立て、叫ぶ。


「俺は転生者だ!何でもいい!技を繰り出せ!術を放て!完全無欠の能力!そろそろ何かあってもいいだろう!」


怒鳴り声にゴブリンが一歩下がる。
これは、チャンスだ。俺は剣を地面から抜いた。
やってやる、やってやるさ。



行動内容。行動によって起きた事柄。行動によって判明した能力。
安価下
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 01:19:45.55 ID:1GP1Kfof0
右手が黒い籠手に覆われ、右目が赤くなる
身体能力と右目の視力やら動体視力やらが上がる
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 02:30:43.83 ID:xoSF0oKl0

両足を開き、肘を腰まで落とし、叫ぶ。


「うおおおおおおおおおおおあああああああああ!!!!!」


身体の中身を全部吐き出せ。
魂の叫びを轟かせろ。
俺にはもう、後がないのだから。


「ギギッ!!」


「……!?」


右の死角からゴブリンの声が聞こえ、振り向いた時には短刀の刃が顔に刺さる寸前、俺は思った。まだ死にたくない、と。


「ギギギッ!?」


「なっ……」


本当に驚いた。俺の右手が、いつの間にか刃先を指の腹で止めている。でも、痛くない。指で止めているのに?
何が起きているんだ、俺に。


『我が名を唱えよ』


「!?」


突然頭の中に声が流れてきた。本当に何なんだ。


『この場を制す力が欲しいのだろう』


「だ、誰なんだよ……?」


俺は硬質化?されてる指でゴブリンを押し返すと、とんでも無い速さでゴブリンが気に衝突し、四散する。
他のゴブリン共はその様子に怖気付いたのか、その場から動かない。


「なっ!?何が────」


『我が名を唱えよ』


「だから!なんなんだよさっきから!お前の名前なんて…!!俺は……なぁ?」


あれ、何でだろう。俺は、頭の中にしゃべりかけてくる奴の名前を知っている。会った事も見た事もないのに。
これが異世界転生補正ってやつなのか何なのかはわからない。だが、こんな不可思議な現象は間違いなく俺の能力が引き起こした物だろう。


「はは……マジかよ」


なら、やる事は簡単だ。待ちくたびれたよ、本当に。
やっと、転生者らしくなれるのか。
期待が募る、高翌揚が止まらない。
俺はこの時を待ってたんだ、期待してるからな。



お前の名は────


『唱えよ』

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 02:31:53.59 ID:xoSF0oKl0






「レヴァンテイン」





53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 02:56:24.32 ID:xoSF0oKl0

唱えた瞬間、俺の右半身が漆黒の炎で燃え上がる。


「っっ!あっっつ!!」


『精約だ。我慢しろ』


また我慢かよ、とか思っていたら炎が消えた。
右手には肘まである、漆黒の歪な篭手が装備されていた。


『精約完了により、我の精霊としての力を貴様に与えた』


「精約……あれ?」


何だか左右の目での視界の映り方が違う。何なら右目は、遠くを見ようと思えば、100m先の木の窪みまで見れるくらいに視界が異常に発達している。
燃やされた右半身だけ、力の加減が違うというのか、恐らく右手右脚にも何かが起きているのは容易だった。


『奴らを見ろ』


奴らといえば、ゴブリン共しかいない。とりあえず今は言う事を聞こう。俺はゴブリン達を見据える。


『右手を握ってみろ』


「……?」


ぐっ、と軽く握ってみる。その瞬間、ゴブリン共は闇に包まれ、爆散する。


「なっ!?なんだこれ!?」


『魔眼の目。貴様に心から恐怖心を抱いた者を視界に入れて右手を握る事により、条件を満たした者は絶命する』


なんつー恐ろしい能力。悪役側みたいな能力だな。


「すっごー……」


『我は再び眠りに就く』


「え?ちょ、待って待って!?」


精霊からの返事はない。マジか、本当に寝やがった。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 07:30:10.48 ID:Ucs/CS5a0
おお、想定してたよりかっこよくなっておる
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 15:08:12.00 ID:XjO4I6vmO

いくら呼んでも精霊は起きないので、今は後回しにしよう。


「皆さーん!出てきて大丈夫ですよー!!」


大声で叫んだ。俺は精霊の力を解除して、安堵すると脇腹に激痛が走る。これはまた、看病してもらわないと、ダメかな。


「冒険者様!?大丈夫!?」


マリアが駆け寄ってくる。


「大丈夫だよ…ちょっと……痛いけど……」


俺の意識はそこで途切れた。






「……ん…」


目が覚めると、ゴブリンに刺された脇腹をさする。
傷は手当てされている、ありがたい。


「あっ!冒険者様!おはよおはよ!」


「ああ。おはよう、マリア」


俺は身体を起こし、右手を見つめる。俺は、ついに特殊な力を手に入れたんだな。
口元がニヤけてしまう、ふふふ。


「冒険者様?何で右手見ながらニヤけてるの?」


「あっいや!何でもないよ!」


危ない危ない。まだ使いこなせる訳じゃないんだ、気を抜くな。


「おお、起きましたか…冒険者様」


お爺さんが入って来た。トレイを手に持ち、俺の横に置いた。
飯だ。すっかり忘れていたが、この世界に来てからまともな食事をしていない気がする。
目の前にある、パンに目玉焼きにベーコン、温かそうなスープ。
やばい、超美味そう。


「召し上がれ」


「い、いただきますっ!」


恥も外聞なんぞ、もう気にしてられない。
久々に食べる飯は凄い美味しくて、優しい味で、涙が出てくる。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/06(火) 15:48:53.70 ID:XjO4I6vmO

「ほっほっほ……ゆっくり食べて良いのですよ」


「くぁwせdrftgyふじこlp」


自分で言うのも何だが、行儀が悪かったな今のは。






食事も終わり、俺はお爺さんから貰った服に着替えていた。
白の膝丈まである外套、インナーの黒シャツ、白のチノパン、白のスニーカーに近い何か。派手過ぎる服装だが、スウェットよりかは幾分マシだった。


「では、メリルに戻ります。色々とありがとうございました」


「お礼を言うのはこちらです。どうか、貴方様に精霊の御加護かあらん事を」


精霊の加護は貰ったと言いかけたが、その言葉を呑み込む。
この世界では精霊は神様的な物なのか。俺はその力を借りたって事だよな、結構凄くね。やっとそれらしくなってきたなぁ!


「またね!冒険者様!」


「うん。またね、マリア」


マリアに手を振り、俺はリネル村を出ていった。



〜メリルの町


着いたや否や、周りからの視線が恐ろしいくらい刺さる。スウェットの比ではないぞ、これは。
なんだ、やっぱりこの格好がマズイのか。どっちにしろ見られるのか、俺は。
もう、早くギルドに行こう。



〜冒険者ギルド


「おかえりなさい。そしてお疲れ様でした。男さん」


受付嬢は俺を見ると立ち上がり、あの時と同じ様に深々と頭を下げる。


「何とかなったよ。はい、バッチ返すね」


「ありがとうございます。では、報酬をお渡ししますね」


受付嬢はカウンターの下に潜ると、報酬であろう金貨の入った袋を取り出していた。


「こちらが今回の報酬になります」


俺はその袋を受け取り、中身を見る。金銀銅のコインが沢山入っていた。俺はそれを1000円、100円、10円に置き換えて計算してみた。
12440円という結果に。この世界の物価はわからないが多分中々の額なのだろう、なんたって金貨は金だからな!

まぁ、それは置いとこう。しばらくは何とかなりそうだしね。
とりあえずは、これからの事を決めねばならない。
俺は、何をしよう。




安価下
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 16:08:52.97 ID:DBBLHEM70
美人なお姉さんがいる酒場で豪遊だ
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 16:15:24.42 ID:1p8l0Bn60
前々作といい前作といいいまだにクズキャラや外道キャラが面白いと思っている幼稚な精神の読者がいるんだなぁ
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 16:20:57.06 ID:+wj46c+M0
また主人公糞キャラ化させるなら死なせて終わらせるかな
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 18:43:42.74 ID:Ucs/CS5a0
イッチ息抜きって言ってたしすぐ死ぬならいいんでね(適当)
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 08:14:22.23 ID:LAhGqKG90

こんなに金があるんだ、少し自分にご褒美をあげたっていいだろう。


「あ……でも」


俺は思い出す。少し前にメリルの酒場で無銭飲食をし、見逃してくれる代わりに二度と来ない事を約束したのだ。
金を持ったからって約束を破って良いのか?

いや、待てよ。考え方を変えようじゃないか。
俺は前回の事を、謝りに行こう。うん、これなら不自然じゃないし酒も飲める。まさに天才のそれ。

そうと決まれば酒場に行ってみよう。入った途端に店主に怒られないといいけど。




〜酒場


俺は酒場の戸を開け、中に入る。相変わらず活気が良い。
戸に取り付けられた鈴が鳴り、店主や店員の女の子から、元気の良い挨拶が飛び交う。
ここへ来ても視線は相変わらず刺さる。だが、特に俺を睨んで居たのは店主だ。そりゃそうだ。
俺は店主の元まで行き、事情を説明する。


「話はわかったけどよ……兄ちゃん、何したんだ?」


「え?」


「その服……」


店主は顎をさすりながら俺を指差し、マジマジと見てくる。周りからも注目を浴びるしで、なんなんだ。


「……精装束だろ、それ」


「精装束……?」


「まさか兄ちゃん…知らないでそれ着てんのか?」


62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 09:01:11.26 ID:LAhGqKG90

何だそれは、この服はそんな名前が付く程の代物なのか。あのお爺さんは俺にそんな凄い物をくれたのか、ありがたいな。


「教えてくれます?コレの事」


「……ガハハ!この前もそうだが、兄ちゃんいい度胸してるぜほんとによ!仕方ねぇ、教えてやるよ。座りな」


俺は店主の前のカウンター席に座り、話を聞く。
精装束とは、精霊の魔翌力で縫ったとされる装束。これは本来、王家から認められた者しか着れないらしい。

装束は何十種かあり、俺のは『聖光』と呼ばれる装束。
店主は俺の胸に刻まれた刺繍を指差す。これが何よりの証拠らしい。
ただの模様かと思ってたよ俺は。

店主は、この『聖光』の装束は遥か北にある国、ガーランド王国にあるはずだと言う。


「何処で手に入れたんだよ?」


俺はリネル村で起きた事を店主に語った、もちろん精霊の事は伏せてある。


「そりゃあ大変だったな……だが、あんな辺鄙な村で、そんな服があるとは思えねぇなぁ……まさか偽物か?」


そんな御大層な物を複製するとは思えないが、話の通りならこの地域にあるはずはない。
俺と店主はどうなんだろうね、と言った感じで悩んで居ると、店員の女の子がわらわらと寄ってくる。


「ねぇねぇ!お兄さんって凄い人なの!?」


「あたし知ってるよ、この服は精装束っていうんでしょ!なんか凄い人しか着られないとか!」


「マジ!にーさんめちゃくちゃ凄い人って事じゃん!」


うーん、そんなに引っ付くと俺が幸せになっちまうだろう。そんなにベタベタしないで、もっとして。


「も〜、おにーさん困ってるっすよ!離れるっす!」


俺から女の子を引き剥がしたのは、この前俺にお酌してくれたダークエルフだ。なんてひどい事を、この所業は許されないぞ。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 09:55:31.95 ID:BcvmBzI1O

「大丈夫っすか?おにーさん」


「うん。大丈夫……」


「まぁ何にせよ、だ。兄ちゃんは今日酒を飲みに来たんだろ?なら、飲もうじゃねぇか」


楽しそうに笑う店主の言う通り、俺は酒を飲みに来たんだ。
大分目的から逸れたが、豪勢に飲み食いしてやるぞ!



