少女「お兄、すき」男「そうか」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:23:39.30 ID:asZyafUu0
SS5作目です。

今回は参考にした歌などは特にありません。
オリジナルとなります。

そのためいつもより投稿が遅くなるかもしれません。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1567934619
2 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:26:00.73 ID:asZyafUu0
ーーー町酒場ーーー



ガヤガヤ



ゴロツキ「ガッハハ!一仕事した後の酒はうめーなぁ!」

弟分「兄者今日は絶好調でしたもんね!あのお高くとまった貴族達の、用心棒がやられた時の顔……最高に笑えましたよぉ」ゲヘヘ

ゴロツキ「そうだろうそうだろう!」

ゴロツキ「おい店主、酒だ!早く持ってこい!」

店主「へ、へい……」

ゴロツキ「お前らも、今日は俺の奢りだ!好きなだけ飲めよ!」

「「「うっす!!」」」

ゴロツキ「ボスの気前の良さにも感謝だな!こんだけたんまり臨時収入がありゃ、女も好きに抱けるってもんよ!」

弟分「ちげぇねーっす!」

ワハハハ!





──ガチャッ キィ





男「……」トッ、トッ、トッ...

ゴロツキ「お…?」

男「……」ストッ

男「葡萄酒を頼む。あまり寝かせてないやつをな」

店主「はい……ん?」

店主「!あんた…!」

ゴロツキ「よぉ兄ちゃん。飲みに来たっつーことは何か良いことでもあったかい?」

男「……」

ゴロツキ「逆か?嫌なことだったかな?そいつはすまねぇな、ガハハ!」

ゴロツキ「だが悪ぃな、ここは今俺達が貸し切ってんだ。兄ちゃんは家に帰ってママのミルクでも吸ってるこったなぁ!」

「「「ギャハハハハ!!」」」
3 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:27:11.29 ID:asZyafUu0

男「………」

男「店主、いつからこの店はこんなドブネズミがうろつくようになったんだ?」

ゴロツキ「あ?」

ゴロツキ「…てめぇ、今なんつった」

男「ここはもっと、清潔な場所だったはずだと言ったんだ」

弟分「兄者、こいつどうやら俺達と遊んで欲しいみたいですぜ?」

ゴロツキ「なるほどなぁ。社会勉強だ、兄ちゃん。長生きする秘訣ってのをじっくり教えたらぁ」

男「……」ガタッ

ゴロツキ「む」

男「………」

男「……」トッ、トッ、トッ

ゴロツキ「おいおいまさか今更さようならが通じるとでも思ってんかい?」

男「……場所を移すだけだ。どうせ1分もあれば終わる。店にネズミの腐敗臭を染みつかせたくないしな」

「野郎、舐めてんじゃねーぞ!!」バッ!

男「」サッ

「!?」

ドスッ

「がっ……」ドサッ

男「…2秒で一人、差し詰め30秒といったところか」

ゴロツキ「こいつ俺らの同胞を…!」

ゴロツキ「殺っちまえ!!」

ウォオオオ!


4 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:29:09.60 ID:asZyafUu0
ーーーーーーー

「う……」

「いてぇよ……ママぁ……」



男「……ふぅ」

男「40秒だったか」

ゴロツキ「く……そ………」

男「……」

男「すまないな、店主。結局中でネズミ退治をしてしまった」

店主「い、いや……それより!」

店主「あんた男さんだな!いやはや懐かしいねぇ。傭兵稼業であちこち飛び回ってるって聞いてたけど、まさか戻ってきていたとは!」

店主「しかし変わらないなぁ。寝かし込んでない葡萄酒を頼むのなんざ、あんたくらいだからね!ははは!」

男「そっちの方が俺好みなんでな。店主は少し老けたか?皺が目立つようになってきたな」

店主「よしてくれやぃ。最近気にしてんだ」

店主「だがなんでまたこの町に?……身を落ち着けに来たのかい?」

男「依頼があってな。近頃この町周辺で凶暴化した動物が出没する、これを一掃して欲しい、と」

店主「あぁその件かい。なんかね、物騒な話なもんだよ。見た目はちっこい動物そのまんまでもとんでもない凶暴性で人を襲っちまうってんだろ?」

店主「先週なんてさ、飼育でもされてそうな小型犬一匹が大の男を襲って殺しちまったそうだよ。自分の見立てではね、そいつぁ自分から首元差し出すくらい泥酔してたんじゃないかと思ってるんさ」

