【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】後編

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308 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/23(土) 21:24:25.40 ID:EMP1iceA0






NEXTSTAGE

【ダンガンロンパ・ラストバレット】

To be continued...






309 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/23(土) 21:25:47.88 ID:EMP1iceA0






【英雄の杖】を手に入れました!






310 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/23(土) 21:27:45.26 ID:EMP1iceA0
これにてダンガンロンパ・クエストを完結とさせていただきます。

長い道のりでしたが、何とか完結出来たのは皆様のおかげです……

現在進行中の洋館ロンパ、そして次回作にてまたお会いしましょう。

ありがとうございました!
311 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/26(火) 20:57:58.92 ID:Y3ni9E7A0
【第4の学級裁判後】

赤穂「あああああああっ!!」

如月「……!?」

赤穂さんが御影さんに飛び込んで、持っていた杖で突き飛ばす……

それと同時に、床が動いたのを僕は考えるより先に理解しました。

だから、僕は対応出来た。

この後起こる惨劇を、止められた。

如月「……!」

それなのに、僕の脚は動かなかった。

動かなければ、どうなるか理解していたはずなのに。

そして。

そして……

その日、僕の正義は。


死にました。
312 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/26(火) 21:00:08.82 ID:Y3ni9E7A0






EXTRACHAPT【彼が最期に成した正義】






313 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/26(火) 21:11:08.13 ID:Y3ni9E7A0
【如月のコテージ】

如月「……」

赤穂さんが死んだ。

僕がモノクマを破壊した事による連帯責任。

その標的となった御影さんを庇って、殺された。

如月「……」

僕は、赤穂さんを助けられなかった。

違う、僕は……赤穂さんを、見殺しにしたんです。

如月「嫉妬……」

羨ましかった。

御影さんは僕の妹と、怜那と同じ体質で、それなのに彼女は生きていて。

赤穂さんもそんな彼女を大切にしていて、2人は本当に……仲睦まじくて。

如月「……」

モノクマの言うように、死ねばいいなんて思っていない。

だって、僕は誰よりもその痛みを知っていたはずだ。

だから、僕は……

如月「……はは」

僕は……誰に、何を言い訳してるんでしょう?

何を言おうが、僕が赤穂さんを見捨てたのは事実。

僕はもう……正義を語れるような存在ではない。

如月「……」

発電所で拾ってからずっと持っていた怜那のバッジを机の上に置く。

これを持つ資格なんて、僕にはないのだから。
314 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/26(火) 21:50:37.81 ID:Y3ni9E7A0
如月「……」

僕は許されない事をした。

その償いはしなければならない。

如月「そのために僕が出来る事は……やはり、黒幕を殺す事でしょうか」

思わず自嘲の笑みが浮かぶ。

殺す事しか浮かばない……こうして正義のためという芯すらなくなった僕のなんと醜い事か。

如月「モノクマ」

しかしそれも受け入れましょう。

僕は殺人鬼如月怜輝。

なら、それらしくやるだけです。

モノクマ「ハイハイ、なんでしょうか殺人鬼の如月クン!」

如月「コロシアイをします。その代わり僕の提案を聞いてください」

モノクマ「コロシアイをやるのは歓迎だけど提案って?」

如月「僕達の中に黒幕がいると苗木さんは言いました。その黒幕を当てるヒントをください」

モノクマ「えー?コロシアイするならそんなの必要なくない?」

如月「必要なんですよ」

如月「なぜなら僕が殺すのは黒幕ですから」

モノクマ「……あのさ如月クン?」

如月「はい」

モノクマ「そんな提案ボクが受け入れると思う?」

如月「ダメですか?」

モノクマ「ダメに決まってんでしょうが!全く、変な事でボクを」

如月「待ってください」

逃げようとするモノクマの頭を掴みます。

逃げられるわけにはいきませんからね。

モノクマ「ちょっと!ボクへの暴力は」

如月「暴力など振るっていませんよ?ただ話を聞いてもらいたいだけです」

モノクマ「だからダメ!」

なかなか折れませんね……いいでしょう。

長期戦は覚悟の上でしたから。
315 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/26(火) 22:20:01.90 ID:Y3ni9E7A0
【2日後】

如月「僕が外せばあなたの見たい絶望的な展開が見られます。あなたにとっても悪い提案ではないでしょう」

モノクマ「あー!もうわかったよ!やればいいんでしょ、やれば!」

如月「ありがとうございます」

モノクマ「全くまさか2日ぶっ続けで話す事になるとは思わなかったよ……!」

如月「僕は慣れていますから」

モノクマ「こっちはいい迷惑だよ!とにかく、細かいルールは後で伝えるから!せいぜいコロシアイを盛り上げてよね!」

如月「……」

消えたモノクマの寝言を無視して、これからを考えます。

やはりまずは皆さんに話をする必要があるでしょうね。

反応と……他にも確かめたい事がありますから。

如月「…………」

歩道からホテルの方に目を向けます。

……次が最後の殺人になる。

願わくは、その死が2人で済めばいいですね。

黒幕と、僕。

死ぬのは2人で、充分です。
316 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 09:15:58.88 ID:TmOf/wcA0
ホテルに皆さん集まっているようなので、モノクマとの交渉結果を伝えに行きます。

如月「しかし随分と縛ってきましたね……」

あれから現れたモノクマはいくつかのルールを決めました。

1つ、この黒幕当てゲームは僕のみが行う事。

1つ、僕が得た情報を他の皆さんに伝えてはならない。

1つ、殺せるのは1人まで、外した場合おしおきは抵抗しない。

どのみち皆さんを巻き込みたくはないので……たいした障害にはなりませんが。

兵頭「しかし如月さんが赤穂さんを見殺しにしたというのは、モノクマが勝手に言った事です」

道掛「そりゃ、そうなんだけどさ……」

ホテルに近付いてきたところで皆さんの話し声が聞こえてきます。

如月「……」

兵頭「内通者に関しても嘘をついた相手です。信用するに値しないのでは?」

津浦「そう言われると……」

兵頭さん……あなたは優しい人ですね。

以前あなたに自分を殺してほしいと頼まれた時も思いましたが……そんな風に考えられるあなたなら、きっと乗り越えられますよ。

僕とは、違ってね。


如月「それは違いますよ……」
317 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 09:27:07.86 ID:TmOf/wcA0
いきなり僕が現れた事に驚いたのか、皆さんの目が見開かれています。

……これではまだわかりませんね。

御影「っ!?」

佐場木「如月……貴様、今までどこにいた」

如月「モノクマと、少し交渉を」

道掛「こ、交渉?」

兵頭「それより如月さん、今の違うとはいったい」

兵頭さんの声は震えています……無理もないですか。

自分が擁護した相手がそれをこれから否定しようとしているのだから。

如月「赤穂さんの事です」

津浦「えっ……」

如月「モノクマの言う通り、僕は妹が生きて仲睦まじくしている赤穂さんに嫉妬していました」

もし赤穂さんにこの気持ちを吐き出していたら、あの結末は防げたのでしょうか?