〜宿屋


「うひぃ〜……」


やべぇ、吐きそう。普通に飲みすぎた。でも、気分は最高だ。異世界で俺は生きているって感じがする。
モンスターと戦って、酒場で飲んで食って、宿屋で寝て。いやぁー俺生きてるわー。異世界でちゃんとやってんなぁ〜。

マジで異世界最高。ラノベの主人公程の無双じゃないけど、俺にも凄い力が手に入ったんだ。
成り上がり系?……なんてな。

さて、バカ言ってないで寝よう。明日は依頼か、旅に出るか、金があるうちは遊ぶか、何をするのも俺の自由だ。
生きるのって、楽しい。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/07(水) 10:14:49.50 ID:BcvmBzI1O

〜冒険者ギルド


翌日。俺は聖光を半分に畳んで、腕にかけて町へ出た。こいつの刺繍を見られたら、また視線が飛んできてしまうからな。
功が奏して、昨日俺の顔を見た奴はチラチラと見ているが、ほとんど視線を感じることは無く、安全にギルドへと到着した。

やはり俺は、この世界で生き抜く為に自分を鍛える意味で依頼をする事にした。俺の力は凄いが、まだ未知の事が多く、俺自身が場数を踏んで経験を積む必要があると判断した。
戦闘の依頼は無数にあるが、種類別に分けるとこうなる。

大型モンスター討伐(3~5人)、洞窟探索(3人)
護衛(2人)、魔物討伐(1人)



なんの依頼をやろうかな。



安価下
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 10:18:04.10 ID:gEjBFyDs0
お嬢様の護衛
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/07(水) 14:45:12.90 ID:ZVqTSxLqO

「……よっ…と」


俺はその中から、要人警護の依頼を取る。内容は、メリルの町からノース帝国までの護衛だ。
ノース帝国の場所は知らないけど、新しい地域に行くのは心躍るな。
俺はその依頼書を受付嬢に持っていき、護衛依頼中のバッチを貰った。


「では、明朝に西門の前でお待ちください。そこにもう1人の護衛者と依頼人がやってきます」


「わかった、ありがとう」


俺はギルドを出ると、明日に備えて準備に取り掛かる。何日かかるかもわからんしな。
とりあえず鞄を買うとして、他に何がいるかな?

俺の手持ちのアイテムと言えるのは、ショートソード、回復薬5個、濁り過ぎて中身の見えない瓶(洗浄済)だけだ。




買う物
安価下1.2.3
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 14:53:43.12 ID:rqaywoz00
焚き火用の道具
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 14:58:46.96 ID:peag6gg4O
鉢金とか胸当てとか急所を守る類いの防具
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 15:12:49.13 ID:0msFf3W8O
奴隷
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/07(水) 18:20:27.41 ID:ZVqTSxLqO
undefined
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 19:46:00.98 ID:ZVqTSxLqO

野宿する事を考えて、焚き火が出来る準備をしておいた方が良いだろう。異世界といえば焚き火を囲んで野宿だよな!
とりあえず色々なお店を見て回ろう。

俺は数時間見て回り、火バサミ、耐火グローブ、炎焼石を購入。この炎焼石とは、炎焼石を2個用意して、火打ち石の様に使うと数秒後に発炎する魔道具らしい。やはりこの世界では、こういった不思議な道具も売っている。見ていて楽しい。

その他にも胸当てと鉢金を購入した。胸当ては重く、比較的軽くて頑丈なのを選んで貰った。鉢金はバンダナみたいな物で、額に銀プレートが付いている。
フルプレートも着てみたいが、俺の残金じゃ買えないそうだ、残念。

一通り買い物を終えた俺は武具屋の向かいで新しい建物を建てている男達を見て、この町に、いや、この世界に奴隷は居るのだろうかと思った。

メリルの町は一通り見て回ったが、それらしい者は誰一人と居なかった。少なくともこの町には奴隷は居ないだろうが、他の国はわからない。
見えないだけで、裏社会的な何かとコネがあれば、何かわかるかもしれないが、そんなコネは無い。

明日への旅立ちの前に酒場に寄り、残りの有り金で飲み食いした後、宿屋で明日に備えるのだった。



〜西門


「……あれ」


早く来すぎてしまったのか、まだ西門には誰も居ない。早朝は肌寒く、聖光を羽織って無い俺は半袖のシャツなので、ちょっと寒い。
暫く西門で座り込み、リュックの中身を確認していると馬車がこちらへ向かってくる。

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/07(水) 20:16:36.34 ID:LAhGqKG90

手綱を握っているのは執事服を着たお爺さん。お爺さんと言ってもそんなに歳がいっている訳では無さそう。
馬車は俺の前で停止すると、お爺さんが降りてきた。


「おはようございます。そのバッチ…御依頼をお受けになった冒険者様ですね?」


「あ、はい。男です、よろしくお願いします」


俺は立ち上がり、軽く会釈する。


「ありがとうございます。どうか、宜しくお願い致します」


お爺さんは深々とお辞儀をする。執事服のせいか、何処と無く品がある気がする。するだけ。
俺は馬車の客席をチラ見する。この中に俺が守らないといけない要人がいるのか、どんな人なんだろう。


「して……もう1人の御方は、何処に?」


そうだよ、もう1人はどうしたんだ。寝坊か?依頼人より後に来るとか常識ないな。俺もこの世界の常識知らないけど。


「あ、多分……もうすぐ…」






護衛者安価
容姿、服装、得物、性格…etc
ひとつだけでも可、足りない部分は補います

安価下
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 20:18:27.20 ID:3Oc4f/m+0
かなり気弱でオドオドした性格
容姿は小柄で目を前髪で隠している
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 21:18:21.92 ID:LAhGqKG90

「あ、あの……!」


門近くの木から女の声がした。もしかしてもう1人の奴か?


「誰だ?」


「あの…冒険者……です……」


木から出てきたのは小柄な赤髪の女の子。目は前髪でがっつり隠れていて、足元が隠れる茶色のローブ、手には杖を持っている。見るからに魔法使いだ。胸にはバッチが見える。
こんな小さい子が冒険者?


「君が、護衛の冒険者なのかな?」


「は、はい…!そうです」


「そっか。遅かったね」


「ず、ずっと居ました……知らない人に話し掛けるのが怖くて……ごめんなさい」


なんだって?ずっと居たの?全然気付かなかったぞ。女の子はトコトコとお爺さんに近寄り、お辞儀をする。


「お、お力になれるかわかりませんが、宜しくお願いしみゃ…!……あっ!します!」


「はっはっは。頼りにしていますよ、小さなお嬢さん」


お爺さんも女の子にお辞儀をし、客席のドアへと手を掛ける。


「遅ればせながら、ご紹介致します」


お爺さんがドアを開けると、中にはいかにもお嬢様という感じの服を、お召し物を?着た女性が足を組んで悪態をついていた。
綺麗な金髪に端整な顔立ちをしていて、街ですれ違ったら目で追ってしまいそうだ。


「我が主、クレア・グランフォード・メリルお嬢様で御座います」


「ふんっ……遅いわよ!何日待ったと思ってるの!」


開口一番に怒鳴られた。そんな理不尽な。
隣の女の子は今の一喝で萎縮しちゃってるじゃないか。

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 08:06:40.77 ID:J21fjLg20

「お嬢様、それは彼等には詮無き事。ご配慮下さい」


「何よ!私に口答えするの!?」


「滅相も御座いません。このゲルム、お嬢様に口答えなど毛程も考えておりませぬ。ただ、これからの旅をより良くする為に提案した次第でございます」


「ふん……爺がそう言うならわかったわ。悪かったわね、冒険者。改めて、私はクレア・グランフォード・メリル。クレア様って呼ぶ事を許可するわ」


な、な、何だこいつ!俺は心の中で叫んだ。
お嬢様ってこんなんなのか?すっげぇ偉そうだな!あ、偉いのか!


「わ、私は…ジャスミン・リ・ラスティア……です。宜しくお願いします、クレア様」


「あ、自分は男って言います。どうぞ宜しくお願い致します」


俺とジャスミンは軽く会釈すると、何故かクレアはジャスミンを睨む。おいおい、そんな怖い目で見てやるなよ。


「ラスティア……ですって?」


「あ……はい…何か?」


「…………。いえ、何でもないわ」


「…では挨拶も済んだ事ですので、そろそろ旅立ちましょうか」


「ええ、そうね。冒険者、ちゃんと報酬分は仕事しなさいよ」


「はい、任せて下さい」


このクソあm……ふぅ〜落ち着け。クールになれ男。滅茶苦茶鍛錬の為に我慢だ。


「が、頑張ります……」


76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/08(木) 09:34:48.00 ID:J21fjLg20

〜馬車


俺達はメリルの町から出て、1時間くらいが経った。手綱を握るお爺さんの隣にジャスミンが座っていて、俺は後ろの腰掛けるスペースくらいしかない板に座り、景色を眺めていた。真後ろにはお嬢様が居るが話し掛けはしてない。

護衛任務ってこんなので良いのかな?と思いながら、呑気に欠伸をする。それにしたって暇だな。
誰かに話しかけてみるか?






話しかける人物と内容
安価下
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 09:38:23.69 ID:71WpbcTU0
ジャスミン
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 09:41:06.16 ID:NrlzRK3U0
ジャスミン
とりあえず互いにどういう経歴なのかを含めて自己紹介
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 11:47:49.62 ID:0vpkZjNaO

やはりここは、背中を預けるであろうジャスミンに話しかけよう。連携的な意味でも、友好関係を築ければ大きなアドバンテージになる。
俺は後ろから降りてジャスミンのすぐ後ろにある客席の、屋根についた装飾を掴み、下の出っ張りに足を引っ掛けて近くに寄る。
自分で言うのもなんだが、粋な乗り方だと思う。多分。


「ねぇ、ジャスミン」


「うぇっ!?あ、は、はい!ななな……何ですか?」


突然話しかけたからか、ジャスミンは吃驚して取り乱す。気付いたお爺さんは気を付けてねと一言。


「あ、ごめんごめん。ほら、俺達は協力して魔物と戦う訳だし、少しお互いの事を知っておこうと思ってね」


「あ…な、なるほどです…」


俺は嘘と真実を織り交ぜて、ジャスミンに今までの経緯を語る。記憶喪失になり、この世界の事を何も思い出せず放浪していた事。名も知らぬ女の世話になり、酒場での出来事やリネル村での救出劇を、多少話を盛って面白可笑しく話した。でも精霊の事は教えていない。
ジャスミンは顔の半分は髪で隠れてしまって表情が分かりにくいが、笑っていた。好感触だ!


「……こんなので感じかな、俺の話は」


「記憶喪失なのに、そんな……凄いです。私だったら怖くて…動ける気がしません…」


まぁそうだろう。モンスターの出る世界に記憶喪失で放り出されたら、そりゃ怖いわ。異世界転生に興奮してたから、とは言えないな。

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 12:25:49.72 ID:0vpkZjNaO
最初からだけど、誤字脱字が酷すぎた
補完でお願いします
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 13:21:11.45 ID:nUGQ8H1/0
はいな
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 15:07:48.94 ID:0vpkZjNaO

「ジャスミンはどこから来たの?メリルの人?」


話しやすいように話題を振ってあげる。


「えと……私はベルベット村から来ました」


「ほう。ベルベット村ですか……それはまた、珍しい所から来ましたな」


無言で話を聞いていたお爺さんは、ベルベット村に興味を示したみたいに食いつく。


「珍しい村なんですか?」


「それはもう。魔術に秀でた方が多く、王都にて魔術指導をされているとか。ベルベット村の人材は、門外不出の財産とまで言われています」


「ただ、村の所在は王都の者しか知らなく、未開拓の地域にあるのだとか」


「へぇ〜……そんな珍しい村から来たんだ。じゃあジャスミンも凄い魔法使いとか?」


「…………」


「ジャスミン?」


ジャスミンは黙り込んでしまう。この沈黙はもしかして、魔法使いとしての才能が無いとかそっち系?これは、触れない方が良いか。


「あ、まぁ…それはそのうち分かるよね!うんうん!」


「……ごめんなさい」


「いやいや!……あ、じゃあ、ジャスミンはどうしてメリルの町に居たのかな?」


「あ……えっと…」


ジャスミンは少し考え込んでしまう。もしかしてこれも言えない感じのやつか?


