おばあ「戦車道時代」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/01(金) 19:51:20.58 ID:jbRXinNV0


 ・・・・・・ 1 9 5 2 年 ・・・・・・


     〜初夏〜

   ――大洗学園艦――


   【大洗女子学園】

教師「――さて、これで必要な書類は全部ね。明日からあなたは大洗の学徒よ」

 「ありがとうございます先生」

教師「それにしても遠くから引っ越してきて一人暮らしなんて大変ねぇ。ちょっと前までは学童疎開なんてのもあったけど・・・えっと、どこから来たんだっけ?」

 「九州です。南の」

教師「まあ、そんな遠くから・・・だけど、どうしてそんなに遠方から大洗に来たの?それも一人でなんて」

 「・・・それは――」

 ガラッ


冷泉久子(高校二年生)「おはようございます。遅刻届を提出に来ました」ダラ〜

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1588330280
2 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/01(金) 19:54:26.03 ID:jbRXinNV0
このスレッドは
冷泉久子「戦車道時代」https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1504178491/
の書き直しになります
更新は非常にゆっくりになります

※このSSではガルパン本編で語られていない部分を都合よく改変されています。ご注意ください
3 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/01(金) 19:56:21.12 ID:jbRXinNV0
教師「あら、ずいぶんゆっくりの登校ね冷泉さん。財閥の令嬢でももう少し早く来るわよ。まあいつものことだけど」

冷泉「嫌味を言わんでくださいよ。大目に見てくださいや」

教師「でも丁度良かったわ。こっちにいらっしゃい。明日からあなたと同じ組に編入する子よ。仲良くしてあげてね」

 「・・・」モジッ

冷泉「学童疎開か」

教師「もう戦争は終わったの。七年も前にね。さあ、自己紹介して」


西住かほ「・・・西住かほです。大洗女子学園二年は組に編入することになりました」ペコリ


冷泉「冷泉久子。生まれも育ちもこの町、根っからの大洗っ子さ。よろしく」

西住「はい」

教師「西住さん、今日の用事は済んだから、校内を散策するといいわ。冷泉さんは授業に行きなさい。午後の授業には間に合うでしょう」

冷泉「ほいよ」

教師「はいは一回」

冷泉「は〜い」
4 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/01(金) 19:59:37.40 ID:jbRXinNV0

冷泉「西住・・・かほさん、だったか?故郷はどこ?」トボトボ

西住「はい、南の方です。九州の・・・熊本から」トボトボ

冷泉「きゅうしゅう!?なんだってそんな遠くから」トボトボ

西住「・・・か、家庭の事情というかなんというか」トボトボ

冷泉「まあ、来ちまったもんはしょうがない。いいとこだからすぐに慣れると思うよ」トボトボ

西住「あ、ありがとうございます。あの・・・ところで私達、どこへ向かってるんですか?冷泉さんは授業に行くんじゃ・・・」トボトボ

冷泉「初めての土地で右も左もわからない女の子をほっぽり出して行くほど、私は冷たくはないよ。冷泉って名だけどね」

西住「・・・は、はあ」トボトボ

冷泉「ほら、こっちこっち」


 ――・・・

 ザザァ〜〜〜ッ・・・

西住「わあ・・・綺麗」

冷泉「絶景だろう?学園艦から眺める海ってのはオツなもんだね。ほら、こっちは大洗の町が見える」

西住「ほんとだ・・・」

冷泉「ここの眺めを見ると活力が湧いてくる。日本は戦争でボロボロになったけど、また元気になる。あたしゃそう思うよ」

西住「・・・戦争・・・・・・」

冷泉「あんなひどいことはもう金輪際お断りだよ」

西住「・・・あの、冷泉さん、授業は?・・・」

冷泉「察しが悪いね。さぼりたいからここにいるんじゃないか」

西住「・・・そ、そうなんですね」
5 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/01(金) 20:01:55.64 ID:jbRXinNV0
 ――・・・翌日

西住「今日から新しい学校・・・もう故郷とは違う・・・誰も私のことを知らない場所なんだ」

 西住「よーし、西住かほ、心機一転がんばるぞ!」フンス

 西住「・・・ところで、学校ってどっちだっけ?」キョロキョロ


女子生徒「う〜〜〜ん!・・・もう!いい加減シャンとしてよ久子!学校遅れちゃうよ!」ウーンショ!ウーンショ!

冷泉「ぐう・・・」ネムネム


西住「あ、昨日の・・・冷泉さん?」

女子生徒「!・・・そ、そこの彼女!ちょっと手を貸してくれない?このままじゃ遅刻しちゃいそうで」

西住「は、はい。えと、肩を貸せばいいんですね」ヨイショ

冷泉「むぅ・・・お〜・・・西住さん・・・こんな夜遅くに会うとは・・・」ウトウト

女子生徒「確実に朝だよ!しっかりしてよ!」


 〜ソレカラドシタノ〜

女子生徒「な・・・なんとか間に合った・・・」アブネー

冷泉「ぐう」

西住「冷泉さん、教室でもまだ寝てる・・・」

女子生徒「この子はいっつもこうなの。ところで君、転校生?久子の知り合い?」

西住「あ、はい。西住かほです。昨日冷泉さんと知り合いました」

女子生徒「私は武部 薫子(たけべ かおるこ)。同じ組だし、よろしくしてね!」

西住「は、はい。ありがとうございます」

武部「ところで、男前の兄弟とかいない?私、お見合いに憧れてるんだ〜」

西住「・・・き、気が早いですね」
6 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/01(金) 20:05:34.32 ID:jbRXinNV0
冷泉「うーん・・・もう朝か」セノビー

