【安価】で異世界なろう転生

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 14:32:58.87 ID:+2zekXHdO

危機が迫ってる時や死霊術師みたいな…ああいう危険な相手には使って良いと思うけど、普段使いとしては勝手が悪い。


待てよ。どうせ寝てしまうなら今のうちに使役解除とやらをやってしまおう。
俺は起き上がり、使役紋章を探す。



男「んん…?どこだ…?」



手鏡を取りに行き、顔やらを見るが肌が見えている部分には無い。
次に服の袖を捲ると、左手の前腕の表側に刺青の様な紋章がある。
やだ、かっこいい。


早速スライドしようとした時、俺は思いとどまる。
そうだ、3日も寝込むなら書き置きしておかなきゃな。


またシスターに怒られてしまう。
俺は書き置きを残す為に、備品の紙とペンを取り出した。




─────



男「ん…」


シスター「あ、起きた?」



目を開けると、そこにはいつもと何ら変わらぬシスターがベットに腰掛けて俺を見下ろしていた。



侍「よっ!」


男「侍…?え、侍!?」



真横で椅子に座り、腹部を刺されて重体だったはずの侍が居て俺は飛び起きた。
ついでにベットに腰掛けていたシスターは変な声を出して転げ落ちる。


いくらなんでも動くには早すぎないか?
あ、でも3日経ったのか…いや3日だけじゃん!



男「き、傷は…?もう治ったの?大丈夫?」


侍「心配かけちまったよな。ほれ、この通り」



侍は着物をずらして刺されたであろう腹部を俺に見せてくる。
サラシの如く巻かれた包帯の下には傷口があるそうだが、数日激しい運動をしなければ完治するそうだ。
数日て……異世界の治癒魔法ってのは凄いな。



男「そ、そっか…良かったぁ…」


侍「あん時は悪かった、怒鳴っちまったよな。すまん」



両膝に手を置き、深々と頭を下げる侍。



男「いや、良いんだよ。アイツと何があったかなんて聞かないし、行為を責めたりはしないけど」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 14:37:37.33 ID:+2zekXHdO

侍「悪ぃ…」


男「ただ…」


侍「…ただ?」



顔を上げる侍に、俺は拳を突き出す。



男「つ、次はぶっ飛ばせよ」



ちょっと照れくさく言う俺に、一瞬呆気に取られた侍はすぐに歯を見せて笑い、拳を俺に合わせてくれる。



侍「応!」



クサい事やったなと互いに笑い合い、いきなり起き上がるなとさっきからポカポカ俺を叩くシスターの手が止まった。



シスター「あ、そうだ勇者様。風姫様との謁見明日になったけど、大丈夫?」


男「うん、問題ないよ」


シスター「そ、良かった。じゃ、ご飯食べにいこー♪」



飯、という単語を聞いた途端に俺の腹の音が大きく鳴る。
そりゃそうだよな、3日食ってないんだしな。



侍「おーおー、すげぇ音だな」


男「意識したら腹が…早く、飯を……!」


シスター「あはは!じゃ、今日は枝木の上にあるお店ね!」



枝木って少し距離あるよね?腹減って死にそうなんだけど?と口には出さず、俺達は宿を後にした。



─────



翌日。
王城は再建中になっていて、今は入れないそうだ。原因は俺だけど。
風姫と会う場所は、大木の樹頭付近に手を加えた屋外テラスみたいな所。


景色が良く、中心にあるので都全てが見渡せる。
観光気分の俺達の元へ、眼鏡を掛けた女性が近付いて来ていて、俺と目が合う。

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 14:40:35.95 ID:+2zekXHdO

何となく会釈をすると、シスター達も気が付いたみたいだ。



シスター「あっ!風侍女さんだ!やだ、全然変わってないー!」



シスターは小走りで風侍女の前まで行き、俺と侍はシスターが可愛い系ならあの人は美人系だねとか小声で話ながら後に続く。



風侍女「ありがとうございます。シスターさんもお元気で何よりです」


シスター「あれから良い人は見つかったの?そろそろ4──じゅっ!?」



何かを言いかけたシスターの口を塞ぐのではなく、鷲掴む風侍女。



シスター「いひゃい!いひゃああい!」


風侍女「あら…ごめんなさい。悪い虫がいたので…フフ」



あ、笑顔が怖いや。
解放されたシスターは両頬を摩って唸る。



風侍女「失礼致しました。お初にお目にかかります。勇者様。侍様。この度はご迷惑をお掛け致しまして申し訳御座いません」


男「いや迷惑だなんてそんな!仕方のない事と言うか…ね!?」


侍「ん、ああ。流石にアレは災害みたいなモンだろ。それに怪我の手配もしてくれたしな、助かったぜ」


風侍女「寛大な心遣い…感謝致します。それでは、風姫様の元へご案内致します」



風侍女の後について行き、俺はいよいよ風姫とのご対面に少し緊張する。


そうだ、たしかシスターは顔見知りなんだよな。
何か聞いてみよう。




安価下
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 16:11:57.88 ID:UuKj6IYc0
謁見に際しての注意事項を聞いておく(トラウマ等)
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 17:08:33.42 ID:q9mnJIf6O
黒龍強いけど重いデメリット持ちな上に無差別攻撃か……
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 23:25:15.28 ID:TPPrwkbb0
過度にTUEEEEしようとするとデメリットもついてくる感じか
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/02(日) 08:55:33.91 ID:x2zuScLZO
攻略本さんの影が薄くなるぐらい汎用性が高いものは出せないんだろう
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/02(日) 08:58:54.27 ID:htBaUVq10
こんなクソ使いづらいのが攻略本の購入特典と思うとなんか草
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/02(日) 19:25:30.69 ID:DTeVgxHq0

男「ねぇねぇ」



俺は前を歩くシスターに小声で話しかけると、シスターも同調してくれて小声で何?と返してくれる。



男「俺こうやって偉い人に会いに行くとか初めて何だけど…」


シスター「初めてだっけ。光の都で王様と会ってたよね?」


男「あれは不可抗力というか何と言うか……謁見とはまた違う…礼節は当たり前として注意事項とかない?」


シスター「注意…あ、あるかも」


男「教えて教えて」


シスター「あのね、風姫様はすーっっごい人見知りであまり表には出ないんだけど、風姫様が姿を見せたら絶対に驚いちゃだめだからね」


男「それはなんで…?」


シスター「風姫様はね、希少種族の"エルフ"なの」


男「へぇ、そうなんだ」


シスター「……あれ?それだけ?」


男「ん?ああ、エルフって良いよね」



シスターは俺のその様子を見て笑うが、そんなに驚く内容なのか。


耳長族のエルフなんぞ俺からしたら日常的にアニメや漫画で見てきたが、この世界じゃ希少種だから見たら驚く様な物なのかな。



シスター「あはは、その感じなら平気そうだね」


風侍女「到着致しました」



案内されたのは屋外テラスに設置された木造小屋。
言っちゃ悪いがこんな所にお姫様が居るのか。
まぁ俺のせいだけど。


風侍女は扉を開け、中に入るよう諭す。
室内も外見通りというか、質素な部屋だ。


目の前にある長テーブルの向かいには場違いな大きい背長椅子があり、俺達は手前の木の椅子に横並びに腰掛けて風姫を待つ。


風侍女は背長椅子の脇に立ち、しばらく無言の時間が続く。
場の空気に呑まれて俺は沈黙するが、侍とシスターは間にいる俺を介して野営時の飯の内容等を話していた。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/03(月) 13:17:23.31 ID:BkjVffYPO

風侍女「姫様。勇者様方がお見えになられてますよ」


風姫「う、うん…わかってる…けど…」



正面の背長椅子から可愛い声がする。
声はするが肝心の風姫の姿が見当たらない。



シスター「風姫様ー!久しぶり!大丈夫だよーこの人達は良い人だよー」


風姫「シスターちゃん!……あぅ…でも…」



背長椅子の下の方からチラリと金髪と尖った耳が見えた。あの位置に耳があるって事は背が低いのかな。
というか本当に人見知りなんだな。



風侍女「……はぁ」



風侍女はやれやれといった感じで首を振り、背長椅子の後ろに居るであろう風姫に手を伸ばす。



風姫「え、ちょっ!なに、や、やめ!」


風侍女「諦めなさい、これでは話が進みませんよ」



両脇を持ち上げられて出てきたのは金髪の小さい女の子。
その耳はしっかりと長く、先は尖っている。

予想通りというか、本当にエルフなんだなという感じだ。
風姫は風侍女により無理矢理椅子に座らされ、真っ赤を両手で隠してしまう。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/03(月) 13:18:19.58 ID:BkjVffYPO