いや……そんなもしもに意味はありません。

六山「……認めるの?赤穂くんを見殺しにしたって」

如月「…………」

御影「何とか、言いなよ……」

僕が犯した罪、もしも殺人の手段に見殺しがあるなら既にクロとして裁かれなければならないほどの大罪。

如月「……はい。僕は赤穂さんを、見殺しにしました」

もうそれは取り消せないんですから。

御影「っ!!」

御影さんの瞳が困惑から憎悪の色に染まります。

えぇ、あなたには憎む資格がある、僕を殺す資格がある。

しかし……それだけはさせてあげられません。

なぜなら――
318 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 09:28:24.75 ID:TmOf/wcA0






パンッ……!






319 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 09:39:09.56 ID:TmOf/wcA0
御影「……えっ?」

御影さんに殴られるのは想定していました。

御影さんに罵倒されるのは想定していました。

六山「……」

だからこそ、僕は……あまりに想定外だった彼女の手を避けられませんでした。

なぜですか?

六山「な、なんで、そんな……!」ポロポロ

なぜ、あなたが泣いているんですか?

如月「六山さん……?」

六山「それだけは、その口からそんな言葉だけは聞きたくなかったよ……!」

津浦「Ms.六山!?」

道掛「百夏ちゃん!?」

を泣いて走り去っていく六山さんの姿。

あり得ないのに、その背中に怜那の姿が被ります。

兵頭「……追いかけ、ます」

佐場木「……任せる」

兵頭「如月さん……」

如月「……」

兵頭「私も、聞きたくなかった……否定して、ほしかったです」

覚悟していたはずなのに。

六山さんの事でそれが剥がれたのか、兵頭さんに何も言えません。

結局僕は……

佐場木「……如月、モノクマとの交渉とはなんだ」

如月「……」

佐場木さんの言葉に我に返ります。

佐場木「それを言いに来たんだろう……さっさと話せ」

ありがとうございます、佐場木さん。

危うく目的を忘れてしまうところでした。

如月「……数日内に」
320 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 09:51:34.25 ID:TmOf/wcA0






如月「僕は、このコロシアイ研修旅行の黒幕を殺します」






321 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 10:14:27.77 ID:TmOf/wcA0
佐場木「……貴様、自分が何を言っているのかわかっているのか?」

如月「あの学級裁判から2日……僕はずっとモノクマと話していました」

経緯を話しながら、僕は皆さんを観察します。

如月「そしてそれはようやく実を結んだ」

如月「モノクマを操る黒幕……それを探しだして殺せるかというゲームを行うと宣言させたんです」

御影「モノクマがそんな……」

モノクマ「うぷぷ、呼んだ?」

道掛「うおっ、出やがった!?」

モノクマ「いやー、如月クンたら本当にしつこくてね!この2日間全く眠れなかったよ!」

確かめる、確かめる。

皆さんの行動を、皆さんの様子を。

津浦「し、しかし黒幕を殺すゲームなんて……あなたは本当にそれを受け入れたんですか?」

モノクマ「如月クンがしっかり特定出来るならそれはそれでありかなって思ってさ!」

思ってもいない事を。

あなたが渡すだろうヒントに真実などないのでしょう?

佐場木「……誰が黒幕かはっきりさせられるというのか」

如月「はい。ヒントはあったので」

正確には、今得ている最中ですが。

道掛「ヒントって黒幕のか!?なんだよそれは!」

如月「すみません、それは話せないんです」

得たヒントを話すのは禁止されていますし、何より……モノクマに悟られるわけにはいきません。

モノクマ「これはあくまでボクと如月クンのゲームだからね!」

御影「何よそれ……!」

モノクマ「うぷぷ、じゃあ如月クン頑張ってね!」

如月「……皆さん、安心してください。僕はこのコロシアイを必ず終わらせます」

モノクマは消え、僕は皆さんに背を向けます。

今この瞬間、僕は確信しました。
322 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 10:16:17.51 ID:TmOf/wcA0






如月「それが僕の、最期の仕事ですから」

僕以外の6人。

――その中に、黒幕はいないと。






323 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 10:34:09.29 ID:TmOf/wcA0
如月「……」

今回、黒幕はおそらくアルターエゴを使用していません。

もしもモノクマがアルターエゴならばあの苗木さんが僕達の中の誰と共犯になる必要性がない。

才能を憎む、皆殺しを画策していた彼が例外を作るとは考えられません。

利用するだけ利用してというケースなら今まで通りにやればいいので、やはり共犯者など必要ない。

それに皆殺し防止のルールだって、苗木さんの意思をくんだアルターエゴなら作らないでしょう。

如月「……」

おそらく彼がもう1人の黒幕の存在を明かしたのは、その黒幕をも殺すため。

僕達に疑心暗鬼を生み出すと同時に、共犯者のアルターエゴという逃げ道を封じ、最終的に1人でも多くの超高校級を抹殺する。

あらゆる悪を見てきた僕だからこそ、ナワキセイという人間ならそれぐらいはやるという確信がありました。

だから僕は皆さんを観察した。

モノクマを拘束して眠らせないようにした上で。

脳を弄って徹夜が苦にならない僕と違って皆さんにはあれはキツかったはず。

事実モノクマは何度も沈黙しそうになっていました……その度に僕が起こしましたが。

そして、あの中に……徹夜させられただろうそんな人間はいなかった。

つまり黒幕は……生き残り以外の中にいる。

それが僕の出した結論でした。
324 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 11:19:01.65 ID:TmOf/wcA0
【スプリングアイランド・死体置き場】

如月「……」

【黒幕は絶望教の男女の協力者の1人である】

モノクマからもらったヒントという建前の誘導に僕は改めて相手が当てさせる気などないと理解します。

しかしおかげで生き残りに黒幕はいないという考えが正しいと思えるわけですが。

如月「……」

生き残りにいない以上考えられる可能性は2つ。

第3者か、死を偽装した人間がいるか。

死の偽装、これに関しては殺された静音さん、四方院さん、鞍馬さん、ジェニーさん、土橋さんは除外していいでしょう。

つまり黒幕は第3者、映像越しにしか死を確認出来なかったクロの薄井さん、グレゴリーさん、苗木さん、遠見さんに絞られるという事。

如月「……ふむ」

わざわざ男女の1人と書いたのは苗木さんが絶望教の協力者と誤認させ、黒幕を女子と思わせたいからでしょうか?

