【安価】で異世界なろう転生

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67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 16:10:39.91 ID:qYjpA9Pv0
>>66
ありがとう。次回からそうする。連投申し訳ない。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 18:26:30.77 ID:8vh+K5SvO


生命:51/51?
精神:56/56?
体力:15?
技術:13
?感性:19?
知力:23

スキル:
『実体化』『空中浮遊』




やはり成長していた。著しい伸び方なのかは分からないけど、魔物を倒せば俺は強くなれる。
それに新しいスキルも覚えてるじゃないか。


空中浮遊!これはかなり便利じゃないか?
後で攻略本で詳細を調べておこう。


俺は本を閉じて周りを警戒する。コボルトがもう居ないとは限らないからな。



シスター「あれ?これ何?」


男「ん?あ、それは…」



シスターが拾ったのは首飾り。パーツに骨で作られた造形物があるが、何の骨かは分からない。先程倒したコボルトの辺りにあった様だ。


確かレアドロップにコボルトの首飾りがあったよな、運が良い。



男「コボルトの首飾りだね。装備してみる?」


シスター「へぇ〜。でも趣味じゃないかな。勇者様が倒したんだし、勇者様が貰って」



それもそうかと頷き、シスターから首飾りを受け取り、掛ける。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 18:27:29.91 ID:8vh+K5SvO

シスター「ぷ…あはは!」


男「え、なんで笑うの…?変かな?」


シスター「あ、ごめんね違うの。ただね、勇者様が本当に嬉しそうにそれ掛けるから、何か可愛いなって」


男「俺そんな顔してた?全然気付かなかったよ」


シスター「してたしてた」



シスターはまた少し笑う。可愛いって言われるのは何か変な感じだな。



ガサガサ…



男「…!シスター離れて!」



またか?もう一度あんな事出来るなんて限らないってのに!



侍「お、こっちだったか。やっぱ森の中を走り回ると迷子になって駄目だな……っておい?」


男「侍か…なんだ…はぁぁ〜」



侍の顔を見て変に脱力してしまい、ぐにゃぐにゃと膝から落ちる。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 18:27:58.93 ID:8vh+K5SvO

シスター「もー!驚かせないでよね!」


侍「なんだなんだ?何があった?」



俺は侍にここで起きた事を話すと、やるじゃねーかと褒められて頭を撫でられた。
撫でるのはどうなんだと思ったけど、悪い気はしない。


死ぬかと思ったけど、俺達は再び風の都へと歩き出した。



─────



2日後。
辺りが暗くなった頃に俺達は風の都に到着した。
夜風が吹いており、肌寒くなく心地良い。
光の都は中世な街並みだったが風の都は中央に巨大な大木が生えていて、太い枝木の上には建物がいくつも並んでいる。


大木から離れた四方には大きな風車塔があり、それぞれ何かしら役割をしていると侍が教えてくれた。
田舎物の様に俺は辺りを見回し、街道を歩きながら宿を目指す。


男「何か緑ー!って感じだね、ここは」


シスター「風の都は見ての通り草木がいっぱいあるしね。作物も豊かだし、自然に囲まれてて長閑なとこだよ」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 18:30:48.76 ID:8vh+K5SvO

男「長閑って……魔物に襲われたりは?」


侍「なぁーに、この都には『風障壁』があるからな」


男「風障壁?」


シスター「風姫様の結界だね。絶対不可侵領域の風障壁って言われるくらい強固なの」


男「へぇ〜そりゃ凄いな」


侍「おっ、宿が見えてきたな。久しぶりに風呂にありつけるなぁ!」


シスター「ほんとだよね、森とか入って臭うし…。あ、風姫様への謁見は私が明日話通しとくから、今日はゆっくり休んでね。勇者様!部屋とったら後で買い出し行こ!」


男「うん、良いよ」


侍「なんだー?俺は仲間外れかー?おーん?」



侍はシスターの頬をぷにぷにとつつく。
もー!とその指を払い除けるシスターはぷんぷんと腰に手を当て侍を指さす。



シスター「おっさんは自分で好きな物買ってきて!1人で!どーせ酒とツマミだろうけど!」


侍「おっさん言うな!なぁ勇者〜嬢ちゃんが冷たい!どうにか言ってくれぇ!」


男「ぷ、あはは!」



俺は今更ながらこの2人と仲間なんだなーと、しみじみ思う。元の世界では味わえなかった経験だ。
が、道のど真ん中で勇者とか騒ぐから道行く人の興味を集めてしまい、俺達はそそくさと宿へと入った。



─────



翌日。
昼頃に王城へ向かったシスターの帰りを待ちながら、俺と侍は都を練り歩いていた。


侍「んぐ…うんめぇなー!この鳥串!そして…酒!ごく…くーっ!たまらんッ!」


男「行くとこ行くとこの露店で買い食いしすぎじゃない?夕飯食えなくなるよ」


侍「それはまた別腹だ」



よく食うなと呆れつつ、俺はふとした店が目に留まる。
表に出ている物からして、武具屋だろう。



男「魔物の侵攻が無いのに、武器とか売ってるんだね」


侍「んぐ……ん?ああ、そりゃどこの都にも冒険者は居るからな。ここも然りだ」


男「そっか、そうだよね」

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 18:31:34.25 ID:8vh+K5SvO

侍「ちょっと覗いてくか?何ならおめぇさんに合う武器があるかもしれないぜ?」



1 侍の刀で良いよ
2 ちょっと覗いてこうかな
3 無駄遣いダメ、絶対
4 自由安価
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 18:46:35.61 ID:so877iHe0
1
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 18:49:03.86 ID:qYjpA9Pv0
自然と一体化した町っていいよね
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 21:07:39.74 ID:8vh+K5SvO

男「いや、俺は侍の刀で良いよ。使いにくい訳じゃないし」


侍「そうか?ま、おめぇさんがそう言うなら良いけどよ」


男「そういえば気になってたんだけど、何で刀を2本持ってるの?二刀流って訳でも無いし、別に俺の為に持ってる訳じゃあるまいし」


侍「ああそれはだな……あー…趣味…かな?」



若干濁した?話したくないのかな。
深く聞いてもはぐらかされそうだ。



男「そうなんだ」


侍「それより、おめぇさんが刀を使うってんなら…」



侍はいつもの刀を鞘ごと俺に渡してくる。
こんな街中でと少し困惑しながら受け取った。



侍「やるよ」


男「え、いいの?」


侍「良いさ。おめぇさんに使ってもらった方がそいつも喜ぶ」


男「そっか。ありがとう」


侍「応!」



歯を見せるその笑顔を見て、俺も小さく笑ってみせる。

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 21:12:19.20 ID:8vh+K5SvO

シスター「あー!いたいた!やーっと見つけたー!」


侍「遅かったじゃねぇか。どこで道草食ってたんだ?」


シスター「食ってないし!ていうかね、宿から出るなら置き手紙くらいしてよね!私がどれだけ探したか…はぁ〜…」


男「確かに。ごめんね」


侍「そう怒るなって。甘菓子奢ってやるから」



提案する侍にシスターは再び深い溜息を吐く。
顔を俯けると指を4本立て、こちらへ向けてくる。



シスター「…4つ…」


侍「え?なんだって?」


シスター「あそこの特製パフェ4つで許してあげる!って言ってるの!」


男「あそこって…昨日の夜食べたあのお店?」


侍「4つも食うのか!?どんだけ食うんだよ!」


シスター「これでも抑えた方だし!甘い物はいくらでも入るもーん!自腹で払ってよね、こんな事で国のお金使えないし!」


侍「自腹だと!?おまっ!そんな!」



侍が俺に顔を向けてくる。
残念だが、財布を握るのはシスターなんだ。
自腹となっては俺にはどうしようもないぞ。



シスター「勇者様は国のお金しか持ってないから全部おっさんの奢りだね♪」



侍「そんな…!勇者…!」



俺は無言で侍の肩に手を置き、諦めろと首を振る。
その時の侍の顔は、しばらく忘れそうにない。



─────



同日、夜。
俺と侍は同室で部屋をとり、シスターだけ別の部屋になっている。


謁見は明日となり、またもや自由な時間が訪れる。



何をする?
安価下
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/28(火) 21:51:53.16 ID:yxKRHJni0
空中浮遊を試してみる
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/29(水) 17:58:12.09 ID:O6DVEjJNO

そういえば空中浮遊をまだ試してなかったな。
とりあえずは攻略本で詳細を調べよう。



俺「ふむ…」



『空中浮遊』

取得難度:
B+

消費精神力:
5/秒

種別:
Active

詳細:
精神力を消費して100M上空まで飛ぶ事が出来る。
縦の移動は早いが、横には通常の半分の速度になる。




男「ふーん…」



となると、飛べるのは11秒ってとこか。
物は試しだ、浮くという感覚を味わってみよう。俺は深呼吸をして、空中浮遊を唱える。


男「お…?おおっ!?」


侍「ん?どう──なにぃ!?」



身体が浮いてる!何だこの感覚、凄い!
地面から2Mくらいの高さをふわふわと、俺は浮いているのだ。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/29(水) 17:59:00.27 ID:O6DVEjJNO

侍「お、おい勇者…?おめぇさん一体何を…?」


男「見て!凄くない?俺の新しいスキル!」


侍「浮遊魔法ってやつか?凄いな!」


男「そろそろかな。よっ…と」



空中浮遊を解除して地面へと着地する。
楽しいが、これを使うと消費が激しい上に長くても今は11秒。
練習と使い所を見極めないとな。



侍「いつの間にそんなの出来る様になったんだよ〜うりうり〜」



首元をホールドされて、頭を拳でぐりぐりされる。
手加減しているだろうが普通に痛い…痛い!



