桃「シャミ子を走らせてたらシャミ子が倒れた」

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10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/20(日) 23:53:22.52 ID:06K62MaI0
「……千代田桜さんには、返しきれない恩があります」
 
唐突に出てきたその言葉は、私の思考を完全に止めてしまうのに十分な威力を持っていた。
思考と一緒に時間すら止まってしまったかのような静寂。
 
「私にも、わからないことはたくさんあります。けれど、一度に色んな事があり過ぎても、困りますよね。まだ中学生なんだから、余計に。ただ、私達は貴方の味方です。それだけは、覚えておいてね。さ、一緒に行きましょう。タクシー代くらいは出させてください」
 
私は、開いた口を閉じる事もできずに、促されるまま、病院を後にしたのだった。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/20(日) 23:54:22.53 ID:06K62MaI0
────

あの日から、何日か経った。

私は、清子さんとも、シャミ子とも、連絡を取っていない。
清子さんはああ言ってくれた。シャミ子も、きっと、私を責めたりしない。
 けれど、シャミ子にどんな風に顔を合わせればいいのか、分からない。ただただ卑屈になりすぎれば、余計にあの人たちに気遣わせてしまう。かといって簡単に上を向けるほど、私は厚顔無恥でもない。

 それでも、こうなった以上、責任はとらなくちゃいけない。たとえ何も分からなくても、このまま会わないのは、逃げだ。これ以上逃げ続ける事は、しちゃいけない。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/20(日) 23:55:09.88 ID:06K62MaI0
 数日前に聞いたシャミ子の入院した病室は場所が変わったりはしておらず、以前聞いた通りの場所に、「吉田優子」のネームプレートが入っていた。四人部屋だけれど、今はシャミ子しか部屋に入院している患者がいない様で、実質貸し切り状態らしい。

「あっ!桃!」

 寝ていたら申し訳ないから、なるべく音を立てないように入室してゆっくりカーテンを開けると、何やら本を読んでいるらしかったシャミ子とすぐに目が合った。

「ちょうど暇してたんです、じゃなくて、よく来たな魔法少女! 一人で強くなる作戦を考えるのも限界があるので、貴様も何か一緒に考えてください!」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/20(日) 23:55:59.63 ID:06K62MaI0
 シャミ子は不敵な表情を作ってそう言うと、床頭台に置かれたノートを広げて見せた。そこには、強くなる為の作戦と銘打った、何やらアホっぽい発想がびっちり羅列されている。とりあえず、シャミ子の横に椅子を置いてそこに座ると、シャミ子ベッドに座る形になって、自然に面と向かう様になった。あれから体に異常はないみたいで、動きにくかったりもしない様子で、本当に良かった。

「えっと……ちょっとそれは置いといていいかな。「置いとかれた!」まずは、本当にごめん、シャミ子。私が事情も知らずに振り回したせいで、こんな事になっちゃって」
「へ? ああ……それは気にしないでください! ああいう事、たまにあったんです。最近はめっきりなかったんですけど、あそこまでひどいのは本当に稀で……桃が居てくれて、とても助かりました……ってそうだ!私吐いたらしいじゃないですか!桃が汚れなかったか心配です!その節は本当に」
「ごめん、本当にごめん」

目の前でわたわた騒ぐシャミ子を手で押しやると、困惑して私の名前を呼び返す。

「桃?」
「ごめん、ごめんなさい……シャミ子、ごめん……」

 シャミ子の肩を持ったまま一度謝罪の言葉を発すると、何回言っても足りないくらいに、悲しい気持ちと、申し訳ない気持ちが押し寄せてくる。何度も繰り返すうちに、だんだん涙までが溢れて来て。シャミ子がちゃんと生きてる事を確かめたくて、自分の体をぐっと近づけた。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/20(日) 23:56:42.02 ID:06K62MaI0
「もうちょっとで、シャミ子を殺しちゃうと思った……私のせいでシャミ子が死んじゃったって思ったら、辛くて辛くて仕方なかった……!」
「も、桃、泣かないで、私元気ですから」
「うん、うん……ごめんね、シャミ子……ごめん……」