そうだとするなら、遠見さんも除外してよさそうですね。

如月「……さて」

そろそろ皆さんの様子を見に行きましょう。

出来るだけ固まってもらえると、助かるのですが……
325 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 11:30:43.34 ID:TmOf/wcA0
【サマーアイランド・歩道】

如月「……」

歩きながらも黒幕に関する推理はやめません。

そしてちょうど先ほどの考えも合わせて苗木さんを候補から除外したところで。

皆さんがやって来ました。

如月「お疲れ様です」

兵頭「……どうして、ここに?」

如月「具体的には話せませんが、報告ぐらいはしておくべきかと思いまして」

それと、皆さんが無事かの確認も……

津浦「報告……?」

如月「黒幕を3人にまで絞り込みました」

第3者、薄井さん、グレゴリーさん。

この中の誰かが黒幕と見ていいでしょうから。

御影「……!」

如月「佐場木さんと道掛さんにも伝えておいていただけますか?」

御影「待ちなよ!いったいどうやってそんな!」

如月「それは言えないんです。モノクマとの契約なので」

兵頭「またそんな……!」

六山「……させない」

去ろうとした僕の足を力強い言葉が止めます。

振り返って見た六山さんの瞳には、並々ならぬ決意の光が宿っていました。

御影「えっ、六山?」

六山「絶対にさせないよ。もう人なんて殺させない」

如月「……相手は黒幕ですよ?」

わかりません。

なぜ彼女はここまで僕を止めようとしているのか。

六山「それでも!わたしは絶対許さないから……!」

如月「……そうですか」


なぜか居心地が悪くて、僕はそれだけ言って走りました。

まるで……怜那に責められているような。

そんな、気がしました。
326 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 13:47:50.39 ID:TmOf/wcA0
【スプリングアイランド・死体置き場】

如月「……」

【女子の1人は偽名である】

露骨ですね。

翌日に追加としてもらったヒントに僕は心の中でそう吐き捨てます。

やはり推理はこの路線で正しいようですね。

如月「候補は3人……ここからどう絞るか」

薄井さん、グレゴリーさん、そして第3者。

如月「……」

薄井さんは、除外していいかもしれません。

サイキッカーである彼なら処刑の偽装も容易いかもしれませんが……あの時僕は彼の腕を間違いなく砕きました。

あの怪我のままモノクマの操作は難しいでしょうし……モノクマは最初とまるで変わらないように見えましたから。

如月「そうなると……」

黒幕は、グレゴリーさんか第3者。

ここの設備を設計したのがグレゴリーさんなら色々と説明がつきますし、何より彼は仮面を着けて素顔は津浦さんの一件でしか見せた事がない。

彼がそもそも本当にグレゴリーさんなのか……それに誰も答えが出せない。

如月「……」

しかし、これが真実なら……津浦さんにはあまりにも惨い結末になってしまいますね。

如月「……また1日が終わりますか」

皆さんの様子を見に行きましょう。
327 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 14:08:52.31 ID:TmOf/wcA0
如月「佐場木さんや道掛さんは見回りですか……」

おそらく僕を警戒しての事でしょう……皆さんは僕が生き残りの中に黒幕がいると思って行動していると考えているでしょうから。

如月「……」

騙している事に思うところはあります。

しかし全ては黒幕を殺すため。

皆さんには、あと少し我慢してもらいましょう。

女子の皆さんは図書館でしたね……そちらに向かうとしましょうか。

【サマーアイランド・図書館前】

僕が着いたのと同時に、御影さんが図書館から出てきます。

御影「……どうせいるんでしょ。出てきたら?」

彼女はしばらく電子手帳を見ていると……そう声をかけてきます。

どうやら僕を呼んでいるようなので、素直に姿を見せました。

御影「如月」

御影「黒幕は私だよ」

如月「……」

突然の告白。

僕はそれを聞いて、悲しくなりました。

彼女は自分の命を懸けて僕を止めようとしている。

気づいてますか?ご自身の身体が震えている事に。

それでもあなたは嘘をついた。

如月「あなたは優しい人ですね」

ありがとうございます御影さん。

やはり僕は黒幕を殺さないといけないと深く心に刻みました。

お兄さんを見殺しにした僕があなたに出来る償いは。

生かして帰す以外に、ない。
328 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 15:03:03.80 ID:TmOf/wcA0
【スプリングアイランド・死体置き場】

如月「……」

【黒幕はモノクマを全員の目の前で操縦している】

如月「つまりいつもゲーム機を触っている六山さん……」

それが黒幕の導きたい結論ですか。

如月「……ふむ」

黒幕はなぜ六山さんを殺したいんでしょうか。

彼女が偽名ならそこにヒントが?

如月「……少し外に出て考えてみますか」

【中央の島】

佐場木「ぐっ、っ……!」

道掛「佐場木!!」

如月「だから無駄だと言ったんです……」

まいりました。

まさか佐場木さんと道掛さんに見つかってしまうとは……

御影「な、何があったの!」

御影さんまで……これは早めに退散した方がよさそうだ。

如月「佐場木さんが僕を拘束するとおっしゃるので……抵抗させていただきました」

今捕まるわけには……いきませんからね。

如月「佐場木さん……僕はあなたを殺したくありません。退いてください」

佐場木「貴様が黒幕を殺さないというなら聞いてやる……!」

如月「そうですか」

佐場木「っ!」

最大限手加減をしながら佐場木さんを気絶させます。

まさに逃げる犯罪者の姿……ですね。

道掛「佐場木ぃ!!」

如月「気絶させただけです……目覚めたら謝罪を」

御影「待って!私達も黒幕のヒントを見つけたよ!」

如月「……」

御影さんが言うには、黒幕が絶望教の協力者で男女2人という事がわかったと。

如月「――まだそこまで、ですか」

御影さん、それは違いますよ……

御影「えっ……」

如月「……」

御影「待って!ねぇ、待ってよ如月!」

時間の猶予はありません。

いつまた黒幕が動くかわからないのだから。

あそこまで露骨な誘導……黒幕は、近々動くはず。

それだけは、阻止しなければ……
329 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 17:27:08.82 ID:TmOf/wcA0
【オータムアイランド】