男「割れる!痛い!割れちゃう!」


侍「おぉすまんすまん、軽くやったつもりだったんだが」



腕を何度もタップして解放してもらい、痛む部分を摩る。



侍「で、どうしたんだ?」


男「あれだよ、前のコボルト。あいつ倒したら使える様になった」


侍「へぇ…倒しただけで?鍛錬しないでか?」


男「そう。倒した時にこう…身体から力が湧いてきて…で、使える様に」



ジェスチャーで表現するが、なんだそれと侍に笑われてしまった。頑張ったのに。



侍「おいおい悪かったって、いじけるな。ほれ、お前も呑め呑め」



侍はテーブルに置いたお猪口を持ってきて俺に差し出してくる。

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/29(水) 18:03:20.81 ID:O6DVEjJNO

男「俺、飲んだ事ないし」


侍「だぁーい丈夫だって!案外イけるかもしんねーぞ?」



未成年だし、と思いつつもここは元の世界とは違うからと自分に言い聞かせ。
俺は人生初の酒を飲む。



香り良く、透明で、見た目は水。
口当たり良く、喉が焼け、俺は吹き出した。



侍は大笑いしていた。



─────



翌日。
本日は風姫との謁見の為、俺達は王城へと向かう。
シスターが久しぶりだな〜と呟いていたので、風姫とは顔見知りなのかな。


王城まで着くと、鎧を着込んだ人物が城門前で軽く会釈をする。
その爽やかな笑顔と顔立ちは、俺が女だったら一目惚れしてもおかしくない程クソイケメン。


シスター「風騎士さーん、久しぶり〜!」


風騎士「久しぶり。シスターちゃん大きくなったねぇ。昔から可愛かったけど、今も凄く可愛いね」


シスター「ちょ、もー!やめてってばー!恥ずかしいってぇー!」



シスターは頭を撫でられて、照れ隠しに風騎士なる男の鎧を叩く。
なんやこいつ!とブチ切れそうになるが、親戚のおじさん的反応だと自分を制して深呼吸をする。



風騎士「其方のお二人も、初めまして。僕は風の都、第一精鋭騎士団、団長をやっている風騎士です」



握手を求めてきたので、よろしくと渋々手を握り返す。
次に侍と握手をすると、風騎士は不敵な笑みを浮かべた。



風騎士「貴方…強いですね」


侍「あんたこそな。いつかやり合ってみたいもんだ」



侍も笑みを返し、握手を終えると風騎士は王城内へと案内してくれた。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/29(水) 19:32:28.27 ID:jLrHSg5JO

広いエントランスを通り、二又の階段の踊り場に巨大な鉄製の扉。恐らくここに風姫が居るのだろう。


だが、その大扉には入らず二又の階段を上がり、俺達は客間へと案内される。



風騎士「申し訳ありません。先客の方が少々長引いているみたいで、しばしお待ち下さい」



風騎士は軽く頭を下げると客間から退室する。
俺達は円卓に置かれた椅子にそれぞれ腰掛け、中央に置かれたお菓子を摘んで時間を潰す。



シスター「んー♪おいひー♪」



侍「そうかぁ?甘ったるくてしょうがねぇ」


男「(見た事も食った事もないのに、元の世界の何かに味が似てる。何だったかは思い出せないけど)」



シスター「あ、そういえば勇者様」


男「ん?何?」


シスター「今は私達だけだけど、仲間って今後増やして行きたい?」


男「あー、仲間か」


侍「多いに越した事はないんじゃないか?相手はあの魔王だ」


シスター「でもさ、多いとその分お金もかかるよ?」


侍「この旅だって長引きゃ金も尽きて稼がなきゃならないだろ?早いか遅いかの違いじゃねぇか?」


シスター「そうなんだけどさ。勇者様はどう?」


男「そうだな…」



俺は、今後仲間を───




1 増やしていく
2 増やさない
3 自由安価
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/29(水) 19:40:10.48 ID:6USLjXqDO
1
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/29(水) 20:43:40.78 ID:a3zShowTO

男「増やしていくよ。ただ適当に見繕うよりちゃんと選びたいけどね」


侍「ま、当然だな」


シスター「勇者様が増やすって言うなら私は文句なーし!」


男「はは、ありが───



ドォーーーン!!!



突如、爆音と地震が俺達を襲う。



男「な、なに…?」


シスター「なんだろ…今の音…」


侍「只事じゃねぇのは確かだな、どうする?」



1 皆で行こう
2 俺が見てくる
3 シスターを残して2人で
4 自由安価
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/29(水) 20:45:35.94 ID:PeNvi8YJ0
1
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 18:23:33.46 ID:KxIwakRoO

男「行こう。ここでじっとしてるのも飽きたしね」


侍「だよな!」


シスター「言えてる。とりあえず風姫様の所行こっか」



俺達は部屋を飛び出して案内された道を戻り、2階の通路から中央のエントランスが見下ろせるフロアまで到着する。
1階のエントランスには衛兵が何十人も倒れており、生死は不明だ。



男「一体何が…!」


シスター「酷い…」


侍「……ありゃ死んでるな。ちっ、しかも相当な手練だぜ」


シスター「わかるの?」


侍「ああ。情報は沢山あるからな、それを見れば解る。さぁ急ごうぜ、グズグズしてちゃ風姫が危ねぇ」


男「うん、急ごう!」



階段を降りて、大扉の前に辿り着いた。
この先に"何か"が居る。
深く息を吸い、大扉をゆっくりと押し開ける。


開いた先。
そこに居たのは膝を付く風騎士と、つまらなそうに風騎士を見下ろす謎の男。


俺達は急いで駆け寄り、風騎士の容態を確認する。



シスター「風騎士さん!!」


男「風騎士さん!大丈夫ですか!」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 18:35:08.84 ID:KxIwakRoO


風騎士「…勇者さんにシスターちゃん?…はは、格好悪い所を見せ…ゲホッ!」


「なんだァ?お前ら。邪魔すんじゃねぇよ」


男「…ッ!!」


シスター「あ……あ…」



素人でも十分に分かる。この男は…危険だ。
睨まれただけで俺とシスターは硬直してしまう。

が、その硬直を破るのは───


───侍。



男「侍!?」



前に森で見せた電光石火の如きあの技を謎の男に放つが、その刃は男に受け止められてしまう。




「おいおい!久しぶりだってのに、とんだご挨拶じゃねェか!」


侍「この…!クソ野郎が!!」


「はーっはっは!なんだよ俺ァ会えて嬉しいんだぜ?」



「お前だって嬉しいだろ、なあ?……"弟"よ」






謎の男の職業は
安価下

87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/30(木) 18:36:06.63 ID:PBi8fRUbO
死霊術師
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 12:51:50.31 ID:/I6erM76O

な、なんだと…?弟?侍が?