侍「へぇ、こんな可愛らしいお嬢ちゃんが風姫様なのか」


風姫「か、かわ…!うぅ…はいぃ…」



男「は、初めまして…?風姫様、お逢い出来て光栄です。自分は男と言います」


風姫「か、風姫と申しますぅぅ!」



以前顔を隠したままの風姫に俺はシスターを見やると、あははとシスターは笑い、いつもこんなんだよと言う。



シスター「相変わらずだね。お姫様なんだからもう少し人慣れしなきゃだめだよ?」


風姫「シスターちゃぁん…わ、わかってるんだけど…でもぉ…」


風侍女「姫様」


風姫「ひゃい!」


風侍女「勇者様方も暇ではありませんので、早く精霊を呼び出してはいかがですか」


風姫「う、うん…そうだよね、うん」



顔を隠していた両手をついに下ろし、幼子の様な顔付きがハッキリとわかる。
胸の前に手で空間を空けて合わせると、その空間に風が収束し、塊が生まれる。


次に出来上がったその塊を潰すと、風姫の上辺りに妖精?の様な半透明の女の子が現れる。



風精霊「んにゃ…あれ、呼んだ?」


風姫「あ、寝てたの…ご、ごめんね」


風精霊「もうアレ使うの?……ってそうじゃ無さそうだね。へぇ……キミが次の勇者かな?」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/03(月) 13:24:26.56 ID:BkjVffYPO

風精霊は興味深そうに俺を見る。
関係ないが、空中で両足の裏を合わせて座る風精霊がスカートじゃないのは実に残念だ。



男「はい、まぁ…初めまして」


風精霊「あーあ。ついにこの時が来ちゃったかー、要件は契約者の更新でしょ?大丈夫?あたし居なくて平気?風姫ちゃん」


風姫「だ、大丈夫だよ!………たぶん」


風精霊「あはは!ま、あんたが居れば大丈夫か」


風侍女「……」



風精霊は流し目に風侍女を見ると、彼女は無言で頭を下げる。



風精霊「さてと、契約にあたっての説明だけど…あ、契約って知ってる?勇者くん」






1 知らないけどバッチリ(攻略本を叩いて主張)
2 知りません
3 自由安価

安価下


119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/03(月) 13:48:19.90 ID:xfPIPBOI0
2
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/03(月) 14:10:11.65 ID:AYB5dY0e0
知ったかぶりはよくないもんね
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 12:02:08.76 ID:fToJ3SX4O

男「いえ、契約については何も…」


風精霊「そっかそっか。じゃあかるーく説明するね」


男「お願いします」


風精霊「まず契約ってのは2種類あるんだけど、ひとつはお姫様達と結んでる《魔力契約》」


風精霊「あたし達からするとね、魔力って一人一人"味"が違うんだ。その中でも膨大で質が良くて生成の早いお姫様としか結べないのが魔力契約」


風精霊「次に勇者と聖女が持つ適正があって初めて結べる《元素契約》」


風精霊「これが最高に美味しくてね!適正を持ってると四大元素を無限生成出来るから、あたし達の力も最大限に活用出来る。それが元素契約」


男「……」


風精霊「ん?難しい顔してるけど、何かわからない事があったかな?」


男「あ、いえ…」



俺は適正という言葉を聞いて、攻略本に書かれたシスターの概要欄を思い出す。
特に最後の記述……《適正のない勇者に代わり》……という部分だ。


攻略本の通りなら俺は風精霊の言う元素契約は俺は結べないが、聖女であるシスターなら結べるのだろう。


不自然な空白があったにしろ、それは文章から読み取れる内容だ。
ただ、代償とも書いてあったが風精霊はその事には触れていない。






1 代償について聞く
2 契約の内容はわかった、契約しよう
3 自由安価
安価下


122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 12:02:53.63 ID:cqGqi82DO
1
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 13:12:45.92 ID:aBcVEfSz0
なろう主人公たるもの代償みたいなマイナス要素は、無効化するか逆に利用してむしろプラスに働くようにしてこそだよな
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:27:54.16 ID:fToJ3SX4O

俺は横目でシスターを見ると、たまたま目が合うが、すぐに目を逸らされた。
なんでだ。


まぁいい念の為…念の為だ。
一応聞いておこう。



男「1つ……良いですか」


風精霊「うんうん、何かな?」


男「契約による代償は…無いんですか」


風精霊「……へぇ?」



話している間は笑顔を絶やさなかった風精霊から笑顔が消えた。
訝しむ様な目で俺を見てくる。



風姫「…代償…?」


風精霊「何も知らないって言ってたのに……何で誰にも言った事の無い"その事"を知ってるのかな?勇者くん」


男「……それは」



これは…見抜かれているな。
攻略本の事は伏せてしまったが、代償というのは風姫の反応を見る限り、知られていないみたいだ。



風精霊「ま、良いよ。本当は契約者だけが知る事なんだけど、今回は特別。ご察しの通り、実はもう1つ契約があるんだ。これは物凄くレアで、滅多に見れる物じゃない。それはね、適正を持たない"器"だけ持っている者が結べる《依代契約》」


男「依代契約…ですか」


風精霊「契約の対価として主に五感と身体機能を失う。これは選べる物でも無いし、あたし達にも何が代償となるのかはわからない。これが依代契約」



やはりそういう系か。
定番っちゃ定番だけど。
でも、これから他の精霊とも結ぶとなると…。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:28:32.41 ID:fToJ3SX4O

風精霊「あはは!そんな深刻な顔をしないでよ。たしかに依代契約は対価が大きいけど、器が完成すれば元素契約になるから安心して」


男「そうなんですか?」


風精霊「うんうん。さて、説明は終わりだよ。ちゃちゃっと契約しちゃおうか」



風精霊は体勢を直すと、シスターの眼前へと近付いて手を差し出す。
俺はわかっていても、他の者はそうはいかない。
その風精霊の行動に皆驚いている。


その中でも特にシスターが一番驚いていた。



風姫「えっ……シスターちゃん…?」


風侍女「何を…」


侍「…どういう事だ?」


シスター「な、なんで…?だって私…」


風精霊「察しが悪いな〜勇者くんの質問の意図からわかるでしょ?キミが"聖女"なんだよ。器は未完成だけどね」


男「……」


風精霊「ふふ、やっぱり勇者くんは知ってたんだね」


侍「お、おい…それってつまり依代契約ってやつじゃ…」


風精霊「うん、そうだよ」


風姫「シスターちゃんが…?ほんとに…?」


風侍女「…大丈夫なのですか?何が対価に選ばれるかわからないのですよ」


シスター「…大丈夫」


シスター「えへへ……私…やっぱり…聖女なんだ…ちゃんと……」



聖女と認められて、どこか嬉しそうにするシスターを見て俺は疑問に思った。
前に自分は聖女だって騒いていた筈なのに、何でそんなに喜ぶ?