男「…どうかな。聞いた話だとそんな状態で危険域を出歩くような男じゃなさそうだが。敵の力量は直接見なければ分からない」

店主「おぅおぅ、さすが油断のゆの字もないねぇ、男さんは」

店主「……それで、この町にはどれくらい居るんだい?」

男「今回の依頼が終わるまでは留まる」

店主「ほぉ、珍しいね。いつも依頼中だろうがどこ吹く風、流浪の傭兵がねぇ」

男「…国からの依頼だからな。果たすまでここを離れるなとの達しだ」

店主「かなり厄介なもんを任されちまったんだね」

男「おかげで稼げるから、納得はしている」

男「さて、このネズミ共は外に出しておく。邪魔したな、店主」

店主「おう!また来ておくんな!」

店主「そうだ、これ」ポイッ

男「!」パシッ

(葡萄酒)

店主「忘れもんだよ、とっときな!」

男「……ふっ、また来る」


5 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:31:17.90 ID:asZyafUu0
ーーー町外れーーー

男「……」テクテク

男「……」テクテク

男(……久方ぶりに来たが、ここは変わらないな)

男「……」テク...

男「………」



看板『薬屋』



男(……ここも)

男「……」



コンコン



男「……」

男「……」

男「………」



コンコンコン



男「………」

男「………」





「もう、誰だい?営業時間外の取引はやってないと表に書いてるだろう?」ノソッ





「大体ね、分かってるんだ。こういう時に来る連中はほとんど物乞いか、醜く肥えた役人様か、急患か」スタスタ

「急患ならうちじゃなくて医者にかかれと……」スタ...

男「…流れの傭兵ってのは受け付けてるのか?薬屋」

薬屋「……男!」


6 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:34:05.80 ID:asZyafUu0
ーーー薬屋 屋内ーーー

薬屋「国直々の依頼でねぇ…。それはともかく、戻ってるならそうと早く言っておくれよ。水臭いじゃないか」ガサゴソ

男「さっき戻ったばかりだ」

薬屋「ほほう。それじゃ、真っ先にここに来てくれたわけだ?嬉しいね」ゴソゴソ

男「最初に寄ったのは酒場だったよ」

薬屋「あそこに行ったのか…頭の悪そうな連中の溜まり場になってたろう?」ガサ..ガサ..

男「掃除したさ」

薬屋「相変わらずだねぇ」ククッ

薬屋「けれど気を付けな?最近になって急にこの町にやって来て我が物顔で悪どい仕事してる奴らさ。目付けられない方が面倒はないね」ガササ

男「あの程度、例え寝込みを襲われたところで容易に迎撃出来る」

薬屋「なら、私が襲ってあげようか?」

男「……返り討ちに遭いたいと?」

薬屋「……」ニヤリ

薬屋「…おや。やっと見つけた」

薬屋「ほら、よく眠れる薬だ。夢なんか見ないほどにね。滅多に出さないもんだから発掘するのも一苦労だよ」

男「助かる」

薬屋「……まだあの夢を?」

男「時々な。前よりはマシになった」

薬屋「………ねぇ男」ソッ...

(後ろから優しく抱き締める)

薬屋「私じゃ、ダメなのかい?」

男「……」

薬屋「あのことを忘れろとは言わないよ。けどさ、あれからもう5年は経つんだ。そろそろ新しい幸せを掴んでもいいと思うんだよ」

薬屋「それをきっと──亡くなった奥さんと娘さんも、望んでいるんじゃないかな」
7 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:36:40.58 ID:asZyafUu0

男「………」

男(………)

男「…残念だが、答えは変わらない。俺は自分の守るべきものすら守れない人間だ」

薬屋「………」

男「お前の方こそ、妹は無事なのか?ここに居ないのを見ると、まだ病床に臥せっているんだろう」

薬屋「……生きているよ。うちで調合した薬も使いながら、なんとかね」

男「さすが、稀代の天才薬剤師。だが、その子との一分一秒は大切にしてやれよ。いつどうなるとも分からないからな」

薬屋「話を逸らすな」

男「……」

薬屋「……」

薬屋「…私には魅力が無い?」

男「……そうは言ってない」

薬屋「だったら──」

男「強いて言うなら」

男「…その男ともとれる口調が直れば、考えるかもしれないな」フッ

薬屋「む……」

スクッ

男「もう行くよ。今度は営業時間内に買いに来る」

薬屋「…用がなくとも来ておくれよ…」ボソッ

男「……ではな」



スタスタスタ...