 シャミ子が困っている。きっと、この子自身も、こういうときどうすればいいのか分からないんだ。底抜けに優しくて、人を憎む事なんて全然できないんだから。

「私、本当に元気ですから……泣かないでよぉ……」

なぜか、シャミ子まで私につられてぐずりだしてしまう。私は、それすらもただただ申し訳なくて。
少しの間、二人そろって、抱き着いたまま泣いてしまっていた。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/20(日) 23:57:58.84 ID:06K62MaI0
────

 時間にすると、数分も経っていないくらいだった。だんだん落ち着いてきた私たちは、なんとなく気恥ずかしくて、ちょっと近づきすぎた距離をどちらともなく離したのだった。

「私ね、シャミ子が倒れて、病院に運ばれて……前から体が弱かった事を知って……その時は、もうシャミ子にかかわらない方がいいって思ったんだ」

微妙な雰囲気。少しの沈黙の後、私はシャミ子に自分の気持ちを伝えようと、なんとか話し出す事が出来た。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/20(日) 23:58:37.07 ID:06K62MaI0
「ええ!? なんでまた!」
「なんて言えばいいのか……私、もともと相手に合わせるのとか苦手だから、きっと、今後も同じ様な事が起こるんじゃないかなって。それで、またシャミ子が危険な目に遭って、そのまま死んでしまったら……私は、もう耐えられる自信が無い」
「あれはっ、私もいけると思っていたから……」
「そういう問題じゃないよ。ケースが違っても、似たような条件が揃っちゃう事はあり得るから。それに、今はそう思ってないんだ」
「あっ……そうなんですか。よかった……」
「うん。清子さんとちょっとお話して、色々と聞かないといけない事が出来たし。関わらない事は、きっともう無理なんだろうなって思ってる」

 清子さんの口から告げられた姉の名前。吉田家と姉の間に何があったのかはまだ分からないが、姉を探すという目的がある以上、関わりを断つ事は、きっとできない。それに、もう深くまで関わりすぎてしまったのだ。これ以上、いたずらにシャミ子を苦しめる事は、絶対にできない。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/20(日) 23:59:09.63 ID:06K62MaI0
だから、シャミ子と何かする時は、まずご家族さんと相談してから。」
「お、お母さんですか」
「そう。あの人は、色々と情報をたくさん持ってる。シャミ子の事もそうだし、しっかり腰を据えて話をする必要がある。それと、何があってもシャミ子を守れるように、私も色々勉強しようと思う」
「えっ……桃が……? そんな、悪いですよ! しかも勉強って」
「これでも物を覚えたりするのは得意な方だから」
「えっ……そうなんですか? ダンベルなのに」
「シャミ子は私を何だと思ってるのかな」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/20(日) 23:59:49.64 ID:06K62MaI0
さらりと暴露されたシャミ子の私への印象に少なからずショックを受けながら、今後の方針を伝える。ちなみに、学校での成績を教えるとたぶん今までで一番驚かれた。なぜ。

とにかく、やる事は山ほどあった。清子さんとの対話に、勉強に、姉の捜索。シャミ子が他の魔法少女に狙われる可能性だって、まだまだある。逃げる事は、とても簡単だ。それでも、私は向き合おうと思う。

それが、この子への贖罪にもなると思うから。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/21(月) 00:02:00.61 ID:8JzmgS2A0
以上です。まちカドまぞく、一歩間違えれば闇落ちスレスレな綱を渡り続けてる気がするよねというアレでした。

ちなみにシャミ子が倒れたのは魔翌力がアレしてアレした結果ですので実際大事には至っておりません。魔翌力が足りなくなった結果たぶん心臓かどっかが弱っちゃったんじゃないかな。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/21(月) 04:37:49.61 ID:WPgIP8xOo
いやその前になんで桃が清子さんに会えるんだ?
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/21(月) 06:50:48.62 ID:vSs4ZmV4o
おつわ
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/21(月) 13:05:44.77 ID:afLEVx2Go
>>20
こまけぇこたぁ(ry
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/21(月) 15:55:29.06 ID:FIFwaIvq0
シャミ子らは高校生なんだが
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/21(月) 20:53:02.07 ID:+gcvsHD9o
シャミ子に角が生えなかった世界線
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/22(火) 09:45:09.78 ID:SvOKSEGco
後書きで解説してるの好きじゃないなー
作品内で書けと
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/22(火) 21:51:55.73 ID:WF8zQxVjO
おもろかった
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