風精霊「あくまで器、だからね。この契約じゃ四大が揃うまであたしの力は使えないし、繋ぎ止めておくってだけのイメージが妥当かな」


シスター「う、うん…!それでも良い!」


侍「待て待て、勇者じゃダメなのか?嬢ちゃんにそんな契約を負わせるのか?」


風精霊「ここまで来て察しが悪いとは…呆れるね。この勇者くんには適正も、器も、何も無いって事だよ」


侍「何?だがこいつは…」


風精霊「たしかに勇者としての"資格"は持ってるみたいだけど、契約者としての"資格"があるかどうかは別だよ。まぁ勇者が適正を持ってないなんて初めてだけど」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:29:12.52 ID:fToJ3SX4O
undefined
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:30:14.28 ID:fToJ3SX4O

侍「む……そうなのか」


男「ごめんシスター。俺の代わりに契約──」
シスター「良いの!」


男「…?」


シスター「これが…私の"役割"だから大丈夫!謝らないで…ね?」


男「……うん。わかったよ」


シスター「良し!じゃあ、早速結ぼ!契約!」


風精霊「あはは、怖くないんだ?良いね、気に入ったよキミ……いや、シスター」


風精霊「これから宜しく、ちょっとビックリするけど我慢してね」


シスター「こちらこそ!」



差し出された風精霊の手を取るシスター。
すると風精霊はシスターを引き寄せ立ち上がらせ、口付けをする。



シスター「んんーっ!?」


男「なん…だと…!?」


侍「契約の仕方よ」



風姫はキャーと言いながら風侍女に目を塞がれている。
口付けを終えた風精霊は舌なめずりをして、小さく笑う。



風精霊「契約完了♪そしてご馳走様♪」


シスター「……」

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:30:49.64 ID:fToJ3SX4O
シスターは完全に放心状態だ。
適正が無い事をここまで悔しいと思うとは…神託だかなんだか知らないがしっかりしろ!



風精霊「じゃ、しばらくはシスターの中に居るから。用があったら呼んでね〜」



風精霊は俺達に手を振り、存在が消えていった。
待てよ、完了したならば代償は…?
俺はシスターの肩を揺らして正気を取り戻させる。



男「シスター?大丈夫?」


シスター「…はっ!キス!わ、私のふぁーすときすは…!?」


侍「安心しろよ、バッチリ奪われてたぞ」


シスター「安心できるかーっ!」


風姫「だ、大丈夫シスターちゃん!精霊だから不成立だよっ!」


シスター「風姫様!だよね!そうだよね!」


男「それよりどこか異常はない?」


シスター「それよりって何!?代償とファーストキスどっちが大事だと思ってんの!!」


男「えぇー!代償じゃない!?てかキスはノーカンなんでしょ!?」


シスター「うるさぁぁーい!」





風侍女「やれやれ…ですね」



─────



同日、夜。
契約を更新した俺達は翌日にはこの都を発つ。
風の都の最後の飯は宿屋のルームサービスで済ませる事にした。
俺達は飯を食いながら、明日の事を話す。



侍「んで、次は何処に行くよ?」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:31:16.78 ID:fToJ3SX4O
シスター「次は火の都かなー」


男「えーと…そこは何日くらい…?」


シスター「同じくらいだよ」


男「はーー…また5日ですか…」


侍「まぁ良いじゃねぇか。それとも馬車でも借りてくかぁ?」


男「俺は是非そうしたいんだけど…」



俺はチラリとシスターを見る。



シスター「だーめ。勇者様の頼みでも馬車は借りません。だって馬車借りるのって高いんだからね!」


男「この通りよ」


侍「ははは!こりゃぁ諦めるしかねぇわな」


男「火の都…ねぇ。どんな所なんだろ」


侍「どんな所と言われりゃぁ…とにかく暑い」


シスター「私風の都以外行った事無いんだよねー暑いのは知ってるけど。おっさんは行った事あるんだ?」


侍「おっさ──…まぁいい。俺は冒険者だからな、各地はそれなりに回ってるぜ」


シスター「あ、そうだったね。何か名産物とかあるの?」


侍「あるある。火の都と言えば"冷やし麺"は食っとかなきゃな。中毒性でもあんのか、あれはハマるな、うん」


男「冷やし中華とはまた違うのかな」


侍「ちゅうか?なんだそれ」


男「ああ、俺の居たトコにはあったんだよね。冷えた麺に酸味のあるスープと好きな具材を乗せて食べるんだ」


侍「おーそれだよそれ、火の都の冷やし麺まんまだぜ」


男「あ、そうなの?それはちょっと楽しみかも。好きだったし」


シスター「二人だけ知ってるのずるい!私も食べたい!」


男「じゃあ馬車借り───」
シスター「それはダメ」


男「…はい」


侍「ははは。あと暑さ対策はしておけ、あの地域は本当に暑いからな。明日出立の前に涼しい服を買っても良いかもしれんぞ」


男「良いね、いい加減このシャツにジーパンも飽き飽きしてたし」


シスター「そういう事なら…まぁ。勇者様の所じゃ、そういう服装が普通なの?」


男「まぁ割と…普通だと思う」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:34:35.74 ID:fToJ3SX4O

シスター「へぇ〜」


男「変?…かな」


シスター「いやいや!似合ってるよ!珍しいなーって」


侍「確かにな。同じ材料はあっても、こういう風には作ってないさ」


男「やっぱ目立つか。やっぱり明日は服を買おう。この世界らしいやつを」


侍「風の都は薄くて風通しの良いやつが多いからな、丁度良い」


シスター「私は別にこのままでも涼しいけど…どうせなら買っちゃおうかな…良いかな?」


侍「良いんじゃねぇか?女は粧してなんぼだ」


男「」



俺も何か言ってあげよう。
台詞安価

安価下2
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 20:35:36.78 ID:fToJ3SX4O
見切り発車で始めたこれ、思い付いたのポンポン書いちゃうから
設定の矛盾とか生まれたりしそう
安価いつも感謝
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 20:40:44.88 ID:51iq4V800
修道服から着替えるなら、呼び名も変えたほうがいいかな?
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 20:58:01.92 ID:2MfKxVBj0
これは安価として取ったのかしら
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 21:03:56.87 ID:fToJ3SX4O
ん?ってなったので一応
職業=名前
にしちゃってるので、修道服を脱いでもシスター呼びで!
再安価下
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 21:07:59.11 ID:J9uSOu1+O
似合いそうな服を探すの手伝うよ(攻略本の装備欄を見ながら)
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 21:13:50.55 ID:51iq4V800
本気でシスターから呼び名を変えて欲しくて言ったんじゃなくて、単なる話題ふりのつもりだったんだけど、紛らわしかったならごめんね。
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 21:34:04.11 ID:fToJ3SX4O
>>136
確かにそういう風に話題振れた!
字面のまま受け取りすぎて申し訳ない!次は気を付けます!
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 21:37:02.19 ID:/gbRdPPjO
長くならずに済むなら両方拾ってあげてもいいんじゃない?
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 22:12:59.45 ID:fToJ3SX4O

男「修道服から着替えるなら、呼び方も変えた方が良いかな?」


シスター「え?なんで?」


男「だって修道服脱いだらシスターじゃ無くなるじゃん」


シスター「これ脱いだって私がシスターである事には変わらないけどー!」


男「そうだよね。会った時からシスターとしての振る舞いが出来てないから服替えても変わんないか、ははは」


シスター「ちょっとぉ!どーゆー意味なのそれー!」


男「冗談冗談。お詫びに似合いそうな服を探すの手伝うよ」



勇者様意地悪かー!という声を聞きながら俺は攻略本を取り出して、装備一覧を開く。
そこには写真付きの装備だけではなく、一般服は都事にまとめられている。



男「おー…いっぱいある」


シスター「そんなのも載ってるの?それ」


男「わりかし何でも。物なら本当になんでもあるんじゃないかな」


侍「すげぇよなぁそれ。直接目で見なくても良いなんて便利過ぎだ」



最初はなんだこれと思ってた攻略本も、何だかんだで有用性は高い。



シスター「でも私には見えないしなー…」


男「んだよね。シスターは……」



シスターの見た目は黄髪の背中くらいまであるロングヘアに碧眼。
頭巾?は着用していなくて、修道服は髪色と良く合っている。
身体の凹凸も無い訳じゃないが…まぁ普通だな。



シスター「ちょっと、今変な事考えなかった?」


男「まさか、気のせい気のせい」

140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 22:14:26.90 ID:fToJ3SX4O

服のセンスなんて皆無だし、完全に俺の好みになりそうだな。
それに攻略本を見る限り風の都は緑基調が多い。


緑の服に黄髪も似合わない訳では無さそうだが。
涼しい服のとなると腕は出てた方が良いよな…下はスカートにするか…?