如月「……」

どうやら皆さんは病院に集まったようですね。

それがいい、集まれば黒幕も手出しがしにくい……僕が動かない理由にもなります。

如月「……」

津浦さんや兵頭さん、道掛さんが病院に出入りするのが見えます。

おそらく佐場木さんの看病を行っているのでしょうね。

如月「……」

今日も、何事もなく……


如月「……?」

おかしい。

六山さんと御影さんが……出てこない。

六山さんはともかく、御影さんがここまで出てこないのは……

如月「まさか」

2人は、あの場にいない?

如月「……しまった!」

あの誘導から近々動くのは推測していましたが、まさかこれほど早く動くとは!

病院から離れて図書館に向かいます。

急がなければ、黒幕なら御影さんと六山さんを同時に殺害できる機会を見逃すはずがない!

【サマーアイランド・図書館】

如月「……!」

御影「すぅ、すぅ……」

御影さんは……無事ですか。

思い過ごし、だったのでしょうか……

如月「なっ」

しかし安堵しかけた心は壁を見てすぐに否定されます。

【正義の裁きを執行する】

僕を連想させるとしか思えない文章。

そこから黒幕が何をするつもりか容易に想像出来ました。

如月「……六山さん!」

彼女が、危険だ……!
330 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 17:46:33.17 ID:TmOf/wcA0
【スプリングアイランド・桜の大樹】

如月「……!」

いた。

桜の花びらの中で見えたのは、腕と首を掴まれた六山さん。

そして見た覚えのある仮面とマント。

如月「はああああっ!」

叫びと共に間に割って入ります。

そして六山さんを掴んだ腕を――

如月「……!」

今の一撃で腕を折るつもりでしたが、避けられた?

六山「げほっ、こほっ!」

如月「無事ですか六山さん」

六山「お……如月、くん」

「ほう、英雄の登場とはまるで絵物語のようだな?」

この口調……やはり。

如月「グレゴリーさん。あなたが黒幕でしたか」

グレゴリー「フハッ!肯定しよう紅纏いし狂戦士!我こそがこの絶望演舞の担い手にして支配者よ!」

如月「自分で動くとは、それだけ追い詰められているという事ですか?」

グレゴリー「なに、ちょっとした児戯に過ぎん。我としては紅纏いし狂戦士がこの場に召喚された事はむしろ愉快だ」

如月「……津浦さんには悲しい結果となりましたか」

目の前にいる仲間、いえ、裁くべき悪を見据えます。

六山「待って如月くん……!その人はわたし達の知るグレゴリーくんじゃない!」
331 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 18:06:56.58 ID:TmOf/wcA0
如月「……どういう事でしょう」

「なんだよ。さっさとネタバレするなよ、萎えるな」

如月「……あなたは何者ですか」

古黄泉「私は古黄泉幽星。まあこのコロシアイの黒幕で本物のグレゴリー・アストラル三世だ」

如月「……」

本物のグレゴリーさん?

そもそもなぜ六山さんはそれを知っているのか。

色々聞きたい事はありますが……わかる事は1つ。

如月「あなたは裁くべき、悪。それさえわかれば充分です」

古黄泉「はあ、これだから殺人鬼は……六山はどう思う?」

六山「うるさい……!」

古黄泉「あっ、そう。まあ元々殺すつもりだったし……早いか遅いかの違いか!」

如月「……!」

六山さんを突き飛ばして古黄泉さんの拳を受け止めます。

その一撃は、まるで……

如月「これはまさか鞍馬さんの……!」

古黄泉「その通りだ!身体強化薬があればお前とだってやりあえる!あの無能の鞍馬すらあんな風になったんだからな!」

六山「っ、鞍馬くんを馬鹿にしないで……!」

古黄泉「本当の事を言われて怒るなよ!アハハハッ!」

如月「……鞍馬さんに才能はなくとも」

如月「あなたにだけは無能と言われたくないでしょうね」

古黄泉「あ?」

如月「こうして対峙してわかりました」

如月「あなたは悪として、苗木さんにはるかに劣ります」

腹立たしい、という気持ちは初めてでした。

こんな小者に、何人殺された?

こんな小者に……土橋さん、遠見さん、そして。

赤穂さんは……!

如月「来なさい……無能」

古黄泉「てめえ!!」
332 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/27(水) 19:16:52.74 ID:TmOf/wcA0
一旦ここまでで。
333 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/01(日) 19:34:01.38 ID:0WliKnZA0
単調、単純、短絡的。

古黄泉幽星という男の攻撃を捌きながら僕はそう結論づけます。

向こうに身体強化薬がなければ即座に決着がつくだろう相手。

今まで数多く裁いてきた悪の中でも下から数えた方が早い男。

古黄泉「ちっ、ちょこまかと!」

如月「……」

しかしだからこそ身体強化薬の効果は凄まじいの一言でした。

元々鍛えていたらしい鞍馬さんがあれだけの力を持つのは理解できますが、まさか僕がここまで決めきれないとは……

古黄泉「っと!」

六山「……!」

如月「っ!」

六山さんの存在がこの状況をさらに膠着させています。

古黄泉幽星は少しでも六山さんが動けば即座に彼女を殺そうと動き。

僕は彼女への攻撃を無理にでも防がなければならない。

これが殺す戦いばかりしてきた僕への、報いという事なのかもしれません。

しかし、そうだとしても。

僕は……!
334 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/01(日) 19:36:04.01 ID:0WliKnZA0
古黄泉「うおっ!?」