侍「ふざけんな!死霊術師!てめぇはもう兄貴じゃねぇ!」


死霊術師「そうかい。そりゃ残念だ」



侍の刀を受け止めていた禍々しい杖を軽く動かすと、侍は派手に転んでしまう。



死霊術師「ちったぁマシになったかと思ってたんだが…がっかりだぜ」


侍「うるせぇ!」



すぐに立ち上がった侍は刀を掬い上げる様に斬り掛かる。
俺の目には逆袈裟から斬り掛かった様に見えたが、一瞬で侍は袈裟斬りに切り替わっている。


だがその技は当然の如く死霊術師に受け流され、腹部を杖先で強打されて侍は遠くへ吹き飛ばされる。



シスター「おっさん!!」


死霊術師「なるほどな。さっきといい今のといい…馬鹿かお前。俺に"それ"は通用しねぇのは良くわかってんだろうが。刀なんか使いやがって…お前、"杖"はどうした?」


侍「関係ねぇだろ…!ぐっ…!くそっ…!」



侍は辛そうに腹部を抑えて片膝を付いてしまう。
あの侍がこんな簡単にやられるなんて…。



男「侍──」
侍「来るなッ!!」



見た事のない侍の顔と怒号に、俺は萎縮して動けなくなってしまった。
呼吸を整えた侍は立ち上がり、再び刀を構える。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 12:52:26.00 ID:/I6erM76O

死霊術師「やめとけ。無駄だって───」
風騎士「忘れてもらっちゃ困るよ」



負傷していたはずの風騎士が一瞬で距離を詰め、死霊術師を杖ごと薙ぎ払う。
傷は与えられなかったが、衝撃で地を少し後退りさせる。



死霊術師「ヒュー、危ねぇ危ねぇ。騎士様は教練で不意打ちもやってんのかい?」


風騎士「全く…検討したくもなるよ…!」



風騎士と死霊術師の激しい打ち合いが始まるが、真剣表情の風騎士に対し死霊術師は楽しそうに笑う。
誰が見ても優位は一目瞭然だ。


そしてその激しい打ち合いに、再び侍が迫る。



侍「てめぇは此処で!俺が殺す!」


死霊術師「良い感じに邪魔だよ、お前!」



なんて恐ろしい奴だ。
2人相手だというのに、遅れをとることなく捌き、弾き、躱し、迎撃する。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 12:53:43.54 ID:/I6erM76O

シスター「ね、ねぇ…大丈夫かな、あれ…」



すっかりモブと化した俺とシスターは、ただこの戦いを見守る事しか出来ない。
下手に横槍を入れるなら大人しくする他ないのだ。



男「多分…拮抗してるし、このまま行けば…」



だがその想い虚しく、その拮抗は崩れた。
躱しながら振り回す死霊術師の杖頭が風騎士の顎に当たり、風騎士が糸が切れたかの様に崩れ落ちる。



死霊術師「はっ!やっとくたばったか!」


侍「ちぃっ!」



侍は距離を一直線に詰める。
それに対して死霊術師は杖頭による打突を繰り出すが、その打突は侍の幻影を突く。
当の本人は瞬時に死霊術師の背後に回っていた。



男「あれは!」



侍と勝負をした時に見た技だ。
こうして横から見ても凄い速さ。
鬼気迫る侍の上段、決まった。

91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 12:55:10.06 ID:/I6erM76O

と思ったのに──



侍「……がはっ!」



その刃は届かず、死霊術師の杖先が侍の腹を


貫いていた。



死霊術師「はぁ〜…」



死霊術師は深い溜息を吐き、侍の腹部を貫いた杖を引き抜く。
血が噴出し、侍はその場に倒れ込む。



死霊術師「"空蝉"ってのは本来、間合いで加速して相手の横をすり抜けざまに腹部、振り向いて頚椎を強打する2連打」


死霊術師「さっきの"しょーもない"技もそうだ。ありゃぁ"瞬電"を崩しただけだろ?得物が変わりゃ歩法も感覚も変わる。慣れねぇ事すっから未完成なんだよ、お前の技は」


死霊術師「ま、言っても仕方のねぇ事か。じゃあな」



死霊術師が杖を振り上げ、トドメを刺そうとしたので俺とシスターか咄嗟に飛び出して侍を庇う。



男「侍!おい!しっかりしろ!」


シスター「起きてよおっさん!こんなとこで死んだら許さないから!」



死霊術師「何だァ今更…退けよ」


男「」




台詞or行動安価
安価下
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/31(金) 14:05:08.72 ID:+Hfe/T94O
攻略本の購入者特典のシリアルコードが光を放ち始める
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 14:28:05.84 ID:/I6erM76O

男「や、やめろ!もう良い──」
死霊術師「あ?なんだそれ」



死霊術師と俺は同じ所、俺の持つ攻略本へと目をやる。
本の隙間から主張するような光が漏れている。



男「な、なんだ…?」


死霊術師「……」



死霊術師は杖を降ろして背にしまうと、腕を組んで俺の様子を伺い始めた。
開いてもいいって事なのか。
光が放たれるページを開いてみると……



男「…購入者特典…シリアルコード…」



羅列された数字が光っている。
こんな物まで作っていたのか、凝ってるな。
じゃなくて!何の冗談だこれは。



死霊術師「おい、そりゃぁ何だ?」


男「いや…俺だって訳が…」






開いた事により起きた事安価
安価下
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 14:31:04.94 ID:g6iP37l5O
使役モンスター『狂滅龍』が召喚される
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 15:28:06.40 ID:/I6erM76O

オオォォォォォン…


男「え…今度は何…」



遠く。いや、恐らく外から何かの雄叫びが聞こえた。
シリアルコードの光は既に消え失せ、元の攻略本へと戻っている。



死霊術師「……上か」



死霊術師は見上げると一気に後方へ飛ぶ。
その瞬間、玉座の…いや城の天井を突き破って巨大な黒龍が俺の前に降り立つ。


衝撃で城は揺れて瓦礫が所狭しと落ちてくるが、黒龍が俺達を覆うように羽を広げて落石から守ってくれている。


俺は呆気に取られ、何が起こっているのか分からず黒龍を見据えて呆然とする。
だが、俺が……いや、この攻略本がこいつを呼び寄せたのは間違いない。



男「味方…なのか…?」



俺の言葉に呼応したのか、顔を俺の高さにまで下ろして目の前に黒龍の鼻先が来る。


腰が抜けるくらいにビビるが、俺は怖気付きながらも差し出されたその鼻先に手を伸ばして、撫でてみる。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 15:30:58.82 ID:/I6erM76O

「オォォン…」


男「は、はは……味方…何だな…」



偏に言うならこれは、召喚獣か何かなのか。
刺々しい漆黒の巨体、鼻から生える一本角、爬虫類の様な大きな瞳、巨大を覆い尽くせる程の巨大な翼。


こんな恐ろしいやつを俺が呼び寄せたのか?
もしかして俺は実はビーストテイマーか何かだった…?
流石にこれは規格外過ぎるが…。



死霊術師「はははは!!おいおい!あんちゃんよぉ!お前一体何者なんだァ!?」



黒龍の反対側から死霊術師の声が聞こえる。
どうやら瓦礫の下敷きにはなっていないようだ。
ただの転生者だよと言いたい所だが俺は黙りを決め込む。



死霊術師「まぁいい!思わぬ収穫だ!今日の所は退いてやるよ!次会うときゃぁこのドラゴン!"貰って"くぜ!」



そして、ずっと感じていた死霊術師からの圧が次第と消えていき、俺達は本当に見逃して貰えたようだ。



男「た、助かった……はっ!侍!侍は!?」


シスター「ねぇ……勇者様……」


男「え?なに?」


シスター「前に…私の事、その本で見てくれたよね…覚えてる?」


男「え、あ、うん…それが…?」



そんな事より侍は、と聞きたいが彼女から発せられる声色と雰囲気から言葉が詰まる。



シスター「…嘘、ついた?」


男「え?」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 15:47:20.32 ID:g6iP37l5O
https://i.imgur.com/AUuoOgK.jpg

こんな感じで
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 15:48:44.18 ID:g6iP37l5O
って鼻からツノ生えてるのか…ごめん
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 15:55:12.14 ID:kEWEoR3J0
>>97
破壊竜ガンドラっぽい
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 16:10:37.84 ID:/I6erM76O


─────



俺は風の都の宿に戻り、ベットで横になって天井を見上げていた。

何故かあの後すぐに崩壊した玉座の間に、治癒魔法の使える者と医療班なる人らが侍と風騎士を保護して連れて行ってしまった。


関係の無い者が黒龍に最初は驚いていたが、俺が何を言うでも無く、王城の広大な庭に置かせてもらっている。


シスターが言うには治療も黒龍の事も、風姫様が手配してくれたそうだ。
あの場には居なかったが、見ていたのだろうか?


