とある幻想の蜂蜜聖夜

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27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/02(月) 03:23:23.82 ID:hKRs52pD0

なので、

「(…おい、お前。少し耳をかせ)」

「(…?何かしらぁ?)」

「(正直、私はお前に興味がない。何度か会っているが、再会するたびに初対面みたいな挨拶するのには違和感を感じたが、何か事情があるんだろうとしか思ってないし、別にどうにかしようとも思わなかった)」

「(…っ)」

 思い出されるのはイギリス。まだ戦争が終わっていない頃。上条当麻の右手を抱えた彼女は、違和感を感じ口に出そうとした彼女に口封じをしている。というか、オティヌスは食蜂操祈のことを右手の件然り、ウィンザー城でのこと然り、厄介ごとをさらに厄介にさせる面倒な女だとも思っていた。

「(…まぁでも、あの人間はお前と話したいらしい。勘違いするなよ、色恋の話じゃなく、過去の上条当麻についての情報を求めている。私はアレの『理解者』を自称しているが、その点については力になれない)」

「(…つまり?)」

「(1日だ)」

「(今日1日だけ、こいつを貸してやる。こいつが求める以上を求めるなら、今日1日で進めてみせろ)」

 それは神としては非常に珍しい譲歩であった。少なくとも気に食わない女にこの男を貸し与えることなど、意外と嫉妬深いこの女神には信じられないことである。

「(…随分と上から言うのねぇ)」

「(当然だ。私は魔神でありこいつの『理解者』だからな)」

 実質的な周回遅れ宣言に、食蜂は笑みを浮かべる。事実であったし、むしろリタイア組だと思っていた。周回遅れでも、復帰できたことが奇跡だ。それが気に食わなかったのかオティヌスは口をへの字に曲げ、背を向ける。

「…ふんっ。人間、私は帰る。あとは自分一人で何とかしろ」

「えぇ!? 本気かオティヌス!?」

「あぁ。朝帰りは許さんからな。少しでも遅れたら全部禁書目録に話す」

「サー!必ず帰宅しますサー!」

「じゃあな。全く…」

(楽しそうにしやがって。嫉妬で怒り狂いそうだ)

 本当のリタイア組とは誰のことか。そんなこと、誰よりも自分がわかっている。自分は決して『理解者』以上にはなれないのだと。そしてそれが、自分の罰なのだと。妖精は一人、溢れる雫を帽子で隠すようにして立ち去るのであった。

「…さて、どうやって帰ろうか」

28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/02(月) 03:24:07.98 ID:hKRs52pD0
 
___

「アイツどうやって帰るつもりなのかな…?」

「? その、魔術とやらでどうにかならないんですかぁ?」

「あぁ…そう言うのは今は出来ないんだよ…今からでも追いかけようか」

「いえ、そう言うのはやめてあげたほうが…」

「そうか? というか何で敬語?」

「えっ、あぁいや、上条さんは先輩ですしぃ?敬語力上げた方が後輩っぽく見えませんかぁ?」

「あぁそういえば中学生だった…ほんと今でも信じられん…」

「ふふっ、でも昔のあなたには陳腐力な胸って言われたんですよぉ☆」

「ちょっと待って、昔の俺最低すぎない??俺より幻想殺しをうまく使えるかもなんて幻想がぶち殺されそうだよ??」

 勿論、1年前の食蜂の胸はそれはもう御坂美琴並みなので間違いではないのだが。まぁ普通に考えてそれを女子中学1年生に言うかという話だ。

 それはともかくとして、

「でもまぁ、さっきの様子からして敬語が無い方が素だろ?別に気にしないから、話しやすい方で話してくれよ」

「………上条さんって、ほんと無遠慮に距離力詰めてくるわよねぇ」

「あれ!? なんか間違えた!?」

 こんな調子じゃ心臓が耐えられそうに無い。せっかくこの人の周りにいなそうなわんこ系後輩キャラで印象付けようとしたのに、だ。そんなことしなくても金髪キラキラお目目巨乳女王様系中学生で属性過多なのだが。食蜂はとっさに首元のホイッスルに触れて落ち着こうとする。

「…それも、俺が関わっているのか?」

「…えぇ。私にとって、一番大切だった思い出の」

 安っぽいホイッスル。全身高級品で身を固めた彼女には全く似合わず、だからこそ昔の自分があげたのではないかと推測できる一品。

「思い出、だった?」

「…今日、その思い出を超えてくださいねぇ、上条さん☆」

「げっ、ハードル上げてきやがった」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/02(月) 03:24:33.89 ID:hKRs52pD0

 別に特別なことをしなくても、きっと超えていただろう。しかしそれは食蜂操祈に罪悪感がなければ、の話だ。

 ウィンザー城の傷跡は大きく、相手は過去の自分だ。お姫様はまだ、完全には救われていない。

 だからこそ、今の自分が救ってみせろ上条当麻。
 彼女はお前の手を待っている。

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/02(月) 03:25:02.54 ID:hKRs52pD0


「…よし、んじゃ行くか」

「………はい!」


 差し出された右手をぎゅっと握り返して、
 蜂蜜の甘い香り漂う、幻想的な聖夜が始まった。


31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/02(月) 03:28:58.56 ID:hKRs52pD0
とりあえずここまで。
誤字脱字、口調の違和感等あれば教えていただけますと幸いです。

>>26 機械→機会
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/02(月) 10:08:47.68 ID:oR4LFurro
おつんつん
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/02(月) 14:43:27.39 ID:aFP1csVBo
おつ
待ってた甲斐があった
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/15(水) 01:36:21.11 ID:JPeKiHwLo
待ってるんやで
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/12(月) 13:40:24.32 ID:v7tAzAy2o
まだかな……
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