俺はしばらく本とにらめっこをし、天啓が降りた。



男「……んー、これにするか」


シスター「え?決まったの?」


男「決まった。明日を楽しみにしてて、多分似合うから」


侍「こりゃ楽しみだな。勇者様直々のお仕立てだぜ?」


シスター「う、嬉しいけど…ちょっと不安…」


男「ははは…自信は無いけど」



─────



翌日。
俺達は旅立ちの前に服飾屋に訪れ、新しい服を新調していた。


俺は昨日見た服が売っているのを確認し、集めてシスターへと手渡して試着待ちをする。



侍「で?一体どんな服にしたんだ?」


男「まぁ見てのお楽しみだよ」



そうこう言ってる間にシスターの試着が終わり、試着室のカーテンが開かれる。






シスターの服装
安価下
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 22:28:40.52 ID:qWyilzUiO
氷結晶のドレス(スキル:暑さ耐性(大))

【説明文】様々な形の氷の結晶が散りばめられたドレス。これを買うか買わないかで火の都周辺の攻略難易度が大きく変わってしまうのだが、この装備を販売している衣服店の場所がとても分かりづらく、事前の情報無しで辿り着くのは最早不可能(場所についてはマップを参照)。
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 22:32:36.45 ID:51iq4V800
さすが攻略本さんだぜ!
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/05(水) 11:39:45.65 ID:Vlsi4CK2O

開かれたカーテンの先には、蒼く煌めくドレスを着たシスターが恥ずかしそうに立っていた。


様々な形の氷の結晶が散りばめられ、ウェディングドレスに近い形状をし、大きな薄青の肩ベールにより上品さが一段と増し、束ねた髪を後ろでまとめていて普段のシスターからは感じる事の無い艶やかさを醸し出す。



シスター「ど、どう…かな…」



ベールを絡めてくるりと回って魅せるシスターの動きはぎこちなく、思わず顔が綻んでしまう。



男「うん、似合ってるよ」


シスター「…!あ、ありがと!」


侍「でもよ勇者……こんなの何処で見つけてきたんだ。風の都にこんなモン売ってたか?」


男「まぁ…俺にはコレがあるからね」



攻略本を軽く叩き、侍は顎をさすって苦笑いする。



侍「ほんとに何でも知ってんなぁ…それ」


シスター「で、でもこれって…凄く高いんじゃない…?」


男「まぁ、うん…」


侍「どう見ても逸品だしな」



半年衣食住に困らない軍資金の半分の値段はするこの《氷結晶のドレス》
このドレスのスキル効果を見るに火の都で役に立ちそうだが、値は張る。



シスター「高いならだめだよ……もっと安いのにしよ」



歯切れが悪い、欲しいのかな。
買ったとしても1~2ヶ月分くらいの金は余るが、近いうちに日銭稼ぎも始めなきゃならなくなる。



侍「買うのか?」





安価下
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 11:45:29.53 ID:SGOqBjkQO
なーに攻略本さんなら資金稼ぎの裏技も知ってるさ

購入
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/05(水) 13:08:26.49 ID:Vlsi4CK2O

男「買おうか」


シスター「えっ!?い、いいの?……じゃなくて!ダメだよ、高いし…」



財布を握るのはシスターだというのに、迷いが見え見えだ。
もう一押しだな。



男「でも、欲しくない?」


侍「買っとけ買っとけ。折角勇者が嬢ちゃんの為に見繕ってくれたんだ」


シスター「欲しい……けど、この先の事考えると…」


男「なーに、この本があれば金稼ぎなんて楽勝だよ」



知らんけど。
あるでしょ、効率的な資金稼ぎ方法…みたいなの。



侍「そうそう。その辺の事は勇者がやってくれるさ」


シスター「そんな事まで……凄いね。じゃあ……か、買っちゃおうかな…?」


男「うん、良いよ」


侍「決まりだな」



まだ渋りそうなシスターにそう言うと、不安そうだったシスターの口元が緩み、本当に嬉しそうに口角が上がっていく。


痛い出費だが、ここまでシスターが喜んでくれたのなら安い買い物だ。
シスターはお会計済ませるねと、カーテンを閉めてドレスを脱ぎ始める。



侍「さて、次は勇者だが……自分の分は決まってんのか?」


男「目立たない服で薄着なら何でもいいかな。稼げるとはいえ、流石に高額なのは怖いな」


侍「そういやその稼ぎ方ってのはどんな方法なんだ?」


男「えーっと…ちょっと待って」



俺は攻略本を取りだし、そんな方法が載っているかを探す。
だが……あるんだよなぁ〜!流石攻略本だよ。



男「あったあった。えーとね───」







資金稼ぎ方法(勝手に設定作ってもOK)
安価下
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 13:38:55.72 ID:dI37QbXz0
召喚魔法でゴールデンと名のつくモンスターを繰り返し召喚し、乱獲することで手に入る換金用アイテムを売却する。ゴールデンと名のつくモンスターにもランク差があり高ければ高いほどいいものを落とすが、その分倒しづらくなる。これらのモンスターは通常のエンカウントでは相当運がよくなければまず出会えず、基本単体でしかでないので、この方法はとても効率がいい。なお経験値は雀の涙。
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/05(水) 14:28:15.18 ID:Vlsi4CK2O

男「侍は知ってる?ゴールデンと名がつく魔物の事」


侍「ゴールデン…まさか、あの滅多に遭遇出来ないって言われてる魔物の事か?」


男「そうそれ。そのゴールデンから換金素材を売りまくるって方法」


侍「……いや、それが出来るなら──」
男「召喚魔法がある」


侍「…何?召喚魔法?」


男「そう。ゴールデンを無限に召喚出来る魔法がこの世には存在する」


侍「まさか…!勇者……!」


男「くく…御察しの通りだよ…!」


侍「使えるのか!?」


男「……え!?使えないけど!」


侍「何!?…んん!?今の流れは…そうだろ!」


男「違う、"覚える"んだ。俺は仮にも勇者だし、可能性はある!」



何を隠そう俺には《神託》というシステムが付いていると、スタッフインタビューに書いてあった。
つまり俺の解釈が正しければスキルを授けるのも神託というシステムの筈だ。



侍「覚えるって……ぶははは!大した奴だなおめぇさんは!楽観的にも程があるぜ!」


シスター「どうしたのー?大笑いなんかして」



お会計を済ませたシスターが大きな包み袋を持って帰ってきた。



侍「応!聞いてくれ嬢ちゃん!」


男「くくく…聞いて驚くなよ…」


シスター「うん?」



先程見つけた資金稼ぎ方法をシスターに説明した。最初のうちは凄い!とか言っていたのに、最後の方はへぇーしか言わなくなり、ゴミを見るような目はしばらく忘れられそうにない。


148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 14:28:52.16 ID:RdjYgy6wO
召喚士たすけて
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/05(水) 21:01:48.65 ID:Vlsi4CK2O


─────



3日後。
昼食を終えて数時間、遠くには砂地が見え始めた。



侍「火の都の領地にもうすぐ入る。あの辺から同じ陽の光でも体感温度が変化するから着替えておけよ」


男「あれか、火の都は砂漠に囲まれてるのか?」


侍「囲まれてるのは確かだが、都付近はそうでもない。途中からは混凝土で出来た道になる。砂や砂利には困らない所だしな」


シスター「へぇ〜おっさん詳しい」


侍「見聞を広めるのも冒険者の一環だからな……って誰がおっさんだ!」


シスター「あははは!もう慣れてよ〜」


男「飽きないね、そのやり取り。ちょっと早いけど着替えようか。今日中にはあそこで野宿するんだろうし」


シスター「うん。でもここじゃアレだよね……」


侍「なんでだ?ここで着替えれば良いだろう?」


シスター「は?何言ってんの!こんな道のど真ん中で着替えれる訳ないでしょーが!」


侍「そうかぁ?誰も見てねぇだろ」



ははは、何を言ってるんだこいつは。
良いぞ、もっと言え。
俺は無言のエールを侍に送る。

150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/05(水) 21:05:12.04 ID:Vlsi4CK2O

シスター「見るじゃん!二人とも!」


侍「別に見ないが。嬢ちゃんの着替えに興味ないしな。だろ?」



俺に振るか!?
興味あるに決まってんだろ!