それに……シスターが言ったあの言葉。
あれが頭から離れず、今も俺の思考を支配していた。


そのままの意味で取れば、俺が読み上げたアレが嘘って事だよな。
でも嘘は言ってなかった筈なんだが…どういう意味なんだ。


シスターは頭冷やしてくると言って、どこかへ行ってしまって俺は今一人だ。
侍の傷が癒えるまでは風の都からは出られないし、シスターも居ないし、俺はどうすれば…。






自由安価
安価下
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 16:11:34.19 ID:/I6erM76O
>>97
え、凄いww
安価下
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 16:18:00.67 ID:qrF14qrRO
黒龍のデータを読む
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 17:46:02.82 ID:mbRDWCfw0
攻略本大活躍だなぁ
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 18:50:49.63 ID:HFXOd/5HO
つまるところ莫大な情報っていう剣にも盾になりうるデタラメな武器だしなあ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 21:51:52.82 ID:zYCOPKPc0
>>97
検索結果に表示されないんだけど‥もしかして俺だけ?
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 14:23:18.91 ID:+2zekXHdO

まぁ……何にせよ、だ。あの黒龍の事を知っておくのは先決だろう。
俺は攻略本を開いて手が止まる。
そういえば、黒龍の名を俺は知らない。


この膨大な量から探すのは相当だぞ…。
一先ず目安として目次を開くと、案外すぐに目当ての項目が見つかる。



男「使役可能魔物一覧……」



ペラペラと捲り、そこに載っている魔物の数は実に数百。
あの黒龍は後ろの方に居た。


─────
●狂滅龍

使役ランク:
S+

種族:
ドラゴン

種別:
固有


概要:
本土外にある孤島に位置する闇の都の山岳地帯に眠っていた古代龍。

同胞を食い殺し、本土大戦時に自ら戦地へと赴いて両軍に致命となる深手を負わせる戦狂い。

巨大な口から放たれる紫炎は全てを滅し、敵味方問わずに焼き付くす。
本土を荒らし回った末、勇者一行により討伐された。


●使役説明
使役可能時間:
6時間

使役時間に関わらず解除した時点で使用者は72時間催眠状態となる。
使役紋章をスライドて使役開始、使役解除。
──────



男「……これは…ヤバいの手に入れたんじゃないか…?」



伝説級じゃね?割とマジで。
気になるのは72時間の睡眠と使役紋章だ。


6時間…狂滅龍を呼んでからどれくらい経ったんだっけ、もうすぐかな。
にしても3日か……長いな。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 14:32:58.87 ID:+2zekXHdO

危機が迫ってる時や死霊術師みたいな…ああいう危険な相手には使って良いと思うけど、普段使いとしては勝手が悪い。


待てよ。どうせ寝てしまうなら今のうちに使役解除とやらをやってしまおう。
俺は起き上がり、使役紋章を探す。



男「んん…?どこだ…?」



手鏡を取りに行き、顔やらを見るが肌が見えている部分には無い。
次に服の袖を捲ると、左手の前腕の表側に刺青の様な紋章がある。
やだ、かっこいい。


早速スライドしようとした時、俺は思いとどまる。
そうだ、3日も寝込むなら書き置きしておかなきゃな。


またシスターに怒られてしまう。
俺は書き置きを残す為に、備品の紙とペンを取り出した。




─────



男「ん…」


シスター「あ、起きた?」



目を開けると、そこにはいつもと何ら変わらぬシスターがベットに腰掛けて俺を見下ろしていた。



侍「よっ!」


男「侍…?え、侍!?」



真横で椅子に座り、腹部を刺されて重体だったはずの侍が居て俺は飛び起きた。
ついでにベットに腰掛けていたシスターは変な声を出して転げ落ちる。


いくらなんでも動くには早すぎないか?
あ、でも3日経ったのか…いや3日だけじゃん!



男「き、傷は…?もう治ったの?大丈夫?」


侍「心配かけちまったよな。ほれ、この通り」



侍は着物をずらして刺されたであろう腹部を俺に見せてくる。
サラシの如く巻かれた包帯の下には傷口があるそうだが、数日激しい運動をしなければ完治するそうだ。
数日て……異世界の治癒魔法ってのは凄いな。



男「そ、そっか…良かったぁ…」


侍「あん時は悪かった、怒鳴っちまったよな。すまん」



両膝に手を置き、深々と頭を下げる侍。



男「いや、良いんだよ。アイツと何があったかなんて聞かないし、行為を責めたりはしないけど」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 14:37:37.33 ID:+2zekXHdO

侍「悪ぃ…」


男「ただ…」


侍「…ただ?」



顔を上げる侍に、俺は拳を突き出す。



男「つ、次はぶっ飛ばせよ」



ちょっと照れくさく言う俺に、一瞬呆気に取られた侍はすぐに歯を見せて笑い、拳を俺に合わせてくれる。



侍「応!」



クサい事やったなと互いに笑い合い、いきなり起き上がるなとさっきからポカポカ俺を叩くシスターの手が止まった。



シスター「あ、そうだ勇者様。風姫様との謁見明日になったけど、大丈夫?」


男「うん、問題ないよ」


シスター「そ、良かった。じゃ、ご飯食べにいこー♪」



飯、という単語を聞いた途端に俺の腹の音が大きく鳴る。
そりゃそうだよな、3日食ってないんだしな。



侍「おーおー、すげぇ音だな」


男「意識したら腹が…早く、飯を……!」


シスター「あはは!じゃ、今日は枝木の上にあるお店ね!」



枝木って少し距離あるよね?腹減って死にそうなんだけど?と口には出さず、俺達は宿を後にした。



─────



翌日。
王城は再建中になっていて、今は入れないそうだ。原因は俺だけど。
風姫と会う場所は、大木の樹頭付近に手を加えた屋外テラスみたいな所。


景色が良く、中心にあるので都全てが見渡せる。
観光気分の俺達の元へ、眼鏡を掛けた女性が近付いて来ていて、俺と目が合う。

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 14:40:35.95 ID:+2zekXHdO

何となく会釈をすると、シスター達も気が付いたみたいだ。



シスター「あっ!風侍女さんだ!やだ、全然変わってないー!」



シスターは小走りで風侍女の前まで行き、俺と侍はシスターが可愛い系ならあの人は美人系だねとか小声で話ながら後に続く。



風侍女「ありがとうございます。シスターさんもお元気で何よりです」


シスター「あれから良い人は見つかったの?そろそろ4──じゅっ!?」



何かを言いかけたシスターの口を塞ぐのではなく、鷲掴む風侍女。



シスター「いひゃい!いひゃああい!」


風侍女「あら…ごめんなさい。悪い虫がいたので…フフ」



あ、笑顔が怖いや。
解放されたシスターは両頬を摩って唸る。



風侍女「失礼致しました。お初にお目にかかります。勇者様。侍様。この度はご迷惑をお掛け致しまして申し訳御座いません」


男「いや迷惑だなんてそんな!仕方のない事と言うか…ね!?」


侍「ん、ああ。流石にアレは災害みたいなモンだろ。それに怪我の手配もしてくれたしな、助かったぜ」


風侍女「寛大な心遣い…感謝致します。それでは、風姫様の元へご案内致します」



風侍女の後について行き、俺はいよいよ風姫とのご対面に少し緊張する。


そうだ、たしかシスターは顔見知りなんだよな。
何か聞いてみよう。




安価下
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 16:11:57.88 ID:UuKj6IYc0
謁見に際しての注意事項を聞いておく(トラウマ等)
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 17:08:33.42 ID:q9mnJIf6O
黒龍強いけど重いデメリット持ちな上に無差別攻撃か……
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 23:25:15.28 ID:TPPrwkbb0
過度にTUEEEEしようとするとデメリットもついてくる感じか
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/02(日) 08:55:33.91 ID:x2zuScLZO
攻略本さんの影が薄くなるぐらい汎用性が高いものは出せないんだろう
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/02(日) 08:58:54.27 ID:htBaUVq10
こんなクソ使いづらいのが攻略本の購入特典と思うとなんか草
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/02(日) 19:25:30.69 ID:DTeVgxHq0

男「ねぇねぇ」



俺は前を歩くシスターに小声で話しかけると、シスターも同調してくれて小声で何?と返してくれる。



男「俺こうやって偉い人に会いに行くとか初めて何だけど…」


シスター「初めてだっけ。光の都で王様と会ってたよね?」


男「あれは不可抗力というか何と言うか……謁見とはまた違う…礼節は当たり前として注意事項とかない?」


シスター「注意…あ、あるかも」


男「教えて教えて」


シスター「あのね、風姫様はすーっっごい人見知りであまり表には出ないんだけど、風姫様が姿を見せたら絶対に驚いちゃだめだからね」


男「それはなんで…?」


シスター「風姫様はね、希少種族の"エルフ"なの」


男「へぇ、そうなんだ」


シスター「……あれ?それだけ?」


男「ん?ああ、エルフって良いよね」



シスターは俺のその様子を見て笑うが、そんなに驚く内容なのか。


耳長族のエルフなんぞ俺からしたら日常的にアニメや漫画で見てきたが、この世界じゃ希少種だから見たら驚く様な物なのかな。



シスター「あはは、その感じなら平気そうだね」


風侍女「到着致しました」



案内されたのは屋外テラスに設置された木造小屋。
言っちゃ悪いがこんな所にお姫様が居るのか。
まぁ俺のせいだけど。


風侍女は扉を開け、中に入るよう諭す。
室内も外見通りというか、質素な部屋だ。


目の前にある長テーブルの向かいには場違いな大きい背長椅子があり、俺達は手前の木の椅子に横並びに腰掛けて風姫を待つ。


風侍女は背長椅子の脇に立ち、しばらく無言の時間が続く。
場の空気に呑まれて俺は沈黙するが、侍とシスターは間にいる俺を介して野営時の飯の内容等を話していた。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/03(月) 13:17:23.31 ID:BkjVffYPO