武部「正午だよ」

西住「冷泉さん、午前中ずっと寝てましたね」

武部「この子、毎朝新聞配達の仕事してるんだよ。中学に上がった頃から毎日。自転車で学園艦を北へ南へ東奔西走」

西住「そ、それはすごいですね。だから眠いんだ・・・」

冷泉「大洗はあたしの庭」ブイ

武部「久子、今日の分ある?」

冷泉「ん」ガサッ

西住「武部さん、新聞読むんですね」

武部「世の中の動きを常に把握しておくのは乙女のたしなみだよ」

冷泉「こいつは早く嫁ぎに行きたくて色々と無駄な努力をしてるのさ。本性は田舎から出てきたド百姓の娘だ」

武部「誰がド百姓よ!」

西住「あはは・・・」

武部「あ、見てみてこの記事。《戦車道連盟、第二次大戦中の戦車の試合参加を正式決定》だって」ガサ

 西住「!」

冷泉「戦車道?」

武部「《1945年8月15日までに設計が完了して試作されていた車輌の試合への導入が新たに認められた》・・・だって。戦車道なんてまだやってる人いるのかな」

冷泉「戦争が始まって誰もやらなくなった・・・というか出来なかったからね。昔の車輌は全部軍に持ってかれたし」

武部「終戦したから戦車道人口を増やそうとしてんだろうけど、ねえ・・・今の御時世、誰が好き好んで戦車に乗るかな」

冷泉「相当の変わり者か、よほどの戦車好きかだね」

武部「それに、戦車に乗って大砲撃ち合うなんておっかないよね・・・せっかく平和になったのにまた戦争みたいなことするなんて、私はいやだなぁ」

冷泉「誰だってそうさ」

西住「・・・」
7 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/01(金) 20:09:34.65 ID:jbRXinNV0
>>6
せっかく平和になったのに〜:第二次大戦で日本と戦争状態にあった連合国諸国と『サンフランシスコ平和条約(日本国との平和条約)』が1951年に結ばれ、1952年の春に発効された
 このSSの時代は、戦後ようやく日本の主権が回復した時代であり、平和条約が発効されて2ヶ月ほど経ったばかりの夏の始まりの頃である

新聞配達:当時の新聞配達は早朝には配られず、夕方に配られることが多かったらしい
8 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/01(金) 20:11:09.58 ID:jbRXinNV0
女子生徒「・・・・・・あ、あの!」

西住「わ!?」ビクッ

女子生徒「あっ、わっ、す、すみません・・・驚かすつもりでは・・・」

西住「い、いえ・・・・・・えっと・・・あなたは・・・」

冷泉「あー、秋山ヤヱって子だよ。散髪屋の子」

秋山「秋山と申します。あの・・・西住さん、自己紹介の際に南の方から来られたと仰ってましたが、もしかして“あの”西住さんですか?」

 西住「!」

武部「あの?どの?」

秋山「戦車道の伝統ある流派、西住流のことです。九州地方に総本山があるのでもしやと思ったんです!私、戦車のことが好きで好きで!」

冷泉「物好きいた」

秋山「父が戦時中、戦車の製造をしてる工廠の技師でして、よく戦車の話を聞いてるんです!そして西住流戦車道は大昔から戦前まで続く歴史ある流派で――」

西住「――ご、ごめんなさい!私ちょっと用事思い出しました・・・!」バッ タタタ

武部「ちょ、ちょっとかぽりん!」

秋山「あっ・・・やはり人違いだったんでしょうか・・・」

武部「戦車道の西住流って・・・も、もしかして私達、きついこと言っちゃったかな?」

冷泉「・・・」
9 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/01(金) 20:19:52.28 ID:jbRXinNV0
 ――・・・

 ザザァ〜・・・

西住「はぁ・・・」ショボン


冷泉「やっぱりここから眺める海は綺麗だろ」

西住「!・・・冷泉さん・・・ごめんなさい。突然飛び出して・・・秋山さんにも失礼だったかな」

冷泉「あたしゃ秋山と違うから計れんね」

西住「・・・・・・私・・・西住流の・・・戦車道の家元の子なんです」

冷泉「さっきの会話で察しはつくさ。すまんかった。知らなかったとはいえ」

西住「いえ・・・仕方ないことですよ」


西住「実家は戦車道流派の本家で・・・昔は良かったんです。歴史と伝統のある神聖な武道だと敬われて・・・」

 西住「だけど、戦争で全てが変わってしまった・・・」

冷泉「・・・」

西住「やっと戦争が終わったのに今さら誰も戦車になんか乗りたがらない。戦車道はもう廃れるだけ・・・」

 西住「戦車道に未来は無い・・・そう考えたお母さんは、私を戦車道から遠ざけるために大洗に引っ越しさせたんです」

 西住「西住流を・・・継がせないために」


西住「でも・・・私・・・戦車道が好きなんです・・・」

 西住「戦争は嫌いだけど、戦車は好き・・・この気持ちに嘘はつけない・・・」

 西住「一人じゃ無理でも仲間と一緒なら大きな戦車だって動かすことができる。そんな戦車が大好きなんです」

 西住「皆で力を合わせて一つの戦車を動かす・・・お互いに支え合って目標を成し遂げる・・・戦車道は人生の大切なことがたくさん詰まってる」

 西住「だから戦車道が好きなんです。その素晴らしさを・・・もっと多くの人にも知ってほしい」

 西住「でも・・・私にはどうすることもできない・・・どうすることも・・・」
10 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/01(金) 20:24:06.50 ID:jbRXinNV0
冷泉「よし、わかった」パン

