【百合モバマス】南条光・小関麗奈「罪色カタルシス」【ヒーローヴァーサス】

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1 : ◆K1k1KYRick [saga]:2020/04/01(水) 21:32:27.50 ID:cPpLvxGd0
※南条光と小関麗奈の百合SSです。登場人物は全員八年分育っています。
※光(22)は巨乳になっています。麗奈(21)のお山は横這いです。






「……」

レッスン後、シャワーを浴びながらアタシは自身のカラダを眺めた。

最初は気にならなかったけど、ここ六年でアタシの体は随分と女のカラダに仕上がってしまった。

腕で隠しきれない盛り上がった胸が恨めしい。

   #  #  #


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1585744347
2 : ◆K1k1KYRick [saga]:2020/04/01(水) 21:33:24.40 ID:cPpLvxGd0
「ヒロイン役……?」

二十二歳になった時、プロデューサーから言い渡された役はヒロイン役だった。

努力の甲斐あってデビュー後二年目で手に入れたヒーロー役……

「特撮と言えば南条光」が合言葉みたいに流行って、アタシもそれを誇りに思っていた。

正直まだまだメインヒーロー役を続ける気でいたし、降りる時期でもないと思った。

「言っておくが、別にこのオファーはヒーロー役としてのお前を否定している訳じゃないからな」

プロデューサーは資料を手渡し、ついでに説明を続けた。

「その証拠に光のアクションについての評価は全く落ちていない。
 だが光、お前のヒロイン役を切望する声は日増しに増えてきている。
 無視するのは得策ではない。需要があればそれに応え、演技の幅を広げていく。
 これはそうした仕事の一環だ」

分かってるつもりだ、プロデューサーはアタシの夢をしっかり汲んで

早くから特撮の営業をしてくれていた。

スタント顔負けのアクションをこなす特撮アイドルという評価を得たアタシは

四作目で初めて女性でレッド役に抜擢された。

「……」

「光、お前も年頃だし女性として十二分に魅力的なアイドルに育っている。
 マンネリ感を拭う意味でも、このヒロイン役はマイナスにはならない」

結局アタシはその仕事を受けた。

……だけどどこか吹っ切れていない自分がいた。
3 : ◆K1k1KYRick [saga]:2020/04/01(水) 21:34:38.51 ID:cPpLvxGd0
   #  #  #

熱いシャワーが肌を撫でていくうちに、高校の休み時間を思い出した。

教室の後ろの方で、アタシの出ている雑誌を片手に語っていた男子の猥談が今も耳に残っている。

『光ちゃんの体ってホンット最高だよなぁ……』

『ああ、新シリーズになる度におっぱいおっきくなってる気がするわ』

『いや、なってるだろ。この間の回のアクションシーンなんてスゴかったぞ
 オッパイがたぷたぷ揺れてた』

『この前プールに怪人が来た回も神回だったよな。
 光ちゃんの水着姿だけでも貴重なのに、きゅっと締まったヒップに
 水着が食い込んでたハイキックシーンがマジ最高だった……』

廊下ですれ違う度に異性の好奇な視線が突き出た胸や尻に吸い付くのを感じていた。

その熱の籠った目を向けられている、体が焼けてしまいそうで怖かった。

体がどんどん女の子になっていって、男の子と違っていくのが怖かった。

組んだ腕の上にデンとふてぶてしく乗っかる乳房。

……こんなのより、背が高くなって欲しかった。

未だにアタシは一五五センチを越えていない。

なのに胸だけ九十二センチもあって何の役に立つだろう。

可愛いとかエッチだなんて言われても、全然嬉しくなかった。

胸なんか大きくなっても重いし、走る時上下に揺れて千切れそうに痛いし

男の子にはヘンな目で見られるし、良い所なんて全くないのに……。
4 : ◆K1k1KYRick [saga]:2020/04/01(水) 21:35:05.67 ID:cPpLvxGd0
   #  #  #

