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タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part7

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20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/11/28(木) 23:05:50.47 ID:Bl/80ASb0
>>2「冬が来る」
お月様が真っ青に照っている夜、僕は点々と灯る街灯の下を歩いていた。数匹の蛾がその周りを飛んで、残像を残しては消えて移動する影が足許にぱらぱらと落ちる。
目の前は幅の広い坂道である。梶井基次郎が滑り落ちるサラリーマンを見たような坂だ。凍りついた日には雪ダルマになった子供が下ってくるかもしれない。赤いニット帽をかぶった童顔がのぞいているのは実に面白い想像だった。あとは塀から飛び降りて雪に埋まる三毛猫とか。
笑いを抑えながら下っていくと、右側の灰色のブロック塀からニョッキリと中折れ帽をかぶった紳士がすり抜けてきた。
「オヤ、遂にコンクリートを透過できる時代になったか」面白くなって僕は彼に会いに向かった。紳士は明治時代の男爵みたいに立派なカイゼル髭だった。
彼は僕を見て中折れ帽を押し上げた。つぶらな緑色の瞳である。
「ああ、ああ、君は私を見つけられたのだな」と言って、右手の杖をカツンとアスファルトの上に鳴らせた。彼の晦渋さに満ちたしわくちゃの顔が妙に笑いを誘うので、派手な失笑が漏れて僕は顔を伏せた。その先には頑丈なオオバコが座っている。
私を見たのは初めてかね、と老紳士が訊いても、僕は笑ったままであった。紳士は目すら合わなかったにもかかわらず顎に手をやって満足そうに二、三度頷き、
「そうとも、そうとも。私を二度見ることができるものは、この世に二人といないのだからね……」
ふっふっふっと、不敵さの欠けた滑稽な笑いをして、
「じゃあそういうことで、後のことは頼んだぞ。今年は君が役割を担うのだ」彼はぴょーん、ぴょーんと坂を下り、また塀の中に消えていった。
人影が消えた坂道に凍えるような風が吹いた。撃ち落とされたように蛾がよろよろと去っていき、その影を夜闇の中へ溶かした。
日が昇った頃に窓を、まだ化粧いらずの愛らしさを保っている少女が開け、腕を抱えて縮こまって震え、
「寒っ、いきなり寒くなったなあ」と、白い息を外に吐き出した。「まだ秋っぽいことやりきってないのに」
これから坂道に霜が降り始める季節だ。そして路面は凍り、獲物を飲み込むようないい滑りをした罠に様変わりするのだ。
この道を通る人間は誰もがそのようなイメージを持って日々共生している。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/11/28(木) 23:31:26.56 ID:Bl/80ASb0
>>18「FINAL ANSWER」
二回目の見直しを済ませて、自信のない一問を睨みつける。これが間違っているという確証も、これが間違っていないという自認もない。
答えを変えても変えなくても頭を抱えて後悔しそうである。

「なあ、どうすればいいかな」と鉛筆に話しかける。

「俺に訊かれても困るよ、考える脳がないんだから。尻の消しゴムを使いきるたぁ、大したもんだね」

「迷ったんなら変えちまえ、変えちまえ! どうせお前ごときが一個正解を上乗せしたからって、誰も影響を受けやしないんだよ! そんだから、俺を消費しろい。俺の存在理由を満たしてしまえ、オタンチン!」消しゴムが怒鳴る。

「相も変わらずガラの悪いやっちゃのう」と筆箱。「へなちょこフグリの軟体動物が」

「貴様、偉そうなこと言いやがって、ただじゃ置かねえぞ! 叩き潰してやる!」

「できるものならやってみたまえよ、むしろ君が潰されて、飲み込まれるんだから」

「ねえ、どうすれば……」

「やかましいね、たかが持ち主のくせに」異口同音だった。「君のテストなんか、こっちに取っちゃどうだっていいんだ」
冷酷な態度で僕を突き放すと、侃々諤々の騒々しく喧しい激論が机の上で繰り広げられた。