古黄泉幽星が桜の花びらに足をとられたのか体勢を崩します。

それはやってきた好機……見逃すわけにはいきません。

如月「これで……」

古黄泉「終わりだなぁ!」

六山「如月くん!」

如月「!?」

六山さんの声に、無意識に身体が動きます。

その次の瞬間、僕のいた場所を赤穂さんを殺したあの槍が貫きました。

これが古黄泉幽星の……

古黄泉「ハハハッ!」

六山「あっ!?」

如月「……!」

体勢を立て直したその刹那で、状況は動きました。

六山さんが古黄泉幽星に捕まるという、最悪の形で。
335 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/01(日) 19:51:29.73 ID:0WliKnZA0
古黄泉「ハハハハッ!やっと止まりやがったな殺人鬼!」

六山「放して……!」

古黄泉「お前もさっきからコソコソと何かしようとしてたな……未来機関に連絡でもするつもりだったか?ハハハハッ!残念だったなぁ!」

如月「……彼女を放しなさい」

古黄泉「あ?それが人にものを頼む態度か?ヒーローの風上にもおけないなぁ!」

六山「っ……!」

腕を折ろうとしているのか、六山さんが痛みを堪えるような声を漏らします。

……この手の、人間が要求しているのはきっと。

如月「六山さんを……放して、ください」

僕が頭を下げた事がそんなに嬉しいのか、古黄泉幽星は高笑いをしています。

頭などいくらでも下げます……少しでもこの状況を打開しなければいけないのだから。

古黄泉「よーし、次は自分でその腕、折ってもらおうか」

六山「!?」

人質を得た途端にこれですか……どこまでも、矮小な悪だ。

如月「……」

そんな悪から彼女を守りきれなかった僕も……とてもヒーローなどと言えない、ですね。
336 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/01(日) 19:52:28.29 ID:0WliKnZA0






バキッ






337 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/01(日) 20:30:44.83 ID:0WliKnZA0
如月「っ……!」

古黄泉「ハ、ハハハッ!本当に折りやがった!やっぱり頭のイカれた殺人鬼はやる事が違うなぁ!」

六山「っ、っ……」

垂れ下がった僕の左腕を見た六山さんが泣きそうに顔を歪めます。

そんな顔をしないでください……僕は大丈夫ですから。

古黄泉「ハハッ、じゃあ次は片足を折れよ!しなかったらどうなるかわかるよなぁ!」

如月「……」

その後も、古黄泉幽星の言うがままに僕は自分を傷つけます。

古黄泉幽星……そんなに愉快ですか。

愉快でしょうね、あなたは僕をいつも周りに危害を加えるという形で抑えてきた。

その枷がなくなったと勘違いした僕のせいで赤穂さんは殺され、今も六山さんが危険な状態。

僕自身も、僕を嘲笑いたいぐらいです。

六山「……」パクパク

如月「……?」

六山さんが、何かを言っている?

六山「……」パクパク

如月「……!」

六山さん、あなたは。

古黄泉「ハハハッ!じゃあ次は……!?」

片足だけで跳ねるように古黄泉幽星に向かいます。

古黄泉「なっ、お前!?こっちには人質が」

如月「覚悟の上です……僕も、彼女も!」

六山「……」コクッ

【ここで如月くんが殺されたら、わたしも彼に殺される】

【わたしは……こんな奴に殺されたくない】

【わたしだって、死ぬ覚悟は出来てるから】

【だから2人で、彼を……】

この状況を生んだのは僕の責任。

彼女を殺す事などしたくはない。

しかしこのままではただこの男に殺されるだけ。

だから僕は。

僕は……

古黄泉「や、やめろ、来るな!」

如月「――六山さん、すみません」

六山「わたしも、ごめんね」

交わす言葉はそれだけ。

僕はそのまま、右手で彼女もろとも、古黄泉幽星を――
338 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/01(日) 20:31:57.12 ID:0WliKnZA0






古黄泉「妹をその手で殺す気か!?」






339 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/01(日) 20:35:44.67 ID:0WliKnZA0
如月「は」

古黄泉幽星の言葉に、全ての時が、止まりました。

妹?

誰が?

六山さんが、妹?

如月「怜、那?」

「ぁ……」

その名前への反応。

彼女の揺れた瞳。

その全てで、僕が彼女が何者かを、ようやく理解したその時――
340 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/01(日) 20:37:19.92 ID:0WliKnZA0






怜那の胸から、腕が生えて、僕の右手を、掴んで。

古黄泉「捕まーえたぁ!」

バキッ






341 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/01(日) 20:52:34.49 ID:0WliKnZA0
如月「っ!」

崩れ落ちる怜那を、まともに動かない身体で受け止めます。

怜那「……」

胸から流れ出す血、それだけでもう手遅れだとわかってしまう。

如月「怜那……なんで、なんで……!」

なんで、生きているのか。

なんで、言ってくれなかったのか。

なんで、なんで、なんで、なんで……

僕の頭を疑問がぐるぐると回って、何も言葉にならなくて。

怜那「……ぉ、兄ちゃ……」

如月「っ!」

怜那が僕のジャケットに何かを忍ばせます。

これは、ゲーム機?

怜那「つうし……ぁ、……し……たす、け……よべ……」

如月「……」

これは通信機?

後少しで助けを呼べる?

怜那「……あの時助けてくれて、ありがとう、お兄ちゃん」

それは、もう虫の息だった怜那が言えるはずもないはっきりした言葉。

だけど確かにそう、言って、怜那は……

古黄泉「ハハハッ!感動の再会即終了!最高に絶望的だなぁ!」

如月「……」

怜那……

わかっています。

僕のやるべき事……

古黄泉「がっ!?」

如月「……」

古黄泉幽星を残った右足で蹴り飛ばし、飛んできた電子手帳を踵で砕きます。

古黄泉「てめえ、まだ!」

まだ気付かせるな、怜那の遺したこれを。

この通信機が、助けを呼ぶまで……守りきる。

それが殺してばかりだった僕の。


最期の、仕事です。
342 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/01(日) 21:07:05.91 ID:0WliKnZA0
あれから、どれだけ経ったのか。

もうそれがわからなくなってきた頃。

古黄泉「はぁ、はぁ……この野郎……手こずらせやがって……!」

如月「……」

右足も折られた僕は、幹に寄りかかっていました。

古黄泉「ハハッ!だけどこれで終わりだ……最期の言葉くらいなら聞いてやるぞ」

如月「……」

最期の言葉ですか。

こんな男に言う事なんて……ああ、1つありました。

如月「お前は負けますよ。せいぜい幻の勝利に酔ってなさい……雑魚が」

古黄泉「てめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

バキッ!