「……アンタ、アタシにケンカ売ってるの?」

事務所の食堂でアタシは麗奈に相談していた。

彼女はアタシとか対照的な成長を遂げている。

すらりとしたカラダには無駄が一切なくて

軽やかなステップに靡くストレートヘアには癖毛一つ見当たらない。

キュートとクールが調和を保って同居している、青々しく反り立つ若竹のような美女。

彼女は今やトップモデル兼歌手になっている。

デビューして数年の内にファッションリーダーとして

男性ファン以上に女性ファンから熱く支持されるようになった。

「いや、そんなつもりは……ちょっ……! ちょっと、麗奈ぁ!?」

麗奈は身を乗り出してアタシの乳房に悪戯を始めた。

「一体何を食べたらこんなに差が出るのよ」

「あっ……そこ、触っちゃ……! んぅ……!」

乳房の下部を麗奈は手の甲でトントンと叩いてくる。

人形のように綺麗な彼女の手は、アタシの下品な大きさの胸にすっかり隠れてしまっていた。

「ホント何よ……この嫌味ったらしい重みは!
 半分くらい分けなさいよね、全く……」

「うう……分けられたら、分けてるよ……」

アタシはジンとする胸を抱えて縮こまった。

何で麗奈に相談したのかというと、今度の特撮で彼女とアタシは共演するからだ。

以前に魔法少女の麗奈と映画でコラボしていて、今回はその延長線とも言える縁だった。

監督は彼女を戦隊もののリーダーに抜擢した。

それはアタシがここ数年守ってきたポジションだった。
5 : ◆K1k1KYRick [saga]:2020/04/01(水) 21:35:49.66 ID:cPpLvxGd0
「――とはいえ! モデル兼アイドルだからって
 特撮にも手なんか抜かないわよ。
 もしかしたらこのまま光の出番喰っちゃうかもね!」

「……うん」

「……? 何よ、そのシケヅラは? 悔しくないの?」 

「だってアタシ、闘わないヒロイン役なんて初めてだし……上手く演じられる自信ないよ」

「……あのね、誰にだって初めてはあるでしょ?」

顔をあげると彼女はいつになく真剣な表情で話しかけてきた。

トントン拍子で特撮の仕事を手に入れたアタシと比べて麗奈はなかなか芽が出なかった。

カッコいい悪役を欲しがってた彼女は三年間営業して

やっと手に入ったのは魔法少女の仕事を一クール。

「でもアタシはやったわ。初めてだしガラじゃないし恥ずかしかったけど
 からかわれても練習しまくって……だってそうでしょ?
 やっと手に入れた仕事すら半端にしか出来ないようじゃ
 レイナサマの世界征服なんて、夢のまた夢だからね」
6 : ◆K1k1KYRick [saga]:2020/04/01(水) 21:36:16.75 ID:cPpLvxGd0
「麗奈……」

「とにかくっ、ヒロイン役だって大事な仕事なのは変わらないでしょ。
 アンタは今まで何を守ってきたの? か弱いお姫様みたいなヒロインたちじゃないの?
 じゃあ一番近くで見てきたんだから一番良く知ってるはずでしょ。
 守る対象見ないで戦ってきた訳じゃないじゃん。思い出しなさいよ、絶対出来るから」

いつの間にか食べ終えている麗奈は食器を片付けに立ち上がろうとしていた。

「……あ、ありがとう……」

「カンチガイしないでよ、助けた訳じゃないからね。
 腑抜けた演技した光に勝っても全ッ然嬉しくないし、何より倒し甲斐がないでしょ」

「倒すって、アタシを?」

「当然! デュオ組んだ時から、光はずっとこのレイナサマのライバルなの!
 最初は差が出来ていたけど、最近やっと勝負できるレベルになったわ。
 それまでずっとアンタは越えるべき壁だった」

麗奈はアタシの額を人差し指で小突いた。

「今度は光がアタシを越えなさいよ、そしたらアタシが更にそれを越えてやるんだからね!」

麗奈は言うだけ言うとさっさとトレーを返却して食堂を後にした。

アタシだって気づかなかった訳じゃない。

麗奈はなかなかアイドル活動や夢が軌道に乗らない時も手を抜かなかった。

負けず嫌いなのに、アタシの活躍を見て内心ずっと焦っていたに違いないのに。

そんな麗奈にライバルとして認められている事が嬉しかった。

麗奈のためにこの仕事、是が非でも頑張ってこなしてみせる。 
7 : ◆K1k1KYRick [saga]:2020/04/01(水) 21:36:49.90 ID:cPpLvxGd0
   #  #  #