男「まぁ…うん…」


シスター「ぐぬぬ…!それはそれでムカつく…!とにかく!ちょっと先に大きいな茂みあるから!そこで着替えるから!」


侍「何怒ってんだよ?着替えひとつでそんなに怒る事ねぇのになぁ…おめぇさんもそう思うだろ?」


シスター「馬鹿!バーカ!」


男「は、ははは…」



いちいち俺に同意を求めるんじゃねぇーー!!
しばらく進んだ俺達は、大きな茂みの中で服を着替え始める。


シスターはやっぱり服が汚れるからと、近くの木の裏で着替える事になり、俺も男同士とはいえ生着替えを見られるのは何かなと思い、茂みで着替える。


俺が購入したのは、黒いインナーシャツと紺色の半袖パーカーに、紺色の膝下まであるハーフパンツ。


らしき物だ。
正確には違うだろうが、近い形をしている。


生地は分からないが風通しが良く、これなら暑い所でも大丈夫そう。
風の都特有の刺繍や柄のおかげで、この世界に馴染んだ服装になっているはずだ。


俺はジーパンに手を掛けて脱ぎ、ふと近くの背の高い草むらの奥が変に空間を作っているのに気付く。


なんか変だな。
俺はハーフパンツを履くと、その空間へと近付いていく。



男「え」



そこには───




倒れていた者安価
【種族】
【職業】
【性別】
【強さ】


安価下
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 21:06:25.80 ID:RdjYgy6wO
【種族】魔族(魔王の娘)
【職業】召喚士
【性別】女
【強さ】単純な戦力比較で言えば侍より微妙に下。なお武術は全然ダメ
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 21:31:10.28 ID:dI37QbXz0
これは運命の出会いですね間違いない
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 00:48:03.86 ID:yB9IuN6o0
まぁ全く使えない手段だったら攻略本に書いてないだろうしなぁ
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 00:56:57.22 ID:5L23YPcMO
攻略本に運命を決められてるみたいでちょっと怖いな
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 12:22:10.16 ID:yB9IuN6o0
魔物使いの裏切り者枠ならキャル?魔王の娘ならロザリンド?
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 17:53:21.93 ID:rmHWl6CGO

長い銀髪の女の子がうつ伏せに倒れていた。



男「……マジ?」



落ち着け俺。
まずこういう時はどうするんだ?とりあえず意識の確認?
とりあえず女の子の背に手を置き、揺らしてみる。



男「あ、あのー…生きてますかー…」


「んに…」



女の子は寝返りをうち、その全貌が露になる。
とりあえずは生きてるな、良かった。
それが分かると少し落ち着いて、寝息を立てる女の子を観察する。


近くに大きめのリュックと、魔法陣の描かれた本。
頭に黒いリボンを結び、膝裏まであるマント。
股下まである黒色のチュニックにサイハイブーツによって見事な絶対領域が完成している。
スカートや短パンは履いてない…だと…。


そして服の上からでもわかる。シスターよりも…でかい。


年齢はどのくらいだろうか。雰囲気は年上なんだがな、身長は俺とシスターの間くらいだけど。
俺はその場に座り込んで女の子…いや、お姉さんの事を考えていると、ふと悪魔の囁きが聞こえてきた。



この服丈が短いよ〜誰も見てないよ〜
覗けるよ〜見ていいよ〜



……ふむ。
って馬鹿か!俺はそんな変態じゃない!
俺は煩悩退散とばかりに顔を振り、とりあえずもう一度起こそうと手を伸ばす。

157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 17:56:27.64 ID:rmHWl6CGO

その直後、背後からガサガサと茂みを掻き分ける音がした。



侍「何やってんだぁ?遅いから見に来た…が…」


男「あ、侍」



俺は身を乗り出して、お姉さんに手を伸ばしている状態なんだが、それを見た侍は大きな溜め息を吐く。



侍「…おめぇさん……いくら嬢ちゃんが好みじゃないからって…」



侍は目頭を抑え、首を振る。



男「…は?」



そのまま近寄って来た侍は俺の肩に手を置き、再び首を振る。
なんだその仕方ないよ…みたいな爽やかな顔は。



侍「俺は何も見なかった…だから手遅れになる前に戻…逃げようぜ」


男「は!?待て待て!違うから!」


「んにゃ……うるさ…ぃ…」


侍「おい起きたぞ!逃げた方が良いんじゃねぇか!?」


男「何でそっちの方向に持ってくの!?何もしてないし見つけただけだコラ!」



俺はふざける侍にヘッドロックをキメていると、いつの間にかお姉さんは上半身を起こしていて、辺りを見回した後に疑問符が見えるくらいに首を傾げて悩む仕草を取る。



「あれ、れ?」


男「あ!起きたみたいだね!」


侍「いででで!」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 18:21:50.54 ID:rmHWl6CGO

「ふぁぁ……あなたたち、だれ?」


侍「なに、怪しい者じゃない。俺ぁこいつが淫行に走るのを止めた──」
男「その口を閉じろォ!」


侍「冗談だってぇ!」


「いんこー?」


男「え?そんな事言ったかな?HAHAHA!それよりこんな所で一人で居たけど、大丈夫?」


「大丈夫、というのは、何が、かしら?」


男「えっ」



お姉さんの発言に呆気に取られ、技をキメていた侍は抜け出し、俺の襟首をグイっと引っ張る。
俺達はお姉さんに背を向け、座り込んでコソコソと話し始めた。



侍「おい、何かこいつ変じゃねぇか?」


男「いや…こんな所で倒れてたくらいだし、ちょっと混乱してるだけじゃない…?」


侍「にしてもだろ。喋り方もなんつーか……な?」



確かに吃音症みたいな喋り方だと一瞬思ったけど、何と言うか…雰囲気は柔らかく、眠そうな声色が不思議ちゃんオーラを醸し出す。


とにかく、元々そういう喋り方みたいな感じがする。
俺に言わせるなら、おっとり系のお姉さんだ。



「…無視、しないで、ほしいわね」



後ろから…いやほぼ真後ろから俺と侍の顔の間にお姉さんが割り込んでくる。
当然、身体は俺達にくっ付く訳で。


男「あひぁ!?」

159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/06(木) 18:32:02.07 ID:mNv3zAdM0
支援
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 18:37:09.33 ID:XIrDKjhTO
シスターちゃん描いてもいいの?
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 18:42:15.64 ID:rmHWl6CGO

平静を装いたい。おっぱい。
この二つの感情が意識の支配権を争って殴り合ってらぁ!



侍「ああ、悪ぃな。無視してた訳じゃねぇんだ」



何で侍は平然としてるの?ホモなの?
実は女慣れしてる?童貞じゃない?
…俺、許せねぇよ!



男「この…裏切り者め」


侍「…?どうした、急に」


「それより、お腹が、空いたわ」



お姉さんは俺達から離れると、フラフラと自分の手荷物であるリュックを漁り始めるが、すぐにその手は止まった。



「あら、ら?」


男「…もしかして、ご飯ないの?」


「…そうね。そうとも、言うわね」


侍「なんだそりゃ…あぁ、そうだ」

162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 18:47:37.74 ID:rmHWl6CGO

何かを思い付いたのか、侍は着物の胸の中をまさぐる。
その中から出て来たのは揚げたイカゲソが包まれた透明な小袋。


侍「これならあるぞ、ミニクラーケンの足揚げ。食うか?」


「…あなた、へんなもの、持ってるのね」



フラフラとした足取りで、侍から小袋を受け取るお姉さん。



「でも、いただくわ、ね。ありがとう」


男「侍さぁ…何でそんな物をそんな所に忍ばせてんの?」


侍「そんな物とは酷ぇな、この足揚げ結構イケるぞ」


男「いや、そういう事じゃないんだよなぁ…」


侍「なんだなんだ、変な奴だな」



お前が言うか、と思うだけで口には出さない。
それよりこのお姉さんの事だ。このまま置いていく訳にも行かないし。



男「お姉さん。俺達これから火の都に行くんだけど、良かったら一緒に行かない?侍も良いよね?」



もぐもぐと口を動かすお姉さんは、口からゲソがはみ出したまま頭を傾げる。



侍「まぁ…放っておく訳にもいかんしな」



顎をさすりながら、若干渋りながらも同意してくれる侍。
たしかに素性の知れない人物を同行させるのは気が進まないか。


ゲソを食べ終わったお姉さんは空を見上げ、ぼけーっとしていると、ゆっくり俺達に目を向ける。



「…そうね、おねがい、しようかしら」




163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 18:55:50.87 ID:rmHWl6CGO
>>160
良い!!
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 22:17:28.77 ID:rmHWl6CGO