結局答えは何に確定させればいいんだ? 最終的な判断は僕には下しかねるぞ。

そこに試験官がやってきて僕を見下ろしてきた。威圧感が背中から滲んできている。
「どうかしましたか。僕何もやってませんよ」

いいや、と机の上を指さし、「お前が持ち主なら、こいつらを黙らせろ」消しゴムと筆箱がルール無用の取っ組み合いをしている。

「これは僕の責任ですか」
「そりゃそうだ、お前の持ち物だからな」他のクラスメイトも気になっていたのか、八十の瞳が僕の机を注視している。
「しかしながらですね、彼らは自分たちの自由意思で闘争を始めたわけです。しかもそれは彼らの実存にかかわっている。これは非常に重大な問題です。どうして僕にそれが邪魔できるのでしょう? 僕ができることは、彼らの意志に従うだけです」

反論を行うことで、僕はこの実存問題に自覚的になることができた。彼らが導くこの大問題の答えを妨げられないようにしなくてはならないのだ。

「そうか」と試験官は言い、筆箱たちを一手に机の上から薙いだ! 呆然とした面持ちで筆箱たちは宙を舞い、トマトを磨り潰したような声を立てて動かなくなった。
「そういうことならば、俺はお前を排除しなければならん」試験官は毅然とした態度で言った。

「それならば僕も彼らのために抵抗しなくてはなりません」

「やかましい」それが聞こえると同時に試験官の右手が僕の頭に乗せられるとそれはだんだん下がっていき同時に僕も縦に縮んでいった。
座高が半分くらいになると脚に反対の手を持っていき僕を三つ折りにして、そのあとは小枝を折る要領で掌にすべてが収まるように縮め、ぎゅっと強く握った。

それを開くとクシャクシャの茶色っぽい塊になり、試験官はそれを教室に備えつけられたごみ箱に捨てた。

「さあ済んだぞ、みんな安心してくれ」
それを聞いた生徒たちはあはは、ととても平和な笑いを振りまいた。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/28(木) 23:34:56.11 ID:Bl/80ASb0
>>20 >>21
すみません色々忘れました……
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/29(金) 00:19:24.36 ID:kHPj3Otx0
前スレ>>963「青い家」
美しく真っ赤な鯉が手に入ったので、旧友の青山氏にプレゼントしようと彼の家を訪れた。

そこはなんというか、言葉に表しがたいほどの青で埋め尽くされていた。いったい何があったのだろうと思いつつ開け放しの門扉を抜けると、突然池から真っ青な河童が飛び上がって、
「やあやあここをどこと心得る、かの青色大臣青山氏の邸宅であるぞ」

そんなに彼は偉くなっていたのかと思い、「ならばこれで錦の御旗代わりに」

「そんなものが許されるか! 青色大臣に赤い鯉など、ふざけるんじゃない」歯ぎしりの音がここまで聞こえてきて、尋常でない憤怒のようだ。

「こうしてやる、えい!」と河童が腕を振ると鯉は舞い上がって膨張して立派な鯉幟になって隣家の庭に雄々しくたなびき、私は凝縮して変形して固い肌が生み出され、アメリカ式の青いポストとなって青山氏の邸宅の目の前に据えつけられた。

五歳くらいの一枚のはがきを持った女の子がそれを見つけて不思議そうな目で二、三度つつくと、ちがーう! と泣きながら走り去った。

前スレ>>964「チキンレース」
「もう逃げたりはしないな」と髪の逆立った青年が言い、「もちろん、この期に及んで逃げたりしないさ」と金髪の青年は言った。

「じゃあ取り決め通り、俺たちはあの崖に向かって走る。それは俺たちがブレーキを引くのではなく、メーターに進む距離を設定して、よりギリギリで止まることができた方を勝ちとする。正確な距離はわからない。一キロ以上あるからかなり難しい。が、それでもどれだけ攻めることができるか、試してやろうじゃないか!」
「あたぼうよ!」