薬屋「………」

薬屋「口調なんて、どうしようもないじゃないか」

薬屋(………)

薬屋「…どうしようもないじゃない……ですの」

薬屋「……………」

薬屋「……鳥肌が立つな」


8 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:38:15.24 ID:asZyafUu0
ーーー町外れの森ーーー

ザッザッザッ

男「…この辺りだったか」

男(酒場の店主も言っていた、大男が襲われたという場所)

男(見たところ静かなところだ)

男「………」

男(……いや、少し静か過ぎるか?普通これほどの森なら木の葉の騒めきくらい聞こえてきてもよさそうだが)

男「……」ザッザッ

男「……」ザッザッ

男「!」



犬「」

狼「」



男「……死んでる、か」

男(…地面が抉れてる箇所がいくつかある。激しく争った跡に見えるな)

犬「」

男「……」スッ

...グニグニ

男(死後硬直しているはずだが……異様に発達した筋肉だ)

男(特徴から見てこの犬が例の男を襲った犬だろう)

男「……」チラリ

ググッ

男(こっちの狼もか。こいつは硬直しきっているが、それでも筋の異常な膨れ上がりは分かる)

男(この二匹がお互いに争って相打ちとなった、と見るのが妥当)

男(……突然変異、なのか?戦闘用に鍛えられた種でもここまでの体躯にはならないと思うが……)

男「………」

男「まぁいい」

男(ともかく、俺が片付ける手間もなくなったんだ。楽が出来た)

男(こいつらが何であれ、俺は依頼内容をこなすだけ)

男(ここら一帯が静かなのも、この二匹が周辺の動物を襲って回っていたんだろう)

男「……」

男「」クルリ

ザッザッザッ

男(……そういえば、一掃とは聞かされたがどうすれば一掃したことになるんだ)

男(……明日、依頼人から詳細を聞ける手はずだ。一先ず二匹討伐と報告するか)
9 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:41:26.17 ID:asZyafUu0

男「……」ザッザッ

男「……ん?」





少女「」ウツブセ





男「………」

男「死体……か?」

ザッザッ

男「……」

少女「」

男「……」スッ

少女「」ピクッ

男「!」

少女「んー……」ゴロン

男「………」

少女「スー…スー…」

男「……おい」

少女「スー…スー…」

男「おい、起きろ」

少女「スー…スー…」

男「……」



パァン!(手を叩く)



少女「!?!?」ビクゥ!

少女「は…!?あ……!?」

少女「………」キョロ、キョロ

少女「??」

男「…ここで何をしてる」

少女「!」バッ

少女「……」ジー

男「暢気に昼寝か?この場所はあまりいい趣味とは言えないな」
10 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:42:36.70 ID:asZyafUu0

少女「……」

男「……お前は誰だ?何故こんなところで寝ていた?」

少女「………」

男「正直に答えろ。返答によっては──」

少女「おー……」

男「……?」

少女「おー、にー」ユビサシ

男「……鬼だと?」

少女「んー!」ブンブン

少女「おー、にー!」

男「なんなんだ…」

男(こいつ、言葉が喋れないのか?)

少女「おーーにぃーー!」

男「おにい……兄のことか?」

少女「…!」パアァ

少女「おにぃ!おにぃ!」キャッキャ

男(こっちの言ってることは理解している…?)

男「……俺はお前の兄ではないぞ」


11 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:44:40.10 ID:asZyafUu0
ーーー町外れーーー

男「……」テクテク

少女「♪」トテトテ

男(……連れて来てしまった)

男(というより付いて来たのだが……如何せんどこの誰とも分からない上に答えてもくれないからな…)

男(かと言ってあそこに放置するわけにもいかない)

男「……」テク...