83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 15:37:41.97 ID:0vpkZjNaO

「私には……2人の姉が居て、私は末っ子なんです。お姉ちゃん達は凄い優秀な魔法使いで……その…私は平凡で……周りや家族からも白い目で見られてて……」


なるほどな。あるあるだな。


「でも、そんな私に……お姉ちゃん達は優しくしてくれて…ですね。嬉しかったんですけど…お姉ちゃん達に追いつけない自分が嫌になって……村を飛び出したんです」


ああ、あるある。俺はひたすらに頷く。


「それで、私は……お姉ちゃん達の姉妹として恥ずかしくない魔法使いになりたくて……船を渡ってメリルの町まで来ました」


「……なるほど」


お爺さんが顎をさすって呟く。


「ジャスミンさん……貴女の目的は、『烈風』の精装束ですね?」


「……!」


ジャスミンの反応が、正解だと示している。そうか、それを手に入れて村の皆を見返そうって訳か。


「……はい。そうです…」


「そうでしたか。ですが、あれは……」


お爺さんは言葉を濁らせる。何?知りたいんですけど。


「手に入れるのが難しいとかですか?その烈風って精装束は」


「はい。手に入れるならば、困難を極めるでしょう」


あれ?でも精装束って王家に認められた人が〜って事じゃないっけ。それが難しいのか。いや、難しいわ。


「……それでも…私は…」


「……意志は固いのですね。ならば私は、貴女の成功に祈りを捧げましょう」


待って待って。なんか話が重くない?なんか命懸けみたいな雰囲気なんですけど。



「ちょ、ちょっと質問。精装束って王家から貰うんですよね……?」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 04:29:14.44 ID:+iujvg/60

「如何にも。男さんは精装束をご存知の様ですが、精装束を縫う為の精霊の魔翌力とは何処から手に入れるか…知っていますかな?」


知ってるも何も持ってるしね。でも、精霊の魔翌力ってのは溢れている訳ではないのか。


「いえ…知りません」


「では、是非知っておくと良いでしょう。この世界には精霊の魔翌力を有した魔物…魔獣という個体が存在するのです。並の冒険者では歯が立たず、王家に仕える戦士……神代(ヴァーダ)でないと倒せないと言われております」


「ヴァーダ…?」


王家お抱えの精鋭部隊みたいなもんか?名前からして超強そうだな。


「はい。人の身でありながら、強大な力を持ち、魔獣と唯一対等に戦える者。これは噂になりますが、降霊の儀を終えたヴァーダは、精霊の加護を授かると言われております」


「……!」


まさか、俺と同じ力を持った奴がいるのか。


「逸れてしまいましたね。魔獣を討伐した後、魔翌力を吸収します。吸収した魔翌力を魔縫士に渡し、そこで初めて精装束が完成します」


「へぇ〜!なるほど!……え、じゃあ…さっきの困難を極めるってのは…?」


「先程、魔獣は精霊の魔翌力を保有している事は話しましたね?精装束というのは、完成後に名付けるのでは無く、魔獣の特性で名付けるのです」


「……ん?つまり危ないってのは…」


「お察しの通りで御座います。まだ、烈風はメリル国内にて生きております」


なんて事だ、ジャスミンはそんな危険な魔獣を相手にしようとしていたのか。


「ヴァーダってので、やっと倒せるくらいの相手…なんだよな?ジャスミン……大丈夫なのか?」


「あ、は、はい……自信は無いですけど…」


暫く黙り込んでいたジャスミンを見て、ふと疑問が浮かぶ。何故護衛任務をやっているんだ?考えれば生きる為だのなんだの理由は思い付くが、護衛で遠出する必要性がない気がする。

85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 12:40:45.51 ID:+iujvg/60

「ジャスミンは何で護衛任務を?」


「えと……それは……」


ジャスミンはお爺さんをチラ見する。話していいのか迷っている感じだった。お爺さんは目敏いのか、その反応も見逃さない。


「構いませんよ」


「あ、はい……私は……メリルのヴァーダを襲名したくて……」


メリルの町にもヴァーダがあるって事は、王族や王家の奴が居るって事か。でも、護衛とヴァーダに関係性が見えない。


「つまりどういう──」


俺が言いかけた所で背後から窓をノックする音が鳴る。何かの合図なのか、お爺さんは街道から外れて停止する。
何故止まったのか困惑していたら、お嬢様は客席から降りてきて伸びをしていた。
お爺さんは客席に置かれた荷物から何かを出している。


「何だぁ…?」


「さ、さぁ……」


俺とジャスミンは訳もわからずその様子を眺める。お爺さんは折り畳みの椅子、簡易テーブルを出し、水筒?らしき物から熱々の何かをティーカップに淹れている。
お爺さんは注いだ後、お嬢様の脇の少し後ろに立つ。呆然と見ていた俺達を、お嬢様は一瞥する。


「何してるの貴方達。ちゃんと護衛として働きなさいよ」


休憩か、こんな所で。


「す、すみません…!」


ジャスミンは馬車を降りるでもなく、客席の屋根上によじ乗る。意外と大胆な事するんだな。
俺も見張りをしようと馬車から飛び降りて、広範囲の見える位置に陣取る。丁度お嬢様達が見ている方向の反対側だ。


「爺。ノース帝国までは、あとどのくらいかかるの?」


「何も無ければ明日の夕方までには。ですが、野盗や魔物の襲撃も考慮しますと、明後日になります」


「…長いわね」

86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 13:33:44.12 ID:+iujvg/60

その後に何か小さく呟いていたが、聞こえなかった。


「あ、あの!……ま、魔物です!」


ジャスミンが叫ぶ。俺は周囲を見回すが魔物らしき生物は見当たらない。


「ジャスミン!どこにも居ないぞ!」


「わ、私の領域に入って来ました…!近くの森から来ますが…一体です!」


森か。俺はお嬢様達の近くへ移動し、剣を抜き、森へと身構える。お爺さんとお嬢様は微動だにしない、肝が据わっているのか、ティーカップを揺らして眺めている。


「怖くないんですか?」


俺は思わず聞いてしまう。


「怖くないわよ、別に。それより、貴方達の力量を見させてもらうわよ」


「男さん、ジャスミンさん、期待していますよ」


言ってくれる。


「……来ます!」


ジャスミンが叫ぶと、森の茂みから大きい魔物が出てくる。


「な、なんだこいつ…!」


巨大なゴブリンとでも言うのか、筋骨隆々な巨大な身体。手には大きい棍棒、胸には弓道で着けるような胸当てをしている。
長い耳はいくつもピアスをしていて、如何にも猛者感が溢れている。


「ハイゴブリンね」


お嬢様は、この魔物を前にしても顔色一つ変えない。マジか。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/09(金) 13:45:14.07 ID:+iujvg/60

「…穿て」


馬車の上から声が聞こえた。振り向こうとしたその時、尖った風の塊がハイゴブリンを襲う。すげぇ、魔法とか初めて見た。それに、アイツの腕を負傷させてる。ジャスミンすげぇ!


「ほほぅ……平凡とは、よく言ったものですな」


お爺さんはどこか、楽しそうにジャスミンを見ている。俺も同感だ、これで平凡とか嘘だろ。
俺も負けてられないな、やるぞ。



俺は剣を、ぎゅっと握りしめた。






行動安価
安価下
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 14:12:33.40 ID:2kDwNyZEO
レヴァンテインの力をほんのちょっぴりだけお借りして斬撃飛ばし
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/09(金) 14:49:20.48 ID:+iujvg/60


ジャスミンが一定間隔で風の槍を撃ち続ける。
俺は剣を後ろに引き、構える。俺は『レヴァンテイン 』の能力を少し引き出せるかどうか、試してみる。
完全に発現させると面倒な事になる予感がするからだ。

神経を研ぎ澄ませる。ゆっくりと、中から力が溢れるイメージ。
ハイゴブリンは吼えると、こちらに突進してくる。ジャスミンの風の槍が止まった。何かを呟いているか、あまり余裕は無さそうだ。

……来た。身体の変化がわかる。イメージするのは真空刃。何故だかは知らないが出来る気がする。俺は体重を乗せて、全力で振り抜く。


「グガァァァァッ!!!!」


「よっ……しゃぁ!」


イメージ通りだ。真空の刃がハイゴブリンを襲い、横一文字に血飛沫をあげる。ハイゴブリンは勢いに押されたのか、後ろに倒れ込む。


「…切り刻め」


ジャスミンはその隙を逃さない。目に見える程の、いくつもある円形の風の刃がハイゴブリンの周囲を不規則に飛び回り、切り刻む。
それが決定打となり、切り刻まれたハイゴブリンは息絶えた。


「すげぇな…」


思わず呟く。


「お、男さんも……凄いですっ!」


聞こえていたか。ジャスミンは屋根から飛び降りて、俺のそばに寄ってきてお辞儀をされた。


「ありがとう、ジャスミン」


俺はその瞬間、頭に一筋の閃光が走る。待てよ、ここでジャスミンの頭を撫でたら、何か漫画の主人公っぽくね!?やるか、やってみるか!?
俺は頭を下げているジャスミンに手を伸ばす。


「貴方達、少しはやるじゃないの」


「想像以上の方々ですね。頼もしい限りです」


お爺さんとお嬢様が、席から立ってこっちに歩いてくる。ジャスミンも頭を上げ、俺の手は引っ込んだ。
すると、お嬢様は俺の顔を覗き込み、訝しげな顔をする。


「貴方……その眼は何?」


「え?」

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 15:46:13.95 ID:+iujvg/60

目?もしかして魔眼が出ているのか?


「あぁ〜えっとこれは……体質みたいな物で……」


少々無理のある言い訳だが、これで乗り切るしかない。


「体質?こんなに眼が赤いのが?」


お嬢様は更に怪しんできた。ですよねー!


「クレアお嬢様。男さんが困っています、そこまでに」


「何で?気になるじゃない」


「冒険者の能力は、その数だけあります。多少特異な体質があっても不思議は無いでしょう」


「ふーん……たしかに、アレスも不思議な力を持ってたわね」


何とかなった…?ありがとうお爺さん。


「あ、あの……!クレア様…」


ジャスミンがお嬢様に詰め寄る。


「な、何…?近いわよ」


「やはり…アレス様とお知り合いなのですか……?」


俺もその名前は気になった。不思議な力とは何だろう。


「ああ、その事ね……爺、説明してあげなさい」


「わかりました。アレス様とは、旦那様に仕えるヴァーダです」


「…!ってとこは、アレスって人がメリルのヴァーダ?」


「左様で。そして旦那様とはクレアお嬢様の父君であり、メリルの主権を握る御方です」


「なんと!?」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 16:44:17.40 ID:3U6iQqIwO

実は薄々そうなんじゃないかとは思っていた。お嬢様の名前はクレアなんとかメリルだったからな。もしかしたらとは思っていたが、やっぱりなのか。


「アレス様は精装束…『雷雨』を所持しています。ですが、未だ烈風には手を焼いているのが現状です」


精装束を手に入れてる奴でさえ手こずる魔獣……って事か。ますますジャスミンが、どれほどの危険を犯そうとしているのか理解出来た。
ジャスミンはヴァーダを襲名すると言っていた。つまり、アレスからヴァーダの地位を貰い、烈風を倒すと言っているのだ。


「アレス様は、孤高を貫くお嬢様に優しく接してくれたのです。ご友人をお作りにならないお嬢様が、唯一心を許した相手でしょう。ご友人の居ないクレアお嬢様を、私は────」