謎のお姉さんの了承を得た俺達は、支度をして茂みの中からシスターが待つ道へと戻る。
お姉さんは何故か魔法陣の描かれた本だけ持ち、リュックは置いてきてしまっていた。


理由を尋ねた所、もういらない、だそうだ。
茂みを抜けると椅子を出して待ちぼうけしてるシスターを見つける。


やはりドレスを着ていると別人にしか見えないな。言動はそのままだけど。



シスター「遅かったじゃ──ん……?その人は?」


男「茂みの中で倒れてたんだ。火の都まで同行させても良い?」


シスター「あんな所に?それに同行って…」



シスターは良いの?と無言で侍と俺を交互に見る。その辺の了承は得ているからと、無言で頷き返す。



「迷惑、かしら…?」


シスター「んーん。二人が良いなら私は別に。そうだ、名前は何て言うの?」


召喚士「…召喚士、よ。魔物を、召喚したり、出来るわね」


侍「へぇ、お前召喚士だったのか。その本は召喚書だな?」


召喚士「ええ。そう、なるわね」


男「召喚士かぁ……ん?待てよ?」


シスター「どうしたの?」


男「召喚士はもしかして何だけど、ゴールデンの名がつく魔物を召喚出来たりは…?」



俺の発言に侍とシスターがハッ!と顔を見合わせ、一斉に召喚士に視線が集まる。



召喚士「ゴール、デン?…さて、どうだった、かしらね」





1 使える
2 使えない
3 自由安価
安価下
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/06(木) 22:18:56.87 ID:mNv3zAdM0
1
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 22:42:03.71 ID:yB9IuN6o0
https://i.imgur.com/mkfNMru.jpg
https://i.imgur.com/7Sr9SYT.jpg
https://i.imgur.com/YIni6DS.jpg
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 23:09:14.84 ID:72tz/qUx0
http://i.imgur.com/mkfNMru.jpg
http://i.imgur.com/7Sr9SYT.jpg
http://i.imgur.com/YIni6DS.jpg
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 23:24:40.64 ID:G6yoTG2do
ゴールデントーテムは?
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 23:26:43.59 ID:yB9IuN6o0
忘れてた……
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 23:35:04.03 ID:XIrDKjhTO
ゴールデンタイタスもいるぞ!
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/07(金) 00:38:57.86 ID:VMyin9Zoo
ドラクエじゃないが俺が昔やってたゲームには金のうさぎがいたなぁ

あと思ったがこれ攻略本だからゲームにとって都合の悪いバグ技とか廃人が導き出したデタラメなえげつない戦法とか載ってるはずがないよね
あくまで「攻略」本だから >>154 が言ってる通り、本作った奴らの手玉に取られてる感がある……
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/07(金) 00:40:06.86 ID:VMyin9Zoo
ドラクエじゃないが俺が昔やってたゲームには金のうさぎがいたなぁ

あと思ったがこれ攻略本だからゲームにとって都合の悪いバグ技とか廃人が導き出したデタラメなえげつない戦法とか載ってるはずがないよね
あくまで「攻略」本だから >>154 が言ってる通り、本作った奴らの手玉に取られてる感がある……
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/07(金) 00:41:09.12 ID:VMyin9Zoo
なんかレスが二重なってたスマソ
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/07(金) 00:50:57.91 ID:+tvZ4U3W0
小数点以下の確率で(ry
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/07(金) 15:29:52.19 ID:yt2sx7oYO
わくわく
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/07(金) 19:54:12.85 ID:jLI6hnV8O

召喚士「これ、かしら」



召喚士は召喚書を開いて、小声で何かを呟くと手を開いて前に出す。
その指先からは光の雫が垂れ、地面へと落ちると一筆書きの様に大きな魔法陣を描いていく。



男「…かっけぇ」



素直な感想が漏れてしまった。こういった魔法陣を使った物を見るのは初めてだったからか、少し興奮してしまう。



魔方陣が完成し、細い光柱を発しながらその中心に光の粒が集まりナニかを形成していく。



侍「こいつは…」



中から現れたのは牛頭人身の魔物。
筋骨隆々の体躯を駆ける金色の剛毛。
大きな二本の角は前を向いていて、手には巨大な戦斧を持つ。



男「うわぁ…ミノタウロスかな?」


侍「ほう、良く知ってるな。俺も聞いた事はあるが、本物は初めてだぜ」


シスター「大きいね…コレ。大丈夫なの?」


召喚士「大丈夫、よ。わたしが……召喚した、魔物だから……ね。安心…してね」



暴れ回らないとわかると一安心し、そっと胸を撫で下ろす俺に、何故か召喚士は距離を詰めて来る。



召喚士「…それで……この子を……どう、するの…かしら…」


男「ちょちょちょ近い近い」


召喚士「…殺すの…かしら?」


男「!…それは…」



…そうだよな。召喚士が召喚した魔物に対して、殺していい?と聞いて、良い返事が貰える訳が無い。


召喚士は俺の返答を待っているのか、静かに俺を見つめる。
何か言わなきゃ───。



安価下
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/07(金) 19:55:42.21 ID:+tvZ4U3W0
その子からアイテムだけもらったりはできる?
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/07(金) 19:58:40.15 ID:XaPJndLD0
ゴールドマンは全身が金で出来てるぞ
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/07(金) 21:09:12.23 ID:jLI6hnV8O

男「その子からアイテムだけ貰ったりは出来る?……かな」


召喚士「あいてむ…?」


男「召喚出来るか聞いたのには理由があってさ…その子から貰える素材は高値で取引されてるんだ。だからその…ちょっとでいいから、素材が欲しいなって……」


召喚士「……ふん……ふん…」



ふむふむ。と言っているつもりなのだろう。
召喚士はフラフラと金のミノタウロスの元へ行くと、その厚い胸板を触り、視線だけ俺に向けてくる。



召喚士「この子…の、何が……欲しい、の……かしら」


男「…やっぱりーーー…」



そういえば売れる素材の内訳は知らない。
俺は語尾を延ばしながら侍に助け舟を求めた。



侍「角、剛毛、戦斧。その辺だろうな、売れるのは」


召喚士「ふん……ふん…」



ミノタウロスに手を置いたまま、空いた手で召喚書を開くと小さくまた呟く。
一瞬召喚書が光ると召喚士はミノタウロスから離れて、パタンと召喚書を閉じる。



「ウォオオォォォ!!」


男「うわ!?」
シスター「わっ!?」
侍「ッ!」



ミノタウロスの耳を劈く雄叫びと共に大きく戦斧を振り上げる。
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/08(土) 16:27:12.32 ID:Zy6O1yQzO