風侍女「姫様。勇者様方がお見えになられてますよ」


風姫「う、うん…わかってる…けど…」



正面の背長椅子から可愛い声がする。
声はするが肝心の風姫の姿が見当たらない。



シスター「風姫様ー!久しぶり!大丈夫だよーこの人達は良い人だよー」


風姫「シスターちゃん!……あぅ…でも…」



背長椅子の下の方からチラリと金髪と尖った耳が見えた。あの位置に耳があるって事は背が低いのかな。
というか本当に人見知りなんだな。



風侍女「……はぁ」



風侍女はやれやれといった感じで首を振り、背長椅子の後ろに居るであろう風姫に手を伸ばす。



風姫「え、ちょっ!なに、や、やめ!」


風侍女「諦めなさい、これでは話が進みませんよ」



両脇を持ち上げられて出てきたのは金髪の小さい女の子。
その耳はしっかりと長く、先は尖っている。

予想通りというか、本当にエルフなんだなという感じだ。
風姫は風侍女により無理矢理椅子に座らされ、真っ赤を両手で隠してしまう。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/03(月) 13:18:19.58 ID:BkjVffYPO

侍「へぇ、こんな可愛らしいお嬢ちゃんが風姫様なのか」


風姫「か、かわ…!うぅ…はいぃ…」



男「は、初めまして…?風姫様、お逢い出来て光栄です。自分は男と言います」


風姫「か、風姫と申しますぅぅ!」



以前顔を隠したままの風姫に俺はシスターを見やると、あははとシスターは笑い、いつもこんなんだよと言う。



シスター「相変わらずだね。お姫様なんだからもう少し人慣れしなきゃだめだよ?」


風姫「シスターちゃぁん…わ、わかってるんだけど…でもぉ…」


風侍女「姫様」


風姫「ひゃい!」


風侍女「勇者様方も暇ではありませんので、早く精霊を呼び出してはいかがですか」


風姫「う、うん…そうだよね、うん」



顔を隠していた両手をついに下ろし、幼子の様な顔付きがハッキリとわかる。
胸の前に手で空間を空けて合わせると、その空間に風が収束し、塊が生まれる。


次に出来上がったその塊を潰すと、風姫の上辺りに妖精?の様な半透明の女の子が現れる。



風精霊「んにゃ…あれ、呼んだ?」


風姫「あ、寝てたの…ご、ごめんね」


風精霊「もうアレ使うの?……ってそうじゃ無さそうだね。へぇ……キミが次の勇者かな?」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/03(月) 13:24:26.56 ID:BkjVffYPO

風精霊は興味深そうに俺を見る。
関係ないが、空中で両足の裏を合わせて座る風精霊がスカートじゃないのは実に残念だ。



男「はい、まぁ…初めまして」


風精霊「あーあ。ついにこの時が来ちゃったかー、要件は契約者の更新でしょ?大丈夫?あたし居なくて平気?風姫ちゃん」


風姫「だ、大丈夫だよ!………たぶん」


風精霊「あはは!ま、あんたが居れば大丈夫か」


風侍女「……」



風精霊は流し目に風侍女を見ると、彼女は無言で頭を下げる。



風精霊「さてと、契約にあたっての説明だけど…あ、契約って知ってる?勇者くん」






1 知らないけどバッチリ(攻略本を叩いて主張)
2 知りません
3 自由安価

安価下


119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/03(月) 13:48:19.90 ID:xfPIPBOI0
2
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/03(月) 14:10:11.65 ID:AYB5dY0e0
知ったかぶりはよくないもんね
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 12:02:08.76 ID:fToJ3SX4O

男「いえ、契約については何も…」


風精霊「そっかそっか。じゃあかるーく説明するね」


男「お願いします」


風精霊「まず契約ってのは2種類あるんだけど、ひとつはお姫様達と結んでる《魔力契約》」


風精霊「あたし達からするとね、魔力って一人一人"味"が違うんだ。その中でも膨大で質が良くて生成の早いお姫様としか結べないのが魔力契約」


風精霊「次に勇者と聖女が持つ適正があって初めて結べる《元素契約》」


風精霊「これが最高に美味しくてね!適正を持ってると四大元素を無限生成出来るから、あたし達の力も最大限に活用出来る。それが元素契約」


男「……」


風精霊「ん?難しい顔してるけど、何かわからない事があったかな?」


男「あ、いえ…」



俺は適正という言葉を聞いて、攻略本に書かれたシスターの概要欄を思い出す。
特に最後の記述……《適正のない勇者に代わり》……という部分だ。


攻略本の通りなら俺は風精霊の言う元素契約は俺は結べないが、聖女であるシスターなら結べるのだろう。


不自然な空白があったにしろ、それは文章から読み取れる内容だ。
ただ、代償とも書いてあったが風精霊はその事には触れていない。






1 代償について聞く
2 契約の内容はわかった、契約しよう
3 自由安価
安価下


122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 12:02:53.63 ID:cqGqi82DO
1
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 13:12:45.92 ID:aBcVEfSz0
なろう主人公たるもの代償みたいなマイナス要素は、無効化するか逆に利用してむしろプラスに働くようにしてこそだよな
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:27:54.16 ID:fToJ3SX4O

俺は横目でシスターを見ると、たまたま目が合うが、すぐに目を逸らされた。
なんでだ。


まぁいい念の為…念の為だ。
一応聞いておこう。



男「1つ……良いですか」


風精霊「うんうん、何かな?」


男「契約による代償は…無いんですか」


風精霊「……へぇ?」



話している間は笑顔を絶やさなかった風精霊から笑顔が消えた。
訝しむ様な目で俺を見てくる。



風姫「…代償…?」


風精霊「何も知らないって言ってたのに……何で誰にも言った事の無い"その事"を知ってるのかな?勇者くん」


男「……それは」



これは…見抜かれているな。
攻略本の事は伏せてしまったが、代償というのは風姫の反応を見る限り、知られていないみたいだ。



風精霊「ま、良いよ。本当は契約者だけが知る事なんだけど、今回は特別。ご察しの通り、実はもう1つ契約があるんだ。これは物凄くレアで、滅多に見れる物じゃない。それはね、適正を持たない"器"だけ持っている者が結べる《依代契約》」


男「依代契約…ですか」


風精霊「契約の対価として主に五感と身体機能を失う。これは選べる物でも無いし、あたし達にも何が代償となるのかはわからない。これが依代契約」



やはりそういう系か。
定番っちゃ定番だけど。
でも、これから他の精霊とも結ぶとなると…。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:28:32.41 ID:fToJ3SX4O

風精霊「あはは!そんな深刻な顔をしないでよ。たしかに依代契約は対価が大きいけど、器が完成すれば元素契約になるから安心して」


男「そうなんですか?」


風精霊「うんうん。さて、説明は終わりだよ。ちゃちゃっと契約しちゃおうか」



風精霊は体勢を直すと、シスターの眼前へと近付いて手を差し出す。
俺はわかっていても、他の者はそうはいかない。
その風精霊の行動に皆驚いている。


その中でも特にシスターが一番驚いていた。



風姫「えっ……シスターちゃん…?」


風侍女「何を…」


侍「…どういう事だ?」


シスター「な、なんで…?だって私…」


風精霊「察しが悪いな〜勇者くんの質問の意図からわかるでしょ?キミが"聖女"なんだよ。器は未完成だけどね」


男「……」


風精霊「ふふ、やっぱり勇者くんは知ってたんだね」


侍「お、おい…それってつまり依代契約ってやつじゃ…」


風精霊「うん、そうだよ」


風姫「シスターちゃんが…?ほんとに…?」


風侍女「…大丈夫なのですか?何が対価に選ばれるかわからないのですよ」


シスター「…大丈夫」


シスター「えへへ……私…やっぱり…聖女なんだ…ちゃんと……」



聖女と認められて、どこか嬉しそうにするシスターを見て俺は疑問に思った。
前に自分は聖女だって騒いていた筈なのに、何でそんなに喜ぶ?



