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麻子「……華、さん」 華「はい?
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65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/13(月) 01:10:23.50 ID:j/ROv3cf0
−麻子の部屋、風呂−
ザバァ…
麻子(裸)「……ときどき華さんの行動力が恐ろしくなる……」
華(裸)「アクティブに動かないと新しい境地にはたどり着けませんからね」
麻子「だからってわざわざ一緒に家の狭い湯船に浸かることないだろう」
華「学校の浴場でよく一緒に入ってるじゃないですか」
麻子「こんなに密着することないだろ! こう狭いと当たるんだ、いろいろと……」
華「胸のお話ですか?」
麻子「何気に沙織よりデカいだろう。なんなんだそれは、何が詰まってるんだ」ムギュ
華「んっ! ちょっと麻子さんいきなり……!」
麻子「同じ女と思えん。見てみろこの大平原のような私の体を」
華「でも小さい方が敏感だと聞いたことはありますけど……」
麻子「……なんでそんなこと知ってる?」
華「わ、わたくしだって人並みの興味はありますから。インターネットで色々見ることもあります」
麻子「あまりそういう情報を鵜呑みにしないようにな。華さんは出所不明の世俗情報の真偽に疎そうだ」
華「まぁっ。わたくしだって分別を考えながら物事を見るくらいできますよ」
麻子「どうだか」ジー
華「なんだか沙織さんと扱い方が似てきましたね」ムー
麻子「それくらい気の置けない感覚になったってことだろ。あんな……」
華「?」
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/13(月) 01:15:06.21 ID:j/ROv3cf0
麻子「……キスしたのは初めてだ」
華「……わたくしもです。本当に……気づいたらしてしまっていたのですけど」
麻子「ずいぶん強引だったな」
華「お嫌でしたか?」
麻子「……嫌じゃ、なかった。大事にしてくれてるんだなって感じたから……って改めて言わせるな恥ずかしい」
華「言われるのも少し恥ずかしいですね」
麻子「あとカツの味がした」
華「そういうことは言わなくていいんです!!」
麻子「私だって親子丼の味がしただろう」
華「……しましたけど」
麻子「一緒に色んなことを味わいたいって言ってたからよかったじゃないか」
華「あれはそういう意味ではなくて……もう! せっかくわたくしが覚悟してこうしてるのに、変なことばっかり」
麻子「……まぁ、なんだ。不安の裏返しみたいなものだから許せ」
華「? 不安なんですか?」
麻子「女同士で人に言えないことしようとしてるんだ。ましてこんな貧相な体でな。不安にもなる……」
華「……」
麻子「……」
華「……ぷふっ」
麻子「!? な、なにがおかしい!?」
華「いえっ……麻子さんもそういうこと気にするんだなって……」
麻子「ぐぬぬ……自分が『力』を持ってるからってお前……!」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/13(月) 01:18:15.07 ID:j/ROv3cf0
−オフトゥン−
パチッ バサッ
華(寝間着)「麻子さんそろそろ機嫌治してください〜」
麻子(寝間着)「うるさい。こんな幼児体型いじくっても何も楽しくないだろう」
華「別に体型を揶揄したつもりは……」
麻子「そもそも華さんのがおかしいんだ。あんだけ食べて胸にしか栄養が行ってないのか。沙織の腹回りを見習え」
華「わたくしに沙織さんのようなワガママボディになれと?」
麻子「……………………なんかそれはそれで嫌だな」
華「でしょう。というか麻子さんは食べなさすぎです。食べるときはケーキばっかり。今のうちにちゃんと栄養付けないと体が育ちませんよ」
麻子「おばあみたいなこと言うんじゃない」
華「あなたが大事だから色々言うんです」
麻子「……」
華「……」
麻子「……なんでそんなに私が良いんだ」ゴソ
華「なぜといわれましても……そういう気持ちになってしまったから、としか」
麻子「……そういう愛情をもらうのは素直にうれしい。が、私から華さんに何をあげられるのかわからない。私はこういう時どうすればいいんだ?」
華「うーん……そうですねぇ……わたくしも経験がないのでよくわかりませんけれど……」
麻子「……」
華「もし麻子さんがわたくしに愛情をもってくださっているなら……どんな形でもいいのでわたくしにそれを伝えてくだされば、嬉しいです」
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/13(月) 01:29:07.50 ID:j/ROv3cf0
麻子「…………わかった」ゴソ
華「あっ……(麻子さんが、わたくしの上に……)」
麻子「……華さん」
華「は、はい」