撮影は順調に進んでいった。

シーンは戦隊メンバー四人を圧倒した怪人にヒロインが戦うシーンに入る。

アクションを控えめにしてあくまでも一般人の立ち回りに努めた。

ヒロインは奮戦空しく激怒した怪人に捕まり、絶体絶命のピンチ。

「――待たせたな!」

颯爽とバイクで怪人とアタシの間に突っ込んできた麗奈は

タイヤ跡をアスファルトに刻みながら強引にバイクを捩じ伏せる。

脱いだヘルメットから流れるように出てきたロングヘアーがいつも以上に美しく映えた。

「遅いぞリーダー! 俺たちまで危なかったんだからな!」

「よく言うよ! そんなヤワな奴はウチの隊にはいらないからね! 
 ……さぁ、お姫さんを拐ったこのデカブツを退治しようか! みんな!」

仲間たちを奮起させたシーンを撮って変身後のアクタースーツに身を包む。

華麗にアクションをこなす麗奈にアタシは目を奪われている。

カッコいいヒーローにピンチを助けられた時の安堵感。

手強い怪人をヒーローが爽快に倒していく時の魂の高揚。

向こうで背にして闘っている彼女は間違いなく、命を睹して平和を守るヒーローそのものだった。

アタシは久々にヒーローをを熱く応援した。

テレビの前で一緒になって拳を突き出し、怪人たちから人々を守ろうとした日を思い出しながら。
8 : ◆K1k1KYRick [saga]:2020/04/01(水) 21:37:36.37 ID:cPpLvxGd0
「へへ、もう安心しなよ。悪い奴はこのワタシが黙らせたからな」

見事怪人を倒した麗奈はそう言って、アタシの腰を掴んだ。

凛々しい女リーダーに抱かれたアタシはいつになくときめいた。

自分でも驚くくらい自然と女の子を演じられている。

……いや、アタシは既にこのヒロインになっている。

助けてくれた相手への尊敬の念が憧れとなり、そのまま恋へと目まぐるしく昇華されていく。

「ありがとう……」

自然と重なり合う唇。魂の内側から込み上げてくる、尊い愛の衝動。

(麗奈……ありがとう。アタシ、麗奈に助けられて嬉しかった……) 

いつも見るだけだったあの麗しい唇はどこまでも甘く優しい感触で、うんと甘えていたくなる。

麗奈……アタシもっと頑張るよ、頑張ってまた

ううん、ずっとアタシのライバルでいて……。

   #  #  #
9 : ◆K1k1KYRick [saga]:2020/04/01(水) 21:38:13.35 ID:cPpLvxGd0
「――何やってんのよッッ!」

金切り声に頭を揺さぶられたアタシは目を瞬かせた。

二の腕を握られたアタシの前には、麗奈がいた。

さっきまでの凛とした表情は消え、耳まで真っ赤にしながら

怒りたいのか泣きたいのか分からないといった様子で、アタシを睨んでいる。

「……何……って……?」

「台本と違うでしょうがッ!?
 『ここでキスする』なんて、どこにも書いてなかったでしょッ!」

アタシはここでようやく役から醒めた。

途端にどこからともなく羞恥心がブクブクと膨れ上がり、アタシの脳裡を暴れ狂った。

ああ、何て事をしてしまったんだろう!

よりによって、周りにスタッフさんや俳優さんたちの居る中で、アタシは……麗奈の唇を……!

「ご、ごめんっ……! そ、その……したくなっちゃって……」

「『したくなった』って何!? アンタ野獣か何か!? 信じられないっ!」

アタシはすっかり思考をショートしてしまい、その場に膝を折ってへたれ込んだ。

そして麗奈のように赤くなった顔を両手で覆ってうつむいた。
10 : ◆K1k1KYRick [saga]:2020/04/01(水) 21:38:40.76 ID:cPpLvxGd0
「うぅ……ッ! アタシのファーストキスをどうしてくれんのよ……このバカ!」

麗奈は頭からアタシに罵倒を投げている。

アタシだって恥ずかしいから気持ちは分かる。

けど、そんなにきつく嫌わなくても、とアタシは悔しくなって思考の定まらないまま言い返した。

「……! だって! 本当にキスしたかったんだ!
 麗奈はいつもよりずっと綺麗で、かっこよかったし……!
 そう考えていると、女の子の役とアタシの境目がなくなって……っ!
 麗奈に対する気持ちが……我慢できなくなって……!」

「なっ……! なっ……! なっ……!」

もう自分でも何を言っているのか分からない。

麗奈だけじゃない、アタシだってファーストキスだったんだ。

麗奈が好きって気持ちに嘘はない。

衝動的とはいえ、いい加減な気持ちでキスなんて出来る事じゃない!

「それでも本番にやるなんてどうかしてるわよ!?
 アンタにアタシの気持ち分かるの!?
 他の奴らに見られる中で……『好きな相手』にキスされたこの気持ちが!」

竦み上がっていたアタシは、一瞬、彼女の言葉に耳を疑った。
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