「……爺?余計な事は言わなくて良いのよ?」


話の途中で、お嬢様は満面の笑みでお爺さんを睨む。これは失礼致しましたと頭を下げ、お爺さんは一歩後ろに下がった。


「そういう事よ。私はこの広大な土地を所有するメリル王家の娘、クレア様なの。改めて身分の違いがわかったかしら?」


「あ、はい……まぁ」


友達作らないんじゃなくて、作れないんじゃね?ムカつくけど、身分の違いはわかった。この女を怒らせるのは得策ではない。


「わかったなら休憩はお終い。先を急ぐわよ」

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 18:35:46.69 ID:3U6iQqIwO

お嬢様は馬車へと踵を返し、さっさと乗ってしまう。


「……俺達も行こうか」


「あ…はい…」


「男さん、少しお話が」


「え?」


俺はお爺さんに呼び止められ、ジャスミンと顔を見合わせる。先に行くよう促し、俺はお爺さんの元へと移動する。


「どうかしましたか?」


「申し訳ありません。ただ、確認したい事が……」


お爺さんは顎をさすって、俺を見据えてきた。


「……魔王の眼を模した深紅の目…またの名を魔眼の目…」


俺は心臓が飛び出るかと思うくらいに吃驚した。


「何で……」


「この歳になると、見聞を広めるのが唯一の楽しみなのですよ」


お爺さんは馬車へと歩きだし、すれ違い様に俺の肩を叩く。


「くれぐれも力の使い方を間違わぬよう、気を付けて下さい」


そう言い残し、お爺さんは御者席へと戻っていく。あのお爺さん、何者なんだ…?
俺はモヤモヤした気持ちを抑えながら、馬車へと戻った。

93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/10(土) 01:46:37.30 ID:swoF+qcF0





陽は落ち、辺りは暗闇へと変化していく。夜空には星が光り、月は2個あった。この世界では普通らしい。
メリルの町とノース帝国の間にある大湖、メルヴィス湖の前で俺達は野宿をする事にした。

俺は適当な木を切って木材を集めようとしたらお爺さんに止められた。どうやら焚き火に使う木は何でも言い訳では無いらしい。
お爺さんの審美眼ならぬ審木眼を頼りに、ジャスミンは太い木を魔法で薙ぎ倒す。魔法ってすげぇ。

焚き火の準備を始めたので、すかさず俺はメリルの町で買った道具を出し、この場は俺に任せろと言ってみた。


「わぁ……男さん…用意が良いですね、凄いです」


「いやいや、それほどでも…」


あるんだな。買って正解だった。


「…では、準備は男さんに任せましょうか。ジャスミンさん、お嬢様と御一緒に湖で汗を流しては?」


え?なんだって?


「えっ!?…あぅ……クレア様と…ですか?」


「はい。女性水入らずでの会話もあるでしょう?」


「あっ……!は、はい…じゃあ、行ってきます」


ジャスミンは客席のお嬢様に声を掛けると、案外すんなりとお嬢様は従ってついて行った。
ふーん…水浴びね。そっかそっか…ふーん。


「では、私は簡易的な天幕を張ってきます。火傷に気を付けて下さいね」


「わっかりましたァー!」


お爺さんはにっこり笑うと、馬車へ向かい中から荷物を取り出して、いそいそと準備に取り掛かる。俺も炎焼石を2つ取り出し、石を打ち付けて、くべられた木材へ投げ込む。すると炎焼石が発炎しだし、すぐに引火して徐々に燃え上がる。

火の勢いが増して来たので、俺は耐火グローブと火バサミで木を動かす。正直動かす意味はわからんが、それっぽいだろう。
よし、これで焚き火は問題無いだろう。




行動案外
安価下
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 02:08:00.46 ID:nH64sxr50
今日知ったことを地面に書き出したりして整理する
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 02:10:34.68 ID:outfzYJF0
あ、いかんミスったかも
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 02:51:49.97 ID:swoF+qcF0

天幕を張るお爺さんを横目に、俺は適当な木の枝を拾った。地面を木の枝でなぞってみる。程よい柔らかさで、書きやすい。
とりあえず今日知った事を書き起こしてみる。

まず、今居る大陸にメリルという領土があり、メリルの町は領土内の一部。
クレアは王族の娘で父親がメリルの領主。
アレスというヴァーダがクレア父に仕えている。
クレアむかつく。
アレスは精装束『雷雨』所持、その他にも力がある?
この事から国ひとつに精装束1つではなく、複数ある事がわかる。

お爺さんが魔眼を知っていた。
クレア友達居ない。
ジャスミンは魔法使い、ベルベット村出身、姉が2人。
クレア偉そう。
精装束は魔獣から作られる。
『レヴァンテイン』は出力を調整出来る、もう少し練習が必要。
俺強すぎ……っと。


「……よし」


大体は書き起こした。こうやって見ると中々濃い1日だったな。
文字を眺めているとお爺さんが俺の方へ歩いてきたので、俺は文字を消した。天幕は張り終わった様だ。


「つきましたね。男さん、ありがとうございます」


「これくらいお安い御用ですよ」


「ははは…どれ、飲み物でも作りましょうか。水浴びのお二人もそろそろ戻って来るでしょう」


はっ!!……いや、別に覗きたかった訳じゃないし。そんなんじゃないし。魔物出たら危ないし?ちょっと気になっただけだし。
俺がブツブツ言っていたら、目の前にコップが差し出される。


「…どうぞ。少し苦いかもしれませんが」


「あ、ありがとうございます」


俺はコップを受け取り、匂いを嗅ぐ。これは珈琲の匂いだ。大丈夫だお爺さん、俺はブラックは好きだぞ。


「いただきます……はぁ〜美味しい…」


「はっはっは…お口に合って良かった」


97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 03:22:48.45 ID:swoF+qcF0

珈琲の味を堪能していると、背後から足音。クレアが帰ってきた、寝巻きで。そんな物まで持ってきたのか。なんだっけこの服。
ああそうだ、ネグリジェだ。下ろしていた金髪は、ポニテになっていた。


「夜は冷えるわねー…」


クレアは自分専用の椅子へ座り、焚き火の前で温まる。ちょっと格好と髪型が違うから、中々悪くないなとか思ってしまった。
そして俺はある事に気付く。


「あれ?ジャスミンはどうしたんですか?」


「ああ……あそこよ」


ティーカップを手に取り、顎で俺の背後の大きめな木を指す。なるほど、隠れているのか。


「あの子、私程じゃないけど。中々よ」


「……え?何がですか?」


今の発言の意味がわからなかった。追及するでもなく、か待っていればそのうち来るだろうと思い、俺はまた珈琲を啜る。
俺はその間悔しいがチラチラとクレアを見てしまう。くそ、喋らなければ可愛いなこいつ!


「おや、これはこれは……」


向かいで座っていたお爺さんが俺の背後を見ながら呟く。
ジャスミンか?俺は振り向いた。


「……んなっ!」


そこに居たのは見知らぬ美少女。顔半分を隠して居た赤い前髪は、片目だけ出していて、髪を花のピンで留めていた。
ぶかぶかのローブで体型がわからなかったが、クレア同様のネグリジェを着用している為、ジャスミンの身体がよく分かる。
小柄だが決して小さくはない胸に、すらっとした身体。肌が綺麗なのか脚は美脚と言える。


「え、だ、誰…?」


これは不可抗力だ、咄嗟に出た言葉だ。


「あ…ぅ……や、やっぱり…へ、変ですよね……」


「い、いや!か、かかか…可愛いよ!?!?」


やべぇ!声が裏返った!


「ふぁっ!?……や、あの……その……!」


「とても可愛らしいですよ。ジャスミンさん」


これぞ大人の余裕、と言わんばかりに自然と褒められるお爺さんに俺は敬意を表した。


「あ、あああ、ありがとうございますっ! 」


ジャスミンは駆け足でクレアと向かいの椅子にちょこんと座り、顔を隠す。やべぇ、これが所謂ギャップ萌えというやつでは?
今俺の目にはジャスミンがとても可愛く見える。好きになっちゃいそう!
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/10(土) 03:37:15.00 ID:swoF+qcF0

「ジャスミンさん、どうぞ」


「あ、あ、ありがとう…ございます…」


お爺さんはジャスミンにもカップを渡す。珈琲を啜ったジャスミンは舌を出して苦い顔をする。


「ぅあ〜…に、苦いです…」


そんな顔も可愛いなとか思っていたら、お爺さんは角砂糖とティースプーンを既に用意していた。デキるお爺さんだなぁ!?


「はっはっは…どうぞ。ジャスミンさんには2つくらいが丁度良いでしょう」


角砂糖を入れてもらい、少し混ぜた後にジャスミンはもう一度口を付ける。今度は美味しい!って見てわかる顔だ。


「こ、これ…!美味しく…なりました!凄い、凄いですっ!」


「はっはっは…また飲む時は、砂糖を入れてから差し上げましょう」


めちゃくちゃ優しいやないか!お爺さんこれ若い時は中々のたらしだったのでは??
ジャスミンに少し惹かれつつも、俺は今のこの時間を楽しんだ。






あれからクレアの自慢話を散々聞き、そろそろ寝ようかという雰囲気に。俺はその前に、質問があった。





質問する相手
安価下
質問内容
安価下2
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 04:50:33.12 ID:dQCIdpL0o
ジャスミン
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 06:18:15.96 ID:RxmrgVkd0
スリーサイズは?
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 07:48:38.39 ID:tepvWrTZ0
草ァ!
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 08:16:04.70 ID:2xWRfFWL0
この任務が終わったらジャスミンはどうする?…とか聞きたかった
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/10(土) 09:22:25.38 ID:swoF+qcF0

「ジャスミン…ちょっと良い?」


「えつ…あ、はい…?」


ジャスミンは俺の傍にトコトコと駆け寄ってくる。もう何でも可愛く見えてきた。クレアとお爺さんも何かを話しているが、内容はわからない。
俺は寄ってきたジャスミンに耳打ちする様に小さな声である事を聞く。


「ジャスミンのスリーサイズ教えて」


「……えっ?」


聞こえなかったか、仕方ないもう一度。


「ジャスミンのぉ──」


「き、聞こえてましたよっ!……そうじゃなくて…その、あの…あぅ……」


顔を真っ赤にして、手をモジモジとさせている。おいおい、抱き締めたくなるじゃねぇか。


「わ、私……その…は、測った事……なくて……」


もう目を閉じて絞り出すように喋っている、恥ずかしさの限界か。測った事ないと来たか……ならば仕方ない、俺の目測で測るしかないな!


「測った事ないんだね、じゃあちょっと失礼して……」


「ふぇっ…」


俺は顎に手を当て、舐め回すようにジャスミンの肢体を凝視する。俺は元の世界での元カノを参考にする。


「ぁ…あゎゎ……そ、そんなに……見ないで…」


「あ、ごめんごめん。もう大丈夫だよ」


俺の目測結果、83-54-75と見た、良い身体してんねぇ!合ってるかわかんないけど!


「付き合わせてごめんね、じゃあ俺達も寝ようか」


「あ、はい…」


俺とジャスミンは天幕へと、就寝に向かった。






翌朝。俺達は野宿の道具を片し、再びノース帝国への道へと戻る。湖沿いに進み、反対側に行かなければならない様だ。
俺は大湖を眺めている。間にこんな湖があったら交通の便が悪いだろう、橋でも作らないのかな、とか考えていた。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 14:34:04.06 ID:GUyQL1LqO

「大きいでしょう、このメルヴィス湖は。この中には巨大な魔物が潜んでいるとも言われているんですよ」


後ろからお爺さんの声が聞こえる。俺は相変わらず後ろに座ってるので前の状況がわからないが、おそらくジャスミンに話しているのだろう。それにしても巨大な魔物か、たしかに居てもおかしくないな。


「そして満月が1つになる日……『ヒトツキの夜』にこの湖に訪れると、セイレーンの歌が聞けるそうですよ」


へぇ、月が1つになる日があるのか。ジャスミンが何か言っているが聞き取れなかった。お爺さんの声はよく通るな。




〜国境


一度休憩を取り、しばらく経った頃。巨大な城壁の前で俺達は一度止まる。門番らしき兵士が2人、恐らくここは国境なのだろう。
お爺さんが馬車から降りて、門番に何かを見せている。通行手形的なやつかな?