風精霊「あくまで器、だからね。この契約じゃ四大が揃うまであたしの力は使えないし、繋ぎ止めておくってだけのイメージが妥当かな」


シスター「う、うん…!それでも良い!」


侍「待て待て、勇者じゃダメなのか?嬢ちゃんにそんな契約を負わせるのか?」


風精霊「ここまで来て察しが悪いとは…呆れるね。この勇者くんには適正も、器も、何も無いって事だよ」


侍「何?だがこいつは…」


風精霊「たしかに勇者としての"資格"は持ってるみたいだけど、契約者としての"資格"があるかどうかは別だよ。まぁ勇者が適正を持ってないなんて初めてだけど」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:29:12.52 ID:fToJ3SX4O
undefined
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:30:14.28 ID:fToJ3SX4O

侍「む……そうなのか」


男「ごめんシスター。俺の代わりに契約──」
シスター「良いの!」


男「…?」


シスター「これが…私の"役割"だから大丈夫!謝らないで…ね?」


男「……うん。わかったよ」


シスター「良し!じゃあ、早速結ぼ!契約!」


風精霊「あはは、怖くないんだ?良いね、気に入ったよキミ……いや、シスター」


風精霊「これから宜しく、ちょっとビックリするけど我慢してね」


シスター「こちらこそ!」



差し出された風精霊の手を取るシスター。
すると風精霊はシスターを引き寄せ立ち上がらせ、口付けをする。



シスター「んんーっ!?」


男「なん…だと…!?」


侍「契約の仕方よ」



風姫はキャーと言いながら風侍女に目を塞がれている。
口付けを終えた風精霊は舌なめずりをして、小さく笑う。



風精霊「契約完了♪そしてご馳走様♪」


シスター「……」

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:30:49.64 ID:fToJ3SX4O
シスターは完全に放心状態だ。
適正が無い事をここまで悔しいと思うとは…神託だかなんだか知らないがしっかりしろ!



風精霊「じゃ、しばらくはシスターの中に居るから。用があったら呼んでね〜」



風精霊は俺達に手を振り、存在が消えていった。
待てよ、完了したならば代償は…?
俺はシスターの肩を揺らして正気を取り戻させる。



男「シスター?大丈夫?」


シスター「…はっ!キス!わ、私のふぁーすときすは…!?」


侍「安心しろよ、バッチリ奪われてたぞ」


シスター「安心できるかーっ!」


風姫「だ、大丈夫シスターちゃん!精霊だから不成立だよっ!」


シスター「風姫様!だよね!そうだよね!」


男「それよりどこか異常はない?」


シスター「それよりって何!?代償とファーストキスどっちが大事だと思ってんの!!」


男「えぇー!代償じゃない!?てかキスはノーカンなんでしょ!?」


シスター「うるさぁぁーい!」





風侍女「やれやれ…ですね」



─────



同日、夜。
契約を更新した俺達は翌日にはこの都を発つ。
風の都の最後の飯は宿屋のルームサービスで済ませる事にした。
俺達は飯を食いながら、明日の事を話す。



侍「んで、次は何処に行くよ?」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:31:16.78 ID:fToJ3SX4O
シスター「次は火の都かなー」


男「えーと…そこは何日くらい…?」


シスター「同じくらいだよ」


男「はーー…また5日ですか…」


侍「まぁ良いじゃねぇか。それとも馬車でも借りてくかぁ?」


男「俺は是非そうしたいんだけど…」



俺はチラリとシスターを見る。



シスター「だーめ。勇者様の頼みでも馬車は借りません。だって馬車借りるのって高いんだからね!」


男「この通りよ」


侍「ははは!こりゃぁ諦めるしかねぇわな」


男「火の都…ねぇ。どんな所なんだろ」


侍「どんな所と言われりゃぁ…とにかく暑い」


シスター「私風の都以外行った事無いんだよねー暑いのは知ってるけど。おっさんは行った事あるんだ?」


侍「おっさ──…まぁいい。俺は冒険者だからな、各地はそれなりに回ってるぜ」


シスター「あ、そうだったね。何か名産物とかあるの?」


侍「あるある。火の都と言えば"冷やし麺"は食っとかなきゃな。中毒性でもあんのか、あれはハマるな、うん」


男「冷やし中華とはまた違うのかな」


侍「ちゅうか?なんだそれ」


男「ああ、俺の居たトコにはあったんだよね。冷えた麺に酸味のあるスープと好きな具材を乗せて食べるんだ」


侍「おーそれだよそれ、火の都の冷やし麺まんまだぜ」


男「あ、そうなの?それはちょっと楽しみかも。好きだったし」


シスター「二人だけ知ってるのずるい!私も食べたい!」


男「じゃあ馬車借り───」
シスター「それはダメ」


男「…はい」


侍「ははは。あと暑さ対策はしておけ、あの地域は本当に暑いからな。明日出立の前に涼しい服を買っても良いかもしれんぞ」


男「良いね、いい加減このシャツにジーパンも飽き飽きしてたし」


シスター「そういう事なら…まぁ。勇者様の所じゃ、そういう服装が普通なの?」


男「まぁ割と…普通だと思う」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 20:34:35.74 ID:fToJ3SX4O

シスター「へぇ〜」


男「変?…かな」


シスター「いやいや!似合ってるよ!珍しいなーって」


侍「確かにな。同じ材料はあっても、こういう風には作ってないさ」


男「やっぱ目立つか。やっぱり明日は服を買おう。この世界らしいやつを」


侍「風の都は薄くて風通しの良いやつが多いからな、丁度良い」


シスター「私は別にこのままでも涼しいけど…どうせなら買っちゃおうかな…良いかな?」


侍「良いんじゃねぇか?女は粧してなんぼだ」


男「」



俺も何か言ってあげよう。
台詞安価

安価下2
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 20:35:36.78 ID:fToJ3SX4O
見切り発車で始めたこれ、思い付いたのポンポン書いちゃうから
設定の矛盾とか生まれたりしそう
安価いつも感謝
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 20:40:44.88 ID:51iq4V800
修道服から着替えるなら、呼び名も変えたほうがいいかな?
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 20:58:01.92 ID:2MfKxVBj0
これは安価として取ったのかしら
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 21:03:56.87 ID:fToJ3SX4O
ん?ってなったので一応
職業=名前
にしちゃってるので、修道服を脱いでもシスター呼びで!
再安価下
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 21:07:59.11 ID:J9uSOu1+O
似合いそうな服を探すの手伝うよ(攻略本の装備欄を見ながら)
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 21:13:50.55 ID:51iq4V800
本気でシスターから呼び名を変えて欲しくて言ったんじゃなくて、単なる話題ふりのつもりだったんだけど、紛らわしかったならごめんね。
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 21:34:04.11 ID:fToJ3SX4O
>>136
確かにそういう風に話題振れた!
字面のまま受け取りすぎて申し訳ない!次は気を付けます!
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 21:37:02.19 ID:/gbRdPPjO
長くならずに済むなら両方拾ってあげてもいいんじゃない?
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 22:12:59.45 ID:fToJ3SX4O

男「修道服から着替えるなら、呼び方も変えた方が良いかな?」


シスター「え?なんで?」


男「だって修道服脱いだらシスターじゃ無くなるじゃん」


シスター「これ脱いだって私がシスターである事には変わらないけどー!」


男「そうだよね。会った時からシスターとしての振る舞いが出来てないから服替えても変わんないか、ははは」


シスター「ちょっとぉ!どーゆー意味なのそれー!」


男「冗談冗談。お詫びに似合いそうな服を探すの手伝うよ」



勇者様意地悪かー!という声を聞きながら俺は攻略本を取り出して、装備一覧を開く。
そこには写真付きの装備だけではなく、一般服は都事にまとめられている。



男「おー…いっぱいある」


シスター「そんなのも載ってるの?それ」


男「わりかし何でも。物なら本当になんでもあるんじゃないかな」


侍「すげぇよなぁそれ。直接目で見なくても良いなんて便利過ぎだ」



最初はなんだこれと思ってた攻略本も、何だかんだで有用性は高い。



シスター「でも私には見えないしなー…」


男「んだよね。シスターは……」



シスターの見た目は黄髪の背中くらいまであるロングヘアに碧眼。
頭巾?は着用していなくて、修道服は髪色と良く合っている。
身体の凹凸も無い訳じゃないが…まぁ普通だな。



シスター「ちょっと、今変な事考えなかった?」


男「まさか、気のせい気のせい」

140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 22:14:26.90 ID:fToJ3SX4O

服のセンスなんて皆無だし、完全に俺の好みになりそうだな。
それに攻略本を見る限り風の都は緑基調が多い。


緑の服に黄髪も似合わない訳では無さそうだが。
涼しい服のとなると腕は出てた方が良いよな…下はスカートにするか…?