俺は身体が硬直し、振り下ろされる戦斧を見ることしかできない。
が、その振り下ろされる戦斧はミノタウロス自身の首を切り落とし、牛頭だけを綺麗に切り飛ばした。



男「なっ!」


シスター「ちょ、何?見えないよおっさん」



侍はいち早く気付いていたのか、シスターの元へ行き、振り下ろされる前に目を覆ってあげていたみたいだ。



侍「なぁに、お子ちゃまにはまだ刺激が強くて見せらんねぇだけだ…っておい、暴れんな」


シスター「何でー!」


男「召喚士……何で…?」


召喚士「何で…と、言われる……理由が、わからない…わね」



俺の問い掛けに召喚士は不思議そうに首を傾げる。



召喚士「欲しい、と……言ったのは…貴方よ」


男「…いやまぁ、それはそうなんだけど…まさか、こんな事するとは思わなくて…」



ミノタウロスの胴体は硝子の様に割れ、破片は光の粒となって宙へと消えていく。
その場に残ったのはドロップアイテムと思われる戦斧と金色の角だ。



シスター「あれっ?牛男は?」



シスターも侍から解放されたみたいだ。
俺は角を拾い上げて、シスターに見せる。



男「召喚士が何とかしてくれたんだ、これが換金素材になるみたい」


シスター「へぇ…何があったか分からなかったけど、ありがとね!召喚士!」


召喚士「大した、事じゃ、ないわ」


侍「よっ…と。結構重いな、これ」



侍はいつの間にか戦斧を拾い上げ、重いと言う割には軽々と持ち上げる。



男「ありがとう召喚士、助かったよ」


召喚士「いいの、よ……それより…見た、所……貴方達…徒歩で、向かうの…かしら?」


男「うん、そのつもりだけど」
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/08(土) 16:28:59.80 ID:Zy6O1yQzO

召喚士「そう……それは…少し、面倒だわ……」



召喚士は先程と同じく召喚書を開いて、魔法陣から何かを召喚し始めた。
魔法陣完成後、そこに現れたのは茶色の狼が4匹。



男「狼?」


召喚士「…乗って、行きましょう」


侍「ほう、サンドウルフか。そうか、そういう使い方もあるよな」


シスター「え、ホントに!?すっっごい助かるー!ありがと〜!」



シスターは喜びからか、召喚士に抱きついてぐらぐらと揺らす。



召喚士「喜んで……くれたのなら…良かった…わ」



シスターを引き剥がそうとする召喚士のお言葉に甘え、俺達は狼へと乗って火の都を目指した。



─────



同日、夜。



侍「ここまでにするか。どうよ、多少は筋肉もついてきただろ。少なくとも以前のおめぇさんよりかは強くなってるはずだ」


男「ひぃ……ひぃ…」



狼に乗った俺達は思ったよりも進む事ができ、混繰土の道へと入ることが出来た。
今日はここで野宿をする事になり、俺は日課の侍との筋トレ、シスターと召喚士は食事作りをしている。



侍「当初よりも大分回数も増えた。良い調子だ」


男「はぁ…疲れた〜…」


侍「そうだ、今度からはおめぇさんに"防御"を教えてやる」

182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/08(土) 16:30:00.14 ID:Zy6O1yQzO

男「…防御?」


侍「そう。防御ってわかるか?」


男「…攻撃を防ぐ事じゃないの?」


侍「正解。ただ、それだけじゃない」


男「…?」


侍「防御ってのは3つあってな。下がる、防ぐ、避ける。いずれも立派な防御だ」


男「…なるほど。でも、下がると避けるって似てない?」


侍「これがそうでもない。試しに俺に打ってみろよ」


男「え、殴れってこと?」


侍「そういう事」


男「…わかった」



俺は拳を握り締め、精一杯の力で打ち込む。
それに対し侍は一歩下がるだけで俺の拳は届かなくなってしまった。



侍「もっと打ってこい」


男「む…」



我武者羅に拳を繰り出すが、的確に下がる侍に一発たりとも届かない。



侍「単純だが、間合いから外れ、仮に当たったとしても威力は相当殺せる。間合いの見極めには練習が必要だが、これが一番簡単な防御だな」


男「な、なるほど…ね…」



普通に疲れたわ。こうも当たらないもんなのか。



侍「次は"避ける"だ。打ってこい」


男「…このっ!」



打ち込んだ拳は文字通り"避け"られた。
その瞬間顎に固いものが当たる。



侍「これが"避ける"」


男「……」



侍に顎を軽く小突かれていたのだ。
俺は生唾を飲み込む。一瞬過ぎて何が起きたか分からなかった。

183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/08(土) 16:30:37.06 ID:Zy6O1yQzO

侍「避けるってのは反撃を目的とした防御だ。だが避けるってのは実際難しい、失敗した時は間違い無く痛手を負う」


男「…なるほどね」


侍「とまぁ…おめぇさんにはこれを教えていく。毎日筋トレばっかじゃ飽きるだろ?てか俺が飽きた」


男「ははは、なんだそれ」


侍「約束だからな。強くなりたいって言うおめぇさんとの、な」


男「…そうだね。ありがとう」


シスター「ほらー!ご飯出来たよー!」



遠くからシスターのいつもの声が聞こえてきた。いつもタイミングを見計らってるのか、本当に丁度良い時に声を掛けてくれる。



侍「おし、飯だ飯!行こうぜ」


男「うん」



─────




深夜。


侍の言う通りこの地域に入ってからは体感音が上がり、涼しい格好をしていても普通に暑い。
夜は多少マシだがじめっとした暑さは変わらない。


そのせいなのか目が覚めてしまい、寝汗もびっしょりだ。
新しく購入したテントの中には侍と俺、もうひとつにシスターと召喚士という配置。


隣で普通に寝ている侍を多少羨ましく思い、散歩でもするかと外へ出る。
テントから出ると、消したはずの照明具が点灯していて、その側には召喚士が居た。
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/08(土) 16:31:40.65 ID:Zy6O1yQzO

魔道具である加熱式ポットという名のティファール的な物に入ってる冷茶を飲みながら、いつもの眠たそうな目で暗闇を静かに見据えている。



男「眠れないの?」


召喚士「あら……早い、お目覚め…ね」


男「はは、あんまり寝れてないんだけどね。俺も飲んで良い?」


召喚士「…?私に…断りを、入れなくても…飲めば……良いと、思うわ」


男「そっ…か。そうだね、わかった」



特に何の考えも無しに発言し、何がそうだね、なのか。
俺は冷茶を淹れて、召喚士から3人分くらい離れた所に座る。


特に会話も無く沈黙が続き、召喚士はなんて事無さそうだが、俺が気まずい。
何か話題を振ろう。




安価下
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/08(土) 16:50:36.28 ID:fhc2CISRO
君はどこから来たの?
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/08(土) 19:20:39.91 ID:x+l7ZAaE0
攻略本はあくまでこの世界をゲームとしてしか見てないから、その辺で現実との食い違いが生じそうだな
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/08(土) 22:40:59.39 ID:rugvj32tO
たとえ蘇生術が存在していたとしても、死人が出る前提の攻略法とかは拒絶されそう
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/09(日) 18:06:16.48 ID:vLZ3uki70
召喚士に頼めば狂滅龍使役のデメリット軽減できたりしないかね
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/09(日) 20:33:40.80 ID:+xchCwEbO
わくわく
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/09(日) 22:08:31.94 ID:+xchCwEbO
今日はお休みか
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/10(月) 15:01:37.17 ID:rZVmqWiPO

男「あのさ、召喚士…君はさ、何処から来たの?」


召喚士「…何故……そんな事…聞くの、かしら」


男「いやほら、あんな所で寝てたし…何となく気になって」


召喚士「そう…」



召喚士は呟くと、空を見上げた。
そこには月が一つ、闇空に浮かんでいる。



召喚士「私は、あそこ……から、来たのよ」


男「え…あそこって…」



召喚士の見据える先は月でもなく、ただの暗闇。
……大陸の中心部?