西住「・・・?」


冷泉「あたしもやるよ、戦車道」


西住「!・・・え?・・・・・・な、何で・・・」

冷泉「なんにも知らないドが付く素人だが、あんたの話を聞いてたら興味が湧いた」

西住「!」

冷泉「あんたが好きだと言う戦車道がどれくらい面白いもんなのか気になったからね、一緒に戦車道やろうって言ってるんだよ」

西住「で、でも・・・」

冷泉「あたしらで戦車道の素晴らしさってやつを天下に響かせてやろうじゃないか」ニカッ

西住「・・・冷泉さん・・・」

冷泉「あたしのことは久子って呼んでくれ。敬語もやめだ。あたしもあんたのこと、かほって呼ぶからさ」

西住「・・・ほ、本当に・・・一緒に戦車道・・・やってくれるんですか?」

冷泉「勘違いしなさんな。やりたいからやるだけだよ」

西住「!・・・・・・あ・・・ありがとう・・・ございます・・・」


西住「・・・・・・でも、このご時世に戦車道やるなんて、よっぽどの変わり者なんですね・・・」フフ

冷泉「お互いにな」ニヤリ
11 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/01(金) 20:25:42.97 ID:jbRXinNV0
今回はここまで
次回更新は未定ですがかなりゆっくりになると思います。ご了承ください
12 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/05(火) 17:11:11.18 ID:jKujAodT0

 ――・・・翌日

冷泉「ぐう・・・ぐう・・・」スヤァ!

西住「うーんしょ、うーんしょ・・・ひ、久子さん・・・しっかり歩いてよ〜」ズリズリ

冷泉「起きてる・・・起きてるから・・・」スヤヤカァ!

西住「昨日あんなに威勢良かったのにこれだもん・・・」ズリズリ

風紀委員「学友の肩を借りて登校とはずいぶんな御身分ね冷泉さん」

西住「!・・・お、おはようございます」

冷泉「おお〜そど子〜・・・」ウトウト

風紀委員「そど子って呼ばないで!私の名前は園のど子!省略しないで呼びなさい!」

冷泉「わかったわかったそど子〜・・・」ウトウト

そど子「こ、この寝坊助・・・っ!」ワナワナ

西住「す、すみません。久子さん朝からお仕事で大変だそうで・・・」

そど子「知ってるわ。だからって学徒の本文が疎かになっていい理由にはならないでしょ」

西住「あう・・・」

そど子「もう教室に行きなさい。転入生の西住さん、あんまり冷泉さんに関わりすぎるとあなたまで不良生徒になっちゃうわよ」

西住「えぇ・・・そ、そうなんですか?・・・伝染しないように気をつけます」

そど子「・・・もう遅いかもしれないわ」
13 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/05(火) 18:25:00.12 ID:jKujAodT0
 ――・・・

武部「せ、戦車道をやる〜!?」ガタン

秋山「本当ですかぁ!?」パァー

冷泉「声が大きい。頭に響くからやめろ」

武部「昨日あんなけ戦車など流行らん言うちょったのになしてそなら心変わりしたべか!?」

西住「どこの言葉ですか・・・?」

冷泉「こいつはハイカラになりたくて普段は都会言葉で飾りたててるんだが、素はこんな感じの田舎っぺなんだ」

武部「かほちゃんの実家が戦車道のすごいとこだってことはわかったよ。昨日はひどいこと言っちゃってごめんね」

西住「あ、いえ」

武部「ほんでもこんなご時世に戦車て風代わりにもほどがあんべや!それにどこに戦車があるってんべ!」

冷泉「それならなんとかなる。この新聞記事を読んでみな」ガサッ

秋山「なになに・・・《戦車道連盟は、戦車道普及を目的として活動する自治体、教育機関から申請を受ければ、戦車を贈与すると発表した》・・・」

冷泉「ようするに連盟から戦車がもらえるってことさね。切符がいいねぇ」

西住「連盟もみんなに戦車道をやってほしいんですね」

冷泉「っちゅーわけでさっそく申請を出しておいた。今日の夕暮れには戦車が手に入るって寸法よ」

武部「手際がよろしい!」

冷泉「あたしらで落ち目の武芸を復権させようさ」

秋山「戦車道業界を盛り上げるということですか!?」

冷泉「日本中を巻き込んで戦車道人気を爆発させるつもりだよ」ニヤリ

武部「で、でもでも!どうやって人気を広めるの!?全国行脚してチラシでも配るの!?」

冷泉「大会を開くのさ。戦車の大会をな」

武部「な、なんじゃとて!」ガターン
14 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/05(火) 19:51:09.88 ID:jKujAodT0
冷泉「賞金を懸けた大会だよ。人口の少ない競技で大金をかけりゃ、素人でも勝てるかもって甘い考えの連中が大挙するよ」