俺はしばらく本とにらめっこをし、天啓が降りた。



男「……んー、これにするか」


シスター「え?決まったの?」


男「決まった。明日を楽しみにしてて、多分似合うから」


侍「こりゃ楽しみだな。勇者様直々のお仕立てだぜ?」


シスター「う、嬉しいけど…ちょっと不安…」


男「ははは…自信は無いけど」



─────



翌日。
俺達は旅立ちの前に服飾屋に訪れ、新しい服を新調していた。


俺は昨日見た服が売っているのを確認し、集めてシスターへと手渡して試着待ちをする。



侍「で?一体どんな服にしたんだ?」


男「まぁ見てのお楽しみだよ」



そうこう言ってる間にシスターの試着が終わり、試着室のカーテンが開かれる。






シスターの服装
安価下
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 22:28:40.52 ID:qWyilzUiO
氷結晶のドレス(スキル:暑さ耐性(大))

【説明文】様々な形の氷の結晶が散りばめられたドレス。これを買うか買わないかで火の都周辺の攻略難易度が大きく変わってしまうのだが、この装備を販売している衣服店の場所がとても分かりづらく、事前の情報無しで辿り着くのは最早不可能(場所についてはマップを参照)。
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/04(火) 22:32:36.45 ID:51iq4V800
さすが攻略本さんだぜ!
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/05(水) 11:39:45.65 ID:Vlsi4CK2O

開かれたカーテンの先には、蒼く煌めくドレスを着たシスターが恥ずかしそうに立っていた。


様々な形の氷の結晶が散りばめられ、ウェディングドレスに近い形状をし、大きな薄青の肩ベールにより上品さが一段と増し、束ねた髪を後ろでまとめていて普段のシスターからは感じる事の無い艶やかさを醸し出す。



シスター「ど、どう…かな…」



ベールを絡めてくるりと回って魅せるシスターの動きはぎこちなく、思わず顔が綻んでしまう。



男「うん、似合ってるよ」


シスター「…!あ、ありがと!」


侍「でもよ勇者……こんなの何処で見つけてきたんだ。風の都にこんなモン売ってたか?」


男「まぁ…俺にはコレがあるからね」



攻略本を軽く叩き、侍は顎をさすって苦笑いする。



侍「ほんとに何でも知ってんなぁ…それ」


シスター「で、でもこれって…凄く高いんじゃない…?」


男「まぁ、うん…」


侍「どう見ても逸品だしな」



半年衣食住に困らない軍資金の半分の値段はするこの《氷結晶のドレス》
このドレスのスキル効果を見るに火の都で役に立ちそうだが、値は張る。



シスター「高いならだめだよ……もっと安いのにしよ」



歯切れが悪い、欲しいのかな。
買ったとしても1~2ヶ月分くらいの金は余るが、近いうちに日銭稼ぎも始めなきゃならなくなる。



侍「買うのか?」





安価下
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 11:45:29.53 ID:SGOqBjkQO
なーに攻略本さんなら資金稼ぎの裏技も知ってるさ

購入
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/05(水) 13:08:26.49 ID:Vlsi4CK2O

男「買おうか」


シスター「えっ!?い、いいの?……じゃなくて!ダメだよ、高いし…」



財布を握るのはシスターだというのに、迷いが見え見えだ。
もう一押しだな。



男「でも、欲しくない?」


侍「買っとけ買っとけ。折角勇者が嬢ちゃんの為に見繕ってくれたんだ」


シスター「欲しい……けど、この先の事考えると…」


男「なーに、この本があれば金稼ぎなんて楽勝だよ」



知らんけど。
あるでしょ、効率的な資金稼ぎ方法…みたいなの。



侍「そうそう。その辺の事は勇者がやってくれるさ」


シスター「そんな事まで……凄いね。じゃあ……か、買っちゃおうかな…?」


男「うん、良いよ」


侍「決まりだな」



まだ渋りそうなシスターにそう言うと、不安そうだったシスターの口元が緩み、本当に嬉しそうに口角が上がっていく。


痛い出費だが、ここまでシスターが喜んでくれたのなら安い買い物だ。
シスターはお会計済ませるねと、カーテンを閉めてドレスを脱ぎ始める。



侍「さて、次は勇者だが……自分の分は決まってんのか?」


男「目立たない服で薄着なら何でもいいかな。稼げるとはいえ、流石に高額なのは怖いな」


侍「そういやその稼ぎ方ってのはどんな方法なんだ?」


男「えーっと…ちょっと待って」



俺は攻略本を取りだし、そんな方法が載っているかを探す。
だが……あるんだよなぁ〜!流石攻略本だよ。



男「あったあった。えーとね───」







資金稼ぎ方法(勝手に設定作ってもOK)
安価下
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 13:38:55.72 ID:dI37QbXz0
召喚魔法でゴールデンと名のつくモンスターを繰り返し召喚し、乱獲することで手に入る換金用アイテムを売却する。ゴールデンと名のつくモンスターにもランク差があり高ければ高いほどいいものを落とすが、その分倒しづらくなる。これらのモンスターは通常のエンカウントでは相当運がよくなければまず出会えず、基本単体でしかでないので、この方法はとても効率がいい。なお経験値は雀の涙。
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/05(水) 14:28:15.18 ID:Vlsi4CK2O

男「侍は知ってる?ゴールデンと名がつく魔物の事」


侍「ゴールデン…まさか、あの滅多に遭遇出来ないって言われてる魔物の事か?」


男「そうそれ。そのゴールデンから換金素材を売りまくるって方法」


侍「……いや、それが出来るなら──」
男「召喚魔法がある」


侍「…何?召喚魔法?」


男「そう。ゴールデンを無限に召喚出来る魔法がこの世には存在する」


侍「まさか…!勇者……!」


男「くく…御察しの通りだよ…!」


侍「使えるのか!?」


男「……え!?使えないけど!」


侍「何!?…んん!?今の流れは…そうだろ!」


男「違う、"覚える"んだ。俺は仮にも勇者だし、可能性はある!」



何を隠そう俺には《神託》というシステムが付いていると、スタッフインタビューに書いてあった。
つまり俺の解釈が正しければスキルを授けるのも神託というシステムの筈だ。



侍「覚えるって……ぶははは!大した奴だなおめぇさんは!楽観的にも程があるぜ!」


シスター「どうしたのー?大笑いなんかして」



お会計を済ませたシスターが大きな包み袋を持って帰ってきた。



侍「応!聞いてくれ嬢ちゃん!」


男「くくく…聞いて驚くなよ…」


シスター「うん?」



先程見つけた資金稼ぎ方法をシスターに説明した。最初のうちは凄い!とか言っていたのに、最後の方はへぇーしか言わなくなり、ゴミを見るような目はしばらく忘れられそうにない。


148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 14:28:52.16 ID:RdjYgy6wO
召喚士たすけて
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/05(水) 21:01:48.65 ID:Vlsi4CK2O


─────



3日後。
昼食を終えて数時間、遠くには砂地が見え始めた。



侍「火の都の領地にもうすぐ入る。あの辺から同じ陽の光でも体感温度が変化するから着替えておけよ」


男「あれか、火の都は砂漠に囲まれてるのか?」


侍「囲まれてるのは確かだが、都付近はそうでもない。途中からは混凝土で出来た道になる。砂や砂利には困らない所だしな」


シスター「へぇ〜おっさん詳しい」


侍「見聞を広めるのも冒険者の一環だからな……って誰がおっさんだ!」


シスター「あははは!もう慣れてよ〜」


男「飽きないね、そのやり取り。ちょっと早いけど着替えようか。今日中にはあそこで野宿するんだろうし」


シスター「うん。でもここじゃアレだよね……」


侍「なんでだ?ここで着替えれば良いだろう?」


シスター「は?何言ってんの!こんな道のど真ん中で着替えれる訳ないでしょーが!」


侍「そうかぁ?誰も見てねぇだろ」



ははは、何を言ってるんだこいつは。
良いぞ、もっと言え。
俺は無言のエールを侍に送る。

150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/05(水) 21:05:12.04 ID:Vlsi4CK2O

シスター「見るじゃん!二人とも!」


侍「別に見ないが。嬢ちゃんの着替えに興味ないしな。だろ?」



俺に振るか!?
興味あるに決まってんだろ!



男「まぁ…うん…」


シスター「ぐぬぬ…!それはそれでムカつく…!とにかく!ちょっと先に大きいな茂みあるから!そこで着替えるから!」


侍「何怒ってんだよ?着替えひとつでそんなに怒る事ねぇのになぁ…おめぇさんもそう思うだろ?」


シスター「馬鹿!バーカ!」


男「は、ははは…」



いちいち俺に同意を求めるんじゃねぇーー!!
しばらく進んだ俺達は、大きな茂みの中で服を着替え始める。


シスターはやっぱり服が汚れるからと、近くの木の裏で着替える事になり、俺も男同士とはいえ生着替えを見られるのは何かなと思い、茂みで着替える。


俺が購入したのは、黒いインナーシャツと紺色の半袖パーカーに、紺色の膝下まであるハーフパンツ。


らしき物だ。
正確には違うだろうが、近い形をしている。


生地は分からないが風通しが良く、これなら暑い所でも大丈夫そう。
風の都特有の刺繍や柄のおかげで、この世界に馴染んだ服装になっているはずだ。


俺はジーパンに手を掛けて脱ぎ、ふと近くの背の高い草むらの奥が変に空間を作っているのに気付く。


なんか変だな。
俺はハーフパンツを履くと、その空間へと近付いていく。



男「え」



そこには───




倒れていた者安価
【種族】
【職業】
【性別】
【強さ】


安価下
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 21:06:25.80 ID:RdjYgy6wO
【種族】魔族(魔王の娘)
【職業】召喚士
【性別】女
【強さ】単純な戦力比較で言えば侍より微妙に下。なお武術は全然ダメ
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 21:31:10.28 ID:dI37QbXz0
これは運命の出会いですね間違いない
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 00:48:03.86 ID:yB9IuN6o0
まぁ全く使えない手段だったら攻略本に書いてないだろうしなぁ
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 00:56:57.22 ID:5L23YPcMO
攻略本に運命を決められてるみたいでちょっと怖いな
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 12:22:10.16 ID:yB9IuN6o0
魔物使いの裏切り者枠ならキャル?魔王の娘ならロザリンド?
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 17:53:21.93 ID:rmHWl6CGO