様子を見る際、クレアの様子もついでに見る。退屈そうなのか、悩み事なのか、前を通る俺を見る事も無く、ただひたすらに遠くを見ている様だった。

通行許可が出たのか、お爺さんは馬車に戻って再び手綱を取る。俺も後ろに戻り、国境を後にする。
今更だけど、クレアは何しに行くんだろう。俺が知る事では無いのだが、クレアの様子から恐らくノース帝国で何かあるのだろう。




〜街道


「あまり風景は変わりませんが、ここはダーウィンの領土であり、領主のエルサム・ダーウィン様が統治しておられるのです」


風景は確かに変わらないが、何というか草むらに大きな岩が多い感じがする。遠くには牛を連れて歩く人物も見え、この国も平和なんだなと思った。


105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/10(土) 14:56:43.22 ID:GUyQL1LqO

腹のすき具合からして恐らくもう昼だろう。夕方には着くと言ってたし、もう少しの辛抱だ。頼むから何も起きてくれるなよ。

俺は欠伸をして呆けていると、遠くから何かがこちらに向かって来るのが見える。いや、追いかけられてる?
目を凝らしてもよく見えないので、レヴァンテインの力を使って右目の視力を上げる。
見えたのは馬に乗った如何にもな山賊が3人。


「山賊らしき奴らがつけてきてます!数は3人!」


フラグ回収早すぎだろとか思いながら、前に居る2人に大声で知らせる。このままだと、追いつかれるのは時間の問題だ。


「ここで野盗にで遭遇するとは……馬車を止める事は出来ませんぞ」


お爺さんの言う通り、ここでクレアに被害が及ぶのは絶対に駄目だ。







行動安価

安価下
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 15:17:22.20 ID:L2dgG80P0
レヴァンテインの真空刃やジャスミンの遠距離攻撃できる魔法で盗賊か馬を攻撃
合ってるかどうかは自信がない
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 10:32:39.70 ID:epqmQo9JO

そうだ…あれなら。俺は馬車の屋根によじ登り、上から真空刃を飛ばす事にした。だが、思ったより走行する馬車でバランスを保つのが難しい。

フラフラとしながら何とか安定させ、剣を抜き、構える。敵は直線上、横薙に斬るのが最善だな。腹の底から右手に力が流れるイメージ、部分的にレヴァンテインの能力を発現させる。


「……!」


まさに今、振り抜こうとした際に、俺は気付いてしまった。
今俺は、人を殺そうとした、躊躇もせずに。相手は人間で、モンスターとは訳が違う。

いくら相手が悪党で、人の命を平気で奪う奴らだとしても、俺自身は人を殺した事なんて無いし、 モンスターと同じ感覚で倒せるはずもない。

なのに……俺は、殺せる。モンスターを殺すように、人が虫を潰す時のように……殺せる。


「お、男さん!大丈夫です………か…?」


「あ…ジャスミン…?」


どうやらジャスミンも屋根に上がって来たようだ。一瞬ジャスミンが固まった気がするが、何か顔についてたか?流石に2人では狭いので、ジャスミンに促されお爺さんの隣に降りて座る。


「私が……足止めします!」


申し訳ないが、ここはジャスミンに任せよう。今の俺は少し、おかしい。俺は少し前のリネル村の救出任務を思い出す。廃家に居たゴブリンを俺は殺した。初めて生き物を殺したという実感で泣きそうだったはずなのに。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 15:11:14.36 ID:epqmQo9JO

今でもあのゴブリンを刺した感触は覚えてる、気持ち悪かった。
でも、報復しにきたゴブリンの時には殺せるかもって思ってた…何でだ?
もしかして、この力のせいなのか。


「…あっ!!」


ジャスミンの声が聞こえたと思ったら、何かが落ちる音がした。まさかと思い屋根上を見たらジャスミンが居ない、落ちたのか!?


「ゲルムさん!ジャスミンが落ちた!止めてください!」


「…………すみません」


「!!」


無理もない。このお爺さんにとってはクレアの安全が第一だ。俺達はただの雇われ冒険者、優先順位なんて考えるまでも無かった。





行動安価
安価下
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/11(日) 15:13:40.82 ID:Bw7Ok6z40
ジャスミンを助けるために馬車から飛び降りる
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 15:53:32.51 ID:epqmQo9JO

「……あとは頼みます!ゲルムさん!」


お爺さんの返事も待たず、俺は馬車を飛び降りる。その時に見えたクレアは、野盗に追われていて、ジャスミンが落ちたのにも関わらず、涼しい顔で景色を眺めていた。

地面を転がり落ち、すぐに立ち上がる。野盗は2人に減っていた、1人は何とかしたようだ。
駆け足でジャスミンの元へ向かう。街道から外れた所に横たわって動かない、気絶しているかも。

俺がジャスミンの傍に来たと同時に野盗2人も馬から降り、こちらに近づいてくる。手には武器…話し合いは出来なさそうだ。


「てめぇら!よくも兄貴に怪我させてくれたなぁ!覚悟出来てんだろうなぁ!!」


兄貴…ジャスミンが何とかした奴か。キレてる奴が剣を振り上げるが、もう1人の髭面が止めてくれた。もしかしたら案外まともな奴かもしれない。


「落ち着け。いきなりぶっ殺しちゃぁ可哀想だろ?それに女は殺しちゃぁ勿体ねぇ……お仕置きしねぇとな。男の方も、たっぷりと可愛がってやろうぜ」


全然まともじゃなかったわ。ヤバイ奴だったわ。このままでは俺もジャスミンも危険だ、何か対策をしなければ。






安価下
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/11(日) 16:20:30.14 ID:4Q994Evp0
おいおいこんなところで野盗かよ、どこから流れてきたんだとか適当言って煽りつつ装備やらの観察、様子見
襲ってきたら仕方がないので鞘付き剣ぶん回し〜レヴァンテインを添えて〜でおねんねさせる
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/11(日) 17:29:29.56 ID:epqmQo9JO

俺はあれこれ考え、実行する。


「…はぁ〜〜っ…ついてねぇな……馬車から投げ出されて、挙句野盗に襲われるとか……俺の運も尽きたか」


俺は両手を上げ、抵抗しないよとアピールしてみる。


「ヒャハハハ!見ろよ!こいつ抵抗すらしないぜ!?」


「…素直だな。何か企んでねぇか?」


髭面は俺の行動を怪しむが、馬鹿には通じそうだ。


「こっちは1人気絶してるしな。守りながら抵抗するにしても圧倒的に不利だ、俺も馬鹿じゃないさ」


「随分と落ち着いてんじゃねぇか。肝が据わってるのか、ただの馬鹿なのか…」


髭面は長い髭をさすり、俺の様子を窺う。


「変な詮索しなくても、ただの馬鹿だよ俺は」


そう言いながら奴らの装備を確認する。馬鹿の得物は剣、特に硬そうな装備はしてなくて、布で出来た服だけ。
髭面は布の服の上から胴当てと、頭に角が左右に生えた兜、両手には篭手を装備している。得物は斧だが、まだ背中に差したままだ。
やるならこの馬鹿からだな。


「ダンテ!このビビり野郎をアジトに連れていこうぜ!」


「…まぁ良いだろう。お前、変な気起こしたらぶっ殺してやるからな」


髭面は俺を指差し、目で威圧してくる。安心しろよ、すぐに変な気起こしてやるから。


「わかったよ。俺のツレ…気絶してるし、抱えてもいいか?」


「ったりめぇだろ!さっさと持て!!」


「ああ…ありがとう」


馬鹿が。
ジャスミンに振り向く勢いのまま、ショートソードを鞘ごと抜き、そのまま振り向いて、後ろに居る馬鹿の顔面に鞘を叩きつけた。
馬鹿は勢いよく転げ回り、ピクリとも動かなくなる。やべぇ、やりすぎたか。


「ちっ…油断しやがって。やってくれるじゃねえか兄ちゃん…大した馬鹿力だが、俺はそう簡単にはいかねぇぞ」


髭面は斧を抜き、構えをとる。マジか、今の見て反応それだけか。

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/13(火) 15:22:44.43 ID:EVQnE6soO

まぁ、確かに魔法のある世界だし、怪力くらいじゃ驚かないか。俺も鞘を構える。
剣術なんぞ皆無の俺だが、ゲーム漫画アニメで培った知識がある。アテになるかわからんが、当たれば良い。この力に頼って振れば勝てるだろう。


「抜かねぇのか?」


「……抜くまでもないって事だよ」


「けっ…舐めやがって」


髭面は唾を吐き捨てると、回転して斧を投げてきた。
馬鹿かこいつ、得物を投げやがった。難なく交わして体勢を変えた時、右肩に激痛と衝撃が走る。
俺は衝撃にぶっ飛んでしまい、草原に倒れ込む。


「いっ…てぇ!!」


何が起きた?殴られたのか?俺の居た場所には、髭面が立っていた。いつの間に距離を詰めた…?


「軽いなぁ兄ちゃん……どうだ?効くだろ、俺の『魔撃』はよ」


髭面は俺を見下し、鼻で笑う。見るのとやられるのじゃ訳が違う。
今のは喧嘩慣れした奴が、服で目眩ましをして死角から殴るアレと同じだ。
俺は立ち上がり、構える。


「おいおい、大人しくしてりゃあ骨の数本で勘弁してやっても良いんだぜ?女は貰ってくけどなぁ」


髭面は髭をさすり、ニヤケ面でジャスミンを見ている。この野郎…絶対にそれは許さねぇ。
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/13(火) 15:49:18.18 ID:EVQnE6soO

「ふざけんな……ジャスミンに手を出したら、許さねぇからな」


「ガハハ!威勢がいいのは結構だけどよ」


髭面が低く構える。


「そういうのは、強くなってから言えや」


「…!」


髭面が消えた。くそ、どこに行きやがった!
俺は適当に鞘を振る。当たればいい、当たれば俺の勝ちなんだ。


「俺ぁこっちだぜ?」


「なっ…────ぐあっ!!」


左頬を殴られた。今度は何とか踏ん張り、倒れずには済んだ。血の味がする、口の中が切れたか。
それにしてもこいつ…どこから出てきやがったんだ。


「…力量差がありすぎだな、兄ちゃんに最後のチャンスやるよ。諦めろ」


「う、うるせぇ……俺はまだ本気出してねぇだけだ……」


「……ガーーーッハッハ!やっぱりただの馬鹿だったか!気に入った!次で殺してやるよ!」


「やれるもんならな…!」


馬鹿にしやがって、お前なんか当たればなんて事ねぇんだ。当たればな。
ただ、あいつの動きが速すぎて見えねぇ。何か…何か策は…。








男ステータス
右手の筋力増強のみ



行動安価
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 16:03:08.31 ID:R1Q8DHn0O
地面を殴って砂煙で覆う
物理的なダメージがあるなら、攻撃が飛んできた時にその場所だけ何か変化があるはず
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 16:04:05.47 ID:vltKaLrh0
目の強化とかはできないか
てかこいつホンマに盗賊かよ

全力で強化して地面をブン殴り叩き割る
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 16:05:43.71 ID:R1Q8DHn0O
あ…適応されるか分からないけど、砂煙で覆った後に魔眼も使ってください
反応速度を上げておかないと辛そう
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 16:18:55.41 ID:EVQnE6soO
安価下とか入れ忘れました
上記3つ参考にして頑張ります
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 18:04:12.30 ID:vltKaLrh0
ここってある程度定まったルートがあるわけじゃなくて、安価を参考にしてイッチが舵をとる感じ?
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 18:34:10.47 ID:TbkMklKWO
ちょっと先までの展開はあって、余程今の流れに逆らう安価でない限りは、その動線に乗せて話を進めてますね。
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 15:00:43.77 ID:kgfHVtwqO