武部「くち悪ぃ〜・・・」

冷泉「戦前に戦車道やってた学校だってあるだろうさ。そいつらを呼んで大規模にやるのさ」

西住「なんだか大事になりそう」

秋山「私は戦車に関われるだけでもヨダレものですっ!」ズビッ

武部「・・・そうですか・・・それではみなさんがんばってください」シュタ

冷泉「待て。お前にやってもらいたいことがある」ガシ

武部「ほらきた!巻き込まれるのは目に見えてたよ!」

冷泉「あんた、他校にも連れ合いがいるだろう。他校の連中に戦車道大会のことを広めてくれ。話が広まっていくようにな」

武部「・・・ま、まあそれくらいなら・・・」

冷泉「それから大会の運営やら賞金やら援助してくれる支援者を探してくれ」

武部「無茶来たよこれ!」

冷泉「景気の良い人間を見つけだして手を組むように丸めこむんだ。大会には出資者が必要なんだよ」

武部「ほれほれ無茶苦茶言いよるよこの子は!」

冷泉「あんたの顔の広さなら羽振りの良い成り金の一人や二人見つかるだろ。上手いことだまくらかして金を出させな」

武部「く、くちわりぃ〜・・・」

冷泉「任せたよ。やってやれねーことはねーだろう」

西住「がんばってください武部さん!」

秋山「大会の是非は武部殿の双肩にかかっております!」

武部「っ・・・わ、わかった。でも期待はしないでよ」

冷泉「あたし達は戦車を受け取って操縦練習に取り組むとするよ。かほも操縦したことないんだろう?」

西住「はい。物心ついた時からもう戦争だったので・・・」

冷泉「だったら目一杯練習しないとだね。せっかくなら一等賞取らなきゃな」
15 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/05(火) 21:35:43.36 ID:jKujAodT0




 ――・・・翌日

冷泉「・・・こ、これが戦車だと・・・」ワナワナ

 >バラバラ〜ッ・・・<

秋山「まさかばらばらの状態で送られてくるなんて・・・しかも所々部品が欠けてる・・・」

武部「がらくたを押しつけられたんじゃないの?」

西住「戦車道連盟からの文書も同封されてますよ」ペラ

 手紙《現在、戦車道連盟が用意できる戦車はこれが精一杯です。すまんの》

冷泉「野郎・・・だまくらかしやがったな」

秋山「大丈夫です!私にお任せくださいぃ!闇市で部品を集めて完成させてみせます!」

西住「す、すごいですね」

冷泉「武部、出資者の件はどうだい?」

武部「ふっふーん、この私を甘く見ないでくれますかね!ちゃーんと資金援助してくれそうな人と連絡を取ったよ!」ブイ

西住「ほ、本当ですか!?」

武部「実はこれからその人の家に話をつけに行くことになってるの。皆で説得してたくさん資金を出してもらおうよ!」

秋山「私は残って戦車組み立てに尽力します!」

冷泉「ようし、そいじゃあ成金野郎を舌先三寸で踊らせてむしり取ろうじゃないか」

武部「く、く、くちわりぃ〜・・・」
16 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/05(火) 22:18:51.01 ID:jKujAodT0
 ――・・・

 <カコンッ・・・

冷泉「こんな大きなお屋敷の広間に案内されるとは驚いたね」

西住「武部さん、お相手はどんな人なんですか?」

武部「中等学校の頃の友達でね、家業を継ぐために高等学校には進まず家で修行してるの」

西住「家業を継ぐために・・・」

 襖<ススーッ・・・

冷泉「来たよ」


五十鈴「ようこそいらっしゃいました。私、華道五十鈴流長女、五十鈴梅と申します」スッ・・・

武部「梅、久しぶり〜」

五十鈴「そちらの方々が薫子さんのご友人の西住かほさんと冷泉久子さんですね」

西住「は、はじめまして・・・!」

冷泉「話が早いね。何故私達が出向いたかも知ってるんだろう?」

五十鈴「なんでも戦車道の催しを開きたいので資金面での援助をしてほしいと・・・我が五十鈴流に出資者になってほしいということですね」

冷泉「そこまでわかってて招き入れてくれたってことは、この話に乗ってくれるんだね」

西住「ほ、本当ですか!?」パァ

五十鈴「お断りします」

西住「ぁぅ」シュン

五十鈴「戦車道のような野蛮で下品な武芸に助力するつもりはありません。戦争を思い起こさせるようなものになぜ助力をする必要がありましょうか」

武部「梅ぇ・・・」グスン
17 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/05(火) 22:26:50.55 ID:jKujAodT0
五十鈴「――ですが・・・」