「設定できたか?」「ああ、完璧だ。何キロくらいにした?」「バカ、言うわけないだろう。それも秘密にしておくのが醍醐味ってもんだ」「それもそうだな」「よし、じゃあ行くぞ! アイマスクをして暗闇の恐怖にも耐えるんだ!」

彼らは出発した。砂埃を上げて、崖へと驀進していく。果たしてどちらが勝つのだろう。いずれにせよ、終われば彼らはがっちりと、漢の握手を交わすだろう。

ところで、彼らが進む距離を入力して設定したメーター、その片隅には「Mile」と書かれていたという。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/29(金) 09:45:14.54 ID:kHPj3Otx0
前スレ>>966「初めての夜」

「お前、初めてじゃないだろ」少年は少女の胴に両腕を回したまま言った。
「どうして?」少女は誘うような甘い声で訊いた。「どこが違うっていうの」

「いやに手馴れているんだよ、どうして初めて同士がこんなにうまく実行できるんだ。反応も喜ばせようとしてるのが自然な形で織り込まれているし」
「だったら君もそうじゃない? スムーズに本命に入りすぎ。準備もすごく上手だった」
「何を、俺のことまで疑うか。今浮上した疑惑はお前のことだ。俺じゃない」
「あれ? 答えたくない理由でもあるのかな? んふふ、君も初めてだから緊張する、って言ってたよね。あっれれー、おかしいなあ」
ケタケタと笑いながら少女は言った。先ほどと同じ態勢のまま少年は言い返せずに並行しながら彼女を睥睨し、少女は流し目で彼の強い律動を誘っている。

「うるさいなあ、アバズレ」
「強がっちゃ弱く見えるゾ、チェリーボーイ」

小馬鹿にしたように彼女は莞爾した。

この一瞬を切り取った写真は、平穏な日常の温かい一コマになるはずだったろう。

しかし間の悪いことに、彼女はあえて事実を外したこと、つまり彼の主張を認める旨を口にした。
つまりは彼をからかって自身の下に据えたのである。

「いい加減にしろ、もともとお前のは伸びて緩かったんだ、おかしいと思ったんだよ!」
彼は激しく罵って彼女を撃った。その後彼女の核に重大な一撃を加えたという。


>>976「さよならエデン」

腹が減った、一枚の穴だらけの襤褸を着た二人の男女が荒漠な草原の真ん中に一本の木を見つけた。そこには真っ赤な実が二つなっている。
太陽のような、狂気的に鮮やかな赤だ。

「果物があるな」
「あるね、それもすごくおいしそうに熟れている」
「どうする? 腹が減ってしょうがないんだ、俺たちは。あれを食べなきゃまたひもじい思いをして歩かなきゃいけなくなる」
「でもあの変な天の声はこう言ってた。気になる赤い実は食べてはならぬ。それはお前たちを縛ってしまう悪魔の実だ。お前たちには永続する罰を受けてもらわねばならなくなる」
「だがそういったところでだね、食べなきゃ死んでしまうんだよ。あれを手に取るしかもう生きる術は」

彼女は考える仕草をした。右腋に抱えられた左腕に、破れた襤褸からこぼれた乳房が乗る。外性器は両者ともにまだ残る襤褸が隠してくれていた。
「罰は怖いね。でも、この感情はどういったことだろう……」

ぐう、と鳴ったのに二人が気づいたのはそれが響いてから数秒経ってからだった。
「何だ今のは」
「訊かれても困る。私だってわかんない」
二人して見つめあい、首をひねった。

さあ、どうするか、その話題に戻った時には、二人の両手にはその身の残骸の芯が握られていた。
「あれ、いつの間に」
「おかしいな、手に取った覚えもないよね」
「どうして食べてしまったのだろう」
「気づいたけど、空腹が紛れてるよ。厭なゴロゴロ具合がなくなってる」
「ああ、そうだな。しかしこの格好はひどいな。誘っているようなもんじゃないか」
「そうしてもいいのよ」

敏感なところに触手を伸ばしあって堪能すると、彼らには翌日への憂鬱が肩に積もった。
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