麻子「私なんかと……一緒にいようとしてくれてありがとう。華さんがそばにいてくれる限り、私も華さんのこと大事にする」
華「……はい。わたくしも同じ気持ちですよ」
麻子「……」ギュ
華「麻子さん?」
麻子「……私より先に死なないで。私も絶対華さんより先に死んだりしない。付き合う付き合わないとか関係ない。私は華さんを――」
華「……」ギュウ
麻子「華さんを……離したくない」
華「……わたくしも麻子さんから離れません。この先どういう関係になろうと……あなたを独りにはしません。約束します」
麻子「ありがと……」
華「ふふ……なんだか婚姻の契りみたいになってしまいましたね」
麻子「……そういわれるとなんだか不安になるな。その手の宣誓は得てして最後まで守られない」
華「それはわたくしたち次第です……んっ」
麻子「ん……」
華「……なんにせよこれでわたくしの人生には麻子さんという解き難い結び目ができました。ありがとうございます」
麻子「まるで故郷を去る兵士みたいな言い方だな」
華「そうですね。避けられぬ家業継承と結婚生活がわたくしの戦争なのかも」
麻子「私から応援には行けないぞ」
華「わたくしの方から会いに行きます」
麻子「浮気する気満々だな」
華「女同士のは浮気に入りません。たぶん」
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/13(月) 01:32:41.98 ID:j/ROv3cf0
麻子「……もう少しこうしてていいか」
華「もちろん」
麻子「ホントはもっといろいろシたかったんじゃないのか。後ろめたいこと」
華「まぁ……今のやり取りも十分後ろめたい会話ですから」
麻子「やっぱり自覚あるだろ」
華「うふふ」
麻子「……あったかい」
華「麻子さんは少しひんやりしてますね」
麻子「私は脂肪が少ないからな」
華「さっきの仕返しですか?」
麻子「ふふっ」
華「もうっ……」
………
……
…
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/13(月) 01:35:06.47 ID:j/ROv3cf0
−某日、喫茶店−
沙織「う〜ん……」
みほ「どうしたの沙織さん?」
優花里「また何か恋のお悩みですかぁ?」
沙織「まぁそうとも言えるんだけど……」
麻子「ケーキおかわり」モグモグ
華「わたくしもパフェを追加で……」
沙織「麻子と華がなんやかんやあってからもう結構経つじゃん?」
みほ「あぁ、そういえばそうだね」
優花里「それがどうかしましたか?」
沙織「いや、二人とも気にならないの? あれからどうなったとか……」
麻子「別にどうもない」
沙織「お互い好き同士なのに何ヶ月もなにもないことないでしょ!? あんたら見てても本当に今までとなんにも変わらないじゃん!」
華「と言われましても……」
みほ「二人ともまだ付き合ってるわけじゃないんだし、変わらなくても別にいいんじゃ……」
沙織「甘い! ケーキより甘いよみぽりん! 友達以上恋人未満の関係に甘んじて結局その先にいけないカップル候補がどれだけいると思ってるの!」
優花里「だからって無理して恋人みたいにする必要ないと思いますけど……」
麻子「というか当事者じゃないお前がなんでそんなに焦ってるんだ」
沙織「だってぇ……せっかく花の高校生活で好きな人と過ごせるんだよ? 私らのことは気にしないで二人きりでも……」
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/13(月) 01:39:43.36 ID:j/ROv3cf0
華「わたくしも麻子さんも、みなさんと一緒に過ごす時間がとても大切なのは同じですから。それは何があっても変わりませんわ」
みほ「そういってくれると嬉しいなぁ。私もみんなと過ごすのが大好きだから」
優花里「まぁ正直はじめは私たちもちょっとだけ気を遣ってましたけど、お二人がいつも通りだからこうして気兼ねなく遊びに出かけられますもんね」
麻子「いまさら気遣いが必要な仲でもないだろ、うちのチームは」
沙織「あんたがそれでいいならいいんだけどさぁ。もうちょっと二人のラブいところとかも見てみたかったなーって」ヌフフ
麻子「エロオヤジかお前は」
華「さすがに人の目がある場所でそんなことはしませんよ」
沙織「じゃあ人の目がなかったら?」
華「それは……」チラ
麻子「……お前には教えん」
沙織「なんでよもー!!」
みほ「沙織さん。どうどう」
優花里「自身に縁がないだけに恋愛沙汰に飢えてますね武部殿は……」
麻子「端迷惑なやつだ」
華「まぁまぁ。沙織さんも甘いもの食べましょう」
沙織「はぅ……私も当事者になってみたい……そいでみんなにステキなコイバナを披露したい……」
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/13(月) 01:43:58.84 ID:j/ROv3cf0
アリガトゴザイマシター
みほ「じゃあ明日……は、日曜だから戦車道もお休みかぁ。また月曜日にね」