西住「・・・!」

五十鈴「戦後七年・・・先日、日本と米国の安全保障条約が発効され、日本は本当の意味で戦争から解放されましたね」

 五十鈴「これから日本は再生しなければならない。人々に活気をもたらすための『なにか』が必要だと日々考えておりました」

 五十鈴「あなた方の仰る戦車道の大会・・・この大洗の皆さんに景気を付けることが出来るかもしれません」

武部「!」

五十鈴「なにより、戦車道の大会を開くことは世が平和になったことの証」

 五十鈴「戦争の象徴でもあった戦車で女子が競い合い切磋琢磨するなど戦時中には考えられないことですからね」

武部「た、たしかに・・・」

五十鈴「平和になったからこその戦車道の復権・・・そこに大きな意義があると私は思います」

 五十鈴「そして・・・西住かほさん、あなたの真剣な眼を見て気が変わりました。お母様に・・・五十鈴流家元に話を通しましょう」

西住「ほ、本当ですか!?今度こそ本当ですか!?」パァ

五十鈴「戦争が終わった日本の・・・この大洗の復興に一役かえるのなら力は惜しみません。あなた方に五十鈴流は出資いたします」

西住「やったぁ!やったね久子さん!」ダキッ

冷泉「話のわかる奴で助かったよ」

武部「さっすが梅!いよっ!太っ腹〜!」

五十鈴「戦車道と華道・・・武芸の道をゆく者同士、力を合わせましょう」

西住「はい!ありがとうございます!」

冷泉「これで金の工面はなんとかなったね。景気よく羽舞っておくれよ、五十鈴さんよ」ハッハッハ

五十鈴「・・・冷泉久子さん、あなたは少し眼に邪な色が混じっておりますね」
18 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/09(土) 21:22:38.66 ID:8RnpTjPs0
 ――・・・数日後


 ――・・・大洗女子学園

 <ジジジジ・・・

秋山「ふぅ・・・」ガパッ

冷泉「どうだい調子は」

秋山「なんとかやってますが・・・やはり部品が足りませんね。なによりエンジンが闇市でも手に入らなかったので困ってます」

西住「マトモなエンジンなんて今のご時世じゃ流通してなさそうですもんね」

秋山「このままじゃ走らせることもできません・・・なんとか手を考えなければ・・・」


五十鈴「皆さんおはようございます」

西住「五十鈴さん!お、おはようございます」

冷泉「出資者様のお通りだい」

秋山「ははぁ〜っ!」ペコーッ

五十鈴「やめてくださいなそういうのは」

冷泉「へへへ」

武部「どしたの梅?学校にまでわざわざ来るなんて」

五十鈴「どしたのはないでしょう。先日もお話しした通り、お力添えをしてくれそうな方々との会合の日ですよ」

武部「え”っ」

西住「・・・はじめて聞きました」

五十鈴「『五十鈴流の他にも支援してくれる方々を見つけたので、大洗の皆さんと話し合いの席を設ける』と、皆さんにお伝えくださいと話しておいたのですが」

冷泉「・・・武部」

武部「ごめん・・・忘れてた」
19 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/09(土) 21:43:28.29 ID:8RnpTjPs0
 ――・・・大洗港

 デーーー《聖グロリアーナ女学院学園艦》ーーーン

  ドーーー《サンダース大学校付属高等学校学園艦》ーーーン


冷泉「でっけぇ学園艦だね。金持ちは違わあ」

五十鈴「華道五十鈴流のお得意様である二校に話をしたところ、是非乗りたいとおっしゃられたので、わざわざ寄港していただいたんですよ」

西住「聖グロとサンダースも協力してくれるかもってことですか!?」

五十鈴「話がうまく纏まれば、ですが。これから両校の代表の方と会合です。一緒に行きましょう」


 ――・・・とある喫茶店

聖グロリアーナ隊長「私、戦グロリアーナ女学院の隊長を務めております、田尻と申します。ダージリンと呼んでください」

サンダースキャプテン「私はサンダースのキャプテン、おケイって呼んでね!」

西住「に、西住かほです。本日はわざわざお越しいただいてすみません」

冷泉「冷泉久子だ。ご両人、ウチのヤマに一口噛みたいってわけだね」

おケイ「ザッツライト!私達もスポンサーとして大会運営に協力するわ!」

田尻「世間に戦車道の灯火が燃え上がる様をお見せしたいと思っていたところですの」

西住「あ、ありがとうございます!」

五十鈴「では細かい話はまた後日私から通しましょう」

西住「久子ちゃん、聖グロとサンダースはお金持ちだから戦車もいっぱい持ってるし、戦前も戦車道やってた古株なんだよ」

冷泉「そいじゃものは相談なんだけどさ、ご両人」

おケイ「なにかしらん?」

冷泉「あたし達ゃ戦車を組んでるんだけどね、どうもエンジンやらなんやらが足りなくって困ってんだ。部品をカンパしてもらえないかね」

田尻「んっふ、そんな相談はじめてされたわ」

おケイ「おーケイ!戦車が完成してないと大会どころじゃないものね」

田尻「こんな諺があるわ。『敵に塩を送る』・・・仕方ないけれど、おケイの言う通り、相手がいないんじゃしょうがないものね」

冷泉「へっへへ、助かるよ。よかったなかほ」ポンポン

かほ「あはは・・・あ、ありがとうございます」
20 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/05/24(日) 19:30:16.10 ID:YlSpBz6i0
田尻「ところで、概要は決まってるのかしら。大会の競技内容、規定、参加資格・・・諸々を教えてちょうだい」