「…ふぅぅ〜……」


落ち着け男よ、クールになれ。まずはジャスミンを避難させよう、ここでは巻き込んでしまう。
俺は鞘を腰に戻し、ジャスミンに近付いて抱き上げる。小柄だからか、思ったより全然軽い。


「…何してんだ?」


「…ここじゃジャスミンを巻き込んじまう、少し遠くに運ばせてくれ」


「馬鹿かお前…俺がそれを許すとでも思ってんのか?」


まぁ、そうだな。俺は左肩にジャスミンを担ぎあげ、空いた右手で鞘を抜いて、大きく振り上げ不敵に笑ってみせた。


「なら、無理矢理運ぶさ」


地面に向かって鞘を振り下ろす。爆音と共に一瞬で視界が砂埃に覆われた。俺は右脚を強化して、その力で大きく後ろに跳ぶ。正直どのくらい跳ぶかわかんなかったけど凄いな、この力。
砂埃を抜け、大きな岩の近くまで来たのでジャスミンを裏に隠して、飛び出た方を見ると、中から髭面が埃を割って出てきた。


「兄ちゃんよぉ……悪足掻きはよせ。萎えちまうだろ」


俺はジャスミンと髭面が遠くなる方向へ走り、後ろを振り返ると髭面は俺を見るだけで追って来ていない。
俺は走るのを止め、髭面に向き直す。


「どうした!かかってこいよ!」


安い挑発だ。髭面は何故か装備を外し始め、身軽になると肩を回して低く構えた。
もしかして更に早くなるとかそういうやつ?勘弁してくれ。俺は鞘を振り上げる。


「またそんな事しても意味無いぜ!死ぬ準備しろよ!兄ちゃん!」


髭面が消えた。これでいい、俺はまた鞘を叩きつけて地面から砂埃を発生させる。魔眼も発現させ、些細な砂埃の些細な変化に神経を尖らせる。

高速で向かってくる人影が見える、良く見える……来る!
顔を狙った一撃を側面に交わす。よく見えるよ、お前の動きが!


「何だと!?」


「俺の……価勝ちだ!!」


振り上げた鞘を、髭面の首裏に叩きつける。力が強すぎたのか、髭面は地面から派手な音を上げた。

122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/14(水) 15:51:21.62 ID:kgfHVtwqO

暫くすると砂埃は消え、視界が鮮明になってくる。勝ったんだな、俺は。改めて、この力と魔眼の凄さに気付かされた。
まだ謎が多いが、もっと使いこなせれば更に強くなれる気がする。

髭面は倒したし、とりあえずジャスミンの様子を見なきゃ。
俺はジャスミンの元へと向かおうとした時────。


「待てよ……兄ちゃん」


「!?」


吃驚した。殺してないとはいえ、意識があるとは思わなかった。俺は再び鞘を抜き、倒れたままの髭面に向かって構える。


「そう構えんな……もう戦う気力もねぇ。俺の負けだ」


「……」


油断するつもりは無いが、たしかに先程までの雰囲気とは違う気がする。俺も鞘を戻し、気になっていた事を聞こうと思った。


「たしか……ダンテだっけ?お前、ただの野盗じゃないだろ」


「なんだ……俺はただの野盗だぜ。そんな事聞いてどうすんだよ…?」


「少し気になったんだ、強いから」


ファンタジーの盗賊や山賊…色々あれど、手強いというイメージが無かったからか、髭面の強さに疑問を持っていた。この力が無ければ間違いなく負けていたしな。


「…そうかい。で、俺を殺さないのか?」


「え?」


何言ってんだこいつ、殺す訳ないだろう。


「おいおい……わかるだろ。俺は野盗だぜ?このまま生かしといて良いのかよ?」


「あぁ…」


そうか、こいつ等を生かしたらまた別の人が被害に遭う。でも、こいつらには兄貴ってのが居るはずだ。こいつを殺しても野盗を根絶出来るわけじゃない。それに俺は人を殺したい訳じゃない、感覚はおかしくなっているが理性はある。

とあるゲームの主人公は人を初めて殺した時にかなり取り乱していたが、それは人を殺したという業を背負う覚悟がないからだ。画面越しの俺はゲームだからと理解しているから、こいつ取り乱しすぎだろとか思っていた。今なら少しは気持ちがわかる。

殺らなければ殺られる、正当防衛、言い方はあれど結局は人殺しだ。背負わなくて良いなら俺だって業を背負いたくはない。ただ、野放しにする事によって被害者が増えるのも好ましくはない。ジャスミンの容態も気になるし、何とかしたいが。








行動安価
安価下
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 16:01:56.83 ID:bGDDDw35O
武装解除と称して武器を取り上げて拘束し、ジャスミンの手当てをする。
ジャスミンの容態が落ち着いたら
依頼人を放ってしまったことに頭を抱えてジャスミンと相談する。(助けたこと自体に後悔はしていないと伝えて)
ダンテに捕まえた後の賊の処遇を尋ね、ここら辺(世界)の司法関連について聞いてみる。
可能ならば戦闘中に使った技術を聞いたり、賊から使えそうなものをぶんどる。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 17:06:13.00 ID:kgfHVtwqO

こいつの処遇は後だ、一先ずはジャスミンを確認してこよう。俺は髭面に近付いて、服を脱がし始める。


「おいおい何してんだ…まさかお前──」


「勘違いすんな!ちょっと拘束するだけだ」


脱がせた服を細長く折り畳み、手足を固く縛る。その際、他に何か武器は無いか漁るが特には見つからなかった。今のこいつなら解く力もないだろう。俺は髭面を置いて、ジャスミンの元へと向かう。





あれから少し経ったが、まだジャスミンの意識は戻らない。馬車から落ちた時に怪我をしていないか確認したが、素人目には擦り傷と打撲くらいしか分からなかった。

外傷はそれだけで、死んではいないはず。ノース帝国で医者に診せてやりたいが、まだまだ距離はある。俺はジャスミンの傍で座り込み、この後の事を考えながら時折髭面を見ていた。あれ、あいつ寝てね?まぁいいけど。


「……ん…」


「おっ……ジャスミン?」


良かった、生きてる。


「……?」


「起きた?」


「え……えっ!?」


目を開けたので声を掛けたらめちゃくちゃ驚かれた。ジャスミンは半身を起こして前髪を整えて俺に上半身だけ向ける。


「あれ…あの……私、馬車から落ちて……」


「そう、気絶してたよ」
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 17:40:57.46 ID:kgfHVtwqO

「気絶……」


そう言うとジャスミンは辺りを見回す。遠くで拘束されているダンテを見つけたのか、一瞬顔が止まり俺とダンテを交互に見やる。多分俺が野盗を倒したと理解してくれた。


「…あの……クレア様達は…?」


「先にノース帝国に行ったよ、俺はジャスミンを助けに馬車を降りたんだ」


「えっ……何…どうして……私なんか…」


俺の頭に稲妻走る。さながらロマサカでいう技習得時の電球がピコーンと音を鳴らすアレが俺の中で起きた。これは言うしかない、言うしかないだろう。まさか俺が言える日が来るとは思わなかった。


「誰かを助けるのに理由がいるの?」


「……」


言えたああああ!選んだ自分で言うのも何だけどこのセリフ最高だな!流石スクエ〇だなぁ!
ジャスミンは少し驚いた後、俯いてしまう。あれ、怒った?ミスった?


「……ありがとう…ございます、男さん」


「…!……ジャスミンが無事で良かった」


顔を上げたジャスミンの口角が上がっていた、顔全体を見なくても嬉しそうにしているのがわかる。俺も嬉しくなる。


「あ、怪我してると思うんだけど大丈夫?痛くない?」


「えっと…左腕が……ちょっと痛いですけど……大丈夫です」


「そっか…無理しないでね」


俺は立ち上がり、ジャスミンに手を差し伸べる。一瞬迷っていたが、ジャスミンは俺の手をとって立ち上がる。俺はそこら辺のヘタレ主人公共とは違って、手を握るくらいじゃ動揺しないぞ。


「これって依頼失敗……かな?」


「…そう……なるんですかね…」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/14(水) 18:24:10.99 ID:kgfHVtwqO

野盗も倒し、ジャスミンも助けたまでは良い。だが、この後の対応がまだ思い付いていない。


「あの……そこで寝てる人は……どうするんですか…?」


「あ……」


たしかに。ノース帝国までの交通手段は後回しにして、あの髭面…ダンテから少し話を聞こう。







俺はいびきを立てて寝ているダンテに跨り、頬をペチペチと往復ビンタする。


「ぐご……んん………なんだぁ?」


「おい、起きろ」


「何だよ兄ちゃんか……やっと殺す気になったか?」


「え……こ、殺す…?」


殺すという単語にジャスミンが反応する。おい、勘違いされるだろ。


「殺さないよ。ちょっと聞きたい事があるんだ、教えてくれよ」


「何だつまらねぇ……教えるのは良いが…退いてくれ、重い」


「そんな重くないだろ!」


俺はダンテから離れ、傍に座り込むとジャスミンも隣に座った。



「で?……聞きたい事って何だよ?」


「ああ…お前をノース帝国に連行したとして、賊の処遇はどうなってるんだ?」


「なるほどな、そう来たか……捕まった賊はアジトの場所を吐くまで拷問されんだよ、それがえらいキツイらしくてなぁ……吐く奴も居れば耐えられずに自害する奴も居るぜ。過剰な拷問で殺しちまう事も良くある」


「拷問……穏やかじゃないな」


賊に対する処遇はとしては妥当かもしれないが、殺してしまう程の拷問とは酷いな。民の為に賊を根絶やしにする……拷問は仕方の無い事かもしれない。


「んで、聞きたい事ってのはそれだけかよ?」


「いや、まだある。この国の法とかはどうなってるんだ?」


「はぁ…?俺に聞くかよそれを」


まぁ、そう言われちゃあそうなんだけど。この国での法があって、俺がいつ侵すかもわからんしな。聞いておいて損はないだろう。

127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:09:28.52 ID:kgfHVtwqO

「法も何も、普通に生きてりゃ大丈夫だろ。領主や王族の奴らに歯向かうとかしなけりゃ、普通に生きていける」


「犯罪を犯した奴や賊を取り締まるのは国か?それともそういった機関があるのか?」


「他所者にてめぇの国の問題を任せる訳ねぇだろ。問題が起きれば領主や国王、帝王の私兵が動く。民の支持を得られるからな」


なるほどな、俺の世界で言う警察機関は無いらしい。例えるなら都道府県各県に王様が居て、王様が責任を持って自分の国の犯罪者を私兵で取り締まり、県民から支持を得ていく感じだな。

法に触れるラインも、あまり人道的ではない事をしなければ問題はなさそうだ。偉い奴には頭下げる、そこは現実と変わらんな。



「わかった。じゃあもう1つ質問」


「まだあるのか…お次は何だ?」


「お前の技……あれは何だ?俺にも出来るのか?」


これが一番気になっていた。仮にアレが俺にも出来るなら大いな成長が望める。


「ああ…『魔走』の事か。自分で言うのも何だが……俺の魔走は中々のモンだったろ。魔翌力のある奴なら誰でも出来るが…簡単じゃねぇぜ」


「誰でも……」


俺はジャスミンを見る。魔翌力があるならジャスミンにも可能なのか?俺の視線に気付いたのか、ジャスミンは首を横に振る。


「わ、私には出来ません……」


「そうなんだ?……そうなのか?」


再びダンテに視線を戻して聞く。


「嬢ちゃんは『ノーナ』だからな、出来ねぇのも当然だ」


「ノーナ…?」


「まさか…知らねぇのか?」


「ちょっと世間に疎くて……」


「どんな僻地で育ったんだよ……まぁいい。ノーナってのは魔翌力を放出する事を得意とする奴の総称だ。俺みたいに魔翌力を内に留めるのを得意とするのが『レクタ』って言うんだ」


「へぇ〜……」

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/14(水) 19:21:18.86 ID:kgfHVtwqO