麻子「ん」
華「ではわたくしたちはここで」
沙織「ばいばーい」
スタスタ…
優花里「……さっきはああ言ってましたけど、最近はもはや意思疎通無しで一緒に帰ってますよね、お二人」
沙織「けっこう素でやってるよね……私らといる時はホントにいつも通りなんだけど」
みほ「いいなぁ。阿吽の呼吸というか、通じ合ってるというか……ホントにお互い想いあってるんだろうね」
沙織「きっかけはひょんなことからだったけど、なんだかんだお似合いなのかしら。両方マイペースだし」
優花里「西住殿、黒森峰でもあんな感じの女性カップルはいたんですか?」
みほ「うーんそれっぽい人たちはいたけど、カップルだったかどうか……」
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/13(月) 01:49:38.29 ID:j/ROv3cf0
華「もうすっかり冷え込んできましたね」
麻子「学園艦の位置も北緯寄りになってきたからな。今日の夜辺りから氷点下になるらしいぞ」
華「ではそろそろお布団も厚めにしないと」ギュ
麻子「今日も泊まる気か?」ギュ
華「あら、ウチのお布団を替えようというお話ですよ?」
麻子「……じゃあ私がそっちに行く」
華「ふふ、いいですよ。晩御飯はどうしましょうか」
麻子「なんか適当に作ってくれ」
華「わたくしが?」
麻子「多少は自炊に慣れておいても損はなかろう」
華「実家ではお手伝いさんが食事の用意をしてくれるので……」
麻子「将来旦那さんに手料理を求められたらどうするんだ」
華「尊い犠牲になっていただくしか」
麻子「私は犠牲になるのはゴメンだ。一緒に作るか」
華「そうしましょう」
麻子「……将来か。どうなるんだろうな、私たちは」
華「前にも言いましたけど、わたくしたち次第です。今のこの時間ひとつひとつが未来になっていくんですから」
麻子「詩的な表現だな。学生の身分としてはとりあえず差し迫った問題があるだろう」
華「大学受験ですか?」
麻子「三年の人たちはもう模試の結果が出るころだろう。たぶん……河嶋先輩あたりはこれから大変なことになるんじゃないか」
華「想像に難くありませんね……」
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/13(月) 01:51:30.51 ID:j/ROv3cf0
麻子「華さんは進路考えてるのか?」
華「いずれ家業を継ぐのは間違いないですが……それまではまだ戦車道に触れていたい気持ちもありますから、戦車道のある大学を探そうかしら、とか」
麻子「なるほど。私は法学部に入るつもりだから戦車道については特にこだわりはないな」
華「なぜ法学部に?」
麻子「大学を出るころくらいにはたぶん……おばあとはお別れすることになる。そうなったら私には身寄りがないからな。法律を勉強して自分の身を守らなきゃならん」
華「……そうですか」ギュ
麻子「心配か?」
華「独りになった時、麻子さんがわたくしたちを頼って下さるかどうかが」
麻子「……ぼちぼち頼りにはするかもしれない」
華「わたくしには麻子さんのためにお部屋をご用意する算段もありますよ?」
麻子「逢引用の部屋にする気か!?」
華「それはそれで燃える関係じゃありませんか」
麻子「……今後の五十鈴流が心配になる発言はよせ」
華「こんな他愛のないおしゃべりができるのも今だけですから。ご容赦ください」
麻子「全く……」
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/13(月) 01:53:54.86 ID:j/ROv3cf0
ピュウウゥゥゥ…
麻子「……寒い。早く帰ろう」
華「ですね」
麻子「……華、さん」
華「はい?」
麻子「……なんでもない」ギュ
華「ふふ……変な麻子」
麻子「! お、おいいま……」
華「どうかしました麻子さん?」
麻子「むぅ……」
麻子「(くそ……この人にはなぜだか一生勝てそうにない……)」
おわり
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/01/13(月) 04:18:56.16 ID:evlg7eJv0
素晴らしい
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/01/13(月) 20:13:35.98 ID:QtGsDQcV0
最高だった
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/01/14(火) 07:26:35.34 ID:EMvCT1j50
とても……とても良かった
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/01/14(火) 19:29:04.20 ID:ma2pLiRQo
尊い…
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