西住「そ、そういえば全然考えてなかった・・・」

おケイ「そんなの決まってるじゃない。対戦トーナメントで誰が一番強いか決めるのよ!」

冷泉「そりゃ反対だね」

おケイ「ワッツ!?なぜホワイ!?」

冷泉「ドンパチ勝負じゃ金持ってるアンタらが有利だ。余所の学校が参加を渋っちゃ困るよ」

五十鈴「なら何をするのでしょう?」


冷泉「戦車競走だよ」ニヤリ


おケイ「オー!戦車でレースってわけね!」

田尻「ルールは?」

冷泉「各校隊長を決め、隊長車が一番早く目標地点(ゴール)を通過した学校が優勝。それだけさ」

田尻「なるほど。逆に言えばそれ以外はなんでもアリ・・・と」

おケイ「会場はここ、大洗ね!チームの車輌上限は5輌でどう?」

田尻「コースを外れた場合、その地点から再開すること。白旗判定が出れば失格・・・と言ったところかしら」

冷泉「面白そうじゃないか」ニヤ

五十鈴「お野蛮な・・・」

田尻「大会要項を全国の学校に通達するわ。戦車道を再開している学校も多いからきっと参加するはずよ」

五十鈴「大洗の地元の方々にも協力を要請しましょう。町を挙げて大会を盛り上げ、復興の景気づけにいたします」

西住「な、なんだか・・・ほんとに戦車道の大会をやるんだって気になってきましたね・・・!」ワクワク

冷泉「小さな夢が大事になったもんだ」ニシシ
21 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/06/22(月) 21:01:40.14 ID:WpsWEF080
 ――・・・大洗女子学園

西住「――というわけで、聖グロとサンダースも協力してくれることになったんです」

武部「はぇ〜、どんどん規模が大きくなってくね」

冷泉「そして先刻、サンダースと聖グロから届いた部品を秋山が組んでくれてるとこさ」

 秋山「みなさ〜ん!」フリフリ

冷泉「おっ、噂をすれば」

秋山「ついに・・・ついに完成しました!」バッ

西住「あれは・・・」


 W号<・・・・・・


西住「『W号戦車』・・・!」

武部「ほんとに組み上げちゃった・・・よく作り方知ってたね」

秋山「説明書を読んだんです!」コマンドー!

冷泉「そいつを見せてくれ」

秋山「あ、はい」サッ

冷泉「・・・」パララララ・・・

秋山「わ・・・すごい。目にも止まらぬ速度で説明書を読んでる・・・」

冷泉「よし、動かし方はわかった。行くよかほ、さっそく運転だ」

西住「えっ」

冷泉「二週間でこいつを手足と同じくらい馴染ませなきゃならんのだ」

西住「は、はい・・・!」
22 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/06/22(月) 22:45:33.94 ID:WpsWEF080
 ――・・・

西住「本当にいいんですか?大会運営を生徒会にお任せして・・・」

生徒会長「いいのいいの〜。ウチとしても大洗が盛り上がるのはうれしいし」

冷泉「地元の人達とは話はついてるのかい?」

会長「みんなお祭り気分でやる気いっぱいだよ。当日は屋台とか露天もたっくさん出るだろうよ」

五十鈴「先日開業した大洗水族館もいい宣伝になると乗り気です」

冷泉「町中を競争(レース)の行路(コース)にする許可の方は?」

会長「ちゃ〜んと認可されたよ〜ん」

西住「すごい。さすが会長さん」

会長「ふふふ、もっと褒めるといい」フンス

西住「・・・町中がコースなんですよね?もし戦車が建物にぶつかったりしたら・・・」

五十鈴「その辺りは我々すぽんさぁが保証しますので大丈夫です」

冷泉「町をブッ壊しても五十鈴流とサンダースと聖グロが修繕費を持ってくれるってこったね」

会長「地元の大工さんも儲かるし、ウハウハじゃ〜ん」

五十鈴「・・・と言っても、無意味な破壊行為はご遠慮ください。特に冷泉久子さん」

冷泉「あたすかい?」

五十鈴「すぽんさぁがいるからと無茶な運転で家屋を壊さないように」

冷泉「ちぇっ、信用ないね」

五十鈴「無論です」
23 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/06/22(月) 22:47:17.94 ID:WpsWEF080
>>22

大洗水族館:県立大洗水族館(現アクアワールド・大洗)は、1952年6月に開業した
24 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/06/22(月) 22:49:57.18 ID:WpsWEF080
 ――・・・

西住「皆さん今日も打ち合わせに集まっていただきありがとうございます」

田尻「今日の議題は利益配分についてでしたわね」

冷泉「Zzz・・・」

五十鈴「約一名お眠りになられてますが」

おケイ「ヘイ!ヒサコ!スタンダップ!グッモーニン!」ユサユサ

冷泉「うぅむ・・・何ぴとたりとも私の眠りを妨げる者はゆるさん・・・」ムニャムニャ

西住「すみません、久子さん今日も朝から新聞配達をしてたので・・・」

田尻「冷泉さん、大会の収益に関する話をしたいのだけど」

冷泉「ん・・・ああ、そうか・・・ウチの生徒会が元締めで賭博をする。利益の2割をアンタ達にそれぞれ配分するのでいいやね」

五十鈴「私達は見返りが欲しくて援助してるわけではないのですが」

冷泉「スポンサーなんだから黙って受け取りな。その後で寄付するなり懐に入れるなり好きにしなよ」

五十鈴「・・・ぶっきらぼうな方」

冷泉「ウチとしては見物客がたくさん来て大洗に金を落とすことが目的だよ」

おケイ「オ〜ゥ、さっすがヒサコ。竹を割ったようなサッパリした性格ね」

冷泉「その代わり客はたくさん呼んでおくれよ」

おケイ「おっケ〜イ!」

冷泉「ガッポリ稼がせてもらおうじゃないの」ニヤ

田尻「邪悪な笑み」
25 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/06/22(月) 22:52:09.02 ID:WpsWEF080
 ――・・・

 W号<ギャラギャラギャラ!