ノーナとヘクタね…まだまだ知らない事が沢山あるな。


「で、俺にはその魔走は出来るのか?」


「…兄ちゃんには無理だ、魔力がねぇからな」


たしかに凄い力は持っているが、元はただの人間だしな。魔力とかってのは生まれた時からの才能的なやつだろう。俺の力は魔力とかそういう次元ではないと分かっただけでも収穫か。


「そうか……そりゃあ残念だ」


「何言ってんだ、俺の魔走を見切ったんだぞ。魔力なんて無くても兄ちゃんなら問題ねぇだろ」


魔眼のおかげだけどね。俺は何となく周囲を見回した時に、街道に野盗が乗ってきた馬が2匹まだ居るのが見えた。これは使えるぞ。


「……あそこの馬一頭貰ってくぞ」


「馬?……ああ、好きにしろよ」


これでノース帝国までの足を手に入れた。後はこいつの処遇だ。






殺す、解放、連行する、その他


安価下
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:24:25.36 ID:IhHWbLuy0
もうひとりいた下っ端っぽいやつってどうなりましたか?
安価下
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:27:07.08 ID:kgfHVtwqO
キレてた野盗は生存。まだ意識は戻らない。
という感じで
安価下
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:28:35.70 ID:YEYuTuwG0
キルしましょう
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:29:11.18 ID:UmvLnwlb0
解放
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:36:50.49 ID:D6bnxIXRO
放置
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:38:22.53 ID:7QO87v5GO
ここで殺してもなぁ、解放で
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:43:27.86 ID:TPerd99j0
なんか[ピーーー]ことに葛藤してたのに[ピーーー]んかい
つーか毎回毎回クズキャラにする奴沸いてくるな
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:45:12.58 ID:bGDDDw35O
連取り自重して静観していた結果がこれだよ!
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 20:06:01.50 ID:kgfHVtwqO

俺は悩んだ挙句、答えを出す。やはり、こいつをここで生かしてはいけない。俺は立ち上がる。


「お、男さん……?」


「なぁダンテ、お前達はこの世界じゃあ有名なのか?」


「ああ?……国に居る賊なんて他国からすりゃゴミみてぇな問題だ。隣国だって俺達の事は知らねぇよ」


「…なるほどな。ジャスミン、ここから一番近い別の大陸ってある?」


「えっ……た、多分…ノース帝国から北西にある港町から…西の大陸に……行けます」


「そっか、ありがとう」


俺は今度は鞘ではなく、剣を抜いた。


「あ…?なんだよ兄ちゃん、やっと[ピーーー]気になったかよ」


「ああ……お前を[ピーーー]よ」


「お、男さん!?な、何を…!」


ジャスミンは止めるでもなく、怖いのか俺から少し離れる。人を殺そうとする奴が近くに居たらそりゃ怖い。


「お前達はここに居ちゃいけないんだ、わかるよな」


「けっ…やるならさっさと殺れよ」


「ああ。そうさせてもらうよ」


俺は剣を逆手に持ち、思いっきり突き刺す。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 20:15:10.33 ID:IhHWbLuy0
レヴァンテインの意思(安価)に引っ張られてるんだ!
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/14(水) 20:20:57.92 ID:kgfHVtwqO

「……おい、なんの真似だよ」


俺は突き刺した。剣をダンテの顔の真横に。


「ダンテは今ここで俺が殺した。お前は今日からゲールだ」


俺は剣を地面から抜き、鞘にしまう。


「は……?何言っ────」


「ダンテは今、ここで、俺が殺した。お前の名前は今からゲールだ。わかったらあそこのもう1人担いで、さっさと港町に行って西の大陸に行けよ。あ、ぶっ倒れてる奴の名前はお前が考えろよ」


「…おいおい……とんだ甘ちゃんだな、兄ちゃん」


「うっせ、俺達はもう行くからな」


「…またここで野盗してるかもしれねぇぞ?」


「そん時はホントに殺してやるよ」


「……ガーハッハッハ!こいつぁ怖えーな!解いたらさっさと西の大陸に逃げねぇとな!」


「そうだろう。じゃあな、ゲール」


俺は怖がるジャスミンに弁解しまくり、何とか誤解は解けた。クレア達がノース帝国に着くのは夕方、俺達は今から行ったら夜の良い時間になりそうだな。
後ろにジャスミンを乗せ、俺達はノース帝国を目指す。

140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 20:26:07.77 ID:IhHWbLuy0
綺麗に捌くな
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 20:31:21.12 ID:bGDDDw35O
*ブラボー!*
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/14(水) 21:31:39.57 ID:kgfHVtwqO

〜街道



「……お、あれかな?」


夕暮れが暗闇に変わりかける頃、とても遠くに大きな街……要塞?が見えた。何かメリルとは全然違うな。


「あ……見えましたね」


「ノース帝国はどんな所なんだろうなぁ…ちょっと楽しみ」


「ここはダーウィン様の領土ですけど…ノース帝国は独立国家なんですよね」


「え?そうなんだ?」


メリルの領土にあるリネル村みたく、領主に統治される訳じゃないのか。独立国家か、領主が怒りそうなもんだけど平気なんだな。


「えと…世界に3つある闘技場の1つがノース帝国にあって……領土が小さくても国としての武力は高い…らしいです」


「へぇ〜…」


要は戦闘に長けた猛者が多く滞在してる感じかな。国としての武力って、戦争でもあったりすんのかな。


「あ、ジャスミン疲れたら言ってね。まだまだ距離はあるみたいだし、疲れたら休憩するよ」


「あ……だ、大丈夫です……ありがとうございます、男さん…」


「そっか。なら、飛ばすよー」


言ったは良いが馬の扱いなんて知らんな。困惑していた俺に、ジャスミンが教えてくれた。夕日は沈み、月が2つ。



〜ノース帝国


「うわぁ……なにこれぇ……」


俺じゃ形容出来ない程の……なんかもう凄い。FF〇で見た街に似てる気がする。なんだっけ、ミッドガル?
明らかにメリルの町とは使ってる素材が違うと一目でわかる建造物群。お店も入口から沢山見え、まだ営業している様だ。

決して綺麗とは言えない街並みだが、迫力が凄い。中央には巨大な円形の建物、恐らくこれが闘技場だろう。夜だというのに人がまだまだ沢山出歩いている。ここでは普通なのかな。

闘技場の上から…奥にそびえ立つ城みたいなのが見える。帝国というくらいだ、あそこに帝王が居るのは間違いないだろう。
クレアも恐らくは…。


「初めて来ましたけど……凄い、ですね」


「だねぇ……さて……」







☆ノース帝国参考
宿屋、武器屋、防具屋、占い屋、闘技場、王宮、貴族街、貧民街



行動安価
安価下
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 21:37:42.64 ID:IhHWbLuy0
利用しそうな施設の場所確認しながら先に宿取るか
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 14:31:37.53 ID:LlQ5T+rGO

「とりあえず…宿を探しながら街を見て回ろうか」


「え……クレア達達は…良いんですか?」


「ああ、それなら大丈夫だと思うよ」


俺は入口すぐの厩舎を指差す。


「馬を預ける時にクレア達の馬が居たんだ。だから多分、奥に見える城に居るんじゃないかな」


「あ……そうなんですね…良かったぁ…」


「クレア達は逃げないし、今日はとりあえず休もう。あまり長旅に慣れてないから、疲れちゃったんだよね」


疲れたとか言わないジャスミンの前で言うのは少し恥ずかしくて、照れ隠し代わりに頬を指で掻く。


「あ、はい……そうしましょうか」


「じゃ、行こうか」


俺は街へと向き直し、歩こうとしたら袖が後ろに引っ張られた。振り返るとジャスミンが俺の袖を摘んでいる。俯いていて、モジモジしている姿はとても可愛らしく見えた。

漫画とかでよくある別れを告げて背を向ける男の服を女が掴んで本音を漏らす的なそういうシーンが次々に頭を過ぎる。


「あ、あの…その……私…」


俺は察した。なるほど、俺を壁代わりにしたいんだな。メリルの町でも木の影に隠れているくらいだ、人混みを歩くのは苦手なのだろう。


「いいよ、後ろに隠れてても」


「えぁ……あ、ありがとうございます…!」


これくらいならどうってことないしな。ジャスミンは袖からシャツを掴み、壁から覗き込む様に隠れる。思ったより密着していて、俺は歓喜する。






「ここは武器屋か」


俺の武器はショートソードだ。この剣も使い勝手は悪くないが、ここで新しく新調して何を使うか決めてもいいな。

145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/15(木) 14:53:32.72 ID:LlQ5T+rGO

「お、こっちは防具か」


今の軽装も悪くは無いが、ゲームの騎士達が着ているような鎧も良いな。機動力は落ちそうだけど防御に関しては信頼出来る。護衛の金が入るなら考えてみよう。


「ん?ここは何だろう」


「占い屋さん……ですね」


この世界にも占いはあるのか。占いってやった事ないし、信じたことも無いけど異世界の占いはどんなものかは気になるな。


「あ、閉まってるけど…ここはギルドかな?」


看板の文字は読めないが、メリルの町にあるギルドと似たような文字と装飾があった。
暫く歩いていると、目的の宿屋を発見する。なんというか想像と違って……海外でいうモーテルみたいな感じだ。


「ん………あ、そうか!」


俺は大事な事を思い出す。所持品の入ったリュックは馬車の中だ、お金が無くちゃ宿にすら泊まれないぞ。


「やっべー…どうしよ」


「あ、私……あります…」


ジャスミンは袋を俺の横腹から差し出してくる。袋は軽く、どうやらジャスミンも依頼の報酬がないとキツそうだ。


「た、多分……一泊は出来ると……」


くぅ〜情けない、不可抗力とはいえお金を出して貰うなんて。ふかふかのベットで寝る為だ、背に腹は代えられん。


「ありがとうジャスミン、必ず返すから…」


「い、いえいえ!」


ジャスミンは大丈夫と言うがそうはいかない、絶対返す。泊まれると安心した俺達は、宿屋へと入る。



〜宿屋


「ん……いらっしゃい」


宿屋に入ると、受付の内側で座って雑誌?みたいな本を読んでいて、眼鏡を掛けたおじさんが立ち上がる。


「一泊?連泊?」


「あ、一泊で」


「はいよ。部屋は何部屋借りるんだい?……二つ?一つ?」


「えーと…」





安価下
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 14:55:05.12 ID:CPKVf7td0
2つ
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 14:55:17.33 ID:UVdmnbNio
一つ
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 15:31:54.11 ID:LlQ5T+rGO

「二部屋で……いいよね?」


俺はジャスミンを見ると、頷いていた。流石に同部屋は色々とまずい。この前うさ耳女と同じ部屋に泊まったが、ジャスミンはあいつと同じタイプではない。二部屋借りたら金が嵩むが、明日依頼で返せばいいのだ。


「二つね……はい、これが鍵ね」


カウンターにタグの付いた鍵が出され、俺は一つをジャスミンに渡す。タグに書かれた数字が連番になっていたので、隣の部屋になるみたいだ。

俺達は受付を出て宿舎へと向かう。やっと休めると思うとどっと疲れが押し寄せてきた。早く寝よう、今日は。
俺達はそれぞれのドアの前に立ち、おやすみ、と挨拶をして中へと入る。

見た目より内装は綺麗で、胸当てや鉢金を外してベットにダイブする。寝心地は最高だ、もう寝れるぞこれ。
大の字で伸びをして、欠伸をするとドアからノックの音が聞こえた。

俺に来客なんて居ないだろうし、ジャスミンかな?と思いベットから立ち上がりドアを開ける。やはりそこに居たのはジャスミンだった。

外套は脱いでおり、湖の時はネグリジェだったがこの服は何ていうんだ?恐らくこの村娘みたいな格好が外套の下に着ている普段着なのだろう。
スカートも足首まであり、露出は少なく、パンを入れたバスケットを持たせたら似合いそうだ。


「…どうしたの?」


「あ…えと……」


「…?とりあえず中…入る?」


一瞬言中へ入れと言うか迷ったが、ジャスミンが頷いてくれたので中へと入れる。俺は近くの椅子へと座り、ジャスミンはベットに腰掛ける。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/15(木) 15:44:38.41 ID:LlQ5T+rGO

「それて、どうしたの?」


「あ、あの……私、助けて貰ったのに……お礼とかちゃんとしてなくて……その…」


ああ、なるほど。そんな事は気にしていなかった。


「ああね……でも宿屋に泊まれたのはジャスミンのおかげだし、大丈夫だよ」


「それじゃ……ダメです…何か……ちゃんとかお礼したくて…」


「うーん……そう言われてもな…」


「な、何でも…!良いです……何か…ありませんか?お願いとか……」


とあるネタに反応しそうになるが押し留める。特にこれと言ってお願いはないけど……どうせなら……。








安価下
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 15:46:59.12 ID:VPCDPTeg0
風呂で背中を流してくれ
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 15:47:28.42 ID:Eo7QfSXDO
今回の依頼が終わった後も自分と一緒に行動して欲しいかな
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/16(金) 05:19:33.71 ID:qOuS5ChU0

「じゃあ……風呂に入るから、背中流してくれる?」


なーんて、とか冗談っぽく言って軽く笑った。


「えぁ……お、お風呂……背中…」


「…ん?」


あれ?何か予想と違う反応だ、もしかして本気にしてる?