首を、折りましたか。

本当に、短絡的な……

古黄泉「はぁ、はぁ……!」

でも、いいでしょう。

僕の役目は果たしました。

先ほど聞こえた微かな音……怜那の思いが届いた証。

それさえわかれば、もう充分です。

如月「……」

妹が生きていた事にも気付けず、正義を気取って殺戮を繰り返し、憧れてくれた彼をくだらない嫉妬で見殺しにして、あの子をまた守れなかった愚かな男。

如月「……」

あの電子手帳、この通信……

皆さんの脱出のために、少しぐらいは……役に、立てたでしょうか。

怜那……

馬鹿な、兄で……すみませんでした。

だけど。

身勝手な話ですが。
343 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/01(日) 21:12:18.90 ID:0WliKnZA0






――あの時、あなたを守れて、よかった。

心臓を貫かれる直前、僕はそんな事を考えて……本当に自分はどうしようもないなと自嘲の笑みを、浮かべて――






END
344 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/01(日) 21:16:49.48 ID:0WliKnZA0
この時如月が時間を稼いだ事で古黄泉は怜那の血の処理、現場の偽装に追われ花びらに埋もれた電子手帳の回収や如月のジャケットにあった通信機は回収したもののしっかり確認する事が出来ませんでした。
345 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/02(月) 21:30:25.09 ID:gUDYCGQA0
【過去・孤児院】

怜那「お兄ちゃん!」

如月「どうしました怜那?」

怜那「どうしました?じゃないよ!またヒーローごっこして怪我したって聞いたよ!」

如月「……そうは言いますがね、僕はヒーローとして当たり前の」

怜那「妹を泣かせるお兄ちゃんなんかヒーローじゃないもん!」

如月「うっ……そう言われると、何も言えませんね」

怜那「うー!」

如月「わかりました……今度プリンを買ってあげますから」

怜那「ほんと!?やったー!さすがヒーロー!」

如月「……」

怜那「あっ、そういえばお兄ちゃん。まだあのヒーローの言葉遣い真似してるの?」

如月「慣れてしまいまして。小学生らしくないのは理解してますよ」

怜那「うーん、でもお兄ちゃん。テレビのヒーローと同じ言葉遣いしてもヒーローにはなれないよ?」

如月「……キツい事を言いますね」

怜那「本当の事だもーん……けほっ、こほっ!」

如月「怜那!?」

怜那「もう焦りすぎだよー。わたしが咳するなんていつもの事なのに……えっと、薬は……」

如月「……いつか必ず、僕が病気を治しますから」

怜那「……へっ?」

如月「必ず助けますから……僕はヒーローですからね」

怜那「……ほんと?」

如月「はい……ああ、そうです。怜那にこれをあげましょう」

怜那「これお兄ちゃんが大事にしてるバッジ……」

如月「約束の証です。僕は何があっても、怜那のヒーローであり続ける」

怜那「……うん!」
346 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/02(月) 21:31:51.31 ID:gUDYCGQA0






わたしは、こんな日々が……ずっと続くと思ってた。

優しいお兄ちゃんや、孤児院のみんなと一緒に過ごしながら大人になるのかな、なんて思ってた。





347 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/02(月) 21:32:40.08 ID:gUDYCGQA0






だけど、わたしのそんな未来の光景は。

あの日、全部壊された。






348 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/02(月) 21:38:31.89 ID:gUDYCGQA0
【???】

怜那「……」

痛い、痛いよ……

なんで、こんな事に、なっちゃったのかな……

いきなり連れてこられて、怖い人に、身体、切られて……

もう、何も見えない……聞こえない……

わたし、死んじゃうのかな……

怜那「ゃ、だ……ょ……」

お兄ちゃん、助けて……

お兄ちゃ……ん……




「うっ、またあのマッド人を切り刻んだな……」

「んー?こいつまだ……」

「そういえば、あっちに……」

「…………」

「ああ、駄目だ」

「【こんな状態から人は助かるのか?】」


佐木原「確かめたくて仕方がない……!」
349 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/02(月) 21:46:37.89 ID:gUDYCGQA0
【???】

「……っ、うっ」

佐木原「おー、目を覚ましたか」

「えっ……だ、れ……」

佐木原「俺が誰かなんてどうでもいいだろ?それより新しい身体はどうだ?」

「新しい……身体……?」

男の人が、わたしに鏡を見せる。

「……えっ?」

だけどそこに写ってたのは、わたしの顔じゃない。

佐木原「脳移植した。お前あのままだと死んでたからな」

「……」

佐木原「あのマッドがあんな綺麗な身体残してたのは俺も驚いたけどな……まあ、おかげでお前は助かったわけだ」

この人が、何を言ってるのかは……よくわかんなかったけど。

「……」ポロポロ

生きてる。

それがただ嬉しくて……わたしは、おもいっきり、泣いちゃって。

その日わたし如月怜那は死んで。

その日わたし如月怜那は生まれ変わったんだ。
350 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/02(月) 22:03:08.25 ID:gUDYCGQA0
【孤児院】

怜那「……」

帰ってきたけど……でも、よく考えたら……

わたし、今までのわたしじゃないんだ……

怜那「どう、しよう……」

神乃木「……あの、どちら様でしょうか?」

怜那「きゃっ」

美魅お姉ちゃん……お兄ちゃんより年下なのに孤児院のまとめ役をしてるお姉ちゃん。

わたしもたくさん遊んでもらって……そんなお姉ちゃんに誰?って聞かれて……すごく、泣きたくなった。

神乃木「えっと……うちの子の、お友達ですか?」

怜那「ぐすっ……え、えっと、お兄ちゃ……如月……くん……います、か」

神乃木「……如月、くん」

お兄ちゃんを呼んで、とにかく話そう。

そう思ってたわたしは……

神乃木「如月くんは……もういません」

怜那「えっ」

神乃木「この前、妹さんが亡くなって……そのまま、いなくなってしまいました」

う、そ……

怜那「……!」

神乃木「あっ!待っ……」

わたしはもう聞きたくなくて、美魅お姉ちゃんから逃げた。

お兄ちゃんがもういない。

みんなはわたしが死んじゃったって思ってる。

怜那「ぐすっ……うええええんっ!」

これから、どうすればいいのかわからない。

わたしは、ひとりぼっちになっちゃったんだ……
351 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/02(月) 22:27:00.04 ID:gUDYCGQA0
【公園】