少女「?」ピタッ



看板『薬屋』



男「……薬屋!俺だ!いるなら開けてくれないか?」

...トットットッ

カチッ ガララッ

薬屋「何だい何だい?こんな時間にわざわざもう一度訪ねてくるなんてもしかして私に──」

少女「……?」キョトン

薬屋「………君、隠し子がいるなんて私は聞いてないよ?」

男「早まるな。俺の子は後にも先にも娘一人だけだ」

薬屋「なら尚のことまずいな。その子を攫ってきたということだろう?通りで私になびかないわけだよ。まさかショックのあまり異常性愛に目覚めていたとは…」

男「人の話を聞かないか」

男「この子は森の中で寝ていたんだ。……薬屋、何か心当たりはないか?」

薬屋「いや、ない」

少女「……」ジッ...

薬屋「……そもそも本人に直接訊いたらどうだい?」

男「出来るならそうしている。だがな……」

男「おい」

少女「!」

男「お前は、どこの、誰だ?」

少女「だー…れー……?」

男「……馬鹿だな」

少女「むっ!」

少女「んむー!」プンプン
12 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:46:03.46 ID:asZyafUu0

薬屋「…なるほど」

男「どうも、こちらの言葉を分かっている節はあるんだが肝心なことは首を傾げるだけで聞き出せないんだ」

薬屋「何らかの出来事があって記憶喪失になったのか、はたまた野生で育てられてきたのか……」

男「後者は考えにくいな。どうやって人の言葉を学ぶ?」

薬屋「まぁね。とすると一番考えられるのは……」

薬屋「親に酷い虐待を受け、森に捨てられた。辛い記憶から逃れるために自らそれを封じた……とかかな」

男「………」

男「……だとするなら、許せんな……」ギリッ...

薬屋「……」

薬屋「ま、そうと決まったわけではあるまいし、ここはお役所に任せるのが安パイじゃないかね」

男「役所……国か。…あまり信用出来ない」

薬屋「はぁ?」

男「保護してくれたとして、所詮は赤の他人。どこまでこの子の安全を保証してくれるかなど定かではない」

男「それに、お前の言った通りの親が万一迎えに来たら……」

薬屋「……じゃあどうするんだい?」

男「薬屋」

薬屋「嫌だ」

男「……まだ何も言ってない」

薬屋「分かるさ。どうせ私の元で預かって欲しいとでも言うつもりだろう」

男「俺がこいつの親の素性を調べ終わるまででいい」

薬屋「よしてくれよ。私は子供の面倒は自分が産んだ子だけと決めているんだ」

薬屋「…あるいは、引き受ければ私と籍を入れてくれるというのなら、話は別だけどね?」ニッコリ

男「………」

男「…他をあたるか」

薬屋「」ゲシッ

男「!」サッ

男「蹴りをかますことはないだろう」

薬屋「ふん」
13 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:47:47.32 ID:asZyafUu0

少女「めっ!」ズイッ

薬屋「ん?何だい?」

少女「……」ジー

薬屋「もしかして男を蹴ろうとしたことを…?」

少女「むぅ……」

バッ(男の前で立ちはだかる)

薬屋「……随分好かれているじゃないか」

男「思い当たる節はない。おまけに──」

少女「おにぃ」フリムキ

薬屋「………」

男「………」

男「…これだ」

薬屋「……………」

男「待て、何だその目は。俺がこんな呼ばせ方をすると思うのか?」

薬屋「思ってないけどさ…」

薬屋「……」チラリ

少女「おにぃ…」フアンゲ

薬屋「……いいじゃないか、男が面倒を見てやれば」

男「……お前は、俺の近くに居ることがどれだけ危険か知っているはずだ」

薬屋「それは男の目が届かない時が、だろう?」

男「………」
14 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/09/08(日) 18:48:31.43 ID:asZyafUu0

薬屋「こんな状態の幼子をそもそもとして一人にしておけないんだから、四六時中傍に置いておけばいい」

薬屋「むしろ男の傍ほど安全な場所もないと思ってるさ」

薬屋「……それとも、今の依頼と両立するのは厳しいとでも言うのかな?孤高の傭兵男くんは」

男「……」

薬屋「他人任せにするのが嫌なら、選択肢は初めから一つだよ」

男「……」チラッ

少女「?」

男「………」スッ...



ポン(少女の頭に手を置く)



少女「!」

男「…そういうことだ。少しの間だが、共にいてもらうぞ」

少女「おにぃ!」ニッ



ーーーーー

娘「──パパ!」ニコッ

ーーーーー



男(………)

薬屋「……手出すなよ?」

男「お前は俺をなんだと思っている」


135.02 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)