長い銀髪の女の子がうつ伏せに倒れていた。



男「……マジ?」



落ち着け俺。
まずこういう時はどうするんだ?とりあえず意識の確認?
とりあえず女の子の背に手を置き、揺らしてみる。



男「あ、あのー…生きてますかー…」


「んに…」



女の子は寝返りをうち、その全貌が露になる。
とりあえずは生きてるな、良かった。
それが分かると少し落ち着いて、寝息を立てる女の子を観察する。


近くに大きめのリュックと、魔法陣の描かれた本。
頭に黒いリボンを結び、膝裏まであるマント。
股下まである黒色のチュニックにサイハイブーツによって見事な絶対領域が完成している。
スカートや短パンは履いてない…だと…。


そして服の上からでもわかる。シスターよりも…でかい。


年齢はどのくらいだろうか。雰囲気は年上なんだがな、身長は俺とシスターの間くらいだけど。
俺はその場に座り込んで女の子…いや、お姉さんの事を考えていると、ふと悪魔の囁きが聞こえてきた。



この服丈が短いよ〜誰も見てないよ〜
覗けるよ〜見ていいよ〜



……ふむ。
って馬鹿か!俺はそんな変態じゃない!
俺は煩悩退散とばかりに顔を振り、とりあえずもう一度起こそうと手を伸ばす。

157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 17:56:27.64 ID:rmHWl6CGO

その直後、背後からガサガサと茂みを掻き分ける音がした。



侍「何やってんだぁ?遅いから見に来た…が…」


男「あ、侍」



俺は身を乗り出して、お姉さんに手を伸ばしている状態なんだが、それを見た侍は大きな溜め息を吐く。



侍「…おめぇさん……いくら嬢ちゃんが好みじゃないからって…」



侍は目頭を抑え、首を振る。



男「…は?」



そのまま近寄って来た侍は俺の肩に手を置き、再び首を振る。
なんだその仕方ないよ…みたいな爽やかな顔は。



侍「俺は何も見なかった…だから手遅れになる前に戻…逃げようぜ」


男「は!?待て待て!違うから!」


「んにゃ……うるさ…ぃ…」


侍「おい起きたぞ!逃げた方が良いんじゃねぇか!?」


男「何でそっちの方向に持ってくの!?何もしてないし見つけただけだコラ!」



俺はふざける侍にヘッドロックをキメていると、いつの間にかお姉さんは上半身を起こしていて、辺りを見回した後に疑問符が見えるくらいに首を傾げて悩む仕草を取る。



「あれ、れ?」


男「あ!起きたみたいだね!」


侍「いででで!」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 18:21:50.54 ID:rmHWl6CGO

「ふぁぁ……あなたたち、だれ?」


侍「なに、怪しい者じゃない。俺ぁこいつが淫行に走るのを止めた──」
男「その口を閉じろォ!」


侍「冗談だってぇ!」


「いんこー?」


男「え?そんな事言ったかな?HAHAHA!それよりこんな所で一人で居たけど、大丈夫?」


「大丈夫、というのは、何が、かしら?」


男「えっ」



お姉さんの発言に呆気に取られ、技をキメていた侍は抜け出し、俺の襟首をグイっと引っ張る。
俺達はお姉さんに背を向け、座り込んでコソコソと話し始めた。



侍「おい、何かこいつ変じゃねぇか?」


男「いや…こんな所で倒れてたくらいだし、ちょっと混乱してるだけじゃない…?」


侍「にしてもだろ。喋り方もなんつーか……な?」



確かに吃音症みたいな喋り方だと一瞬思ったけど、何と言うか…雰囲気は柔らかく、眠そうな声色が不思議ちゃんオーラを醸し出す。


とにかく、元々そういう喋り方みたいな感じがする。
俺に言わせるなら、おっとり系のお姉さんだ。



「…無視、しないで、ほしいわね」



後ろから…いやほぼ真後ろから俺と侍の顔の間にお姉さんが割り込んでくる。
当然、身体は俺達にくっ付く訳で。


男「あひぁ!?」

159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/06(木) 18:32:02.07 ID:mNv3zAdM0
支援
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 18:37:09.33 ID:XIrDKjhTO
シスターちゃん描いてもいいの?
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 18:42:15.64 ID:rmHWl6CGO

平静を装いたい。おっぱい。
この二つの感情が意識の支配権を争って殴り合ってらぁ!



侍「ああ、悪ぃな。無視してた訳じゃねぇんだ」



何で侍は平然としてるの?ホモなの?
実は女慣れしてる?童貞じゃない?
…俺、許せねぇよ!



男「この…裏切り者め」


侍「…?どうした、急に」


「それより、お腹が、空いたわ」



お姉さんは俺達から離れると、フラフラと自分の手荷物であるリュックを漁り始めるが、すぐにその手は止まった。



「あら、ら?」


男「…もしかして、ご飯ないの?」


「…そうね。そうとも、言うわね」


侍「なんだそりゃ…あぁ、そうだ」

162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 18:47:37.74 ID:rmHWl6CGO

何かを思い付いたのか、侍は着物の胸の中をまさぐる。
その中から出て来たのは揚げたイカゲソが包まれた透明な小袋。


侍「これならあるぞ、ミニクラーケンの足揚げ。食うか?」


「…あなた、へんなもの、持ってるのね」



フラフラとした足取りで、侍から小袋を受け取るお姉さん。



「でも、いただくわ、ね。ありがとう」


男「侍さぁ…何でそんな物をそんな所に忍ばせてんの?」


侍「そんな物とは酷ぇな、この足揚げ結構イケるぞ」


男「いや、そういう事じゃないんだよなぁ…」


侍「なんだなんだ、変な奴だな」



お前が言うか、と思うだけで口には出さない。
それよりこのお姉さんの事だ。このまま置いていく訳にも行かないし。



男「お姉さん。俺達これから火の都に行くんだけど、良かったら一緒に行かない?侍も良いよね?」



もぐもぐと口を動かすお姉さんは、口からゲソがはみ出したまま頭を傾げる。



侍「まぁ…放っておく訳にもいかんしな」



顎をさすりながら、若干渋りながらも同意してくれる侍。
たしかに素性の知れない人物を同行させるのは気が進まないか。


ゲソを食べ終わったお姉さんは空を見上げ、ぼけーっとしていると、ゆっくり俺達に目を向ける。



「…そうね、おねがい、しようかしら」




163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 18:55:50.87 ID:rmHWl6CGO
>>160
良い!!
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 22:17:28.77 ID:rmHWl6CGO

謎のお姉さんの了承を得た俺達は、支度をして茂みの中からシスターが待つ道へと戻る。
お姉さんは何故か魔法陣の描かれた本だけ持ち、リュックは置いてきてしまっていた。


理由を尋ねた所、もういらない、だそうだ。
茂みを抜けると椅子を出して待ちぼうけしてるシスターを見つける。


やはりドレスを着ていると別人にしか見えないな。言動はそのままだけど。



シスター「遅かったじゃ──ん……?その人は?」


男「茂みの中で倒れてたんだ。火の都まで同行させても良い?」


シスター「あんな所に?それに同行って…」



シスターは良いの?と無言で侍と俺を交互に見る。その辺の了承は得ているからと、無言で頷き返す。



「迷惑、かしら…?」


シスター「んーん。二人が良いなら私は別に。そうだ、名前は何て言うの?」


召喚士「…召喚士、よ。魔物を、召喚したり、出来るわね」


侍「へぇ、お前召喚士だったのか。その本は召喚書だな?」


召喚士「ええ。そう、なるわね」


男「召喚士かぁ……ん?待てよ?」


シスター「どうしたの?」


男「召喚士はもしかして何だけど、ゴールデンの名がつく魔物を召喚出来たりは…?」



俺の発言に侍とシスターがハッ!と顔を見合わせ、一斉に召喚士に視線が集まる。



召喚士「ゴール、デン?…さて、どうだった、かしらね」





1 使える
2 使えない
3 自由安価
安価下
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/06(木) 22:18:56.87 ID:mNv3zAdM0
1
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 22:42:03.71 ID:yB9IuN6o0
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