「あ、ジャスミン…冗談──」


「や、やります!お背中…!……流します!」


ジャスミンはバッと立ち上がる。マジか、正直やってくれるのならやってほしいけど……良心と邪な考えがぶつかり合って俺の判断を鈍らせてくる。結果、脳内戦争は邪な考えが勝利し、俺は背中を流してもらう事を決意する。


「じゃあ……お願いしようかな」


「は、はい……!」


俺も椅子から立ち上がり、浴室に向かう。やべぇ、ドキドキしてきた、元カノとも一緒には……いや、あいつとはそれ以前の問題か。
扉を開けると脱衣所になっていて、奥にもう1つ扉がある。奥の方も開けてみると、3mくらいの縦長スペースと、そこまで広くはないが浴槽が隣にあり、シャワーは無さそうだ。

これはあれか、浴槽から湯を掬ってかけるやつか。ならばまずは湯を張らないとな。浴槽の脇に取り付けられた蛇口の左右に赤と青のバルブがある。

これ懐かしいな、ばあちゃんの家がこんなだったな。俺は赤を捻って熱々のお湯を出し、青捻って温度を調整していく。たまにある、外から薪で湯を沸かすやつじゃなくて良かった。
俺はジャスミンに声を掛け、風呂が沸くまで何か話をしようと思って再び部屋の椅子に座る。






安価
雑談内容、或いは質問内容。

安価下2まで
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 06:17:29.07 ID:0Gr8XG2DO
今回の依頼が終了した後、ジャスミンはどうするのか
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 06:59:56.11 ID:3MEv2+2+0
昼間の盗賊の件
彼らはちゃんと更生するだろうか、自分の行動はあれでよかったのだろうか
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 14:37:07.42 ID:x2swtC+CO

「ジャスミンはさ、これからの予定とかって決まってるの?」


「えっと……えと…王都セインガルドに行こうかと…思ってます」


「セインガルド?」


「あ、王都はですね…」


この世界の事をまだ知らない俺に、ジャスミンは王都の事を教えくれる。記憶喪失設定だからね、仕方ないよね。

聞いた話では、王都とはアースガンド大陸の中央部に位置する巨大な王国で、アースガンド大陸は今俺達が居る大陸の名前らしく、1番大きな大陸でもあるらしい。


「ジャスミンは王都で何をしに?」


たしかジャスミンはメリルのヴァーダを襲名すると言っていたはずだ。


「今回の護衛中に…改めて力不足と感じてしまって……王都の魔術協会に入会しようかと……」


「へぇ、魔術協会!なんか凄そう」


「そこで…改めて魔術を学んで……もっと…強くなりたいです…」


「そっか…応援するよ」


「あ、あり…ありがとうございますっ」


魔術協会か、たしかジャスミンの村から指導者が派遣されているとか何とかゲルムさんが言ってたよな。同郷のよしみがあるかは分からないけど、きっとジャスミンなら良い方向に転がるはずだ。

会話が途切れ、気まずくなってきたので俺は話題を探す。何か話せる事は……。あ、昼間の事を話そう。


「ねぇ、昼間の…ゲールの事なんだけど…」


「は、はい…?」

156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/16(金) 14:59:42.31 ID:x2swtC+CO

「いやさ…ジャスミンは、ゲール達が西の大陸に行って更生すると思う?」


「あ……えっ…と…うーん…」


ジャスミンは煮え切らない様子だ、無理もない。奴らは野盗で、全てを奪い、命までも刈り取る悪党だ。あれくらいで更生するかと聞かれれば、するとは言い難い。


「ジャスミンは、あの時の俺の行動は……良かったと思った?」


「………」


返事は無い。たしかに、これは正解とかがあるような話ではない。個人の価値観によるモノだし、多くの人々を救う為に人を殺せって言われて、はいって簡単に頷ける話でもない。

恥ずかしい話だが、俺はああいう展開を漫画で見た事があるからこそ、あの方法を思い付けた。正解かどうかはわからないが、少なくとも俺の中で一番納得の行く方法だった。


「私は……男さんが剣を抜いた時…本当に怖かったです。後からすれば、考えがあっての事なんですけど……あの時の男さんの顔が…」


ジャスミンはそこで黙ってしまう。そんなに怖い顔していたのか俺は…逆に気になるな。


「男さんの行動の…善し悪しは……私にはわかりません。でも…あの選択は……とても良かったと…私は思います」


「お…そ、そっか…ありがとう」


誰かに自分の行動を肯定してもらうだけで、こんなにも胸のモヤが取れるのか。俺を気遣ってかは置いといて、そう言ってくれるのは嬉しい。

俺は壁の時計を見る。もうそろそろ張ってても良い時間だな。数字と思われる記号は分からなくとも、記号の位置や針の動きは同じなので問題は無い。


「えーっと……じゃあそろそろ、お風呂に…」


「……!は、はははいっ!」

157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 15:20:35.55 ID:x2swtC+CO

俺は脱衣所で服を脱ぎ、中へと入る。風呂場によくあるバスチェアに腰掛け、浴槽から湯を汲み身体や頭にぶっかけてジャスミンを待つ。
や、やべぇ…超緊張してきた……浴室に男女が2人、ToL〇VEるが起こらないはずもなく…。


「む……!」


アホな事を言っていたら脱衣所から音がした。ジャスミンが脱ぎ始めたのか……振り向きたいが、振り向いたら終わりな気がする。くそ…落ち着け、クールになれ、平静を保て。


「お、おじゃ………うぅ〜……お、お邪魔します…」


ぎゃあああ来てしまったあああ!!どんな格好してるの!?ねぇねぇねぇ!!


「うんうんうんうん…い、いいいらっしゃい」


駄目だ!緊張し過ぎて震えが止まらん!平静なんぞ装えるか!振り向いていいのか!?良いよね!?


「う、後ろ……見ちゃ、駄目…ですよ」


「は、はいっ!」


ああああああああああああああああ!!!でも可愛いからもう何でもいいやあああああああああ!!!


「それじゃ……や、やりますね…」


「どうぞ!?」


上ずった声を出してしまった、恥ずかし!そうするとすぐに、背中に浴室にある付属品のボディブラシが当たる。


「痛かったら……言ってくださいね」


「お願いします!!」


ブラシが擦られ始めた。普通に気持ちいい、人にやってもらうのと自分でやるので、ここまで差がある物なのか。背中を流すって考えた奴天才かよ。


158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/16(金) 15:30:00.86 ID:x2swtC+CO

ゴシゴシと、ジャスミンは丁寧に洗ってくれる。いやぁ〜最高の気分ですなぁ!たまに肌に当たるジャスミンの手や指先に反応しては、邪な考えがギュンギュンとフル稼働する。

悶々としているとブラシが背中から離れ、丁度いい温度の湯が泡を流していく。ああ……これで終わってしまうのか…悲しいなあ。


「終わり…ました」


「う、うん!ありがとう!」


「じゃ、じゃあ私は…これで…」









自由安価
行動、起きた事柄、会話……etc


安価下
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 15:35:11.26 ID:HKTSZ3yy0
滑ってジャスミンを押し倒してしまう
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 16:03:21.24 ID:x2swtC+CO

ジャスミンが立ち上がり、脱衣所への扉を開ける音がした。


「きゃっ!」


ジャスミンが変な声を上げる。なんだ!不審者か!?俺は振り向いてはいけない掟を破り、振り向きざまに立ち上がる。ジャスミンはバスタオル1枚の姿だった。ただ残念なのはそこで俺の足が滑ってしまった事だ。


「おわっ!?」


「えっ……きゃぁ!」


何とか体勢を整えようとするが……駄目!滑った勢いのままジャスミンを押し倒してしまう。


「いてて…………ん?」


何だ?この柔らかい物は。顔に伝わる心地良い感触は。


「あ……ああ…」


「んはっ!?」


ジャスミンの震えた声で我に返り、すぐに顔を上げる。ジャスミンは前髪を上げていて、今は顔全体がわかる。超真っ赤な顔してる、可愛いけどこれはまずい。

おいおいマジかよ、リト君かよ。俺は顔を上げる際に手を突くが、突いた場所がまた最悪だった。かぁ〜っ!これはァー!
バスタオルが肌けるアクシデントは回避したものの、この手に伝わる感触は……。


「うっ……うぅ…」


「ご、ごめん!!ジャスミン!わざとじゃないんだ!」


ジャスミンは限界なのか、両手で顔を隠して震えている。俺は飛び退いて、すぐに目を逸らす。本当にToL〇VEるしちゃったよ、何だよマジかよありがとう。


「ご、ごめんね……大丈夫…?ジャスミン?」


振り返らずに聞く。事故とはいえやってしまったのは事実。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 22:02:40.08 ID:x2swtC+CO

「ごめん…なさい……ごめん…なさい……」


「いや!謝るのは俺の方だし!ジャスミンは悪く……ないよ」


俺は違和感に最後、言葉が濁る。ジャスミンは俺が喋っている最中でもずっと謝っていた。これは俺に言っているものでは無い…?
過去に何かあったと推測するのは容易だった。でも、それは触れちゃいけない物なんだろう。

俺は立ち上がり、ジャスミンを見る。まだ、手で顔を隠したまま謝っている。あまりの異様な光景に、今までの取り乱しが嘘のように、俺は落ち着き払っていた。

本来ならこの姿を見るだけでも大分興奮していたんだろうな、とか思いながらジャスミンをベットへと運ぶ。今日は色々ありすぎた、もう寝よう。ベットに寝かせると、服に着替えてジャスミンの部屋に行って寝た。





翌朝、ジャスミンは昨日の出来事は覚えてないらしい。俺とぶつかって気を失ったと思っているようだ。めちゃくちゃ頭を下げられたが、俺はアレに触れる事は無くジャスミンを宥め続けた。

とりあえず俺達は朝食を済ますべく、まずは王宮に居るであろうクレアからリュックを返してもらわなくては。ついでに依頼の成否も気になるしな。外へ出ると、昨日の夜とは打って変わってどうやら朝は人が少ないみたいだ。


「これくらいなら大丈夫?」


「が、頑張ります…!」


意気込むジャスミンを微笑ましく思い、王宮を目指す。



〜王宮 正門


「ご要件は?」


「多分ここにクレア様が来ていると思うんですけど…居ますか?メリルからここまで護衛した者なんですが」


「少しお待ちください」


門番の兵士は、もう1人の兵士に耳打ちすると門の奥へと走っていく。にしてもでっけぇ城だなぁ…クレアはここに何しに来たんだろう。
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