逃げたわたしは……でもどこにも行き先がなくて、公園のブランコに乗って泣いていた。

怜那「ぐすっ……」

わたし、どうしたらいいのかな……

お兄ちゃんはいない……わたしの居場所もない……ううん、それ以前に。

怜那「怖い、怖いよぉ……」

人が、怖い。

わたしはまだ小学生だけど……神父様がわたしをあの怖い人に売ったんだって事はわかってた。

あんなに優しい神父様がそうだったのに、他の人がどうかなんてわからない。

怜那「うっ、うっ、ぐすっ」

せっかく生きてるのに、わたし……何も出来ない。

怜那「お兄ちゃん、お兄ちゃんっ……」

このままずっと泣いて、お兄ちゃんを呼んで……そうするしかないと思ってた。

「だ、大丈夫……?」

だけどそんなわたしに声をかけてくれた人がいた。

怜那「えっ……だ、誰……?」

それはわたしと同じくらいの男の子。

「あっ、えっと、僕は……」
352 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/02(月) 22:28:49.89 ID:gUDYCGQA0






それがわたしと彼……

鞍馬「鞍馬……鞍馬類だよ」

鞍馬くんとの、出会いだった。






353 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/02(月) 22:30:50.87 ID:gUDYCGQA0
今回はここまで。

明日洋館を更新したいと思います。
354 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/03(火) 23:06:57.64 ID:CRC9dxcA0
申し訳ありません、洋館更新を明日に延期します。
355 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/15(日) 07:00:14.36 ID:L5McoDSA0
【鞍馬の家】

鞍馬「ほら、入って」

怜那「う、うん……」

鞍馬くんに連れられるまま、わたしは彼の家に招かれる事になった。

大人は怖いけど、同い年くらいの鞍馬くんならあんな事にはならないよね……

怜那「えっと、1人なの?パパやママは?」

鞍馬「2人共仕事が忙しいからほとんど帰ってこないんだ」

怜那「そうなんだ……」

だからちょっと大人びてるのかな……

ジュース持ってくるねと鞍馬くんは部屋から出ていって、わたしは1人部屋に取り残される。

怜那「ついてきちゃったけど……これからどうしよう」

わたしを知ってる人なんてどこにもいない。

ううん、お兄ちゃんならきっと話せばわかってくれる。

でも、お兄ちゃんがどこにいるか全然わからない。

怜那「うっ、ぐすっ」

鞍馬「また泣いてる」

怜那「あっ……」

鞍馬「とりあえず、ジュースでも飲んで。そのままじゃ干からびちゃうよ」

怜那「うん……」

あっ、美味しい……

鞍馬「えっと、それで……なんで泣いてたの?僕でよかったら、話聞くよ?」

怜那「……」

言っていいのかな……でも、聞いてくれるっていうなら……

その時のわたしは心細くて、誰でもいいからこの不安を吐き出したくて。

だからわたしは全部話した……本当に全部を。
356 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/15(日) 07:14:43.89 ID:L5McoDSA0
鞍馬「……本当に?」

怜那「……」

信じてくれるわけない。

そんな事わかってた。

体の事、死にかけた事、それを助けてもらった事、居場所がなくなった事。

もしわたしが聞いたら、お兄ちゃんが好きなヒーローの話かな?って思うもん……

鞍馬「そっか……じゃあ今怜那ちゃんは帰る家がないんだ」

怜那「……うん」

鞍馬「……よし!じゃあここにいなよ!」

怜那「……へっ?」

鞍馬「空き部屋ならいっぱいあるし、さっきも言ったけど父さんも母さんも滅多に帰ってこないから」

怜那「で、でも迷惑だよ」

鞍馬「迷惑って誰に?僕がいいって言ってるのに」

それはそうかもしれないけど……

鞍馬「それに……僕も1人だから、少し気持ちはわかるんだ」

怜那「えっ……」

鞍馬「僕、学校行ってないんだ。無駄だから必要ないって言われてて……だから友達もいない」

怜那「……」

鞍馬「怜那ちゃんがここにいてくれると、僕も寂しくないし……男なのに情けないけど」

今のわたしは1人。

今の鞍馬くんも1人。

だから、きっとおかしな事だったのかもしれないけど。

怜那「……ありがとう」

この選択だけが、わたし達の救いだった。
357 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/15(日) 07:38:54.80 ID:L5McoDSA0
その日から、わたしと鞍馬くんの生活は始まった。

それでわかったのは、鞍馬くんはすごく頭がいいって事。

鞍馬が学校に行かなくなった理由もそれが関係してるみたい。

怜那「この本何……?」

鞍馬「とある学者の論文をまとめた物だよ。読んでみる?」

怜那「これなんて書いてあるの……」

それと、鞍馬くんのパパママは本当に帰ってこない。

半年に1回、どちらかが帰ってくればいい方で……わたしが鉢合わせた時も特に気にしてなかった。

わたしは助かったけど……鞍馬くんは辛そうで。

そんな彼を見てわたしが頑張らないと!と思って料理を作ろうとしてみたりもしたんだけど。

鞍馬「……」

怜那「もう料理なんかしない……」

そんな日々を過ごしながら、何年か経って……わたしはある日その記事を見つけた。
358 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/15(日) 07:48:54.96 ID:L5McoDSA0
【犯罪組織壊滅!お手柄高校生は【超高校級のヒーロー】!】

怜那「これ……お兄ちゃん……」

本当にヒーローになったんだ……すごいよお兄ちゃん。

鞍馬「会いに行く?」

怜那「……ううん」

お兄ちゃんはお兄ちゃんの人生を歩んでる。

だったら死んじゃったわたしが会いに行っても……きっと邪魔になるだけだよね。

怜那「類くんを1人にも出来ないし」

鞍馬「それ、怜那には言われたくないよ」

だけどわたしは、1つだけ気になり事があった。

それはインタビューを受けるお兄ちゃんの写真。

……お兄ちゃんの笑顔って、こんなだったっけ。
359 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/19(木) 22:51:04.44 ID:/4KRl62A0
類くんとの日々は幸せな時間だった。