男「暗くてわからないな。何があったっけ」


召喚士「…さぁ……なんだった…かしらね」



カップを置き、召喚士は立ち上がるとテントへと身体向ける。



召喚士「そろそろ…寝るわね……おやすみ、なさい」


男「えっ…あ、うん。おやすみ」



質問をはぐらかされた。答えづらいのか?
テントへ戻る召喚士の姿が見えなくなると、俺は先程召喚士が見ていた方角を見る。


都の所在地は等間隔で円を画く様に点在していて、中心部には何かあったんだけど忘れてしまった。


俺もカップを置いて再び就寝する事にした。



─────



翌日。


サンドウルフのおかげで早く火の都に到着した。正門を潜ると、此処は砂漠に囲まれた都とは思えない程に都会な作り。


192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/10(月) 15:10:48.26 ID:rZVmqWiPO

高層ビルみたいなのが何個もあり、まさにコンクリートジャングルと言っても過言ではない。


青基調な建物が多く、何より極めつけはタイルによる建物の装飾だ。
もうなんて言うか…綺麗、いや美しい。


中心部に大きな円形の広場があり、中央にある巨大な噴水、設置されたベンチに人、至るとこには露店が並ぶ。



シスター「すっごーーい!きれーい!見た事ない建物ばっかりぃー!」



目を輝かせ、田舎者の如くキョロキョロと見回すシスター。
いくら着飾っても見た目と中身のギャップが激しすぎるな、全然良いけど。



侍「そうだろう。この絢爛な街並みは他の都じゃ見れないからな。ま、俺は水の都が一番好きだが」


男「へぇ、水の都…そっちも気になるね。でも、それにしたって…あっつい」


シスター「そうなの?私にこのドレスのおかげなのかな、全然暑くないよ」


男「そのドレスは特別だからね、暑さを感じないんだよ」


シスター「へぇ〜!流石良い物だけあるね!」


侍「大事にしろよ。それに最初は暑くて大変だろうが、ここは室内に冷気を送る魔道具が多く設置されてるからな、早いとこ宿とって飯だ飯」



冷気を送る魔道具…まさか冷房があるのか!
それは助かるな。いくら薄着をしてもこの暑さの中、外に居るのはキツイ。



召喚士「…私は…」


侍「ん?どうした」


召喚士「目的地に……着いた、けれど…私は…まだ、一緒に……居て、良いの…かしら?」


男「あ、そうか。火の都までの同行だったよね」




男「」


台詞安価
安価下
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/10(月) 15:13:27.99 ID:KzrYz1Oz0
自分は大丈夫だけど、シスターと侍はどうかな?
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/10(月) 21:14:15.66 ID:BOvtkzzdO
ドラクエ5の攻略本でビアンカとフローラの水着絵が拝めたなあ
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/11(火) 12:29:14.76 ID:b0Nx6wgh0
攻略本のモンスター図鑑読むの楽しいよね
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/11(火) 14:19:11.03 ID:04FoVg4DO

男「俺は大丈夫だけど、シスターと侍はどうかな?」


侍「ああ、別に構わねぇよ」


シスター「私も!ていうか一緒にまわろ!召喚士ー!」


召喚士「そう……良い、のね」



全員の承諾を得て、しばらくは召喚士と行動を共にする事にした。
流石に本来の目的に巻き込むのもアレだし、その間は観光していてもらおう。
そういった事には事欠かなさそうな都だしな。


俺達は宿でチェックインを済ませ、先ずは皆でご飯を食べる事になった。
勿論、食べる物と言ったら……



シスター「冷やし麺!」


男「異議無し!」


召喚士「ひやし……めん?」


侍「説明は要らねぇ、食えば分かる」


召喚士「そう……楽しみ、だわ」

197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/11(火) 14:20:35.92 ID:04FoVg4DO

今日まで召喚士の事を見てきたが、彼女どんな時も声色一つ変わらない。
まだまだ謎が多いが、これを機に少し仲を深められたら良いな。


シスターに腕を引かれる召喚士の背をみながら、その様を見て俺は笑いながら続く。



─────



翌日。

とりあえず火姫の謁見を取り次いでもらおうと単身で王宮に向かう。
シスターの顔が効くのは風の都だけなので、ぞろぞろと行っても仕方ないという事で俺一人となった。
他の三人は今頃食べ歩きやらして楽しんでいるだろう。


大広場の奥に長く続く一本道。その先には某国に似た横に長い建物があり、そこが王宮になっている。


玄関には門番が二人。その内の一人と目が合うと門番は俺の方へ寄ってくる。



門番「待て。この先は許可のある者しか通せない。要件は?」


男「火姫様に謁見を取り次いで欲しいんですけど」



門番の眉がピクリと動いた。
品定めしているかの如く俺の容姿を見て、懐疑的な表情になる。



門番「…失礼だが、名を聞いても?」


男「男です…あ、いや勇者って伝えて貰えますか」

198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/11(火) 14:21:54.77 ID:04FoVg4DO

門番「勇者…?君が?」


男「まぁ…はい一応…」


門番「ふむ…証明出来る物はあるか?」


男「証明?」



あったっけ?





安価下
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/11(火) 14:23:59.91 ID:swF87PGvO
ない。むしろ狂滅龍の使役紋章を感知されて警戒される
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/11(火) 14:48:43.65 ID:GYUhpQA1O
この都で足止め食らうパターンかぁ
最初の光の都かシスターとコネのある風の都から証明になるもの送ってもらったりってのが現実的ではあるけど
なろうだったらどうするパターンなのか
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/11(火) 16:24:28.85 ID:b0Nx6wgh0
そりゃ警戒されるよな
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/11(火) 16:58:56.12 ID:mvVDoZDQ0
スマホ太郎や賢者の孫みたいに行けばいいのに
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/11(火) 17:14:40.81 ID:mvVDoZDQ0
魔法の言葉なんやかんや
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/11(火) 18:56:59.52 ID:04FoVg4DO

男「いや……その…」


門番「それに、だ」



突然門番に左腕を掴まれ、俺に見せるように持ってくる。



門番「何だこれは。禍々しい紋様をしているが…まさか魔王の手の者か?」



俺の今の服装だと左手前腕に描かれた使役紋章は隠しきれない。まさかこれを怪しまれるとは。
ファッションタトゥーくらいに思ってくれよ!



男「違います!ほんとに自分は勇者で──」
門番「お帰り願おうか」



掴まれた腕ごと押され、バランスを崩して尻餅を着いてしまう。
火姫に会わなきゃならないってのに、いきなりこれって…。


門番は元の位置へと戻り、睨み付けたまま俺が去るのを待っている。
さすがに強行突破する訳にも行かない、ここは一旦退こう。



─────



俺は宿屋に帰宅し、皆が揃った所で円卓に腰掛けて今日あった事を相談する。

205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/11(火) 18:59:12.25 ID:04FoVg4DO

侍「で、戻ってきたと」


男「うん……証明する物って何か無いの?シスター」


シスター「わかんない。あの本とか、黒いドラゴンは?」


男「この本が証明になるかなぁ…狂滅龍は流石に呼んだらマズいし」


召喚士「……ドラゴン?」


侍「俺も気ぃ失っててまだちゃんとは見た事ねぇんだよな。風の都で王宮ぶっ壊したのもソイツなんだろ?」


男「うん。それに気軽に呼べないしね…」


侍「確か寝ちまうんだよな、3日くらい」


召喚士「貴方…も……召喚士…なのね?」


男「いや、勇者…なんだよね」


召喚士「…そう、勇者……なのね」


シスター「光の都に手紙出して、使者でも呼ぶ方が良いかなー」


侍「それが現実的だろうな、1週間以上足止め食らうが」


召喚士「…貴女…」



召喚士はシスターを指差す。



シスター「え、な、なに?」


召喚士「…貴女なら……その、証明…とやら……出来るの…では?」


シスター「私が…?」


男「シスターが……あっ!そうか!」


侍「んん?」

206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/11(火) 19:00:20.10 ID:04FoVg4DO

男「シスターあれ!風精霊!」


シスター「あー!確かに!なるほどねー!」


侍「おお、なるほどな。というか……何故気付いた?」


召喚士「…溢れて……いるもの…」


シスター「溢れてる?」


召喚士「ええ……精霊の…持つ、魔力……がね」


男「へぇ!」


侍「…詳しいな。聞かない様にはしていたが…姉ちゃん何者なんだ?」


シスター「……ちょっと気になるよね」



あれ?俺だけ浮かれてるの?空気重くない?



召喚士「私が……何者、なのかは……重要、なの…かしら?」


シスター「……」


侍「…いや、話したくないのなら良いさ。詮索するような真似して悪かった」


召喚士「…別に……当然、と言えば……当然」



沈黙が訪れる。
確かに召喚士の正体は気になるけど、突破口が見つかったから良しとしよう?



男「と、とにかく!明日はシスターと一緒に王宮に行く!もう夜だしね!はぁー!寝るかー!」

154.03 KB Speed:0.1   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)