秋山「すごい!もう運転を完全にモノにしてますねェ!」

 W号<・・・ギキィーッ <パカッ

冷泉「いや、まだまだだ。曲線での舵取りが甘い。それに速さも足りないね。改善点は山積みだ」

西住「厳しいなあ」

冷泉「かほの指示は的確だよ。運転席じゃ見えない範囲までキチンと見通してくれてる」

西住「えへへ」

冷泉「だが状況判断からの操縦指揮に時間差(ラグ)がある」

西住「えっ」

冷泉「車長は操縦手に足で指示を出す。アンタの指示はエンリョして腰が引けてるから正確さに欠けてんだよ」グイ

西住「うぐっ」

冷泉「もっと本気で蹴らんかい!判断が鈍るんだよ!」

西住「そ、そんなこと言ったって・・・」

冷泉「本気で勝つ気あんのかい!?エンリョしないでガンガン蹴るんだよ!わかったかぃ!」

西住「ふえぇ〜」

冷泉「秋山!闇市に行くよ!もっとW号を改造して速度と操縦性を尖らすんだよ!」

秋山「わっかりましたぁ!」

武部「んなことやって大丈夫なの久子?」

冷泉「どあほう、マトモなままじゃ勝てんわ」ニヤリ

武部「やな予感〜・・・」
26 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/06/22(月) 23:04:05.87 ID:WpsWEF080
 ――・・・

そど子「大洗で戦車競走〜!?」

冷泉「ひいてはそど子達風紀委員に警備を任せたい」

そど子「なに考えてんのよ!町中で戦車のかけっこなんて危ないじゃない!」

冷泉「生徒会長も大洗の町人も了承済みだ」

そど子「んなっ・・・!」

冷泉「安全面の確保やら人員規制やら、手が回らない。ケガ人を出さないにはそど子と風紀委員の協力が不可欠なんだよ」

そど子「調子いいこと言っちゃって・・・」

冷泉「安全のために尽力してくれるよな?」

そど子「あなたねえ・・・」

冷泉「風紀委員総動員すりゃなんとかなるだろ。アンタにしかできないことだよ。頼むぜ風紀委員長さん」

そど子「〜っ!・・・わかったわよ!言っておくけど冷泉さんのためじゃなくて世のため人のためだからね!」

冷泉「期待してるよ」


そど子「・・・冷泉さん、なんだか楽しそうね」

冷泉「あ?」

そど子「今までのあなたって、もっと無気力というか、いつもけだるそうにしてたじゃない。今のあなたはハキハキしてるわ」

冷泉「ま、戦車道ってのも案外楽しいからね。そいじゃあ大洗の安全を任せたよそど子」

そど子「そど子って呼ばないで!」
27 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/06/22(月) 23:05:54.14 ID:WpsWEF080
 ――・・・

 おケイ「学園艦に住んでる生徒以外の人達も観光に来てもらうわ」ガヤガヤ

    五十鈴「優勝賞金は我々出資者がカンパし合った額ということで」ガヤガヤ

  田尻「大会名は《大洗ダービー》にしましょう」ガヤガヤ

 冷泉「地元の連中は生徒会がガッチリ抱え込んでる。心配はいらないよ」ガヤガヤ


西住「・・・」フフ・・・

冷泉「ム、どうしたんだいかほ」

西住「みなさん・・・改めて本当にありがとうございます。力をかしてくれて・・・」

おケイ「ハッ!うぉーたーくさいこと言わないの!」

田尻「戦車道の復権は私達の望みでもあるわ。むしろきっかけをくれたかほさんに感謝してるくらいなのだから」

五十鈴「町の復興の一翼を担えるのなら多少の出資も惜しみません」

西住「みなさん・・・」

五十鈴「戦車道大会はあなた一人の夢ではなく私達の夢でもあります」

冷泉「尽くしてもらって悪いが、勝つのはウチだよ」

おケイ「それはこっちの台詞よ」ニカ

田尻「『イギリスは恋と戦争では手段を選ばない』・・・慢心してると痛い目を見ることになるわよ」

冷泉「上等だ。あたしらの走りを見せてやるよ。な、かほ」グイ

西住「は、はい!」

五十鈴「ふふ・・・」
28 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/06/22(月) 23:23:16.76 ID:WpsWEF080
 ――・・・

 W号戦車改<カチャカチャ

冷泉「よし、調整終わったよ」フキフキ

西住「お疲れ様。いよいよ二日後だね・・・大会」

冷泉「明日は参加校が前入りして最後の打ち合わせだ。戦車をイジれるのは今日までだろうさ」

西住「と言っても、聖グロとサンダースの他に来てくれる学校があるかわからないけどね」

冷泉「私達だけだったとしても精一杯やってやろうや」

西住「ありがとう冷泉さん・・・」

冷泉「ん?」

西住「色々と力になってくれて・・・本当に戦車道の大会ができるなんて・・・冷泉さんがいなかったら、きっと無理だった」

冷泉「よせやい。あたしゃ好きでやってんだ。礼を言われるようなことじゃないよ」

西住「・・・冷泉さん」

冷泉「あと、いい加減冷泉さんってのはやめとくれ」

西住「・・・そうだね、久子ちゃん。本当にありがとう」

冷泉「あん?」

西住「私と友達になってくれて・・・私、久子ちゃんにあえてよかった」

冷泉「・・・・・・馬鹿だね・・・まったく」


 冷泉(逆だよ・・・かほ)