だけどわたしはよく知ってる。

幸せな時間の終わりはいつも突然だって。

怜那「る、類くん」

鞍馬「はぁ、はぁ……」

【人類史上最大最悪の絶望的事件】。

後にそう呼ばれるこの事件が、わたし達の日常を……跡形もなく消し去った。

鞍馬「っ、なんで……!」

怜那「……」

この事件は文字通り人類史上最大最悪で……

鞍馬「僕は、こんな……」

同時に、類くんにとっても絶望的な出来事だった。

類くんは天才、いわゆる神童って呼ばれる人で。

でもその力は……この狂った世界ではなんの意味もなかった。

鞍馬「……」

怜那「……」

そして、わたしは……この状況を生き延びるためなのかな……

まるで昔見た映画のスパイみたいに立ち回れた。
360 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/19(木) 22:52:12.20 ID:/4KRl62A0
鞍馬「……」フラッ

怜那「類くん、どこに行くの?」

鞍馬「……どこに行けば、いいんだろう」

怜那「……」

鞍馬「僕は、何も知らない。外に出る必要なんてほとんどなかった」

鞍馬「だけど世界がこうなって……僕は、ただの大海を知らない蛙でしかないとわかって」

鞍馬「怜那……僕は、どうしたらいいんだろうね」

怜那「……わからない、よ。わたしだって、似たようなものだから」

鞍馬「……」

怜那「でも、それなら探せばいいんだよ!」

鞍馬「探、す?」

怜那「どこに行くか、何をすればいいのか……いくらでも探せるよ」

怜那「わたし達は、生きてるんだから!」

鞍馬「……!」

怜那「そうだ、これあげる!」

鞍馬「これは、バッジ?」

怜那「わたしの大切な物なの。わたしはたくさん心の支えにしてきたから……類くんにも、効果があるといいんだけど」

鞍馬「……ありがとう、怜那」
361 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/19(木) 23:01:40.53 ID:/4KRl62A0
それからわたし達は、2人である組織に保護された。

未来機関。

この絶望的な世界で戦う組織……わたしは工作員の才能があるらしくて、訓練を受ける事になって。

怜那「はぁ……疲れたよ」

鞍馬「怜那」

怜那「類くん!お仕事終わったの?」

鞍馬「一応任された分は……才能がない僕が頼まれる仕事なんて微々たるものだけど」

類くんは、才能がないって言われたらしい。

正直、あの類くんに才能がないなんて未だに信じられない気持ちでいっぱいだけど……

怜那「そんな事言わないでよ。わたしは類くんがいるから頑張れるのに」

鞍馬「……ごめん」

そのせいなのか、類くんはわたしと話す時ぎこちなくなる事が増えてる。

こんな風に気まずくなりたくなんてないのに……

鞍馬「……」

怜那「……」

鞍馬「じゃあ、僕は行くから」

怜那「……うん」

こんなはずじゃ、なかったのにな……
362 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/20(金) 06:45:55.65 ID:PTW+dPwA0
怜那「……類くん!」

その日、訓練を兼ねた任務から帰ってきたわたしは類くんの部屋に飛び込んだ。

類くんが、未来機関の開発した新薬の実験台になったって聞かされたから。

しかもそれが薬剤師の忌村支部長が作った物ならともかく、別のルートで作られた物だって言うから……余計に胸騒ぎがした。

鞍馬「……」

部屋にいた類くんがわたしに向ける視線は、すごく空虚なもので。

なんで、そんな目でわたしを見るの……?

怜那「じ、実験台になったって本当に?なんで、そんな」

鞍馬「そんなの決まっているでしょう」

怜那「…………えっ」

だ、れ……?

鞍馬「僕は希望を求めている。そのために実験台に志願したんです」

あなたは、誰?

鞍馬「それと僕は第1支部に転属になります。二度とあなたと会う事はないでしょう」


鞍馬「さようなら【如月さん】」


怜那「……ぁ」

後からその薬は脳の活性化の代わりに人格に影響を与える物だからと、忌村支部長が作るのを許さなかった失敗作な事。

人格を戻す方法は、ない事を知った。

なんで類くんがそんな薬を飲んだのかもわからないまま。

類くんは、わたしの前から姿を消した。
363 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/20(金) 09:40:46.00 ID:PTW+dPwA0
六山「……」

類くんがわたしの前からいなくなって1年……任務のために新しい支部の初期メンバーに選ばれたわたしは支部に向かう船に乗っていた。

【絶望の残党】……それが新しい支部の初期メンバーの中にいるって情報。

牽制も兼ねたこの六山百夏って名前に反応する人はいなかったけど……まだ油断は出来ないね。

六山「……」チラッ

だけど驚いたのは……

如月「……」

鞍馬「……」

お兄ちゃんと類くん。

わたしにとって忘れられない2人がここにいた事。

もちろん任務の前に調べたからいるのは知ってたけど……

如月「どうしました六山さん?僕の顔に何かついてるでしょうか」

六山「ううん、なんでもないよ」

お兄ちゃんは結局あの話し方のままなんだ。

グレゴリーくんもそうだけどなんだか芝居がかってるというか……そういえば。

グレゴリーくんは二人一役らしいけどもう1人はどこにいるのかな……

そんな疑問が頭に浮かぶのと同時に……

「うぷぷぷぷ……呑気だねオマエラ」

悪夢はまた唐突に、始まった。
364 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/20(金) 09:57:44.79 ID:PTW+dPwA0
【六山のコテージ】

六山「……」カチカチカチカチ

っ、だめだ……通信出来ない。

この島、大規模なジャミングがかかってる……突破するには時間がかかりそう。

六山「ゲーム好きって事にしておいてよかった」

これなら堂々とジャミングの攻略に取りかかれるからね……

六山「だけどコロシアイなんて……まさかこんな大胆に動くなんて」

とにかく調査して、わたし達の中にいるなら確保……もしいなくても、未来機関に通信できればわたしの勝ち。

六山「頑張ろう」

※※※※

六山「はぁ、はぁ……」

ジェニー「モ、モモカ!?」

六山「……ボス撃破、だね」カチカチ

静音さんが見せしめにモノクマに殺されそうになって。

わたしは思わずパイプでモノクマを壊してた。

もちろんそれをしてただですむわけがない。

わたしを処刑するって言い出したモノクマは戦車を持ち出した。

モノクマは無傷で戦車を無力化出来たら助けるなんて遊ばれて。

六山「あ、あああ……!」

思わず目をつむる。

迫る死に、なすすべもないわたしを救ったのは……


如月「なるほど、ならばその条件を達成させていただきましょうか」


お兄ちゃん、だった。
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