 冷泉(かほ・・・・・・あたし)

 冷泉(あたし・・・あんたとあえて本当によかった)
29 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/20(月) 14:49:36.39 ID:tkpwGIEV0

 ――・・・

 \ワイワイガヤガヤ/ \トンテンカン トンテンカン/ \ワイワイガヤガヤ/

 「お〜い、これ持ってっていいのか〜?」ドヤドヤ

   「よーし、持ったぞー。いくぞ、せーっの!」ガッシャン

  「誰だここの木材持ち出したやつ〜!」ヤイヤイ


西住「わあ・・・道にたくさん露店が」

冷泉「町をあげてのお祭りだからね」

西住「こ、こんなに大事になっておいて参加校少なかったらどうしよう」

秋山「運営の方は生徒会の皆さん中心に問題なく動いてるようです」

冷泉「今のところは順調だね」

西住「ど、ドキドキしてきた・・・」

冷泉「賽は投げられたんだ。出目は変えようがないよ」


武部「大変でんがなたいへんでんがな〜!」ドタバタドタバタ

西住「た、武部さん!」

秋山「港で受け付けをしているはずがなぜここに・・・ま、まさか何か事故でも!?」

武部「とんでもなーことになっとるべや!みんな来てくんろ!」

冷泉「かっぺ言葉を出すな。なにがどうしたかちゃんと言ってくれ」

武部「どーもこーもにゃーよ!めっちゃくちゃたくさんの学園艦が寄港してんべや!」

西住「!」
30 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/20(月) 14:51:47.02 ID:tkpwGIEV0
 \\\ ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン ///

   《プラウダ高校》
            《アンツィオ高校》
 《聖グロリアーナ女学院》
                  《BC高校》
  《サンダース大学校付属高等学校》
《知波単学園》
        《黒森峰女学院》
               《自由学園》
    《継続高校》

 /// デーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン \\\


秋山「!・・・」アゼン

西住「すごい・・・学園艦がこんなにたくさん・・・」

冷泉「こんな光景そうそう見れないね」

秋山「見てください。次々と学園艦が来ますよ!」

西住「ベルウォールに楯無高校、ボンプルや竪琴、コアラの森まで!」

冷泉「どうやらあんたの悩みは杞憂だったようだね、かほ」


田尻「ごきげんようかほさん」

おケイ「ハーイかほ!いろんな学校に声かけてたくさんウェルカムしたわ!」

西住「ダージリンさん、おケイさん!あ、ありがとうございます!まさかこんなにたくさん色んな学校が来るなんて・・・」

田尻「参加はせずとも大会を見に来た学校も多いみたいよ。マジノ女学院や青師団もそう」

おケイ「戦車道を盛り上げたいって人は日本にいっぱいいたってことね♪」

西住「・・・はい!」
31 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/20(月) 14:55:44.92 ID:tkpwGIEV0
プラウダ指導者「大洗の西住と冷泉ってのはどの子?」ザッ

西住「!・・・は、はい!私達ですが・・・」

冷泉「なんだい」

プラウダ指導者「あなたたちね、この大洗の戦車道大会を企画したのは」

西住「え、えと・・・そうですが・・・な、なにか・・・?」

プラウダ指導者「ハラショー!ピロシキー!」ダキッ

西住「!?・・・え、え!?」アタフタ

プラウダ指導者「よくぞやってくれたわ!貴方たちが大会を開いてくれたおかげで戦車道復権のキッカケになったわ!」

 プラウダ指導者「この大会で世間に戦車道のすばらしさを知れ渡らせることができる!ありがとう!」

西住「い、いえ・・・私達だけの力では・・・」

プラウダ指導者「私はプラウダ高校のシドーシャよ!でも、言っておくけど優勝は私達のものよ!」ニカッ

冷泉「そいつは聞き捨てならないね。勝つのはウチだよ」

 プラウダ生徒「ドテチン」

冷泉「!?・・・な、なんだって?」

シドーシャ「その子はクララ。ソビエト連邦から来たウチの生徒よ!砲撃の名手なんだから!」フンス

クララ「ドッテチ〜ン(※よろしくお願いします)」

冷泉「そびえと・・・北方の国だね。そんなよくわかんないお国の人間を招き入れるなんて、少しおっかないね」

シドーシャ「あら、生まれた所や皮膚や目の色で一体この子の何がわかるっていうの?クララはすごいんだから!」

クララ「ホッホホ〜イ(※照れますな〜)」

冷泉「む・・・そうだね。あんたの言う通りだ。すまんねクララとやら、失礼なことを言っちまったよ」

クララ「ええんやで」

冷泉「!?」
32 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/20(月) 14:56:55.72 ID:tkpwGIEV0
>>31

ソビエトから来た〜;戦後当時、アメリカ人が日本に来ることはよくあったが、ソ連人は滅多にいなかった。北海道等の東北には来てたかもしれないそう
101.30 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)